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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】ダイアフラムポンプ用の清浄システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/122 20210101AFI20241021BHJP
   B08B 5/00 20060101ALI20241021BHJP
   A61M 60/104 20210101ALI20241021BHJP
   A61M 60/268 20210101ALI20241021BHJP
   A61M 60/427 20210101ALI20241021BHJP
【FI】
A61M60/122
B08B5/00
A61M60/104
A61M60/268
A61M60/427
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022520388
(86)(22)【出願日】2020-10-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-01
(86)【国際出願番号】 US2020053736
(87)【国際公開番号】W WO2021067557
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-09-14
(31)【優先権主張番号】62/910,078
(32)【優先日】2019-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510121444
【氏名又は名称】アビオメド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】イロンゴ エマニュエル エヌ.
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102011117060(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2001/0015216(US,A1)
【文献】特開2003-027411(JP,A)
【文献】特開2015-183722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/00-60/90
B08B 1/00-1/04,5/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイアフラムポンプ(100)用の清浄システム(300)であって、該ダイアフラムポンプは、ハウジング(102)と、該ハウジング内に配されたダイアフラム(104)と、入出力ポート(108)とを具備し、該ダイアフラムと該ハウジングの少なくとも一部分とは集合的にポンプチャンバー内部(110)を規定し、該入出力ポートは該ポンプチャンバー内部と流体連絡しており、
該清浄システムは、
清浄用流体を保管するよう構成されたタンク(306)と;
該入出力ポートと解放可能に篏合し、かつそれによって該入出力ポートと流体タイトな接続を作り出すように構成された、第一カプラー(304)であって、
入力端と出力端とを有するインジェクターノズル(610)であって、該第一カプラーが該入出力ポートと篏合されている間、該ポンプチャンバー内部と流体連絡しかつこれに向かって流体ストリーム(700)を導くように配向されるように構成された、インジェクターノズル(610)、および
該インジェクターノズルの該出力端の近傍にありかつこれとは別個である、戻りポート(612)であって、該第一カプラーが該入出力ポートと篏合されている間、該ポンプチャンバー内部と流体連絡するように構成された、戻りポート(612)を具備し、
該インジェクターノズルが、該戻りポートが該ポンプチャンバー内部を排液(702)するのと同時に該ストリームを該ポンプチャンバー内部に導くように構成されている、第一カプラー(304)と;
入力と出力とを有する循環ポンプ(308)と;
該タンク、該循環ポンプの該入力および該出力、該インジェクターノズルの該入力端、ならびに該戻りポートと流体連絡しており、かつ加圧された清浄用流体を該タンクから該インジェクターノズルに送達しかつ使用済みの清浄用流体を該戻りポートから該タンクに戻すように構成された、清浄用流体の循環回路(310)と
