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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】遠隔操作切断装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 23/08 20060101AFI20241021BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20241021BHJP
   B27B 17/00 20060101ALI20241021BHJP
   B28D 1/08 20060101ALI20241021BHJP
   B23D 57/02 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
A01G23/08 501C
E04G23/08 D
B27B17/00 B
B27B17/00 F
B28D1/08
B23D57/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023078345
(22)【出願日】2023-05-11
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】392022721
【氏名又は名称】株式会社和田電業社
(74)【代理人】
【識別番号】100094617
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 正浩
(72)【発明者】
【氏名】和田 功
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特公昭59-031441(JP,B2)
【文献】実開昭54-085494(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 23/08
E04G 23/08
B27B 17/00
B28D 1/08
B23D 57/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断対象である柱状体の基部に取り付けられる取付架台と、
切断装置が着脱自在に搭載される移動台を有し、前記取付架台に装着され、前記柱状体に対して切断装置を水平方向に移動させるスライドテーブルと、
前記スライドテーブルに設けられ、前記移動台を前記取付架台に対して水平方向に移動させる移動手段と、
前記移動手段及び前記切断装置を倒柱範囲外から遠隔操作で制御する制御手段とを具備し、
前記取付架台は、複数のピン穴が形成された板状の基台と、前記基台の表面に設けられ前記スライドテーブルを装着する装着部と、前記基台の側面を前記柱状体へ取り付ける取付部とを備え、前記取付部を前記柱状体の基部に宛がい、締結具を前記柱状体に巻き付けて前記取付部を前記柱状体の基部に固定し、複数の固定具をそれぞれ前記複数のピン穴を介して設置面に打ち込んで前記取付架台を設置面に固定するものであり、
前記取付架台、スライドテーブル及び切断装置を分離して搬送し、前記柱状体に前記取付架台の取付部を締結具で取り付け、前記固定具で設置面に固定し、この取付架台にスライドテーブルを装着し、前記移動台に切断装置を搭載して組み立て、前記制御手段による遠隔操作で前記柱状体の基部を切断する、ことを特徴とする遠隔操作切断装置。
【請求項2】
前記柱状体は、樹木、コンクリート柱または鋼管である、請求項1に記載の遠隔操作切断装置。
【請求項3】
前記切断装置は、チェーンソー、電動チェーンソーあるいは電動のこぎりである、請求項1に記載の遠隔操作切断装置。
【請求項4】
前記取付部は、前記基台の表面上に立設され、係止孔を有するアングル金具を備え、当該アングル金具の対向する二辺を前記柱状体に上下方向に宛がい、前記締結具を前記係止孔に挿通して前記柱状体とともに締め込み、前記取付部を前記柱状体の基部に取り付ける、請求項1に記載の遠隔操作切断装置。
【請求項5】
前記締結具は、自在バンド、ラチェット式ラッシングベルトまたはチェーンブロックである、請求項1に記載の遠隔操作切断装置。
【請求項6】
