(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】バッテリの冷却構造
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6566 20140101AFI20241021BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20241021BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20241021BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20241021BHJP
H01M 10/6565 20140101ALI20241021BHJP
H01M 10/663 20140101ALI20241021BHJP
H01M 10/667 20140101ALI20241021BHJP
【FI】
H01M10/6566
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6563
H01M10/6565
H01M10/663
H01M10/667
(21)【出願番号】P 2022148117
(22)【出願日】2022-09-16
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】202122415342.8
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】孫 載▲元▼
(72)【発明者】
【氏名】鹿野 浩史
(72)【発明者】
【氏名】坂本 紘基
(72)【発明者】
【氏名】杉▲崎▼ 徹哉
(72)【発明者】
【氏名】篠田 龍
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-183240(JP,A)
【文献】特開2010-015788(JP,A)
【文献】特開2021-099937(JP,A)
【文献】特開2012-084314(JP,A)
【文献】特開2009-252730(JP,A)
【文献】特開2015-216013(JP,A)
【文献】特開2018-069807(JP,A)
【文献】特開2002-033136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6566
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/6563
H01M 10/6565
H01M 10/663
H01M 10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリセルを積層するとともに、前記複数のバッテリセルの積層方向に隣り合う前記バッテリセルの間にセル間流路を有するセル積層体と、
前記セル積層体における前記積層方向に沿ういずれかの面側に配置されるベースプレートと、
前記セル積層体と前記ベースプレートとの間に配置され、前記セル間流路に連通する流入側流路と、
前記流入側流路における前記積層方向の一方端部に配置され、前記流入側流路に空気を供給する空気供給口と、
を備えるバッテリの冷却構造であって、
前記ベースプレートは、前記空気供給口から前記積層方向に沿って流れる前記流入側流路内の空気を、複数の流れに分岐する分岐部
と、前記セル積層体に向けて前記流入側流路内に突出する段部と、を有し、
前記分岐部は、前記セル積層体における前記空気供給口側の最端部に位置する前記バッテリセルよりも、前記空気供給口から離れた位置に配置され
、
前記段部は、前記分岐部よりも、前記空気供給口から離れた位置に配置される、バッテリの冷却構造。
【請求項2】
複数のバッテリセルを積層するとともに、前記複数のバッテリセルの積層方向に隣り合う前記バッテリセルの間にセル間流路を有するセル積層体と、
前記セル積層体における前記積層方向に沿ういずれかの面側に配置されるベースプレートと、
前記セル積層体と前記ベースプレートとの間に配置され、前記セル間流路に連通する流入側流路と、
前記流入側流路における前記積層方向の一方端部に配置され、前記流入側流路に空気を供給する空気供給口と、
を備えるバッテリの冷却構造であって、
前記ベースプレートは、前記空気供給口から前記積層方向に沿って流れる前記流入側流路内の空気を、複数の流れに分岐する分岐部を有し、
前記分岐部は、前記セル積層体における前記空気供給口側の最端部に位置する前記バッテリセルよりも、前記空気供給口から離れた位置に配置され
