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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】通信装置、通信方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/26 20060101AFI20241021BHJP
【FI】
H04L27/26 110
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023018558
(22)【出願日】2023-02-09
(62)【分割の表示】P 2019036411の分割
【原出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2023053119
(43)【公開日】2023-04-12
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅原 誠
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/108886(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/232138(WO,A1)
【文献】特表2006-505974(JP,A)
【文献】国際公開第2018/048284(WO,A1)
【文献】Eunsung Park et al.,Overview of PHY Features for EHT,IEEE 802.11-18/1967r1[online],インターネット<URL:https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/18/11-18-1967-01-0eht-overview-of-phy-features-for-eht.pptx>,2019年01月10日
【文献】Imran Latif et al.,HARQ in EHT,IEEE 802.11-18/2029r1[online],インターネット<URL:https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/18/11-18-2029-01-0eht-harq-in-eht.pptx>,2019年01月14日
【文献】Thomas Handte and Dana Ciochina,Signaling and Capabilities for Non-Uniform Constellation,IEEE 802.11-17/0057r0[online],2017年01月18日,インターネット<URL:https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/17/11-17-0057-00-00ay-signaling-and-capabilities-for-non-uniform-constellations.pptx>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/00 - 27/38
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
IEEE 802.11
IEEE 802.15
IEEE 802.16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリアンブルとデータフィールドを有する物理(PHY)フレームを送信する送信手段を有する通信装置であって、
前記プリアンブルは、
Legacy Short Training Field(L-STF)と、
前記フレームにおいて前記L-STFの直後に配置されるLegacy Long Training Field(L-LTF)と、
前記フレームにおいて前記L-LTFの直後に配置されるLegacy Signal Field(L-SIG)と、
前記L-SIGの直後に配置されるRL-SIGと、
前記RL-SIGより後に配置されるShort Training Field(STF)と、
前記STFの直後に配置されるLong Training Field(LTF)と、
前記L-SIGと前記STFの間に配置されるSIG(Signal Field)と、を有し、
当該SIGは、変調方式および当該変調方式がUC(Uniform Constellation)方式またはNUC(Non Uniform Constellation)方式のいずれであるかを示す情報を含む領域を有し、前記データフィールドは、前記領域で示される前記変調方式と前記情報とに対応する変調がなされたデータを含み、前記通信装置は他の通信装置からの信号の受信状況に基づいて、前記UC方式を示す情報と前記NUC方式を示す情報のいずれを前記領域に含めるかを決定し、
前記SIGは、Guard Interval期間と前記LTFの長さを示す情報を含む領域を有し、
前記LTFは、前記LTFの長さを示す情報に基づいて構成される
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
