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特許7574234波力発電装置および洋上風力発電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】波力発電装置および洋上風力発電システム
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/14 20060101AFI20241021BHJP
【FI】
F03B13/14
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022001905
(22)【出願日】2022-01-07
(65)【公開番号】P2023101330
(43)【公開日】2023-07-20
【審査請求日】2024-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】吉水 謙司
(72)【発明者】
【氏名】一文字 正幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝洋
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 和
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-129975(JP,U)
【文献】特開2002-257023(JP,A)
【文献】特開2016-094941(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0187644(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102013021858(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/00-13/26;17/00-17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上に浮かぶ第1構造体と、
水上に浮かぶ、前記第1構造体に対して相対変位可能な第2構造体と、
前記第1構造体および前記第2構造体のそれぞれに弾性的に接続され、前記第1構造体および前記第2構造体のそれぞれに対して相対変位可能な中間構造体と、
第1変換回転子を含み、前記第1構造体と前記中間構造体との間の相対変位を前記第1変換回転子の回転変位に変換する第1変換機構と、
第1発電機回転子を含み、前記第1変換回転子の回転変位で前記第1発電機回転子が回転して発電を行う第1装置発電機と、を備え、
前記第1発電機回転子および前記第1変換回転子は、前記中間構造体から前記第1構造体への振動伝播を低減する慣性質量要素として機能する第1回転体を構成している、波力発電装置。
【請求項2】
前記第1装置発電機および前記第1変換回転子は、前記中間構造体に支持されている、請求項1に記載の波力発電装置。
【請求項3】
前記中間構造体は、中心軸線に沿って延びる中間空洞部を含み、
前記第1構造体は、前記中心軸線に沿って延びる、前記中間空洞部に挿入された第1ロッドを含み、
前記第1変換機構は、前記第1ロッドに設けられた、前記中心軸線に沿う軸方向に延びる第1ラックを含み、
前記第1変換回転子は、前記第1発電機回転子に連結された、前記第1ラックに噛み合う第1ピニオン歯車を含む、
請求項2に記載の波力発電装置。
【請求項4】
前記第1装置発電機および前記第1変換回転子は、前記第1構造体に支持されている、請求項1に記載の波力発電装置。
【請求項5】
前記第1構造体は、中心軸線に沿って延びる第1空洞部を含み、
前記中間構造体は、前記中心軸線に沿って延びる、前記第1空洞部に挿入された第1中間ロッドを含み、
前記第1変換機構は、前記第1中間ロッドに設けられた、前記中心軸線に沿う軸方向に延びる第1ラックを含み、
前記第1変換回転子は、前記第1発電機回転子に連結された、前記第1ラックに噛み合う第1ピニオン歯車を含む、請求項4に記載の波力発電装置。
【請求項6】
前記第1変換回転子は、前記第1ラックと前記第1ピニオン歯車との間に介在された、第1変速歯車を含む、請求項3または5に記載の波力発電装置。
【請求項7】
第2変換回転子を含み、前記第2構造体と前記中間構造体との間の相対変位を前記第2変換回転子の回転変位に変換する第2変換機構と、
第2発電機回転子を含み、前記第2変換回転子の回転変位で前記第2発電機回転子が回転して発電を行う第2装置発電機と、を備え、
前記第2発電機回転子および前記第2変換回転子は、前記中間構造体から前記第2構造体への振動伝播を低減する慣性質量要素として機能する第2回転体を構成している、請求項5または6に記載の波力発電装置。
【請求項8】
前記第2装置発電機および前記第2変換回転子は、前記第2構造体に支持されている、請求項7に記載の波力発電装置。
【請求項9】
前記第2構造体は、前記中心軸線に沿って延びる第2空洞部を含み、
前記中間構造体は、前記中心軸線に沿って延びる、前記第2空洞部に挿入された第2中間ロッドを含み、
前記第2変換機構は、前記第2中間ロッドに設けられた、前記中心軸線に沿う軸方向に延びる第2ラックを含み、
前記第2変換回転子は、前記第2発電機回転子に連結された、前記第2ラックに噛み合う第2ピニオン歯車を含む、請求項7または8に記載の波力発電装置。
【請求項10】
前記第2変換回転子は、前記第2ラックと前記第2ピニオン歯車との間に介在された、第2変速歯車を含む、請求項9に記載の波力発電装置。
【請求項11】
複数の前記第2構造体と、
前記第1構造体および対応する前記第2構造体のそれぞれに弾性的に接続され、前記第1構造体および対応する前記第2構造体のそれぞれに対して相対変位可能な複数の前記中間構造体と、
前記第1構造体と対応する前記中間構造体との間の相対変位を前記第1変換回転子の回転変位に変換する複数の前記第1変換機構と、
対応する前記第1変換回転子の回転変位で前記第1発電機回転子が回転して発電を行う複数の前記第1装置発電機と、を備えた、請求項1~10のいずれか一項に記載の波力発電装置。
【請求項12】
上方から見たときに、前記第1構造体を中心とする周方向に沿って、前記第2構造体および前記中間構造体がそれぞれ配置されている、請求項11に記載の波力発電装置。
【請求項13】
複数の前記第2構造体は、互いに連結されている、請求項11または12に記載の波力発電装置。
【請求項14】
複数の前記中間構造体は、互いに連結されている、請求項11~13のいずれか一項に記載の波力発電装置。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の波力発電装置と、
前記波力発電装置に支持された風力発電設備と、を備えた、洋上風力発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、波力発電装置および洋上風力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
洋上で風力発電を行う洋上風力発電システムは、洋上の安定した風を用いて発電を行うことができるという利点を有している。例えば、沖合で水深が急に深くなる場合には、海底に基礎を設けて風力発電設備を固定することが困難であることから、浮体式の洋上風力発電設備が有効な選択肢であると考えられている。洋上風力発電設備は、波により上下するため、波の固有周期から離調するように設計される。このことにより、振動による機器の損傷防止を図っている。また、台風等による高波浪時に振動を抑えることが設備の維持に重要と考えられている。
【0003】
洋上風力発電設備は、風を受けることによって発電を行うことができるが、浮体の制御などには外部電源を用いている。外部電源が電力系統から電力を引き込む場合には、台風などの災害時に電力系統が遮断される恐れがある。外部電源を喪失すると浮体の制御が行われないため、場合によっては浮体が倒壊するなどの危険性が指摘されている。このため、電力系統が遮断されるなどの非常時においても、電源の確保が望まれている。
【0004】
このような電源の例としては、蓄電池が挙げられる。しかしながら、蓄電池の容量は限られている。このため、外部電源の喪失が長期に及ぶ場合には、電力が不足する恐れがある。
【0005】
他の例としては、波力発電を行って得られた電力を電源として用いることが考えられる。波力発電は、波による振動を運動エネルギに変換することにより発電を行う発電方式である。波力発電は、振動発電と言うこともできる。波力発電装置は、洋上風力発電設備の浮体に、相対振動可能に発電用の浮体を取り付けることにより構成することができる。相対振動が大きくなるほど、発電量が増大する。
【0006】
しかしながら、相対振動が大きい場合、振動が大きい浮体から他方の浮体に振動が伝播し、振動が増幅する恐れがある。相対振動が小さい場合には、振動伝播の恐れは低いが、発電量が低下し得る。このため、必要な電力の確保が困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5495117号公報
