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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】ガスセンサの加締め装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 39/00 20060101AFI20241021BHJP
【FI】
B21D39/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022052826
(22)【出願日】2022-03-29
(65)【公開番号】P2023145913
(43)【公開日】2023-10-12
【審査請求日】2023-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】江川 浩二
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-111511(JP,A)
【文献】特開2021-007964(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0059374(US,A1)
【文献】特開2017-173220(JP,A)
【文献】特開2018-103230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿って延びるガスセンサの軸回りに配置され、前記ガスセンサを加締めるための複数の加締め治具と、前記軸方向に沿って移動することで、複数の前記加締め治具を前記ガスセンサに押圧させる押圧治具とを備えるガスセンサの加締め装置であって、
前記押圧治具には、前記ガスセンサ及び複数の前記加締め治具を収容する穴が形成され、
前記穴を形成する前記押圧治具の内壁面は、複数の前記加締め治具の各々を前記ガスセンサに押圧するために、前記ガスセンサの軸線に対して傾斜する複数の第1傾斜平面を有し、
複数の前記加締め治具の各々は、複数の前記第1傾斜平面のうち、対応する第1傾斜平面と面接触する第2傾斜平面を有する、ガスセンサの加締め装置。
【請求項2】
請求項1記載のガスセンサの加締め装置において、
複数の前記第1傾斜平面は、前記押圧治具の内部に進む程、前記ガスセンサに近づく傾斜面である、ガスセンサの加締め装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のガスセンサの加締め装置において、
複数の前記加締め治具の各々の前記第2傾斜平面には、グリース溜りが設けられている、ガスセンサの加締め装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のガスセンサの加締め装置において、
複数の前記第1傾斜平面は、前記ガスセンサの軸回りに等間隔に配置され、
複数の加締め治具の各々は、前記第2傾斜平面が対応する前記第1傾斜平面と面接触するように、前記ガスセンサの軸回りに等間隔で配置されている、ガスセンサの加締め装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のガスセンサの加締め装置において、
複数の前記加締め治具が前記ガスセンサから離間するように、複数の前記加締め治具を付勢する複数のバネ部材をさらに備える、ガスセンサの加締め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサの加締め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガスセンサの加締め装置が開示されている。加締め装置は、ガスセンサを該ガスセンサの径方向内側に加締める。具体的には、加締め装置は、押圧治具と複数の加締め治具とを備える。押圧治具には、ガスセンサ及び複数の加締め治具を収容する穴が形成されている。穴を形成する押圧治具の内壁面は、ガスセンサの軸線に対してテーパ状(円錐状)に傾斜している。
【0003】
この加締め装置は、下記の方法によって、ガスセンサを加締める。先ず、ガスセンサの軸回りに複数の加締め治具を配置する。次に、ガスセンサの軸方向に沿って押圧治具を相対的に移動させることで、ガスセンサを押圧治具に挿入させると共に、押圧治具の内壁面を複数の加締め治具の背面に当接させる。次に、ガスセンサの軸方向に沿って押圧治具をさらに移動させることで、複数の加締め治具をガスセンサに押圧させる。これにより、ガスセンサは、該ガスセンサの径方向内側に加締められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5810120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、押圧治具の内壁面は、ガスセンサの軸線に対してテーパ状(円錐状)に傾斜している。そのため、押圧治具の内壁面の曲率半径は、ガスセンサの軸方向に沿って変化している。具体的には、内壁面は、ガスセンサ及び加締め治具に近づく程、曲率半径が大きくなる。従って、押圧治具の内壁面のうち、ガスセンサ及び加締め治具に近接する開口端(ガスセンサが挿入される入口部分)の曲率半径が最も大きい。