プリアンブルとデータフィールドを有する物理(PHY)フレームを通信する通信手段を有する通信装置であって、
前記プリアンブルは、
Legacy Short Training Field(L-STF)と、
前記フレームにおいて前記L-STFの直後に配置されるLegacy Long Training Field(L-LTF)と、
前記フレームにおいて前記L-LTFの直後に配置されるLegacy Signal Field(L-SIG)と、
前記L-SIGの直後に配置されるRL-SIGと、
前記RL-SIGより後に配置されるShort Training Field(STF)と、
前記STFの直後に配置されるLong Training Field(LTF)と、
前記L-SIGと前記STFの間に配置されるSIG(Signal Field)と、を有し、
当該SIGは、変調方式および当該変調方式がUC(Uniform Constellation)方式またはNUC(Non Uniform Constellation)方式のいずれであるかを示す情報を含む領域を有し、前記データフィールドは、前記領域で示される前記変調方式と前記情報に対応する変調がなされたデータを含み、前記PHYフレームはOFDMA(Orthogonal Frequency-Division Multiple Access)により通信され
前記SIGは、Guard Interval期間と前記LTFの長さを示す情報を含む領域を有し、
前記LTFは、前記LTFの長さを示す情報に基づいて構成される
ことを特徴とする通信装置。
【請求項3】
前記PHYフレームが、IEEE802.11シリーズ規格に準拠したフレームであることを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記通信装置は他の通信装置からの信号の受信状況に基づいて、前記UC方式を示す情報と前記NUC方式を示す情報のいずれを前記領域に含めるかを決定することを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項5】
前記PHYフレームはOFDMA(Orthogonal Frequency-Division Multiple Access)により通信されることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項6】
前記通信手段は、前記PHYフレームをOFDMAにより複数の他の装置に送信することを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項7】
他の通信装置からの信号の品質や強度に基づいて、前記UC方式を示す情報と前記NUC方式を示す情報のいずれを前記領域に含めるかが決定されることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項8】
前記プリアンブルはPHYフレームを受信する複数の他の通信装置に対する個別の通信パラメータをそれぞれ定義する複数のフィールドを含み、当該複数のフィールドのそれぞれは、前記領域を有することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項9】
前記情報は、1ビットで示されることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項10】
前記情報は、前記変調方式と関連付けて複数のビットで示されることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項11】
前記変調方式は、MCS(Modulation and Coding Scheme)であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項12】
プリアンブルとデータフィールドを有する物理(PHY)フレームを送信する送信手段を有する通信装置の通信方法であって、
前記プリアンブルは、
Legacy Short Training Field(L-STF)と、
前記フレームにおいて前記L-STFの直後に配置されるLegacy Long Training Field(L-LTF)と、
前記フレームにおいて前記L-LTFの直後に配置されるLegacy Signal Field(L-SIG)と、
前記L-SIGの直後に配置されるRL-SIGと、
前記RL-SIGより後に配置されるShort Training Field(STF)と、
前記STFの直後に配置されるLong Training Field(LTF)と、
前記L-SIGと前記STFの間に配置されるSIG(Signal Field)と、を有し、
当該SIGは、変調方式および当該変調方式がUC(Uniform Constellation)方式またはNUC(Non Uniform Constellation)方式のいずれであるかを示す情報を含む領域を有し、前記データフィールドは、前記領域で示される前記変調方式と前記情報とに対応する変調がなされたデータを含み、前記通信装置は他の通信装置からの信号の受信状況に基づいて、前記UC方式を示す情報と前記NUC方式を示す情報のいずれを前記領域に含めるかを決定し、
