(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】発光デバイス、電子機器及び照明装置
(51)【国際特許分類】
H10K 50/13 20230101AFI20241021BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20241021BHJP
H10K 50/12 20230101ALI20241021BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20241021BHJP
H10K 59/40 20230101ALI20241021BHJP
H10K 59/95 20230101ALI20241021BHJP
H10K 85/30 20230101ALI20241021BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20241021BHJP
H10K 101/10 20230101ALN20241021BHJP
H10K 101/20 20230101ALN20241021BHJP
H10K 101/25 20230101ALN20241021BHJP
H10K 101/30 20230101ALN20241021BHJP
H10K 101/40 20230101ALN20241021BHJP
【FI】
H10K50/13
C09K11/06 620
C09K11/06 635
C09K11/06 650
C09K11/06 660
C09K11/06 690
H10K50/12
H10K59/10
H10K59/40
H10K59/95
H10K85/30
H10K85/60
H10K101:10
H10K101:20
H10K101:25
H10K101:30
H10K101:40
(21)【出願番号】P 2023138743
(22)【出願日】2023-08-29
(62)【分割の表示】P 2020570661の分割
【原出願日】2020-01-24
【審査請求日】2023-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2019019692
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】石曽根 崇浩
(72)【発明者】
【氏名】大澤 信晴
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 哲史
【審査官】内村 駿介
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-526773(JP,A)
【文献】国際公開第2010/143434(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0104847(US,A1)
【文献】国際公開第2018/097153(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/198988(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/215535(WO,A1)
【文献】特開2020-017721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-102/20
C09K 11/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に、第1の発光層と第2の発光層とを有し、
前記第1の発光層は、第1の材料と、第2の材料と、を有し、
前記第1の材料は、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、
前記第2の材料は、一重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、かつ発光団および5個以上の保護基を有し、
前記発光団は、縮合芳香環または縮合複素芳香環であり、
前記5個以上の保護基は、それぞれ独立に、炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、および炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基のいずれか一を有し、
前記第2の材料から発光が得られ、
前記第2の発光層は、第3の材料と、前記第3の材料と励起錯体を形成する第4の材料と、白金族元素を有する第5の材料とを有する、発光デバイス。
【請求項2】
請求項1において、
前記5個以上の保護基のうち、少なくとも4個がそれぞれ独立に、炭素数3以上10以下のアルキル基、置換または無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、および炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基のいずれか一である、発光デバイス。
【請求項3】
一対の電極間に、第1の発光層と第2の発光層とを有し、
前記第1の発光層は、第1の材料と第2の材料とを有し、
前記第1の材料は、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、
前記第2の材料は、一重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、かつ発光団および少なくとも4個の保護基を有し、
前記発光団は、縮合芳香環または縮合複素芳香環であり、
前記4個の保護基は、前記縮合芳香環または前記縮合複素芳香環とは直接結合せず、
