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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】歯科用ハンドピース
(51)【国際特許分類】
   A61C 1/14 20060101AFI20241021BHJP
【FI】
A61C1/14 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022101058
(22)【出願日】2022-06-23
(65)【公開番号】P2024002078
(43)【公開日】2024-01-11
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000138185
【氏名又は名称】株式会社モリタ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 仁
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-325550(JP,A)
【文献】特開2003-116879(JP,A)
【文献】特開2021-016621(JP,A)
【文献】特開平08-098848(JP,A)
【文献】米国特許第05688122(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 1/00-3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削工具を着脱可能に保持する歯科用ハンドピースであって、
本体部と、
前記本体部に収容され、前記切削工具を着脱可能に保持する保持部と、
前記保持部を解除可能に構成された解除機構とを備え、
前記解除機構は、前記本体部に取り付けられたキャップと、前記キャップに固定されたキャップリングと、前記キャップリングに被せられたプッシュキャップとを含み、
前記プッシュキャップは、前記プッシュキャップが前記キャップリングに被せられた方向に前記保持部を解除する解除位置に移動可能に構成されており、
前記保持部は、前記切削工具を挿入可能に構成された回転筒と、前記回転筒に挿入されたチャック、弾性体、スライドリングおよびリングストッパーとを含み、
前記チャックは、前記回転筒に挿入された前記切削工具を着脱可能に構成されており、
前記弾性体は、前記チャックが前記切削工具と係合するように前記チャックを付勢するように構成されており、
前記プッシュキャップが前記解除位置に移動した状態で、前記スライドリングは、前記弾性体の弾性力に抗して前記チャックと前記切削工具との係合を解除するように前記弾性体を押圧可能に構成されており、
前記リングストッパーは、前記スライドリングを係止可能に構成されており、かつ内側に突出する2つのストッパー部を有し、
前記ストッパー部は、前記回転筒に挿入された前記切削工具と接触可能に構成されており、
前記スライドリングは、環状部と、前記環状部から前記プッシュキャップに向けて突出した突出部とを含み、
前記環状部は、前記切削工具を挿入可能に構成されており、かつ前記リングストッパーに係止可能に構成されており、
前記突出部は、前記ストッパー部からずれるように構成されており、前記環状部の径方向に前記環状部にまたがっておりかつ前記プッシュキャップに接触可能に構成されており、
前記突出部は、平面視において前記ストッパー部と隙間をあけて配置されており、
前記ストッパー部は、平面視において弧状に構成されており、
2つの前記ストッパー部は、前記突出部を挟んで互いに向かい合うように配置されている、歯科用ハンドピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用ハンドピースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯科用ハンドピースは、歯科用ハンドピースに装着された切削工具を高速回転させる。歯科用ハンドピースは、切削工具を着脱可能に構成されている。
【0003】
切削工具を着脱可能に構成された歯科用ハンドピースは、たとえば、特開2003-325550号公報(特許文献1)に記載されている。この公報に記載された歯科用ハンドピースでは、切削工具とチャックとの係合を解除するために筒状ばねの上にスライダが配置されている。スライダの上に規制部が配置されている。切削工具が取り付けられる場合、切削工具の挿入側端部が規制部に接触することにより切削工具の挿入が規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-325550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
