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特許7574329ケイ素系自己組織化単分子膜組成物、及び、これを用いた表面調製
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】ケイ素系自己組織化単分子膜組成物、及び、これを用いた表面調製
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20241021BHJP
   B05D 1/00 20060101ALI20241021BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20241021BHJP
   C09D 183/16 20060101ALI20241021BHJP
   B01J 19/00 20060101ALN20241021BHJP
【FI】
C09K3/00 L
B05D1/00
C23C16/42
C09D183/16
B01J19/00 M
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022576111
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 US2021037974
(87)【国際公開番号】W WO2021257927
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-01-25
(31)【優先権主張番号】63/040,833
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】パレム、ヴェンカテスワラ、アール.
(72)【発明者】
【氏名】ジラール、ジャン-マルク
(72)【発明者】
【氏名】ブラスコ、ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ファファ―ド、クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】マルケジャーニ、ファブリツィオ
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-170947(JP,A)
【文献】特表2016-536276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/
C23C16/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜形成プロセスであって:
テイル-Siに結合する表面反応性基Xを伴うSi-C結合を含有しない骨格を有するSAM前駆体を含む自己組織化単分子膜(SAM)形成組成物に基材の表面を露出するために、前記基材を反応器内に設置するステップであって、
ここで、前記骨格は、ポリシラン及びトリシリルアミンからなる群から選択され、
ここで、前記表面反応性基Xは:
- Cl、Br、Iから選択されるハライド;
- シアネート、イソシアネート又はチオシアネート基;
- -NR(式中、Rは、H、直鎖、分岐若しくは環式C~C10アルキル若しくはアルケニル基から選択され;Rは、直鎖、分岐若しくは環式C~C10アルキル若しくはアルケニル基(ただし、R=R≠Et)から選択され;又は、R及びRは、NRが環式リガンドを形成するよう架橋されており、ただし、前記環式リガンドはヘテロ原子S、N又はOを含む)
- - -C(R)=N-R(式中、R及びRは各々、C~C10直鎖若しくは分岐鎖アルキルから独立して選択され;並びに、Rは、H、C~C10直鎖若しくは分岐鎖アルキルから選択される);又は
-SH又はホスホン酸(ただし、-SH又はホスホン酸は前記表面が金属に覆われる場合に選択される);
から選択される、ステップ;
前記表面を前記SAM形成組成物に露出させ、前記SAM形成組成物への液相又は気相露出で前記SAMを前記表面上に形成するステップ;並びに
主族元素の、又は、Ti、Ta、W、Mo、Nb若しくはVから選択される遷移金属元素の、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、オキシクロリド、オキシブロミド、オキシフロリド、及び、これらの組み合わせから選択される膜形成前駆体を用いる湿式又は乾式堆積プロセスで、前記SAMの最上部に膜を成長させるステップ
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記膜形成前駆体は、WF、WOF、WOCl、WCl、WCl、MoCl、MoOCl、MoOCl、TiCl、TiBr、TiI、TaCl、AlCl、VCl、NbCl、BCl、BBr、GeCl、GeBr又はGeCl、GeBr、及び、これらの組み合わせから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記乾式堆積プロセスは、ALD又はCVDプロセスである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
Xは、-NR(式中、RはH、C~Cアルキルであり、及び、RはC~Cアルキルであり、ただし、R=Hである場合、RはC~Cアルキルであり、及び、RがHではない場合、R及びRは同等である)である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
Xは、-NR-C(R)=N-R(式中、R及びRは各々、Et、nPr、iPr、nBu、tBu、sBu、iBuから独立して選択され;並びに、RはH又はMeである)である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記SAM前駆体の前記ポリシラン骨格は、-SiH-SiH又は-SiH-SiH-SiHから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記ポリシラン骨格を有する前記SAM前駆体は、
X-(SiH-SiH(式中、n=1~3である)、
X-(Si2n-1)(式中、Si2n-1は、n=5、6、7である環式ヒドリドシラン骨格を指す)、
X-(SiH(SiH)、又は
X-SiH-Si(SiH
から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ポリシラン骨格を有する前記SAM前駆体は、NPr-(SiH)-SiH、NBu-(SiH)-SiH、NBu-(SiH)-SiH、NBu-(SiH)-SiH、NBu-(SiH)-SiH、NPen-(SiH)-SiH、NPr-(SiH-SiH、NPr-(SiH-SiH、NBu-(SiH-SiH、NBu-(SiH-SiH、NBu-(SiH-SiH、NBu-(SiH-SiH、NPen-(SiH-SiH、NHBu-(SiH-SiH、NHPen-(SiH-SiH、NHBu-(SiH-SiH、NHBu-(SiH-SiH、NPr-(SiH-SiH、NPr-(SiH-SiH、NBu-(SiH-SiH、NBu-(SiH-SiH、NBu-(SiH-SiH、NBu-(SiH-SiH、NPen-(SiH-SiH、NEt-(SiH(SiH)、NPr-(SiH(SiH)、NPr-(SiH(SiH)、NBu-(SiH(SiH)、NBu-(SiH(SiH)、NBu-(SiH(SiH)、NBu-(SiH(SiH)、NPen-(SiH(SiH)、NHBu-(SiH(SiH)、NHBu-(SiH(SiH)、NHBu-(SiH(SiH)又はNHPen-(SiH(SiH)から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記トリシリルアミン骨格を有する前記SAM前駆体は、XHSi-N(SiH
(SiX’H2-nである(式中、n=1又は2であり;X’は、Xと同一の定義を有すると共にXとは独立している)、請求項1~のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記トリシリルアミン骨格を有する前記SAM前駆体は、2つ以上のN(-Si)単位を含有すると共に、(Si)N-Si-N(Si)(Si-X)又はX-Si-N(Si)-Si-N(Si)(Si-X)の骨格を有する、請求項1~のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記SAM前駆体は、(ジイソプロピルアミン)トリシリルアミン((CHMe-N-SiH-N-(SiH、TSA-N(CHMe)である、請求項1~のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記SAM前駆体はクロロトリシリルアミン(SiH-N-SiHCl、TSA-Cl)である、請求項1~のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記SAM前駆体の前記表面反応性基Xはアミジネート(AMD、- )=N である、請求項1~のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記SAM前駆体は、(SiHN-SiH-N(SiH(BDSASi)とハロゲン酸から合成される、X置換ビ-ジシリルアミノハロゲンシラン(BDSASi-X)(式中、X=Cl、Br又はIである)である、請求項1~のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記SAM前駆体は、(ジイソブチルアミン)トリシラン(DIBATS、(Bu)-N-SiH-SiH-SiH)である、請求項1~のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月18日に出願の米国仮特許出願第63/040,833号明細書について、米国特許法第119条(a)及び(b)に基づく優先権の利益を主張するものであり、その内容のすべてが参照により本明細書において援用されている。
【0002】
