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  • 特許-併用される抗真菌剤 図1
  • 特許-併用される抗真菌剤 図2
  • 特許-併用される抗真菌剤 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】併用される抗真菌剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/58 20060101AFI20241021BHJP
   A61K 31/427 20060101ALI20241021BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20241021BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20241021BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20241021BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241021BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241021BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20241021BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241021BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
A61K31/58
A61K31/427
A61K31/496
A61K31/506
A61K31/7048
A61K45/00
A61P11/00
A61P31/10
A61P43/00 121
A61P31/04
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022205904
(22)【出願日】2022-12-22
(62)【分割の表示】P 2020504267の分割
【原出願日】2018-04-04
(65)【公開番号】P2023030113
(43)【公開日】2023-03-07
【審査請求日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】62/483,647
(32)【優先日】2017-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519363018
【氏名又は名称】サイネクシス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】アングロ・ゴンザレス,デイビット・エー
【審査官】今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-530593(JP,A)
【文献】国際公開第2010/019203(WO,A1)
【文献】Antimicrobial Agents and Chemotherapy,2013年,57,1065-1068
【文献】Journal of Antimicrobial Chemotherapy,2016年,71,3135-3147
【文献】Antimicrobial Agents and Chemotherapy,2013年,57,4656-4663
【文献】Journal of Infectious Diseases,2003年,187,1834-1843
【文献】Antimicrobial Agents and Chemotherapy,2013年,57,5778-5780
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスペルギルス感染の治療又は予防を必要とする対象におけるアスペルギルス感染の治療方法又は予防方法において使用するための医薬組み合わせ物であって、(a)下記式(II)の化合物:
【化1】
(II)
[それは、(1S,4aR,6aS,7R,8R,10aR,10bR,12aR,14R,15R)-15-[[2-アミノ-2,3,3-トリメチルブチル]オキシ]-8-[(1R)-1,2-ジメチルプロピル]-14-[5-(4-ピリジニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル]-1,6,6a,7,8,9,10,10a,10b,11,12,12a-ドデカヒドロ-1,6a,8,10a-テトラメチル-4H-1,4a-プロパノ-2H-フェナントロ[1,2-c]ピラン-7-カルボン酸である。]又は当該化合物の薬学的に許容される塩である第1の治療剤;及び
(b)ポサコナゾール又はアムホテリシンBである第2の治療剤を含む前記医薬組み合わせ物
【請求項2】
前記第1の治療剤が、下記式(IIa)の化合物:
【化2】
(IIa)
[それは、(1S,4aR,6aS,7R,8R,10aR,10bR,12aR,14R,15R)-15-[[(2R)-2-アミノ-2,3,3-トリメチルブチル]オキシ]-8-[(1R)-1,2-ジメチルプロピル]-14-[5-(4-ピリジニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル]-1,6,6a,7,8,9,10,10a,10b,11,12,12a-ドデカヒドロ-1,6a,8,10a-テトラメチル-4H-1,4a-プロパノ-2H-フェナントロ[1,2-c]ピラン-7-カルボン酸である。]又は当該化合物の薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の医薬組み合わせ物
【請求項3】
請求項1又は2に記載の医薬組み合わせ物であって、アスペルギルス感染の治療を必要とする対象において該医薬組み合わせ物が当該治療に有効となる量の第1の治療剤及び第2の治療剤を含む、前記医薬組み合わせ物
【請求項4】
請求項1又は2に記載の医薬組み合わせ物であって、アスペルギルス感染の予防を必要とする対象において該医薬組み合わせ物が当該予防に有効となる量の第1の治療剤及び第2の治療剤を含む、前記医薬組み合わせ物
【請求項5】
請求項1又は2に記載の医薬組み合わせ物であって、浸潤性肺アスペルギルス症の治療を必要とする対象において該医薬組み合わせ物が当該治療に有効となる量の第1の治療剤及び第2の治療剤を含む、前記医薬組み合わせ物
【請求項6】
請求項1又は2に記載の医薬組み合わせ物であって、浸潤性肺アスペルギルス症の予防を必要とする対象において該医薬組み合わせ物が当該予防に有効となる量の第1の治療剤及び第2の治療剤を含む、前記医薬組み合わせ物
【請求項7】
浸潤性肺アスペルギルス症の治療を必要とする対象での該治療の方法において使用するための医薬組み合わせ物であって、該方法が、
(a)下記式(II)の化合物:
【化3】
(II)
[それは、(1S,4aR,6aS,7R,8R,10aR,10bR,12aR,14R,15R)-15-[[2-アミノ-2,3,3-トリメチルブチル]オキシ]-8-[(1R)-1,2-ジメチルプロピル]-14-[5-(4-ピリジニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル]-1,6,6a,7,8,9,10,10a,10b,11,12,12a-ドデカヒドロ-1,6a,8,10a-テトラメチル-4H-1,4a-プロパノ-2H-フェナントロ[1,2-c]ピラン-7-カルボン酸である。]又はそれの薬学的に許容される塩である第1の治療剤;及び
(b)ポサコナゾール又はアムホテリシンBである第2の治療剤
医薬組み合わせ物を対象に投与することを含む、前記医薬組み合わせ物
【請求項8】
前記第1の治療剤が、下記式(IIa)の化合物:
【化4】
(IIa)
[それは、(1S,4aR,6aS,7R,8R,10aR,10bR,12aR,14R,15R)-15-[[(2R)-2-アミノ-2,3,3-トリメチルブチル]オキシ]-8-[(1R)-1,2-ジメチルプロピル]-14-[5-(4-ピリジニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル]-1,6,6a,7,8,9,10,10a,10b,11,12,12a-ドデカヒドロ-1,6a,8,10a-テトラメチル-4H-1,4a-プロパノ-2H-フェナントロ[1,2-c]ピラン-7-カルボン酸である。]又は当該化合物の薬学的に許容される塩である、請求項7に記載の使用のための医薬組み合わせ物
【請求項9】
前記第1の治療剤を前記第2の治療剤と順次に投与する、請求項7又は8に記載の使用のための医薬組み合わせ物
【請求項10】
前記第1の治療剤を前記第2の治療剤と同時に投与する、請求項7又は8に記載の使用のための医薬組み合わせ物
【請求項11】
アスペルギルスに感染した対象においてアスペルギルス属種の細胞壁由来のガラクトマンナンレベルを低下させる方法に使用するための医薬組み合わせ物であって、
(a)下記式(II)の化合物:
【化5】
(II)
[それは、(1S,4aR,6aS,7R,8R,10aR,10bR,12aR,14R,15R)-15-[[2-アミノ-2,3,3-トリメチルブチル]オキシ]-8-[(1R)-1,2-ジメチルプロピル]-14-[5-(4-ピリジニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル]-1,6,6a,7,8,9,10,10a,10b,11,12,12a-ドデカヒドロ-1,6a,8,10a-テトラメチル-4H-1,4a-プロパノ-2H-フェナントロ[1,2-c]ピラン-7-カルボン酸である。]又は当該化合物の薬学的に許容される塩である第1の治療剤;及び
(b)ポサコナゾール又はアムホテリシンBである第2の治療剤
を含む前記医薬組み合わせ物
【請求項12】
前記第1の治療剤が、下記式(IIa)の化合物:
【化6】
(IIa)
[それは、(1S,4aR,6aS,7R,8R,10aR,10bR,12aR,14R,15R)-15-[[(2R)-2-アミノ-2,3,3-トリメチルブチル]オキシ]-8-[(1R)-1,2-ジメチルプロピル]-14-[5-(4-ピリジニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル]-1,6,6a,7,8,9,10,10a,10b,11,12,12a-ドデカヒドロ-1,6a,8,10a-テトラメチル-4H-1,4a-プロパノ-2H-フェナントロ[1,2-c]ピラン-7-カルボン酸である。]又は当該化合物の薬学的に許容される塩である、請求項11に記載の医薬組み合わせ物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真菌疾患を治療するためのアゾール類、ポリエン類、リポペプチド類及びア
リルアミド類などの他の抗真菌剤と組み合わせたエンフマファンギン誘導体トリテルペノ
イド抗真菌化合物の使用に関するものである。詳細には、本発明は、カビによって引き起
こされる感染の治療及び/又は予防のための、カビに対して活性を有するカビ活性剤など
の他の抗真菌剤、例えばボリコナゾール、イサブコナゾール、ポサコナゾール、イトラコ
ナゾール、及びアムホテリシンB(これらに限定されるものではない)と組み合わせた、
(1,3)-β-D-グルカン合成の阻害剤であるエンフマファンギン誘導体トリテルペ
ノイド類(又はそれの薬学的に許容される塩)の抗真菌剤組み合わせに関するものである
【背景技術】
【0002】
カビによって生じる真菌感染は、主要な保健上の問題であり、関連する死亡率は高い。
【0003】
いくつかのカビ、例えばアスペルギルス(Aspergillus)属種、接合菌、フサ
