(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】レボケトコナゾールによる疾患の処置方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/496 20060101AFI20241021BHJP
A61K 31/155 20060101ALI20241021BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20241021BHJP
A61P 5/46 20060101ALI20241021BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241021BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20241021BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20241021BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241021BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20241021BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
A61K31/496
A61K31/155
A61P3/10
A61P5/46
A61P43/00 121
A61K9/20
A61K47/38
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/04
(21)【出願番号】P 2021552515
(86)(22)【出願日】2020-03-02
(86)【国際出願番号】 US2020020644
(87)【国際公開番号】W WO2020180784
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-03-01
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519012079
【氏名又は名称】ストロングブリッジ ダブリン リミテッド
【氏名又は名称原語表記】STRONGBRIDGE DUBLIN LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】コーエン,フレドリック
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-505866(JP,A)
【文献】特表2008-526830(JP,A)
【文献】国際公開第2016/048984(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0338971(US,A1)
【文献】Clinical Therapeutics,2008年,Vol.30(6),pp.1081-1088
【文献】A Phase 2b Study of DIO-902 or DIO-902 Placebo in Addition to Metformin and Atorvastatin or Atorvastatin Placebo for Type 2 Diabetes,https://ichgcp.net/clinical-trials-registry/NCT00494663,インターネット[令和6年3月13日検索]
【文献】徹底マスター 薬の相互作用としくみ アンカートランスポーターMATEが関与する相互作用,2015年,https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/di/digital/201506/542488.html
【文献】研究課題名(和文)メタボリックシンドローム患者の薬物動態変動機構の解明と薬物治療への応用,科学研究費補助金研究成果報告書,2011年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2型糖尿病も患っている対象のクッシング症候
群の処置のための医薬組成物であって:
レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を含み、それを必要とする
前記対象に治療有効量で投与され、
前記医薬組成物は、治療有効量のメトホルミン、又はその薬学的に許容され得る塩と共投与され;
前記医薬組成物の前記治療有効量は、
前記医薬組成物の用量の増量を含む用量設定スキームを介して決定され、
前記対象が用量制限事象を経験する場合、前記メトホルミン、又はその薬学的に許容され得る塩
は前記治療有効量
より減少された用量で投与され、
前記用量制限事象は、空腹時血糖値の低下、異常な腎機能、低いビタミンB-12レベル、またはそれらの任意の組み合わせである、医薬組成物。
【請求項2】
前記医薬組成物は、前記対象に前記メトホルミン
又はその薬学的に許容され得る塩の投与後、前記治療有効量で投与される、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物は、前記対象に前記メトホルミン
又はその薬学的に許容され得る塩の投与前に、前記治療有効量で投与される、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記メトホルミン
又はその薬学的に許容され得る塩は、前記医薬組成物を投与されていない対象に投与されるであろう量よりも少ない開始用量で投与される、請求項
3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記医薬組成物の前記投与は、メトホルミン
又はその薬学的に許容され得る塩に対する全身暴露を増加させる、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記対象が、前記対象のクッシング症候群を処置するための以前の手術又は放射線を有している、請求項
1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記対象が、前記対象のクッシング症候群を処置するための以前の手術又は放射線を有していない、請求項
1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記メトホルミン、又はその薬学的に許容され得る塩の前記
治療有効量が、少なくとも25%減少する、請求項
1~7いずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記メトホルミン、又はその薬学的に許容され得る塩の前記
治療有効量が、少なくとも50%減少する、請求項
1~7いずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記メトホルミン、又はその薬学的に許容され得る塩の投与頻度が低下する、請求項
1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
以下の条件の1つ以上が満たされるまで、前記医薬組成物は、用量の増量を含む用量設定スキームで投与される:(1)前記対象が十分な応答を有する;(2)最高表示指定用量に達する;又は(3)用量制限事象が生じる、請求項1~1
0のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記用量設定スキームが、
(i)第1の用量の前記医薬組成物を、第1の期間投与することと;
(ii)前記用量を
1日あたり150mgの増分値
で、増加させることと;
(iii)前記対象が前記増加した用量に耐容性を示すか否かを決定することと;
を含み、
前記
(i)~(iii)は、前記対象が前記増加した用量に耐容性を示す限り反復さ
れ;
前記対象が前記増大した用量に耐容性を示さない場合、前記患者の前記用量は、更に増加した用量と、最終
(i)~(iii)反復についての前記増分値との差に等しい、請求項1~1
1のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物の前記第1の用量が、1日2回投与される150mgである、請求項1
2に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記医薬組成物の前記治療有効量が、150mg~1200mg/日である、請求項1~1
1のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記医薬組成物の前記治療有効量が、1日2回600mgである、請求項1~1
1のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記医薬組成物、及びメトホルミン、又はその薬学的に許容され得る塩の共投与が、メトホルミン、又はその薬学的に許容され得る塩の投与に関連した1つ以上の曝露関連有害反応をもたらし得る、請求項
1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩が、経口投与に適した剤形である、請求項1~16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記剤形が、即時放出錠剤である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記錠剤が、微結晶セルロース、乳糖、トウモロコシ澱粉、コロイド状二酸化ケイ素、及びステアリン酸マグネシウムから選択される1つ以上の医薬賦形剤を含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その開示全体が全目的のために参照により組み込まれる、2019年3月4日出願の米国仮特許出願第62/813,399号の優先権による利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