本発明は、Si-C結合を有さないSi系テイル又は骨格(SiT-SAM)を有する自己組織化単分子膜(SAM)モノマー又は前駆体、その合成、及び、膜形成プロセスでの表面調製におけるその用途に関し、特に、Si-C非含有ポリシラン系テイル型SiT-SAMモノマー及びトリシリルアミン系テイル型SiT-SAMモノマーからなる群から選択されるSiT-SAMモノマーに関する。
【背景技術】
【0003】
自己組織化単分子膜(SAM)は、濡れ性などの表面特性が制御可能であり、耐腐食性であり、及び、電子素子の製造において適用可能であるために、広く研究及び使用されている。SAMとは分子アレイによる表面の被覆を指し、本明細書中以下において、分子アレイとは、SAMモノマー又は前駆体を指す。SAMを形成可能である分子は、反応性の側部を有すると共に基材の表面に結合する表面反応性ヘッド基、表面に対して不活性であると共に、通常はSAM表面に露出して、表面の化学特性及び物理特性を調整するために用いられることが可能である官能性テイル基又は骨格を含む。SAMモノマーヘッドと反応性である部位の密度が確保されていると共に、モノマーヘッドとこのような部位とを反応させる適切な条件が用いられることで、表面にSAMモノマーが露出していることで、SAM単分子膜が形成される。SAMモノマーが長いテイルを有する場合、これらは最終的に芝のような構造に自己整列する。SAM化学及び応用に関する概要は、以下のレビュー書面に見い出され得る:Frank Schreiber,“Structure and growth of self-assembling monolayers”;Progress in Surface Science 65(2000)151-256。
【0004】
SAMモノマーヘッドは、特定の表面及び基材に対して選択的に反応及び結合するよう設計された化学官能基を含有する。もっとも一般的なSAMヘッド/化学官能基、及び、SAMヘッド/化学官能基と反応するそれぞれの表面が、以下の表1にまとまられている。
【0005】
【表1】
【0006】
SAMモノマーテイルは通常、-(CH-CHアルキル鎖から構成され、ここで、nは0~およそ20の範囲である。しかしながら、テイルは、追加の官能基/化学基を含有し得、-(CH-X(式中、n=1~20であり、及び、Xは、表面に対するSAMの二次的反応性をもたらす特定の化学基である)と表記され得る。例えば、Xは、アミノ基、アルコキシ基、エポキシ基、及び、-CH=CH、-C≡CH又はフェニルのような不飽和基であり得る。SAMテイル基はまた、パーフルオロアルキル基を含有し得、一般式-(CH-(CF-CF(式中、n=0~5、及び、m=0~16である)を有し得る。過フッ素化鎖の付加は、SAMでコーティングされた表面の疎水性の増加に寄与する。
【0007】
Si含有テイルを有するSAMについてはほとんど記載されておらず、以下の参考文献に限定される。K.Ebata,et al.(“Synthesis and Characterization of End-Grafted Polysilane on a Substrate Surface”,J.Am.Chem.Soc.1998,120,7367-7368)には、Si部分が古典的なSAMテイルにグラフトされること、及び、「Si」部分が完全にアルキル化されることが開示されている。
【化1】
【0008】
K.Furukawa et al.(“Polysilane Bearing“Sulfide Tripod”Terminus:Preparation and Selective Chemisorption on Gold Surface”,Macromolecules,2003,36,9-11)には、SAMがトリチオールヘッド基で金属表面に結合するよう設計されること、及び、テイルが、アルキル化Si部分によって官能基化されることが開示されている。
【化2】
【0009】
SAMは、表面の他の表面に対する接着を高めるため(すなわち、カップリング剤)、又は、水などの一定の流体に対する親和性を変化させるための表面処理における用途及び工業的用途に用いられる。アルキル鎖を有するSAMは、極性分子(典型的には水)に対する親和性を低減させるのみならず、非極性分子及び流体に対する親和性を高めるためにも設計及び使用される。ガラスの疎水性を高めるための複数の表面処理は、例えば、三官能性シリルヘッド基及びアルキル鎖テイルを有するSAMを用いる処理に基づいている。この主題に対するモノグラフは、以下において見い出すことが可能である:https://www.gelest.com/wp-content/uploads/ Hydrophobicity-Hydrophilicity_and_Silane_Surface_Modification.pdf。
【0010】
SAMは、基本的に以下の2つの経路で表面上に構築され得る。
i)被処理表面をSAMモノマー又はSAMモノマーの溶剤中の溶液に露出させる湿式経路。このような方法としては、ディップコーティング、スリットコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング等が挙げられる。次いで、通常基材は、表面活性部位と化学的に反応しなかった表面上の過剰量のSAMモノマーを除去する溶剤ですすがれる。液体相中のSAMモノマーに対する露出は、SAMモノマーの種類に応じて数秒から数日間の範囲であり得る。
ii)被処理表面を、SAMモノマーの蒸気に露出及び静置して反応させる気相経路。この場合、通常基材は、室温より高いが表面上のSAMモノマーの分解温度よりも低い温度に加熱されて、SAMモノマーの表面に対する反応及び結合が促進及び加速される。この反応は、大気圧又は減圧下で実現し得る。気相経路を使用する場合、SAMモノマーは、蒸発し、十分な蒸気圧に達して、適当な時間内に表面と反応するよう十分に揮発性である必要がある。
【0011】
半導体産業において、SAM表面処理は、-OH末端表面との反応でMeSi-O-末端表面をもたらす短鎖一官能性SAMモノマーであるHMDS(MeSi-NH-SiMe)などのシリル化剤中における前処理による有機フォトレジスト層の蒸着のために、ケイ素基材を調製するために用いられる。HMDSは、米国特許第3,549,368号明細書(R.H.Collins and F.T.Devers(IBM)(1970))において、半導体用途のためのフォトレジスト定着剤として最初に記載された。表面のトリアルキル-シリル化は、フォトレジスト配合物に対する表面の濡れ性の増大に寄与し、それ故、膜の接着性、均一性が高まり、及び、空隙部又は微小気泡などの欠陥が抑制される。
【0012】
同様に、スピンオン誘電体(SOD)などの膜形成性配合物の種々のコーティング法による堆積前における表面アルキル-シリル化の使用は一般的である。
【0013】
近年において、SAMは、原子層堆積(ALD)技術、すなわち、領域選択的原子層堆積(AS-ALD)を用いる選択的薄膜形成について注目を集めている。実際には、制御された態様で、他の領域を除く基材の一定の領域に薄膜を選択的に蒸着が可能であることで、チップ製造に係る複雑さとコストの削減が約束される。現在、SAMの使用は、ALDサイクル中に前駆体と反応しないよう選択された表面をブロックし、これにより、非SAM被覆領域上に膜を選択的に成長させることで、AS-ALDを可能とする実行可能な解決法として広がっている。
【0014】
このように、SAMの使用は、液体系膜形成形成に係る濡れ性向上剤として、又は、気相堆積プロセス(液体相についても同様である可能性がある)に係る表面ブロッキング剤として、膜形成プロセスにおいてますます一般的となっている。
【0015】
しかしながら、上記の事例のすべてにおいて、SAMモノマーのテイルは炭素骨格に基づいている。一定の薄膜用途において炭素は有害な不純物であり得ること、及び、テイルは表面に化学的に結合することを考慮すると、炭素骨格に基づいていないSAMモノマーを有することが有益となる。さらに、炭素骨格に基づいていないSAMモノマーはまた、特定の化学族、例えば金属ハロゲン化物に対する高い反応性のために、CVD及びALDプロセスの核形成を促進するためのシード層などの追加の用途に使用可能である。
【0016】
それ故、CVD及びALDプロセスの核形成を促進させ得る非炭素骨格を有する新規のSAMモノマーを見い出す必要性が未だ存在している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
SAMを形成するための自己組織化単分子膜(SAM)形成組成物が開示されており、この組成物は
表面反応性基Xを伴う骨格を有するSAM前駆体
を含み、
ここで、骨格は、Si-C結合を含有しないと共に、Si-C結合非含有ポリシラン及びトリシリルアミン(TSA)からなる群から選択され、
表面反応性基Xは:
a.ハライド(Cl、Br、I);
b.シアネート、イソシアネート又はチオシアネート基;
c.アミノ基-NR(式中、Rは、H、直鎖、分岐若しくは環式C~C10アルキル若しくはアルケニル基、又は、アルキルシリル基から選択され;Rは、直鎖、分岐若しくは環式C~C10アルキル若しくはアルケニル基、又は、アルキルシリル基から選択され;又は、R及びRは、NRが環式リガンドを形成するよう架橋されており、ただし、環式リガンドはヘテロ原子S、N又はOを含む);
d.アミジネート基-R-N-C(R)=N-R(式中、R及びRは各々、C~C10直鎖若しくは分岐鎖アルキル、又は、トリアルキルシリルから独立して選択され;並びに、Rは、H、C~C10直鎖若しくは分岐鎖アルキルから選択される);又は
e.チオール-SH基、ホスホン酸又はカルボン酸から選択される。本開示の方法は、以下の態様の1つ以上を含み得る:
・Xは、Cl、Br又はIなどのハライドであり;
・Xはシアネート基であり;
・Xはイソシアネートであり;
・Xはチオシアネート基であり;
・Xは、ジアルキルアミノ基-NR(式中、RはH、C~Cアルキルであり、及び、RはC~Cアルキルであり、ただし、R=Hである場合、RはC~Cアルキルであり、及び、RがHではない場合、R及びRは同等であることが好ましい)であり;
・Xは、アミジネート基-NR-C(R)=N-R(式中、R及びRは各々、Et、nPr、iPr、nBu、tBu、sBu、iBuから独立して選択され;並びに、RはH又はMeである)であり;
