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特許7574298対象の第1の眼及び第2の眼の両方の屈折特徴を決定するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】対象の第1の眼及び第2の眼の両方の屈折特徴を決定するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/032 20060101AFI20241021BHJP
   A61B 3/113 20060101ALI20241021BHJP
   A61B 3/08 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
A61B3/032
A61B3/113
A61B3/08
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022536830
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2020086278
(87)【国際公開番号】W WO2021122640
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】19306653.7
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・ブティノン
(72)【発明者】
【氏名】エステル・ネッテ
(72)【発明者】
【氏名】マルタ・エルナンデス-カスタニェーダ
(72)【発明者】
【氏名】コノガン・バラントン
(72)【発明者】
【氏名】ジルダス・マラン
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-531769(JP,A)
【文献】特開2016-145956(JP,A)
【文献】特開2019-054513(JP,A)
【文献】特表2015-504641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象(10)の第1の眼及び第2の眼の両方の屈折特徴を決定するためのシステム(100)であって、
- 3次元の基準を有するライトフィールド表示デバイス(60)、
- 前記基準に対する、前記ライトフィールド表示デバイス(60)を視認する前記対象(10)の前記第1の眼(1)及び前記第2の眼(2)3次元位置の位置特定システム(6)、及び、
- 前記ライトフィールド表示デバイス(60)を駆動するための制御ユニット(80)、
を含み、
前記制御ユニット(80)及び前記ライトフィールド表示デバイス(60)は、前記基準に対する前記第1の眼(1)の前記3次元位置を使用して、前記対象(10)の前記第1の眼(1)に選択的に向けられる第1のライトフィールド(71)を生成するように構成され、前記第1のライトフィールド(71)は、前記対象(10)の前記第1の眼(1)に第1の画像を形成するように適合され、前記制御ユニット(80)は、前記第1の画像が、第1の屈折パラメータの第1の調整値について補正されて前記第1の眼によって知覚されるように、前記第1の眼の少なくとも第1の光学収差に関連する少なくとも前記第1の屈折パラメータの関数として前記第1のライトフィールド(71)を調整するように適合され、前記制御ユニット(80)は、前記第1の屈折パラメータの前記第1の調整値から前記第1の眼の屈折特徴を決定するように適合され、前記制御ユニット(80)及び前記ライトフィールド表示デバイス(60)は、前記基準に対する前記第2の眼(2)の前記3次元位置を使用して、前記対象(10)の前記第2の眼(2)に選択的に向けられる第2のライトフィールド(72)を生成するように構成され、前記第2のライトフィールド(72)は、前記対象(10)の前記第2の眼(2)に第2の画像を形成するように適合され、前記制御ユニット(80)は、前記第2の画像が、第2の屈折パラメータの第2の調整値について補正されて前記第2の眼によって知覚されるように、前記第2の眼の少なくとも第2の光学収差に関連する少なくとも前記第2の屈折パラメータの関数として前記第2のライトフィールド(72)を調整するように適合され、前記制御ユニット(80)は、前記第2の屈折パラメータの前記第2の調整値から前記第2の眼の屈折特徴を決定するように適合される、システム(100)。
【請求項2】
前記ライトフィールド表示デバイス(60)は、単一の画面を含み、前記第1のライトフィールド(71)及び前記第2のライトフィールド(72)は、前記ライトフィールド表示デバイス(60)の同じ領域から又は2つの別個の領域から生成される、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項3】
前記ライトフィールド表示デバイス(60)は、前記対象(10)の前記第1の眼(1)に選択的に向けられる前記第1のライトフィールド(71)を生成するように適合された第1の画面と、前記対象(10)の前記第2の眼(2)に選択的に向けられる前記第2のライトフィールド(72)を生成するように適合された第2の画面とを含む、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項4】
前記第1の眼によって知覚される前記第1の画像の第1の鮮明度に対する前記対象(10)の第1の応答と、前記第2の眼によって知覚される前記第2の画像の第2の鮮明度に対する前記対象(10)の第2の応答とを記録するように適合されたユーザインターフェースを含み、前記制御ユニット(80)は、記録された前記第1の応答及び前記第2の応答の関数として前記第1のライトフィールド(71)及び前記第2のライトフィールド(72)をそれぞれ調整するように適合される、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項5】
前記ユーザインターフェースは、前記第1の屈折パラメータ及び前記第2の屈折パラメータの値を入力するように適合され、前記制御ユニット(80)は、入力された前記第1の屈折パラメータの値及び前記第2の屈折パラメータの値の関数として前記第1のライトフィールド(71)及び前記第2のライトフィールド(72)をそれぞれ調整するように適合される、請求項4に記載のシステム(100)。
【請求項6】
前記第1の眼(1)に向かう前記第1のライトフィールド(71)を選択的に遮蔽し、且つ/又は前記第2の眼(2)に向かう前記第2のライトフィールド(72)を選択的に遮蔽するための手段を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項7】
前記ライトフィールド表示デバイス(60)は、画素のアレイと、前記画素のアレイ上に積層された視差バリアマスクとを含むデジタルディスプレイ又は多層液晶表示デバイスを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項8】
前記位置特定システム(6)は、アイトラッカー、3D走査デバイス、カメラ、飛行時間型センサ及び/又は瞳孔サイズ測定デバイスを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項9】
前記位置特定システム(6)は、視線方向を決定するように適合される、請求項1~8のいずれかに記載のシステム(100)。
【請求項10】
前記第1のライトフィールド(71)及び前記第2のライトフィールド(72)は、前記第1の画像及び前記第2の画像が、前記対象(10)による前記第1の画像と前記第2の画像との融合を可能にする少なくとも1つの共通の視覚刺激を含むように事前に決定される、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項11】
対象(10)の両眼の屈折特徴を決定するための方法であって、以下のステップ:
a)ライトフィールド表示デバイス(60)の3次元基準に対する前記対象(10)の第1の眼(1)の3次元位置及び第2の眼(2)の3次元位置を特定するステップ、
b)前記3次元基準に対する前記第1の眼(1)の特定された前記3次元位置を使用して、前記対象(10)の前記第1の眼に選択的に向けられる第1のライトフィールド(71)を生成するために制御ユニット(80)及び前記ライトフィールド表示デバイス(60)を使用するステップであって、前記第1のライトフィールド(71)は、前記対象(10)の前記第1の眼(1)に第1の画像を形成するように適合される、ステップ、