【0006】
これに対して、複数の加締め治具の各々の背面は、押圧治具の内壁面との接触面であり、押圧治具の内壁面に対応してテーパ状に形成されている。加締め治具の背面は、開口端の曲率半径と略同じ曲率半径を有する。
【0007】
そのため、ガスセンサを加締めるときに、押圧治具がガスセンサに向かって移動する程、加締め治具と押圧治具の内壁面との接触面積が小さくなる。この結果、ガスセンサの軸方向に沿った複数の加締め治具の各々と押圧治具との接触位置が互いに異なると、加締め荷重がばらつく。また、複数の加締め治具の製造ばらつきによって、ガスセンサの軸方向に沿った複数の加締め治具の各々と押圧治具との接触位置が異なる場合でも、加締め荷重がばらつく。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様は、軸方向に沿って延びるガスセンサの軸回りに配置され、前記ガスセンサを加締めるための複数の加締め治具と、前記軸方向に沿って移動することで、複数の前記加締め治具を前記ガスセンサに押圧させる押圧治具とを備えるガスセンサの加締め装置であって、前記押圧治具には、前記ガスセンサ及び複数の前記加締め治具を収容する穴が形成され、前記穴を形成する前記押圧治具の内壁面は、複数の前記加締め治具の各々を前記ガスセンサに押圧するために、前記ガスセンサの軸線に対して傾斜する複数の第1傾斜平面を有し、複数の前記加締め治具の各々は、複数の前記第1傾斜平面のうち、対応する第1傾斜平面と面接触する第2傾斜平面を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、複数の加締め治具の各々の第2傾斜平面が、対応する第1傾斜平面と面接触する。これにより、第1傾斜平面に沿って加締め治具が摺動する場合、第1傾斜平面の全面にわたって、該第1傾斜平面と第2傾斜平面とがスムーズに面接触する。この結果、加締め荷重のばらつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、加締め装置の断面図である。
図2図2は、押圧治具と複数の加締め治具との平面図である。
図3図3は、加締め治具の拡大平面図である。
図4図4は、加締め治具の背面図である。
図5図5は、加締め装置の動作を示す断面図である。
図6図6は、加締め装置の動作を示す断面図である。
図7図7は、加締め装置の動作を示す断面図である。
図8図8は、加締め装置の動作を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本実施形態に係るガスセンサの加締め装置10の断面図である。以下の説明では、「ガスセンサの加締め装置10」を「加締め装置10」と呼称する。
【0013】
ガスセンサ12は、例えば、被測定ガスのうち、特定ガスのガス濃度を測定するガスセンサである。ガスセンサ12は、筒状体14と、センサ素子(不図示)と、コネクタ(不図示)と、グロメット16と、リード線18とを有する。
【0014】
筒状体14は、所定方向に延びている。図1では、筒状体14は、上下方向に延びている。筒状体14の軸方向がガスセンサ12の軸方向である。筒状体14の外周面には、スクリューナット20が取り付けられている。センサ素子及びコネクタは、筒状体14の内部に配置されている。コネクタは、センサ素子と接続されている。グロメット16は、ゴム等の弾性体である。グロメット16は、筒状体14の基端部22に取り付けられている。リード線18は、コネクタに接続されている。リード線18は、グロメット16に形成された貫通孔(不図示)を挿通し、外部に引き出されている。
【0015】
筒状体14の基端部22及びグロメット16は、加締め装置10によって、筒状体14の径方向内側に加締められる。加締められた基端部22及びグロメット16は、加締め部24を構成する。加締め部24は、側面視で、凹凸状に形成されている。加締め部24が形成されることで、筒状体14の内部が封止される。なお、ガスセンサ12において、加締め部24が形成される箇所がガスセンサ12の基端部となる。また、ガスセンサ12において、基端部(加締め部24)とは反対側の箇所がガスセンサ12の先端部となる。
【0016】