・骨格は、Si-C結合を含有しないと共に、Si-C結合非含有ポリシラン及びトリシリルアミンからなる群から選択され、
・Xはチオール-SH基であり;
・Xはホスホン酸であり;
・Xはカルボン酸であり;
・被覆されるべき表面は誘電体表面であり;
・被覆されるべき表面は金属であり;
・骨格はSi-C結合を含有しておらず;
・骨格はSi-C結合非含有ポリシランであり;
・骨格はトリシリルアミンであり;
・Si-C非含有ポリシラン骨格を有するSAM前駆体は、
X-(SiH-SiH(式中、n=1~3である)、
X-(Si2n)(式中、Si2nは、n=5、6、7である環式ヒドリドシラン骨格を指す)、
X-(SiH(SiH)、又は
X-SiH-Si(SiH
から選択され;
・Si-C非含有ポリシラン骨格を有するSAM前駆体は
X-(SiH-SiH(式中、n=1~3である)
から選択され;
・Si-C非含有ポリシラン骨格を有するSAM前駆体は
X-(Si2n)(式中、Si2nは、n=5、6、7である環式ヒドリドシラン骨格を指す)
から選択され;
・Si-C非含有ポリシラン骨格を有するSAM前駆体は
X-(SiH(SiH
から選択され;
・Si-C非含有ポリシラン骨格を有するSAM前駆体は
X-SiH-Si(SiH
から選択され;
・Si-C非含有ポリシラン骨格を有するSAM前駆体は、NiPr-(SiH)-SiH、NnBu-(SiH)-SiH、NtBu-(SiH)-SiH、NsBu-(SiH)-SiH、NiBu-(SiH)-SiH、NPen-(SiH)-SiH、NnPr-(SiH-SiH、NiPr-(SiH-SiH、NnBu-(SiH-SiH、NtBu-(SiH-SiH、NsBu-(SiH-SiH、NiBu-(SiH-SiH、NsPen-(SiH-SiH、NHtBu-(SiH-SiH、NHPen-(SiH-SiH、NHsBu-(SiH-SiH、NHiBu-(SiH-SiH、NnPr-(SiH-SiH、NiPr-(SiH-SiH、NnBu-(SiH-SiH、NtBu-(SiH-SiH、NsBu-(SiH-SiH、NiBu-(SiH-SiH、NsPen-(SiH-SiH、NEt-(SiH(SiH)、NiPr-(SiH(SiH)、NnPr-(SiH(SiH)、NiBu-(SiH(SiH)、NtBu-(SiH(SiH)、NnBu-(SiH(SiH)、NsBu-(SiH(SiH)、NsPen-(SiH(SiH)、NHtBu-(SiH(SiH)、NHnBu-(SiH(SiH)、NHiBu-(SiH(SiH)又はNHPen-(SiH(SiH)から選択され;
・SAM前駆体のSi-C非含有ポリシラン骨格は、-SiH-SiH又は-SiH-SiH-SiHから選択され;
・トリシリルアミン骨格を有するSAM前駆体は、一般式
XRSi-N(SiR(SiX’R2-n
(式中、n=1又は2であり;Rは、H又はC~C分岐若しくは直鎖アルキルから選択され;X’は、Xと同一の定義を有すると共にXとは独立している)
を有し;
・トリシリルアミン骨格を有するSAM前駆体は、XHSi-N(SiH(SiX’H2-n又はXRSi-N(SiRであり;
・トリシリルアミン骨格を有するSAM前駆体は2つ以上のN(-Si)単位を含有すると共に、(Si)N-Si-N(Si)Si-X又はX-Si-N(Si)-Si-N(Si)Si-Xの骨格を有し;
・SAM前駆体はTSA-N(CHMeであり;
・SAM前駆体はTSA-Clであり;
・SAM前駆体は、(RN)n1(RN)n2Si(2(m+1)-n1-n2)(式中、n=1~(2(m+1)であり;m=2~6であり;R及びRは各々、直鎖若しくは分岐鎖C~Cアルキル、直鎖若しくは分岐鎖C~Cアルケニル、直鎖若しくは分岐鎖C~Cアルキニル、C~C10アリール、直鎖若しくは分岐鎖C~Cアルキルエーテル、シリル、トリメチルシリル、又は、直鎖若しくは分岐鎖C~Cアルキル置換シリルからなる群から独立して選択される)であり;
・SAM前駆体は、(RHN(CR)=NR-Si(2(m+1)-n))(式中、n=1~(2(m+1)であり;m=2~6であり;R及びRは各々、直鎖若しくは分岐鎖C~Cアルキル、直鎖若しくは分岐鎖C~Cアルケニル、直鎖若しくは分岐鎖C~Cアルキニル、C~C10アリール、直鎖若しくは分岐鎖C~Cアルキルエーテル、シリル、トリメチルシリル、又は、直鎖若しくは分岐鎖C~Cアルキル置換シリルからなる群から独立して選択される)であり;
・SAM前駆体は、BDSASi-X(式中、BDSASi-=(SiH)2N-SiH-N(SiH)(SiH-)であり、X=F、Cl、Br、Iである)であり;
・SAM前駆体はDIBATS(ジイソブチルアミノトリシラン)であり;
・SAM前駆体はNPS-AMD(NPSはネオペンタシラン)であり;
・SAM前駆体は、NPS-NR(式中、R及びRは各々独立して、H、直鎖又は分岐鎖C~Cアルキル、直鎖又は分岐鎖C~Cアルケニル、直鎖又は分岐鎖C~Cアルキニル、C~C10アリール、直鎖又は分岐鎖C~Cアルキルである)であり;
・SAM前駆体はCHS-AMD(CHSはシクロヘキサシラン)であり;
・SAM前駆体は、CHS-NR(式中、R及びRは各々独立して、H、直鎖又は分岐鎖C~Cアルキル、直鎖又は分岐鎖C~Cアルケニル、直鎖又は分岐鎖C~Cアルキニル、C~C10アリール、直鎖又は分岐鎖C~Cアルキルである)であり;
・SAM前駆体はSi-NR(式中、Rは直鎖又は分岐鎖C~Cアルキルである)であり;
・SAM前駆体はSiN-NR(式中、Rは直鎖又は分岐鎖C~Cアルキルである)であり;
・SAM前駆体は、その望ましくない同属種、反応体又は他の反応生成物のいずれかを5%v/v未満で含有し;
・SAM前駆体は、その望ましくない同属種、反応体又は他の反応生成物を1%v/v未満、より好ましくは0.1%v/v未満で含有し;
・SAM前駆体は、その望ましくない同属種、反応体又は他の反応生成物のいずれかを0.1%v/v未満で含有し;
・SAM前駆体は、その望ましくない同属種、反応体又は他の反応生成物のいずれかを0.01%v/v未満で含有し;
・SAM前駆体は、特に、混合物が向上したプロセスパラメータをもたらす場合、又は、標的化合物の単離が過度に困難であるか、若しくは、高価である場合に、同属のモノマー又は他の反応生成物の1種以上を5%v/v~50%v/vで含有し;
・SAM前駆体は、およそ0ppbw~およそ500ppbwの金属不純物を含有し;
・SAM前駆体中のトレース金属及びメタロイドの濃度は各々、およそ0ppb~およそ100ppbの範囲であり;並びに
・SAM前駆体中のトレース金属及びメタロイドの濃度は各々、およそ0ppb~およそ10ppbの範囲である。
【0018】
また、表面上に自己組織化単分子膜(SAM)を形成するためのプロセスもまた開示されており、このプロセスは
表面のSAM形成組成物に対する露出のために表面を調製するステップであって、組成物は、表面反応性基Xを伴う骨格を有するSAM前駆体を含み、
ここで、骨格は、Si-C結合を含有しないと共に、Si-C非含有ポリシラン及びトリシリルアミンからなる群から選択され、
ここで、表面反応性基Xは:
-ハライド(Cl、Br、I);
-シアネート、イソシアネート又はチオシアネート基;
-アミノ基-NR(式中、Rは、H、直鎖、分岐若しくは環式C~C10アルキル若しくはアルケニル基、又は、アルキルシリル基から選択され;Rは、直鎖、分岐若しくは環式C~C10アルキル若しくはアルケニル基、又は、アルキルシリル基から選択され;又は、R及びRは、NRが環式リガンドを形成するよう架橋されており、ただし、環式リガンドはヘテロ原子S、N又はOを含む);
-アミジネート基-R-N-C(R)=N-R(式中、R及びRは各々、C~C10直鎖若しくは分岐鎖アルキル、又は、トリアルキルシリルから独立して選択され;並びに、Rは、H、C~C10直鎖若しくは分岐鎖アルキルから選択される);又は
-チオール-SH基、ホスホン酸又はカルボン酸
から選択される、ステップ;
表面をSAM形成組成物に露出させるステップ;並びに
SAMを表面上に形成するステップ
を含む。本開示のプロセスは、以下の態様の1つ以上を含み得る。
・SAM形成組成物は溶液であり;
・表面のSAM形成組成物への露出は液体相露出であり;
・SAM形成組成物は蒸気であり;及び
・表面のSAM形成組成物への露出は気相露出である。
【0019】
また、膜形成プロセスが開示されており、このプロセスは:
表面反応性基Xを伴う骨格を有するSAM前駆体を含む自己組織化単分子膜(SAM)形成組成物に基材の表面を露出するために、表面を調製するステップであって、
ここで、骨格は、Si-C結合を含有しないと共に、Si-C非含有ポリシラン及びトリシリルアミンからなる群から選択され、
ここで、被覆されるべき表面が誘電体表面である場合、表面反応性基Xは:
-ハライド(Cl、Br、I);
-シアネート、イソシアネート又はチオシアネート基;
-アミノ基-NR(式中、Rは、H、直鎖、分岐若しくは環式C~C10アルキル若しくはアルケニル基、又は、アルキルシリル基から選択され;Rは、直鎖、分岐若しくは環式C~C10アルキル若しくはアルケニル基、又は、アルキルシリル基から選択され;又は、R及びRは、NRが環式リガンドを形成するよう架橋されており、ただし、環式リガンドはヘテロ原子S、N又はOを含む);
-アミジネート基-R-N-C(R)=N-R(式中、R及びRは各々、C~C10直鎖若しくは分岐鎖アルキル、又は、トリアルキルシリルから独立して選択され;並びに、Rは、H、C~C10直鎖若しくは分岐鎖アルキルから選択される);又は
-チオール-SH基、ホスホン酸又はカルボン酸
から選択される、ステップ;
表面をSAM形成組成物に露出させるステップ;
液体又は気相露出でSAMを表面上に形成するステップ;並びに
膜形成前駆体を用いる湿式又は乾式堆積プロセスで、SAMの最上部に膜を成長させるステップ
を含む。本開示のプロセスは、以下の態様の1つ以上を含み得る。
・膜形成前駆体は金属又はメタロイド前駆体であり、ここで、SAM前駆体の骨格は、金属又はメタロイド前駆体に対する還元剤として作用し;
