(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】焦げ付き防止コーティング
(51)【国際特許分類】
C09D 127/18 20060101AFI20241021BHJP
C09D 127/20 20060101ALI20241021BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20241021BHJP
A47J 37/10 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
C09D127/18
C09D127/20
C09D7/61
A47J37/10
(21)【出願番号】P 2021539861
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2019086568
(87)【国際公開番号】W WO2020144051
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-12-07
(32)【優先日】2019-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594034072
【氏名又は名称】セブ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロメイン ベスナール
(72)【発明者】
【氏名】オーレリアン デュバンシェ
(72)【発明者】
【氏名】ローラン カイリエ
【審査官】河村 明希乃
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/133010(WO,A1)
【文献】特開2015-127142(JP,A)
【文献】特開2004-050772(JP,A)
【文献】特開2011-116075(JP,A)
【文献】国際公開第2020/071453(WO,A1)
【文献】特開昭52-010386(JP,A)
【文献】特表2020-526629(JP,A)
【文献】特開平10-243881(JP,A)
【文献】実開昭62-155732(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
B32B 1/00-43/00
A47J 27/00-47/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明仕上げコートを含む焦げ付き防止コーティングであって、前記仕上げコートが少なくとも1つの熱安定性樹脂と、d50が前記仕上げコートの平均厚さの少なくとも1.4倍大きく、前記仕上げコートの平均厚さよりも最大で3倍大きい充填剤と、を含み、前記充填剤が金属酸化物であ
り、前記透明仕上げコートが、90%を超える直接透過率および40%未満の総ヘイズ値を有する、焦げ付き防止コーティング。
【請求項2】
前記充填剤が、20μmを超えるd50を有することを特徴とする、請求項1に記載のコーティング。
【請求項3】
前記充填剤が、60μm未満のd50を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のコーティング。
【請求項4】
前記仕上げコートが、仕上げコートの総質量に対する質量で表される百分率で、0.5~20%の充填剤を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項5】
前記充填剤が、7以上のモース硬度を有する鉱物充填剤であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項6】
前記金属酸化物が、アルミナ、ジルコニア、石英、およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項7】
前記金属酸化物がアルミナである、請求項6に記載のコーティング。
【請求項8】
前記仕上げコートが、2~40μmの平均厚さを有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項9】
前記熱安定性樹脂が、フルオロカーボン樹脂であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のコーティング。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の焦げ付き防止コーティングを備えた支持体を含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品、より具体的には、台所用品または器具などの家庭用品に適用することを意図した焦げ付き防止コーティングの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
