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  • 特許-低侵襲手術支援装置及びその制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】低侵襲手術支援装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/20 20160101AFI20241021BHJP
   A61B 34/10 20160101ALI20241021BHJP
【FI】
A61B34/20
A61B34/10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021530313
(86)(22)【出願日】2018-12-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-02
(86)【国際出願番号】 CN2018125924
(87)【国際公開番号】W WO2020107636
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-27
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-25
(31)【優先権主張番号】201811423746.8
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517396261
【氏名又は名称】アンコン メディカル テクノロジーズ (シャンハイ) カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ANKON MEDICAL TECHNOLOGIES (SHANGHAI) CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】Floor 1,No.435,Chuanqiao Road,Pilot Free Trade Zone,Pudong New Area,Shanghai,201206,China
(73)【特許権者】
【識別番号】520471586
【氏名又は名称】エーエヌエックス アイピー ホールディング プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】ドゥァン シァォドン
(72)【発明者】
【氏名】マー ヤクン
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】井上 哲男
【審判官】栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-515312(JP,A)
【文献】特開2007-190164(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104323778(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0094681(US,A1)
【文献】特開2004-105247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/20
A61B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低侵襲手術支援装置であって、
体外装置と、体内装置と、位置決めプローブと、制御システムとを備え、
前記体外装置は、回動磁界を与える体外磁界発生装置と、前記体外磁界発生装置の移動及び/又は回動を駆動する駆動機構とを備え、
前記体内装置は、前記体外磁界発生装置が発生する体外磁界の変化に応じて移動及び/又は回動可能な磁界補助具と、前記磁界補助具に接続される固定クリップとを備え、
前記位置決めプローブは、前記体外磁界発生装置の磁界強度を検出する磁界センサであって、磁界抵抗効果に基づくセンサ又はホールセンサである磁界センサを備え、
前記駆動機構及び前記位置決めプローブは、何れも前記制御システムに直接的又は間接的に通信可能に接続されており、
前記位置決めプローブが予め切開された剥離すべき粘膜の中心に置かれた後、前記駆動機構が前記体外磁界発生装置の移動を駆動し、前記位置決めプローブで検出された磁界強度がピークに達したところで、前記体外磁界発生装置が移動しなくなるように構成されていることを特徴とする低侵襲手術支援装置。
【請求項2】
前記駆動機構は、制御システムによって制御されるモータ、モータによって駆動されることで前記体外磁界発生装置を移動及び/又は回動させる機械アームを備えることを特徴とする請求項1に記載の低侵襲手術支援装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互引用】
【0001】
本発明は、出願日が2018年11月27日であり、出願番号が201811423746.8であり、発明名称が「低侵襲手術支援装置及びその制御方法」である中国特許出願の優先権を主張し、当該中国特許出願の全ての内容が援用により本発明に組み入れられる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、低侵襲手術支援装置に関し、特に術野の拡大を支援可能な低侵襲手術支援装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0003】