【文献】特許第3718683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施の形態は、このような点を考慮してなされたものであり、振動を抑制することができるとともに、波力による発電量を増大させることができる波力発電装置および洋上風力発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施の形態による波力発電装置は、水上に浮かぶ第1構造体と、水上に浮かぶ、第1構造体に対して相対変位可能な第2構造体と、中間構造体と、第1変換機構と、第1装置発電機と、を備えている。中間構造体は、第1構造体および第2構造体のそれぞれに弾性的に接続され、第1構造体および第2構造体のそれぞれに対して相対変位可能になっている。第1変換機構は、第1変換回転子を含み、第1構造体と中間構造体との間の相対変位を第1変換回転子の回転変位に変換する。第1装置発電機は、第1発電機回転子を含み、第1変換回転子の回転変位で第1発電機回転子が回転して発電を行う。第1発電機回転子および第1変換回転子は、中間構造体から第1構造体への振動伝播を低減する慣性質量要素として機能する第1回転体を構成している。
【0010】
実施の形態による洋上風力発電システムは、上述した波力発電装置と、波力発電装置に支持された風力発電設備と、を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施の形態によれば、振動を抑制することができるとともに、波力による発電量を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1の実施の形態による洋上風力発電システムを示す概略図である。
図2図2は、図1に示す波力発電装置を示す概略断面図である。
図3図3は、図1の波力発電装置の力学モデルを示す図である。
図4図4は、一般的な波力発電装置を示す概略断面図である。
図5図5は、図4の波力発電装置の力学モデルを示す図である。
図6図6は、図4の波力発電装置における振動数応答を示すグラフである。
図7図7は、図2の波力発電装置における振動数応答を示すグラフである。
図8図8は、第2の実施の形態による波力発電装置を示す概略断面図である。
図9図9は、図8の上面図である。
図10図10は、図9の変形例を示す上面図である。
図11図11は、第3の実施の形態による波力発電装置を示す概略断面図である。
図12図12は、第4の実施の形態による波力発電装置を示す概略断面図である。
図13図13は、図12の波力発電装置の力学モデルを示す図である。
図14図14は、図12の波力発電装置における振動数応答を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態による波力発電装置および洋上風力発電システムについて説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1図7を用いて、本実施の形態による波力発電装置および洋上風力発電システムについて説明する。ここでは、洋上風力発電システムに適用される波力発電装置の例について説明する。しかしながら、波力発電装置の適用例はこれに限られることはない。
【0015】
まず、本実施の形態による波力発電装置が適用される洋上風力発電システム1について図1を用いて説明する。図1には、一例として、スパー型洋上風力発電システムが示されている。
【0016】
図1に示す洋上風力発電システム1は、風力発電設備2と、波力発電装置10と、を備えている。風力発電設備2は、第1浮体21と、塔構造体3と、風力発電機本体4と、を含んでいる。
【0017】
第1浮体21は、洋上に浮かんでいる。第1浮体21は、第1中心軸線L1を有しており、第1中心軸線L1に沿って延びるように円筒状に形成されている。第1浮体21が横揺れしていない状態では、第1中心軸線L1は、垂直方向に沿っている。第1浮体21の一部は水面下に位置しており、周囲の海水に浸漬している。水面は、図1等において符号Wで示す。第1浮体21は、水圧に耐えるように構成されている。
【0018】
第1浮体21の下部には、コンクリート等の重量物またはバラスト水等が充填された重錘部(図示せず)が設けられている。このことにより、第1浮体21の重心を低くするとともに、第1浮体21の浮力と洋上風力発電システム1の重力が平衡する。このようにして、洋上に浮かぶ第1浮体21の安定性を高めている。
【0019】
塔構造体3は、第1浮体21の上方に位置しており、第1浮体21から上方に延びている。塔構造体3は、第1浮体21に支持されており、垂直方向に細長に延びるように柱状に形成されている。
【0020】
風力発電機本体4は、塔構造体3の上端に設置されている。風力発電機本体4は、塔構造体3を介して第1浮体21に支持されている。風力発電機本体4は、風向等に応じて塔構造体3に対して水平面内で回転可能になっている。風力発電機本体4は、塔構造体3に回転可能に支持されたナセル4aと、ナセル4aに回転可能に設けられた発電用回転翼4bと、を含んでいる。ナセル4a内に、発電用回転翼4bの回転によって発電を行う風力発電機4cが内蔵されている。発電用回転翼4bは、複数のブレード4dを含んでいる。
【0021】
このような風力発電設備2は、波の加振力を受けて、垂直方向に振動する。この振動は、ヒーブとも称する。
【0022】
次に、図2を用いて、本実施の形態による波力発電装置10について説明する。図2図1に示す波力発電装置の概略断面図である。なお、図2では風力発電設備2を省略して示している。
【0023】
図2に示す波力発電装置10は、第1構造体20と、第2構造体30と、中間構造体40と、第1弾性体50と、第2弾性体60と、第1変換機構70と、第1装置発電機80と、を備えている。
【0024】
第1構造体20は、洋上に浮かぶ構造体である。第1構造体20は、上述した第1浮体21と、スポーク22と、第1ロッド23と、を含んでいる。第1浮体21は、風力発電設備2の構成要素でもあり、波力発電装置10の構成要素でもある。第1浮体21は、後述する第2浮体31よりも大きな断面積を有していてもよい。この場合、第1浮体21の安定性を、第2浮体31よりも向上させることができる。
【0025】
第1浮体21は、上述したように洋上に浮かんでいる。このため、第1浮体21は、波の加振力を受けて垂直方向に振動する。第1浮体21は、静止系に対して弾性的に支持されているとみなすことができる。このことを模式化するために、図2では、ばね定数kを有する第1仮想弾性体11によって、第1浮体21が静止系に対して弾性的に支持されている。第1仮想弾性体11は、ばね部材が存在していることを示しているのではなく、周囲の水から受ける浮力によって第1浮体21が垂直方向に運動することを模式的に示すために用いている。第1浮体21の固有振動数は、波の振動数に対して十分に離調するように設計されていてもよい。
【0026】
スポーク22は、第1浮体21の上部に連結されている。スポーク22は、第1浮体21から水平方向に、中間構造体40の上方位置まで延びている。
【0027】
第1ロッド23は、スポーク22から下方に延びている。第1ロッド23は、後述する第2中心軸線L2に沿って延びるように円筒状に形成されている。第1ロッド23は、後述する中間空洞部42に挿入されて、中間空洞部42を貫通している。第1ロッド23に、第1弾性体50が連結される弾性体連結部24が固定されている。
【0028】
第2構造体30は、第1構造体20に対して相対変位可能な構造体である。第2構造体30は、第1構造体20とは異なる位置で洋上に浮かんでいる。第2構造体30は、第2浮体31と、第2空洞部32と、を含んでいる。
【0029】
第2浮体31は、洋上に浮かんでいる。第2浮体31は、第2中心軸線L2を有しており、第2中心軸線L2に沿って延びるように円筒状に形成されている。第2浮体31が横揺れしていない状態では、第2中心軸線L2は、垂直方向に沿っている。第2浮体31の一部は、水面下に位置して、周囲の海水に浸漬している。第2浮体31は、水圧に耐えるように構成されている。第2浮体31は、上述した第1浮体21よりも小さな断面積を有していてもよい。第2浮体31の下部には、第1浮体21と同様にして重錘部(図示せず)が設けられている。
【0030】
第2浮体31は、上述したように洋上に浮かんでいる。このため、第2浮体31は、波の加振力を受けて垂直方向に振動する。第2浮体31は、上述した第1仮想弾性体11と同様に、ばね定数kを有する第2仮想弾性体12によって静止系に対して弾性的に支持されているとみなすことができる。第2浮体31の固有振動数は、波の振動数に対して十分に離調するように設計されていてもよい。
【0031】
第2空洞部32は、第2浮体31に形成されている。第2空洞部32は、第2浮体31の上面から下方に延びている。第2空洞部32は、第2中心軸線L2に沿って延びるように円筒状に形成されている。第2空洞部32は、第2浮体31を貫通してもよいが、図2に示す例では、第2空洞部32は、第2浮体31を貫通しておらず、途中位置で終端している。第2空洞部32は、後述する中間空洞部42の下方に位置している。