、
前記セル積層体は、前記ベースプレートに対して複数並列して配置され、
前記流入側流路は、複数の前記セル積層体に共通に設けられ、
前記分岐部は、隣り合う前記セル積層体の間に配置される、バッテリの冷却構造。
【請求項3】
複数のバッテリセルを積層するとともに、前記複数のバッテリセルの積層方向に隣り合う前記バッテリセルの間にセル間流路を有するセル積層体と、
前記セル積層体における前記積層方向に沿ういずれかの面側に配置されるベースプレートと、
前記セル積層体と前記ベースプレートとの間に配置され、前記セル間流路に連通する流入側流路と、
前記流入側流路における前記積層方向の一方端部に配置され、前記流入側流路に空気を供給する空気供給口と、
を備えるバッテリの冷却構造であって、
前記ベースプレートは、前記空気供給口から前記積層方向に沿って流れる前記流入側流路内の空気を、複数の流れに分岐する分岐部を有し、
前記分岐部は、前記セル積層体における前記空気供給口側の最端部に位置する前記バッテリセルよりも、前記空気供給口から離れた位置に配置され
、
前記ベースプレートに対して前記セル積層体と反対側に、前記積層方向と交差するように、エンジンの排気管が配置され、
前記排気管は、前記ベースプレートの前記分岐部よりも、前記空気供給口に近い位置に配置される、バッテリの冷却構造。
【請求項4】
前記ベースプレートは、前記セル積層体に向けて前記流入側流路内に突出する段部を有し、
前記段部は、前記分岐部よりも、前記空気供給口から離れた位置に配置される、請求項
2又は3に記載のバッテリの冷却構造。
【請求項5】
前記セル積層体は、前記ベースプレートに対して複数並列して配置され、
前記流入側流路は、複数の前記セル積層体に共通に設けられ、
前記分岐部は、隣り合う前記セル積層体の間に配置される、請求項1又は
3に記載のバッテリの冷却構造。
【請求項6】
前記セル積層体に対して前記ベースプレートと反対側に、前記セル積層体の入出力を制御する電装機器が配置され、
前記電装機器は、前記ベースプレートの前記分岐部よりも、前記空気供給口に近い位置に配置される、請求項1
~3のいずれか1項に記載のバッテリの冷却構造。
【請求項7】
前記ベースプレートに対して前記セル積層体と反対側に、前記積層方向と交差するように、エンジンの排気管が配置され、
前記排気管は、前記ベースプレートの前記分岐部よりも、前記空気供給口に近い位置に配置される、請求項1又は2に記載のバッテリの冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリの冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のバッテリセルを積層したセル積層体における隣り合うバッテリセルの間のセル間流路に、冷却用の空気を流すようにしたバッテリの冷却構造が知られている。空気は、バッテリセルの積層方向に沿うセル積層体の一面に対して、積層方向の一方の端部側から供給される(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
セル積層体の積層方向に沿って供給される空気が流れる方向と、セル間流路を流れる空気の方向とは直交しているため、流速が速く直進性が高い空気の供給側に近いセル間流路には、空気が流入しにくい。そのため、特許文献1記載のバッテリの冷却構造では、セル積層体の上面及び下面に設けたダクト状の空気の流通流路内に、勾配を有する区分板をそれぞれ設けている。これによって、流通流路内の空気の静圧を均等化し、空気の供給側のセル間流路にも空気が流入するようにして、バッテリセルの温度のばらつきを抑制するようにしている。
【0004】
また、特許文献2記載のバッテリの冷却構造では、空気の供給口付近に、空気の一部をセル間流路に向けて分流する板状の分流部を、セル積層体毎に新たに設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6626798号公報
【文献】特開2014-135237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載のバッテリの冷却構造では、セル積層体の上面及び下面に、それぞれ区分板を有するダクト状の空気の流通流路が設けられるため、バッテリ装置全体の高さが増加するとともに、構造が複雑化する、という課題がある。
【0007】
また、特許文献2記載のバッテリの冷却構造では、空気の一部を分流するための分流部を、セル積層体毎に別途設ける必要がある。そのため、部品点数が増加する、という課題がある。
【0008】
