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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】配線基板および表示装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/11 20060101AFI20241021BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20241021BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20241021BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20241021BHJP
   H01L 23/14 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
H05K1/11 F
H05K1/09 A
H05K1/02 A
H05K1/02 J
H01L23/12 Z
H01L23/14 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022563680
(86)(22)【出願日】2021-11-02
(86)【国際出願番号】 JP2021040361
(87)【国際公開番号】W WO2022107590
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】P 2020192044
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 暢之
(72)【発明者】
【氏名】原口 文彰
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-125477(JP,U)
【文献】特開2020-013735(JP,A)
【文献】特開2003-243804(JP,A)
【文献】特開2010-161127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/11
H05K 1/09
H05K 1/02
H01L 23/12
H01L 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面と、側面と、前記主面と前記側面とを繋ぐ傾斜面と、を有する基板と、
前記主面、前記傾斜面および前記側面にわたって位置する配線と、を備え、
前記配線は、絶縁性成分よりも含有量が多い導電性粒子を含むとともに、前記主面と前記傾斜面間の第1角部および前記傾斜面と前記側面間の第2角部において、少なくとも前記導電性粒子の1個分の厚みを有しており、
前記主面の表面粗さを第1表面粗さRa1とし、前記傾斜面の表面粗さを第2表面粗さRa2とし、前記側面の表面粗さを第3表面粗さRa3としたとき、前記Ra3が前記Ra2よりも大きい、配線基板。
【請求項2】
前記導電性粒子は、長径および短径を有しており、
前記配線は、前記第1角部および前記第2角部において、少なくとも前記導電性粒子の短径分の厚みを有している、請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記導電性粒子は、第1の導電性粒子と第2の導電性粒子を含み、
前記第1の導電性粒子の大きさが前記第2の導電性粒子の大きさよりも大きい、請求項1または2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記第1の導電性粒子の密度が前記第2の導電性粒子の密度よりも高い請求項3に記載の配線基板。
【請求項5】
前記第2の導電性粒子の抵抗率が前記第1の導電性粒子の抵抗率よりも低い請求項3または4に記載の配線基板。
【請求項6】
前記配線は、前記第1角部および前記第2角部において、前記導電性粒子の5個分以下の厚みを有している、請求項1または2に記載の配線基板。
【請求項7】
前記配線は、前記導電性粒子の前記含有量が80重量%以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項8】
前記傾斜面は、10μm以上200μm以下の幅を有している、請求項1~7のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項9】
前記配線は、前記第1角部および前記第2角部において、0.4μm~1.6μmの厚みを有している、請求項1~8のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項10】
前記配線は、前記主面および前記側面において、2μm~10μmの厚みを有している、請求項1~9のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項11】
前記傾斜面は、前記主面に対する傾斜角度が30°以上60°以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項12】
前記傾斜面は、曲面である、請求項1~11のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項13】
前記Ra2が前記Ra1よりも大きい、請求項に記載の配線基板。
【請求項14】
前記基板の構成材料は、ガラスを含んでいる、請求項1~13のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の配線基板を備え、
前記基板は、一方の前記主面の側に、複数の発光素子がマトリクス状に位置している表示装置。
【請求項16】
前記基板は、他方の前記主面の側に、前記複数の発光素子に前記配線を介して電気的に接続された駆動部がある、請求項15に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回路配線を形成するための基板、電子素子または発光素子等を搭載する基板、マイクロチップ型発光ダイオード(以下、「μLED」ともいう)等が発光素子として装備されるマイクロLED表示装置の基板等に用いることができる配線基板およびそれを備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば半導体パッケージ、チップ抵抗器およびセラミック電子部品などの基板の主面と側面とが交差する角部を面取りし、主面から角部を経て側面に延びる配線の膜厚の減少を抑制して、配線の導通安定性を向上する技術が、例えば特許文献1~3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-050355号公報
