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特許7574265フローセルパッケージおよびその製造方法
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  • 特許-フローセルパッケージおよびその製造方法 図1
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  • 特許-フローセルパッケージおよびその製造方法 図3A
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  • 特許-フローセルパッケージおよびその製造方法 図4A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】フローセルパッケージおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241021BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20241021BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20241021BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20241021BHJP
   G01N 35/08 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
H01L21/304 621B
H01L21/68 N
H01L21/78 Q
G01N37/00 101
G01N35/08 A
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022200104
(22)【出願日】2022-12-15
(62)【分割の表示】P 2019530674の分割
【原出願日】2017-12-20
(65)【公開番号】P2023051957
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】62/438,316
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514202402
【氏名又は名称】イラミーナ インコーポレーテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】502279294
【氏名又は名称】イルミナ ケンブリッジ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ ツァイ
(72)【発明者】
【氏名】アンミブ プラブフ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ヘイナー
(72)【発明者】
【氏名】エドウィン リー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー リシェ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン エム バイアール
(72)【発明者】
【氏名】ケヴァン サミー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ ムニョス
(72)【発明者】
【氏名】レオニード マレヴァンチク
(72)【発明者】
【氏名】リュドヴィク ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】ナイチェン ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ペイトン シェイ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ヤン
(72)【発明者】
【氏名】サマンサ シュミット
(72)【発明者】
【氏名】サン パク
(72)【発明者】
【氏名】スコット ベイリー
(72)【発明者】
【氏名】ショーン エム ラミレス
(72)【発明者】
【氏名】スンミン アン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリー アゼル
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ユジャン ファン
(72)【発明者】
【氏名】タイラー ジャミソン ディル
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-513958(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0093303(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0023208(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0213486(US,A1)
【文献】国際公開第2016/48398(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/683
H01L 21/301
G01N 37/00
G01N 35/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フローセルパッケージであって、
第1の介在領域によって分離された第1の窪み;
前記第1の窪みの少なくとも一部において第1のシランまたは第1のシラン誘導体に結合した第1の官能化分子;および
前記第1の窪みの少なくとも一部において前記第1の官能化分子にグラフトした第1のプライマー、
を含む、第1の表面変性パターン化ウェーハと、
第2の介在領域によって分離された第2の窪み;
前記第2の窪みの少なくとも一部において第2のシランまたは第2のシラン誘導体に結合した第2の官能化分子;および
前記第2の窪みの少なくとも一部において前記第2の官能化分子にグラフトした第2のプライマー、
を含む、第2の表面変性パターン化ウェーハと、
前記第1の介在領域の少なくとも一部を前記第2の介在領域の少なくとも一部に結合しているスペーサー層とを含み、前記スペーサー層が、前記フローセルパッケージのそれぞれの流体チャンバーを少なくとも部分的に画定しており、
前記フローセルパッケージが、個々のフローセルにさいの目に切られている、フローセルパッケージ。
【請求項2】
前記第1の窪みの少なくとも一部と前記第2の窪みの少なくとも一部が整列して、前記それぞれの流体チャンバーの1つを形成しており;および
前記スペーサー層が、隣接する流体チャンバー間の長手方向の壁を形成している、請求項1に記載のフローセルパッケージ。
【請求項3】
前記第1および第2の窪みの少なくとも1つが、
2つの結合した前記表面変性パターン化ウェーハによって画定される流路内にある;または
前記流路内の複数の穴の1つである、請求項1に記載のフローセルパッケージ。
【請求項4】
前記第1の官能化分子および前記第2の官能化分子のそれぞれは、以下の式(I)の繰り返し単位を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のフローセルパッケージ。
【化1】
(式中、
は、Hまたは任意に置換されたアルキルであり;
は、アジド、任意に置換されたアミノ、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたヒドラゾン、任意に置換されたヒドラジン、カルボキシル、ヒドロキシ、任意に置換されたテトラゾール、任意に置換されたテトラジン、ニトリルオキシド、ニトロン、およびチオールからなる群より選択され;
は、Hおよび任意に置換されたアルキルからなる群より選択され;
-(CH-のそれぞれは、任意に置換されていてもよく;
pは、1~50の範囲の整数であり;
nは、1~50,000の範囲の整数であり;
mは、1~100,000の範囲の整数である。)
【請求項5】
前記第1の官能化分子が、前記第1のシランまたは第1のシラン誘導体の第1の不飽和部分によって、前記第1のシランまたは第1のシラン誘導体に共有結合しており;
前記第2の官能化分子が、前記第2のシランまたは第2のシラン誘導体の第2の不飽和部分によって、前記第2のシランまたは第2のシラン誘導体に共有結合しており;および
前記不飽和部分が、ノルボルネン、ヘテロノルボルネン、ノルボルネン誘導体、トランスシクロオクテン、トランスシクロオクテン誘導体、シクロオクチン、ビシクロアルキン、それらの任意に置換された変形およびそれらの組み合わせからなる群より個々に選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のフローセルパッケージ。
【請求項6】
前記スペーサー層が、黒色ポリイミドを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のフローセルパッケージ。
【請求項7】
前記第1の表面変性パターン化ウェーハおよび第2の表面変性パターン化ウェーハのそれぞれが、200mm~300mmの範囲の直径を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のフローセルパッケージ。
【請求項8】
複数のフローセルを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のフローセルパッケージ。
【請求項9】
介在領域によって分離された窪みを含むパターン化ウェーハの表面をプラズマアッシングすること;
前記窪み内および前記介在領域上に、官能化分子のコーティング層を形成すること;
前記介在領域から前記コーティング層を擦り取ること、任意にi)7.5~11の範囲のpHを有し、パターン化ウェーハの硬度より低い硬度を有する研磨粒子を含む塩基性水性スラリー、またはii)研磨パッドと、前記研磨粒子を含まない溶液とを使用して;および
前記窪み内の前記コーティング層にプライマーをグラフトして、官能化窪みを形成すること、
によって、表面変性パターン化ウェーハを形成すること;
2つの前記表面変性パターン化ウェーハを、それらの間のスペーサー層で一緒に結合すること、ならびに
前記結合した表面変性パターン化ウェーハをそれぞれのフローセルにさいの目に切ること、を含む、方法。
【請求項10】
前記研磨粒子が、炭酸カルシウム、アガロースおよびグラファイトからなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
フローセルパッケージであって、
第1および第2の表面変性パターン化ウェーハならびにスペーサー層を含み、
前記第1の表面変性パターン化ウェーハは、第1の介在領域によって分離された第1の窪みと、前記第1の窪みの少なくとも一部において前記第1の表面変性パターン化ウェーハに結合した第1の官能化分子と、前記第1の窪みの少なくとも一部において前記第1の官能化分子にグラフトした第1のプライマーとを含み;
前記第2の表面変性パターン化ウェーハは、第2の介在領域によって分離された第2の窪みと、前記第2の窪みの少なくとも一部において前記第2の表面変性パターン化ウェーハに結合した第2の官能化分子と、前記第2の窪みの少なくとも一部において前記第2の官能化分子にグラフトした第2のプライマーとを含み;
前記スペーサー層が、前記第1の介在領域の少なくとも一部を前記第2の介在領域の少なくとも一部に結合しており、かつ、前記スペーサー層が、前記フローセルパッケージのそれぞれの流体チャンバーを少なくとも部分的に画定しており;かつ
前記フローセルパッケージが、個々のフローセルにさいの目に切られている、フローセルパッケージ。
【請求項12】
前記第1の窪みの少なくとも一部と前記第2の窪みの少なくとも一部が整列して、前記それぞれの流体チャンバーの1つを形成しており;および
前記スペーサー層が、隣接する流体チャンバー間の長手方向の壁を形成している、請求項11に記載のフローセルパッケージ。
【請求項13】
前記第1および第2の窪みの少なくとも1つが、
2つの結合した前記表面変性パターン化ウェーハによって画定される流路内にある;または
前記流路内の複数の穴の1つである、請求項11に記載のフローセルパッケージ。
【請求項14】
前記第1の官能化分子および前記第2の官能化分子のそれぞれは、以下の式(I)の繰り返し単位を含む、請求項11~13のいずれか一項に記載のフローセルパッケージ。
【化2】
(式中、
は、Hまたは任意に置換されたアルキルであり;
は、アジド、任意に置換されたアミノ、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたヒドラゾン、任意に置換されたヒドラジン、カルボキシル、ヒドロキシ、任意に置換されたテトラゾール、任意に置換されたテトラジン、ニトリルオキシド、ニトロン、およびチオールからなる群より選択され;
は、Hおよび任意に置換されたアルキルからなる群より選択され;
-(CH-のそれぞれは、任意に置換されていてもよく;
pは、1~50の範囲の整数であり;
nは、1~50,000の範囲の整数であり;
mは、1~100,000の範囲の整数である。)
【請求項15】