本発明は、簡単な構成で、空気供給口側のセル間流路にも空気が流れるようにしてバッテリセルの温度のばらつきを抑制し、エネルギー効率の改善を図ることができる、バッテリの冷却構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明に係るバッテリの冷却構造は、複数のバッテリセル(例えば、後述のバッテリセル21)を積層するとともに、前記複数のバッテリセルの積層方向(例えば、後述のX方向)に隣り合う前記バッテリセルの間にセル間流路(例えば、後述のセル間流路22)を有するセル積層体(例えば、後述のセル積層体2)と、前記セル積層体における前記積層方向に沿ういずれかの面(例えば、後述の下面2a)側に配置されるベースプレート(例えば、後述のベースプレート3)と、前記セル積層体と前記ベースプレートとの間に配置され、前記セル間流路に連通する流入側流路(例えば、後述の流入側流路30)と、前記流入側流路における前記積層方向の一方端部(例えば、後述のX1方向側の端部)に配置され、前記流入側流路に空気を供給する空気供給口(例えば、後述の空気供給口312)と、を備えるバッテリの冷却構造であって、前記ベースプレートは、前記空気供給口から前記積層方向に沿って流れる前記流入側流路内の空気を、複数の流れに分岐する分岐部(例えば、後述の分岐部32)を有し、前記分岐部は、前記セル積層体における前記空気供給口側の最端部に位置する前記バッテリセル(例えば、後述のバッテリセル21a)よりも、前記空気供給口から離れた位置に配置される。
【0010】
(2) 上記(1)に記載のバッテリの冷却構造において、前記ベースプレートは、前記セル積層体に向けて前記流入側流路内に突出する段部(例えば、後述の段部33)を有し、前記段部は、前記分岐部よりも、前記空気供給口から離れた位置に配置されることが好ましい。
【0011】
(3) 上記(1)又は(2)に記載のバッテリの冷却構造において、前記セル積層体は、前記ベースプレートに対して複数並列して配置され、前記流入側流路は、複数の前記セル積層体に共通に設けられ、前記分岐部は、隣り合う前記セル積層体の間に配置されることが好ましい。
【0012】
(4) 上記(1)~(3)のいずれかに記載のバッテリの冷却構造において、前記セル積層体に対して前記ベースプレートと反対側に、前記セル積層体の入出力を制御する電装機器(例えば、後述のIPU6)が配置され、前記電装機器は、前記ベースプレートの前記分岐部よりも、前記空気供給口に近い位置に配置されることが好ましい。
【0013】
(5) 上記(1)~(4)のいずれかに記載のバッテリの冷却構造において、前記ベースプレートに対して前記セル積層体と反対側に、前記積層方向と交差するように、エンジンの排気管(例えば、後述の排気管200)が配置され、前記排気管は、前記ベースプレートの前記分岐部よりも、前記空気供給口に近い位置に配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
上記(1)によれば、ベースプレートにおける空気供給口から離れた位置に分岐部を設けることによって、流入側流路における分岐部の下流側よりも上流側の空気供給口付近の流路断面積が大きくなる。これによって、空気供給口付近の流入側流路の流速が低下し、圧力損失が小さくなるため、空気供給口付近のセル間流路に空気が流入し易くなる。したがって、ベースプレートに分岐部を設けるだけの簡単な構成で、バッテリセルの温度のばらつきを抑制することができ、エネルギー効率の改善を図ることができる。
【0015】
上記(2)によれば、分岐部よりも空気供給口から離れた位置に段部を設けることによって、分岐部付近に生じる空気の流れの剥離や流路断面積の減少による流速増加によってセル間流路へ空気が流れにくくなることを改善することができる。そのため、分岐部付近のセル間流路にも空気が流れ易くなり、バッテリセルの温度のばらつきをさらに抑制することができる。
【0016】
上記(3)によれば、複数のセル積層体のそれぞれに対して、バッテリセルの温度のばらつきを抑制することができる。
【0017】
上記(4)によれば、空気供給口に近い位置に配置されるバッテリセルを好適に冷却することができるため、発熱体である電装機器が空気供給口に近い位置に配置されていても、バッテリセルに与える熱の影響を抑制することができる。
【0018】
上記(5)によれば、空気供給口に近い位置に配置されるバッテリセルを好適に冷却することができるため、発熱体である排気管が空気供給口に近い位置に配置されていても、バッテリセルに与える熱の影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係るバッテリの冷却構造を有するバッテリ装置を備える車両のフロアパネルを示す平面図である。