内因性クッシング病は、コルチゾールへの器官の過剰な曝露を原因とする、稀な、重大な、且つ潜在的に致命的な内分泌疾患である。約80%の患者では、最も一般的には下垂体コルチコトロピン腺腫を介して、及びより低頻度には下垂体外腫瘍を介して(異所性ACTH症候群)、又は、稀な場合、異所性コルチコトロピン放出ホルモン分泌腫瘍によって、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の過剰分泌がクッシング症候群をもたらす。残りの20%の患者では、クッシング症候群はACTH非依存性であり、片側副腎皮質腫瘍、両側副腎過形成、又は異形成による過剰なコルチゾール分泌を原因とする。
【0003】
Nizoral(商標)(ケトコナゾール)は、特定の全身及び不応性皮膚真菌感染症用の抗真菌剤として米国で承認されている。Ketoconazole HRA(登録商標)は、ケトコナゾールを含み、米国外のいくつかの国では、クッシング症候群の処置として登録されている。ケトコナゾールは、CYP17A1(17α-ヒドロキシラーゼとしても知られる)及びCYP11B1(ミトコンドリア11β-ヒドロキシラーゼとしても知られる)を含むいくつかの副腎ステロイド産生酵素を阻害することによって、副腎ステロイド産生を減少させ又は阻害する。異所性ACTHに対する直接効果がインビトロで観察されている。クッシング症候群の処置におけるケトコナゾールの有効性は、大規模な前向き臨床試験の対象となっていないが、いくつかの小規模な非盲検試験及びより大規模な後ろ向き症例シリーズの対象となっている。ケトコナゾールは、患者の30~70%でコルチゾール過剰症を正常化し、糖尿病及び高血圧、並びにクッシング症候群の他の徴候及び症状を含む過剰なコルチゾールの合併症を減少させることが報告されている。
【0004】
しかしながら、ケトコナゾールは、肝毒性を含むいくつかの既知のリスクを有する。高いレベルのトランスアミナーゼが一般的である。ケトコナゾールはまた、CYP3A4を含む薬物代謝酵素を強く阻害し、QT延長のリスクを増大させるものを含む、顕著な薬物相互作用の可能性を伴う。2つのFDA承認薬物の入手可能性にもかかわらず、ケトコナゾールは米国でクッシング症候群を処置するための一般的な適用外使用が継続し、クッシング症候群の最も頻繁に処方される医学療法であると思われ、承認された治療法により対処されていない永続的な必要性を反映している。
【0005】
レボケトコナゾール(Recorlev(商標)、COR-003、2S,4R cis-1-アセチル-4-[4-[[2-(2,4-ジクロロフェニル)-2-(IH-イミダゾール-1-イルメチル)-1,3-ジオキソラン-4-イル]メトキシル]フェニル]ピペラジン)は、治験中のコルチゾール合成阻害剤である。レボケトコナゾールは、ケトコナゾールの2S,4Rエナンチオマーである。非臨床及び臨床データは、ケトコナゾールの2R,4Sエナンチオマーと比較して、レボケトコナゾールはコルチゾール合成をより強く阻害し、ケトコナゾール投与後により高い血漿濃度に達することを示唆している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
クッシング病、クッシング症候群、周期性クッシング症候群、外因性コルチゾール過剰症、コルチゾール過剰症、高血糖症、多発性内分泌腫瘍症1型、マックーン・オルブライト症候群、カーニー複合、先天性副腎過形成、思春期早発症、及びホルモン感受性癌から選択される疾患の処置方法が提供され、該方法は:
治療有効量のレボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を、それを必要とする対象に投与することを含み、対象は、治療有効量の多剤・毒素排出輸送体1(MATE1)基質又は有機カチオン輸送体2(OCT2)基質も共投与されており;
レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の治療有効量は、用量設定スキームを介して決定され、
MATE1基質又はOCT2基質の治療有効量は、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を投与されていない対象と比較して減少する。
【0007】
処置を必要とする対象における、クッシング病、クッシング症候群、周期性クッシング症候群、外因性コルチゾール過剰症、コルチゾール過剰症、高血糖症、多発性内分泌腫瘍症1型、マックーン・オルブライト症候群、カーニー複合、先天性副腎過形成、思春期早発症、及びホルモン感受性癌から選択される疾患の処置方法も提供され、対象は、治療有効量の多剤・毒素排出輸送体1(MATE1)基質又は有機カチオン輸送体2(OCT2)基質を共投与されており、該方法は:
対象に投与されているMATE1基質又はOCT2基質の量を減少させることと、
続いて、治療有効量のレボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の投与を開始することと、を含み、
レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の治療有効量は、用量設定スキームを介して決定される。
【0008】
いくつかの実施形態では、対象に投与されているMATE1基質又はOCT2基質の量を減少させることは、MATE1基質又はOCT2基質の投与を中止することを含む。
【0009】
また、クッシング病、クッシング症候群、周期性クッシング症候群、外因性コルチゾール過剰症、コルチゾール過剰症、高血糖症、多発性内分泌腫瘍症1型、マックーン・オルブライト症候群、カーニー複合、先天性副腎過形成、思春期早発症、及びホルモン感受性癌から選択される疾患の処置方法が提供され、該方法は:
治療有効量のレボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を、それを必要とする対象に投与することを含み、対象は、治療有効量のメトホルミン、又はその薬学的に許容され得る塩も共投与されており;
レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の治療有効量は、用量設定スキームを介して決定され、
メトホルミン、又はその薬学的に許容され得る塩の治療有効量は、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を投与されていない対象と比較して減少する。
【0010】
いくつかの実施形態では、対象に投与されているメトホルミンの量を減少させることは、メトホルミンの投与を中止することを含む。
【0011】
処置を必要とする対象における、クッシング病、クッシング症候群、周期性クッシング症候群、外因性コルチゾール過剰症、コルチゾール過剰症、高血糖症、多発性内分泌腫瘍症1型、マックーン・オルブライト症候群、カーニー複合、先天性副腎過形成、思春期早発症、及びホルモン感受性癌から選択される疾患の処置方法も提供され、対象は、治療有効量のメトホルミンを共投与されており、該方法は:
対象に投与されているメトホルミンの量を減少させることと、
続いて、治療有効量のレボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の投与を開始することと、を含み、
レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の治療有効量は、用量設定スキームを介して決定される。
【0012】
また、クッシング病、症候群、周期性クッシング症候群、外因性コルチゾール過剰症、コルチゾール過剰症、高血糖症、多発性内分泌腫瘍症1型、マックーン・オルブライト症候群、カーニー複合、先天性副腎過形成、思春期早発症、及びホルモン感受性癌から選択される疾患の処置方法が提供され、該方法は:
治療有効量のレボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を、それを必要とする対象に投与することであって、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の治療有効量は、用量設定スキームを介して決定される、投与することと、
続いて、患者が多剤・毒素排出輸送体1(MATE1)基質又は有機カチオン輸送体2(OCT2)基質による処置を開始することを決定することであって、MATE1基質又はOCT2基質は、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を投与されていない患者に投与されるであろう量よりも少ない量で投与される、決定することと、を含む。
【0013】
また、クッシング病、クッシング症候群、周期性クッシング症候群、外因性コルチゾール過剰症、コルチゾール過剰症、高血糖症、多発性内分泌腫瘍症1型、マックーン・オルブライト症候群、カーニー複合、先天性副腎過形成、思春期早発症、及びホルモン感受性癌から選択される疾患の処置方法が提供され、該方法は:
治療有効量のレボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を、それを必要とする対象に投与することであって、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の治療有効量は、用量設定スキームを介して決定される、投与することと、
