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特許7574269ジアミン化合物およびその作製方法、ジアミン化合物で形成される高分子およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】ジアミン化合物およびその作製方法、ジアミン化合物で形成される高分子およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C07C 229/60 20060101AFI20241021BHJP
   C07C 227/06 20060101ALI20241021BHJP
   C07C 237/38 20060101ALI20241021BHJP
   C07C 237/40 20060101ALI20241021BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20241021BHJP
   C08G 69/26 20060101ALI20241021BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
C07C229/60 CSP
C07C227/06
C07C237/38
C07C237/40
C08G59/50
C08G69/26
C08G73/10
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022207258
(22)【出願日】2022-12-23
(65)【公開番号】P2023094615
(43)【公開日】2023-07-05
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】63/293,419
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515119088
【氏名又は名称】李長榮化學工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】LCY CHEMICAL CORP.
【住所又は居所原語表記】No.3, Zhonglin Rd., Xiaogang Dist., Kaohsiung City, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】劉光舜
(72)【発明者】
【氏名】楊凭勲
(72)【発明者】
【氏名】張財源
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-105263(JP,A)
【文献】特開2011-257527(JP,A)
【文献】特開2013-147599(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0064274(KR,A)
【文献】特開2018-172518(JP,A)
【文献】特開2015-209404(JP,A)
【文献】特表2019-535842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 229/
C07C 227/
C08G 73/
C08G 69/
C08G 59/
C07C 237/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IIで表されるジアミン化合物。
【化1】

(式中、少なくとも1つのBは*-CH 2 -*であり、残りのBは存在しないか、または*-CH 2 -*であり、Yは*-COO-*または*-CONH-*であり、nおよびmは0または1~2の整数を表す。)
【請求項2】
前記ジアミン化合物が下記のうちのいずれかである、請求項1に記載のジアミン化合物。
【化3】
【請求項3】
前記ジアミン化合物が下記のうちのいずれかである、請求項1に記載のジアミン化合物。
【化4】
【請求項4】
下記のうちのいずれか
【化5】
に対して水素化反応を行って、下記のうちのいずれか
【化6】
を形成する工程を含むジアミン化合物の作製方法。
【請求項5】
式IIで示されるジアミン化合物から誘導される高分子。
【化8】


(式中、少なくとも1つのBは*-CH 2 -*であり、残りのBは存在しないか、または*-CH 2 -*であり、Yは*-COO-*または*-CONH-*であり、nおよびmは0または1~2の整数を表す。)
【請求項6】
前記高分子が下記一般式の繰り返し単位を含む、請求項5に記載の高分子。
【化9】


(式中、Xは4価の有機基であり、Y1は、式IIで示されるジアミン化合物から誘導される残基である。)
【請求項7】
前記高分子が下記一般式の繰り返し単位を含む、請求項5に記載の高分子。
【化10】
(式中、Xは4価の有機基であり、Y1は、式IIで示されるジアミン化合物から誘導される残基である。)
【請求項8】
前記高分子が下記一般式の構造単位のいずれかを含む、請求項5に記載の高分子。
【化11】
(式中、Y1は、式IIで示されるジアミン化合物から誘導される残基であり、R1は2価の有機基であり、nおよびmは2~1000の整数を表す。)
【請求項9】
前記高分子が下記一般式の繰り返し単位を含む、請求項5に記載の高分子。
【化12】


(式中、R2は2価の有機基であり、Y1は、式IIで示されるジアミン化合物から誘導される残基である。)