【
図3】バッテリ装置におけるベースプレートの底部上面を示す平面図である。
【
図4】
図3中のA-A線に沿って切断したバッテリ装置の端面を示す図である。
【
図5】
図3中のB-B線に沿って切断したバッテリ装置の端面を示す図である。
【
図6】
図3中のC-C線に沿って切断したバッテリ装置の端面を示す図である。
【
図7】
図3中のD-D線に沿って切断したバッテリ装置の断面図である。
【
図8】本実施形態に係るバッテリの冷却構造による効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係るバッテリの冷却構造について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、車両のフロアパネル100を示す平面図である。フロアパネル100において、図示左側が車両の前方(Fr)であり、図示右側が車両の後方(Rr)である。図中の上下方向に沿うX方向は、車両の左右方向である。車両の前方を基準にして、X1方向が車両の右方向であり、X2方向が車両の左方向である。
【0021】
バッテリ装置1は、フロアパネル100の上面に、車両の左右方向に延びるように配置されている。バッテリ装置1が配置される部位は、フロアパネル100における車両の後部座席(図示せず)の下方に対応する部位である。バッテリ装置1は、フロアパネル100の上面に直に平置きされ、図示しないボルト等の締結部材によってフロアパネル100に固定されている。
【0022】
図2に示すように、バッテリ装置1は、セル積層体2と、ベースプレート3と、シール材4と、ファン5と、IPU(Intelligent Power Unit)6と、接続ボックス7と、カバー8と、を有する。なお、バッテリ装置1において、各構成部品間を電気的に接続するハーネス等の部品は、図示を省略している。
【0023】
セル積層体2は、直方体形状のバッテリセル21を、一方向に沿って複数積層することによって構成される。以下、複数のバッテリセル21が積層される一方向のことを、単に「積層方向」という。本実施形態のバッテリ装置1において、セル積層体2の積層方向はX方向である。積層方向に隣り合うバッテリセル21,21の間には、所定の隙間が設けられることによって、下方から上方に向けて冷却用の空気が流れるセル間流路22(
図7参照)がそれぞれ形成されている。本実施形態のバッテリ装置1は、同一構成の2つのセル積層体2,2を有する。2つのセル積層体2,2は、積層方向が車両の左右方向に沿うように、並列して配置される。
【0024】
ベースプレート3は、金属板を成形することによって、上方が開放した略矩形の容器状に形成される。ベースプレート3は、セル積層体2の積層方向に沿う長さよりも長尺であり、2つのセル積層体2,2、ファン5及び接続ボックス7を載置可能な大きさを有する。ベースプレート3は、セル積層体2,2の下面2a,2a側に配置される。下面2aは、セル積層体2が有する複数の面のうち、積層方向に沿って延びる一つの面である。ベースプレート3は、シール材4を介して、所定の間隔をおいて2つのセル積層体2,2を載置する。
【0025】
図4~7に示すように、ベースプレート3の底部上面3aとセル積層体2,2の下面2a,2aとの間には、冷却用の空気の流路を構成する流入側流路30が配置される。流入側流路30は、セル積層体2,2の下面2a,2aに沿って、積層方向に延びている。流入側流路30とセル積層体2,2のそれぞれのセル間流路22とは、互いに連通している。
【0026】
ベースプレート3の底部上面3aには、空気供給部31が設けられる。空気供給部31は、セル積層体2,2の積層方向の一方端部(X1方向側の端部)の外側付近に配置される。空気供給部31は、ファン5の排気ダクト52に接続される空気吸入口311と、吸入した空気を流出させる空気供給口312と、を有する。空気供給口312は、流入側流路30における積層方向の一方端部(X1方向側の端部)に配置される。空気供給部31は、ファン5の駆動によって生成されて空気吸入口311から吸入された冷却用の空気を、空気供給口312からセル積層体2,2の下面2a,2aに沿う方向に共通に供給する。
【0027】
シール材4は、2つのセル積層体2,2と流入側流路30との間をシールする。詳しくは、シール材4は、流入側流路30を流れる空気がセル積層体2,2の間から流出しないようにシールするセル積層体間シール部41と、流入側流路30を流れる空気がセル積層体2,2の外周側から流出しないようにシールする矩形枠状の外周シール部42と、を有する。