続いて、患者がメトホルミンによる処置を開始することを決定することであって、メトホルミンは、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を投与されていない患者に投与されるであろう量よりも少ない量で投与される、決定することと、を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、開始用量は、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を投与されていない患者に投与されるであろう量よりも少ない。いくつかの実施形態では、開始用量は、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を投与されていない患者で使用されるであろう量(例えば、500mg)よりも少ない増分量(例えば、250mg)増加される。
【0015】
処置を必要とする対象における、クッシング病、クッシング症候群、周期性クッシング症候群、外因性コルチゾール過剰症、コルチゾール過剰症、高血糖症、多発性内分泌腫瘍症1型、マックーン・オルブライト症候群、カーニー複合、先天性副腎過形成、思春期早発症、及びホルモン感受性癌から選択される疾患の処置方法も提供され、対象はメトホルミンも投与されており、該方法は:
治療有効量のレボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を、それを必要とする対象に投与することを含み、
レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の治療有効量は、用量設定スキームを介して決定され、
レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の投与は、メトホルミンに対する全身暴露を約2倍増加させる。
【0016】
本発明のこれら及び他の態様は、以下の詳細な説明を参照して明確となるであろう。これを目的として、特定の背景情報、手順、化合物、及び/又は組成物をより詳細に記載する様々な参照が本明細書に記載され、各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
本開示又はその実施形態の要素を導入する際、冠詞「a」、「an」、「the」及び「前記」は、要素の1つ以上が存在することを意味することが意図される。用語「含む(comprising)」、「含む(including)」及び「有する」は、包括的であり、列挙した要素以外の更なる要素が存在し得ることを意味する。
【0018】
用語「及び/又は」は、2つ以上の品目のリストにある場合、列挙された品目のいずれも、それ自体で又は列挙された品目の1つ以上と組み合わせて使用され得ることを意味する。例えば、表現「A及び/又はB」は、A及びBのいずれか又は両方、即ちA単独、B単独又はA及びBの組み合わせを意味する。表現「A、B及び/又はC」は、A単独、B単独、C単独、A及びBの組み合わせ、A及びCの組み合わせ、B及びCの組み合わせ又はA、B、及びCの組み合わせを意味することが意図される。
【0019】
値の範囲が開示される場合、及び表記「n1...~n2」又は「n1...とn2との間」が使用される場合(ここでn1及びn2は数である)、特に明記しない限り、この表記は、それ自体及びそれらの間の範囲の数を含むことが意図される。この範囲は、整数であり、又は終端値の間及び終端値を含んで連続し得る。例として、範囲「2~6個の炭素」は、炭素が整数単位であるので、2、3、4、5、及び6個の炭素を含むことが意図される。例として、1μM、3μM、及びその間の全てから任意の数の有効数字(例えば、1.255μM、2.1μM、2.9999μMなど)を含むことが意図される範囲「1~3μM(マイクロモル)」を比較されたい。
【0020】
用語「約」は、それが修正する数値を修飾し、そのような値を許容誤差内の変数として示す。許容誤差、例えばデータのチャート又は表に付与される平均値に対する標準偏差が引用されていない場合、用語「約」は、有効数字を考慮して、引用された値と、その値に対する切り上げ又は切り捨てにより含まれる範囲を包含する範囲を意味する。
【0021】
本明細書の任意の定義は、複合構造基を記載するために、任意の他の定義と組み合わせて使用され得る。慣習的に、任意のそのような定義の末尾の要素は、親部分に結合するものである。例えば、複合基アルキルアミドは、アミド基を介して親分子に結合したアルキル基を表し、用語アルコキシアルキルは、アルキル基を介して親分子に結合したアルコキシ基を表す。
【0022】
本明細書で使用される用語「疾患」は、一般に、用語「障害」、「症候群」及び「状態」(医学的状態におけるように)と同義であり、これらと互換的に使用されることが意図される(これら全てが、正常な機能が損なわれたヒト又は動物身体又はその一部の1つの異常な状態を反映し、典型的には徴候及び症状を区別することによって明らかにされ、ヒト又は動物の寿命又は生活の質を低下させるという点で)。
【0023】
用語「併用療法」は、本開示に記載される治療的状態又は障害を処置するために、2つ以上の治療薬を投与することを意味する。このような投与は、これらの治療薬の実質的に同時の共投与、例えば、活性成分の固定比を有する単一カプセルでの、又は各活性成分のための多数の分離したカプセル剤での共投与を包含する。加えて、このような投与はまた、各タイプの治療剤を連続して使用することも包含する。いずれの場合でも、処置レジメンは、本明細書に記載される状態又は障害の処置において、薬物の組み合わせの有益な効果を提供するであろう。
【0024】
フレーズ「治療的に有効な」は、疾患若しくは障害の処置に使用される活性成分の量、又は臨床エンドポイントの達成を修飾することが意図される。
【0025】
用語「治療的に許容され得る」は、過度の毒性、刺激、及びアレルギー応答を有することなく、患者の組織と接触させて使用するのに適し、理想的な利益/リスク比に見合い、それらの意図される使用に効果的な化合物を指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、患者の「処置」に対する参照は、予防を含むことが意図される。処置は、本来予防的でもあり得、即ち、疾患の予防を含み得る。疾患の予防は、例えば病原体による感染症の予防の場合のように、疾患からの完全な防護を含み得、又は疾患の進行の予防を含み得る。例えば、疾患の予防は、疾患に関連する任意のレベルの任意の影響を完全に排除することを意味し得ず、臨床的に有意な又は検出可能なレベルまでの疾患の症状の予防を意味し得る。疾患の予防はまた、疾患の後期までの疾患の進行を予防することも意味し得る。特定の実施形態では、疾患の予防は、断続的な発作の予防、及び筋力低下の永久状態の予防、例えば根底にある疾患に起因する機能障害の不可逆的状態の予防を含み得る。
【0027】
用語「患者」は、一般に用語「対象」と同義であり、ヒトを含む全哺乳動物を含む。患者の例は、ヒト、雌牛、山羊、羊、豚、及び兎などの家畜、並びに犬、猫、兎、及び馬などの伴侶動物を含む。好ましくは、患者はヒトである。
【0028】
本明細書で使用される場合、患者は、その用量の患者への投与が、許容できない有害事象又は有害事象の許容できない組み合わせをもたらさない場合、化合物の用量に「耐容性を示す」と言われる。当業者は、耐容性は主観的尺度であり、1人の患者に耐容性を示し得るものは、異なる患者に耐容性を示さない場合があることを認識するであろう。例えば、1人の患者は頭痛に耐容性を示すことができない場合があり、一方、第2の患者は頭痛に耐容性を示すことが分かるが、嘔吐には耐容性を示すことができず、一方、第3の患者の場合、頭痛単独又は嘔吐単独のいずれかに耐容性を示すが、その患者は、各々の重症度が単独で経験した場合よりも軽い場合であっても、頭痛及び嘔吐の組み合わせには耐容性を示すことができない。
【0029】
本明細書で使用される場合、「有害事象」は、医薬品による処置に関連した、都合の悪い医学的出来事である。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「ホルモン感受性癌」は、ホルモンによる影響を受け得る任意の癌を指し;ホルモンは、典型的にはホルモン感受性癌の増殖を増加させる。
【0031】
本明細書で使用される場合、化合物の「上方用量設定」は、患者の用量制限不耐容の前に生じる治療効果を達成するために、化合物の量を増加させることを指す。上方用量設定は、同じか又は異なり得る1つ以上の用量増分で達成され得る。
【0032】
本明細書に開示される化合物は、治療的に許容され得る塩として存在し得る。本開示は、酸付加塩を含む塩の形態の上記に列挙した化合物を含む。適切な塩は、有機及び無機酸の両方で形成されるものを含む。そのような酸付加塩は、通常、薬学的に許容され得るであろう。しかしながら、薬学的に許容され得ない塩の塩は、問題の化合物の調製及び精製において有用であり得る。塩基付加塩も形成され得、薬学的に許容され得る。
【0033】