【請求項10】
前記高分子が下記一般式の繰り返し単位を含む、請求項5に記載の高分子。
【化13】


(式中、R4は2価の有機基であり、Y1は、式IIで示されるジアミン化合物から誘導される残基である。)
【請求項11】
前記高分子が下記一般式の繰り返し単位を含む、請求項5に記載の高分子。
【化14】


(式中、R3は2価の有機基であり、Y1は、式IIで示されるジアミン化合物から誘導される残基である。)
【請求項12】
フィルムに用いる請求項5に記載の高分子の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はジアミン化合物に関し、特にノルボルナン環を含むジアミン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ジアミン化合物は、多種の高分子、例えばポリイミド(polyimide)、ポリアミド酸(polyamide acid)、エポキシ樹脂(epoxy resin)、ポリアミド(polyamide)、ポリウレア(polyurea)、およびポリイミン(polyimine)を合成するのに用いることができ、また各種用途、例えば絶縁テープ、電線エナメル、保護コーティング、配向膜、透明基板、またはフィルムに用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、棒状(rod-like)構造のジアミン化合物は充填率に優れており、これにより形成される材料の熱膨張係数を低下させることができる。しかしながら、大多数の棒状ジアミン化合物は芳香族基、例えば4-アミノフェニル-4-アミノベンゾアートを含んでおり、それは共役系を有するため、形成される材料を長期間使用する、または高温プロセスを施すと、黄変が生じることがある。よって、材料に優れた光学特性および比較的低い熱膨張係数を付与することのできるジアミン化合物が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の実施形態に基づき、式Iで表されるジアミン化合物を提供する。
【0005】
【化1】
【0006】
式I中、Aは、ノルボルナン環(norbornane ring)を含む炭素数7から30の脂環式炭化水素基(alicyclic hydrocarbon group)であり、Yは*-COO-*または*-CONH-*である。
【0007】
本開示の実施形態に基づき、式IIIで示される化合物に対して水素化反応を行って、式Iで示されるジアミン化合物を形成する工程を含むジアミン化合物の作製方法を提供する。
【0008】
【化2】
【0009】
式Iおよび式III中、Aは、ノルボルナン環を含む炭素数7から30の脂環式炭化水素基であり、Bは、ノルボルナン環またはノルボルネン環を含む炭素数7から30の脂環式炭化水素基であり、Yは*-COO-*または*-CONH-*である。
【0010】
本開示の実施形態に基づいて、式Iで示されるジアミン化合物から誘導される高分子を提供する。
【0011】
【化3】

【0012】
式I中、Aは、ノルボルナン環を含む炭素数7から30の脂環式炭化水素基であり、Yは*-COO-*または*-CONH-*である。
【0013】
本開示の実施形態に基づいて、絶縁テープ、電線エナメル、保護コーティング、配向膜、透明基板、またはフィルムに用いる上記高分子の用途を提供する。
【0014】
本開示の特徴を明らかかつ理解しやすくするよう、以下に実施形態を挙げ、添付の図面と対応させながら、下記のように詳細に説明する。その他の留意すべき点については、技術分野を参照にされたい。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明が提供するジアミン化合物、これにより形成される高分子について詳細に説明する。以下の記載は、本開示のいくつかの実施形態の異なる態様を実施できるように、多くの異なる実施形態または例を提供するものであるという点が理解されるべきである。下記する特定の構成要素および配列方式は、本開示のいくつかの実施形態を簡潔にわかりやすく説明したものに過ぎない。これらは当然に単なる例示に過ぎず、本開示を限定するものではない。
【0016】
文中の「約」、「およそ」、「実質的に」といった用語は、所定の値または範囲の5%内、好ましくは3%内、より好ましくは1%内、または2%以内、または1%以内、または0.5%以内にあることを表す。ここで、所定の数は、おおよその数である、つまり「約」、「およそ」、「実質的に」について特段の説明がない限り、「約」、「およそ」、「実質的に」の意味を含み得る。
【0017】
以下に、本開示のジアミン化合物(diamine compound)およびその作製方法について詳細に記載する。
【0018】
[ジアミン化合物]
【0019】
本開示の実施形態に基づいて、式Iで表されるジアミン化合物を提供する。
【0020】
【化4】

【0021】
式I中、Aは、ノルボルナン環(norbornane ring)を含む炭素数7から30の脂環式炭化水素基(alicyclic hydrocarbon group)であり、Yは*-COO-*または*-CONH-*である。
【0022】
いくつかの実施形態において、本開示のジアミン化合物は、式IIで表されるものであってよい。
【0023】
【化5】
【0024】