調理器具業界において、熱安定性樹脂ベース、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をベースにしたコーティングの機械的耐久性は、最も重要な懸念事項の1つである。この耐久性は通常、焦げ付き防止性の喪失につながる、コーティングに対する金属の引っかきおよび摩耗によって評価される。さらに、最適な調理温度のインジケータなど、物品の底部に物品固有の装飾および/または機能性があることが一般的である。これらの特性は通常、最適な焦げ付き防止性を保証する透明なPTFE仕上げコートで覆われる。しかしながら、これは、物品の使用に固有の機械的ストレス(摩耗、引っかきなど)に対する、上記の特性の永続的な保護を提供しない。
【0003】
強化充填剤を組み込むことによって設計された複合コーティングの使用は、耐摩耗性を改善し、引っかき傷の出現を遅らせるために当業者によく知られている技術である(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。上記の性能は、コーティングに組み込まれる充填剤の性質、サイズ、および濃度に依存する。McElwainら(非特許文献1)は、特に充填剤(または粒子)のサイズが摩耗性能に及ぼす影響を調査した。彼らは、マイクロメートルサイズの充填剤では最大2桁倍の耐摩耗性、ナノメートルサイズの充填剤ではほぼ4桁倍の耐摩耗性を得ることが可能であることを示した。
【0004】
PTFEコーティングに強化充填剤を組み込むことの欠点は、一方では、焦げ付き防止性の低下につながり得ることであり、他方では、透明度の低下につながり得ることである。実際、これは、充填コート内での光散乱の増加をもたらし、コーティングに組み込まれる充填剤の性質、サイズ、および量に応じて、コーティングの美観を変化させることがある。
【0005】
特許文献4は、ダイヤモンド粒子を含む仕上げコートを有するコーティングを記載する。そのような粒子の使用は、コーティングを含む製品の製造コストの観点において問題をもたらす。
【0006】
台所用品との関連において、コーティングのトップコートにおける補強充填剤の使用は非常に制限されている。実際、これらの光学特性の変化は、料理の魅力を向上させるために調理用品の底にある保護仕上げコートの下に装飾および機能を実装することと互換性がないことがある。これらの光学的問題を克服するために、100nm未満のサイズの無機充填剤の使用が知られている。ただし、このタイプの充填剤を組み込みは、コーティングの焦げ付き防止性の著しい喪失をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第8642171号明細書
【文献】米国特許第8728993号明細書
【文献】米国特許第5665450号明細書
【文献】国際公開第2007/070601号
【非特許文献】
【0008】
【文献】「Effect of Particle Size on the Wear Resistance of Alumina-Filled PTFE Micro- and Nanocomposites」-Tribol.Trans.2008,51(3),247-253
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、これらのコーティングの焦げ付き防止性および視覚的特性を変えることなく、機械的応力下での耐久性が改善されたコーティングを提案することが必要となっている。
【0010】
本出願人は、上記の欠点を克服するために、仕上げコートを含む焦げ付き防止コーティングを開発した。
【0011】
この焦げ付き防止コーティングの利点は、前記仕上げコートがコーティングの視覚的特性の存在と互換性のある光学特性を有し、およびコーティングの焦げ付き防止性を低下させることなく、機械的応力に対するコーティングの耐久性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は、透明仕上げコートを含む焦げ付き防止コーティングに関し、前記仕上げコートは少なくとも1つの熱安定性樹脂と、d50が前記仕上げコートの平均厚さよりも大きい充填剤と、を含む。
【0013】
本発明はまた、本発明による焦げ付き防止コーティングを備えた支持体を含む物品に関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
「仕上げコート」(時には「仕上げ」)は、本発明の意味において、コーティングの最終層、すなわち、外部環境と接触することが意図されたコーティングの層を意味すると理解される。
【0015】
「透明コート」は、本発明の意味において、光が可視範囲全体において通過することができる層を意味すると理解され、すなわち、90%を超える直接透過率、および40%未満の総ヘイズ値を有さなければならない。
【0016】