低侵襲手術は、伝統的な外科手術モードを変える治療方式として、出血が少なく、傷口が小さく、臓器機能への影響が少なく、リハビリテーションが速く、術後合併症が少ない等の多くの長所を持ち、病院と医者の愛顧を得て、大量の外科手術において実質的な突破及び応用を取得している。低侵襲手術の長所がますます多く認められている一方、その欠陥もだんだん現れてきている。例えば、医者の学習時間が長くなり、操作精度がより高く要求され、伝統的な手術器械が需要を満たさなくなり、継続的な改良、引いては完全な革新が必要になる。しかし、これに関わる技術は、範囲が広いだけでなく、最先端の技術革新を融合させて、低侵襲手術に必要な特殊需要を満たさざるを得ない。
【0004】
内視鏡粘膜下剥離術(endoscopic submucosal dissection、ESD)は、胃腸の早期がんやがん前病変を治療するための内視鏡下治療技術であり、ESD治療により病変粘膜を完全に剥離することができる。医者の操作を容易にし、術後合併症を減少させるために、外部磁界を用いて術中で引っ張る方法は、注目され始める。磁柱をフレキシブルな接続線で止血クリップの一端に固定し、ESD粘膜の周囲を予め切開した後、止血クリップを粘膜の縁に挟持する。最後に外部磁界で磁柱を案内し、止血クリップを動かして粘膜層を引っ張って捲らせることにより、ESD手術をはっきりした視野で行わせ、操作の難易度を低減するようにする。
【0005】
剥離すべき粘膜は、消化管内の任意の空間位置にあり得るため、その法線が空間的に任意の向きを有する。内視鏡の画像フィードバックだけでは粘膜の具体的な空間位置情報が得られないため、外部磁性体が粘膜の捲を所望の方向に正確に制御することは、困難である。こうして、操作者は、粘膜に対する体内の磁柱の運動方向を観察するだけで試行錯誤を繰り返し、体外磁界方向を制御して粘膜捲を行うしかできない。しかし、このような操作方法は、難易度が高く、操作の繰り返し性が低く、時間が長く、安全性が低く、マグネトロン引張技術のESD臨床における普及及び応用に不利である。
【0006】
これに鑑みて、低侵襲手術支援装置及びその制御方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術に存在する問題について、低侵襲手術支援装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を果たすべく、本発明は、低侵襲手術支援装置を提供する。前記低侵襲手術支援装置は、体外装置と、体内装置と、位置決めプローブと、制御システムとを備え、前記体外装置は、回動磁界を与える体外磁界発生装置と、前記体外磁界発生装置の移動及び/又は回動を駆動する駆動機構とを備え、前記体内装置は、磁界補助具と、前記磁界補助具に接続される固定クリップとを備え、前記位置決めプローブは、前記体外磁界発生装置の磁界強度を検出する磁界センサを備え、前記駆動機構及び前記位置決めプローブは、何れも前記制御システムに直接的又は間接的に通信可能に接続されている。
【0009】
本発明の更なる改良として、前記駆動機構は、制御システムによって制御されるモータ、モータによって駆動されることで前記体外磁界発生装置を移動及び/又は回動させる機械アーム又は2自由度回転テーブルを備える。
【0010】
本発明の更なる改良として、前記磁界補助具は、第1ストッパ、第2ストッパ、並びに、前記第1ストッパと前記第2ストッパとの間に位置する少なくとも1つの磁界管及び接続線を備え、前記第1ストッパは、前記第1ストッパを貫通する第1スルーホールを有し、前記第2ストッパは、前記第2ストッパを貫通する第2スルーホールを有し、前記磁界管内には、第3スルーホールが開設され、前記接続線は、第1スルーホール、第3スルーホール、第2スルーホールを通ることにより、前記第1ストッパ、少なくとも1つの前記磁界管、第2ストッパを接続する。
【0011】
本発明の更なる改良として、前記磁界センサは、磁界抵抗効果に基づく磁界センサ、又はホールセンサである。
【0012】
本発明の更なる改良として、前記体外装置及び前記位置決めプローブは、前記位置決めプローブが、予め切開された剥離すべき粘膜の中心に置かれた後、駆動機構が前記体外磁界発生装置の移動を駆動し、位置決めプローブで検出された磁界強度がピークに達したときに、体外磁界発生装置が現在位置に止まって移動しなくなるように構成される。
【0013】
本発明の更なる改良として、前記体外装置及び前記体内装置は、
体内装置が剥離すべき粘膜の縁に置かれ、前記固定クリップが剥離すべき粘膜を挟持し、且つ体外磁界発生装置が体外磁界を発生した後、制御システムがデフォルトの軌跡生成器に基づいて体外磁界ダイポールの2つの回転自由度を定義し、駆動機構が体外磁界発生装置を駆動することで体外磁界ダイポールを上記2つの回転自由度の組み合わせで回転させ、前記磁界補助具が前記体外磁界発生装置の回動とともに対応する移動及び/又は回動を行うように構成される。
【0014】
本発明の更なる改良として、前記体外装置及び前記体内装置は、
駆動機構が体外磁界発生装置の回動を駆動することにより、前記磁界補助具が前記体外磁界発生装置の回動とともに対応する移動及び/又は回動を行いながら、前記磁界補助具の位置を剥離すべき粘膜に沿った位置P1'に調整し、制御システムを介してこのときの体外磁界ダイポールの位置を第1位置P1として記録し、
駆動機構が体外磁界発生装置の回動を駆動することにより、前記磁界補助具が前記体外磁界発生装置の回動とともに対応する移動及び/又は回動を行いながら、前記磁界補助具の位置を剥離すべき粘膜に沿った別の位置P2'に調整し、制御システムを介してこのときの体外磁界ダイポールの位置を第2位置P2として記録し、第1位置P1と第2位置P2とが平面Sを形成し、2つの位置P1'及びP2'が平面S'を形成し、
制御システムが、体外磁界ダイポールの回動の2つの回転自由度について、それぞれ、第1'回転自由度を平面S内での回動、第2'回転自由度を平面Sの法線ベクトルと第2位置P2とを2つのベクトルの乗算で計算した回転軸の周りに回転することとして定義し、
