(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】異方性繊維コンクリートを製造する方法および装置
(51)【国際特許分類】
B28B 1/30 20060101AFI20241021BHJP
B28B 3/20 20060101ALI20241021BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20241021BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20241021BHJP
【FI】
B28B1/30
B28B3/20 C
B33Y10/00
B33Y30/00
(21)【出願番号】P 2021573915
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(86)【国際出願番号】 FR2020051006
(87)【国際公開番号】W WO2020249913
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-04-12
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511116133
【氏名又は名称】エコール・ナショナル・デ・ポン・ゼ・ショッセ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・デュクロンビエ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-フランソワ・カロン
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108952004(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108638290(CN,A)
【文献】特表2015-502870(JP,A)
【文献】カナダ国特許出願公開第03046155(CA,A1)
【文献】国際公開第2018/229418(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/030328(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/30
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多軸ロボット(1)を備える、異方性繊維コンクリートの押出による付加製造
方法であって、前記多軸ロボット(1)が
、
モルタル(31)のビードをこのビードの長手方向に沿って向けられる連続繊維(9)と一緒に押し出すための押出ノズル(23)を含む押出アセンブリ(5)を支承するヘッド(3
)と、
凝固促進添加剤(34)を前記モルタル(31)に注入する手段と
を有し、
前記凝固促進添加剤(34)の注入は、前記凝固促進添加剤(34)の注入領域と前記ノズル(23)の端部(29)との間で、前記モルタル(31)のせん断閾値を少なくとも6倍にする、方法。
【請求項2】
前記押出アセンブリ(5)が、前記押出ノズル(23)の上流に配置されたモルタルミキサ(17)を備える、請求項1に記載の
方法。
【請求項3】
前記押出アセンブリ(5)が、前記モルタルミキサ(17)と前記押出ノズル(23)との間にある狭窄領域(21)を備える、請求項2に記載の
方法。
【請求項4】
前記凝固促進添加剤(34)を注入する前記手段は、前記モルタルミキサ(17)と前記狭窄領域(21)との間に配置された前記凝固促進添加剤(34)を注入するための注入ヘッド(39)を備える、請求項
3に記載の
方法。
【請求項5】
前記押出ノズル(23)が、前記連続繊維(9)を導入するためのオリフィス(27)を備える径方向ブリッジ(33)を備える、請求項1に記載の
方法。
【請求項6】
前記押出ノズル(23)が、前記連続繊維(9)を導入するための周囲オリフィス(27)を備える、請求項1に記載の
方法。
【請求項7】
前記連続繊維(9)が巻き付けられたコイル(11)のマガジン(13)と、前記連続繊維(9)を前記コイル(11)から前記押出ノズル(23)へ案内するための部材(15a、15b、15c)と、を備える、請求項1に記載の
方法。
【請求項8】
前記モルタル(31)を前記モルタルミキサ(17)に供給し圧送するためのシステム(7)
