(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】電子デバイス、表示装置、電子機器、及び照明装置
(51)【国際特許分類】
H10K 50/17 20230101AFI20241021BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20241021BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20241021BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20241021BHJP
H10K 59/38 20230101ALI20241021BHJP
H10K 59/40 20230101ALI20241021BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20241021BHJP
H10K 101/40 20230101ALN20241021BHJP
【FI】
H10K50/17
G09F9/30 365
H10K50/15
H10K59/10
H10K59/38
H10K59/40
H10K85/60
H10K101:40
(21)【出願番号】P 2023060839
(22)【出願日】2023-04-04
(62)【分割の表示】P 2019518597の分割
【原出願日】2018-05-11
【審査請求日】2023-05-01
(31)【優先権主張番号】P 2017100046
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017100049
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 剛吉
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 哲史
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-006405(JP,A)
【文献】特開2013-012698(JP,A)
【文献】特開2013-038395(JP,A)
【文献】特開2012-169613(JP,A)
【文献】特開2007-119457(JP,A)
【文献】特開2021-172665(JP,A)
【文献】特開2007-141736(JP,A)
【文献】特開2008-034701(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103682137(CN,A)
【文献】特開2019-114780(JP,A)
【文献】国際公開第2008/105294(WO,A1)
【文献】特開2007-242927(JP,A)
【文献】特開2016-072250(JP,A)
【文献】特開2005-220088(JP,A)
【文献】国際公開第2016/204275(WO,A1)
【文献】Daisuke YOKOYAMA et al.,“Horizontal molecular orientation in vacuum-deposited organic amorphous films of hole and electron transport materials”,Applied Physics Letters,2008年10月27日,Vol. 93, No. 17,DOI: 10.1063/1.2996258
【文献】Daisuke YOKOYAMA et al.,“Wide-Range Refractive Index Control of Organic Semiconductor Films Toward Advanced Optical Design of Organic Optoelectronic Devices”,Advanced Materials,2012年09月18日,Vol. 24, No. 47,p.6368-6373,DOI: 10.1002/adma.201202422
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/17
G09F 9/30
H10K 50/15
H10K 59/10
H10K 59/38
H10K 59/40
H10K 85/60
H10K 101/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、第2の電極と、第1の層と、第2の層と、第3の層と、を有し、
前記第1の層は、前記第1の電極と、前記第2の層と、の間に設けられ、
前記第2の層は、前記第1の層と、前記第3の層と、の間に設けられ、
前記第3の層は、前記第2の層と、前記第2の電極と、の間に設けられ、
前記第3の層は、光を発する機能または吸収する機能を有し、
前記第1の層は、第1の物質と、第1の有機化合物と、を有し、
前記第1の物質は、電子受容性を有し、
前記第1の有機化合物は、電子供与性を有し、
前記第1の有機化合物は、炭素数1乃至炭素数6のアルキル基、炭素数3乃至炭素数6のシクロアルキル基のいずれかを有し、
前記第1の有機化合物を薄膜とした際の屈折率は、異方性を有し、
前記第1の有機化合物を薄膜とした際の波長532nmの光における常光線の屈折率は、1以上1.75以下である、
(ただし、前記第1の有機化合物が
下記一般式(G1)で表されるフルオレン誘導体である場合及び前記第1の有機化合物が1,1-ビス-(4-ビス(4-メチル-フェニル)-アミノ-フェニル)-シクロヘキサン(略称:TAPC)である場合を除く)
電子デバイス。
【化1】
(式(G1)中、R
1
~R
8
は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基のいずれかを表す。また、α
1
~α
4
は、それぞれ独立に、置換又は無置換の炭素数6~12のアリーレン基のいずれかを表す。また、Ar
1
、Ar
2
は、それぞれ独立に、環を形成する炭素数が6~13のアリール基のいずれかを表し、Ar
3
は、炭素数1~6のアルキル基、又は置換もしくは無置換の炭素数6~12のアリール基を表す。J、k、m、nは、それぞれ独立に0または1である。ただしJおよびkの少なくともいずれかは1である。)
【請求項2】
第1の電極と、第2の電極と、第1の層と、第2の層と、第3の層と、を有し、
前記第1の層は、前記第1の電極と、前記第2の層と、の間に設けられ、
前記第2の層は、前記第1の層と、前記第3の層と、の間に設けられ、
前記第3の層は、前記第2の層と、前記第2の電極と、の間に設けられ、
前記第3の層は、光を発する機能または吸収する機能を有し、
前記第1の層は、第1の物質と、第1の有機化合物と、を有し、
前記第1の物質は、電子受容性を有し、
前記第1の有機化合物は、芳香族アミン骨格、ピロール骨格、およびチオフェン骨格の少なくとも一を有する有機化合物であり、
前記第1の有機化合物は、炭素数1乃至炭素数6のアルキル基、炭素数3乃至炭素数6のシクロアルキル基のいずれかを有し、
前記第1の有機化合物を薄膜とした際の屈折率は、異方性を有し、
前記第1の有機化合物を薄膜とした際の波長532nmの光における常光線の屈折率は、1以上1.75以下である、
(ただし、前記第1の有機化合物が
下記一般式(G1)で表されるフルオレン誘導体である場合及び前記第1の有機化合物が1,1-ビス-(4-ビス(4-メチル-フェニル)-アミノ-フェニル)-シクロヘキサン(略称:TAPC)である場合を除く)
電子デバイス。
【化2】
(式(G1)中、R
1
~R
8
は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基のいずれかを表す。また、α
1
~α
4
は、それぞれ独立に、置換又は無置換の炭素数6~12のアリーレン基のいずれかを表す。また、Ar
1
、Ar
2
は、それぞれ独立に、環を形成する炭素数が6~13のアリール基のいずれかを表し、Ar
3
は、炭素数1~6のアルキル基、又は置換もしくは無置換の炭素数6~12のアリール基を表す。J、k、m、nは、それぞれ独立に0または1である。ただしJおよびkの少なくともいずれかは1である。)
【請求項3】
第1の電極と、第2の電極と、第1の層と、第2の層と、第3の層と、を有し、
前記第1の層は、前記第1の電極と、前記第2の層と、の間に設けられ、
前記第2の層は、前記第1の層と、前記第3の層と、の間に設けられ、
前記第3の層は、前記第2の層と、前記第2の電極と、の間に設けられ、
前記第3の層は、光を発する機能または吸収する機能を有し、
前記第1の層は、第1の物質と、第1の有機化合物と、を有し、
前記第1の物質は、電子吸引基を有する化合物であり、
前記第1の有機化合物は、電子供与性を有し、
前記第1の有機化合物は、炭素数1乃至炭素数6のアルキル基、炭素数3乃至炭素数6のシクロアルキル基のいずれかを有し、
前記第1の有機化合物を薄膜とした際の屈折率は、異方性を有し、
前記第1の有機化合物を薄膜とした際の波長532nmの光における常光線の屈折率は、1以上1.75以下である、
(ただし、前記第1の有機化合物が
下記一般式(G1)で表されるフルオレン誘導体である場合及び前記第1の有機化合物が1,1-ビス-(4-ビス(4-メチル-フェニル)-アミノ-フェニル)-シクロヘキサン(略称:TAPC)である場合を除く)
電子デバイス。
【化3】
(式(G1)中、R
1
~R
8
は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基のいずれかを表す。また、α
1
~α
4
は、それぞれ独立に、置換又は無置換の炭素数6~12のアリーレン基のいずれかを表す。また、Ar
1
、Ar
2
は、それぞれ独立に、環を形成する炭素数が6~13のアリール基のいずれかを表し、Ar
3
は、炭素数1~6のアルキル基、又は置換もしくは無置換の炭素数6~12のアリール基を表す。J、k、m、nは、それぞれ独立に0または1である。ただしJおよびkの少なくともいずれかは1である。)
【請求項4】
第1の電極と、第2の電極と、第1の層と、第2の層と、第3の層と、を有し、
前記第1の層は、前記第1の電極と、前記第2の層と、の間に設けられ、
前記第2の層は、前記第1の層と、前記第3の層と、の間に設けられ、
前記第3の層は、前記第2の層と、前記第2の電極と、の間に設けられ、
前記第3の層は、光を発する機能または吸収する機能を有し、
前記第1の層は、第1の物質と、第1の有機化合物と、を有し、
前記第1の物質は、電子吸引基を有する化合物であり、
前記第1の有機化合物は、芳香族アミン骨格、ピロール骨格、およびチオフェン骨格の少なくとも一を有する有機化合物であり、
前記第1の有機化合物は、炭素数1乃至炭素数6のアルキル基、炭素数3乃至炭素数6のシクロアルキル基のいずれかを有し、
前記第1の有機化合物を薄膜とした際の屈折率は、異方性を有し、
前記第1の有機化合物を薄膜とした際の波長532nmの光における常光線の屈折率は、1以上1.75以下である、
(ただし、前記第1の有機化合物が
下記一般式(G1)で表されるフルオレン誘導体である場合及び前記第1の有機化合物が1,1-ビス-(4-ビス(4-メチル-フェニル)-アミノ-フェニル)-シクロヘキサン(略称:TAPC)である場合を除く)
電子デバイス。
【化4】
(式(G1)中、R
1
~R
8
は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基のいずれかを表す。また、α
1
~α
4
は、それぞれ独立に、置換又は無置換の炭素数6~12のアリーレン基のいずれかを表す。また、Ar
1
、Ar
2
は、それぞれ独立に、環を形成する炭素数が6~13のアリール基のいずれかを表し、Ar
3
は、炭素数1~6のアルキル基、又は置換もしくは無置換の炭素数6~12のアリール基を表す。J、k、m、nは、それぞれ独立に0または1である。ただしJおよびkの少なくともいずれかは1である。)
【請求項5】
第1の電極と、第2の電極と、第1の層と、第2の層と、第3の層と、を有し、
前記第1の層は、前記第1の電極と、前記第2の層と、の間に設けられ、
前記第2の層は、前記第1の層と、前記第3の層と、の間に設けられ、
前記第3の層は、前記第2の層と、前記第2の電極と、の間に設けられ、
前記第3の層は、光を発する機能または吸収する機能を有し、
前記第1の層は、第1の物質と、第1の有機化合物と、を有し、
前記第1の物質は、ハロゲン基またはシアノ基を有する化合物であり、
前記第1の有機化合物は、電子供与性を有し、
前記第1の有機化合物は、炭素数1乃至炭素数6のアルキル基、炭素数3乃至炭素数6のシクロアルキル基のいずれかを有し、
前記第1の有機化合物を薄膜とした際の屈折率は、異方性を有し、
前記第1の有機化合物を薄膜とした際の波長532nmの光における常光線の屈折率は、1以上1.75以下である、
(ただし、前記第1の有機化合物が
下記一般式(G1)で表されるフルオレン誘導体である場合及び前記第1の有機化合物が1,1-ビス-(4-ビス(4-メチル-フェニル)-アミノ-フェニル)-シクロヘキサン(略称:TAPC)である場合を除く)
電子デバイス。
【化5】
(式(G1)中、R
1
~R
8
は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基のいずれかを表す。また、α
1
~α
4
は、それぞれ独立に、置換又は無置換の炭素数6~12のアリーレン基のいずれかを表す。また、Ar
1
、Ar
2
は、それぞれ独立に、環を形成する炭素数が6~13のアリール基のいずれかを表し、Ar
3
は、炭素数1~6のアルキル基、又は置換もしくは無置換の炭素数6~12のアリール基を表す。J、k、m、nは、それぞれ独立に0または1である。ただしJおよびkの少なくともいずれかは1である。)
【請求項6】
第1の電極と、第2の電極と、第1の層と、第2の層と、第3の層と、を有し、
前記第1の層は、前記第1の電極と、前記第2の層と、の間に設けられ、
前記第2の層は、前記第1の層と、前記第3の層と、の間に設けられ、
前記第3の層は、前記第2の層と、前記第2の電極と、の間に設けられ、
前記第3の層は、光を発する機能または吸収する機能を有し、
前記第1の層は、第1の物質と、第1の有機化合物と、を有し、
前記第1の物質は、ハロゲン基またはシアノ基を有する化合物であり、
前記第1の有機化合物は、芳香族アミン骨格、ピロール骨格、およびチオフェン骨格の少なくとも一を有する有機化合物であり、
前記第1の有機化合物は、炭素数1乃至炭素数6のアルキル基、炭素数3乃至炭素数6のシクロアルキル基のいずれかを有し、
前記第1の有機化合物を薄膜とした際の屈折率は、異方性を有し、
前記第1の有機化合物を薄膜とした際の波長532nmの光における常光線の屈折率は、1以上1.75以下である、
(ただし、前記第1の有機化合物が
下記一般式(G1)で表されるフルオレン誘導体である場合及び前記第1の有機化合物が1,1-ビス-(4-ビス(4-メチル-フェニル)-アミノ-フェニル)-シクロヘキサン(略称:TAPC)である場合を除く)
電子デバイス。
【化6】
(式(G1)中、R
1
~R
8
は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、又は置換もしくは無置換のビフェニル基のいずれかを表す。また、α
1
~α
4
は、それぞれ独立に、置換又は無置換の炭素数6~12のアリーレン基のいずれかを表す。また、Ar
1
、Ar
2
は、それぞれ独立に、環を形成する炭素数が6~13のアリール基のいずれかを表し、Ar
3
は、炭素数1~6のアルキル基、又は置換もしくは無置換の炭素数6~12のアリール基を表す。J、k、m、nは、それぞれ独立に0または1である。ただしJおよびkの少なくともいずれかは1である。)
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一において、
前記第1の有機化合物は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基のいずれかを有する、電子デバイス。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか一において、
前記第1の有機化合物は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基のいずれかを有する、電子デバイス。
【請求項9】
請求項1乃至請求項
8のいずれか一項において、
前記第2の層は、第2の有機化合物を有し、
前記第1の有機化合物を薄膜とした際の波長532nmの光における常光線の屈折率は、前記第2の有機化合物を薄膜とした際の波長532nmの光における常光線の屈折率よりも低い、電子デバイス。
【請求項10】
請求項1乃至請求項
9のいずれか一項において、
前記第1の有機化合物を薄膜とした際の波長532nmの光における常光線の屈折率は、前記第1の電極と同じ材料を薄膜とした際の波長532nmの光における常光線の屈折率よりも低い、電子デバイス。
【請求項11】
請求項1乃至請求項
10のいずれか一項において、
前記第1の層は、前記第1の電極と接する、電子デバイス。
【請求項12】
請求項1乃至請求項
11のいずれか一項において、
前記第1の層は、前記第2の層と接する、電子デバイス。
【請求項13】
請求項1乃至請求項
12のいずれか一項において、
前記第1の有機化合物に対して、前記第1の物質の体積比率は、0.01以上0.3以下である、電子デバイス。
【請求項14】
請求項1乃至請求項
13のいずれか一項において、
前記第1の電極は陽極であり、前記第2の電極が陰極である、電子デバイス。
【請求項15】
請求項1乃至請求項
14のいずれか一項に記載の電子デバイスと、
カラーフィルタまたはトランジスタの少なくとも一方と、
を有する表示装置。
【請求項16】
請求項
15に記載の表示装置と、
筐体またはタッチセンサの少なくとも一方と、
を有する電子機器。
【請求項17】
請求項1乃至請求項
14のいずれか一項に記載の電子デバイスと、
筐体またはタッチセンサの少なくとも一方と、
を有する照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、新規な電子デバイスに関する。または、屈折率が低い有機化合物を用いた電子デバイスに関する。または該電子デバイスを有する発光装置、電子機器、及び照明装置に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本発明の一態様は物、方法、または、製造方法に関する。または、本発明は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。特に、本発明の一態様は、電子デバイス、半導体装置、発光装置、表示装置、照明装置、発光素子、それらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
有機化合物を用いたエレクトロルミネッセンス(EL:Electroluminescence)を利用する発光素子(有機EL素子)や有機太陽電池などの電子デバイスの実用化が進んでいる。これら電子デバイスの基本的な構成は、一対の電極間に有機化合物を含む半導体層を挟んだものである。
【0004】
このような電子デバイスは軽量、フレキシブルで意匠性が高い。塗布プロセスが可能等、様々な利点があるため、研究開発が盛んに進められている。特に、発光素子は自発光型であるため、ディスプレイの画素として用いると、視認性が高く、バックライトが不要である等の利点があり、フラットパネルディスプレイ素子として好適である。
【0005】
このような電子デバイスは主として有機化合物を薄膜化した有機半導体層が形成され、有機化合物及び層構造が有機半導体素子に大きな影響を与えることから、有機化合物及び層構造の選択が重要である。さらに、有機太陽電池や有機EL素子のように、光を発するまたは吸収する電子デバイスにおいては、光取出し効率や光閉じ込め効果が高い構造が重要である。
【0006】
有機EL素子の光取出し効率向上には様々な方法が提案されている。例えば、特許文献1には電極やEL層の一部に凹凸形状を作製することで、光取出し効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
有機EL素子のような発光素子においては、光取出し効率を向上させる方法として、基板と電極の間及び/または電極とEL層の間の屈折率をする調節する方法がある。しかし、有機EL素子に屈折率を調節する層を導入する場合、プロセスが複雑になる問題がある。そこで、EL層の機能を有しつつ、屈折率を制御できる層及び層構造の開発が求められている。また、有機太陽電池においても、光閉じ込め効果が高い層及び層構造の開発が求められている。
【0009】
上述した課題に鑑み、本発明の一態様は光取出し効率が高い電子デバイスを提供することを課題とする。または、本発明の一態様では、屈折率が低い層を含む電子デバイスを提供すること課題とする。または、本発明の一態様では、駆動電圧が低い電子デバイスを提供することを課題とする。または、本発明の一態様では、消費電力が低減された電子デバイスを提供することを課題とする。または、本発明の一態様では、信頼性の高い電子デバイスを提供することを課題とする。また、本発明の一態様では、発光効率が高い電子デバイスを提供することを課題とする。または、本発明の一態様では、新規な電子デバイスを提供することを課題とする。または、本発明の一態様では、光閉じ込め効果が高い電子デバイスを提供することを課題とする。または、本発明の一態様では、新規な半導体装置を提供することを課題とする。
【0010】
なお、上記の課題の記載は、他の課題の存在を妨げない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はない。上記以外の課題は、明細書等の記載から自ずと明らかであり、明細書等の記載から上記以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、第1の電極と第2の電極の間に、第1の層及び第2の層を有し、第1の電極と第2の層の間に、第1の層を有し、第1の層は第1の有機化合物と第1の物質を有し、第1の有機化合物の薄膜の屈折率は1以上1.75以下であり、第1の物質は電子受容性を有し、第2の層は光を発するまたは吸収する機能を有する、電子デバイスである。
【0012】
また、本発明の別の一態様は、第1の電極と第2の電極の間に、第1の層を有し、第1の層は第1の有機化合物及び第1の物質を有し、第1の有機化合物は第1の骨格と電子供与性骨格を有し、第1の骨格はテトラアリールメタン骨格またはテトラアリールシラン骨格である、電子デバイスである。
【0013】
上記構成において、第1の層の屈折率は1以上1.75以下であると好ましい。該構成とすることで、電子デバイスの光取出し効率や光閉じ込め効果を向上させることができる。
【0014】
また、上記構成において、テトラアリールメタン骨格及びテトラアリールシラン骨格が有するアリール基はそれぞれ独立に置換又は無置換の炭素数6乃至13のアリール基であると好ましい。また該アリール基が置換又は無置換のフェニル基であるとより好ましい。該構成とすることで、屈折率が低く、キャリア輸送性が良好な有機化合物を得ることができる。なお、該アリール基またはフェニル基どうしは互いに結合し、環を形成しても良い。
【0015】
また、上記構成において、電子供与性骨格はピロール骨格、芳香族アミン骨格、アクリジン骨格及びアゼピン骨格のうち、いずれか一を含むと好ましい。該構成とすることで、電子デバイスの駆動電圧を低減することができる。
【0016】
また、上記構成において、第1の有機化合物のガラス転移点(Tg)が100℃以上であると好ましい。該構成とすることで、耐熱性に優れた電子デバイスを得ることができる。
【0017】
また、上記構成において、第1の層の屈折率は第2の層の屈折率よりも低いと好ましい。該構成とすることで、電子デバイスの光取出し効率や光閉じ込め効果を向上させることができる。
【0018】
また、本発明の別の一態様は、第1の電極と第2の電極の間に、第1の層、第2の層及び第3の層を有し、第1の電極と第2の層の間に、第1の層を有し、第1の層と第3の層の間に第2の層を有し、第1の層は第1の有機化合物と第1の物質を有し、第1の有機化合物の薄膜の屈折率は1以上1.75以下であり、第1の物質は電子受容性を有し、第3の層は光を発するまたは吸収する機能を有し、第1の層の屈折率は第2の層の屈折率より低く、第1の層の屈折率は第3の層の屈折率よりも低い、電子デバイスである。
【0019】
また、上記構成において、第1の有機化合物は電子供与性を有すると好ましい。該構成とすることで、キャリア輸送性が良好な電子デバイスを得ることができる。
【0020】
また、上記構成において、第1の層と第2の層が接すると好ましく、第2の層と第3の層が接するとさらに好ましい。該構成とすることで、各層の屈折率段差を抑制することができ、電子デバイスの光取出し効率や光閉じ込め効果を向上させることができる。
【0021】
また、上記構成において、第1の層の屈折率は第1の電極の屈折率より低いと好ましい。該構成とすることで、電子デバイスの光取出し効率や光閉じ込め効果を向上させることができる。
【0022】
また、上記構成において、第1の層において、第1の物質の体積比率が第1の有機化合物に対して、0.01以上0.3以下であると好ましい。該構成とすることで、電子デバイスの光取出し効率や光閉じ込め効果を向上させることができる。
【0023】
また、上記構成において、第1の物質がチタン酸化物、バナジウム酸化物、タンタル酸化物、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、銀酸化物のいずれか一を含むと好ましい。該構成とすることで、キャリア輸送性が良好な電子デバイスを得ることができる。
【0024】
また、上記構成において、第1の物質が7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(略称:TCNQ)、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロ-キノジメタン(略称:F4TCNQ)及び1,3,4,5,7,8-ヘキサフルオロテトラシアノ-ナフトキノジメタン(略称:F6TCNNQ)のいずれか一であると好ましい。該構成とすることで、キャリア輸送性が良好な電子デバイスを得ることができる。
【0025】
また、上記構成において、電子デバイスが有機EL素子または太陽電池であると好ましい。
【0026】
また、本発明の他の一態様は、上記構成の発光素子と、筐体またはタッチセンサの少なくとも一と、を有する電子機器である。また、本発明の他の一態様は、上記各構成の電子デバイスと、筐体、接続端子または保護カバーの少なくとも一と、を有する照明装置である。また、本発明の一態様は、電子デバイスを有する発光装置だけでなく、発光装置を有する電子機器も範疇に含める。従って、本明細書中における発光装置とは、画像表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、発光素子にコネクター、例えばFPC(Flexible Printed Circuit)、TCP(Tape Carrier Package)が取り付けられた表示モジュール、TCPの先にプリント配線板が設けられた表示モジュール、または電子デバイスにCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装された表示モジュールも本発明の一態様である。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様によって光取出し効率が高い電子デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様によって、屈折率が低い層を含む電子デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様によって、駆動電圧が低い電子デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様によって、消費電力が低減された電子デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様によって、信頼性の高い電子デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様によって、発光効率が高い電子デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様によって、新規な電子デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様によって光閉じ込め効果が高い電子デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様によって、新規な半導体装置を提供することができる。
【0028】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一態様の電子デバイスの断面模式図。
【
図2】本発明の一態様の発光素子の断面模式図と光路長を説明する図。
【
図3】本発明の一態様の発光素子の断面模式図、及び発光層に係るエネルギー準位の相関を説明する図。
【
図4】本発明の一態様の発光素子の断面模式図、及び発光層に係るエネルギー準位の相関を説明する図。
【
図5】本発明の一態様に係る、アクティブマトリクス型発光装置の概念図。
【
図6】本発明の一態様に係る、アクティブマトリクス型発光装置の概念図。
【
図7】本発明の一態様に係る、アクティブマトリクス型発光装置の概念図。
【
図10】本発明の一態様に係る、照明装置を表す図。
【
図11】本発明の一態様に係る、照明装置を表す図。
【
図13】実施例に係る、発光素子の電流効率-輝度特性を説明する図。
【
図14】実施例に係る、発光素子の電流密度-電圧特性を説明する図。
【
図15】実施例に係る、発光素子の外部量子効率-輝度特性を説明する図。
【
図16】実施例に係る、発光スペクトルを説明する図。
【
図17】実施例に係る、発光素子の外部量子効率-色度x特性を説明する図。
【
図18】実施例に係る、外部量子効率とMoO
3の体積比率の関係を説明する図。
【
図20】実施例に係る、発光素子の電流効率-輝度特性を説明する図。
【
図21】実施例に係る、発光素子の電流密度-電圧特性を説明する図。
【
図22】実施例に係る、発光素子の外部量子効率-輝度特性を説明する図。
【
図23】実施例に係る、発光スペクトルを説明する図。
【
図24】実施例に係る、発光素子の外部量子効率-色度x特性を説明する図。
【
図26】実施例に係る、発光素子の電流効率-輝度特性を説明する図。
【
図27】実施例に係る、発光素子の電流密度-電圧特性を説明する図。
【
図28】実施例に係る、発光素子の外部量子効率-輝度特性を説明する図。
【
図29】実施例に係る、発光スペクトルを説明する図。
【
図30】実施例に係る、信頼性試験結果を説明する図。
【
図31】実施例に係る、発光素子の外部量子効率-色度x特性を説明する図。
【
図32】実施例に係る、発光素子の外部量子効率-色度y特性を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることが可能である。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されない。
【0031】
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0032】
