(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】流体分配装置
(51)【国際特許分類】
B05B 17/06 20060101AFI20241021BHJP
F04B 53/16 20060101ALI20241021BHJP
F04B 23/02 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
B05B17/06
F04B53/16 E
F04B23/02 E
(21)【出願番号】P 2021546467
(86)(22)【出願日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2019078298
(87)【国際公開番号】W WO2020079196
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-10-14
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521165666
【氏名又は名称】ベクテア、システムズ、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VECTAIR SYSTEMS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【氏名又は名称】柳本 陽征
(72)【発明者】
【氏名】ロバート、ディックス
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ、ネルソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン、ウォーラー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル、グレイ
(72)【発明者】
【氏名】フレドリック、リダウト
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-065819(JP,A)
【文献】特表2003-520079(JP,A)
【文献】特開2003-024442(JP,A)
【文献】国際公開第2008/015918(WO,A1)
【文献】特開昭58-055066(JP,A)
【文献】米国特許第06014970(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 9/00-9/047
12/16-12/36
14/00-17/08
A61M 11/00-19/00
F04B 23/00-23/14
53/00-53/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分配される流体を収容する貯留器と、
反対を向く前平面及び後平面を有する平面ピエゾ素子であって、多孔質であり、使用時に前記前平面及び前記後平面が鉛直になるように配向され、振動して前記平面ピエゾ素子の前記後平面に接触した前記流体を前記平面ピエゾ素子の前記前平面から分配するように作動可能な、平面ピエゾ素子と、
前記貯留器から中間ポンプ室へ所定量の前記流体を吸引し、前記所定量の流体を前記中間ポンプ室から分配用の前記平面ピエゾ素子の前記後平面にある分配室へ大気圧より高い所定の圧力で送出する往復動ピストンを有する往復動ピストンポンプと、
前記貯留器から前記中間ポンプ室へ前記流体を流入させる第1の一方向弁と、
前記中間ポンプ室から前記平面ピエゾ素子の前記後平面にある前記分配室へ前記流体を流出させる第2の一方向弁と、
を備え、
前記往復動ピストンは、前記中間ポンプ室の容積を変化させ、前記貯留器から前記中間ポンプ室へ前記流体を吸引すること又は前記中間ポンプ室から前記分配室へ前記流体を送出することのいずれかが可能であり、
前記第2の一方向弁が、前記中間ポンプ室の容積に対する前記分配室の容積を最小にするように、前記平面ピエゾ素子の前記後平面に近接して配置されており、
前記平面ピエゾ素子は、使用時に前記貯留器内の前記流体の上面の高さよりも鉛直方向の上方に配置される、分配装置。
【請求項2】
前記貯留器からの前記流体の吸引、及び、分配のための前記流体の送出が、前記往復動ピストンポンプの1サイクルであり、