前記複数の固定具は、前記設置面がコンクリートの場合はコンクリート釘またはオールアンカーであり、前記設置面がアスファルトの場合はコンクリート釘であり、前記設置面が土の場合はピン杭である、請求項1に記載の遠隔操作切断装置。
【請求項7】
前記スライドテーブルは、前記取付架台に装着される枠状体を備え、前記移動台は、この枠状体の長手方向に沿って前記移動手段により水平方向に往復移動する、請求項1に記載の遠隔操作切断装置。
【請求項8】
前記移動手段は、前記枠状体の長手方向に沿って配置された推進軸と、この推進軸に螺合・挿通する状態で回転自在に設けられた雌ネジ孔を有し、前記移動台に固定された支持部材と、前記推進軸を回動駆動する駆動装置を備える、請求項7に記載の遠隔操作切断装置。
【請求項9】
前記制御手段は、有線または無線で、倒柱範囲外から前記移動手段及び前記切断装置を制御するものである、請求項1に記載の遠隔操作切断装置。
【請求項10】
前記制御手段は、命令を送信する送信機と、この送信機からの命令を受信する受信機と、前記受信機で受けた命令に基づいて前記駆動装置のオン/オフ及び回転方向を制御するサーボモータと、前記受信機で受けた命令に基づいて前記切断装置を制御するリニアアクチュエータユニットとを備える、請求項に記載の遠隔操作切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のパーツに分割して搬送し、切断対象の樹木やコンクリート柱の基部に取り付けつつ組み立て、樹木やコンクリート柱を遠隔操作で切断するための、人肩運搬型の遠隔操作切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のパーツに分割して人力で山間地へ搬入し、樹木に取り付けつつ組み立て、樹木を遠隔操作で伐採するための、人肩運搬型の遠隔操作伐採装置が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、特許文献1と同様に複数のパーツに分割して人力で山間地へ搬入し、コンクリート柱に取り付けつつ組み立て、コンクリート柱を遠隔操作で切断するための、人肩運搬型の遠隔操作切断装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5824785号公報
【文献】特許第6963883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1の遠隔操作伐採装置や特許文献2の遠隔操作切断装置は、樹木やコンクリート柱に取付架台の取付部を宛がって、チェーンブロックのチェーンを巻き付けて締め込んで装着する構造になっている。
【0006】
そして、特許文献1の取付架台は、基材の四隅に伐採対象の樹木に対する取付架台の回転方向へのずれを防止する平面視L字の複数の抱え込み部材と、基材の中央部の縦方向に設けられた樹木に接し、樹皮との抵抗を大きくしてずれを防止するために機能する複数の開孔と、基材の両側面に設けられたL字アングルと、L字アングルに設けられた自在バンドのフックを掛けるための係止孔を有する係止部材と、自在バンドを樹木に巻き付けて締め込んだときに、抱え込み部材間の水平方向上下に樹木に食い込むスパイクボルトとを備えている。
【0007】
一方、特許文献2の取付部は、基材の四隅にコンクリート柱に突き当てた状態に接する当接部材と、基材の両側面に設けられ、チェーンブロックのフックを掛けるための係止孔を有する係止部材とで構成され、当接部材は、裏面側に、基材に固定した球状部を内挿する球状孔部を備え、この球状孔部を介して球状部に角度自在・回転自在に取り付けられる。
【0008】
しかしながら、切断面が樹木やコンクリート柱の基部から取付架台分の高さの位置になり、切り株や路面から突出したコンクリート柱の基部が残ることになる。このため、切り株の除去やコンクリート柱の基部の撤去などの後処理作業が必要になり、改良の余地がある。
【0009】