・金属前駆体は、主族元素、又は、Ti、Ta、W、Mo、Nb若しくはVから選択される遷移金属元素、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、オキシクロリド、オキシブロミド、オキシフロリド、又は、これらの組み合わせから選択され;
・金属前駆体は、WF、WOF、WOCl、WCl、WCl、MoCl、MoOCl、MoOCl、TiCl、TiBr、TiI、TaCl、AlCl、VCl、NbCl、BCl、BBr、GeCl、GeBr若しくはGeCl、GeBr、又は、これらの組み合わせから選択され;
・膜はポリカルボシラザン膜であり;
・Si膜は、PECVDにより堆積された多孔性ケイ素であり;
・湿式堆積プロセスはスピンオン堆積プロセスであり;
・乾式堆積プロセスはALD又はCVDプロセスであり;
・基材は、その表面上にSAMの反応性ヘッドXと反応しやすい官能基を有するいずれかの固体であり;
・基材は、ケイ素ウェハ、ガラスウェハ及びパネル、ビーズ、粉末及びナノ粉末、モノリシック多孔性媒体、印刷回路基材、プラスチックシート等であり;
・基材は、二次電池の技術に用いられる粉末であり;
・基材はNMC(リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物)、LCO(リチウムコバルト酸化物)、LFP(リン酸鉄リチウム)、及び、他のバッテリー陰極材料であり;
・基材は粉末であり;並びに
・基材はナノ粉末である。
【0020】
記号及び命名法
以下の詳細な説明及び特許請求の範囲では、一般に技術分野において周知である多数の略語、符号及び用語が使用される。
【0021】
本明細書において用いられるところ、不定冠詞「a」又は「an」は1つ以上を意味する。
【0022】
本明細書において用いられるところ、文章又は特許請求の範囲における、「約(about)」又は「約(around)」又は「およそ」は、記載の値の±10%を意味する。
【0023】
本明細書において用いられるところ、文章又は特許請求の範囲における、「室温」は、およそ20℃~およそ25℃を意味する。
【0024】
「周囲温度」という用語は、およそ20℃~およそ25℃の環境温度を指す。
【0025】
本開示の実施形態において用いられるところ、「独立して」という用語は、R基を説明する文脈において用いられる場合、対象となるR基は、同一又は異なる下付又は上付文字を有する他のR基と比して独立して選択されるのみならず、同一のR基のいずれかの追加の種と比しても独立して選択されることを表すと理解されるべきである。例えば、式MR (NR(4-x)(ここで、xは2又は3である)において、2つ又は3つのR基は、必須ではないが、相互に同等であり得るか、又は、R若しくはRに同等であり得る。さらに、特に記載のない限りにおいて、R基の値は、異なる式において用いられている場合、相互に独立していることが理解されるべきである。
【0026】
「基材」という用語は、プロセスが実施される1種以上の材料を指す。基材は、プロセスが実施される1種以上の材料を有するウェハを指し得る。基材は、半導体、光起電力、フラットパネル又はLCD-TFTデバイスの製造において用いられるいずれかの好適なウェハであり得る。基材はまた、以前の製造ステップにおいてその上に既に堆積された異なる材料による1つ以上の層を有していてもよい。例えば、ウェハはケイ素層(例えば、結晶性、アモルファス、多孔性等)、ケイ素含有層(例えば、SiO、SiN、SiON、SiCOH等)、金属含有層(例えば、銅、コバルト、ルテニウム、タングステン、白金、パラジウム、ニッケル、ルテニウム、金等)又はこれらの組み合わせを含み得る。さらに、基材は、平面であっても、又は、パターン付きのものであってもよい。基材は、有機パターン付きフォトレジストフィルムであり得る。基材は、MEMS、3DNAND、MIM、DRAM若しくはFeRamデバイス用途(例えば、ZrO系材料、HfO系材料、TiO系材料、希土類酸化物系材料、三元系酸化物系材料等)における誘電性材料として用いられる酸化物層、又は、電極として用いられる窒化物系フィルム(例えば、TaN、錫、NbN)を含み得る。当業者は、本明細書において用いられる「フィルム」又は「層」という用語は、表面上に重ねられるか、延展されたいくつかの材料の厚さを指すこと、及び、表面はトレンチ又はラインを有し得ることを認識するであろう。本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、ウェハ及びその上のいずれかの関連する層は基材と称される。基材は、その表面上にSAMの反応性ヘッドと反応しやすい官能基を有するいずれかの固体であることが可能であり、特に限定されないが、3D物体又は粉末を含み得る。
【0027】
本明細書において、「フィルム」及び「層」という用語は、同義的に用いられ得ることに注意すべきである。フィルムは、層に相当するか関連し得、及び、層はフィルムを指し得ることが理解される。さらに、当業者は、本明細書において用いられる「フィルム」又は「層」といった用語は、表面上に重ねられるか、延展されたいくつかの材料の厚さを指すこと、及び、表面は、ウェハ全体といった大きいものからトレンチ又はラインといった小さいものまでの範囲であり得ることを認識するであろう。
【0028】
用語「ビア」、「アパーチャ」及び「ホール」は時に同義的に用いられ、一般的に、中間絶縁体における開口を意味する。
【0029】
本明細書において用いられるところ、「NAND」という略記は、「否定的論理積(Negated AND)」又は「否定的論理積(Not AND)」ゲートを指し;「2D」という略記は平面基材における二次元ゲート構造を指し;「3D」という略記は、ゲート構造が垂直方向にスタックされた三次元又は垂直ゲート構造を指す。
【0030】
元素周期律表からの元素の標準的な略語が本明細書において用いられる。元素はこれらの略記によって参照され得ることが理解されるべきである(例えば、Siはケイ素を指し、Nは窒素を指し、Oは酸素を指し、Cは炭素を指し、Hは水素を指し、Fはフッ素を指すなど)。
【0031】
Chemical Abstract Serviceによって割り当てられた固有のCAS登録番号(すなわち、「CAS」)が、開示されている特定の分子の識別のために提供されている。
【0032】
「ウェハ」又は「パターン付きウェハ」という用語は、基材上のケイ素含有フィルムのスタック、及び、パターンエッチングのために形成されたケイ素含有フィルムのスタック上のパターン付き硬質マスク層を有するウェハを指す。「ウェハ」又は「パターン付きウェハ」という用語はまた、アスペクト比を有するトレンチウェハを指し得る。
【0033】
本明細書において、「堆積温度」及び「基材温度」という用語は、同義的に用いられ得ることに注意すべきである。基材温度は堆積温度に相当するか関連し得、及び、堆積温度は基材温度を指し得ることが理解される。
【0034】
本明細書において、前駆体が室温及び雰囲気圧で気体状態である場合、「前駆体」及び「堆積化合物」及び「堆積ガス」という用語は、同義的に用いられ得ることに注意すべきである。前駆体は、堆積化合物又は堆積ガスに相当するか関連し得、及び、堆積化合物又は堆積ガスは前駆体を指し得ることが理解される。
【0035】
本開示の実施形態において用いられるところ、「ヒドロカルビル基」という用語は炭素及び水素を含有する官能基を指し;「アルキル基」という用語は、炭素及び水素原子のみを含有する飽和官能基を指す。ヒドロカルビル基は飽和又は不飽和であり得る。いずれの用語も直鎖、分岐又は環式基を指す。直鎖アルキル基の例としては、特に限定されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。分岐アルキル基の例としては、特に限定されないが、t-ブチルが挙げられる。環式アルキル基の例としては、特に限定されないが、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0036】
本開示の実施形態において用いられるところ、「Me」という略記はメチル基を指し;「Et」という略記はエチル基を指し;「Pr」という略記はプロピル基を指す。
【0037】
範囲は、本明細書において、およその1つの特定の値から、及び/又は、およその他の特定の値までとして表記され得る。このような範囲で表記されている場合、他の実施形態は、前記範囲内のすべての組み合わせで、1つの特定の値から、及び/又は、他の特定の値までであると理解されるべきである。本明細書に記載されているいずれかの範囲及びすべての範囲は、「包括的」という用語が用いられているかに関わらず、その端点を含む(すなわち、x=1~4又はxは1~4の範囲である、とは、x=1、x=4及びx=これらの間のいずれかの数字であることを含む)。
【0038】
本明細書において、「一実施形態(one embodiment)」又は「一実施形態(an embodiment)」という言及は、実施形態と関連して記載された特定の機構、構造又は特徴が、本発明の少なくとも一つの実施形態において包含され得ることを意味する。本明細書中における種々の箇所での「一実施形態において」という句の記載について、すべてが同一の実施形態を参照している必要性はなく、必ず他方の実施形態を相互に排除する別個又は代わりの実施形態を参照している必要性もない。「実施」という用語についても同様である。
【0039】
本出願において用いられるところ、「例示的な」という用語は、例、事例又は例示として意味するために本明細書において用いられる。「例示的である」とされる本明細書に記載のいずれかの態様又は設計は、必ずしも、他の態様若しくは設計よりも好ましい、又は、有利であると解釈されるものではない。もしろ、例示的な、という用語の使用は、コンセプトを具体的に提示することを意図している。
【0040】