c)前記第1の画像が、第1の屈折パラメータの第1の調整値について補正されて前記第1の眼によって知覚されるように、前記第1の眼の少なくとも第1の光学収差に関連する少なくとも前記第1の屈折パラメータの関数として前記第1のライトフィールド(71)を調整するステップ、
d)前記第1の屈折パラメータの前記第1の調整値から前記第1の眼の屈折特徴を決定するステップ、
e)前記3次元基準に対する前記第2の眼(2)の特定された前記3次元位置を使用して、前記対象(10)の前記第2の眼(2)に選択的に向けられる第2のライトフィールドを生成するために制御ユニット(80)及び前記ライトフィールド表示デバイス(60)を使用するステップであって、前記第2のライトフィールド(72)は、前記対象(10)の前記第2の眼(2)に第2の画像を形成するように適合される、ステップ、
f)前記第2の画像が、第2の屈折パラメータの第2の調整値について補正されて前記第2の眼によって知覚されるように、前記第2の眼の少なくとも第2の光学収差に関連する少なくとも前記第2の屈折パラメータの関数として前記第2のライトフィールド(72)を調整するステップ、及び、
g)前記第2の屈折パラメータの前記第2の調整値から前記第2の眼の屈折特徴を決定するステップ、
を含む方法。
【請求項12】
前記ステップb)~c)及びそれぞれ前記ステップe)~f)は、時間的に順次実行され、前記ステップb)~c)中、前記第2のライトフィールド(72)は、オフであるか又は前記第2の眼(2)に対して遮蔽され、ステップe)~f)中、前記第1のライトフィールド(71)は、オフであるか又は前記第1の眼(1)に対して遮蔽される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップb)~c)及びそれぞれ前記ステップe)~f)は、同時に実行される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
単眼視における前記第1の眼(1)のための、請求項12に記載の実行と、単眼視における前記第2の眼(2)のための、請求項12に記載の別の実行と、同時に両眼視における前記第1の眼(1)及び前記第2の眼(2)のための、請求項13に記載の実行とを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
h)前記第1の眼によって知覚される前記第1の画像の第1の鮮明度に対する前記対象の第1の応答を記録するステップと、
i)前記第2の眼によって知覚される前記第2の画像の第2の鮮明度に対する前記対象の第2の応答を記録するステップと、
を更に含み、ステップc)中、前記第1のライトフィールド(71)は、ステップh)中に記録された前記第1の応答の関数として調整され、ステップf)中、前記第2のライトフィールド(72)は、ステップi)中に記録された前記第2の応答の関数として調整される、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象の眼の屈折補正を決定するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の文献は、単眼又は両眼視状態における対象の眼の屈折特徴を他覚的又は自覚的に決定するためのデバイス及び方法を説明している。
【0003】
他覚的屈折は、通常、スキアスコープ又は自動屈折計を使用して得られる。他覚的屈折により、個人のおよその補正を迅速に決定することが可能になる。
【0004】
しかしながら、自覚的屈折は、対象が必要とする最良の屈折補正を決定するための選択方法である。従来の自覚的屈折は、検眼レンズの組と検眼フレームとを使用して、又は手動若しくは自動レンズ交換器を備えたフォロプタを使用して得られる。これらのデバイスは、概して、0.25ジオプトリ(D)の段階差で変化する光学度数のレンズを使用する。Essilor社のフォロプタであるvision R800は、光学レンズを使用して、光学度数の連続的な変化を可能にする。
【0005】
特許文献1(Essilor Int.)は、眼の自覚的な球面眼屈折及び/又は円柱眼屈折を高分解能で測定するためのフォロプタを開示している。フォロプタは、表示デバイスと組み合わされた従来の屈折光学システムを含み、屈折光学システムは、最小の段階差で変化する光学度数を有し、表示デバイスは、例えば、その光学度数を、決定された最小の段階差よりも小さい段階差で変化させるように適合されたライトフィールド表示デバイスを含む。
【0006】
他の文献は、事前に判定された視覚障害の補正を行うためのライトフィールド表示デバイスに基づくシステムを開示している。
【0007】
例えば、特許文献2は、グラフィカルユーザインターフェースと、対象の視力の低下を少なくとも部分的に補償する補正画像を表示するグラフィカルディスプレイとに基づく視力補正システムを開示している。しかしながら、このようなシステムは、正確な屈折測定を行わない。特許文献3は、ライトフィールド要素を使用して表示される、収差が補償された画像を算出するために、観察者の事前に決定された光学収差パラメータに基づく、収差補償を伴う視力補正ディスプレイを開示している。特許文献4は、奥行きの錯覚を与える、単眼奥行き手がかりを観察者が知覚するように、常時焦点網膜像を形成する観察者の各眼に一連のライトフィールド成分を投影するニアアイシーケンシャルライトフィールドプロジェクタを開示している。特許文献5及び特許文献6は、シーンをライトフィールドとして表示するためのシステム及び方法を開示している。
【0008】
しかしながら、これらの文献は、対象の眼屈折を特に両眼視において正確に測定するか、又は観察者の屈折を補正するための方法又は装置を開示していない。
【0009】
単眼屈折は、遠近調節をもたらし得るため、両眼のための十分に補正された画像を得ることは、正確な屈折測定を提供するために実際に重要であり、右眼及び左眼の屈折を区別しない両眼屈折では、非常に頻繁に見られる不同視(すなわち両眼間の視差)が解消されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2018/104600号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第2017/0060399号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0042501号明細書
【文献】国際公開第2018/091984号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第2014/0327750号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0327771号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、追加のレンズを使用することなく、最も快適な視力補正を対象に提供するために、両眼視状態における各眼の屈折補正の正確な自覚的決定を可能にするシステム及び方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明の1つの目的は、対象の第1の眼及び第2の眼の両方の屈折特徴を決定するためのシステムを提供することであり、システムは、3次元の基準を有するライトフィールド表示デバイス、基準に対する、前記ライトフィールド表示デバイスを視認する対象の第1の眼及び第2の眼の位置の位置特定システム、ライトフィールド表示デバイスを駆動するための制御ユニットを含み、ライトフィールド表示デバイスは、対象の第1の眼に選択的に向けられる第1のライトフィールドを生成するように構成され、前記第1のライトフィールドは、対象の第1の眼に第1の画像を形成するように適合され、制御ユニットは、前記第1の画像が、第1の屈折パラメータの第1の調整値について補正されて前記第1の眼によって知覚されるように、第1の眼の少なくとも第1の光学収差に関連する少なくとも前記第1の屈折パラメータの関数として前記第1のライトフィールドを調整するように適合され、制御ユニットは、前記第1の屈折パラメータの第1の調整値から第1の眼の屈折特徴を決定するように適合され、及びライトフィールド表示デバイスは、対象の第2の眼に選択的に向けられる第2のライトフィールドを生成するように構成され、前記第2のライトフィールドは、対象の前記第2の眼に第2の画像を形成するように適合され、制御ユニットは、第2の画像が、第2の屈折パラメータの第2の調整値について補正されて第2の眼によって知覚されるように、第2の眼の少なくとも第2の光学収差に関連する少なくとも第2の屈折パラメータの関数として前記第2のライトフィールドを調整するように適合され、制御ユニットは、前記第2の屈折パラメータの第2の調整値から第2の眼の屈折特徴を決定するように適合される。