【0032】
第2空洞部32に、上述した第1ロッド23の下部が挿入されている。第2空洞部32の直径は、第1ロッド23の外径よりも大きくなっている。
【0033】
第2浮体31の内周面に、複数のローラ33が取り付けられていてもよい。複数のローラ33は、第2中心軸線L2に沿う軸方向dに離間して配置されていてもよく、周方向に離間して配置されていてもよい。ローラ33は、第1ロッド23の外周面に対して転動可能になっている。このことにより、第2浮体31に対する第1ロッド23の相対変位を円滑に行うことができる。第1ロッド23の外周面には、軸方向dに延びるガイドレール(図示せず)が取り付けられていてもよい。このことにより、第2構造体30が第1構造体20に対して、第2中心軸線L2を中心とする回転運動を行うことを抑制している。また、第2浮体31に対する第1ロッド23の相対変位を軸方向dに案内することができる。
【0034】
中間構造体40は、第1構造体20および第2構造体30のそれぞれに弾性的に接続されるとともに、第1構造体20および第2構造体30のそれぞれに対して相対変位可能になっている。中間構造体40は、スリーブ41と、中間空洞部42と、支持架台43と、を含んでいる。
【0035】
スリーブ41は、第2浮体31の上方であって、スポーク22の下方に位置している。スリーブ41は、第2中心軸線L2に沿って延びるように円筒状に形成されている。
【0036】
中間空洞部42は、中間構造体40を貫通していてもよい。より具体的には、中間空洞部42は、スリーブ41に形成されており、スリーブ41を貫通している。中間空洞部42は、第2中心軸線L2に沿って延びるように円筒状に形成されている。中間空洞部42は、第2空洞部32の上方に位置している。
【0037】
中間空洞部42に、上述した第1ロッド23が挿入されている。第1ロッド23は、中間空洞部42を貫通して、上述した第2空洞部32に延びて挿入されている。このことにより、第2中心軸線L2に直交する方向における第2構造体30の移動を、第1ロッド23で規制することができる。中間空洞部42の直径は、第1ロッド23の外径よりも大きくなっている。
【0038】
スリーブ41の内周面に、複数のローラ44が取り付けられていてもよい。複数のローラ44は、第2中心軸線L2に沿う軸方向dに離間して配置されていてもよく、周方向に離間して配置されていてもよい。ローラ44は、第1ロッド23の外周面に対して転動可能になっている。このことにより、スリーブ41に対する第1ロッド23の相対変位を円滑に行うことができる。また、第1ロッド23の外周面には、軸方向dに延びるガイドレール(図示せず)が取り付けられていてもよい。このことにより、中間構造体40が第1構造体20に対して、第2中心軸線L2を中心とする回転運動を行うことを抑制している。また、スリーブ41に対する第1ロッド23の相対変位を軸方向dに案内することができる。
【0039】
支持架台43は、スリーブ41の上端に位置しており、スリーブ41に支持されている。支持架台43は、水平方向(軸方向dに垂直な方向)に延びている。
【0040】
第1弾性体50は、第1構造体20と中間構造体40とを弾性的に接続している。より具体的には、第1弾性体50は、第1ロッド23に固定された弾性体連結部24とスリーブ41または支持架台43とを連結している。図2に示す例においては、1つの第1弾性体50が、弾性体連結部24とスリーブ41または支持架台43とを連結しているが、第1弾性体50の個数は任意である。第1弾性体50は、ばね定数kを有している。第1弾性体50は、例えば、コイルばねなどのばね部材によって構成されていてもよい。
【0041】
第2弾性体60は、第2構造体30と中間構造体40とを弾性的に接続している。より具体的には、第2弾性体60は、第2浮体31とスリーブ41とを連結している。図2に示す例においては、1つの第2弾性体60が、第2浮体31とスリーブ41とを連結しているが、第2弾性体60の個数は任意である。第2弾性体60は、ばね定数kを有している。第2弾性体60は、例えば、コイルばねなどのばね部材によって構成されていてもよい。
【0042】
第1変換機構70は、第1変換回転子71を含んでいる。本実施の形態による第1変換機構70は、第1構造体20と中間構造体40との間の相対変位を、第1変換回転子71の回転変位に変換するように構成されている。
【0043】
より具体的には、第1変換機構70は、上述した第1変換回転子71と、第1ラックレール72とを含んでいる。
【0044】
第1ラックレール72は、第1ラックの一例である。第1ラックレール72は、第1ロッド23に設けられている。より具体的には、第1ラックレール72は、第1ロッド23の外周面に取り付けられている。第1ラックレール72は、軸方向dに延びている。第1ラックレール72は、中間構造体40の中間空洞部42内に挿入可能になっている。上述したように、中間構造体40は、第1ロッド23の外周面に軸方向dに延びるガイドレール(図示せず)に規制されていることから、中間構造体40は第2中心軸線L2を中心とする回転運動が抑止されている。このため、第1ラックレール72は、後述する第1ピニオン歯車73と噛み合うことができる。
【0045】
第1変換回転子71は、第1ピニオン歯車73と、第1変速歯車75と、を含んでいる。
【0046】
第1ピニオン歯車73は、第1変速歯車75ともに、上述した第1変換回転子71を構成している。第1ピニオン歯車73は、第1変速歯車75を介して第1ラックレール72の歯に噛み合っており、第1構造体20と中間構造体40との間の軸方向dの並進相対変位を、回転変位に変換する。
【0047】
第1ピニオン歯車73は、中間構造体40に支持されている。より具体的には、第1ピニオン歯車73は、支持架台43に軸受(図示せず)によって回転可能に支持されている。
【0048】
第1ピニオン歯車73は、後述する第1発電機回転子81に同軸で連結されていてもよい。第1ピニオン歯車73の回転軸線は、第1発電機回転子81の回転軸線に一致していてもよい。あるいは、第1ピニオン歯車73の回転軸線は、上方から見たときに、後述する第1変速歯車75の回転軸線に直交する方向に配置されていてもよい。
【0049】
第1変速歯車75は、第1ラックレール72と第1ピニオン歯車73との間に介在されている。第1変速歯車75は、第1構造体20と中間構造体40との間の軸方向dの相対変位を、第1ラックレール72を介して回転変位に変換して、この回転変位を第1ピニオン歯車73に伝達可能に構成されている。第1変速歯車75は、第1ピニオン歯車73とともに第1変換回転子71を構成している。
【0050】
第1変速歯車75の歯数は、第1ピニオン歯車73の歯数と異なっている。このことにより、第1変速歯車75の回転速度と第1ピニオン歯車73の回転速度が異なる。図2に示す例では、第1変速歯車75のピッチ円半径が、第1ピニオン歯車73のピッチ円半径よりも大きくなっている。このことにより、第1変速歯車75の歯数が、第1ピニオン歯車73の歯数よりも多くなっており、第1変速歯車75は、第1ピニオン歯車73の回転を増速する。
【0051】
第1変速歯車75の歯数をZとし、第1ピニオン歯車73の歯数をZとすれば、第1変速歯車75と第1ピニオン歯車73の回転数比、すなわち第1変速装置74の増速率ε
【数1】
で表される。
【0052】
ところで、第1変速歯車75の歯数は、第1変速装置74によって可変であってもよい。第1変速装置74は、第1ピニオン歯車73の回転を変速可能に構成されている。第1変速装置74は、歯数が異なる複数の第1変速歯車75を含んでいてもよい。図示しない切替部によって、第1ラックレール72および第1ピニオン歯車73のそれぞれに噛み合う第1変速歯車75が切り替わるように構成されていてもよい。第1変速歯車75を異なる歯数の歯車に切り替えることによって第1変速装置74は上述の増速率εを変更することができる。複数の第1変速歯車75は、後述する第1発電機回転子81の回転軸線に沿う方向(図2の紙面に直交する方向)に並列配置されていてもよい。第1変速装置74は、第1変速歯車75を覆う第1保護カバー76を含んでいてもよい。第1変速装置74は、中間構造体40に支持されている。より具体的には、第1変速装置74は、支持架台43に支持されている。第1変速歯車75は、支持架台43に軸受(図示せず)によって回転可能に支持されている。第1変速歯車75の回転軸線は、第1ピニオン歯車73の回転軸線に平行になっていてもよい。
【0053】
第1装置発電機80は、第1発電機回転子81を含んでいる。第1装置発電機80は、第1変換回転子71の回転変位で第1発電機回転子81が回転して発電を行うように構成されている。第1装置発電機80は、中間構造体40の支持架台43に支持されている。図2に示す例においては、第1発電機回転子81は、水平方向に沿う回転軸線を有している。図2に示す例においては、支持架台43に1台の第1装置発電機80が設置されている。1台の第1変換機構70によって第1構造体20と中間構造体40との相対変位から変換された回転変位が、第1装置発電機80の第1発電機回転子81に伝達される。第1発電機回転子81には同軸のフライホイール(図示せず)が取り付けられていてもよい。この場合、フライホイールの慣性モーメントを第1発電機回転子81の慣性モーメントに含めてもよい。このことにより、第1発電機回転子81の慣性モーメントを調節してもよい。