前記スペーサー層が、黒色ポリイミドを含む、請求項11~13のいずれか一項に記載のフローセルパッケージ。
【請求項16】
前記第1の表面変性パターン化ウェーハおよび第2の表面変性パターン化ウェーハのそれぞれが、200mm~300mmの範囲の直径を有する、請求項11~15のいずれか一項に記載のフローセルパッケージ。
【請求項17】
複数のフローセルを含む、請求項11~16のいずれか一項に記載のフローセルパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2016年12月22日に出願された米国仮特許出願第62/438,31
6号の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
生物学的アレイは、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を含む、分
子を検出および分析するために使用される広範囲のツールのうちの1つである。これらの
用途において、アレイは、ヒトおよび他の生物における遺伝子に存在するヌクレオチド配
列に対するプローブを含むように設計されている。特定の用途では、例えば、個々のDN
AおよびRNAプローブは、アレイ支持体上の幾何学的グリッド内(またはランダムに)
の小さい位置に付着することがある。例えば既知の人または生物からの、試験試料は、相
補的フラグメントがアレイ中の個々の部位でプローブとハイブリダイズするようにグリッ
ドに曝露されることがある。次に、断片がハイブリダイズした部位の蛍光によって、どの
断片が試料中に存在するかを同定するために、その部位にわたって特定の周波数の光を走
査することによってアレイを検査することができる。
【0003】
生物学的アレイは、遺伝子配列決定に使用され得る。一般に、遺伝子配列決定は、DN
AまたはRNAの断片などの、ある長さの遺伝物質におけるヌクレオチドまたは核酸の順
序を決定することを含む。ますます長い塩基対の配列が分析されており、得られた配列情
報は、断片が由来する広範な長さの遺伝物質の配列を確実に決定するために断片を互いに
論理的に合わせるために様々なバイオインフォマティクス方法において使用され得る。特
徴的な断片の自動化されたコンピュータベースの検査が開発されており、そしてゲノムマ
ッピング、遺伝子およびそれらの機能の同定、特定の状態および病状の危険性の評価など
において使用されている。これらの用途を超えて、生物学的アレイは、広範囲の分子、分
子のファミリー、遺伝子発現レベル、一塩基多型、および遺伝子型決定の検出および評価
に使用され得る。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に開示される方法の一例では、表面変性パターン化ウェーハが形成され、その
間にスペーサー層を介して2つの表面変性パターン化ウェーハが一緒に結合される。表面
変性パターン化ウェーハを形成するために、シランまたはシラン誘導体が、介在領域によ
って分離された窪みを含むパターン化ウェーハの表面に付着されて、シラン化窪みおよび
シラン化介在領域を形成する。官能化分子のコーティング層が、シラン化窪み内およびシ
ラン化介在領域上に形成される。コーティング層は、シラン化介在領域から擦り取られる
。いくつかの例では、コーティング層は、i)約7.5~約11の範囲のpHを有し、パ
ターン化ウェーハの硬度より低い硬度を有する研磨粒子を含む塩基性水性スラリー、また
はii)研磨パッドと、その研磨粒子を含まない溶液とを使用して、シラン化介在領域か
ら研磨される。プライマーが、シラン化窪み内のコーティング層にグラフトされて、官能
化窪みを形成する。
【0005】
本明細書に開示される方法の別の例では、方法は、介在領域によって分離された窪みを
含むパターン化ウェーハの表面をプラズマアッシングすること;官能化分子のコーティン
グ層を、窪み内および介在領域上に形成すること;介在領域からコーティング層を擦り取
ること(任意に、i)約7.5~約11の範囲のpHを有し、パターン化ウェーハの硬度
より低い硬度を有する研磨粒子を含む塩基性水性スラリー、またはii)研磨パッドと、
その研磨粒子を含まない溶液とを使用して);およびプライマーを窪み内のコーティング
層にグラフトして、官能化窪みを形成すること、による表面変性パターン化ウェーハを形
成することを含む。この方法はまた、その間にスペーサー層を介して2つの表面変性パタ
ーン化ウェーハを一緒に結合することを含む。
【0006】
フローセルパッケージの一例は、第1および第2の表面変性パターン化ウェーハおよび
スペーサー層を含む。第1の表面変性パターン化ウェーハは、第1の介在領域によって分
離された第1の窪み、第1の窪みの少なくとも一部において第1のシランまたはシラン誘
導体に結合した第1の官能化分子、および第1の窪みの少なくとも一部において第1の官
能化分子にグラフトした第1のプライマーを含む。第2の表面変性パターン化ウェーハは
、第2の介在領域によって分離された第2の窪み、第2の窪みの少なくとも一部において
第2のシランまたはシラン誘導体に結合した第2の官能化分子、および第2の窪みの少な
くとも一部において第2の官能化分子にグラフトした第2のプライマーを含む。スペーサ
ー層は、少なくとも一部の第1の介在領域を、少なくとも一部の第2の介在領域に結合し
、そのスペーサー層は、フローセルパッケージのそれぞれの流体チャンバーを少なくとも
部分的に画定する。
【0007】
フローセルパッケージの別の例は、第1および第2の表面変性パターン化ウェーハとス
ペーサー層とを含み、第1の表面変性パターン化ウェーハは、第1の介在領域によって分
離された第1の窪み、第1の窪みの少なくとも一部において第1の表面変性パターン化ウ
ェーハに結合した第1の官能化分子、および第1の窪みの少なくとも一部において第1の
官能化分子にグラフトした第1のプライマーを含む。第2の表面変性パターン化ウェーハ
は、第2の介在領域によって分離された第2の窪み、第2の窪みの少なくとも一部におい
て第2の表面変性パターン化ウェーハに結合した第2の官能化分子、および第2の窪みの
少なくとも一部において第2の官能化分子にグラフトした第2のプライマーを含む。スペ
ーサー層は、少なくとも一部の第1の介在領域を、少なくとも一部の第2の介在領域に結
合し、そのスペーサー層は、フローセルパッケージのそれぞれの流体チャンバーを少なく
とも部分的に画定する。
【0008】
フローセルパッケージを使用する方法の一例では、フローセルパッケージは、少なくと
も2つのそれぞれの流体チャンバーを含む個々のフローセルにさいの目に切られる。フロ
ーセルパッケージを使用する方法の別の例では、フローセルパッケージは、それぞれの流
体チャンバーのうちの少なくとも1つを含む個々のフローセルにさいの目に切られる。
【0009】
本開示の例の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図面を参照することによって
明らかになるであろう。それらでは、類似の参照番号は、同一ではなくとも類似の構成要
素に対応する。簡潔にするために、前述の機能を有する参照番号または特徴は、それらが
現れる他の図面に関連して説明されことがあるまたはされないことがある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、介在領域によって分離された窪みを含む一例のパターン化ウェーハの上面図である。
図2図2Aは、図1のパターン化ウェーハの線2A-2Aでの断面図である。図2A図2Eは、表面変性パターン化ウェーハを形成する方法の一例を一緒に示す断面図である。
図3A図3Aは、一緒に結合した2つの表面変性パターン化ウェーハを含む一例のフローセルパッケージの断面図であり、スペーサー層が、流体チャンバーを画定し、窪みが、それぞれの流体チャンバーの流路内の穴である。
図3B図3Bは、図3Aのフローセルパッケージの上面図であり、下部表面変性パターン化ウェーハに結合したスペーサー層をより明確に示すために、上部表面変性パターン化ウェーハは取り除いてあり、図3Bの破線は、パッケージが個々のフローセルを形成するためにさいの目に切られてもよい線を示す。
図4A図4Aは、一緒に結合した2つの表面変性パターン化ウェーハを含む一例のフローセルパッケージの断面図であり、スペーサー層が、流体チャンバーを画定し、窪みが、1つの流体チャンバーにそれぞれ関連する流路である。
図4B図4Bは、図4Aのフローセルパッケージの斜視図であり、流路をより明確に示すために、上部表面変性パターン化ウェーハは取り除いてある。
【発明の詳細な説明】
【0011】
導入
一態様では、方法は、シランまたはシラン誘導体を、介在領域によって分離された窪み
を含むパターン化ウェーハの表面に付着させ、それによって、シラン化窪みおよびシラン
化介在領域を形成すること;官能化分子のコーティング層を、シラン化窪み内およびシラ
ン化介在領域上に形成すること;シラン化介在領域からコーティング層を擦り取ること(
任意に、i)約7.5~約11の範囲のpHを有し、パターン化ウェーハの硬度より低い
硬度を有する研磨粒子を含む塩基性水性スラリー、またはii)研磨パッドと、その研磨
粒子を含まない溶液とを使用して);およびプライマーをシラン化窪み内のコーティング
層にグラフトして、官能化窪みを形成すること、による表面変性パターン化ウェーハを形
成することを含む。この方法はまた、その間にスペーサー層を介して2つの表面変性パタ
ーン化ウェーハを一緒に結合することを含む。
【0012】
この態様の一例では、シランまたはシラン誘導体をパターン化ウェーハの表面に付着さ
せることは、蒸着法およびYield Engineering Systems(YE
S)法のうちの少なくとも1つを含む。別の例では、付着させることは、化学気相堆積(
CVD)を含む。他の例では、付着させることは、プラズマ促進CVD、開始CVD、有
機金属CVD、または他の堆積方法を含む。
【0013】
この態様の一例では、官能化分子のコーティング層を形成することは、官能化分子の官
能基をシランまたはシラン誘導体の不飽和部分と反応させることを含み、その不飽和部分
は、シクロアルケン、シクロアルキン、ヘテロシクロアルケン、ヘテロシクロアルキン、
それらの置換変種およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0014】
この態様の別の例では、官能化分子のコーティング層を形成することは、官能化分子を
含む溶液を、シラン化窪みおよびシラン化介在領域上に堆積させること、および官能化分
子を硬化させることを含む。いくつかの例では、硬化させることは、官能化分子とシラン
またはシラン誘導体との間に共有結合を形成するのに役立つ。
【0015】
この態様の別の例では、官能化分子のコーティング層を形成することは、官能化分子を
含む溶液を、表面変性パターン化ウェーハの窪みおよび介在領域上に堆積させること、お
よび官能化分子を硬化させることを含む。そのような例では、官能化分子は、ウェーハ表
面と共有結合を形成し得る。いくつかの例では、ウェーハ表面上に官能化分子を堆積させ
る前に、ウェーハ表面をプラズマアッシング条件にかける。
【0016】
方法の一態様例では、塩基性水性スラリーは、キレート剤、界面活性剤、分散剤または
それらの組み合わせをさらに含む。
【0017】
この態様の一例では、コーティング層へのプライマーのグラフトは、ダンクコーティン
グ、スプレーコーティング、パドルディスペンスまたはそれらの組み合わせを含む。
【0018】
この態様の一例では、方法は、シランまたはシラン誘導体を付着させる前に、パターン
化ウェーハをプラズマアッシングすることをさらに含む。
【0019】
方法のこの態様では、官能化分子のコーティング層は、約200nm以下の厚さを有す
る。
【0020】
方法のこの態様は、結合した表面変性パターン化ウェーハをそれぞれのフローセルにさ
いの目に切ることをさらに含むことができる。
【0021】
方法のこの態様の例において、スペーサー層は、放射線吸収材料を含む。これらの例で
は、結合することは、放射線吸収材料が2つの表面変性パターン化ウェーハのそれぞれの
介在領域の少なくとも一部と接触するように、2つの表面変性パターン化ウェーハ間の界
面に放射線吸収材料を配置すること、およびその界面で加圧を適用すること、およびその
放射線吸収材料に照射すること、を含む。方法のこの態様の他の例において、スペーサー
層は、それと接触している放射線吸収材料を含む。これらの例では、結合させることは、
放射線吸収材料が2つの表面変性パターン化ウェーハのそれぞれの介在領域の少なくとも
一部と接触するように、スペーサー層と2つの表面変性パターン化ウェーハのそれぞれと
の間のそれぞれの界面に放射線吸収材料を配置すること、およびそのそれぞれの界面で加
圧を適用すること、およびその放射線吸収材料に照射すること、を含む。これらの手法の
いくつかの例では、放射線吸収材料と接触している介在領域は、本明細書に記載されてい
るように(例えば、研磨後に表面に残った残渣シランにより)シラン化される、および/
またはプラズマアッシングによって活性化される。
【0022】
方法のこの態様の一例では、研磨粒子は、炭酸カルシウム、アガロースおよびグラファ
イトからなる群より選択される。他の例では、研磨粒子は、シリカ、酸化アルミニウムま