前記SIGは、Guard Interval期間と前記LTFの長さを示す情報を含む領域を有し、
前記LTFは、前記LTFの長さを示す情報に基づいて構成される
ことを特徴とする通信方法。
【請求項13】
プリアンブルとデータフィールドを有する物理(PHY)フレームを通信する通信手段を有する通信装置の通信方法であって、
前記プリアンブルは、
Legacy Short Training Field(L-STF)と、
前記フレームにおいて前記L-STFの直後に配置されるLegacy Long Training Field(L-LTF)と、
前記フレームにおいて前記L-LTFの直後に配置されるLegacy Signal Field(L-SIG)と、
前記L-SIGの直後に配置されるRL-SIGと、
前記RL-SIGより後に配置されるShort Training Field(STF)と、
前記STFの直後に配置されるLong Training Field(LTF)と、
前記L-SIGと前記STFの間に配置されるSIG(Signal Field)と、を有し、
当該SIGは、変調方式および当該変調方式がUC(Uniform Constellation)方式またはNUC(Non Uniform Constellation)方式のいずれであるかを示す情報を含む領域を有し、前記データフィールドは、前記領域で示される前記変調方式と前記情報に対応する変調がなされたデータを含み、前記通信装置はOFDMA(Orthogonal Frequency-Division Multiple Access)を用いて前記PHYフレームを通信し、
前記SIGは、Guard Interval期間と前記LTFの長さを示す情報を含む領域を有し、
前記LTFは、前記LTFの長さを示す情報に基づいて構成される
ことを特徴とする通信方法。
【請求項14】
前記PHYフレームが、IEEE802.11シリーズ規格に準拠したフレームであることを特徴とする請求項12または13に記載の通信方法。
【請求項15】
コンピュータを、請求項1から11のいずれか1項に記載の通信装置が有する各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LANにおける通信制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信技術の発展とともにインターネット使用量が年々増加しており、需要の増加に応えるべく様々な通信技術の開発が進められている。中でも無線ローカルエリアネットワーク(無線LAN)技術は、無線LAN端末によるパケットデータ、音声、ビデオなどのインターネット通信におけるスループット向上を実現しており、現在も様々な技術開発が盛んに行われている。
【0003】
無線LAN技術の発展において、無線LAN技術の標準化機構であるIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802による数多くの標準化作業が重要な役割を果たしている。無線LAN通信規格の一つとして、IEEE802.11規格が知られており、IEEE802.11n/a/b/g/acまたはIEEE802.11axなどの規格がある。例えば、IEEE802.11axではOFDMA(Orthogonal frequency-division multiple access)により最大9.6ギガビット毎秒(Gbps)という高いピークスループットに加え、混雑状況下での通信速度向上を実現している(特許文献1)。
【0004】
近年、更なるスループット向上のために、IEEE802.11axの後継規格として、IEEE802.11 EHT(Extremely High Throughput)と呼ばれるStudy Groupが発足した。IEEE802.11 EHTが目指すスループット向上の方策の1つとして、データを伝送する際の変調方式に、不均一な信号点配置を有する変調方式であるNon-Uniform Constellation(以下、NUC)方式を用いることが検討されている。NUC方式は、DVB-NGH等の放送規格で採用されている変調方式である。DVB-NGHとは、Digital Video Broadcasting Next Generation broadcasting system to Handheldの略である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-50133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のIEEE802.11シリーズの規格では、均一な信号点配置を有する変調方式であるUniform Constellation(以下、UC)方式が採用されている。例えば、従来では、BPSKやQPSKの他に、信号点(Constellation point)が格子状に均等配置された16-QAM(Quadrature Amplitude Modulation)や64-QAM(UC-N-QAM)が採用されている。
【0007】