【文献】特開2019-150992号公報
【文献】特開2000-182879号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の配線基板は、主面と、側面と、前記主面と前記側面とを繋ぐ傾斜面と、を有する基板と、
前記主面、前記傾斜面および前記側面にわたって位置する配線と、を備え、
前記配線は、絶縁性成分よりも含有量が多い導電性粒子を含むとともに、前記主面と前記傾斜面間の第1角部および前記傾斜面と前記側面間の第2角部において、少なくとも前記導電性粒子の1個分の厚みを有しており、
前記主面の表面粗さを第1表面粗さRa1とし、前記傾斜面の表面粗さを第2表面粗さRa2とし、前記側面の表面粗さを第3表面粗さRa3としたとき、前記Ra3が前記Ra2よりも大きい構成である。
【0005】
本開示の表示装置は、前記配線基板を備え、
前記基板は、一方の前記主面の側に、複数の発光素子がマトリクス状に位置している構成である。
【発明の効果】
【0006】
本開示の配線基板および表示装置によれば、配線は、絶縁性成分よりも含有量(例えば、80重量%以上)が多い導電性粒子を含むことから、導電性粒子同士が接触および/または融着しやすくなる。その結果、多数の導電性粒子が接触部および/または融着部によって互いに繋がっている、導電路ネットワークを構成することから、良好な導電性を有する。また、導電路ネットワークの多くの隙間に絶縁性成分が入り込むことから、絶縁性成分が結合部材(バインダー)として機能し、導電路ネットワークが崩れにくくなる。また、配線を形成するための導電性ペーストが、未硬化の絶縁性成分よりも多く含まれる導電性粒子によって、見かけの粘性が向上して流動性が小さくなる。その結果、導電性ペーストを基板の角部に塗布しても、基板の傾斜面および側面から流れ落ちにくくなり、角で途切れにくくなる。また、配線は、基板の表面の微細な凹凸に入り込んで配線の付着力を向上させる、樹脂硬化物等から成る絶縁性成分を含むことから、配線が基板の表面に強固に付着しやすくなる。また、配線は、第1角部および第2角部において、少なくとも導電性粒子の1個分の厚みを有していることから、配線幅を小さくし配線の厚みを薄くすることができる。その結果、基板の主面に位置する高密度配線との接続性が向上する。従って、高密度配線との接続性が良く、導通安定性の高い配線を備えた配線基板および表示装置を提供することができる。さらに、導電性ペーストの塗布量を節減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明の目的、特色、および利点は、下記の詳細な説明と図面とからより明確になるであろう。
図1】本開示に係る実施形態の配線基板の一例を示す、配線を有する基板の角部の部分拡大断面図である。
図2図1に示される配線基板の端部を示す部分断面図である。
図3A】基板の角部の形状による配線層の形状の差異を示す断面図である。
図3B】基板の角部の形状による配線層の形状の差異を示す断面図である。
図3C】基板の角部の形状による配線層の形状の差異を示す断面図である。
図4】本開示の配線基板の他の実施形態を示し、配線を有する基板の角部の模式的な部分拡大断面図である。
図5】本開示の配線基板の他の実施形態を示し、配線を有する基板の角部の模式的な部分拡大断面図である。
図6】本開示の配線基板の他の実施形態を示し、配線を有する基板の角部の模式的な部分拡大断面図である。
図7】本開示の配線基板の他の実施形態を示し、配線を有する基板の角部の模式的な部分拡大断面図である。
図8】本開示の配線基板の他の実施形態を示し、粗面化された基板の主面に導電性ペーストを塗布した状態を説明する模式的な部分拡大断面図である。
図9】本開示の配線基板の他の実施形態を示し、配線を有する基板の角部の模式的な部分拡大断面図である。
図10】基板の主面上の配線の膜厚と、基板の角部の傾斜面上の配線の膜厚との関係を示すグラフである。
図11】基板の角部の傾斜面の面取り幅と断線発生率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
まず、本開示の発光素子基板およびそれを備える表示装置が基礎とする構成について説明する。
【0009】
上記特許文献1に記載される構成は、基板の構成材料をセラミックとする半導体パッケージ用のリッド基板であり、上記特許文献2に記載される構成は、基板の構成材料をアルミナとするチップ抵抗器の基板であり、上記特許文献3の従来技術は、基板の構成材料をセラミックとする電子部品の基板である。これらのセラミックから成る基板(セラミック基板ともいう)は、表面の平坦性が高くないことから、大画面で高精細画像を表示するμLED表示装置のタイリングパネル用のガラス基板のように、高密度配線が形成される配線基板には適さない。しかし、セラミック基板は、側面を介して表面側と裏面側を導通させる側面配線を形成することは、比較的容易である。即ち、セラミック基板は、側面を含む表面が粗面であることから、側面に導電性ペーストを塗布し、焼成して形成する場合、導電性ペーストを焼成して得られた側面配線が、セラミック基板の表面に比較的強固に付着し、剥離しにくい、という利点がある。
【0010】
ガラス基板は、表面の平坦性が高いことから、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等の薄膜形成法を用いて、配線幅が小さく配線の厚みが薄い高密度配線を形成することは容易である。しかし、ガラス基板は、導電性ペーストを用いて側面配線を形成しようとすると、側面配線がガラス基板の表面に強固に付着しにくく、剥離することがある。また、ガラス基板の主面に形成された高密度配線に側面配線を接続することを容易にする目的で、側面配線の配線幅を小さくし配線の厚みを薄くしようとすると、側面配線のガラス基板の表面に対する付着力がさらに低下し、さらに剥離しやすくなる。したがって、従来から、画像の高精細化に伴って高密度化された高密度配線を備えたガラス基板等の絶縁基板を用いる配線基板に対しても、高密度配線との接続性が良く、導通安定性の高い側面配線を備えた配線基板が求められている。
【0011】