を具備する、清浄システム(300)。
【請求項2】
清浄用流体の循環回路内に第一の二方弁(514)をさらに具備する、前記清浄システムであって、
該第一の二方弁は、入力と、第一出力と、第二出力とを有し、
該第一の二方弁は、2つの状態のいずれかにユーザー設定可能であり、かつ該第一の二方弁の状態に応じて、該入力を該第一出力または該第二出力のいずれかと流体連絡させるように構成され、ここで該入力は循環ポンプの出力に連結され、該第一出力はインジェクターノズルの入力端に連結され、かつ該第二出力はタンクに連結されて、それにより第一カプラーをバイパスする、
請求項1記載の清浄システム。
【請求項3】
清浄用流体の循環回路内にパージポート(512)と第二の二方弁(511)とをさらに具備する、前記清浄システムであって、
該第二の二方弁は、入力と、第一出力と、第二出力とを有し、
該第二の二方弁は、2つの状態のいずれかにユーザー設定可能であり、かつ該第二の二方弁の状態に応じて、該第二の二方弁の該入力を該第二の二方弁の該第一出力または該第二の二方弁の該第二出力のいずれかと流体連絡させるように構成され、ここで該第二の二方弁の該入力は循環ポンプの出力に連結され、該第二の二方弁の該第一出力は第一の二方弁の入力に連結され、かつ該第二の二方弁の該第二出力は該パージポートに連結される、
請求項2記載の清浄システム。
【請求項4】
循環ポンプが空気圧により駆動される、請求項1記載の清浄システム。
【請求項5】
循環ポンプが電気式に駆動される、請求項1記載の清浄システム。
【請求項6】
ダイアフラムポンプが空気圧式ダイアフラム作動ポート(114)をさらに具備し、
前記清浄システムが、
該空気圧式ダイアフラム作動ポートと解放可能に篏合し、かつそれによって該空気圧式ダイアフラム作動ポートとガスタイトな接続を作り出すように構成された、第二カプラー(504)と;
第一圧力と、該第一圧力より少なくとも約1.45 PSI(9,997 Pa)大きい第二圧力との間で、約0.1 Hz~約10 Hzの周波数で交互になる圧力で、ガスを該第二カプラーに供給するように構成された、ガス源(505)と
をさらに具備する、請求項1記載の清浄システム。
【請求項7】
ガス源が、
ガスを約2~3 inHg(6,772.78~10,159.2 Pa)で供給するように構成された、空気圧により駆動されるベンチュリ(506)
を具備する、請求項6記載の清浄システム。
【請求項8】
第一圧力が周囲大気圧より小さく、かつ第二圧力が周囲大気圧より大きい、請求項6記載の清浄システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、すべての目的について参照によりその全内容が本明細書に組み入れられる、2019年10月3日に提出された米国特許仮出願第62/910,078号「Cleaning System for Diaphragm Pump」の恩典を主張する。
【0002】
技術分野
本発明はポンプ用の清浄システムに関し、より具体的には単一ポートダイアフラムポンプ用の清浄システムに関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術
患者体内に埋め込まれるかまたは他の方法で患者に接続される、心臓ポンプまたは他の医療デバイスは、使用前に清浄でなければならず、かつ時に無菌でなければならない。食品、薬品、および他の製品を処理するために用いられるポンプおよび他の「配管(plumbing)」装置も同様の要件を有する。複数ポート式の流体デバイスは、例えば洗い流すことなどによって、比較的容易に清浄できる。新鮮な清浄用流体の持続ストリームが1つのポートを介して導入されてもよく、同時に、汚れた流体が別のポートを介して排液されてもよい。
【0004】
しかし、Abiomed, Inc., Danvers, MAによって導入されているSymphony心臓補助デバイスなど、単一ポートの流体デバイスは、清浄が困難であることが知られている。そうした各デバイスはその内部に1つのポートを有するのみである。結果的に、清浄用流体を第一のポート内に持続的に導入し、かつ同時に汚れた清浄用流体を第二のポートを介して抜き出すことによって、ポンプ内部をシンプルに洗い流すことはできない。従来の清浄装置およびプロトコルでは、汚れた清浄用流体を新鮮な清浄用流体で持続的かつ同時に置き換えることができない。
【0005】