たは酸化セリウムである。いくつかの例では、研磨粒子は、シリカである。
【0023】
方法のこの態様の任意の特徴は、任意の望ましい方式および/または構成で一緒に組み
合わせることができることを理解されたい。
【0024】
別の態様では、方法は、介在領域によって分離された窪みを含むパターン化ウェーハの
表面をプラズマアッシングすること;官能化分子のコーティング層を、その窪み内および
その介在領域上に形成すること;その介在領域からコーティング層を擦り取ること(任意
に、i)約7.5~約11の範囲のpHを有し、パターン化ウェーハの硬度より低い硬度
を有する研磨粒子を含む塩基性水性スラリー、またはii)研磨パッドと、その研磨粒子
を含まない溶液とを使用して);およびプライマーをその窪み内のコーティング層にグラ
フトして、官能化窪みを形成すること、による表面変性パターン化ウェーハを形成するこ
とを含む。この方法はまた、その間にスペーサー層を介して2つの表面変性パターン化ウ
ェーハを一緒に結合することを含む。
【0025】
方法のこの他の態様の一例では、研磨粒子は、炭酸カルシウム、アガロースおよびグラ
ファイトからなる群より選択される。他の例では、研磨粒子は、シリカ、酸化アルミニウ
ムまたは酸化セリウムである。
【0026】
方法のこの態様の任意の特徴は、任意の望ましい方式で一緒に組み合わせることができ
ることを理解されたい。さらに、方法のこの態様および/または方法の第1の態様の特徴
の任意の組み合わせを一緒に使用することができ、および/またはこれらの態様のいずれ
かまたは両方からの任意の特徴を本明細書に開示されている任意の実施例と組み合わせる
ことができることを理解されたい。
【0027】
いくつかの方法のいくつかの例では、2つの表面変性パターン化ウェーハの一方の官能
化窪みの少なくとも一部を、2つの表面変性パターン化ウェーハの別のそれぞれの官能化
窪みと合わせて流体チャンバーを形成するように、2つの表面変性パターン化ウェーハを
配置し、スペーサー層は、隣接する流体チャンバー間に長手方向の壁を画定する。いくつ
かの態様では、2つの表面変性パターン化ウェーハの一方の官能化窪みの少なくとも一部
を、2つの表面変性パターン化ウェーハの他方のそれぞれの官能化窪みと合わせて整列し
た官能化窪みペアを形成するように、2つの表面変性パターン化ウェーハを配置し、ここ
で、2つの表面変性パターン化ウェーハは、複数の流体チャンバーの上部と下部を画定し
、ここで、スペーサー層は、隣接する流体チャンバー間の長手方向の壁を画定し、ここで
、各流体チャンバーは、複数の整列した官能化窪みペアを含む。
【0028】
いくつかの方法のいくつかの例では、官能化窪みのそれぞれは、2つの結合した表面変
性パターン化ウェーハによって画定された流路内にある。いくつかの例では、各官能化窪
みは、流路内の複数の穴の1つである。
【0029】
フローセルパッケージの一態様は、第1の表面変性パターン化ウェーハ、第2の表面変
性パターン化ウェーハ、および第1の介在領域の少なくとも一部を第2の介在領域の少な
くとも一部に結合しているスペーサー層を含み、第1の表面変性パターン化ウェーハは、
第1の介在領域によって分離された第1の窪みと、第1の窪みの少なくとも一部における
第1のシランまたは第1のシラン誘導体に結合した第1の官能化分子と、第1の窪みの少
なくとも一部における第1の官能化分子にグラフトした第1のプライマーを含み;第2の
表面変性パターン化ウェーハは、第2の介在領域によって分離された第2の窪みと、第2
の窪みの少なくとも一部における第2のシランまたは第2のシラン誘導体に結合した第2
の官能化分子と、第2の窪みの少なくとも一部における第2の官能化分子にグラフトした
第2のプライマーを含み;スペーサー層は、フローセルパッケージのそれぞれの流体チャ
ンバーを少なくとも部分的に画定する。
【0030】
フローセルパッケージのこの態様の一例では、第1の窪みの少なくとも一部と第2の窪
みの少なくとも一部が整列して、それぞれの流体チャンバーの1つを形成し、スペーサー
層は、隣接する流体チャンバー間の長手方向の壁を形成する。この例では、第1および第
2の窪みの少なくとも1つは、2つの結合した表面変性パターン化ウェーハによって画定
される流路内にあるか、またはその流路内の複数の穴の1つである。いくつかの態様では
、2つの表面変性パターン化ウェーハの一方の官能化窪みが2つの表面変性パターン化ウ
ェーハの他方のそれぞれの官能化窪みと整列して、整列した官能化窪みペアを形成するよ
うに、2つの表面変性パターン化ウェーハが、配置されており、ここで、2つの表面変性
パターン化ウェーハは、複数の流体チャンバーの上部と下部を画定し、スペーサー層は、
隣接する流体チャンバー間の長手方向の壁を画定し、ここで、各流体チャンバーは、複数
の整列した官能化窪みペアを含む。
【0031】
フローセルパッケージのこの態様の一例では、第1の機能性分子および第2の機能性分
子のそれぞれは、以下の式(I)の繰り返し単位を含む。
【化1】
式中、
は、Hまたは任意に置換されたアルキルであり;
は、アジド、任意に置換されたアミノ、任意に置換されたアルケニル、任意に置換
されたヒドラゾン、任意に置換されたヒドラジン、カルボキシル、ヒドロキシ、任意に置
換されたテトラゾール、任意に置換されたテトラジン、ニトリルオキシド、ニトロン、お
よびチオールからなる群より選択され;
は、Hおよび任意に置換されたアルキルからなる群より選択され;
-(CH-のそれぞれは、任意に置換されていてもよく;
pは、1~50の範囲の整数であり;
nは、1~50,000の範囲の整数であり;
mは、1~100,000の範囲の整数である。
当業者は、式(I)の繰り返し単位を含むポリマーが、ポリマー全体にわたってランダ
ムな順序で存在する複数の「n」および「m」サブユニットを包含することを認識するで
あろう。当業者はまた、他のモノマー成分がポリマー中に存在し得ることを認識するであ
ろう。
【0032】
別の態様において、第1の機能性分子および第2の機能性分子のそれぞれは、式(Ia
)の繰り返し単位を含む。
【化2】
式中、
は、Hまたはアルキルであり;
は、アミノ、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、オキソ
-アミノ、アジド、ホルミル、ハロ、ヒドロキシル、ヒドラジニル、ヒドラゾニル、トリ
アジニル、カルボキシ、グリシジル、活性化エステル、アジリジニル、トリアゾリニル、
エポキシ、およびチオールからなる群より選択され;
-(CHо-のそれぞれは、任意に置換されていてもよく;
оは、1~50の範囲の整数である。
【0033】
いくつかの例では、第1および第2の機能性分子は、それぞれ、第1のシランもしくは
シラン誘導体、または第2のシランもしくはシラン誘導体に共有結合している。
【0034】
この例では、第1の機能性分子は、第1のシランまたは第1のシラン誘導体の第1の不
飽和部分によって第1のシランまたは第1のシラン誘導体に共有結合しており;
第2の機能性分子は、第2のシランまたは第2のシラン誘導体の第2の不飽和部分によっ
て第2のシランまたは第2のシラン誘導体に共有結合しており;その不飽和部分は、ノル
ボルネン、ヘテロノルボルネン、ノルボルネン誘導体、トランスシクロオクテン、トラン
スシクロオクテン誘導体、シクロオクチン、ビシクロアルキン、それらの任意に置換され
た変形、およびそれらの組み合わせからなる群より個々に選択される。
【0035】
フローセルパッケージのこの態様の一例では、スペーサー層は、黒色ポリイミドである
。適切なスペーサー層材料のさらなる例は、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィル
ム、シクロオレフィンポリマー(例えばZeonor(登録商標))、アクリロニトリル
ブタジエンスチレン(ABS)、ポリカーボネート(PC)フィルムなどである。
【0036】
フローセルパッケージのこの態様の一例では、第1の表面変性パターン化ウェーハおよ
び第2の表面変性パターン化ウェーハのそれぞれは、約200mm~約300mmの範囲
の直径を有する。一例では、パターン化ウェーハは、円形、楕円形または長方形の形状で
ある。他の例では、パターン化ウェーハは、円形であり、約200mm~約300mmの
範囲の直径を有する。
【0037】
フローセルパッケージのこの態様の任意の特徴は、任意の望ましい方式で一緒に組み合
わせることができることを理解されたい。さらに、フローセルパッケージおよび/または
方法のこの態様の特徴の任意の組み合わせを一緒に使用することができ、および/または
これらの態様のいずれかまたは両方からの任意の特徴を本明細書に開示された任意の例と
組み合わせることができることを理解されたい。
【0038】
フローセルパッケージを使用する方法の一態様は、フローセルパッケージを、少なくと
も2つのそれぞれの流体チャンバーを含む個々のフローセルにさいの目に切ることを含む
。別の態様では、フローセルパッケージを使用する方法は、フローセルパッケージを、少
なくとも2つのそれぞれの流路または流体チャンバーを含む個々のフローセルにさいの目
に切ることを含む。
【0039】
フローセルパッケージを使用するための方法の任意の特徴は、任意の望ましい方式で一
緒に組み合わせることができることを理解されたい。さらに、方法のうちの一方または両
方からの、および/またはフローセルパッケージからの特徴の任意の組み合わせを一緒に
使用することができ、および/またはこれらの態様のいずれかまたはすべてからの任意の
特徴を本明細書に開示された例の任意の特徴と組み合わせることができることを理解され
たい。
【0040】
詳細な説明
本明細書に開示される方法の例は、表面変性パターン化ウェーハを形成するためにパタ
ーン化ウェーハ上に表面化学(例えば、シラン化、官能化分子層、プライマー)を堆積さ
せるオープンウェーハ処理を含む。次いで、表面変性パターン化ウェーハを、配列決定な
どの生物学的用途での使用に適したフローセルに分割することができるフローセルパッケ
ージに組み込むことができる。
【0041】
本明細書に開示されるオープンウェーハプロセスは、スケーラブルであり、フローセル
パッケージを形成するために何らかの結合を行う前に、表面変性パターン化ウェーハの大
量コーティングおよびグラフト化を含む大量アセンブリを可能にする。オープンウェーハ
プロセスはまた、下にあるパターン化ウェーハに悪影響を及ぼすことなく、表面化学物質
の再現性のある安定した堆積を可能にする。
【0042】
オープンウェーハプロセスはまた、品質管理および特性評価のために使用されることに
なる様々な計測学/分析技術を可能にする。フローセルパッケージを形成するために結合
される前に、表面変性パターン化ウェーハは、例えば、原子間力顕微鏡法(AFM)、走
査電子顕微鏡法(SEM)、偏光解析法、ゴニオメトリー、スキャトロメトリー、および
/または蛍光技術にかけてもよい。
【0043】
本明細書で使用される用語は、他に特定されない限り、関連技術におけるそれらの通常
の意味をとることを理解されたい。本明細書中で使用されるいくつかの用語およびそれら
の意味を以下に記載する。
【0044】
単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうでないと指示しな
い限り、複数の指示対象を含む。
【0045】
「含む」、「含む」、「含む」、およびこれらの用語の様々な形態の用語は、互いに同
義語であり、等しく広いことを意味する。
【0046】
本明細書では、「上部」、「下部」、「下」、「上」、「上」などの用語は、フローセ
ルパッケージおよび/またはフローセルパッケージの様々な構成要素を説明するために使
用される。これらの方向の用語は、特定の向きを意味することを意味するのではなく、構
成要素間の相対的な向きを示すために使用されることを理解されたい。方向の用語の使用
は、本明細書に開示された例を任意の特定の方向に限定するように解釈されるべきではな
い。
【0047】
本明細書で使用されるとき、「アルキル」は、完全に飽和している(すなわち、二重結
合または三重結合を含まない)直鎖または分岐の炭化水素鎖を指す。アルキル基は、1~
20個の炭素原子を有していてもよい。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル
、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリーブチル、ペンチル、ヘキシルなどが
含まれる。一例として、「C1~4アルキル」という表示は、アルキル鎖中に1~4個の
炭素原子があることを示し、すなわちアルキル鎖が、メチル、エチル、プロピル、イソプ
ロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびt-ブチルからなる群より選択
される。
【0048】
本明細書で使用されるとき、「アルケニル」は、1つ以上の二重結合を有する直鎖また
は分岐の炭化水素鎖を指す。アルケニル基は、2~20個の炭素原子を有していてもよい
。アルケニル基の例には、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニルな
どが含まれる。アルケニル基は、例えば、「C2~4アルケニル」と命名することができ