歯科用ハンドピースのヘッド高さが高いと、治療時に意図せず歯科用ハンドピースが口内粘膜等へ接触してしまう可能性が高くなる。そのため、歯科用ハンドピースのヘッド高さは低いことが好ましい。
【0006】
しかしながら、上記公報に記載された歯科用ハンドピースでは、スライダの上に規制部が配置されているため、規制部の分だけ歯科用ハンドピースの高さが高くなる。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は歯科用ハンドピースのヘッド高さを低くすることができる歯科用ハンドピースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の歯科用ハンドピースは、切削工具を着脱可能に保持する歯科用ハンドピースである。歯科用ハンドピースは、本体部と、本体部に収容され、切削工具を着脱可能に保持する保持部と、保持部を解除可能に構成された解除機構とを備えている。解除機構は、本体部に取り付けられたキャップと、キャップに固定されたキャップリングと、キャップリングに被せられたプッシュキャップとを含んでいる。プッシュキャップは、プッシュキャップがキャップリングに被せられた方向に保持部を解除する解除位置に移動可能に構成されている。保持部は、切削工具を挿入可能に構成された回転筒と、回転筒に挿入されたチャック、弾性体、スライドリングおよびリングストッパーとを含んでいる。チャックは、回転筒に挿入された切削工具を着脱可能に構成されている。弾性体は、チャックが切削工具と係合するようにチャックを付勢するように構成されている。プッシュキャップが解除位置に移動した状態で、スライドリングは、弾性体の弾性力に抗してチャックと切削工具との係合を解除するように弾性体を押圧可能に構成されている。リングストッパーは、スライドリングを係止可能に構成されており、かつ内側に突出する2つのストッパー部を有している。ストッパー部は、回転筒に挿入された切削工具と接触可能に構成されている。スライドリングは、環状部と、環状部からプッシュキャップに向けて突出した突出部とを含んでいる。環状部は、切削工具を挿入可能に構成されており、かつリングストッパーに係止可能に構成されている。突出部は、ストッパー部からずれるように構成されており、環状部の径方向に環状部にまたがっておりかつプッシュキャップに接触可能に構成されている。突出部は、平面視においてストッパー部と隙間をあけて配置されている。ストッパー部は、平面視において弧状に構成されている。2つのストッパー部は、突出部を挟んで互いに向かい合うように配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の歯科用ハンドピースによれば、歯科用ハンドピースのヘッド高さを低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る歯科用ハンドピースを概略的に示す斜視図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3図2のIII部分を拡大して示す拡大断面図である。
図4】実施の形態に係る歯科用ハンドピースのヘッド部を概略的に示す分解斜視図である。
図5】実施の形態に係る歯科用ハンドピースの保持部を概略的に示す断面図である。
図6】実施の形態に係る歯科用ハンドピースのキャップの保持部を概略的に示す断面位置が図5と90°異なる断面図である。
図7】実施の形態に係る歯科用ハンドピースのスライドリングおよびリングストッパーを概略的に示す斜視図である。
図8】実施の形態に係る歯科用ハンドピースのスライドリングおよびリングストッパーを概略的に示す分解斜視図である。
図9】実施の形態に係る歯科用ハンドピースのスライドリングおよびリングストッパーを概略的に示す平面図である。
図10】実施の形態に係る歯科用ハンドピースのスライドリングおよびリングストッパーを概略的に示す底面図である。
図11】実施の形態に係る歯科用ハンドピースのプッシュキャップが下方に押された状態を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
まず、本発明の実施の形態に係る歯科用ハンドピースの構成について説明する。
【0012】
図1を参照して、歯科用ハンドピース1は、切削工具3を着脱可能に保持するように構成されている。歯科用ハンドピース1は、歯牙を切削する切削工具3を保持して高速回転させるように構成されている。本実施の形態では、歯科用ハンドピース1は、モータによって切削工具3を高速回転させるモータハンドピースである。より具体的には、歯科用ハンドピース1は、コントラアングル型ハンドピースである。なお、歯科用ハンドピース1は、エアタービンによって切削工具3を高速回転させるエアタービンハンドピースであってもよい。