代わりに、単一ポート流体デバイスは、清浄のために解体しなければならないか、または、単一ポートを介して充填する段階と空にする段階とが交互に行われるかのいずれかである。例えば、単一ポート流体デバイスは、単一ポートを通して清浄用流体を導入し、デバイスを振り、使用済みの清浄用流体を排出させ、そして次にこれらの段階を繰り返すことによって、清浄される可能性がある。しかしこの方法は、ヒトの血液をポンプ送りするなどの重大な使用が意図されたデバイスを十分に清浄できないことが試験で示されている。例えば、単一ポート流体デバイスを充填する段階と空にする段階とを交互に行うことは、直近にデバイス内にあった汚れた流体でデバイスを必然的に汚染する。いずれの方法も時間がかかり、かつ、満足のいかない結果をもたらすことが多い。
【発明の概要】
【0006】
諸態様の概要
本発明の1つの態様は、ダイアフラムポンプ用の清浄システムを提供する。ダイアフラムポンプは、ハウジングと、ハウジング内に配されたダイアフラムと、入出力ポートとを含む。ダイアフラムとハウジングの少なくとも一部分とは、集合的にポンプチャンバー内部を規定する。入出力ポートは、ポンプチャンバー内部と流体連絡している。
【0007】
清浄システムは、清浄用流体を保管するよう構成されたタンクを含む。
【0008】
第一カプラーが、入出力ポートと解放可能に篏合し、かつそれによって入出力ポートと流体タイトな接続を作り出すように構成される。第一カプラーはインジェクターノズルを含む。インジェクターノズルは入力端と出力端とを有する。インジェクターノズルは、第一カプラーが入出力ポートと篏合されている間、ポンプチャンバー内部と流体連絡しかつこれに向かって流体ストリームを導くように配向されるように、構成される。
【0009】
第一カプラーは戻りポートもまた含む。戻りポートはインジェクターノズルの出力端の近傍にあり、かつこれとは別個である。戻りポートは、第一カプラーが入出力ポートと篏合されている間、戻りポートがポンプチャンバー内部と流体連絡するように構成される。
【0010】
インジェクターノズルは、戻りポートがポンプチャンバー内部を排液しているのと同時に、ストリームをポンプチャンバー内部に導くように構成される。
【0011】
本発明の清浄システムは循環ポンプもまた含む。循環ポンプは入力と出力とを有する。清浄用流体の循環回路が、タンク、循環ポンプの入力および出力、インジェクターノズルの入力端、ならびに出力ポートと流体連絡する。清浄用流体の循環回路は、加圧された清浄用流体をタンクからインジェクターノズルに送達するように、かつ、使用済みの清浄用流体を出力ポートからタンクに戻すように、構成される。
【0012】
任意の態様において、清浄システムが、清浄用流体の循環回路内に第一の二方弁をさらに含んでいてもよい。第一の二方弁は、入力と、第一出力と、第二出力とを有する。第一の二方弁は、2つの状態のいずれかにユーザー設定可能である。第一の二方弁は、第一の二方弁の状態に応じて、入力を第一出力または第二出力のいずれかと流体連絡させるように構成される。入力は循環ポンプの出力に連結される。第一出力はインジェクターノズルの入力端に連結され、第二出力はタンクに連結され、それにより第一カプラーをバイパスする。
【0013】
第一の二方弁を含む任意の態様において、清浄システムは、清浄用流体の循環回路内にパージポートと第二の二方弁とをさらに含んでいてもよい。第二の二方弁は、入力と、第一出力と、第二出力とを有する。第二の二方弁は、2つの状態のいずれかにユーザー設定可能である。第二の二方弁は、第二の二方弁の状態に応じて、第二の二方弁の入力を第二の二方弁の第一出力または第二の二方弁の第二出力のいずれかと流体連絡させるように構成される。第二の二方弁の入力は、循環ポンプの出力に連結される。第二の二方弁の第一出力は、第一の二方弁の入力に連結され、第二の二方弁の第二出力は、パージポートに連結される。
【0014】
任意の態様において、循環ポンプが空気圧により駆動されてもよい。任意の態様において、循環ポンプが電気式に駆動されてもよい。
【0015】
空気圧式ダイアフラム作動ポートを含むダイアフラムポンプとともに使用可能である任意の態様において、清浄システムが第二カプラーをさらに含んでいてもよい。第二カプラーは、空気圧式ダイアフラム作動ポートと解放可能に篏合し、かつそれによって空気圧式ダイアフラム作動ポートとガスタイトな接続を作り出すように、構成されてもよい。清浄システムは、ガス源もまた含んでいてもよい。ガス源は、約0.1 Hz~約10 Hzの周波数で交互になる圧力で、ガスを第二カプラーに供給するように構成されてもよい。ガス源は、第一圧力と第二圧力との間で、ガスを第二カプラーに供給するように構成されてもよい。第二圧力は、第一圧力より少なくとも約1.45 PSI(9,997 Pa)大きくてもよい。