、これはアルケニル鎖中に2~4個の炭素原子があることを示す。
【0049】
本明細書で使用されるとき、「アルキニル」は、1つ以上の三重結合(例えば、以下の
もの)を有する直鎖または分岐の炭化水素鎖をいう。アルキニル基は、2~20個の炭素
原子を有していてもよい。アルケニル基は、例えば、「C2~4アルキニル」と命名する
ことができ、これはアルキニル鎖中に2~4個の炭素原子があることを示す。
【0050】
「アミノ」官能基は、-NR基を指し、式中、RおよびRは、それぞれ独立
して、本明細書で定義されるように、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C
2~6アルキニル、C3~7カルボシクリル、C6~10アリール、5~10員ヘテロア
リールおよび5~10員ヘテロシクリルから選択される。
【0051】
本明細書中で使用されるとき、「アリール」は、環のバックボーン中に炭素のみを有す
る芳香環または環系(すなわち、2つの隣接する炭素原子を共有する2つ以上の縮合環)
をいう。アリールが環系であるとき、その系中の全ての環は芳香族である。アリール基は
、6~18個の炭素原子を有していてもよく、これはC6~18と表され得る。アリール
基の例には、フェニル、ナフチル、アズレニルおよびアントラセニルが含まれる。
【0052】
本明細書で使用されるとき、用語「結合された」は、2つのものが互いに結合、固定、
接着、接続または結合されている状態を指す。例えば、核酸は、共有結合または非共有結
合によって官能化分子に結合され得る。共有結合は、原子間の電子対の共有によって特徴
付けられる。非共有結合は、電子対の共有を伴わない化学結合であり、例えば、水素結合
、イオン結合、ファンデルワールス力、親水性相互作用および疎水性相互作用を含み得る
【0053】
「アジド」または「アジド」官能基は、-Nを指す。
【0054】
本明細書で使用されるとき、「カルボシクリル」は、非芳香族環または環系バックボー
ンに炭素原子のみを有する環系を意味する。カルボシクリルが環系であるとき、2つ以上
の環が縮合、架橋またはスピロ結合様式で一緒に結合してもよい。カルボシクリルは、任
意の程度の飽和を有していてもよいが、環系中の少なくとも1つの環が芳香族ではない。
したがって、カルボシクリルは、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアルキ
ニルを含む。カルボシクリル基は、3~20個の炭素原子(すなわち、C3~20)を有
していてもよい。カルボシクリル環の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペ
ンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、2,3-ジヒドロ-インデン、ビシクロ[
2.2.2]オクタニル、アダマンチル、およびスピロ[4.4]ノナニルが含まれる。
【0055】
本明細書で使用されるとき、用語「カルボン酸」または「カルボキシル」は、-C(O
)OHを指す。
【0056】
本明細書で使用されるとき、「シクロアルキル」は、完全に飽和したカルボシクリル環
または環系を意味する。例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよび
シクロヘキシルが含まれる。
【0057】
本明細書で使用されるとき、「シクロアルキレン」は、2つの結合点を介して分子の残
りの部分に結合されている完全に飽和したカルボシクリル環または環系を意味する。
【0058】
本明細書で使用されるとき、「シクロアルケニル」または「シクロアルカン」は、少な
くとも1つの二重結合を有するカルボシクリル環または環系を意味し、環系中の環は芳香
族ではない。例としては、シクロヘキセニルまたはシクロヘキセンおよびノルボルネンま
たはノルボルネニルが挙げられる。また本明細書で使用されるとき、「ヘテロシクロアル
ケニル」または「ヘテロシクロアルケン」は、少なくとも1つの二重結合を有する環のバ
ックボーン中に少なくとも1つのヘテロ原子を有するカルボシクリル環または環系を意味
し、環系中の環は、芳香族ではない。
【0059】
本明細書で使用されるとき、「シクロアルキニル」または「シクロアルキン」は、少な
くとも1つの三重結合を有するカルボシクリル環または環系を意味し、環系中の環は、芳
香族ではない。一例は、シクロオクチンである。他の例は、ビシクロノニンである。また
本明細書で使用されるとき、「ヘテロシクロアルキニル」または「ヘテロシクロアルキン
」は、少なくとも1つの三重結合を有し、環のバックボーン中に少なくとも1つのヘテロ
原子を有するカルボシクリル環または環系を意味し、環系中の環は、芳香族ではない。
【0060】
本明細書で使用されるとき、用語「官能化分子のコーティング層」は、液体および気体
に対して透過性である半硬質または非硬質(例えば、ゼラチン状)材料を意味することを
意図している。典型的には、官能化分子のコーティング層は、液体が吸収されると膨潤す
ることができ、そして液体が乾燥により除去されると収縮することができるヒドロゲルで
ある。
【0061】
本明細書で使用されるとき、用語「堆積」は、手動でも自動でもよい任意の適切な適用
技術を指す。一般に、堆積は、蒸着技術、コーティング技術、グラフト技術などを使用し
て実行され得る。いくつかの具体例には、化学気相堆積(CVD)、スプレーコーティン
グ、スピンコーティング、ダンクまたはディップコーティング、スクリーン印刷、スロッ
トダイコーティング、ストライプコーティング、パドルディスペンスなどが含まれる。
【0062】
本明細書で使用されるとき、用語「窪み」は、パターン化ウェーハ表面の介在領域によ
って完全に囲まれている表面開口部を有する、パターン化ウェーハにおける不連続凹形状
特徴を指す。窪みは、例えば円形、楕円形、正方形、多角形、星形(任意の数の頂点を有
する)などを含む、表面のそれらの開口部において様々な形状のうちのいずれかを有する
ことができる。表面と直交する窪みの断面は、曲線、正方形、多角形、双曲面、円錐形、
角形などであり得る。例として、窪みは、穴または流路であり得る。また、本明細書中で
使用される場合、「官能化窪み」とは、官能化分子のコーティング層およびプライマーが
付着している不連続の凹形状の特徴を指す。
【0063】
用語「それぞれ」は、項目の集合に関して使用される場合、その集合内の個々の項目を
識別することを意図しているが、必ずしも集合内のすべての項目を指すとは限らない。明
示的な開示または文脈が明らかにそうではないことを示す場合、例外が発生する可能性が
ある。
【0064】
本明細書で使用するとき、「流路」は、ウェーハの実質的な部分に沿って延びるウェー
ハの表面に画定された窪みであり得るか、またはその中に複数の窪みを有する2つの結合
表面変性パターン化ウェーハの間に画定される領域であり得る。フローセルは、複数の流
路を含み得る。いくつかの態様では、各フローセルは、少なくとも2つ、3つ、4つの流
路を含む。
【0065】
「流体チャンバー」は、液体サンプルを受け取ることができるフローセルパッケージの
領域である。流体チャンバーは、2つの結合表面変性パターン化ウェーハ間に画定され、
スペーサー層は、流体チャンバーの長手方向壁を画定する。
【0066】
本明細書で言及される「官能化分子」は、任意に置換されたアルケニル、アジド/アジ
ド、任意に置換されたアミノ、カルボキシル、任意に置換されたヒドラゾン、任意に置換
されたヒドラジン、ヒドロキシル、任意に置換されたテトラゾール、任意に置換されたテ
トラジン、ニトリルオキシド、ニトロンまたはチオールから選択される官能基を含む。他
の態様において、官能化分子は、上に列挙されたもの、ならびにエポキシ、ホルミル、グ
リシジル、トリアジニル、アジリジニル、オキソ-アミノおよびハロ基から選択される官
能基を含む。いくつかの例では、官能化分子は、ノルボルネンまたは重合ノルボルネンで
はない。一例では、官能化分子は、式(I)または(Ia)の繰り返し単位を含む。一例
では、官能化分子は、ポリ(N-(5-アジドアセトアミジルペンチル)アクリルアミド
-共-アクリルアミド)(PAZAM)である。
【0067】
本明細書中で使用されるとき、「ヘテロアリール」は、環のバックボーンに1つ以上の
ヘテロ原子、すなわち炭素以外の元素、これに限定されないが、窒素、酸素および硫黄を
含む、を有する芳香族環または環系(すなわち、2つの隣接する原子を共有する2つ以上
の縮合環)を指す。ヘテロアリールが環系であるとき、その系中のすべての環は、芳香族
である。ヘテロアリール基は、5~18個の環員を有し得る。
【0068】
本明細書で使用されるとき、「ヘテロシクリル」は、環のバックボーン中に少なくとも
1個のヘテロ原子を有する非芳香族環式環または環系を意味する。ヘテロシクリルは、縮
合、架橋またはスピロ結合様式で一緒に結合することができる。ヘテロシクリルは、任意
の程度の飽和を有していてもよく、ただし、環系中の少なくとも1つの環は芳香族ではな
い。環系において、ヘテロ原子は、非芳香族環または芳香族環のいずれかに存在し得る。
ヘテロシクリル基は、3~20個の環員(すなわち、炭素原子およびヘテロ原子を含む、
環のバックボーンを構成する原子の数)を有していてもよい。ヘテロシクリル基は、「3
~6員ヘテロシクリル」または同様の指定として指定され得る。いくつかの例では、ヘテ
ロ原子は、O、NまたはSである。
【0069】
本明細書で使用されるとき、用語「ヒドラジン」または「ヒドラジニル」は、-NHN
基を指す。
【0070】
本明細書で使用されるとき、用語「ヒドラゾン」または「ヒドラゾニル」は、以下のも
のを指し、式中、RおよびRは、本明細書で既に定義したとおりである。
【化3】
【0071】
本明細書で使用されるとき、「ヒドロキシル」は、-OH基である。
【0072】
本明細書で使用されるとき、用語「介在領域」は、基板/ウェーハまたは表面の他の領
域を分離する、基板/ウェーハにおけるまたは表面上の領域を指す。例えば、介在領域は
、アレイの1つの特徴を別の特徴から分離することができる。互いに分離されている2つ
の特徴は、不連続、すなわち互いに接触していないことがある。別の例では、介在領域は
、特徴の第1の部分を特徴の第2の部分から分離することができる。多くの例では、介在
領域は連続的であるが、特徴は不連続である。例えば、別の連続的なまたは平面的な表面
に画定された複数の穴の場合がそうである。介在領域によって提供される分離は、部分的
または完全な分離であり得る。介在領域は、表面に画定された特徴の表面材料とは異なる
表面材料を有することができる。例えば、アレイの特徴は、介在領域に存在する量または
濃度を超える量または濃度のコーティング層およびプライマーを有することができる。い
くつかの例では、コーティング層およびプライマーは、介在領域に存在しなくてもよい。
【0073】
本明細書で使用される「ニトリルオキシド」は、“RC≡N”基を意味し、こ
こでRは、本明細書で既に定義したとおりである。ニトリルオキシドを調製する例とし
ては、クロラミド-Tでの処理による、または塩化イミドイル[RC(Cl)=NOH]
に対する塩基の作用による、アルドキシムからのin situ生成が挙げられる。
【0074】
本明細書で使用される「ニトロン」は、「RC≡NR 」基を意味し、こ
こでRおよびRは、本明細書で先に定義され、Rは、本明細書で定義されるように
、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~7カルボシクリ
ル、C6~10アリール、5~10員ヘテロアリールおよび5~10員ヘテロシクリルか
ら選択される。
【0075】
本明細書で使用されるとき、「ヌクレオチド」は、窒素含有複素環式塩基、糖、および
1つ以上のホスフェート基を含む。ヌクレオチドは、核酸配列のモノマー単位である。R
NAでは、糖はリボースであり、DNAではデオキシリボース、すなわちリボースの2’
位に存在するヒドロキシル基を欠く糖である。窒素含有複素環式塩基(すなわち核酸塩基
)は、プリン塩基またはピリミジン塩基であり得る。プリン塩基としては、アデニン(A
)およびグアニン(G)、ならびにそれらの修飾誘導体または類似体が挙げられる。ピリ
ミジン塩基は、シトシン(C)、チミン(T)、およびウラシル(U)、ならびにそれら
の修飾誘導体または類似体を含む。デオキシリボースのC-1原子は、ピリミジンのN-
1またはプリンのN-9に結合している。
【0076】
本明細書で使用される用語「オープンウェーハ処理」は、任意の結合プロセスの前に表
面化学物質でパターン化ウェーハの表面を変性するために使用される一連の順次プロセス
を指す。
【0077】
用語「パターン化ウェーハ」は、その中または上に窪みが画定されている表面を有する
基板(例えばウェーハ)を指す。基板は、一般に硬質であり、水性液体に不溶である。基
板は、官能化分子のコーティング層を変性または適用するために使用される化学物質に対
して不活性であり得る。例えば、基板は、コーティング層をシランもしくはシラン誘導体
層または活性化表面層に付着させるために使用される化学、および/またはプライマーを
本明細書に記載の方法におけるコーティング層に付着させるために使用される化学に対し
て不活性であり得る。適切な基板の例としては、エポキシシロキサン、ガラスおよび変性