【0013】
歯科用ハンドピース1の長手方向の一端側(基端側)に駆動部2が接続されている。駆動部2は、歯科用ハンドピース1の基端側に着脱可能に構成されている。駆動部2は、回転駆動するモータを内部に備えている。歯科用ハンドピース1の長手方向の他端側(先端側)に切削工具3が保持されている。切削工具3は、回転することにより歯牙を切削可能に構成されている。
【0014】
歯科用ハンドピース1は、ボディ部4、ネック部5およびヘッド部6を備えている。歯科用ハンドピース1の長手方向の基端側から先端側に向けて、ボディ部4、ネック部5およびヘッド部6は、この順に並んでいる。
【0015】
ボディ部4は、駆動部2に着脱可能に構成されている。ボディ部4は、歯科用ハンドピース1の基端側に配置されている。ボディ部4は、歯科用ハンドピース1の先端側に向かうに伴って徐々に縮径している。ボディ部4は、略円筒状のハウジングを備えている。ボディ部4は、施術者およびメンテナス作業者などの利用者が把持するグリップ部分である。
【0016】
ネック部5は、利用者が歯科用ハンドピース1を、切削工具3を下方にヘッド部6を上方にボディ部4を水平にして持った場合に、長手方向の中央部分において上方へ屈曲するとともに、先端側に向かうに伴って徐々に縮径している。ネック部5は、略円筒状のハウジングを備えている。
【0017】
ヘッド部6は、ネック部5を介してボディ部4と接続されている。ヘッド部6は、ネック部5の長手方向に対して略直交する方向(図1において上下方向)を軸方向とする略円筒体状のハウジングを備えている。
【0018】
図1および図2を参照して、歯科用ハンドピース1は、駆動部2のモータの回転を回転伝達機構10で増速して切削工具3を高速回転させるように構成されている。回転伝達機構10は、ボディ部4、ネック部5およびヘッド部6の各々のハウジングの内部に収容されている。
【0019】
回転伝達機構10は、第1伝達機構20、第2伝達機構30、第3伝達機構40および工具回転機構50を含んでいる。歯科用ハンドピース1の長手方向の基端側から先端側に向けて、第1伝達機構20、第2伝達機構30、第3伝達機構40および工具回転機構50は、この順に並んでいる。
【0020】
第1伝達機構20は、ボディ部4およびネック部5のハウジングの内部に配置されている。第2伝達機構30は、ネック部5のハウジングの内部に配置されている。第3伝達機構40は、ネック部5およびヘッド部6の内部に配置されている。工具回転機構50は、ヘッド部6のハウジングの内部に配置されている。
【0021】
第1伝達機構20は、駆動部2のモータの回転を第2伝達機構に伝達するように構成されている。第1伝達機構20は、モータ連結部21、第1回転軸22、2つの第1軸受部23およびドライブギヤ24を備えている。モータ連結部21は、駆動部2のモータの軸部に連結可能に構成されている。モータ連結部21は、第1回転軸22の基端側に接続されている。第1回転軸22は、中空状の略円柱体である。第1回転軸22は、軸方向に延びる回転軸を中心として回転可能に2つの第1軸受部23に保持されている。2つの第1軸受部23は、第1回転軸22の軸方向に互いに間隔をあけて配置されている。2つの第1軸受部23の各々はボールベアリングである。ドライブギヤ24は、第1回転軸22の先端側に接続されている。ドライブギヤ24は内歯車である。
【0022】
第2伝達機構30は、第1伝達機構20の回転を第3伝達機構40に伝達するように構成されている。第2伝達機構30は、ピニオンギヤ31、第2回転軸32、2つの第2軸受部33およびベベルギヤ34を備えている。ピニオンギヤ31は、ドライブギヤ24に噛み合うように構成されている。ピニオンギヤ31は、第2回転軸32の基端側に接続されている。第2回転軸32は、中実状の略円柱体である。第2回転軸32は、軸方向に延びる回転軸を中心として回転可能に2つの第2軸受部33に保持されている。2つの第2軸受部33は、第2回転軸32の軸方向に互いに間隔をあけて配置されている。2つの第2軸受部33の各々はボールベアリングである。ベベルギヤ34は、第2回転軸32の先端側に接続されている。ベベルギヤ34は内歯車である。
【0023】
第3伝達機構40は、第2伝達機構30の回転を工具回転機構50に伝達するように構成されている。第3伝達機構40は、ミドルギヤ41、第3回転軸42、2つの第3軸受部43およびフロントギヤ44を備えている。ミドルギヤ41は、ベベルギヤ34に噛み合うように構成されている。ミドルギヤ41は、第3回転軸42の基端側に接続されている。第3回転軸42は、中実状の略円柱体である。第3回転軸42は、軸方向に延びる回転軸を中心として回転可能に2つの第3軸受部43に保持されている。2つの第3軸受部43は、第3回転軸42の軸方向に互いに間隔をあけて配置されている。2つの第3軸受部43の各々はボールベアリングである。フロントギヤ44は、第3回転軸42の先端側に接続されている。フロントギヤ44は外歯車である。