式II中、Bは存在しないか、または*-CH2-*であり、Yは*-COO-*または*-CONH-*であり、かつnおよびmは0または1~2の整数を表す。式II中、少なくとも1つのBが*-CH2-*であるため、ジアミン化合物はノルボルナン環基を含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、本開示のジアミン化合物は、例えば下記に示す構造のうちのいずれかであってよいが、これに限定はされない。
【0026】
【化6】
【0027】
いくつかの実施形態において、本開示のジアミン化合物は、例えば下記に示す構造のうちのいずれかであってよいが、これに限定はされない。
【0028】
【化7】
【0029】
[ジアミン化合物の作製]
【0030】
本開示の実施形態に基づき、式IIIで示される化合物に対し水素化反応を行って、式Iで示されるジアミン化合物を形成する工程を含むジアミン化合物の作製方法を提供する。
【0031】
【化8】
【0032】
式Iおよび式III中、Aは、ノルボルナン環を含む炭素数7から30の脂環式炭化水素基であり、Bは、ノルボルナン環またはノルボルネン環を含む炭素数7から30の脂環式炭化水素基であり、Yは*-COO-*または*-CONH-*である。
【0033】
いくつかの実施形態において、式IIIで示される化合物は、式IVで示されるジオール化合物とニトロベンゾイルクロリドとが反応して形成されるものであり得る。
【0034】
【化9】
【0035】
式IV中、Bは、ノルボルナン環またはノルボルネン環を含む炭素数7から30の脂環式炭化水素基である。
【0036】
いくつかの実施形態において、式IIIで示される化合物は、式Vで示されるジアミン化合物とニトロベンゾイルクロリドとが反応して形成されるものであり得る。
【0037】
【化10】
【0038】
式V中、Bは、ノルボルナン環またはノルボルネン環を含む炭素数7から30の脂環式炭化水素基である。
【0039】
下表に、本開示のジアミン化合物の具体例および対応する化学物質の名称を示す。
【0040】
【表1】
【0041】
前述したように、本開示のジアミン化合物を用いて各種高分子(例えば、ポリイミド、ポリアミド酸、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリウレア、およびポリイミン)を形成することができ、かつこれら高分子は各種用途に用いることができる。以下に例を挙げてこれら高分子およびその作製方法を紹介していくが、高分子の種類および作製方法はこれに限定されないという点に留意が必要である。
【0042】
本開示の実施形態に基づいて、式Iで示されるジアミン化合物から形成される高分子を提供する。
【0043】
【化11】

【0044】
式I中、Aは、ノルボルナン環を含む炭素数7から30の脂環式炭化水素基であり、Yは*-COO-*または*-CONH-*である。
【0045】
[ポリアミド酸]
【0046】
いくつかの実施形態において、本開示の高分子は、下記一般式の繰り返し単位を含むポリアミド酸であってよい。
【0047】
【化12】

【0048】
上記一般式中、Xは、テトラカルボン酸二無水物化合物から誘導される4価の有機基である。いくつかの実施形態において、前述のテトラカルボン酸二無水物化合物は、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、ビシクロ[3,3,0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸二無水物(BODA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)または2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(TCA)であってよいが、これに限定はされない。また、1つのテトラカルボン酸二無水物化合物を単独で用い、あるいは2つ以上のテトラカルボン酸二無水物化合物を組み合わせて用い、本開示の式Iで示されるジアミン化合物と反応させて、ポリアミド酸を形成することができる。上記一般式中、Y1は、本開示の式Iで示されるジアミン化合物から誘導される残基である。
【0049】
[ポリアミド酸の作製方法]
【0050】
いくつかの実施形態において、本開示のポリアミド酸は下記する方法により形成される。テトラカルボン酸二無水物化合物と本開示の式Iで示されるジアミン化合物とを溶媒中で混合して縮合重合を進行させ、ポリアミド酸を形成する。いくつかの実施形態において、縮合重合反応は、窒素環境下、室温にて200~400rpmの回転速度で3~12時間撹拌、例えば室温にて300rpmの回転速度で4時間撹拌することにより進行させることができる。反応完了後、冷却して、ポリアミド酸を得る。
【0051】
[ポリイミド]
【0052】
いくつかの実施形態において、本開示の高分子は、下記一般式の繰り返し単位を含むポリイミドであってよい。
【0053】
【化13】

【0054】
上記一般式中、Xは、テトラカルボン酸二無水物化合物から誘導される4価の有機基であり、Y1は、本開示の式Iで示されるジアミン化合物から誘導される残基である。このテトラカルボン酸二無水物化合物の種類については上に述べた通りであるので、ここでは繰り返さない。また、1つのテトラカルボン酸二無水物化合物を単独で用い、あるいは2つ以上のテトラカルボン酸二無水物化合物を組み合わせて用い、本開示の式Iで示されるジアミン化合物と反応させて、ポリイミドを形成することができる。