リウム(Fusarium)属種、及びスケドスポリウム(Scedosporium)
属種が、全身真菌感染を引き起こし得る。これらのうち、アスペルギルス(Asperg
illus)属種が最も一般的であり、症例の約85%を占める。浸潤性肺アスペルギル
ス症は、免疫不全患者にとっては生命にかかわる感染であり、病原体(アスペルギルス(
Aspergillus)属種)に対する活性を有する抗真菌剤が使えるにも拘わらず死
亡率が高い(範囲20~40%)。浸潤性アスペルギルス症に対する第1の推奨の治療選
択肢は、カビ活性アゾール系抗真菌剤(例えば、ボリコナゾール、イサブコナゾール、ポ
サコナゾール、及びイトラコナゾール)である。アムホテリシンB製剤は、かなりの腎臓
毒性のため第2の選択肢である。カビ活性抗真菌剤が使えるにも拘わらず、治療成績は至
適ではなく、高頻度の治療不首尾である場合が多く、死亡に至ることが多い。
【0004】
さらに、アゾール抵抗性アスペルギルス(Aspergillus)属種が発生してお
り、それがさらに患者の治療選択肢を制限している。異なる及びより効果的な治療アプロ
ーチが必要であり、併用療法が重要な役割を果たし得る。併用療法は、有効であるために
は、一緒に投与した場合、単独療法と比較して、抗真菌効力を高め、毒性を低減させ、よ
り早く治癒させ、抵抗性の発生を予防若しくは回避し、及び/又はより広いスペクトルの
抗真菌活性を提供し得る相乗的相互作用を示す抗真菌剤を含むべきである。しかしながら
、併用療法は、拮抗的相互作用があると有害でもあり得て、抗真菌効力が低下し、毒性が
高くなり得る。
【0005】
エンフマファンギンは、ジュニペラス・コミュニス(Juniperus commu
nis)の生存葉関連のホルモネマ(Hormonema)属種の発酵で産生されるヘミ
アセタールトリテルペングリコシドである(米国特許第5,756,472号;Pela
ez et al., Systematic and Applied Microb
iology, 23:333-343, 2000; Schwartz et al
., JACS, 122:4882-4886, 2000; Schwartz,
R.E., Expert Opinion on Therapeutic Pate
nts, 11(11):1761-1772, 2001)。エンフマファンギンは、
イン・ビトロで抗真菌活性を有するいくつかのトリテルペングリコシドの一つである。エ
ンフマファンギン及び他の抗真菌トリテルペノイドグリコシド類の抗真菌作用機序は、(
1,3)-β-D-グルカンシンターゼに対する特異的作用による真菌細胞壁グルカン合
成の阻害であることが確認された(Onishi et al., Antimicro
bial Agents and Chemotherapy, 44:368-377
, 2000; Pelaez et al., Systematic and Ap
plied Microbiology, 23:333-343, 2000)。(1
,3)-β-D-グルカンシンターゼは、多くの病原性真菌に存在することで、広い抗真
菌スペクトルを与えることから、現在もなお抗真菌薬作用の魅力的な標的であり;さらに
、哺乳動物で対応するものがなく、結果的に、これらの化合物は、機序に基づく毒性をほ
とんど持たない。本発明に関連するエンフマファンギンのトリテルペノイド化合物誘導体
は、他のグルカンシンターゼ阻害剤(例えば、リポペプチド剤、例えばエキノカンジン類
)に対して抵抗性である真菌単離物に対して活性を示しており、それはエンフマファンギ
ン誘導体の生物及び分子標的が他のグルカンシンターゼ阻害剤の標的と異なることを示し
ている。
【0006】
各種エンフマファンギン誘導体は、例えば国際特許公開番号WO2007/12690
0及びWO2007/127012に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第5,756,472号
【文献】WO2007/126900
【文献】WO2007/127012
【非特許文献】
【0008】
【文献】Pelaez et al., Systematic and Applied Microbiology, 23:333-343, 2000
【文献】Schwartz et al., JACS, 122:4882-4886, 2000
【文献】Schwartz, R.E., Expert Opinion on Therapeutic Patents, 11(11):1761-1772, 2001
【文献】Onishi et al., Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 44:368-377, 2000
【文献】Pelaez et al., Systematic and Applied Microbiology, 23:333-343, 2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
過去の研究によって、アスペルギルス(Aspergillus)属種感染の治療に関
して、併用での他の抗真菌剤の効力が評価されているが、最終的に、転帰の改善は示さな
かった(Marr K, et al., Ann Intern Med. 2015
;162:81-89)。使用可能な抗真菌剤の併用療法によるこれらの準最適の転帰は
、長期使用(長期使用は多くの場合、カビ感染の治療に必要である)を制限する経口製剤
(例えば、エキノカンジン類及びアムホテリシンBに関して)が使えないこと、及び特に
アゾール類(アスペルギルス(Aspergillus)感染に対する経口及びIV投与
に利用可能な唯一の薬剤)に対する抵抗性の発生に関係するものであり得る。カビ感染治
療に現在使用可能な抗真菌剤の他の制限には、アゾール類の薬物-薬物相互作用の高リス
ク、及びアムホテリシンB関連の腎臓毒性などがある。カビ感染の治療に必要な、真菌感
染についての治癒及び生存転帰を改善し、長期併用療法に好適である抗真菌剤組み合わせ
が、当業界において必要とされている。アムホテリシンB及びアゾール類の使用を減らす
ことで(例えば、1日用量の低減又は治療期間の短縮によって)、関連する毒性のリスク
を低下させ得る組み合わせで使用される安全かつ効果的な抗真菌剤も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、カビ感染の治療及び/又は予防のための、他のカビ活性抗真菌剤と併用され
るエンフマファンギン誘導体に関するものである。エンフマファンギン誘導体及びそれの
薬学的に許容される塩は、(1,3)-β-D-グルカンシンターゼの阻害において有用
であり、アスペルギルス(Aspergillus)、ケカビ、フサリウム、及びスケド
スポリウム(Scedosporium)属種など(これらに限定されるものではない)
の各種病原体の1以上によって生じるカビ感染の予防又は治療において他のカビ活性剤と
の併用に有用である。少なくとも、エンフマファンギン誘導体がアゾール抵抗性アスペル
ギルス(Aspergillus)属種に対して活性であり、静注及び経口の両方で投与
可能であり、薬剤-薬剤相互作用のリスクが非常に低く、本明細書に記載のそれらの併用
が他の抗真菌化合物及び組み合わせの限界を克服するものであることから、本発明は上記
のものなどの当業界におけるニーズを扱うものである。
【0011】
本発明は、
(a)下記式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩:
【化1】
【0012】
[式中、
XはO又はH、Hであり;
Reは、C(O)NRfRg又は1個若しくは2個の窒素原子を含む6員環ヘテロアリ
ール基であり、前記ヘテロアリール基は、環炭素上でフルオロ若しくはクロロによって、
又は環窒素上で酸素によってモノ置換されていても良く;
Rf、Rg、R6及びR7はそれぞれ独立に、水素又はC1-C3アルキルであり;
R8は、C1-C4アルキル、C3-C4シクロアルキル又はC4-C5シクロアルキ
ル-アルキルであり;
R9はメチル又はエチルであり;
R8及びR9が一体となって、1個の酸素原子を含む6員飽和環を形成していても良い
。];及び
(b)第2の抗真菌剤、例えばカビに対して活性を有するカビ活性剤、例えば抗真菌ア
ゾール化合物又はポリエン、例えばアムホテリシンB
の組み合わせを提供する。
【0013】
本発明は、第2の抗真菌剤と組み合わせて式(I)の化合物を用いる、患者における真
菌感染の治療又は予防方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】抗真菌剤で処理していない(対照)、又は次にSCY-078単独で、イサブコナゾール単独で、若しくはSCY-078とイサブコナゾールの組み合わせで処理した、アスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigatus)単離物を接種したニュージーランドホワイトウサギの試験からの累積生存確率を示すグラフである。
図2図1で言及した試験からの肺梗塞スコアを示すグラフである。
図3図1で言及した試験からのウサギからの血清中で検出されたガラクトマンナン抗原レベルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、
(a)下記式(I)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩:
【化2】
【0016】
[式中、
XはO又はH、Hであり;
Reは、C(O)NRfRg又は1個若しくは2個の窒素原子を含む6員環ヘテロアリ
ール基であり、前記ヘテロアリール基は、環炭素上でフルオロ若しくはクロロによって、
又は環窒素上で酸素によってモノ置換されていても良く;
Rf、Rg、R6及びR7はそれぞれ独立に、水素又はC1-C3アルキルであり;
R8は、C1-C4アルキル、C3-C4シクロアルキル又はC4-C5シクロアルキ
ル-アルキルであり;
R9はメチル又はエチルであり;
R8及びR9が一体となって、1個の酸素原子を含む6員飽和環を形成していても良い
。];及び
(b)第2の抗真菌剤、例えばカビに対して活性を有するカビ活性剤、例えば抗真菌ア
ゾール化合物又はポリエン、例えばアムホテリシンB
の組み合わせを提供する。
【0017】
本発明は、
(a)下記式(Ia)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩:
【化3】
【0018】
[式中、置換基は式(I)で提供の通りである。];及び
(b)第2の抗真菌剤、例えばカビに対して活性を有するカビ活性剤、例えば抗真菌ア
ゾール化合物又はポリエン、例えばアムホテリシンB
の組み合わせも提供する。
【0019】
実施形態1において:XはH、Hであり、他の置換基は式(I)で提供の通りである。
【0020】
実施形態2において:Reは、環炭素でフルオロ若しくはクロロによって、又は環窒素
で酸素によってモノ置換されていても良いピリジル又はピリミジルであり、他の置換基は
実施形態1又は式(I)で提供の通りである。
【0021】
実施形態3において:Reは4-ピリジルであり、他の置換基は実施形態1又は式(I
)で提供の通りである。
【0022】
実施形態4において:ReはC(O)NH2又はC(O)NH(C1-C3アルキル)
であり、他の置換基は実施形態1又は式(I)で提供の通りである。
【0023】
実施形態5において:R8はC1-C4アルキルであり、R9はメチルであり、他の置
換基は実施形態1、2、3若しくは4、又は式(I)で提供の通りである。
【0024】
実施形態6において:R8はt-ブチルであり、R9はメチルであり、他の置換基は実
施形態1、2、3若しくは4又は式(I)で提供の通りである。
【0025】
実施形態7において:R6及びR7はそれぞれ独立に、水素又はメチルであり、他の置