駆動機構が体外磁界ダイポールを駆動して第1'回転自由度で回転させると、前記磁界補助具が粘膜の平面S'内を回転し、磁界補助具が粘膜平面S'の中心又は他の捲初期位置に調整され、
駆動機構が体外磁界ダイポールを駆動して第2'回転自由度で回転させると、磁界補助具が剥離すべき粘膜を捲り始めるように構成される。
【0015】
本発明の更なる改良として、前記デフォルトの軌跡生成器は、
制御システム内で体外磁界ダイポールのキャリア座標系O-XYZを確立し、キャリア座標系における体外磁界ダイポールの回動の2つの回転自由度を、それぞれ、X軸回りに回転すること、Z軸回りに回転することとして定義し、体外磁界ダイポールの方向は、Y軸方向とし、X軸、Z軸は、それぞれY軸に垂直な平面内で選択された座標軸であり、X軸、Y軸及びZ軸は、右手の法則に従う。
【0016】
本発明の更なる改良として、前記制御システムは、体外磁界ダイポールが上記2つの回転自由度の組み合わせで回転し、且つ制御システムが体外磁界ダイポールの第1位置P1及び第2位置P2を記録した後、制御システムが第1位置P1及び第2位置P2に基づいて体外磁界ダイポールのキャリア座標系を更新し、制御システムが粘膜捲運転状態に入るように構成される。
【0017】
本発明の更なる改良として、前記体外装置及び前記体内装置は、
体内装置が剥離すべき粘膜の縁に置かれ、前記固定クリップが剥離すべき粘膜を挟持し、且つ体外磁界発生装置が体外磁界を発生した後、
制御システム内で体外磁界ダイポールのキャリア座標系O-XYZを確立し、キャリア座標系における体外磁界ダイポールの回動の2つの回転自由度を、それぞれ、X軸回りに回転すること、Z軸回りに回転することとして定義し、体外磁界ダイポールの方向がY軸方向とされ、X軸、Z軸がそれぞれY軸に垂直な平面内で選択された座標軸であり、X軸、Y軸及びZ軸が右手の法則に従い、
駆動機構が体外磁界発生装置を駆動することで体外磁界ダイポールを上記2つの回転自由度の組み合わせで回転させ、前記磁界補助具が前記体外磁界発生装置の回動とともに対応する移動及び/又は回動を行いながら、前記磁界補助具を剥離すべき粘膜にに沿った位置P1'に調整し、制御システムを介してこのときの体外磁界ダイポールの位置を第1位置P1として記録し、
駆動機構が体外磁界発生装置を駆動することで体外磁界ダイポールを上記2つの回転自由度の組み合わせで回転させ、前記磁界補助具が前記体外磁界発生装置の回動とともに対応する移動及び/又は回動を行いながら、前記磁界補助具を剥離すべき粘膜にに沿った別の位置P2'に調整し、制御システムを介してこのときの体外磁界ダイポールの位置を第2位置P2として記録し、第1位置P1と第2位置P2とが平面Sを形成し、2つの位置P1'P2'が平面S'を形成し、
制御システムが第1位置P1及び第2位置P2に基づいて、P2をY軸とし、Z=P2×P1を座標系のZ軸とし、X軸を右手の法則で特定するように、体外磁界ダイポールのキャリア座標系を更新し、制御システムが、更新されたキャリア座標系における体外磁界ダイポールの回動の2つの回転自由度について、それぞれ、第1'回転自由度を新規キャリア座標系のZ軸周りに回転すること、第2'回転自由度を平面Sの法線ベクトルと第2位置P2とを2つのベクトルの乗算で計算した回転軸の周りに回転することとして定義し、
駆動機構が体外磁界ダイポールを駆動して平面S内を第1'回転自由度で回転させると、前記磁界補助具が粘膜の平面S'内を回転し、磁界補助具が粘膜平面S'の中心又は他の捲初期位置に調整され、
駆動機構が体外磁界ダイポールを駆動して第2'回転自由度で回転させると、磁界補助具が剥離すべき粘膜を捲り始めるように構成される。
【0018】
本発明の更なる改良として、体外磁界ダイポールが上記2つの回転自由度の組み合わせで回転することは、a)現在のz0軸周りに第1回転自由度φ0で回転した後でo-x0'y0'z0になり、体外磁界ダイポールが位置oy0'に到達することと、b)現在のx0'軸周りに第2回転自由度θ0で回転した後でo-x0'y1z1になり、体外磁界ダイポールが位置oy1に到達することと、c)現在のz1軸周りに第1回転自由度φ1で回転した後でo-x1y1'z1になり、体外磁界ダイポールが位置oy1'に到達することと、を含む。
【0019】
本発明の更なる改良として、駆動機構が体外磁界発生装置を駆動することで体外磁界ダイポールを2つの回転自由度で回転させる駆動方式は、体外磁界ダイポールの回転前の位置をoyとし、体外磁界ダイポールのキャリア座標系をo-xyzとして確立することと、駆動機構の基準座標系をO-XYZとして確立することと、体外磁界ダイポールの2つの回転自由度のうちの何れか1つでの回転の前後の位置変化に基づいて、体外磁界発生装置の球座標における体外磁界ダイポールの回転前後の角度成分を算出し、駆動機構が当該角度成分に基づいて体外磁界発生装置の回動角度を特定して当該回動角度に基づいて体外磁界発生装置の回動を駆動することと、を含む。
【0020】
上記発明目的を果たすべく、本発明の参考例は、低侵襲手術支援装置の制御方法を更に提供する。当該制御方法は、ステップS1~S6を含み、
ステップS1では、前記位置決めプローブが、予め切開された剥離すべき粘膜の中心に置かれた後、駆動機構が前記体外磁界発生装置の移動を駆動し、位置決めプローブで検出された磁界強度がピークに達したときに、体外磁界発生装置が現在位置に止まって移動しなくなり、
ステップS2では、体内装置が剥離すべき粘膜の縁に置かれ、前記固定クリップが剥離すべき粘膜を挟持し、且つ体外磁界発生装置が体外磁界を発生した後、制御システム内で体外磁界ダイポールのキャリア座標系O-XYZを確立し、キャリア座標系における体外磁界ダイポールの回動の2つの回転自由度を、それぞれ、X軸周りに回転することと、Z軸周りに回転することとして定義し、体外磁界ダイポールの方向がY軸方向とされ、X軸、Z軸がそれぞれY軸に垂直な平面内で選択された座標軸であり、X軸、Y軸及びZ軸が右手の法則に従い、