また、「又は」という用語は、排他的な「又は」ではなく、包括的な「又は」を意味することが意図されている。すなわち、別段の特定がある場合を除き、又は、文脈から明らかでない限り、「XはA又はBを採用する」は、自然な包括的な順列のいずれかを意味することが意図されている。すなわち、XがAを採用する;XがBを採用する;又は、XがA及びBの両方を採用する場合、前述の事例のいずれにおいても、「XはA又はBを採用する」が満たされる。加えて、本出願及び添付の特許請求の範囲において用いられている冠詞「a」及び「an」は、別段の特定がある場合を除き、又は、文脈から単数形であることが明らかでない限り、一般に、「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【0041】
本発明の性質及び目的に関するさらなる理解のために、類似の要素には同一又は同様の符号が付与されている添付の図面と併せて、以下の詳細な説明を参照のこと。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、HMDSを接着剤として用いた場合にクラスターに凝集したスピンオン堆積された薄膜残渣である。
図2図2は、モノ-アミノトリシラン(RがC~CアルキルであるSi-NR)誘導体に対するWCAの結果である。
図3図3は、モノアミノ-トリシリルアミン誘導体(RがC~CアルキルであるSiN-NR)に対するWCAの結果である。
図4図4は、(ジイソブチルアミン)トリシラン(DIBATS)を接着剤として用いる薄膜のスピンオン堆積である。
図5図5は、(ジイソプロピルアミン)トリシリルアミンを接着剤として用いる薄膜のスピンオン堆積である。
図6図6は、蒸気SiT SAM(DIBATS)処理したSiO表面の水接触角(WCA)である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
Si-C結合非含有Si系テイル又は骨格(SiT-SAM)を有する自己組織化単分子膜(SAM)モノマー、その合成、及び、膜形成プロセスにおける表面調製におけるその用途が開示されている。
【0044】
本開示のSiT-SAMモノマーは、表面反応性基(又はヘッド)(「X」と表記)を有する骨格と記載されている。
【0045】
被覆されるべき表面が誘電体表面である場合、表面反応性基「X」は表面ヒドロキシル(-OH)基に反応性である。この場合、Xは以下から選択される。
a.ハライド(Cl、Br、I);
b.シアネート、イソシアネート又はチオシアネート基;
c.アミノ基-NR(式中、Rは、H、直鎖、分岐若しくは環式C~C10アルキル若しくはアルケニル基、又は、アルキルシリル基から選択され;Rは、直鎖、分岐若しくは環式C~C10アルキル若しくはアルケニル基、又は、アルキルシリル基から選択され;又は、R及びRは、NRが環式リガンドを形成するよう架橋されており、ただし、環式リガンドはヘテロ原子S、N又はOを含む);又は
d.アミジネート基-R-N-C(R)=N-R(式中、R及びRは各々、C~C10直鎖若しくは分岐鎖アルキル、又は、トリアルキルシリルから独立して選択され;並びに、Rは、H、C~C10直鎖若しくは分岐鎖アルキルから選択される)。
【0046】
好ましくは、Xはジアルキルアミノ基-NRであり、式中、Rは、H又はC~Cアルキルから選択され;及び、RはC~Cアルキルである。R=Hである場合、RはC以上であり、並びに、RがHではない場合、R及びRは同等であることが好ましい。好ましくは、Xはアミジネート基-NR-C(R)=N-Rであり、式中、R及びRは各々、Et、nPr、iPr、nBu、tBu、sBu、iBuから独立して選択され、並びに、RはH、Meである。
【0047】
被覆されるべき表面が金属である場合、表面反応性ヘッド「X」は、チオール-SH基、ホスホン酸又はカルボン酸である。例えば、チオール基は金属表面と反応して硫黄-金属界面を形成する。
【0048】
本開示のSiT-SAMモノマーは、膜形成プロセスにおいて基材の表面上にSAMを形成するのに好適な分子である。本開示のSiT-SAMモノマーのモノマー骨格は、(i)少なくとも1つのSi-Si結合を含有すると共に、直接的なSi-C結合を含有しないSi-C非含有ポリシラン、及び、(ii)トリシリルアミン(TSA)からなる群から選択され得る。
【0049】
より具体的には、本開示のSiT-SAMモノマーは、(i)Si-C非含有ポリシラン骨格、及び、「X」表面反応性基を含むSi-C非含有ポリシラン系SiT-SAMモノマーである。
【0050】
本開示のSi-C非含有ポリシラン系SiT-SAMモノマーは、
X-(SiH-SiH(式中、n=1~3である)、
X-(Si2n)(式中、Si2nは、n=5、6、7である環式ヒドリドシラン骨格を指す)
X-(SiH(SiH)、又は
X-SiH-Si(SiH
から選択される。
【0051】
好ましくは、ポリシラン骨格は、-SiH-SiH又は-SiH-SiH-SiHである。
【0052】
例示的なSi-C非含有ポリシラン系SiT-SAMモノマーとしては、NiPr-(SiH)-SiH、NnBu-(SiH)-SiH、NtBu-(SiH)-SiH、NsBu-(SiH)-SiH、NiBu-(SiH)-SiH、NPen-(SiH)-SiH、NnPr-(SiH-SiH、NiPr-(SiH-SiH、NnBu-(SiH-SiH、NtBu-(SiH-SiH、NsBu-(SiH-SiH、NiBu-(SiH-SiH、NsPen-(SiH-SiH、NHtBu-(SiH-SiH、NHPen-(SiH-SiH、NHsBu-(SiH-SiH、NHiBu-(SiH-SiH、NnPr-(SiH-SiH、NiPr-(SiH-SiH、NnBu-(SiH-SiH、NtBu-(SiH-SiH、NsBu-(SiH-SiH、NiBu-(SiH-SiH、NsPen-(SiH-SiH、NEt-(SiH(SiH)、NiPr-(SiH(SiH)、NnPr-(SiH(SiH)、NiBu-(SiH(SiH)、NtBu-(SiH(SiH)、NnBu-(SiH(SiH)、NsBu-(SiH(SiH)、NsPen-(SiH(SiH)、NHtBu-(SiH(SiH)、NHnBu-(SiH(SiH)、NHiBu-(SiH(SiH)及びNHPen-(SiH(SiH)が挙げられる。
【0053】
さらに、本開示のSiT-SAMモノマーは、(ii)TSA骨格及び「X」ヘッドを含むTSA系SiT-SAMモノマーである。TSA系SiT-SAMモノマーは、骨格中に少なくとも1つのN(-Si)単位を含有すると共に、1つ又は2つの「X」表面反応性基を含有する。簡略化のため、H及び非加水分解性基は、明細書及び特許請求の範囲全体を通して表記していない。
【0054】
本開示のTSA系SiT-SAMモノマーは一般式
XRSi-N(SiR(SiX’R2-n
を有し、式中、X’は上記のXと同一の定義を有すると共に、Xとは独立しており;n=1又は2であり;Rは、H、C~C分岐又は直鎖アルキル鎖から選択される。好ましくは、各R=Hであり、この場合、式は、XHSi-N(SiH(SiX’H2-nとなる。好ましくは、n=2であり、この場合、式は、XRSi-N(SiRとなる。TSA系SiT-SAMモノマーは、2つ以上のN(-Si)単位を含有すると共に、(Si)N-Si-N(Si)Si-X又はX-Si-N(Si)-Si-N(Si)Si-Xなどの骨格を有し得る。
【0055】
本開示のSiT-SAMモノマーは、好ましくは本開示のSiT-SAMモノマーと表面反応性基とに対して不活性である溶剤中に希釈されているか、又は、純粋状態で、液体相中において、表面又は基材に対する露出に用いられ得る。溶剤は、典型的には、炭化水素、トルエン、エーテル、トリアルキルアミン等などの非プロトン性溶剤である。表面又は基材への露出は、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティングなどのいずれかのコーティング法によって達成され得る。露出は、1秒間~24時間の間継続され得る。露出後、表面又は基材は好ましくは溶剤ですすがれ、及び、乾燥される。好適なSAM層の存在及び特徴は、水接触角(WCA)、減衰全反射FTIR(ATR-FTIR)又は高角度XPSなどの技術により評価され得る。
【0056】
或いは、本開示のSiT-SAMモノマーは、表面又は基材に対する露出に気相で用いられ得る。再度、SiT-SAMの形成に用いられる方法は、F.Schreiber(“Structure and growth of self-assembling monolayers”,Frank Schreiber,Progress in Surface Science,Vol.65,issues 5-8,2000,151-257)により記載されているものなどの古典的なSAMの形成に用いられる方法と異なっていない。表面又は基材は、好ましく表面部位と本開示のSiT-SAMモノマーとの反応を促進するために、典型的には、室温から、本開示のSiT-SAMモノマーが典型的には自己分解する温度であるおよそ450℃の範囲の温度で加熱される。露出時間は、1秒間~24時間の範囲であり得、好ましくは10分間以内である。
【0057】
本開示のSiT-SAMモノマーに対する露出が気相又は液体相のいずれで行われるかに関わらず、表面/基材は、本開示のSiT-SAMモノマーと表面との反応を向上させるために前処理され得る。このような処理では、反応性部位密度(例えば、酸化物表面上の-OH)が高められ、膜の外因性の汚染(例えば、金属表面上の炭素)が低減され、又は、金属上の不動態化酸化物が除去され得る。このような乾式又は湿式表面調製及びクリーニング技術は技術分野において周知であり、及び、本開示のSiT-SAMモノマーを伴う使用に適用され得る。
【0058】
基材の最終的な用途は本発明に限定されないが、本技術は、以下のタイプの基材に特に有益であり得る:ケイ素ウェハ、ガラスウェハ及びパネル、ビーズ、粉末及びナノ粉末、モノリシック多孔性媒体、印刷回路基材、プラスチックシート等。例示的な粉末基材は、二次電池の技術に用いられる粉末を含む。非限定的な数の粉末材料としては、NMC(リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物)、LCO(リチウムコバルト酸化物)、LFP(リン酸鉄リチウム)、及び、他のバッテリー陰極材料が挙げられる。
【0059】