用語「治療的に許容され得る塩」は、本明細書で使用される場合、本明細書に開示される化合物の塩又は双性イオン形態を表し、これは水溶性若しくは油溶性又は分散性であり、且つ本明細書に定義されるように治療的に許容され得る。塩は、化合物の最終的な単離及び精製中に調製され、又は遊離塩基形態の適切な化合物を適切な酸と反応させることにより別々に調製され得る。代表的な酸付加塩は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、L-アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、重硫酸塩、酪酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、ジグルコン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、ゲンチシン酸塩、グルタル酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イセチオン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、DL-マンデル酸塩、メシチレンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ホスホン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ピログルタミン酸塩、コハク酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、L-酒石酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、重炭酸塩、パラ-トルエンスルホン酸塩(p-トシル酸塩)、及びウンデカン酸塩を含む。また、本明細書に開示される化合物の塩基性基は、メチル、エチル、プロピル、及びブチル塩化物、臭化物、及びヨウ化物;ジメチル、ジエチル、ジブチル、及びジアミル硫酸塩;デシル、ラウリル、ミリスチル、及びステリル塩化物、臭化物、及びヨウ化物;並びにベンジル及びフェネチル臭化物で第4級化され得る。治療的に許容され得る付加塩を形成するのに使用され得る酸の例は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、及びリン酸などの無機酸、並びにシュウ酸、マレイン酸、コハク酸、及びクエン酸などの有機酸を含む。塩は、化合物をアルカリ金属又はアルカリ土類イオンに配位させることによっても形成され得る。従って、本開示は、本明細書に開示される化合物のナトリウム、カリウム、マグネシウム、及びカルシウム塩などを意図する。
【0034】
塩基付加塩は、カルボキシ基を金属カチオンの水酸化物、炭酸塩、若しくは重炭酸塩、又はアンモニア若しくは有機第1級、第2級、若しくは第3級アミンなどの適切な塩基と反応させることによって、化合物の最終的な単離及び精製中に調製され得る。治療的に許容され得る塩のカチオンは、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びアルミニウム、並びに非毒性第4級アミンカチオン、例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、ジシクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N,N-ジベンジルフェネチルアミン、1-エフェナミン、及びN,N’-ジベンジルエチレンジアミンを含む。塩基付加塩の形成に有用な他の代表的な有機アミンは、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、及びピペラジンを含む。
【0035】
化合物の塩は、遊離塩基形態の適切な化合物を適切な酸と反応させることによって作製され得る。
【0036】
メトホルミンは、N,N-ジメチルイミドジカルボンイミドジアミド塩酸塩を指す。メトホルミンの製剤は、2型糖尿病を有する成人における血糖コントロールを改善するために、食事及び運動の補助剤として、FDA承認医薬品表示GLUCOPHAGEにて以前に報告されている。
【0037】
GLUCOPHAGE錠剤は、500mg、850mg、又は1000mgのメトホルミン塩酸塩を含み、これは各々、389.93mg、662.88mg、779.86mgのメトホルミン塩基と等価である。各錠剤は、不活性成分ポビドン及びステアリン酸マグネシウムを含む。加えて、500mg及び850mg錠剤のコーティングはヒプロメロースを含み、1000mg錠剤のコーティングは、ヒプロメロース及びポリエチレングリコールを含む。GLUCOPHAGE XRは、500mg又は750mgのメトホルミン塩酸塩を含み、これは各々、389.93mg、584.90mgのメトホルミン塩基と等価である。GLUCOPHAGE XR 500mg錠剤は、不活性成分ヒプロメロース、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びステアリン酸マグネシウムを含む。GLUCOPHAGE XR 750mg錠剤は、不活性成分ヒプロメロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム及び酸化鉄顔料赤を含む。
【0038】
メトホルミンについての標準的な投与量は:
GLUCOPHAGEについての成人投与量:
・ 開始用量:500mg経口1日2回又は850mg1日1回、食事と共に
・ 分割用量で付与して、毎週500mgの増分又は2週間毎に850mgの増分で、最大用量2550mg/日まで用量を増加させる
・ 2000mgを超える用量は、1日3回、食事と共に付与されると耐容性が高まり得る
GLUCOPHAGE XRの成人投与量:
・ 開始用量:500mg経口1日1回、夕食と共に
・ 夕食と共に、用量を毎週500mgの増分で、最大2000mg1日1回まで増加させる
・ GLUCOPHAGEを受ける患者は、同じ総1日用量のGLUCOPHAGE XR1日1回、2000mg1日1回までと交換し得る
GLUCOPHAGEの小児投与量:
・ 開始用量:500mg経口1日2回、食事と共に
・ 分割用量1日2回で付与して、投与量を毎週500mgの増分で、最大2000mg/日まで増加させる
【0039】
メトホルミンの経口溶液も承認されている。これは、5mL当たり500mgのメトホルミン塩酸塩と、以下の不活性成分を含む:サッカリンカルシウム、重炭酸カリウム、キシリトール、塩酸、精製水及びサクランボ風味
最大推奨1日用量は、成人で2550mg(25.5mL)であり、小児患者(10~16歳)で2000mg(20mL)である。
【0040】
クッシング病、クッシング症候群、周期性クッシング症候群、外因性コルチゾール過剰症、コルチゾール過剰症、高血糖症、多発性内分泌腫瘍症1型、マックーン・オルブライト症候群、カーニー複合、先天性副腎過形成、思春期早発症、及びホルモン感受性癌から選択される疾患の処置方法が提供され、該方法は:
治療有効量のレボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を、それを必要とする対象に投与することを含み、対象は、治療有効量の多剤・毒素排出輸送体1(MATE1)基質又は有機カチオン輸送体2(OCT2)基質も共投与されており;
レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の治療有効量は、用量設定スキームを介して決定され、
MATE1基質又はOCT2基質の治療有効量は、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を投与されていない対象と比較して減少する。
【0041】
処置を必要とする対象における、クッシング病、クッシング症候群、周期性クッシング症候群、外因性コルチゾール過剰症、コルチゾール過剰症、高血糖症、多発性内分泌腫瘍症1型、マックーン・オルブライト症候群、カーニー複合、先天性副腎過形成、思春期早発症、及びホルモン感受性癌から選択される疾患の処置方法も提供され、対象は、治療有効量の多剤・毒素排出輸送体1(MATE1)基質又は有機カチオン輸送体2(OCT2)基質を共投与されており、該方法は:
対象に投与されているMATE1基質又はOCT2基質の量を減少させることと、
続いて、治療有効量のレボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の投与を開始することと、を含み、
レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の治療有効量は、用量設定スキームを介して決定される。
【0042】
いくつかの実施形態では、対象に投与されているMATE1基質又はOCT2基質の量を減少させることは、MATE1基質又はOCT2基質の投与を中止することを含む。
【0043】
また、クッシング病、クッシング症候群、周期性クッシング症候群、外因性コルチゾール過剰症、コルチゾール過剰症、高血糖症、多発性内分泌腫瘍症1型、マックーン・オルブライト症候群、カーニー複合、先天性副腎過形成、思春期早発症、及びホルモン感受性癌から選択される疾患の処置方法が提供され、該方法は:
治療有効量のレボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を、それを必要とする対象に投与することを含み、対象は、治療有効量のメトホルミン、又はその薬学的に許容され得る塩も共投与されており;
レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の治療有効量は、用量設定スキームを介して決定され、
メトホルミン、又はその薬学的に許容され得る塩の治療有効量は、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を投与されていない対象と比較して減少する。
【0044】