上述したように、IEEE802.11 EHTでは、UC方式に加え、NUC方式の16-QAMや64-QAM(NUC-N-QAM)等を用いたデータ伝送を行うことが検討されている。しかしながら、これまでの無線LANに対する規格において、伝送するデータの変調方式としてUC方式とNUC方式のいずれを用いるかを通知するための仕組みが定義されていなかった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、伝送するデータの変調方式としてUC方式とNUC方式のいずれを用いるかを通知するための仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による通信装置は、以下の特徴を有する。すなわち、
プリアンブルとデータフィールドを有する物理(PHY)フレームを送信する送信手段を有する通信装置であって、
前記プリアンブルは、
Legacy Short Training Field(L-STF)と、
前記フレームにおいて前記L-STFの直後に配置されるLegacy Long Training Field(L-LTF)と、
前記フレームにおいて前記L-LTFの直後に配置されるLegacy Signal Field(L-SIG)と、
前記L-SIGの直後に配置されるRL-SIGと、
前記RL-SIGより後に配置されるShort Training Field(STF)と、
前記STFの直後に配置されるLong Training Field(LTF)と、
前記L-SIGと前記STFの間に配置されるSIG(Signal Field)と、を有し、当該SIGは、変調方式および当該変調方式がUC(Uniform Constellation)方式またはNUC(Non Uniform Constellation)方式のいずれであるかを示す情報を含む領域を有し、前記データフィールドは、前記領域で示される前記変調方式と前記情報とに対応する変調がなされたデータを含み、前記通信装置は他の通信装置からの信号の受信状況に基づいて、前記UC方式を示す情報と前記NUC方式を示す情報のいずれを前記領域に含めるかを決定し、
前記SIGは、Guard Interval期間と前記LTFの長さを示す情報を含む領域を有し、
前記LTFは、前記LTFの長さを示す情報に基づいて構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、伝送するデータの変調方式としてUC方式とNUC方式のいずれを用いるかを通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ネットワーク構成例を示す図。
図2】APの機能構成例を示す図。
図3】APのハードウェア構成例を示す図。
図4】APにより実行される処理を示すフローチャート。
図5】無線通信ネットワークにおいて実行される処理を示すシーケンスチャート。
図6】EHT SU PPDUのPHYフレーム構造の例を示す図。
図7】EHT ER PPDUのPHYフレーム構造の例を示す図。
図8】EHT MU PPDUのPHYフレーム構造の例を示す図。
図9】UC-16-QAMの信号点配置例を示す図。
図10】NUC-16-QAMの信号点配置例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
(ネットワーク構成)
図1は、本実施形態における無線通信ネットワークの構成例を示す。本無線通信ネットワークは、IEEE802.11 EHT(Extremely High Throughput)規格に準拠する機器(EHT機器)として、1つのアクセスポイント(AP102)と、3つのSTA(STA103、STA104、STA105)を含んで構成される。なお、AP102は、中継機能を有する点を除き、STA103~105と同様の機能を有するため、STAの一形態といえる。AP102が送信する信号が到達する範囲を示した円101の内部にあるSTAがAP102と通信可能である。AP102は、IEEE802.11 EHT規格の無線通信方式に従って、各STA103~105と通信する。AP102は、各STA103~105とIEEE80211シリーズの規格に準拠した、アソシエーションプロセス等の接続処理を介して無線リンクを確立することができる。
【0014】
なお、図1に示す無線通信ネットワークの構成は説明のための例に過ぎず、例えば、更に広範な領域に多数のEHT機器およびレガシー機器(IEEE802.11a/b/g/n/ax規格に従う通信装置)を含むネットワークが構成されてもよい。また、図1に示した各通信装置の配置に限定されず、様々な通信装置の位置関係に対しても、以下の議論を適用可能である。また、EHTをExtreme High Throughputの略と解してもよい。
【0015】
(APの構成)
図2は、AP102の機能構成を示すブロック図である。AP102は、その機能構成の一例として、無線LAN制御部201、フレーム生成部202、信号解析部203、およびUI(ユーザインタフェース)制御部204を有する。
【0016】
無線LAN制御部201は、他の無線LAN装置との間で無線信号(無線フレーム)の送受信を行うための1本以上のアンテナ205並びに回路、及びそれらを制御するプログラムを含んで構成され得る。無線LAN制御部201は、IEEE802.11シリーズの規格に従って、フレーム生成部202により生成されたフレームを元に無線LANの通信制御を実行する。