【0013】
ライトフィールド表示デバイスに基づくシステムにより、追加のレンズを使用せずに且つ機械的可動部なしに、単眼視又は両眼視における対象の第1の眼及び第2の眼の両方の屈折特徴を決定することが可能になる。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、ライトフィールド表示デバイスは、単一の画面を含み、第1のライトフィールド及び第2のライトフィールドは、同じ領域から順次交互に生成されるか、又はライトフィールド表示デバイスの2つの異なる領域から生成される。
【0015】
別の実施形態によると、ライトフィールド表示デバイスは、対象の前記第1の眼に選択的に向けられる第1のライトフィールドを生成するように適合された第1の画面と、対象の第2の眼に選択的に向けられる第2のライトフィールドを生成するように適合された第2の画面とを含む。
【0016】
特定の有利な態様によれば、システムは、第1の眼によって知覚される第1の画像の第1の鮮明度に対する対象の第1の応答と、第2の眼によって知覚される第2の画像の第2の鮮明度に対する対象の第2の応答とを記録するように適合されたユーザインターフェースを含み、制御ユニットは、記録された前記第1の応答及び前記第2の応答の関数として前記第1のライトフィールド及び前記第2のライトフィールドをそれぞれ調整するように適合される。
【0017】
特定の実施形態では、ユーザインターフェースは、前記第1の屈折パラメータ及び前記第2の屈折パラメータの値を入力するように適合され、制御ユニットは、入力された前記第1の屈折パラメータ値及び前記第2の屈折パラメータ値の関数として前記第1のライトフィールド及び前記第2のライトフィールドをそれぞれ調整するように適合される。
【0018】
別の特定の態様によれば、システムは、第2の眼に向かう第1のライトフィールドを選択的に遮蔽し、且つ/又は第1の眼に向かう第2のライトフィールドを選択的に遮蔽するための手段を含む。
【0019】
更に別の特定の態様によれば、ライトフィールド表示デバイスは、画素のアレイと、画素のアレイ上に積層された視差バリアマスクとを含むデジタルディスプレイ又は多層液晶表示デバイスを含む。
【0020】
視差バリアマスクは、ピンホールのアレイ、レンズレットアレイ、マイクロレンズアレイ、レンチキュラーアレイ及びレンチキュラーレンズの中から選択され得る。
【0021】
別の態様によれば、ライトフィールド表示デバイスは、指向性バックライト照明を備えた液晶ディスプレイ(LCD)を含む。
【0022】
別の態様によれば、位置特定システムは、アイトラッカー、3D走査デバイス、カメラ、飛行時間型センサ及び/又は瞳孔サイズ測定デバイスを含む。
【0023】
位置特定システムは、瞳孔直径及び/又は視線方向を決定するように適合され得る。
【0024】
実施形態によれば、第1のライトフィールド及び第2のライトフィールドは、第1の画像及び第2の画像が、対象による第1の画像と第2の画像との融合を可能にする少なくとも1つの共通の視覚刺激を含むように事前に決定される。
【0025】
本発明の更なる目的は、対象の両眼の屈折特徴を決定するための方法を提供することであり、この方法は、以下のステップ:
a)ライトフィールド表示デバイスの3次元基準に対する対象の第1の眼の位置及び第2の眼の位置を特定するステップ、
b)対象の第1の眼に選択的に向けられる第1のライトフィールドを生成するためにライトフィールド表示デバイスを使用するステップであって、前記第1のライトフィールドは、対象の前記第1の眼に第1の画像を形成するように適合される、ステップ、
c)前記第1の画像が、第1の屈折パラメータの第1の調整値について補正されて第1の眼によって知覚されるように、第1の眼の少なくとも第1の光学収差に関連する少なくとも前記第1の屈折パラメータの関数として第1のライトフィールドを調整するステップ、
d)前記第1の屈折パラメータの第1の調整値から第1の眼の屈折特徴を決定するステップ、
e)対象の第2の眼に選択的に向けられる第2のライトフィールドを生成するためにライトフィールド表示デバイスを使用するステップであって、前記第2のライトフィールドは、対象の第2の眼に第2の画像を形成するように適合される、ステップ、
f)第2の画像が、第2の屈折パラメータの第2の調整値について補正されて第2の眼によって知覚されるように、第2の眼の少なくとも第2の光学収差に関連する少なくとも前記第2の屈折パラメータの関数として第2のライトフィールドを調整するステップ、
g)前記第2の屈折パラメータの第2の調整値から第2の眼の屈折特徴を決定するステップ
を含む。
【0026】
特定の態様によれば、ステップb)~c)及びそれぞれステップe)~f)は、時間的に順次実行され、ステップb)~c)中、第2のライトフィールドは、オフであるか又は第2の眼に対して遮蔽され、及びステップe)~f)中、第1のライトフィールドは、オフであるか又は第1の眼に対して遮蔽される。
【0027】
別の特定の態様によれば、ステップb)~c)及びそれぞれステップe)~f)は、同時に実行される。
【0028】
一実施形態では、方法は、単眼視における第1の眼のための、請求項12に記載の実行と、単眼視における第2の眼のための、請求項12に記載の別の実行と、同時に両眼視における第1の眼及び第2の眼のための、請求項13に記載の実行とを含む。
【0029】
特定の実施形態によれば、この方法は、
h)第1の眼によって知覚される第1の画像の第1の鮮明度に対する対象の第1の応答を記録するステップと、
i)第2の眼によって知覚される第2の画像の第2の鮮明度に対する対象の第2の応答を記録するステップと
を更に含み、ステップc)中、第1のライトフィールドは、ステップh)中に記録された前記第1の応答の関数として調整され、及びステップf)中、第2のライトフィールドは、ステップi)中に記録された前記第2の応答の関数として調整される。
【0030】
特定の態様によれば、決定される屈折特徴は、単眼及び/又は両眼状態における対象の第1の眼及び第2の眼についての球面、円柱及び軸、加入度値及び/又は高次収差を含む。
【0031】
別の特定の態様によれば、第1のライトフィールド及び第2のライトフィールドは、対象から見たとき、第1の画像と第2の画像との融合を可能にする少なくとも1つの共通の特徴を第1の画像及び第2の画像が有するように事前に決定される。
【0032】
更に別の特定の態様によれば、第1のライトフィールドは、第1の眼から第1の距離を置いて表示され、第2のライトフィールドは、第2の眼から第2の距離を置いて表示され、第1の距離及び第2の距離は、第1の眼と第2の眼との間の瞳孔間距離の関数として調整される。
【0033】
添付の図面を参照する以下の説明により、本発明を構成するもの及びそれを達成し得る方法が明らかになるであろう。本発明は、図面に示されている実施形態に限定されない。したがって、請求項で言及された特徴に参照記号が続く場合、そのような記号は、請求項の理解度を高める目的のためにのみ含まれ、請求項の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0034】
ここで、添付の図面及び詳細な説明に関連して以下の簡単な説明が参照され、同様の参照番号は、同様の部品を表す。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】従来の2D画像の光特性を示す図である。
図2】3Dライトフィールドの光特性を示す図である。
図3】4Dライトフィールドの光特性を示す図である。
図4】別の4Dライトフィールドの光特性を示す図である。
図5】先行技術による第1のタイプのライトフィールド表示デバイスの側面図を示す図である。
図6】先行技術による第2のタイプのライトフィールド表示デバイスの側面図を示す図である。