【0028】
ファン5は、空気供給部31よりもセル積層体2から遠い側に配置される。ファン5は、駆動によって吸気ダクト51から取り込んだ冷却用の空気を、空気吸入口311に連通する排気ダクト52から吹き出し、空気供給部31を介して流入側流路30に供給する。
【0029】
IPU6は、セル積層体2,2の入出力を制御する電装機器である。IPU6は、セル積層体2,2の上面2b,2bに、フレーム部材(図示せず)を介して、2つのセル積層体2,2に跨るように配置される。IPU6は、セル積層体2,2の上面2b,2bにおいて、積層方向に沿う空気供給部31寄りの端部付近に配置される。
【0030】
接続ボックス7は、バッテリ装置1と外部との間の電気的接続を行う。接続ボックス7は、ファン5の上方に配置される。
【0031】
カバー8は、金属板を成形することによって、下方が開放した略矩形状に形成される。カバー8は、ベースプレート3の全体を上方から覆うことによって、バッテリ装置1の全ての構成部品を内部に収容可能な大きさ及び深さを有する。車両の前方に面するカバー8の前面8a側には、バッテリ装置1の外部の空気をカバー8の内側に取り込む吸気部81が設けられる。吸気部81は、カバー8の内側において、ファン5の吸気ダクト51に連通している。カバー8は、図示しないボルト等の締結部材によってフロアパネル100に固定される。
【0032】
図3は、ベースプレート3の底部上面3aを示す。底部上面3aには、セル積層体2,2との間に、冷却用の空気が流れる流入側流路30が配置される。空気供給口312は、流入側流路30における図示左端部に配置される。空気供給口312から供給される冷却用の空気は、
図3中に矢印で示されるように、セル積層体2,2の下面2a,2aに沿って流入側流路30を右方向に流れる。
【0033】
ベースプレート3の底部上面3aには、上方に向けて突出する分岐部32が設けられる。分岐部32は、ベースプレート3の長さ方向(
図3の左右方向)に沿って略一定の高さで延びる突壁部からなる。分岐部32は、セル積層体2,2の並び方向に沿うベースプレート3の幅方向(
図3の上下方向)の中央部に配置され、ベースプレート3の長さ方向に沿って延びている。分岐部32は、セル積層体2,2の間の離隔距離と同程度の幅を有する。本実施形態の分岐部32は、ベースプレート3の底部に一体に成形されるが、分岐部32は、べースプレート3とは別体の部品を、ベースプレート3の底部上面3aに取り付けることによって形成されてもよい。
【0034】
分岐部32の最も上流側の先端部32aの位置は、
図7に示すように、セル積層体2,2における空気供給口312側の最端部に位置するバッテリセル21a,21aよりも空気供給口312から離れた位置に配置される。本実施形態の分岐部32の先端部32aは、ベースプレート3の長さ方向の中央部付近に配置されている。分岐部32は、ベースプレート3の長さ方向の中央部付近から、空気供給口312と反対側のベースプレート3の最端部である下流側端部3bまで延びている。シール材4のセル積層体間シール部41は、分岐部32の上面に載置されている。
【0035】
分岐部32は、流入側流路30をベースプレート3の幅方向に二分する。詳しくは、分岐部32の上流側の流入側流路30は、
図4に示すように、2つのセル積層体2,2に共通の1つの共通流路30aによって構成される。一方、分岐部32の下流側の流入側流路30は、
図5及び
図6に示すように、分岐部32によって分断されることによって、2つのセル積層体2,2毎の2つの個別流路30b,30bによって構成される。
【0036】
流入側流路30を
図3中の左から右に向けて流れる空気は、共通流路30aにおいて、2つのセル積層体2,2の下面2a,2aに共通に接触しながら流れ、分岐部32によって2つの流れに分岐する。分岐部32によって分岐した空気は、個別流路30b,30bにおいて、それぞれセル積層体2,2の下面2a,2aに接触しながら流れる。
【0037】
流入側流路30に分岐部32が配置されることによって、
図4に示す分岐部32よりも上流側の空気供給口312付近の流入側流路30(共通流路30a)の流路断面積は、
図5に示す分岐部32よりも下流側の流入側流路30(個別流路30b,30b)の流路断面積に比べて大きくなる。その結果、空気供給口312付近の流入側流路30(共通流路30a)内の空気は、分岐部32によって分岐された後の流入側流路30(個別流路30b,30b)内の空気に比べて、流速が低下し、圧力損失が小さくなる。
【0038】