【0024】
工具回転機構50は、第3伝達機構40の回転を切削工具3に伝達することにより切削工具3を回転させるように構成されている。工具回転機構50は、保持部51および2つのヘッド部軸受部52を備えている。
【0025】
保持部51は、切削工具3の軸方向に延びる回転軸を中心として回転可能に2つのヘッド部軸受部52に保持されている。2つのヘッド部軸受部52は、保持部51の軸方向に互いに間隔をあけて配置されている。2つのヘッド部軸受部52の各々はボールベアリングである。
【0026】
切削工具3は、基軸3aと、切削刃部3bとを含んでいる。基軸3aおよび切削刃部3bは、一体的に構成されている。基軸3aおよび切削刃部3bは、略円柱上に構成されている。基軸3aは、ヘッド部6の内部の保持部51により保持される。切削刃部3bは、基軸3aの軸方向に基軸3aから突出している。
【0027】
保持部51は、切削工具3を着脱自在に保持する機構を有している。保持部51は、回転筒53、チャック54、弾性体55、スライドリング56およびリングストッパー57を備えている。
【0028】
チャック54、弾性体55、スライドリング56およびリングストッパー57は、回転筒53に挿入されている。チャック54、弾性体55、スライドリング56およびリングストッパー57は、切削工具3の刃先側から刃元側に向けてこの順番で回転筒53の内部に収容されている。
【0029】
回転筒53は、切削工具3を挿入可能に構成されている。回転筒53は、円筒状に形成されたヘッド側歯車である。回転筒53は、チャック54、弾性体55、スライドリング56およびリングストッパー57を収容可能な内径と、ヘッド部軸受部52の内輪に嵌合可能な外径とを有する略円筒体である。
【0030】
回転筒53は、ネック部5の長手方向に沿った軸を回転軸とした第3伝達機構40の回転を、切削工具3の長手方向に沿った軸を回転軸とした工具回転機構50の回転に変換することができる。
【0031】
回転筒53は、略円筒体である軸本体53aおよびローターギヤ歯53bを備えている。ローターギヤ歯53bは傘歯車である。軸本体53aは略円筒体である。ローターギヤ歯53bは、軸本体53aの外周面から径外側に突出するとともに、断面視において刃先側の面が径外側に向かうに伴って下方に傾斜している。ローターギヤ歯53bは、軸本体53aの外周に沿って等間隔で複数設けられている。複数のローターギヤ歯53bが設けられた回転筒53は、傘歯車であり、第3伝達機構40のフロントギヤ44に噛合する従動歯車である。
【0032】
チャック54は、回転筒53に挿入された切削工具3を着脱可能に構成されている。チャック54は、回転筒53の内部において、切削工具3の長手方向の略中央よりも刃先側(下方)に配設される。チャック54は、切削工具3の長手方向に沿って挿通された切削工具3の基軸3aを保持可能に構成されている。
【0033】
弾性体55は、チャック54が切削工具3と係合するようにチャック54を付勢するように構成されている。弾性体55は、圧縮方向に変形可能な圧縮弾性体であって、回転筒53の内部においてチャック54の上部に外嵌される。
【0034】
スライドリング56は、回転筒53内を軸方向に移動可能に構成されている。スライドリング56は、弾性体55より切削工具3の刃元側に収容され、弾性体55を押圧可能に構成されている。
【0035】
保持部51では、圧縮変形する前の弾性体55がチャック54における刃基側の端部を押圧し、弾性体55の押圧によって縮径されたチャック54は、切削工具3を保持することができる。一方、弾性体55が圧縮変形すると、チャック54による切削工具3の保持を開放することができる。
【0036】
リングストッパー57は、略リング状に構成され、スライドリング56の刃元側の部分に外嵌している。リングストッパー57は、切削工具3が装着されるときに切削工具3の位置を規制することができる。
【0037】
2つのヘッド部軸受部52の各々は、略リング状に形成されている。2つのヘッド部軸受部52は、ヘッド部6の内部において、保持部51の刃先側端部および刃基側端部を回転自在に支持している。
【0038】
ヘッド部6は、軸部60、ハウジング本体部61およびプッシュキャップ62を備えている。軸部60は、ネック部5の先端側に接続されている。ハウジング本体部61は、装着される切削工具3の長手方向に沿って伸びる中空状の略円筒体である。ハウジング本体部61の内部に保持した切削工具3を回転駆動させる工具回転機構50が収容されている。ハウジング本体部61の上端および下端は開口されており、上端部分にはプッシュキャップ62が配置されている。プッシュキャップ62は、ヘッド部6に対する切削工具3の着脱操作を行うためのものである。