図7】対象の眼の屈折特徴を決定するためのシステムの第1の実施形態の上面図を概略的に示す図である。
図8】第1の実施形態による例示的なシステムを概略的に示す図である。
図9】対象から見たときの視覚刺激の画像を示す図である。
図10】対象の眼の屈折特徴を決定するためのシステムの第2の実施形態の上面図を概略的に示す図である。
図11】本開示による、球面を徹底的に検査するための例示的な方法を示す図である。
図12】本開示による、乱視の軸を決定するための方法で生成された2つの画像を示す図である。
図13】本開示による、乱視の軸及び円柱を決定するための方法で生成された2つの画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の説明では、図面は、縮尺通りである必要はなく、特定の特徴は、明瞭さ及び簡潔さのために又は情報提供の目的のために、一般化された又は概略的な形式で示される場合がある。加えて、様々な実施形態の作成及び使用が以下で詳細に論じられるが、本明細書に記載されるように、多様な状況で具体化され得る多くの発明の概念が提供されることを理解されたい。本明細書で論じられる実施形態は、単に代表的なものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。プロセスに関連して定義される全ての技術的特徴が個別に又は組み合わせてデバイスに置き換えられ得、逆にデバイスに関連して定義される全ての技術的特徴が個別に又は組み合わせてプロセスに置き換えられ得ることも当業者に明らかであろう。
【0037】
本開示は、従来のフォロプタのように、追加のレンズの組を使用することなく、対象の眼の自覚的屈折検査を実施するためのライトフィールド表示技術の使用に依存する。
【0038】
定義
本明細書では、ライトフィールド(LF)は、空間内のあらゆる点を通してあらゆる方向に流れる光の量を記述するベクトル関数である。光の量は、例えば、表面と立体角との協調による光のパワーを表す輝度(cd/m)である。
【0039】
ライトフィールド表示デバイス(LFD)は、市場に出回っている新型のディスプレイである。
【0040】
従来の表示デバイスは、2D画像を生成し、光特性は、画像3内の各点の位置(x,y)に依存する(図1を参照されたい)。
【0041】
対照的に、ライトフィールド表示デバイス(すなわちLFD)は、ライトフィールドを生成し、位置(x,y)の関数としてだけでなく、少なくとも1つの方向の関数としても光の量を制御することを可能にする。いくつかのライトフィールド表示デバイスは、3Dライトフィールドを生成し、光の量は、画像4内の位置(x,y)と、1つの方向(u)とに依存する(図2を参照されたい)。3Dライトフィールド(x,y,u)を生成することは、1Dインテグラルイメージングとも呼ばれる。他のライトフィールド表示デバイスは、4Dライトフィールドを生成し、光の量は、画像5内の位置(x,y)と、2つの横断方向(u,v)とに依存する(図3を参照されたい)。概して、ベクトルuの方向は、水平面内にあり、ベクトルvの方向は、垂直平面内にある。4Dライトフィールド(x,y,u,v)を生成することは、インテグラルイメージングとも呼ばれる。ライトフィールド表示デバイスは、概して、各色(例えば、3色に基づく表示デバイスにおけるRGB、すなわち赤青緑)ごとに光線の位置及び方向を制御することができる。
【0042】
理想的には、ライトフィールド表示デバイスは、ウィンドウのようなものであり、画像5内の各点から別々の方向に光線を伝送することを可能にする(図4を参照されたい)。
【0043】
異なる種類のライトフィールド表示デバイスが利用可能である。
【0044】
図5は、高解像度表示パネル20と視差バリア30とを含む既知のライトフィールド表示デバイス60の側面図を示す。表示パネル20は、個別にアドレスできる画素21、22...を含む。表示パネル20は、1列の画素又はより一般的には2Dアレイの画素を含み得る。図5に示す例では、画素は、直交基準系(X,Y,Z)において、軸Xに沿った、pと記された一定のピッチで位置決めされる。図5に示すように、視差バリア30は、表示パネルの表面に平行に、且つ表示パネル20の表面からfと記された距離を置いて配置された板を含む。板は、軸Xに沿った、Δxと記されたピッチで配置された複数のピンホール31又はマイクロホールを含む。概して、画素のピッチpは、ピンホールアレイのピッチΔxよりもはるかに小さい。アドレスされる画素に応じて、ピンホールを通過するライトフィールドは、表示パネル20の法線に対して固有ベクトルuを有する。結果として、LFD60は、マイクロホール31の上方の半空間内のあらゆる箇所に3Dライトフィールドを生成する。図5は、視差バリア30から距離lを置いた、ライトフィールド表示デバイス60に平行な像面50を示す。像面50は、ライトフィールドビームの4D表示に使用される。各ライトフィールドビームは、4つ1組の座標(x,y,u,v)によって表され得、ここで、(x,y)は、マイクロホールの平面の座標を表し、(u,v)は、距離lを置いた平面50の座標を表す。生成されるライトフィールドは、活性化される画素の位置に依存する。平面50において、同じピンホールを通過する、隣り合う画素によって生成された2つの光線間の距離Δuは、画素ピッチpと、表示パネルと視差バリアとの間の距離fとに依存する。また、ライトフィールドの最大開口は、ピンホールピッチΔxと距離fとに依存する角度θMAXを有する。この角度θMAXは、以下の式を使用して決定される。
【数1】
【0045】
ピンホールアレイの代わりに、他の種類の視差バリア30を使用することもできる。例えば、LFは、仮想ピンホールを作成することにより、眼の瞳孔に直接投影され得る。各仮想ピンホールは、個別にオンにされる特定の光源に関連付けられる。仮想ピンホールごとに、空間光変調器(SLM)によって全ての方向が駆動される。
【0046】
図6は、レンズレットアレイ40と組み合わされた高解像度表示パネル20を含む別の既知のライトフィールド表示デバイス60の側面図を示す。レンズレットアレイ40は、表示パネル20のごく近傍に配置されたマイクロレンズ41、42、43...のアレイを含む。例えば、レンズレットアレイ40は、表示パネル20の上に配置される。マイクロレンズ間のピッチは、軸Xに沿ってΔxと記されている。アドレスされる画素21に応じて、マイクロレンズ44を通過するライトフィールドは、固有ベクトルuを有する。結果として、LFD60は、レンズレットアレイ40から距離lを置いた、LFDに平行な像面50内に3Dライトフィールドを生成する。生成されるライトフィールドは、活性化される画素の位置に依存する。
【0047】
当然ながら、上記で説明したライトフィールド表示デバイスは、4Dライトフィールドを生成するために、ピクセルの2Dアレイ及び2Dピンホールアレイ又は反射面の2Dグリッド又は2Dレンズレットアレイをそれぞれ用いて、方向Yに沿って同様の方法で動作することができる。
【0048】
ライトフィールド表示デバイスは、画像の一点から到来する光線の方向を制御することを可能にする。したがって、ライトフィールド表示デバイスは、追加の可変焦点距離レンズを使用することなく、ライトフィールドを形成する各光線の位置及び方向を制御することを可能にする。結果として、対象の眼から一定の距離にあるライトフィールド表示デバイスのみを使用して、複数の距離に画像を仮想的に表示することができる。より正確には、ライトフィールド表示デバイス60は、ライトフィールド表示デバイスから制御された距離を置いて画像を形成することを可能にする。
【0049】
しかしながら、視差バリアLFD又はレンズレットアレイLFDは、概して、空間分解能と角度分解能との間にトレードオフを課す。
【0050】
ライトフィールドの特性は、対象の眼の屈折異常を補正するために使用され得る。
【0051】
上述のような任意のタイプのライトフィールド表示デバイスを使用して生成された平行ビームのライトフィールドについて考える。対象の眼は、弛緩状態にある。視覚刺激は、無限遠に表示される。対象の眼が正視である場合、角膜、瞳孔、水晶体を介して正視眼によって形成される(例えば、点の)像は、対象の網膜上に結ばれる。したがって、光源点の網膜像が網膜上の一点で結ばれ、鮮明に知覚される。対照的に、対象の眼が弛緩状態にある場合、眼が近視の影響を受け、近視眼(又は近視の眼)によって形成される(例えば、点の)像は、対象の網膜の手前の一点で結ばれる。したがって、平行ビームのライトフィールドを受け取る近視眼では、点の網膜像が領域全体に広がり、ぼやけて知覚される。例えば、近視眼の収差を補償するため、発散ビームのライトフィールドを生成するためにライトフィールド表示デバイスが使用され得る。その後、近視眼が弛緩状態にある場合、近視眼によって形成される(例えば、点の)像は、対象の網膜19上に結ばれる。したがって、点の網膜像は、近視の対象によって鮮明に知覚される。