【0016】
任意で、空気圧式ダイアフラム作動ポートを含むダイアフラムポンプとともに使用可能である態様において、ガス源は、ガスを約2~3 inHg(6,772.78~10,159.2 Pa)で供給するように構成された、空気圧により駆動されるベンチュリを含んでいてもよい。
【0017】
任意で、空気圧式ダイアフラム作動ポートを含むダイアフラムポンプとともに使用可能である態様において、第一圧力が周囲大気圧より小さくてもよく、かつ、第二圧力が周囲大気圧より大きくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明は、以下の具体的態様の詳細な説明を図面と併せて参照することによって、より完全に理解されるであろう。
【0019】
図1】本発明の諸態様を用いて清浄されてもよい例示的な先行技術の単一ポートダイアフラムポンプの、それぞれ斜視図および側面図である。
図2】本発明の諸態様を用いて清浄されてもよい例示的な先行技術の単一ポートダイアフラムポンプの、それぞれ斜視図および側面図である。
図3】本発明の1つの態様に基づく、図1および2の例示的な単一ポートダイアフラムポンプなどのダイアフラムポンプ用の清浄システムの斜視図である。
図4図3の清浄システムの制御ボックス/コンソールの内部の斜視図である。
図5図3の清浄システムの略配管図である。
図6図1および2の例示的な単一ポートダイアフラムポンプなどのダイアフラムポンプの入力/出力ポートと解放可能に篏合し、それによってこれと流体タイトな接続を作り出すように構成された、本発明の1つの態様に基づく、図3の清浄システムの第一カプラーの機能的端部(business end)の前面斜視図である。
図7】本発明の1つの態様に基づく、図1および2の例示的な単一ポートダイアフラムポンプが取り付けられた図6の第一カプラーの一部分の断面図であり、第一カプラーによって単一ポートダイアフラムポンプ内に注入されかつ同時にこれから除去されている、清浄用流体の例示的なフローパターンを図示している。
図8】本発明の1つの態様に基づく、使用していない時に第一カプラーの汚染を防ぐために保護プラグが装着された、図6の第一カプラーの機能的端部の前面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
具体的態様の詳細な説明
本発明の諸態様は、前述したSymphony心臓補助デバイスなどの単一ポート流体デバイスを、単一ポートを介して、新鮮な清浄用流体の持続ストリームで清浄しながら、同時に、汚れた流体を排液するための、装置および方法を提供する。本発明の諸態様は、他の単一ポート流体デバイス、さらには複数ポート流体デバイスとともに、使用することも可能であるが、本明細書ではSymphony単一ポート心臓補助デバイスを清浄するという文脈において説明する。
【0021】
図1および2は、それぞれ、Symphony心臓補助デバイス100の斜視図および側面図である。Symphonyデバイス100は、本発明の諸態様を用いて清浄されてもよい例示的な単一ポートダイアフラムポンプ100として役立つ。Symphony心臓補助デバイス100はまた、本明細書において単一ポートダイアフラムポンプ100とも呼ぶ。
【0022】
Symphonyデバイス100は、患者の「ペースメーカーポケット」内に表面的に埋め込むために設計された、無弁のカウンターパルセーション心臓補助デバイスである。Symphonyデバイス100は、ハウジング102と、可撓性のダイアフラム104(視認できないが想像線で示している)を含む空気圧駆動式サックとを含む。ダイアフラム104は、経皮エアライン106によってサックに接続された、小型のウェアラブル空気圧式駆動体(図示せず)によって稼働される。Symphonyデバイス100は、コンジットを介して患者の鎖骨下動脈に接続された単一の入出力ポート108を有する。図1の挿入図は、Symphonyデバイス100の一部分を、単一の入出力ポート108に連結されたコンジット109とともに示している。
【0023】