【0039】
図3および図4を参照して、保持部51には切削工具3を挿入可能な挿入口IPが設けられている。保持部51は、切削工具3を着脱可能に保持するように構成されている。ヘッド部6は、噴霧部63を備えている。歯科用ハンドピース1は、本体部MPを備えている。本実施の形態では、軸部60、ハウジング本体部61および噴霧部63は、本体部MPを構成している。保持部51は、本体部MPに収容されている。噴霧部63に注水穴および複数のチップエア穴が設けられている。注水穴が1つのみ設けられた1点注水が採用されている。噴霧部63は、軸部60に取り付けられている。
【0040】
歯科用ハンドピース1は、解除機構RMを備えている。解除機構RMは、保持部51を解除可能に構成されている。解除機構RMは、キャップ64、キャップリング65およびプッシュキャップ62を含んでいる。また、本実施の形態では、解除機構RMはキャップスプリング66を含んでいる。キャップ64は、本体部MPに取り付けられている。キャップリング65は、キャップ64に固定されている。プッシュキャップ62は、キャップリング65に被せられている。キャップスプリング66は、プッシュキャップ62とキャップリング65とに係止されている。キャップスプリング66は、プッシュキャップ62を付勢可能に構成されている。キャップスプリング66は、ウェーブワッシャーである。
【0041】
プッシュキャップ62は、プッシュキャップ62がキャップリング65に被せられた方向に保持部51を解除する解除位置に移動可能に構成されている。プッシュキャップ62の解除位置は、保持部51と切削工具3との係合が解除された状態となる位置である。キャップ64は、外側環状部641と、内側環状部642とを含んでいる。外側環状部641および内側環状部642は、キャップ64の周方向に環状に延在している。内側環状部642は、外側環状部641の内側に配置されている。内側環状部642は、外側環状部641と隙間をあけて配置されている。プッシュキャップ62は、外側環状部641と内側環状部642との間をプッシュキャップ62がキャップリング65に被せられた方向に移動可能に構成されている。
【0042】
図5および図6を参照して、リングストッパー57は、回転筒53の内周面に固定されている。リングストッパー57は、スライドリング56を係止可能に構成されている。リングストッパー57の下面がスライドリング56に接触することで、リングストッパー57はスライドリング56を係止するように構成されている。リングストッパー57はストッパー部57aを有している。リングストッパー57は、ストッパー部57aによって切削工具3のストッパー機能を奏する。ストッパー部57aは内側に突出している。ストッパー部57aは、リングストッパー57の内周面から内側に突出している。本実施の形態では、リングストッパー57は、2つのストッパー部57aを有している。2つのストッパー部57aは、リングストッパー57の径方向に互いに向かい合うように配置されている。
【0043】
図3および図5を参照して、ストッパー部57aは、回転筒53に挿入された切削工具3と接触可能に構成されている。ストッパー部57aは、切削工具3が回転筒53に挿入された状態で、切削工具3の上端の外縁に接触するように構成されている。したがって、ストッパー部57aによって、切削工具3がストッパー部57aよりも上側に移動することが規制される。
【0044】
スライドリング56は、環状部561と、突出部562とを含んでいる。環状部561は、スライドリング56の周方向に延在している。突出部562は、環状部561からプッシュキャップ62に向けて突出している。突出部562は、リングストッパー57の軸方向に立ち上がり、径方向に延在し、軸方向に立ち下がるように構成されている。突出部562は、リングストッパー57の内側に挿入されている。
【0045】
環状部561は、切削工具3を挿入可能に構成されている。切削工具3は環状部561に挿入された状態でストッパー部57aに接触する。突出部562は、プッシュキャップ62に接触可能に構成されている。突出部562がプッシュキャップ62に接触した状態でプッシュキャップ62が押下されることによりスライドリング56は下側に移動する。
【0046】
図7および図8を参照して、環状部561は、リングストッパー57に係止可能に構成されている。環状部561の上面がリングストッパー57の下面に接触することで、スライドリング56はリングストッパー57に係止される。本実施の形態では、平面視において突出部562の中央に貫通孔HLが設けられている。
【0047】