【0052】
同様に、弛緩状態にある、遠視眼を有する対象の場合、平行ビームのライトフィールドを使用して形成される点の像は、対象の網膜の後方で結ばれる。遠視度の値を知ることで、遠視眼の収差を補償するために収束ビームのライトフィールドを生成することが可能である。その後、遠視眼が弛緩状態にある場合、遠視眼によって形成される収束ビームのLFの(例えば、点の)像は、対象の網膜上に結ばれる。したがって、点の網膜像は、遠視の対象によって鮮明に知覚される。
【0053】
より一般的には、眼の屈折異常を知ることで、眼で焦点が合った状態で見えるライトフィールドを生成することも可能である。ライトフィールド表示デバイスを使用して、異なる眼の収差に対応するライトフィールドを異なる方向に沿って、例えばX方向及びY方向に沿って生成することが可能である。したがって、眼の軸の方向及び乱視誤差(又は円柱)の量を知ることで、球面誤差だけでなく乱視も補償することが可能である。
【0054】
これには、高次収差(HOA)も含まれる可能性がある。したがって、生成されるライトフィールドは、網膜上に鮮明な画像を形成するように最適化される(より自由度の高い改善されたデコンボリューション)。
【0055】
本開示は、ライトフィールド表示デバイスを使用することを提案するが、対象の眼の欠陥を補正又は補償するのではなく、問題を逆転させ、特に両眼視状態において、右眼及び左眼の屈折特性を区別することを可能にする一方、対象の眼の屈折異常を自覚的に決定することを提案する。
【0056】
デバイス
この目的を達成するために、右眼と左眼とに対して異なるライトフィールドを提供することが可能なライトフィールド表示デバイスを提案する。本開示によれば、ライトフィールド表示デバイスは、独立したライトフィールドを各眼に表示する。これにより、次に、追加のレンズなしに、右眼と左眼の屈折特性を区別しながら、眼の両眼検査を実施することを可能にする。
【0057】
図7は、対象の第1の眼及び第2の眼の両方の屈折特徴を決定するためのシステム100の第1の実施形態の上面図を概略的に示す。
【0058】
図7のシステム100は、ライトフィールド表示デバイス60と、制御ユニット80と、対象10の第1の眼1及び第2の眼2のそれぞれの位置の位置特定システム6とを含む。本出願では、位置特定システム6は、第1の眼1及び第2の眼2の瞳孔中心及び瞳孔直径をそれぞれ決定する。位置特定システム6は、いずれの光線が各眼に入射するかを正確に決定することを可能にする。
【0059】
ライトフィールド表示デバイス60は、ピンホールのアレイ又は上記で説明したレンズレットアレイと組み合わされた高解像度画面を含み得る。本開示の範囲から逸脱することなく、他のタイプのライトフィールド表示デバイスも考慮される。
【0060】
図7図8図10及び図11には、ライトフィールド表示デバイス60に対する3D直交基準系XYZが示されている。概して、ライトフィールド表示デバイス60は、XY平面内に位置する画像表面を含み、Z軸は、LFD60の表面に直交する。
【0061】
位置特定システム6は、カメラと、飛行時間型センサ又は3Dセンサとを含み得る。概して、位置特定システム6は、ライトフィールド表示デバイス60に取り付けられる。例えば、位置特定システム6は、第1の方向7を検出し、第1の眼1の瞳孔中心と位置特定システム6との間の第1の距離を測定する。同様に、位置特定システム6は、第2の方向8を検出し、第2の眼2の瞳孔中心と位置特定システム6との間の第2の距離を測定する。位置特定システム6及び/又は制御ユニット80は、第1の距離及び第2の距離から、ライトフィールド表示デバイス60の基準系(X,Y,Z)に対する対象の第1の眼1及び第2の眼2のそれぞれの3次元(3D)位置を推定する。位置特定システム6は、例えば、それぞれ第1の眼1の瞳孔中心及び第2の眼2の瞳孔中心の3D位置を制御ユニット80に送信する。有利には、位置特定システム6は、それぞれ第1の眼1及び第2の眼2の瞳孔直径並びに/又は第1の眼1と第2の眼2との間の瞳孔間距離を測定する。次いで、位置特定システム6は、測定された瞳孔直径及び/又は瞳孔間距離を制御ユニット80に送信する。位置特定システム6及び/又は制御ユニット80は、ライトフィールド表示デバイス60と、それぞれ第1の眼1及び第2の眼2との間の距離も導出し得る。
【0062】
要するに、制御ユニット80は、位置特定システム6によって送信された情報から、ライトフィールド表示デバイス60の基準系(X,Y,Z)に対する第1の眼1の3D位置及び第2の眼2の3D位置を得るか又は推定する。
【0063】
図7及び図8に示す第1の実施形態では、ライトフィールド表示デバイス60は、第1の領域61と第2の領域62とを含む。第1の領域61及び第2の領域62は、空間的に分離される。第1の領域61及び第2の領域62は、単一の表示画面から生成されるが、別個の能動画素に対応する。代替的に、システムは、2つの別々のライトフィールド表示デバイスを含む。第1のライトフィールド表示デバイスは、第1のライトフィールドを生成し、第2のライトフィールド表示デバイスは、第2のライトフィールドを生成する。例えば、図7に示す単一の表示画面の場合、第1の領域61は、第1の眼1の前のライトフィールド表示デバイスの右半分に対応し、第2の領域62は、第2の眼2の前のライトフィールド表示デバイスの左半分に対応する。より具体的には、制御ユニット80は、対象10の第1の眼1に選択的に向けられる第1のライトフィールド71を生成するために、LFD60の第1の領域61にアドレスする。制御ユニット80は、対象10の第2の眼2に選択的に向けられる第2のライトフィールド72を生成するために、LFD60の第2の領域62にアドレスする。このように、第1の眼1は、第2のライトフィールド72を受け取らず、第2の眼2は、両眼とライトフィールド表示デバイスとの間の対象の矢状面における不透明な壁などの追加の掩蔽手段を必要とせずに、第1のライトフィールド71を受け取らない。第1のライトフィールド71は、第1の眼1によってのみ受け取られるような形状にされる。第1のライトフィールド71とは関係なく、第2のライトフィールド72は、第2の眼2によってのみ受け取られるような形状にされる。
【0064】
単眼視状態では、制御ユニット80及びLFD60は、第1のライトフィールド71及び第2のライトフィールド72の一方のみを生成し得る。代替的に、単眼視では、第1のライトフィールド71及び第2のライトフィールド72が同時に生成され、第1の眼1及び第2の眼2の一方は、遮蔽される。例えば、検査対象でない眼は、遮蔽される眼の前で手又はカードを使用して遮蔽される。別の代替形態によれば、第1又は第2のライトフィールドは、(単眼検査では)検査対象でない眼に向けられ、このライトフィールドは、検査対象でない眼をぼやけた像で照らし、検査対象でない眼の遠近調節を弛緩させるように構成される。
【0065】
両眼視状態では、第1の実施形態は、第1のライトフィールド71及び第2のライトフィールド72を同時に生成することを可能にし、2つのライトフィールドは、互いに独立している。
【0066】
図7に示す例では、両眼視において、第1の眼1と第2の眼2とは、両方ともLFD60の画面のはるか後方の点を凝視している。図7は、第1の眼1、第2の眼の瞳孔中心と、点の虚像とをそれぞれ通過する第1の視線方向11、第2の視線方向12をそれぞれ示す。遠点に対して、自然な両眼視を得るために、ターゲットの距離に合わせて収束を調節する必要がある。眼の位置及びターゲットの距離を知ることで、容易に算出できる。2つのライトフィールド71、72は、望ましい自然な収束に基づいて、所与の距離を置いて仮想ターゲットをシミュレートするために生成される。無限遠点に対して、第1の視線方向11及び第2の視線方向12は、概して、互いに平行である。遠方視では、仮想距離は、4m~無限遠の範囲に含まれる。現在の手段を使用すると、仮想距離は、概して、4~8メートル、例えば6mであり、第1の視線方向11及び第2の視線方向12は、僅かに収束する。近方視状態では、第1の視線方向11及び第2の視線方向12は、概して、同じ点又は画像に収束する。その上、ライトフィールド表示デバイス60は、両眼間の所定の収束角度と組み合わされた、近方視又は中間視でのより低い視線方向に対応する点の画像を生成するように構成することができる。より一般的には、任意の距離及び方向は、ライトフィールド表示デバイス60を使用して検査され得る。
