(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】コンピュータプログラム、情報処理方法、情報処理装置及びモデル生成方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/12 20060101AFI20241021BHJP
【FI】
A61B8/12
(21)【出願番号】P 2022511734
(86)(22)【出願日】2021-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2021009343
(87)【国際公開番号】W WO2021199968
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2020061513
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】坂口 雄紀
(72)【発明者】
【氏名】関 悠介
(72)【発明者】
【氏名】井口 陽
【審査官】井海田 隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0247414(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0262733(US,A1)
【文献】国際公開第2015/136853(WO,A1)
【文献】特開2012-075702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 ー 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本幹と、該本幹から枝分かれした側枝と、本幹及び側枝の分岐部とを有する管腔器官に挿入されたカテーテルにて、センサを管腔器官の長手方向に沿って移動させながら検出した信号に基づき生成された複数の医用画像を取得し、
本幹断面、側枝断面及び分岐部断面を認識する学習モデルに、取得した医用画像を入力することによって、前記本幹断面、前記側枝断面及び前記分岐部断面を認識する
処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項2】
前記学習モデルに、取得した第1の医用画像を入力することによって、少なくとも本幹断面又は側枝断面を認識し、
前記学習モデルに、取得した第2の医用画像を入力することによって、前記分岐部断面を認識し、
第1の医用画像に基づく認識結果に基づいて、前記分岐部断面を構成する本幹部分及び側枝部分を判別する
処理をコンピュータに実行させるための請求項1に記載のコンピュータプログラム。
【請求項3】
複数の第1の医用画像に基づく認識結果に基づいて、本幹と側枝の分岐構造を特定し、
特定された分岐構造に基づいて、前記分岐部断面に含まれる本幹部分及び側枝部分を特定する
処理をコンピュータに実行させるための請求項2に記載のコンピュータプログラム。
【請求項4】
前記学習モデルは、前記分岐部に形成されたプラークを認識するようにしてあり、
前記学習モデルに、取得した第2の医用画像を入力することによって、前記分岐部断面及びプラークを認識し、
前記分岐構造に基づいて、前記分岐部断面に含まれるプラーク部分を特定する
処理をコンピュータに実行させるための請求項3に記載のコンピュータプログラム。
【請求項5】
複数の第1の医用画像に基づく認識結果に基づいて、本幹と側枝の分岐構造を特定して、側枝の断面径、断面積又は単位長あたりの体積を算出する
処理をコンピュータに実行させるための請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項6】
複数の第1の医用画像に基づく認識結果に基づいて、本幹及び側枝の分岐構造を特定して、本幹及び側枝のモデル画像を生成する
請求項2から請求項5のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項7】
分岐部断面を含む医用画像に、本幹部分又は側枝部分を示す画像を重畳させる
処理をコンピュータに実行させるための請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項8】
管腔器官は血管であり、前記カテーテルにて検出した信号に基づき生成された血管の医用画像を取得する
処理をコンピュータに実行させるための請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項9】
コンピュータが、本幹と、該本幹から枝分かれした側枝と、本幹及び側枝の分岐部とを有する管腔器官に挿入されたカテーテルにて、センサを管腔器官の長手方向に沿って移動させながら検出した信号に基づき生成された複数の医用画像を取得し、