または官能化ガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレンおよびスチレンと他の材料
とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、ポリテ
トラフルオロエチレン(Chemours製のTEFLON(登録商標)など)、環状オ
レフィン/シクロオレフィンポリマー(COP)(例えば、ZeonからのZEONOR
(登録商標))、ポリイミドなどを含む)、ナイロン、セラミック、シリカ、溶融シリカ
、またはシルセスキオキサンおよび/または多面体オリゴマーシルセスキオキサン(PO
SS)などのシリカ系材料、ケイ酸アルミニウム、シリコンおよび変性シリコン、窒化ケ
イ素、酸化タンタル、炭素、金属、無機ガラス、および光ファイバ束。基板(またはパタ
ーン化ウェーハ)の硬度は、約5GPa~約6GPaの範囲であり得る。
【0078】
本明細書で使用されるとき、「プラズマアッシング」は、酸素プラズマによって、パタ
ーン化ウェーハから有機物を除去するプロセスを指す。プラズマアッシングから生じる生
成物は、真空ポンプ/システムを用いて除去することができる。プラズマアッシングは、
反応性ヒドロキシル基(炭素またはケイ素に結合した-OH基)を導入することによって
パターン化ウェーハを活性化することができる。プラズマアッシングはまた、表面から有
機物を除去することによってウェーハを活性化させるのに役立ち得る。
【0079】
本明細書で使用されるとき、「プライマー」は、DNAまたはRNA合成のための出発
点として働く一本鎖核酸配列(例えば、一本鎖DNAまたは一本鎖RNA)として定義さ
れる。プライマーの5’末端は、官能化分子のコーティング層とのカップリング反応を可
能にするように修飾されてもよい。プライマー長は、任意の長さの塩基であり得、そして
種々の非天然ヌクレオチドを含み得る。一例では、配列決定プライマーは、20~40塩
基を含む短鎖である。
【0080】
本明細書で使用されるとき、用語「シラン」および「シラン誘導体」は、1つ以上のケ
イ素原子を有する有機または無機化合物を指す。無機シラン化合物の一例は、SiH
または水素が1個以上のハロゲン原子によって置換されているハロゲン化SiHである
。有機シラン化合物の例は、X-R-Si(ORであり、式中、Xは、アミノ、
ビニル、エポキシ、メタクリレート、硫黄、アルキル、アルケニル、アルキニルなどの非
加水分解性有機基であり;Rは、スペーサーであり、例えば-(CH-であり、
ここでnは、0~1000である;Rは、本明細書に定義のように、水素、任意に置換
されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置
換されたカルボシクリル、任意に置換されたアリール、任意に置換された5~10員ヘテ
ロアリールおよび任意に置換された5~10員ヘテロシクリルから選択される。いくつか
の例では、各Rは同じであり、他の例では、それらは異なっていてもよい。いくつかの
例において、Xは、アルケニルまたはシクロアルケニルであり、Rは、-(CH
-であり、ここでnは、2~6であり、および/またはRは、アルキルである。他の例
では、シラン化合物は、X-R-Si(Rであり、式中、XおよびRは、上で
定義したとおりであり、各Rは、独立してRまたはORである。いくつかの例では
、Xは、基板または支持体を含む。本明細書で使用されるとき、用語「シラン」および「
シラン誘導体」は、異なるシランおよび/またはシラン誘導体化合物の混合物を含み得る
【0081】
いくつかの例では、シランまたはシラン誘導体は、官能化分子の官能基と反応可能な不
飽和部分を含む。本明細書で使用されるとき、用語「不飽和部分」は、シクロアルケン、
シクロアルキン、ヘテロシクロアルケン、ヘテロシクロアルキン、または少なくとも1つ
の二重結合もしくは1つの三重結合を含むそれらの任意に置換された変異体を含む化学基
を指す。不飽和部分は、一価または二価であり得る。不飽和部分が一価であるとき、シク
ロアルケン、シクロアルキン、ヘテロシクロアルケン、およびヘテロシクロアルキンは、
それぞれシクロアルケニル、シクロアルキニル、ヘテロシクロアルケニル、およびヘテロ
シクロアルキニルと交換可能に使用される。不飽和部分が二価であるとき、シクロアルケ
ン、シクロアルキン、ヘテロシクロアルケン、およびヘテロシクロアルキンは、それぞれ
シクロアルケニレン、シクロアルキニレン、ヘテロシクロアルケニレン、およびヘテロシ
クロアルキニレンと交換可能に使用される。いくつかの例では、不飽和部分はノルボルニ
ルまたはノルボルニル誘導体である。他の例では、不飽和部分はノルボルニルである。
【0082】
不飽和部分は、シランもしくはシラン誘導体のケイ素原子に直接共有結合するか、また
はリンカーを介して間接的に結合することができる。適切なリンカーの例としては、任意
に置換されたアルキレン(すなわち、二重結合の開裂によりアルケンからまたは異なる炭
素原子からの2個の水素原子の除去によりアルカンから誘導されると見なされる二価飽和
脂肪族基(エチレンなど))、置換ポリエチレングリコールなどが挙げられる。いくつか
の例では、リンカーは、エチレンである。
【0083】
本明細書で使用される「スペーサー層」は、2つの表面変性パターン化ウェーハを一緒
に結合する材料を指す。いくつかの例では、スペーサー層は、結合を助ける放射線吸収材
料とすることができ、または結合を助ける放射線吸収材料と接触させることができる。
【0084】
本明細書で使用される用語「表面化学」は、いくつかの態様では、シランまたはシラン
誘導体、官能化分子のコーティング層、およびパターン化ウェーハの表面上のコーティン
グ層の少なくとも一部に付着したプライマーを指す。他の態様では、「表面化学」は、パ
ターン化ウェーハの活性化表面上の官能化分子のコーティング層、およびコーティング層
の少なくとも一部に付着したプライマーを指す。
【0085】
「チオール」官能基は、-SHを指す。
【0086】
本明細書で使用されるとき、用語「テトラジン」および「テトラジニル」は、4個の窒
素原子を含む6員ヘテロアリール基を意味する。テトラジンは任意に置換され得る。
【0087】
本明細書で使用される「テトラゾール」は、4個の窒素原子を含む5員複素環式基を指
す。テトラゾールは任意に置換され得る。
【0088】
本明細書で使用されるとき、用語「YES法」は、イルミナ社によって開発された、Y
ield Engineering Systems(「YES」)によって提供されて
いる化学蒸着ツールを使用する、化学蒸着プロセスを指す。このツールは、3つの異なる
蒸着システムを含む。自動化されたYES-VertaCoatシラン蒸気システムは、
200mmまたは300mmのウェーハに対応できる柔軟なウェーハハンドリングモジュ
ールを使用して、大量生産用に設計されている。手動ロードYES-1224Pシラン蒸
気システムは、その構成可能な大容量チャンバーで多用途生産のために設計されている。
Yes-LabKoteは、実現可能性の研究や研究開発に理想的な低コストの卓上バー
ジョンである。
【0089】
本明細書に記載され特許請求の範囲に記載された態様および例は、上記の定義に照らし
て理解することができる。
【0090】
次に、表面変性パターン化ウェーハ、フローセルパッケージ、ならびにそれらを製造お
よび使用する方法の例を図面を参照しながら説明する。
【0091】
図1は、パターン化ウェーハ10の上面図であり、図2Aは、パターン化ウェーハ10
の断面図である。パターン化ウェーハ10は、ウェーハ/基板12と、基板12の露出層
または表面の上またはその中に画定された窪み14と、隣接する窪み14を分離する介在
領域16とを含む。本明細書に開示された例では、窪み14は、表面化学で官能化される
ようになるが、介在領域16は、結合に使用されてもよいが、その上にプライマー(図2
Eに示す)は存在しない。
【0092】
前述の基板12の任意の例を使用することができる。一例では、基板12は、約200
mm~約300mmの範囲の直径を有する。
【0093】
窪み14は、例えば、フォトリソグラフィ、ナノインプリントリソグラフィ、スタンピ
ング技術、エンボス加工技術、成形技術、マイクロエッチング技術、印刷技術、リフトオ
フ技術などを含む様々な技術を使用して、基板12の中または上に製作することができる
。当業者には理解されるように、使用される技術は、ウェーハ/基板12の組成および形
状、ならびに基板材料の性質に依存するであろう。
【0094】
規則的パターン、繰り返しパターン、および非規則的パターンを含む、窪み14の多く
の異なるレイアウトが考えられ得る。一例では、窪み14は、最密充填および改善された
密度のために六角形格子に配置される。他のレイアウトは、例えば、直線状(すなわち長
方形)のレイアウト(図4B参照)、三角形のレイアウトなどを含み得る。図1に示すよ
うに、レイアウトまたはパターンは、行および列にある窪み14のx-yフォーマットで
あり得る。いくつかの他の例では、レイアウトまたはパターンは、窪み14および/また
は介在領域16の繰り返し配列であり得る。さらに他の例では、レイアウトまたはパター
ンは、窪み14および/または介在領域16のランダム配列であり得る。パターンは、ス
ポット、パッド、穴、ポスト、ストライプ、渦、線、三角形、長方形(例えば、図4A
示される流路14”を画定する)、円、弧、チェック、格子縞、対角線、矢印、正方形、
および/またはクロスハッチを含み得る。本明細書に記載の例で使用することができるパ
ターン化表面のさらに他の例は、米国特許第8,778,849号;同第9,079,1
48号;同第8,778,848号および米国特許出願公開第2014/0243224
号公報に記載されており、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み入れら
れる。
【0095】
レイアウトまたはパターンは、画定された領域内の窪み14の密度(すなわち、窪み1
4の数)に関して特徴付けることができる。例えば、窪み14は、約200万個/mm
の密度で存在し得る。密度は、例えば、少なくとも約100個/mm、少なくとも約1
,000個/mm、少なくとも約10万個/mm、少なくとも約100万個/mm
、少なくとも約200万個/mm、少なくとも約500万個/mm、少なくとも約1
000万個/mm、少なくとも約5000万個/mmまたはそれ以上の密度を含む様
々な密度に調整することができる。代替的または追加的に、密度は、約5000万個/m
以下、約1000万個/mm以下、約500万個/mm以下、約200万個/m
以下、約100万個/mm以下、約10万個/mm以下、約1,000個/mm
以下、約100個/mm以下またはそれ未満に調整することができる。さらに、基板
12上の窪み14の密度は、上記の範囲から選択される下限値のうちの1つと上限値のう
ちの1つとの間であり得ることを理解されたい。例として、高密度アレイは、約100n
m未満で隔てられた窪み14を有することを特徴としてもよく、中密度アレイは、約40
0nm~約1μmで隔てられた窪み14を有することを特徴としてもよく、低密度アレイ
は、約1μm超えで隔てられた窪み14を有することを特徴としてもよい。
【0096】
レイアウトまたはパターンは、平均ピッチ、すなわち、1つの窪み14の中心から隣接
する窪みの中心までの間隔(中心間間隔)に関しても、または代替的に特徴付けることが
できる。
パターンは、平均ピッチの周りの変動係数が小さくなるように規則的とすることができ、
またはパターンは非規則的とすることができ、その場合変動係数は比較的大きくなり得る
。いずれの場合も、平均ピッチは、例えば、少なくとも約10nm、少なくとも約0.1
μm、少なくとも約0.5μm、少なくとも約1μm、少なくとも約5μm、少なくとも
約10μm、少なくとも約100μmまたはそれ以上であり得る。代替的または追加的に
、平均ピッチは、例えば、約100μm以下、約10μm以下、約5μm以下、約1μm
以下、約0.5μm以下、約0.1μm以下またはそれ未満であり得る。部位16の特定
のパターンの平均ピッチは、上記の範囲から選択された下限値の1つと上限値の1つとの
間であり得る。一例では、窪み14は、約1.5μmのピッチ(中心間距離)を有する。
【0097】
図1および図2Aでは、窪み14は、穴14’であり、したがって基板12は、その表
面に穴14’のアレイを含む。穴14’は、マイクロ穴またはナノ穴であり得る。各穴1
4’は、その体積、穴開口面積、深さ、および/または直径によって特徴付けることがで
きる。
【0098】
各穴は、液体を閉じ込めることができる任意の体積を有し得る。最小体積または最大体
積は、例えば、アレイ10の川下での使用に期待されるスループット(例えば、多重度)
、分解能、検体組成、または検体反応性に適応するように選択することができる。例えば
、体積は、少なくとも約1×10-3μm、少なくとも約1×10-2μm、少なく
とも約0.1μm、少なくとも約1μm、少なくとも約10μm、少なくとも約1
00μmまたはそれ以上であり得る。代替的または追加的に、体積は、約1×10μ
以下、約1×10μm以下、約100μm以下、約10μm以下、約1μm
以下、約0.1μm以下またはそれ未満であり得る。機能性分子のコーティング層が