処置を必要とする対象における、クッシング病、クッシング症候群、周期性クッシング症候群、外因性コルチゾール過剰症、コルチゾール過剰症、高血糖症、多発性内分泌腫瘍症1型、マックーン・オルブライト症候群、カーニー複合、先天性副腎過形成、思春期早発症、及びホルモン感受性癌から選択される疾患の処置方法も提供され、対象は、治療有効量のメトホルミンを共投与されており、該方法は:
対象に投与されているメトホルミンの量を減少させることと、
続いて、治療有効量のレボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の投与を開始することと、を含み、
レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の治療有効量は、用量設定スキームを介して決定される。
【0045】
また、クッシング病、クッシング症候群、周期性クッシング症候群、外因性コルチゾール過剰症、コルチゾール過剰症、高血糖症、多発性内分泌腫瘍症1型、マックーン・オルブライト症候群、カーニー複合、先天性副腎過形成、思春期早発症、及びホルモン感受性癌から選択される疾患の処置方法が提供され、該方法は:
治療有効量のレボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を、それを必要とする対象に投与することであって、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の治療有効量は、用量設定スキームを介して決定される、投与することと、
続いて、患者が多剤・毒素排出輸送体1(MATE1)基質又は有機カチオン輸送体2(OCT2)基質による処置を開始することを決定することであって、MATE1基質又はOCT2基質は、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を投与されていない患者に投与されるであろう量よりも少ない量で投与される、決定することと、を含む。
【0046】
また、クッシング病、症候群、周期性クッシング症候群、外因性コルチゾール過剰症、コルチゾール過剰症、高血糖症、多発性内分泌腫瘍症1型、マックーン・オルブライト症候群、カーニー複合、先天性副腎過形成、思春期早発症、及びホルモン感受性癌から選択される疾患の処置方法が提供され、該方法は:
治療有効量のレボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を、それを必要とする対象に投与することであって、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の治療有効量は、用量設定スキームを介して決定される、投与することと、
続いて、患者が多剤・毒素排出輸送体1(MATE1)基質又は有機カチオン輸送体2(OCT2)基質による処置を開始することを決定することであって、MATE1基質又はOCT2基質は、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を投与されていない患者に投与されるであろう量よりも少ない開始用量で投与される、決定することと、を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、方法は、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を投与されていない患者に投与されるであろう量よりも少ない量、開始用量を増加させることを更に含む。いくつかの実施形態では、方法は、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を投与されていない患者に投与されるであろう500mg増分と比較して、開始用量を250mg増分で増加させることを更に含む。
【0048】
また、クッシング病、クッシング症候群、周期性クッシング症候群、外因性コルチゾール過剰症、コルチゾール過剰症、高血糖症、多発性内分泌腫瘍症1型、マックーン・オルブライト症候群、カーニー複合、先天性副腎過形成、思春期早発症、及びホルモン感受性癌から選択される疾患の処置方法が提供され、該方法は:
治療有効量のレボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を、それを必要とする対象に投与することであって、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の治療有効量は、用量設定スキームを介して決定される、投与することと、
続いて、患者がメトホルミンによる処置を開始することを決定することであって、メトホルミンは、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を投与されていない患者に投与されるであろう量よりも少ない量で投与される、決定することと、を含む。
【0049】
処置を必要とする対象における、クッシング病、クッシング症候群、周期性クッシング症候群、外因性コルチゾール過剰症、コルチゾール過剰症、高血糖症、多発性内分泌腫瘍症1型、マックーン・オルブライト症候群、カーニー複合、先天性副腎過形成、思春期早発症、及びホルモン感受性癌から選択される疾患の処置方法も提供され、対象はメトホルミンも投与されており:
治療有効量のレボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を、それを必要とする対象に投与することを含み、
レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の治療有効量は、用量設定スキームを介して決定され、
レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の投与は、メトホルミンに対する全身暴露を約2倍増加させる。
【0050】
特定の実施形態では、疾患は、クッシング症候群である。特定の実施形態では、疾患は、周期性クッシング症候群である。特定の実施形態では、疾患は、持続性又は再発性クッシング症候群である。特定の実施形態では、対象は、対象のクッシング症候群を処置するための以前の手術又は放射線を有している。特定の実施形態では、対象は、対象のクッシング症候群を処置するための以前の手術又は放射線を有していない。特定の実施形態では、疾患は、クッシング病である。
【0051】
特定の実施形態では、疾患は、外因性コルチゾール過剰症である。特定の実施形態では、疾患は、コルチゾール過剰症である。特定の実施形態では、疾患は、高血糖症である。特定の実施形態では、疾患は、多発性内分泌腫瘍症1型である。特定の実施形態では、疾患は、マックーン・オルブライト症候群である。特定の実施形態では、疾患は、カーニー複合である。特定の実施形態では、疾患は、先天性副腎過形成である。特定の実施形態では、疾患は、思春期早発症である。
【0052】
特定の実施形態では、疾患は、ホルモン感受性癌である。特定の実施形態では、疾患は、前立腺癌及び他のアンドロゲン感受性癌である。特定の実施形態では、疾患は、乳癌、卵巣癌又はエストロゲン若しくはプロゲステロンに感受性の別の癌である。
【0053】
特定の実施形態では、疾患は、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩による処置に感受性の障害である。
【0054】
特定の実施形態では、用量設定スキームは、以下の条件の1つ以上が満たされるまで、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を上方用量設定することを含む:(1)対象が十分な応答を有する;(2)最高表示指定用量に達する;又は(3)用量制限事象が生じる。
【0055】
特定の実施形態では、用量設定スキームは、第1の用量のレボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を、第1の期間、例えば約1週間投与することと;用量を増分値と等しい量、増加させることと;対象が増加した用量に耐容性を示すか否か決定することと;を含み、このサイクルは、対象が増加した用量に耐容性を示す限り反復され、各サイクル反復における増分値は、同じか又は異なり;対象が増加した用量に耐容性を示さない場合、患者の用量は、更に増加した用量と、最終サイクル反復についての増分値との差に等しい。特定の実施形態では、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の初期用量は、1日2回150mgである。特定の実施形態では、増分値は150mgである。
【0056】
特定の実施形態では、最高プロトコル指定用量は、1200mg/日である。特定の実施形態では、対象は、1日2回150mg~1日2回600mgの用量を受け得る。特定の実施形態では、用量は、1日1回150mgである。特定の実施形態では、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の治療有効量は、150mg~1200mg/日である。特定の実施形態では、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の治療有効量は、1日1回150mgである。特定の実施形態では、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の治療有効量は、1日2回150mgである。特定の実施形態では、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の治療有効量は、1日2回300mgである。特定の実施形態では、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の治療有効量は、1日2回450mgである。特定の実施形態では、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の治療有効量は、1日2回600mgである。