本幹断面、側枝断面及び分岐部断面を認識する学習モデルに、取得した医用画像を入力することによって、前記本幹断面、前記側枝断面及び前記分岐部断面を認識する
処理
を実行する情報処理方法。
【請求項10】
本幹と、該本幹から枝分かれした側枝と、本幹及び側枝の分岐部とを有する管腔器官に挿入されたカテーテルにて、センサを管腔器官の長手方向に沿って移動させながら検出した信号に基づき生成された複数の医用画像を取得する取得部と、
取得した医用画像が入力された場合、本幹断面、側枝断面及び分岐部断面を認識し、前記本幹断面、前記側枝断面及び前記分岐部断面を示す情報を出力する学習モデルと
を備える情報処理装置。
【請求項11】
コンピュータが、本幹と、該本幹から枝分かれした側枝と、本幹及び側枝の分岐部とを有する管腔器官に挿入されたカテーテルにて、センサを管腔器官の長手方向に沿って移動させながら検出した信号に基づき生成された、本幹断面を含む複数の医用画像と、本幹断面及び側枝断面を含む複数の医用画像と、分岐部断面を含む複数の医用画像と
を収集し、
収集した本幹断面を含む複数の医用画像と、本幹断面及び側枝断面を含む複数の医用画像と、分岐部断面を含む複数の医用画像とに対して、管腔断面であることを示すデータが付された訓練データを生成し、
生成した前記訓練データに基づいて、医用画像を入力した場合に、前記本幹断面、前記側枝断面及び前記分岐部断面を認識する学習モデルを生成する
処理
を実行するモデル生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンピュータプログラム、情報処理方法、情報処理装置及びモデル生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルを用いた血管内超音波(IVUS:Intra Vascular Ultra Sound)法によって血管の超音波断層像を含む医用画像を生成し、血管内の超音波検査を行うことが行われている。血管内超音波法においては、血管内診断用カテーテルは血管の遠位から近位まで超音波センサを移動させ、血管、及びその周辺組織をスキャンする。
【0003】
一方で、医師の診断の補助を目的に、医用画像に画像処理や機械学習により情報を付加する技術の開発が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、1枚の断層像において血管の分岐部の内腔境界を画像認識し、血管の本幹及び側枝を判別することが難しく、医用画像に有用な情報付加を行えないという問題があった。
【0006】
本開示の目的は、管腔器官をスキャンして得た医用画像を解析し、血管の本幹及び側枝を認識することができるコンピュータプログラム、情報処理方法、情報処理装置及びモデル生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るコンピュータプログラムは、本幹と、該本幹から枝分かれした側枝と、本幹及び側枝の分岐部とを有する管腔器官に挿入されたカテーテルにて、センサを管腔器官の長手方向に沿って移動させながら検出した信号に基づき生成された複数の医用画像を取得し、本幹断面、側枝断面及び分岐部断面を認識する学習モデルに、取得した医用画像を入力することによって、前記本幹断面、前記側枝断面及び前記分岐部断面を認識する処理をコンピュータに実行させる。
【0008】
本開示に係る情報処理方法は、本幹と、該本幹から枝分かれした側枝と、本幹及び側枝の分岐部とを有する管腔器官に挿入されたカテーテルにて、センサを管腔器官の長手方向に沿って移動させながら検出した信号に基づき生成された複数の医用画像を取得し、本幹断面、側枝断面及び分岐部断面を認識する学習モデルに、取得した医用画像を入力することによって、前記本幹断面、前記側枝断面及び前記分岐部断面を認識する処理をコンピュータが実行する。
【0009】
本開示に係る情報処理装置は、本幹と、該本幹から枝分かれした側枝と、本幹及び側枝の分岐部とを有する管腔器官に挿入されたカテーテルにて、センサを管腔器官の長手方向に沿って移動させながら検出した信号に基づき生成された複数の医用画像を取得する取得部と、取得した医用画像が入力された場合、本幹断面、側枝断面及び分岐部断面を認識し、前記本幹断面、前記側枝断面及び前記分岐部断面を示す情報を出力する学習モデルとを備える。
【0010】