【0054】
上述した第1発電機回転子81および第1変換回転子71は、中間構造体40から第1構造体20への振動伝播を低減する慣性質量要素として機能する第1回転体90を構成している。本実施の形態においては、第1回転体90は、第1発電機回転子81、第1ピニオン歯車73および第1変速歯車75によって構成されている。
【0055】
このように構成された本実施の形態による波力発電装置10は、図3に示す力学モデルに模式化される。
【0056】
図3に示すmは、第2構造体30の質量であり、mは中間構造体40の質量であり、mは、第1構造体20の質量である。より具体的には、mは、第2構造体30の質量に、水による付加質量などの流体的効果が加えられた質量である。mは、中間構造体40の質量に、第1装置発電機80の固定子の質量と、第1変速装置74の固定側の質量とが加えられた質量である。mは、第1構造体20の質量に、風力発電機設備2の質量と、水による付加質量など流体的効果が加えられた質量である。Xは波の変位であり、xは第2構造体30の変位であり、xは中間構造体40の変位であり、xは第1構造体20の変位である。kは第2仮想弾性体12のばね定数であり、kは第2弾性体60のばね定数であり、kは第1弾性体50のばね定数であり、kは第1仮想弾性体11のばね定数である。cは波に対する第2構造体30の減衰係数であり、cは第2構造体30と中間構造体40との間の相対変位に対する減衰係数であり、cは第1構造体20と中間構造体40との間の相対変位に対する減衰係数であり、cは波に対する第1構造体20の減衰係数である。ms3は第1回転体90の慣性質量、すなわち第1変換回転子71および第1発電機回転子81による慣性質量である。
【0057】
図3に示す力学モデルの運動方程式は、3自由度系の運動方程式となり、以下の式(2)に示すように表される。
【数2】
ここで、cは第1装置発電機80の反抗トルクによる減衰係数であり、第1装置発電機80の仕様によって決定される。
【0058】
一般的な構造物では、運動方程式の左辺の質量行列は対角行列となる。これに対して式(2)においては、非対角項に、“-mS3”が入っている。このことは、第1構造体20と中間構造体40との間に質量の連成が生じることを意味している。
【0059】
慣性質量mS3は以下の式で表される。
【数3】
ここで、εは上述した第1変速装置74の増速率であり、Is3は第1発電機回転子81の慣性モーメントと第1変換回転子71の慣性モーメントの合成値である。rは、第1変速歯車75のピッチ円半径である。このように、第1発電機回転子81および第1変換回転子71は、第1構造体20と中間構造体40との間の相対変位による振動を低減する慣性質量要素として機能する第1回転体90を構成している。すなわち、第1発電機回転子81の慣性モーメントと第1変換回転子71の慣性モーメントは、第1構造体20と中間構造体40との間の並進運動に対して質量の連成を生じる。
【0060】
慣性質量mS3は、質量mから質量mに伝わる運動エネルギを蓄積する。この運動エネルギTは、以下の式で表される。
【数4】
【0061】
したがって、第1装置発電機80は、蓄積された運動エネルギTを電気エネルギに変換するとともに、運動エネルギTで質量mと質量mとの間の振動伝達を遮断する。減衰を無視して式(2)を解くと、xが最小となる遮断振動数fs3は、以下のように表される。
【数5】
【0062】
ただし、α、β、γは、以下の式で表される。
【数6】
【数7】
【数8】
【0063】
式(5)~式(8)に示すように、遮断振動数fs3は、慣性質量mS3により調整することができる。慣性質量mS3は、式(3)に示すように、第1変速装置74の増速率εで調整することができる。
【0064】
次に、このように構成された本実施の形態による波力発電装置10の振動数応答について説明する。
【0065】
まず、比較例として、一般的な波力発電装置210の振動数応答について説明する。
【0066】
図4に示すように、一般的な波力発電装置210は、洋上に浮かぶ第1構造体220と、第2構造体230と、弾性体240と、装置発電機250と、を備えている。図4は、一般的な波力発電装置を示す概略断面図である。
【0067】
第1構造体220は、第1浮体221と、スポーク222と、第1空洞部223と、を含んでいる。第1浮体221は、図2に示す第1浮体21と同様に構成されていてもよい。ばね定数kを有する第1仮想弾性体211によって、第1浮体221が静止系に対して弾性的に支持されている。スポーク222は、第1浮体221に連結されている。スポーク222は、第1浮体221から水平方向に、第2構造体230の上方位置まで延びている。スポーク222は、装置発電機250の円筒支柱251を支持可能な支持架台として構成されている。スポーク222には、スリーブ224が固定されている。第1空洞部223は、スリーブ224に形成されている。第1空洞部223は、第2中心軸線L2に沿って延びるように円筒状に形成されている。第1空洞部223は、スリーブ224を貫通している。第1空洞部223は、第2構造体230の上方に位置している。第1空洞部223に、後述する第2ロッド232が挿入されている。第1空洞部223の直径は、第2ロッド232の外径よりも大きくなっている。
【0068】
スリーブ224の内周面に、複数のローラ225が取り付けられていてもよい。ローラ225は、第2ロッド232の外周面に対して転動可能になっている。このことにより、スリーブ224に対する第2ロッド232の相対変位を円滑に行うことができる。第2ロッド232の外周面に、第2中心軸線L2に沿う軸方向dに延びるガイドレール(図示せず)が取り付けられていてもよい。
【0069】
第2構造体230は、図2に示す第2構造体30と同様に、第1構造体220に対して相対変位可能になっている。第2構造体230は、第2浮体231と、第2ロッド232と、を含んでいる。第2浮体231は、図2に示す第2浮体231と同様に構成されていてもよい。ばね定数kを有する第2仮想弾性体212によって、第2浮体231が静止系に対して弾性的に支持されている。図4に示す第2浮体231には、空洞部は形成されていない。第2ロッド232は、第2浮体231から上方に延びている。第2ロッド232は、第2中心軸線L2に沿って延びるように円筒状に形成されている。第2ロッド232は、上述した第1空洞部223に挿入されて貫通している。
【0070】
弾性体240は、第1構造体220と第2構造体230とを弾性的に接続している。より具体的には、弾性体240は、スリーブ224と第2浮体231とを連結している。弾性体240は、ばね定数kを有している。
【0071】
装置発電機250は、電磁誘導方式のリニア発電機として構成されている。装置発電機250は、円筒支柱251と、複数のコイル252と、第2ロッド232に設置された複数の永久磁石253と、を含んでいる。円筒支柱251は、スポーク222に支持されており、スポーク222から上方に延びている。円筒支柱251は、第2中心軸線L2に沿って延びるように円筒状に形成されており、円筒支柱251の内側の空間に、第2ロッド232が挿入されている。コイル252は、円筒支柱251に巻き付けられている。永久磁石253は、第2ロッド232に取り付けられている。永久磁石253は、外周面を覆うようにリング状に形成されている。各永久磁石253は、コイル252に対応する位置に位置づけられている。図4に示す波力発電装置210は、図2に示すような慣性質量要素として機能する変換回転子および発電機回転子を含んでいない。
【0072】
図4に示す波力発電装置210において、第1浮体221と第2浮体231とが相対変位すると、各コイル252を通過する磁束が変化し、誘導起電力が生じる。このようにして、装置発電機250は発電を行うことができる。誘導起電力の大きさは、第1浮体221と第2浮体231との間の相対速度に比例する。
【0073】
図4に示す波力発電装置210は、図5に示す力学モデルに模式化される。
【0074】
図5に示すmは第2構造体230の質量であり、mは第1構造体220の質量である。より具体的には、mは、第2構造体230の質量と、装置発電機250の永久磁石253の質量と、水による付加質量などの流体的効果とが加えられた質量である。mは、第1構造体220の質量に、装置発電機250の円筒支柱251およびコイル252の質量と、風力発電設備2の質量と、水による付加質量などの流体的効果とが加えられた質量である。Xは波の変位であり、xは第2構造体230の変位であり、xは第1構造体220の変位である。kは第2仮想弾性体212のばね定数であり、kは弾性体240のばね定数であり、kは第1仮想弾性体211のばね定数である。cは波に対する第2構造体230の減衰係数であり、cは第1構造体220と第2構造体230との間の相対変位に対する減衰係数であり、cは波に対する第1構造体220の減衰係数である。