【0055】
[ポリイミドの作製方法]
【0056】
いくつかの実施形態において、本開示のポリイミドは、下記する方法により形成される。テトラカルボン酸二無水物化合物と本開示の式Iで示されるジアミン化合物とを溶媒下で重合(polymerization)させポリアミド酸を得てから、ポリアミド酸のイミド化(imidization)を行ってポリイミドを形成する。ポリアミド酸のイミド化を行う合成方法を以下に2つ例示するが、これに限定されない。1つ目の方法は2つの段階に分けて行うもので、先ず、テトラカルボン酸二無水物化合物と本開示の式Iで示されるジアミン化合物とを極性溶媒中に入れて反応させ、ポリイミドの前駆体(precursor)であるポリアミド酸を形成する。次いで、高温法(300℃~500℃)または化学法でイミド化反応を行って、ポリアミド酸を脱水閉環させることで、ポリイミドを形成する。いくつかの実施形態において、高温法は、300~500℃の温度で4~8時間行う、例えば400℃の温度で6時間行うものである。いくつかの実施形態において、化学法は、室温~120℃の温度で無水酢酸および触媒を加えて3~24時間反応を進行させる、例えば、90℃の温度で16時間反応させるものである。2つ目の方法は、1つの段階でポリイミドを合成するもので、テトラカルボン酸二無水物化合物と本開示の式Iで示されるジアミン化合物とを極性非プロトン性溶媒中で反応させ、還流温度まで昇温して反応を進行させると、ポリイミドが形成されるというものである。反応完了後、冷却し、再結晶精製を行い乾燥させればポリイミド固体が得られる。
【0057】
[エポキシ樹脂]
【0058】
いくつかの実施形態において、本開示の高分子は、下記一般式の構造単位うちのいずれかを含むエポキシ樹脂であり得る。
【0059】
【化14】
【0060】
上記一般式中、Y1は、本開示の式Iで示されるジアミン化合物から誘導される残基であり、R1は2価の有機基であり、nおよびmは2~1000の整数を表す。
【0061】
[エポキシ樹脂の作製方法]
【0062】
いくつかの実施形態において、本開示のエポキシ樹脂は下記の方法により形成される。下記一般式のエポキシ化合物と本開示の式Iで示されるジアミン化合物とを反応させてエポキシ樹脂を形成する。
【0063】
【化15】
【0064】
上記一般式中、R1はp価の有機基であり、pは2~6の整数、例えば3、4または5を表す。なお、前述のエポキシ化合物は、当該分野において周知である2つ以上のエポキシ基を有する任意のエポキシ化合物であってよいという点が理解されるべきであり、ここに例示はしない。また、1つのエポキシ化合物を単独で用い、あるいは2つ以上のエポキシ化合物を組み合わせて用い、本開示の式Iで示されるジアミン化合物と反応させて、エポキシ樹脂を形成することができる。
【0065】
[ポリアミド]
【0066】
いくつかの実施形態において、本開示の高分子は、下記一般式の繰り返し単位を含むポリアミドであり得る。
【0067】
【化16】
【0068】
上記一般式中,R2は、二酸化合物またはハロゲン化ジアシル化合物から誘導される2価の有機基であり、Y1は、本開示の式Iで示されるジアミン化合物から誘導される残基である。前述した二酸化合物およびハロゲン化ジアシル化合物は、当該分野において周知である任意の二酸化合物およびハロゲン化ジアシル化合物であってよく、ここには例示しない。また、1つの二酸化合物またはハロゲン化ジアシル化合物を単独で用い、あるいは2つ以上の二酸化合物および/またはハロゲン化ジアシル化合物を組み合わせて用い、本開示の式Iで示されるジアミン化合物と反応させて、ポリアミドを形成することができる。
【0069】
[ポリアミドの作製方法]
【0070】
いくつかの実施形態において、本開示のポリアミドは下記の方法により形成される。二酸化合物および/またはハロゲン化ジアシル化合物と本開示の式Iで示されるジアミン化合物とを反応させてポリアミドを形成する。
【0071】
[ポリウレア]
【0072】
いくつかの実施形態において、本開示の高分子は、下記一般式の繰り返し単位を含むポリウレアであり得る。
【0073】
【化17】
【0074】
上記一般式中、R4は、ジイソシアネート化合物から誘導される2価の有機基であり、Y1は、本開示の式Iで示されるジアミン化合物から誘導される残基である。前述したジイソシアネート化合物は、当該分野において周知である任意のジイソシアネート化合物であってよく、ここには例示しない。また、1つのジイソシアネート化合物を単独で用い、あるいは2つ以上のジイソシアネート化合物を組み合わせて用い、本開示の式Iで示されるジアミン化合物と反応させて、ポリウレアを形成することができる。
【0075】
[ポリウレアの作製方法]
【0076】
いくつかの実施形態において、本開示のポリウレアは下記の方法により形成される。ジイソシアネート化合物と本開示の式Iで示されるジアミン化合物とを反応させてポリウレアを形成する。
【0077】
[ポリイミン]
【0078】
いくつかの実施形態において、本開示の高分子は、下記一般式の繰り返し単位を含むポリイミンであり得る。
【0079】
【化18】
【0080】