本開示に係るモデル生成方法は、本幹と、該本幹から枝分かれした側枝と、本幹及び側枝の分岐部とを有する管腔器官に挿入されたカテーテルにて、センサを管腔器官の長手方向に沿って移動させながら検出した信号に基づき生成された、本幹断面を含む複数の医用画像と、本幹断面及び側枝断面を含む複数の医用画像と、分岐部断面を含む複数の医用画像とに対して、管腔断面であることを示すデータが付された訓練データを生成し、生成した前記訓練データに基づいて、医用画像を入力した場合に、前記本幹断面、前記側枝断面及び前記分岐部断面を認識する学習モデルを生成する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、管腔器官をスキャンして得た医用画像を解析し、血管の本幹及び側枝を認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】画像処理装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】学習モデルを用いた画像認識方法を示す説明図である。
【
図5】枝分かれした血管をスキャンして得られる血管の断層像を示す説明図である。
【
図6】実施形態1に係る情報処理方法の手順を示すフローチャートである。
【
図7】血管の分岐構造の特定方法を示す血管の側面図である。
【
図8】血管の分岐構造の特定方法を示す血管の断面図である。
【
図10】実施形態2に係る情報処理方法の手順を示すフローチャートである。
【
図11A】本幹及び側枝のモデル画像を示す説明図である。
【
図11B】本幹及び側枝のモデル画像を示す説明図である。
【
図11C】本幹及び側枝のモデル画像を示す説明図である。
【
図12】画像診断システムの構成例を示す説明図である。
【
図13】情報処理装置の構成例を示すブロック図である。
【
図14】学習モデルの生成方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係るコンピュータプログラム、情報処理方法、情報処理装置及びモデル生成方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。
【0014】
(実施形態1)
図1は、画像診断装置100の構成例を示す説明図である。画像診断装置100は、血管内超音波(IVUS:Intra Vascular Ultra Sound)法によって血管(管腔器官)の超音波断層像を含む医用画像を生成し、血管内の超音波検査及び診断を行うための装置である。特に、実施形態1に係る画像診断装置100は、血管の分岐構造を分析することによって、枝分かれした本幹A及び側枝Bを判別し、分岐構造を示すガイド画像G1,G2(
図9参照)を医用画像に重畳表示するものである。
【0015】
画像診断装置100は、カテーテル1、MDU(Motor Drive Unit)2、画像処理装置(情報処理装置)3、表示装置4及び入力装置5を備える。画像診断装置100は、カテーテル1を用いたIVUS法によって血管の超音波断層像を含む医用画像を生成し、血管内の超音波検査を行う。
【0016】
カテーテル1は、IVUS法によって血管の超音波断層像を得るための画像診断用カテーテルである。カテーテル1は、血管の超音波断層像を得るための超音波プローブを先端部に有する。超音波プローブは、血管内において超音波を発する超音波振動子と、血管の生体組織又は医用機器で反射された反射波(超音波エコー)を受信する超音波センサとを有する。超音波プローブは、血管の周方向に回転しながら、血管の長手方向に進退可能に構成されている。
【0017】
MDU2は、カテーテル1が着脱可能に取り付けられる駆動装置であり、医療従事者の操作に応じて内蔵モータを駆動することにより、血管内に挿入されたカテーテル1の動作を制御する。MDU2は、カテーテル1の超音波プローブを先端(遠位)側から基端(近位)側へ移動させながら周方向に回転させる(
図3参照)。超音波プローブは、所定の時間間隔で連続的に血管内を走査し、検出された超音波の反射波データを画像処理装置3へ出力する。
【0018】
画像処理装置3は、カテーテル1の超音波プローブから出力された反射波データに基づいて、血管の断層像を含む時系列順の複数の医用画像を生成する(
図3参照)。超音波プローブは、血管内を先端(遠位)側から基端(近位)側へ移動しながら血管内を走査するため、時系列順の複数の医用画像は、遠位から近位にわたる複数箇所で観測された血管の断層画像ということになる。
【0019】
表示装置4は、液晶表示パネル、有機EL表示パネル等であり、画像処理装置3によって生成された医用画像を表示する。
【0020】
入力装置5は、検査を行う際の各種設定値の入力、画像処理装置3の操作等を受け付けるキーボード、マウス等の入力インターフェースである。入力装置5は、表示装置4に設けられたタッチパネル、ソフトキー、ハードキー等であっても良い。
【0021】
図2は、画像処理装置3の構成例を示すブロック図である。画像処理装置3はコンピュータであり、制御部31、主記憶部32、入出力I/F33、及び補助記憶部34を備える。
【0022】