以下、添付図面を参照して、本開示の配線基板の実施形態について説明する。
【0012】
図1は、本開示に係る実施形態の配線基板1の一例を示す、配線を有する基板の角部の部分拡大断面図である。図2は、図1に示される配線基板1の端部を示す部分断面図である。本実施形態の配線基板1は、主面2と、主面2に垂直な側面4と、主面2と側面4とを繋ぐ傾斜面3とを有する基板5と、主面2と傾斜面3と側面4とが形成される角部6に、主面2、傾斜面3および側面4にわたって位置する配線(以下、側面配線ともいう)7と、を備える。
【0013】
そして、側面配線7は、図4図9に示すように、絶縁性成分7iよりも含有量が多い導電性粒子7pを含むとともに、主面2と傾斜面3間の第1角部6aおよび傾斜面3と側面4間の第2角部6bにおいて、少なくとも導電性粒子7pの1個分の厚みを有している構成である。
【0014】
本実施形態の配線基板1は、上記の構成により以下の効果を奏する。配線7は、絶縁性成分7iよりも含有量(例えば、80重量%以上)が多い導電性粒子7pを含むことから、導電性粒子7p同士が接触および/または融着しやすくなる。その結果、多数の導電性粒子7pが接触部および/または融着部によって互いに繋がっている、導電路ネットワークを構成することから、良好な導電性を有する。また、導電路ネットワークの多くの隙間に絶縁性成分7iが入り込むことから、絶縁性成分7iが結合部材(バインダー)として機能し、導電路ネットワークが崩れにくくなる。また、配線7を形成するための導電性ペースト7s(図8に示す)が、未硬化の絶縁性成分7ip(図8に示す)よりも多く含まれる導電性粒子7pによって、見かけの粘性が向上して流動性が小さくなる。その結果、導電性ペースト7sを基板5の角部に塗布しても、基板5の傾斜面3および側面4から流れ落ちにくくなり、角で途切れにくくなる。また、側面配線7は、基板5の表面の微細な凹凸に入り込んで配線7の付着力を向上させる、樹脂硬化物等から成る絶縁性成分7iを含むことから、配線7が基板5の表面に強固に付着しやすくなる。また、配線7は、第1角部6aおよび第2角部6bにおいて、少なくとも導電性粒子7pの1個分の厚みを有していることから、配線幅を小さくし配線7の厚みを薄くすることができる。その結果、基板5の主面2に位置する高密度配線との接続性が向上する。従って、高密度配線との接続性が良く、導通安定性の高い配線を備えた配線基板1を提供することができる。さらに、導電性ペーストの塗布量を節減することができる。
【0015】
本実施形態の配線基板1は、基板5はガラス基板であってよい。ガラス基板は、表面の平坦性が高いことから、表示装置等に好適な高密度配線を形成することが容易である。また、ガラス基板は、裏面側にIC、フレキシブル印刷基板(Flexible Printed Circuit:FPC)等を配置するとともに、側面に側面配線7を配置して表面側の高密度配線と裏面側のIC等とを電気的に接続することができる。即ち、ガラス基板は、多機能な配線基板1を構成するのに好適である。
【0016】
基板5は、ガラス材料から成る場合、ガラス材料としては、例えば、ホウケイ酸ガラス、結晶化ガラス、または石英等を含む材料であってもよい。基板5は、酸化珪素(SiO),酸化ナトリウム(NaO),酸化カルシウム(CaO)を主成分とする青板ガラス(ソーダガラス)から構成されていてもよい。青板ガラスは、ガラスの中では最も融点が低く加工が容易であり、安価である。また基板5は、酸化珪素(SiO),ホウ酸(B),酸化アルミニウム(Al)を主成分とする白板ガラス(無アリカリガラス)から構成されていてもよい。白板ガラスは、安価であり、可視光、紫外光、赤外光の波長範囲で高い透過率を有しており、一般的な常用使用温度の上限が120℃~130℃であり青板ガラスと同等である。また基板5は、酸化珪素(SiO)を主成分とする石英ガラスから構成されていてもよい。石英ガラスは、不純物が少ない高純度のガラスであり、紫外光および赤外光に対する透過率が高く、耐熱温度が高い。石英ガラスの常用使用温度の上限は900℃程度である。また、石英ガラスは、耐薬品性能が優れ、穴開け加工、切削加工等の加工がしやすい。
【0017】
なお、本実施形態の説明において、「~」は「乃至」を意味し、以下同様とする。
【0018】
また基板5は、サファイアガラス(Al23単結晶)基板(サファイアクリスタル基板ともいう)であってもよい。サファイアガラスは、モース硬度が9と高く、耐熱温度が約2000℃であり、熱伝導率が42W/mK(20℃)であり、ガラスの熱伝導率1.4W/mK(20℃)の数10倍である。
【0019】
また基板5は、樹脂基板、セラミック基板であってもよい。また基板5は、ガラス基板と樹脂基板とセラミック基板のうちの複数種の基板を積層した複合型基板であってもよい。
【0020】
図1に示すように、基板5の角部6に傾斜面3があり、傾斜面3の幅cが10μm以上200μm以下であってもよい。幅cが10μm未満である場合、図11に示すように配線7の断線が発生しやすくなる。幅cが200μmを超える場合、基板5の主面2に形成する高密度配線、電子素子、発光素子等の配置領域に、傾斜面3が入り込むおそれがある。また、基板5がマイクロLED表示装置等の表示装置用の基板である場合、傾斜面3が表示部に入り込むおそれがある。
【0021】
傾斜面3は、凸型の曲面であってもよい。この場合、第1角部6aにおける主面2と傾斜面3との成す角度が小さくなり、配線7が第1角部6aで途切れにくくなる。傾斜面3は、部分球面、部分楕円体面、部分円柱面等の曲面であってもよい。第2角部6bについても同様の効果を奏する。同様の効果を付与する目的で、傾斜面3は、複数の平坦面から成る凸型の複合面であってもよい。
【0022】
傾斜面3は、凹型の曲面であってもよい。この場合、導電性ペーストが傾斜面3から側面4に流れ落ちにくくなる。傾斜面3は、部分球面、部分楕円体面、部分円柱面等の曲面であってもよい。同様の効果を付与する目的で、傾斜面3は、複数の平坦面から成る凹型の複合面であってもよい。
【0023】
配線7の厚みtは、2μm以上10μm以下であってもよい。厚みtが2μm未満である場合、図10に示すように、配線7の第1角部6aおよび第2角部6bにおける厚みtが、導電性粒子7pの1個分の厚みである0.4μm(図4の場合の厚み)未満になる傾向がある。その結果、配線7が第1角部6aおよび第2角部6bにおいて途切れやすくなる。厚みtが10μmを超える場合、図10に示すように、配線7の第1角部6aおよび第2角部6bにおける厚みtが、導電性粒子7pの2個分の厚みである1.6μm(図7の場合の厚み)を超える傾向がある。その結果、基板5の主面2における側面配線7の厚みが増大して、主面2に位置する高密度配線との接続性が劣化する傾向がある。また、導電性ペーストの塗布量を節減することが難しくなる傾向がある。