基材により物理的要素が明示されると共に、その組成は本開示のSiT-SAMモノマーが堆積される層の組成とは異なり得ることが理解される。例えば、ケイ素ウェハは、種々の誘電体(SiO、SiN、SiC、SiCOH、SiCN、SiON、SiOCN、a-C等)、半導体(Ge、SiGe、GeSn、InGaAs、GaSb、InP等)、又は、導電膜(Cu、Co、W、Al、Mo、MoN、Ti、錫、TaN、Ru、Pt、Pd、WN、WC、Ni等)でコーティングされ得る。
【0060】
古典的なSAM、及び、特にシリル化SAMと同様に、本開示のSiT-SAMモノマーは、スピンオン誘電体、反射防止コーティング又はフォトレジスト材料などの一定の溶液系膜形成性配合物に対する基材の濡れ性を向上させるのに有用である。
【0061】
表面ブロッキング剤として作用するのみである古典的なSAMとは異なり、本開示のSiT-SAMモノマーは、Si-テイルが表面のさらなる加工に有益であり得る興味深い化学反応性を示すため、有益であることが証明され得る。このように、本開示のSiT-SAMモノマーは、単なる表面のブロックとは対照的に、本開示のSiT-SAMモノマーが特定的に被覆する表面上に一定の反応をもたらすよう作用し、それ故、領域選択的形成プロセスに対する確実なマスクとして作用し得る。
【0062】
プロセスの信頼性を保証するために、本開示のSiT-SAMモノマーは、およそ95重量%又はw/w~およそ100%w/wの範囲、好ましくはおよそ99%w/w~およそ99.999%w/wの範囲、より好ましくはおよそ99%w/w~およそ100%w/wの範囲の純度に、使用前に連続的又は分別バッチ蒸留又は昇華により精製し得る。
【0063】
本開示のSiT-SAMモノマーは、以下の不純物のいずれかを含有していてもよい:不要な同属の種;溶剤;又は、他の反応生成物。一つの代替において、これらの不純物の総量は、5.0%w/w未満、好ましくは、0.1%w/w未満である。
【0064】
ヘキサン、ペンタン、ジメチルエーテル又はアニソールなどの溶剤を、前駆体の合成において使用し得る。本開示のSiT-SAMモノマーにおける溶剤の濃度は、およそ0%w/w~およそ5%w/w、好ましくは、およそ0%w/w~およそ0.1%w/wの範囲であり得る。前駆体からの溶剤の分離は、両方が類似の沸点を有している場合には困難であり得る。混合物を冷却することにより、液体溶剤中に固体前駆体が得られ得、これは、ろ過により分離し得る。およその分解点よりも前駆体生成物が加熱されない限りにおいて、減圧蒸留もまた使用し得る。
【0065】
一つの代替において、本開示のSiT-SAMモノマーは、その不要な同属の種、反応体又は他の反応生成物のいずれかを、5%v/v未満、好ましくは1%v/v未満、より好ましくは0.1%v/v未満、及び、さらにより好ましくは0.01%v/v未満で含有する。この代替では、良好なプロセス再現性がもたらされ得る。この代替は、本開示のSiT-SAMモノマーの蒸留によりもたらされ得る。
【0066】
他の代替において、本開示のSiT-SAMモノマーは、特に混合物で向上したプロセスパラメータが得られる場合、又は、標的化合物の単離が過度に困難であるか過度に高価である場合には、5%v/v~50%v/vの1種以上の同属のモノマー又は他の反応生成物を含有し得る。例えば、2種のSiT-SAMモノマーの混合物で、SAM形成に好適な安定な液体混合物が得られ得る。
【0067】
他の代替において、本開示のSiT-SAMモノマーは、およそ0ppbw~およそ500ppbwの金属不純物を含有し得る。本開示のSiT-SAMモノマー中における微量金属及びメタロイドの濃度は、各々、およそ0ppb~およそ100ppbの範囲、及び、より好ましくはおよそ0ppb~およそ10ppbの範囲であり得る。
【0068】
本開示はまた、表面上にSAMを形成するプロセスを含む。本プロセスは、本開示のSAM形成組成物に表面を露出するために表面を調製するステップ;表面をSAM形成組成物に露出させるステップ;及び、SAMを表面上に形成するステップを含む。SAM形成組成物が溶液である場合、表面のSAM形成組成物への露出は液体相露出である。SAM形成組成物が蒸気である場合、表面のSAM形成組成物への露出は気相露出である。
【0069】
本開示のSiT-SAMモノマーを用いる膜形成プロセスもまた本開示に含まれる。本プロセスは、SAM形成組成物に表面を露出するために表面を調製するステップ;表面をSAM形成組成物に露出させるステップ;液体又は気相露出でSAMを表面上に形成するステップ;及び、膜形成前駆体を用いる湿式又は乾式堆積プロセスで、SAMの最上部に膜を成長させるステップを含む。SAM形成組成物が溶液である場合、表面のSAM形成組成物への露出は液体相露出である。表面をSAM形成組成物に露出するステップは、液体相露出又は気相露出であり得る。SAM形成組成物が蒸気である場合、表面のSAM形成組成物への露出は気相露出である。湿式堆積プロセスはスピンオン堆積プロセスであり得、乾式堆積プロセスはALD又はCVDプロセスであり得る。
【0070】
例示的一実施形態において、SiT-SAMモノマーによって形成されたSAM全体に膜を堆積するために用いられる前駆体は金属又はメタロイド前駆体であり得、SiT-SAMモノマーのテイルが、金属又はメタロイド前駆体に対する還元剤として作用する。金属前駆体は、好ましくは、主族元素、又は、Ti、Ta、W、Mo、Nb若しくはVから選択される遷移金属元素から選択され得る。金属前駆体は、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、オキシクロリド、オキシブロミド、オキシフロリド、又は、これらの組み合わせであり得る。より具体的には、金属又はメタロイド前駆体は、WF、WOF、WOCl、WCl、WCl、MoCl、MoOCl、MoOCl、TiCl、TiBr、TiI、TaCl、AlCl、VCl、NbCl、BCl、BBr、GeCl、GeBr若しくはGeCl、GeBr、又は、これらの組み合わせから選択され得る。数々のこれらのハロゲン物は、安定で揮発性の付加物を形成し得、及び、例えば、GeCl:ジオキサン、TaCl:SEt、TiBr:SiPrといった、このような薄膜堆積で用いられ得ることに注目されたい。
【0071】
前駆体に追加して、反応体又は共反応体もまた、反応器に導入され得る。共反応体は、酸素含有ガス又は窒素含有ガスであり得る。共反応体としては、これらに限定されないが、O、O、HO、H、DO、ROH(RはC~C10直鎖又は分岐鎖炭化水素である)等などの酸化剤が挙げられる。HO及びROH(RはC~C10直鎖又は分岐鎖炭化水素である)は、基材上に形成されたSAM層との反応を回避するための好ましい酸化源である。窒素含有ガスとしては、特に限定されないが、NH、NO、NO、ヒドラジン、メチルアミン、エチルアミン、tert-ブチルアミンなどの第一級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-イソプロピルアミン、エチルメチルアミン、ピロリジンなどの第二級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリシリルアミンなどの第三級アミン、N、そのN/H混合物、好ましくはNHが挙げられる。共反応体は、H、NH、NO、NO、ヒドラジン、アミン又はこれらの組み合わせから選択され得る。好ましくは、プラズマ処理共反応体は、各ALDサイクルにおいてSAM層が再形成されない限り、SAM層に損傷を与える傾向にあるために避けられる。
【実施例
【0072】
以下の非限定的な実施例は、本発明の実施形態をさらに例示するために提供されている。しかしながら、これらの実施例は、すべて包括的であることは意図されておらず、また、本明細書に記載の本発明の範囲を限定することも意図されていない。
【0073】
比較例1
ポリカルボシラザン膜を堆積するための定着剤としてのヘキサメチルジシラザン、MeSi-NH-SiMe(HMDS)の使用
2×2cmの試験片に切断した未処理の酸化物を有するケイ素ウェハを、紫外光-オゾンクリーニング(本明細書中以下、UV-Oクリーニングと称する)下で10分間クリーニングして、有機汚染物を除去した。UV-Oクリーニングの後、表面は完全に親水性であり、蒸留脱イオン水接触角<5°を示した。その後、試験片をNグローブボックスに入れ、200μlのHMDS溶液を、その上に、2000rpmで60秒間、Brewer Science Cee 200Xスピンコータを用いて拡散させた。HDMS定着剤を拡散させた後、表面は、95°の平均接触角を有する疎水特性を示す。その後、200μlポリカルボシラザン溶液を、2000rpmで60秒間拡散させた。スピンオンプロセスに続いて、溶剤及び揮発物の蒸発を促進するために、200℃で、5分間のNグローブボックス中における前焼成ステップを行った。
【0074】
図1は、HMDSを接着剤として用いた場合にクラスターに凝集したスピンオン堆積された薄膜残渣を示す。前焼成ステップの後、スピンオンプロセスの最中に形成されたポリカルボシラザン薄膜は完全に分解されており、物質が点々と凝集した形で残されていた。
【0075】
それ故、この例は、この産業において用いられる一般的な定着剤であるHMDSは、ポリマーとケイ素試験片との接着に好ましくない可能性があるために、用いられたポリカルボシラザンポリマーとは適合し得ないことを実証する。
【0076】
実施例1
(ジイソプロピルアミン)トリシリルアミン((CMe-N-SiH-N-(SiH、TSA-N(CMe)の合成
TSA-N(CMeSAM前駆体は、市販されている炭素担持ルテニウム触媒により触媒されるトリシリルアミン(TSA)とジイソプロピルアミン(Me-CH)-NH)との反応によって、加圧反応器中において合成される:機械式撹拌機、熱電対、圧力計、圧力トランスデューサ及び3つの計量バルブを備える0.3Lのオートクレーブに、5.3g(0.0025mmolのルテニウム)の5%重量炭素担持ルテニウム触媒を仕込んだ。次いで、反応器を、動的減圧下に約125℃で3時間加熱した。本明細書において用いられるところ、動的減圧とは約1Torrの減圧を意味する。室温に冷却した後、14.8g(0.202mol)のジイソプロピルアミンを反応器に添加し、次いで、これを液体窒素浴中において約-130℃に冷却した。40g(0.372mol)のトリシリルアミンを反応器に移した。次いで、反応器を約100℃に徐々に加熱した。約400rpmで65rpm撹拌した後、圧力を約300psiに上昇させた。圧力の上昇は、形成される水素(及び生成物)の量と比例しており、従って、反応規模に応じて異なることとなる。この反応は、圧力の上昇が停止したら完了する。完了する前に反応を停止することも望ましい可能性がある。反応器を室温(「RT」)に冷却した。揮発物を、SSLB中に液体窒素の温度で、クライオトラップに回収した。反応器の圧力を50Torrに下げた。
