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特許7574258ワイヤねじインサートの取付け工具用の中空円筒形プリロードカートリッジ、取付け工具、取付け工具用の中空円筒形プリロードカートリッジを用いる改造キット及びワイヤねじインサートの取付け方法
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  • 特許-ワイヤねじインサートの取付け工具用の中空円筒形プリロードカートリッジ、取付け工具、取付け工具用の中空円筒形プリロードカートリッジを用いる改造キット及びワイヤねじインサートの取付け方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】ワイヤねじインサートの取付け工具用の中空円筒形プリロードカートリッジ、取付け工具、取付け工具用の中空円筒形プリロードカートリッジを用いる改造キット及びワイヤねじインサートの取付け方法
(51)【国際特許分類】
   B25B 27/14 20060101AFI20241021BHJP
   B23P 19/06 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
B25B27/14 C
B23P19/06 C
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022173180
(22)【出願日】2022-10-28
(65)【公開番号】P2023070111
(43)【公開日】2023-05-18
【審査請求日】2023-11-13
(31)【優先権主張番号】21206551
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522424142
【氏名又は名称】ベルホフ フェルビンドゥングステクニーク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】マルセル プリオ
(72)【発明者】
【氏名】トーベン シーマン
(72)【発明者】
【氏名】アレクセイ ブートフ
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-005634(JP,A)
【文献】特開2001-113473(JP,A)
【文献】国際公開第2012/015018(WO,A1)
【文献】特開2007-283483(JP,A)
【文献】特開2007-062012(JP,A)
【文献】特開2006-095626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 27/14
B23P 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤねじインサート(D)の取付け工具(1)の中空円筒形プリロードカートリッジ(20)であって、以下の特徴:
a.前記中空円筒形プリロードカートリッジ(20)内で延在するマンドレル挿通路(24)であって、前記マンドレル挿通路(24)において、取付け端部及び駆動端部を有する組込みマンドレル(10)が内側マンドレル案内ねじ内で案内される、マンドレル挿通路(24)と、
b.少なくとも部分的に前記マンドレル挿通路(24)を囲む前記プリロードカートリッジの外壁(22)であって、前記外壁(22)は、前中空円筒形プリロードカートリッジ(20)の第1の軸方向端部の近傍にある径方向配置窓(28)を有し、前記中空円筒形プリロードカートリッジ(20)の第1の軸方向端部は、前記組込みマンドレル(10)の駆動端部(12)から離れて対向し、ワイヤねじインサート(D)が、前記径方向配置窓(28)を通じて前記マンドレル挿通路(24)において前記組込みマンドレル(10)上に配置可能である、外壁(22)と、
c.前記第1の軸方向端部にある、前記中空円筒形プリロードカートリッジ(20)の前側部(26)を越えて突出し、前記プリロードカートリッジの長手方向軸線に平行にオフセット可能である少なくとも1つの第1の触知検出部(40)であって、前記少なくとも1つの触知検出部(40)の軸方向のオフセットは前記プリロードカートリッジの第1の検出センサを用いて検出可能である、第1の触知検出部(40)と、
を備える、中空円筒形プリロードカートリッジ(20)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの触知検出部(40)は、ばねによって付勢されるように前記外壁(22)の挿通路に配置されるセンサピン(42)を備える、請求項1に記載の中空円筒形プリロードカートリッジ(20)。
【請求項3】
記センサピン(42)軸方向触知端部及び軸方向検出端部を備え、前記軸方向触知端部は前記前側部(26)の近傍に配置され、前記軸方向検出端部は前記第1の検出センサの近傍に配置される、請求項2に記載の中空円筒形プリロードカートリッジ(20)。
【請求項4】
前記組込みマンドレル(10)は、前記ワイヤねじインサートの取付け方向の、前記組込みマンドレル(10)の軸方向のオフセットを検出するためにマンドレルセンサと作用し合う前記駆動端部の近傍にあるスイッチ機能部を含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の中空円筒形プリロードカートリッジ(20)。
【請求項5】
前記第1の検出センサ及び/又はマンドレルセンサは誘導センサ又は静電容量センサ又は光学センサである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の中空円筒形プリロードカートリッジ(20)。
【請求項6】
前記中空円筒形プリロードカートリッジ(20)は、前記第1の軸方向端部にある、前記中空円筒形プリロードカートリッジ(20)の前側部(26)を越えて突出し、前記プリロードカートリッジの長手方向軸線に平行にオフセット可能である第2の触知検出部であって、前記第2の触知検出部の軸方向のオフセットは前記中空円筒形プリロードカートリッジ(20)の第2の検出センサを用いて検出可能である、第2の触知検出部を含む、請求項1に記載の中空円筒形プリロードカートリッジ(20)。
【請求項7】
前記第1の触知検出部及び前記第2の触知検出部(40)は前記前側部(26)において10°乃至350°の範囲から得られる角度(α)だけ互いから離隔する、請求項6に記載の中空円筒形プリロードカートリッジ(20)。
【請求項8】
ワイヤねじインサート(D)を予め設置するための内ねじ(32)を含む、前記前側部(26)と前記配置窓(28)との間の軸方向の部分を備える、請求項1乃至3、6及び7の1項に記載の中空円筒形プリロードカートリッジ(20)。
【請求項9】
モータ式駆動モジュール(A)と、請求項1に記載の中空円筒形プリロードカートリッジ(20)を有する取付けモジュール(M)とを備えるワイヤねじインサート(D)の取付け工具(1)。
【請求項10】
前記取付けモジュール(M)は前記駆動モジュール(A)と取り外し可能に接続可能である、請求項9に記載の取付け工具(1)。
【請求項11】
付け自動化システムに接続される、又は手動装置として設けられる、請求項9又は10に記載の取付け工具(1)。
【請求項12】
前記取付け工具の少なくとも1つの検出センサからデータを受け取って解析することができる制御装置を含む、請求項9又は10に記載の取付け工具(1)。
【請求項13】
イヤねじインサート(D)の取付け工具(1)用の改造キットであって、
a)前記取付け工具(1)は、互いに取り外し可能に接続可能である駆動モジュール(A)及び取付けモジュール(M)を備え、
b)前記改造キットは、前記ワイヤねじインサート(D)に適合された取付けモジュール(M)を備え
c)前記改造キットの取付けモジュール(M)は、請求項1に記載の少なくとも2つの中空円筒形プリロードカートリッジ(20)を有し、
d)前記請求項1に記載の少なくとも2つの中空円筒形プリロードカートリッジ(20)は、
d1)組込みマンドレル(10)の構及び/又は
d2)前記組込みマンドレル(10)の寸法
に関して異なる、改造キット。
【請求項14】
求項9に記載の取付け工具(1)を用いて部材(B)のねじ穴(G)にワイヤねじインサート(D)を取り付ける取付け方法であって、以下の:
a.前記取付け工具(1)の中空円筒形プリロードカートリッジ(20)内の組込みマンドレル(10)上にワイヤねじインサート(D)を予め設置するステップ(ST1)と、
b.前記予め設置されたワイヤねじインサート(D)がねじ穴(G)の入り口の近傍にある状態で前記ねじ穴(G)の長手方向軸線に前記組込みマンドレル(10)をほぼ同軸に揃えて前記取付け工具(1)を配置するステップ(ST2)と、
c.前記組込みマンドレルを回転させることによって、取付け方向に前記組込みマンドレル(10)を用いて前記ワイヤねじインサートを前記ねじ穴内まで軸方向に移動させるステップ(ST4)と、
d.前記組込みマンドレルの回転の際に対応可能な回転角度を検出するステップ(ST5)であって、前記検出から、前記組込みマンドレルのマンドレルねじのピッチと掛け合わせによって、ねじ開口内のワイヤねじインサートの取付け深さを推定することができる、ステップ(ST5)と、
e.前記組込みマンドレルの対応可能な既定の回転角度を過ぎたときに前記組込みマンドレルの回転を完了するステップ(ST7)と、
f.前記プリロードカートリッジの前側部を越えて突出する少なくとも1つの触知検出部から前記前側部と前記部材との間の距離に関する情報を取得するステップ(ST8)と、
を有する、取付け方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの触知検出部の検出された距離を、前記距離が既定の距離範囲内にあるのか前記既定の距離範囲外にあるのかに関して評価するさらなるステップ
を有する、請求項14に記載の取付け方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの触知検出部から情報を取得することによって絶対距離を検出して、前記絶対距離が既定の距離範囲内にあるのか前記既定の距離範囲外にあるのかを評価するさらなるステップ
を有する、請求項14に記載の取付け方法。
【請求項17】
前記ワイヤねじインサートを前記ねじ開口内まで軸方向に移動させるときの前記組込みマンドレルの回転の際の前記組込みマンドレルのトルクを検出するさらなるステップ(ST6)
を有する、請求項14に記載の取付け方法。
【請求項18】
第1の既定のトルクを越えるときに前記組込みマンドレルの取付け方向の移動を中断するさらなるステップ、及び/又は
第2の既定のトルクに達しないときに前記組込みマンドレルの取付け方向の移動を中断するさらなるステップ
を有する、請求項17に記載の取付け方法。
【請求項19】
前記組込みマンドレルのトルクの大きさ、前記組込みマンドレルの対応可能な回転角度の大きさ、又は前記少なくとも1つの触知検出部によって検出される距離の大きさの少なくとも1つをディスプレイに示すさらなるステップ
を有する、請求項14乃至18の1項に記載の取付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は取付け工具の取付けモジュール及び駆動モジュールと組み合されて用いられる、ワイヤねじインサートの取付け工具の中空円筒形プリロードカートリッジに関する。さらに、本発明は数個の中空円筒形プリロードカートリッジを用いる改造キット、上記の構成の取付け工具及び取付け工具を用いて部材のねじ穴にワイヤねじインサートを取り付ける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばプラスチック材料や金属のような機械的弾性が低い材料で形成される部材で螺合接続を確実に確立することを可能にするために、内ねじが付けられた穿孔にワイヤねじインサートが挿入される。ワイヤねじインサートは成形された線材の円筒形ワイヤコイルで形成される。ワイヤねじインサートは補強されるべきねじ穴の内ねじよりも大きい寸法を持つ状態で巻かれる。
【0003】
内ねじに合致する外径を持つ取付け工具の組込みマンドレルにワイヤねじインサートを巻くために、取付け工具にプリロードカートリッジを用いる。
【0004】
このような取付け工具はUS 4,553,302(米国特許第4553302号明細書)において手動装置として説明されている。手動でしか駆動されない当該工具の動作は多くの場合にきわめて低速であったり、ワイヤねじインサートの取付けに必要なトルクが欠如したりする。
【0005】
US 2010/0325857 A1(米国特許出願公開第2010/0325857号明細書)にはモータ駆動取付け工具が記載されている。取付け工具にプリロードカートリッジを用い、プリロードカートリッジはばねでオフセットするようにして取付け工具内で付勢されている。ワイヤねじインサートの取付け前に、プリロードカートリッジのリング状の前面がねじ穴に近接した状態で部材に寄せ付けられる。組込みマンドレルによってワイヤねじインサートを回転させてねじ穴に入れる際、プリロードカートリッジはばねの荷重に抗して取付け工具に潜り込む。
【0006】
ねじ穴に入れるワイヤねじインサートの取付け深さの決定が問題になることが多い。取付け深さを決定することにより、ねじ込まれるねじ要素に応じた嵌入ねじ補強が保証される。
【0007】
そのためのものとして、取付け組込みマンドレルの下流にあるマイクロスイッチがDE 21 43 182(独国特許出願公開第2143182号明細書)に開示されている。ワイヤねじインサートが付けられた組込みマンドレルがねじ穴の所定の深さに達し次第、マイクロスイッチが作動する。その際、マイクロスイッチによって、組込みマンドレルを回転させているモータの回転方向の反転が開始される。したがって、組込みマンドレルが回転してワイヤねじインサートから抜け、ワイヤねじインサートがねじ穴に取り付けられる。
【0008】
ワイヤねじインサートの手動取付けでも自動取付けでも、取付け工具の姿勢が完全には決まらず、したがって取付け方向が完全には決まらないという問題が多くの場合に生じる。これにより、誤って取り付けられ、組込みマンドレルが摩滅し、取り付けられたワイヤねじインサートを修正するためにさらに労力を要する。
【0009】
したがって、本発明の目的は、ワイヤねじインサートを確実に取付け可能である取付け工具を提供することである。
【発明の概要】
【0010】
上記の目的は、独立請求項1に記載の、ワイヤねじインサートの取付け工具の中空円筒形プリロードカートリッジと、独立請求項9に記載の、中空円筒形プリロードカートリッジを有する取付けモジュールとモータ式駆動モジュールとを備えるワイヤねじインサートの取付け工具と、請求項13に記載の、数個の中空円筒形プリロードカートリッジを用いるワイヤねじインサートの取付け工具用の改造キットと、請求項14に記載の、取付け工具を用いて部材のねじ穴にワイヤねじインサートを取り付ける取付け方法とによって解決される。以下の説明、添付の図面及び添付の請求項から本発明の、効果を奏する設計とさらなる発展例が得られる。
【0011】
本発明は、ワイヤねじインサートの取付け工具の中空円筒形プリロードカートリッジであって、以下の特徴:プリロードカートリッジ内で延在するマンドレル挿通路であって、マンドレル挿通路において、取付け端部と駆動端部とを有する組込みマンドレルが内側マンドレル案内ねじ内で案内される、マンドレル挿通路と、少なくとも部分的にマンドレル挿通路を囲むプリロードカートリッジの外壁であって、外壁は、組込みマンドレルの駆動端部から離れて対向するプリロードカートリッジの第1の軸方向端部の近傍にある径方向配置窓を有し、径方向配置窓を通じてワイヤねじインサートがマンドレル挿通路において組込みマンドレル上に配置可能である、外壁と、第1の軸方向端部にあるプリロードカートリッジの好ましくはリング状の前側部を越えて突出し、プリロードカートリッジの長手方向軸線に平行にオフセット可能である少なくとも1つの第1の触知検出部であって、少なくとも1つの触知検出部の軸方向のオフセットはプリロードカートリッジの第1の検出センサを用いて検出可能である、第1の触知検出部と、を備える中空円筒形プリロードカートリッジを開示する。
【0012】