空気圧式駆動体は、患者の心臓からの心電図(ECG)信号に基づいて、患者の心拍に同期される。Symphonyデバイス100は、心臓の自然な拡張中に動脈からの血液で充満して、心筋の作業負荷を低下させる。Symphonyデバイス100は、心臓の自然な収縮中に血液を動脈内に駆出して戻して、全身の血流を増大させ、それによって患者の全体的な健康状態を向上させる。
【0024】
ダイアフラム104はハウジング102内に配される。ダイアフラム104と、ハウジング102の少なくとも一部分とは、集合的に、単一の入出力ポート108と流体連絡した流体タイトな内部体積(ポンプチャンバー内部)110を規定する。ダイアフラム104の1つの側が内部体積110に面する。単一の入出力ポート108は、ハウジング102に機械的に取り付けられており、コンジット109と解放可能に篏合するよう構成された、ねじ付きまたは他のタイプの解放可能な篏合用特徴111を含んでいてもよい。
【0025】
使用時に、入出力ポート108は、コンジット109を介して患者の心血管(血液循環)系と流体連絡状態で連結される。内部体積110と流体連絡している他のポートはなく、そのため本発明のデバイスを、「単一ポート(single-port)」流体デバイスと呼ぶ。
【0026】
ダイアフラム104の他方の側と、ハウジング102の少なくとも一部分とが、第二の内部体積112を規定する。空気圧式起動ポート114が、第二の内部体積112と流体連絡している。使用時に、空気圧式起動ポート114は、エアライン106によって、小型のウェアラブル空気圧式駆動体(図示せず)または圧力と吸引とを交互に供給する別の好適な供給源と流体連絡状態で接続され、それがダイアフラム104を往復運動させる。往復運動するダイアフラム104が、入出力ポート108を介して、血液などの流体をポンプ送りして第一の内部チャンバー110に交互に出入りさせる。
【0027】
図3は、例示的なSymphonyデバイス100などのダイアフラムポンプ用の清浄システム300の斜視図である。例示的な単一ポートダイアフラムポンプ100が、清浄システム300による清浄のためシステム300に取り付けられた状態で示されている。システム300は可動カート302上にマウントされてもよい。しかし他の態様において、システム300は、ベンチにマウントされる、キャビネットにマウントされるなどであってもよい。システム300は、可動性、可搬性、静置式、または所定の位置に固定されるもののであってもよい。
【0028】
システム300は、単一ポートダイアフラムポンプ100の入出力ポート108と解放可能に篏合するよう構成された第一カプラー304を含む。システム300はまた、好適な清浄用流体を保管するよう構成されたタンク306と、循環ポンプ308と、清浄用流体の循環回路(概ね310に示す)とを含む。
【0029】
清浄用流体の循環回路310は、さまざまな弁、圧力/真空ゲージなどを含んでいてもよく、そのうち一部または全部が、システム300へのユーザーインターフェースを提供する制御ボックス/コンソール312の中または上に配されていてもよい。図4は制御ボックス/コンソール312の内部の斜視図である。
【0030】
制御ボックス/コンソール312はまた、圧力、真空、流量、スイッチまたはダイヤルを介したユーザー入力などを自動的に測定するコントローラー400を収容してもよい。コントローラー400はまた、清浄用流体の循環回路310の他のパラメーターをモニターしてもよく、弁などのうち一部または全部のオペレーションを制御し、かつ/または、好適な表示画面、パネルライト、アナンシエーターなどを介して情報を表示してもよい。コントローラー400は、これらのオペレーションおよび本明細書に説明する他のオペレーションを行うためにメモリ内に保存された命令を実行するプロセッサーを含んでいてもよい。
【0031】
図5は清浄システム300の略配管図500である。前述したように、清浄システム300は、ダイアフラムポンプ100の入出力ポート108と解放可能に篏合するよう構成された第一カプラー304を含む。入出力ポート108と篏合した時に、第一カプラー304は、入出力ポート108とともに流体タイトな接続を形成する。図6は、第一カプラー304の機能的端部の前面斜視図である。
【0032】
第一カプラー304は、入出力ポート108を第一カプラー304に解放可能にロックするよう構成されたラッチ600を含んでいてもよい。前述したように、入出力ポート108は、コンジット109を入出力ポート108にしっかりとまたは強固に接続するためのフランジ、ねじ山、または他の接続用特徴111を含んでいてもよい。