【0075】
図4に示す波力発電装置210の振動数応答結果を図6に示す。横軸は加振振動数(または波浪振動数)を示し、縦軸は応答倍率を示している。第2構造体230の応答倍率がx/Xで表され、第1構造体220の応答倍率がx/Xで表されている。
【0076】
図6に示すように、加振振動数が0.05Hz~0.5Hzの範囲において、第1構造体220と第2構造体230との間の相対変位が大きくなっている。海洋における波の変位Xの振動数はおおむね0.05Hz~0.5Hzの範囲にあるため、図4の波力発電装置210は、発電量を増大できることがわかる。加振振動数が、固有振動数に相当する0.5Hz付近で、相対変位が最も大きくなっている。しかしながら、第1構造体220の応答倍率(x/X)も大きくなっている。
【0077】
これに対して、本実施の形態による波力発電装置10の振動数応答結果を図7に示す。横軸は加振振動数を示し、縦軸は応答倍率を示している。第2構造体30の応答倍率がx/Xで表され、中間構造体40の応答倍率がx/Xで表され、第1構造体20の応答倍率がx/Xで表されている。
【0078】
図7に示すように、加振振動数が0.05Hz~0.5Hzの範囲において、第1構造体20の応答倍率(x/X)が、図6に示す第1構造体220の応答倍率(x/X)よりも小さくなっている。このことにより、中間構造体40から第1構造体20への振動の伝播が抑制されていることがわかる。このため、第1構造体20の振動が抑制されて、第1構造体20の変位が小さくなる。
【0079】
同じ加振振動数範囲で中間構造体40の応答倍率(x/X)は大きくなっているため、第1構造体20と中間構造体40との間の相対変位を大きくすることができる。このことにより、発電量を増大させることができ、発電量を効果的に増大させることができる。
【0080】
ところで、上述した式(2)の質量行列においては、非対角項に、第1発電機回転子81および第1変換回転子71による慣性質量を示す“-mS3”が入っている。このことにより、上述した式(5)に示すように遮断振動数fs3が求められ、遮断振動数fs3が存在する振動系が得られる。加振振動数が遮断振動数である場合、第1構造体20の振動をより一層抑制できるとともに、発電量をより一層増大させることができる。
【0081】
より具体的には、図7に示すように、加振振動数が、上述した遮断振動数fs3に相当する0.62Hz付近で、第1構造体20の応答倍率が小さくなっている。このことにより、中間構造体40から第1構造体20への振動の伝播を抑制でき、第1構造体20の振動をより一層抑制することができる。また、第1構造体20と中間構造体40との間の相対変位をより一層大きくすることができる。このため、発電量をより一層増大させることができる。
【0082】
遮断振動数は、第1変速装置74の上述した増速率εを変更することにより、加振振動数に応じて調整することができる。また、第1発電機回転子81にフライホイールが取り付けられた場合には、フライホイールの慣性モーメントを変更することによっても遮断振動数を加振振動数に応じて調整することができる。このことにより、第1構造体20の振動を効果的に抑制することができる。
【0083】
このように本実施の形態によれば、洋上に浮かぶ第1構造体20および第2構造体30のそれぞれに弾性的に接続された中間構造体40が、第1構造体20および第2構造体30のそれぞれに対して相対変位可能になっている。第1構造体20と中間構造体40との間の相対変位が、第1変換機構70の第1変換回転子71の回転変位に変換される。第1変換回転子71の回転変位で、第1発電機回転子81が回転して第1装置発電機80が発電を行う。第1発電機回転子81および第1変換回転子71は、中間構造体40から第1構造体20への振動伝播を低減する慣性質量要素として機能する第1回転体90を構成している。このことにより、第1構造体20の振動を抑制することができる。このため、第1構造体20と中間構造体40との間の相対変位を大きくすることができ、発電量を増大させることができる。また、上述したように、中間構造体40から第1構造体20への振動の伝播が抑制されるため、第1構造体20の振動を抑制することができる。この結果、風力発電機本体4の制御に悪影響を及ぼす振動を抑制することができるとともに、波力による発電量を増大させることができる。
【0084】
また、本実施の形態によれば、第1装置発電機80および第1変換回転子71が、中間構造体40に支持されている。このことにより、波力発電装置10の振動系において、中間構造体40の質量を含む上述した質量mを増大させることができる。このため、中間構造体40の応答倍率を大きくすることができ、第1構造体20と中間構造体40との間の相対変位を大きくすることができる。この結果、波力による発電量を増大させることができる。
【0085】
また、本実施の形態によれば、第1構造体20が、中間構造体40の中間空洞部42に挿入された第1ロッド23を含み、第1変換機構70が、第1ロッド23に設けられた、軸方向dに延びる第1ラックレール72と、第1ラックレール72の歯に噛み合う第1ピニオン歯車73と、を含んでいる。このことにより、第1構造体20と中間構造体40の相対並進変位を第1変換回転子71および第1発電機回転子81の回転変位に変換することができる。また、第1ラックレール72が設けられた第1ロッド23を、第1構造体20の構成要素とすることができる。第1構造体20は、第2構造体30よりも安定性を有している場合には、第1ロッド23が傾倒することを抑制でき、波力発電装置10が損傷することを抑制できる。
【0086】
また、本実施の形態によれば、第1変換回転子71は、第1ラックレール72と第1ピニオン歯車73との間に介在された第1変速歯車75を含んでいる。このことにより、第1変速歯車75によって、第1ピニオン歯車73の回転速度を調整することができ、第1装置発電機80の発電量を調整することができる。また、第1変速歯車75の歯数を調整することにより、第1変速歯車75と第1ピニオン歯車73の回転数比である増速率を、加振振動数に応じて調整することができ、遮断振動数を調整することができる。このため、第1構造体20の振動を効果的に抑制することができるとともに、波力による発電量を効果的に増大させることができる。
【0087】
なお、上述した本実施の形態においては、第1変換機構70が、第1構造体20と中間構造体40との間の相対変位を第1変換回転子71の回転変位に変換する例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。例えば、第1変換機構70が、第2構造体30と中間構造体40との間の相対変位を第1変換回転子71の回転変位に変換するようにしてもよい。この場合の第1変換機構70は、後述する図12に示す第2変換機構100と同様に構成することができる。
【0088】
また、上述した本実施の形態においては、第1ピニオン歯車73が、第1変速歯車75を介して第1ラックレール72に噛み合っている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。例えば、第1ピニオン歯車73と第1ラックレール72との間に第1変速歯車75は介在されていなくてもよい。この場合、第1ピニオン歯車73が第1ラックレール72に直接的に噛み合う。
【0089】
(第2の実施の形態)
次に、図8図10を用いて、第2の実施の形態による波力発電装置および洋上風力発電システムについて説明する。
【0090】
図8図10に示す第2の実施の形態においては、波力発電装置が、複数の第2構造体と、複数の中間構造体と、複数の第1変換機構と、複数の第1装置発電機と、を備えている点が主に異なり、他の構成は、図1図3および図7に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図8図10において、図1図3および図7に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。図8は、第2の実施の形態による波力発電装置を示す概略断面図であり、図9は、図8の上面図である。図8および図9では風力発電設備2を省略して示している。
【0091】
図8および図9に示すように、本実施の形態による波力発電装置10は、複数の第2構造体30と、複数の中間構造体40と、複数の第1変換機構70と、複数の第1装置発電機80と、を備えている。本実施の形態においては、第2構造体30の台数、中間構造体40の台数、第1変換機構70の台数および第1装置発電機80の台数はそれぞれ4つである。
【0092】
各第2構造体30は、対応する中間構造体40を介して第1構造体20に弾性的に接続されている。各第2構造体30は、第1構造体20に対して独立して相対変位可能に構成されている。第2構造体30は、別々に構成されており、独立して振動する。第2構造体30は、図9に示すように上方から見たときに、第1構造体20の第1浮体21を中心とする周方向に沿って、均等に配置されていてもよい。
【0093】