進歩的なプリロードカートリッジは、中空円筒形状や、ワイヤねじインサートを設置するための径方向配置窓のような実証済みの構成上の特徴を有する。中空円筒形プリロードカートリッジの径方向内側に配置されたマンドレル案内ねじの使用はこのような実証済みの構成上の公知の特徴に基づく。マンドレル案内ねじは組込みマンドレルを保持し、それを長手方向軸線まわりの組込みマンドレルの回転に応じてプリロードカートリッジ及び組込みマンドレルの長手方向にオフセットする。マンドレル案内ねじのピッチが得られることが好ましいが、ピッチが分かると、取り付けられるワイヤねじインサートの取付け方向に向かう軸方向のオフセットを組込みマンドレルの回転から導出することができる。上記に関連して、取付け方向は、取付け方向が組込みマンドレルの長手方向軸線に平行に延在し、取付け方向によって部材のねじ開口内に方向づけられるように定められる。
【0013】
プリロードカートリッジの内側マンドレル案内ねじ内で組込みマンドレルを案内する一方で、少なくとも1つの第1の触知検出部がプリロードカートリッジの第1の軸方向端部にある好ましくはリング状の前側部を越えて突出する。好ましくはリング状の前側部は部材とねじ開口すなわちねじ穴とにそれぞれ面するプリロードカートリッジの軸方向端部を形成し、ワイヤねじインサートの取付けに用いられるものが選択される。リング状前側部以外に、多角形構造や楕円形構造も選択されることも好ましい。少なくとも1つの触知検出部は、触知検出部の軸方向のオフセットを検出することができる検出センサを備える。触知検出部がプリロードカートリッジのリング状前側部を越えて突出する際に、突出によってねじ穴が付けられた部材の近接面に対する物理的接触が確立されることが好ましい。このようにして、少なくとも1つの第1の触知検出部によって部材近接面までの定性的形態及び/又は絶対的形態の距離が検出される。上記に関連して、定性的は、プリロードカートリッジのリング状前側部と部材近接面との距離範囲が好ましい制御装置で規定され、この距離範囲は、触知検出部によって検出される距離が含まれるべき距離範囲であることを意味する。別の好ましい実施形態では、少なくとも1つの第1の触知検出部によってプリロードカートリッジのリング状前側部と部材の近接面との絶対距離が定量されることが好ましい。
【0014】
中空円筒形プリロードカートリッジの好ましい実施形態に係れば、少なくとも1つの触知検出部は、ばねによって付勢されるように外壁の挿通路に配置されるセンサピンを備える。
【0015】
プリロードカートリッジのリング状前側部と部材近接面との可能な距離を検出するために、触知検出部は、センサの傍らにあり、ばねによって付勢されるセンサピンを備える。センサピンは中空円筒形プリロードカートリッジの外壁の挿通路内で案内されることが好ましい。ばねの初張力によって、センサピンがばねの作用によりワイヤねじインサートの取付け方向に押し付けられる。これにより、センサピンは、センサピンの触知端部がプリロードカートリッジのリング状前側部を越えた状態で突出し、プリロードカートリッジの壁内の挿通路内で部材近接面によってばねの初張力の力に抗して押されることが可能である。この軸方向の移動の際、センサピンが第1の検出センサに沿って移動すると、プリロードカートリッジに対するセンサピンの軸方向の位置の変化を検出することができる。好ましくは、この情報を評価することで、近い部分である部材表面とプリロードカートリッジのリング状前側部との距離を検出することができ、この距離を評価し、この情報に基づいて、ワイヤねじインサートの取付けの際に取付け工具に制御情報を提供することができる。
【0016】
センサピンが軸方向触知端部と軸方向検出端部とを備え、軸方向触知端部はリング状前側部の近傍に配置され、軸方向検出端部は第1の検出センサの近傍に配置されることがさらに好ましい。
【0017】
既に上述されているように、センサピンはリング状前側部を越えて突出する触知端部と、検出を行なうセンサの近傍で移動する検出端部とを含む。検出センサが異なる種類のセンサ、たとえば、誘導センサ、静電容量センサや光学センサの検出センサであることが可能であるので、センサピンの軸方向検出端部はセンサの原理に応じて構成される。光学センサの場合には、検出端部はセンサの特定の光信号を反射したり遮ったりするなどによってセンサピンの軸方向の位置に応じた光信号を生成するために用いられる。誘導センサや静電容量センサについては、センサピンの検出端部によってセンサの周囲の電磁石の磁場が変化したりセンサで感知される静電容量が変化したりすることで、このような変化により、この場合でも、センサピンの軸方向の位置の変化を検出することができる。センサピンの軸方向の位置のこのような変化は部材近接面と検出端部との当接によって生じることが好ましい。センサピンが取付け方向にばねによって付勢されているので、部材近接面との当接によってセンサピンの移動が制限されない限り、ばねの作用によって取付け方向にセンサピンが移動することも可能である。以上から、この仕方では、センサピンのばねの初張力によってセンサピンが軸方向の一方に寄せられ、これに対応して検出センサで信号が生成されるということがいえる。
【0018】
中空円筒形プリロードカートリッジのさらに好ましい実施形態に係れば、その組込みマンドレルは、ワイヤねじインサートの取付け方向に向かう組込みマンドレルの軸方向のオフセットを検出するためにマンドレルセンサと作用し合う駆動端部の近傍にあるスイッチ機能部を含む。
【0019】
部材のねじ開口にワイヤねじインサートを取り付けるプロセスの結果を可能な限り精度よく検出することを可能にするためには、取付け方向に向かうワイヤねじインサートの軸方向のオフセットに関する情報を取得することが必要である。この軸方向のオフセットは組込みマンドレルの移動によって生じる。プリロードカートリッジのマンドレル案内ねじ内で組込みマンドレルが回転するのに応じて、組込みマンドレルの取付け端部に配置されたワイヤねじインサートが取付け方向に移動する。組込みマンドレルの回転数と内側マンドレル案内ねじのピッチとに応じて、取付け方向に向かうワイヤねじインサートの軸方向のオフセットを定量することができる。ワイヤねじインサートがプリロードカートリッジから出る、すなわちプリロードカートリッジのリング状前側部を取付け方向に過ぎるときしか、ワイヤねじインサートのこの軸方向のオフセットはねじ穴での組込みに寄与しない。プリロードカートリッジのリング状前側部をワイヤねじインサート又は組込みマンドレルの取付け端部がそれぞれ過ぎる時点、すなわち、プリロードカートリッジの中空円筒形の内部から外部に取付け端部が移動する時点を検出するために、組込みマンドレルの駆動端部の近傍にスイッチ機能部が設けられる。このスイッチ機能部は、スイッチ機能部が検出されるときに組込みマンドレルの取付け端部がプリロードカートリッジから出ることを示す、長さに依存する指標である。このようなスイッチ機能部を組込みマンドレルのスイッチ縁部や凹所によって実現することができることが好ましく、このようなスイッチ機能部を誘導センサや光学的センサによって補助しつつ検出することができる。以上から、センサがこのスイッチ縁部を認識すなわち検出すれば、この検出は組込みマンドレルの取付け端部がプリロードカートリッジから出たという通知に相当するということがいえる。
【0020】
この情報は、検出した時点、すなわち、プリロードカートリッジが組込みマンドレルの取付け端部を通って出る時点を基点として、取付け方向に向かうワイヤねじインサート又は組込みマンドレルの増加分の軸方向のオフセットをそれぞれ定量するのに用いられる。この軸方向のオフセットは当該時点から組込みマンドレルの対応可能な回転角度を検出することで定量されることが可能であることが好ましい。この回転角度に基づいて、内側マンドレル案内ねじのピッチと掛け合せると、取付け方向の組込みマンドレルの軸方向の行程が導出される。組込みマンドレルの端部、すなわち取付け端部において組込みマンドレル上でワイヤねじインサートが保持されているとき、内側マンドレル案内ねじのピッチと組み合された組込みマンドレルの検出された回転角度は、取付け方向のワイヤねじインサートの対応可能な行程を表わす。理想的には、上記の通知はワイヤねじインサートが回転してどの程度ねじ穴に入ったのかを判断するのに用いられる。
【0021】
本発明のセンサに関しては、第1の検出センサ及び好ましくはマンドレルセンサが誘導センサ又は静電容量センサ又は光学センサであることが好ましい。
【0022】