これによって、空気供給口312付近の流入側流路30(共通流路30a)内の空気の静圧が大きくなり、その空気の一部は、上方のセル間流路22にも流入し易くなる。分岐部32によって分岐した後の流入側流路30(個別流路30b,30b)内の空気は、ベースプレート3の長さ方向に沿ってベースプレート3の下流側端部3bまで流れる過程で、上方のセル間流路22に流入する。各セル間流路22に流入した空気は、セル間流路22を上向きに流れる過程でバッテリセル21を冷却し、セル積層体2,2の上面2b,2bから上方に流出する。
【0039】
このように、バッテリ装置1に設けられる冷却構造は、ベースプレート3に分岐部32を設けるだけの簡単な構成で、空気供給口312付近のセル間流路22にも空気を流入し易くすることができる。これによって、
図8に示すように、セル積層体2,2の各セル間流路22内に流入する空気の風量が、分岐部32を設けない場合(調整前)では空気供給口312付近で低下するのに対し、分岐部32を設けた場合(調整後)では増加し、全体的に均一化される。その結果、セル積層体2,2を構成する複数のバッテリセル21の温度のばらつきが抑制され、バッテリ装置1のエネルギー効率が改善される。
【0040】
図2、
図3及び
図7に示すように、本実施形態のベースプレート3は、底部上面3aからセル積層体2,2に向けて流入側流路30内に突出する段部33,33をさらに有する。段部33,33は、分岐部32の先端部32aよりも空気供給口312から離れた位置に配置される。段部33,33は、個別流路30b,30bにそれぞれ配置される。本実施形態の段部33,33は、ベースプレート3の長さ方向に沿う個別流路30b,30bの中央部よりも分岐部32の先端部32a側に少し片寄った位置に配置される。
【0041】
段部33,33は、流入側流路30内を流れる空気の流れ方向に直交するように、個別流路30b,30b内をベースプレート3の幅方向に延びている。本実施形態の段部33,33は、ベースプレート3の底部に一体に成形されるが、段部33,33は、ベースプレート3とは別体の部品を、ベースプレート3の底部上面3aに取り付けることによって形成されてもよい。
【0042】
図7に示すように、段部33の高さは、分岐部32の高さよりも低い。分岐部32で分岐した空気が突き当たる段部33の面33aは、上方に向かうに従って下流側に傾斜する傾斜面である。段部33よりも下流側のベースプレート3の底部上面3a1は、段部33からベースプレート3の下流側端部3bに向かうに従って、下方に緩やかに傾斜した傾斜面である。
【0043】
分岐部32の先端部32aを通過した直後の空気は、先端部32aに衝突して流れ方向が変化することによる流れの剥離や、流路断面積が減少することによる流速の増加によって、上方のセル間流路22に流れにくくなる傾向がある。しかし、分岐部32の先端部32aよりも空気供給口312から離れた位置に段部33,33を設けることによって、分岐部32の先端部32a付近の空気をセル間流路22に指向させることができる。そのため、分岐部32の先端部32aを通過した直後の空気の一部がセル間流路22に流入しにくくなることが改善される。これによって、セル積層体2,2を構成する複数のバッテリセル21の温度のばらつきはさらに抑制される。
【0044】
ところで、
図2及び
図7に示すように、IPU6は、ベースプレート3の分岐部32の先端部32aよりも、空気供給口312に近い位置に配置されている。IPU6は、動作によって発熱する発熱体であるため、空気供給口312に近い位置に配置されるバッテリセル21に熱の影響を与えるおそれがある。しかし、本実施形態のバッテリの冷却構造によれば、空気供給口312に近い位置に配置されるセル間流路22にも空気が流入し易くなるため、IPU6付近のバッテリセル21を好適に冷却することができる。そのため、発熱体であるIPU6がバッテリセル21に与える熱の影響は抑制される。
【0045】
また、
図1に示すように、フロアパネル100の下面側には、車両の前方に配置されるエンジン(図示せず)に連結される排気管200が配置される。排気管200は、フロアパネル100の前方側から後方側に亘って延びている。排気管200は、フロアパネル100の前方側に配置されるトンネル部101に沿って後方に向けて延び、バッテリ装置1の下方を通過している。排気管200は、バッテリ装置1におけるベースプレート3に対してセル積層体2,2と反対側に、積層方向と交差するように配置される。
【0046】