穴14’の体積の全部または一部を満たすことができることを理解されたい。個々の穴1
4’内のコーティング層の体積は、上で特定された値よりも大きい、小さい、またはその
間であり得る。
【0099】
表面の各穴開口部によって占有される面積は、穴体積について上述したものと同様の基
準に基づいて選択することができる。例えば、表面上の各穴開口部の面積は、少なくとも
約1×10-3μm、少なくとも約1×10-2μm、少なくとも約0.1μm
少なくとも約1μm、少なくとも約10μm、少なくとも約100μmまたはそれ
以上であり得る。代替的にまたは追加的に、面積は、約1×10μm以下、約100
μm以下、約10μm以下、約1μm以下、約0.1μm以下、約1×10-2
μm以下またはそれ未満であり得る。
【0100】
各穴14’の深さは、少なくとも約0.1μm、少なくとも約1μm、少なくとも約1
0μm、少なくとも約100μmまたはそれ以上であり得る。代替的または追加的に、深
さは、約1×10μm以下、約100μm以下、約10μm以下、約1μm以下、約0
.1μm以下またはそれ未満であり得る。
【0101】
いくつかの例では、各穴16’の直径は、少なくとも約50nm、少なくとも約0.1
μm、少なくとも約0.5μm、少なくとも約1μm、少なくとも約10μm、少なくと
も約100μmまたはそれ以上であり得る。代替的または追加的に、直径は、約1×10
μm以下、約100μm以下、約10μm以下、約1μm以下、約0.5μm以下、約
0.1μm以下またはそれ未満(例えば、約50nm)であり得る。
【0102】
パターン化ウェーハ10は、少なくとも窪み14の表面を変性ために一連のプロセスに
かけられてもよい。図2B図2Eは、表面変性パターン化ウェーハ10’(図2Eに示
す)を形成するためのプロセスを示す。
【0103】
図示していないが、表面を洗浄し活性化するために、パターン化ウェーハ10をプラズ
マアッシングにかけることができることを理解されたい。例えば、プラズマアッシングプ
ロセスは、有機材料を除去し、表面ヒドロキシルまたはカルボキシル基を導入し得る。
【0104】
次に、パターン化ウェーハ10(図2Aに示す)をシラン化にかけてもよく、これによ
りシランまたはシラン誘導体18(図2B)がパターン化ウェーハ表面に付着する。シラ
ン化は、窪み14、14’内(例えば、底面上および側壁に沿って)および介在領域16
上を含む表面にわたってシランまたはシラン誘導体18を導入する。
【0105】
シラン化は、任意のシランまたはシラン誘導体18を使用して達成することができる。
シランまたはシラン誘導体18とその後に堆積された官能化分子との間に共有結合を形成
することが望ましい場合があるので、シランまたはシラン誘導体18の選択は、部分的に
、コーティング層20(図2Cに示す)を形成するために使用される官能化分子に依存し
得る。シランまたはシラン誘導体18を基板12に付着させるのに使用される方法は、使
用されているシランまたはシラン誘導体18に応じて変わり得る。いくつかの例を本明細
書に記載する。
【0106】
一例では、シランまたはシラン誘導体18は、(3-アミノプロピル)トリエトキシシ
ラン(APTES)または3-アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)(す
なわち、X-R-Si(ORであり、式中、Xは、アミノであり、Rは、-(C
-であり、Rは、エチルまたはメチルである)。この例では、基板12表面を
(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)または3-アミノプロピル)
トリメトキシシラン(APTMS)で前処理して、表面上の1つ以上の酸素原子にケイ素
を共有結合させることができる(機構に縛られることを意図するわけではないが、各ケイ
素は、1、2または3個の酸素原子に結合することができる)。この化学的に処理された
表面をベークしてアミン基単層を形成する。次いで、アミン基をスルホ-HSABと反応
させてアジド誘導体を形成する。21℃、1J/cm~30J/cmのエネルギーでの
UV活性化は、活性ニトレン種を生成し、これはPAZAM(例えば官能化分子)との様
々な挿入反応を容易に受けることができる。
【0107】
他のシラン化方法も使用することができる。適切なシラン化方法の例には、蒸着、YE
S方法、スピンコーティング、または他の堆積方法が含まれる。本開示の例において基板
12をシラン化するために使用され得る方法および材料のいくつかの例は、参照によりそ
の全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開第2015/0005447号に記載され
ている。
【0108】
YES CVDオーブンを利用する一例では、パターン化ウェーハ10をCVDオーブ
ン内に配置する。チャンバーを通気し、次いでシラン化サイクルを開始してもよい。サイ
クル中、シランまたはシラン誘導体容器は、適切な温度(例えば、ノルボルネンシランに
ついては約120℃)に維持され、シランまたはシラン誘導体蒸気ラインは、適切な温度
(例えば、ノルボルネンシランについては約125℃)に維持され、真空ラインは、適切
な温度(例えば、約145℃)に維持され得る。
【0109】
別の例では、シランまたはシラン誘導体18(例えば、液体ノルボルネンシラン)をガ
ラスバイアルの内側に堆積させ、パターン化ウェーハ10と共にガラス真空デシケーター
の内側に配置することができる。そのデシケーターを約15mTorr~約30mTor
rの圧力に排気することができ、約60℃~約125℃の範囲の温度でオーブン内に配置
することができる。シラン化を進行させ、次いでデシケーターをオーブンから取り出し、
冷却しそして空気中に通気する。
【0110】
蒸着、YES法および/または真空デシケーターは、本明細書に開示されている不飽和
部分の例を含むそれらのシランまたはシラン誘導体18などの様々なシランまたはシラン
誘導体18と共に使用することができる。例として、これらの方法は、シランまたはシラ
ン誘導体18が、ノルボルネン、ノルボルネン誘導体(例えば、炭素原子の1つの代わり
に酸素または窒素を含む(ヘテロ)ノルボルネン)、トランスシクロオクテン、トランス
シクロオクテン誘導体、トランスシクロペンテン、トランスシクロヘプテン、トランス-
シクロノネン、ビシクロ[3.3.1]ノン-1-エン、ビシクロ[4.3.1]デカ-
1-(9)-エン、ビシクロ[4.2.1]ノン-1(8)-エンおよびビシクロ[4.
2.1]ノン-1-エンなど、シクロアルケン不飽和部分を含む場合に使用できる。これ
らのシクロアルケンのいずれも、米国特許公開第2015/0005447号に記載され
ているように置換することができる。ノルボルネン誘導体の例には、[(5-ビシクロ[
2.2.1]ヘプト-2-エニル)エチル]トリメトキシシランが含まれる。他の例とし
て、これらの方法は、シランまたはシラン誘導体18が、シクロオクチン、シクロオクチ
ン誘導体、またはビシクロノニン(例えば、ビシクロ[6.1.0]ノナ-4-インまた
はそれらの誘導体、ビシクロ[6.1.0]ノナ-2-イン、またはビシクロ[6.1.
0]ノナ-3-イン)などのシクロアルキン不飽和部分を含む場合に使用できる。これら
のシクロアルキンは、米国特許公開第2015/0005447号に記載されているよう
に置換することができる。
【0111】
図2Bに示すように、シランまたはシラン誘導体18の付着は、シラン化窪みおよびシ
ラン化介在領域を含むシラン化パターン化ウェーハ10Sを形成する。
【0112】
次いで、シラン化パターン化ウェーハ10Sを、シラン化窪みおよびシラン化介在領域
上に機能性分子のコーティング層20を形成することになるプロセスにかけることができ
る。このプロセスは、図2Bおよび図2Cの間のフレーズ「FML(機能性分子層)形成
」によって表される。
【0113】
官能化分子の例には、本明細書に定義の式(I)または式(Ia)の繰り返し単位を含
む化合物が含まれる。
【0114】
官能化分子の特定の例は、ポリ(N-(5-アジドアセトアミジルペンチル)アクリル
アミド-共-アクリルアミド、PAZAMであり(例えば、米国特許公開第2014/0
079923A1号または同第2015/0005447A1号を参照)、これは、以下
に示される構造を含む。
【化4】
式中、nは、1~20,000の範囲の整数であり、mは、1~100,000の範囲の
整数である。式(I)と同様に、当業者は、「n」および「m」サブユニットがポリマー
構造全体にわたってランダムな順序で存在する別々の繰り返し単位であることを認識する
であろう。
【0115】
官能化分子またはPAZAMの分子量は、約10kDa~約1500kDaの範囲であ
り得るか、または具体例では、約312kDaであり得る。
【0116】
いくつかの例では、官能化分子またはPAZAMは線状ポリマーである。いくつかの他
の実施形態では、官能化分子またはPAZAMは、軽く架橋されたポリマーである。いく
つかの実施形態では、官能化分子は、分岐を含む。
【0117】
他の官能化分子がパターン化ウェーハ12およびその後に適用されるプライマー22と
相互作用するように官能化される限り、他の官能化分子を用いて、コーティング層20を
形成してもよい。適切な官能化分子の他の例には、アガロースなどのコロイド構造;また
はゼラチンなどのポリマーメッシュ構造;またはポリアクリルアミドポリマーおよびコポ
リマー、シランフリーアクリルアミド(SFA、例えば、米国特許出願公開第2011/
0059865号を参照されたい、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)、
またはSFAのアジドリド化バージョンなどの架橋ポリマー構造を有するものが含まれる
。適切なポリアクリルアミドポリマーの例は、例えば国際公開第2000/031148
(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているようにアクリルアミ
ドおよびアクリル酸またはビニル基を含有するアクリル酸から、または、例えば、国際公
開第2001/001143号または国際公開第2003/0014392号(それぞれ
、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように[2+2]光
環状付加反応を形成するモノマーから形成され得る。他の適切なポリマーは、SFAとブ
ロモ-アセトアミド基で誘導体化されたSFAとのコポリマー(例えば、BRAPA)、
またはSFAとアジド-アセトアミド基で誘導体化されたSFAとのコポリマーである。
【0118】
官能化分子(例えば、PAZAM)は、スピンコーティング、または浸漬もしくはディ
ップコーティング、または官能化分子のフローを使用して、陽圧または陰圧下で、または
その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第9,012,022号に記載
の技術を用いて、シラン化パターン化ウェーハ10Sの表面上(すなわち、シラン化窪み
およびシラン化介在領域上)に堆積させることができる。官能化分子は、溶液中に存在し
てもよい。一例では、溶液は、エタノールと水との混合物中にPAZAMを含む。
【0119】
被覆された後、官能化分子はまた、硬化プロセスにかけて、図2Cに示されるコーティ
ング層20を形成し得る。一例では、官能化分子の硬化は、室温(例えば、約25℃)~
約60℃の範囲の温度で、約5分~約2時間の範囲の時間にわたって行われてもよい。
【0120】
官能化分子のシラン化窪みおよびシラン化介在領域への付着は、共有結合を介してもよ
い。官能化分子のシラン化窪みへの共有結合は、様々な用途の間に最終的に形成されるフ
ローセルの寿命にわたって窪み14、14’内のコーティング層20を維持するのに役立
つ。以下は、シランまたはシラン誘導体18と官能化分子との間で起こり得る反応のいく
つかの例である。
【0121】
シランまたはシラン誘導体18が不飽和部分としてノルボルネンまたはノルボルネン誘
導体を含む場合、そのノルボルネンまたはノルボルネン誘導体は、以下のことが可能であ
る:i)PAZAMのアジド/アジド基との1,3-双極子付加環化反応(すなわちクリ
ック反応);ii)PAZAMに結合したテトラジン基とのカップリング反応;PAZA
Mに結合したヒドラゾン基との環化付加反応;PAZAMに結合したテトラゾール基との
光クリック反応;またはPAZAMに結合したニトリルオキシド基との環化付加。
【0122】
シランまたはシラン誘導体18が不飽和部分としてシクロオクチンまたはシクロオクチ
ン誘導体を含む場合、そのシクロオクチンまたはシクロオクチン誘導体は、i)PAZA
Mのアジド/アジドとの歪み促進アジド-アルキン1,3-付加環化(SPAAC)反応
、またはii)PAZAMに結合したニトリルオキシド基との歪み促進アルキン-ニトリ
ルオキシド環化付加反応をすることができる。
【0123】
シランまたはシラン誘導体18が不飽和部分としてビシクロノニンを含む場合、そのビ
シクロノニンは、二環式環系における歪みのために、同様のSPAACアルキン付加環化
を、PAZAMに結合したアジドまたはニトリルオキシドとすることができる。
【0124】