ポンプサイクルは、前記往復動ピストンの2つの別々のストロークで構成される、請求項1に記載の分配装置。
【請求項3】
前記往復動ピストンポンプは、リンク機構によって前記往復動ピストンに接続された回転モータによって駆動され、
前記モータと前記リンク機構は、前記往復動ピストンポンプが前記平面ピエゾ素子の前記後平面へ大気圧より高い圧力で前記所定量の流体を送出する際に、前記
往復動ピストンを設定された速度で分配ストロークにわたって移動させるように適合され、前記中間ポンプ室内の前記流体が前記分配ストロークにわたって実質的に一定の流量で前記分配室へ流れる、請求項1又は2に記載の分配装置。
【請求項4】
前記モータ及び前記リンク機構は、前記
往復動ピストンが所定の速度で充填ストロークにわたって移動するように適合され、前記所定量の流体が前記貯留器から前記分配室へ流れる、請求項3に記載の分配装置。
【請求項5】
前記リンク機構は、カム及び/又はスコッチヨークを備える、請求項3又は4に記載の分配装置。
【請求項6】
前記流体を分配するように、前記平面ピエゾ素子と協働して前記往復動ピストンポンプを作動させるコントローラをさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の分配装置。
【請求項7】
前記コントローラは、前記往復動ピストンポンプを作動させる前に前記平面ピエゾ素子を作動させるように適合されている、請求項6に記載の分配装置。
【請求項8】
前記コントローラは、前記往復動ピストンポンプが前記平面ピエゾ素子の前記後平面へ大気圧より高い圧力で前記所定量の流体を送出している間、及び、前記往復動ピストンポンプが前記平面ピエゾ素子の前記後平面への前記流体の送出を停止した後の期間、前記平面ピエゾ素子を振動させるように適合されている、請求項6又は7に記載の分配装置。
【請求項9】
前記貯留器は、前記分配装置に取り外し可能に取り付けられている、請求項1~8のいずれか一項に記載の分配装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な材料、主に流体、のいずれかを、空気清浄組成物や自動投与を必要とする他の化学物質等(これに限られない)のエアゾールの形で分配するために使用できる分配装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧室及び類似の施設において、その環境状態全体を改善するために、一般に分配装置が設置されている。従来は、昇華し、それにより公共施設において生じる臭いを置き換える臭いを分散させる様々な固形物が利用されていた。このような昇華性物質の分散を促進するために、多くのサプライヤーが昇華性物質の分散を支援する動力ファン装置を開発した。このような装置は当技術分野ではよく知られており、その一例として、固体分配装置を開示しているUS4830791に示されている。
【0003】
最近では、加圧されたエアゾール容器を利用した臭気制御装置が、当技術分野でよく知られるようになった。エアゾール型の分配装置は、エアゾール容器のノズルを定期的に作動させるバッテリー駆動のモータを備えているのが一般的である。このような従来の分配装置には、大きな欠点がある。エアゾール缶には推進剤のガスが必要で、CFCフリーの推進剤も明らかにされているものの、プロパノール、イソブタンなどの監視が強化されつつある揮発性有機化合物(VOC)を必要とする傾向がある。いくつかの司法区域では、これらの化学物質の不要な使用を削減又は排除することを目的とした法律が導入されている。
【0004】
そのため、香料を直接届けること、つまり、香料の組成物自体の蒸発やその他の分散によって、担体及び推進剤の化学物質の必要性を回避することが望ましい。これは、SC Johnson社のGlade(登録商標)Wisp装置により、家庭環境のために実現された。この装置は、ピエゾ素子を用いて、少量の香料に接触した状態において高周波振動させ、香料を空気中に分散させる。これは、製剤をエアゾール化し、必要に応じて分散させる。しかし、このような装置では、ピエゾに接触させる製剤の量を厳密にコントロールする必要があり、多すぎるとピエゾが共振せず、製剤が分配されないという問題があった。そのため、水平に配置されたピエゾ素子に、芯を介して製剤を供給する必要がある。家庭での使用においては、装置が室内の低い位置に設置されるため、これは許容される。したがって、香料は部屋内に上方に向かって分散される。しかし、破損や他のいたずらを制限するために分配装置を高いところに据え付ける必要がある、会社や公共施設の化粧室での使用には不適当である。このような場所でWispタイプの装置を使用しても、香料の大部分が装置の上方の天井パネルに取り込まれてしまうため、部屋の中に香料を効果的に放出することができない。