本発明によるコーティングの透明仕上げコートは、90%を超える直接透過率および40%未満の総ヘイズ値を有さなければならない。
【0017】
本発明によるコーティングの仕上げコートは、走査型電子顕微鏡(SEM)または光学顕微鏡下での断面観察によって、それが堆積される層と容易に区別される。顕微鏡画像の分析により、仕上げコートの厚さが測定可能である。仕上げコートの厚さの測定は、コーティング部分での20のランダムなポイントで実施される。仕上げコートの平均厚さは、これら20回の測定値を平均することによって得られる。
【0018】
有利には、仕上げコートは、2~40μm、好ましくは10~30μmの平均厚さを有する。
【0019】
d50は、dv50とも呼ばれ、粒径の体積分布の50%値である。すなわち、体積の50%は、d50以下の粒子を示し、粒子の50%はd50より大きい粒子を示す。dv50も同様に定義される。d50は、レーザー粒度測定によって測定される。
【0020】
有利には、充填剤は、前記仕上げコートの平均厚さより、少なくとも1.4倍、好ましくは少なくとも1.5倍大きいd50を有する。好ましくは、充填剤は、前記仕上げコートの平均厚さよりも最大で3倍、好ましくは2倍大きいd50を有する。
【0021】
充填剤のd50が仕上げコートの平均厚さの1.4倍未満の場合、最適な耐摩耗性はもはや保証されない。逆に、充填剤のd50が仕上げコートの厚さの3倍を超えると、コーティングの耐摩耗性の喪失につながる。
【0022】
好ましくは、充填剤は2μmを超えるd50を有する。有利には、充填剤は20μmを超える、好ましくは30μmを超えるd50を有する。
【0023】
好ましくは、充填剤は120μm未満のd50を有する。有利には、充填剤は60μm未満、好ましくは50μm未満のd50を有する。
【0024】
有利には、充填剤は、7以上のモース硬度を有する鉱物充填剤である。
【0025】
本発明の文脈において使用することができる充填剤として、金属酸化物、金属炭化物、金属酸窒化物、金属窒化物、およびそれらの混合物について特に言及することができる。
【0026】
好ましくは、充填剤は、アルミナ、炭化ケイ素、ジルコニア、炭化タングステン、窒化ホウ素、石英、およびそれらの混合物から選択される。有利には、使用される充填剤は金属酸化物であり、好ましくは、アルミナ、ジルコニア、石英およびそれらの混合物から選択される。好ましくは、金属酸化物はアルミナである。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、仕上げコートは、仕上げコートの総乾燥質量に対する乾燥質量として表される百分率で、0.5~20%、より好ましくは1~10%の充填剤含む。
【0028】
EDSを搭載した走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、本発明によるコーティング表面を、光学顕微鏡で断面観察することにより、仕上げコート中の充填剤のサイズ、したがってd50、および濃度を評価することができる。本発明による仕上げコートは透明であるため、仕上げコートに含まれる充填剤を容易に見ることができる。1cm2のマッピングは、サンプルの代表的な観察結果を提供する。次に、EDS搭載走査型電子顕微鏡(SEM)を使用したエネルギー分散分析によって、各充填剤の化学組成を決定する。粒度分布は、コンピューターおよびデジタル画像処理によって測定する。これにより、充填剤のd50および平均体積を決定できるため、それらの濃度を決定することができる。充填剤の体積濃度は、充填剤および仕上げコートの体積の合計に対する充填剤の体積の割合から計算することができる。次に、充填剤および仕上げコートの密度をそれぞれ考慮して、質量濃度を計算する。
【0029】
本発明による仕上げコートは、少なくとも1つの熱安定性樹脂を含む。
【0030】
本発明の文脈において、熱安定性樹脂は、少なくとも200℃に耐性のある樹脂である。
【0031】
有利には、仕上げコートの熱安定性樹脂はフルオロカーボン樹脂であり、好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロメチルビニルエーテルとのコポリマー(MFAなど)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロプロピルビニルエーテルとのコポリマー(PFAなど)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー(FEPなど)、およびそれらの混合物から選択される。
【0032】
本発明による焦げ付き防止コーティングは、少なくとも1つのプライマーコート(「プライマー」または「粘着付与剤」ということもある)をさらに含んでもよい。このプライマーコートは、コーティングを付着させる物品の支持体の表面と接触することが意図される。有利には、このプライマーコートは、コーティングが支持体に付着することを可能にする。