加締め装置10は、駆動源(不図示)と、連結プレート26と、ベースプレート28と、複数の連結ロッド30と、第1ガイド32と、押圧治具34と、第2ガイド36と、複数の加締め治具38と、複数のバネ部材40とを備える。加締め装置10は、ガスセンサ12を加締めるときに、ガスセンサ12の中心軸42(軸、軸線)と加締め装置10の中心軸44とが略同軸となるように設けられている。
【0017】
駆動源は、例えば、シリンダである。シリンダのロッドは、中心軸44(中心軸42)と略同軸に延びている。シリンダのロッドは、連結プレート26に連結されている。連結プレート26は、中心軸44に直交する板状部材である。連結プレート26は、中心軸44と略同軸に配置されている。
【0018】
ベースプレート28は、連結プレート26とガスセンサ12との間に配置されている。ベースプレート28は、中心軸44に直交する板状部材である。ベースプレート28は、中心軸44と略同軸に配置されている。
【0019】
複数の連結ロッド30の各々は、連結プレート26のうち、ベースプレート28に向かう合う平面に連結されている。複数の連結ロッド30の各々は、連結プレート26の平面のうち、外周部分に連結されている。複数の連結ロッド30の各々は、連結プレート26から中心軸44に沿って延びている。複数の連結ロッド30は、ベースプレート28に形成された複数の貫通孔46を挿通している。
【0020】
第1ガイド32は、円筒状の部材である。第1ガイド32の内側には、ガスセンサ12が挿入可能な大きさの貫通孔48が形成されている。第1ガイド32は、ベースプレート28のうち、ガスセンサ12に向かい合う平面に配置されている。第1ガイド32は、中心軸44と略同軸に、ベースプレート28に配置されている。
【0021】
押圧治具34は、テーパ状(円錐状)の治具である。押圧治具34の内側には、ガスセンサ12及び複数の加締め治具38を収容可能な大きさの穴50が形成されている。押圧治具34は、穴50と第1ガイド32の外周面とが嵌合することにより、中心軸44と略同軸に配置される。すなわち、穴50は、中心軸44と略同軸に位置する。押圧治具34には、複数の連結ロッド30が連結されている。
【0022】
押圧治具34は、第1ガイド32の外周面に沿って摺動可能である。具体的には、穴50を形成する押圧治具34の内壁面52は、テーパ面54とストレート面56とを有する。
【0023】
ストレート面56は、内壁面52のうち、ベースプレート28に近接する部分に形成されている。ストレート面56は、中心軸44に沿って延びている。ストレート面56の曲率半径(内径)は、中心軸44に沿って、略一定の曲率半径である。ストレート面56は、第1ガイド32の外周面に接触している。すなわち、ストレート面56の内径は、第1ガイド32の外径と略同じである。
【0024】
テーパ面54は、内壁面52のうち、ガスセンサ12に近接する部分に形成されている。テーパ面54は、ストレート面56に連結されている。テーパ面54は、中心軸44に沿って、曲率半径が変化している。具体的には、テーパ面54は、ストレート面56から中心軸44に沿ってガスセンサ12に近づく程、曲率半径が大きくなる。従って、テーパ面54のうち、ガスセンサ12に近接する押圧治具34の開口端58の箇所での曲率半径が最も大きい。
【0025】
テーパ面54には、中心軸44に対して傾斜する複数の第1傾斜平面60が形成されている(図1及び図2参照)。複数の第1傾斜平面60は、テーパ面54において、複数の加締め治具38の数だけ形成されている。複数の第1傾斜平面60は、テーパ面54において、中心軸44回りに所定角度間隔(等間隔)で形成されている。複数の第1傾斜平面60の各々は、押圧治具34の開口端58からストレート面56にかけて形成されている。
【0026】
第2ガイド36は、円筒状の部材である。第2ガイド36の内側には、ガスセンサ12を挿通可能な大きさの貫通孔62が形成されている。第2ガイド36は、複数のネジ部材64によって第1ガイド32に固定されている。第2ガイド36は、中心軸44と略同軸に配置されている。第2ガイド36には、貫通孔62に連通する複数のガイド孔66が形成されている。複数のガイド孔66は、第2ガイド36において、中心軸44と直交する方向(径方向)に形成されている。複数のガイド孔66は、中心軸44回りに所定角度間隔(等間隔)で形成されている。第2ガイド36の外周面のうち、ガイド孔66の上方の箇所には、凹部68が形成されている。
【0027】
複数の加締め治具38は、押圧治具34の内側において、テーパ面54と第2ガイド36との間に収容されるように配置されている。複数の加締め治具38は、中心軸44回りに所定角度間隔(等間隔)で配置されている(図2参照)。すなわち、複数の加締め治具38の各々は、複数の第1傾斜平面60のうち、対応する第1傾斜平面60と第2ガイド36との間に配置されている。
【0028】