【0017】
フレーム生成部202は、無線LAN制御部201により受信された信号に対して、信号解析部203が行った解析の結果に基づいて、無線LAN制御部201で送信するべきフレームを生成する。フレーム生成部202は、信号解析部203による解析結果に基づかずに、フレームを作成してもよい。信号解析部203は、無線LAN制御部201により受信された信号に対する解析を行う。UI制御部204は、AP102の不図示のユーザによる入力部304(図3)に対する操作を受け付け、当該操作に対応する制御信号を、各構成要素に伝達するための制御や、出力部305(図3)に対する出力(表示等も含む)制御を行う。
【0018】
図3に、本実施形態におけるAP102のハードウェア構成を示す。AP102は、そのハードウェア構成の一例として、記憶部301、制御部302、機能部303、入力部304、出力部305、通信部306、および1本以上のアンテナ205を有する。
【0019】
記憶部301は、ROM、RAMの両方、または、いずれか一方により構成され、後述する各種動作を行うためのプログラムや、無線通信のための通信パラメータ等の各種情報を記憶する。なお、記憶部301として、ROM、RAM等のメモリの他に、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、DVDなどの記憶媒体が用いられてもよい。
【0020】
制御部302は、例えば、CPUやMPU等のプロセッサ、ASIC(特定用途向け集積回路)、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)等により構成される。ここで、CPUはCentral Processing Unitの、MPUは、Micro Processing Unitの頭字語である。制御部302は、記憶部301に記憶されたプログラムを実行することによりAP102全体を制御する。なお、制御部302は、記憶部301に記憶されたプログラムとOS(Operating System)との協働によりAP102全体を制御するようにしてもよい。
【0021】
また、制御部302は、機能部303を制御して、撮像や印刷、投影等の所定の処理を実行する。機能部303は、AP102が所定の処理を実行するためのハードウェアである。例えば、AP102がカメラである場合、機能部303は撮像部であり、撮像処理を行う。また、例えば、AP102がプリンタである場合、機能部303は印刷部であり、印刷処理を行う。また、例えば、AP102がプロジェクタである場合、機能部303は投影部であり、投影処理を行う。機能部303が処理するデータは、記憶部301に記憶されているデータであってもよいし、後述する通信部306を介してSTAもしくは他のAPと通信したデータであってもよい。
【0022】
入力部304は、ユーザからの各種操作の受付を行う。出力部305は、ユーザに対して各種出力を行う。ここで、出力部305による出力とは、画面上への表示や、スピーカーによる音声出力、振動出力等の少なくとも1つを含む。なお、タッチパネルのように入力部304と出力部305の両方を1つのモジュールで実現するようにしてもよい。
【0023】
通信部306は、IEEE 802.11 EHT規格に準拠した無線通信の制御や、Wi-Fiに準拠した無線通信の制御や、IP(Internet Protocol)通信の制御をおこなう(変調および符号化処理を含む)。また、通信部306は1本以上のアンテナ205を制御して、無線通信のための無線信号の送受信を行う。その場合、空間ストリームを利用したMIMO(Multi Input Multi Output)通信が可能となる。AP102は通信部306を介して、画像データや文書データ、映像データ等のコンテンツを他の通信装置と通信する。なお、図3に示した各構成要素の機能は部分的にソフトウェアによって実装されてもよい。
【0024】
(STAの構成)
STA103~105の機能構成およびハードウェア構成は、上記のAP102の機能構成(図2)およびハードウェア構成(図3)とそれぞれ同様な構成とする。すなわち、STA103~105はそれぞれ、機能構成として、無線LAN制御部201、フレーム生成部202、信号解析部203、およびUI制御部204を有し、ハードウェア構成として、記憶部301、制御部302、機能部303、入力部304、出力部305、通信部306、および1本以上のアンテナ205を有して構成され得る。
【0025】
(処理の流れ)
続いて、上述のように構成されたAP102により実行される処理の流れ、および図1に示した無線通信システムにより実行される処理のシーケンスについて図4図5を参照して説明する。図4は、AP102により実行される処理を示すフローチャートを示す。図4に示すフローチャートは、AP102の制御部302が記憶部301に記憶されている制御プログラムを実行し、情報の演算および加工並びに各ハードウェアの制御を実行することにより実現され得る。また、図5は、無線通信システムにおいて実行される処理のシーケンスチャートを示す。