そこで本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、複数のパーツに分割して搬送し、切断対象の柱状体の基部に取り付けつつ組み立て、柱状体を遠隔操作で基部付近から切断できる、人肩運搬型の遠隔操作切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る遠隔操作切断装置においては、切断対象である柱状体の基部に取り付けられる取付架台と、切断装置が着脱自在に搭載される移動台を有し、前記取付架台に装着され、前記柱状体に対して切断装置を水平方向に移動させるスライドテーブルと、前記スライドテーブルに設けられ、前記移動台を前記取付架台に対して水平方向に移動させる移動手段と、前記移動手段及び前記切断装置を倒柱範囲外から遠隔操作で制御する制御手段とを具備し、前記取付架台は、複数のピン穴が形成された板状の基台と、前記基台の表面に設けられ前記スライドテーブルを装着する装着部と、前記基台の側面を前記柱状体へ取り付ける取付部とを備え、前記取付部を前記柱状体の基部に宛がい、締結具を前記柱状体に巻き付けて前記取付部を前記柱状体の基部に固定し、複数の固定具をそれぞれ前記複数のピン穴を介して設置面に打ち込んで前記取付架台を設置面に固定するものであり、前記取付架台、スライドテーブル及び切断装置を分離して搬送し、前記柱状体に前記取付架台の取付部を締結具で取り付け、前記固定具で設置面に固定し、この取付架台にスライドテーブルを装着し、前記移動台に切断装置を搭載して組み立て、前記制御手段による遠隔操作で前記柱状体の基部を切断することで、上述した課題を解決した。
【0011】
また、前記柱状体は、樹木、コンクリート柱または鋼管であることで、上述した課題を解決した。
【0012】
更に、前記切断装置は、チェーンソー、電動チェーンソーあるいは電動のこぎりであることで、上述した課題を解決した。
【0013】
加えて、前記取付部は、前記基台の表面上に立設され、係止孔を有するアングル金具を備え、当該アングル金具の対向する二辺を前記柱状体に上下方向に宛がい、前記締結具を前記係止孔に挿通して前記柱状体とともに締め込み、前記取付部を前記柱状体の基部に取り付けることで、同じく上述した課題を解決した。
【0014】
また、前記締結具は、自在バンド、ラチェット式ラッシングベルトまたはチェーンブロックであることで、同じく上述した課題を解決した。
【0015】
更に、前記複数の固定具は、前記設置面がコンクリートの場合はコンクリート釘またはオールアンカーであり、前記設置面がアスファルトの場合はコンクリート釘であり、前記設置面が土の場合はピン杭であることで、同じく上述した課題を解決した。
【0016】
この他、前記スライドテーブルは、前記取付架台に装着される枠状体を備え、前記移動台は、この枠状体の長手方向に沿って前記移動手段により水平方向に往復移動することで、同じく上述した課題を解決した。
【0017】
また、前記移動手段は、前記枠状体の長手方向に沿って配置された推進軸と、この推進軸に螺合・挿通する状態で回転自在に設けられた雌ネジ孔を有し、前記移動台に固定された支持部材と、前記推進軸を回動駆動する駆動装置を備えることで、同じく上述した課題を解決した。
【0018】
更に、前記制御手段は、有線または無線で、倒柱範囲外から前記移動手段及び前記切断装置を制御するものであることで、同じく上述した課題を解決した。
【0019】
また、前記制御手段は、命令を送信する送信機と、この送信機からの命令を受信する受信機と、前記受信機で受けた命令に基づいて前記駆動装置のオン/オフ及び回転方向を制御するサーボモータと、前記受信機で受けた命令に基づいて前記切断装置を制御するリニアアクチュエータユニットとを備えることで、同じく上述した課題を解決した。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る遠隔操作切断装置によれば、取付架台の板状の基台に設けた取付部を柱状体の基部に宛がい、締結具を柱状体に巻き付けて取付部を柱状体の基部に固定し、複数の固定具をそれぞれ複数のピン穴を介して設置面に打ち込んで取付架台を設置面に固定するので、取付架台を薄くして切断対象の柱状体の基部に取り付けることができる。よって、柱状態を基部付近から切断でき、後処理作業が不要になる。
【0021】
また、制御手段を介して、樹木やコンクリート柱などの柱状体の倒れる範囲外から遠隔操作で柱状体を切断できるので、作業員の安全を確実に確保することができる。
【0022】