前記4個の保護基は、それぞれ独立に、炭素数3以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、および炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基のいずれか一を有し、
前記第2の材料から発光が得られ、
前記第2の発光層は、第3の材料と、前記第3の材料と励起錯体を形成する第4の材料と、白金族元素を有する第5の材料とを有する、発光デバイス。
【請求項4】
一対の電極間に、第1の発光層と第2の発光層とを有し、
前記第1の発光層は、第1の材料と第2の材料とを有し、
前記第1の材料は、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、
前記第2の材料は、一重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、
前記第2の材料は、発光団及び2以上のジアリールアミノ基を有し、
前記発光団は、縮合芳香環または縮合複素芳香環であり、
前記縮合芳香環または前記縮合複素芳香環は、前記2以上のジアリールアミノ基と結合し、
前記2以上のジアリールアミノ基中のアリール基は、それぞれ独立に、少なくとも1個の保護基を有し、
前記保護基は、炭素数3以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、および炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基のいずれか一を有し、
前記第2の材料から発光が得られ、
前記第2の発光層は、第3の材料と、前記第3の材料と励起錯体を形成する第4の材料と、白金族元素を有する第5の材料とを有する、発光デバイス。
【請求項5】
一対の電極間に、第1の発光層と第2の発光層とを有し、
前記第1の発光層は、第1の材料と第2の材料とを有し、
前記第1の材料は、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、
前記第2の材料は、一重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、かつ発光団及び2以上のジアリールアミノ基を有し、
前記発光団は、縮合芳香環または縮合複素芳香環であり、
前記縮合芳香環または前記縮合複素芳香環は、前記2以上のジアリールアミノ基と結合し、
前記2以上のジアリールアミノ基中のアリール基は、それぞれ独立に、少なくとも2個の保護基を有し、
前記保護基は、炭素数3以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、および炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基のいずれか一を有し、
前記第2の材料から発光が得られ、
前記第2の発光層は、第3の材料と、前記第3の材料と励起錯体を形成する第4の材料と、白金族元素を有する第5の材料とを有する、発光デバイス。
【請求項6】
請求項4または請求項5において、
前記ジアリールアミノ基がジフェニルアミノ基である、発光デバイス。
【請求項7】
一対の電極間に、第1の発光層と第2の発光層とを有し、
前記第1の発光層は、第1の材料と第2の材料とを有し、
前記第1の材料は、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、
前記第2の材料は、一重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、かつ発光団及び複数の保護基を有し、
前記発光団は、縮合芳香環または縮合複素芳香環であり、
前記複数の保護基は、それぞれ独立に、炭素数3以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、および炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基のいずれか一を有し、
前記複数の保護基を構成する原子の少なくとも一つが、前記縮合芳香環または前記縮合複素芳香環の一方の面の直上に位置し、かつ、前記複数の保護基を構成する原子の少なくとも一つが、前記縮合芳香環または前記縮合複素芳香環の他方の面の直上に位置し、
前記第2の材料から発光が得られ、
前記第2の発光層は、第3の材料と、前記第3の材料と励起錯体を形成する第4の材料と、白金族元素を有する第5の材料とを有する、発光デバイス。
【請求項8】
一対の電極間に、第1の発光層と第2の発光層とを有し、
前記第1の発光層は、第1の材料と第2の材料とを有し、
前記第1の材料は、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、
前記第2の材料は、一重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、かつ発光団及び2以上のジフェニルアミノ基を有し、
前記発光団は、縮合芳香環または縮合複素芳香環であり、
前記縮合芳香環または前記縮合複素芳香環は、前記2以上のジフェニルアミノ基と結合し、
前記2以上のジフェニルアミノ基中のフェニル基は、それぞれ独立に、3位および5位に保護基を有し、
前記保護基は、それぞれ独立に、炭素数3以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、および炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基のいずれか一を有し、
前記第2の材料から発光が得られ、
前記第2の発光層は、第3の材料と、前記第3の材料と励起錯体を形成する第4の材料と、白金族元素を有する第5の材料とを有する、発光デバイス。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項において、