【0005】
我々は、EP2564878及びUS9636431に記載されている、垂直に配向されたピエゾ素子に香料を流す速度を制御する装置を作成した。これにより、高い場所(典型的には、床から6フィート又は2メートル以上)に設置でき、過剰な推進剤組成物などを使用せずに一定の間隔で香料を分配できる、効果的な香料分配装置を提供した。この分配装置は、会社や公共施設の環境での使用に適したバッテリー駆動のピエゾ式分配装置であり(必要な場所に主電源があることはまれであるため、主電源を必要とするプラグイン式の装置ではなく、バッテリー駆動の装置であることが好ましい)、全ての推進剤ガスを回避し、VOCの使用量を大幅に削減することができる。この分配装置には、使用時に多孔質ピエゾ素子の概ね上方に位置する貯留器が含まれており、素子の上方に延びる有効な流体カラムがピエゾ素子の後面に圧力をかける。従来の発明は、ピエゾ素子は背後の流体の圧力に敏感であり、圧力が高すぎるとピエゾ素子の減衰が大きくなり、正しく振動できなくなるため、特に分配時にはピエゾ素子の後面にかかる圧力を制限すべきであるという共通理解に沿って、この圧力を減少させることに向けられている。これまでの設計では、ピエゾ素子の背後にある流体の圧力を下げる手段を用意し、許容範囲内の低い圧力を維持しながら有効な流量を確保していたが、我々は今度は流体を分配する精度を向上させたい。この精度の必要性は、分配装置を作動させるたびに分配される流体の量(又は「1回分の量」)に関連しており、また、分配物のプルーム(plume)の特性を最適化することにも関連している(プルームの角度とその長さは、分配装置が設置されている空間に分配される流体が意図したとおりに分配されることを保証するために重要である)。分配装置には、一般的に、分配される流体を収容した補充可能及び/又は交換可能な容器、又は貯留器、が取り付けられている。また、貯留器の補充/交換(通常、所定のタイムテーブルに従って実施される)を行うのが、貯留器が空になる前になって(これは流体が無駄になる)、早すぎないように、また、貯留器が空になってしばらく経った後になって(これは、分散装置がしばらくの間その機能を発揮できないことを意味する)、遅すぎないように、流体の分配精度を時間の経過とともに確実に維持できることも重要である。また、温度、湿度、気圧などの周囲の要因が、分配される流体の量に大きな影響を与え、これらの周囲の要因が変更可能な場合は、これも分配される流体の量に影響を与えることがわかった。また、多孔質ピエゾ素子の背後にある流体は、表面張力の影響で保持される傾向があるが、長期間にわたって流体が漏れることがあり、これは流体を無駄にするだけでなく、貯留器の補充/交換間隔の予測にも悪影響を及ぼす。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ピエゾ分配装置は、分配動作中に背後に大きな流体圧力がかかるべきではない、という一般的に受け入れられている先入観に従わなければ、改良された分配装置を設計することができるという認識に基づいている。したがって、本発明は、分配される流体を収容する貯留器と、前面と後面とを有し、使用時にその平面が垂直になるように配向され、振動して前面から流体を分配するように送出可能な、平面ピエゾ素子と、貯留器から所定量、又は1回分の量、の流体を吸引し、所定量の流体を分配用のピエゾ素子の後面に大気圧より高い所定の圧力で送出するポンプと、を備える、分配装置、を提供する。
【0007】