【0067】
図8は、第1の実施形態による対象の両眼の屈折特徴を決定するためのシステム100の例を示す。図8のシステム100は、マイクロレンズアレイ40と組み合わされた高解像度表示画面20を含むライトフィールド表示デバイス60に基づいている。第1の領域61及び第2の領域62では、他の画素24がオフのままである間にいくつかの画素23を選択的に活性化することにより、ライトフィールド表示デバイス60は、2つの空間的に分離されたライトフィールドを生成し、第1のライトフィールド71及び第2のライトフィールド72は、各眼に対して異なる屈折特徴を提供する。図示の例では、第1の眼1は、近視であり、第1のライトフィールド71は、1D球面屈折補正を行い、第2の眼2は、正視であり、第2のライトフィールド72は、屈折補正を全く行わない。ここで、ある画素23は、オンであり、その間、他の画素24は、オフであり、第1の領域61と第2の領域62とでは、オン画素とオフ画素との間隔が異なり、及び/又はオン画素及びオフ画素のパターンが異なる。これにより、例えば、第1の眼1に向かう発散ビームの第1のライトフィールド71と、第2の眼2に向かう平行ビームの第2のライトフィールド72とを同時に生成することを可能にする。視覚刺激は、選択された距離を置いて第1のライトフィールド71と第2のライトフィールド72とによって同時に生成される。ここでの視覚刺激は、基本的に、両眼視状態において融合を可能にするための、第1の眼1及び第2の眼2に対する点である。
【0068】
図8では、第1のアイモーションボックス13、第2のアイモーションボックス14がそれぞれ示されている。アイモーションボックス13、14は、それぞれ第1の眼1及び第2の眼2がそれぞれ刺激を見ることができるゾーンに対応する。アイモーションボックス13、14は、第1の眼1が第1の領域61によって生成された第1の刺激のみを見ている間、第2の眼2が第2の領域62によって生成された第2の刺激のみを見るように空間的に制限される。図8では、第1の領域61内の3つのマイクロレンズ41は、第1の眼1の瞳孔に入射する第1のライトフィールドを提供し、第2の領域62内の4つの他のマイクロレンズ42は、第2の眼2の瞳孔に入射する第2のライトフィールドを提供する。
【0069】
図9は、図8に示すように、両眼視状態における対象から見たときの例示的な視覚刺激を示す。2つの網膜像が融合され、これにより、対象10が、各眼に対する異なる適切な屈折補正を利用して、対象の視野90内で点91の画像を鮮明に見ることが可能になる。刺激の画像は、第1の刺激と第2の刺激との重ね合わせ又は融合によって形成される。例えば、刺激の画像は、黒色背景に発光点として現れる。
【0070】
図10は、対象10の第1の眼1及び第2の眼2の両方の屈折特徴を決定するためのシステム100の第2の実施形態の上面図を概略的に示す。ライトフィールド表示デバイス60の2つの別々の領域61、62を使用する代わりに、同じライトフィールド領域63が、第1のライトフィールド71及び第2のライトフィールド72を生成するために使用される。第2の実施形態では、第1のライトフィールド71及び第2のライトフィールド72は、時間的に交互に又は換言すれば順次生成される。第2の実施形態の変形形態では、第1のライトフィールド71及び第2のライトフィールド72は、ライトフィールド表示デバイスの部分的に重複する領域を使用して生成され得る。
【0071】
第1の実施形態と同様に、位置特定システム6は、制御ユニット80及びライトフィールド表示デバイス60は、第1のライトフィールド71を対象10の第1の眼1に、且つ第2のライトフィールド72を第2の眼2に選択的に向けることを可能にする、第1の眼1及び第2の眼の位置を決定する。
【0072】
単眼視状態において、第2の実施形態では、第1のライトフィールド及び第2のライトフィールドの一方のみが一度に生成される。したがって、掩蔽手段を必要とすることなく、片眼のみが、この眼に選択的に向けられたライトフィールドを受け取る。
【0073】
両眼視において、第2の実施形態では、第1のライトフィールド71と第2のライトフィールド72とが交互に生成されるが、迅速に時間的に交互に生成される。換言すれば、第1のライトフィールド71及び第2のライトフィールド72は、両眼で見える画像の融合を可能にするように、20ヘルツ~120ヘルツに含まれる閾値よりも高い交番周波数で生成される。例えば、刺激は、視標であり得る。
【0074】
プロセス
ここで、対象の第1の眼及び第2の眼の両方の屈折特徴を決定するためのシステム100をどのように使用して眼の検査を実施できるかを説明する。屈折は、より包括的な眼検査の一部に過ぎず、ここでは、遠方視及び任意選択的に近方視での屈折部に焦点を当てる。
【0075】
上記で説明した実施形態のいずれかによる、対象の第1の眼及び第2の眼の両方の屈折特徴を決定するためのシステム100は、各眼に選択的に向けられる独立したライトフィールドを生成するために使用される。開示するプロセスは、単眼視状態であれ又は両眼視状態であれ、追加のレンズなしに、各眼に対する適切な屈折補正を個別に決定することを可能にする。
【0076】
ライトフィールド表示デバイス60は、対象の眼の前に位置決めされる。作動距離又は換言すれば対象の眼とライトフィールド表示デバイス60の表面との間の距離は、ライトフィールド表示デバイスのタイプに応じて非常に異なり得る。いくつかのライトフィールド表示デバイスは、AR/VR用途のために非常に短い作動距離、例えば5mm~50mmのために設計される。他のライトフィールド表示デバイスは、スマートフォン又はタブレットのために、短い作動距離~中程度の作動距離、例えば300mm~600mmのために設計される。更に他のライトフィールド表示デバイスは、例えば、TVのような用途(2~5m)において、長い作動距離のために設計され得る。
【0077】
遠方視屈折測定のために、ライトフィールド表示デバイスの物理的位置とは関係なく、遠近調節を低減するために無限遠に近い虚像を表示することが重要である。この刺激の虚像もライトフィールド表示デバイスによって形成される。
【0078】
本開示によれば、各眼に向けられる適切なライトフィールドを選択的に生成するために、ライトフィールド表示デバイスの基準系における瞳孔直径及び各眼の位置を正確に知る必要がある。瞳孔直径及び位置は、ライトフィールド表示デバイスによって生成されたいずれの光線が眼の瞳孔に到達するのに有用であり、いずれの光線が有用でないかを推定するために使用される。この推定は、上記で開示したように、カメラと飛行時間型センサとを使用して又は位置特定システム6の3Dセンサを使用して行うことができる。
【0079】
図7図8及び図10との関連で説明するように、対象の第1の眼及び第2の眼の両方の屈折特徴を決定するためのシステム100は、少なくとも2つの独立したライトフィールド、すなわち各眼に対して1つのライトフィールドを同時に又は時分割多重化方式で生成するように適合される。この設定は、2つの別々の画像、各眼に対する1つの画像と2つの異なる補正、すなわち各眼に対する特定の屈折補正に対応することを可能にする。
【0080】
各ライトフィールド71、72は、球面(Sph)、円柱及び軸(Cyl及びAxis)並びに最終的に高次収差(HOA)などの特定の補正のために生成される。各ライトフィールド71、72は、考慮される瞳孔直径、ライトフィールド表示デバイスと眼との間の距離、ターゲットとされる虚像と眼との間の距離、画面の特性及び網膜上のターゲットとされる像の関数として生成される。例えば、ライトフィールドは、光線追跡法に基づいて異なるモデルを使用してシミュレートされ得る。網膜上の予期される像について、眼の所与の欠陥の画像を形成する全ての光線をLFDまで逆伝播し、対応する生成された光線を選択するために、光線追跡モデルが使用される。
【0081】