既に上述されているように、少なくとも1つの触知検出部のセンサピンの移動と組込みマンドレルの移動とをセンサによって補助しつつ検出する。これを行なうために、ピンが検出センサと協働する一方で、組込みマンドレルがマンドレルセンサと組み合される。本発明の様々な好ましい実施形態に係れば、このようなセンサは誘導センサや静電容量センサや光学的センサで形成される。これらの測定原理の組み合せを、センサピン及び組込みマンドレルの移動を確実に検出するのに用いることも可能である。
【0023】
中空円筒形プリロードカートリッジのさらに好ましい実施形態は、第1の軸方向端部にあるプリロードカートリッジのリング状前側部を越えて突出し、プリロードカートリッジの長手方向軸線に平行にオフセットすることができる第2の触知検出部を含み、第2の触知検出部の軸方向のオフセットはプリロードカートリッジの第2の検出センサを用いて検出可能である。好ましくは、第1及び第2の触知検出部はリング状前側部において10°乃至350°の範囲から得られる角度(α)だけ互いから離隔する。プリロードカートリッジは、リング状前側部と配置窓との間の軸方向の部分において、ワイヤねじインサートを予め設置するための内ねじを備えることがさらに好ましい。
【0024】
組込みマンドレル上に配置されるワイヤねじインサートを組込みマンドレルにねじ込むための内ねじをプリロードカートリッジの配置窓の近傍に設けることがさらに好ましい。好ましくは、部材のねじ穴に容易にねじ込むためにワイヤねじインサートの直径が縮小されるように当該内ねじ内でワイヤねじインサートにプリロードが付与される。
【0025】
さらに、本発明では、モータ式駆動モジュールと、上述されている構成の1つに係るプリロードカートリッジを有する好ましい取付けモジュールとを備えるワイヤねじインサートの取付け工具を開示する。
【0026】
プリロードカートリッジをプリロードカートリッジの少なくとも1つの触知検出部とともに効果的に用いることを可能にするために、プリロードカートリッジはモータ式駆動モジュールと接続される。駆動モジュールによって組込みマンドレルに対する機械的接続が確立され、これにより、組込みマンドレルが駆動モジュールのモータによって回転され、そのため取付け方向にオフセット可能である。好ましくは、モータ式駆動モジュールはステッピングモータや圧縮空気モータや、組込みマンドレルに対する別の種類の駆動手段を含む。この駆動手段が、対応可能な回転角度の検出と、組込みマンドレル又は駆動モジュールの回転の際に組込みマンドレルによって伝動されるトルクのさらに好ましい検出とを行なうことも好ましい。この技術的な実施形態を用いれば、プリロードカートリッジを出た後の組込みマンドレルの取付け端部の軸方向のオフセットを定量することができる(上記を参照)。さらに、トルクを検出することで、取付け動作の状態を評価することができる。モータ式駆動モジュールの回転角度及びトルクの検出は公知であり、当該作用を特に労力を要さずに実施することができる。
【0027】
取付け工具では、取付けモジュールにプリロードカートリッジを配置することが好ましい。本発明の様々な好ましい実施形態に係れば、取付けモジュール又はプリロードカートリッジは駆動モジュールと取り外し可能に接続可能である。
【0028】
取付け工具のさらに好ましい構成に係れば、プリロードカートリッジは駆動モジュールと取り外し可能に接続可能である。プリロードカートリッジの組込みマンドレルを、取り付けられるワイヤねじインサートに適合させなければならず、上記は、異なる寸法のワイヤねじインサート、すなわち異なる直径のワイヤねじインサートを、駆動モジュールと、対応するプリロードカートリッジとによって補助しつつ取付け可能にするための基本的手段を形成する。したがって、取り付けられるワイヤねじインサートに応じて、対応するプリロードカートリッジを駆動モジュールと接続した後、取付けを行なうことが必要である。
【0029】
さらに、上記とは異なり、取付け工具は好ましくはロボットによって制御される取付け自動化システムに接続される、又は手動装置として設けられる。
【0030】
本発明の様々な好ましい実施形態に係れば、取付け工具を取付け自動化システムと組み合せて用いたり手動装置として用いたりする。様々な適用例を替えて用いると、好ましいプリロードカートリッジに数個の触知検出部を設ける仕方に影響する。好ましい取付け自動化システムで行なうので、取付け工具はねじ穴に揃えられる上で動かないように配置される。したがって、この配置により、ねじ穴の長手方向軸線に対する取付け工具の傾きがほぼ排除される。この場合、これによって、プリロードカートリッジに触知検出部を1つだけ設ける場合にも支障がないことが好ましい。次に、取付け工具を手動装置として用いる場合、組込みマンドレルの長手方向軸線がねじ穴の長手方向軸線に同軸ではない状態でより揃えられ易い可能性がある。この場合、本発明に係れば、取付け工具の長手方向軸線とねじ穴の長手方向軸線との間に角度が生じた状態で揃えられる可能性があることを避けるように、プリロードカートリッジが少なくとも2つの触知検出部を含むことが好ましい。一方で、手動装置についても、手動装置に触知検出部を1つだけ設けることが好ましく、これは、この構成原理に基づけば、やはり取付け工具の確実な動作が保証されるからである。
【0031】
取付け工具のさらに好ましい実施形態に係れば、取付け工具は、取付け工具の少なくとも1つの検出センサからデータを受け取って解析することができる制御装置を含む。
【0032】
取付け工具の進歩的に好ましい制御装置によって補助しつつ、用いられているセンサによって検出されるデータを収集して解析することが好ましい。当該センサは、少なくとも1つの触知検出部の少なくとも1つの検出センサと、取付け工具の組込みマンドレルの軸方向の移動を監視するためのマンドレルセンサとを含むことが好ましい。駆動手段の対応可能な回転角度に関するデータをモータ式駆動モジュールから制御装置が受け取り、この結果として組込みマンドレルの対応可能な回転角度に関するデータを受け取ることがさらに好ましい。取付け工具のさらに好ましい実施形態に係れば、組込みマンドレルによってワイヤねじインサートに伝達されるトルクに関する情報をモータ式駆動モジュールが制御装置に送る。組込みマンドレルによって印加されるトルクは、ワイヤねじインサートが回転して問題なくねじ穴の内ねじに入ることができたか否かを示したり、このような回し込み行為の最中か、ねじ穴にワイヤねじインサートを取り付ける最中の場合には、取付けの誤りが生じたか否かを示したりする。これは、このような取付けの誤りが生じると、取付け中にワイヤねじインサートがねじ穴の既定の内ねじから外れてトルクが増大するからである。同様に、過剰に低いトルクを検出することは取付け動作の結果の判断に有用である。これは、トルクが既定の閾値未満であることが、組込みマンドレル上に位置するワイヤねじインサートが回転してもねじ穴にまったく入らなかったことを示すからである。
【0033】
さらに、本発明では、互いに取り外し可能に接続可能である駆動モジュールと、組込みマンドレル又はプリロードカートリッジの構造及び/又は寸法が異なる本発明の上記の実施形態の1つに係る少なくとも2つのプリロードカートリッジが付けられたワイヤねじインサートに適合するプリロードカートリッジとを有するワイヤねじインサートの取付け工具用の改造キットを開示する。
【0034】
一般的な取付け工具もモータ式駆動モジュールとプリロードカートリッジとで構成されている。このような以前から入手可能な公知の駆動モジュールを追加の技術的特徴とともに取付け工具として用いることを可能にするために、本発明の様々な好ましい実施形態に係る複数のプリロードカートリッジを用いる改造キットを提供する。当該プリロードカートリッジの各々は入手可能な駆動モジュールと取り外し可能に接続可能であり、本発明の作用を実現するために、当該プリロードカートリッジを入手可能なモータ式駆動モジュールに接続することができる。したがって、改造キットは本発明の様々な好ましい構成に係る少なくとも2つのプリロードカートリッジを含むことが好ましい。
【0035】
モータ式駆動モジュールが、センサデータを評価する制御装置を既に含むものではない場合には、公知のモータ式駆動モジュールに上記の特徴に係る追加の制御装置を設けることも好ましい。