流体を分配したい場合は、このような配置により、正確に測定された1回分の量の流体を中間室に吸引し、ピエゾ素子を介して流体を分配することで、正確に制御された方法で流体を霧状にして分散させることができる。これにより、時間の経過とともに確実に正確な流体の分配が可能となり、従来の分配装置よりも高い精度で貯留器の寿命を予測することができる。ピエゾ素子は多孔質であってもよく、これにより素子の後面に接触した流体を素子の前面から分配することを許容する。好ましくは、分配装置は、分配装置が流体を分配していないときに、ピエゾ素子の後面に流体の圧力が作用しないように配置され、これにより流体の漏れが減少する。大気圧より高い所定の圧力は、ピエゾ素子の形状、寸法、穴のサイズ又は間隙率、及びピエゾ素子を振動させる速度に応じて設定され、ピエゾ素子の振動と協働して最適化された霧状の流体のプルームを生成するように、設計上の問題である実質的に一定の圧力で流体が送出されるようになっている。ここで使用される「垂直」という用語は、垂直から5°、10°、又は15°までの公差に適応するように、広く解釈されていることを意図している。
【0008】
ポンプは往復動ピストンポンプであってもよく、貯留器からの流体の吸引、及び、分配のための流体の送出が、ポンプの1つのサイクルを定義し、これによりポンプサイクルは往復動ピストンの2つの別々のストロークで構成され得る。簡単かつ経済的には、これらの2つのストロークは、ピストンの一方向への動きによる充填ストロークと、次に続く反対方向へのピストンの移動による分配ストロークと、の往復動ピストンの反対方向への連続した移動である。分配装置は、2つの一方向弁を含んでもよく、これにより、装置は、ポンプ室と、貯留器からのポンプ室への流体の流入を許容するように適合された一方の一方向弁と、ピエゾ素子の後面にある分配室へのポンプ室からの流体の流出を許容するように適合された他方の一方向弁と、を含んでもよく、往復動ピストンは、ポンプ室の容積を変化させ、それにより、選択的に、貯留器からポンプ室へ流体を吸引する又はポンプ室から分配室へ流体を送出することが可能である。このようにして、ピストンポンプの移動の正確が制御により、正確な量の流体をポンプ室に吸引し、分配のために大気圧より高い所定の圧力で1回分の量の流体を正確に送出することができる。
【0009】
ポンプ室から分配室への流体の流出を許容する一方向弁が、ポンプ室の容積に対する分配室の容積を最小にするように、ピエゾ素子の後面に近接して配置されてもよい。これは、各分配動作の終了時には、ピエゾ素子の背後にごく少量の流体だけが残り、これが表面張力及び/又は重力によって適当な場所に保持されるため、分配装置が動作していないときの流体の無駄な漏れを減少させることができることを意味する。
【0010】
往復動ピストンポンプは、リンク機構によって往復動ピストンに接続された回転モータによって駆動されてもよく、モータとリンク機構は、ポンプがピエゾ素子の後面へ大気圧より高い圧力で所定量の流体を送出する際に、ピストンを設定された速度で分配ストロークにわたって移動させるように適合され、これによりポンプ室内の流体が分配ストロークにわたって実質的に一定の流量で分配室へ流れる。モータ及びリンク機構は、ピストンが所定の速度で充填ストロークにわたって移動するように適合されることが好ましく、これにより所定の量の流体が貯留器から分配室へ吸引される。比較的単純で安価なリンク機構は、カム及び/又はスコッチヨークの形態であってもよい。
【0011】
ピエゾ素子は、使用時に貯留器内の流体の上面の高さの上に垂直に配置されることが好ましい。これにより、分配装置の動作中において、分配ストローク中にピエゾ素子の後面に作用する圧力は、ポンプによる大気圧より高い所定の圧力のみであり、分配装置の動作中以外において、充填ストローク中と分配ストローク後にピエゾ素子の後面に流体の圧力が作用しないことが保証され、これにより分配精度の向上と漏れの減少が加えられる。
【0012】
ピエゾ素子と協働してポンプを作動させるように配置されたコントローラがあってもよく、コントローラは、ポンプを作動させる前にピエゾ素子を作動させるように、及び/又は、ポンプがピエゾ素子の後面へ大気圧より高い圧力で所定量の流体を送出している間、及び、ポンプがピエゾ素子の後面への流体の送出を停止した後の期間、ピエゾ素子を振動させるように、配置されてもよい。貯留器は、装置に取り外し可能に取り付けられた、交換可能/補充可能なカートリッジであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
以下、添付の図を参照して例を示しながら本発明について説明する。
【
図1】
図1は、本発明の分配装置がどのように動作するかを示す断面における概略側面図である。
【
図2】
図2は、
図1の分配装置で使用するための代替的なポンプの配置を示す概略図である。
【
図3】
図3は、