また、本明細書等において、第1、第2等として付される序数詞は便宜上用いており、工程順又は積層順を示さない場合がある。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」又は「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明細書等に記載されている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場合がある。
【0033】
また、本明細書等において、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる場合がある。
【0034】
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0035】
また、屈折率nには、常光線の屈折率であるn Ordinaryと異常光線の屈折率であるn Extraordinaryと、両者の平均値であるn averageがある。本明細書等で単に「屈折率」と記載した場合、異方性解析を行わなかった場合はn averageと、異方性解析を行った場合はn Ordinaryと読み替えても構わない。また、異方性とは、n Ordinaryとn Extraordinaryとの差で表される。尚、n Ordinaryの値を2倍した値と、n Extraordinaryの値の和を3で割った値がn averageである。
【0036】
なお、本明細書等において、室温とは、0℃以上40℃以下の範囲の温度をいう。
【0037】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の電子デバイスについて、
図1を用いて以下説明する。
【0038】
<電子デバイスの構成例1>
電子デバイス50は、一対の基板(基板10及び基板15)間に一対の電極(電極11及び電極12)と有機半導体層20を有する。有機半導体層20は少なくとも、キャリア輸送層30と機能層40を有する。なお、有機半導体層20は機能層を複数有していても良い。
【0039】
電子デバイス50の機能層40は光を吸収または発する機能を有すると好ましい。電極11側から機能層40で生じた光が取り出される場合、基板10を通過した光は電極11及びキャリア輸送層30を通過することになる。または、電極11側から有機半導体層20に進入した光が機能層40に吸収される場合、基板10を通過した光は電極11及びキャリア輸送層30を通過することになる。機能層40で生じた光が効率良く取り出されるまたは、機能層40に効率良く光が吸収されるためには、電極11及びキャリア輸送層30において減衰する光が少ない方が好ましい。
【0040】
しかし、電子デバイス50においては、エバネッセントモードと呼ばれる減衰モードによって、有機半導体層20中で光が減衰することが知られている。例えば、機能層40で発光が生じる場合は、機能層40で発生した光が、電極11を通過または反射する際に、エバネッセントモードによって減衰する。
【0041】
ここで、光が通過する層に、屈折率が低い層が存在すると減衰する光が減少することが知られている。
図1においては、キャリア輸送層30に屈折率が低い層を用いることで、減衰する光を抑制することができる。
【0042】
しかし、多くの場合、キャリア輸送層30はキャリア輸送性もしくはキャリア注入特性が求められる。そのため、キャリア輸送層30はキャリア受容性またはキャリア供与性の物質を用いる。該キャリア受容性またはキャリア供与性の物質は屈折率が高い材料が多いため、キャリア輸送層30は屈折率が高くなってしまう。つまり、キャリア輸送性を有しつつ、屈折率が低い層を得ることは困難であった。また、キャリア受容性またはキャリア供与性の物質が有機化合物である場合、該有機化合物の構造中にシクロヘキサン骨格のような飽和環式化合物を有すると屈折率が低下することが知られているが、耐熱性に問題があった。
【0043】
ここで本発明者らは、屈折率が低い有機化合物をキャリア輸送層30に混合することによって、屈折率の高い電子受容性を有する物質を用いても、キャリア輸送性を有しつつ屈折率が低い層を作製できることを見出した。さらに、テトラアリールメタン骨格またはテトラアリールシラン骨格のどちらか一方及び、電子供与性基を有する有機化合物をキャリア輸送層30に混合することによって、屈折率の高い電子受容性を有する物質を用いても、キャリア輸送性を有しつつ屈折率が低い層を作製できることを見出した。加えて該有機化合物は耐熱性にも優れていることを見出した。
【0044】
上記屈折率が低い有機化合物の屈折率は1以上1.75以下であると好ましく、より好ましくは1以上1.73以下、さらに好ましくは1.70以下である。該構成とすることで、減衰する光が低減された良好な電子デバイスを得ることができる。
【0045】
上記テトラアリールメタン骨格またはテトラアリールシラン骨格のどちらか一方及び、電子供与性基を有する有機化合物の屈折率は1以上1.75以下であると好ましく、より好ましくは1以上1.73以下、さらに好ましくは1.70以下である。該構成とすることで、減衰する光が低減された光取出し効率が良好な電子デバイスを得ることができる。
【0046】
<電子デバイスの構成例2>
以下では、本発明の一態様の電子デバイスの一例である発光素子について、
図2を用いて以下説明する。
【0047】
図2(A)は、本発明の一態様の発光素子150の断面模式図である。
【0048】
発光素子150は、基板200及び基板210を有し、基板200及び基板210の間に、一対の電極(電極101及び電極102)を有し、該一対の電極間に設けられたEL層100を有する。EL層100は、少なくとも発光層130を有する。
【0049】
また、
図2(A)に示すEL層100は、発光層130の他に、正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送層118、及び電子注入層119等の機能層を有する。
【0050】
なお、本実施の形態においては、一対の電極のうち、電極101を陽極として、電極102を陰極として説明するが、発光素子150の構成としては、その限りではない。つまり、電極101を陰極とし、電極102を陽極とし、当該電極間の各層の積層を、逆の順番にしてもよい。すなわち、陽極側から、正孔注入層111と、正孔輸送層112と、発光層130と、電子輸送層118と、電子注入層119と、が積層する順番とすればよい。
【0051】
また、本実施の形態では、
図2(A)において、電極101(陽極)側を光取出し側として説明するが、発光素子150の構成としては、その限りではない。つまり、光取出し側を電極102(陰極)側にしてもよく、また、電極101、電極102双方から光を取り出しても構わない。
【0052】
なお、EL層100の構成は、
図2(A)に示す構成に限定されず、少なくとも発光層130を有し、正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送層118、及び電子注入層119はそれぞれ有していても、有していなくても良い。また、EL層100は、正孔または電子の注入障壁を低減する、正孔または電子の輸送性を向上する、正孔または電子の輸送性を阻害する、または電極による消光現象を抑制する、励起子拡散を抑制する、ことができる等の機能を有する機能層を有する構成としてもよい。なお、機能層はそれぞれ単層であっても、複数の層が積層された構成であってもよい。
【0053】
図2(B)は、
図2(A)に示す発光層130の一例を示す断面模式図である。
図2(B)に示す発光層130は、ゲスト材料131と、ホスト材料132と、を有しても良い。
【0054】
発光素子150から効率良く発光を得るためには、発光素子150の光取出し効率が高いことが好ましい。しかし、上述のように有機EL素子はエバネッセントモードと呼ばれる減衰モードによって、光取出し効率が減少することが知られている。例えば、発光素子150においては、発光層130で発生した光が、電極101を通過または反射する際に、エバネッセントモードによって減衰する。
【0055】
エバネッセントモードによる光の減衰を低減させるためには、発光層130と電極101との間の層、例えば正孔注入層111や正孔輸送層112の膜厚を厚くする方法があるが、該構成とした場合、駆動電圧が上昇する場合や、製造コストが高騰する等の問題がある。
【0056】
ここで、発光素子150においては、発光層130で生じた光が外部へ取り出されるが、発光層130で生じた光が基板200を通過するまでに、屈折率が低い層が存在すると光取出し効率が向上することが知られている。
【0057】
発光層130で生じた光が外部へ取り出されるまでに、正孔注入層111と、正孔輸送層112、電極101及び基板200を通過する。そのため、正孔注入層111または正孔輸送層112の屈折率は低いことが好ましい。特に電極101と接する正孔注入層111の屈折率が低いことが好ましい。
【0058】
しかし、多くの場合、正孔注入層111には正孔注入特性を得るために、電子受容性を有する物質を、電子供与性を有する有機化合物と混合する。該電子受容性を有する物質は屈折率が高い材料が多いため、正孔注入層111は屈折率が高くなってしまう。つまり、正孔注入性を有しつつ、屈折率が低い層を得ることは困難であった。また、電子受容性または電子供与性の物質が有機化合物である場合、該有機化合物の構造中にシクロヘキサン骨格のような飽和環式化合物を有すると屈折率が低下することが知られているが、耐熱性に問題があった。
【0059】
ここで本発明者らは、屈折率が低い有機化合物を正孔注入層111に用いることによって、屈折率の高い電子受容性を有する物質を用いても、正孔注入特性を有しつつ屈折率が低い層を作製できることを見出した。さらに、本発明者らは、テトラアリールメタン骨格またはテトラアリールシラン骨格のうち少なくともどちらか一方及び、電子供与性基を有する有機化合物を正孔注入層111に混合することによって、屈折率の高い電子受容性を有する物質を用いても、キャリア輸送性を有しつつ屈折率が低い層を作製できることを見出した。さらに該有機化合物は耐熱性にも優れていることを見出した。該有機化合物のガラス転移点(Tg)は100℃以上であると好ましい。
【0060】
上記屈折率が低い有機化合物の屈折率は1以上1.75以下であると好ましく、より好ましくは1以上1.73以下、さらに好ましくは1.70以下である。該構成とすることで、光取出し効率が良好な発光素子を得ることができる。
【0061】
上記テトラアリールメタン骨格またはテトラアリールシラン骨格のどちらか一方及び、電子供与性基を有する有機化合物は屈折率が1以上1.75以下であると好ましく、より好ましくは1以上1.73以下、さらに好ましくは1.70以下である。該構成とすることで、光取出し効率が良好な発光素子を得ることができる。
【0062】
上述のように、発光層130と基板200の間に屈折率が低い層が存在すると光取出し効率が向上するが、正孔注入層111、正孔輸送層112に加えて屈折率が低い層を導入すると、作製する層数が増加するため発光素子の作製プロセスが煩雑になってしまう。しかし、本発明の一態様においては、屈折率が低くかつ、正孔注入特性を有する層を作製することができるため、従来の作製プロセスを用いて、すなわち、作製する層数を維持しつつ、発光素子の光取出し効率を向上させることができる。
【0063】
同様に、本発明の一態様においては、テトラアリールメタン骨格またはテトラアリールシラン骨格のどちらか一方及び、電子供与性基を有する有機化合物を用いることによって、屈折率が低くかつ、正孔注入特性を有する層を作製することができるため、従来の作製プロセスを用いて、すなわち、作製する層数を増加させることなく、発光素子の光取出し効率を向上させることができる。
【0064】
また、本発明の一態様は陽極と陰極間のEL層に関する。そのため、基板に凹凸を形成する等他の光取出し向上技術と組み合わせることができる。
【0065】
また、本発明の一態様は屈折率が低い有機化合物に、電子供与性を有する有機化合物を用いることが好ましい。当該構成にすることによって、正孔注入層111の屈折率を低下させつつ、正孔注入特性を高めることができるため、良好な光取出し効率を有しつつ、駆動電圧が低い発光素子を提供することができる。該有機化合物がテトラアリールメタン骨格またはテトラアリールシラン骨格を有するとさらに好ましい。
【0066】
また正孔注入層111の屈折率は、発光層130の屈折率よりも低いと好ましい。該構成とすることで、発光層130からの発光のエバネッセント波による減衰を低減することができる。また、正孔注入層111の屈折率は、正孔輸送層112の屈折率よりも低く、正孔輸送層112の屈折率は発光層130の屈折率よりも低いとより好ましい。該構成とすることで発光層130と正孔注入層111との屈折率段差を低減することができるため、さらに光取出し効率を向上させることができる。
【0067】
また、EL層の導波モードを抑制するためには、発光層130で発生した光が通過する層数が少ない方が好ましい。そのため、発光層130が電極101に接していることが光取出し効率を考慮すると好ましい構成となるが、該構成とすると、キャリアバランスの影響やプラズモン効果の影響により発光層130の発光効率が低下する場合がある。そこで、正孔注入層111及び正孔輸送層112は、EL層を効率良く機能させる上で必要な層である。そのため、正孔注入層111と正孔輸送層112は接していると好ましく、正孔輸送層112と発光層130が接しているとさらに好ましい。
【0068】
また、正孔注入層111の屈折率は電極101の屈折率より低いと好ましい。該構成とすることで、正孔注入層111の屈折率n HILと電極101の屈折率n cat.の関係がn cat./n HIL>1となるため、正孔注入層111から電極101へ光が通過する時の全反射を抑制することができる。すなわち、導波モードを抑制することができる。また、反射により生じるエバネッセントモードによる光の減衰も抑制することができる。
【0069】
また、正孔注入層111の屈折率は1以上1.80以下であると好ましい。より好ましくは、1以上1.78以下、より好ましくは1以上1.75以下である。該構成とすることで、良好な光取出し効率を得ることができる。
【0070】
また、正孔注入層111においては電子供与性を有する有機化合物と電子受容性を有する物質を混合することが好ましい。該構成とすることで、良好な正孔注入特性を得ることができる。
【0071】
ここで、上述の有機化合物と電子受容性を有する物質との混合比は、該電子受容性を有する物質の体積比率が該有機化合物に対して0.01以上0.3以下であると好ましい。該構成とすることで、電子受容性を有する物質に屈折率が高い物質を用いても、該有機化合物に屈折率が低い有機化合物を用いることによって、屈折率の低い正孔注入層111を作製できることを本発明者らは見出した。
【0072】
上述のエバネッセント波による光の減衰は電子デバイスに入射した光についても起こり得る。例えば、本発明の一態様に係る電子デバイスを太陽電池に適用した場合、エバネッセント波による光の減衰を抑制することができるため、該太陽電池の光閉じ込め効果を向上させることができる。よって、本発明の一態様に係る電子デバイスは太陽電池に好適に用いることができる。この場合、
図1に示す電子デバイス50における、機能層40は活性層、光吸収層または光発電層と読み替えて構わない。
【0073】
<正孔注入層111に用いる有機化合物>
ここで、正孔注入層111に好適に用いることができる有機化合物について説明する。
【0074】
正孔注入層111には屈折率が小さい有機化合物を用いることが好ましい。ここで、高分子の屈折率は以下に示すLorentz-Lorenz式(数式(1))で表される。
【0075】
【0076】
数式(1)を変形することで数式(2)が得られる。
【0077】
【0078】
数式(1)、数式(2)中、nは屈折率、αは分極率、Nは単位体積中の分子数、ρは密度、NAはアボガドロ数、Mは分子量、V0はモル体積、[R]は原子屈折を表す。
【0079】
数式(2)より屈折率nを小さくするためには、φを小さくすれば良く、数式(1)よりφを小さくするためには、原子屈折[R]を小さくすれば良い。すなわち、屈折率nを小さくするためには、原子屈折[R]が小さくなるような有機化合物を選択すればよい。
【0080】
上述の式は高分子における式であるため、低分子化合物に適用した場合、算出される値に多少のズレが生じることが予想されるが、概ね傾向は同様であると考えられるため、正孔注入層111に用いる有機化合物は、原子屈折[R]が小さくなるような有機化合物を選択することが好ましい。さらに正孔注入層111は正孔注入特性を有すると好ましい。そのため、正孔注入層111に用いる有機化合物はさらに、芳香族化合物のように分子中にπ共役を有し、かつ電子供与性を有するとより好ましい。このような有機化合物を選択することで、屈折率が低く、正孔注入特性に優れた正孔注入層111を作製することができる。
【0081】
原子屈折[R]はフルオロ基やトリフルオロメチル基等のフッ素を含む置換基や、シクロヘキシル基や、芳香環を介する結合にsp3混成軌道に代表される、芳香環間の共役が切れている構造を有すると小さくなる傾向にある。また、非交互炭化水素を有する有機化合物は分子全体に共役系が拡がっていないため、原子屈折[R]が小さい傾向にある。そのため、正孔注入層111に用いる有機化合物には、上記置換基や結合を有する有機化合物が好ましい。
【0082】
正孔注入層111に用いる有機化合物には、芳香族アミン骨格、ピロール骨格、チオフェン骨格を有する有機化合物や、メチル基やt-ブチル基、イソプロピル基のような嵩高い置換基を有する芳香環を有する有機化合物も好適に用いることができる。該有機化合物は分子中にπ共役系を有し、さらに屈折率が低い傾向にある。
【0083】
上述の芳香環を介する結合に、芳香環間の共役が切れている構造の一例としては下記一般式(100)で表されるテトラアリールメタン骨格、一般式(101)で表されるテトラアリールシラン骨格またはシクロヘキシル骨格があげられる。テトラアリールメタン骨格やテトラアリールシラン骨格は屈折率が低く、シクロヘキシル骨格と比較し耐熱性も良好であるため、正孔注入層111に好適に用いることができる。また、真空蒸着によって簡便に薄膜を形成することができるため、有機EL等の電子デバイスに好適に用いることができる。
【0084】
【0085】
また、正孔注入層111に用いる有機化合物は電子供与性を有すると好ましい。電子供与性を有する骨格としては例えば、下記一般式(200)乃至(220)に示す芳香族アミン骨格やπ電子過剰型複素芳香環骨格が挙げられる。一般式(210)乃至(213)中のXは酸素または硫黄を表す。
【0086】
【0087】
上述した芳香族アミン骨格(具体的には例えばトリアリールアミン骨格)、π電子過剰型複素芳香環骨格(具体的には例えばフラン骨格、チオフェン骨格、ピロール骨格、アゼピン骨格またはアクリジン骨格を有する環)は、置換基を有していてもよい。当該置換基としては、炭素数1乃至炭素数6のアルキル基、炭素数3乃至炭素数6のシクロアルキル基、または炭素数6乃至炭素数12の置換もしくは無置換のアリール基も選択することができる。炭素数1乃至炭素数6のアルキル基としては具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基などを挙げることができる。また、炭素数3乃至炭素数6のシクロアルキル基としては具体的には、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。また、炭素数6乃至炭素数12のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などを具体例として挙げることができる。また、上記置換基は互いに結合して環を形成してもよい。このような例としては、例えば、フルオレン骨格における9位の炭素が置換基としてフェニル基を二つ有する場合、当該フェニル基同士が結合することによって、スピロフルオレン骨格を形成するような場合が挙げられる。なお、無置換の場合、合成の容易さや原料の価格の面で有利である。
【0088】
上記、電子供与性を有する骨格は上述のように芳香族アミン骨格、ピロール骨格、アゼピン骨格等の奇数員環骨格、アクリジン骨格であると好ましい。これらの骨格は電子供与性が良好であり、原子屈折[R]も低いため、これらの骨格を分子中に有することで、電子供与性に優れた、屈折率の低い有機化合物を得ることができる。
【0089】
また、Ar1乃至Ar8はそれぞれ独立に、炭素数6乃至炭素数13のアリール基または、上述の一般式(200)乃至(220)で表される芳香族アミン骨格またはπ電子過剰複素芳香族骨格を表す。該アリール基は置換基を有していてもよく、該置換基は互いに結合して環を形成してもよい。このような例としては、例えば、フルオレニル基の9位の炭素が置換基としてフェニル基を二つ有し、当該フェニル基同士が結合することによって、スピロフルオレン骨格を形成するような場合が挙げられる。炭素数6乃至炭素数13のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフタレニル基、フルオレニル基などを具体例として挙げることができる。なお、該アリール基が置換基を有する場合、当該置換基としては、炭素数1乃至炭素数6のアルキル基、炭素数3乃至炭素数6のシクロアルキル基、または炭素数6乃至炭素数12のアリール基も選択することができる。炭素数1乃至炭素数6のアルキル基としては具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基などを挙げることができる。また、炭素数3乃至炭素数6のシクロアルキル基としては具体的には、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。また、炭素数6乃至炭素数12のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、などを具体例として挙げることができる。
【0090】
また、Ar1乃至Ar8で表されるアリール基は、例えば、下記構造式で表される基を適用することができる。なお、アリール基として用いることのできる基はこれらに限られない。
【0091】
【0092】
また、Ar1乃至Ar8がアリール基である場合、該アリール基は置換または無置換の炭素数6乃至炭素数13のアリール基のように、比較的π共役系の広がりが小さい置換基であると好ましく、置換または無置換のフェニル基であるとより好ましい。π共役系が小さい置換基は原子屈折[R]が小さい傾向がある。一方、アルケン等π共役系が小さい有機化合物では、キャリア輸送性が乏しいため、電子デバイスに不向きである。そのため、炭素数6乃至炭素数13のアリール基、特にフェニル基のような、キャリア輸送性を有し、π共役系が小さい有機化合物が正孔注入層111に用いる有機化合物として好ましい。また、奇数員環の置換基は原子屈折[R]が小さいため好ましい。
【0093】
また、一般式(200)乃至(220)中、R1乃至R11は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至炭素数6のアルキル基、炭素数3乃至炭素数6のシクロアルキル基、または炭素数6乃至炭素数13の置換もしくは無置換のアリール基のいずれかを表す。炭素数1乃至炭素数6のアルキル基としては具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基などを挙げることができる。また、炭素数3乃至炭素数6のシクロアルキル基、としては具体的には、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。また、炭素数6乃至炭素数13のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基などを具体例として挙げることができる。さらに、上述したアリール基やフェニル基は置換基を有していてもよく、該置換基は互いに結合して環を形成してもよい。当該置換基としては、炭素数1乃至炭素数6のアルキル基、炭素数3乃至炭素数6のシクロアルキル基、または炭素数6乃至炭素数12のアリール基も選択することができる。炭素数1乃至炭素数6のアルキル基としては具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基などを挙げることができる。また、炭素数3乃至炭素数6のシクロアルキル基としては具体的には、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。また、炭素数6乃至炭素数12のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などを具体例として挙げることができる。
【0094】
また、R1乃至R11で表される水素、アルキル基またはアリール基は、例えば、下記構造式(R-1)乃至(R-27)で表される基を適用することができる。なお、アルキル基またはアリール基として用いることのできる基はこれらに限られない。
【0095】
【0096】
また、一般式(200)乃至(220)中、Ar9乃至Ar13は、炭素数6乃至炭素数13のアリーレン基を表し、該アリーレン基は置換基を有していてもよく、該置換基は互いに結合して環を形成してもよい。このような例としては、例えば、フルオレニル基の9位の炭素が置換基としてフェニル基を二つ有し、当該フェニル基同士が結合することによって、スピロフルオレン骨格を形成するような場合が挙げられる。炭素数6乃至炭素数13のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフタレンジイル基、ビフェニレン基、フルオレンジイル基などを具体例として挙げることができる。なお、該アリーレン基が置換基を有する場合、当該置換基としては、炭素数1乃至炭素数6のアルキル基、炭素数3乃至炭素数6のシクロアルキル基、または炭素数6乃至炭素数12のアリール基も選択することができる。炭素数1乃至炭素数6のアルキル基としては具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基などを挙げることができる。また、炭素数3乃至炭素数6のシクロアルキル基としては具体的には、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。また、炭素数6乃至炭素数12のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などを具体例として挙げることができる。
【0097】
また、Ar9乃至Ar13で表されるアリーレン基は、例えば、下記構造式(Ar-12)乃至(Ar-25)で表される基を適用することができる。なお、Ar9乃至Ar13として用いることのできる基はこれらに限られない。
【0098】
【0099】
上述のように、正孔注入層111に用いる有機化合物はテトラアリールメタン骨格またはテトラアリールシラン骨格及び電子供与性を有する有機化合物であると好ましい。該有機化合物の一例としては、9-(4-t-ブチルフェニル)-3,4-ジトリチル-9H-カルバゾール(略称:CzC)、9-(4-t-ブチルフェニル)-3,4-ジトリフェニルシリル-9H-カルバゾール(略称:CzSi)、4,4,8,8,-12,12-ヘキサ-p-トルイル-4H-8H-12H-12C-アザ-ジベンゾ[cd,mn]ピレン(略称:FATPA)、4,4’-ビス(ジベンゾ-アゼピン-1-イル)-ビフェニル(略称:BazBP)、4,4’-ビス(ジヒドロ-ジベンゾ-アゼピン-1-イル)-ビフェニル(略称:HBazBP)、4,4’-(ジフェニルメチレン)ビス(N,N-ジフェニルアミン)(略称:TCBPA)、4,4’-(ジフェニルシランジイル)ビス(N,N-ジフェニルアミン)(略称:TSBPA)等が挙げられる。これらの構造式を下記に示す。また、該テトラアリールメタン骨格またはテトラアリールシラン骨格及び電子供与性を有する有機化合物はこれに限られない。これらの構造式を下記に示す。
【0100】
【0101】
なお、本発明の一態様に係る電子デバイスには低分子有機化合物を好適に用いることができる。低分子有機化合物を用いることによって、EL層100に含まれる全ての層を真空蒸着により成膜することができるため、製造プロセスを簡略化することができる。
【0102】
≪光路長調整による光取出し効率の向上≫
また、本発明の一態様である電子デバイスにおいて、光路長を制御することで、さらに光取出し効率を向上させることができる。発光層130から得られる発光のうち、所望の波長の光を効率良く取り出すことができる。
【0103】
例えば、発光層130から得られる所望の波長の光(波長:λ)を効率良く取り出すために、電極101と正孔注入層111の界面から発光層130の所望の波長の光が得られる領域(発光領域134)までの光学距離を(2m’-1)λ/4(ただし、m’は自然数)近傍となるように調節するのが好ましい。なお、ここでいう発光領域とは、発光層130における正孔(ホール)と電子との再結合領域を示す。
【0104】
このような光学調整を行うことにより、エバネッセントモードによる光の減衰を減少させることができるため、発光層130からの光取出し効率を向上させることができる。
【0105】
また、基板200と電極101の界面と発光層130の所望の波長の光が得られる領域(発光領域134)までの光学距離をmλ/2(ただし、mは自然数)近傍となるように調節するのが好ましい。このような光学調整を行うことにより、エバネッセントモードによる光の減衰を減少させることができるため、発光層130からの光取出し効率を向上させることができる。
【0106】
上記光学調整を行うためには、正孔注入層111または正孔輸送層112の膜厚を調整する必要があるが、正孔注入層111の屈折率が高い場合は光路長が長くなる傾向にあるため、光路長の調整が困難な場合や、正孔注入層111の膜厚が厚くなり、駆動電圧が上昇する場合がある。しかし、本発明の一態様では、正孔注入層111は低い屈折率を有しているため、光路長の制御が容易であり、膜厚を薄くすることができる。そのため、発光層130からの光取出し効率向上だけではなく、発光素子の作製プロセスの簡略化や、低い駆動電圧を有する発光素子を実現することができる。
【0107】
上述のエバネッセント波による光の減衰は電子デバイスに入射した光についても起こり得る。例えば、本発明の一態様に係る電子デバイスを太陽電池に適用した場合、エバネッセント波による光の減衰を抑制することができるため、該有機太陽電池の光閉じ込め効果を向上させることができる。よって、本発明の一態様に係る電子デバイスは太陽電池に好適に用いることができる。この場合、
図1に示す電子デバイス50における、機能層40は活性層と読み替えて構わない。
【0108】
また、上述の構造では、所望の光の波長λに発光素子の光路長を調整することで、光を効率良く取り出す構成について説明したが、
図1を用いて太陽電池に適用する場合の例を説明する。電子デバイス50に入射する光の波長λ’とは異なる光路長となるように、一対の電極間の膜厚を、
図1中においては、有機半導体層20の膜厚を調整することが好ましい。該構成とすることで、電子デバイス50に入射した光を効率良く電子デバイス50中に閉じ込めることができる。さらに、本発明の一態様の電子デバイスにおいては、エバネッセント波による光の減衰を抑制することができるため、より効率良く光閉じ込め効果を得ることができる。
【0109】
<材料>
次に、本発明の一態様に係る電子デバイスの一例である発光素子の構成要素の詳細について、以下説明を行う。
【0110】
≪発光層≫