換基は実施形態1、2、3、4、5若しくは6又は式(I)で提供の通りである。
【0026】
実施形態1′において:XはH、Hであり、他の置換基は式(Ia)で提供の通りであ
る。
【0027】
実施形態2′において:Reは、環炭素でフルオロ若しくはクロロによって又は環窒素
で酸素によってモノ置換されていても良いピリジル又はピリミジルであり、他の置換基は
実施形態1′又は式(Ia)で提供の通りである。
【0028】
実施形態3′において:Reは4-ピリジルであり、他の置換基は実施形態1′又は式
(Ia)で提供の通りである。
【0029】
実施形態4′において:ReはC(O)NH2又はC(O)NH(C1-C3アルキル
)であり、他の置換基は実施形態1′又は式(Ia)で提供の通りである。
【0030】
実施形態5′において:R8はC1-C4アルキルであり、R9はメチルであり、他の
置換基は実施形態1′、2′、3′若しくは4′又は式(Ia)で提供の通りである。
【0031】
実施形態6′において:R8はt-ブチルであり、R9はメチルであり、他の置換基は
実施形態1′、2′、3′若しくは4′又は式(Ia)で提供の通りである。
【0032】
実施形態7′において:R6及びR7はそれぞれ独立に水素又はメチルであり、他の置
換基は実施形態1′、2′、3′、4′、5′若しくは6′又は式(Ia)で提供の通り
である。
【0033】
好ましい実施形態において、本発明は、
(a)式(II)の化合物:
【化4】
【0034】
[これは、(1S,4aR,6aS,7R,8R,10aR,10bR,12aR,1
4R,15R)-15-[[2-アミノ-2,3,3-トリメチルブチル]オキシ]-8
-[(1R)-1,2-ジメチルプロピル]-14-[5-(4-ピリジニル)-1H-
1,2,4-トリアゾール-1-イル]-1,6,6a,7,8,9,10,10a,1
0b,11,12,12a-ドデカヒドロ-1,6a,8,10a-テトラメチル-4H
-1,4a-プロパノ-2H-フェナントロ[1,2-c]ピラン-7-カルボン酸であ
る。]又はそれの薬学的に許容される塩;及び
(b)ボリコナゾール、イサブコナゾール、ポサコナゾール、イトラコナゾール及びア
ムホテリシンBから選択される第2の抗真菌剤
の組み合わせを提供する。
【0035】
他の好ましい実施形態において、本発明は、
(a)式(IIa)の化合物(本明細書において、SCY-078と称される):
【化5】
【0036】
[これは、(1S,4aR,6aS,7R,8R,10aR,10bR,12aR,1
4R,15R)-15-[[(2R)-2-アミノ-2,3,3-トリメチルブチル]オ
キシ]-8-[(1R)-1,2-ジメチルプロピル]-14-[5-(4-ピリジニル
)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル]-1,6,6a,7,8,9,10,
10a,10b,11,12,12a-ドデカヒドロ-1,6a,8,10a-テトラメ
チル-4H-1,4a-プロパノ-2H-フェナントロ[1,2-c]ピラン-7-カル
ボン酸である。]又はそれの薬学的に許容される塩;
(b)ボリコナゾール、イサブコナゾール、ポサコナゾール、イトラコナゾール及びア
ムホテリシンBから選択される第2の抗真菌剤
の組み合わせを提供する。
【0037】
他の好ましい実施形態において、本発明は、式(II)の化合物のクエン酸塩、及びボ
リコナゾール、イサブコナゾール、ポサコナゾール、イトラコナゾール及びアムホテリシ
ンBから選択される第2の抗真菌剤の組み合わせを提供する。
【0038】
他の好ましい実施形態において、本発明は、式(IIa)の化合物のクエン酸塩、及び
ボリコナゾール、イサブコナゾール、ポサコナゾール、イトラコナゾール及びアムホテリ
シンBから選択される第2の抗真菌剤の組み合わせを提供する。
【0039】
本発明の他の実施形態には、下記のものなどがある。
【0040】
(aa)式(I)、(Ia)、(II)若しくは(IIa)の化合物又はそれの薬学的
に許容される塩、及び担体、補助剤若しくは媒体を含む組成物;及び第2の治療剤の組み
合わせ。
【0041】
(bb)式(I)、(Ia)、(II)若しくは(IIa)の化合物又はそれの薬学的
に許容される塩、及び薬学的に許容される担体、補助剤若しくは媒体を含む医薬組成物;
及び第2の治療剤の組み合わせ。
【0042】
(cc)第2の治療剤がアゾール、ポリエン、プリン若しくはピリミジンヌクレオチド
阻害剤、オロトミド、Gwt1阻害剤、ニューモカンジン若しくはエキノカンジン誘導体
、タンパク質伸長因子阻害剤、キチン阻害剤、マンナン阻害剤、殺菌/透過性誘発(BP
I)タンパク質産生物、又は免疫調節剤である、(bb)の組み合わせ。
【0043】
(dd)第2の治療剤がイトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、フルコナ
ゾール、ボリコナゾール、ポサコナゾール、アムホテリシンB、フルシトシン、アニデュ
ラファンギン、ミカファンギン、又はカスポファンギンである、(cc)の組み合わせ。
【0044】
(ee)式(I)、(Ia)、(II)若しくは(IIa)の化合物又はそれの薬学的
に許容される塩;及び第2の治療剤である医薬組み合わせであって、前記化合物(又はそ
れの薬学的に許容される塩)及び第2の治療剤が、真菌感染及び/又は細菌感染の治療又
は予防に有効な組み合わせとする量で用いられている医薬組み合わせ。
【0045】
(ff)第2の治療剤がアゾール、ポリエン、プリン若しくはピリミジンヌクレオチド
阻害剤、オロトミド、Gwt1阻害剤、ニューモカンジン若しくはエキノカンジン誘導体
、タンパク質伸長因子阻害剤、キチン阻害剤、マンナン阻害剤、殺菌/透過性誘発(BP
I)タンパク質産生物、又は免疫調節剤である、(ee)の組み合わせ。
【0046】
(gg)第2の治療剤がイトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、フルコナ
ゾール、ボリコナゾール、ポサコナゾール、アムホテリシンB、フルシトシン、アニデュ
ラファンギン、ミカファンギン、又はカスポファンギンである、(ff)の組み合わせ。
【0047】
(hh)処置を必要とする対象者におけるカビ感染の治療又は予防方法であって、当該
対象者に対して、式(I)、(Ia)、(II)若しくは(IIa)の化合物又はそれの
薬学的に許容される塩である第1の治療剤;及び真菌感染及び/又は細胞感染に対して有
効である第2の治療剤の組み合わせを投与することを含む方法。
【0048】
(ii)第2の治療剤がアゾール、ポリエン、プリン若しくはピリミジンヌクレオチド
阻害剤、オロトミド、Gwt1阻害剤、ニューモカンジン若しくはエキノカンジン誘導体
、タンパク質伸長因子阻害剤、キチン阻害剤、マンナン阻害剤、殺菌/透過性誘発(BP
I)タンパク質産生物、又は免疫調節剤である(hh)の方法、
(jj)第2の治療剤がイトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、フルコナ
ゾール、ボリコナゾール、ポサコナゾール、アムホテリシンB、フルシトシン、アニデュ
ラファンギン、ミカファンギン、又はカスポファンギンである、(hh)の方法。
【0049】
(kk)前記第1の治療剤を、第2の治療剤と順次又は同時に投与する、(hh)の方
法。
【0050】
(ll)前記治療剤を静脈、経口及び/又は局所投与する、(hh)の方法。
【0051】
(mm)前記カビ感染がアスペルギロシス(Aspergillosis)属種によっ
て引き起こされる、(hh)の方法。
【0052】
(nn)処置を必要とする対象者での浸潤性肺アスペルギルス症の治療又は予防方法で
あって、当該対象者に対して、式(I)、(Ia)、(II)若しくは(IIa)の化合
物又はそれの薬学的に許容される塩である第1の治療剤;及び真菌感染及び/又は細菌感
染に対して有効である第2の治療剤の組み合わせを投与することを含む方法。
【0053】
(oo)第2の治療剤がアゾール、ポリエン、プリン若しくはピリミジンヌクレオチド
阻害剤、オロトミド、Gwt1阻害剤、ニューモカンジン若しくはエキノカンジン誘導体
、タンパク質伸長因子阻害剤、キチン阻害剤、マンナン阻害剤、殺菌/透過性誘発(BP
I)タンパク質産生物、又は免疫調節剤である、(nn)の方法。
【0054】
(pp)第2の治療剤がイトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、フルコナ
ゾール、ボリコナゾール、イサブコナゾール、ポサコナゾール、アムホテリシンB、フル
シトシン、アニデュラファンギン、ミカファンギン、又はカスポファンギンである、(n
n)の方法。
【0055】
(qq)前記第1の治療剤を第2の治療剤と順次又は同時に投与する、(nn)の方法
【0056】
(rr)前記治療剤を静脈、経口及び/又は局所投与する、(nn)の方法。
【0057】
(ss)処置を必要とする対象者での真菌及び/又はカビ感染の治療方法であって、当
該対象者に対して、治療上有効量の式(I)、(Ia)、(II)若しくは(IIa)の
化合物又はそれの薬学的に許容される塩、及び担体、補助剤若しくは媒体;及び第2の抗
真菌剤(当該組み合わせは相乗的である)を投与することを含む方法。
【0058】
本発明は、処置を必要とするガラクトマンナン(アスペルギルス(Aspergill
us)属種の細胞壁の成分)のレベルを低下させる方法であって、当該対象者に対して、
式(I)、(Ia)、(II)若しくは(IIa)の化合物又はそれの薬学的に許容され
る塩である第1の治療剤;及び真菌感染及び/又は細菌感染に対して有効である第2の治
療剤の組み合わせを投与することを含む方法に関するものでもある。ある種の実施形態に
おいて、第1の治療剤は、式(II)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩であり;
第2の治療剤はボリコナゾール、イサブコナゾール、ポサコナゾール、イトラコナゾール
、又はアムホテリシンBである。さらなる実施形態において、第1の治療剤は式(IIa
)の化合物又はそれの薬学的に許容される塩であり;第2の治療剤はボリコナゾール、イ
サブコナゾール、ポサコナゾール、イトラコナゾール、又はアムホテリシンBである。対
象者におけるガラクトマンナンレベルは、例えば、対象者から採取した血液検体からの血
清若しくは結晶中のガラクトマンナンを測定することで、又は気管支肺胞洗浄によって測
定することができる。
【0059】
本発明は、処置を必要とする対象者でのカビ感染の治療若しくは予防で使用される、そ
のための医薬として使用される、若しくはそのための医薬製造で使用される;又は処置を
必要とする対象者での浸潤性肺アスペルギルス症の治療若しくは予防で使用される、その
ための医薬として使用される、若しくはそのための医薬製造で使用されるいずれかの前記
組み合わせも含む。
【0060】
上記実施形態における化合物の説明において、示された置換は、当該置換基が、定義と
適合する安定な化合物を提供する程度までしか含まれるものではない。
【0061】
式(I)、(Ia)、(II)及び(IIa)の化合物、及びそれらの薬学的に許容さ
れる塩及び/又は水和物型は、酵母並びに他の真菌、例えばアクレモニウム、アブシディ
ア(例えば、アブシディア・コリムビフェラ(Absidia corymbifera
))、アルテルナリア、アスペルギルス(Aspergillus)(例えば、アスペル
ギルス・クラバツス(Aspergillus clavatus)、アスペルギルス・
フラバス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・フミガツス(A
spergillus fumigatus)、アスペルギルス・ニヅランス(Aspe
rgillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillu
s niger)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreu
s)、及びアスペルギルス・ベルシコロル(Aspergillus versicol
or)、ビポラリス、ブラストミセス(例えば、ブラストミセス・デルマチチディス(B
lastomyces dermatitidis))、ブラストスキゾミセス(Bla
stoschizomyces)(例えば、ブラストスキゾミセス・カピタツス(Bla
stoschizomyces capitatus))、カンジダ(例えば、カンジダ
・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・グラブラタ(Can
dida glabrata)(トルロプシス・グラブラタ(Torulopsis g
labrata))、カンジダ・ギリエルモンジ(Candida guillierm
ondii)、カンジダ・ケフィル(Candida kefyr)、カンジダ・クルセ
イ(Candida krusei)、カンジダ・ルシタニアエ(Candida lu
sitaniae)、カンジダ・パラプシロシス(Candida parapsilo
sis)、カンジダ・シュードトロピカリス(Candida pseudotropi
calis)、カンジダ・ステラトイデア(Candida stellatoidea
)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・ウ
チリス(Candida utilis)、カンジダ・リポリチカ(Candida l
ipolytica)、カンジダ・ファマタ(Candida famata)及びカン
ジダ・ルゴサ(Candida rugosa))、クラドスポリウム(例えば、クラド
スポリウム・カリオニイ(Cladosporium carrionii)及びクラド
スポリウム・トリクロイデス(Cladosporium trichloides)、
コクシジオイデス(例えば、コクシジオイデス・イミティス(Coccidioides
immitis))、クリプトコッカス(例えば、クリプトコッカス・ネオフォルマン
ス(Cryptococcus neoformans))、カーブラリア、クニングハ
メラ(例えば、クニングハメラ・エレガンス(Cunninghamella eleg
ans))、皮膚糸状菌、エクソフィアラ(例えば、エクソフィアラ・デルマチチディス
(Exophiala dermatitidis)及びエクソフィアラ・スピニフェラ
(Exophiala spinifera)、表皮菌(例えば、エピデルモフィトン・
フロッコスム(Epidermophyton floccosum))、フォンセセア
(例えば、フォンセセア・ペドロソイ(Fonsecaea pedrosoi))、フ
サリウム(例えば、フサリウム・ソラニ(Fusarium solani))、ゲオト
リカム(例えば、ゲオトリカム・カンジダム(Geotrichum candidum
)及びゲオトリカム・クラバツム(Geotrichum clavatum))、ヒス
トプラズマ(例えば、ヒストプラズマ・カプスラタム変種カプスラタム(Histopl
asma capsulatum var. capsulatum)、マラセジア(例
えば、マラセジア・フルフル(Malassezia furfur))、小胞子菌(例
えば、ミクロスポラム・カニス(Microsporum canis)及びミクロスポ
ラム・ジプセウム(Microsporum gypseum))、ケカビ、パラコクシ
ディオイデス(例えば、パラコクシディオイデス・ブラジリエンシス(Paracocc
idioides brasiliensis))、ペニシリウム(例えば、ペニシリウ
ム・マルネフェイ(Penicillium marneffei))、フィアロフォラ
、ピチロスポルム・オバレ(Pityrosporum ovale)、ニューモシステ
ィス(例えば、ニューモシスティス・カリニ(Pneumocystis carini
i))、シューダレシェリア(例えば、シューダレシェリア・ボイジ(Pseudall
escheria boydii))、リゾプス(例えば、リゾプス・ミクロスポルム変
種リゾポジフォルミス(Rhizopus microsporus var. rhi
zopodiformis)及びリゾプス・オリザエ(Rhizopus oryzae
))、サッカロミセス(例えば、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomy
ces cerevisiae))、スケドスポリウム(Scedosporium)(
例えば、スケドスポリウム・アピオスペルム(Scedosporium apiosp
erum))、スコプラリオプシス、スポロトリックス(例えば、スポロトリックス・シ
ェンキ(Sporothrix schenckii))、トリコデルマ、白癬菌(例え
ば、トリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagr
ophytes)及びトリコフィトン・ルブラム(Trichophyton rubr
um))、及びトリコスポロン(例えば、トリコスポロン・アサヒイ(Trichosp
oron asahii)、トリコスポロン・ベイゲリイ(Trichosporon
beigelii)及びトリコスポロン・クタネウム(Trichosporon cu
taneum))の1以上に対する抗菌(例えば抗真菌)活性を有する。当該化合物は、
全身ヒト病原性カビ感染を引き起こす生物に対して有用であるだけでなく、トリコデルマ
属種及び他のカンジダ属種などの表在性真菌感染を引き起こす生物に対しても有用である
。その化合物は、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)
、アスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigatus)、カン
ジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・パラプシロシス
(Candida parapsilosis)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス
(Cryptococcus neoformans)、サッカロミセス・セレビシアエ
(Saccharomyces cerevisiae)、及びトリコフィトン・メンタ
グロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)に対して特
に有効である。
【0062】
抗真菌活性を考慮すると、式(I)、(Ia)、(II)及び(IIa)の化合物、及
びそれの薬学的に許容される塩及び/又は水和物型は、皮膚、眼球、毛髪、爪、口腔粘膜
、消化管、気管支、肺、心内膜、脳、髄膜、泌尿器、子宮膣部、口腔、眼、全身、腎臓、
気管支、心臓、外耳道、骨、鼻腔、副鼻腔、脾臓、肝臓、皮下組織、リンパ管、胃腸、関
節、筋肉、腱、肺の間質性形質細胞、血液などでの表在性、皮膚及び全身のカビ感染の1
以上の治療及び/又は予防に有用である。
【0063】
従って、式(I)、(Ia)、(II)及び(IIa)の化合物、及びそれの薬学的に
許容される塩及び/又は水和物型は、1以上の各種感染疾患、例えば皮膚糸状菌症(例え
ば、白癬症、白癬感染又は白癬感染症)、水虫、爪周囲炎、癜風、紅色陰癬、間擦疹、真
菌性おむつ皮膚炎、カンジダ外陰炎、カンジダ性亀頭炎、外耳道炎、カンジダ症(皮膚及
び皮膚粘膜)、慢性粘膜カンジダ症(chronic mucocandidiasis
)(例えば、鵞口瘡及び膣カンジダ症)、クリプトコッカス症、ジオトリクム症、砂毛症
、アスペルギロシス(Aspergillosis)、ペニシリウム症、フサリウム症、
接合菌症、スポロトリクム症、クロモミコーシス、コクシジオイデス症、ヒスとプラズマ
症、ブラストミセス症、パラコクシジオイデス症、シュードアレシェリア症(pseud
allescheriosis)、菌腫、真菌性角膜炎、耳真菌症、ニューモシスチス症
、及び真菌血症の予防及び治療に有用である。当該化合物は、全身及び局所真菌感染を予
防するための予防薬として用いることもできる。予防薬としての使用は、例えば、免疫不
全患者(例えば、AIDS患者、がん療法を受ける患者又は移植患者)での感染の予防に
おける選択的腸除染法の一部として適切であり得る。抗生物質治療中の真菌過剰増殖の防
止も、一部の疾患症候群又は医原性状態において望ましい可能性がある。
【0064】
式(I)、(Ia)、(II)及び(IIa)の化合物、及びそれの薬学的に許容され
る塩及び/又は水和物型は、米国特許第8,188,085号(その内容は、参照によっ
て全体が本明細書肉見込まれる。)で開示の合成方法に従って作ることができる。
【0065】
式(I)、(Ia)、(II)及び(IIa)の化合物及びそれの薬学的に許容される
塩及び/又は水和物型と組み合わせて用いることができるアゾール類の例には、ボリコナ
ゾール、イサブコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、ラブコ
ナゾール、デトコナゾール、クロトリマゾール、及びポサコナゾールなどがあるが、これ
らに限定されるものではない。式(I)、(Ia)、(II)及び(IIa)の化合物、
及びそれの薬学的に許容される塩及び/又は水和物型と組み合わせて用いることができる
ポリエン類の例には、アムホテリシンB、ナイスタチン、それらのリポソーム型及び脂質
型、例えばAbelcet(登録商標)、AmBisome(登録商標)、及びAmph
ocil(登録商標)などがあるが、これらに限定されるものではない。式(I)、(I
a)、(II)及び(IIa)の化合物、及びそれの薬学的に許容される塩及び/又は水
和物型と組み合わせて用いることができるプリン又はピリミジンヌクレオチド阻害剤の例
には、フルシトシン又はポリキシン類(polyxins)、例えばニッコーマイシン類
、特にはニッコーマイシンZ又はニッコーマイシンXなどがあるが、これらに限定される
ものではない。キチン阻害剤が、式(I)、(Ia)、(II)及び(IIa)の化合物
、及びそれの薬学的に許容される塩及び/又は水和物型と組み合わせて使用可能な別の種
類の治療剤である。式(I)、(Ia)、(II)及び(IIa)の化合物、及びそれの
薬学的に許容される塩及び/又は水和物型と組み合わせて用いることができる伸長因子阻
害剤の例には、ソルダリン及びそれの類縁体などがあるが、それらに限定されるものでは
ない。式(I)、(Ia)、(II)及び(IIa)の化合物、及びそれの薬学的に許容
される塩及び/又は水和物型と組み合わせて用いることができるオロトミド類の例には、
F901318などがあるが、それに限定されるものではない。式(I)、(Ia)、(
II)及び(IIa)の化合物、及びそれの薬学的に許容される塩及び/又は水和物型と
組み合わせて用いることができるGwt1阻害剤の例には、APX001などがあるが、
それに限定されるものではない。式(I)、(Ia)、(II)及び(IIa)の化合物
、及びそれの薬学的に許容される塩及び/又は水和物型と組み合わせて用いることができ
るニューモカンジン又はエキノカンジン誘導体の例には、シロフンギン、アニデュラファ
ンギン、ミカファンギン、及びカスポファンギンなどがあるが、それに限定されるもので
はない。式(I)、(Ia)、(II)及び(IIa)の化合物、及びそれの薬学的に許
容される塩及び/又は水和物型と組み合わせて用いることができるマンナン阻害剤の例に
は、プレダマイシンなどがあるが、それに限定されるものではない。式(I)、(Ia)