図1の分配装置で使用するためのリンク機構配置の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、分配される流体6を収容する貯留器4を備えた分配装置2を示している。貯留器4から流体を吸引するための浸漬チューブ8は、貯留器4の中を下向きに延びており、ほぼ底部まで達しており、これにより、貯留器4が再充填される又は完全に置き換えるために交換される前に、流体6のほぼ全てが分配され得ることが保証される。
【0015】
浸漬チューブ8は、ポンプ室10と流体連通しており、続いて分配室12と流体連通している。浸漬チューブ8とポンプ室10の間は第1の一方向弁14であり、ポンプ室10と分配室12の間は第2の一方向弁16である。一方向弁14,16は、後述する理由から反対に働くように配置されたボールとしてのバネ付勢ボールバルブである。分配室は、市販の平面ピエゾプレート18によって閉鎖されており、ピエゾプレート18は、多孔質であり、使用時には流体を霧状にしてプルーム20内に分散させるように振動する。ポンプ室10は、往復ピストン22によって閉鎖されており、往復ピストン22は、(使用時、図面に示されているように)垂直方向に往復することができ、リンク機構26(
図3を参照して以下に詳述する)を介して動作する回転モータ24によって駆動される。往復ピストン22によって閉じられる。ピエゾ素子18は、貯留器4内の流体6の上面28の最高高さの上に配置されていることに留意されたい。
【0016】
作動時には、モータ24がリンク機構26を介して動作することにより、ピストン22が上方に引き出され、これにより、ポンプ室10内の圧力が低下し、ボールが右方向に移動し、一方向弁14が開き、一方向弁16が閉じる。ピストン22の同じ方向への移動を続けると、浸漬チューブ8を介して貯留器4から流体6が吸引され、ポンプ室が充填される。ピストン22がその最高高さに達して下方向に方向転換すると、ポンプ室10内の流体圧力が上昇し、ボールが左に移動し、一方向弁14が閉じ、一方向弁16が開く。ピストン22がさらに下降すると、ポンプ室10から分配室12内へ流体が送出される。ここで、流体の圧力とピエゾプレート18の振動との組み合わせにより、流体がプレートを通過し、霧化されてプルーム20内に分散される。プルーム20内の流体の分配は、ピストン22がその下降移動の限界に達するまで続き、この時点でポンプサイクルが完了し、分配装置2は、必要に応じて遅延なく別の分配動作を開始する準備ができる。図面に示されているポンプ室10と分配室12の相対的な大きさは、純粋に概略的なものであり、実際には分配室12の容積はポンプ室の容積よりもはるかに小さく、分配室12の容積が可能な限り小さくなるように、分配室12が形作られ、一方向弁16がピエゾ素子18に対して配置されることに留意すべきである。これにより、分配ストロークが完了して一方向弁16が閉じたときに、分配室12内に残っている液体の量は、ピエゾ素子18の振動動作だけで霧状になって分配されるにはかなり少なくなることが保証され、つまり、分配動作の合間に分配装置2がスタンバイモードにあるときに、分配室12から漏れる流体はほとんど残らない。
【0017】
ポンプ及びバルブの配置は、往復動ピストンのストロークを利用するいかなるものであってもよい。
図2に別の配置が示される。ここでは、一方の一方向弁214は
図1と同様に配置されているが、第2の一方向弁216はピストン222に配置されている。この配置では、流体が全体に矢印Aで示される方向にポンプ室210に流入及びポンプ室210から流出するように動作する。ピストン222の下向きの移動により、一方向弁214が閉じ、一方向弁216が開く。ピストン222の下のポンプ室210内の流体は、一方向弁216を通ってピストン222の上になるように流れる。ピストンが方向を変えると、一方向弁214が開き、一方向弁216が閉じる。ピストン222の上方への移動を続けると、ピストン222の下のポンプ室210内へ流体が吸引され、ピストンの上のポンプ室210に既にある流体は、分配されるために送出される。ピストンがその上方への移動の終端に到達すると、ポンプサイクルが完了し、繰り返しの準備ができる。
【0018】