発光層130は少なくとも、ホスト材料131を有し、さらにゲスト材料132を有すると好ましい。また、後述するように、ホスト材料131は有機化合物131_1及び有機化合物131_2を有していても良い。発光層130中では、ホスト材料131が重量比で最も多く存在し、ゲスト材料132は、ホスト材料131中に分散される。ゲスト材料132が蛍光性化合物の場合、発光層130のホスト材料131(有機化合物131_1及び有機化合物131_2)のS1準位は、発光層130のゲスト材料(ゲスト材料132)のS1準位よりも高いことが好ましい。また、ゲスト材料132が燐光性化合物の場合、発光層130のホスト材料131(有機化合物131_1及び有機化合物131_2)のT1準位は、発光層130のゲスト材料(ゲスト材料132)のT1準位よりも高いことが好ましい。
【0111】
有機化合物131_1としては、窒素を二つ以上含む炭素数1乃至20の複素芳香族骨格を有すると好ましい。特に、ピリミジン骨格、及びトリアジン骨格を有する化合物であると好ましい。有機化合物131_1としては、正孔よりも電子の輸送性の高い材料(電子輸送性材料)を用いることができ、1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する材料であることが好ましい。
【0112】
具体的には、例えば、4,6-ビス[3-(フェナントレン-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6-ビス[3-(4-ジベンゾチエニル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm-II)、4,6-ビス[3-(9H-カルバゾ-ル-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mCzP2Pm)などのジアジン骨格を有する複素環化合物や、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾ-ル-3-イル)-9H-カルバゾ-ル-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)、2-{3-[3-(ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-イル)フェニル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mBnfBPTzn)、2,4,6-トリス(ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:T2T)、2,4,6-トリス[3’-(ピリジン-3-イル)-ビフェニル-3-イル]-1,3,5-トリアジン(略称:TmPPPyTz)、9-[4-(3,5-ジフェニル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)]フェニル-9H-カルバゾール(略称:CzTAZ(1H))などのトリアジン骨格、ピリミジン骨格、トリアゾール骨格を有する複素環化合物は、安定で信頼性が良好であり好ましい。また、当該骨格を有する複素環化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。ここに述べた物質は、主に1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を用いても構わない。
【0113】
また、有機化合物131_1としては、ピリジン誘導体やピラジン誘導体、ピリダジン誘導体、ビピリジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、プリン誘導体などの化合物も用いることができる。このような有機化合物が1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する材料であることが好ましい。
【0114】
具体的には、例えば、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)などのピリジン骨格を有する複素環化合物や、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq-II)、2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)、2-[3’-(9H-カルバゾ-ル-9-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、2-[4-(3,6-ジフェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2CzPDBq-III)、7-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:7mDBTPDBq-II)、及び、6-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:6mDBTPDBq-II)、2-[3-(3,9’-ビ-9H-カルバゾ-ル-9-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzCzPDBq)、などのピラジン骨格を有する複素芳香環化合物や3,5-ビス[3-(9H-カルバゾ-ル-9-イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5-トリ[3-(3-ピリジル)フェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)などのピリジン骨格を有する複素環化合物も用いることができる。また、ポリ(2,5-ピリジンジイル)(略称:PPy)、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(ピリジン-3,5-ジイル)](略称:PF-Py)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(2,2’-ビピリジン-6,6’-ジイル)](略称:PF-BPy)のような高分子化合物を用いることもできる。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を用いても構わない。
【0115】
有機化合物131_2としては、窒素を二つ以上含む炭素数1乃至20の複素芳香族骨格を有すると好ましい。特に含窒素複素五員環骨格が好ましい。例えば、イミダゾ-ル骨格、トリアゾ-ル骨格、及びテトラゾ-ル骨格が挙げられる。また、有機化合物131_2としては、電子よりも正孔の輸送性の高い材料(正孔輸送性材料)を用いることができ、1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する材料であることが好ましい。また、該正孔輸送性材料は高分子化合物であっても良い。
【0116】
具体的には、例えば、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、9-[4-(4,5-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzTAZ1)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾ-ル)(略称:TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm-II)等を用いることができる。
【0117】
有機化合物131_2としては、その他の含窒素複素五員環骨格または3級アミン骨格を有する化合物も好適に用いることができる。具体的には、ピロール骨格または芳香族アミン骨格が挙げられる。例えば、インド-ル誘導体、カルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体などが挙げられる。また、有機化合物131_2としては、電子よりも正孔の輸送性の高い材料(正孔輸送性材料)を用いることができ、1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する材料であることが好ましい。また、該正孔輸送性材料は高分子化合物であっても良い。
【0118】
これら正孔輸送性の高い材料として、具体的には、芳香族アミン化合物としては、N,N’-ジ(p-トリル)-N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’-ビス{4-[ビス(3-メチルフェニル)アミノ]フェニル}-N,N’-ジフェニル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン(略称:DNTPD)、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を挙げることができる。
【0119】
また、カルバゾール誘導体としては、具体的には、3-[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA1)、3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA2)、3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-(1-ナフチル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzTPN2)、3-[N-(9-フェニルカルバゾ-ル-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6-ビス[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3-[N-(1-ナフチル)-N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)、4,4’-ビス(9-カルバゾリル)-2,2’-ジメチル-ビフェニル(略称:dmCBP)等を挙げることができる。
【0120】
また、カルバゾ-ル誘導体としては、他に、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5-トリス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾ-ル(略称:CzPA)、1,4-ビス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]-2,3,5,6-テトラフェニルベンゼン等を用いることができる。
【0121】
また、N,N-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:CzA1PA)、4-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、N,9-ジフェニル-N-{4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]フェニル}-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPBA)、N,9-ジフェニル-N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-9H-カルバゾ-ル-3-アミン(略称:2PCAPA)、9-フェニル-3-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:PCzPA)、3,6-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:DPCzPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン(略称:DBC1)、1,1-ビス-(4-ビス(4-メチル-フェニル)-アミノ-フェニル)-シクロヘキサン(略称:TAPC)等を用いることができる。
【0122】
また、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N-(4-{N’-[4-(4-ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly-TPD)等の高分子化合物を用いることもできる。
【0123】
さらに、正孔輸送性の高い材料としては、例えば、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα-NPD)やN,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’-トリス(カルバゾール-9-イル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)、4,4’,4’’-トリス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:1’-TNATA)、4,4’,4’’-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-N-{9,9-ジメチル-2-[N’-フェニル-N’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミノ]-9H-フルオレン-7-イル}フェニルアミン(略称:DFLADFL)、N-(9,9-ジメチル-2-ジフェニルアミノ-9H-フルオレン-7-イル)ジフェニルアミン(略称:DPNF)、2-[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:DPASF)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、4-フェニルジフェニル-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)アミン(略称:PCA1BP)、N,N’-ビス(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N,N’-ジフェニルベンゼン-1,3-ジアミン(略称:PCA2B)、N,N’,N’’-トリフェニル-N,N’,N’’-トリス(9-フェニルカルバゾール-3-イル)ベンゼン-1,3,5-トリアミン(略称:PCA3B)、N-(4-ビフェニル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9-フェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCBiF)、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-アミン(略称:PCBASF)、2-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:PCASF)、2,7-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:DPA2SF)、N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N-(4-フェニル)フェニルアニリン(略称:YGA1BP)、N,N’-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニル-9,9-ジメチルフルオレン-2,7-ジアミン(略称:YGA2F)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。また、3-[4-(1-ナフチル)-フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPN)、3-[4-(9-フェナントリル)-フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPPn)、3,3’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、3,6-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PhCzGI)、2,8-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)-ジベンゾチオフェン(略称:Cz2DBT)等のアミン化合物、カルバゾール化合物等を用いることができる。上述した化合物の中でも、ピロ-ル骨格、芳香族アミン骨格を有する化合物は、安定で信頼性が良好であり好ましい。また、当該骨格を有する化合物は、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。
【0124】
また、発光層130において、ゲスト材料132としては、特に限定はないが、蛍光性化合物としては、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、スチルベン誘導体、アクリドン誘導体、クマリン誘導体、フェノキサジン誘導体、フェノチアジン誘導体などが好ましく、例えば以下の物質を用いることができる。
【0125】
具体的には、5,6-ビス[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAP2BPy)、5,6-ビス[4’-(10-フェニル-9-アントリル)ビフェニル-4-イル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAPP2BPy)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)、N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-N,N’-ビス(4-tert-ブチルフェニル)ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6tBu-FLPAPrn)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-3,8-ジシクロヘキシルピレン-1,6-ジアミン(略称:ch-1,6FLPAPrn)、N,N’-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニルスチルベン-4,4’-ジアミン(略称:YGA2S)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11-テトラ(tert-ブチル)ペリレン(略称:TBP)、4-(10-フェニル-9-アントリル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’-(2-tert-ブチルアントラセン-9,10-ジイルジ-4,1-フェニレン)ビス[N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン](略称:DPABPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPPA)、N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPA)、N-[9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCABPhA)、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N-[9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N-フェニルアントラセン-2-アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9-トリフェニルアントラセン-9-アミン(略称:DPhAPhA)、クマリン6、クマリン545T、N,N’-ジフェニルキナクリドン(略称:DPQd)、ルブレン、2,8-ジ-tert-ブチル-5,11-ビス(4-tert-ブチルフェニル)-6,12-ジフェニルテトラセン(略称:TBRb)、ナイルレッド、5,12-ビス(1,1’-ビフェニル-4-イル)-6,11-ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2-(2-{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-6-メチル-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2-{2-メチル-6-[2-(2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)テトラセン-5,11-ジアミン(略称:p-mPhTD)、7,14-ジフェニル-N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)アセナフト[1,2-a]フルオランテン-3,10-ジアミン(略称:p-mPhAFD)、2-{2-イソプロピル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2-{2-tert-ブチル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2-(2,6-ビス{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2-{2,6-ビス[2-(8-メトキシ-1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)、5,10,15,20-テトラフェニルビスベンゾ[5,6]インデノ[1,2,3-cd:1’,2’,3’-lm]ペリレン、などが挙げられる。
【0126】
ゲスト材料132(燐光性化合物)としては、イリジウム、ロジウム、または白金系の有機金属錯体、あるいは金属錯体が挙げられ、中でも有機イリジウム錯体、例えばイリジウム系オルトメタル錯体が好ましい。オルトメタル化する配位子としては4H-トリアゾール配位子、1H-トリアゾール配位子、イミダゾール配位子、ピリジン配位子、ピリミジン配位子、ピラジン配位子、あるいはイソキノリン配位子などが挙げられる。金属錯体としては、ポルフィリン配位子を有する白金錯体などが挙げられる。
【0127】
青色または緑色に発光ピークを有する物質としては、例えば、トリス{2-[5-(2-メチルフェニル)-4-(2,6-ジメチルフェニル)-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル-κN2]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:Ir(mpptz-dmp)3)、トリス(5-メチル-3,4-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:Ir(Mptz)3)、トリス[4-(3-ビフェニル)-5-イソプロピル-3-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:Ir(iPrptz-3b)3)、トリス[3-(5-ビフェニル)-5-イソプロピル-4-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:Ir(iPr5btz)3)、のような4H-トリアゾ-ル骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス[3-メチル-1-(2-メチルフェニル)-5-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:Ir(Mptz1-mp)3)、トリス(1-メチル-5-フェニル-3-プロピル-1H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:Ir(Prptz1-Me)3)のような1H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、fac-トリス[1-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-フェニル-1H-イミダゾ-ル]イリジウム(III)(略称:Ir(iPrpmi)3)、トリス[3-(2,6-ジメチルフェニル)-7-メチルイミダゾ[1,2-f]フェナントリジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(dmpimpt-Me)3)、トリス{2-[1-(4-シアノ-2,6-ジイソブチルフェニル)-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル-κN3]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:Ir(pbi-diBuCNp)3)のようなイミダゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1-ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス{2-[3’,5’-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CF3ppy)2(pic))、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIr(acac))のような電子吸引基を有するフェニルピリジン誘導体を配位子とする有機金属イリジウム錯体が挙げられる。上述した中でも、4H-トリアゾール骨格、1H-トリアゾール骨格およびイミダゾール骨格のような含窒素五員複素環骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、高い三重項励起エネルギーを有し、信頼性や発光効率にも優れるため、特に好ましい。
【0128】
また、緑色または黄色に発光ピークを有する物質としては、例えば、トリス(4-メチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppm)3)、トリス(4-t-ブチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tBuppm)3)、(アセチルアセトナト)ビス(6-メチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppm)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(6-tert-ブチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tBuppm)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[4-(2-ノルボルニル)-6-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(nbppm)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[5-メチル-6-(2-メチルフェニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(mpmppm)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス{4,6-ジメチル-2-[6-(2,6-ジメチルフェニル)-4-ピリミジニル-κN3]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:Ir(dmppm-dmp)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(4,6-ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(dppm)2(acac))のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、(アセチルアセトナト)ビス(3,5-ジメチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr-Me)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(5-イソプロピル-3-メチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr-iPr)2(acac))のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy)3)、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)2(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)2(acac))、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:Ir(bzq)3)、トリス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(pq)3)、ビス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pq)2(acac))のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、ビス(2,4-ジフェニル-1,3-オキサゾラト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)2(acac))、ビス{2-[4’-(パーフルオロフェニル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p-PF-ph)2(acac))、ビス(2-フェニルベンゾチアゾラト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)2(acac))など有機金属イリジウム錯体の他、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)3(Phen))のような希土類金属錯体が挙げられる。上述した中でも、ピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性や発光効率にも際だって優れるため、特に好ましい。
【0129】