、(II)及び(IIa)の化合物、及びそれの薬学的に許容される塩及び/又は水和物
型と組み合わせて用いることができる殺菌/透過性誘発(BPI)タンパク質産生物の例
には、XMP.97及びXMP.127などがあるが、それらに限定されるものではない
。式(I)、(Ia)、(II)及び(IIa)の化合物、及びそれの薬学的に許容され
る塩及び/又は水和物型と組み合わせて用いることができる免疫調節剤の例には、インタ
ーフェロン類(例えば、IL-1、IL-2、IL-3及びIL-8)、ディフェンシン
類、タクロリムス及びG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)などがあるが、それらに限
定されるものではない。
【0066】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、指定範囲の炭素原子数を有す
る直鎖若しくは分岐アルキル基を指す。従って、例えば、「C1-6アルキル」(又は「
C1-C6アルキル」)は、ヘキシルアルキル及びペンチルアルキル異性体並びにn-、
イソ-、sec-及びt-ブチル、n-及びイソプロピル、エチル及びメチルの全てを指
す。別の例として、「C1-4アルキル」は、n-、イソ-、sec-及びt-ブチル、
n-及びイソプロピル、エチル及びメチルを指す。
【0067】
「シクロアルキル」という用語は、指定範囲の炭素原子数を有するアルカンの環を指す
。従って、例えば、「C3-4シクロアルキル」(又は「C3-C4シクロアルキル」)
は、シクロプロピル及びシクロブチルを指す。
【0068】
本明細書で使用される「シクロアルキル-アルキル」(又は等価に「アルキル-シクロ
アルキル」)という用語は、上記のアルキル部分を含み、上記シクロアルキル部分も含む
系を指す。「シクロアルキル-アルキル」(又は「アルキル-シクロアルキル」)への結
合は、シクロアルキル部分又はアルキル部分を介したものであることができる。「シクロ
アルキル-アルキル」系中の炭素原子の指定数は、アルキル部分及びシクロアルキル部分
の両方における炭素原子の総数を指す。C4-C5シクロアルキル-アルキルの例には、
メチルシクロプロピル、ジメチルシクロプロピル、メチルシクロブチル、エチルシクロプ
ロピル、シクロプロピルメチル、シクロプロピルエチル及びシクロブチルメチルなどがあ
るが、これらに限定されるものではない。
【0069】
「ハロゲン」(又は「ハロ」)という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す(
或いは、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードと称される)。
【0070】
本明細書で使用される「又は」という用語は、適切な場合、組み合わせることができる
選択肢を指す。
【0071】
逆の意味が明瞭に言及されていない限り、本明細書で引用されている全ての範囲は包括
的である。例えば、「1~4個のヘテロ原子」を含むと記載されている複素環は、その環
が1、2、3若しくは4個のヘテロ原子を含むことができることを意味している。やはり
理解すべき点として、本明細書で引用の範囲は、その範囲内の下位範囲の全てをそれの範
囲に包含する。従って、例えば、「1~4個のヘテロ原子」を含むと記載されている複素
環は、それの態様として、2~4個のヘテロ原子、3若しくは4個のヘテロ原子、1~3
個のヘテロ原子、2若しくは3個のヘテロ原子、1若しくは2個のヘテロ原子、1個のヘ
テロ原子、2個のヘテロ原子などを含む複素環を包含するものである。
【0072】
本明細書で定義の各種シクロアルキル及び複素環/ヘテロアリール環及び環系のいずれ
も、安定な化合物となるのであれば、いずれかの環原子(即ち、いずれかの炭素原子又は
いずれかのヘテロ原子)で化合物の残りの部分に結合していることができる。好適な5員
若しくは6員ヘテロ芳香環には、ピリジル、ピラジニル、ピリミジル、ピリダジニル及び
トリアゾリルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
「安定な」化合物は、製造・単離が可能であり、構造及び特性が変わらないか、本明細
書に記載の目的に関して化合物の使用を可能とするだけの期間にわたって未変化のままと
することができる化合物である(例えば、対象者への治療的又は予防的投与)。化合物に
ついての言及は、安定な水和物などの当該化合物の安定な錯体も含むものである。
【0074】
置換基及び置換基パターンの選択の結果として、式(I)、(Ia)、(II)及び(
IIa)の化合物のある種のものは、不斉中心を有することができ、立体異性体の混合物
として、又は個々のジアステレオマー若しくはエナンチオマーとして生じ得る。別段の断
りがない限り、これら化合物(並びにそれの薬学的に許容される塩及び/又は水和物型)
の全ての異性体型が、単離状態であるか混合物であるかを問わず、本発明の範囲に含まれ
る。本発明の範囲に含まれるものには、描かれている化合物(及びそれの薬学的に許容さ
れる塩及び/又は水和物型)の互変異型もある。
【0075】
いずれかの可変要素が、いずれかの構成要素又は式(I)、(Ia)、(II)若しく
は(IIa)で複数ある場合、各場合でのそれの定義は、あらゆる他の場合でのそれの定
義から独立である。さらに、置換基及び/又は可変要素の組み合わせは、そのような組み
合わせによって安定な化合物となる場合に限って許容される。
【0076】
「置換された」という用語は、そのような単一及び複数置換(同一部位での複数置換を
含む)が化学的に許容される程度まで、記載の置換基によるモノ置換及び多置換を含む。
【0077】
逆の意味に明瞭に記載されていない限り、記載の置換基による置換は、そのような環置換
が化学的に許容され、安定な化合物を生じる場合に、環(例えば、アリール、シクロアル
キル、ヘテロアリール、又は複素環)中のいかなる原子上でも許容される。
【0078】
本発明において、波線によって終わる結合は、置換基又は部分構造の結合箇所を表すの
に用いられる。この使用は、下記の例によって説明される。
【化6】
【0079】
式(I)、(Ia)、(II)及び(IIa)の化合物、及びそれの薬学的に許容され
る塩及び/又は水和物型は、抗真菌化合物についてのスクリーニングアッセイの準備及び
実行でも有用である。例えば、当該化合物は、さらなる抗真菌化合物を確認するための優
れたスクリーニング手段である突然変異体を単離する上で有用である。
【0080】
式(I)、(Ia)、(II)及び(IIa)の化合物は、適宜に「薬学的に許容され
る塩」又は水和物の形態で投与することができる。しかしながら、他の塩は、当該化合物
又はそれの薬学的に許容される塩の製造において有用であり得る。例えば、化合物が塩基
性アミン基を含む場合、それらはトリフルオロ酢酸塩として簡便に単離することができる
(例えば、HPLC精製に従って)。トリフルオロ酢酸塩の薬学的に許容される塩などの
他の塩への変換は、当業界で公知の多くの標準的方法によって行うことができる。例えば
、適切なイオン交換樹脂を用いて、所望の塩を発生させることができる。或いは、トリフ
ルオロ酢酸塩の親遊離アミンへの変換は、当業界で公知の標準的な方法によって行うこと
ができる(例えば、NaHCO3などの適切な無機塩基による中和)。次に、他の所望の
アミン塩は、従来法で、遊離塩基を好適な有機若しくは無機酸と反応させることで製造す
ることができる。代表的な薬学的に許容される四級アンモニウム塩には、塩酸塩、硫酸塩
、リン酸塩、炭酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、乳酸塩
、ステアリン酸塩、フマル酸塩、馬尿酸塩、マレイン酸塩、グルコン酸塩、アスコルビン
酸塩、アジピン酸塩、グルセプト酸塩、グルタミン酸塩、グルクロン酸塩(glucor
onate)、プロピオン酸塩、安息香酸塩、メシル酸塩、トシル酸塩、オレイン酸塩、
ラクトビオン酸塩、ラウリル硫酸塩、ベシル酸塩、カプリル酸塩、イセチオン酸塩、ゲン
チジン酸塩、マロン酸塩、ナプシル酸塩、エジシル酸塩、パモ酸塩、キシナホ酸塩、ナパ
ジシル酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、ケイ皮酸塩、マンデル酸塩、ウンデシ
レン酸塩及びカンシル酸塩などがある。式(I)、(Ia)、(II)及び(IIa)の
化合物の多くが、酸性のカルボン酸部分を有しており、その場合、それの好適な薬学的に
許容される塩には、アルカリ金属塩、例えばナトリウム塩若しくはカリウム塩;アルカリ
土類金属塩、例えばカルシウム塩若しくはマグネシウム塩;及び好適な有機配位子ととも
に形成される塩、例えば四級アンモニウム塩などがあり得る。
【0081】
本発明は、それの範囲内に、式(I)、(Ia)、(II)及び(IIa)のプロドラ
ッグの使用を含む。概して、そのようなプロドラッグは、イン・ビボで必要な化合物に容
易に変換可能である当該化合物の官能性誘導体であろう。従って、本発明の治療方法にお
いて、「投与する」という用語は、具体的に開示されている化合物又は患者への投与後に
イン・ビボでその特定の化合物に変換される化合物で記載されている各種状態の治療を包
含する。好適なプロドラッグ誘導体の選択及び製造のための従来の手順が、例えば、″D
esign of プロドラッグs,″ ed. H. Bundgaard, Els
evier, 1985(参照によって全体が本明細書に組み込まれる)に記載されてい
る。式(I)、(Ia)、(II)及び(IIa)の化合物の代謝物には、化合物の生物
環境への導入時に産生される活性化学種などがある。
【0082】
「投与」という用語及びそれの変形形態(例えば、化合物「を投与する」)は、化合物
又はその化合物のプロドラッグを、治療を必要とする対象者に提供することを意味する。
【0083】
式(I)、(Ia)、(II)及び(IIa)の化合物若しくはそれの薬学的に許容され
る塩又はそれの水和物若しくはプロドラッグが第2の活性剤(例えば、真菌及び/又は細
菌感染の治療に有用な他の抗真菌剤及び/又は抗菌剤)と組み合わせて提供される場合、
「投与」及びそれの変形形態はそれぞれ、当該化合物(又はそれの塩、水和物若しくはプ
ロドラッグ)及び他の活性剤の同時及び順次提供を含むものと理解される。
【0084】
本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、特定の成分を含む製造物、並び
に特定成分を組み合わせることで直接又は間接に得られる製造物を包含するものである。
【0085】
「薬学的に許容される」は、医薬組成物の成分が互いに適合し、被投与者に対して有害
ではないものでなければならないことを意味する。
【0086】
本明細書で使用される「対象者」(或いは、本明細書においては、「患者」と称される
)という用語は、治療、観察若しくは実験の対象であった動物、好ましくは哺乳動物、最
も好ましくはヒトを指す。
【0087】
「相乗的」という用語は、障害を予防、管理若しくは治療する上での、第2の活性抗真
菌剤と組み合わせて提供される、効果が個々の療法薬の相加的効果より良好又は有益又は
顕著である式(I)、(Ia)、(II)若しくは(IIa)の化合物又はそれの薬学的
に許容される塩又はそれの水和物若しくはプロドラッグの効果を指す。療法薬の組み合わ
せの相乗効果によって、1以上の個々の療法薬の使用用量を低下させ、及び/又は障害を
持つ対象者への療法薬の投与回数を減らすことができると考えられる。療法薬の用量を低
くし、及び/又は療法薬の投与回数を減らすことができることで、障害の予防若しくは治
療におけるその療法薬の効力を低下させることなく、対象者への療法薬の投与に関連する
毒性が下がる。さらに、相乗効果は、障害の予防若しくは治療における薬剤の効力改善を
生じさせ得るものである。最後に、療法薬の組み合わせの相乗効果によって、いずれかの