【0033】
図6に示す態様において、ラッチ600は、2つのねじ604によって第一カプラー304にスライド可能式に取り付けられたヨーク602の形態をしている。ラッチ600におけるスロット606が、垂直方向に分かれているスロット606の端部によって規定される2つのポジションの間で、ヨーク602が垂直方向に平行移動することを許容する。図6において実線で示すような1つのポジションにおいて、ヨーク602は、入出力ポート108がラッチ600に入りそして第一カプラー304と篏合することを許容する。
【0034】
ヨーク602によって規定される開口部の一部分607は、ヨーク602によって規定される開口部の残りの部分より狭い。図3において示しかつ図6において破線で示すような第二のポジション608において、ヨーク602の一部分607は入出力ポート108の特徴111を機械的に捕捉し、そしてそれを第一カプラー304に押し付けて、入出力ポート108と第一カプラー304との間に流体タイトな接続を形成する。ダイアフラムポンプ100が清浄された後、ヨーク602が第一のポジションに戻されてもよく、それによって特徴111が自由になり、入出力ポート108がラッチ600から引き抜かれて、それによって第一カプラー304から外されてもよい。
【0035】
図6および7において最も明瞭に見られるように、第一カプラー304はインジェクターノズル610を含む。インジェクターノズル610は、清浄用流体700をダイアフラムポンプ100の内部110内に注入するように構成され、かつそれを目標としている。第一カプラー304はまた、第一コネクター304が入出力ポート108と篏合された時に同じくダイアフラムポンプ100の内部110と流体連絡する戻りポート612も含む。図6に示す態様において、戻りポート612は、円形にアレンジされた複数のアパーチャを含む。
【0036】
図6および7において、2つのそのようなアパーチャ612に符番が付されている。しかし、任意の数のアパーチャ612が用いられてよく、複数のアパーチャ612が用いられる場合、アパーチャ612は任意のアレンジメントに配されてよい。アレンジメントはインジェクターノズル610を囲んでもよいが、その必要があるわけではない。インジェクターノズル610は、戻りポート612のアレンジメントと同軸であってもよいが、その必要があるわけではない。アパーチャ612の集合的な断面積(第一カプラー304の縦軸312に対して直角に測定した断面積)は、インジェクターノズル610の断面積に等しいかまたはこれを超えていてもよいが、その必要があるわけではない。
【0037】
図7に示すように、新鮮な清浄用流体700がインジェクターノズル610によってダイアフラムポンプ100の内部108内に注入されてもよく、かつ同時に、汚れた流体が戻りポート612によって内部108から除去されてもよい。
【0038】
図8は、不使用時に第一カプラー304の汚染を防ぐために保護プラグ800が装着された、第一カプラー304の機能的端部の前面図である。
【0039】
清浄システム300の略配管図500図5)に戻ると、タンク306が清浄用流体を保管している。循環用ポンプ308がタンク306から清浄用流体を引き、そして圧力下の清浄用流体をインジェクターノズル610に送達し、インジェクターノズル610は清浄用流体700(図7)の高圧ストリームをダイアフラムポンプ100の内部110に導く。使用済みの清浄用流体702は出口ポート612を介してダイアフラムポンプ100から出てタンク306に戻る;これにより、概して一連の実線矢印502(図5)によって示すような清浄用流体の回路が完成する。好適なフィルター、弁、圧力調節器、およびアクセスポート/ベントが、清浄用流体の回路502に沿って配される。
【0040】
ダイアフラムポンプ100の正常な稼働時にダイアフラム104が駆動されるような方式で、清浄中にダイアフラム104(図1)が2つのポジション間で交互に駆動されてもよい。ダイアフラム104によるこの動作は、清浄用流体700を撹拌して清浄効率を高める。前述したように、ダイアフラムポンプ100は、空気圧式起動ポート114を含む。清浄中、空気圧式ダイアフラム作動ポート114が、第二の解放可能なカプラー504(図5)を介して、交互式のガス圧源505に連結されてもよい。
【0041】