具体的には、樹木やコンクリート柱などの柱状体を切断した際に、思わぬ方向に倒れてしまう事態が生じても、作業員は倒れる樹木やコンクリート柱の範囲外にいることから、倒れる樹木やコンクリート柱の直撃を受けることがない。
【0023】
加えて、急傾斜地等で足場が悪く、安定した作業体勢確保が困難であり、倒れる樹木やコンクリート柱からの速やかな退避が困難である場合においても、作業員は予め倒れる範囲の外に避難していることから、作業員の安全を確実に確保することができる。
【0024】
しかも、作業員が直接、チェーンソーなどの切断装置を使用して行う危険な樹木やコンクリート柱の切断作業を最小限にでき、作業の安全、人身災害防止が図れる。また、作業員による切断装置の使用時間を削減できるので、振動による白蝋病等の職業病防止も図れる。
【0025】
更に、取付架台、スライドテーブル及び切断装置を分離して搬送できるので、山間地への人力での搬入も容易である。また、組み立ては、柱状体の基部に取付架台を取り付け、この取付架台にスライドテーブルを装着し、移動台に切断装置を搭載すれば良いので、取付作業の簡便化も図れる。
【0026】
しかも、締結具で柱状体の上下方向に対するずれを抑制し、固定具で取付架台の回転方向のずれを抑制することで、切断装置の振動による取付部の緩みやずれを防止できる。
【0027】
締結具としては、自在バンドまたはチェーンブロックを用いることができる。
【0028】
固定具としては、設置面がコンクリートの場合はコンクリート釘またはオールアンカー、設置面がアスファルトの場合はコンクリート釘、設置面が土の場合はピン杭を用いることで堅固に固定できる。
【0029】
加えて、既存の有線または無線の制御手段、チェーンソー、電動チェーンソーあるいは電動のこぎりなどの切断装置、及び自在バンド、ラチェット式ラッシングベルト、チェーンブロックなどの締結具は、汎用品を流用して遠隔操作切断装置を作製することができるので、開発費や製造コストも少なくて済む。
【0030】
また、制御手段には、無線の場合、送信機、受信機、サーボモータ及びリニアアクチュエータユニット等の市販のラジオコントロールユニットを用いることができる。
【0031】
従って、本発明によれば、複数のパーツに分割して搬送し、切断対象の柱状体の基部に取り付けつつ組み立て、柱状体を遠隔操作で基部付近から切断できる、人肩運搬型の遠隔操作切断装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施形態に係る遠隔操作切断装置の概略構成を示す分解斜視図である。
図2図1に示した遠隔操作切断装置を組み立てた状態を示す斜視図である。
図3図2に示した遠隔操作切断装置を背面側から見た斜視図である。
図4図2に示した遠隔操作切断装置における移動台を移動した状態を示す斜視図である。
図5図1乃至図3に示した遠隔操作切断装置における取付架台の斜視図である。
図6図1乃至図3に示した遠隔操作切断装置におけるスライドテーブルの斜視図である。
図7図6に示したスライドテーブルに移動台を装着した状態を示す斜視図である。
図8】遠隔操作切断装置をコンクリート柱に取り付けた状態を示す平面図である。
図9】遠隔操作切断装置をコンクリート柱に取り付けた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明を実施するための形態を、図面を参照して説明する。
【0034】
図1は、本発明の実施形態に係る遠隔操作切断装置の概略構成を示している。図2図1に示した遠隔操作切断装置を組み立てた状態を示す斜視図であり、図3は背面側から見た斜視図である。この遠隔操作切断装置は、取付架台10、スライドテーブル20、移動台21及びチェーンソー30を備えている。取付架台10は、コンクリート柱40の基部40aに締結具、例えば自在バンド50を用いて装着される。
【0035】
ここでは、切断装置としてチェーンソー30を例に取って説明するが、電動チェーンソーあるいは電動のこぎりを用いることもできる。切断対象の柱状体はコンクリート柱40に限られず樹木や鋼管でも良い。
【0036】