また、黄色または赤色に発光ピークを有する物質としては、例えば、(ジイソブチリルメタナト)ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(5mdppm)2(dibm))、ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:Ir(5mdppm)2(dpm))、ビス[4,6-ジ(ナフタレン-1-イル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:Ir(d1npm)2(dpm))のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)2(acac))、ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)2(dpm))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3-ビス(4-フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)2(acac))のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(piq)3)、ビス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)2(acac))のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)のような白金錯体や、トリス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユ-ロピウム(III)(略称:Eu(DBM)3(Phen))、トリス[1-(2-テノイル)-3,3,3-トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)3(Phen))のような希土類金属錯体が挙げられる。上述した中でも、ピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性や発光効率にも際だって優れるため、特に好ましい。また、ピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、色度の良い赤色発光が得られる。
【0130】
発光層130に含まれる発光材料としては、三重項励起エネルギーを発光に変換できる材料であれば好ましい。該三重項励起エネルギーを発光に変換できる材料としては、燐光性化合物の他に、熱活性化遅延蛍光(Thermally activated delayed fluorescence:TADF)材料が挙げられる。したがって、燐光性化合物と記載した部分に関しては、熱活性化遅延蛍光材料と読み替えても構わない。なお、熱活性化遅延蛍光材料とは、三重項励起エネルギー準位と一重項励起エネルギー準位との差が小さく、逆項間交差によって三重項励起状態から一重項励起状態へエネルギーを変換する機能を有する材料である。そのため、三重項励起状態をわずかな熱エネルギーによって一重項励起状態にアップコンバート(逆項間交差)が可能で、一重項励起状態からの発光(蛍光)を効率よく呈することができる。また、熱活性化遅延蛍光が効率良く得られる条件としては、三重項励起エネルギー準位と一重項励起エネルギ-準位のエネルギー差が好ましくは0eVより大きく0.2eV以下、さらに好ましくは0eVより大きく0.1eV以下であることが挙げられる。
【0131】
熱活性化遅延蛍光材料が、一種類の材料から構成される場合、例えば以下の材料を用いることができる。
【0132】
まず、フラーレンやその誘導体、プロフラビン等のアクリジン誘導体、エオシン等が挙げられる。また、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、白金(Pt)、インジウム(In)、もしくはパラジウム(Pd)等を含む金属含有ポルフィリンが挙げられる。該金属含有ポルフィリンとしては、例えば、プロトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Proto IX))、メソポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Meso IX))、ヘマトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Hemato IX))、コプロポルフィリンテトラメチルエステル-フッ化スズ錯体(SnF2(Copro III-4Me))、オクタエチルポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(OEP))、エチオポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Etio I))、オクタエチルポルフィリン-塩化白金錯体(PtCl2OEP)等が挙げられる。
【0133】
また、一種の材料から構成される熱活性化遅延蛍光材料としては、π電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有する複素環化合物も用いることができる。具体的には、2-(ビフェニル-4-イル)-4,6-ビス(12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾ-ル-11-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:PIC-TRZ)、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)、2-[4-(10H-フェノキサジン-10-イル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PXZ-TRZ)、3-[4-(5-フェニル-5,10-ジヒドロフェナジン-10-イル)フェニル]-4,5-ジフェニル-1,2,4-トリアゾ-ル(略称:PPZ-3TPT)、3-(9,9-ジメチル-9H-アクリジン-10-イル)-9H-キサンテン-9-オン(略称:ACRXTN)、ビス[4-(9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン)フェニル]スルホン(略称:DMAC-DPS)、10-フェニル-10H,10’H-スピロ[アクリジン-9,9’-アントラセン]-10’-オン(略称:ACRSA)等が挙げられる。該複素環化合物は、π電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有するため、電子輸送性及び正孔輸送性が高く、好ましい。中でも、π電子不足型複素芳香環を有する骨格のうち、ジアジン骨格(ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格)、またはトリアジン骨格は、安定で信頼性が良好なため、好ましい。また、π電子過剰型複素芳香環を有する骨格の中でも、アクリジン骨格、フェノキサジン骨格、チオフェン骨格、フラン骨格、及びピロール骨格は、安定で信頼性が良好なため、当該骨格の中から選ばれるいずれか一つまたは複数を有することが、好ましい。なお、ピロール骨格としては、インドール骨格、カルバゾール骨格、及び3-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール骨格、が特に好ましい。なお、π電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環とが直接結合した物質は、π電子過剰型複素芳香環のドナー性とπ電子不足型複素芳香環のアクセプター性が共に強く、一重項励起状態のエネルギー準位と三重項励起状態のエネルギー準位との差が小さくなるため、特に好ましい。
【0134】
また、発光層130において、ホスト材料131およびゲスト材料132以外の材料を有していても良い。
【0135】
発光層130に用いることが可能な材料としては、特に限定はないが、例えば、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、ジベンゾ[g,p]クリセン誘導体等の縮合多環芳香族化合物が挙げられ、具体的には、9,10-ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、6,12-ジメトキシ-5,11-ジフェニルクリセン、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、9,9’-ビアントリル(略称:BANT)、9,9’-(スチルベン-3,3’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’-(スチルベン-4,4’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、1,3,5-トリ(1-ピレニル)ベンゼン(略称:TPB3)などを挙げることができる。また、これら及び公知の物質の中から、上記ゲスト材料132の励起エネルギー準位より高い一重項励起エネルギー準位または三重項励起エネルギー準位を有する物質を、一種もしくは複数種選択して用いればよい。
【0136】
また、例えば、オキサジアゾール誘導体等の複素芳香族骨格を有する化合物を発光層130に用いることができる。具体的には、例えば、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾ-ル(略称:PBD)や、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾ-ル-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾ-ル-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)、4,4’-ビス(5-メチルベンゾオキサゾ-ル-2-イル)スチルベン(略称:BzOs)などの複素環化合物が挙げられる。
【0137】
また、複素環を有する金属錯体(例えば亜鉛及びアルミニウム系金属錯体)などを発光層130に用いることができる。例えば、キノリン配位子、ベンゾキノリン配位子、オキサゾール配位子、あるいはチアゾール配位子を有する金属錯体が挙げられる。具体的には、例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq3)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等が挙げられる。また、この他ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などのオキサゾール系、またはチアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。
【0138】
なお、発光層130は2層以上の複数層でもって構成することもできる。例えば、第1の発光層と第2の発光層を正孔輸送層側から順に積層して発光層130とする場合、第1の発光層のホスト材料として正孔輸送性を有する物質を用い、第2の発光層のホスト材料として電子輸送性を有する物質を用いる構成などがある。また、第1の発光層と第2の発光層とが有する発光材料は、同じ材料であっても異なる材料であってもよく、同じ色の発光を呈する機能を有する材料であっても、異なる色の発光を呈する機能を有する材料であってもよい。2層の発光層に、互いに異なる色の発光を呈する機能を有する発光材料をそれぞれ用いることで、複数の発光を同時に得ることができる。特に、2層の発光層が呈する発光により、白色になるよう、各発光層に用いる発光材料を選択すると好ましい。
【0139】
なお、発光層130は、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法、グラビア印刷等の方法で形成することができる。また、上述した材料の他、量子ドットなどの無機化合物または高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を有してもよい。
【0140】
≪正孔注入層≫
正孔注入層111は、一対の電極の一方(電極101または電極102)からのホール注入障壁を低減することでホール注入を促進する機能を有し、例えば電子受容性を有する遷移金属酸化物、フタロシアニン誘導体、芳香族アミン、ヘテロポリ酸などによって形成される。遷移金属酸化物としては、チタン酸化物、バナジウム酸化物、タンタル酸化物、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、銀酸化物などが挙げられ、該遷移金属酸化物は電子受容性に優れ、真空蒸着法や湿式法によって簡便に成膜を行うことができるため好ましい。また、フタロシアニン誘導体としては、フタロシアニンや金属フタロシアニンなどが挙げられる。芳香族アミンとしてはベンジジン誘導体やフェニレンジアミン誘導体などが挙げられる。ポリチオフェンやポリアニリンなどの高分子化合物を用いることもでき、例えば自己ドープされたポリチオフェンであるポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)などがその代表例である。また、ヘテロポリ酸としては、リンモリブデン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸、ケイタングステン酸などが挙げられる。ヘテロポリ酸や高分子化合物は湿式法により簡便に成膜を行うことができるため好ましい。
【0141】
正孔注入層111として、上述したような屈折率の低い正孔輸送性材料と、上述の電子受容性を示す材料の複合材料を有する層を用いることが好ましい。このような構成とすることで、正孔注入・輸送性を有しつつ、屈折率が低い層を形成することができる。電子受容性を有する有機材料としてはTCNQ、F4TCNQ、F6TCNNQを好適に用いることができる。また、電子受容性を示す材料を含む層と正孔輸送性材料を含む層の積層を用いても良い。これらの材料間では定常状態、あるいは電界存在下において電荷の授受が可能である。電子受容性を示す有機材料としては、上述のTCNQ、F4TCNQ、F6TCNNQに加えて、キノジメタン誘導体やクロラニル誘導体、ヘキサアザトリフェニレン誘導体などの有機アクセプターを挙げることができる。具体的には、クロラニル、2,3,6,7,10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT-CN)等の電子吸引基(ハロゲン基やシアノ基)を有する化合物である。また、遷移金属、例えば、チタン、バナジウム、タンタル、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、クロム、ジルコニウム、ハフニウム、銀などと酸素を含む物質を用いることができる。具体的には、チタン酸化物、バナジウム酸化物、タンタル酸化物、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、銀酸化物、リンモリブデン酸、モリブデンブロンズ、タングステンブロンズなどである。中でも酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0142】
なお、正孔注入層111に用いる屈折率の低い正孔輸送性材料は、上述した通り、sp3結合に代表される、芳香環間の共役が切れた構造を持つ有機化合物や、嵩高い置換基を有する芳香環を有する有機化合物を好適に用いることができる。芳香環間の共役が切れた構造を持つ骨格としては、例えば上述のテトラアリールメタン骨格やテトラアリールシラン骨格が挙げられる。しかし一方で、このような化合物はキャリア輸送性には乏しくなる傾向にあり、従来の正孔注入層には不適当である。一方、上述したような遷移金属と酸素を含む物質単体は、正孔注入性を高める効果が非常に高いが、屈折率が高いという問題がある。しかし、上述したような遷移金属と酸素を含む物質を電子受容性を示す材料として、屈折率の低い正孔輸送性材料と組み合わせて正孔注入層111に用いると、正孔注入層111の屈折率を低く保ったまま、正孔注入性・輸送性をも確保できることがわかった。すなわち、この構成は両者のデメリットを互いに打ち消し、メリットのみを発現することができる。これは、遷移金属酸化物を含む物質の電子受容性が高く、少量の添加で正孔注入性が確保できることが要因と考えられる。
【0143】
正孔輸送性材料としては、電子よりも正孔の輸送性の高い材料を用いることができ、1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する材料であることが好ましい。また、上述の通り、該正孔輸送性材料としては、屈折率が1以上1.75以下であることが好ましく、より好ましくは1以上1.73以下、さらに好ましくは1以上1.70以下である。具体的には、発光層130に用いることができる正孔輸送性材料として挙げた芳香族アミン、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、スチルベン誘導体などを用いることができるが、窒素を二つ以上含む炭素数1乃至20の複素芳香族骨格を有すると特に好ましい。特に含窒素複素五員環骨格が好ましい。また、該正孔輸送性材料は高分子化合物であっても良い。
【0144】
また、正孔輸送性材料として他には芳香族炭化水素が挙げられ、例えば、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、2-tert-ブチル-9,10-ジ(1-ナフチル)アントラセン、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2-tert-ブチル-9,10-ビス(4-フェニルフェニル)アントラセン(略称:t-BuDBA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10-ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2-tert-ブチルアントラセン(略称:t-BuAnth)、9,10-ビス(4-メチル-1-ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、2-tert-ブチル-9,10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン、9,10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7-テトラメチル-9,10-ジ(1-ナフチル)アントラセン、2,3,6,7-テトラメチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン、9,9’-ビアントリル、10,10’-ジフェニル-9,9’-ビアントリル、10,10’-ビス(2-フェニルフェニル)-9,9’-ビアントリル、10,10’-ビス[(2,3,4,5,6-ペンタフェニル)フェニル]-9,9’-ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11-テトラ(tert-ブチル)ペリレン等が挙げられる。また、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。このように、1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有し、炭素数14乃至炭素数42である芳香族炭化水素を用いることがより好ましい。
【0145】
なお、芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよい。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’-ビス(2,2-ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
【0146】
また、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P-II)、1,3,5-トリ(ジベンゾチオフェン-4-イル)ベンゼン(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)、4-[3-(トリフェニレン-2-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:mDBTPTp-II)等のチオフェン化合物、フラン化合物、フルオレン化合物、トリフェニレン化合物、フェナントレン化合物等を用いることができる。上述した化合物の中でも、ピロール骨格、フラン骨格、チオフェン骨格、芳香族アミン骨格を有する化合物は、安定で信頼性が良好であり好ましい。また、当該骨格を有する化合物は、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。
【0147】
≪正孔輸送層≫
正孔輸送層112は正孔輸送性材料を含む層であり、正孔注入層111の材料として例示した正孔輸送性材料を使用することができる。正孔輸送層112は正孔注入層111に注入された正孔を発光層130へ輸送する機能を有するため、正孔注入層111のHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital、最高被占軌道ともいう)準位と同じ、あるいは近いHOMO準位を有することが好ましい。
【0148】
また、1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外の物質を用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層だけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層してもよい。
【0149】
≪電子輸送層≫
電子輸送層118は、電子注入層119を経て一対の電極の他方(電極101または電極102)から注入された電子を発光層130へ輸送する機能を有する。電子輸送性材料としては、正孔よりも電子の輸送性の高い材料を用いることができ、1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する材料であることが好ましい。電子を受け取りやすい化合物(電子輸送性を有する材料)としては、含窒素複素芳香族化合物のようなπ電子不足型複素芳香族や金属錯体などを用いることができる。具体的には、発光層130に用いることができる電子輸送性材料として挙げたピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体などが挙げられるが、窒素を二つ以上含む炭素数1乃至20の複素芳香族骨格を有すると好ましい。特に、ピリミジン骨格、及びトリアジン骨格を有する化合物であると好ましい。また、1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質であることが好ましい。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層118として用いても構わない。また、電子輸送層118は、単層だけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層してもよい。
【0150】
また、複素環を有する金属錯体が挙げられ、例えば、キノリン配位子、ベンゾキノリン配位子、オキサゾール配位子、あるいはチアゾール配位子を有する金属錯体が挙げられる。具体的には、例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq3)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等が挙げられる。また、この他ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などのオキサゾール系、またはチアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。
【0151】
また、電子輸送層118と発光層130との間に電子キャリアの移動を制御する層を設けても良い。これは上述したような電子輸送性の高い材料に、電子トラップ性の高い物質を少量添加した層であって、電子キャリアの移動を抑制することによって、キャリアバランスを調節することが可能となる。このような構成は、電子輸送性材料の電子輸送性が正孔輸送性材料の正孔輸送性と比べて著しく高い場合に発生する問題(例えば素子寿命の低下)の抑制に大きな効果を発揮する。
【0152】
≪電子注入層≫
電子注入層119は電極102からの電子注入障壁を低減することで電子注入を促進する機能を有し、例えば第1族金属、第2族金属、あるいはこれらの酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩などを用いることができる。また、先に示す電子輸送性材料と、これに対して電子供与性を示す材料の複合材料を用いることもできる。電子供与性を示す材料としては、第1族金属、第2族金属、あるいはこれらの酸化物などを挙げることができる。具体的には、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)、リチウム酸化物(LiOx)等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウム(ErF3)のような希土類金属化合物を用いることができる。また、電子注入層119にエレクトライドを用いてもよい。該エレクトライドとしては、例えば、カルシウムとアルミニウムの混合酸化物に電子を高濃度添加した物質等が挙げられる。また、電子注入層119に、電子輸送層118で用いることが出来る物質を用いても良い。
【0153】
また、電子注入層119に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生するため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送層118を構成する物質(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、ナトリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
【0154】
なお、上述した、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、及び電子注入層は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法、グラビア印刷等の方法で形成することができる。また、上述した、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、及び電子注入層には、上述した材料の他、量子ドットなどの無機化合物や、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いてもよい。
【0155】
≪量子ドット≫
量子ドットは、数nm乃至数十nmサイズの半導体ナノ結晶であり、1×103個乃至1×106個程度の原子から構成されている。量子ドットはサイズに依存してエネルギーシフトするため、同じ物質から構成される量子ドットであっても、サイズによって発光波長が異なる。そのため、用いる量子ドットのサイズを変更することによって、容易に発光波長を変更することができる。
【0156】
また、量子ドットは、発光スペクトルのピーク幅が狭いため、色純度のよい発光を得ることができる。さらに、量子ドットの理論的な内部量子効率はほぼ100%であると言われており、蛍光発光を呈する有機化合物の25%を大きく上回り、燐光発光を呈する有機化合物と同等となっている。このことから、量子ドットを発光材料として用いることによって発光効率の高い発光素子を得ることができる。その上、無機材料である量子ドットは、その本質的な安定性にも優れているため、寿命の観点からも好ましい発光素子を得ることができる。
【0157】
量子ドットを構成する材料としては、第14族元素、第15族元素、第16族元素、複数の第14族元素からなる化合物、第4族乃至第14族に属する元素と第16族元素との化合物、第2族元素と第16族元素との化合物、第13族元素と第15族元素との化合物、第13族元素と第17族元素との化合物、第14族元素と第15族元素との化合物、第11族元素と第17族元素との化合物、酸化鉄類、酸化チタン類、カルコゲナイドスピネル類、半導体クラスターなどを挙げることができる。
【0158】
具体的には、セレン化カドミウム、硫化カドミウム、テルル化カドミウム、セレン化亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、テルル化亜鉛、硫化水銀、セレン化水銀、テルル化水銀、砒化インジウム、リン化インジウム、砒化ガリウム、リン化ガリウム、窒化インジウム、窒化ガリウム、アンチモン化インジウム、アンチモン化ガリウム、リン化アルミニウム、砒化アルミニウム、アンチモン化アルミニウム、セレン化鉛、テルル化鉛、硫化鉛、セレン化インジウム、テルル化インジウム、硫化インジウム、セレン化ガリウム、硫化砒素、セレン化砒素、テルル化砒素、硫化アンチモン、セレン化アンチモン、テルル化アンチモン、硫化ビスマス、セレン化ビスマス、テルル化ビスマス、ケイ素、炭化ケイ素、ゲルマニウム、錫、セレン、テルル、ホウ素、炭素、リン、窒化ホウ素、リン化ホウ素、砒化ホウ素、窒化アルミニウム、硫化アルミニウム、硫化バリウム、セレン化バリウム、テルル化バリウム、硫化カルシウム、セレン化カルシウム、テルル化カルシウム、硫化ベリリウム、セレン化ベリリウム、テルル化ベリリウム、硫化マグネシウム、セレン化マグネシウム、硫化ゲルマニウム、セレン化ゲルマニウム、テルル化ゲルマニウム、硫化錫、セレン化錫、テルル化錫、酸化鉛、フッ化銅、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、酸化銅、セレン化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト、硫化コバルト、酸化鉄、硫化鉄、酸化マンガン、硫化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化タンタル、酸化チタン、酸化ジルコニウム、窒化ケイ素、窒化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、セレンと亜鉛とカドミウムの化合物、インジウムと砒素とリンの化合物、カドミウムとセレンと硫黄の化合物、カドミウムとセレンとテルルの化合物、インジウムとガリウムと砒素の化合物、インジウムとガリウムとセレンの化合物、インジウムとセレンと硫黄の化合物、銅とインジウムと硫黄の化合物、およびこれらの組合せなどを挙げることができるが、これらに限定されない。また、組成が任意の比率で表される、いわゆる合金型量子ドットを用いても良い。例えば、カドミウムとセレンと硫黄の合金型量子ドットは、元素の含有比率を変化させることで発光波長を変えることができるため、青色発光を得るには有効な手段の一つである。
【0159】
量子ドットの構造としては、コア型、コア-シェル型、コア-マルチシェル型などがあり、そのいずれを用いても良いが、コアを覆ってより広いバンドギャップを持つ別の無機材料でシェルを形成することによって、ナノ結晶表面に存在する欠陥やダングリングボンドの影響を低減することができる。これにより、発光の量子効率が大きく改善するためコア-シェル型やコア-マルチシェル型の量子ドットを用いることが好ましい。シェルの材料の例としては、硫化亜鉛や酸化亜鉛が挙げられる。
【0160】