図示しないが、方法のいくつかの例では、パターン化ウェーハ12は、シラン化にかけ
なくてもよいことを理解されたい。むしろ、パターン化ウェーハ12をプラズマアッシン
グにかけて、次いで、官能化分子をプラズマアッシングされたパターン化ウェーハ12上
に直接スピンコーティング(またはそうでなければ堆積)してもよい。この例では、プラ
ズマアッシングは、官能化分子をパターン化ウェーハ12に結合することができる表面活
性化剤(例えば、-OH基)を生成し得る。これらの例では、官能化分子は、それがプラ
ズマアッシングによって生成された表面基と反応するように選択される。これらの例では
、表面変性パターン化ウェーハは、介在領域16によって分離された窪み14を含むパタ
ーン化ウェーハ12の表面をプラズマアッシングすること、窪み14内および介在領域1
6上に官能化分子のコーティング層20を形成すること、間隙領域16からコーティング
層20を擦り取ること(任意に、i)約7.5~約11の範囲のpHを有し、パターン化
ウェーハの硬度より低い硬度を有する研磨粒子を含む塩基性水性スラリー、またはii)
研磨パッドと、その研磨粒子を含まない溶液とを使用して)、および窪み14内のコーテ
ィング層20にプライマー22をグラフトして官能化窪みを形成すること、によって形成
される。いくつかの態様では、擦り取ることは、パターン化ウェーハの硬度より低い硬度
を有する研磨粒子を含む水性スラリーを使用して達成される。
【0125】
図2A図2Eに示す方法に戻ると、図示しないが、シラン化されコーティングされた
パターン化ウェーハ10SC(図2Cに示す)は、洗浄プロセスにかけてもよいことを理
解されたい。このプロセスは、水浴および超音波処理を利用してもよい。水浴は、約22
℃~約45℃の範囲の比較的低い温度に維持することができる。別の例では、水浴温度は
、約25℃~約30℃の範囲である。
【0126】
図2Cおよび図2Dの間に示すように、次に、シラン化およびコーティングされたパタ
ーン化ウェーハ10SCを擦り取ることにかけて、シラン化介在領域からコーティング層
20の一部を除去する。本明細書に開示される擦り取るプロセスは、過酷な化学薬品およ
び硬くて厚い表面(例えば、金属)を含み得る、微小電気機械システム(MEMS)処理
に使用される典型的な研磨プロセスとは異なる。シラン化およびコーティングされたパタ
ーン化ウェーハ10SCは、比較的柔らかく、コーティング層20の厚さは、約200n
m以下であり得る。これらの条件を考慮すると、穏やかな化学スラリー(特定の硬度およ
び粒径の研磨剤を含む)を擦り取ることに利用することができ、それはこれらの領域で下
の基板12に有害な影響を及ぼすことなくシラン化介在領域から薄いコーティング層20
を除去することができる。あるいは、研磨粒子を含まない溶液で研磨を行ってもよい。
【0127】
穏やかな化学スラリーは、約7.5~約11の範囲のpHを有し、パターン化ウェーハ
12の硬度よりも低い硬度を有する研磨粒子(これは、コーティング層20の硬度よりも
高い硬度を有し得る)を含む塩基性水性スラリーである。穏やかな化学スラリーは、例え
ば、7より大きく~8、または11~14の範囲の任意の塩基性pHを有してもよいこと
を理解されたい。一例では、パターン化ウェーハ12の硬度は、約5GPA~約5GPa
の範囲であり、コーティング層20の硬度は、約0.5GPa~約0.7GPaの範囲で
あり、研磨粒子の硬度は、約0.2GPaである。しかしながら、パターン化ウェーハ1
2の硬度よりも低い硬度を有する任意の研磨粒子を使用することができることを理解され
たい。窪み14内のコーティング層20が無傷であり、研磨後に少なくとも実質的に欠陥
がないように、研磨粒子の硬度は選択される。研磨粒子の例としては、炭酸カルシウム(
CaCO)、アガロース、グラファイト、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)
、シリカ、酸化アルミニウム(すなわちアルミナ)、セリア、ポリスチレンおよびそれら
の組み合わせが挙げられる。いくつかの例では、研磨粒子は、炭酸カルシウム(CaCO
)、アガロースおよびグラファイトからなる群より選択される。研磨粒子の平均粒径は
、約15nm~約5μmの範囲であり得、そして一例では、約700nmである。
【0128】
研磨剤粒子に加えて、塩基性水性スラリーはまた、緩衝剤、キレート剤、界面活性剤、
および/または分散剤を含んでもよい。緩衝剤の例には、約9のpHを有する溶液中に存
在し得る、トリス塩基(すなわち、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)が含まれ
る。キレート剤の例は、約8のpHを有する溶液中に存在し得る、エチレンジアミン四酢
酸(EDTA)である。界面活性剤の例は、ドデシル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界
面活性剤である。異なる分子量を有するポリアクリレート分散剤を使用することができる
。分散剤の例は、ポリ(アクリル酸ナトリウム塩)である。分散剤は、研磨粒子のサイズ
を維持するのを助け、そして少なくとも実質的に研磨粒子の沈降を防ぐのを助けることが
できる。
【0129】
一例では、塩基性水性スラリーは、緩衝剤の最終モル濃度が約100mMであるように
、緩衝剤を脱イオン(DI)水に添加することによって形成される。このモル濃度を達成
するための一例では、緩衝剤とDI水との比は、約5:4である。キレート剤は、約1体
積%の量(溶液の全体積に基づいて)で添加することができる。一例では、塩基性水性ス
ラリー中のキレート剤の濃度は、約1mMである。分散剤は、約0.025体積%~約2
.5体積%の範囲の量(溶液の全体積に基づいて)で添加することができる。分散剤のこ
の範囲は、適切な値のゼータ電位を含む。界面活性剤は、任意の適切な量で添加すること
ができ、その例は、約0.125体積%を含む。内容物を混合し、次いで乾燥研磨粒子粉
末またはビーズに加えてスラリーを形成することができる。このスラリーは、研磨のため
にDI水でさらに希釈してもよい。
【0130】
塩基性水性スラリーは、化学機械研磨システムで使用して、シラン化およびコーティン
グされたパターン化ウェーハ10SCの表面を擦り取ることができる。システムで使用さ
れる研磨ヘッド/パッドまたは他の研磨ツールは、コーティング層20を窪み14、14
’内に残したまま、かつ下の基板12を少なくとも実質的に無傷のまま、介在領域16か
らコーティング層20を擦り取ることができる。一例として、研磨ヘッドは、Stras
baugh ViPRR II研磨ヘッドであり得る。
【0131】
上述のように、研磨剤なしで研磨パッドおよび溶液を用いて擦り取ることができる。例
えば、研磨パッドは、研磨粒子を含まない溶液(すなわち、研磨粒子を含まない溶液)と
共に利用されてもよい。
【0132】
擦り取ることは、シラン化介在領域からコーティング層20の一部を除去し、図2D
示すように、シラン化窪み内にコーティング層20の一部を残す。図2Dにも示すように
、介在領域16は、擦り取ることが完了した後にシラン化されたままでもよい。言い換え
れば、シラン化介在領域は、研磨後に無傷のままであり得る。あるいは、シランまたはシ
ラン誘導体18は、擦り取ることの結果として介在領域16から除去されてもよい。
【0133】
図示しないが、シラン化され、コーティングされ、そして研磨されたパターン化ウェー
ハ10SCP(図2Dに示す)は、洗浄プロセスにかけてもよいことを理解されたい。こ
のプロセスは、水浴および超音波処理を利用してもよい。水浴は、約22℃~約30℃の
範囲の比較的低い温度に維持することができる。シラン化され、コーティングされ、そし
て研磨されたパターン化ウェーハ10SCPはまた、スピン乾燥されるか、または他の適
切な技術によって乾燥され得る。
【0134】
シラン化され、コーティングされ、そして研磨されたパターン化ウェーハ10SCPは
、次いで、プライマー22をシラン化窪み中の機能性分子コーティング層20にグラフト
するプロセスにかけてもよい。プライマー22のグラフトは、官能化窪み15を形成し、
その一例が、図2Eの拡大部分に示されている。
【0135】
適切なプライマー22の例には、順方向増幅プライマーまたは逆方向増幅プライマーが
含まれる。適切なプライマー22の具体例には、HiSeq(登録商標)、HiSeqX
(登録商標)、MiSeq(登録商標)、MiSeqX(登録商標)、Nextseq(
登録商標)およびGenome Analyzer(登録商標)機器プラットフォームで
の配列決定のためにIllumina Inc.製の市販のフローセルの表面で使用され
る、P5またはP7プライマーが含まれる。
【0136】
グラフトは、ダンクコーティング、スプレーコーティング、パドルディスペンス、スロ
ットダイコーティングによって、または窪み14、14’の少なくとも一部中のコーティ
ング層20にプライマー22を付着させる別の適切な方法によって、達成することができ
る。これらの例の各々は、プライマー22、水、緩衝剤および触媒を含み得る、プライマ
ー溶液または混合物を利用し得る。
【0137】
ダンクコーティングは、シラン化され、コーティングされ、そして研磨されたパターン
化ウェーハ10SCPを一連の温度制御された浴中に浸漬することを含み得る。その浴は
、流量制御されてもよくおよび/または窒素ブランケットで覆われてもよい。その浴は、
プライマー溶液またはプライマー混合物を含み得る。様々な浴を通して、プライマー22
は、窪み14、14’の少なくとも一部中のコーティング層20に付着する。一例では、
シラン化され、コーティングされ、および研磨されたパターン化ウェーハ10SCPは、
プライマー溶液またはプライマー混合物を含む第1の浴に導入され、そこでプライマー2
2を付着させる反応が起こり、次いでアレイ10’は、洗浄のために追加の浴に移動され
る。シラン化され、コーティングされ、そして研磨されたパターン化ウェーハ10SCP
は、ロボットアームを用いてまたは手動で、浴から浴へと移動され得る。加熱窒素エアナ
イフまたはスピンコーターなどの乾燥システムも、ダンクコーティングに使用することが
できる。
【0138】
スプレーコーティングは、プライマー溶液またはプライマー混合物を、シラン化され、
コーティングされ、そして研磨されたパターン化ウェーハ10SCP上に直接スプレーす
ることによって達成することができる。スプレーコーティングされたウェーハは、約0℃
~約70℃の範囲の温度で約4分~約60分の範囲の時間、インキュベートされてもよい
。インキュベーション後、プライマー溶液またはプライマー混合物は、例えば、スピンコ
ーターを用いて希釈および除去することができる。
【0139】
パドルディスペンスは、プールおよびスピンオフ方法に従って実行されてもよく、した
がってスピンコーターを用いて達成されてもよい。プライマー溶液またはプライマー混合
物は、シラン化され、コーティングされ、そして研磨されたパターン化ウェーハ10SC
Pに適用されてもよい(手動でまたは自動化プロセスによって)。適用されたプライマー
溶液またはプライマー混合物は、シラン化され、コーティングされ、そして研磨されたパ
ターン化ウェーハ10SCPの表面全体に適用されるかまたは広げられ得る。プライマー
コーティングされたウェーハ10SCPは、約0℃~約80℃の範囲の温度で約2分~約
60分の範囲の時間、インキュベートすることができる。インキュベーション後、プライ
マー溶液またはプライマー混合物は、例えば、スピンコーターを用いて希釈および除去す
ることができる。
【0140】
プライマーをシラン化窪み14、14’の少なくとも一部のコーティング層20にグラ
フトすると、図2Eに示すように官能化窪み15が形成される。グラフト後、所望の表面
化学が適用され、そして表面変性パターン化ウェーハ10’が形成される。
【0141】
表面変性パターン化ウェーハ10’は、任意の所望の品質管理および/または表面特性
評価技術にかけてもよい。例えば、表面変性パターン化ウェーハ10’は、例えば、原子
間力顕微鏡法(AFM)、走査電子顕微鏡法(SEM)、偏光解析法、ゴニオメトリー、
スキャトロメトリー、ハイブリダイゼーション品質管理方法および/または蛍光技術にか
けてもよい。
【0142】
図3Aに示すように、表面変性パターン化ウェーハ10’を用いてフローセルパッケー
ジ30を形成することができる。フローセルパッケージ30を形成するために、2つの表
面変性パターン化ウェーハ10’(図3Aにおいて10’Aおよび10’Bとして示され
る)を一緒に結合することができる。
【0143】
通常、2つの表面変性パターン化ウェーハ10’は、1つの(第1の)表面変性パター
ン化ウェーハ10’Aの官能化窪み15の少なくとも一部が、他方の(第2の)表面変性
パターン化ウェーハ10’Bの官能化窪み15の少なくとも一部と合うように、かつ、1
つの(第1の)表面変性パターン化ウェーハ10’Aの介在領域16の少なくとも一部が
、他方の(第2の)表面変性パターン化ウェーハ10’Bの介在領域16の少なくとも一
部と合うように、位置決めされ得る。2つの表面変性パターン化ウェーハ10’A、10
’Bは、少なくとも実質的に合わせられた介在領域16で一緒に結合することができる。
複数の別々の流体チャンバーを画定するように、2つの表面変性パターン化ウェーハは、