例として、本明細書では、遠方視屈折を決定するプロセスを詳述する。
【0082】
このプロセスは、概して、以下で詳述する、A、B及びCという符号が付されたいくつかの段階を含む。段階A及び段階B(別々)では、検査は、左眼又は右眼での単眼視状態で実施され、次いで段階A+Bが他方の眼で実施される。段階Cでは、検査は、両眼視状態で実施される。
【0083】
単眼検査中、検査対象でない眼の掩蔽が必要である場合がある。段階A及びB中、両眼を照らすライトフィールドを有することと、例えば遮蔽される眼の前で手又はカードを使用して、片眼(屈折Rxの測定が行われない眼)を遮蔽することとが可能である。
【0084】
代替的に、測定される眼のみを照らすライトフィールドを有することが可能であり、他方の眼は、ライトフィールドを知覚しないが、暗い背景のみを知覚する。
【0085】
また、代替的に、別のライトフィールドは、検査対象でない眼を照らし得、前記別のライトフィールドは、遠近調節を弛緩させるために検査対象でない眼にぼやけた網膜像を生成する。
【0086】
更に別の変形形態によれば、第1のライトフィールドは、第1の眼に第1の画像として表示され、第2のライトフィールドは、第2の眼に第2の画像として表示される。より正確には、第1のライトフィールドは、第1の眼に第1の網膜像を生成し、第2のライトフィールドは、第2の眼に第2の網膜像を生成する。第1のライトフィールド及び第2のライトフィールドは、両眼で見える、両眼に共通の第1の画像及び第2の画像の一部を概して周縁に有する。第1の眼を検査するために、第1のライトフィールドのみが、例えば視標の画像を含む特定の部分を概してその中心に含む一方、第2のライトフィールドの中心は、空であるか、又は特定の部分を有しないか、又はコントラストが著しく低い。中心部は、第2の眼を検査するために第1のライトフィールドと第2のライトフィールドとの間で切り換えられ、周縁の共通部は、同じままである。第1のライトフィールドと第2のライトフィールドとの組み合わせにより、画像の共通部において共通の3次元物体をシミュレートすることが可能になる。この組み合わせにより、第1の画像及び第2の画像の共通部に対応する決定された仮想距離において第1の眼及び第2の眼の遠近調節が行われる。その上、第1のライトフィールド又は第2のライトフィールドの一方のみが第1の画像又は第2の画像の別の略中心部を有するため、この特定の部分は、検査対象の眼でのみ見える。したがって、両眼の遠近調節を所定の遠近調節距離に強制しながら、単眼の屈折が検査され得る。
【0087】
段階A.球面の徹底的検査(単眼)
雲霧法を適用し適応させることが提案される。この周知の方法は、網膜の手前に画像を形成するために、初期屈折値に屈折力(例えば、+1.50D)を追加することを含む。この方法は、遠近調節を弛緩させることを可能にする。初期屈折値は、概して、-20D~+20Dに含まれる。初期屈折値は、追加のレンズなしにライトフィールド表示デバイスによって生成される。追加の雲霧値(例えば、+1.5D)も追加のレンズなしにライトフィールド表示デバイスによって生成される。画像は、低視力ではぼやけて見える。次いで、プロセスは、ライトフィールド表示デバイスのみを使用して、例えば0.25Dのこの追加の球面を段階的に下げ、最良の視力を見つけて、視力が改善しない場合に停止する。球面値は、最大視力を与える最高値である。
【0088】
ライトフィールド表示デバイスは、片眼に対して雲霧プロセスをシミュレートするために使用される。(S0,C0,A0)と記された初期屈折は、以前の屈折検査から決定されるか又は別の他覚的方法によって取得され得、ここで、S0は、初期屈折値を表し、C0は、初期円柱値を表し、A0は、初期軸値を表す。ライトフィールド表示デバイスは、(S0+ΔS,C0,A0)の屈折に対応するライトフィールドを生成し、ここで、ΔSは、可変屈折を表す。ΔSは、ぼやけた網膜像を生成して遠近調節を弛緩させるために、+1.50ジオプトリに初期設定される。次いで、ライトフィールドは、ΔSを段階的に低下させ、最良の球面値が決定されるまで、視力を改善するように修正される。最良の球面値は、概して、対象から鮮明に見える第1の画像に対応する。ライトフィールド表示デバイスを使用して、段階差が0.25Dである必要はない。ΔSの段階差は、0.25Dよりも小さくてよい。例えば、図5及び図6に示すように、視差バリア又はレンズレットアレイと組み合わされた表示画面を含むライトフィールド表示デバイスの場合、ΔSの最小の段階差は、表示画面20の画素ピッチpと、ピンホールピッチ又はマイクロレンズピッチΔxとに依存する。屈折が純粋に球面屈折である場合、この段階Aは、ライトフィールド表示デバイスによって生成される虚像の距離を変更することに等しい。
【0089】
初期値がない場合の球面の完全な徹底的検査
この場合、ライトフィールド表示デバイスは、バダルオプトメータをシミュレートするために使用される。換言すれば、ライトフィールド表示デバイスは、眼に近づく虚像を生成し、画像を鮮明に見ることができるときに停止するために使用され、等価球面度数(SE=S+C/2)の最初の推定値を与える。画像は、例えば、細部を備えた視標又はパターン化された画像であり得る。
【0090】
図11は、対象の眼1から500mmの距離にあるライトフィールド表示デバイス60の例を示す。ライトフィールド表示デバイスは、+10Dの球面屈折又は換言すれば眼1の後方100mmに対応するライトフィールドを生成するように構成され、その結果、虚像51は、ライトフィールド表示デバイス60の前方600mmにある。この距離は、徐々に無限遠(位置52)まで増大し、その後、虚像は、再びLFD(位置54)の前方0~400mmに位置するまで、画面の後方にある(位置53)。プロセスは、実際に鮮明な第1の位置で停止し、対応する距離dは、簡単な関係S=-1/dを使用して最良の球面値Sを決定することを可能にする。
【0091】
この方法は、対象の屈折が不明であるとしても、バダルオプトメータの原理に従い、同じ可視サイズの画像を異なる仮想距離に維持しながら、遠近調節を弛緩させることを可能にする。
【0092】
段階B.円柱の徹底的検査(単眼)
ライトフィールド表示デバイスは、クロスシリンダと均等な方法を使用して軸値を決定するために使用される。
【0093】
対象10の眼1に向けてライトフィールド71を生成するライトフィールド表示デバイス60について考える。この場合、ライトフィールド71は、軸A0に対して球面屈折S0及び円柱屈折C0をシミュレートする発散又は収束光線に対応する。生成される画像は、視標又は無数の黒点に対応し得る。概して、球面屈折S0は、段階Aで求めた最良のSEでの遠方視において段階Aで開示するように決定される。
【0094】
検査の段階Bは、元の円柱軸を初期値(S0,C0,A0)から変更することと、2つの異なる軸値A0+ΔA及びA0-ΔA(ΔAは、A0と、選択したクロスシリンダの値0.25D又は0.50Dとに依存している)を有する同じ光源の画像を同じ眼1に提示することとを含む。A0が最良の値である場合、対象は、同程度のぼやけのある2つの画像を知覚する。A0が最良の値でない場合、A0は、好ましい方向のAに変更される。対象が、2つの画像に同程度のぼやけがあると知覚するまで、2つの画像は、一方がA+ΔA及び他方がA-ΔAで同じ眼に提示される。
【0095】
例示的な実施形態によれば、ライトフィールド表示デバイスは、対象が、表示されたライトフィールドの変化を知覚してそれぞれのぼやけ度を比較できるように十分に低い交番周波数で、2つの異なる軸値(一方の画像は、A+ΔAに対応し、他方の画像は、A-ΔAに対応する)を同じ眼に交互に提示する。
【0096】
別の例示の実施形態によれば、ライトフィールド表示デバイスの2つの異なる領域は、2つの異なる軸値に対応する2つの画像を同じ眼に向けて同時に生成するために使用される。
【0097】
図12は、単眼視の対象10の視野90内に並べて生成された2つの画像93、94の例を示す。例えば、画像93は、(S0,C0,A0+ΔA)補正された領域に対応し、画像94は、(S0,C0,A0-ΔA)補正された領域に対応する。これにより、2つの画像93、94に同程度のぼやけがあるかどうかを対象が比較して判定することが可能になる。
【0098】
次いで、クロスシリンダと均等な方法を使用して円柱値を決定するためにライトフィールド表示デバイスが使用される。
【0099】