制御部31は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、GPGPU(General-purpose computing on graphics processing units)、TPU(Tensor Processing Unit)等の演算処理装置を用いて構成されている。
【0023】
主記憶部32は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の一時記憶領域であり、制御部31が演算処理を実行するために必要なデータを一時的に記憶する。
【0024】
入出力I/F33は、カテーテル1、表示装置4及び入力装置5が接続されるインターフェースである。制御部31は、入出力I/F33を介して、超音波プローブから出力された反射波データを取得する。また、制御部31は、入出力I/F33を介して、医用画像信号を表示装置4へ出力する。更に、制御部31は、入出力I/F33を介して、入力装置5に入力された情報を受け付ける。
【0025】
補助記憶部34は、ハードディスク、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等の記憶装置である。補助記憶部34は、制御部31が実行するコンピュータプログラムP、制御部31の処理に必要な各種のデータを記憶する。また、補助記憶部34は、学習モデル341を記憶する。
【0026】
学習モデル341は、医用画像に含まれる所定のオブジェクトを認識するモデルである。学習モデル341は、例えば、セマンティックセグメンテーション(Semantic Segmentation)を用いた画像認識技術を利用することにより、オブジェクトを画素単位でクラス分けすることができ、医用画像に含まれる血管の内腔境界を認識することができる。
【0027】
なお、補助記憶部34は画像処理装置3に接続された外部記憶装置であってもよい。コンピュータプログラムPは、画像処理装置3の製造段階において補助記憶部34に書き込まれてもよいし、遠隔のサーバ装置が配信するものを画像処理装置3が通信にて取得して補助記憶部34に記憶させても。コンピュータプログラムPは、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体3aに読み出し可能に記録された態様であってもよい。
【0028】
制御部31は、補助記憶部34に記憶されたコンピュータプログラムPを読み出して実行することにより、画像診断装置100で生成された医用画像を取得し、医用画像に含まれる血管の内腔境界を検出する処理を実行する。具体的には、制御部31は、学習モデル341を用いて医用画像における内腔境界の画像領域を検出する。特に、実施形態1の制御部31は、血管の分岐部における本幹A及び側枝Bを判別する機能を有する。そして、画像処理装置3は、内腔境界の認識結果を画像診断装置100に出力し、医療従事者が結果の本幹A及び側枝Bの内腔境界を認識し易いように、本幹A及び側枝Bの位置及び領域を示すガイド画像G1,G2(
図9参照)を表示させる。
【0029】
図3は、学習モデル341を用いた画像認識方法を示す説明図である。学習モデル341は、医用画像における血管の内腔境界の領域を画素単位で認識できるように学習されている。
【0030】
学習モデル341は、例えば深層学習による学習済みの畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional neural network)である。学習モデル341は、いわゆるセマンティックセグメンテーション(Semantic Segmentation)を用いた画像認識技術により、オブジェクトを画素単位で認識する。
学習モデル341は、医用画像が入力される入力層341aと、画像の特徴量を抽出し復元する中間層341bと、医用画像に含まれるオブジェクトを画素単位で示すラベル画像を出力する出力層341cとを有する。学習モデル341は、例えばU-Netである。
【0031】
学習モデル341の入力層341aは、医用画像に含まれる各画素の画素値の入力を受け付ける複数のニューロンを有し、入力された画素値を中間層341bに受け渡す。中間層341bは、畳み込み層(CONV層)と、逆畳み込み層(DECONV層)とを有する。畳み込み層は、画像データを次元圧縮する層である。次元圧縮により、オブジェクトの特徴量が抽出される。逆畳み込み層は逆畳み込み処理を行い、元の次元に復元する。逆畳み込み層における復元処理により、画像内の各画素がオブジェクトであるか否かを示す二値化されたラベル画像が生成される。出力層341cは、ラベル画像を出力する一又は複数のニューロンを有する。ラベル画像は、例えば、血管の内腔境界に対応する画素がクラス「1」、その他の画像に対応する画素がクラス「0」の画像である。
【0032】