【0036】
さらに、本発明は、取付け工具、特に上記の実施形態の1つに係る取付け工具を用いて部材のねじ穴にワイヤねじインサートを取り付ける取付け方法であって、以下の:取付け工具のプリロードカートリッジ内の組込みマンドレル上にワイヤねじインサートを予め設置するステップと、予め設置されたワイヤねじインサートがねじ穴の入り口の近傍にある状態でねじ穴の長手方向軸線に組込みマンドレルをほぼ同軸に揃えて取付け工具を配置するステップと、組込みマンドレルを回転させることによって、特に、回転する組込みマンドレルをプリロードカートリッジの内側マンドレル案内ねじ内で案内することによって、取付け方向に組込みマンドレルを用いてワイヤねじインサートをねじ穴内まで軸方向に移動させるステップと、組込みマンドレルの回転の際に組込みマンドレルの対応可能な回転角度を検出するステップであって、検出から、組込みマンドレルねじのピッチと掛け合せることによって、ねじ開口に入れるワイヤねじインサートの取付け深さを推定することができる、ステップと、組込みマンドレルの対応可能な既定の回転角度を過ぎたときに組込みマンドレルの回転を完了するステップと、プリロードカートリッジのリング状前側部を越えて突出する少なくとも1つの触知検出部からリング状前側部と部材との間距離に関する情報を取得するステップと、を有する取付け方法も含む。
【0037】
ワイヤねじインサートの進歩的な取付け方法は取付けの際に公知の解決手段に基づく。これは、進歩的に好ましい取付け方法でも、まず、組込みマンドレル上においてプリロードカートリッジ内でワイヤねじインサートにプリロードを付与し、その後、ワイヤねじインサートを回転させてねじ穴に入れることを開始するからである。ワイヤねじインサートの取付けプロセスを確実に評価することを可能にするために、プリロードカートリッジが軸方向の取付け方向にワイヤねじインサートを通って出る時点から、組込みマンドレルの対応可能な回転角度を検出する。対応可能な回転角度により、軸方向の取付け方向に向かうワイヤねじインサートによるワイヤねじインサートの対応可能な行程に関する情報が間接的に提供される。このことから、ねじ穴にワイヤねじインサートがすぐに入る場合、組込みマンドレルの回転によって対応可能な組込みマンドレルの回転角度はワイヤねじインサートの取付け深さを表わすということがいえる。この仕方では、取付けプロセスの前に、所望の取付け深さを決定することができ、この場合、ワイヤねじインサートは少なくとも取り付けられることになっていることが好ましい。
【0038】
プリロードカートリッジから出る場合において、組込みマンドレルが回転して軸方向に移動しても、ワイヤねじインサートが部材のねじ開口の内ねじにすぐに入らないとき、遅くともワイヤねじインサートのねじ込みプロセスの終了後に組込みマンドレルの回転角度の検出と並行して、近くにある部材の近傍にあるプリロードカートリッジのリング状前側部と、近くに置かれた部材の部材近接面との距離の大きさが調べられることが進歩的に好ましい。この距離が好ましくは既定の許容範囲にあるか、あるいは、ワイヤねじインサートが組込みマンドレルの対応可能な回転角度に基づいて回転して十分に深く部材のねじ穴に入ることが完了することを保証するためにこの距離が既定の閾値を超えてはならないことが進歩的に好ましい。この距離は、取付け方向に部材の方向に好ましいセンサピンが向かうことによってプリロードカートリッジのリング状前側部を越えて突出する触知検出部によって補助されつつ検出される。この好ましいセンサピンは取付け方向にばねによって付勢されているので、センサピンと部材表面とが当接すると、取付け方向又はその反対方向のセンサピン変位を検出可能にするセンサピンと部材表面との当接が生じる。このようにして、プリロードカートリッジのリング状前面と、対向する部材表面との距離が検出可能になることが可能になる。
【0039】
したがって、ワイヤねじインサートの進歩的な取付け方法は、プリロードカートリッジのリング状前側部と、対向する部材表面との距離が既定の距離範囲内にある又は既定の絶対距離未満であるか否かに関して、組込みマンドレルの対応可能な回転角度を過ぎた後に、好ましい制御ユニット又は好ましい制御装置によって補助しつつ、調べることを最後に行なって終了し、これにより、ワイヤねじインサートの取付けプロセスを適正なものとして完了する。
【0040】
上記の取付け方法の好ましい実施形態に係れば、同方法は、少なくとも1つの触知検出部の検出された距離を、距離が既定の距離範囲内にあるのか既定の距離範囲外にあるのかに関して評価するさらなるステップを有する。
【0041】
以下の:少なくとも1つの触知検出部から情報を取得することによって絶対距離を検出して、絶対距離が既定の距離範囲内にあるのか既定の距離範囲外にあるのかを評価するさらなる方法ステップを用いることがさらに好ましい。
【0042】
進歩的な取付け方法の好ましい実施形態に係れば、ねじ穴へのワイヤねじインサートの取付けが適正であるのか不適正であるのかに基づいて評価するために、プリロードカートリッジのリング状前側部と対向する部材表面との距離を定性的に検出したり定量的に検出したりする。プリロードカートリッジのリング状前側部と部材表面との距離を定性的に検出する場合、触知検出部によってプリロードカートリッジの前側部と対向する部材表面との間の正確なスペースを検出したり正確な距離を検出したりする。これは、好ましくは検出センサと組み合され、ばねによって付勢されたセンサピンを用いて技術的に実現することができる。この解決手段は、プラグを介して接続された好ましい制御装置に最大距離が記憶され、この最大距離を超えてはならない場合に対する基本的手段を形成する。この場合、記憶された最大距離と測定された絶対距離との比較を制御装置内で行なう。
【0043】
触知検出部がプリロードカートリッジのリング状前側部と対向する部材表面との絶対的な距離を定量する場合であっても、取付け方法の評価の際、使用可能であるか、許容可能であるか、許容不能であるかする距離に関する定性的な評価のみがなされることが好ましい。これから、制御装置と組み合された触知検出部によって、距離が許容可能距離範囲内にあるか否かに関する情報が提供されるということがいえる。したがって、その後、ワイヤねじインサートの取付け方法が適正であるか否かの情報が提供されることになる。
【0044】
ワイヤねじインサートの取付けの際、ワイヤねじインサートをねじ開口内まで軸方向に移動させるときの組込みマンドレルの回転の際の組込みマンドレルのトルクが検出されることがさらに好ましい。
【0045】
ワイヤねじインサートの進歩的な取付け方法のさらに好ましい構成に係れば、ワイヤねじインサートの取付けの際に組込みマンドレルによって用いられるトルクを評価する。これを行なう場合、取付けの際に用いられるトルクの絶対的な定量に第一に注目することはない。さらに言えば、この評価に基づいて、部材のねじ穴へのワイヤねじインサートの確実な取付けが行なわれたか否かを定性的に判断するべきである。これは、取付けプロセスが開始されたときにワイヤねじインサートがねじ穴の内ねじに入らないために、取り付けられない可能性があるからである。このことは、組込みマンドレルによって印加されるトルクが過剰に小さいという、ねじ穴の内ねじにワイヤねじインサートをねじ込む現実の様子を表わす事実から分かる。組込みマンドレルの検出されたトルクが既定の閾値を超える場合、このことは、ワイヤねじインサートを部材開口の内ねじにねじ込むときに誤りや問題が生じたことを示すことになる。これは、たとえば、ねじ込みの際にワイヤねじインサートがねじ穴に噛み込む場合である可能性がある。この場合、取付けプロセスも適正ではなくなり、ねじ穴からワイヤねじインサートを好ましい仕方で取り外した後に取付けプロセスを再度行なわなければならなくなる。
【0046】
上記に基づけば、第1の既定のトルクを越えるとき且つ/又は第2の既定のトルクに達しないときに、さらなるステップにおいて取付け方向の組込みマンドレルの移動を中断することが好ましい。
【0047】
取付け方法のさらに好ましい構成に係れば、さらなるステップにおいて、組込みマンドレルのトルクの大きさ、組込みマンドレルの対応可能な回転角度の大きさ、及び少なくとも1つの触知検出部によって検出される距離の大きさの少なくとも1つがディスプレイに示される。