の準備を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記連続繊維(9)が前記モルタル(31)に粘着されることで、それらの繊維が前記ビードへと押し進められる、請求項1
に記載の方法。
【請求項10】
前記連続繊維(9)が、前記モルタル(31)と一緒に押し出される前に、表面処理および/または機械的処理を受ける、請求項1に記載
の方法。
【請求項11】
前記モルタル(31)の中心部に導入され
る繊維(9)が使用される、請求項1
に記載の方法。
【請求項12】
前記モルタル(31)の周囲内に導入され
る繊維(9)が使用される、請求項1に記載
の方法。
【請求項13】
前記連続繊維(9)が、一体または撚られた、炭素、金属、ガラス、玄武岩、ポリマーから作られた繊維を含む群から選択される、請求項1
に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性繊維コンクリートを製造する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維コンクリート、すなわち金属、植物、鉱物または合成繊維によって補強されたセメントまたは粘土のモルタルは、従来技術から既知である。
【0003】
これら自体は知られるように、モルタルに少しまたはごくわずかな配向繊維を加えることによって、最終のコンクリートに向上した機械的性質(準等方性)、特にせん断および割れ応力に対するより良好な耐性を与えることができる。
【0004】
やはりまた知られるように、モルタルは、伸長され配向された要素、鋼または複合材料バー、ワイヤ、ヤーンによってより局所的に補強することができ、それによって、製造後のコンクリート要素に引張応力に対するより良好な耐性が与えられる一方、全体に靭性が与えられ、したがって引張応力により最初に割れた後に要素が壊れることがない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来技術のものと比べて向上した機械的特性を有する異方性繊維コンクリート材料を製造する方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、多軸ロボットを備える異方性繊維コンクリートの押出による付加製造のための装置であって、多軸ロボットが、モルタルのビード(bead)をこのビードの長手方向に沿って向けられる連続繊維と一緒に押し出すための押出ノズルを含む押出アセンブリを支承するヘッドを有する、装置によって達成される。
【0007】
これらの特徴により、モルタル内で連続繊維を好みの方向に沿って配向することが可能になり、また、これらの繊維の最適な配置を得ることが可能になり、それによって、コンクリートの最終ビードに、このビードの特に引張応力に対するより良好な耐性を可能にする異方性が与えられる。
【0008】
ビードの連続押出のこの原理により、成形または押出前に一バッチのモルタル内の繊維の混合、攪拌によって得られ、したがって実際には好ましく配向されておらず、それらの繊維が概ねランダムに配向されている、従来技術の繊維コンクリートの場合に最大3%程度であることと比べると、ビードの長手方向に沿ったかなりの程度の繊維、典型的にはこの方向に対して垂直な断面で5から10%またはそれを超える繊維を有するコンクリートを得ることができる。3%を上回ると、混合は、作業がより難しくなる(繊維が塊になる、システムが動かなくなる)。
【0009】
一般的にミリメートルのヤーンとここでは区別される、数十ミクロンの直径の大量の連続繊維を導入することは、従来からあるものとは非常に異なる材料の精巧さを可能にする。そのような繊維/マトリックスアセンブリは、2つの材料が、あるスケールでは均質と考えることができ、ビードの断面のすべての点で同一の機械的挙動を示すという意味で、従来の複合材料、例えば炭素/エポキシと同様の機械的動作を可能にする。
【0010】
これは、事実上、ペースト内の多数の繊維の疑均一分布が最適な応力分布を可能にするので、引張応力を吸収する繊維、およびせん断により正確な分配を確実にするマトリックスに当てはまる。
【0011】
これは、材料挙動よりも補強された構造の挙動を有するより大きな断面の少数の要素(バーまたはヤーン)で補強されたビードには当てはまらない。
【0012】
したがって、このより良好な分配によって、微小き裂のより良好な分配が可能になり、それによって硬化状態でコルドン(cordon)に対して垂直な方向におけるかなりの巨大き裂が回避される。さらに、モルタルは、繊維のおかげではるかに「崩れない(hold up)」ので、処理中において(流動学的に(rheology)、新しい状態で)ビードの非常に難しい保持が可能になり、これは、例えば(型を用いない)付加製造方法による堆積という点で非常に興味深い。