具体的には、複数の加締め治具38の各々は、基端部70と、延出部72と、2つの爪部74、76とを有する。基端部70は、第1傾斜平面60と面接触する第2傾斜平面78を有する。第2傾斜平面78には、グリース溜り80が設けられている。グリース溜り80には、グリース(不図示)が供給されている。延出部72は、基端部70から中心軸44に向かって延びている。延出部72は、複数のガイド孔66のうち、対応するガイド孔66に挿入される。
【0029】
2つの爪部74、76は、延出部72の先端に形成されている。2つの爪部74、76は、延出部72の先端において、中心軸44に沿って、所定の間隔を空けて設けられている。一方の爪部76は、中心軸44に沿って、他方の爪部74よりもガスセンサ12に近接している。なお、一方の爪部76は、他方の爪部74よりも、中心軸44に向かって僅かに突出していることが望ましい。
【0030】
複数のバネ部材40の各々は、複数の加締め治具38のうち、対応する加締め治具38の基端部70と、第2ガイド36の複数の凹部68のうち、対応する凹部68との間に介挿される。複数のバネ部材40の各々は、対応する加締め治具38が中心軸44から離間するように、当該加締め治具38を付勢する。
【0031】
図2図4は、複数の加締め治具38の構成を図示している。図2に示すように、加締め装置10(図1参照)は、8つの加締め治具38を備える。押圧治具34は、8つの第1傾斜平面60を有する。8つの第1傾斜平面60は、中心軸44回りに45°間隔で形成されている。従って、8つの加締め治具38は、中心軸44回りに45°間隔で配置されている。
【0032】
なお、図2に示す加締め治具38の数は一例である。加締め装置10では、2つ以上の加締め治具38が、中心軸44回りに等間隔で配置されても良い。例えば、4つ又は5つの加締め治具38が、中心軸44回りに、等間隔で配置されても良い。
【0033】
図3に示すように、加締め治具38の2つの爪部74、76は、平面視で、円弧状に形成されている。これにより、2つの爪部74、76の各々は、ガスセンサ12の筒状体14(図1参照)に面接触することが可能となる。
【0034】
図4に示すように、グリース溜り80は、第2傾斜平面78に設けられた矩形状のスリットである。
【0035】
次に、加締め装置10によるガスセンサ12の加締め方法について、図1及び図5図8を参照しながら説明する。
【0036】
先ず、図5に示すように、加締め装置10の上方にガスセンサ12を配置する。この場合、ガスセンサ12の中心軸42と加締め装置10の中心軸44とが略同軸となるように、ガスセンサ12の先端部と、第2ガイド36の貫通孔62と向かい合わせる。
【0037】
次に、図6に示すように、ガスセンサ12を中心軸42(中心軸44)に沿って、矢印A方向に、第1ガイド32の内側に挿入する。この場合、筒状体14の基端部22と複数の加締め治具38の各々の2つの爪部74、76とが向かい合うように、ガスセンサ12を第1ガイド32の内側に挿入する。なお、加締め装置10では、引き込み機構(不図示)を用いて、ガスセンサ12のスクリューナット20を掴み、第1ガイド32の内側の所定位置にまでガスセンサ12を引き込むことで、ガスセンサ12を第1ガイド32の内側に挿入することも可能である。
【0038】
次に、図7に示すように、駆動源を駆動させ、連結プレート26をガスセンサ12に向けて、矢印B方向に移動(上昇)させる。上記のように、押圧治具34は、複数の連結ロッド30を介して、連結プレート26に連結されている。そのため、押圧治具34は、連結プレート26の上昇に伴い、第1ガイド32の外周面に沿って、矢印B方向に摺動(上昇)する。
【0039】
複数の加締め治具38の各々の第2傾斜平面78は、押圧治具34の第1傾斜平面60と面接触している。押圧治具34の上昇によって、複数の加締め治具38の各々の基端部70は、対応する第1傾斜平面60を摺動する。具体的には、基端部70は、押圧治具34の上昇に伴い、ストレート面56に向かって下降するように、第1傾斜平面60を摺動する。この結果、基端部70に連結されている延出部72は、バネ部材40の付勢力に抗して、筒状体14の基端部22に向かって矢印C方向に移動する。
【0040】
押圧治具34がさらに上昇すると、複数の加締め治具38の各々の2つの爪部74、76は、筒状体14の基端部22に当接する。2つの爪部74、76は、筒状体14の基端部22及びグロメット16を該筒状体14の径方向内側に押圧する。これにより、筒状体14の基端部22及びグロメット16が加締められ、加締め部24が形成される。この結果、ガスセンサ12の内部が気密状態となる。なお、爪部76が爪部74よりも中心軸44に向かって突出している場合、加締め部24のうち、爪部76によって押圧される部分は、爪部74によって押圧される部分よりも、筒状体14の径方向内側に加締められる。