【0048】
進歩的な取付け方法の様々な好ましい適用可能な例に係れば、部材のねじ穴にワイヤねじインサートを取り付けるために、本取付け方法を取付け自動化システムと組み合せて用いたり手動装置と組み合せて用いたりする。取付け自動化システムは、用いられているセンサのデータ評価を好ましくは自動的に行ない、当該データの解釈も自動的に行なうが、当該データをたとえばディスプレイに表示することは必要ではない。
【0049】
一方で、取付け方法が手動工具と組み合されて作業者によって用いられる場合、作業者には作業者による解釈、情報及び/又は評価のために、関連するセンサデータをディスプレイ上で提供することが好ましい。このディスプレイは定性的なデータを表示することが好ましい。このことから、「適正」又は「不適正」の記号によって補助しつつ、取付け中の距離及び/若しくはトルク並びに/又は取付けプロセス全体が適正であるのか不適正であるのかに関する信号が与えられるということがいえる。同様に、取付けの際、部材表面とプリロードカートリッジのリング状前側部との距離、並びに/又は組込みマンドレルの対応可能な回転角度若しくは軸方向のオフセット、並びに/又は組込みマンドレルによって印加されるトルクの絶対値を取付け中及び/又は取付け後にディスプレイ上で作業者に提供することが好ましい。このディスプレイにより、ワイヤねじインサートの取付けが成功したか否かを、渡されることになる距離、トルク、取付け深さの既知の値に基づいて評価することが可能であることが作業者に提案される。
【0050】
以下を示す添付の図面を参照して、本発明の好ましい実施形態がより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】駆動モジュールと取付けモジュールとからなる取付け工具の好ましい実施形態の部分斜視断面図。
図2】取付けモジュールの好ましい実施形態の拡大斜視断面図。
図3】取付けモジュールの好ましい実施形態のさらに拡大した斜視断面図。
図4】取付けモジュールの好ましい実施形態の分解図。
図5】触知検出部をともなう当接前面の概略上面図。
図6a】部材のねじ開口にワイヤねじインサートを取り付けるステップの好ましい手順の実例。
図6b】部材のねじ開口にワイヤねじインサートを取り付けるステップの好ましい手順の実例。
図6c】部材のねじ開口にワイヤねじインサートを取り付けるステップの好ましい手順の実例。
図6d】部材のねじ開口にワイヤねじインサートを取り付けるステップの好ましい手順の実例。
図7a図6のステップ後の、部材のねじ開口にワイヤねじインサートを取り付けるステップの好ましい手順の実例。
図7b図6のステップ後の、部材のねじ開口にワイヤねじインサートを取り付けるステップの好ましい手順の実例。
図7c図6のステップ後の、部材のねじ開口にワイヤねじインサートを取り付けるステップの好ましい手順の実例。
図7d図6のステップ後の、部材のねじ開口にワイヤねじインサートを取り付けるステップの好ましい手順の実例。
図8】好ましい取付け工具を用いたワイヤねじインサートの取付け方法のさらに好ましい実施形態のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1には取付け工具1の好ましい実施形態が示されている。取付け工具1によって補助しつつ、部材Bの内ねじが付けられた穴GにワイヤねじインサートDを取り付ける。このような取付け工具はモータ駆動される駆動モジュールAと、プリロードカートリッジ20を有する取付けモジュールMとからなる。モータ式駆動モジュールAは取付けモジュールMに回転運動を提供し、この回転運動は電気モータ又は空気圧モータを有する本発明の様々な好ましい実施形態にしたがって発生する。駆動モジュールAと、プリロードカートリッジ20を有する取付けモジュールMとが互いに取り外し可能に接続されたり強固に接続されたりすることも好ましい。互いに取り外し可能に接続可能である駆動モジュールAと取付けモジュールMとは、これらのモジュールの寸法についていえば、異なるサイズのワイヤねじインサートDに適合する取付けモジュールMを取り換えても、駆動モジュールAと接続可能であるという効果を奏する。
【0053】
ワイヤねじインサートD用の取付け工具1のこのような構成は公知である。
【0054】
さらに、当該取付け工具1は様々な構成のワイヤねじインサートDを取り付けるように構成されている。当該ワイヤねじインサートDはたとえば、取り外し可能な組込みタング、取付けノッチや、折り返すことができる組込みタングを含む。
【0055】
進歩的な取付け工具1はこのような様々なワイヤねじインサートの取付けに適する。
【0056】
プリロードカートリッジを有する取付けモジュールMは機械式継手Kによって駆動モジュールAと取り外し可能に接続される。駆動モジュールAと取付けモジュールMとの間の当該接続により、駆動モジュールAのモータとプリロードカートリッジMの組込みマンドレル10との間の接続が確立される。これにより、ワイヤねじインサートDを取り付けたり、ねじ穴Gから組込みマンドレル10を抜いたりするために、モータの回転運動が組込みマンドレル10に伝達される。さらに、取付けモジュールはプリロードカートリッジの好ましいセンサ及び/又はプリロードカートリッジの通信配線を取付け工具の制御装置と接続するための電気配線及び/又は電気接続部を備える。
【0057】
組込みマンドレル10はモータ又は駆動モジュールAとそれぞれ接続されるための駆動端部12を有する。組込みマンドレル10の取付け端部14には取付けねじ16が設けられ、取付け端部14上に取り付けられるワイヤねじインサートDをかぶせた状態で回転させることができる。また、取付け端部14では、組込みマンドレル10はワイヤねじインサートDと噛合するようにも構成されている。たとえば、図3の組込みマンドレル10は、ワイヤねじインサートDがねじ穴Gにねじ込まれるときに組込みタング(図示せず)を介してワイヤねじインサートDを、回転を防ぐように保持するための径方向末端側にある突出部18を備える。
【0058】
組込みマンドレル10はプリロードカートリッジ20内に配置される。プリロードカートリッジ20の基本的な構成及び機能は公知である。プリロードカートリッジ20は中空円筒形に構成され、外周壁22を有する。中空円筒形プリロードカートリッジ20内にはマンドレル挿通路24が設けられ、マンドレル挿通路24内で組込みマンドレル10が延在する。好ましくは、マンドレル挿通路24はプリロードカートリッジ20の長手方向の中心軸線と同軸に配置される。
【0059】
マンドレル挿通路24内の径方向内側の壁にはマンドレル案内ねじ25が設けられている。マンドレル案内ねじ25は組込みマンドレル10のねじ16と合致するように構成されている。
【0060】
マンドレル案内ねじ25のピッチが分かると、組込みマンドレル10によって対応可能な回転角度と、マンドレル案内ねじ25及び/又はねじ16のピッチに基づいて組込みマンドレル10の軸方向のオフセットを計算することができる。これを行なうには、組込みマンドレル10のピッチと回転数とを掛け合せる。
【0061】
組込みマンドレル10の長さはプリロードカートリッジ20の長さに合せられる。組込みマンドレル10の取付け端部14が取付け方向Rにプリロードリング30から出ると、同時に組込みマンドレル10のスイッチ機能部13が移動してマンドレルセンサ60を通過する。好ましくは、マンドレルセンサ60は誘導センサや光学センサや静電容量センサとして構成される。スイッチ機能部13は組込みマンドレル10の構成中のスイッチ縁部であったり、誘導方式で検出可能な機能部であったり、静電容量方式で検出可能な機能部であったり、光学方式で検出可能な機能部であったりすることが好ましい。
【0062】
組込みマンドレル10がマンドレル挿通路24に配置されると、マンドレルセンサ60がスイッチ機能部13をプリロードカートリッジ20の径方向外側から検出したり径方向内側から検出したりすることが好ましい。マンドレルセンサ60がプリロードカートリッジ20の壁22に配置されることも好ましい。
【0063】
本発明の好ましい構成に係れば、マンドレルセンサ60は取付け工具1の制御装置Sに接続されたり、制御装置Sに接続可能であったりする。プリロードカートリッジ20が改造キット(以降を参照)として提供される場合、異なる組込みマンドレル構造及び/又は寸法のプリロードカートリッジ20の各々が駆動モジュールA又は取付け工具1の制御装置Sと接続可能であることが好ましい。