【0013】
小径繊維はさらに、ペーストとの接触面とそれらの質量/剛性との割合が好ましいため、押出の間にペーストによってより簡単に押し進められる。したがって、ワイヤまたは太ヤーンを進めるのにすぐに必要な動力化(motorisation)をより容易に回避できるようになる。
【0014】
最後に、小径の繊維を用いる、したがって低い曲げ剛性を有することは、例えば付加方法を用いた堆積の間にそれをさらに曲げることができるという意味で、ビードに、より良好なワーカビリティを与える。
【0015】
本発明はさらに、押出アセンブリが、押出ノズルの上流に配置されたモルタルミキサを備えるように定義された装置に関する。
【0016】
本発明はさらに、前記押出アセンブリが、前記ミキサと前記押出ノズルとの間にある狭窄領域を備える、このように定義された装置に関する。
【0017】
本発明はさらに、押出アセンブリが、凝固促進添加剤をモルタルに注入する手段を備えるように定義された装置に関する。
【0018】
本発明はさらに、ミキサと狭窄領域との間に配置された凝固促進添加剤を注入するための注入ヘッドを備えるように定義された装置に関する。
【0019】
本発明はさらに、前記押出ノズルが、前記繊維を導入するためのオリフィスを備える径方向ブリッジを備えるように定義された装置に関する。
【0020】
本発明はさらに、前記押出ノズルが、前記繊維を導入するための周囲オリフィスを備えるように定義された装置に関する。
【0021】
本発明はさらに、前記繊維が巻き付けられたコイルのマガジンと、前記繊維を前記コイルから前記押出ノズルへ案内する部材と、を備えるように定義された装置に関する。
【0022】
本発明はさらに、このように定義された装置と、前記モルタルを前記ミキサに供給し圧送するためのシステムと、を備える設備に関する。
【0023】
本発明はさらに、繊維がモルタルに粘着されることで、それらの繊維がビードへと押し進められるように定義された装置を実施する付加製造方法に関する。
【0024】
本発明はさらに、前記繊維が、前記モルタルと一緒に押し出される前に、表面処理および/または機械的処理を受けるように定義された装置を実施する付加製造方法に関する。
【0025】
本発明はさらに、前記モルタルの中心部に導入される撓み可撓性繊維が使用されるように定義された装置を実施する付加製造方法に関する。
【0026】
本発明はさらに、前記モルタルの周囲内に導入される撓み剛性繊維が使用されるように定義された装置を実施する付加製造方法に関する。
【0027】
本発明はさらに、前記繊維が、一体または撚られた、炭素、金属、ガラス、玄武岩、ポリマーから作られた繊維を含む群から選択されるように定義された装置を実施する付加製造方法に関する。
【0028】
本発明はさらに、凝固促進添加剤の注入が、凝固促進添加剤の注入領域とノズルの端部との間で、モルタルのせん断閾値を少なくとも6倍にするように定義された装置を実施する付加製造方法に関する。
【0029】
本発明の他の特徴および利点は、以下の説明を読み添付の図面を検討することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図2】本発明による押出アセンブリの一実施形態の軸方向断面図である。
【
図3】
図2のアセンブリの押出ノズルの側面図である。
【
図5】
図4の断面V-Vに沿ったこのノズルの横断面図である。
【
図6】モルタルと繊維との混合物の押出過程の、
図2と同様の図である。
【
図7】
図2の押出アセンブリによって押し出されるコンクリートのビードの横断面図である。
【
図8】本発明による押出アセンブリの他の実施形態の軸方向断面図である。
【
図9】
図8のアセンブリの押出ノズルの側面図である。
【
図11】
図9の断面XI-XIに沿ったこのノズルの横断面図である。
【
図12】モルタルと繊維との混合物の押出過程の、
図8と同様の図である。
【
図13】
図8の押出アセンブリによって押し出されるコンクリートのビードの横断面図である。
【
図14】押出アセンブリへの促進剤の添加の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
これらの図面すべてにおいて、同一または類似の参照符号は、同一もしくは類似の部材または部材の組を示す。
【0032】
次いで、