【0041】
加締め部24が形成された後、図8に示すように、駆動源を駆動させ、矢印D方向に連結プレート26を下降させる。押圧治具34は、複数の連結ロッド30を介して連結プレート26に連結されているので、第1ガイド32の外周面に沿って矢印D方向に摺動(下降)する。
【0042】
押圧治具34の下降に伴い、複数の加締め治具38の各々の基端部70は、第1傾斜平面60に沿って摺動する。具体的には、基端部70は、押圧治具34の下降に伴い、開口端58に近づくように、第1傾斜平面60を摺動する。この場合、基端部70には、バネ部材40によって、中心軸44から離間するような付勢力が作用している。従って、基端部70に連結されている延出部72は、基端部70の摺動とバネ部材40の付勢力とによって、筒状体14から矢印E方向に離間する。これにより、ガスセンサ12の加締め部24は、2つの爪部74、76による押圧状態から解放される。
【0043】
押圧治具34がさらに下降すると、複数の加締め治具38の各々の基端部70は、第1傾斜平面60の開口端58の近傍にまで摺動する。これにより、2つの爪部74、76は、ガイド孔66まで後退する。
【0044】
次に、図1に示すように、ガスセンサ12を矢印F方向に上昇させ、加締め装置10からガスセンサ12を取り出す。
【0045】
なお、本発明は、上述した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を取り得る。
【0046】
上記の実施形態から把握し得る発明について、以下に記載する。
【0047】
本発明の態様は、軸方向に沿って延びるガスセンサ(12)の軸回りに配置され、前記ガスセンサを加締めるための複数の加締め治具(38)と、前記軸方向に沿って移動することで、複数の前記加締め治具を前記ガスセンサに押圧させる押圧治具(34)とを備えるガスセンサの加締め装置(10)であって、前記押圧治具には、前記ガスセンサ及び複数の前記加締め治具を収容する穴(50)が形成され、前記穴を形成する前記押圧治具の内壁面(52)は、複数の前記加締め治具の各々を前記ガスセンサに押圧するために、前記ガスセンサの軸線(42)に対して傾斜する複数の第1傾斜平面(60)を有し、複数の前記加締め治具の各々は、複数の前記第1傾斜平面のうち、対応する第1傾斜平面と面接触する第2傾斜平面(78)を有する。
【0048】
本発明では、複数の加締め治具の各々の第2傾斜平面が、対応する第1傾斜平面と面接触する。これにより、第1傾斜平面に沿って加締め治具が摺動する場合、第1傾斜平面の全面にわたって、該第1傾斜平面と第2傾斜平面とがスムーズに面接触する。この結果、加締め荷重のばらつきを低減することができる。
【0049】
本発明の態様において、複数の前記第1傾斜平面は、前記押圧治具の内部に進む程、前記ガスセンサに近づく傾斜面である。
【0050】
これにより、加締め荷重のばらつきを一層抑えることができると共に、ガスセンサを精度良く加締めることができる。
【0051】
本発明の態様において、複数の前記加締め治具の各々の前記第2傾斜平面には、グリース溜り(80)が設けられている。
【0052】
これにより、グリース溜りから第1傾斜平面及び第2傾斜平面にグリースを好適に供給することが可能となるので、第1傾斜平面と第2傾斜平面との摺動が良好となる。この結果、押圧治具及び加締め治具の摩耗と、第1傾斜平面及び第2傾斜平面での摺動荷重とに起因する加締め荷重のばらつきを低減することができる。
【0053】
本発明の態様において、複数の前記第1傾斜平面は、前記ガスセンサの軸回りに等間隔に配置され、複数の加締め治具の各々は、前記第2傾斜平面が対応する前記第1傾斜平面と面接触するように、前記ガスセンサの軸回りに等間隔で配置されている。
【0054】
これにより、複数の加締め治具の間で、ガスセンサに対する加締め治具の接触位置と、ガスセンサに対する加締め治具の接触摩擦力とを略同等にすることができる。この結果、加締め荷重のばらつきを一層低減することができる。
【0055】
本発明の態様において、前記加締め装置は、複数の前記加締め治具が前記ガスセンサから離間するように、複数の前記加締め治具を付勢する複数のバネ部材(40)をさらに備える。
【0056】
これにより、ガスセンサの加締め後、加締め治具をガスセンサから速やかに離間させることができる。
【符号の説明】
【0057】
10…加締め装置(ガスセンサの加締め装置)
12…ガスセンサ
34…押圧治具
38…加締め治具
42…中心軸(軸線)
50…穴
52…内壁面
60…第1傾斜平面
78…第2傾斜平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8