【0077】
得られた溶液は、約30%(11.3g)のTSA-N(CMeを含有していた。非単離収率は30%であった。
【0078】
実施例2
クロロトリシリルアミン(SiH-N-SiHCl、TSA-Cl)の合成
TSA-Cl SAM前駆体は、反応:SnCl+N(SiH→N(SiH(SiHCl)+SnCl↓+HCI(J.Chem.Soc.Dalton Trans.1975,p.1624を参照のこと)に従って合成される。或いは、米国特許第8,669,387号明細書(Miller)に記載されているとおり、ジクロロシラン[SiHCl]及びモノクロロシラン[SiHX]を、1/20~1/4の比率及び室温で、400sccmのNHと共に、フロースルーチューブラー反応器中の気相に、連続的に導入し得る。NHと2当量のモノクロロシランとの反応では、主にジシリルアミン(DSA)が生成される。次いで、DSAがジクロロシランと反応して、(SiH-N-SiHCl及びHClが形成される。この反応は、1若しくは2ステップ(最初に、モノクロロシラン及びNHからDSAが形成され、並びに、二番目にジクロロシランが添加される)で、又は、1ステップ(モノクロロシラン、ジクロロシラン及びNHが1ステップで組み合わされる)で進行し得ると当業者は認識するであろう。
【0079】
実施例3
アミン置換ポリシランの合成
アミン置換ポリシランは、以下のステップで合成し得る。
a)反応体RNH及びRNH及びSi2(m+1)を、遷移金属触媒の存在下で接触させて反応混合物を形成するステップ;
b)任意に、溶剤を反応混合物に添加するステップ;
c)反応混合物を約0℃~約300℃の温度で維持するステップ;
d)反応を進行させて、(RN)n1(RN)n2Si(2(m+1)-n1-n2)を形成するステップ;
e)(RN)n1(RN)n2Si(2(m+1)-n1-n2)を反応混合物から分離するステップ;
ここで、反応混合物の温度は合成中に変化してもよく、反応混合物の温度が約0℃未満に下がらず、約300℃を超えないよう維持される。
【0080】
例えば、m=3;R=R=イソプロピル;n1=1;n2=0である構造式は以下のとおりである。
【化3】
ここで、反応体は、MeNH及びSiである。例えば、米国特許第10494387号明細書を参照のこと。
【0081】
実施例4
アミジネート(AMD、-RHN(CR)=NR
【化4】
)置換ポリシランの合成
AMD置換ポリシランは、(RHN(CR)=NR-Si(2(m+1)-n))を指し、式中、n=1~(2(m+1)であり;m=2~6であり;R及びRは各々、直鎖若しくは分岐鎖C~Cアルキル、直鎖若しくは分岐鎖C~Cアルケニル、直鎖若しくは分岐鎖C~Cアルキニル、C~C10アリール、直鎖若しくは分岐鎖C~Cアルキルエーテル、シリル、トリメチルシリル、又は、直鎖若しくは分岐鎖C~Cアルキル置換シリルからなる群から独立して選択される。
【0082】
実施例3におけるアミン置換ポリシランの上記の合成プロセスにおいて、RNHをRHN(CR)=NRで置き換えることで、AMD置換ポリシランが形成される。例えば、米国特許第10494387号明細書を参照のこと。
【0083】
実施例5
X置換ビ-ジシリルアミノハロゲンシラン(BDSASi-X)(式中、X=F、Cl、Br又はI)の合成
SAM前駆体BDSASi-X(F、Cl、Br、I)は、好ましくは、米国特許出願公開第2015/0094470号明細書に記載の同一のプロトコルに従う、脱水素カップリングによる(SiHN-SiH-N(SiH(BDSASi)とハロゲン酸との直接反応から合成される。
【0084】
(SiHN-SiH-N(SiH+nHX→[N(SiH3-m(X)]-SiH-[SiH3-n(X)]+(m+n)H(式中、m=0~3、n=1~3)。
・反応は、特にこれらに限定されないが、C~C24炭化水素溶剤、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、アセトニトリル若しくはTHFなどの非プロトン性溶剤中で、又は、無溶媒で実施される。
・反応は、室温~150℃、好ましくは30~60℃の温度で実施される。
・任意に、触媒は反応混合物からろ過され、及び、残留する液体組成物の成分は蒸留により分離される。
・任意に、反応混合物は、特にこれらに限定されないが、XNR(X=F、Cl、Br、I;R=アルキル)、R-CN、RS、PRなどの配位化合物、又は、第三級アミンから選択される、触媒を非活性化させる薬剤で処理される。
・任意に、BDSASi-Xの化合物は、蒸留による精製で、>98%、より好ましくは、又は、>99%、及び、さらにより好ましくは、典型的な半導体グレードの前駆体である>99.5%のアッセイに達する。
・任意に、生成物は、ろ過されて、半導体産業において用いられる生成物に典型的な仕様に達し得る。
【0085】
実施例6
ジイソブチルアミントリシラン(DIBATS、(iBu)-N-SiH-SiH-SiH)の合成
SAM前駆体DIBATSは、加圧反応器において、市販されている炭素が含む担持ルテニウムにより触媒されて、トリシラン(SiH-SiH-SiH)及びジイソブチルアミン((iBu)-NH)から合成される。機械式撹拌機、熱電対、圧力計、圧力トランスデューサ及び3つの計量バルブを備える0.3Lのオートクレーブに、6g(0.003mmolのルテニウム)の5%重量の炭素担持ルテニウム触媒を仕込んだ。次いで、反応器を動的減圧下に125℃で3時間加熱した。室温に冷却した後、反応器を1atmのヘリウムで満たし、シールし、マニホルドから切り離し、及び、グローブボックス中に置いた。グローブボックス中において、20.7(0.205mol)のジイソブチルアミンを添加した。次いで、反応器をグローブボックスから取り出し、マニホルドに再度接続し、液体窒素浴中において-130℃に冷却した。40gのトリシラン(0.433mol)をマニホルドを介して反応器に移した。次いで、反応器を100℃に加熱した。400rpmで23時間撹拌した後、反応器を室温に冷却した。揮発物を、ステンレス鋼製レクチャーボトル(SSLB)中にクライオトラップで回収した。反応容器圧力を20Torrに下げた。DIBATSを反応器容器から回収した。反応溶液は、11.49gのDIBATSを含有していた。非単離収率は29%であった。例えば、米国特許第10494387号明細書を参照のこと。
【0086】
実施例7
アミジネートネオペンチルシラン(NPS-AMD、C11-SiH-RHN(CR)=NR)の合成
SAM前駆体NPS-AMDの合成は以下のとおりである。
a)反応体アミジン(RHN(CR)=NR)及びネオペンチルシラン(C11-SiH)を、遷移金属触媒の存在下で接触させて反応混合物を形成するステップであって;ここで、R、R及びRは、直鎖若しくは分岐鎖C~Cアルキル、直鎖若しくは分岐鎖C~Cアルケニル、直鎖若しくは分岐鎖C~Cアルキニル、C~C10アリール、直鎖若しくは分岐鎖C~Cアルキルエーテル、シリル、トリメチルシリル、又は、直鎖若しくは分岐鎖C~Cアルキル置換シリルからなる群から独立して選択され;ここで、ネオペンチルシラン(C11-SiH)対(RHN(CR)=NR)のモル比は少なくとも1:1である、ステップ;
b)任意に、溶剤を反応混合物に添加するステップ;
c)反応混合物を約0℃~約300℃の温度で維持するステップ;
d)反応を進行させて、NPS-AMD(C11-SiH-(RN(CR)=NR))を形成するステップ;
e)生成物NPS-AMDを反応混合物から分離するステップ;ここで、反応温度は合成中に変化してもよく、反応混合物の温度が約0℃未満に下がらず、約300℃を超えないよう維持される。例えば、米国特許第10494387号明細書を参照のこと。
【0087】
実施例8
ジアルキルアミノネオペンチルシラン(NPS-NR)の合成
実施例7におけるNPS-AMDの上記の合成手法において、反応体アミジン(RHN(CR)=NR)をアミンRNHと置き換えることで、生成物SAM前駆体NPS-NRが形成され、ここで、R及びRは各々独立して、H、直鎖又は分岐鎖C~Cアルキル、直鎖又は分岐鎖C~Cアルケニル、直鎖又は分岐鎖C~Cアルキニル、C~C10アリール、直鎖又は分岐鎖C~Cアルキルである。例えば、米国特許第10494387号明細書を参照のこと。
【0088】
実施例9
アミジネートシクロヘキシルシラン(CHS-AMD)の合成
SAM前駆体CHS-AMDの合成は以下のとおりである。
a)反応体アミジン(RHN(CR)=NR)と、シクロヘキシルシラン(C11-SiH)とを、遷移金属触媒の存在下で接触させて反応混合物を形成するステップであって;ここで、R、R及びRは、直鎖若しくは分岐鎖C~Cアルキル、直鎖若しくは分岐鎖C~Cアルケニル、直鎖若しくは分岐鎖C~Cアルキニル、C~C10アリール、直鎖若しくは分岐鎖C~Cアルキルエーテル、シリル、トリメチルシリル、又は、直鎖若しくは分岐鎖C~Cアルキル置換シリルからなる群から独立して選択され;ここで、シクロヘキシルシラン(C11-SiH)対(RHN(CR)=NR)のモル比は少なくとも1:1である、ステップ;
b)任意に、溶剤を反応混合物に添加するステップ;
c)反応混合物を約0℃~約300℃の温度で維持するステップ;
d)反応を進行させて、SAM前駆体CHS-AMD(C11-SiH-(RN(CR)=NR))を形成するステップ;
e)生成物CHS-AMDを反応混合物から分離するステップ;ここで、反応温度は合成中に変化してもよく、反応混合物の温度が約0℃未満に下がらず、約300℃を超えないよう維持される。例えば、米国特許第10494387号明細書を参照のこと。