図1を参照すると、本発明による繊維コンクリートを製造する設備が示されている。
【0033】
この図面で見られるように、この設備は、例えばABB Companyによって製造される市販の6軸ロボットなどのロボット1を備える。
【0034】
このロボットのヘッド3上には、本発明による装置が取り付けられる。この装置は、押出アセンブリ5を備える。押出アセンブリ5は、一方ではモルタルポンプ7による供給を受け、他方ではマガジン13上に設置されたコイル11から出て複数のヤーンガイド15a、15b、15cによって案内される連続繊維9による供給を受ける。
【0035】
連続繊維は、例えば、炭素、金属、ガラス、玄武岩、ポリマーまたはこれらの様々な材料の結合(association)から作られ得る。これらは、小径の繊維、すなわち、(100ミクロンに達し得る金属ヤーンを除いて)ミリメートルではなくミクロンのオーダーの繊維である。これらの繊維は、一般に市販されており、数千の繊維を一緒にグルーピングするヤーンに集合され、ミリメートルのオーダーの直径を有するヤーンが構成される。
【0036】
コイル11は、繊維9の牽引力だけで回転駆動されてもよく、またはそうではなくモータ式手段によって回転的に支援されてもよい。
【0037】
次に
図2を参照すると、本発明による装置の押出アセンブリ5の第1の実施形態が示されている。
【0038】
この図面では、モルタルと繊維との流通方向は矢印Fで示され、本明細書の以下において用語「上流」および「下流」は、この矢印の方向に関すると理解されよう。
【0039】
第1の実施形態は、比較的高い剛性を有する、すなわち曲げ応力に対する比較的大きな耐性を有する繊維9に特に非常に適する。これらの十分に剛性を有する繊維は、屈せず良好に貫入することができ、中央領域を含むビードの断面に広がることができる。より高い可撓性を有するそうした繊維についての他の装置については、以下に記載され、
図8から
図13の対象である。
【0040】
押出アセンブリ5は、その上流部に、実質的に円筒形のモルタルミキサ17を備える。モルタルミキサ17内では、混合インペラ19がモータ(図示せず)の動作により回転することができる。このミキサは、その下流部において、実質的に円錐形の狭窄領域21まで延在する。
【0041】
この狭窄領域21自体は、その下流部において、押出ノズル23まで延在する。押出ノズル23の下部は、ミキサ17の直径よりも小さい直径の実質的に円筒形をしている。
【0042】
図2、
図3、
図4および
図5に見られるように、この押出ノズル23は、上流部に、円周方向と軸方向との両方に規則的に分配された周囲貫通オリフィス27を備える周囲膨張部25を有する。
【0043】
図6に見られるように、これらの周囲オリフィス27は、マガジン13上に配置されたコイル11からの、
図1に示される繊維9を受けるように設けられる。
【0044】
本発明による設備の動作モードは、先述の説明から直接生じる。
【0045】
この設備によって、押し出しによりノズル23から出る異方性繊維コンクリートのビードの製造が可能になる。
【0046】
ロボット1は、押出ノズル23の端部29を、繊維コンクリートのビードを堆積させたい領域に運ぶ。これは、例えば付加プリンティング、すなわち繊維コンクリートのビードを重ねることによってコンクリート壁を製造したい領域上であってよい。
【0047】
次いで、モルタル(例えば、セメントまたは粘土と骨材との混合物)が、押出アセンブリ5のミキサ17に送られるようにモルタルポンプ7に導入され、次いで、ミキサ17内でインペラ19によって混練される。
【0048】
必要ならば、特に繊維9との完全な適合および粘着を確実にする目的で、物理的および/または化学的な特性を変更することができる様々な補助剤がミキサ17内のこのモルタルに組み込まれる。
【0049】
ミキサ17内でのモルタルの混合のパラメータ(時間、速度など)は、流動学的特性、すなわち最終に所望の粘度およびせん断閾値と合うようにされる。
【0050】
次いで、モルタルは、インペラ19によって狭窄領域21へと押し込まれ、そこで今度は混合物の良好な均質性を与えるせん断応力を受ける。
【0051】
次いで、モルタルは、ノズル23に達すると、コイル11からもたらされヤーンガイド15a、15b、15cによって周囲オリフィス27の内部へと案内される繊維9と遭遇する。
【0052】