また、量子ドットは、表面原子の割合が高いことから、反応性が高く、凝集が起こりやすい。そのため、量子ドットの表面には保護剤が付着している又は保護基が設けられていることが好ましい。当該保護剤が付着している又は保護基が設けられていることによって、凝集を防ぎ、溶媒への溶解性を高めることができる。また、反応性を低減させ、電気的安定性を向上させることも可能である。保護剤(又は保護基)としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類、ポリオキシエチレンn-オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn-ノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、トリ(n-ヘキシル)アミン、トリ(n-オクチル)アミン、トリ(n-デシル)アミン等の第3級アミン類、トリプロピルホスフィンオキシド、トリブチルホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド、トリデシルホスフィンオキシド等の有機リン化合物、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジエステル類、また、ピリジン、ルチジン、コリジン、キノリン類等の含窒素芳香族化合物等の有機窒素化合物、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン等のアミノアルカン類、ジブチルスルフィド等のジアルキルスルフィド類、ジメチルスルホキシドやジブチルスルホキシド等のジアルキルスルホキシド類、チオフェン等の含硫黄芳香族化合物等の有機硫黄化合物、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸、アルコール類、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリエステル類、3級アミン変性ポリウレタン類、ポリエチレンイミン類等が挙げられる。
【0161】
量子ドットは、サイズが小さくなるに従いバンドギャップが大きくなるため、所望の波長の光が得られるように、そのサイズを適宜調整する。結晶のサイズが小さくなるにつれて、量子ドットの発光は青色側へ、つまり、高エネルギー側へシフトするため、量子ドットのサイズを変更させることにより、紫外領域、可視領域、赤外領域のスペクトルの波長領域にわたって、その発光波長を調整することができる。量子ドットのサイズ(直径)は、0.5nm乃至20nm、好ましくは1nm乃至10nmの範囲のものが通常良く用いられる。なお、量子ドットはそのサイズ分布が狭いほど、より発光スペクトルが狭線化し、色純度の良好な発光を得ることができる。また、量子ドットの形状は特に限定されず、球状、棒状、円盤状、その他の形状であってもよい。なお、棒状の量子ドットである量子ロッドは、指向性を有する光を呈する機能を有するため、量子ロッドを発光材料として用いることにより、より外部量子効率が良好な発光素子を得ることができる。
【0162】
ところで、有機EL素子では多くの場合、発光材料をホスト材料に分散し、発光材料の濃度消光を抑制することによって発光効率を高めている。ホスト材料は発光材料以上の一重項励起エネルギー準位または三重項励起エネルギー準位を有する材料であることが必要である。特に、青色燐光材料を発光材料に用いる場合、それ以上の三重項励起エネルギー準位を有し、且つ、寿命の観点で優れたホスト材料が必要であり、その開発は困難を極めている。ここで、量子ドットは、ホスト材料を用いずに量子ドットのみで発光層を構成しても発光効率を保つことができるため、この点でも寿命という観点から好ましい発光素子を得ることができる。量子ドットのみで発光層を形成する場合には、量子ドットはコア-シェル構造(コア-マルチシェル構造を含む)であることが好ましい。
【0163】
発光層の発光材料に量子ドットを用いる場合、当該発光層の膜厚は3nm乃至100nm、好ましくは10nm乃至100nmとし、発光層中の量子ドットの含有率は1乃至100体積%とする。ただし、量子ドットのみで発光層を形成することが好ましい。なお、当該量子ドットを発光材料としてホストに分散した発光層を形成する場合は、ホスト材料に量子ドットを分散させる、またはホスト材料と量子ドットとを適当な液媒体に溶解または分散させてウェットプロセス(スピンコート法、キャスト法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、インクジェット法、印刷法、スプレーコート法、カーテンコート法、ラングミュア・ブロジェット法など)により形成すればよい。燐光性の発光材料を用いた発光層については、上記ウェットプロセスの他、真空蒸着法も好適に利用することができる。
【0164】
ウェットプロセスに用いる液媒体としては、たとえば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の有機溶媒を用いることができる。
【0165】
≪一対の電極≫
電極101及び電極102は、発光素子の陽極または陰極としての機能を有する。電極101及び電極102は、金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物や積層体などを用いて形成することができる。
【0166】
電極101または電極102の一方は、光を反射する機能を有する導電性材料により形成されると好ましい。該導電性材料としては、アルミニウム(Al)またはAlを含む合金等が挙げられる。Alを含む合金としては、AlとL(Lは、チタン(Ti)、ネオジム(Nd)、ニッケル(Ni)、及びランタン(La)の一つまたは複数を表す)とを含む合金等が挙げられ、例えばAlとTi、またはAlとNiとLaを含む合金等である。アルミニウムは、抵抗値が低く、光の反射率が高い。また、アルミニウムは、地殻における存在量が多く、安価であるため、アルミニウムを用いることによる発光素子の作製コストを低減することができる。また、銀(Ag)、またはAgとN(Nは、イットリウム(Y)、Nd、マグネシウム(Mg)、イッテルビウム(Yb)、Al、Ti、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、スズ(Sn)、鉄(Fe)、Ni、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、または金(Au)の一つまたは複数を表す)とを含む合金等を用いても良い。銀を含む合金としては、例えば、銀とパラジウムと銅を含む合金、銀と銅を含む合金、銀とマグネシウムを含む合金、銀とニッケルを含む合金、銀と金を含む合金、銀とイッテルビウムを含む合金等が挙げられる。その他、タングステン、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、銅、チタンなどの遷移金属を用いることができる。
【0167】
また、発光層から得られる発光は、電極101及び電極102の一方または双方を通して取り出される。したがって、電極101または電極102の少なくとも一方は、光を透過する機能を有する導電性材料により形成されると好ましい。該導電性材料としては、可視光の透過率が40%以上100%以下、好ましくは60%以上100%以下であり、かつその抵抗率が1×10-2Ω・cm以下の導電性材料が挙げられる。
【0168】
また、電極101及び電極102は、光を透過する機能と、光を反射する機能と、を有する導電性材料により形成されても良い。該導電性材料としては、可視光の反射率が20%以上80%以下、好ましくは40%以上70%以下であり、かつその抵抗率が1×10-2Ω・cm以下の導電性材料が挙げられる。例えば、導電性を有する金属、合金、導電性化合物などを1種又は複数種用いて形成することができる。具体的には、例えば、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide、以下ITO)、珪素または酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(略称:ITSO)、酸化インジウム-酸化亜鉛(Indium Zinc Oxide)、チタンを含有した酸化インジウム-錫酸化物、インジウム-チタン酸化物、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウムなどの金属酸化物を用いることができる。また、光を透過する程度(好ましくは、1nm以上30nm以下の厚さ)の金属薄膜を用いることができる。金属としては、例えば、Ag、またはAgとAl、AgとMg、AgとAu、AgとYbなどの合金等を用いることができる。
【0169】
なお、本明細書等において、光を透過する機能を有する材料は、可視光を透過する機能を有し、且つ導電性を有する材料であればよく、例えば上記のようなITOに代表される酸化物導電体に加えて、酸化物半導体、または有機物を含む有機導電体を含む。有機物を含む有機導電体としては、例えば、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料、有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを混合してなる複合材料等が挙げられる。また、グラフェンなどの無機炭素系材料を用いても良い。また、当該材料の抵抗率としては、好ましくは1×105Ω・cm以下、さらに好ましくは1×104Ω・cm以下である。
【0170】
また、上記の材料の複数を積層することによって電極101及び電極102の一方または双方を形成してもよい。
【0171】
また、光取り出し効率を向上させるため、光を透過する機能を有する電極と接して、該電極より屈折率の高い材料を形成してもよい。このような材料としては、可視光を透過する機能を有する材料であればよく、導電性を有する材料であっても有さない材料であってもよい。例えば、上記のような酸化物導電体に加えて、酸化物半導体、有機物が挙げられる。有機物としては、例えば、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、または電子注入層に例示した材料が挙げられる。また、無機炭素系材料や光が透過する程度の金属薄膜も用いることができ、数nm乃至数十nmの層を複数積層させてもよい。
【0172】
電極101または電極102が陰極としての機能を有する場合には、仕事関数が小さい(3.8eV以下)材料を有することが好ましい。例えば、元素周期表の第1族又は第2族に属する元素(リチウム、ナトリウム、セシウム等のアルカリ金属、カルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属、マグネシウム等)、これら元素を含む合金(例えば、AgとMg、AlとLi)、ユーロピウム(Eu)、Yb等の希土類金属、これら希土類金属を含む合金、アルミニウム、銀を含む合金等を用いることができる。
【0173】
また、電極101または電極102を陽極として用いる場合、仕事関数の大きい(4.0eV以上)材料を用いることが好ましい。
【0174】
また、電極101及び電極102は、光を反射する機能を有する導電性材料と、光を透過する機能を有する導電性材料との積層としてもよい。その場合、電極101及び電極102は、各発光層からの所望の波長の光を共振させ、所望の波長の光を強めることができるように、光学距離を調整する機能を有することができるため好ましい。
【0175】
電極101及び電極102の成膜方法は、スパッタリング法、蒸着法、印刷法、塗布法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD(Atomic Layer Deposition)法等を適宜用いることができる。
【0176】
≪基板≫
また、本発明の一態様に係る発光素子は、ガラス、プラスチックなどからなる基板上に作製すればよい。基板上に作製する順番としては、電極101側から順に積層しても、電極102側から順に積層しても良い。
【0177】
なお、本発明の一態様に係る発光素子を形成できる基板としては、例えばガラス、石英、又はプラスチックなどを用いることができる。また可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板とは、曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、からなるプラスチック基板等が挙げられる。また、フィルム、無機蒸着フィルムなどを用いることもできる。なお、発光素子、及び光学素子の作製工程において支持体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。あるいは、発光素子、及び光学素子を保護する機能を有するものであればよい。
【0178】
例えば、本発明等においては、様々な基板を用いて発光素子を形成することが出来る。基板の種類は、特に限定されない。その基板の一例としては、半導体基板(例えば単結晶基板又はシリコン基板)、SOI基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、金属基板、ステンレス・スチル基板、ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングステン基板、タングステン・ホイルを有する基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含む紙、又は基材フィルムなどがある。ガラス基板の一例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、又はソーダライムガラスなどがある。可撓性基板、貼り合わせフィルム、基材フィルムなどの一例としては、以下が挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表されるプラスチックがある。または、一例としては、アクリル等の樹脂などがある。または、一例としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、又はポリ塩化ビニルなどがある。または、一例としては、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、エポキシ、無機蒸着フィルム、又は紙類などがある。
【0179】
また、基板として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、発光素子を形成してもよい。または、基板と発光素子との間に剥離層を設けてもよい。剥離層は、その上に発光素子を一部あるいは全部完成させた後、基板より分離し、他の基板に転載するために用いることができる。その際、耐熱性の劣る基板や可撓性の基板にも発光素子を転載できる。なお、上述の剥離層には、例えば、タングステン膜と酸化シリコン膜との無機膜の積層構造の構成や、基板上にポリイミド等の樹脂膜が形成された構成等を用いることができる。
【0180】
つまり、ある基板を用いて発光素子を形成し、その後、別の基板に発光素子を転置し、別の基板上に発光素子を配置してもよい。発光素子が転置される基板の一例としては、上述した基板に加え、セロファン基板、石材基板、木材基板、布基板(天然繊維(絹、綿、麻)、合成繊維(ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル)若しくは再生繊維(アセテート、キュプラ、レーヨン、再生ポリエステル)などを含む)、皮革基板、又はゴム基板などがある。これらの基板を用いることにより、壊れにくい発光素子、耐熱性の高い発光素子、軽量化された発光素子、または薄型化された発光素子とすることができる。
【0181】
また、上述した基板上に、例えば電界効果トランジスタ(FET)を形成し、FETと電気的に接続された電極上に発光素子150を作製してもよい。これにより、FETによって発光素子150の駆動を制御するアクティブマトリクス型の表示装置を作製できる。
【0182】
本発明の一態様に係る電子デバイスの一例である太陽電池の構成要素について、以下説明を行う。
【0183】
太陽電池には上述の発光素子に用いることができる材料を援用することができる。太陽電池のキャリア輸送層には上述の正孔輸送性材料及び電子輸送性材料を、光発電層としては上述の正孔輸送性材料及び電子輸送性材料や発光材料及びシリコンやCH3NH3PbI3に代表されるペロブスカイト結晶等を用いることができる。また、基板や電極に関しても、上述の発光素子に用いることができる材料を援用することができる。
【0184】
以上、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0185】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、実施の形態1に示す発光素子の構成と異なる構成の発光素子、及び当該発光素子の発光機構について、
図3及び
図4を用いて、以下説明を行う。なお、
図3及び
図4において、
図2(A)に示す符号と同様の機能を有する箇所には、同様のハッチパターンとし、符号を省略する場合がある。また、同様の機能を有する箇所には、同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する場合がある。
【0186】
<発光素子の構成例1>
図3(A)は、発光素子250の断面模式図である。
【0187】
図3(A)に示す発光素子250は、一対の電極(電極101及び電極102)の間に、複数の発光ユニット(
図3(A)においては、発光ユニット106及び発光ユニット108)を有する。なお、発光素子250において、電極101が陽極として機能し、電極102が陰極として機能するとして、以下説明するが、発光素子250の構成としては、逆であっても構わない。
【0188】
また、
図3(A)に示す発光素子250において、発光ユニット106と発光ユニット108と、が積層されており、発光ユニット106と発光ユニット108との間には電荷発生層115が設けられる。なお、発光ユニット106と発光ユニット108は、同じ構成でも異なる構成でもよい。
【0189】
また、発光素子250は、発光層120と、発光層170と、を有する。また、発光ユニット106は、発光層170の他に、正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送層113、及び電子注入層114を有する。また、発光ユニット108は、発光層120の他に、正孔注入層116、正孔輸送層117、電子輸送層118、及び電子注入層119を有する。
【0190】
電荷発生層115は、正孔輸送性材料に電子受容体であるアクセプター性物質が添加された構成であっても、電子輸送性材料に電子供与体であるドナー性物質が添加された構成であってもよい。また、これらの両方の構成が積層されていても良い。
【0191】
電荷発生層115に、有機化合物とアクセプター性物質の複合材料が含まれる場合、該複合材料には実施の形態1に示す正孔注入層111に用いることができる複合材料を用いればよい。有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール化合物、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、有機化合物としては、正孔移動度が1×10-6cm2/Vs以上である物質を適用することが好ましい。ただし、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外の物質を用いてもよい。有機化合物とアクセプター性物質の複合材料は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、低電圧駆動、低電流駆動を実現することができる。なお、発光ユニットの陽極側の面が電荷発生層115に接している場合は、電荷発生層115が該発光ユニットの正孔注入層または正孔輸送層の役割も担うことができるため、該発光ユニットには正孔注入層または正孔輸送層を設けない構成であっても良い。あるいは、発光ユニットの陰極側の面が電荷発生層115に接している場合は、電荷発生層115が該発光ユニットの電子注入層または電子輸送層の役割も担うことができるため、該発光ユニットには電子注入層または電子輸送層を設けない構成であっても良い。
【0192】
なお、電荷発生層115は、有機化合物とアクセプター性物質の複合材料を含む層と他の材料により構成される層を組み合わせた積層構造として形成してもよい。例えば、有機化合物とアクセプター性物質の複合材料を含む層と、電子供与性物質の中から選ばれた一の化合物と電子輸送性の高い化合物とを含む層とを組み合わせて形成してもよい。また、有機化合物とアクセプター性物質の複合材料を含む層と、透明導電膜を含む層とを組み合わせて形成してもよい。
【0193】
なお、発光ユニット106と発光ユニット108とに挟まれる電荷発生層115は、電極101と電極102とに電圧を印加したときに、一方の発光ユニットに電子を注入し、他方の発光ユニットに正孔を注入するものであれば良い。例えば、
図3(A)において、電極101の電位の方が電極102の電位よりも高くなるように電圧を印加した場合、電荷発生層115は、発光ユニット106に電子を注入し、発光ユニット108に正孔を注入する。
【0194】
なお、電荷発生層115は、光取出し効率の点から、可視光に対して透光性(具体的には、電荷発生層115に対する可視光の透過率が40%以上)を有することが好ましい。また、電荷発生層115は、一対の電極(電極101及び電極102)よりも低い導電率であっても機能する。
【0195】
上述した材料を用いて電荷発生層115を形成することにより、発光層が積層された場合における駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0196】
また、
図3(A)においては、2つの発光ユニットを有する発光素子について説明したが、3つ以上の発光ユニットを積層した発光素子についても、同様に適用することが可能である。発光素子250に示すように、一対の電極間に複数の発光ユニットを電荷発生層で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度発光を可能とし、さらに長寿命な発光素子を実現できる。また、消費電力が低い発光素子を実現することができる。
【0197】
なお、上記各構成において、発光ユニット106及び発光ユニット108に用いるゲスト材料が呈する発光色としては、互いに同じであっても異なっていてもよい。発光ユニット106及び発光ユニット108で互いに同じ色の発光を呈する機能を有するゲスト材料を有する場合、発光素子250は少ない電流値で高い発光輝度を呈する発光素子となり好ましい。また、発光ユニット106及び発光ユニット108で互いに異なる色の発光を呈する機能を有するゲスト材料を有する場合、発光素子250は多色発光を呈する発光素子となり好ましい。この場合、発光層120及び発光層170のいずれか一方もしくは双方に発光波長の異なる複数の発光材料を用いることによって、発光素子250が呈する発光スペクトルは異なる発光ピークを有する発光が合成された光となるため、少なくとも二つの極大値を有する発光スペクトルとなる。
【0198】
上記の構成は白色発光を得るためにも好適である。発光層120及び発光層170の光を互いに補色の関係とすることによって、白色発光を得ることができる。特に、演色性の高い白色発光、あるいは少なくとも赤色と緑色と青色とを有する発光になるようゲスト材料を選択することが好適である。
【0199】
また、3つ以上の発光ユニットを積層した発光素子の場合、それぞれの発光ユニットに用いるゲスト材料が呈する発光色は、互いに同じであっても異なっていてもよい。同色の発光を呈する発光ユニットを複数有する場合、この複数の発光ユニットが呈する発光色は、その他の色と比較して、少ない電流値で高い発光輝度を得ることができる。このような構成は、発光色の調整に好適に用いることができる。特に、発光効率が異なり且つ、異なる発光色を呈するゲスト材料を用いる場合に好適である。例えば、3層の発光ユニットを有する場合、同色の蛍光材料を有する発光ユニットを2層、該蛍光材料とは異なる発光色を呈する燐光材料を有する発光ユニットを1層とすることで、蛍光発光と燐光発光の発光強度を調整することができる。すなわち、発光ユニットの数によって発光色の強度を調整可能である。
【0200】
このような蛍光発光ユニットを2層、燐光発光ユニットを1層有する発光素子の場合、青色蛍光材料を含む発光ユニットを2層と黄色燐光材料を含む発光ユニットを1層含有する発光素子または、青色蛍光材料を含む発光ユニットを2層と赤燐光材料及び緑燐光材料を含む発光層ユニットを1層有する発光素子、青色蛍光材料を含む発光ユニットを2層と赤燐光材料、黄色燐光材料、緑燐光材料を含む発光層ユニットを1層有する発光素子、であると効率良く白色発光が得られるため好ましい。
【0201】
また、発光層120または発光層170の少なくとも一つを層状にさらに分割し、当該分割した層ごとに異なる発光材料を含有させるようにしても良い。すなわち、発光層120、または発光層170の少なくとも一つが2層以上の複数層でもって構成することもできる。例えば、第1の発光層と第2の発光層を正孔輸送層側から順に積層して発光層とする場合、第1の発光層のホスト材料として正孔輸送性を有する材料を用い、第2の発光層のホスト材料として電子輸送性を有する材料を用いる構成などがある。この場合、第1の発光層と第2の発光層とが有する発光材料は、同じ材料あっても異なる材料であってもよく、同じ色の発光を呈する機能を有する材料であっても、異なる色の発光を呈する機能を有する材料であってもよい。互いに異なる色の発光を呈する機能を有する複数の発光材料を有する構成により、三原色や、4色以上の発光色からなる演色性の高い白色発光を得ることもできる。
【0202】
なお、複数のユニットのうち、少なくとも一つのユニットに、実施の形態1で示した構成を適用することによって、光取出し効率が良好で、駆動電圧が低減された発光素子を提供することができる。
【0203】
また、発光ユニット108が有する発光層120は、
図3(B)に示すように、ゲスト材料121と、ホスト材料122とを有する。なお、ゲスト材料121は蛍光材料として、以下説明する。
【0204】
≪発光層120の発光機構≫
発光層120の発光機構について、以下説明を行う。
【0205】
一対の電極(電極101及び電極102)あるいは電荷発生層115から注入された電子および正孔が発光層120において再結合することにより、励起子が生成する。ゲスト材料121と比較してホスト材料122は大量に存在するので、励起子の生成により、ほぼホスト材料122の励起状態が形成される。なお、励起子はキャリア(電子および正孔)対のことである。
【0206】
形成されたホスト材料122の励起状態が一重項励起状態である場合、ホスト材料122のS1準位からゲスト材料121のS1準位へ一重項励起エネルギーがエネルギー移動し、ゲスト材料121の一重項励起状態が形成される。
【0207】
ゲスト材料121は蛍光材料であるため、ゲスト材料121において一重項励起状態が形成されると、ゲスト材料121は速やかに発光する。このとき、高い発光効率を得るためには、ゲスト材料121の蛍光量子収率は高いことが好ましい。なお、ゲスト材料121において、キャリアが再結合し、生成した励起状態が一重項励起状態である場合も同様である。
【0208】
次に、キャリアの再結合によってホスト材料122の三重項励起状態が形成される場合について説明する。この場合のホスト材料122およびゲスト材料121のエネルギー準位の相関を
図3(C)に示す。また、
図3(C)における表記および符号は、以下の通りである。なお、ホスト材料122のT1準位がゲスト材料121のT1準位より低いことが好ましいため、
図3(C)では、この場合を図示するが、ホスト材料122のT1準位がゲスト材料121のT1準位よりも高くてもよい。
【0209】
・Guest(121):ゲスト材料121(蛍光材料)
・Host(122):ホスト材料122
・SFG:ゲスト材料121(蛍光材料)のS1準位
・TFG:ゲスト材料121(蛍光材料)のT1準位
・SFH:ホスト材料122のS1準位
・TFH:ホスト材料122のT1準位
【0210】
図3(C)に示すように、三重項-三重項消滅(TTA:Triplet-Triplet Annihilation)によって、キャリアの再結合によって生成した三重項励起子同士が相互作用し、互いに励起エネルギーの受け渡し、及びスピン角運動量の交換を行うことで、結果としてホスト材料122のS1準位(S
FH)のエネルギーを有する一重項励起子に変換される反応が生じる(
図3(C) TTA参照)。ホスト材料122の一重項励起エネルギーは、S
FHから、それよりもエネルギーの低いゲスト材料121のS1準位(S
FG)へエネルギー移動が生じ(
図3(C) ルートE
1参照)、ゲスト材料121の一重項励起状態が形成され、ゲスト材料121が発光する。
【0211】
なお、発光層120における三重項励起子の密度が十分に高い場合(例えば、1×1012cm-3以上)では、三重項励起子単体の失活を無視し、2つの近接した三重項励起子による反応のみを考えることができる。
【0212】
また、ゲスト材料121においてキャリアが再結合し三重項励起状態が形成されるとき、ゲスト材料121の三重項励起状態は熱失活するため、発光に利用することが困難となる。しかしながら、ホスト材料122のT1準位(T
FH)がゲスト材料121のT1準位(T
FG)より低い場合、ゲスト材料121の三重項励起エネルギーは、ゲスト材料121のT1準位(T
FG)からホスト材料122のT1準位(T
FH)へエネルギー移動する(
図3(C) ルートE
2参照)ことが可能であり、その後TTAに利用される。
【0213】
すなわち、ホスト材料122は、三重項励起エネルギーをTTAによって一重項励起エネルギーに変換する機能を有すると好ましい。そうすることで、発光層120で生成した三重項励起エネルギーの一部を、ホスト材料122におけるTTAによって一重項励起エネルギーに変換し、該一重項励起エネルギーをゲスト材料121に移動することで、蛍光発光として取り出すことが可能となる。そのためには、ホスト材料122のS1準位(SFH)は、ゲスト材料121のS1準位(SFG)より高いことが好ましい。また、ホスト材料122のT1準位(TFH)は、ゲスト材料121のT1準位(TFG)より低いことが好ましい。
【0214】
なお、特に、ゲスト材料121のT1準位(TFG)がホスト材料122のT1準位(TFH)よりも低い場合においては、ホスト材料122とゲスト材料121との重量比は、ゲスト材料121の重量比が低い方が好ましい。具体的には、ホスト材料122を1としたときのゲスト材料121の重量比は、0より大きく0.05以下が好ましい。そうすることで、ゲスト材料121でキャリアが再結合する確率を低減させることができる。また、ホスト材料122のT1準位(TFH)からゲスト材料121のT1準位(TFG)へのエネルギー移動が生じる確率を低減させることができる。
【0215】
なお、ホスト材料122は単一の化合物で構成されていても良く、複数の化合物から構成されていても良い。
【0216】
また、発光ユニット106と発光ユニット108とで発光色が異なるゲスト材料を有する場合、発光層120からの発光が、発光層170からの発光よりも短波長側に発光のピークを有する構成とすることが好ましい。高い三重項励起エネルギー準位を有する材料を用いた発光素子は輝度劣化が早い傾向がある。そこで、短波長な発光を呈する発光層にTTAを用いることによって、輝度劣化の小さい発光素子を提供することができる。
【0217】
<発光素子の構成例2>
図4(A)は、発光素子252の断面模式図である。
【0218】
図4(A)に示す発光素子252は、先に示した発光素子250と同様に、一対の電極(電極101及び電極102)の間に、複数の発光ユニット(
図4(A)においては、発光ユニット106及び発光ユニット110)を有する。少なくとも1つの発光ユニットは、EL層100と同様な構成を有する。なお、発光ユニット106と発光ユニット110は、同じ構成でも異なる構成でもよい。
【0219】
また、
図4(A)に示す発光素子252において、発光ユニット106と発光ユニット110とが積層されており、発光ユニット106と発光ユニット110との間には電荷発生層115が設けられる。例えば、発光ユニット106に、EL層100を用いると好ましい。