【0064】
制御装置Sはマンドレルセンサ60のデータを受け取り、好ましくは、たとえば、少なくとも1つの触知検出部40の少なくとも1つの検出センサ50などのさらなるセンサのデータを受け取る。さらに、駆動モジュールAのデータが制御装置Sに送られることが好ましい。好ましくは、このデータは組込みマンドレル10を回転させてワイヤねじインサートを取り付けるために駆動モジュールAのモータによって印加されるトルクを含む。さらに好ましくは、組込みマンドレル10によって対応可能な回転角度を駆動モジュールAによって検出して当該データを制御装置Sに送る。組込みマンドレル10の取付け端部14の軸方向のオフセットは組込みマンドレル10の対応可能な回転角度に基づいて決定され、好ましくは、マンドレル案内ねじ25のピッチと掛け合せることによって決定される。
【0065】
駆動モジュールAから離れて対向するプリロードカートリッジの軸方向端部21にリング状当接前面、すなわちほぼ最前部となる面26が設けられている。好ましくは、当接面26は組込みマンドレル10の長手方向軸線に垂直なラジアル平面に配置される。リング状前面26はワイヤねじインサートDの後述されている取付けの際に部材Bの近接面Oに必ずしも当接しない。
【0066】
プリロードカートリッジ20は軸方向端部21の近傍にある径方向配置窓28を備える。径方向配置窓28を用いてワイヤねじインサートDがプリロードカートリッジ20に配置されることが分かる。後述において、ワイヤねじインサートDが組込みマンドレル10のねじ16上に巻かれるが、これは、巻かれた後に回転してプリロードカートリッジ20の内ねじ32が付けられたプリロードリング30に入り、そこでプリロードが付与されるように行なわれる。後半ではワイヤねじインサートDが回転してプリロードリング30から出てねじ穴Gの内ねじに入る。
【0067】
リング状当接前面26は組込みマンドレル10の長手方向の中心軸線を中心軸線として共有して同心円状に延在する。本発明の好ましい実施形態に係れば、リング状当接前面26は組込みマンドレル10の長手方向の中心軸線に垂直なラジアル平面内にある。
【0068】
プリロードカートリッジ20、特にプリロードリング30に予め設置されたワイヤねじインサートを回転させてねじ穴Gに入れること(ステップS1)を可能にするために、取付け工具1が部材Bのねじ穴Gの近傍に配置される。そのためには、取付け工具1、特に組込みマンドレル10の長手方向の中心軸線がねじ穴Gの長手方向の中心軸線と略同軸に配置されることが好ましい(図6c~図6dを参照)。
【0069】
ねじ穴Gが、当接前面26に接したり当接前面26の近傍に配置されたりする部材表面Oに垂直に延在すると仮定する。したがって、本発明に係れば、取付け工具1も、当接する部材表面Oに略垂直に配置されることが好ましい。
【0070】
プリロードカートリッジ20は少なくとも1つの触知検出部40を備えることが好ましく、少なくとも1つの触知検出部40はセンサピン42と検出センサ50とからなることが好ましい。センサピン42はプリロードカートリッジ20の壁22内の案内部すなわち挿通路46内で案内される。センサピン42の当接端部54は取付け方向Rに付勢されているばね機構であり、リング状前側部26を越えて突出することが好ましい。近い部分である部材表面Oと当接端部54が当接状態になるとき、センサピンが好ましいばねの力に抗して取付け方向Rの反対方向に退避する。センサピン42の退避を少なくとも1つの検出センサ50が検出してデータを送り、好ましくは制御装置Sに送る。
【0071】
取付け工具1によってワイヤねじインサートが部材Bのねじ穴Gに取り付けられる場合、センサピン42の当接端部54が部材近接面O上に配置される。センサピン42のこれにともなう軸方向変位が検出センサ50によって検出されて制御装置Sに送られる。検出センサ50によって制御装置Sに送られたデータはプリロードカートリッジ20のリング状前側部26と、ねじ穴Gを有する部材Bの部材表面Oとの距離を示す。
【0072】
好ましくは、当該距離は検出センサによって絶対量(絶対距離)として定量される。本発明のさらに好ましい実施形態に係れば、検出された距離が最大距離を超えたか否かが判断される。したがって、これは定性的な距離の判断に対応し、定性的な距離の判断は正確な距離値の表示を要しないことが好ましい。
【0073】
本発明のさらに好ましい実施形態と組み合せて説明されており、多くの場合に取付けモジュールとも称されているプリロードカートリッジ20の構造の構成は上記のプリロードカートリッジ20とその特徴にも同様に適用される。
【0074】
図8のフローチャート並びに図6及び7の実例を参照してワイヤねじインサートDの進歩的に好ましい取付け方法をより詳細に説明する。取付け方法は駆動モジュールAと組み合されたプリロードカートリッジの好ましい実施形態の上記のプリロードカートリッジ20によって実行されることが好ましい。本発明の好ましい実施形態に係れば、取付け方法は手動工具を用いて実行される。本発明のさらに好ましい実施形態に係れば、取付けオートマットと駆動モジュールAが付けられたプリロードカートリッジ20とによって補助しつつ取付け方法を実行する。
【0075】
以下、取付け方法の好ましい実施形態を説明するが、さらに別のステップを付加したりステップを省略したりすることができる。
【0076】
取付け方法を準備するために、ステップST 0で組込みマンドレル10を回転させることによって取付け方向Rの逆方向に後退させる。このようにして、プリロードリング30の内ねじ32と、隣接するマンドレル挿通路24とがワイヤねじインサートDを挿入するための径方向配置窓28を通じて自由に利用可能になる。
【0077】
これにともなって、図6a、bに示されているように、ワイヤねじインサートDをプリロードリング30の上で取付け方向Rに位置決めする(ST 1)。
【0078】
取付け方法の好ましい構成に係れば、リング状前側部26をねじ穴Gの近傍に配置し、特に、プリロードカートリッジ20がねじ穴Gの長手方向軸線と同軸に配置されることが好ましい。ねじ穴Gに対するプリロードカートリッジ20の位置の好ましいチェックを行ない、その結果として、ねじ穴Gに対する取付け工具1の位置の好ましいチェックを行なうために、少なくとも1つの触知検出部40によって補助しつつ、前側部26と部材表面Oとの距離を取得する(ST 2)。
【0079】
検出された距離が既定の範囲にある場合(好ましくは制御装置Sによって評価されるもの)、取付けプロセスを続行することができる。取付け自動化システムを用いる場合には、これは自動的に行なわれる。手動工具を用いる場合、プリロードカートリッジ20と部材Bとの配置が要件を満たしていないこと、又は要件を満たすことをディスプレイや音響信号や光信号によって作業者に通知する。特に、要件を満たすことを通知する。要求された距離が要件を満たさない場合、取付け工具を再配置して取付けプロセスを続行することを当該信号によって作業者に要求することが好ましい。距離の測定が適正であると信号によって作業者に通知する場合、作業者は取付けプロセスを続行する。取付けを中断しなければならない場合にだけ、作業者に信号を提供することも好ましい。
【0080】
ねじ開口Gに対して取付け工具1が適切に配置されている場合、好ましくは、近い部分である部材表面に対する距離が既定の距離範囲にある状態で前側部26が配置されている場合、さらに好ましくは、部材表面に当接する場合にも、ステップST 3で組込みマンドレル10がプリロードリング30の方向に移動するように組込みマンドレル10を回転させ、組込みマンドレル10をワイヤねじインサートDにねじ込み、ワイヤねじインサートDをプリロードリング30の内ねじ32にねじ込む、すなわちワイヤねじインサートDをプリロードリング30で締め込む(図6b、cを参照)。
【0081】
ステップST 3では、駆動モジュールAのモータによって組込みマンドレル10に伝動されるトルクを既定の最大トルクと比較することが好ましい。既定の最大トルクを超える場合、このことはプリロードリング30にワイヤねじインサートDを予め設置する際に異常が生じたことを示す。