学習モデル341は、本幹Aを含む医用画像と、当該医用画像における本幹Aの内腔境界の画素及び中心位置を示すラベル画像と、完全に離隔した本幹A及び側枝Bを含む医用画像と、当該医用画像における本幹A及び側枝Bの内腔境界の画素及び中心位置を示すラベル画像と、本幹A及び側枝Bの分岐部を含む医用画像と、当該医用画像における分岐部の内腔境界の画素を示すラベル画像とを有する訓練データを用意し、当該訓練データを用いて未学習のニューラルネットワークを機械学習させることにより生成することができる。分岐部を含む医用画像においては、本幹断面及び側枝断面が結合している。
【0033】
このように学習された学習モデル341によれば、
図3に示すように本幹Aを含む医用画像を学習モデル341に入力することによって、本幹Aの内腔境界の領域を画素単位で示すラベル画像が得られる。また、学習モデル341に、本幹A及び側枝Bの双方を含む医用画像を学習モデル341に入力することによって、本幹A及び側枝Bの領域を画素単位示すラベル画像が得られる。更に、学習モデル341に、本幹A及び側枝Bの分岐部を含む医用画像を学習モデル341に入力することによって、分岐部の領域を画素単位で示すラベル画像が得られる。ここで得られるラベル画像においては、本幹A及び側枝Bは判別されずに出力される。
【0034】
図4は、枝分かれした血管を示す説明図、
図5は、枝分かれした血管をスキャンして得られる血管の断層像を示す説明図である。
図4中、符号a~fで示す面における断層像は、
図5のようになる。本幹Aと、当該本幹Aから枝分かれした側枝Bとが完全に離隔している場合(符号fで示す断面)、医用画像における本幹A及び側枝Bを容易に理解することができる。しかし、血管の分岐部分においては(符号c、符号d、符号eで示す断面など)、本幹A及び側枝Bの構造を容易に理解することができない。
【0035】
本実施形態1に係る画像処理装置3は、このような分岐部の本幹A及び側枝Bの構造を認識し、医療従事者による分岐構造の認識を支援するガイド画像G1,G2を表示する処理を実行する。
【0036】
図6は、情報処理方法の手順を示すフローチャート、
図7は、血管の分岐構造の特定方法を示す血管の側面図、
図8は、血管の分岐構造の特定方法を示す血管の断面図である。
【0037】
制御部31は、時系列順の複数の医用画像を画像診断装置100から取得する(ステップS11)。ここで取得した時系列順の複数の医用画像は、例えば血管の遠位から近位にわたって観測された断層像の画像である。
【0038】
制御部31は、遠位部における複数の医用画像を選択する(ステップS12)。制御部31は、少なくとも、完全に離隔した本幹A及び側枝Bを含む2枚の医用画像を選択すればよい。例えば、制御部31は、
図7に示すように切断面fにおける医用画像と、切断面gにおける医用画像を選択すればよい。
【0039】
そして、制御部31は、ステップS12で選択した医用画像を学習モデル341に入力することによって、医用画像に含まれる本幹A及び側枝Bの内腔境界及び中心位置を検出する(ステップS13)。
【0040】
次いで、制御部31は、
図8に示すようにステップS13の検出結果に基づいて、血管の分岐構造を特定する(ステップS14)。ステップS12で選択した2枚の画像の撮像時の時間差は、本幹Aの長手方向の長さに対応している。具体的には、血管走査時の超音波プローブの移動速度と当該時間差との積は、2枚の医用画像が撮像された箇所の長さに対応する。
図8中、2つの医用画像に含まれる本幹Aの中心を通る直線(破線)は、本幹Aの中心線を示す。また、2つの医用画像に含まれる側枝Bの中心を通る直線(破線)は、側枝Bの中心線を示す。
【0041】
スキャン時点t1で撮像された本幹Aの中心座標が(x1,y1)、スキャン時点t2=t+Δtで撮像された本幹Aの中心座標が(x2,y2)である場合、スキャン時点tN=t+NΔtで撮像される分岐部における本幹Aの中心座標(xN,yN)は下記式(1),(2)で表される。
xN=x1+(x2-x1)×N…(1)
yN=y1+(y2-y1)×N…(2)
【0042】
スキャン時点t1で撮像された本幹Aの径r1、スキャン時点t2=t+Δtで撮像された本幹Aの径r2である場合、スキャン時点tN=t+NΔtで撮像される分岐部における本幹Aの中心座標rNは下記式(3)で表される。
rN=r1+(r2-r1)×N…(3)
【0043】
上記式(3)は一つの径を説明するものであるが、本幹Aの長径及び短径についても、同様にして算出することができる。
【0044】
また上記式(1)~(3)は、2つの医用画像から得られる本件の中心位置及び径に基づく線形補間により、分岐部における血管の中心位置及び径を推測する例を説明したが、3つ以上の医用画像における血管の中心位置に基づく多項式補間により、他の医用画像における血管の中心位置及び径を算出してもよい。
【0045】