【0057】
特定の実施形態では、用量設定スキームは、用量の初期減少を含む。特定の実施形態では、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の初期用量は、1日2回150mgであり、減少用量は、1日150mgである。特定の実施形態では、用量の初期減少後、対象が減少用量に耐容性を示す場合、用量は本明細書に記載される用量設定スキームを介して増加される。特定の実施形態では、投与は、1日150mgに維持される。
【0058】
特定の実施形態では、用量設定スキームは、対象が十分な応答を有するまで、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を上方用量設定することを含む。特定の実施形態では、十分な応答は、尿中コルチゾール(UFC)(例えば、24時間UFC、4時間UFC、12時間UFC、又は他のそのようなUFC測定値)又は深夜唾液中コルチゾール(LNSC)又は複数回採取(multiply-sampled)血清コルチゾール(MSSC)の正常化を含む。特定の実施形態では、UFC、LNSC又はMSSC正常化は、平均UFCの少なくとも50%の低下を含む。特定の実施形態では、十分な応答は、ベースラインコルチゾールレベルからの50%未満の低下である。特定の実施形態では、レボケトコナゾールの上方用量設定は、UFC、LNSC及びMSSCから選択されるコルチゾール測定値のうちの少なくとも2つが、ベースラインコルチゾールレベルを下回る、例えばベースラインコルチゾールレベルから少なくとも50%低下するまで継続される。特定の実施形態では、レボケトコナゾールの上方用量設定は、UFC、LNSC及びMSSCが正常化し、又はベースラインコルチゾールレベルを下回る場合に停止される。特定の実施形態では、十分な応答は、例えば毛髪コルチゾール又は複数回採取の汗中コルチゾールを介して測定されたコルチゾール過剰症における改善を含む。
【0059】
特定の実施形態では、用量設定スキームは、対象が治療有効量のレボケトコナゾールを固定用量で投与される維持段階を更に含む。
【0060】
特定の実施形態では、用量設定スキームは、対象が用量制限事象を経験するまで、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩を上方用量設定することを含む。特定の実施形態では、方法は、対象が用量制限事象を経験した後、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の用量を減少させることを更に含む。特定の実施形態では、方法は、対象が用量制限事象を経験した後、用量制限事象が逆転するまで、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の投与を一時的に中断することと、次いでレボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の投与を、同じか又は減少した用量で再開することとを更に含む。特定の実施形態では、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩の投与は再開されない。
【0061】
特定の実施形態では、用量制限事象は、MATE1基質又はOCT2基質への増加した曝露に起因する。特定の実施形態では、方法は、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩、及びMATE1基質又はOCT2基質の共投与が、MATE1基質又はOCT2基質に対する増加した曝露をもたらし得ることを対象又は医療従事者に通知することを更に含む。特定の実施形態では、方法は、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩、及びMATE1基質又はOCT2基質の共投与が、MATE1基質又はOCT2基質の投与に関連した1つ以上の曝露関連有害反応をもたらし得ることを対象又は医療従事者に通知することを更に含む。特定の実施形態では、方法は、MATE1基質又はOCT2基質の血清濃度を監視することを更に含む。特定の実施形態では、方法は、MATE1基質又はOCT2基質の投与に関連した1つ以上の曝露関連有害反応について対象を監視することを更に含む。
【0062】
特定の実施形態では、用量制限事象は、メトホルミンに対する増加した曝露に起因する。特定の実施形態では、方法は、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩、及びメトホルミン、又はその薬学的に許容され得る塩の共投与が、メトホルミン、又はその薬学的に許容され得る塩に対する増加した曝露をもたらし得ることを対象又は医療従事者に通知することを更に含む。特定の実施形態では、方法は、レボケトコナゾール、又はその薬学的に許容され得る塩、及びメトホルミン、又はその薬学的に許容され得る塩の共投与が、メトホルミン投与に関連した1つ以上の曝露関連有害反応をもたらし得ることを対象又は医療従事者に通知することを更に含む。特定の実施形態では、方法は、メトホルミン、又はその薬学的に許容され得る塩の血清濃度を監視することを更に含む。特定の実施形態では、方法は、メトホルミン投与に関連した1つ以上の曝露関連有害反応について対象を監視することを更に含む。これらの有害反応は、重症度において軽度又は中等度であり得る。特定の実施形態では、方法は、1つ以上の曝露関連有害反応が下痢、悪心/嘔吐、鼓腸、無力症、消化不良、腹部不快感、乳酸アシドーシス、及び頭痛から選択されることを更に含む。
【0063】
特定の実施形態では、用量制限事象は、QTc延長事象である。特定の実施形態では、QTc延長事象は、ベースラインからの60msecを超える増加を表す少なくとも1つのQTc値を含む。特定の実施形態では、QTc延長事象は、470msecを超える少なくとも1つの確認されたQTc間隔を含み、又は特定の実施形態では、500msecを超える少なくとも1つの確認されたQTc間隔を含む。特定の実施形態では、QTc延長事象は、男性では470msecを超える、女性では480msecを超える絶対QTc間隔を含む。特定の実施形態では、QTc延長事象は、ベースラインを超える60msecを超える絶対QTc間隔を含む。
【0064】
特定の実施形態では、方法は、QTc間隔に対する効果を監視することを更に含む。
【0065】
特定の実施形態では、用量制限事象は、上昇した肝機能検査(LFT)である。特定の実施形態では、LFTは、血清中の以下の分析物の1つ以上を分析する検査を含む:アラニントランスアミナーゼ(ALT)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)、アルカリホスファターゼ(ALP)、γグルタミルトランスフェラーゼ(GGT)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GLDH)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)及び/又はビリルビン(非抱合型、抱合型又は全体)。特定の実施形態では、上昇したLFTは、基準範囲の正常の上限の少なくとも1.5倍である。特定の実施形態では、上昇したLFTは、基準範囲の正常の上限の少なくとも2倍である。特定の実施形態では、上昇は、ALT又はASTのいずれかにおける基準範囲の正常の上限の1倍を超える上昇を更に含む。その趣旨で、所与の分析物についての正常範囲は、検査方法論に基づいて及び研究室毎に変動し得る。特定の実施形態では、方法は、肝機能を監視することを更に含む。
【0066】
特定の実施形態では、用量制限事象は、B型乳酸アルドーシスのリスクの増大である。特定の実施形態では、用量制限事象は、7.35未満の血液pH、及び5mmol/Lを超える乳酸濃度である。いくつかの実施形態では、対象は、減少した血清重炭酸濃度(例えば、22mmol/L未満)及び/又は12meQ/Lを超えるアニオンギャップも有する。
【0067】
特定の実施形態では、用量制限事象は、異常な腎機能である。特定の実施形態では、方法は、eGFRを監視することを更に含む。特定の実施形態では、異常な腎機能は、30mL/分/1.73m2未満の推定糸球体濾過率(eGFR)を含む。特定の実施形態では、異常な腎機能は、30~45mL/分/1.73m2のeGFRを含む。特定の実施形態では、eGFRが35mL/分/1.73m2を下回った場合、方法は、メトホルミンの投与を中止することを更に含む。
【0068】
特定の実施形態では、用量制限事象は、空腹時ブドウ糖レベルの低下である。特定の実施形態では、用量制限事象は、更なる低血糖のリスクである。
【0069】
特定の実施形態では、用量制限事象は、アニオンギャップアシドーシスである。特定の実施形態では、用量制限事象は、低ビタミンB-12に続発する大球性貧血である。
【0070】
特定の実施形態では、MATE1基質は、下記に示す基質(又はその薬学的に許容され得る塩)から選択される:
【0071】
【0072】
特定の実施形態では、MATE1基質は、シメチジン、アベマシクリブ、レボフロキサシン、シプロフロキサシン、トポテカン、メトホルミン、セファレキシン、アシクロビル、セフラジン、エストロン硫酸塩、ガンシクロビル、グアニジン、プロカインアミド、及びそれらの組み合わせ、又はその薬学的に許容され得る塩から選択される。特定の実施形態では、MATE1基質は、メトホルミン、又はその薬学的に許容され得る塩である。