ステップS3では、駆動機構が体外磁界発生装置を駆動することで体外磁界ダイポールを上記2つの回転自由度の組み合わせで回転させ、前記磁界補助具が前記体外磁界発生装置の回動とともに対応する移動及び/又は回動を行いながら、前記磁界補助具を剥離すべき粘膜に沿った位置P1'に調整し、制御システムを介してこのときの体外磁界ダイポールの位置を第1位置P1として記録し、
駆動機構が体外磁界発生装置を駆動することで体外磁界ダイポールを上記2つの回転自由度の組み合わせで回転させ、前記磁界補助具が前記体外磁界発生装置の回動とともに対応する移動及び/又は回動を行いながら、前記磁界補助具を剥離すべき粘膜に沿った別の位置P2'に調整し、制御システムを介してこのときの体外磁界ダイポールの位置を第2位置P2として記録し、第1位置P1と第2位置P2とが平面Sを形成し、2つの位置P1'P2'が平面S'を形成し、
ステップS4では、制御システムが第1位置P1及び第2位置P2に基づいて、P2をY軸とし、Z=P2×P1を座標系のZ軸とし、X軸を右手の法則で特定するように、体外磁界ダイポールのキャリア座標系を更新し、制御システムが、更新されたキャリア座標系における体外磁界ダイポールの回動の2つの回転自由度について、それぞれ、第1'回転自由度を新規キャリア座標系のZ軸周りに回転すること、第2'回転自由度を平面Sの法線ベクトルと第2位置P2とを2つのベクトルの乗算で計算した回転軸の周りに回転することとして定義し、
ステップS5では、駆動機構が体外磁界ダイポールを駆動して平面S内を第1'回転自由度で回転させると、前記磁界補助具が粘膜の平面S'内を回転し、磁界補助具が粘膜平面S'の中心又は他の捲初期位置に調整され、
ステップS6では、駆動機構が体外磁界ダイポールを駆動して第2'回転自由度で回転させると、磁界補助具が剥離すべき粘膜を捲り始める。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、以下の有利な作用効果を奏する。本発明の低侵襲手術支援装置では、位置決めプローブを介して、体外磁界発生装置で発生された磁界のピークを検出し、体外磁界発生装置の位置を位置決めすることにより、体外磁界発生装置と剥離すべき粘膜とを同一の鉛直線に位置させて、後の捲操作が最大のねじり力を有することを保証し、且つ制御システムを介して体外装置による体内装置の移動及び/又は回動を正確に制御することを実現し、体内装置の剥離すべき粘膜に対する捲操作がESD手術へ利便性を与える。
【0022】
また、本発明の低侵襲手術支援装置の制御方法では、任意の空間向きの剥離すべき粘膜についても、粘膜捲角度の制御が容易であり、操作の繰り返し性が高く、速度が速く、安全且つ信頼できるという効果を奏することができ、また、磁界補助具が粘膜を適切な角度まで捲るように有効的に制御可能であり、新たな粘膜下層組織を露出させ、後で電気ナイフを用いて引き続き粘膜を切除、剥離することを便利にさせる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の位置決め装置と体外装置とが協働して体外磁界発生装置を位置決めする模式図である。
図2】本発明の体外磁界ダイポールの2つの回転自由度の模式図である。
図3】本発明においてそれぞれ体外磁界ダイポールを制御して2つの回転自由度の組み合わせで回転させることで磁性補助具を剥離すべき粘膜の表面に沿った状態にする模式図である。
図4】体外磁界ダイポールが第1'回転自由度で回転することで磁界補助具を剥離すべき粘膜の中心位置に案内して捲の始点とし、体外磁界ダイポールが第2'回転自由度で回転することで磁界補助具を制御して剥離すべき粘膜を捲らせる模式図である。
図5】剥離すべき粘膜の反転中に、磁界補助具にスキューが発生した後、体外磁界ダイポールを第1'回転自由度で回転させることで磁界補助具を調整して引っ張り方向を調整する模式図である。
図6】2自由度回転テーブル実体外磁界ダイポールを用いて空間の任意軸周りに回転する原理模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、図面に示す各実施形態を組み合わせて本発明を詳細に記述する。しかし、これらの実施形態は、本発明を制限せず、当業者がこれらの実施形態に基づいてなした構造や機能上の変換は、何れも本発明の保護範囲内に含まれる。
【0025】
本発明において、前記体内剥離すべき粘膜Mは、人体や動物等の胃腸管の粘膜、インビトロ組織の胃腸管粘膜、消化管モデルに対応する胃腸管粘膜等、又はシミュレーションの胃腸管粘膜等であってもよい。
【0026】
図1図6に示すように、本発明は、病巣を引っ張るための低侵襲手術支援装置を提供し、当該低侵襲手術支援装置は、使用時において体内に位置して剥離すべき粘膜Mを引っ張るための体内装置1と、体外に位置して前記体内装置1の移動及び/又は回動を制御する体外装置2と、前記体外装置2と協働して体外装置2の位置決めを支援する位置決めプローブ3と、制御システム(図示せず)とを備える。前記剥離すべき粘膜Mは、動物インビトロ組織の粘膜又はシミュレーション医療モデル上の粘膜等であってもよい。
【0027】
前記体外装置2は、均一な磁界を与える体外磁界発生装置21と、前記体外磁界発生装置21の移動及び/又は回動を駆動する駆動機構22とを備える。均一な磁界は、均一な磁界、略均一な磁界、部分的な空間の磁界が均一な磁界であると理解され得る。本発明において、前記体外磁界発生装置21は、円球形の永久磁性体、ヘルムホルツコイル、又は柱形永久磁性体であってもよく、前記体外磁界発生装置21は、人又は機械設備を介してその移動及び回動を制御することにより、任意方向の均一な回転磁界を発生可能である。体外磁界発生装置21の移動及び回動方向を便利に記述するために、体外磁界発生装置21は、体外磁界が発生したときに、体外磁界ダイポールと呼ばれる。