同様にして、本幹Aの内腔境界の径を推定するとよい。また、側枝Bについても同様の方法で、医用画像における中心位置及び径を算出することができる。
【0046】
制御部31は、本幹Aの内腔境界を示す直線と、側枝Bの内腔境界を示す直線が交わる領域を分岐部として特定する。
【0047】
ステップS14の処理を終えた制御部31は、分岐部における医用画像を選択し(ステップS15)、医用画像に含まれる本幹A及び側枝Bの内腔境界を検出する(ステップS16)。分岐部における本幹Aの内腔境界の領域と、側枝Bの内腔境界の領域とは、部分的に結合したような領域として認識される。
【0048】
そして、制御部31は、ステップS14で特定した分岐部の構造を示す情報に基づいて、ステップS16で検出された内腔境界の領域における、本幹A部分と側枝B部分とを特定する(ステップS17)。ステップS14で特定した分岐部の構造の情報により、分岐部の医用画像における本幹Aの中心位置及び径を求めることができる。つまり、制御部31は、医用画像における本幹Aを示す楕円線を求めることができる。制御部31は、ステップS16で検出される内腔境界のうち、分岐部の構造の情報から得られる本幹Aの楕円線近傍にある領域を本幹Aの内腔境界として認識することができる。
同様にして、制御部31は、ステップS16で検出される内腔境界のうち、分岐部の構造の情報から得られる側枝Bの楕円線近傍にある領域を本幹Aの内腔境界として認識することができる。
【0049】
次いで、制御部31は、分岐部よりも近位部における医用画像を選択する(ステップS18)。分岐が一つであるとすれば、ステップS18で選択される医用画像には本幹Aのみが含まれることになる。制御部31は、近位部における医用画像に含まれる本幹Aの内腔境界及び中心位置を検出する(ステップS19)。
【0050】
そして、制御部31は、医用画像における本幹A部分及び側枝B部分を示すガイド画像G1,G2を医用画像に重畳して表示する(ステップS20)。
【0051】
図9は、ガイド画像G1,G2の表示例を示す説明図である。分岐部の医用画像においては、
図9に示すように本幹A及び側枝Bの断面が部分的に結合しており、本幹A部分の内腔境界と、側枝B部分の内腔境界とを明瞭に判別することは難しい。そこで、制御部31は、医用画像における本幹Aの内腔境界の領域に対応するガイド画像G1を医用画像に重畳させて表示させる。ガイド画像G1は、本幹Aの内腔境界の領域と略同形の画像である。
また、制御部31は、医用画像における側枝Bの内腔境界の領域に対応するガイド画像G2を医用画像に重畳させて表示させる。ガイド画像G2は、側枝Bの内腔境界の領域と略同形の画像である。
【0052】
なお、制御部31は、ガイド画像G1と、ガイド画像G2とを異なる態様でガイド画像G1,G2を表示してもよい。例えば、線種、色が異なるガイド画像G1,G2を表示するとよい。また、医用画像にガイド画像G1,G2を重畳させた画像と共に、ガイド画像G1,G2が重畳されていない元の画像を並べて表示するように構成してもよい。更に、ガイド画像G1,G2が重畳された画像と、ガイド画像G1,G2が重畳されていない元の画像とを選択的に切り換えて表示するように構成してもよい。
【0053】
また、制御部31は、医用画像に表れていない本幹A又は側枝Bの内腔境界を補完するようにガイド画像G1,G2を表示してもよい。例えば、
図9に示す例では、環状であるはずの内腔境界の一部が欠けているが、この欠けている部分を推定して本幹Aの内腔境界、側枝Bの内腔境界を表示してもよい。
【0054】
このように構成されたコンピュータプログラムP、画像処理装置3及び情報処理方法によれば、血管をスキャンして得た医用画像を解析し、血管の本幹A及び側枝Bを認識することができる。
【0055】
また、血管の本幹A及び側枝Bの内腔境界を示すガイド画像G1,G2を表示し、医療従事者による本幹A及び側枝Bの内腔境界の認識を支援することができる。
【0056】
なお、本実施形態1で説明した画像処理装置3、コンピュータプログラムP、情報処理方法は一例であり、実施形態1の構成に限定されるものではない。
【0057】
例えば、本実施形態1では、観察ないし診断対象として血管を例示したが、血管以外の腸等の管腔器官を観察する場合にも本発明を適用することができる。
【0058】
また、医用画像の一例として超音波画像を説明したが、医用画像は超音波画像に限定されない。医用画像は、例えばOCT(Optical Coherence Tomography)画像などであってもよい。
【0059】
(実施形態2)
実施形態2に係る画像処理装置は、血管の内腔境界及びプラークを認識する点、本幹A及び側枝Bの径、断面積、体積等を算出して表示することができる点、分岐構造を再現したモデル画像を生成して表示することができる点が実施形態1と異なるため、以下では主に上記相違点を説明する。その他の構成及び作用効果は実施形態1と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0060】