【0033】
本発明による焦げ付き防止コーティングはまた、プライマーコートと仕上げコートとの間に少なくとも1つの中間コート(時には「ミッドコート」)をさらに含んでもよい。
【0034】
本発明による焦げ付き防止コーティングは、物品固有の装飾など、または最適な調理温度のインジケータなどの機能性などの特性をさらに含んでもよい。これらの属性は、コーティングが中間コートを含まない場合は、プライマーコートと仕上げコートとの間に適用され、そうでない場合は中間コートと仕上げコートとの間に適用される。
【0035】
本発明はまた、本発明による焦げ付き防止コーティングを備えた支持体を含む物品に関する。
【0036】
有利には、本発明による物品は、家庭用物品、特に調理用品である。
【0037】
「家庭用物品」とは、本発明の意味において、日常生活の家庭のニーズを満たすことを目的とした物体、特に熱処理を受けることを目的とする物品、または熱を発生させることを目的とする物品を意味すると理解される。特に、調理用品または家庭用器具でもよい。
【0038】
「熱処理を受けることを目的とする」とは、本発明の意味において、外部加熱システムによって加熱される物体、特にフライパン、ソースパン、ソテーパン、中華鍋、パンケーキパン、キャセロール、ポット、蒸し鍋、シチューポット、バーベキューグリル、ベーキングパン、カケロン(caquelon)などの調理用品であり、外部加熱システムによって提供される熱エネルギーを、前記物体と接触している材料または食品に伝達することができる物体を意味すると理解される。
【0039】
本発明はまた、本発明による焦げ付き防止コーティングを備えた支持体を含む調理用品に関する。
【0040】
特に、本発明による調理用品は、食品を受け入れるための内面および熱源に向けて配置するための外面を有する支持体と、支持体の2つの面の少なくとも一方に配置された本発明による焦げ付き防止コーティングと、を含む。
【0041】
「熱を発生させることを目的とする」とは、本発明の意味において、それ自体に加熱システムを備えた加熱物体、特に、アイロン、ストレートヘアアイロン、蒸気発生器または、例えばソースメーカーといった電気調理器具などの家庭用器具を意味すると理解される。
【0042】
一般に、物品の支持体の一部が本発明による焦げ付き防止コーティングで覆われるが、物品の支持体全体が覆われることが企図されてもよい。
【0043】
有利には、支持体は、金属材料、ガラス、セラミック、テラコッタ、またはプラスチックで作ることができる。
【0044】
好ましくは、支持体は金属製とすることができ、任意選択的に研磨、ブラシ仕上げ、サンドブラスト処理もしくはマイクロブラスト処理された陽極酸化もしくは非陽極酸化アルミニウムもしくはアルミニウム合金、または任意選択的に研磨、ブラシ仕上げ、サンドブラスト処理もしくはマイクロブラスト処理されたスチール、または任意選択的に研磨、ブラシ仕上げ、サンドブラスト処理もしくはマイクロブラスト処理されたステンレス鋼、または任意選択的にハンマー加工もしくは研磨された鋳鋼、鋳造アルミニウムもしくは鋳鉄、もしくは銅で作られてもよい。
【0045】
好ましくは、支持体は金属製でもよく、そして金属および/もしくは金属合金の層を交互に含んでもよく、またはステンレス鋼の外底で裏打ちされた鋳造アルミニウム、アルミニウムもしくはアルミニウム合金のドームである。
【実施例】
【0046】
以下の実施例および比較例において、仕上げコートの平均厚さを走査型電子顕微鏡(SEM)の断面観察によって評価した。仕上げコートの厚さ測定は、コーティング断面の20のランダムなポイントで実施した。平均仕上げコート厚さは、これら20回の測定値を平均して得た。
【0047】
実施例1:アルミナ充填剤含有仕上げコートを含む本発明によるコーティング
仕上げ配合物を、直径約200nmのPTFE粒子の分散液から調製した。44μmのd50を有する粉末形態の有角アルミナ充填剤2.5質量%を分散液に加えた。分散液の乾燥抽出物は50質量%に固定した。このパラメータを固定するために、水の量を調節した。
【0048】
この仕上げ配合物を、2つの他のコートで事前にコーティングした成形品(鍋)に噴霧した。これらすべて:黒のプライマー、中間コート、装飾的および機能的特性(装飾および最適な調理温度インジケータ)は、主にPTFEで構成されていた。適用される仕上げ配合物の量は、物品を430℃で11分間焼成した後、仕上げコートの平均測定厚さが20±1μmになるように調節した。
【0049】
焼成後、仕上げコートの総質量に対して5質量%の充填剤濃度が得られた(仕上げコートの理論的な乾燥抽出物に対して計算した)。
【0050】
実施例2:アルミナ充填剤含有仕上げコートを含む本発明によるコーティング
第1の仕上げ配合物を、直径約200nmのPTFE粒子の分散液から調製した。44μmのd50を有する粉末形態の有角アルミナ充填剤2.5質量%を分散液に加えた。分散液の乾燥抽出物は50質量%に固定した。このパラメータを固定するために、水の量を調節した。