上記一般式中、R3は、ジアルデヒド化合物から誘導される2価の有機基であり、Y1は、本開示の式Iで示されるジアミン化合物から誘導される残基である。前述したジアルデヒド化合物は、当該分野において周知である任意のジアルデヒド化合物であってよく、ここには例示しない。また、1つのジアルデヒド化合物を単独で用い、あるいは2つ以上のジアルデヒド化合物を組み合わせて用い、本開示の式Iで示されるジアミン化合物と反応させて、ポリイミンを形成することができる。
【0081】
[ポリイミンの作製方法]
【0082】
いくつかの実施形態において、本開示のポリイミンは下記の方法により形成される。ジアルデヒド化合物と本開示の式Iで示されるジアミン化合物とを反応させてポリイミンを形成する。
【0083】
[本開示の高分子の光学特性]
【0084】
いくつかの実施形態において、本開示の高分子の全光線透過率(T.T)は80%より高く、例えば82%、85%、88%、91%、94%、97%または99%である。
【0085】
いくつかの実施形態において、本開示の高分子の黄色度(YI)は5未満であり、3未満であると好ましく、2未満であるとより好ましい。例えば、4.5、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1または0.5である。
【0086】
いくつかの実施形態において、本開示の高分子のb*は3未満であり、2未満であると好ましく、1.5未満であるとより好ましい。例えば、2.8、2.5、2.3、1.8、1.4、1または0.5である。
【0087】
いくつかの実施形態において、本開示の高分子のヘーズは2.5%未満であり、2%未満であると好ましく、1%未満であるとより好しく、例えば,2.2%、1.8%、1.5%、1.2%、0.8%、0.5%、0.3%、0.2%または0.1%である。
【0088】
[本開示の高分子の物理化学特性]
【0089】
いくつかの実施形態において、本開示の高分子のガラス転移温度(Tg)は200℃より高く、230℃より高いと好ましく、250℃より高いとより好ましい。例えば,210℃、215℃、220℃、225℃、235℃、240℃、245℃、255℃、260℃、265℃、270℃、275℃または280℃である。
【0090】
いくつかの実施形態において、本開示の高分子の熱膨張係数(CTE)は55 ppm/℃未満であり、50ppm/℃未満であると好ましく、45ppm/℃であるとより好ましい。例えば53ppm/℃、48ppm/℃、46ppm/℃、43ppm/℃、41ppm/℃、39ppm/℃、36ppm/℃または33ppm/℃である。
【0091】
[本開示の高分子の用途]
【0092】
本開示の実施形態に基づいて、ジアミン化合物を含む高分子の用途を提供し、当該用途は、絶縁テープ、電線エナメル、保護コーティング、配向膜、透明基板、またはフィルムに用いるものであるが、これに限定はされない。
【0093】
いくつかの実施形態において、本開示のジアミン化合物を含む高分子は、電子デバイス中の素子に用いることができる。いくつかの実施形態において、"素子"は、光学素子、例えば透明フィルム、透明基板、透明シート(sheet)、または透明層等であってよいが、これに限定はされない。いくつかの実施形態において、"素子"は光学素子でないもの、例えば半導体素子であってよいが、これに限定はされない。
【0094】
本開示において、用語"電子デバイス"は、1つまたは複数の有機半導体層もしくは材料を含むデバイスを意味する。いくつかの実施形態において、電子デバイスには、限定はされないが、(1)電気エネルギーを放射に変換するデバイス(例えば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、ダイオードレーザー、または照明パネル)、(2)電子処理検出信号を使用するデバイス(例えば、光検出器、光導電セル、フォトレジスタ、光スイッチ、フォトトランジスタ、光電管、赤外(IR)検出器、またはバイオセンサー)、(3)放射を電気エネルギーに変換するデバイス(例えば、光起電デバイスまたは太陽電池)、(4)1つまたは複数の電子素子を含むデバイス(例えば、トランジスタまたはダイオード)が含まれる。上記電子デバイスには、1つもしくは複数の有機半導体層、または(1)から(4)のデバイスの任意の組み合わせが含まれる。
【0095】
いくつかの実施形態において、本開示の高分子は、液晶ディスプレイ(LCD)中の素子に用いることができる。いくつかの実施形態において、本開示の高分子は、ディスプレイ装置中のアライメント層に用いることができる。いくつかの実施形態において、本開示の高分子は、有機電子デバイス(例えば、有機発光ダイオード(organic light-emitting diode,OLED))中の素子に用いることができる。いくつかの実施形態において、本開示の高分子はカメラの透明保護光学フィルターに用いることができる。
【0096】
以下に、本開示の内容について数個の実施形態を提示して、本開示の内容の実施形態による高分子によって奏される効果、および本開示の内容を用いて作製される高分子の特性をより具体的に説明する。ただし、以下の実施形態は単に例示および説明の用に供するにすぎず、本開示の内容の実施を限定するものと解釈されてはならない。
【0097】
[作製例1] ジアミン化合物(テトラデカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノアントラセン-9,10-ジイル-ビス(4-アミノベンゾアート))
【0098】
【化19】
【0099】