【0024】
基板5は、平面視形状が三角形、矩形(正方形、長方形)、台形、円形、楕円形、長円形、五角形等の多角形等の種々の形状であってもよい。基板の主面2は、第1主面2aと、第1主面2aとは反対側の第2主面2bとを有する。第1主面2aの端縁と第2主面2bの端縁との間には、第1主面2aと第2主面2bとを繋ぐ側面4が位置する。側面4は、第1主面2aおよび第2主面2bに対して直角に位置してもよいが、必ずしも直角でなくてもよい。側面4は、第1主面2aおよび第2主面2bに対して、直角±(0°を超え20°以下)程度の角度をなして位置してもよい。
【0025】
本実施形態の配線基板1は、例えば、マイクロチップ型発光ダイオード(以下、「μLED」ともいう)がマトリクス状に配設されたマイクロLED表示装置(以下、「μLED表示装置」ともいう)を、複数個、平面状に並べてそれらの側面同士を結合(タイリング)し、1つの大型のタイリングパネル(マルチディスプレイともいう)の基板として用いられる。
【0026】
上記のμLED表示装置は、例えば、以下の構成を有する。即ち、ICおよびフレキシブル配線基板といったパネルの駆動システム部(駆動部ともいう)が、基板5の裏面である第2主面2b上に配置され、第1主面2aの端縁近傍の額縁領域および第2主面2bの端縁近傍の額縁領域には、側面配線7に接続される電極パッドがそれぞれ配置される。基板5の側面4には、第1主面2a側の電極パッドと第2主面2b側の電極パッドとを接続する配線部7cが配置され、第1主面2a側の配線部7aと第2主面2b側の配線部7bとが配線部7cを介して電気的に接続される。即ち、側面配線7は配線部7a,7b,7cから成る。また、μLED表示装置の第1主面2a(表示側の面)には、μLEDおよびμLEDの発光を駆動制御する薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)を含む画素回路を備えた複数の画素部が、マトリクス状に配置されている。
【0027】
駆動部は、例えば、基板5の第2主面2b上にCOG(Chip On Glass)方式によって搭載されたIC、LSI等の駆動素子であってもよい。また駆動部は、基板5の第2主面2b上に化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法等の薄膜形成法によって形成された、低温多結晶シリコン(Low Temperature Poly Silicon:LTPS)から成る半導体層を有する薄膜トランジスタ(Thine Film Transistor:TFT)を備えた薄膜回路であってもよい。また駆動部は、基板5の第2主面2b上に位置する外部接続端子に接続されたフレキシブル配線基板に備わった駆動素子であってもよい。また駆動部は、フレキシブル配線基板の配線に電気的に接続された外部の駆動素子であってもよい。
【0028】
このようなμLED表示装置の複数を結合させて複合型表示装置、いわゆるマルチディスプレイを構成する場合、複数の画素部7aは第1主面2a上に位置している。複数の画素部7aは、所定の画素ピッチでマトリクス状に配列されている。画素ピッチは、例えば、50μm~500μm程度であってもよく、100μm~400μm程度であってもよく、380μm程度であってもよい。各画素部7aは、電極パッドおよび側面配線7を介して第2主面2b側の駆動システム部に電気的に接続されている。
【0029】
上述したように、基板5の一方の主面の側に、複数の発光素子としてのμLEDがマトリクス状に位置し、基板5の他方の主面の側に、複数のμLEDに配線7を介して電気的に接続された駆動部がある構成であってもよい。この場合、駆動部が基板5の第2主面2bの側にあることから、マルチディスプレイを構成する場合に駆動部が視認者から視認されることがなく、画像表示を阻害することがないという有利な効果を奏する。また、μLED表示装置の額縁部に駆動部を配置する必要がないことから、μLED表示装置を狭額縁化すること、額縁を無くすことが容易になる。また、同様にマルチディスプレイを狭額縁化すること、額縁を無くすことが容易になる。
【0030】
図3A図3Cは、基板5の角部6の形状による配線7の形状の差異を示す断面図である。図3Aに示されるように、基板5の角部6が、主面2と側面4とのなす角度が直角であり、角(エッジの先端)が鋭く尖った状態にある場合、側面配線7の厚みtは角部6上でほぼ0μmとなり、断線しやすい。また、側面配線7の厚みtは、主面2および側面4上では10μm未満となり、主面2に位置する高密度配線との接続性は良いが、上述したように側面配線7の導通性が劣化しやすくなる。
【0031】
また、図3Bに示されるように、導電性ペースト7sの塗布量を増加させると、側面配線7の厚みtを主面2および側面4上で10μm以上とし、角部6においてもある程度の厚みが得られる。しかしながら、この場合、主面2に位置する高密度配線と側面配線7との接続性が劣化しやすくなるとともに、側面配線7による製造コストの増加を招来する。
【0032】
本実施形態の配置基板1は、図3Cに示されるように、基板5は、角部6を面取り加工等して形成される傾斜面3を有する。傾斜面3の幅cは、上述したように好適には10μm以上200μm以下に設定される。幅cが10μm未満である場合、上述したように配線7の断線が発生しやすくなる。幅cが200μmを超える場合、上述したように基板5の主面2に形成する高密度配線、電子素子、発光素子等の配置領域および表示部に、傾斜面3が入り込むおそれがある。
【0033】
また、本実施形態の配線基板1における傾斜面3は、主面2に対する傾斜角度が30°以上60°以下であってよく、側面4に対する傾斜角度が30°以上60°以下であってよい。この場合、側面配線7が、基板5の第1角部6aおよび第2角部6bにおいて途切れることを抑えることができる。また、厚みtが2μm以上10μm以下である側面配線7を形成することが容易になる。
【0034】