【0028】
その中の1つの実施例において、前記駆動機構22は、制御システムによって制御されるモータ(図示せず)と、モータによって駆動されて前記体外磁界発生装置21の3~10軸を移動及び/又は回動で連動させる機械アーム又は2自由度回転テーブルとを備える。前記制御システムは、ヒューマンインタフェイスを介して命令を受け取り、モータを介して前記機械アームの動作を制御することにより、空間内における前記体外磁界発生装置21の3次元の移動及び/又は回動を制御する。
【0029】
前記3~10軸が連動する機械アームとは、体外磁界発生装置21を固定可能であるとともに、体外磁界発生装置21の体外空間内での3次元の移動及び/又は回動を駆動可能である如何なる機械機器を指し、その具体的な構造について限定しない。体外装置2が如何にして駆動機構を介して体外磁界発生装置21の空間内での3次元の移動及び/又は2次元の回動を制御するかについては、第201310136094.0号の中国専利を参照可能である。
【0030】
前記体内装置1は、磁界補助具11と、前記磁界補助具11に接続される固定クリップ12とを備え、当該固定クリップ12は、前記磁界補助具11を引っ張るべき粘膜に固定する。前記磁界補助具11は、固定クリップ12に固定され、且つ固定クリップ12が引っ張るべき病巣に固定された後、前記磁界補助具11は、前記体外磁界発生装置21の磁界の方向が変化したときに、対応する移動及び/又は回動を行い、更に病巣を制御された速度で移動させ、及び/又は制御された角度で回動させて体内装置1に巻き付けることにより、ESD手術において術野を拡大する。
【0031】
前記固定クリップ12は、通常、医用止血クリップ、止血クランプ、チタンクリップ等であり、何れもクランプ状を呈して挟持方式で病巣等を挟持し、且つ材料が一般的に医用材料、例えば純チタン又はチタン合金である。
【0032】
前記磁界補助具11の構造及び形状は、限定されず、体外磁界が変化したときに移動及び/又は回動ができればよい。好ましくは、前記磁界補助具11は、柱状を呈し、その移動及び/又は回動に対する制御を便利にする。本実施例において、前記磁界補助具11は、第1ストッパ、第2ストッパ、前記第1ストッパと前記第2ストッパの間に位置する少なくとも1つの磁界管、及び、前記第1ストッパと前記少なくとも1つの磁界管と前記第2ストッパとを接続する接続線とを備える。具体的に、前記第1ストッパは、前記第1ストッパを貫通する第1スルーホールを有し、前記第2ストッパは、前記第2ストッパを貫通する第2スルーホールを有し、前記磁界管内には、第3スルーホールが開設され、前記接続線は、第1スルーホール、第3スルーホール、第2スルーホールを通って前記第1ストッパ、少なくとも1つの前記磁界管及び第2ストッパを接続する。前記第1ストッパ及び第2ストッパは、プラスチック、ステンレス又は磁石等材料によって作製されてもよい。
【0033】
ただし、前記磁界管は、前記磁界補助具11の機能部品であり、材料は、フェライト、ネオジム鉄ホウ素、サマリウムコバルト又はアルミニウムニッケルコバルト等の永久磁界材料であってもよい。また、前記磁界管の表面には、バイオ互換性薄膜がメッキされてもよく、前記バイオ互換性薄膜は、チタン、窒化チタン、酸化チタン、ニッケル、酸化ニッケル、パイレーン又はフッ化物等であり、フッ化物は、テフロンであることが好ましい。
【0034】
当業者であれば理解できるように、「少なくとも1つの磁界管」は、1つの磁界管であってもよく、手術空間の狭い場合に適用する。前記少なくとも1つの磁界管の総サイズ及び体外装置2から与えられた磁力が同じである場合に、1つのみの磁界管を設ける場合の捲れモーメントは、複数の磁界管の捲れモーメントよりも大きい。「少なくとも1つの磁界管」は、複数の磁界管であってもよい。複数の磁界管が組み合わせられて比較的に大きな磁性体とするのは、内視鏡の鏡体が大きく湾曲した場合にも磁界補助具11が依然として鉗子チャネルをスムーズに通過可能であることを保証可能にし、ESD手術の臨床の操作需要を満たさせる。前記磁界管の数は、引っ張るべき病巣の大きさに依存し、病巣が大きいほど、前記磁界管の数が多くなり、逆も同様である。前記磁界管の分極方向は、軸方向分極であり、このときの全ての磁界管の分極方向は、同じである。無論、前記磁界管の分極方向は、径方向分極であってもよく、このときの前記磁界補助具11は、奇数個の磁界管が前記接続線の通しで磁力作用によって前後に接続されてなるものであり、隣接する2つの磁界管の分極方向は、逆である。
【0035】
前記第1ストッパ、前記第2ストッパ及び前記接続線は、少なくとも1つの前記磁界管を1つの磁界的な全体として接続する。前記接続線は、ナイロン線、ポリプロピレン(プロニン)等の医用縫合線を採用可能であるが、それらに限定されない。また、前記接続線の一端は、連結点や直径が調整可能な環等の形態を採用し、前記固定クリップ12に固定可能であり、その具体的な固定方法は、第201510661964.5号の中国専利出願を参照可能である。
【0036】
前記位置決めプローブ3は、前記体外磁界発生装置21の磁界強度を検出する磁界センサを備え、前記磁界センサは、磁界抵抗効果に基づく磁界センサであってもよく、ホールセンサであってもよい。ホールセンサを例として、前記位置決めプローブ3の使用方法を説明する。図1に示すように、位置決めプローブ3を予め切開された粘膜の中心に置き、前記体外磁界発生装置21で発生された磁界強度がピークに至ったとホールセンサで検出されるまで駆動機構22によって前記体外磁界発生装置21を移動させるときに、前記体外磁界発生装置21は、移動しなくなる。前記位置決めプローブ3で前記体外磁界発生装置21の位置を位置決めすると、前記体外磁界発生装置21が後の操作で体内磁界発生装置に対する制御において最大ねじり力に達することは保証可能であるとともに、前記体内装置1と協働して任意空間ポーズの粘膜に対して磁界制御による引っ張りを行うことができ、引っ張り角度が制御されやすく、操作の繰り返し性が高く、速度が速く、安全且つ信頼的である。