交互式のガス圧源505は、相対的な部分真空(本明細書において「相対的真空」という)を生成するように構成されたベンチュリ真空生成器506(簡明さのため本明細書において「ベンチュリ」という)と、圧縮ガス源508とを含んでもよい。トグル弁510が、相対的真空および圧縮ガスを、ダイアフラムポンプ100の空気圧式ダイアフラム作動ポート114に連結する。トグル弁510は、約0.1 Hz~約10 Hzの周波数で、相対的真空と圧縮ガスとを交互に空気圧式ダイアフラム作動ポート114に供給する。
【0042】
トグル弁510は、例えば、清浄用流体の供給と協調して、コントローラー400(図4)によって制御されてもよい。相対的真空と圧縮ガスとは、その設計上の過程の大部分または全部にわたって、ダイアフラム104を駆動するのに十分に圧力が異なっているべきである。いくつかの態様において、相対的真空は周囲大気圧より小さい圧力を有し、かつ圧縮ガスは周囲大気圧より大きい圧力を有する。
【0043】
用いられる循環ポンプ308のタイプに応じて、清浄用流体の回路502が、循環ポンプ308の下流に二方弁511とパージポート512とを含んでいてもよい。循環用ポンプ308からエアをパージするため、シリンジ(図示せず)がパージポート512内に挿入されてもよく、清浄用流体をタンク306から循環用ポンプ308内に引くための部分真空を作り出すために用いられてもよい。
【0044】
清浄用流体の回路502が二方弁514を含んでいてもよい。上述したように、二方弁514は1つのポジションにおいて、清浄用流体を循環用ポンプ308からインジェクターノズル610に導く。二方弁514は他方のポジションにおいて、清浄用流体の回路502の少なくとも一部分からエアおよび汚染物質を洗い流すため、点線矢印516で示すように、第一カプラー304をバイパスして清浄溶液をタンク306に戻るように導く。
【0045】
循環ポンプ308とベンチュリ506とを駆動するため、および圧縮ガス源508に供給を行うため、エアなどの圧縮ガスの外部供給源518を用いてもよい。ただし、コンプレッサーまたはモーターのオイルヒュームがダイアフラム104を汚染することを防ぐため、ガス供給源518は、分離圧力調節器520および522などによって分離されるべきである。代替的に、循環ポンプ308が電気式に稼動されてもよい。
【0046】
Symphonyデバイス100内のダイアフラム104を十分に往復運動させるため、圧縮ガス源508内の空気圧は、約6~8 PSI(41,368.5~55,158.1 Pa)の範囲内であるべきである。他の単一ポート流体デバイス100の場合、圧縮ガス源508についての適切な空気圧範囲は、単一ポート流体デバイス100の機械的特性に基づくなど経験的または理論的に決定されてもよい。
【0047】
Symphonyデバイス100内のダイアフラム104を十分に往復運動させるため、ベンチュリ506によって生成される相対的な部分真空は、約2~3 inHg(6,772.78~10,159.2 Pa)の範囲内に設定されるべきである。他の単一ポート流体デバイス100の場合、適切な部分真空は、単一ポート流体デバイス100の機械的特性に基づくなど経験的または理論的に決定されてもよい。
【0048】
清浄システム300は、任意の単一ポートポンプ100に好適である。単一ポートポンプ100を清浄するための手動の方法が、ダイアフラム104を駆動しないのに対して、清浄システム300は、ダイアフラム104を自動的に駆動して、それにより清浄用流体700を撹拌し得る。清浄システム300は、同時に(a)清浄用流体700を圧力下でダイアフラムポンプ100の内部110に注入し、かつ(b)使用済みの清浄用流体702を内部110から引き出す。ゆえに、ダイアフラムポンプ100内部の清浄用流体702は、清浄な流体7-2で持続的に置き換えられる。使用済みの清浄用流体702はダイアフラムポンプ100の内部110からほぼただちに排出されるので、ダイアフラムポンプの内部上に汚染物質を再沈着させることはできない。使用済みの清浄用流体702によって残された汚染物質があっても、それは新鮮な清浄用流体700によって洗い流されて外に出る。
【0049】
上述の例示的態様を通じて本発明を説明したが、本明細書に開示する本発明の概念から逸脱することなく、例証した諸態様に対する修正およびバリエーションが可能である。例えば、寸法および材料など固有のパラメーター値が開示態様との関連において具陳される可能性があるが、本発明の範囲内において、すべてのパラメーターの値が、異なる用途に適するよう広範囲にわたって変動しうる。文脈中に別段の提示がない限り、または当業者により別段に理解されるのでない限り、「約」などの用語は±20%以内を意味する。