各中間構造体40は、第1構造体20および対応する第2構造体30のそれぞれに弾性的に接続されている。各中間構造体40は、第1構造体20および対応する第2構造体30のそれぞれに対して相対変位可能に構成されている。中間構造体40は別々に構成されており、独立して振動する。中間構造体40は、図9に示すように上方から見たときに、第1浮体21を中心とする周方向に沿って均等に配置されていてもよい。中間構造体40は、対応する第2構造体30の上方に配置されている。
【0094】
各第1変換機構70は、第1構造体20と対応する中間構造体40との間の相対変位を第1変換回転子71の回転変位に変換するように構成されている。各第1変換機構70の第1変換回転子71は、対応する中間構造体40に支持されている。
【0095】
各第1装置発電機80は、対応する第1変換機構70の第1変換回転子71の回転変位で第1発電機回転子81が回転して発電を行うように構成されている。各第1装置発電機80は、対応する第1変換回転子71とともに、対応する中間構造体40に支持されている。
【0096】
図9に示すように、上方から見たときに、第1構造体20を中心とする周方向に沿って、第2構造体30および中間構造体40がそれぞれ配置されている。より具体的には、第2構造体30および中間構造体40は、周方向に均等に配置されている。
【0097】
例えば、上方から見たときに、第1構造体20の第1中心軸線L1を中心にして点対称となる位置に、第2構造体30および中間構造体40が位置していてもよい。本実施の形態による波力発電装置10は、4台の第2構造体30および中間構造体40を備えている。この場合、図9に示すように、第2構造体30および中間構造体40は、90°ピッチで均等に配置されていてもよい。4台の第2構造体30のうちの2台の第2構造体30は、対角上に、すなわち第1構造体20に対して反対側に配置されている。すなわち、対角上に配置された2台の第2構造体30を1つの対としたときに、二対の第2構造体30が、第1構造体20の周囲に配置されている。
【0098】
第1変換機構70および第1装置発電機80は、対応する中間構造体40に支持されている。第1変換機構70および第1装置発電機80は、対応する第1ロッド23に対して半径方向外側に配置されている。図9に示すように、第1装置発電機80は、対応する第1ピニオン歯車73に対して時計回りに進む方向に配置されている。より具体的には、図9において右側に配置された第1装置発電機80は、対応する第1ピニオン歯車73の下側に配置され、下側に配置された第1装置発電機80は、対応する第1ピニオン歯車73に対して左側に配置されている。左側に配置された第1装置発電機80は、対応する第1ピニオン歯車73の上側に配置され、上側に配置された第1装置発電機80は、対応する第1ピニオン歯車73の右側に配置されている。
【0099】
上述したように、第1装置発電機80は、点対称に配置されている。各第1装置発電機80の第1発電機回転子81で発生する偶力は、大きさは同一で作用方向が反対になる。このことにより、波力発電装置10に発生するローリング(波力発電装置10の第1中心軸線L1を中心とする回転振動)およびピッチング(波力発電装置10の第1中心軸線L1に対して直交する軸を中心とする回転振動)を抑制することができる。すなわち、各第1発電機回転子81で発生する偶力によって生じる回転力の回転方向は、対角上に位置する2つの第1発電機回転子81の間で互いに反対方向になる。このため、各第1発電機回転子81で発生する偶力によって生じる回転力を相殺することができ、ローリングおよびピッチングが波力発電装置10に励起されることを抑制できる。
【0100】
このように本実施の形態によれば、波力発電装置10が、複数の第2構造体30と、複数の中間構造体40と、複数の第1変換機構70と、複数の第1装置発電機80と、を備えている。中間構造体40は、第1構造体20および対応する第2構造体30のそれぞれに対して相対変位可能になっている。第1変換機構70は、第1構造体20と対応する中間構造体40との間の相対変位を第1変換回転子71の回転変位に変換し、対応する第1装置発電機80で発電が行われる。このことにより、複数の第1装置発電機80で発電を行うことができる。このため、波力による発電量を増大させることができる。
【0101】
また、本実施の形態によれば、上方から見たときに、第1構造体20を中心とする周方向に沿って、第2構造体30、中間構造体40、第1変換機構70および第1装置発電機80がそれぞれ配置されている。このことにより、各第1装置発電機80の第1発電機回転子81で発生する偶力によって生じる回転力を、相殺することができる。このため、波力発電装置10にローリングやピッチングが励起されることを抑制でき、風力発電機本体4の制御に悪影響が及ぼされることを抑制できる。
【0102】
なお、上述した本実施の形態においては、第2構造体30の台数、中間構造体40の台数、第1変換機構70の台数および第1装置発電機80の台数がそれぞれ4つである例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない、第2構造体30の台数、中間構造体40の台数、第1変換機構70の台数および第1装置発電機80の台数は、複数であれば2つでも3つでもよく、任意である。これらの台数が例えば3つのような奇数である場合であっても、第1浮体21を中心とする周方向に沿って均等に配置されている場合には、各第1発電機回転子81で発生する偶力によって生じる回転力を相殺することができる。
【0103】
また、上述した本実施の形態においては、第2構造体30が別々に構成され、各第2構造体30が独立して振動する例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。例えば、図10に示すように、複数の第2構造体30が、互いに連結されて、一体化されていてもよい。図10は、図9の変形例を示す上面図である。このように複数の第2構造体30を連結することにより、振動数が小さい波に対する機械的強度を向上させることができる。例えば、周方向に互いに隣り合う第2構造体30の第2浮体31が、構造体連結部95によって連結されていてもよい。この場合、上方から見たときに、複数の第2構造体30および複数の構造体連結部95が全体として、リング状に形成されていてもよい。あるいは、図示しないが、第2構造体30の代わりに中間構造体40を互いに連結してもよい。さらに周方向に互いに隣り合う第2構造体30の第2浮体31が構造体連結部95によって連結され、かつ中間構造体40が互いに連結されてもよい。
【0104】
(第3の実施の形態)
次に、図11を用いて、第3の実施の形態による波力発電装置および洋上風力発電システムについて説明する。
【0105】
図11に示す第3の実施の形態においては、第1変換回転子および第1装置発電機が、第1構造体に支持されている点が主に異なり、他の構成は、図1図3および図7に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図11において、図1図3および図7に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。図11は、第3の実施の形態による波力発電装置を示す概略断面図である。図11では風力発電設備2を省略して示している。
【0106】
図11に示すように、本実施の形態においては、第1構造体20が、第1空洞部25を含んでいる。第1空洞部25は、スポーク22に固定されたスリーブ26に形成されており、スリーブ26を貫通している。スリーブ26は、スポーク22から下方に突出している。第1空洞部25は、第2中心軸線L2に沿って延びるように円筒状に形成されている。第1空洞部25は、中間構造体40の後述する中間本体部45の上方に位置している。第1空洞部25に、後述する第1中間ロッド46が挿入されている。第1空洞部25の直径は、第1中間ロッド46の外径よりも大きくなっている。
【0107】
スリーブ26の内周面に、複数のローラ27が取り付けられていてもよい。複数のローラ27は、第2中心軸線L2に沿う軸方向dに離間して配置されていてもよく、周方向に離間して配置されていてもよい。ローラ27は、第1中間ロッド46の外周面に対して転動可能になっている。このことにより、スリーブ26に対する第1中間ロッド46の相対変位を円滑に行うことができる。第1中間ロッド46の外周面には、軸方向dに延びるガイドレール(図示せず)が取り付けられていてもよい。このことにより、中間構造体40が第1構造体20に対して、第2中心軸線L2を中心とする回転運動を行うことを抑制している。また、スリーブ26に対する第1中間ロッド46の相対変位を軸方向dに案内することができる。
【0108】
図2に示す第1の実施の形態と同様に、第2構造体30の第2浮体31に、第2空洞部32が形成されている。第2空洞部32は、後述する中間本体部45の下方に位置している。第2空洞部32に、後述する第2中間ロッド47が挿入されている。第2空洞部32の直径は、第2中間ロッド47の外径よりも大きくなっている。
【0109】