【0037】
前記駆動機構22、前記位置決めプローブ3は、何れも前記制御システムに直接的又は間接的に通信可能に接続されることにより、信号の伝送を図る。その中の1つの間接的な通信方式は、ヒューマンインタフェイスを介して制御システムへ信号を供給することである。
【0038】
前記低侵襲手術支援装置は、前記位置決めプローブ3、前記体内装置1を体内へ輸送することをサポートする支持パイプを更に備える。使用時に、前記位置決めプローブ3、前記体外装置2は、支持パイプを経由して剥離すべき粘膜に進入する。
【0039】
ただし、前記体外装置2及び前記位置決めプローブ3は、図1に示すように、前記位置決めプローブ3が、予め切開された剥離すべき粘膜M中心に置かれた後、駆動機構22が前記体外磁界発生装置21の移動を駆動し、位置決めプローブ3で検出された磁界強度がピークに達したときに、体外磁界発生装置21が現在位置に止まって移動しなくなるように構成される。駆動機構22の体外磁界発生装置21に対する制御は、位置決めプローブ3で検出された磁界強度がピークに達するまで、制御システムがモータの起動を制御し、モータが機械アームを駆動して前記体外磁界発生装置21の移動を連動させることである。
【0040】
具体的には、粘膜の周囲を予め切開した後、支持パイプを介して前記位置決めプローブ3を病巣部位に当てて、周囲が予め切開された剥離すべき粘膜Mの中心に当接させ、前記位置決めプローブ3を移動しないままとし、ヒューマンインタフェイスを介して制御システムへ命令を送信して制御システムにモータの起動を制御させることにより、機械アームが前記体外磁界発生装置21の移動を駆動するようにし、位置決めプローブ3で検出された磁界強度がピークに達したときに、体外磁界発生装置21が移動を止め、このときの体外磁界発生装置21と剥離すべき粘膜とが同一の鉛直線に位置して、後の捲操作について最大のねじり力を有することを保証し、前記体外磁界発生装置21の位置決めが完了された後、前記支持パイプを介して前記位置決めプローブ3を取り出してもよい。
【0041】
前記体外装置2及び前記体内装置1は、図2に示すように、体内装置1が剥離すべき粘膜Mの縁に置かれ、前記固定クリップ12が剥離すべき粘膜Mを挟持し、且つ体外磁界発生装置21が体外磁界を発生した後、制御システムがデフォルトの軌跡生成器に基づいて体外磁界ダイポールの2つの回転自由度を定義し、駆動機構22が体外磁界発生装置21を駆動することで体外磁界ダイポールを上記2つの回転自由度の組み合わせで回転させ、前記磁界補助具11が前記体外磁界発生装置21の回動とともに対応する移動及び/又は回動を行うように構成される。
【0042】
前記デフォルトの軌跡生成器は、制御システム内で体外磁界ダイポールのキャリア座標系O-XYZを確立し、体外磁界ダイポールの方向をY軸方向とし、X軸、Z軸をそれぞれY軸に垂直な平面内で選択された座標軸とし、X軸、Y軸及びZ軸は、右手の法則に従い、キャリア座標系における体外磁界ダイポールの回動の2つの回転自由度は、それぞれX軸周りに回転すること、Z軸周りに回転することとして定義される。当業者であれば理解できるように、体外磁界ダイポールが球面における何の種類の姿勢であっても、体外磁界ダイポールの方向は、常にキャリア座標系におけるY軸に重なり合い、デフォルトの軌跡生成器に基づいて定義された体外磁界ダイポールの2つの回転自由度は、それぞれX軸周りに回転すること、Z軸周りに回転することであり、即ち、体外磁界ダイポールが異なる姿勢であるときに、そのキャリア座標系は、その具体的な姿勢に応じて対応する調整を行う。
【0043】
図3に示すように、駆動機構22が体外磁界発生装置21を駆動することで体外磁界ダイポールを上記2つの回転自由度の組み合わせで回転させ、前記磁界補助具11が前記体外磁界発生装置21の回動とともに、対応する移動及び/又は回動を行いながら、内視鏡による画像を参照して前記磁界補助具11を剥離すべき粘膜Mに沿った位置P1'に調整し、制御システムを介してこのときの体外磁界ダイポールの位置を第1位置P1として記録する。
【0044】
体外磁界発生装置21を駆動することで体外磁界ダイポールを上記2つの回転自由度の組み合わせで回転させ、前記磁界補助具11が前記体外磁界発生装置21の回動とともに、対応する移動及び/又は回動を行いながら、内視鏡による画像を参照して前記磁界補助具11を剥離すべき粘膜Mに沿った別の位置P2'に調整し、制御システムを介してこのときの体外磁界ダイポールの位置を第2位置P2として記録する。
【0045】
ただし、「体外磁界ダイポールを上記2つの回転自由度の組み合わせで回転させる」は、具体的に図2を参照可能であり、第1回転自由度がZ軸周りに回転することであり、第2回転自由度がX軸周りに回転することであることを例とし、図2を参照して体外磁界ダイポールを上記2つの回転自由度の組み合わせで回転させる回転方式を説明する。
【0046】
a)現在のz0軸周りにφ0回転した後でo-x0'y0'z0(第1回転自由度で回転)になり、体外磁界ダイポールが位置oy0'に到達し、b)現在のx0'軸周りにθ0回転した後でo-x0'y1z1(第2回転自由度で回転)になり、体外磁界ダイポールが位置o y1に到達し、c)現在のz1軸周りにφ1回転した後でo-x1y1'z1(第1回転自由度で回転)になり、体外磁界ダイポールが位置o y1'に到達する。