【0051】
この第1の仕上げ配合物を、2つの他のコートで事前にコーティングした成形品(鍋)に噴霧した。これらすべて:黒のプライマー、中間コート、装飾的および機能的特性(装飾および最適な調理温度インジケータ)は、主にPTFEで構成されていた。
【0052】
直径約200nmのPTFE粒子の分散液から、第2の非充填透明仕上げ配合物を調製した。分散液の乾燥抽出物は50質量%に固定した。このパラメータを固定するために、水の量を調節した。次に、この第2の仕上げ配合物を第1の仕上げ配合物の上に噴霧した。
【0053】
堆積させた配合物の量は、物品を430℃で11分間焼成した後に25±1μmの測定平均総厚が得られるように、そして第1の配合物が仕上げコートの40%を示し、第2の配合物が仕上げコートの60%を示すように調節した。
【0054】
焼成後、仕上げコートの総質量に対して2質量%の充填剤濃度が得られた(仕上げコートの理論的な乾燥抽出物に対して計算した)。
【0055】
比較例1:非充填仕上げコートを含むコーティング
非充填仕上げ配合物を、直径約200nmのPTFE粒子の分散液から調製した。分散液の乾燥抽出物は50質量%に固定した。このパラメータを固定するために、水の量を調節した。
【0056】
この仕上げコート配合物を、2つの他のコートで事前にコーティングされた成形品(鍋)に噴霧した。これらすべて:黒のプライマー、中間コート、装飾的および機能的特性(装飾および最適な調理温度インジケータ)は、主にPTFEで構成されていた。適用される仕上げコート配合物の量は、物品を430℃で11分間焼成した後、仕上げコートの平均測定厚さが10±1μmになるように調節した。
【0057】
比較例2:アルミナ充填剤含有仕上げコートを含むコーティング
仕上げ配合物を、直径約200nmのPTFE粒子の分散液から調製した。200nmのd50を有するコロイド状アルミナ充填剤1質量%を分散液に加えた。分散液の乾燥抽出物は50質量%に固定した。このパラメータを固定するために、水の量を調節した。
【0058】
この仕上げ配合物を、2つの他のコートで事前にコーティングされた成形品(鍋)に噴霧した。これらすべて:黒のプライマー、中間コート、装飾的および機能的特性(装飾および最適な調理温度インジケータ)は、主にPTFEで構成されていた。適用した仕上げ配合物の量は、物品を430℃で11分間焼成した後、仕上げコートの平均測定厚さが20±1μmになるように調節した。
【0059】
焼成後、仕上げコートの総質量に対して2質量%の充填剤濃度が得られた(仕上げコートの理論的な乾燥抽出物に対して計算した)。
【0060】
比較例3:アルミナ充填剤含有仕上げコートを含むコーティング
仕上げ配合物を、直径約200nmのPTFE粒子の分散液から調製した。d50が1μmの粉末形態の有角アルミナ充填剤2.5質量%を分散液に加えた。分散液の乾燥抽出物は50質量%に固定した。このパラメータを固定するために、水の量を調節した。
【0061】
この仕上げ配合物を、2つの他のコートで事前にコーティングされた成形品(鍋)に噴霧した。これらすべて:黒のプライマー、中間コート、装飾的および機能的特性(装飾および最適な調理温度インジケータ)は、主にPTFEで構成されていた。適用した仕上げ配合物の量は、物品を430℃で11分間焼成した後、仕上げコートの平均測定厚さが20±1μmになるように調節した。
【0062】
焼成後、仕上げコートの総質量に対して5質量%の充填剤濃度が得られた(仕上げコートの理論的な乾燥抽出物に対して計算した)。
【0063】
比較例3a:仕上げコートの厚さの1.3倍のd50を有するアルミナ充填剤含有仕上げコートを含むコーティング
仕上げ配合物を、直径約200nmのPTFE粒子の分散液から調製した。26μmのd50を有する粉末形態の有角アルミナ充填剤2.5質量%を分散液に加えた。分散液の乾燥抽出物は50質量%に固定した。このパラメータを固定するために、水の量を調節した。
【0064】
この仕上げ配合物を、2つの他のコートで事前にコーティングした成形品(鍋)に噴霧した。これらすべて:黒のプライマー、中間コート、装飾的および機能的特性(装飾および最適な調理温度インジケータ)は、主にPTFEで構成されていた。適用した仕上げ配合物の量は、物品を430℃で11分間焼成した後、仕上げコートの平均測定厚さが20±1μmになるように調節した。
【0065】
したがって、アルミナ充填剤のd50は、仕上げコートの厚さの1.3倍である。
【0066】
焼成後、仕上げコートの総質量に対して5質量%の充填剤濃度が得られた(仕上げコートの理論的な乾燥抽出物に対して計算した)。
【0067】
比較例5:アルミナ充填剤含有仕上げコートを含むコーティング