基板5の主面2の表面粗さを第1表面粗さRa1とし、傾斜面3の表面粗さを第2表面粗さRa2とし、側面4の表面粗さを第3表面粗さRa3としたとき、Ra1とRa2とRa3のうちの少なくとも2つが互いに異なっていてもよい。この場合、図8に示すように、例えば粗面化された主面2に導電性ペースト7sを塗布すると、導電性ペースト7sに含まれる未硬化のエポキシ樹脂等から成る絶縁性成分7ipが主面2の細かな凹凸に入り込んで、分子間力による付着力が増大する。それとともに、導電性ペースト7sに含まれる導電性粒子7pが主面2の細かな凹凸に引っ掛かることによって、導電性ペースト7sが主面2の面方向dpに流れにくくなる。その結果、導電性ペースト7sの主面2に対する付着力がより増大する。
【0035】
図9に示すように、Ra2がRa1よりも大きい構成であってもよい。この場合、傾斜面3に塗布された導電性ペースト7sは、重力の影響により側面4の側に流れ落ちやすいが、傾斜面3に対する導電性ペースト7sの付着力を増大させることによって、導電性ペースト7sの流れ落ちを抑えることができる。
【0036】
また、図9に示すように、Ra3がRa2よりも大きい構成であってもよい。この場合、側面4に塗布された導電性ペースト7sは、重力の直接的な影響により下方に流れ落ちやすいが、側面4に対する導電性ペースト7sの付着力を増大させることによって、導電性ペースト7sの流れ落ちを抑えることができる。
【0037】
また、図9に示すように、Ra2がRa1よりも大きく、Ra3がRa2よりも大きい構成(Ra3>Ra2>Ra1)であってもよい。この場合、傾斜面3に対する導電性ペースト7sの付着力を増大させるとともに、側面4に対する導電性ペースト7sの付着力を増大させることによって、導電性ペースト7sの流れ落ちをより抑えることができる。Ra1は1nm~100nm程度、Ra2は50nm~200nm程度、Ra3は100nm~500nm程度であってもよい。
【0038】
また、Ra3=Ra2>Ra1であってもよい。この場合にも、傾斜面3に対する導電性ペースト7sの付着力を増大させるとともに、側面4に対する導電性ペースト7sの付着力を増大させることによって、導電性ペースト7sの流れ落ちをより抑えることができる。
【0039】
表面粗さ(算術平均粗さ)の調整は、被研削面に研削加工を施す際のアルミナ研削材、ダイヤモンド研削材等の研削材の番手(平均粒径)の大きさを調整することによって、行うことができる。例えば、回転する円板型の研削部材の側面によって被研削面に研削加工を施す研削装置を用いる場合、研削部材の側面に固着された研削材の番手(平均粒径)の大きさを、被研削面において所望の算術平均粗さが得られるように、調整する。
【0040】
配線基板1における傾斜面3は、第1角部6aの稜線方向(第2角部6bの稜線方向)に沿った方向の長さが、稜線方向に直交する方向に沿った方向の長さよりも長い線状または帯状の凹部が、含まれている粗面である構成であってもよい。この構成の場合、線状または帯状の凹部が、導電性ペースト7sが流れ落ちる方向に直交する方向に長い段差部となる。その結果、傾斜面3において導電性ペースト7sの流れ落ちを効果的に抑えることができる。線状または帯状の凹部は、例えば円板型の研削部材の側面によって傾斜面3を形成する場合、研削部材の側面の回転方向(接線方向)が第1角部6aの稜線方向に沿った方向となるように設定することによって、形成することができる。線状または帯状の凹部は、傾斜面3の全面に多数形成されていてもよい。線状または帯状の凹部は、短手方向の長さが1μm~100μm程度であり、長手方向の長さが10μm~200μm程度であってもよく、長手方向の長さが短手方向の長さの1倍を超え10倍程度以下であってもよいが、これらの範囲に限らない。線状または帯状の凹部は、深さが30nm~100nm程度であってもよいが、この範囲に限らない。
【0041】
側面配線7を形成するために、Ag粒子等の導電性粒子7p、未硬化のエポキシ樹脂等から成る樹脂成分、エチルアルコール等のアルコール、および水等を含む導電性ペースト7sを基板5の主面2、傾斜面3および側面4に印刷塗布した後、塗布した導電性ペースト7sを焼成することによって、側面配線7を形成することができる。導電性ペースト7sはガラスフリットを含んでいてもよい。そして、基板5の角部に傾斜面3がないと、例えば導電性ペースト7sとしてのAgペースト7sを主面2の端縁部および側面4にスクリーン印刷塗布すると、角部においてAgペースト7sを均一な厚みとして塗布することは極めて困難である。さらに、角部をAgペースト7sによって被覆することさえも極めて困難である。従って、基板5の角部には導電性ペースト7sが、導電性が劣化するような極めて薄い厚みで付着するか、所々で基板5が露出する状態で付着する事態が生じやすい。
【0042】
本実施形態の配線基板1では、基板5の主面2と側面4との間の角部6に面取り加工等によって傾斜面3が形成される。これら主面2、側面4および傾斜面3に、Agペースト等の導電性ペースト7sを印刷塗布し、焼成することによって、側面配線7を形成することができる。Agペーストは、例えば、印刷時硬化前に固形分および揮発成分を含むAg重量比率が85wt%(重量%)であり、硬化後の固形分だけのAg重量比率は95wt%である。
【0043】
導電性粒子7pの焼成前の粒径(平均粒径)は0.8μm~3.0μm程度であってもよいが、この値に限らない。例えば、導電性粒子7pの焼成前の粒径は0.1μm~10.0μm程度であってもよい。ただし、導電性粒子7pの焼成前の粒径が0.1μm未満である場合、導電性粒子7pを焼成したときに、多数の導電性粒子7pが一体化し層状体になりやすくなる。多数の導電性粒子7pが一体化し層状体になると、樹脂硬化物等から成る絶縁性成分7iも層状体になり、これらの層状体が分離し配線7が剥離する傾向がある。導電性粒子7pの焼成前の粒径が10.0μmを超える場合、側面配線7の配線幅および厚みが増大し、高密度配線との接続性が劣化する傾向がある。
【0044】
また導電性粒子7pは、球状の粒子と、フレーク状等の不定形の粒子と、を含んでいてもよい。この場合、不定形の粒子は表面積が大きいことから熱吸収面積が増大し、焼成時に溶融しやいために球状の粒子同士を繋ぐ融着部となりやすい。また導電性粒子7pは、稠密体および/または中空体であってもよい。中空体から成る導電性粒子7pは、熱容量が小さいことから、図4図5に示すように溶融変形しやすく、また焼成時に溶融しやいために球状の粒子同士を繋ぐ融着部となりやすい。
【0045】