【0047】
図3図5に示すように、体外磁界ダイポールが上記2つの回転自由度の組み合わせで回転し、且つ制御システムが体外磁界ダイポールの第1位置P1及び第2位置P2を記録した後、制御システムが第1位置P1及び第2位置P2に基づいて体外磁界ダイポールのキャリア座標系を更新し、制御システムが粘膜捲運転状態に入る。、即ち、磁界補助具が、更新されたキャリア座標系に基づいて捲り始める。ヒューマンインタフェイスを介して制御システムへ命令を送信すると、制御システムは、P2をY軸とし、Z=P2×P1を座標系のZ軸とし、X軸を右手の法則で特定するように、体外磁界ダイポールのキャリア座標系を更新する。
【0048】
更新されたキャリア座標系に基づいて体外磁界ダイポールの2つの回転自由度を下記のようにそれぞれ定義する。第1'回転自由度は、新規キャリア座標系のZ軸周りに回転することである。即ち、体外磁界ダイポールが、第1位置P1と第2位置P2とで形成された平面S内を回転する。それじて、前記磁界補助具11が、剥離すべき粘膜Mの2つの位置P1'とP2'とで形成された平面S'内を回転する。第2'回転自由度は、平面Sの法線ベクトルと第2位置P2とを2つのベクトルの乗算で計算した回転軸の周りに回転することである。
【0049】
ただし、体外磁界ダイポールが第1'回転自由度で回転するときに平面S内を回転する。それじて、前記磁界補助具11が粘膜の平面S'内を回転することは、以下の原理で保証される。ただし、Ωは、体外磁界ダイポールの回転方向であり、ωは、磁界補助具11の回転方向であり、Hは、方位行列である。体外磁界発生装置21と磁界補助具11との相対空間位置が変化せず、Hが定数であるため、体外磁界ダイポールがある平面内を回転するときに、磁界補助具11は、対応する平面内を回転する。
【0050】
図4に示すように、制御システムは、駆動機構が体外磁界ダイポールを駆動して平面S内を第1'回転自由度で回転させるように制御する。それじて、前記磁界補助具11は、粘膜の平面S'内を回転する。内視鏡による画像を参照し、次の捲操作の初期位置として、磁界補助具11は、粘膜平面S'の中心又はESD外科医者によって思われる一層適切な捲初期位置に調整される。
【0051】
制御システムは、体外磁界ダイポールが新規キャリア座標系のX軸周りに回転するように、駆動機構が体外磁界ダイポールを駆動して第2'回転自由度で回転させるように制御する。それじて、磁界補助具11は、剥離すべき粘膜を捲り始める。剥離すべき粘膜は、体内装置1に巻き付け始めされ、内視鏡による画像を参照し、磁界補助具11が適切な角度で捲るように制御して、粘膜下層組織を露出させる。これにより、外科医者が電気ナイフを用いて粘膜を切除、剥離し始めることを便利にする。
【0052】
詳細は、図5に示されたように、捲り中に、磁界補助具11と粘膜と、又は磁界補助具11とアンカーポイントとのスライドによって引き起こされたスキューが磁界補助具11に発生した場合に、スキューの後、第1'回転自由度で回転することで、磁界補助具11の引っ張り方向の調整を実現可能であり、調整後、再び新たな引っ張り方向で第2'回転自由度で回転することにより、粘膜を捲る。
【0053】
外科医者の手術の需要に応じて、第1'回転自由度で回転することを選択することで磁界補助具11の引っ張り方向の調整を実現可能である。第2'回転自由度で回転して粘膜の捲の度合いを制御することにより、任意の空間向きの剥離すべき粘膜Mについても、粘膜捲角度が制御されやすく、操作の繰り返し性が高く、速度が速く、安全且つ信頼できるという効果を奏することができるとともに、磁界補助具11が粘膜を適切な角度まで捲ることを有効的に制御可能であり、新たな粘膜下層組織を露出させ、後で電気ナイフを用いて引き続き粘膜を切除、剥離することを便利にする。
【0054】
また、第1'回転自由度及び第2'回転自由度の回転軸が体外磁界ダイポールの運動中に任意のベクトルであるため、体外磁界ダイポールが体外磁界発生装置21の所属する球面において任意の軸周りに回転可能であることを実現する必要はある。
【0055】
駆動機構22が体外磁界発生装置21を駆動することで体外磁界ダイポールを2つの回転自由度で回転させる駆動方式は、体外磁界ダイポールの回転前の位置をoyとし、体外磁界ダイポールのキャリア座標系をo-xyzとして確立することと、駆動機構22の基準座標系をO-XYZとして確立することと、体外磁界ダイポールの2つの回転自由度のうちの何れか1つでの回転の前後の位置変化に基づいて、体外磁界発生装置の球座標における体外磁界ダイポールの回転前後の角度成分を算出し、駆動機構22が当該角度成分に基づいて体外磁界発生装置21の回動角度を特定して当該回動角度に基づいて体外磁界発生装置21の回動を駆動することと、を含む。
【0056】
本実施例において、図6に示すように、2自由度回転テーブルで体外磁界ダイポールが空間の任意の軸周りに回転することを実現することを例とし、その仕組みは、下記のようになる。
【0057】
体外磁界ダイポールの現在位置はoyであり、体外磁界ダイポールのキャリア座標系はo-xyzであり、2自由度回転テーブルの基準座標系はO-XYZであり、第1'回転自由度はキャリア座標系におけるz軸周りに回動すること(-Rotz)であり、第2'回転自由度はキャリア座標系におけるx軸周りに回動すること(-Rotx)である。制御システムへ命令を配信してRotzを行う回転角度は、A=<oy, oy'>を満たす。即ち、体外磁界ダイポールは、位置が球面におけるoy'位置であるy'(a, b, c)であることが望ましい計算により、oy'球座標での角度成分(θ、φ)、即ち、2自由度回転テーブルのAxis1とAxis2角度位置量を得る。キャリア座標系のx軸周りに第2'回転自由度で回転する場合は、上記算出方法に一致するため、ここでは繰り返し説明しない。