実施形態2に係る学習モデル341は、例えば医用画像に含まれ血管の内腔境界及びプラークを認識するモデルである。
【0061】
図10は、実施形態2に係る情報処理方法の手順を示すフローチャートである。実施形態2に係る制御部31は、実施形態1のステップS11~ステップS20と同様の処理を実行するが、ステップS33,ステップS36及びステップS39において、血管の内腔境界及びプラークを検出する。
【0062】
次いで、制御部31は、医用画像にプラークを示すガイド画像を重畳して表示する(ステップS40)。なお、医療従事者は、入力装置5を用いて、プラーク示すガイド画像の要否を選択することができる。制御部31は、ガイド画像が不要である旨を受け付けた場合、ガイド画像を表示せず、ガイド画像が必要である旨を受け付けた場合、ガイド画像を表示する。
【0063】
次いで、制御部31は、本幹Aの内腔の断面径、断面積又は単位長当たりの体積を算出し、算出した本幹Aの内腔の断面径、断面積及び体積を表示装置4に重畳表示する(ステップS41)。
同様に、制御部31は、ステップS34にて特定された分岐構造に基づいて、側枝Bの内腔の断面径、断面積又は単位長当たりの体積を算出し、算出した側枝Bの内腔の断面径、断面積及び体積を表示装置4に表示する(ステップS42)。ただし、本幹Aに挿通するカテーテル1で走査された側枝Bの断層像は、
図8に示すように、側枝Bを斜めに切ったような断層像(以下、斜断層像と呼ぶ)である。このため、制御部31は、側枝Bを略垂直に切った断層像、すなわち側枝Bの中心線に対して略垂直な面で切った断層像(以下、アキシャル断層像と呼ぶ)における内腔の断面径、断面積又は体積に換算する。例えば、本幹Aの中心線と、側枝Bの中心線との交わる角度θを算出し、角度θを用いて斜断層像をアキシャル像に変換し、側枝Bの内腔の断面径、断面積又は単位長当たりの体積を算出すればよい。
【0064】
次いで、制御部31は、ステップS34で算出した分岐構造と、医用画像に基づいて検出された内腔境界及びプラークの認識結果とに基づいて、血管の分岐構造を表したモデル画像を再生し、表示装置4に表示する(ステップS43)。
【0065】
図11A~
図11Cは、本幹A及び側枝Bのモデル画像を示す説明図である。制御部31は、例えば、
図11A~
図11C上図に示すように、血管の横断面をモデル画像として生成するとよい。当該モデル画像は血管の血管壁部、内腔境界及びプラーク部分を示している。
また、制御部31は、
図11A~
図11C下図に示すように、本幹A及び側枝Bの断面画像をモデル画像として生成するとよい。当該モデル画像も血管の血管壁部、内腔境界及びプラーク部分を示している。更に、制御部31は、側枝Bの断面画像を生成する際、アキシャル像に変換したモデル画像を生成するとよい。
【0066】
このように構成されたコンピュータプログラムP、画像処理装置3及び情報処理方法によれば、血管壁に形成されたプラークを示すガイド画像を表示し、医療従事者によるプラーク部分の認識を支援することができる。
【0067】
また、本幹A及び側枝Bの内腔の断面径、面積及び体積を算出して表示することができる。
【0068】
更に、分岐構造を表すモデル画像を生成して表示することができ、医療従事者による血管の分岐部分の認識を支援することができる。特に本幹A及び側枝Bの内腔境界及びプラークを表示する横断面のモデル画像を表示することによって、血管に形成されたプラークをより認識し易くすることができる。
【0069】
更にまた、本幹A及び側枝Bのアキシャル断面を表示することによって、結果に形成されたプラークをより認識し易くすることができる。
【0070】
(実施形態3)
図12は、画像診断システムの構成例を示す説明図である。実施形態3に係る画像診断システムは、医用画像の解析処理をサーバである情報処理装置6が実行する点が異なるため、以下では主に上記相違点を説明する。その他の構成及び作用効果は実施形態1又は2と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0071】
実施形態3に係る画像診断システムは、情報処理装置6、画像診断装置200を備える。情報処理装置6及び画像診断装置200は、LAN(Local Area Network)、インターネット等のネットワークNを介して通信接続されている。情報処理装置6及び画像診断装置200は、LAN(Local Area Network)、インターネット等のネットワークNを介して通信接続されている。
【0072】