ジオール化合物4の合成については、特許文献(WO2017209199 A1)に開示されている、関連する合成ステップを参照されたい。化合物1(1,4-ベンゾキノン(benzoquinone))と化合物2(ジシクロペンタジエン(dicyclopentadiene))とからジオール化合物4を合成した。
【0100】
ステップ3
【0101】
【化20】

【0102】
4-ニトロベンゾイルクロリド(1.5g,8.2mmol)を、ジオール化合物4(0.5g,2.0mmol)とピリジン21mLを含む溶液中に加え、その溶液を室温下で撹拌した。16時間後、白色の固体をろ過し、メタノール(20mL)で洗浄して、白色固体生成物(0.7g,63.1%)、つまりジエステル化合物5を得た。ジエステル化合物5のNMRスペクトルデータは次のようであった:1H NMR(400MHz,CDCl3,298K):δ=1.18(d,J=8.4Hz,1H),1.30(d,J=8.4Hz,1H),1.49-1.56(m,2H),2.19-2.30(m,2H),2.69-2.78(m,2H),2.89-2.98(m,4H),4.73-4.85(m,2H),6.29-6.32(m,2H),6.33-6.37(m,2H),8.21-8.27(m,4H),8.28-8.34(m,4H).MS:cald for C302728:m/z 543.2;found:543.2[M+H]+
【0103】
ステップ4
【0104】
【化21】
【0105】
ジエステル化合物5(0.6g,1.10mmol)をメタノール24mLおよびジクロロメタン72mL中に溶解し、5%Pd/C(0.06g)を加えた。その混合物を水素雰囲気下、室温で16時間撹拌した。その溶液をろ過、濃縮し、白色固体生成物(0.5g,93.2%)、つまりジアミン化合物6(テトラデカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノアントラセン-9,10-ジイル-ビス(4-アミノベンゾアート))を得た。ジアミン化合物6のNMRスペクトルデータは次のようであった:1H NMR(400MHz,CDCl3,298K):δ=1.20-1.42(m,6H),1.46-1.54(m,2H),1.63-1.75(m,2H),1.98-2.09(m,2H),2.17-2.24(m,2H),2.31-2.38(m,2H),2.67-2.81(m,4H),4.02(brs,4H),5.32-5.50(m,2H),6.59-6.66(m,4H),7.80-7.89(m,4H).MS:cald for C303424Na:m/z 509.2;found:509.6[M+Na]+
【0106】
[作製例2]ジアミン化合物(テトラデカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノアントラセン-9,10-ジイル-ビス(3-アミノベンゾアート))
【0107】
【化22】
【0108】
ジオール化合物4の合成については、特許文献(WO2017209199 A1)に開示されている、関連する合成ステップを参照されたい。1,4-ベンゾキノン(benzoquinone)とジシクロペンタジエン(dicyclopentadiene)とからジオール化合物4を合成した。
【0109】
3-ニトロベンゾイルクロリド(1.86g,10.0mmol)を、ジオール化合物4(1.0g,4.0mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(4-DMAP)(0.05g,0.04mmol)およびピリジン40mLを含む溶液中に加え、その溶液を室温下で撹拌した。16時間後、水200mLをその反応混合物中に加えた。白色の固体をろ過し、メタノールで洗浄して、白色固体生成物(1.5g,69%)、つまりジエステル化合物5’を得た。
【0110】
ジエステル化合物5’(0.5g,1.0mmol)をメタノール7.5mLおよびジクロロメタン15mL中に溶解し、10%Pd/C(0.05g)を加えた。その混合物を水素雰囲気下、室温で24時間撹拌した。その溶液をろ過、濃縮し、白色固体生成物(0.5g,92%)、つまりジアミン化合物6’(テトラデカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノアントラセン-9,10-ジイル-ビス(3-アミノベンゾアート))を得た。ジアミン化合物6’のNMRスペクトルデータは次のようであった:1H NMR(400MHz,CDCl3,298K):δ=1.26-1.45(m,6H),1.49-1.59(m,2H),1.64-1.72(m,2H),2.01-2.09(m,2H),2.18-2.28(m,2H),2.32-2.42(m,2H),2.71-2.85(m,4H),3.80(brs,4H),5.39-5.51(m,2H),6.82-6.90(m,2H),7.18-7.25(m,2H),7.32-7.37(m,2H),7.40-7.49(m,2H).MS:cald for C303524:m/z 487.3;found:487.3[M+H]+
【0111】
[作製例3]ジアミン化合物(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,5-ジイル-ビス(4-アミノベンゾアート))
【0112】
【化23】
【0113】
ステップ1
【0114】
【化24】
【0115】