有利には、小径(すなわち、ミクロンのオーダー)の単一繊維、ヤーン、ワイヤ、またはヤーンもしくはワイヤのストランドからなってよいこれらの繊維は、これらの繊維とモルタルとの粘着を最適にするため、それらの製造の間、またはそうではなくてコイル11から巻き解けるときから周囲オリフィス27内に達するまでの間に、異なる物理的および化学的処理(表面の攻撃(attack)、前含入など)または機械的処理(張力をかける、遊びを取るなど)を受けることができる。
【0053】
その際、モルタルは、押出ノズル23内を循環しながらこれらの繊維9に沿って進みそれと混ざる。このノズルの特性(長さ、内径)は、モルタルが、繊維に対するモルタルの相対速度を打ち消すのに十分なせん断閾値(すなわち、モルタルを流すのに必要な力)に達することができるようにするように決定される。
【0054】
繊維9へのモルタルの粘着だけで、モルタルの運動と一緒に繊維の前進が可能になることを理解されたい。
【0055】
次いで、ノズル23の端部29の出口において、
図7に典型的な横断面が示される繊維コンクリートのビードを得ることができる。この第1の実施形態では、繊維9は、一定時間後に固化するモルタルで形成されるマトリックス31の断面全体に実質的に均一に分配される。
【0056】
典型的には、モルタルとともに連続繊維9を押し出すこの方法によって、全方向に概ねランダムに分配される繊維が3%を超えることが難しい従来の等方性繊維コンクリートとは異なり、マトリックス31に対してビードの軸に整列された繊維9が、5から10%またはそれを超えて断面を占めることができ、したがって、従来のコンクリートに比べて整列繊維の密度がより大きいと言うことができ、したがって、ビードが実際は横方向においてよりもビードの方向においてより良好な性能の異なる機械的挙動を有することから、異方性モルタルと言うことができる。
【0057】
理論上は、さらに大きな繊維密度を得ることができるが、繊維間の距離がモルタルに含まれる最大骨材未満になり得ないという一つの物理的な限界があり、この密度を上げたい場合は、可能な限り小さいものを選択する必要がある。
【0058】
例えばミキサ17内のモルタルの混合の時間および速度、狭窄領域21の幾何形状、周囲オリフィス27の密度および幾何学的分布、ノズル23の直径および長さ、モルタルの補助剤の特性および量、繊維9の性質、ならびにそれに適用される処理の特性などの活用される異なるパラメータは、押出ノズル23の出口におけるコンクリートのビードについて獲得したい物理的および化学的(特に流動学的)な特性と相関関係にあることに留意することができる。
【0059】
押出ノズル23の断面と繊維9の累積断面との比が、マトリックス31において獲得したい繊維密度を特徴付けることに留意されよう。
【0060】
図8から
図13は、比較的高い可撓性を有する繊維、すなわち比較的低い曲げ耐性を有する繊維に適した、本発明による装置の押出アセンブリ5の他の実施形態を示している。
【0061】
この他の実施形態では、繊維9を導入するためのオリフィス27は、これらの繊維を押出ノズル23の周囲とその中心との間で径方向に分配することができる径方向ブリッジ33上に分配され、したがって、
図13に見られるモルタル31のマトリックスにおいてこれらの繊維の「太陽の光」配置が得られる。この装置は、より高い剛性を有する繊維を対象とする
図4から
図6に関連して述べたものよりも良好な繊維案内を可能にする。径方向ブリッジ33におけるオリフィスのこの分布は、可撓性繊維がモルタルのビードの中央に(
図11の径方向ブリッジ33間に白い三角形の形で表される残りの空いた空間を通り抜けて)貫入することを助けることができ、(
図4から
図10に示される装置で見られる)モルタルの流れによってそれらが周囲部内へと押し出されることを回避することを可能にする。
【0062】
先述を考慮して理解できるように、本発明は、完全に分配された長手方向繊維を備える繊維コンクリートのビードであって、モルタルの凝固前に、このビードの作製が望まれる使用に応じてオーダーするように調整可能な物理的および化学的な特性を有する繊維コンクリートのビードを得ることを可能にする。
【0063】
モルタルが固化すると、様々な応力(特に引張応力)に対する耐性が従来の繊維コンクリートで得られるものよりも著しく良好でありマトリックスと繊維との特定の幾何学的配置を含む複合材料のような挙動を示す、異方性繊維コンクリートのビードが得られる。
【0064】
これは特に、この異方性繊維コンクリートが割れるリスクを著しく限定することができる。
【0065】
図14に示されるように、凝固促進添加剤34は、このモルタルが端部29を通って堆積する前に押出アセンブリ5内のモルタル31に加えられ、それによって、モルタル31の堆積ビードが支持体36上に堆積した後に迅速に凝固することが確実になり、この支持体36は、予め堆積されたモルタルのビードとすることができる。