側面配線7は、導電性粒子7pの含有量が80重量%以上である構成であってもよい。この場合、側面配線7を形成するための導電性ペースト7sが、未硬化の絶縁性成分7ipよりも多く含まれる導電性粒子7pによって、見かけの粘性が向上して流動性が小さくなる効果が向上する。その結果、導電性ペースト7sを基板5の角部に塗布しても、基板5の傾斜面3および側面4から流れ落ちにくくなり、角で途切れにくくなる。この目的をより効果的に達成するために、側面配線7における導電性粒子7pの含有量は90重量%以上であってもよく、95重量%以上であってもよい。
【0046】
側面配線7は、Ag、Cu、Al、ステンレス鋼等の導電性粒子、エポキシ樹脂等の未硬化の樹脂成分、アルコール溶媒および水等を含む導電性ペースト7sを、側面4から第1面2aおよび第2面2bにかけての所望の部位に印刷塗布した後、加熱法、紫外線等の光照射によって硬化させる光硬化法、光硬化加熱法等の方法によって形成することができる。また側面配線7は、メッキ法、蒸着法、CVD法等の薄膜形成方法によっても形成することができる。また、側面における側面配線7を形成する部位に、溝を予め形成しておいてもよい。これによって、側面配線7となる導電性ペースト7sが、側面4における所望の部位に配置されやすくなる。また、側面配線7を覆って保護する、樹脂材料等から成る被覆層(オーバーコート層)を設けてもよい。
【0047】
図4に示すように、導電性粒子7pは、長径および短径を有しており、側面配線7は、第1角部6aおよび第2角部6bにおいて、少なくとも導電性粒子7pの短径分の厚みを有している構成であってもよい。側面配線7は、導電性ペースト7sを塗布し焼成して形成される場合、焼成時に導電性粒子7pが溶融変形、融着および自重等の原因によって扁平状、楕円体状等の長径および短径を有する形状に変形しやすい。導電性粒子7pが中空体である場合にも、長径および短径を有する形状に変形しやすい。そして、導電性粒子7pは、焼成後にその長径の方向が基板5の表面の面方向に略平行となりやすい。従って、基板5の第1角部6aおよび第2角部6bにおいて、少なくとも導電性粒子7pの短径分の厚みを有する配線7が形成される。この構成の場合、側面配線7の厚みをより薄くすることができる。その結果、基板5の主面2に位置する高密度配線との接続性がより向上する。さらに、導電性ペースト7sの塗布量を節減することができる。
【0048】
導電性粒子7pの短径(r1とする)は、焼成前の導電性粒子7pが直径rの球状である場合、r/2程度であってもよい。例えば、rが0.8μmである場合、r1は0.4μm程度であってもよい。また、導電性粒子7pの融点、中空体であるか否か、焼成温度、焼成時間等の条件によっては、r1は変化することから、0.1r≦r1≦0.9rであってもよく、0.3r≦r1≦0.7rであってもよい。
【0049】
図5図7に示すように、側面配線7は、第1角部6aおよび第2角部6bにおいて、導電性粒子7pの5個分以下の厚みを有している構成であってもよい。この構成は、第1角部6aおよび第2角部6bにおいて、導電性粒子7p同士が接触しにくい、融着しにくいことから、導電性粒子7pが積み重ねられにくい、という現象に基づく。ただし、導電性ペースト7sは見かけの粘性が向上して流動性が小さくなっていることから、上記現象が生じたとしても、第1角部6aおよび第2角部6bにおいて、導電性粒子7pを5個程度積み重ねることができる。この構成の場合、側面配線7の抵抗を小さくしつつ厚みを薄く保持することができる。その結果、基板5の主面2に位置する高密度配線との接続性が良好となる。
【0050】
より好適には、側面配線7は、第1角部6aおよび第2角部6bにおいて、導電性粒子7pの4個分以下の厚みを有している構成であってもよい。即ち、図10に示すように、傾斜面3の傾斜角度が45°であり、側面配線7の角部膜厚が約1.6μm(短径が0.4μmである導電性粒子7pの4個分の厚み)である場合、側面配線7の平面部膜厚が好適な上限である約10μmとなるからである。
【0051】
さらに好適には、側面配線7は、第1角部6aおよび第2角部6bにおいて、導電性粒子7pの2個分以下の厚みを有している構成であってもよい。例えば、上記rが0.8μmである場合、側面配線7の第1角部6aおよび第2角部6bにおける厚みは1.6μm程度であってもよい。
【0052】
側面配線7は、第1角部6aおよび第2角部6bにおいて、導電性粒子7pの6個分以上の厚みを有していてもよいが、この場合、基板5の主面2における側面配線7の厚みが増大して、主面2に位置する高密度配線との接続性が劣化する傾向がある。また、7sの塗布量を節減することが難しくなる傾向がある。
【0053】
従って、側面配線7は、第1角部6aおよび第2角部6bにおいて、0.4μm~1.6μm程度の厚みを有している構成であってもよい。また、導電性粒子7pの焼成前の粒径が3.0μmである場合、図4図7に示すように、側面配線7は、第1角部6aおよび第2角部6bにおいて、1.5μm~6.0μm程度の厚みを有している構成であってもよい。従って、側面配線7は、第1角部6aおよび第2角部6bにおいて、0.4μm~6.0μm程度の厚みを有している構成であってもよい。
【0054】
図6に示すように、導電性粒子7pは直径rの球状であり、側面配線7は、第1角部6aおよび第2角部6bにおいて、少なくとも導電性粒子7pの直径r分の厚みを有している構成であってもよい。この場合、導電性粒子7pの融点が高い、導電性粒子7pが稠密体である、焼成温度が低い、焼成時間が短いといった条件によって、焼成によって導電性粒子7pが殆ど変形しない場合に相当する。この場合、例えば、上記rが0.8μmである場合、側面配線7の第1角部6aおよび第2角部6bにおける厚みは0.8μm程度であってもよい。
【0055】
側面配線7は、図4および図5に示す長径および短径を有する形状の導電性粒子7pと、図6および図7に示す球状の導電性粒子7pと、が混在している構成であってもよい。
【0056】
導電性粒子7pは、第1の導電性粒子と第2の導電性粒子を含み、第1の導電性粒子の大きさが第2の導電性粒子の大きさよりも大きい構成であってもよい。この場合、多数の第1の導電性粒子が接触部および/または融着部によって互いに繋がっている、導電路ネットワークを構成し、第2の導電性粒子が導電路ネットワークの隙間に入り込んで導電路ネットワークを補強するとともに、導電路ネットワークの導電性を向上させることができる。第1の導電性粒子の大きさは、第2の導電性粒子の大きさの1倍を超え10倍以下であってもよいが、この範囲に限らない。例えば、第1の導電性粒子の大きさ(直径)を0.4μm~1.6μmとし、第2の導電性粒子の大きさ(直径)を0.04μm以上1.6μm未満としてもよい。導電性粒子の大きさは、導電性粒子が球状であれば直径で規定し、楕円体状等の長径および短径を有する形状であれば長径(最大径)で規定してもよい。