少なくとも実質的に合わせられた介在領域の少なくとも一部で一緒に結合することができ
る。2つの表面変性パターン化ウェーハは、窪みを含まない領域で一緒に結合することが
できる。2つの表面変性パターン化ウェーハは、少なくとも実質的に合わせられた介在領
域の少なくとも一部で、窪みを含まずかつ介在領域ではないウェーハの領域(例えば、ウ
ェーハの縁の周り)で、一緒に結合することができる。ウェーハ結合は、レーザ接着、拡
散接着、陽極接着、共晶接着、プラズマ活性化接着、ガラスフリット接着、または当技術
分野で知られている他の方法によって達成することができる。
【0144】
図3Aおよび3B(後者は上側の表面変性パターン化ウェーハ10’Bを除いたパッケ
ージ30の上面図である)に示す例は、スペーサー層24を含み、それは、少なくとも実
質的に整列した介在領域16の少なくとも一部と接触し、かつそれらを結合している。図
3Bの上面図に示すように、スペーサー層24は、ウェーハ10’A、10’Bの介在領
域16の全てと接触していなくてもよい。これは、例えば、いくつかの行および列の官能
化窪み15が単一の流体チャンバー28、28’、28”、28”’内に存在することに
なる場合に望ましいことがある。例えば、図3Aおよび3Bの流体チャンバー28、28
’、28”、28”’は、3列および8行の官能化窪み15を含み、流体チャンバー28
、28’、28”、28”’内の介在領域16は露出したままである。スペーサー層24
は、予めカットされ、ウェーハサイズ、ならびに形成される所望の数の流体チャンバー2
8、28’、28”、28”’を一致させてもよい。
【0145】
図3Aおよび図3Bに示す例では、流体チャンバー28、28’、28”、28”’は
、スペーサー層24によって少なくとも部分的に画定され、2つの結合した表面変性パタ
ーン化ウェーハ10’A、10’Bの間に配置される。図3Aおよび図3に示す例では、
スペーサー層24は、流体チャンバー28、28’、28”、28”’のそれぞれの長手
方向壁29および端部31(図3B)を画定する。
【0146】
この例では、各流体チャンバー28、28’、28”、28”’は、流路26、26’
、26”、26”’を含む。また、この例では、各流路26、26’、26”、26”’
は、その中に複数の官能化窪み15を有する、結合した表面変性パターン化ウェーハ10
’A、10’Bの間に画定された領域である。
【0147】
スペーサー層24は、表面変性パターン化ウェーハ10’A、10’Bの介在領域16
の少なくとも一部で一緒にシールする任意の材料とすることができる。スペーサー層24
およびスペーサー層24を用いた結合の例は、参照によりその全体が本明細書に組み込ま
れる米国特許出願公開第2016/0023208号に記載されている。
【0148】
一例では、スペーサー層24は、基板12によって透過される波長の放射を吸収する放
射吸収材料とすることができる。吸収されたエネルギーは、次に、スペーサー層24とそ
れぞれの表面変性パターン化ウェーハ10’A、10’Bとの間の結合を形成する。この
放射線吸収材料の例は、デュポン(米国)製のBlack Kapton(登録商標)(
カーボンブラック含有ポリイミド)であり、これは約1064nmで吸収する。カーボン
ブラックを添加せずにポリイミドを使用することができ、ただし、その波長は、天然のポ
リイミド材料によって著しく吸収される波長(例えば、480nm)に変更する必要があ
ることを理解されたい。別の例として、532nmの光を照射すると、ポリイミドCEN
JPを結合することができる。
【0149】
スペーサー層24が放射線吸収材料である場合、スペーサー層24が所望のシラン化介
在領域と接触するように、スペーサー層24は、ウェーハ10’Aと10’Bとの間の界
面に配置されてもよい。適切な波長のレーザーエネルギーが界面に適用されている(すな
わち、放射線吸収材料が照射されている)間に、加圧(例えば、約50、約60、約70
、約80、約90、または約100PSI、または約60PSIの圧力)が適用されても
よい。スペーサー層24とそれぞれのウェーハ10’A、10’Bとの間の適切な結合を
達成するために、レーザーエネルギーを上と下の両方から界面に適用することができる。
【0150】
別の例では、スペーサー層24は、それと接触している放射線吸収材料を含んでもよい
。放射線吸収材料は、スペーサー層24とウェーハ10’Aとの間の界面ならびにスペー
サー層24とウェーハ10’Bとの間の界面に適用することができる。一例として、スペ
ーサー層24は、ポリイミドでもよく、別の放射線吸収材料は、カーボンブラックでもよ
い。この例では、別の放射線吸収材料は、スペーサー層24とそれぞれの表面変性パター
ン化ウェーハ10’A、10’Bとの間に結合を形成するレーザーエネルギーを吸収する
【0151】
スペーサー層24が別個の放射線吸収材料と接触しているとき、放射線吸収材料がウェ
ーハ10’A、10’Bのそれぞれのシラン化介在領域の少なくとも一部およびスペーサ
ー層24と接触するように、放射線吸収材料は、スペーサー層24とウェーハ10’Aお
よび10’Bのそれぞれとの間のそれぞれの界面に配置することができる。適切な波長の
レーザーエネルギーが適用されている(すなわち、放射線吸収材料が照射されている)間
に、それぞれの界面で加圧が適用されてもよい。スペーサー層24とそれぞれのウェーハ
10’A、10’Bとの間の適切な結合を達成するために、レーザーエネルギーを上と下
の両方から界面に適用することができる。
【0152】
図3Aおよび図3Bに示す例では、スペーサー層24が隣接する流体チャンバー28か
ら1つの流体チャンバー28を物理的に分離するように(相互汚染を防ぐために)、スペ
ーサー層24(および結合領域)を流体チャンバー28間に配置してもよく、そしてウェ
ーハ10’A、10’Bの周囲に配置してもよい(フローセルパッケージ30をシールす
るために)。しかしながら、スペーサー層24(および結合領域)は、実施態様に応じて
任意の所望の領域に配置し得ることを理解されたい。
【0153】
図3Bはまた、フローセルパッケージ30をさいの目に切ってそれぞれのフローセル4
0Aおよび40Bを形成することができる点線を示す。フローセルパッケージ30は、形
成される個々のフローセル40A、40Bが少なくとも2つの流体チャンバー28を有す
るように、任意の望ましい構成に従ってさいの目に切ることができる。いくつかの例では
、各フローセル40A、40Bが8つの別々の流体チャンバーを含むように、パッケージ
化フローセル30をさいの目に切ることが望ましい。他の例では、フローセルパッケージ
は、2つ、3つ、4つまたはそれ以上のフローセルを形成するようにさいの目に切られる
。他の例では、各フローセルは、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたは8つ
の別々の流体チャンバーを含む。他の例では、各フローセルは、2つ、4つまたは8つの
別々の流体チャンバーを含む。
【0154】
ここで図4Aおよび図4Bを参照すると、フローセル40Cの他の例が示されている。
このフローセル40Cは、本明細書に開示されている方法に従ってフローセルパッケージ
の一部として形成することができることを理解されたい。このように、フローセルパッケ
ージがさいの目に切られた後のフローセル40Cが示されている。この例では、それぞれ
の窪み14(およびしたがって官能化窪み15)は、各ウェーハ部分10’C、10’D
の基板12の長さのかなりの部分(前の図に示す穴14’よりも)にわたって延びる流路
14”である。
【0155】
フローセル40Cは、結合領域でスペーサー層24で一緒に結合している2つの表面変
性パターン化ウェーハ部分10’C、10’Dを含む。この例では、スペーサー層24は
、ウェーハ部分10’C、10’Dのすべての介在領域16と接触してもよい。これは、
例えば、官能化窪み15が個別の穴14’ではなく長い流路14”である場合に望ましい
ことがある。各流路14”は、単一の流体チャンバー28、28’、28”と関連付けら
れている。
【0156】
図4Aおよび図4Bに示す例では、流体チャンバー28、28’、28”は、スペーサ
ー層24によって部分的に画定されており、2つの結合した表面変性パターン化ウェーハ
部分10’C、10’Dの間に配置されている。図4Aおよび図4Bに示す例では、スペ
ーサー層24は、流体チャンバー28、28’、28”のそれぞれの長手方向壁29と端
部31の部分を画定する一方、各ウェーハ部分10’C、10’Dの窪み/流路14’、
14”は、流体チャンバー28、28’、28”のそれぞれの長手方向壁29と端部31
の残りを形成する。
【0157】
フローセル40A、40B、40Cは、ヌクレオチドシーケンサーなどの反応自動化装
置において制御された化学的または生化学的反応を実行するために使用されてもよい。図
示しないが、下部の表面変性パターン化ウェーハ10’A、10’Dの基板12を貫通し
てそれぞれの流体チャンバー28にポートを穿孔することができることを理解されたい。
ポートに接続することによって、反応自動化装置は、封止された流体チャンバー28での
試薬と生成物の流量を制御することができる。反応自動化装置は、用途によっては、フロ
ーセル40A、40B、40Cの圧力、温度、ガス組成および他の環境条件を調整するこ
とができる。さらに、いくつかの用途では、上部の表面変性パターン化ウェーハ10'B
、10'Cの基板12または上部と下部の両方の基板12にポートを穿孔することができ
る。いくつかの用途では、封止された流体チャンバー28内で起こる反応は、熱、発光お
よび/または蛍光の画像化または測定によって基板を通して監視することができる。
【0158】
本明細書に開示されるフローセル40A、40B、40Cは、シーケンシング-バイ-
シンセシス(SBS)、シーケンシング-バイ-ライゲーション、パイロシーケンシング
などとしばしば呼ばれる技術を含む、様々な配列決定アプローチまたは技術において使用
され得る。これらの技術のいずれにおいても、官能化分子および付着した配列決定プライ
マーは、介在領域上16ではなく官能化窪みに存在するので、増幅は官能化窪みに限定さ
れるであろう。
【0159】
簡単に説明すると、シーケンシング-バイ-シンセシス(SBS)反応は、イルミナ(
サンディエゴ、カリフォルニア州)製のHiSeq(登録商標)、HiSeqX(登録商
標)、MiSeq(登録商標)またはNextSeq(登録商標)シーケンサーシステム
などのシステムで実行できる。配列決定される一組の標的DNA分子は、結合された配列
決定プライマー22にハイブリダイズされ、次いで、ブリッジ増幅または動的排除増幅に
よって増幅される。変性により、一本鎖鋳型が官能化分子(コーティング層20)に固定
されたままになり、数百万の二本鎖DNAの密集クラスターが生成される(すなわちクラ
スター生成)。次いで配列決定反応を実施する。データを整列させ、そして参照と比較し
、そして配列決定の差異を同定する。
追記
【0160】
前述の概念(そのような概念が互いに矛盾しないという条件で)のすべての組み合わせ
が、本明細書に開示されている発明の主題の一部であると考えられることを理解されたい
。特に、本開示の終わりに現れる特許請求される主題の全ての組み合わせは、本明細書に
開示された発明の主題の一部であると考えられる。また、参照により本明細書に組み込ま
れる任意の開示にも現れる可能性がある本明細書で明示的に使用される用語は、本明細書
で開示される特定の概念と最も矛盾しない意味に一致するはずである。
【0161】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許、および特許出願は、その全体が参照により本
明細書に組み入れられる。
【0162】
本明細書を通して、「一例」、「他の例」、「一例」などへの言及は、その例に関連し
て説明された特定の要素(例えば、特徴、構造、および/または特性)が、本明細書に記
載の少なくとも1つの例に含まれること、および他の例に存在してもよいし、またはしな
くてもよいことを意味する。さらに、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、
任意の例について記載された要素は、さまざまな例において任意の適切な方法で組み合わ
されてもよいことを理解されたい。
【0163】
本明細書に提供される範囲は、記載された範囲、および記載された範囲内の任意の値ま
たは部分範囲を含むことを理解されたい。例えば、約200mm~約300mmの範囲は
、明示的に列挙された約200mm~約300mmの限界だけでなく、約208mm、約
245mm、約275.5mmなど、個々の値、および約225mm~約990mm、約
235mm~約280mmなどの下位範囲も含むと解釈されたい。さらに、値を説明する
ために「約」および/または「実質的に」が使われる場合、それらは記載された値からの
わずかな変動(±10%以下)を含むことを意味する。
【0164】
いくつかの例が詳細に説明されているが、開示された例は変更されてもよいことを理解
されたい。したがって、前述の説明は非限定的であると見なされるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B