【0220】
また、発光素子252は、発光層140と、発光層170と、を有する。また、発光ユニット106は、発光層170の他に、正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送層113、及び電子注入層114を有する。また、発光ユニット110は、発光層140の他に、正孔注入層116、正孔輸送層117、電子輸送層118、及び電子注入層119を有する。
【0221】
なお、複数のユニットのうち、少なくとも一つのユニットに、実施の形態1で示した構成を適用することによって、光取出し効率が良好で、駆動電圧が低減された発光素子を提供することができる。
【0222】
発光ユニット110が有する発光層140は、
図4(B)で示すように、ゲスト材料141と、ホスト材料142とを有する。また、ホスト材料142は、有機化合物142_1と、有機化合物142_2と、を有する。なお、発光層140が有するゲスト材料141が燐光材料として、以下説明する。
【0223】
≪発光層140の発光機構≫
次に、発光層140の発光機構について、以下説明を行う。
【0224】
発光層140が有する、有機化合物142_1と、有機化合物142_2とは励起錯体を形成する。
【0225】
有機化合物142_1と有機化合物142_2との組み合わせは、互いに励起錯体を形成することが可能な組み合わせであればよいが、一方が正孔輸送性を有する化合物であり、他方が電子輸送性を有する化合物であることが、より好ましい。
【0226】
発光層140における有機化合物142_1と、有機化合物142_2と、ゲスト材料141とのエネルギー準位の相関を
図4(C)に示す。なお、
図4(C)における表記及び符号は、以下の通りである。
【0227】
・Guest(141):ゲスト材料141(燐光材料)
・Host(142_1):有機化合物142_1(ホスト材料)
・Host(142_2):有機化合物142_2(ホスト材料)
・TPG:ゲスト材料141(燐光材料)のT1準位
・SPH1:有機化合物142_1(ホスト材料)のS1準位
・TPH1:有機化合物142_1(ホスト材料)のT1準位
・SPH2:有機化合物142_2(ホスト材料)のS1準位
・TPH2:有機化合物142_2(ホスト材料)のT1準位
・SPE:励起錯体のS1準位
・TPE:励起錯体のT1準位
【0228】
有機化合物142_1と有機化合物142_2とは励起錯体を形成し、該励起錯体のS1準位(S
PE)とT1準位(T
PE)は互いに隣接するエネルギーとなる(
図4(C) ルートE
3参照)。
【0229】
有機化合物142_1及び有機化合物142_2は、一方がホールを、他方が電子を受け取ることで速やかに励起錯体を形成する。あるいは、一方が励起状態となると、速やかに他方と相互作用することで励起錯体を形成する。したがって、発光層140における励起子のほとんどが励起錯体として存在する。励起錯体の励起エネルギー準位(SPEまたはTPE)は、励起錯体を形成するホスト材料(有機化合物142_1及び有機化合物142_2)のS1準位(SPH1及びSPH2)より低くなるため、より低い励起エネルギーでホスト材料142の励起状態を形成することが可能となる。これによって、発光素子の駆動電圧を下げることができる。
【0230】
そして、励起錯体のS
PEとT
PEの双方のエネルギーを、ゲスト材料141(燐光材料)のT1準位へ移動させて発光が得られる(
図4(C) ルートE
4、E
5参照)。
【0231】
なお、励起錯体のT1準位(TPE)は、ゲスト材料141のT1準位(TPG)より大きいことが好ましい。そうすることで、生成した励起錯体の一重項励起エネルギーおよび三重項励起エネルギーを、励起錯体のS1準位(SPE)およびT1準位(TPE)からゲスト材料141のT1準位(TPG)へエネルギー移動することができる。
【0232】
また、励起錯体からゲスト材料141へ効率よく励起エネルギーを移動させるためには、励起錯体のT1準位(TPE)が、励起錯体を形成する各有機化合物(有機化合物142_1および有機化合物142_2)のT1準位(TPH1およびTPH2)と同等か、より小さいことが好ましい。これにより、各有機化合物(有機化合物142_1及び有機化合物142_2)による励起錯体の三重項励起エネルギーのクエンチが生じにくくなり、効率よく励起錯体からゲスト材料141へエネルギー移動が発生する。
【0233】
また、有機化合物142_1と有機化合物142_2とが、効率よく励起錯体を形成するためには、有機化合物142_1および有機化合物142_2の一方のHOMO準位が他方のHOMO準位より高く、一方のLUMO準位が他方のLUMO準位より高いことが好ましい。例えば、有機化合物142_1が正孔輸送性を有し、有機化合物142_2が電子輸送性を有する場合、有機化合物142_1のHOMO準位が有機化合物142_2のHOMO準位より高いことが好ましく、有機化合物142_1のLUMO準位が有機化合物142_2のLUMO準位より高いことが好ましい。あるいは、有機化合物142_2が正孔輸送性を有し、有機化合物142_1が電子輸送性を有する場合、有機化合物142_2のHOMO準位が有機化合物142_1のHOMO準位より高いことが好ましく、有機化合物142_2のLUMO準位が有機化合物142_1のLUMO準位より高いことが好ましい。具体的には、有機化合物142_1のHOMO準位と有機化合物142_2のHOMO準位とのエネルギー差は、好ましくは0.05eV以上であり、より好ましくは0.1eV以上であり、さらに好ましくは0.2eV以上である。また、有機化合物142_1のLUMO準位と有機化合物142_2のLUMO準位とのエネルギー差は、好ましくは0.05eV以上であり、より好ましくは0.1eV以上であり、さらに好ましくは0.2eV以上である。
【0234】
また、有機化合物142_1と有機化合物142_2との組み合わせが、正孔輸送性を有する化合物と電子輸送性を有する化合物との組み合わせである場合、その混合比によってキャリアバランスを容易に制御することが可能となる。具体的には、正孔輸送性を有する化合物:電子輸送性を有する化合物=1:9乃至9:1(重量比)の範囲が好ましい。また、該構成を有することで、容易にキャリアバランスを制御することができることから、キャリア再結合領域の制御も簡便に行うことができる。
【0235】
発光層140を上述の構成とすることで、発光層140のゲスト材料141(燐光材料)からの発光を、効率よく得ることが可能となる。
【0236】
なお、上記に示すルートE3乃至E5の過程を、本明細書等においてExTET(Exciplex-Triplet Energy Transfer)と呼称する場合がある。別言すると、発光層140は、励起錯体からゲスト材料141への励起エネルギーの供与がある。なお、この場合は必ずしもTPEからSPEへの逆項間交差効率が高い必要はなく、SPEからの発光量子収率が高い必要もないため、材料を幅広く選択することが可能となる。
【0237】
また、発光層170からの発光が、発光層140からの発光よりも短波長側に発光のピークを有する構成とすることが好ましい。短波長の発光を呈する燐光材料を用いた発光素子は輝度劣化が早い傾向がある。そこで、短波長の発光を蛍光発光とすることによって、輝度劣化の小さい発光素子を提供することができる。
【0238】
<発光層に用いることができる材料の例>
次に、発光層120、発光層140、及び発光層170に用いることのできる材料について、以下説明する。
【0239】
≪発光層120に用いることのできる材料≫
発光層120中では、ホスト材料122が重量比で最も多く存在し、ゲスト材料121(蛍光材料)は、ホスト材料122中に分散される。ホスト材料122のS1準位は、ゲスト材料121(蛍光材料)のS1準位よりも高く、ホスト材料122のT1準位は、ゲスト材料121(蛍光材料)のT1準位よりも低いことが好ましい。
【0240】
発光層120において、ゲスト材料121としては、特に限定はないが、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、スチルベン誘導体、アクリドン誘導体、クマリン誘導体、フェノキサジン誘導体、フェノチアジン誘導体などが好ましく、実施の形態1で示した蛍光性化合物を好適に用いることができる。
【0241】
また、発光層120において、ホスト材料122に用いることが可能な材料としては、特に限定はないが、例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq3)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)などの複素環化合物、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα-NPD)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物が挙げられる。また、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、ジベンゾ[g,p]クリセン誘導体等の縮合多環芳香族化合物が挙げられ、具体的には、9,10-ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、N,N-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:CzA1PA)、4-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、N,9-ジフェニル-N-{4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]フェニル}-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPBA)、N,9-ジフェニル-N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPA)、6,12-ジメトキシ-5,11-ジフェニルクリセン、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン(略称:DBC1)、9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、3,6-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:DPCzPA)、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、9,9’-ビアントリル(略称:BANT)、9,9’-(スチルベン-3,3’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’-(スチルベン-4,4’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、3,3’,3’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリピレン(略称:TPB3)などを挙げることができる。また、これら及び公知の物質の中から、上記ゲスト材料121のエネルギーギャップより大きなエネルギーギャップを有する物質を、一種もしくは複数種選択して用いればよい。
【0242】
なお、発光層120は2層以上の複数層でもって構成することもできる。例えば、第1の発光層と第2の発光層を正孔輸送層側から順に積層して発光層120とする場合、第1の発光層のホスト材料として正孔輸送性を有する物質を用い、第2の発光層のホスト材料として電子輸送性を有する物質を用いる構成などがある。
【0243】
また、発光層120において、ホスト材料122は、一種の化合物から構成されていても良く、複数の化合物から構成されていても良い。あるいは、発光層120において、ホスト材料122およびゲスト材料121以外の材料を有していても良い。
【0244】
≪発光層140に用いることのできる材料≫
発光層140中では、ホスト材料142が重量比で最も多く存在し、ゲスト材料141(燐光材料)は、ホスト材料142中に分散される。発光層140のホスト材料142(有機化合物142_1及び有機化合物142_2)のT1準位は、ゲスト材料141のT1準位よりも高いことが好ましい。
【0245】
有機化合物142_1としては、亜鉛やアルミニウム系金属錯体の他、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、キノキサリン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体などが挙げられる。他の例としては、芳香族アミンやカルバゾール誘導体などが挙げられる。具体的には、実施の形態1で示した電子輸送性材料および正孔輸送性材料を用いることができる。
【0246】
有機化合物142_2としては、有機化合物142_1と励起錯体を形成できる組み合わせが好ましい。具体的には、実施の形態1で示した電子輸送性材料および正孔輸送性材料を用いることができる。この場合、有機化合物142_1と有機化合物142_2とで形成される励起錯体の発光ピークが、ゲスト材料141(燐光材料)の三重項MLCT(Metal to Ligand Charge Transfer)遷移の吸収帯、より具体的には、最も長波長側の吸収帯と重なるように、有機化合物142_1、有機化合物142_2、およびゲスト材料141(燐光材料)を選択することが好ましい。これにより、発光効率が飛躍的に向上した発光素子とすることができる。ただし、燐光材料に替えて熱活性化遅延蛍光材料を用いる場合においては、最も長波長側の吸収帯は一重項の吸収帯であることが好ましい。
【0247】
ゲスト材料141(燐光材料)としては、イリジウム、ロジウム、または白金系の有機金属錯体、あるいは金属錯体が挙げられ、中でも有機イリジウム錯体、例えばイリジウム系オルトメタル錯体が好ましい。オルトメタル化する配位子としては4H-トリアゾール配位子、1H-トリアゾール配位子、イミダゾール配位子、ピリジン配位子、ピリミジン配位子、ピラジン配位子、あるいはイソキノリン配位子などが挙げられる。金属錯体としては、ポルフィリン配位子を有する白金錯体などが挙げられる。具体的には、実施の形態1で示したゲスト材料132として例示した材料を用いることができる。
【0248】
発光層140に含まれる発光材料としては、三重項励起エネルギーを発光に変換できる材料であればよい。該三重項励起エネルギーを発光に変換できる材料としては、燐光材料の他に、熱活性化遅延蛍光材料が挙げられる。したがって、燐光材料と記載した部分に関しては、熱活性化遅延蛍光材料と読み替えても構わない。
【0249】
また、熱活性化遅延蛍光を示す材料は、単独で逆項間交差により三重項励起状態から一重項励起状態を生成できる材料であっても良いし、励起錯体(エキサイプレックス、またはExciplexともいう)を形成する複数の材料から構成されても良い。
【0250】
熱活性化遅延蛍光材料が、一種類の材料から構成される場合、具体的には、実施の形態1で示した熱活性化遅延蛍光材料を用いることができる。
【0251】
また、熱活性化遅延蛍光材料をホスト材料として用いる場合、励起錯体を形成する2種類の化合物を組み合わせて用いることが好ましい。この場合、上記に示した励起錯体を形成する組み合わせである電子を受け取りやすい化合物と、正孔を受け取りやすい化合物とを用いることが特に好ましい。
【0252】
≪発光層170に用いることのできる材料≫
発光層170に用いることのできる材料としては、実施の形態1に示す発光層に用いることのできる材料を援用すればよく、そうすることで、発光効率の高い発光素子を作製することができる。
【0253】
また、発光層120、発光層140、及び発光層170に含まれる発光材料の発光色に限定は無く、それぞれ同じでも異なっていても良い。各々から得られる発光が混合されて素子外へ取り出されるので、例えば両者の発光色が互いに補色の関係にある場合、発光素子は白色の光を与えることができる。発光素子の信頼性を考慮すると、発光層120に含まれる発光材料の発光ピーク波長は発光層170に含まれる発光材料のそれよりも短いことが好ましい。
【0254】
なお、発光ユニット106、発光ユニット108、発光ユニット110、及び電荷発生層115は、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法、グラビア印刷等の方法で形成することができる。
【0255】
以上、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0256】
(実施の形態3)
図5(A)は、発光装置を示す上面図、
図5(B)は
図5(A)をA-BおよびC-Dで切断した断面図である。この発光装置は、発光素子の発光を制御するものとして、点線で示された駆動回路部(ソース側駆動回路)601、画素部602、駆動回路部(ゲート側駆動回路)603を含んでいる。また、604は封止基板、625は乾燥材、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空間607になっている。
【0257】
なお、引き回し配線608はソース側駆動回路601及びゲート側駆動回路603に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB:Printed Wiring Board)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態を含むものとする。
【0258】
次に、上記発光装置の断面構造について
図5(B)を用いて説明する。素子基板610上に駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路601と画素部602中の一つの画素が示されている。
【0259】
なお、ソース側駆動回路601はnチャネル型TFT623とpチャネル型TFT624とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路は種々のCMOS回路、PMOS回路、NMOS回路で形成しても良い。また本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバー一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく、外部に形成することもできる。
【0260】
また、画素部602はスイッチング用TFT611と電流制御用TFT612とそのドレインに電気的に接続された第1の電極613とを含む画素により形成される。なお、第1の電極613の端部を覆うように絶縁物614が形成されている。絶縁物614は、ポジ型の感光性樹脂膜を用いることにより形成することができる。
【0261】
また、絶縁物614上に形成される膜の被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有する面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料として感光性アクリルを用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲面をもたせることが好ましい。該曲面の曲率半径は0.2μm以上0.3μm以下が好ましい。また、絶縁物614として、ネガ型の感光材料、或いはポジ型の感光材料のいずれも使用することができる。
【0262】
第1の電極613上には、EL層616、および第2の電極617がそれぞれ形成されている。ここで、陽極として機能する第1の電極613に用いる材料としては、仕事関数の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO膜、またはケイ素を含有したインジウム錫酸化物膜、2wt%以上20wt%以下の酸化亜鉛を含む酸化インジウム膜、窒化チタン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜の他、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との3層構造等を用いることができる。なお、積層構造とすると、配線としての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクトがとれ、さらに陽極として機能させることができる。
【0263】
また、EL層616は、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法、スピンコート法等の種々の方法によって形成される。EL層616を構成する材料としては、低分子化合物、または高分子化合物(オリゴマー、デンドリマーを含む)であっても良い。
【0264】
さらに、EL層616上に形成され、陰極として機能する第2の電極617に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Mg、Li、Ca、またはこれらの合金や化合物、MgAg、MgIn、AlLi等)を用いることが好ましい。なお、EL層616で生じた光が第2の電極617を透過する場合には、第2の電極617として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(ITO、2wt%以上20wt%以下の酸化亜鉛を含む酸化インジウム、ケイ素を含有したインジウム錫酸化物、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層を用いるのが良い。
【0265】
なお、第1の電極613、EL層616、第2の電極617により、発光素子618が形成されている。発光素子618は実施の形態1及び実施の形態2の構成を有する発光素子であると好ましい。なお、画素部は複数の発光素子が形成されてなっているが、本実施の形態における発光装置では、実施の形態1及び実施の形態2で説明した構成を有する発光素子と、それ以外の構成を有する発光素子の両方が含まれていても良い。
【0266】
さらにシール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光素子618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、樹脂若しくは乾燥材又はその両方で充填される場合もある。
【0267】
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂やガラスフリットを用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiber Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0268】
以上のようにして、実施の形態1及び実施の形態2で説明した発光素子を用いた発光装置を得ることができる。
【0269】
<発光装置の構成例1>
図6には発光装置の一例として、白色発光を呈する発光素子を形成し、着色層(カラーフィルタ)を形成した発光装置の例を示す。
【0270】
図6(A)には基板1001、下地絶縁膜1002、ゲート絶縁膜1003、ゲート電極1006、1007、1008、第1の層間絶縁膜1020、第2の層間絶縁膜1021、周辺部1042、画素部1040、駆動回路部1041、発光素子の第1の電極1024W、1024R、1024G、1024B、隔壁1026、EL層1028、発光素子の第2の電極1029、封止基板1031、シール材1032などが図示されている。
【0271】
また、
図6(A)、
図6(B)には着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)を透明な基材1033に設けている。また、黒色層(ブラックマトリックス)1035をさらに設けても良い。着色層及び黒色層が設けられた透明な基材1033は、位置合わせし、基板1001に固定する。なお、着色層、及び黒色層は、オーバーコート層1036で覆われている。また、
図6(A)においては、光が着色層を透過せずに外部へと出る発光層と、各色の着色層を透過して外部に光が出る発光層とがあり、着色層を透過しない光は白、着色層を透過する光は赤、青、緑となることから、4色の画素で映像を表現することができる。
【0272】
図6(B)では赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034Bをゲート絶縁膜1003と第1の層間絶縁膜1020との間に形成する例を示した。
図6(B)に示すように着色層は基板1001と封止基板1031の間に設けられても良い。
【0273】
また、以上に説明した発光装置では、TFTが形成されている基板1001側に光を取り出す構造(ボトムエミッション型)の発光装置としたが、封止基板1031側に発光を取り出す構造(トップエミッション型)の発光装置としても良い。
【0274】
<発光装置の構成例2>
トップエミッション型の発光装置の断面図を
図7に示す。この場合、基板1001は光を通さない基板を用いることができる。TFTと発光素子の陽極とを接続する接続電極を作製するまでは、ボトムエミッション型の発光装置と同様に形成する。その後、第3の層間絶縁膜1037を電極1022を覆って形成する。この絶縁膜は平坦化の役割を担っていても良い。第3の層間絶縁膜1037は第2の層間絶縁膜1021と同様の材料の他、他の様々な材料を用いて形成することができる。
【0275】
発光素子の第1の下部電極1025W、1025R、1025G、1025Bはここでは陽極とするが、陰極であっても構わない。また、
図7のようなトップエミッション型の発光装置である場合、下部電極1025W、1025R、1025G、1025Bは反射電極とすることが好ましい。なお、第2の電極1029は光を反射する機能と、光を透過する機能を有しすると好ましい。また、第2の電極1029と下部電極1025W、1025R、1025G、1025Bとの間でマイクロキャビティ構造を適用し特定波長の光を増幅する機能を有すると好ましい。EL層1028の構成は、実施の形態2で説明したような構成とし、白色の発光が得られるような素子構造とする。
【0276】
図6(A)、
図6(B)、
図7において、白色の発光が得られるEL層の構成としては、発光層を複数層用いること、複数の発光ユニットを用いることなどにより実現すればよい。なお、白色発光を得る構成はこれらに限られない。
【0277】
図7のようなトップエミッション構造では着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)を設けた封止基板1031で封止を行うことができる。封止基板1031には画素と画素との間に位置するように黒色層(ブラックマトリックス)1035を設けても良い。着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)や黒色層(ブラックマトリックス)はオーバーコート層によって覆われていても良い。なお封止基板1031は透光性を有する基板を用いる。
【0278】
また、ここでは赤、緑、青、白の4色でフルカラー表示を行う例を示したが特に限定されず、赤、緑、青の3色でフルカラー表示を行ってもよい。また、赤、緑、青、黄の4色でフルカラー表示を行ってもよい。
【0279】
以上のようにして、実施の形態1及び実施の形態2で説明した発光素子を用いた発光装置を得ることができる。
【0280】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0281】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の電子機器について説明する。
【0282】
本発明の一態様は有機ELを用いた発光素子であるため、平面を有し、発光効率が良好な、信頼性の高い電子機器を作製できる。また、本発明の一態様により、曲面を有し、発光効率が良好な、信頼性の高い電子機器を作製できる。また、本発明の一態様により、可撓性を有し、発光効率が良好な、信頼性の高い電子機器を作製できる。
【0283】
電子機器としては、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
【0284】
また、本発明の一態様の発光装置は、外光の強さによらず、高い視認性を実現することができる。そのため、携帯型の電子機器、装着型の電子機器(ウェアラブル機器)、及び電子書籍端末などに好適に用いることができる。
【0285】
図8(A)、(B)に示す携帯情報端末900は、筐体901、筐体902、表示部903、及びヒンジ部905等を有する。
【0286】
筐体901と筐体902は、ヒンジ部905で連結されている。携帯情報端末900は、折り畳んだ状態(
図8(A))から、
図8(B)に示すように展開させることができる。これにより、持ち運ぶ際には可搬性に優れ、使用するときには大きな表示領域により、視認性に優れる。
【0287】
携帯情報端末900には、ヒンジ部905により連結された筐体901と筐体902に亘って、フレキシブルな表示部903が設けられている。
【0288】
本発明の一態様を用いて作製された発光装置を、表示部903に用いることができる。これにより、高い歩留まりで携帯情報端末を作製することができる。
【0289】
表示部903は、文書情報、静止画像、及び動画像等のうち少なくとも一つを表示することができる。表示部に文書情報を表示させる場合、携帯情報端末900を電子書籍端末として用いることができる。
【0290】
携帯情報端末900を展開すると、表示部903が大きく湾曲した形態で保持される。例えば、曲率半径1mm以上50mm以下、好ましくは5mm以上30mm以下に湾曲した部分を含んで、表示部903が保持される。表示部903の一部は、筐体901から筐体902にかけて、連続的に画素が配置され、曲面状の表示を行うことができる。
【0291】
表示部903は、タッチパネルとして機能し、指やスタイラスなどにより操作することができる。
【0292】
表示部903は、一つのフレキシブルディスプレイで構成されていることが好ましい。これにより、筐体901と筐体902の間で途切れることのない連続した表示を行うことができる。なお、筐体901と筐体902のそれぞれに、ディスプレイが設けられる構成としてもよい。
【0293】
ヒンジ部905は、携帯情報端末900を展開したときに、筐体901と筐体902との角度が所定の角度よりも大きい角度にならないように、ロック機構を有することが好ましい。例えば、ロックがかかる(それ以上に開かない)角度は、90度以上180度未満であることが好ましく、代表的には、90度、120度、135度、150度、または175度などとすることができる。これにより、携帯情報端末900の利便性、安全性、及び信頼性を高めることができる。
【0294】
ヒンジ部905がロック機構を有すると、表示部903に無理な力がかかることなく、表示部903が破損することを防ぐことができる。そのため、信頼性の高い携帯情報端末を実現できる。
【0295】
筐体901及び筐体902は、電源ボタン、操作ボタン、外部接続ポート、スピーカ、マイク等を有していてもよい。
【0296】
筐体901または筐体902のいずれか一方には、無線通信モジュールが設けられ、インターネットやLAN(Local Area Network)、Wi-Fi(登録商標)などのコンピュータネットワークを介して、データを送受信することが可能である。
【0297】
図8(C)に示す携帯情報端末910は、筐体911、表示部912、操作ボタン913、外部接続ポート914、スピーカ915、マイク916、カメラ917等を有する。