【0057】
第1の導電性粒子の大きさが第2の導電性粒子の大きさよりも大きい構成であって、第1の導電性粒子の密度が第2の導電性粒子の密度よりも高い構成であってもよい。この場合、導電性ペースト7sを傾斜面3等に塗布したとき、密度が高い(比重が重い)第1の導電性粒子が速やかに沈降して堆積し、密度が低い(比重が軽い)第2の導電性粒子が、第1の導電性粒子から成る堆積層の隙間に入り込みやすくなる。その結果、第2の導電性粒子が導電路ネットワークの隙間に入り込んで導電路ネットワークを補強するとともに、導電路ネットワークの導電性をより向上させることができる。例えば、各種金属の密度(g/cm3)は、白金(Pt)が21.45、金(Au)が19.32、タングステン(W)が19.30、銀(Ag)が10.50、モリブデンが(Mo)10.22、銅(Cu)が8.96、ニッケル(Ni)が8.90、ニオブ(Nb)が8.57、鉄(Fe)が7.87、スズ(Sn)が7.31、インジウム(In)が7.31、クロム(Cr)が7.20、亜鉛(Zn)が7.13、チタン(Ti)が4.54、アルミニウム(Al)が2.70、マグネシウム(Mg)が1.74である。従って、例えば、第1の導電性粒子が銀から成り、第2の導電性粒子が銀銅合金から成る構成であってもよい。
【0058】
第1の導電性粒子の大きさが第2の導電性粒子の大きさよりも大きい構成であって、第2の導電性粒子の抵抗率(Ωm)が第1の導電性粒子の抵抗率よりも低い構成であってもよい。換言すると、第2の導電性粒子の導電率(S/m:ジーメンス毎メートル)が第1の導電性粒子の導電率よりも高い構成であってもよい。この場合、第2の導電性粒子が導電路ネットワークの隙間に入り込んで導電路ネットワークを補強するとともに、導電路ネットワークの導電性をより向上させることができる。例えば、銀の抵抗率は15.87(nΩm)、銅の抵抗率は16.78(nΩm)である。また、銅を100%とした場合にどの程度電気が流れ易いかという指標である国際焼鈍軟銅標準(International Annealed Copper Standard:IACS%)を用いた場合、銀(Ag)が105.7%、金(Au)が75.8%、アルミニウム(Al)が59.5%、マグネシウム(Mg)が38.2%、タングステン(W)が31.8%、モリブデン(Mo)が31.4%、亜鉛(Zn)が28.4%、ニッケル(Ni)が24.2%、インジウム(In)が20.0%、鉄(Fe)が17.5%、プラチナ(Pt)が16.0%、スズ(Sn)が14.6%、ニオブ(Nb)が11.0%、チタン(Ti)が4.0%である。従って、例えば、第1の導電性粒子が銀銅合金から成り、第2の導電性粒子が銀から成る構成であってもよい。
【0059】
図10は、主面2上の側面配線7の配線部7a,7bの膜厚(平面部膜厚)と、角部(第1角部6a)上の側面配線7の配線部7cの膜厚(角部膜厚)と、の関係を示すグラフである。図10において、符号「◇」は、傾斜面3が、主面2に対する面取り角度θ1=30°のC面であるときの角部膜厚と平面部膜厚との関係を示し、符号「□」は、傾斜面3が、主面2に対する面取り角度θ1=45°のC面であるときの角部膜厚と平面部膜厚との関係を示すデータである。符号「△」は、傾斜面3が、主面2に対する面取り角度θ1=60°のC面であるあるときの角部膜厚と平面部膜厚との関係を示すデータである。符号「×」は、傾斜面3が、主面2に対する面取り角度θ1=90°のC面であるときの角部膜厚と平面部膜厚との関係を示すデータである。即ち、符号「×」は、傾斜面3が側面4に一致する構成(傾斜面3が存在しない構成)のデータである。また、実線は、傾斜面3が面取り角度θ1=45°のC面であるときのデータ(符号「□」のデータ)を、直線近似したグラフである。破線は、傾斜面3が面取り角度θ1=90°のC面であるときのデータ(符号「×」のデータ)を、直線近似したグラフである。
【0060】
導電性ペースト7sに用いられる導電性粒子は、その平均粒径(φ)が0.8μm~3.0μmであり、角部膜厚が平均粒径の1/2(0.4μm)程度未満の膜厚では、導電性粒子が存在しにくくなり、側面配線7の安定した導通が得られにくくなる。
【0061】
傾斜面3が無い(即ち、面取り角度θ1=90°)のときに、安定した導通が得られる膜厚は、平面部膜厚が10μm以上の11.8μmであり、角部膜厚が0.9μmである。また、面取り幅cが30°~60°のときに、安定した導通が得られる膜厚は、平面部膜厚が2μm~7μmであり、角部膜厚が0.4μm~1.45μmである。
【0062】
図11は、面取り幅と側面配線7の断線発生率との関係を示すグラフである。図11において、縦軸は断線発生率であり、横軸は面取り幅である。符号「◇」は、傾斜面3が面取り角度θ1=45°のC面であるとき、傾斜面3に乾式摩擦を20回加え、480本の側面配線7を形成するための導電性ペースト7sを印刷したときの断線発生率の測定値である。同図から、面取り幅cが10μm以上であれば、基板5の傾斜面3における導電性ペースト7sの保持力(付着力)が安定していることが確認された。
【0063】
さてここで、図1および図2を参照して、側面配線7形成用の導電性ペースト7sの付着力と基板5の表面粗さとの定性的な関係について説明する。基板5の主面2、傾斜面3および側面4のそれぞれの表面粗さが同じである場合、主面2、傾斜面3および側面4における導電性ペースト7sの付着力は、同じになる。導電性ペースト7sの付着力は、導電性ペースト7sの液状成分が基板5の表面の細かな凹凸に入り込んだときに、液状成分と凹凸との間に作用する分子間力によって主に生ずる。そして、導電性ペースト7sは重力Fgによって流れ落ちようとするが、付着力が流れ落ちようとする力に対する抗力となる。主面2、傾斜面3および側面4における抗力Fkも、それぞれ同じになる。抗力と流れ落ちようとする力とがバランスする(同じになる)ことによって、塗布された導電性ペースト7sはほぼ塗布された位置に留まり、静止状態となる。
【0064】
なお、導電性ペースト7sの塗布量が多すぎると、流れ落ちようとする力が抗力よりも大きくなり、導電性ペースト7sの少なくとも1部が流れ落ちる場合があるが、そのような場合は考慮外とする。