【0089】
実施例10
ジアルキルアミノシクロヘキシルシラン(CHS-NR)の合成
実施例9におけるCHS-AMDの上記の合成手法において、反応体アミジン(RHN(CR)=NR)をアミンRNHで置き換えることで、生成物SAM前駆体CHS-NRが形成され、ここで、R及びRは各々独立して、H、直鎖又は分岐鎖C~Cアルキル、直鎖又は分岐鎖C~Cアルケニル、直鎖又は分岐鎖C~Cアルキニル、C~C10アリール、直鎖又は分岐鎖C~Cアルキルである。例えば、米国特許第10494387号明細書を参照のこと。
【0090】
実施例11
SiT-SAMの湿式コーティング
無溶媒のSiT-SAMモノマー(0.2mL)を、N雰囲気下に、及び、室温でSiO(熱酸化物)ウェハ上に堆積した。次いで、ウェハを2000RPMで60秒間回転させた(すなわち、ウェハが明らかに乾燥するまで)。ウェハは、入手したままであったか、又は、O雰囲気下で前処理(5分間、室温)してクリーニングして、表面をヒドロキシル化した。水接触角(WCA)計測値を、空気中にて直ぐに計測した。次いで、ウェハをN雰囲気下に、300℃で、10分間焼成し、WCAをアニーリング後に再度計測した。
【0091】
結果を図2及び図3に列挙するが、これは、モノ-アミノトリシラン(RがC~Cアルキルである、Si-NR)誘導体及びモノアミノ-トリシリルアミン誘導体(RがC~CアルキルであるSiN-NR)の両方について、WCAの明らかな増加を示した。300℃でのアニーリング後においてもWCAは高いままであり、これは、これらのSiT-SAMモノマーはこのような高温に分解されることなく耐え得ること、及び、室温における湿式露出は、これらのSAMを表面に化学的に結合させるのに十分であることを示す。
【0092】
実施例12
ポリカルボシラザン膜を堆積するための、(ジイソブチルアミン)トリシラン(DIBATS)を定着剤として用いた、SODコーティングプライマーとしてのSiT SAMの適用
比較例1に記載のものと同一のプロセスを、HDMSの代わりにDIBATSを定着剤として用いて行った。2×2cmの試験片に切断した未処理の酸化物を有するケイ素ウェハを、UV-Oクリーニング下で10分間クリーニングした。その後、試験片をNグローブボックスに入れ、200μlのDIBATS溶液を、その上に、2000rpmで60秒間、Brewer Science Cee 200Xスピンコータを用いて拡散させた。DIBATS定着剤を拡散させた後、表面は、88°の平均接触角を有する疎水特性を示した。その後、200μlポリカルボシラザン溶液を2000rpmで60秒間拡散させた。スピンオンプロセスに続いて、溶剤及び揮発物の蒸発を促進するために、200℃で、5分間のNグローブボックス中における前焼成ステップを行った。
【0093】
図4は、DIBATSを接着剤として用いたスピンオン堆積薄膜を示す。膜は保持されていると共に、試験片全体にわたって均一である。前焼成ステップの後、260nm厚のポリカルボシラザン薄膜が保持された。この膜は、膜全体にわたって良好な均一性を示し、空隙部及び欠陥が少ない。それ故、この実施例は、DIBATSは、ポリカルボシラザンと強固に結合すると共に、前焼成加熱処理の後においても結合を保持可能であることを実証する。ポリカルボシラザンのケイ素基材に対する接着性をテストするために、スコッチテープテストを実施した。薄膜は、剥がれることも分離することもなかった。同一の試験片にスコッチテープテストを複数回(6回以上)繰り返した後においても、視覚的な差異は認められなかった。
【0094】
実施例13
ポリカルボシラザン膜を堆積するための、(ジイソプロピルアミン)トリシリルアミン(TSA-N(CHMe)を定着剤として用いた、SODコーティングプライマーとしてのSiT SAMの適用
DIBATSを定着剤として用いる実施例12に記載のものと同一のプロセスを、DIBATSの代わりにTSA-N(CHMeを定着剤として用いて行った。2×2cmの試験片に切断した未処理の酸化物を有するケイ素ウェハを、UV-Oクリーニング下で10分間クリーニングした。その後、試験片をNグローブボックスに入れ、200μlのTSA-N(CHMe溶液を、その上に、2000rpmで60秒間、Brewer Science Cee 200Xスピンコータを用いて拡散させた。TSA-N(CHMe定着剤を拡散させた後、表面は、98°の平均接触角を有する疎水特性を拡散させた後。その後、200μlポリカルボシラザン溶液を2000rpmで60秒間拡散させた。スピンオンプロセスに続いて、溶剤及び揮発物の蒸発を促進するために、200℃で、5分間のNグローブボックス中における前焼成ステップを行った。
【0095】
図5は、接着剤としてTSA-NH(CHMeを用いたスピンオン堆積薄膜を示す。膜は保持されていると共に、試験片全体にわたって均一である。前焼成ステップの後、260nm厚のポリカルボシラザン薄膜が保持された。この膜は、膜全体にわたって良好な均一性を示し、空隙部及び欠陥が少ない。それ故、この実施例は、TSA-NH(CHMeは、ポリカルボシラザンと強固に結合すると共に、前焼成加熱処理の後においても結合を保持可能であることを実証する。ポリカルボシラザンのケイ素基材に対する接着性をテストするために、スコッチテープテストを実施した。薄膜は、剥がれることも分離することもなかった。同一の試験片にスコッチテープテストを複数回(6回以上)繰り返した後においても、視覚的な差異は認められなかった。
【0096】
実施例14
SiT-SAMの蒸気コーティング
SiO(熱酸化物)ウェハを、SiT-SAMモノマーDIBATS(0.02Torr分圧)蒸気に、減圧下(9.5T)に、100℃で露出させた。ウェハを、SiT SAM蒸気に、5分間露出させた。ウェハは、入手したままであった(未処理)か、又は、O雰囲気下で前処理(10分間、室温)してクリーニングして、表面をヒドロキシル化した。水接触角(WCA)計測値を、空気中にて直ぐに計測した。ウェハを周囲温度(23~24℃)及び湿度(41~56%RH)で保管し、24時間及び48時間のエージング後にWCAを再度計測した。
【0097】
結果を図6に列挙するが、これは、蒸気SiT-SAM、DIBATSに露出した未処理及び前処理SiO基材の両方について、WCAの明らかな増加を示す。周囲条件における24時間及び48時間のエージング後においてもWCAは高いまま(>70度)であり、これは、SiT-SAMモノマーが安定であると共に、周囲条件での露出に耐え得ることを示す。
【0098】
予想実施例1
SiT-SAMの乾式コーティング
乾式コーティングプロセスにおいて用いられる本開示のSiT-SAMモノマーは、適当な時間内に基材/ウェハの表面と反応するために、蒸発して十分な蒸気圧に達するのに十分に揮発性である。被処理表面は、SiT-SAMモノマーの蒸気に露出され、及び、静置されて反応に供される。CVD又はALDプロセスは、SiT-SAMの乾式コーティングに適用され得る。基材/ウェハは、室温を超えるが、表面上のSiT-SAMモノマーの分解温度未満に加熱されて、SiT-SAMモノマーの表面に対する反応及び結合が促進及び加速される。この反応は、大気圧で(例えばAPCVD)、又は、減圧下で実現され得る。
【0099】
予想実施例2
薄膜堆積に係るヘンハンスメント層としてのSiT-SAMの適用
バッテリー空間中のSi陽極に対する適用例は、(ジイソブチルアミン)トリシランでコーティングしたSiOの最上部に成長するポリSiと、(ジイソブチルアミン)トリシランでコーティングしていないSiO(気体/液体)との比較、及び、(ジイソブチルアミン)トリシランでコーティングしたNi(未処理の酸化物を含む)Oの最上部に成長する多孔性Siと、(ジイソブチルアミン)トリシランでコーティングしていないもの(気体/フタ)との比較により達成され得る。本開示のSiT-SAMモノマーは、金属ハロゲン化物(W、Mo、Ti、Ta…)を用いる、600℃未満、好ましくは500℃未満の温度での金属バリアのためのシードとして用いられ得る。
【0100】
予想実施例3
粉末コーティングのためのSiT-SAMの適用
粉末の表面上のSiOに対する粉末の湿式コーティング/ろ過/湿式酸化(HO+IPA)は、本開示のSiT-SAMモノマーで実施可能である。Al、SiO粉末、天然酸化物を含むSi粉末、天然又はALD酸化物を含むいずれかの金属粉末(Al、W、Ti、Cuなど)などの無炭素疎水性特性エンハンスメント用の粉末の気相コーティングは、本開示のSiT-SAMモノマーで実施可能である。
【0101】
本明細書に記載の主題は、ユーザ-インタラクティブなコンポーネントを有するコンピューティングアプリケーションに係る1つ以上のコンピューティングアプリケーションフィーチャ/オペレーションを処理するための例示的な実施の文脈において記載され得るが、主題はこれらの特定の実施形態に限定されない。むしろ、本明細書に記載の技術は、いずれかの好適な種類のユーザ-インタラクティブなコンポーネントの実行管理方法、システム、プラットフォーム及び/又は装置に適用され得る。
【0102】
本発明の性質を説明するために本明細書において説明及び例示された詳細、材料、ステップ及び部品の配置における多くの追加の変形は、添付の特許請求の範囲において表記されている本発明の原理及び範囲内において、当業者により実施され得ることが理解されるであろう。それ故、本発明が、上記の実施例及び/又は添付の図面における特定の実施形態に限定されることは意図されていない。
【0103】
本発明の実施形態を図示及び説明したが、当業者は、本発明の趣旨又は教示から逸脱することなく変更をし得る。本明細書に記載の実施形態は、単なる例示であって、限定的ではない。組成物及び方法の多くの変形及び変更が可能であり、本発明の範囲内である。従って、保護の範囲は本明細書に記載の実施形態には限定されず、特許請求の範囲の主題に係るすべての均等物をその範囲内に包含することとなる以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。

図1
図2
図3
図4
図5
図6