【0298】
本発明の一態様を用いて作製された発光装置を、表示部912に用いることができる。これにより、高い歩留まりで携帯情報端末を作製することができる。
【0299】
携帯情報端末910は、表示部912にタッチセンサを備える。電話を掛ける、或いは文字を入力するなどのあらゆる操作は、指やスタイラスなどで表示部912に触れることで行うことができる。
【0300】
また、操作ボタン913の操作により、電源のON、OFF動作や、表示部912に表示される画像の種類の切り替えを行うことができる。例えば、メール作成画面から、メインメニュー画面に切り替えることができる。
【0301】
また、携帯情報端末910の内部に、ジャイロセンサまたは加速度センサ等の検出装置を設けることで、携帯情報端末910の向き(縦か横か)を判断して、表示部912の画面表示の向きを自動的に切り替えることができる。また、画面表示の向きの切り替えは、表示部912に触れること、操作ボタン913の操作、またはマイク916を用いた音声入力等により行うこともできる。
【0302】
携帯情報端末910は、例えば、電話機、手帳または情報閲覧装置等から選ばれた一つまたは複数の機能を有する。具体的には、スマートフォンとして用いることができる。携帯情報端末910は、例えば、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、動画再生、インターネット通信、ゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
【0303】
図8(D)に示すカメラ920は、筐体921、表示部922、操作ボタン923、シャッターボタン924等を有する。またカメラ920には、着脱可能なレンズ926が取り付けられている。
【0304】
本発明の一態様を用いて作製された発光装置を、表示部922に用いることができる。これにより、高い歩留まりでカメラを作製することができる。
【0305】
ここではカメラ920を、レンズ926を筐体921から取り外して交換することが可能な構成としたが、レンズ926と筐体921とが一体となっていてもよい。
【0306】
カメラ920は、シャッターボタン924を押すことにより、静止画または動画を撮像することができる。また、表示部922はタッチパネルとしての機能を有し、表示部922をタッチすることにより撮像することも可能である。
【0307】
なお、カメラ920は、ストロボ装置や、ビューファインダーなどを別途装着することができる。または、これらが筐体921に組み込まれていてもよい。
【0308】
図9(A)乃至(E)は、電子機器を示す図である。これらの電子機器は、筐体9000、表示部9001、スピーカ9003、操作キー9005(電源スイッチまたは操作スイッチを含む)、接続端子9006、センサ9007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン9008等を有する。
【0309】
本発明の一態様を用いて作製された発光装置を、表示部9001に好適に用いることができる。これにより、高い歩留まりで電子機器を作製することができる。
【0310】
図9(A)乃至(E)に示す電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々なコンピュータネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信または受信を行う機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出して表示部に表示する機能、等を有することができる。なお、
図9(A)乃至(E)に示す電子機器が有する機能はこれらに限定されず、その他の機能を有していてもよい。
【0311】
図9(A)は腕時計型の携帯情報端末9200を、
図9(B)は腕時計型の携帯情報端末9201を、それぞれ示す斜視図である。
【0312】
図9(A)に示す携帯情報端末9200は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。また、表示部9001はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、携帯情報端末9200は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。また、携帯情報端末9200は、接続端子9006を有し、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また接続端子9006を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は接続端子9006を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0313】
図9(B)に示す携帯情報端末9201は、
図9(A)に示す携帯情報端末と異なり、表示部9001の表示面が湾曲していない。また、携帯情報端末9201の表示部の外形が非矩形状(
図9(B)においては円形状)である。
【0314】
図9(C)乃至(E)は、折り畳み可能な携帯情報端末9202を示す斜視図である。なお、
図9(C)が携帯情報端末9202を展開した状態の斜視図であり、
図9(D)が携帯情報端末9202を展開した状態または折り畳んだ状態の一方から他方に変化する途中の状態の斜視図であり、
図9(E)が携帯情報端末9202を折り畳んだ状態の斜視図である。
【0315】
携帯情報端末9202は、折り畳んだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。携帯情報端末9202が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された3つの筐体9000に支持されている。ヒンジ9055を介して2つの筐体9000間を屈曲させることにより、携帯情報端末9202を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させることができる。例えば、携帯情報端末9202は、曲率半径1mm以上150mm以下で曲げることができる。
【0316】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0317】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光素子を様々な照明装置に適用する一例について、
図10及び
図11を用いて説明する。本発明の一態様である発光素子を用いることで、発光効率が良好な、信頼性の高い照明装置を作製できる。
【0318】
本発明の一態様の発光素子を、可撓性を有する基板上に作製することで、曲面を有する発光領域を有する電子機器、照明装置を実現することができる。
【0319】
また、本発明の一態様の発光素子を適用した発光装置は、自動車の照明にも適用することができ、例えば、フロントガラス、天井等に照明を設置することもできる。
【0320】
図10(A)は、多機能端末3500の一方の面の斜視図を示し、
図10(B)は、多機能端末3500の他方の面の斜視図を示している。多機能端末3500は、筐体3502に表示部3504、カメラ3506、照明3508等が組み込まれている。本発明の一態様の発光装置を照明3508に用いることができる。
【0321】
照明3508は、本発明の一態様の発光装置を用いることで、面光源として機能する。したがって、LED(Light Emitting Diode)に代表される点光源と異なり、指向性が少ない発光が得られる。例えば、照明3508とカメラ3506とを組み合わせて用いる場合、照明3508を点灯または点滅させて、カメラ3506により撮像することができる。照明3508としては、面光源としての機能を有するため、自然光の下で撮影したような写真を撮影することができる。
【0322】
なお、
図10(A)、(B)に示す多機能端末3500は、
図9(A)乃至
図9(C)に示す電子機器と同様に、様々な機能を有することができる。
【0323】
また、筐体3502の内部に、スピーカ、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン等を有することができる。また、多機能端末3500の内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、多機能端末3500の向き(縦か横か)を判断して、表示部3504の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0324】
表示部3504は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部3504に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部3504に近赤外光を発光するバックライト又は近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。なお、表示部3504に本発明の一態様の発光装置を適用してもよい。
【0325】
図10(C)は、防犯用のライト3600の斜視図を示している。ライト3600は、筐体3602の外側に照明3608を有し、筐体3602には、スピーカ3610等が組み込まれている。本発明の一態様の発光素子を照明3608に用いることができる。
【0326】
ライト3600としては、例えば、照明3608を握持する、掴持する、または保持することで発光することができる。また、筐体3602の内部には、ライト3600からの発光方法を制御できる電子回路を備えていてもよい。該電子回路としては、例えば、1回または間欠的に複数回、発光が可能なような回路としてもよいし、発光の電流値を制御することで発光の光量が調整可能なような回路としてもよい。また、照明3608の発光と同時に、スピーカ3610から大音量の警報音が出力されるような回路を組み込んでもよい。
【0327】
ライト3600としては、あらゆる方向に発光することが可能なため、例えば、暴漢等に向けて光、または光と音で威嚇することができる。また、ライト3600にデジタルスチルカメラ等のカメラを備えることで、撮影機能を有する機能を備えてもよい。
【0328】
図11は、発光素子を室内の照明装置8501として用いた例である。なお、発光素子は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置を形成することもできる。その他、曲面を有する筐体を用いることで、発光領域が曲面を有する照明装置8502を形成することもできる。本実施の形態で示す発光素子は薄膜状であり、筐体のデザインの自由度が高い。したがって、様々な意匠を凝らした照明装置を形成することができる。さらに、室内の壁面に大型の照明装置8503を備えても良い。また、照明装置8501、8502、8503に、タッチセンサを設けて、電源のオンまたはオフを行ってもよい。
【0329】
また、発光素子をテーブルの表面側に用いることによりテーブルとしての機能を備えた照明装置8504とすることができる。なお、その他の家具の一部に発光素子を用いることにより、家具としての機能を備えた照明装置とすることができる。
【0330】
以上のようにして、本発明の一態様の発光装置を適用して照明装置及び電子機器を得ることができる。なお、適用できる照明装置及び電子機器は、本実施の形態に示したものに限らず、あらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
【0331】
また、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例1】
【0332】
本実施例では、本発明の一態様に係る電子デバイスの一種である発光素子の作製例と、当該発光素子の特性について説明する。また、正孔注入層に用いた有機化合物の屈折率及び正孔注入層の屈折率について説明する。本実施例で作製した素子構造の断面図を
図2(A)に示す。また、素子構造の詳細を表1に示す。また、使用した化合物の構造と略称を以下に示す。
【0333】
【0334】
【0335】
【0336】
【0337】
<屈折率の測定>
比較発光素子1乃至比較発光素子4、発光素子5乃至発光素子8及び発光素子9乃至発光素子12の正孔注入層111に用いた有機化合物と正孔注入層111の屈折率を測定した。屈折率はJ.A.Woolam社製回転補償子型多入射角高速分光エリプソメーター(M-2000U)を用いて室温で測定した。測定サンプルは石英基板上に真空蒸着法にて作製した。n Ordinary及びn Extraordinaryを測定し、n averageを算出した。
【0338】
波長が532nmの光における各膜の屈折率測定の結果を
図12に示す。
図12より比較発光素子1乃至比較発光素子4に用いたDBT3P-IIが最も高い屈折率を有していることが分かった。発光素子5乃至発光素子8に用いたdmCBPはn Ordinaryが1.75以下である屈折率が低い有機化合物であることが分かった。また、発光素子9乃至発光素子12に用いたTAPCはn Ordinaryが1.70以下である非常に屈折率が低い有機化合物であることが分かった。
【0339】
また、正孔注入層111には正孔注入性が求められるため電子供与性材料を有することが好ましい。電子供与性材料として屈折率が高いMoO
3を用いた各発光素子の正孔注入層111は、屈折率が高いと予想される。しかし、
図12より、各発光素子の正孔注入層111であるMoO
3をそれぞれの有機化合物に加えた膜の屈折率は、それぞれの有機化合物の屈折率よりも若干上昇する程度であることが分かった。すなわち、正孔注入層111に屈折率の低い有機化合物を用いることで、電子供与性を有する材料に屈折率の高い材料を用いても屈折率が低い正孔注入層111が得られることが分かった。
【0340】
また、
図12より各発光素子の正孔注入層111はそれぞれの有機化合物の膜よりもn Ordinaryとn Extraordinaryの差が小さいことが分かった。すなわち電子受容性材料であるMoO
3と有機化合物の混合膜は、有機化合物膜と比較し、異方性が低下することが分かった。
【0341】
<発光素子の作製>
≪比較発光素子1乃至比較発光素子4の作製≫
ガラス基板上に電極101として、ITSO膜を厚さが70nmになるように形成した。なお、電極101の電極面積は、4mm2(2mm×2mm)とした。なお、ITSO膜の波長が532nmの光における屈折率(n Ordinary)は2.07である。
【0342】
次に、電極101上に正孔注入層111として、1,3,5-トリ-(4-ジベンゾチオフェニル)-ベンゼン(略称:DBT3P-II)と、MoO3と、を重量比(DBT3P-II:MoO3)が2:0.5になるように、且つ厚さがx1nmになるように共蒸着した。なお、x1の値は各発光素子によって異なり、各発光素子におけるx1の値は表2に示す値である。
【0343】
次に、正孔注入層111上に正孔輸送層112として、PCCPを厚さが20nmになるように蒸着した。
【0344】
次に、正孔輸送層112上に発光層130(1)として、4,6mCzP2Pmと、PCCPとIr(pbi-diBuCNp)3(fac体:mer体=3:2の混合物)を重量比(4,6mCzP2Pm:PCCP:Ir(pbi-diBuCNp)3)が0.5:0.5:0.1になるように、且つ厚さが20nmになるように共蒸着し、続いて発光層130(2)として、重量比(4,6mCzP2Pm:PCCP:Ir(pbi-diBuCNp)3)が0.8:0.2:0.1になるように、且つ厚さが20nmになるように共蒸着した。なお、発光層130(1)及び発光層130(2)において、Ir(pbi-diBuCNp)3が燐光発光を呈するゲスト材料である。
【0345】
次に、発光層130(2)上に、第1の電子輸送層118(1)として、4,6mCzP2Pmを厚さが20nmになるように共蒸着した。続けて、第1の電子輸送層118(1)上に第2の電子輸送層118(2)として、バソフェナントロリン(略称:BPhen)を膜厚10nmとなるように、蒸着した。
【0346】
次に、第2の電子輸送層118(2)上に、電子注入層119として、フッ化リチウム(LiF)を厚さが1nmになるように蒸着した。
【0347】
次に、電子注入層119上に、電極102として、アルミニウム(Al)を厚さが200nmになるように形成した。
【0348】
次に、窒素雰囲気のグローブボックス内において、有機EL用封止材を用いて封止するためのガラス基板を、有機材料を形成したガラス基板に固定することで、比較発光素子1乃至比較発光素子4を封止した。具体的には、有機材料を形成したガラス基板上の有機材料の周囲に封止材を塗布し、該基板と封止するためのガラス基板とを貼り合わせ、波長が365nmの紫外光を6J/cm2照射し、80℃にて1時間熱処理した。以上の工程により比較発光素子1乃至比較発光素子4を得た。
【0349】
≪発光素子5乃至発光素子8の作製≫
発光素子5乃至発光素子8の作製工程は上記比較発光素子1乃至比較発光素子4の作製工程と正孔注入層111の作製工程のみ異なり、他の工程は比較発光素子1乃至比較発光素子4と同様に行った。
【0350】
電極101上に正孔注入層111(1)として、dmCBPとMoO3と、を重量比(dmCBP:MoO3)が2:0.5になるように、且つ厚さが35nmになるように共蒸着し、続いてDBT3P-IIと、MoO3と、を重量比(DBT3P-II:MoO3)が2:0.5になるように、且つ厚さがx2nmになるように共蒸着した。なお、x2の値は各発光素子によって異なり、各発光素子におけるx2の値は表3に示す値である。
【0351】
≪発光素子9乃至発光素子12の作製≫
発光素子9乃至発光素子12の作製工程は上記比較発光素子1乃至比較発光素子4の作製工程と正孔注入層111の作製工程のみ異なり、他の工程は比較発光素子1乃至比較発光素子4と同様に行った。
【0352】
電極101上に正孔注入層111(1)として、TAPCとMoO3と、を重量比(TAPC:MoO3)が2:0.5になるように、且つ厚さが35nmになるように共蒸着し、続いてDBT3P-IIと、MoO3と、を重量比(DBT3P-II:MoO3)が2:0.5になるように、且つ厚さがx2nmになるように共蒸着した。なお、x2の値は各発光素子によって異なり、各発光素子におけるx2の値は表3に示す値である。
【0353】
<発光素子の特性>
次に、上記作製した比較発光素子1乃至比較発光素子4及び発光素子5乃至発光素子12の特性を測定した。輝度およびCIE色度の測定には色彩輝度計(トプコン社製、BM-5A)を用い、電界発光スペクトルの測定にはマルチチャンネル分光器(浜松ホトニクス社製、PMA-11)を用いた。なお、各発光素子の測定は室温(23℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0354】
作製した発光素子の中から、比較発光素子1、発光素子5、発光素子9の電流効率-輝度特性を
図13に示す。また、電流密度-電圧特性を
図14に示す。また、外部量子効率-輝度特性を
図15に示す。なお、
図15に示す外部量子効率の値は視野角補正を行っていない、発光素子に対して正面方向から測定した際の外部量子効率である。また、正孔注入層111の有機化合物として、比較発光素子1はDBT3P-IIを、発光素子5はdmCBPを、発光素子9はTAPCをそれぞれ用いた素子であり、正孔注入層111以外の部分は全て同じ素子構造である。
【0355】
図14より、比較発光素子1、発光素子5、発光素子9は同等の電流密度-電圧特性を有していることが分かった。よって、正孔注入層111に屈折率が低い有機化合物を用いても、良好な正孔注入特性を有していることが分かった。
【0356】
また、
図13及び
図15より、比較発光素子1、発光素子5、発光素子9は100cd/Aを超える高い電流効率及び30%を超える高い外部量子効率を有していることが分かった。また、屈折率が低い有機化合物であるdmCBPとTAPCを正孔注入層111に用いた発光素子5、発光素子9は屈折率が高い材料であるDBT3P-IIを用いた比較発光素子1よりも高い効率を示した。
【0357】
また、比較発光素子1、発光素子5及び発光素子9に25mA/cm
2の電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを、
図16に示す。
図16に示す通り、比較発光素子1、発光素子5、発光素子9の発光スペクトルは、515nm及び550nm付近にピークを有しており、発光層130に含まれるゲスト材料である、Ir(pbi-diBuCNp)
3の発光に由来していることがわかった。
【0358】
また、比較発光素子1乃至比較発光素子4及び発光素子5乃至発光素子12の1000cd/m2付近における素子特性を表4に示す。表4に示す外部量子効率は視野角補正を行った後の外部量子効率を示す。
【0359】
【0360】
上記結果から、本実施例で作製した比較発光素子1乃至比較発光素子4及び発光素子5乃至発光素子12は、正孔注入層111の構造に関わらず、良好な駆動電圧、発光効率を示していることが分かる。
【0361】
<正孔注入層111の屈折率と外部量子効率の関係>
図17に表4に示した各素子の値を用いて、各正孔注入層111に用いた有機材料による、色度xと外部量子効率の関係を示す。
図17中、「DBT3P-II」の曲線のデータには比較発光素子1乃至比較発光素子4の値を、「dmCBP」の曲線のデータには発光素子5乃至発光素子8の値を、「TAPC」の曲線のデータには発光素子9乃至発光素子12の値を、それぞれ用いた。ここで、比較発光素子1乃至比較発光素子4及び発光素子5乃至発光素子12において、正孔注入層111の膜厚が同一の場合でも、用いている有機化合物によって、屈折率が異なるため、各発光素子の発光領域から基板までの光路長が変化する。光路長が変化すると、外部量子効率も変化するため、正孔注入層111の屈折率と外部量子効率の関係を評価するとき、各発光素子で光路長を調整する必要があるが、発光素子作製によるEL層膜厚の微調整は困難である。
【0362】
同じ発光材料を用いた発光素子において、各発光素子の発光領域から基板までの光路長が異なる場合、該発光素子から得られる発光スペクトル及び色度にも違いが生じる。一方、各発光素子から同一色度が得られている場合、各発光素子から取り出される発光スペクトルは同一であると考えられる。すなわち、各発光素子から同一の色度が得られている場合、各発光素子の発光領域から基板までの光路長は同一であると言える。よって、外部量子効率と色度xまたは色度yの関係を考えることで、正孔注入層111の屈折率と外部量子効率の関係を評価することができる。
【0363】
図12より正孔注入層111に用いた有機化合物はDBT3P-II>dmCBP>TAPCの順で屈折率が高い。
図17より正孔注入層111に用いた有機化合物の屈折率が低い方ほど外部量子効率が高いことが分かった。これは、エバネッセントモードによる光の減衰が低減し、光取出し効率が向上したためである。
【0364】
以上、正孔注入層111に屈折率が低い有機化合物を用いることによって、正孔注入特性を維持しつつ、光取出し効率が良好な発光素子が得られることが分かった。
【0365】
<正孔注入層111における電子供与性物質と電子受容性物質の体積比率と外部量子効率の関係>
ここで、正孔注入層111における電子供与性物質に対する電子受容性物質(MoO3)の体積比率(以下、MoO3の体積比率と示す)と外部量子効率の関係を調査した。また、素子構造の詳細を表5に示す。また、使用した化合物の構造と略称を以下に示す。なお、他の有機化合物については上述の化合物を参照すればよい。
【0366】
【0367】
【0368】
【0369】
≪発光素子13乃至発光素子18の作製≫
発光素子13乃至発光素子18の作製工程は上記比較発光素子1乃至比較発光素子4の作製工程と正孔注入層111と発光層130の作製工程のみ異なり、他の工程は比較発光素子1乃至比較発光素子4と同様に行った。
【0370】
電極101上に正孔注入層111として、DBT3P-IIとMoO3と、を重量比(DBT3P-II:MoO3)が3-y:yになるように、且つ厚さが40nmになるように共蒸着した。なお、yの値は各発光素子によって異なり、各発光素子におけるyの値は表6に示す値である。また、表6に重量比をMoO3の体積比率に換算した結果も同時に示す。
【0371】
次に、正孔輸送層112上に発光層130(1)として、4,6mCzP2Pmと、PCCPとIr(tBuppm)3を重量比(4,6mCzP2Pm:PCCP:Ir(tBuppm)3)が0.5:0.5:0.075になるように、且つ厚さが20nmになるように共蒸着し、続いて発光層130(2)として、重量比(4,6mCzP2Pm:PCCP:Ir(tBuppm)3)が0.8:0.2:0.075になるように、且つ厚さが20nmになるように共蒸着した。なお、発光層130(1)及び発光層130(2)において、Ir(tBuppm)3が燐光発光を呈するゲスト材料である。
【0372】
<発光素子の特性>
次に、上記作製した発光素子13乃至発光素子18の輝度-外部量子効率特性を測定した。測定は上述の方法で行った。
【0373】
図18に各素子の10000cd/m
2付近における外部量子効率と正孔注入層111におけるMoO
3の体積比率との関係を示す。
図18よりMoO
3の体積比率が電子供与性物質に対して0より大きく0.3以下の領域では外部量子効率が24%乃至26%の高い効率を示しているが、0.3より大きい領域では効率が低下していることが分かる。これは、MoO
3の体積比率が0.3より大きい領域では屈折率の大きい電子受容性物質(MoO
3)の影響を受け、正孔注入層111の屈折率が大きくなっているため、光取出し効率が低下していることが示唆される。一方、MoO
3の体積比率が0より大きく0.3以下の領域では、屈折率の大きい電子受容性物質(MoO
3)の影響が小さく、屈折率が電子受容性物質(MoO
3)より小さい電子供与性物質が有する屈折率が、正孔注入層111の屈折率に対して強く影響しているため、光取出し効率が良好であることが示唆される。すなわち、正孔注入層111のMoO
3の体積比率が0より大きく0.3以下の濃度で用いることによって、光取出し効率が良好な発光素子を作製することができる。
【実施例2】
【0374】
本実施例では、本発明の一態様に係る電子デバイスとして、実施例1とは異なる発光素子の作製例と、当該発光素子の特性について説明する。また、正孔注入層111に用いた有機化合物の屈折率及び正孔注入層の屈折率について説明する。また、素子構造の詳細を表7に示す。使用した化合物の構造と略称を以下に示す。なお、他の有機化合物については先の実施例1を参照すればよい。
【0375】
【0376】
【0377】
【0378】
【0379】
<屈折率の測定>
比較発光素子19乃至比較発光素子22、発光素子23乃至発光素子26及び発光素子27乃至発光素子30の正孔注入層111に用いた有機化合物の屈折率を測定した。屈折率の測定は実施例1と同様に行った。
【0380】
波長が532nmの光における各膜の屈折率測定の結果を
図19に示す。
図19より比較発光素子19乃至比較発光素子22に用いたDBT3P-IIが最も高い屈折率を有していることが分かった。発光素子23乃至発光素子26に用いた9-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:mCzFLP)はn Ordinaryが1.75以下である屈折率が低い有機化合物であることが分かった。また、発光素子27乃至発光素子30に用いた4,4’-[ビス(9-フェニルフルオレン-9-イル)]-トリフェニルアミン(略称:FLP2A)はn Ordinaryが1.75以下である屈折率が低い有機化合物であることが分かった。
【0381】
また、実施例1の結果から、発光素子23乃至発光素子30の正孔注入層111である、mCzFLPまたはFLP2AとMoO3の混合膜はそれぞれの有機化合物と同様の屈折率を有し、比較発光素子19乃至比較発光素子22の正孔注入層111であるDBT3P-IIとMoO3の混合膜よりも屈折率が低いと予想される。
【0382】
<発光素子の作製>
≪比較発光素子19乃至比較発光素子22の作製≫
比較発光素子19乃至比較発光素子22の作製工程は上記比較発光素子1乃至比較発光素子4の作製工程と正孔注入層111と発光層130の作製工程のみ異なり、他の工程は比較発光素子1乃至比較発光素子4と同様に行った。
【0383】
電極101上に正孔注入層111として、DBT3P-IIと、MoO3と、を重量比(DBT3P-II:MoO3)が2:0.5になるように、且つ厚さがz1nmになるように共蒸着した。なお、z1の値は各発光素子によって異なり、各発光素子におけるz1の値は表8に示す値である。
【0384】
次に、正孔輸送層112上に発光層130(1)として、4,6mCzP2Pmと、PCCPとIr(ppy)3を重量比(4,6mCzP2Pm:PCCP:Ir(ppy)3)が0.5:0.5:0.1になるように、且つ厚さが20nmになるように共蒸着し、続いて発光層130(2)として、重量比(4,6mCzP2Pm:PCCP:Ir(ppy)3)が0.8:0.2:0.1になるように、且つ厚さが20nmになるように共蒸着した。なお、発光層130(1)及び発光層130(2)において、Ir(ppy)3が燐光発光を呈するゲスト材料である。
【0385】
≪発光素子23乃至発光素子26の作製≫
発光素子23乃至発光素子26の作製工程は上記比較発光素子19乃至比較発光素子22の作製工程と正孔注入層111の作製工程のみ異なり、他の工程は比較発光素子19乃至比較発光素子22と同様に行った。
【0386】
電極101上に正孔注入層111(1)として、mCzFLPとMoO3と、を重量比(mCzFLP:MoO3)が2:0.5になるように、且つ厚さが35nmになるように共蒸着し、続いてDBT3P-IIと、MoO3と、を重量比(DBT3P-II:MoO3)が2:0.5になるように、且つ厚さがz2nmになるように共蒸着した。なお、z2の値は各発光素子によって異なり、各発光素子におけるz2の値は表9に示す値である。
【0387】
≪発光素子27乃至発光素子30の作製≫
発光素子27乃至発光素子30の作製工程は上記比較発光素子19乃至比較発光素子22の作製工程と正孔注入層111の作製工程のみ異なり、他の工程は比較発光素子19乃至比較発光素子22と同様に行った。
【0388】
電極101上に正孔注入層111(1)として、FLP2AとMoO3と、を重量比(FLP2A:MoO3)が2:0.5になるように、且つ厚さが35nmになるように共蒸着し、続いてDBT3P-IIと、MoO3と、を重量比(DBT3P-II:MoO3)が2:0.5になるように、且つ厚さがz2nmになるように共蒸着した。なお、z2の値は各発光素子によって異なり、各発光素子におけるz2の値は表9に示す値である。
【0389】
<発光素子の特性>
次に、上記作製した比較発光素子19乃至比較発光素子22及び発光素子23乃至発光素子30の特性を測定した。測定は実施例1と同様に行った。
【0390】
作製した発光素子の中から、比較発光素子19、発光素子23、発光素子27の電流効率-輝度特性を
図20に示す。また、電流密度-電圧特性を
図21に示す。また、外部量子効率-輝度特性を
図22に示す。なお、
図22に示す外部量子効率の値は視野角補正を行っていない、発光素子に対して正面方向から測定した際の外部量子効率である。また、正孔注入層111の有機化合物として、比較発光素子19はDBT3P-IIを、発光素子23はmCzFLPを、発光素子27はFLP2Aをそれぞれ用いた素子であり、正孔注入層111以外の部分は全て同じ素子構造である。