【0082】
組込みマンドレル10の現在のトルクと最大トルクとの比較を制御装置Sで行なうことが好ましい。これの代わりに、当該比較を予め設置している間にリアルタイムに行なったり予め設置することが終了した後に行なったりする。
【0083】
予め設置する際に異常が生じた場合、組込み自動化システムが組込みマンドレル10を回転させて戻し、取付け方向Rの反対方向に移動させることが好ましい。手動工具の動作の際、異常の判断、すなわち最大トルク超過の判断を作業者に音響的に通知したり光学的に通知したりディスプレイを介して通知したりする。これに応じて、その後、作業者は異常の理由を診断して正常化するために組込みマンドレル10を移動させて戻す。
【0084】
プリロードカートリッジ20にワイヤねじインサートDを予め設置した後、ステップST 4で部材Bのねじ開口GへのワイヤねじインサートDの取付けすなわちねじ込みを行なう(図7a、bを参照)。
【0085】
これを行なうために、作業者が手動で手動工具の組込みマンドレル10の回転を開始し、また、取付け自動化システムが自動的にこれを開始する。これにより、組込みマンドレル10が取付け方向Rに移動し、この結果、ワイヤねじインサートDが付けられた取付け端部14が取付け方向Rに部材Bの方に移動してねじ穴Gに入る。組込みマンドレル10が取付け方向Rに移動する際、ワイヤねじインサートが付けられた取付け端部14がプリロードリング30から出る。取付け端部14がプリロードカートリッジ20から出ると、同時にスイッチ機能部13が移動してマンドレルセンサ60を通過し、この時点から組込みマンドレル10によって対応可能な回転角度の検出を開始する(ST 5)。既に上述されているように、組込みマンドレル10の対応可能な回転角度に基づいて、取付け端部14が取付け方向Rに移動してどの程度離れたかを計算する。
【0086】
この構造配置により、プリロードカートリッジ20の表側26を起点とした取付け方向Rの組込みマンドレル10の最大取付け行程を指定する制御装置Sによる取付け方法の好ましい実施形態も可能になる。最大取付け行程は制御装置Sに記憶された既定の回転角度によって規定されることが好ましい。スイッチ機能部13、好ましくは組込みマンドレル10のスイッチ縁部がマンドレルセンサ60を通過し次第、回転角度を検出する。組込みマンドレル10の検出された対応可能な回転角度が既定の値に達し次第、組込みマンドレル10の回転を停止する(ST 7)。この仕方では、ねじ穴Gに入れるワイヤねじインサートDの所望の最大取付け深さを規定することが好ましい。
【0087】
ねじ穴GにワイヤねじインサートDを入れる際、用いられているトルクを組込みマンドレルによって検出して評価する(ST 6)ことも好ましい。トルクが既定の閾値を超える場合、このことは設置の際に異常が生じたことを示す。これに応じて、取付けプロセスを停止し、組込みマンドレル10をねじ穴Gから抜く。これは、組込みマンドレル10を回転させて戻すことによって補助しつつ、取付け自動化システムによって自動的に行なわれたり、作業者によって手動で行なわれたりする。
【0088】
本取付け方法のさらに好ましい実施形態に係れば、リング状前側部26と部材近接面Oとの距離を制御装置Sによって評価する(ST 8)。距離を評価するためのデータはセンサピン42を有する少なくとも1つの触知検出部40によって制御装置Sに提供されることが好ましく、センサピン42の当接端部54が部材表面Oに接触することが好ましい。制御装置Sは渡された距離データを既定されている最大距離、すなわち制御装置Sに記憶されている最大距離と比較する。最大距離を超える場合、ワイヤねじインサートDの取付けは適正ではない。したがって、取付けマンドレル10を回転させて戻し、取付けプロセスを未了や不適正とみなす。
【0089】
触知検出部40の検出された距離によって部材表面Oに当接すること又は距離値が既定の最大距離以下であると確認した場合、適正なものとして取付けを完了する。その後、取付けマンドレル10をワイヤねじインサートDから外す。
【0090】
取付け方法の好ましい適用例に係れば、ワイヤねじインサートDが部材表面Oよりも下になるまでワイヤねじインサートDを回転させてねじ穴Gに入れる。この仕方では、部材表面Oに取付けた後、ワイヤねじインサートDが部材表面Oと同じ高さになった場合よりも、ねじ穴Gに優れた補強がなされる。このため、ワイヤねじインサートDの軸方向の長さを所定の最小量(所定の最小量は好ましくはマンドレル案内ねじのピッチにたとえば角度450°を掛け合せた量である)だけ超える距離の分、取付けに用いる回転角度を規定し、その結果として取付け方向Rの組込みマンドレル10の移動量を規定することが好ましい。当該最小量は適用例に応じて選択されることが好ましい。
【0091】
ワイヤねじインサートDの長さに、組込みマンドレル10の回転角度450°に取付けマンドレル10のねじのピッチを掛け合せたものを足した好ましい取付け距離を上記のように選択することで、ワイヤねじインサートDが部材表面Oよりも下まで及ぶ状態で取り付けられることが保証される。ねじ穴GへのワイヤねじインサートDの入れ始めで、ワイヤねじインサートDがねじ穴Gの内ねじにすぐに入る場合、ねじ穴Gは開放状態にある。さらに言えば、組込みマンドレル10が最大360°の角度だけ回転した後にしかワイヤねじインサートDがねじ穴Gの内ねじに入らないことになる。ねじ開口Gの内ねじへのワイヤねじインサートDの、所定の回転角度オフセットの分だけ遅れる上記の入れ方から、ワイヤねじインサートDの取付けを完遂するために、プリロードカートリッジ20のリング状前側部26が部材表面Oに対して所定の距離の位置に配置されることになる。この距離は回転角度オフセットと、マンドレル案内ねじ又はマンドレルねじ16又はワイヤねじインサートD(これらは同じであることが好ましい)のピッチとから得られる積に対応する。
【0092】
ワイヤねじインサートDの取付けの完遂のために、当該距離、好ましくは少なくとも1つの触知検出器41によって検出される距離を評価するのに応じて、評価の結果得られる可能な回転角度オフセットと距離も、上記の取付けの完遂の観点で考慮することが好ましい。したがって、好ましくは最大360°の回転角度オフセットと組込みマンドレル10のねじ16のピッチとから得られる積に応じた距離だけ離して部材表面に対してリング状前側部26が配置されているときも、ワイヤねじインサートDの取付けが適正であるとみなされる。
【符号の説明】
【0093】
B 部材
G ねじ穴
部材表面
D ワイヤねじインサート
A 駆動モジュール
M 取付けモジュール
K 駆動モジュールと取付けモジュールとの間の継手
S 制御装置
1 取付け工具
10 組込みマンドレル
12 駆動端部
13 スイッチ機能部
14 取付け端部
16 ねじ
18 突出部
20 プリロードカートリッジ
21 駆動モジュールAから離れて対向するプリロードカートリッジの軸方向端部
22 プリロードカートリッジの外周壁
24 マンドレル挿通路
25 マンドレル案内ねじ
26 リング状当接前面
28 径方向配置窓
30 プリロードリング
32 プリロードリング30の内ねじ
40 触知検出部
42 センサピン
44 ばね
46 センサピンの案内手段
50 センサ
52 センサプレート
54 当接端部
60 マンドレルセンサ
ST0 組込みマンドレルを引き込み位置に配置するステップ
ST1 プリロードリング内の取付け端部上にワイヤねじインサートを予め設置するステップ
ST2 ねじ穴の上に工具を配置するステップ
ST3 少なくとも1つの触知検出部を通じてプリロードカートリッジと部材との距離又は当接事象を取得するステップ(適宜追加可能な方法ステップ)
ST4 ねじ穴にワイヤねじインサートを回し込むステップ
ST5 ワイヤねじインサートの取付け中に組込みマンドレルの回転角度を検出するステップ
ST6 ワイヤねじインサートの取付け中に組込みマンドレルの印加トルクを検出するステップ
ST7 ワイヤねじインサートの回し込みを完了するステップ
ST8 少なくとも1つの触知検出部を通じて部材表面とリング状前側部との距離を取得するステップ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8