第2浮体31の内周面に、図2に示す第1の実施の形態と同様に複数のローラ33が取り付けられていてもよい。ローラ33は、第2中間ロッド47の外周面に対して転動可能になっている。第2中間ロッド47の外周面には、軸方向dに延びるガイドレール(図示せず)が取り付けられていてもよい。
【0110】
中間構造体40は、中間本体部45と、第1中間ロッド46と、第2中間ロッド47と、を含んでいる。中間本体部45は、第1空洞部25の下方であって、第2空洞部32の上方に位置している。中間本体部45は、第1中間ロッド46および第2中間ロッド47よりも水平方向に延び出ている。
【0111】
第1中間ロッド46は、中間本体部45から上方に延びている。第1中間ロッド46は、第2中心軸線L2に沿って延びるように円筒状に形成されている。第1中間ロッド46は、第1空洞部25に挿入されて、第1空洞部25を貫通している。
【0112】
第2中間ロッド47は、中間本体部45から下方に延びている。第2中間ロッド47は、第2中心軸線L2に沿って延びるように円筒状に形成されている。第2中間ロッド47は、第2空洞部32に挿入されている。このことにより、第2中心軸線L2に直交する方向における第2構造体30の移動を、第2中間ロッド47で規制することができる。
【0113】
第1弾性体50は、第1弾性体50は、スリーブ26と中間本体部45とを連結している。第2弾性体60は、第2浮体31と中間本体部45とを連結している。
【0114】
第1変換機構70の第1ラックレール72は、第1中間ロッド46に設けられている。より具体的には、第1ラックレール72は、第1中間ロッド46の外周面に取り付けられている。第1ラックレール72は、軸方向dに延びており、第1空洞部25内に挿入可能になっている。
【0115】
第1ピニオン歯車73は、第1構造体20に支持されている。より具体的には、第1ピニオン歯車73は、スポーク22に回転可能に支持されている。第1変速装置74は、第1構造体20のスポーク22に支持されている。第1変速歯車75は、スポーク22に回転可能に支持されている。
【0116】
第1装置発電機80は、第1構造体20に支持されている。より具体的には、第1装置発電機80は、スポーク22に支持されている。第1発電機回転子81は、スポーク22に回転可能に支持されている。
【0117】
このように本実施の形態によれば、第1装置発電機80および第1変換回転子71が、第1構造体20に支持されている。このことにより、第1ピニオン歯車73および第1装置発電機80を、振動の抑制を図っている第1構造体20に支持させることができる。このため、第1装置発電機80への振動の伝播を抑制することができ、第1装置発電機80の信頼性および保守性を向上させることができる。
【0118】
また、本実施の形態によれば、第1構造体20が、第2中心軸線L2に沿って延びる第1空洞部25を含み、中間構造体40が、第2中心軸線L2に沿って延びる第1中間ロッド46を含んでいる。第1中間ロッド46が、第1空洞部25に挿入されている。第1変換機構70の第1ラックレール72は、第1中間ロッド46に設けられている。このことにより、第1構造体20と中間構造体40の相対並進変位を第1変換回転子71および第1発電機回転子81の回転変位に変換することができる。
【0119】
(第4の実施の形態)
次に、図12図14を用いて、第4の実施の形態による波力発電装置および洋上風力発電システムについて説明する。
【0120】
図12図14に示す第4の実施の形態においては、波力発電装置が、第2変換回転子を含む第2変換機構と、第2変換回転子の回転変位で発電を行う第2装置発電機と、を備えている点が主に異なり、他の構成は、図11に示す第3の実施の形態と略同一である。なお、図12図14において、図11に示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。図12は、第4の実施の形態による波力発電装置を示す概略断面図である。図12では風力発電設備2を省略して示している。
【0121】
図12に示すように、本実施の形態による波力発電装置10は、第2変換機構100と、第2装置発電機110と、を更に備えている。
【0122】
第2変換機構100は、第2変換回転子101を含んでいる。本実施の形態による第2変換機構100は、第2構造体30と中間構造体40との間の相対変位を、第2変換回転子101の回転変位に変換するように構成されている。
【0123】
より具体的には、第2変換機構100は、上述した第2変換回転子101と、第2ラックレール102と、を含んでいる。
【0124】
第2ラックレール102は、第2ラックの一例である。第2ラックレール102は、第2中間ロッド47に設けられている。より具体的には、第2ラックレール102は、第2中間ロッド47の外周面に取り付けられている。第2ラックレール102は、軸方向dに延びている。第2ラックレール102は、第2浮体31の第2空洞部32内に挿入可能になっている。
【0125】
第2変換回転子101は、第2ピニオン歯車103と、第2変速歯車105と、を含んでいる。
【0126】
第2ピニオン歯車103は、第2変速歯車105とともに、上述した第2変換回転子101を構成している。第2ピニオン歯車103は、第2変速歯車105を介して、第2ラックレール102の歯に噛み合っており、第2構造体30と中間構造体40との間の軸方向dの並進相対変位を、回転変位に変換する。第2ピニオン歯車103は、後述する第2発電機回転子111に同軸で連結されていてもよい。
【0127】
第2ピニオン歯車103は、第2構造体30に支持されている。より具体的には、第2ピニオン歯車103は、第2浮体31に回転可能に支持されている。第2浮体31に、支持架台34が取り付けられて、第2ピニオン歯車103が、軸受(図示せず)によって支持架台34に回転可能に支持されていてもよい。第2ピニオン歯車103の回転軸線は、第2発電機回転子111の回転軸線に一致していてもよい。あるいは、第2ピニオン歯車103の回転軸線は、上方から見たときに、後述する第2変速歯車115の回転軸線に直交する方向に配置されていてもよい。支持架台34は、第2浮体31の上端に位置しており、第2浮体31に支持されている。支持架台34は、水平方向(軸方向dに垂直な方向)に延びている。
【0128】
第2変速歯車105は、第2ラックレール102と第2ピニオン歯車103との間に介在されている。第2変速歯車105は、第2ピニオン歯車103とともに第2変換回転子101を構成している。第2変速歯車105の歯数は、第2変速装置104によって可変であってもよい。第2変速装置104は、図2等に示す第1変速装置74と同様に構成することができるため、ここでは詳細な説明は省略する。第2変速装置104は、第2変速歯車105を覆う保護カバー106を含んでいてもよい。第2変速装置104は、第2構造体30に支持されている。より具体的には、第2変速装置104は、第2浮体31または支持架台34に支持されている。第2変速歯車105は、支持架台34に軸受(図示せず)によって回転可能に支持されている。第2変速歯車105の回転軸線は、第2ピニオン歯車103の回転軸線に平行になっていてもよい。
【0129】
第2装置発電機110は、第2発電機回転子111を含んでいる。第2装置発電機110は、第2変換回転子101の回転変位で第2発電機回転子111が回転して発電を行うように構成されている。第2装置発電機110は、第2構造体30の第2浮体31または支持架台34に支持されている。第2発電機回転子111は、水平方向に沿う回転軸線を有している。
【0130】
上述した第2発電機回転子111および第2変換回転子101は、中間構造体40から第2構造体30への振動伝播を低減する慣性質量要素として機能する第2回転体120を構成している。本実施の形態においては、第2回転体120は、第2発電機回転子111、第2ピニオン歯車103および第2変速歯車105によって構成されている。
【0131】
図12に示すように、第2中間ロッド47に、第2弾性体60が連結される弾性体連結部48が固定されていてもよい。この場合、第2弾性体60は、第2中間ロッド47に固定された弾性体連結部48と第2浮体31とを連結している。このことにより、中間本体部45を第2浮体31から遠ざけることができ、第2ラックレール102の取り付けスペースを確保することができる。第1構造体20のスポーク22は、第1浮体21の上部に連結するようにしてもよい。
【0132】
このように構成された本実施の形態による波力発電装置10は、図13に示す力学モデルに模式化される。図13に示すms2は、第2回転体120の慣性質量、すなわち第2変換回転子101および第2発電機回転子111による慣性質量である。本実施の形態においては、mは、第2構造体30の質量に、水の付加質量などの流体的効果と、第2装置発電機110の固定子の質量と、第2変速装置104の固定側の質量とが加えられた質量である。
【0133】
図13に示す力学モデルの運動方程式は、以下の式(9)に示すように表される。
【数9】
ここで、cs3は第1装置発電機80の反抗トルクによる減衰係数であり、第1装置発電機80の仕様によって決定される。cs2は第2装置発電機110の反抗トルクによる減衰係数であり、第2装置発電機110の仕様によって決定される。