スライドテーブル20は、取付架台10の表面に装着され、このスライドテーブル20に装着された移動台21に、チェーンソー30が着脱自在に搭載される。移動台21は、コンクリート柱40の直径に応じて、市販の自在バンド50やチェーンソーを入れ替えできるようになっている。また、移動台21は、スライドテーブル20上を長手方向に往復移動するようになっており、当該移動台21に搭載したチェーンソー30を、図4に矢印AAで示すように水平方向に移動させてコンクリート柱40の基部40aを切断する。
【0037】
取付架台10は、図5に示すように、長方形の板状の基台10aと、この基台10aの表面に設けられスライドテーブル20を装着する装着部12-1~12-4と、基台10aの側面をコンクリート柱40へ取り付ける取付部13とを備える。基台10aの中央部には、軽量化のために開口10bが形成され、周辺部に複数のピン穴11-1~11-6とネジ穴15-1,15-2が形成されている。
【0038】
装着部12-1~12-4は、本例では基台10aの表面に立設されたL字アングル金具で構成され、スライドテーブル20の四隅を挟み込んで保持するようになっている。装着部12-1~12-4を構成するL字アングル金具は、基台10aの表面に溶接などで固定される。これらL字アングル金具にはそれぞれ、スライドテーブル20の四隅を固定するための固定ボルト12-1a~12-4a,12-1b~12-4bが設けられている。
【0039】
取付部13は、基台10aの表面上に立設され、本例では対向する二辺13c,13dが、コンクリート柱40に上下方向に線状に接するL字アングル金具で構成されている。このL字アングル金具は、基台10aの表面に溶接などで固定される。L字アングル金具の側面には、自在バンド50を挿入するためのスリット状の一対の係止孔13a,13bが形成されている。この取付部13をコンクリート柱40の基部40aに宛がい、自在バンド50を取付部13の係止孔13a,13bを通してコンクリート柱40に巻き付け、自在バンド50を締め込んで取付部13をコンクリート柱40の基部40aに固定する。
【0040】
また、取付架台10の設置面がコンクリートの場合は、コンクリート釘(またはオールアンカー)14-1~14-6を、それぞれピン穴11-1~11-6を介してコンクリート面に打ち込んで固定する。設置面がアスファルトの場合はコンクリート釘を打ち込み、設置面が土の場合はピン杭を打ち込んで取付架台10を固定する。
【0041】
これらの各部を構成する部材には、軽量化のために、例えばアルミニウム等の材料が用いられているが、必要とする強度に応じて選択的に鉄材や鋼材を用いても良い。
【0042】
スライドテーブル20は、図6に示すように、取付架台10の基台10a表面に設けられている装着部12-1~12-4に四隅を挟み込み、固定ボルト12-1a~12-4a,12-1b~12-4bを締め込んで固定する。また、L字アングル金具29-1,29-2のネジ穴29-1a,29-2aと基台10aのネジ穴15-1,15-2にそれぞれボルトを挿通してナットで固定することで装着される。これらのナットを基台10aの表面に溶接しておくことで、基台10aの裏面に突出するのを防ぎ、基台10aの裏面の全面を設置面に接触させることができる。
【0043】
このスライドテーブル20は、アルミニウム等からなる角パイプ22a,22b,22c,22dが溶接等で固着されて形成された枠状体22と、角パイプ22b,22d上に設置された移動レール23-1,23-2とを備えている。枠状体22の角部はそれぞれ、L字アングル金具24-1~24-4で補強されている。また、枠状体22には、長手方向に沿って配置された推進軸(リニアシャフト)25が挿通されている。枠状体22の短手方向の角パイプ22a,22cは、長手方向に沿って配置された推進軸25の両端を支持している。
【0044】
更に、推進軸25の一端には、負荷が生じると空回りするショックガード25aが設けられている。推進軸25の中間部には、支持部材17が設けられている。この支持部材17は、推進軸25に螺合・挿通する状態で回転自在に設けられた雌ネジ孔を有している。そして、モータ16などの駆動装置によって、ショックガード25aを介して推進軸25を回転駆動すると、支持部材17が回転方向に応じて推進軸25に沿って往復移動する。
【0045】