1L丸底フラスコ中に、アルゴン雰囲気下で化合物7(2,5-ノルボルナジエン)(100g,1.08mol)および97%ギ酸(600mL)を加えた。120℃で反応させ24時間還流した後、ギ酸を留去し、真空蒸留(120~130℃,10mmHg/13.3mbar)により二ギ酸塩の透明液体を得た。その粗二ギ酸塩(198.7g,1.07mol)を3L丸底フラスコ中に入れ、THF(1.5L)中に溶解した。その溶液を0℃まで冷却し、30分以内に滴下漏斗でNaOH(424g)および水(600mL)を含む溶液を加えた。その反応混合物を室温で10時間撹拌した後、酢酸エチルで抽出した。その水層を塩化ナトリウムで飽和し、次いで、再度酢酸エチルで抽出した。合わせた有機物を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮して、無色固体生成物(100g)、つまりジオール化合物8を得た。ジオール化合物8のNMRスペクトルデータは次のようであった:1H NMR(400MHz,CDCl3,298K):δ=0.93-1.09(m,1H),1.17-1.25(m,1H),1.44-1.85(m,4H),1.96-2.29(m,4H),3.63-4.52(m,4H).GC/MS:[M-H]=127。
【0116】
ステップ2
【0117】
【化25】
【0118】
100mL丸底フラスコ中で、0~10℃にて、ジオール化合物8(1.0g,5.43mmol)をジクロロメタン(10mL)およびトリメチルアミン(1.65g,16.29mmol)中に溶解した。窒素雰囲気下で化合物9(4-ニトロベンゾイルクロリド)(2.22g,11.94mmol)を1時間かけて滴下して加えてから、室温に静置した。その溶液を室温で16時間撹拌した。反応完了後、その溶液を水100mLで3回洗浄し、有機層を回転式蒸発の方式で乾燥し、榲色固体(1.5g,69%)、つまりジニトロ化合物10を得た。ジニトロ化合物10のNMRスペクトルデータは次のようであった:1H NMR(400MHz,d6-DMSO,298K):δ=1.03-1.25(m,1H),1.32-1.44(m,1H),1.55-1.88(m,4H),1.93-2.61(m,4H),4.66-5.02(m,2H),8.14-8.37(m,8H);LC/MS:[M+Na]=449。
【0119】
ステップ3
【0120】
【化26】
【0121】
ジニトロ化合物10(1.0g,5.43mmol)をメタノール6mLおよびジクロロメタン24mL中に溶解し、10%Pd/C(0.1g)を加えた。その混合物を水素雰囲気下、室温で24時間撹拌した。その溶液をろ過して濃縮し、濃縮して白色固体生成物(0.73g,85%)、つまりジアミン化合物11(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,5-ジイル-ビス(4-アミノベンゾアート))を得た。ジアミン化合物11のNMRスペクトルデータは次のようであった:1H NMR(400MHz,d6-DMSO,298K):δ=1.29-1.35(m,1H),1.47-1.54(m,1H),1.58-1.98(m,4H),2.01-2.54(m,4H),4.53-4.82(m,2H),5.95-6.00(NH2,m,4H),6.53-6.58(m,4H),7.59-7.66(m,4H);LC/MS:[M+H]=367。
【0122】
[作製例4]ポリイミド
【0123】
GBL5gの入った100mL三口フラスコ中に、上記作製例1のジアミン化合物6(1.0852g,0.0022mole)およびTFMB(0.7143g,0.0022mole)を、ゆっくり窒素を流しながら入れた。TCA(1.0000g,0.0044mole)をその溶液中に加えてから、再度GBL5gを加えた。その混合物を室温下および窒素流中で24時間機械撹拌して、清澄な粘性溶液にした。GBL5gをその粘性溶液中に添加して希釈した。無水酢酸(Ac2O)3.6434g(0.03571mole)およびTPA3.8371g(0.02678mole)をその溶液中にゆっくり滴下し、加熱して60℃とし12時間おいた。反応完了後、その溶液をメタノール中に滴下し、メタノールを用いて3回洗浄した。次いで、固体をろ過し、真空オーブンで乾燥して純ポリイミド粉末を得た。
【0124】
上述の各成分は以下の化合物を表す。
【0125】
GBL:γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)(勝一化工社より購入)
【0126】
TFMB:2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ベンジジン(2,2'-bis(trifluoromethyl)benzidine)(士峰科技社より購入)
【0127】
TCA:3-(カルボキシメチル)-1,2,4-シクロペンタントリカルボン酸1,4:2,3-二無水物(3-(carboxymethyl)-1,2,4-cyclopentanetricarboxylic acid 1,4:2,3-dianhydride)(李長栄化学工業社製)
【0128】
TPA:トリフェニルアミン(triphenylamine)(TCIより購入)
【0129】
[作製例5] ポリイミドワニス
【0130】
作製例4で作製した白色ポリイミド粉末をGBL(15wt%)中に溶解し、真空下で脱気してワニスを形成した。