【0026】
AP102は、STA103~105のそれぞれに対して、IEEE802.11シリーズの規格に従う接続処理を行う(S401、F501)。すなわち、AP102とSTA104~105のそれぞれとの間でProbe Request/Response(プローブ要求/応答)、Association Request/Reponse(アソシエーション要求/応答)、Auth(認証)などのフレームを送受信することにより、無線リンクが確立される。
【0027】
続いて、AP102は無線通信に使用する変調方式と符号化率をMCS(Modulation and Coding Scheme)の値(レベル)として決定する(S402、F502)。MCSは、変調方式と符号化率等の組み合わせをインデックス化したものである。本実施形態で使用するMCSの値と当該MCSの値に対応する変調方式および符号化率との関係は、表3と表4を用いて後述する。MCSの値は、信号解析部203により、AP102における受信状況に基づいて決定され得る。例えば、MCSの値は、各STAから受信した信号の品質や強度(SNR(信号対雑音比)、SINR(信号対干渉雑音比)、RSSI(受信信号強度)、RSSQ(受信信号品質)等に基づいて決定され得る。また、MCSの値は、無線通信システムにおいて予め設定されてもよい。また、MCSの値は、AP102の不図示のユーザによる入力部304に対する操作により決定されてもよい。このようにMCSの値の決定手法は特定の手法に限定されない。
【0028】
さらに、AP102は、無線通信に使用する変調方式の信号点配置をUC方式とNUC方式のいずれにするかをUC/NUC情報として決定する(S402、F502)。当該UC/NUC情報の決定は、MCSの値の決定と同様、AP102と各STAとの間の受信環境やユーザによる操作入力等に基づき行われ、特定の手法に限定されない。また、表4を用いて後述するように、MCSの値が変調方式と符号化率とUC/NUC情報の組み合わせに対応する場合は、AP102は無線通信に使用する変調方式と符号化率とUC/NUC情報をMCSの値(レベル)として決定してもよい。各変調方式に対するUC方式とNUC方式の信号点配置の情報は、APとSTAで共有されているものとする。
【0029】
ここで、図9図10を参照して、16QAMの場合のUC方式とNUC方式の信号点配置例について説明する。図9図10はそれぞれ、UC-16-QAMとNUC-16-QAMの信号点配置例を示す。図9に示すUC-16-QAMの信号点配置例では、信号点(Constellatio point)が格子状に均等配置されている。一方、図10に示すNUC-16-QAMの信号点配置例では、各信号点が中心点に対して極座標系で特定されるような信号点配置を有する。中心から遠くに配置される信号点は位相雑音に対してより影響を受けやすいが、図10のUC-16-QAMでは中心から遠くに配置された信号点は隣接する信号点と距離があるため、位相雑音の影響が緩和され得る。尚、図10に示したNUC方式信号点配置は例示に過ぎず、均一でない信号点配置を有する方式は全てNUC方式に含まれ得る。
【0030】
図4図5の説明に戻り、次に、AP102は、送信する無線フレームに含める、S402、F502で決定されたMCSやUC/NUCの情報を含む通信パラメータを決定する(S403、F503)。続いて、AP102は、決定した送信データ通信パラメータとデータを含む無線フレームの形式で、データをSTA103~105に送信する(S404、F504)。
【0031】
(フレームの構造)
次に、S404、F504で送信されるIEEE802.11EHT規格で定められたPPDUのPHY(物理)フレーム構造の例を図6図8に示す。なお、PPDUは、Physical Layer (PHY) Protocol Data Unitの略である。図6は、シングルユーザ(SU)通信(APと単一のSTA間)用のPPDUである、EHT SU PPDUのPHYフレーム構造の例を示す。図7は、拡張した範囲(通信距離)(Extended Range)における通信用のPPDUであるEHT ER PPDUのPHYフレーム構造の例を示す。EHT ER PPDUは、APと単一のSTA間の通信で用いられる。図8はマルチユーザ(MU)通信(APと複数のSTA間)用のPPDUであるEHT MU PPDUのPHYフレーム構造の例を示す。
【0032】
図6図8に共通してPPDUが含む情報として、STF(Short Training Field)、LTF(Long Term Field)、SIG(Signal Field)がある。図6を例にすると、PPDU先頭部には、IEEE802.11a/b/g/n/ax規格に対して後方互換性のある、L(Legacy)-STF601、L-LTF602、L-SIG603を有する。L-STF601は、PHYフレーム信号の検出、自動利得制御(AGC:automatic gain control)やタイミング検出などに用いられる。L-STF601の直後に配置されるL-LTF602は高精度周波数・時刻同期化や伝搬チャンネル情報(CSI)取得などに用いられる。L-LTF602の直後に配置されるL-SIG603は、データ送信率やPHYフレーム長の情報を含んだ制御情報を送信するために用いられる。IEEE802.11a/b/g/n/ax規格に従うレガシー機器は、上記各種レガシーフィールド(L-STF601、L-LTF602、L-SIG603)のデータを復号化することが可能である。当該各種レガシーフィールドは、図7~8に示すPPDUにも同様に含まれる。