【0073】
特定の実施形態では、OCT2基質は、下記に示す基質(又はその薬学的に許容され得る塩)から選択される:
【0074】
【0075】
特定の実施形態では、OCT2基質は、アマンタジン、アミロライド、シメチジン、ドーパミン、ファモチジン、メマンチン、メトホルミン、ピンドロール、プロカインアミド、ラニチジン、バレニクリン、及びオキサリプラチン、又はその薬学的に許容され得る塩から選択される。特定の実施形態では、OCT2基質は、メトホルミン、又はその薬学的に許容され得る塩である。
【0076】
特定の実施形態では、MATE1基質又はOCT2基質の用量は減少する。特定の実施形態では、MATE1基質又はOCT2基質の用量は、少なくとも5%、例えば少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、又は少なくとも90%減少する。特定の実施形態では、MATE1基質又はOCT2基質の投与頻度は低下する。例えば、用量が減少されない場合、投与頻度は1日2回(BID)から1日1回(QD)、又は1日置き(QOD)などに延長され得る。
【0077】
特定の実施形態では、メトホルミン、又はその薬学的に許容され得る塩の用量は低下する。特定の実施形態では、メトホルミン、又はその薬学的に許容され得る塩の用量は、少なくとも5%、例えば少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、又は少なくとも90%減少する。特定の実施形態では、メトホルミン、又はその薬学的に許容され得る塩の投与頻度は低下する。例えば、用量が減少しない場合、投与頻度は、1日2回(BID)から1日1回(QD)、又は1日置き(QOD)などに延長され得る。
【0078】
開示した化合物は、未加工の化学物質として投与されてもよいが、医薬製剤として存在することも可能である。従って、本明細書に開示される特定の化合物の1つ以上、又はその1つ以上の薬学的に許容され得る塩を、その1つ以上の薬学的に許容され得る担体及び場合により1つ以上の他の治療成分と共に含む医薬製剤が本明細書に提供される。担体は、製剤の他の成分と適合性であり、そのレシピエントに有害ではないという意味で「許容され得る」である必要がある。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。周知の技術、担体、及び賦形剤のいずれも、適宜、当技術分野で理解されるように使用することができる。本明細書に開示される医薬組成物は、例えば、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠形成、微粒子化、乳化、カプセル化、封入又は圧縮プロセスによって、当技術分野で既知の任意の方法で製造することができる。
【0079】
製剤は、経口、非経口(皮下、皮内、筋内、静脈内、関節内、及び髄内を含む)、腹腔内、経粘膜、経皮、直腸及び局所(経皮、頬側、舌下及び眼球内を含む)投与に適したものを含むが、最も適切な経路は、例えばレシピエントの状態及び障害に依存し得る。製剤は、単位剤形で都合よく存在し得、薬学の分野で周知の方法のいずれかによって調製され得る。典型的には、これらの方法は、本明細書に開示される化合物、又はその薬学的に許容され得る塩(「活性成分」)を1つ以上の付属成分から構成される担体と結合させるステップを含む。一般に、製剤は、活性成分を液体担体又は微粉化した固体担体又は両方と均一に及び密接に結合させた後、必要であれば、生成物を所望の製剤に成形することによって調製される。
【0080】
経口で使用され得る医薬製剤は、錠剤、ゼラチンで作製された押し込み型(push fit)カプセル剤、並びにゼラチン及び可塑剤、例えばグリセロール又はソルビトールで作製された軟質の密封カプセル剤を含む。錠剤は、場合により1つ以上の付属成分と共に、圧縮又は成型により作製され得る。圧縮錠剤は、場合により結合剤、不活性希釈剤、又は滑沢剤、界面活性剤又は分散剤と混合した自由流動形態、例えば粉末又は顆粒の活性成分を、適切な機械内で圧縮することによって調製され得る。成型錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化化合物の混合物を、適切な機械内で成型することによって作製され得る。錠剤は、場合によりコーティングされ、又は溝を付けられてもよく、及びその中の活性成分の遅延又は制御放出を提供するように処方されてもよい。経口投与用の全ての製剤は、そのような投与に適した投与量にある必要がある。押し込み型カプセル剤は、活性成分を乳糖などの充填剤、澱粉などの結合剤、及び/又はタルク若しくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、並びに場合により安定剤との混合物で含み得る。軟質カプセル剤では、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解又は懸濁され得る。加えて、安定剤が添加されてもよい。糖衣錠コアは、適切なコーティングが提供される。これを目的として、場合によりアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び適切な有機溶媒又は溶媒混合物を含み得る濃縮糖溶液を使用し得る。識別のために、又は活性化合物の用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、染料又は顔料を錠剤又は糖衣錠コーティングに添加してもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、剤形は経口投与に適しており、1つ以上の医薬賦形剤を含む。いくつかの実施形態では、単位剤形は、150mgのレボケトコナゾールを微結晶セルロース、乳糖、トウモロコシ澱粉、コロイド状二酸化ケイ素、及びステアリン酸マグネシウムと共に含む即時放出錠剤である。いくつかの実施形態では、錠剤はフィルムコーティングされている。
【0082】
化合物は、0.1~500 20mg/kg/日の用量で経口的に又は注射を介して投与され得る。成人ヒト用の用量範囲は、一般に150mg~1.2g/日である。個別の単位で提供される錠剤又は他の提示形態は、このような投与量で有効な1つ以上の化合物の量を、又はその倍数として、都合よく含み、例えば、単位は150mgから1200mgまでを含み得る。
【0083】
本開示の実施形態の例を、以下の実施例に提供する。以下の実施例は、例示としてのみ、及び本開示を使用する際に当業者を補助するために提示される。実施例は、本開示の範囲を如何様にも制限するものではない。
【実施例】
【0084】
実施例1 MATE1及びOCT2基質を用いた薬物-薬物相互作用研究
この研究は、MATE1又はOCT2の阻害剤としてのレボケトコナゾールを評価するように設計された。輸送体の基質又は阻害剤である化合物は、薬物-薬物相互作用の犠牲者又は加害者であり得る。実験は、Drug Interaction Studies(FDA 2017、EMA 2013)のFDA及びEMAガイダンス文書草案に記載されているように行った。プローブ基質は[14C]メトホルミンであった。
【0085】
短期安定性試験を試験品溶液について行った。低い及び高い試験品濃度(例えば、0.03及び50μM)の用量溶液を各インキュベーション培地において調製し、選択された容器タイプ内で室温及び37℃±2℃で6時間保管した。適用可能な保管期間後、同じ試験品濃度の溶液を再調製し、以前に保管したサンプルと共に分析して、安定性を決定した。新鮮及び保管サンプルについての平均応答(例えば、面積比)の差が投与溶液について15%以内である場合、溶液は安定であった。
【0086】
研究における様々な細胞系に対する試験品の毒性を、細胞から放出される乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を測定することによって評価した。細胞に曝露されていないインキュベーション培地は、背景対照として機能するであろう。インキュベーション培地を、無試験品溶媒対照インキュベーション培地(陽性対照基質及び阻害剤溶媒0.2% v/v DMSOのみを含む)(陰性対照)、1% Triton X-100(陽性対照)、溶媒対照(0.2% v/v DMSO及び試験品溶媒を含む0μMサンプル)及び選択された濃度の試験品に暴露した細胞から収集した。試験品で観察された毒性は、陽性対照のものと比較して≦25%であった。
【0087】
放射標識輸送体基質のストック溶液(例えば、10mM)をDMSO中で調製した。[14C]-メトホルミン(1mM)を固体として提供し、Hankのバランス塩溶液(HBSS)中で調製した。対照阻害剤をDMSO中で調製した(例えば、10mM)。基質及び対照阻害剤又は溶媒対照用のDMSOを0.1% v/v DMSOでインキュベーション培地中にスパイクした。試験品を適切な溶媒中のインキュベーション培地中にスパイクし、溶媒濃度を全インキュベーションで同じになるように調整した。
【0088】
細胞が存在しないインキュベーション容器を選択するために、試験品の非特異的結合を評価した。試験品を、低及び高濃度で別々に、適用可能なインキュベーション培地と混合し、24ウェル細胞培養プレート内でインキュベートしたが、細胞は存在しなかった。インキュベーション期間後、混合物のアリコートを収集し、LC-MS/MSにより分析し、用量溶液(100%溶液)と比較した。標準曲線が含まれた。回収率は、面積比から決定した。
【0089】