【0131】
[作製例6] ポリイミドフィルム
【0132】
ブレードコーターによりポリイミドワニスをガラス基板に塗布して湿潤フィルムを形成した。その湿潤フィルムをオーブンに入れて50℃で1時間、150℃で1時間、および200℃で2時間加熱することにより乾燥を行い、溶媒を除去してポリイミド膜を形成した。次いで、脱イオン水に浸すことによりポリイミド膜を基板から剥離した。下記のテスト方法でポリイミドフィルムの各種特性をそれぞれ測定した。
【0133】
[実施例1]ガラス転移温度テスト
【0134】
TA Instruments製の熱機械分析装置「TMA/Q400」を使用し、延伸フィルム用チャックを用いてガラス転移温度(glass transition temperature,Tg)分析を行った。サンプルを16mm×5mmにカットし、フィルム用チャックで試験片の両端を挟んで固定してTMA中にセットし、流速100ml/minの窒素ガスを流して保護雰囲気とし、一定の荷重0.05Nを印加し、50℃から開始して昇温速度10℃/minで350℃まで昇温した後、自然冷卻の方式で50℃まで戻してから、さらに10℃/minで500℃まで昇温した。TMA測定データにおける傾斜率が変化する点が、ガラス転移温度(Tg)である。
【0135】
[実施例2] 熱膨張係数測定
【0136】
TA Instruments製の熱機械分析装置「TMA/Q400」を使用し、延伸フィルム用チャックを用いて熱膨張係数(coefficient of thermal expansion,CTE)分析を行った。サンプルを16mm×5mmにカットし、フィルム用チャックで試験片の両端を挟んで固定してTMA中にセットし、流速100ml/minの窒素ガスを流して保護雰囲気とし、一定の荷重0.05Nを印加し、50℃から開始して昇温速度10℃/minで350℃まで昇温した後、自然冷卻の方式で50℃まで戻してから、さらに10℃/minで500℃まで昇温した。TMA測定データ中の50~200℃の傾斜率より、熱膨張係数(CTE)の数値を得た。
【0137】
[実施例3] 全光線透過率テスト
【0138】
ASTM D1003に従い、日本電色工業株式会社製の色度濁度同時測定器『CSP-001』を用いて全光線透過率(totaltransmittance,T.T)測定を行った。
【0139】
[実施例4] 黄色度テスト
【0140】
ASTM D1925に従い、日本電色工業株式会社製の色度濁度同時測定器『CSP-001』を用いて黄色度(yellownessindex,YI)測定を行った。
【0141】
[実施例5] b値(b*)テスト
【0142】
ASTM D1925に従い、日本電色工業株式会社製の色度濁度同時測定器『CSP-001』を用いてCIE L*a*b*座標測定を行った。
【0143】
[実施例6] ヘーズテスト
【0144】
ASTM D1003に従い、日本電色工業株式会社製の色度濁度同時測定器『CSP-001』を用いてヘーズ(haze)測定を行った。
【0145】
上述したテスト法により、作製例6で作製したポリイミドフィルムに対して化学物理特性のテストを行った。テスト結果は次の通りであった。ガラス転移温度283℃、熱膨張係数35ppm/℃、全光線透過率90.4%、ヘーズ0.2%、黄色度1.65、b値(b*)0.85。
【0146】
本開示が提供する新規なジアミン(diamine)化合物は、非共役系のノルボルナン環(norbornane)構造を含む。かかる新規なジアミン化合物は非共役系のノルボルナン環構造を有するため、これにより合成される高分子の光学特性(例えば全光線透過率、黄色度、b値、およびヘーズ)を高めることができる。また、例えばシクロヘキシル基とノルボルナン基とが縮合した巨大環状構造が、化合物の分子にさらなる剛直性を持たせ得ることにより、回転しにくい構造となって、高分子材料のさらなる寸法安定性の向上、熱膨張係数(CTE)の低減が図られる。よって、本開示の脂環式炭化水素基を含むジアミン化合物は、電子デバイス中におけるフレキシブル材料の重要な組成として、それにより合成される高分子に優れた耐熱性および光学特性を持たせることができる。また、本開示のジアミン化合物は、非常に多くの種類の高分子材料、例えばポリイミド、ポリアミド酸、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリウレアまたはポリイミンを合成することができるものであるため、本開示は、例えば材料の耐熱性または光学特性に対し要求の多い各種産業分野に広く利用され得る。
【0147】
以上、いくつかの実施形態について述べ、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が本発明の実施形態の観点をよりよく理解できるようにした。本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本発明の実施形態を基にして、その他のプロセスおよび構造を設計または変更し、ここに紹介した実施形態と同一の目的および/またはメリットを実現することができる。また本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、かかる均等なプロセスおよび構造は、本発明の精神および範囲に反することはなく、かつ本発明の精神および範囲を逸脱せずに、各種の変化、置換および交換が可能であるということも、理解するはずである。