図3は、往復動ピストン322の移動を両方向のストロークにおいて制御するのに適し、計量された1回分の量の流体がピエゾ素子に渡されて効率的に霧化及び分散されるように、分配ストロークで十分に一定の流体圧力及び流量を確保し、ポンプストロークでポンプ室310に正確に計量された1回分の量の流体を吸引するための、リンク機構3を示している。図示されている機構3は、
図1に示されているものと同様に動作することが意図されているが、ここでは1つの一方向弁314と短縮された浸漬チューブのみが示されており、分配チャンバやピエゾ素子は示されていない。分配室310から離間したピストン322の端部は、拡大されて平板なヨーク330となっている。このヨークには、ヨークスロット332と、タブ(図示せず)と係合する2つのガイドスロット344が設けられており、ピストン322の両端は1つの軸(スロット334と平行)に沿ってのみ往復できる。回転モータ324は、紙面に垂直な軸の周りにスピンドル336を駆動し、偏心円形カム338がスピンドル336の端部にヨークスロット332の内側に係合するように固定され、改良されたスコッチヨークを形成する。スピンドル336の中心と円形カム338の中心との間のオフセット量、円形カム338の半径、及び回転速度は全て、ピストン322の移動が必要に応じて制御されることを保証する上で重要である(上述のとおり)。分配室内のピストンの端部の表面積及びピストンのストロークの長さは、1回のポンプサイクルで分配される各1回分の量の流体の体積に関連する。
【0019】
現在、好ましいとされている実施形態では、1回分の計量された量はそれぞれ約0.05mlであり、満充填時に100ml収容する交換可能なカートリッジから、6%の量精度で吸引される。分配装置には、適切にプログラムされたマイクロプロセッサーなどのコントローラが(バッテリーなどの適切な電源とともに)含まれており、コントローラは、ユーザーにより変更され得る一定間隔、通常は14分から1時間の間の任意の頻度で分配装置を作動させる。コントローラは、ユーザーが選択可能な長期間(例えば一晩中)、分配装置を完全にオフにしたり、ある時間におけるユーザーが選択可能な1以上の異なる期間(例えば食事時あたりの時間)、分配装置をオンにしたりしてもよい。コントローラは、ピエゾ素子を約1秒から約6秒の間のいずれかのデューティサイクルで、モータを約10秒から約25秒の間のデューティサイクルで、制御するように設定されてもよく、各分配ストロークにおいて、コントローラがピエゾ素子を約123kHzで振動させ、分配ストロークが始まる直前に始まり、分配ストロークが終わった後も短期間続く。我々が使用した特定の構成では、20分ごとに約3.5秒のピエゾ素子のサイクルで2222サイクル(約30日)分の量を分配し、その時点で流体の入ったカートリッジを交換/再充填するために分配装置が停止する。
【0020】
もちろん、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に多くの変形を加えることができることは理解されよう。例えば、円形カムを非円形カムに置き換え、そのカムの形状を選択することで、時間経過に伴うピストンの移動に特定のプロファイルを与えることができる。単一の分配サイクルを作動させるために、分配装置にボタンやスイッチがあってもよい。分配が進行中であるか、又は開始されようとしていることを示すために、ライト又は他のインジケータがあってもよい。貯留器は、硬質のカートリッジ、柔軟なパウチ、又は硬質の外側カートリッジ内の柔軟なパウチであり得る。コントローラは、遠くから手動で操作したり、任意の設定を遠くから変更したりできるように、無線受信機のような手段を備えてもよく、正常に動作していない場合や、空になってカートリッジを交換する必要がある場合に信号を送ることができるように、送信機を備えてもよい。香料分配装置を念頭に置いて説明されているが、本発明は、温室内や、流体が選択可能な毒物(例えば、雑草や害虫の駆除剤)や有益な成長剤(例えば、肥料化合物)であり得る農業用途、あるいは特定の大気条件における用途(例えば、特に湿度の高い大気中における殺菌剤)である場合など、霧状の流体を頻繁に散布する必要があるあらゆる用途に使用することができる。分配装置は、特定の流体、分配装置、又は周囲の条件が必要とする場合、分配ストロークの前に自分で準備するようプログラムされていてもよい。
【0021】
異なる変形例や代替的な配置について上述したが、本発明の実施形態では、そのような変形例や代替案を任意の適切な組み合わせで組み込むことができることを理解されたい。