図7に示す移動台21は、チェーンソー30を搭載して枠状体22上を長手方向に沿って水平方向に往復移動するものである。移動台21には、支持部材17が固定されており、移動台21の下面には、移動レール23-1,23-2に係合するスライダー(図示せず)が設けられている。そして、推進軸25をモータ16で回動駆動することにより、移動台21を水平方向に往復移動させる。このように、支持部材17、推進軸25、移動レール23-1,23-2、スライダー、モータ16等は移動手段として働く。
【0046】
移動台21の上面には、チェーンソー30を搭載して固定するための保持具28-1~28-4が設けられている。保持具28-1,28-2は移動台21の上面に固定したL字アングル金具であり、保持具28-3,28-4は、移動台21の上面に取り付けられた突起形状をしている。保持具28-1にチェーンソー30のリアハンドル30cがボルト32-1,32-2を用いて取り付けられ、保持具28-2にチェーンソー30のフロントハンドル30dがボルト33-1,33-2を用いて取り付けられる。また、保持具28-3,28-4でチェーンソー30の下面を固定することでチェーンソー30の本体が移動台21に搭載される。
【0047】
また、この移動台21には、チェーンソー30のスロットル操作を行うスロットル操作装置26と、モータ16の制御装置27が設けられている。スロットル操作装置26は、例えばリニアアクチュエータユニットとリニアモーションガイド(LMガイド)とを備えている。本例ではラジオコントロールユニットを用いており、制御装置27は、受信機とサーボモータ等を備えており制御手段として働く。
【0048】
そして、図示しない送信機の操作による命令または指示を受信機が受信すると、この受信機によりサーボモータとリニアアクチュエータユニットが作動され、モータのオン/オフ及び回転方向の制御と、直線運動部をころがりを用いてガイドするLMガイドによるスロットルレバーの制御が行われる。
【0049】
これによって、コンクリート柱40の倒れる範囲外からチェーンソー30のスロットル操作及びモータ16の回動制御が可能である。もちろん、コンクリート柱40の倒れる範囲外から遠隔操作できれば良いので、有線によるコントロールユニットを用いることも充分に可能である。
【0050】
上述したような構成の取付架台10、スライドテーブル20、移動台21、チェーンソー30及び自在バンド50などは分離して人力で搬送(山間地等に搬入)する。そして、コンクリート柱40に取付架台10の取付部13を宛てがい、コンクリート柱40と取付部13に自在バンド50を巻き付け、自在バンド50を締め込んで取付架台10をコンクリート柱40の切断部である基部40a付近に取り付ける。
【0051】
続いて、この取付架台10にスライドテーブル20を装着し、移動台21にチェーンソー30を搭載して組み立て、無線や有線による遠隔操作でコンクリート柱40の基部40aを切断するようになっている。
【0052】
図8は、遠隔操作切断装置をコンクリート柱40に取り付けた状態を示す平面図であり、図7に示したスライドテーブル20の移動台21にチェーンソー30を搭載し、コンクリート柱40の切断を開始した状態を示している。また、遠隔操作切断装置をコンクリート柱40に取り付けた状態を示す側面図である。図示するように、移動台21がスライドテーブル20の長手方向に沿って水平移動することで、チェーンソー30のガイドバー30bが矢印ABで示すように水平移動し、このガイドバー30bの外周に沿って回転するソーチェーン30aによりコンクリート柱40を切断する。
【0053】
このように、自在バンド50でコンクリート柱40の上下方向に対するずれを抑制し、コンクリート釘14-1~14-6で取付架台10の回転方向のずれを抑制することで、遠隔操作切断装置をコンクリート柱40の基部40aに取り付け、チェーンソー30の振動による取付部13の緩みやずれを抑制して安全に作業できる。
【0054】
上記のような構成の遠隔操作切断装置によれば、送信機による倒柱範囲外からの遠隔操作でコンクリート柱を切断できるので、安定した作業体勢確保が困難な急傾斜地での切断時にも作業員の安全を確保できる。
【0055】
また、危険な切断作業を最小限にでき、作業安全、人身災害防止が図れる。しかも、作業員のチェーンソーの使用時間を削減して、白蝋病等の職業病防止も図れる。
【0056】