図7に示すように、バッテリ装置1の下方における排気管200は、ベースプレート3の分岐部32の先端部32aよりも、空気供給口312に近い位置に配置されている。排気管200は、排気ガスの熱によって発熱する発熱体であるため、空気供給口312に近い位置に配置されるバッテリセル21に熱の影響を与えるおそれがある。しかし、本実施形態のバッテリの冷却構造によれば、空気供給口312に近い位置に配置されるセル間流路22にも空気が流入し易くなるため、排気管200付近のバッテリセル21を好適に冷却することができる。そのため、発熱体である排気管200がバッテリセル21に与える熱の影響は抑制される。
【0047】
以上のとおり、本実施形態に係るバッテリの冷却装置によれば、以下の効果を奏する。すなわち、本実施形態に係るバッテリの冷却装置は、複数のバッテリセル21を積層するとともに、複数のバッテリセル21の積層方向に隣り合うバッテリセル21,21の間にセル間流路22を有するセル積層体2,2と、セル積層体2の下面2a,2a側に配置されるベースプレート3と、セル積層体2,2とベースプレート3との間に配置され、セル間流路22に連通する流入側流路30と、流入側流路30における積層方向の一方端部に配置され、流入側流路30に空気を供給する空気供給口312と、を備える。ベースプレート3は、空気供給口312から積層方向に沿って流れる流入側流路30内の空気を、複数の流れに分岐する分岐部32を有する。分岐部32は、セル積層体2,2における空気供給口312側の最端部に位置するバッテリセル21aよりも、空気供給口312から離れた位置に配置される。これによれば、流入側流路30における分岐部32の下流側よりも上流側の空気供給口312付近の流路断面積が大きくなり、空気供給口312付近の流入側流路30の流速が低下し、圧力損失が小さくなる。そのため、空気供給口312付近のセル間流路22に空気が流入し易くなる。したがって、ベースプレート3に分岐部32を設けるだけの簡単な構成で、バッテリセル21の温度のばらつきを抑制することができ、バッテリ装置1のエネルギー効率の改善を図ることができる。
【0048】
本実施形態のベースプレート3は、セル積層体2,2に向けて流入側流路30内に突出する段部33,33を有する。段部33,33は、分岐部32よりも、空気供給口312から離れた位置に配置される。これによれば、分岐部32付近に生じる空気の流れの剥離や流路断面積の減少による流速増加によって、分岐部32の先端部32a付近のセル間流路22へ空気が流れにくくなることを改善することができる。そのため、分岐部32の先端部32a付近のセル間流路22にも空気が流れ易くなり、バッテリセル21の温度のばらつきをさらに抑制することができる。
【0049】
本実施形態のセル積層体2,2は、ベースプレート3に対して複数並列して配置される。流入側流路30は、複数のセル積層体2,2に共通に設けられる。分岐部32は、隣り合うセル積層体2,2の間に配置される。これによれば、複数のセル積層体2,2のそれぞれに対して、バッテリセル21の温度のばらつきを抑制することができる。
【0050】
本実施形態において、セル積層体2,2に対してベースプレート3と反対側に、セル積層体2,2の入出力を制御するIPU6が配置される。IPU6は、ベースプレート3の分岐部32よりも、空気供給口312に近い位置に配置される。本実施形態に係るバッテリの冷却構造は、空気供給口312に近い位置に配置されるバッテリセル21を好適に冷却することができるため、発熱体であるIPU6が空気供給口312に近い位置に配置されていても、バッテリセル21に与える熱の影響を抑制することができる。
【0051】
本実施形態において、ベースプレート3に対してセル積層体2,2と反対側に、積層方向と交差するように、エンジンの排気管200が配置される。排気管200は、ベースプレート3の分岐部32よりも、空気供給口312に近い位置に配置される。本実施形態に係るバッテリの冷却構造は、空気供給口312に近い位置に配置されるバッテリセル21を好適に冷却することができるため、発熱体である排気管200が空気供給口312に近い位置に配置されていても、バッテリセル21に与える熱の影響を抑制することができる。
【0052】
以上の実施形態に示すバッテリ装置1は、ベースプレート3上に2列のセル積層体2,2を有するが、セル積層体2は、ベースプレート3上に3列以上配置されてもよいし、ベースプレート3上に1列だけ配置されてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 バッテリ装置
2 セル積層体
2a セル積層体の下面
21 バッテリセル
21a 空気供給口側の最端部に位置するバッテリセル
22 セル間流路
3 ベースプレート
30 流入側流路
312 空気供給口
32 分岐部
33 段部
6 IPU(電装機器)
200 排気管