前記保護基が、アルキル基である発光デバイス。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一項において、
前記アルキル基が、分岐鎖アルキル基である発光デバイス。
【請求項11】
請求項10において、
前記分岐鎖アルキル基は4級炭素を有する、発光デバイス。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか一項において、
前記縮合芳香環または前記縮合複素芳香環が、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、クリセン、トリフェニレン、テトラセン、ピレン、ペリレン、クマリン、キナクリドン、およびナフトビスベンゾフランのいずれか一を含む、発光デバイス。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか一項において、
前記第1の発光層はさらに第6の材料を有し、
前記第1の材料と前記第6の材料とは第1の励起錯体を形成する組み合わせである、発光デバイス。
【請求項14】
請求項13において、
前記第1の励起錯体の発光スペクトルは、前記第2の材料の吸収スペクトルと重なる、発光デバイス。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれか一項において、
前記第1の材料は、第1の燐光性材料である、発光デバイス。
【請求項16】
請求項1乃至請求項14のいずれか一項において、
前記第1の材料は、熱活性化遅延蛍光を呈する化合物である、発光デバイス。
【請求項17】
請求項1乃至請求項16のいずれか一項において、
前記白金族元素は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、および白金のいずれかである、発光デバイス。
【請求項18】
請求項1乃至請求項17のいずれか一項において、
前記第1の発光層から得られる発光色と前記第2の発光層から得られる発光色が異なる、発光デバイス。
【請求項19】
請求項1乃至請求項17のいずれか一項において、
前記第2の材料の発光色と前記第5の材料の発光色が異なる、発光デバイス。
【請求項20】
請求項1乃至請求項17のいずれか一項において、
前記第1の発光層から得られる発光スペクトルのピーク波長は、前記第2の発光層から得られる発光スペクトルのピーク波長よりも短波長である、発光デバイス。
【請求項21】
請求項1乃至請求項17のいずれか一項において、
前記第2の材料の発光スペクトルのピーク波長は、前記第5の材料の発光スペクトルのピーク波長よりも短波長である、発光デバイス。
【請求項22】
請求項1乃至請求項21のいずれか一項に記載の発光デバイスと、
筐体またはタッチセンサの少なくとも一方と、
を有する電子機器。
【請求項23】
請求項1乃至請求項21のいずれか一項に記載の発光デバイスと、
筐体またはタッチセンサの少なくとも一方と、
を有する照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、発光デバイス、または該発光デバイスを有する表示装置、電子機器及び照明装置に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の一態様の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関する。または、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。そのため、より具体的に本明細書で開示する本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、液晶表示装置、発光デバイス、照明装置、蓄電装置、記憶装置、それらの駆動方法、または、それらの製造方法、を一例として挙げることができる。
【背景技術】
【0003】
近年、エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence:EL)を利用した発光デバイスの研究開発が盛んに行われている。これら発光デバイスの基本的な構成は、一対の電極間に発光性の物質を含む層(EL層)を挟んだ構成である。このデバイスの電極間に電圧を印加することにより、発光性の物質からの発光が得られる。
【0004】
上述の発光デバイスは自発光型であるため、これを用いた表示装置は、視認性に優れ、バックライトが不要であり、消費電力が少ない等の利点を有する。さらに、薄型軽量に作製でき、応答速度が高いなどの利点も有する。
【0005】
発光性の物質に有機化合物を用い、一対の電極間に当該発光性の有機化合物を含むEL層を設けた発光デバイス(例えば、有機ELデバイス)の場合、一対の電極間に電圧を印加することにより、陰極から電子が、陽極から正孔(ホール)がそれぞれ発光性のEL層に注入され、電流が流れる。そして、注入された電子及び正孔が再結合することによって発光性の有機化合物が励起状態となり、励起された発光性の有機化合物から発光を得ることができる。
【0006】
有機化合物が形成する励起状態の種類としては、一重項励起状態(S*)と三重項励起状態(T*)があり、一重項励起状態からの発光が蛍光、三重項励起状態からの発光が燐光と呼ばれている。また、発光デバイスにおけるそれらの統計的な生成比率は、S*:T*=1:3である。そのため、蛍光を発する化合物(蛍光性材料)を用いた発光デバイスより、燐光を発する化合物(燐光性材料)を用いた発光デバイスの方が、高い発光効率を得ることが可能となる。したがって、三重項励起状態のエネルギーを発光に変換することが可能な燐光性材料を用いた発光デバイスの開発が近年盛んに行われている。
【0007】