【0058】
本発明は、上記低侵襲手術支援装置の制御方法を更に提供する。当該方法は、ステップS1~S6を含む。
【0059】
ステップS1では、前記位置決めプローブ3が、予め切開された剥離すべき粘膜Mの中心に置かれた後、駆動機構22が前記体外磁界発生装置21の移動を駆動し、位置決めプローブ3で検出された磁界強度がピークに達したときに、体外磁界発生装置21が現在位置に止まって移動しなくなる。
【0060】
ステップS2では、体内装置1が剥離すべき粘膜Mの縁に置かれ、前記固定クリップ12が剥離すべき粘膜Mを挟持し、且つ体外磁界発生装置21が体外磁界を発生した後、制御システム内で体外磁界ダイポールのキャリア座標系O-XYZを確立し、キャリア座標系における体外磁界ダイポールの回動の2つの回転自由度を、それぞれ、X軸周りに回転することと、Z軸周りに回転することとして定義し、体外磁界ダイポールの方向がY軸方向とされ、X軸、Z軸がそれぞれY軸に垂直な平面内で選択された座標軸であり、X軸、Y軸及びZ軸が右手の法則に従う。
【0061】
ステップS3では、駆動機構22が体外磁界発生装置21を駆動することで体外磁界ダイポールを上記2つの回転自由度の組み合わせで回転させ、前記磁界補助具11が前記体外磁界発生装置21の回動とともに対応する移動及び/又は回動を行いながら、前記磁界補助具11を剥離すべき粘膜Mに沿った位置P1'に調整し、制御システムを介してこのときの体外磁界ダイポールの位置を第1位置P1として記録し、
駆動機構22が体外磁界発生装置21を駆動することで体外磁界ダイポールを上記2つの回転自由度の組み合わせで回転させ、前記磁界補助具11が前記体外磁界発生装置21の回動とともに対応する移動及び/又は回動を行いながら、前記磁界補助具11を剥離すべき粘膜Mに沿った別の位置P2'に調整し、制御システムを介してこのときの体外磁界ダイポールの位置を第2位置P2として記録し、第1位置P1と第2位置P2とが平面Sを形成し、2つの位置P1'P2'が平面S'を形成する。
【0062】
ステップS4では、制御システムが第1位置P1及び第2位置P2に基づいて、P2をY軸とし、Z=P2×P1を座標系のZ軸とし、X軸を右手の法則で特定するように、体外磁界ダイポールのキャリア座標系を更新し、制御システムが、更新されたキャリア座標系における体外磁界ダイポールの回動の2つの回転自由度について、それぞれ、第1'回転自由度を新規キャリア座標系のZ軸周りに回転すること、第2'回転自由度を平面Sの法線ベクトルと第2位置P2とを2つのベクトルの乗算で計算した回転軸の周りに回転することとして定義する。
【0063】
ステップS5では、制御システムは、駆動機構が体外磁界ダイポールを駆動して平面S内を第1'回転自由度で回転させるように制御する。それじて、前記磁界補助具11は、粘膜の平面S'内を回転し、磁界補助具11は、粘膜平面S'の中心又は他の捲初期位置に調整される。
【0064】
ステップS6では、制御システムは、駆動機構が体外磁界ダイポールを駆動して第2'回転自由度で回転させるように制御する。それじて、磁界補助具11は、剥離すべき粘膜を捲り始める。
【0065】
ただし、駆動機構22が体外磁界発生装置21を駆動することで体外磁界ダイポールを2つの回転自由度で回転させる駆動方式は、体外磁界ダイポールの回転前の位置をoyとし、体外磁界ダイポールのキャリア座標系をo-xyzとして確立することと、駆動機構22の基準座標系をO-XYZとして確立することと、体外磁界ダイポールの2つの回転自由度のうちの何れか1つでの回転の前後の位置変化に基づいて、体外磁界発生装置の球座標における体外磁界ダイポールの回転前後の角度成分を算出し、駆動機構22が当該角度成分に基づいて体外磁界発生装置21の回動角度を特定して当該回動角度に基づいて体外磁界発生装置21の回動を駆動するようにすることとを含む。
【0066】
また、低侵襲手術支援装置における他の具体的なステップは、何れも低侵襲手術支援装置の制御方法に適用可能であり、ここでは繰り返し説明しない。
【0067】
このように、本発明の低侵襲手術支援装置では、位置決めプローブ3を介して、体外磁界発生装置21で発生された磁界のピークを検出し、体外磁界発生装置の位置を位置決めすることにより、体外磁界発生装置21と剥離すべき粘膜とを同一の鉛直線に位置させて、後の捲操作が最大のねじり力を有することを保証し、且つ制御システムを介して体外装置2による体内装置1の移動及び/又は回動を正確に制御することを実現し、体内装置1の剥離すべき粘膜に対する捲操作がESD手術へ利便性を与える。
【0068】
また、本発明の低侵襲手術支援装置の制御方法では、任意の空間向きの剥離すべき粘膜Mについても、粘膜捲角度の制御が容易であり、操作の繰り返し性が高く、速度が速く、安全且つ信頼できるという効果を奏することができ、また、磁界補助具11が粘膜を適切な角度まで捲るように有効的に制御可能であり、新たな粘膜下層組織を露出させ、後で電気ナイフを用いて引き続き粘膜を切除、剥離することを便利にさせる。
【0069】
理解できるように、本明細書において実施形態に沿って記述を行ったが、各実施形態が1つのみの独立する技術案を含むとは限らず、明細書のこのような記述方式が単に明瞭にするためのものであり、当業者が明細書を1つの全体とすべきであり、各実施形態における技術案も適宜組み合わせられて、当業者で理解され得る他の実施形態を形成可能である。
【0070】
上述した一連の詳細な説明は、単に本発明の実行可能な実施形態に対する具体的な説明であり、本発明の保護範囲を制限するためのものではなく、本発明の要旨・精神から逸脱せずになされた均等な実施形態又は変更は、何れも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6