【0391】
図21より、比較発光素子19、発光素子23、発光素子27は同等の電流密度-電圧特性を有していることが分かった。よって、実施例1と同様に、正孔注入層111に屈折率が低い有機化合物を用いても、良好な正孔注入特性を有していることが分かった。
【0392】
また、
図20及び
図22より、比較発光素子19、発光素子23、発光素子27は100cd/A前後の高い電流効率及び25%を超える高い外部量子効率を有していることが分かった。また、屈折率が低い有機化合物であるmCzFLPとFLP2Aを正孔注入層111に用いた発光素子23、発光素子27は屈折率が高い材料であるDBT3P-IIを用いた比較発光素子19よりも高い効率を示した。
【0393】
また、比較発光素子19、発光素子23、発光素子27に25mA/cm
2の電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを、
図23に示す。
図23に示す通り、比較発光素子19、発光素子23、発光素子27の発光スペクトルは、518nm付近にピークを有しており、発光層130に含まれるゲスト材料である、Ir(ppy)
3の発光に由来していることがわかった。
【0394】
また、比較発光素子19乃至比較発光素子22及び発光素子23乃至発光素子30の1000cd/m2付近における素子特性を表10に示す。
【0395】
【0396】
上記結果から、本実施例で作製した比較発光素子19乃至比較発光素子22及び発光素子23乃至発光素子30は、正孔注入層111の構造に関わらず、良好な駆動電圧、発光効率を示していることが分かる。
【0397】
<正孔注入層111の屈折率と外部量子効率の関係>
図24に表10に示した各素子の値を用いて、各正孔注入層111に用いた有機材料による、色度xと外部量子効率の関係を示す。
図24中、「DBT3P-II」の曲線のデータには比較発光素子19乃至比較発光素子22の値を、「mCzFLP」の曲線のデータには発光素子23乃至発光素子26の値を、「FLP2A」の曲線のデータには発光素子27乃至発光素子30の値を、それぞれ用いた
【0398】
図19より正孔注入層111に用いた有機化合物はDBT3P-II>mCzFLP>FLP2Aの順で屈折率が高い。
図24より実施例1と同様に正孔注入層111に用いた有機化合物の屈折率が低い方ほど外部量子効率が高いことが分かった。これは、エバネッセントモードによる光の減衰が低減し、光取出し効率が向上したためである。
【0399】
以上、正孔注入層111に屈折率が低い有機化合物を用いることによって、正孔注入特性を維持しつつ、光取出し効率が良好な発光素子が得られることが分かった。
【実施例3】
【0400】
本実施例では、本発明の一態様に係る電子デバイスの一種である発光素子の作製例と、当該発光素子の特性について説明する。また、正孔注入層に用いた有機化合物の屈折率及び正孔注入層の屈折率について説明する。本実施例で作製した素子構造の断面図を
図2(A)に示す。また、素子構造の詳細を表11乃至表14に示す。また、使用した化合物の構造と略称は上述の実施の形態及び実施例を参酌すればよい。
【0401】
【0402】
【0403】
【0404】
【0405】
<屈折率の測定>
比較発光素子31乃至比較発光素子34、発光素子35乃至発光素子38、発光素子39乃至発光素子42、発光素子43乃至発光素子46、比較発光素子47乃至比較発光素子50の正孔注入層111に用いた有機化合物及び比較発光素子31乃至比較発光素子34、発光素子35乃至発光素子38、発光素子39乃至発光素子42、発光素子43乃至発光素子46及び比較発光素子47乃至比較発光素子50に用いた正孔注入層111の屈折率を測定した。屈折率の測定は実施例1に記載の方法と同様に行った。
【0406】
波長が532nmの光における各膜の屈折率測定の結果を
図25に示す。
図25より比較発光素子31乃至比較発光素子34に用いたDBT3P-IIが最も高い屈折率を有していることが分かった。発光素子35乃至発光素子38に用いたCzC、発光素子39乃至発光素子42に用いたCzSi、発光素子43乃至発光素子46に用いたFATPA、比較発光素子47乃至比較発光素子50に用いた1,4-ジ(トリフェニルシリル)ベンゼン(略称:UGH-2)はn Ordinaryがいずれも1.70以下である屈折率が非常に低い有機化合物であることが分かった。
【0407】
また、正孔注入層111には正孔注入性が求められるため電子供与性材料を有することが好ましい。電子供与性材料として屈折率が高いMoO
3を用いた各発光素子の正孔注入層111は、屈折率が高いと予想される。しかし、
図25より、各発光素子の正孔注入層111であるMoO
3をそれぞれの有機化合物に加えた膜の屈折率は、それぞれの有機化合物の屈折率よりも若干上昇する程度であることが分かった。すなわち、正孔注入層111に屈折率の低い電子供与性を有する材料を用いることで、該電子供与性を有する材料に屈折率の高い材料を混合しても屈折率が低い正孔注入層111が得られることが分かった。
【0408】
また、
図25より各発光素子の正孔注入層111はそれぞれの有機化合物の膜よりもn Ordinaryとn Extraordinaryの差が小さいことが分かった。すなわち電子供与性材料であるMoO
3と有機化合物の混合膜は、有機化合物膜と比較し、異方性が低下することが分かった。
【0409】
また、発光素子39乃至発光素子42の正孔注入層111に用いた有機化合物であるCzSi及び比較発光素子47乃至比較発光素子50の正孔注入層111に用いた有機化合物であるUGH-2とMoO3の混合膜はそれぞれの有機化合物と同様の屈折率を有し、比較発光素子1乃至比較発光素子4の正孔注入層111であるDBT3P-IIとMoO3の混合膜よりも屈折率が低いと予想される。
【0410】
<発光素子の作製>
≪比較発光素子31乃至比較発光素子34の作製≫
ガラス基板上に電極101として、ITSO膜を厚さが70nmになるように形成した。なお、電極101の電極面積は、4mm2(2mm×2mm)とした。
【0411】
次に、電極101上に正孔注入層111として、1,3,5-トリ-(4-ジベンゾチオフェニル)-ベンゼン(略称:DBT3P-II)と、MoO3と、を重量比(DBT3P-II:MoO3)が2:0.5になるように、且つ厚さがx3nmになるように共蒸着した。なお、x3の値は各発光素子によって異なり、各発光素子におけるx3の値は表13に示す値である。
【0412】
次に、正孔注入層111上に正孔輸送層112として、PCCPを厚さが20nmになるように蒸着した。
【0413】
次に、正孔輸送層112上に発光層130(1)として、4,6mCzP2Pmと、PCCPとIr(ppy)3を重量比(4,6mCzP2Pm:PCCP:Ir(ppy)3)が0.5:0.5:0.1になるように、且つ厚さが20nmになるように共蒸着し、続いて発光層130(2)として、重量比(4,6mCzP2Pm:PCCP:Ir(ppy)3)が0.8:0.2:0.1になるように、且つ厚さが20nmになるように共蒸着した。なお、発光層130(1)及び発光層130(2)において、Ir(ppy)3が燐光発光を呈するゲスト材料である。
【0414】
次に、発光層130(2)上に、第1の電子輸送層118(1)として、4,6mCzP2Pmを厚さが20nmになるように共蒸着した。続けて、第1の電子輸送層118(1)上に第2の電子輸送層118(2)として、バソフェナントロリン(略称:BPhen)を膜厚10nmとなるように、蒸着した。
【0415】
次に、第2の電子輸送層118(2)上に、電子注入層119として、フッ化リチウム(LiF)を厚さが1nmになるように蒸着した。
【0416】
次に、電子注入層119上に、電極102として、アルミニウム(Al)を厚さが200nmになるように形成した。
【0417】
次に、窒素雰囲気のグローブボックス内において、有機EL用封止材を用いて封止するためのガラス基板を、有機材料を形成したガラス基板に固定することで、比較発光素子31乃至比較発光素子34を封止した。具体的には、有機材料を形成したガラス基板上の有機材料の周囲に封止材を塗布し、該基板と封止するためのガラス基板とを貼り合わせ、波長が365nmの紫外光を6J/cm2照射し、80℃にて1時間熱処理した。以上の工程により比較発光素子31乃至比較発光素子34を得た。
【0418】
≪発光素子35乃至発光素子46及び比較発光素子47乃至比較発光素子50の作製≫
発光素子35乃至発光素子46及び比較発光素子47乃至比較発光素子50の作製工程は上記比較発光素子31乃至比較発光素子34の作製工程と正孔注入層111の作製工程のみ異なり、他の工程は比較発光素子31乃至比較発光素子34と同様に行った。素子構造の詳細は表11乃至表14に示す通りであるため、作製方法の詳細は省略する。
【0419】
<発光素子の特性>
次に、上記作製した比較発光素子31乃至比較発光素子34、発光素子35乃至発光素子46及び比較発光素子47乃至比較発光素子50の特性を測定した。測定は実施例1と同様に行った。
【0420】
作製した発光素子の中から、比較発光素子31、発光素子35、発光素子39、発光素子43及び比較発光素子47の電流効率-輝度特性を
図26に示す。また、電流密度-電圧特性を
図27に示す。また、外部量子効率-輝度特性を
図28に示す。なお、
図28に示す外部量子効率の値は視野角補正を行っていない、発光素子に対して正面方向から測定したときの外部量子効率である。また、正孔注入層111の有機化合物として、比較発光素子31はDBT3P-IIを、発光素子35はCzCを、発光素子39はCzSi、発光素子43はFATPAを、比較発光素子47はUGH-2をそれぞれ用いた素子であり、正孔注入層111以外の部分は全て同じ素子構造である。
【0421】
図26及び
図28より、比較発光素子31、発光素子35、発光素子39、発光素子43及び比較発光素子47は90cd/Aを超える高い電流効率及び25%を超える高い外部量子効率を有していることが分かった。また、屈折率が低い有機化合物を正孔注入層111に用いた発光素子35、発光素子39、発光素子43及び比較発光素子47は屈折率が高い材料であるDBT3P-IIを用いた比較発光素子31よりも高い効率を示した。これは、正孔注入層111に屈折率が小さい有機化合物を用いることでエバネッセント波による光の減衰が抑制されていることが示唆される。
【0422】
また、
図27より、比較発光素子31、発光素子35、発光素子39及び発光素子43は同等の良好な電流密度-電圧特性を有していることが分かった。一方、比較発光素子47は比較発光素子31、発光素子35、発光素子39及び発光素子43と比較し電流密度-電圧特性が低下しており、正孔注入性が低いことが分かった。これは、UGH-2が分子中に電子供与性基を有していないためである。よって、分子内に電子供与性基を有していると、屈折率が小さい材料を正孔注入層111に用いても、良好な正孔注入特性を有する正孔注入層111が作製できることが分かった。
【0423】
また、比較発光素子31、発光素子35、発光素子39、発光素子43及び比較発光素子47に25mA/cm
2の電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを、
図29に示す。
図29に示す通り、比較発光素子31、発光素子35、発光素子39、発光素子43及び比較発光素子47の発光スペクトルは、518nm付近にピークを有しており、発光層130に含まれるゲスト材料である、Ir(ppy)
3の発光に由来していることがわかった。
【0424】
また、比較発光素子31乃至比較発光素子34、発光素子35乃至発光素子46及び比較発光素子47乃至比較発光素子50の1000cd/m2付近における素子特性を表15に示す。表15に示す外部量子効率は視野角補正を行った後の外部量子効率を示す。
【0425】
【0426】
上記結果から、本実施例で作製した比較発光素子31乃至比較発光素子34、発光素子35乃至発光素子46及び比較発光素子47乃至比較発光素子50は、正孔注入層111の構造に関わらず、良好な駆動電圧、発光効率を示していることが分かる。
【0427】
<発光素子の信頼性>
次に、比較発光素子31、発光素子35、発光素子39、発光素子43及び比較発光素子47の2mAにおける定電流駆動試験を行った。その結果を
図30に示す。
図30から、比較発光素子31、発光素子35、発光素子39、発光素子43の信頼性は、比較発光素子47と比較し信頼性が良好であることが分かった。特に発光素子43の信頼性は良好であることが分かった。上述の通り、比較発光素子31、発光素子35、発光素子39、発光素子43の正孔注入層111に用いた有機化合物は分子内に電子供与性基を有しているため、比較発光素子47に用いたUGH-2と比較し、正孔注入性が良好であるためであると考えられる。よって、正孔注入層111の正孔注入性が良好な方が発光素子の信頼性が良好であることが分かった。なお、
図30において、比較発光素子31、発光素子35及び発光素子39の信頼性試験結果は重なっている。
【0428】
<正孔注入層111の屈折率と外部量子効率の関係>
図31に表15に示した各素子の値を用いて、各正孔注入層111に用いた有機材料による、色度xと外部量子効率の関係を示す。
図31中、「DBT3P-II」の曲線のデータには比較発光素子31乃至比較発光素子34の値を、「CzC」の曲線のデータには発光素子35乃至発光素子38の値を、「CzSi」の曲線のデータには発光素子39乃至発光素子42の値を、「FATPA」の曲線のデータには発光素子43乃至発光素子46の値を、「UGH-2」の曲線のデータには比較発光素子47乃至比較発光素子50の値をそれぞれ用いた。
【0429】
図25より正孔注入層111に用いた有機化合物であるDBT3P-IIは屈折率が1.80を超える高い屈折率を有しているが、CzC、CzSi、FATPA,UGH-2は屈折率が1.70以下の屈折率が低い有機化合物である。
図31よりDBT3P-IIを正孔注入層111に用いた発光素子よりも、正孔注入層111に屈折率が低い有機化合物を用いた発光素子の方が高い外部量子効率を有していることが分かった。これは、エバネッセントモードによる光の減衰が低減し、光取出し効率が向上したためである。
【0430】
以上、正孔注入層111にテトラアリールメタン骨格またはテトラアリールシラン骨格のどちらか一方及び、電子供与性基を有する有機化合物を用いることによって、正孔注入特性を維持しつつ、光取出し効率が良好かつ信頼性が良好な発光素子が得られることが分かった。
【実施例4】
【0431】
本実施例では、本発明の一態様に係る電子デバイスの一種である発光素子の作製例と、当該発光素子の特性について説明する。また、正孔注入層に用いた有機化合物の屈折率及び正孔注入層の屈折率について説明する。本実施例で作製した素子構造の断面図を
図2(A)に示す。また、素子構造の詳細を表16及び表17に示す。使用した化合物の構造と略称を以下に示す。なお、他の有機化合物については先の実施例及び実施の形態を参照すればよい。なお、本実施例に示す発光素子は、正孔注入層111に金属酸化物を用いず、有機化合物のみで構成している。
【0432】
【0433】
【0434】
【0435】
<屈折率の測定>
比較発光素子51乃至比較発光素子54、比較発光素子55乃至比較発光素子58、発光素子59乃至発光素子62、発光素子63乃至発光素子66の正孔注入層111の屈折率を測定した。屈折率の測定は実施例1に記載の方法と同様に行った。波長が633nmの光における各膜の屈折率(n Ordinary)の値を表18に示す。
【0436】
【0437】
表18より比較発光素子51乃至比較発光素子54に用いた、N,N,N’,N’-テトラ-ナフタレン-2-イル-ベンジジン(略称:β-TNB)とp-dopant(分析工房(株)より購入)の混合膜及び比較発光素子55乃至比較発光素子58に用いたNPBとp-dopantの混合膜は屈折率が1.75よりも大きく、高い屈折率を有することが分かった。一方、発光素子59乃至発光素子62に用いたBPAFLPとp-dopantの混合膜及び、発光素子63乃至発光素子66に用いたTAPCとp-dopantの混合膜の屈折率は屈折率が1.75よりも低く、低い屈折率を有することが分かった。
【0438】
<発光素子の作製>
≪比較発光素子51乃至比較発光素子54の作製≫
ガラス基板上に電極101として、ITSO膜を厚さが70nmになるように形成した。なお、電極101の電極面積は、4mm2(2mm×2mm)とした。
【0439】
次に、電極101上に正孔注入層111として、β-TNBと、p-dopantと、を重量比(β-TNB:p-dopant)が1:0.01になるように、且つ厚さが60nmとなるように共蒸着した。
【0440】
次に、正孔注入層111上に正孔輸送層112として、PCBBiFを厚さがz1nmになるように蒸着した。なお、z1の値は各発光素子によって異なり、各発光素子におけるz1の値は表17に示す値である。
【0441】
次に、正孔輸送層112上に発光層130(1)として、2mDBTBPDBq-IIと、PCBBiFと、Ir(dppm)2(acac)と、を重量比(2mDBTBPDBq-II:PCBBiF:Ir(dppm)2(acac))が0.7:0.3:0.06になるように、且つ厚さが20nmになるように共蒸着し、続いて発光層130(2)として、重量比(2mDBTBPDBq-II:PCBBiF:Ir(dppm)2(acac))が0.8:0.2:0.06になるように、且つ厚さが20nmになるように共蒸着した。なお、発光層130(1)及び発光層130(2)において、Ir(dppm)2(acac)が燐光発光を呈するゲスト材料である。
【0442】
次に、発光層130(2)上に、第1の電子輸送層118(1)として、2mDBTBPDBq-IIを厚さが20nmになるように共蒸着した。続けて、第1の電子輸送層118(1)上に第2の電子輸送層118(2)として、2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(略称:NBPhen)を膜厚20nmとなるように、蒸着した。
【0443】
次に、第2の電子輸送層118(2)上に、電子注入層119として、フッ化リチウム(LiF)を厚さが1nmになるように蒸着した。
【0444】
次に、電子注入層119上に、電極102として、アルミニウム(Al)を厚さが200nmになるように形成した。
【0445】
次に、窒素雰囲気のグローブボックス内において、有機EL用封止材を用いて封止するためのガラス基板を、有機材料を形成したガラス基板に固定することで、比較発光素子51乃至比較発光素子54を封止した。具体的には、有機材料を形成したガラス基板上の有機材料の周囲に封止材を塗布し、該基板と封止するためのガラス基板とを貼り合わせ、波長が365nmの紫外光を6J/cm2照射し、80℃にて1時間熱処理した。以上の工程により比較発光素子51乃至比較発光素子54を得た。
【0446】
≪比較発光素子55乃至比較発光素子58及び発光素子59乃至発光素子66の作製≫
比較発光素子55乃至比較発光素子58及び発光素子59乃至発光素子66の作製工程は上記比較発光素子51乃至比較発光素子54の作製工程と正孔注入層111の作製工程のみ異なり、他の工程は比較発光素子51乃至比較発光素子54と同様に行った。素子構造の詳細は表16及び表17に示す通りであるため、作製方法の詳細は省略する。
【0447】
<発光素子の特性>
次に、上記作製した比較発光素子51乃至比較発光素子58及び発光素子59乃至発光素子66の特性を測定した。測定は実施例1と同様に行った。1000cd/m2付近における各素子の特性を表19に示す。表19に示す外部量子効率は視野角補正を行う前の外部量子効率を示す。
【0448】
【0449】
上記結果から、本実施例で作製した比較発光素子51乃至比較発光素子58及び発光素子59乃至発光素子66は、正孔注入層111の構造に関わらず、良好な駆動電圧、発光効率を示していることが分かる。
【0450】
<正孔注入層111の屈折率と外部量子効率の関係>
図32に表19に示した各素子の値を用いて、各正孔注入層111に用いた有機材料による、色度yと外部量子効率の関係を示す。
図32中、「β-TNB」の曲線のデータには比較発光素子51乃至比較発光素子54の値を、「NPB」の曲線のデータには比較発光素子55乃至比較発光素子58の値を、「BPAFLP」の曲線のデータには発光素子59乃至発光素子62の値を、「TAPC」の曲線のデータには発光素子63乃至発光素子66の値をそれぞれ用いた。
【0451】
表18よりβ-TNB及びNPBを正孔注入層111に用いた場合、正孔注入層111の屈折率は1.75を超える高い屈折率であるが、BPAFLP及びTAPCを用いた場合は、正孔注入層111の屈折率は1.75以下の低い屈折率である。
図32より、例えばy色度0.435付近の各発光素子の外部量子効率を比較すると、屈折率が低い正孔注入層111を有する発光素子の方が、高い外部量子効率を有していることが分かった。よって同一色度において、屈折率が低い正孔注入層111を有する発光素子の方が良好な発光効率を有していることが分かった。これは、エバネッセントモードによる光の減衰が低減し、光取出し効率が向上したためである。
【0452】
(参考例1)
本参考例では、実施例1で用いた、Ir(pbi-diBuCNp)3の合成方法について説明する。
【0453】
<ステップ1;4-アミノ-3,5-ジイソブチルベンゾニトリルの合成>
4-アミノ-3,5-ジクロロベンゾニトリル52g(280mmol)、イソブチルボロン酸125g(1226mmol)、リン酸三カリウム260g(1226mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(S-phos)5.4g(13.1mmol)、トルエン1500mLを3000mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換し、フラスコ内を減圧しながら攪拌し、この混合物を脱気した。脱気後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)4.8g(5.2mmol)を加え、窒素気流下、130℃で12時間攪拌した。得られた反応溶液にトルエンを加えて、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531-16855)/フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540-00135)/酸化アルミニウムの順に積層したろ過補助剤を通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮し、油状物を得た。得られた油状物をシリカカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒には、トルエンを用いた。得られたフラクションを濃縮して、黄色油状物を61g、収率95%で得た。核磁気共鳴法(NMR)により得られた黄色油状物が4-アミノ-3,5-ジイソブチルベンゾニトリルであることを確認した。ステップ1の合成スキームを下記式(a-1)に示す。
【0454】
【0455】
<ステップ2;4-[N-(2-ニトロフェニル)アミノ]-3,5-ジイソブチルベンゾニトリルの合成>
ステップ1で合成した4-アミノ-3,5-ジイソブチルベンゾニトリル30g(131mmol)、炭酸セシウム86g(263mmol)、ジメチルスルホキシド(DMSO)380mL、2-フルオロニトロベンゼン19g(131mmol)を1000mL三口フラスコに入れ、窒素気流下、120℃で20時間攪拌した。所定時間経過後の反応溶液を、クロロホルムによる抽出を行い粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒には、ヘキサン:酢酸エチル=7:1を用いた。得られたフラクションを濃縮して、橙色固体を得た。得られた固体にヘキサンを加えて吸引ろ過し、黄色固体を16g、収率35%で得た。核磁気共鳴法(NMR)により得られた黄色固体が4-[N-(2-ニトロフェニル)アミノ]-3,5-ジイソブチルベンゾニトリルであることを確認した。ステップ2の合成スキームを下記式(a-2)に示す。
【0456】
【0457】
<ステップ3;4-[N-(2-アミノフェニル)アミノ]-3,5-ジイソブチルベンゾニトリルの合成>
ステップ2で合成した4-[N-(2-ニトロフェニル)アミノ]-3,5-ジイソブチルベンゾニトリル21g(60.0mmol)、水11mL(0.6mol)、エタノール780mLを2000mL三口フラスコに入れ、撹拌した。この混合物に塩化スズ(II)57g(0.3mol)を加え、窒素気流下、80℃で7.5時間撹拌した。所定時間経過後、この混合物を2M水酸化ナトリウム水溶液400mLに注ぎ、16時間室温で撹拌した。析出した沈殿物を吸引ろ過することで除去し、さらにクロロホルムで洗浄し、ろ液を得た。得られたろ液をクロロホルムによる抽出を行った。その後、抽出した溶液を濃縮して白色固体を20g、収率100%で得た。核磁気共鳴法(NMR)により得られた白色固体が4-[N-(2-アミノフェニル)アミノ]-3,5-ジイソブチルベンゾニトリルであることを確認した。ステップ3の合成スキームを下記式(a-3)に示す。
【0458】
【0459】
<ステップ4;1-(4-シアノ-2,6-ジイソブチルフェニル)-2-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:Hpbi-diBuCNp)の合成>
ステップ3で合成した4-[N-(2-アミノフェニル)アミノ]-3,5-ジイソブチルベンゾニトリル20g(60.0mmol)、アセトニトリル200mL、ベンズアルデヒド6.4g(60.0mmol)を1000mLナスフラスコに入れ、100℃で1時間攪拌した。この混合物に塩化鉄(III)100mg(0.60mmol)を加え、100℃で24時間攪拌した。所定時間経過後の反応溶液を、クロロホルムによる抽出を行い、油状物を得た。得られた油状物にトルエンを加えて、セライト/フロリジール/酸化アルミニウムの順に積層したろ過補助剤を通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮し、油状物を得た。得られた油状物をシリカカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒には、トルエンを用いた。得られたフラクションを濃縮して、固体を得た。この固体を酢酸エチル/ヘキサンで再結晶したところ、目的物である白色固体を4.3g、収率18%で得た。核磁気共鳴法(NMR)により得られた白色固体が1-(4-シアノ-2,6-ジイソブチルフェニル)-2-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:Hpbi-diBuCNp)であることを確認した。ステップ4の合成スキームを下記式(a-4)に示す。
【0460】
【0461】
<ステップ5;トリス{2-[1-(4-シアノ-2,6-ジイソブチルフェニル)-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル-κN3]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:Ir(pbi-diBuCNp)3)の合成>
ステップ4で合成した1-(4-シアノ-2,6-ジイソブチルフェニル)-2-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:Hpbi-diBuCNp)1.8g(4.4mmol)、トリス(アセチルアセトナト)イリジウム(III)0.43g(0.88mmol)を、三方コックを付けた反応容器に入れ、250℃にて39時間加熱した。得られた反応混合物にトルエンを加え、不溶物を取り除いた。得られたろ液を濃縮し、固体を得た。得られた固体をシリカカラムクロマトグラフィー(中性シリカ)により精製した。展開溶媒には、トルエンを用いた。得られたフラクションを濃縮して、固体を得た。得られた固体を酢酸エチル/ヘキサンで再結晶し、黄色固体を0.26g、収率21%で得た。合成スキームを下記式(a-5)に示す。
【0462】
【0463】
上記で得られた黄色固体のプロトン(1H)を核磁気共鳴法(NMR)により測定した。測定結果から、本参考例において、Ir(pbi-diBuCNp)3(fac体とmer体の混合物)が得られたことがわかった。なお、1H-NMRから、fac体および、mer体の異性体混合物であることを確認した。異性体比はfac体:mer体=3:2の割合であることがわかった。
【符号の説明】
【0464】
10:基板、11:電極、12:電極、15:基板、20:有機半導体層、30:キャリア輸送層、40:機能層、50:電子デバイス、100:EL層、101:電極、102:電極、106:発光ユニット、108:発光ユニット、110:発光ユニット、111:正孔注入層、112:正孔輸送層、113:電子輸送層、114:電子注入層、115:電荷発生層、116:正孔注入層、117:正孔輸送層、118:電子輸送層、119:電子注入層、120:発光層、121:ゲスト材料、122:ホスト材料、130:発光層、131:ゲスト材料、131_1:有機化合物、131_2:有機化合物、132:ホスト材料、134:発光領域、140:発光層、141:ゲスト材料、142:ホスト材料、142_1:有機化合物、142_2:有機化合物、150:発光素子、170:発光層、200:基板、250:発光素子、252:発光素子、601:ソース側駆動回路、602:画素部、603:ゲート側駆動回路、604:封止基板、605:シール材、607:空間、608:配線、610:素子基板、611:スイッチング用TFT、612:電流制御用TFT、613:電極、614:絶縁物、616:EL層、617:電極、618:発光素子、623:nチャネル型TFT、624:pチャネル型TFT、900:携帯情報端末、901:筐体、902:筐体、903:表示部、905:ヒンジ部、910:携帯情報端末、911:筐体、912:表示部、913:操作ボタン、914:外部接続ポート、915:スピーカ、916:マイク、917:カメラ、920:カメラ、921:筐体、922:表示部、923:操作ボタン、924:シャッターボタン、926:レンズ、1001:基板、1002:下地絶縁膜、1003:ゲート絶縁膜、1006:ゲート電極、1007:ゲート電極、1008:ゲート電極、1020:層間絶縁膜、1021:層間絶縁膜、1022:電極、1024B:電極、1024G:電極、1024R:電極、1024W:電極、1025B:下部電極、1025G:下部電極、1025R:下部電極、1025W:下部電極、1026:隔壁、1028:EL層、1029:電極、1031:封止基板、1032:シール材、1033:基材、1034B:着色層、1034G:着色層、1034R:着色層、1036:オーバーコート層、1037:層間絶縁膜、1040:画素部、1041:駆動回路部、1042:周辺部、3054:表示部、3500:多機能端末、3502:筐体、3504:表示部、3506:カメラ、3508:照明、3600:ライト、3602:筐体、3608:照明、3610:スピーカ、8501:照明装置、8502:照明装置、8503:照明装置、8504:照明装置、9000:筐体、9001:表示部、9003:スピーカ、9005:操作キー、9006:接続端子、9007:センサ、9008:マイクロフォン、9055:ヒンジ、9200:携帯情報端末、9201:携帯情報端末、9202:携帯情報端末