検査のこのステップは、元の円柱値を初期値(S0,C0,A0)から変更することと、2つの異なる値C0+ΔC及びC0-ΔCを提示することとを含む。C0が最良の値である場合、対象は、同程度のぼやけのある2つの画像を知覚する。C0が最良の値でない場合、C0は、好ましい方向のCに変更される。対象が、2つの画像に同程度のぼやけがあると知覚するまで、2つの画像は、一方がC+ΔC及び他方がC-ΔCで同じ眼に提示される。
【0100】
例示的な実施形態によれば、ライトフィールド表示デバイスは、2つの異なる円柱値(一方の画像は、C+ΔCに対応し、他方の画像は、C-ΔCに対応する)を同じ眼に交互に提示する。
【0101】
別の例示的な実施形態によれば、ライトフィールド表示デバイスの2つの異なる領域は、2つの異なる円柱値に対応する2つの画像を同じ眼に向けて同時に生成するために使用される。
【0102】
図13は、単眼視の対象10の視野90内に並べて生成された2つの画像95、96の例を示す。例えば、画像95は、(S0-ΔC/2,C0+ΔC,A0)補正された領域に対応し、画像96は、(S0-ΔC/2,C0-ΔC,A0)補正された領域に対応する。一定のSEで動作するように、球面値がS0-ΔC/2に変更される。これにより、2つの画像95、96に同程度のぼやけがあるかどうかを対象が比較して判定することが可能になる。
【0103】
代替的に、ライトフィールド表示デバイスは、軸値と円柱値とを同時に決定する。
【0104】
ライトフィールド表示デバイスは、N個の異なる補正を同時に表示するように構成される。例えば、ライトフィールド表示デバイスは、軸値と円柱値とを同時に変更する異なる補正に対応する複数の画像を生成する。
【0105】
初期値は、ここで、J0/J45基準:[C0*cos(2*A);C0*sin(2*A)]=[X0;Y0]で定義される。
【0106】
ライトフィールド表示デバイスは、4つの異なる選択肢:[X0+δ;Y0]、[X0-δ;Y0]、[X0;Y0-δ]及び[X0;Y0-δ]に対応する4つの画像を生成し、ここで、δは、ジオプトリ単位の小さい段階差である。
【0107】
δの各値について、対象は、好ましい方向又は換言すれば4つの選択肢のうちのよりぼやけの少ない画像を決定する。
【0108】
代替的に、4つの異なる選択肢は、以下:[X0+δ/√2;Y0+δ/√2]、[X0-δ/√2;Y0-δ/√2]、[X0-δ/√2;Y0+δ/√2]、[X0+δ/√2;Y0-δ/√2]に対応し得る。
【0109】
別の例では、ライトフィールド表示デバイスは、6つの異なる選択肢:
[X0+δ*cos(0);Y0+δ*sin(0)]、[X0+δ*cos(60°);Y0+δ*sin(60°)]、
[X0+δ*cos(120°);Y0+δ*sin(120°)]、[X0+δ*cos(180°);Y0+δ*sin(180°)]、
[X0+δ*cos(240°);Y0+δ*sin(240°)]/[X0+δ*cos(300°);Y0+δ*sin(300°)]
に対応する6つの画像を生成する。
【0110】
δの各値について、対象は、好ましい方向又は換言すれば6つの選択肢のうちのよりぼやけの少ない画像を決定する。
【0111】
代替的に、複数の選択肢がある場合、対象の応答は、例えば、位置特定システム6のアイトラッカー又はカメラを使用して、検出された視線方向に応じて自動的に収集され得る。概して、球面度Sは、加えられた-0.50Dの各円柱値に対して+0.25Dだけ調整される。
【0112】
軸値及び円柱値を決定するために、他の方法を使用することができる。特に、初期値が分からない場合、完全な徹底的検査が実施される。例えば、ライトフィールド表示デバイスは、0度~180度の可変軸に沿った小さい円柱(0.5D~1.0D)が連続的に変化するライトフィールドを生成し、対象が最良の焦点位置を決定したときにプロセスが停止する。代替的に、一定の円柱値(0.5D)は、4象限法のように4つの主な方向で検査される。
【0113】
ライトフィールド表示デバイスは、球面の検査のためにも使用され得る。例えば、求めた球面値に一方では+0.25Dを及び他方では-0.25Dを加えた2つの画像を順次又は同時に表示することにより、求めた球面値が、最良の視力を与える最大値であることを確認することが可能である。
【0114】
段階C.両眼の最適化及び検査
まず、ライトフィールド表示デバイスは、両眼視状態における、各眼に対して同じ検査の別々のビューを生成する。例えば、2つの画像の共通部は、画像の融合をもたらすために使用されるが、左眼にのみ文字が使用され、右眼には同じ文字が別の位置に配置される。対象は、鮮明度を比較する。2つのビューの鮮明度が異なる場合、2つの球面のバランスが決定され得る。この検査は、遠方視で、開始時に各眼についての単眼屈折に関して実施される。
【0115】
ここで、ライトフィールド表示デバイスは、単眼視で以前に見られた右眼(SR、CR、αR)及び左眼(SL、CL、αL)についての2つの屈折異常に対して同じ画像の2つのライトフィールドを生成する。このステップにより、同じ遠近調節状態にある両眼で見える画像の鮮明度を比較することが可能になる。その後、ライトフィールド表示デバイスは、両眼に対して、例えば+0.5Dの追加の球面を有するライトフィールドを生成する。対象は、2つの画像のぼやけ度を比較するように求められる。ぼやけ度が同じである場合、バランスを取る必要はない。ぼやけ度が同じでない場合、両眼のバランスを取るために、画像のぼやけがより少なく見える眼に+0.25D又は+0.50Dを加える必要がある。次いで、両眼の球面値は、最大視力に達するように、-0.25Dの段階差で低下される。
【0116】
次に、ライトフィールド表示デバイスは、両眼検査又は立体視検査に使用される。
【0117】
両眼視についての従来の検査は、概して、例えばプリズム、色フィルタ及び/又は偏光検査を使用して、右眼及び左眼に向けられる画像を分離することによって実施される。
【0118】
ここで、屈折による立体視能力を確認するために、左眼及び右眼のための2つの別々のライトフィールドをそれぞれ表示するライトフィールド表示デバイスの機能が使用される。
【0119】
より正確には、画像が無限遠にあり、最終的な検査及び+/-0.25Dの調整である。両方のライトフィールドへの+0.25Dの追加の球面は、両眼の視界をぼやけさせるはずである一方、-0.25Dの追加の球面値は、両眼の視界に何らの変化も与えないはずである。
【0120】
ライトフィールド表示デバイスは、近方視屈折の決定のためにも使用され得る。例えば、方法は、対象の遠近調節範囲の評価に基づく。ライトフィールド表示デバイスは、遠方視で求めた屈折補正により、異なる距離に画像を表示するように構成される。視力が維持される最短距離は、遠近調節範囲に対応する。概して、近方視に必要な加入度数は、ジオプトリ単位での遠近調節範囲の約2/3である。
【0121】
したがって、同じライトフィールド表示デバイスは、近方視屈折を決定することを可能にする。
【0122】
代表的なプロセス及び物品が本明細書で詳細に説明されているが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲において説明及び定義されているものの範囲から逸脱することなく、様々な置換形態及び修正形態がなされ得ることを認識するであろう。
【符号の説明】
【0123】
1 第1の眼
2 第2の眼
3 画像
4 画像
5 画像
6 位置特定システム
7 第1の方向
8 第2の方向
10 対象
11 第1の視線方向
12 第2の視線方向
13 第1のアイモーションボックス
14 第2のアイモーションボックス
14 アイモーションボックス
19 網膜
20 表示画面、表示パネル
21 画素
22 画素
23 画素
24 画素
30 視差バリア
31 マイクロホール
31 ピンホール
40 レンズレットアレイ
41 マイクロレンズ
42 マイクロレンズ
43 マイクロレンズ
44 マイクロレンズ
50 平面、像面
51 虚像
52 位置
53 位置
54 位置
60 LFD
61 第1の領域
62 第2の領域
63 ライトフィールド領域
71 第1のライトフィールド
72 第2のライトフィールド
80 制御ユニット
90 視野
91 点
93 画像
94 画像
95 画像
96 画像
100 システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13