【0066】
この状況では、ノズル23によって予め堆積されたモルタル上にこの同じノズルによって堆積されるモルタルは、こうして、促進剤の添加により、すでに凝固したモルタルによって支持され、したがって、適当に迅速な付加プリンティングサイクルの実行が可能になる。
【0067】
添加剤34の添加によって、端部29のレベルで十分に可撓性または流動性を有するモルタルのビードを生成することが可能になり、このビードはノズル23の向きに対して概ね垂直に延びる支持体36上へと若干押しつぶされるまたは押し付けられ得る。この支持体36自体は、3Dプリンティングによって予め堆積された層とすることができる。
【0068】
堆積の間におけるこの低い粘稠性は、ノズルと支持体との間の任意の角度の増減を可能にし、ノズルのその軸周りのいくらかの追加の回転に頼る湾曲堆積物を回避する。そのような追加の回転は、高粘稠性であり結果的にノズルの形状によって画定される相補的な形状を有するビードが端部29から出る場合に必要となる。ヘッド39のレベルでの添加剤の添加がない場合、材料は、ミキサ17の出口から、層の積層を可能にするほど高い粘稠性を有することになり、堆積の間につぶれることができない。
【0069】
図14に見られるように、3Dプリンティングプロセスにより、ノズル23は、支持体36に対して概ね垂直な向きを有し、それに対して平行に変位される。ノズル23が可撓性材料を生成することによって、ビードの適当な堆積を確実にすることが可能になり、それが添加剤34を含むことによって、モルタルの他のビードを受容するための安定した基底部を形成する剛性支持体を構成するのに十分な速さで凝固することが確実になる。
【0070】
換言すると、添加剤の添加により、モルタルがその堆積後に迅速に凝固することの保証を有しつつ、ノズル23から出た時点で非常に高い可撓性または流動性を有するモルタルの使用が可能になる。
【0071】
実際には、添加剤34は、モルタルがノズルから出たときに高い可撓性を有するだけでなく堆積後に迅速に凝固することを確実にするために、可能な限り後でモルタルに添加される。
【0072】
この点において、
図14に示されるように、添加剤34は、押出アセンブリ5内のモルタル31に直接添加される。添加剤34は、アセンブリ5によって支承され得る容器37内に収容され、ミキサ17の下流かつ狭窄領域21の上流でモルタル31に注入される。実際には、添加剤34は、容器37から、端部がモルタル31内に位置しミキサ17からのモルタル31の流れへの添加剤の拡散を確実にする注入ヘッド39を備え狭窄領域21内で係合されるダクト38を通って、モルタル31へと運ばれる。
【0073】
注入ヘッド39のレベルで比較的流動性のあるモルタル31を準備することによって、直後に導入される繊維9をより良好に含入することが可能になる。これは、異方性コンクリートの機械的動作についての重要な条件を構成し、このような含入は、モルタルが液体であるときよりもいっそう効率的である。
【0074】
促進剤の添加により、注入ヘッド39を通過した後に粘度が急激に上がるモルタルを使用することは、モルタルと繊維との間の大きなせん断を確実にし、したがって、モルタル31の流れは一緒に繊維9を進ませ、それによって外部装置に頼らずにコイルが巻き解かれ得る。
【0075】
実際には、モルタルは、注入ヘッド39のレベルに達するとき、100Paに概ね等しいせん断閾値を特徴とする粘度を有し、この粘度は、ノズルの長さが例えば10cmの場合、ノズル23の端部29のレベルで約600Paから1000Paの間のせん断閾値まで増加する。端部29のレベルでのせん断閾値は、ノズル23がより長くモルタルによる繊維の行程長さがより大きくなるほど減少し得る。
【0076】
より一般的に、モルタルの性質、促進添加剤、およびモルタルの流量は、せん断閾値が、添加剤が注入される領域とノズル23の端部29との間で少なくとも6倍になるように調整されることが有利である。
【符号の説明】
【0077】
1 ロボット
3 ヘッド
5 押出アセンブリ
7 モルタルポンプ
9 繊維
11 コイル
13 マガジン
15a、15b、15c ヤーンガイド
17 モルタルミキサ
19 インペラ
21 狭窄領域
23 押出ノズル
25 周囲膨張部
27 周囲貫通オリフィス
29 端部
31 モルタル、マトリックス
33 ブリッジ
34 添加剤
36 支持体
37 容器
38 ダクト
39 注入ヘッド