療法薬単独の使用に関連する有害若しくは望ましくない副作用の回避又は低減が可能とな
り得る。
【0088】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、研究者、獣医、医師その他の臨床関係
者が追求している組織、系、動物若しくはヒトにおける生理応答又は医学的応答を誘発す
る有効成分又は医薬剤の量を意味する。1実施形態において、「有効量」は、治療対象の
疾患若しくは障害の症状を軽減する治療上有効量であることができる。別の実施形態にお
いて、「有効量」は、予防対象の疾患若しくは状態の症状を予防する上で、又は発生確率
を低下させる上で予防的に有効な量であることができる。その用語は、(1,3)-β-
D-グルカンシンターゼを阻害することで、求める応答を誘発する上で十分なエンフマフ
ァンギン誘導体の阻害上有効量を指すこともできる。その用語は、カビ増殖を阻害するの
に十分な、第2の抗真菌剤、例えばカビ活性剤の量を指すこともできる。その用語は、併
用投与した場合に、カビの増殖を阻害することで、求めている応答を誘発するのに十分で
あるエンフマファンギン誘導体及び第2の薬剤の量(例えば、治療上有効量、予防上有効
量、又は阻害上有効量)を指すこともできる。エンフマファンギン誘導体及び第2の抗真
菌剤を塩の形態で投与する場合、これら化合物の量についての言及は、化合物の遊離酸型
若しくは遊離塩基型についてのものである。
【0089】
真菌感染の予防又は治療を目的として、式(I)、(Ia)、(II)若しくは(II
a)の化合物(任意に、塩又は水和物の形態で)である第1の抗真菌剤及び第2の抗真菌
剤を含む併用療法薬は、活性剤とその薬剤の作用部位との接触を生じさせる形で投与する
ことができる。第1薬剤及び第2薬剤は、医薬品と組み合わせての使用に使える従来の方
法で、単独治療剤として、又は併用治療剤として投与することができる。それらは単独で
投与することができるが、代表的な実務によれば、選択される投与経路及び標準的な薬学
的実務に基づいて選択される医薬担体とともに投与することができる。それらは、所期の
目的に適したいずれか許容される投与経路を介して、抗真菌法の一部期間又は全期間にわ
たり、同時又は順次に投与することができる。例えば、第1薬剤及び第2薬剤は静脈、経
口若しくは局所投与することができ;又は一方を静脈投与し、他方を経口投与することが
でき;又は一方を経口投与し、他方を局所投与し;又は治療若しくは予防される真菌感染
に適切であると考えられる投与経路のいずれかの組み合わせで投与することができる。例
えば、侵襲性アスペルギロシス(Aspergillosis)の場合、好ましい投与経
路は、静脈及び/又は経口となり;皮膚真菌感染に関して、抗真菌化合物は両方とも局所
的に、又は一方を経口的及び他方を局所的に投与することができ;眼球真菌感染に関して
、抗真菌剤は、両方とも局所的に、又は一方を静脈若しくは経口的に、そして他方を局所
的に投与することができる。例えば、式(I)、(Ia)、(II)及び(IIa)の化
合物、及びそれらの医薬的塩及び/又は水和物型及び第2の抗真菌剤を、有効量の当該化
合物及び従来の無毒性の薬学的に許容される担体、補助剤及び媒体を含む医薬組成物の単
位用量の形態で、次の経路の1以上:経口、非経口(皮下注射、静脈、筋肉、胸骨内注射
又は注入技術など)、吸入(例えば、鼻若しくは口腔吸入スプレー、定量吸入器からのエ
アロゾル、及び乾燥粉末吸入器)、ネブライザーにより、眼球、局所、経皮、又は直腸投
与によって投与することができる、経口投与に適した液体製剤(例えば、懸濁液、シロッ
プ、エリシキル剤など)は、当業界で公知の技術に従って製造することができ、水、グリ
コール類、オイル類、アルコール類などの通常の媒体を用いることができる。経口投与に
適した固体製剤(例えば、粉剤、丸薬、カプセル及び錠剤)は、当業界で公知の技術に従
って製造することができ、デンプン、糖類、カオリン、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などの固
体賦形剤を用いることができる。非経口組成物は、当業界で公知の技術に従って製造する
ことができ、代表的には、担体としての無菌水及び任意に他の成分、例えば溶解助剤を用
いる。注射溶液は、当業界で公知の方法に従って製造することができ、担体は生理食塩水
、グルコース溶液又は生理食塩水とグルコースの混合物を含む溶液を含む。
【0090】
医薬組成物に製造での使用に好適な方法及び当該組成物での使用に好適な成分について
のさらなる説明が、Remington′s Pharmaceutical Scie
nces, 20th edition, A. R. Gennaro編、Mack
Publishing Co., 2000にある。
【0091】
式(I)、(Ia)、(II)及び(IIa)の化合物、及びそれの薬学的に許容され
る塩及び/又は水和物型は、例えば、0.001~1000mg/kg哺乳動物(例えば
、ヒト)体重/日の用量範囲で、単一用量で又は分割用量で、例えば経口若しくは静注で
投与することができる。用量範囲の1例は、単一用量で又は分割用量で、経口又は静注で
0.01~500mg/kg体重/日である。用量範囲の別の例は、単一用量で又は分割
用量で、経口又は静注で0.1~100mg/kg体重/日である。経口投与の場合、組
成物は、治療される患者への用量の症候的調節のため、例えば1.0~1000mgの有
効成分、特には1、5、10、15、20、25、50、75、100、150、200
、250、300、400、500、600、750、及び1000mgの有効成分を含
む錠剤若しくはカプセルの形態で提供することができる。特定の患者についての具体的な
用量レベル及び投与回数は変動し得るものであり、使用される具体的な化合物の活性、そ
の化合物の代謝安定性及び作用の長さ、年齢、体重、全体的健康、性別、食事、投与の形
態及び時刻、排泄速度、薬剤併用、特定の状態の重度、及び療法を受ける宿主などの多様
な要素によって決まる。
【0092】
アゾール類又はアムホテリシンB化合物及びそれの薬学的に許容される塩及び/又は水
和物型など(これらに限定されるものではない)の第2の抗真菌剤は、例えば、0.00
1~1000mg/kg哺乳動物(例えば、ヒト)体重/日の用量範囲で、単一用量で又
は分割用量で、より好ましくは0.01~100mg/kgの用量範囲で(例えば経口若
しくは静注で)投与することができる。用量範囲の1例は、単一用量で又は分割用量で、
経口又は静注で1~100mg/kg体重/日である。用量範囲の別の例は、単一用量で
又は分割用量で、経口又は静注で2~20mg/kg体重/日の範囲で投与されるボリコ
ナゾールなどがある。用量範囲の別の例は、単一用量で又は分割用量で、静注で0.2~
10mg/kg体重/日の範囲で投与されるアムホテリシンBなどがある。経口投与の場
合、組成物は、治療される患者への用量の症候的調節のため、例えば1.0~500mg
の有効成分、特には50、75、100、150、200、250、300、375、4
00、及び500mgの有効成分を含む(例えば)錠剤、懸濁液、液剤又はカプセルの形
態で提供することができる。特定の患者についての具体的な用量レベル及び投与回数は変
動し得るものであり、使用される具体的な化合物の活性、その化合物の代謝安定性及び作
用の長さ、年齢、体重、全体的健康、性別、食事、投与形態及び時刻、排泄速度、薬剤併
用、特定の状態の重度、及び療法を受ける宿主などの多様な要素によって決まる。静脈投
与の場合、組成物は、例えば1.0~500mgの有効成分を含む(例えば)液剤、懸濁
液その他の許容される医薬形態の形態で提供することができる。局所投与の場合、第2の
抗真菌剤は、例えば0.001~900mgの有効成分/製品1gを含む(例えば)クリ
ーム、液剤、軟膏、泡剤、粉剤、ラッカー、乳濁液その他の薬学的に許容される形態とし
て提供することができる。
【0093】
化合物の抗真菌活性は、当業界で公知の各種アッセイによって、例えば、微量液体希釈
アッセイでの線維状カビ及び皮膚糸状菌に対するグルカン合成阻害活性(IC50)、最
小阻害濃度(MIC)及び最小有効濃度(MEC)、又はマウス若しくはウサギモデルで
のイン・ビボ抗アスペルギルス(Aspergillus)活性によって示すことができ
る。米国特許第8,188,085号の実施例中で提供の式(I)の化合物は、<0.0
3~32μg/mLの範囲でアスペルギルス・フミガツス(Aspergillus f
umigatus)に対するMECを与えることが認められた。
【0094】
実施例
下記の実施例は、本発明及びそれの実施を説明することのみを目的とするものである。
【0095】
これら実施例は、本発明の範囲又は精神に対する制限と解釈すべきではない。
【0096】
併用試験
異なる薬剤間の相互作用は、相乗的、無関係又は拮抗的として多様に記述される。イン
・ビトロ薬剤相互作用の評価は通常、「無相互作用」理論に基づくものであり、それは、
併用薬剤が互いに相互作用しないことから、無関係であると考えられると仮定するもので
ある。薬剤併用の観察される効果が「無相互作用」理論から予見されたものより高い場合
、相乗効果があると言われる。他方、観察される効果が予見されるのものより低い場合は
、拮抗作用があると言われる。
【0097】
ヒトにおいて侵襲性疾患を生じさせるカビで最も頻度のものであるアスペルギルス・フ
ミガツス(Aspergillus fumigatus)に対するいくつかの抗真菌剤
とエンフマファンギン誘導体の代表的化合物(SCY-078)の間の相互作用の種類を
確認するために、チェッカーボード法を用いた。試験では、化合物のクエン酸塩を用いた
【0098】
チェッカーボード法では、異なる薬剤組み合わせの存在下での真菌細胞の増殖阻害パー
セントの測定を行う。増殖阻害パーセントは、細胞のみを含み、薬剤を含まない対照ウェ
ルでの増殖と比較して計算する。アッセイは、96ウェルマイクロプレートで行い、各行
及び各列が0から最小阻害濃度(MIC)より若干高い範囲の濃度で薬剤A及び薬剤Bの
2倍連続希釈液を含むものとした。各ウェルは、その2薬剤の固有の組み合わせを有して
いた。次に、各ウェルに接種物を加え、48時間のインキュベーション後に増殖を評価し
て、増殖が阻害された最初のウェルを確認した。組み合わせた抗真菌剤のMICのチェッ
カーボードに基づく測定後に、下記等式によって定義されるノンパラメトリック部分阻害
濃度(FICI)を用いるさらなる解析を行った。
【数1】
【0099】
式中、MIC-A及びMIC-Bは、それぞれ、薬剤A及びBのMICである。Odd
sの用語によれば(Odds, F. C. 2003. Synergy, anta
gonism, and what the chequerboard puts b
etween them. J. Antimicrob. Chemother. 5
2:1)、0.5以下のFICI値は相乗効果と考えられ、4.00より大きいFICI
値は拮抗作用と考えられ、及び0.5超~4.0のFICI値は無相互作用と考えられる
【0100】
最初に、各薬剤を、その薬剤が水溶性であるか水不溶性であるかに応じて、それぞれ無
菌蒸留水又はDMSOで希釈した。SCY-078は水に不溶であることから、水不溶性
製剤を用いた。
【0101】
SCY-078の原液を、薬剤プレートで使用するのに望まれる濃度の200倍濃度で
DMSO中で調製した。原液の連続希釈をDMSOで行って、11種類の2倍薬剤希釈液
を得た。次に、そのSCY-078溶液をRPMI-1640培地で所望濃度の4倍まで
希釈することで、DMSOが生物の増殖を制限しないようにし、DMSOの量が全ての希
釈液について同じとなるようにした。
【0102】
併用試験を行うには、二つの96ウェルプレートが必要である。マルチチャンネルピペ