【0033】
図6に示すEHT SU PPDUは、上記のL-STF601、L-LTF602、L-SIG603に続いて、RL-SIG604、EHT-SIG-A605、EHT-STF606、EHT-LTF607、データフィールド608、Packet extention609を有する。RL-SIG604はなくてもよい。EHT-SIG-A605はL-SIG603の後に配置され、EHT-STF606はEHT-SIG-A605の直後に配置され、EHT-LTF607はEHT-STF606の直後に配置される。なお、L-STF601、L-LTF602、L-SIG603、RL-SIG604、EHT-SIG-A605、EHT-STF606、EHT-LTF607までのフィールドをプリアンブルと呼ぶ。EHT-SIG-A605には、PPDUの受信に必要なEHT-SIG-A1とEHT-SIG-A2のような情報が含まれる。EHT-SIG-A605に含まれるEHT-SIG-A1とEHT-SIG-A2を構成するサブフィールドとその説明をそれぞれ表1と表2に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
本実施形態では、変調方式および当該変調方式がUC方式またはNUC方式のいずれであるかを示すUC/NUC情報を示す領域がEHT-SIG-A1に含まれる。例えば、S402、F502で決定されたMCSは、EHT-SIG-A1(表1)におけるMCSサブフィールド(B3-B6)の4ビットで示される。また、UC/NUC情報は、EHT-SIG-A1において指定可能とし、表1ではUC/NUCサブフィールド(B7)の1ビットで示される(一例として、UC方式の場合は0、NUC方式の場合は1)。MCSサブフィールドに示されるMCSの値と当該MCSの値に対応する変調方式および符号化率との対応の例を表3に示す。表3では、MCSは0~11まで値を持ち、変調方式と符号化率の情報が、各MCSの値に対応して設定されている。例えば、図9に示すようなUC-16-QAMを用いる場合、MCSサブフィールドにはMCSの値として3または4が指定され、UC/NUCサブフィールドには0が指定される。
【0037】
【表3】
【0038】
なお、UC/NUC情報を通知するための手段はこれに限定されない。例えば、UC/NUC情報を、変調方式と関連付けて複数のビットで示すように、変調方式と符号化率に加え、UC/NUC情報を含めてMCSとして定義してもよい。表4に、MCSの値と当該MCSの値に対応する変調方式、符号化率、およびUC/NUC情報との対応の例を示す。表4に示すようなUC/NUC情報を含んだMCSの値の表を用いる場合、全てのMCSを表現するためのMCSサブフィールドのビット数が不足し得る。その場合、MCSサブフィールドに5ビット以上を割り当ててもよい。
【0039】
【表4】
【0040】
EHT-SIG-A605に続くEHT-STF606はEHT Short Training Fieldの略で、主な目的はMIMO送信における自動利得制御を改善することである。EHT-LTF607はEHT Long Training Fieldの略で、受信機にMIMOチャネルの推定を行う手段を提供する。データフィールド608は、上述したEHT-SIG-A1において示された、変調方式とUC/NUC情報に従い変調されたデータを含む。送信側の通信装置(AP)はデータフィールド608におけるデータを変調および符号化し、変調および符号化に使用したMCSの情報(MCSの値(レベル))とUC/NUC情報をEHT-SIG-A1に格納して受信側の通信装置(STA)にPPDUを伝送する。受信側の通信装置は、受信したPPDUのEHT-SIG-A1におけるMCSの情報とUC/NUC情報から、受信したデータフィールドにおけるデータの復調および復号化を行うことができる。
【0041】
図7に示すEHT ER PPDUは、上記のように、通信距離を拡張したいときに用いるPPDUで、APと単一のSTA間の通信で用いられる。EHT ER PPDUは、L-STF701、L-LTF702、L-SIG703、RL-SIG704、EHT-SIG-A705、EHT-STF706、EHT-LTF707、データフィールド708、Packet extention709を有する。RL-SIG704はなくてもよい。L-LTF702はL-STF701の直後に配置され、L-SIG703はL-LTF702の直後に配置され、EHT-SIG-A705はL-SIG703の後に配置され、EHT-STF706はEHT-SIG-A705の直後に配置され、EHT-LTF707はEHT-STF706の直後に配置される。なお、L-STF701、L-LTF702、L-SIG703、RL-SIG704、EHT-SIG-A705、EHT-STF706、EHT-LTF707までのフィールドをプリアンブルと呼ぶ。各フィールドに含まれる情報は、図6に示したEHT SU PPDUと同内容であるので説明を省略する。なお、EHT-SIG-A705では図6のETH SU PPDUと同様に、EHT-SIG-A1おけるUC/NUCサブフィールドに、信号点配置としてUC方式を用いるかNUC方式を用いるかを設定することができる。