【0050】
本明細書および特許請求の範囲において、項目のリストに関連して用いる「および/または」という用語は、リスト内の項目のうち1つまたは複数、すなわち、リスト内の項目のうち少なくとも1つを意味するが、必ずしもリスト内の全項目を意味するわけではない。本明細書および特許請求の範囲において、項目のリストに関連して用いる「または」という用語は、リスト内の項目のうち1つまたは複数、すなわち、リスト内の項目のうち少なくとも1つを意味するが、必ずしもリスト内の全項目を意味するわけではない。「または」は「排他的または」を意味しない。
【0051】
諸態様の諸局面を、フローチャートおよび/またはブロック図を参照しながら説明する場合があるが、各ブロックまたはブロックの組み合わせの全部もしくは一部分の、機能、オペレーション、決定などが、組み合わされるか、別々のオペレーションに分離されるか、または他の順序で行われてもよい。「モジュール」への言及は便宜上のものであり、その実施形態を限定する意図はない。各ブロック、モジュール、またはそれらの組み合わせの全部もしくは一部分が、コンピュータープログラム命令(ソフトウェアなど)、ハードウェア(組み合わせ論理、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プロセッサー、もしくは他のハードウェアなど)、ファームウェア、またはそれらの組み合わせとして実施されてもよい。
【0052】
コントローラー400またはその一部分が、メモリ内に保存された命令を実行するかまたはそれによって制御される1つまたは複数のプロセッサーによって実施されてもよい。各プロセッサーは、適宜、中央処理装置(CPU)などの汎用プロセッサー、グラフィック処理装置(GPU)、デジタル信号プロセッサー(DSP)、専用プロセッサーなどであってもよく、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0053】
メモリは、制御ソフトウェアまたは他の命令およびデータを保存するのに好適である、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読出し専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、もしくは他の任意のメモリ、またはそれらの組み合わせであってもよい。本発明の機能を定義する命令は、多くの形式でプロセッサーに送達されてもよく、そうした形式には、非一時的かつ書き込み不能な有形保存媒体上に永久的に保存された情報(例えば、ROMなど、コンピューター内の読出し専用メモリデバイス、または、CD-ROMディスクもしくはDVDディスクなど、コンピューターのI/O付属装置によって読み取り可能なデバイス)、非一時的かつ書き込み可能な有形保存媒体上に変更可能的に保存された情報(例えば、フロッピーディスク、取り外し可能なフラッシュメモリおよびハードドライブ)、または、有線もしくは無線のコンピューターネットワークを含む通信媒体を通じてコンピューターに伝達される情報が含まれるが、それに限定されるわけではない。さらに、諸態様をさまざまな例示的データ構造との関連において説明する場合があるが、システムはさまざまなデータ構造を用いて具体化されてもよい。
【0054】
本開示の諸局面、またはその一部分が、以上に列挙されていない方式および/または明示的に特許請求されていない方式で組み合わせられてもよい。加えて、本明細書に開示する諸態様が、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素を欠いた状態で、好適に実施されてもよい。したがって、本発明は、開示態様に限定されるものと見られるべきではない。
【0055】
本明細書において用いる「第一」、「第二」、および「第三」などの数に関する用語は、それぞれのカプラー、スイッチポジション、内部体積、弁、出力などを互いに区別するためなどに用いられるのであり、いかなる特定の態様においてもカプラー、スイッチポジション、内部体積、弁、出力などの特定の順序または総数を示すことを意図したものではない。ゆえに、例えば、所与の態様が第二の弁および第三の弁のみを含んでいてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8