ットを用い、最低濃度の第1の薬剤(薬剤A)50μLを、第1のプレート(プレートA
)の列1及び第2のプレート(プレートB;行A~D)の列1の各ウェルに加えた。次に
、薬剤Aの次に最も高い作業希釈液50μLを列2における各ウェルに加え、全ての列1
~11が充填されるまで希釈液の添加を続けた。列12は空のままとした。最低濃度の薬
剤B 50μLをプレートBの行Dにおける各ウェルに加えた。薬剤Bの次に最も高い作
用希釈液50μLをプレートBの行Cにおける各ウェルに加え、プレートAの行Bからの
全ての行が充填されるまで希釈液の添加を続けた。プレートAの行Aは、薬剤Bを含まな
かった。行A及び列12にはRPMI 50μLを加えた(ウェルA-12は、無希釈R
PMI 100μLを有していた。)。
【0103】
上記の後、生物接種物100μLを全てのウェルに加えた。次に、プレートを48時間
インキュベートし、インキュベーション後に肉眼で読み取った。
【0104】
この試験の目的は、SCY-078とボリコナゾール、イサブコナゾール又はアムホテ
リシンBの組み合わせによって、各薬剤単独の活性の合計を超える組み合わせイン・ビト
ロ抗真菌活性を生じるか否かを決定することにあった。上記で記載のチェッカーボードア
ッセイを用いて、組み合わせMIC試験を行った。
【0105】
材料
試験単離物:次の6種類のアスペルギルス(Aspergillus)の臨床株(4種
類の野生型及び2種類の抵抗性型)を調べた。
【0106】
野生型株
A.フミガツス(A. fumigatus)MRL#20438
A.フミガツス(A. fumigatus)MRL#28382
A.フミガツス(A. fumigatus)MRL#28401
A.フミガツス(A. fumigatus)MRL#28378
抵抗性株
A.フミガツス(A. fumigatus)MRL#28383
A.フミガツス(A. fumigatus)MRL#28500
A.フミガツス(A. fumigatus)28500は、F46YにCYP51突
然変異を有する。
【0107】
抗真菌剤:次の組み合わせを調べた。
【0108】
SCY-078+ボリコナゾール
SCY-078+イサブコナゾール
SCY-078+アムホテリシンB
A.フミガツス(A. fumigatus)株は、Case Western Re
serve University School of Medicine, Ohi
o, United StatesのMycology Reference Libr
ary(MRL)から入手した。SCY-078は、Avista Laborator
ies, North Carolina, United Statesが製造した。
【0109】
ボリコナゾール、イサブコナゾール、及びアムホテリシンBは、商業的販売業者から入手
した。
【0110】
方法
個々の抗真菌剤の初期MIC測定は、線維性真菌の感受性試験に関するthe Cli
nical and Laboratory Standards Institute
(CLSI)M38-A2基準に従って行った。
【0111】
組み合わせMIC試験を、the Center for Medical Myco
logy SOP A11.3に従って、チェッカーボード試験法を用いて行った。チェ
ッカーボード組み合わせ試験法は、二つの試験化合物を濃度を変えて組み合わせることで
、それらが個々のMIC値に対して相乗的、拮抗的又は無効であるか否かを確認する微量
希釈抗真菌感受性試験の変法である。
【0112】
抗真菌剤をRPMI培地で連続2倍希釈して、それぞれ11種類の濃度とし、マイクロ
タイタープレートのウェルで合わせた。各個々の薬剤の連続希釈液からなる二つの行を含
めた。全ての組み合わせ試験は二連で行った。個々の薬剤のMICの組み合わせ薬剤のM
ICとの比較が、それらの相対的効力を示すものである。
【0113】
この解釈は、the Antimicrobial Agents and Chem
otherapy guidelinesに従ったものであり、それはチェッカーボード
組み合わせデータの保守的解釈を推奨するものである。
【0114】
結果
表1は、調べたアゾール感受性及び抵抗性A.フミガツス(A.fumigatus)
単離物に対するイサブコナゾールと組み合わせたSCY-078についてのFICIスコ
ア及び解釈を示すものである(試験は二連で行った。)。被験感受性単離物に対して、S
CY-078及びイサブコナゾールの組み合わせは、調べた四つの単離物で相乗作用を示
した。抵抗性CYP51突然変異体A.フミガツス(A.fumigatus)株285
00及び抵抗性株28383に対して、イサブコナゾールと組み合わせたSCY-078
は、無相互作用を示した。
【0115】
表2は、調べたアゾール感受性及び抵抗性A.フミガツス(A.fumigatus)
単離物に対するボリコナゾールと組み合わせたSCY-078についてのFICIスコア
及び解釈を示すものである(試験は二連で行った。)。被験感受性単離物に対して、SC
Y-078及びボリコナゾールの組み合わせは、評価した四種類全ての単離物に対する相
乗効果を示した。SCY-078及びボリコナゾールの組み合わせは、抵抗性A.フミガ
ツス(A.fumigatus)単離物に対して試験を行った場合に無相互作用を示した
【0116】
表3は、調べたアゾール感受性及び抵抗性A.フミガツス(A.fumigatus)
単離物に対するアムホテリシンBと組み合わせたSCY-078についてのFICIスコ
ア及び解釈を示すものである(試験は二連で行った。)。SCY-078及びアムホテリ
シンBの組み合わせは、評価した全ての感受性単離物に対する相乗効果を示した。抵抗性
単離物A.フミガツス(A.fumigatus)28383に対して、アムホテリシン
Bと組み合わせたSCY-078は無相互作用を示した。しかしながら、CYP51突然
変異株(A.フミガツス(A.fumigatus)28500)に対しては、アムホテ
リシンBと組み合わせたSCY-078は、相乗的活性を示した。
【0117】
表1.A.フミガツス(A.fumigatus)に対するSCY-078及びイサブ
コナゾールについての単独及び組み合わせでのMIC値(μg/mL)。MICは48時
間で読み取り、各試験は二連で行った。
【表1】
【0118】
表2.A.フミガツス(A.fumigatus)に対するSCY-078及びボリコ
ナゾールについての単独及び組み合わせでのMIC値(μg/mL)。MICは48時間
で読み取り、各試験は二連で行った。
【表2】
【0119】
表3.A.フミガツス(A.fumigatus)に対するSCY-078及びアムホ
テリシンBについての単独及び組み合わせでのMIC値(μg/mL)。MICは48時
間で読み取り、各試験は二連で行った。
【表3】
【0120】
これらのデータは、SCY-078及びボリコナゾール、イサブコナゾール、及びアム
ホテリシンBの組み合わせが、調べた野生型アスペルギルス・フミガツス(Asperg
illus fumigatus)単離物の全てに対する相乗活性を示したことを示して
いる。SCY-078並びにボリコナゾール、イサブコナゾール及びアムホテリシンBの
それぞれの組み合わせが、調べたアゾール抵抗性アスペルギルス・フミガツス(Aspe
rgillus fumigatus)単離物に対して相乗活性又は無相互作用を示した
。重要な点として、これらの組み合わせで示された拮抗作用は全くなかった。
【0121】
イン・ビボ試験
SCY-078のイサブコナゾールとの組み合わせの効力を評価するために試験を行っ
た。イソブコナゾールは、アスペルギルス(Aspergillus)属種に対する活性
を有する第2世代抗真菌トリアゾールである。上記で記載のように、浸潤性肺アスペルギ
ルス症は、免疫抑制患者-特にはがん治療のための骨髄毒性化学療法の結果としての重度
及び長期好中球減少のある患者、並びに臓器移植後の拒絶予防又は同種骨髄移植後の移植
片対宿主病(GVHD)の治療のための免疫抑制薬投与を受けている患者での生命にかか
わる感染である。関連する免疫抑制群でのSCY-078及びアゾールの併用療法の効果
をさらに示すため、このイン・ビボ評価には好中球減少症ウサギモデルを選択した。
【0122】
方法
本試験では、体重2.5~3.5kgのニュージーランドホワイトウサギ(Covan
ce Research Products, Inc., Denver, PA)を
用いた。血管アクセスは、シラスティックトンネル型中心静脈カテーテルの外科的留置に
よって確立した。シトシンアラビノシド(Cytosar-U)525mg/m2を、第
1日~第5日に、及び第8、9、13及び14日に静脈投与して、重度且つ持続的な好中
球減少症(好中球濃度<好中球100/μL)を生じさせた。メチルプレドニゾロン(S
olu-Medrol(登録商標), Pfizer, NY)5mg/kgを、第1日
~第3日に投与して、マクロファージ活性を阻害した。抗生物質(セフタジジム75mg
/kg、1日2回静脈投与;ゲンタマイシン5mg/kg、2日に1回静脈投与;バンコ
マイシン15mg/kg、1日1回静脈投与)を、好中球減少症中の日和見細菌感染の予
防に用いた。
【0123】
接種物:肺アスペルギロシス(Aspergillosis)の致死的症例の患者から
得たNIHアスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigatus
)単離物4215(ATCC番号MYA-1163)を、本試験では用いた。A.フミガ
ツス(A. fumigatus)単離物を、ポテトデキストロース寒天斜面培地(Re
mel Inc, Baltimore, MD)で二次培養し、37℃で24時間イン
キュベートし、次に室温で5日間維持してから使用に供した。第2日(即ち、シトシンア
ラビノシドの最初の用量から1日後)に、直接肉眼観察下で、接種物(2.5×108A
.フミガツス(A.fumigatus)分生子)を、声帯を越えて気管に投与した。
【0124】
抗真菌療法:表4に示したように、下記の6治療群について調べた:2.5mg/kg
/日のSCY-078投与を受ける群(SCY2.5);7.5mg/kg/日のSCY
-078投与を受ける群(SCY7.5);40mg/kg/日のイサブコナゾール投与
を受ける群(ISA40);2.5mg/kg/日のSCY-078及び40mg/kg
/日のイサブコナゾール投与を受ける群(SCY2.5+ISA40);7.5mg/k
g/日のSCY-078及び40mg/kg/日のイサブコナゾール投与を受ける群(S
CY7.5+ISA40);及び未治療対照群(UC)。各群には、ウサギ6匹を含めた
。抗真菌剤に投与を行う場合、それらは、1日1回静注投与した。SCY-078のクエ
ン酸塩を用いた。抗真菌療法を受ける群では、そのような投与を、気管内接種から24時
間後に開始し、1日1回で12日間続けた。治療群中の生存ウサギを、抗真菌剤の最終投
与から24時間後に屠殺した。未治療群の動物で第8日を過ぎて生存したものはなかった
【0125】
評価:生存率、肺梗塞、及びガラクトマンナン抗原血症(アスペルギルス(Asper
gillus)感染の血清学的マーカー)を、治療応答の指標として評価した。死亡又は
屠殺後、肺を秤量し、肺アスペルギロシス(Aspergillosis)に代表的な出
血性梗塞の病変の存在について、2名の盲検観察者によって調べた。血清ガラクトマンナ
ン濃度の測定のため、2日に1回、各ウサギから採血を行った。血清ガラクトマンナン濃
度は、Platelia(登録商標)アスペルギルス(Aspergillus)酵素イ
ムノアッセイ(EIA)(Bio-Rad、Marnes-la-Coquette,
DFrance)1段階免疫酵素サンドイッチマイクロプレートアッセイ法によって求め
た。酵素免疫アッセイデータは、経時的にプロットした血清GMI(ガラクトマンナン指
数)として表した。
【0126】
表4.治療群
【表4】