図13は、情報処理装置6の構成例を示すブロック図である。情報処理装置6はコンピュータであり、制御部61、主記憶部62、通信部63、及び補助記憶部64を備える。通信部63は、ネットワークNを介して画像処理装置3との間でデータを送受信するための通信回路である。制御部61、主記憶部62、通信部63及び補助記憶部64のハードウェア構成は、実施形態1で説明した画像処理装置3と同様である。補助記憶部64が記憶するコンピュータプログラムP,学習モデル641、記録媒体6aも、実施形態1又は2の各種プログラム及びモデル等と同様である。
なお、情報処理装置6は複数のコンピュータからなるマルチコンピュータであっても良く、ソフトウェアによって仮想的に構築された仮想マシンであってもよい。情報処理装置6は画像診断装置200と同じ施設(病院等)に設置されたローカルサーバであってもよく、インターネット等を介して画像診断装置200に通信接続されたクラウドサーバであってもよい。
【0073】
図14は、学習モデル641の生成方法を示すフローチャートである。制御部61は、本幹断面を含む複数の医用画像を収集する(ステップS51)。例えば、制御部61は、画像診断装置200から医用画像を収集する。
【0074】
次いで、制御部61は、本幹断面及び側枝断面を含む複数の医用画像を収集する(ステップS52)。同様に、制御部61は、分岐部断面を含む複数の医用画像を収集する(ステップS53)。
【0075】
また、制御部61は、プラークが形成された本幹断面を含む複数の医用画像を収集する(ステップS54)。また、制御部61は、プラークが形成された本幹断面及び側枝断面を含む複数の医用画像を収集する(ステップS55)。同様に、制御部61は、プラークが形成された分岐部断面を含む複数の医用画像を収集する(ステップS56)。
【0076】
次いで、制御部61は、ステップS51~ステップS56で収集した医用画像にラベル画像を対応付けた訓練データを生成する(ステップS57)。本幹断面を含む医用画像のラベル画像は、本幹Aの内腔境界及びプラークの画素を示す画像である。本幹断面及び側枝断面を含む医用画像のラベル画像は、本幹A及び側枝Bの内腔境界及びプラークの画素を示す画像である。分岐部断面を含む医用画像のラベル画像は、本幹A及び側枝Bの分岐部の内腔境界及びプラークの画素を示す画像である。プラークが形成された本幹断面を含む医用画像のラベル画像は、本幹Aの内腔境界及びプラークの画素並びにプラークの画素を示す画像である。プラークが形成された本幹断面及び側枝断面を含む医用画像のラベル画像は、本幹A及び側枝Bの内腔境界及びプラークの画素並びにプラークの画素を示す画像である。プラークが形成された分岐部断面を含む医用画像のラベル画像は、本幹A及び側枝Bの分岐部の内腔境界及びプラークの画素並びにプラークの画素を示す画像である。
【0077】
そして、制御部61は、生成した訓練データを用いて未学習のニューラルネットワークを機械学習させることにより、学習モデル641を生成する(ステップS58)。
【0078】
このように学習された学習モデル641によれば、本幹Aを含む医用画像を学習モデル641に入力することによって、本幹Aの内腔境界の領域及びプラーク部分の領域を画素単位で示すラベル画像が得られる。また、学習モデル641に、本幹A及び側枝Bの双方を含む医用画像を学習モデル641に入力することによって、本幹A及び側枝Bの領域並びにプラーク部分の領域を画素単位で示すラベル画像が得られる。本幹A及び側枝Bの分岐部を含む医用画像を学習モデル641に入力することによって、分岐部の内腔境界の領域並びにプラーク部分の領域を画素単位で示すラベル画像が得られる。
【0079】
このように構成された情報処理装置6は、ネットワークNを介して画像処理装置3から医用画像を取得し、取得した医用画像に基づいて、実施形態1の画像処理装置3と同様の処理を実行し、オブジェクトの認識結果を画像装置へ送信する。画像処理装置3は、情報処理装置6から送信されたオブジェクトの認識結果を取得し、
図9に示すように血管の本幹A及び側枝Bの領域を示すガイド画像G1,G2を医用画像に重畳させて表示装置4に表示させる。
【0080】
実施形態3に係る情報処理装置6、コンピュータプログラムP及び情報処理方法においても実施形態1同様、血管をスキャンして得た医用画像を解析し、血管の本幹A及び側枝Bを認識することができる。
【0081】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
1 カテーテル
2 MDU
3 画像処理装置
3a 記録媒体
4 表示装置
5 入出力装置
6 情報処理装置
6a 記録媒体
31 制御部
32 主記憶部
33 入出力I/F
34 補助記憶部
61 制御部
62 主記憶部
63 通信部
64 補助記憶部
341 学習モデル
P コンピュータプログラム
A 本幹
B 側枝