図9および図10を参照して、突出部562は、ストッパー部57aからずれるように構成されている。突出部562は、平面視においてストッパー部57aと重ならないように配置されている。突出部562は、平面視においてストッパー部57aと隙間をあけて配置されている。突出部562は、環状部561の径方向に環状部561にまたがっている。突出部562は、環状部561の径方向に均等の幅で延在している。
【0048】
本実施の形態では、ストッパー部57aは、平面視において弧状に構成されている。また、2つのストッパー部57aは、突出部562を挟んで互いに向かい合うように配置されている。2つのストッパー部57aは、リングストッパー57の中心に対して点対称に配置されている。さらに、2つのストッパー部57aは互いに同じ形状に構成されている。
【0049】
続いて、実施の形態に係る歯科用ハンドピース1の切削工具3が着脱される動作について説明する。
【0050】
図3および図9を参照して、プッシュキャップ62が解除位置に移動した状態で、スライドリング56は、弾性体55の弾性力に抗してチャック54と切削工具3との係合を解除するように弾性体55を押圧可能に構成されている。
【0051】
切削工具3が取り外される場合、プッシュキャップ62がキャップスプリング66の付勢力に対抗して下方に押されることにより、プッシュキャップ62のボス部62aがスライドリング56に接触する。この状態からさらにプッシュキャップ62が下方に押されると、スライドリング56が下方に移動し弾性体55を押圧することにより弾性体55が軸方向に圧縮される。この結果、弾性体55の付勢力によって内側に向けて付勢されていたチャック54がチャック54の弾性復帰力によって外側に移動する。これにより、チャック54と切削工具3との係合が解除されるため、切削工具3の取り外しが可能となる。
【0052】
切削工具3が取り付けられる場合、プッシュキャップ62が下方に押されることによりスライドリング56が下方に移動し弾性体55を押圧することによりチャック54が外側に移動する。この状態で切削工具3がチャック54の内側に挿入された後に、プッシュキャップ62が開放される。これにより、スライドリング56が上方に移動し弾性体55が軸方向に伸びる。この結果、弾性体55の付勢力によってチャック54が内側に移動する。これにより、チャック54が切削工具3の外周面と係合することで、切削工具3が保持される。
【0053】
次に、実施の形態に係る歯科用ハンドピース1の作用効果について説明する。
実施の形態に係る歯科用ハンドピース1によれば、リングストッパー57はストッパー部57aを有しており、ストッパー部57aは回転筒53に挿入された切削工具3と接触可能に構成されている。このため、ストッパー部57aが回転筒53に挿入された切削工具3に接触することで切削工具3がストッパー部57aよりも奥側に移動することが規制される。したがって、リングストッパー57と別に、特許文献のように規制部を配置する必要がないため、規制部の分だけ歯科用ハンドピース1のヘッド高さを低くすることができる。よって、歯科用ハンドピース1のヘッド高さを低くすることができる。
【0054】
また、特許文献のように規制部を配置する必要がないため、歯科用ハンドピース1の部品数を減らすことができる。これにより、歯科用ハンドピース1の生産性を向上させることができる。
【0055】
実施の形態に係る歯科用ハンドピース1によれば、突出部562は、ストッパー部57aからずれるように構成されており、環状部561の径方向に環状部561にまたがっておりかつプッシュキャップ62に接触可能に構成されている。このため、突出部562がストッパー部57aに接触することにより突出部562およびストッパー部57aが摩耗することを抑制することができる。また、突出部562がストッパー部57aに接触することにより突出部562およびストッパー部57aが発熱することを抑制することができる。
【0056】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0057】
1 歯科用ハンドピース、2 駆動部、3 切削工具、4 ボディ部、5 ネック部、6 ヘッド部、10 回転伝達機構、20 第1伝達機構、30 第2伝達機構、40 第3伝達機構、50 工具回転機構、51 保持部、52 ヘッド部軸受部、53 回転筒、54 チャック、55 弾性体、56 スライドリング、561 環状部、562 突出部562、57 リングストッパー、57a ストッパー部、60 軸部、61 ハウジング本体部、62 プッシュキャップ、63 噴霧部、64 キャップ、65 キャップリング、66 キャップスプリング、MP 本体部、RM 解除機構。
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