仕上げ配合物を、直径約200nmのPTFE粒子の分散液から調製した。44μmのd50を有する粉末形態の有角アルミナ充填剤2.5質量%を分散液に加えた。分散液の乾燥抽出物は50質量%に固定した。このパラメータを固定するために、水の量を調節した。
【0068】
この仕上げ配合物を、2つの他のコートで事前にコーティングした成形品(鍋)に噴霧した。これらすべて:黒のプライマー、中間コート、装飾的および機能的特性(装飾および最適な調理温度インジケータ)は、主にPTFEで構成されていた。適用した仕上げ配合物の量は、物品が430℃を11分間焼成した後、仕上げコートの平均測定厚さが40±1μmになるように調節した。
【0069】
したがって、アルミナ充填剤のd50は、仕上げコートの厚さの1.1倍である。
【0070】
焼成後、仕上げコートの総質量に対して5質量%の充填剤濃度が得られた(仕上げコートの理論的な乾燥抽出物に対して計算した)。
【0071】
比較例6:仕上げコートの厚さの3.2倍のd50を有するアルミナ充填剤含有仕上げコートを含むコーティング
仕上げ配合物を、直径約200nmのPTFE粒子の分散液から調製した。64μmのd50を有する粉末形態の有角アルミナ充填剤2.5質量%を分散液に加えた。分散液の乾燥抽出物は50質量%に固定した。このパラメータを固定するために、水の量を調節した。
【0072】
この仕上げ配合物を、他の2つのコートで事前にコーティングした成形品(鍋)に噴霧した。これらすべて:黒のプライマー、中間コート、装飾的および機能的特性(装飾および最適な調理温度インジケータ)は、主にPTFEで構成されていた。適用した仕上げ配合物の量は、物品を430℃で11分間焼成した後、仕上げコートの平均測定厚さが20±1μmになるように調節した。
【0073】
したがって、アルミナ充填剤のd50は、仕上げコートの厚さの3.2倍である。
【0074】
焼成後、仕上げコートの総質量に対して5質量%の充填剤濃度が得られた(仕上げコートの理論的な乾燥抽出物に対して計算した)。
【0075】
結果
-引っかき試験、焦げ付き防止試験および摩耗係数
この試験では、表面に適用された研磨パッドの動作に対するコーティングの耐性、および摩耗サイクルを受けた後のミルク炭化試験によるコーティングの焦げ付き防止性の低下を評価する。これは、規範となる試験:特殊性が採用されたNF D 21-511に基づく。
【0076】
使用した装置は、水平方向に動く摩耗試験機である。固定アームが70±5mm×30±5mmの寸法の長方形のパッドを支え、その上に同じサイズの研磨パッドが配置され、21Nの荷重を適用することを可能にする自重を含む(レバーアームの重量を含む)。研磨材は毎分33回の前後移動の速さで動く。摩耗面は70mm×130mm、すなわちストロークが100mmである。1000回の研磨サイクル(すなわち、研磨材の1000回の前後移動)の後、ミルクの膜の炭化後に焦げ付き防止性の変化を評価する。
【0077】
引っかき傷が発生した場合、または焦げ付き防止性が失われた場合(洗浄後もミルクが不可逆的に付着している場合)、試験を中止する。
【0078】
また、コーティング中の充填剤が機械的性能に及ぼす影響を、摩耗サイクルごとに除去されたコーティングの厚さを測定することによって評価した。これは、数式1で表される摩耗率v(または損耗体積)として表される。式中、(t0)および(tabr)はそれぞれ、摩耗前後のコーティングの厚さを表し、Sabは摩耗した表面を表し、Aは受けた摩耗サイクルの数(ここでは1000サイクル)を表す。この操作は、構成ごとに3回繰り返す。
【0079】
【0080】
次に、Schimtzの関係を使用して、摩耗係数K(mm3/N.m)を求め、数式2に表す。式中、損耗体積vは、K、
【0081】
【0082】
および移動距離d(すなわち200m)に比例する。
【0083】
【0084】
-目視観察
実施例1および2、並びに比較例1から6の各物品の目視観察を行った。目視観察は、装飾的および機能的特性が仕上げコートによって不明瞭になっていない場合(細部の損失なし、色の損失なし)は「良好」、そうでない場合は「不良」と評価した。
【0085】
-透過率と総ヘイズ値
仕上げコートの光学特性を評価するために、Haze-gard iを使用してASTM規格 D1003で測定した。
【0086】
これらの測定を行うために、上記の実施例および比較例の仕上げ配合物をそれぞれ、滑らかなエナメルプレートに直接適用した。適用した仕上げ配合物の量は、プレートを430℃で11分間焼成した後、実施例および比較例で同じ平均仕上げコート厚さが得られるように調節した。得られたフィルムをプレートから剥がして分析した。
【0087】
審美的に魅力があり、装飾的および機能的特性(装飾および/または最適な調理温度インジケータなど)の存在と両立し得るために、コーティングは、90%を超える直接透過率、および40%未満の総ヘイズ値を有する仕上げコートを含まなければならない。
【0088】
【0089】