実験前に、細胞培養プレート(輸送体発現及び対照細胞)をインキュベーターから取り出し、細胞培養培地を除去し、インキュベーション培地(1mL)をプレートに加えて、細胞から細胞培養培地を濯いだ。インキュベーション培地をレボケトコナゾール、陽性対照阻害剤又は溶媒対照(0.3mL)を含むインキュベーション培地と交換し、プレートをプレインキュベートした。プレインキュベーション後、インキュベーション培地をレボケトコナゾール、陽性対照阻害剤又は溶媒対照及びプローブ基質を含むインキュベーション培地と交換した。サンプルを指定時間インキュベートした。インキュベーション後、インキュベーション培地を除去し、細胞を0.2% w/vウシ特異的抗原(BSA)を含む1mLの氷冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1回、及び氷冷PBSで2回濯いだ。PBSを除去し、0.5mLの水酸化ナトリウム(0.1M)を加え、ピペットで上下して細胞を溶解及び懸濁した。培地のアリコートを96ウェルプレートに加え、シンチレーション液で希釈し、MicroBetaシンチレーションカウンター上で分析した。各インキュベーションにおけるタンパク質の量を、ビシンコニン酸分析により決定した。
【0090】
既知の阻害剤の存在下及び非存在下での輸送体発現細胞及び対照細胞における関連プローブ基質の取込みは、陽性対照であった。プローブ基質又は試験品の輸送体特異的取込みを、輸送体発現細胞内の取込みから対照細胞内の取込みを減算することにより決定した。IC50値は、阻害が50%を超えた場合、活性の低下から決定し(例えば、対照のパーセント)、4パラメーターIC50等式を用いた非線形回帰により計算した。回収率を計算するために、サンプルをインキュベーション培地から0分(用量溶液)及び最終インキュベーション時間で採取し、計算した。
【0091】
MATE1、OCT2についてのヒト輸送体cDNAを含むベクターをトランスフェクトした、輸送体を発現しているヒト胚腎臓293(HEK293)細胞、及び対照細胞(ベクターのみをトランスフェクトしたHEK293細胞)を実験で使用して、MATE1又はOCT2の阻害剤としてのレボケトコナゾールを評価した。
【0092】
HEK293細胞を、ウシ胎児血清(FBS、8.9% v/v)、抗生物質/抗真菌剤(0.89% v/v)及びL-グルタミン(1.79mM)で補充したDulbeccoの修正Eagle培地(DMEM)中で、加湿培養チャンバ(37±1℃、95±5%相対湿度、及び5±1% CO2)内で、細胞培養フラスコ中で培養した。培地を2~3日毎に交換し、細胞がコンフルエントに達したときに継代した。HEPES(Sigma-Aldrich、Saint Louis)は、OCT2-発現HEK293細胞のインキュベーション培地であった。OCT2-発現HEK293細胞とのインキュベーションにおいて細胞損失は観察されなかった。
【0093】
Caco-2細胞をトランスウェルプレート内の多孔質膜上で培養し、タイトジャンクションを有するコンフルエント単層を形成させた。単層は、トランスウェルの頂端及び基底外側コンパートメントを分離する。Caco-2細胞を、FBS(8.9% v/v)、非必須アミノ酸(0.89% v/v)及びペニシリン-ストレプトマイシン(各々、45U/mL及び45μg/mL)で補充したEagleの最小基本培地(EMEM)中で、加湿培養チャンバ(37±1℃、95±5%相対湿度、及び5±1% CO2)内で培養した。培地を2~3日毎に交換し、細胞がコンフルエントに達したときに継代した。
【0094】
MDCKII細胞をトランスウェルプレート内の多孔質膜上で培養し、タイトジャンクションを有するコンフルエント単層を形成させた。単層は、トランスウェルの頂端及び基底外側コンパートメントを分離する。MDCKII細胞を、FBS(10% v/v)及びペニシリン-ストレプトマイシン(各々、45U/mL及び45μg/mL)で補充したDMEM中で、加湿培養チャンバ(37±2℃、95±5%相対湿度、及び5±1% CO2)内で、細胞培養フラスコ中で培養した。培地を2~3日毎に交換し、細胞がコンフルエントに達したときに継代した。
【0095】
下記の表は、ケトコナゾール及びレボケトコナゾールを用いた阻害実験の結果を示す。適用可能な場合、nは複製の数であり、NAは該当なしであり、SDは、標準偏差を指す。特に記さない限り、値は、有効数字3桁に四捨五入された3重の決定値であり、標準偏差は同じ精度に四捨五入されている。百分率は、最も近い整数に四捨五入されている≧100を除いて、小数点以下1桁に四捨五入されている。
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
前記の表から明らかになり得るように、レボケトコナゾールは0.218μMのIC50でOCTを阻害し、これはラセミ体ケトコナゾール(IC50=1.52μM)よりも強力であった。
【0101】
実施例2 レボケトコナゾール及びメトホルミン共投与の第I相試験
これは単一500mg用量のメトホルミンの薬物動態に対するレボケトコナゾールの効果を評価するように設計された、32人の健康な男性及び女性対象(性別毎に約16人)における第I相、非盲検、3期、固定投与順序試験である。この試験は、21日までのスクリーニング期間、メトホルミンのみの処置期間(第1期、処置A)、第3期で使用されるべき用量レベルを達成するための、レボケトコナゾール用量増大処置期間(第2期)、及びメトホルミン及びレボケトコナゾール共投与処置期間(第3期、処置B)からなっていた。尿も用量投与前に、及び指定間隔で(投与後0~6時間、6~12時間、12~24時間、24~36時間、及び36~48時間)用量投与後48時間収集して、メトホルミンの回収率を測定した。
【0102】
全対象は、第1期において単一経口用量500mgのメトホルミンを受けた。
【0103】
第2期は、第3期に使用される、12時間毎(Q12H)に摂取されるレボケトコナゾール用量レベル600mgまで、レボケトコナゾール用量を段階的に増加させるように設計された用量増大期間であった。第2期は、試験の4~27日目で継続した。対象は、4日目に用量レベル1で開始する4連続の毎週の増大サイクルとして、150mg、300mg、450mg、及び600mgのレボケトコナゾールQ12H(自宅でのおおよそのタイミング)を受けた。用量レベル1の場合、対象は150mg Q12Hを受けた。用量レベル2及び3の場合、対象は各々300mg及び450mgレボケトコナゾールQ12Hを受けた。用量レベル4の場合、対象は600mgレボケトコナゾールQ12Hを受けた。対象は、第3期におけるレボケトコナゾール及びメトホルミンの共投与の前に、6用量の600mgレボケトコナゾール単独を受けた。
【0104】
第3期は薬物-薬物相互作用評価期間であり、ここでレボケトコナゾール600mgが28日目の朝に単一経口用量500mgのメトホルミンと共投与された。対象は、5回の反復経口用量600mgレボケトコナゾールQ12Hを、総1日用量1200mg受けた。第3期は、試験の28~31日目で継続した。再度、尿を用量投与前に、及び指定間隔で(投与後0~6時間、6~12時間、12~24時間、24~36時間、及び36~48時間)用量投与後48時間収集して、メトホルミンの回収率を測定した。
【0105】
予備メトホルミン薬物動態パラメーターを表5に記載する。第3期におけるCmax及びAUCの増大、並びにCl/Fの低下がある。
【0106】
【0107】
第3期でレボケトコナゾールと共投与されたメトホルミンと、第1期のメトホルミン単独との比較を行った。メトホルミンの薬物動態に対するレボケトコナゾールの効果の概要を、表6に示す。レボケトコナゾールの投与は、メトホルミンに対する暴露を約2倍増加させる。
【0108】
【0109】
第3期でレボケトコナゾールと共投与されたメトホルミンと、第1期のメトホルミン単独との尿中薬物動態パラメーターの比較を行った。結果を表7に示す。
【0110】
【0111】
血漿データ及び血漿からの更なる薬物動態パラメーターは、メトホルミンの全身クリアランス低下の機構を介したレボケトコナゾール及びメトホルミンの薬物薬物相互作用を支持する。更なる尿データは、メトホルミンの尿クリアランスを減少させるレボケトコナゾールの効果を支持する。メトホルミンは代謝されず、排他的ではないが主に尿中に不変のまま排泄される。
【0112】
OCT2をインビトロで阻害するレボケトコナゾールのこれらの以前説明されていない効果は、メトホルミンの腎及び全身クリアランス並びに尿排泄に対する薬物の共投与の新規な効果、並びにクリアランスの阻害から生じるメトホルミンAUC/Cmaxの増加の規模と相まって、予測不可能であり、臨床的に有意である。
【0113】
上述した様々な実施形態は、組み合わせて更なる実施形態を提供することができる。本明細書に参照され、及び/又は出願データシートに列挙された全ての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、及び非特許出版物は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。実施形態の態様は、様々な特許、出願及び公開の概念を使用して更なる実施形態を提供するために、必要であれば修正することができる。
【0114】
これら及び他の変更を、上記の詳細な説明に照らして実施形態に行うことができる。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を明細書及び特許請求の範囲に開示された特定の実施形態に限定するとして解釈されるべきではなく、全ての可能な実施形態を、このような特許請求の範囲に付与された権利の等価物の全範囲と共に含むものと解釈するべきである。従って、特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。