【0065】
主面2では、導電性ペースト7sに、次式(1)で示す力F1が作用する。
【0066】
傾斜面3では、導電性ペースト7sに次式(2)で示す力F2が作用する。
【0067】
側面4では、導電性ペースト7sに次式(3)で示す力F3が作用する。
【0068】
主面2、傾斜面3および側面4において導電性ペースト7sに作用する力F1,F2,F3の関係は、F3>F2>F1である。ただし、導電性ペースト7sが主面2、傾斜面3および側面4に付着し静止している釣合い状態にあるためには、F1+F2+F3=0を満たす必要がある。
【0069】
各力F1,F2,F3の関係がF3>F2>F1であることから、基板5の主面2、傾斜面3および側面4の表面粗さ(算術平均粗さ)を異ならせることによって、主面2、傾斜面3および側面4のそれぞれにおける導電性ペースト7sの付着力を調整することができる。即ち、図8に示すように、粗面化された主面2等の表面に導電性ペースト7sを塗布すると、導電性ペースト7sに含まれる未硬化の絶縁性成分7ipが表面の細かな凹凸に入り込んで、分子間力による付着力が増大する。それとともに、導電性ペースト7sに含まれる導電性粒子7pが表面の細かな凹凸に引っ掛かることによって、導電性ペースト7sが表面の面方向dpに流れにくくなる。その結果、導電性ペースト7sの表面に対する付着力が増大するという効果が得られる。そして、この効果によって、主面2における抗力をFk1、傾斜面3による抗力をFk2、側面4による抗力をFk3としたとき、例えばFk3>Fk2>Fk1とすることができる。その結果、F3≒F2≒F1とし、導電性ペースト7sが傾斜面3およびその両側近傍で流れ落ちにくくなる。従って、導電性ペースト7sが傾斜面3およびその両側近傍で途切れたり、導通性が劣化する程度に薄膜化するのを抑制することができる。
【0070】
各抗力Fk1,Fk2,Fk3に関係が、Fk3>Fk2>Fk3とするためには、基板5の主面2、傾斜面3および側面4のそれぞれの表面粗さをRa1,Ra2,Ra3とし、例えば図9に示すようにRa3>Ra2>Ra1とする。これによって、側面4と導電性ペースト7sとの接触面積を最大とすることによって、導電性ペースト7sの付着力は最大となる。また、主面2と導電性ペースト7sとの接触面積を最小とすることによって、導電性ペースト7sの付着力は最小となる。さらに、傾斜面3と導電性ペースト7sとの接触面積を中間の大きさとすることによって、導電性ペースト7sの付着力は中間になる。
【0071】
傾斜面3の幅(面取り幅c)を大きくすることが好ましい定性的な理由を以下に説明する。傾斜面3における単位面積あたりの導電性ペースト7sに作用する力をΔF2とし、傾斜面3の面積をS2としたとき、傾斜面3全体では、ΔF2・S2の力が作用する。同様に、側面4についても、側面4全体では、ΔF3・S3の力が作用する。ここで、傾斜面3の面積S2を大きくすると、これとは逆に側面4の面積S3は小さくなる。その結果、傾斜面3および側面4に作用する力ΔF2・S2,ΔF3・S3の差分(ΔF2・S2)-(ΔF3・S3)が小さくなり、導電性ペースト7sが傾斜面3から流れ落ちにくくすることができる。また、導電性ペースト7sは、その固形分である導電性粒子を除く液状の樹脂成分の上記分子間力によっても、導電性ペースト7s全体の流動性または粘性が異なるため、膜厚を制御し易い流動性または粘性に調整することが好ましい。
【0072】
他の実施形態では、配線7を、Ag、Cu、Al、ステンレススチール等の導電性粒子、未硬化の樹脂成分、アルコール溶媒および水等を含む導電性ペースト7sを、基板5の第1主面2aから傾斜面3、側面4および第2主面2bにかけて所望の部位に、印刷法によらないインクジェット法等によって塗布した後、加熱法、紫外線等の光照射によって硬化させる光硬化法、光硬化加熱法等の方法によって形成されてもよい。
【0073】
本開示の他の実施形態では、傾斜面3は、外方に凸に湾曲したR面であってもよい。傾斜面3がR面である場合には、導電性ペースト7sとの接触面積がC面に比べて多くなり、導電性ペースト7sの傾斜面3への付着力も大きくなるので、傾斜面3上の配線7の膜厚をさらに大きくして、高密度配線であっても断線の発生を少なくし、導通安定性をより高くすることができる。
【0074】
なお、上記の各種の実施形態は、図2に示す、側面4と第2主面2bとの間に存在する傾斜面についても適用することができる。
【0075】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、また、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。上記各実施形態をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本開示の配線基板は、LED表示装置、有機EL表示装置等の発光表示装置および液晶表示装置等の表示装置に適用することができる。また本開示の配線基板を用いた表示装置は、各種の電子機器に適用できる。その電子機器としては、複合型かつ大型の表示装置(マルチディスプレイ)、自動車経路誘導システム(カーナビゲーションシステム)、船舶経路誘導システム、航空機経路誘導システム、スマートフォン端末、携帯電話、タブレット端末、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、電子手帳、電子書籍、電子辞書、パーソナルコンピュータ、複写機、ゲーム機器の端末装置、テレビジョン、商品表示タグ、価格表示タグ、産業用のプログラマブル表示装置、カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー、ファクシミリ、プリンター、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、デジタル表示式腕時計、スマートウォッチなどがある。
【符号の説明】
【0077】
1 配線基板
2 主面
2a 第1主面
2b 第2主面
3 傾斜面
4 側面
5 基板
6 角部
7 配線(側面配線)
7a 配線部
7b 配線部
7c 配線部
7s 導電性ペースト
c 面取り幅
t 膜厚
Ra1 第1表面粗さ
Ra2 第2表面粗さ
Ra3 第3表面粗さ
θ1 面取り角度
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11