【0134】
慣性質量mS2は以下の式で表される。
【数10】
ここで、εは第2変速装置104の増速率であり、Is2は第2発電機回転子111の慣性モーメントと第2変換回転子101の慣性モーメントの合成値である。rは、第2変速歯車105のピッチ円半径である。このように、第2発電機回転子111および第2変換回転子101は、第2構造体30と中間構造体40との間の相対変位による振動を低減する慣性質量要素として機能する第2回転体120を構成している。すなわち、第2発電機回転子111の慣性モーメントと第2変換回転子101の慣性モーメントは、第2構造体30と中間構造体40との間の並進運動に対して質量の連成を生じる。
【0135】
慣性質量mS3は、上述した式(3)で表される。上述したように、第1発電機回転子81および第1変換回転子71は、第1構造体20と中間構造体40との間の相対変位による振動を低減する慣性質量要素として機能する第1回転体90を構成している。すなわち、第1発電機回転子81の慣性モーメントと第1変換回転子71の慣性モーメントは、第1構造体20と中間構造体40との間の並進運動に対して質量の連成を生じる。
【0136】
第2装置発電機110の第2発電機回転子111による慣性質量mS2は、質量mから質量mに伝わる運動エネルギTを蓄積する。この運動エネルギTは、以下の式で表される。
【数11】
【0137】
第1装置発電機80の第1発電機回転子81による慣性質量mS3は、質量mから質量mに伝わる運動エネルギTを蓄積する。この運動エネルギTは、以下の式で表される。
【数12】
【0138】
第1装置発電機80は、蓄積された運動エネルギTを電気エネルギに変換するとともに、運動エネルギTで質量mと質量mとの間の振動伝達を遮断する。第2装置発電機110は、蓄積された運動エネルギTを電気エネルギに変換するとともに、運動エネルギTで質量mと質量mとの間の振動伝達を遮断する。減衰を無視して式(9)を解くと、xが最小となる遮断振動数fs3は、以下のように表される。
【数13】
【0139】
ただし、α、β、γは、以下の式で表される。
【数14】
【数15】
【数16】
【0140】
式(13)~式(16)に示すように、遮断振動数fs3は、慣性質量mS2およびmS3により調整することができる。慣性質量mS2は、式(10)に示すように、第2変速装置104の増速率εで調整することができる。慣性質量mS3は、式(3)に示すように、第1変速装置74の増速率εで調整することができる。
【0141】
本実施の形態による波力発電装置10の振動数応答結果を図14に示す。図14に示すように、第1構造体20の応答倍率(x/X)が小さくなっている。このことにより、中間構造体40から第1構造体20への振動の伝播が、図7に示す応答倍率よりも、より一層抑制されていることがわかる。このため、第1構造体20の振動がより一層抑制されて、第1構造体20の変位がより一層小さくなる。
【0142】
このように本実施の形態によれば、第1構造体20と中間構造体40との間の相対変位が、第1変換機構70の第1変換回転子71の回転変位に変換される。第1変換回転子71の回転変位で、第1発電機回転子81が回転して第1装置発電機80が発電を行う。第1発電機回転子81および第1変換回転子71は、中間構造体40から第1構造体20への振動伝播を低減する慣性質量要素として機能する第1回転体90を構成している。このことにより、第1構造体20の振動を抑制することができる。このため、第1構造体20と中間構造体40との間の相対変位を大きくすることができ、発電量を増大させることができる。また、上述したように、中間構造体40から第1構造体20への振動の伝播が抑制されるため、第1構造体20の振動を抑制することができる。この結果、風力発電機本体4の制御に悪影響を及ぼす振動を抑制することができるとともに、波力による発電量を増大させることができる。
【0143】
また、本実施の形態によれば、第2構造体30と中間構造体40との間の相対変位が、第2変換機構100の第2変換回転子101の回転変位に変換される。第2変換回転子101の回転変位で、第2発電機回転子111が回転して第2装置発電機110が発電を行う。第2発電機回転子111および第2変換回転子101は、中間構造体40から第2構造体30への振動伝播を低減する慣性質量要素として機能する第2回転体120を構成している。このことにより、第2構造体30の振動を抑制することができる。このため、第2構造体30と中間構造体40との間の相対変位を大きくすることができ、発電量を増大させることができる。また、上述したように、中間構造体40から第2構造体30への振動の伝播が抑制されるため、第2構造体30の振動を抑制することができる。この結果、風力発電機本体4の制御に悪影響を及ぼす振動を抑制することができるとともに、波力による発電量を増大させることができる。
【0144】
また、本実施の形態によれば、第2装置発電機110および第2変換回転子101は、第2構造体30に支持されている。このことにより、波力発電装置10の振動系において、第2構造体30の質量を含む上述した質量mを増大させることができる。このため、第2構造体30の応答倍率を大きくすることができ、第2構造体30と中間構造体40との間の相対変位を大きくすることができる。この結果、波力による発電量を増大させることができる。
【0145】
また、本実施の形態によれば、第2構造体30が、第2中心軸線L2に沿って延びる第2空洞部32を含み、中間構造体40が、第2中心軸線L2に沿って延びる第2中間ロッド47を含んでいる。第2中間ロッド47が、第2空洞部32に挿入されている。第2変換機構100の第2ラックレール102は、第2中間ロッド47に設けられている。このことにより、第2構造体30と中間構造体40との間の並進相対変位を、回転変位に変換することができる。
【0146】
また、本実施の形態によれば、第2変換回転子101は、第2ラックレール102と第2ピニオン歯車103との間に介在された第2変速歯車105を含んでいる。このことにより、第2変速歯車105によって、第2ピニオン歯車103の回転速度を調整することができ、第2装置発電機110の発電量を調整することができる。また、第2変速歯車105の歯数を調整することにより、第2変速歯車105と第2ピニオン歯車103の回転数比である増速率を、加振振動数に応じて調整することができ、遮断振動数を調整することができる。このため、第1構造体20の振動を効果的に抑制することができるとともに、波力による発電量を効果的に増大させることができる。
【0147】
また、上述した本実施の形態においては、第2ピニオン歯車103が、第2変速歯車105を介して第2ラックレール102に噛み合っている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。例えば、第2ピニオン歯車103と第2ラックレール102との間に第2変速歯車105は介在されていなくてもよい。この場合、第2ピニオン歯車103が第2ラックレール102に直接的に噛み合う。
【0148】
以上述べた実施の形態によれば、振動を抑制することができるとともに、波力による発電量を増大させることができる。
【0149】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内で、これらの実施の形態を、適宜組み合わせることも可能である。
【0150】
また、上述した実施形態においては、スパー型洋上風力発電システムを例にとって説明した。しかしながら、このことに限られることはない。例えば、セミサブマーシブル(semi-submersible)型、テトラ・スパー(TetraSpar)型、バージ型、テンションレグプラットフォーム(TLP)型などの他の浮体方式の洋上風力発電システムにも本実施の形態を適用可能である。この場合、第1浮体21は、複数の浮体によって構成されていてもよい。
【0151】
また、上述した実施の形態においては、波力発電装置が、海水域に設置される洋上風力発電システムに適用される例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、波力発電装置は、淡水域または汽水域に設置される水上風力発電システムに適用されてもよい。この場合、第1浮体21および第2浮体31は、水上に浮かぶ。
【符号の説明】
【0152】
1:洋上風力発電システム、2:風力発電設備、10:波力発電装置、20:第1構造体、23:第1ロッド、25:第1空洞部、30:第2構造体、32:第2空洞部、40:中間構造体、46:第1中間ロッド、47:第2中間ロッド、70:第1変換機構、71:第1変換回転子、72:第1ラックレール、73:第1ピニオン歯車、74:第1変速装置、80:第1装置発電機、81:第1発電機回転子、100:第2変換機構、101:第2変換回転子、102:第2ラックレール、103:第2ピニオン歯車、104:第2変速装置、110:第2装置発電機、111:第2発電機回転子、d:軸方向、L2:第2中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14