【0127】

結果
生存率は、SCY-078のみの投与を受けた動物(SCY7.5又はSCY2.5)
又はイサブコナゾールのみの投与を受けた動物(ISA40)と比較した、SCY7.5
+ISA40又はSCY2.5+ISA40で処理した動物で有意に上昇した(図1)。
【0128】
具体的には、SCY7.5+ISA40又はSCY2.5+ISA40投与を受けたウサ
ギでは、所定の屠殺日(第13日)までで生存率は83%(各群6匹中5匹)であったが
、ISA40のみの投与を受けた動物の生存率は32%であり(6匹中2匹);SCY2
.5のみの投与を受けた動物の生存率は16%であり(6匹中1匹);SCY7.5のみ
投与を受けた動物及び未治療対照には第13日まで生存した動物はなかった。肺損傷のマ
ーカー(肺梗塞スコア)は、同様の応答パターンを示した(図2)。血清ガラクトマンナ
ン抗原血症は、単一薬剤で治療した動物と比較して、SCY7.5+ISA40又はSC
Y2.5+ISA40で治療した動物において顕著に減少した(図3)。SCY-078
及びイサブコナゾールの組み合わせは、いずれかの薬剤単独より、ガラクトマンナンレベ
ルの低下において有効であった。さらに、SCY-078及びイサブコナゾールの組み合
わせは、いずれかの薬剤単独より、ガラクトマンナン抗原血症に低下が早かった。
【0129】
この試験によってさらに、SCY-078のアゾールとの組み合わせが、このモデルで
のSCY-078又はアゾール単独の場合と比較して、浸潤性肺アスペルギルス症の治療
においてより有効であり、相乗効果を示すことが明らかになった。
【0130】
本発明の好ましい実施形態を参照して、本発明を特に示し、説明してきたが、本開示を
考慮して、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲を逸脱しない限り、形
式及び詳細における各種変更を行うことができることは、当業者によって理解されるであ
ろう。
【0131】
本発明は以下の態様を含む。
態様1
(a)下記式(I)の化合物又は該化合物の薬学的に許容される塩:
【化8】
[式中、
XはO又はH、Hであり;
Reは、C(O)NRfRg又は1個若しくは2個の窒素原子を含む6員環ヘテロアリール基であり、前記ヘテロアリール基は、環炭素上でフルオロ若しくはクロロによって、又は環窒素上で酸素によってモノ置換されていても良く;
Rf、Rg、R6及びR7はそれぞれ独立に、水素又はC1-C3アルキルであり;
R8は、C1-C4アルキル、C3-C4シクロアルキル又はC4-C5シクロアルキル-アルキルであり;
R9はメチル又はエチルであり;
R8及びR9が一体となって、1個の酸素原子を含む6員飽和環を形成していても良い。]である第1の治療剤;及び
(b)アゾール、ポリエン、プリン若しくはピリミジンヌクレオチド阻害剤、オロトミド、Gwt1阻害剤、ニューモカンジン若しくはエキノカンジン誘導体、タンパク質伸長因子阻害剤、キチン阻害剤、マンナン阻害剤、殺菌/透過性誘発(BPI)タンパク質産生物、又は免疫調節剤である第2の治療剤
の医薬組み合わせ。
態様2
前記第2の治療剤がイトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、フルコナゾール、ボリコナゾール、ポサコナゾール、アムホテリシンB、フルシトシン、アニデュラファンギン、ミカファンギン、又はカスポファンギンである、態様1の医薬組成物。
態様3
前記第1の治療剤及び前記第2の治療剤が、処置を必要とする対象者で真菌感染又は細菌感染を治療する上で有効な医薬組み合わせとする量で存在する、態様1の医薬組み合わせ。
態様4
前記第1の治療剤及び前記第2の治療剤が、処置を必要とする対象者で真菌感染を治療する上で有効な医薬組み合わせとする量で存在する、態様1の医薬組み合わせ。
態様5
前記第1の治療剤及び前記第2の治療剤が、処置を必要とする対象者で真菌感染又は細菌感染を予防する上で有効な医薬組み合わせとする量で存在する、対応1の医薬組み合わせ。
態様6
前記第1の治療剤及び前記第2の治療剤が、処置を必要とする対象者で真菌感染を予防する上で有効な医薬組み合わせとする量で存在する、態様1の医薬組み合わせ。
態様7
前記第1の治療剤及び前記第2の治療剤が、処置を必要とする対象者で浸潤性肺アスペルギルス症を治療する上で有効な医薬組み合わせとする量で存在する、態様1の医薬組み合わせ。
態様8
前記第1の治療剤及び前記第2の治療剤が、処置を必要とする対象者で浸潤性肺アスペルギルス症を予防する上で有効な医薬組み合わせとする量で存在する、態様1の医薬組み合わせ。
態様9
前記第1の治療剤が、下記式(II)の化合物:
【化9】
[それは、(1S,4aR,6aS,7R,8R,10aR,10bR,12aR,14R,15R)-15-[[2-アミノ-2,3,3-トリメチルブチル]オキシ]-8-[(1R)-1,2-ジメチルプロピル]-14-[5-(4-ピリジニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル]-1,6,6a,7,8,9,10,10a,10b,11,12,12a-ドデカヒドロ-1,6a,8,10a-テトラメチル-4H-1,4a-プロパノ-2H-フェナントロ[1,2-c]ピラン-7-カルボン酸である。]又は当該化合物の薬学的に許容される塩であり;
第2の治療剤がボリコナゾール、イサブコナゾール、ポサコナゾール、イトラコナゾール、又はアムホテリシンBである、態様1~8の医薬組み合わせ。
態様10
前記第1の治療剤が、下記式(IIa)の化合物:
【化10】
[それは、(1S,4aR,6aS,7R,8R,10aR,10bR,12aR,14R,15R)-15-[[(2R)-2-アミノ-2,3,3-トリメチルブチル]オキシ]-8-[(1R)-1,2-ジメチルプロピル]-14-[5-(4-ピリジニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル]-1,6,6a,7,8,9,10,10a,10b,11,12,12a-ドデカヒドロ-1,6a,8,10a-テトラメチル-4H-1,4a-プロパノ-2H-フェナントロ[1,2-c]ピラン-7-カルボン酸である。]又は当該化合物の薬学的に許容される塩であり;
前記第2の治療剤がボリコナゾール、イサブコナゾール、ポサコナゾール、イトラコナゾール、又はアムホテリシンBである、態様1~8の医薬組み合わせ。
態様11
処置を必要とする対象者でのカビ感染の治療方法であって、対象者に対して、態様1~10の医薬組み合わせを投与することを含む方法。
態様12
処置を必要とする対象者でのカビ感染の予防方法であって、対象者に対して、態様1~10の医薬組み合わせを投与することを含む方法。
態様13
前記カビ感染が、アスペルギロシス(Aspergillosis)属種によって引き起こされる、態様11の方法。
態様14
前記カビ感染が、アスペルギロシス(Aspergillosis)属種によって引き起こされる、態様12の方法。
態様15
処置を必要とする対象者での浸潤性肺アスペルギルス症の治療方法であって、
(a)下記式(II)の化合物:
【化11】
[それは、(1S,4aR,6aS,7R,8R,10aR,10bR,12aR,14R,15R)-15-[[2-アミノ-2,3,3-トリメチルブチル]オキシ]-8-[(1R)-1,2-ジメチルプロピル]-14-[5-(4-ピリジニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル]-1,6,6a,7,8,9,10,10a,10b,11,12,12a-ドデカヒドロ-1,6a,8,10a-テトラメチル-4H-1,4a-プロパノ-2H-フェナントロ[1,2-c]ピラン-7-カルボン酸である。]又はそれの薬学的に許容される塩である第1の治療剤;及び
(b)ボリコナゾール、イサブコナゾール、ポサコナゾール、イトラコナゾール、又はアムホテリシンBである第2の治療剤
の医薬組み合わせを対象者に投与することを含む方法。
態様16
処置を必要とする対象者での浸潤性肺アスペルギルス症の治療方法であって、
(a)下記式(IIa)の化合物:
【化12】
[それは、(1S,4aR,6aS,7R,8R,10aR,10bR,12aR,14R,15R)-15-[[(2R)-2-アミノ-2,3,3-トリメチルブチル]オキシ]-8-[(1R)-1,2-ジメチルプロピル]-14-[5-(4-ピリジニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル]-1,6,6a,7,8,9,10,10a,10b,11,12,12a-ドデカヒドロ-1,6a,8,10a-テトラメチル-4H-1,4a-プロパノ-2H-フェナントロ[1,2-c]ピラン-7-カルボン酸である。]又はそれの薬学的に許容される塩である第1の治療剤;及び
(b)ボリコナゾール、イサブコナゾール、ポサコナゾール、イトラコナゾール、又はアムホテリシンBである第2の治療剤
の医薬組み合わせを対象者に投与することを含む方法。
態様17
前記第2の治療剤がボリコナゾールである、態様15及び16の方法。
態様18
前記第2の治療剤がイサブコナゾールである、態様15及び16の方法。
態様19
前記第2の治療剤がポサコナゾールである、態様15及び16の方法。
態様20
前記第2の治療剤がイトラコナゾールである、態様15及び16の方法。
態様21
前記第2の治療剤がアムホテリシンBである、態様15及び16の方法。
態様22
前記第1の治療剤を前記第2の治療剤と順次に投与する、態様15及び16の方法。
態様23
前記第1の治療剤を前記第2の治療剤と同時に投与する、態様15及び16の方法。
態様24
ある量の態様1~10の医薬組み合わせを用いることを含む、真菌感染の治療のための医薬の調製。
態様25
浸潤性肺アスペルギルス症の治療のための医薬の調製のための、態様1~10の医薬組み合わせの使用。
態様26
処置を必要とする対象者でのガラクトマンナンレベルを低下させる方法であって、当該対象者に対して、態様1~10の医薬組成物を投与することを含む方法。
態様27
前記第1の治療剤が、下記式(II)の化合物:
【化13】
[それは、(1S,4aR,6aS,7R,8R,10aR,10bR,12aR,14R,15R)-15-[[2-アミノ-2,3,3-トリメチルブチル]オキシ]-8-[(1R)-1,2-ジメチルプロピル]-14-[5-(4-ピリジニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル]-1,6,6a,7,8,9,10,10a,10b,11,12,12a-ドデカヒドロ-1,6a,8,10a-テトラメチル-4H-1,4a-プロパノ-2H-フェナントロ[1,2-c]ピラン-7-カルボン酸である。]又はそれの薬学的に許容される塩であり;
前記第2の治療剤がボリコナゾール、イサブコナゾール、ポサコナゾール、イトラコナゾール、又はアムホテリシンBである、態様26の方法。
態様28
前記第1の治療剤が、下記式(IIa)の化合物:
【化7】
[それは、(1S,4aR,6aS,7R,8R,10aR,10bR,12aR,14R,15R)-15-[[(2R)-2-アミノ-2,3,3-トリメチルブチル]オキシ]-8-[(1R)-1,2-ジメチルプロピル]-14-[5-(4-ピリジニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル]-1,6,6a,7,8,9,10,10a,10b,11,12,12a-ドデカヒドロ-1,6a,8,10a-テトラメチル-4H-1,4a-プロパノ-2H-フェナントロ[1,2-c]ピラン-7-カルボン酸である。]又はそれの薬学的に許容される塩であり;
前記第2の治療剤がボリコナゾール、イサブコナゾール、ポサコナゾール、イトラコナゾール、又はアムホテリシンBである、態様26の方法。
図1
図2
図3