更に、取付架台10、スライドテーブル20、チェーンソー30及び自在バンド50等を分離して搬送できるので、山間地への人力での搬入も容易である。そして、組み立ては、コンクリート柱40の基部40aに自在バンド50を用いて取付架台10を取り付け、この取付架台10にスライドテーブル20を装着し、移動台21にチェーンソー30を搭載すれば良いので、コンクリート柱40への切断装置のセットが簡単で分かりやすく、操作性も良好であるので取付作業の簡便化も図れる。
【0057】
また、取付架台10のコンクリート柱40への取り付け時に、取付部13をコンクリート柱40に宛がい、コンクリート柱40に市販の締結具である自在バンド50を巻き付けることで、安全且つ確実に取り付けることができる。しかも、コンクリート釘14-1~14-6でコンクリート柱40に対する取付架台10の回転方向や上下方向へのずれを防止するだけでなく、堅固に固定できるのでチェーンソー30の振動による緩みやずれを防止できる。更に、取付架台10の軽量化による取付作業の簡便化も図れる。
【0058】
加えて、既存の有線または無線の制御手段、チェーンソー、自在バンド等の汎用品を流用することができるので、開発費や製造コストも少なくて済む。また、構成部材は安価な材質で汎用性があり、且つ極力コストが掛からない構造で実現できる。
【0059】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。
【0060】
例えば、上述した実施形態では、取付架台10のコンクリート柱への固定に自在バンド50で固定する例を示したが、自在バンドに代えて、例えば、耐荷重が大きいラチェット式ラッシングベルトを用いることもできる。切断対象が樹木の場合には、チェーンブロックのチェーンを巻き付けて締め付け、取付架台10を固定するようにしても良い。
【0061】
この場合には、取付部13のL字アングル金具の係止孔13a,13bにチェーンブロックのフックを掛ける。この場合には、係止孔13a,13bをスリット状ではなく、丸穴形状にすると良い。
【0062】
この他、各部材をアルミニウムで作成する例を説明したが、アルミニウムに限定されるものではないのはもちろんであり、比較的軽量で十分な強度を持ったものであれば、他の材料や複数の材料の組み合わせでも良い。
【符号の説明】
【0063】
10
取付架台
10a 基台
10b 開口
11-1~11-6 ピン穴
12-1~12-4 装着部
13
取付部(L字アングル金具)
13a,13b 係止孔
13c,13d 対向する二辺
12-1a~12-4a,12-1b~12-4b
固定ボルト
14-1~14-6 コンクリート釘(固定具)
15-1,15-2 ネジ穴
16 モータ
17 支持部材
20
スライドテーブル
21
移動台
22
枠状体
22a,22b,22c,22d 角パイプ
23-1,23-2 移動レール
24-1~24-4 L字アングル金具
25
推進軸(リニアシャフト)
26
スロットル操作装置
27
制御装置(制御手段)
28-1,28-2,28-3 保持具
29-1,29-2 L字アングル金具
29-1a,29-2a ネジ穴
30
チェーンソー(切断装置)
30a ガイドバー
30b ソーチェーン
40
コンクリート柱
40a 基部
50
自在バンド(締結具)
【要約】
【課題】複数のパーツに分割して搬送し、切断対象の柱状体の基部に取り付けつつ組み立て、柱状体を遠隔操作で基部付近から切断できる、人肩運搬型の遠隔操作切断装置を提供する。
【解決手段】遠隔操作切断装置は、取付架台10、スライドテーブル20及び切断装置30を分離して搬送し、柱状体40に取付架台の取付部13を締結具50で取り付け、固定具14-1~14-6で設置面に固定し、この取付架台にスライドテーブル20を装着し、移動台に切断装置を搭載して組み立て、制御手段による遠隔操作で柱状体の基部40aを切断するものである。取付架台は、複数のピン穴11-1~11-6が形成された板状の基台10aと、基台10aの表面に設けられスライドテーブルを装着する装着部12-1~12-4と、基台の側面を柱状体へ取り付ける取付部13とを備えることを特徴とする。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9