【0042】
図8のEHT MU PPDUは、上述のように、MUの通信で用いるPPDUである。EHT MU PPDUは、L-STF801、L-LTF802、L-SIG803、RL-SIG804、EHT-SIG-A805、EHT-SIG-B806、EHT-STF807、EHT-LTF808、データフィールド809、Packet extention810を有する。RL-SIG804はなくてもよい。L-LTF802はL-STF801の直後に配置され、L-SIG803はL-LTF802の直後に配置され、EHT-SIG-A805はL-SIG803の後に配置され、EHT-SIG-B806はEHT-SIG-A805の直後に配置され、EHT-STF807はEHT-SIG-B806の直後に配置され、EHT-LTF808はEHT-STF807の直後に配置される。なお、L-STF801、L-LTF802、L-SIG803、RL-SIG804、EHT-SIG-A805、EHT-SIG-B806、EHT-STF807、EHT-LTF808までのフィールドをプリアンブルと呼ぶ。データフィールド809ではMIMOもしくはOFDMA(Orthogonal Frequency-Division Multiple Access)により複数のSTA(ユーザ)宛てのデータが伝送される。
【0043】
EHT-SIG-A805はPPDUの受信に必要なEHT-SIG-A1とEHT-SIG-A2のような情報を含んでいる。EHT-SIG-A805に含まれるEHT-SIG-A1とEHT-SIG-A2を構成するサブフィールドとその説明をそれぞれ表5と表6に示す。
【0044】
【表5】
【0045】
【表6】
【0046】
EHT-SIG-B806はPPDUの受信に必要なCommon fieldやUser Block fieldのような情報を含んでいる。EHT-SIG-B806に含まれるCommon fieldやUser Block fieldを構成するサブフィールドとその説明をそれぞれ表7と表8に示す。
【0047】
【表7】
【0048】
【表8】
【0049】
EHT-SIG-B806は、全STA(ユーザ)に共通の情報であるCommon fieldと、通信するSTAの数分のUser Block fieldを含む。更に、User Block field内のUser fieldは、APがMU MIMO通信を行うか否かにより内容が異なる。表9はNon-MU MIMO通信する場合のUser fieldの説明を示し、表10はMU-MIMO通信する場合のUser fieldの説明を示す。
【0050】
【表9】
【0051】
【表10】
【0052】
本実施形態では、変調方式および当該変調方式がUC方式またはNUC方式のいずれであるかを示すUC/NUC情報を示す領域がEHT-SIG-Bに含まれる。例えば、表9および表10において、各STA宛てのデータフィールドにおけるデータの変調および符号化の処理に使用される変調方式および符号化率(すなわちMCSの値(レベル))は、4ビットのMCSサブフィールドで示される。MCSサブフィールドに示されるMCSの値と当該MCSの値に対応する変調方式および符号化率との対応の例は、表3に示すものと同じである。また、表8および表9において、UC方式またはNUC方式の変調方式を用いるかを示すUC/NUC情報が、1ビットのUC/NUCサブフィールドで示される。表2と同様に、例えば、UC/NUC情報は、UC方式の場合は0、NUC方式の場合は1で示される。また、表4と同様に、変調方式と符号化率とUC/NUC情報を含めて定義されたMCSを指定するためのサブフィールドが用意されてもよい。
【0053】
以上のようにして本発明で示すIEEE802.11 EHT規格で用いるPPDUであるEHT SU PPDU、EHT ER PPDU、EHT MU PPDUのフレーム構造を用いれば、UC方式に加え、NUC方式を用いたデータ伝送を行うことを通知できる。
【0054】
なお、図6は、IEEE802.11a/b/g/n/ax規格に対して後方互換性のあるフレーム構造を示したが、後方互換性を確保する必要がない場合には、L-STFおよびL-LTGのフィールドは省略されてもよい。その代わりに、EHT-STFがEHT-LTFが挿入されてもよい。
【0055】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0056】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0057】
102 AP(アクセスポイント)、103~105 STA(無線LAN端末)、201 無線LAN制御部、202 フレーム生成部、203 信号解析部、204 UI制御部、205 アンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10