燐光性材料を用いた発光デバイスのうち、特に青色の発光を呈する発光デバイスにおいては、高い三重項励起エネルギー準位を有する安定な化合物の開発が困難であるため、青色燐光発光デバイスは未だ実用化に至っていない。そのため、より安定な蛍光性材料を用いた発光デバイスの開発が行われており、蛍光性材料を用いた発光デバイス(蛍光発光デバイス)の発光効率を高める手法が探索されている。
【0008】
三重項励起状態のエネルギーの一部または全てを発光に変換することが可能な材料として、燐光性材料の他に、熱活性化遅延蛍光(Thermally Activated Delayed Fluorescence:TADF)性材料が知られている。熱活性化遅延蛍光性材料では、三重項励起状態から逆項間交差により一重項励起状態が生成され、一重項励起状態から発光に変換される。
【0009】
熱活性化遅延蛍光性材料を用いた発光デバイスにおいて、発光効率を高めるためには、熱活性化遅延蛍光性材料において、三重項励起状態から一重項励起状態が効率よく生成するだけでなく、一重項励起状態から効率よく発光が得られること、すなわち蛍光量子収率が高いことが重要となる。しかしながら、この2つを同時に満たす発光材料を設計することは困難である。
【0010】
また、熱活性化遅延蛍光性材料と、蛍光性材料と、を有する発光デバイスにおいて、熱活性化遅延蛍光性材料の一重項励起エネルギーを、蛍光性材料へと移動させ、蛍光性材料から発光を得る方法が提案されている(特許文献1参照)。すなわち、熱活性化遅延蛍光性材料をホスト材料として、蛍光性材料をゲスト材料として用いる発光デバイスが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
白色発光デバイスに代表される多色発光デバイスはディスプレイ等に応用が期待される。多色発光デバイスの構造としては一対の電極間にそれぞれが異なる発光色を呈する複数の発光層を含むデバイスが好ましい。この場合、信頼性や色純度の観点から燐光性材料を含む発光層と蛍光性材料を含む発光層を組み合わせた発光デバイスの開発が求められている。
【0013】
発光デバイスにおける蛍光発光層の発光効率向上の手法としては例えば、ホスト材料とゲスト材料として蛍光性材料を有する蛍光発光層において、ホスト材料が有する三重項励起エネルギーを一重項励起エネルギーに変換後に、蛍光性材料へ一重項励起エネルギーを移動させる方法が挙げられる。しかし、上述のホスト材料が有する三重項励起エネルギーが一重項励起エネルギーに変換される過程は、三重項励起エネルギーが失活する過程と競合する。そのため、ホスト材料の三重項励起エネルギーが十分に一重項励起エネルギーに変換されない場合がある。三重項励起エネルギーが失活する経路としては例えば、蛍光発光層中において、蛍光性材料が有する最低三重項励起エネルギー準位(T1準位)にホスト材料が有する三重項励起エネルギーが移動する失活経路が考えられる。この失活経路によるエネルギー移動は発光に寄与しないため、蛍光発光層の発光効率低下につながる。この失活経路は、ゲスト材料である蛍光性材料の濃度を薄くすることで抑制可能であるが、その場合同時に、ホスト材料から蛍光性材料の一重項励起状態へのエネルギー移動速度も低下するため、劣化物や不純物による消光が起こりやすくなる。そのため、発光デバイスの輝度が低下しやすくなり、信頼性の低下を招く。また、燐光発光層と蛍光発光層が近接する場合、上述の蛍光性材料のT1準位は燐光発光層が有する三重項励起エネルギーの失活経路にもなり得る。すなわち燐光発光層の発光効率低下を招く。
【0014】
そこで、本発明の一態様では、蛍光発光層において、ホスト材料の三重項励起エネルギーが蛍光性材料のT1準位へ移動することを抑制し、ホスト材料の三重項励起エネルギーを効率良く蛍光性材料の一重項励起エネルギーへ変換し、発光デバイスの蛍光発光効率を高めること、さらに信頼性を向上させることを目的とする。また、燐光発光層及び蛍光発光層を有する発光デバイスにおいて、燐光発光層及び蛍光発光層双方の発光効率を高めることを目的とする。
【0015】
また、本発明の一態様では、発光効率が高い発光デバイスを提供することを課題とする。また、本発明の一態様では、信頼性が高い発光デバイスを提供することを課題とする。また、本発明の一態様では、消費電力が低減された発光デバイスを提供することを課題とする。また、本発明の一態様では、新規な発光デバイスを提供することを課題とする。また、本発明の一態様では、新規な発光機器を提供することを課題とする。また、本発明の一態様では、新規な表示装置を提供することを課題とする。
【0016】
なお、上記の課題の記載は、他の課題の存在を妨げない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はない。上記以外の課題は、明細書等の記載から自ずと明らかであり、明細書等の記載から上記以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様は、一対の電極間に第1の発光層及び第2の発光層を有し、第1の発光層は、第1の材料と第2の材料とを有し、第1の材料は、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、第2の材料は、一重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、かつ発光団および5個以上の保護基を有し、発光団は縮合芳香環または縮合複素芳香環であり、5個以上の保護基は、それぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基のいずれか一を有し、第2の材料から発光が得られ、第2の発光層は、第3の材料と第4の材料を有し、第4の材料は三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、第3の材料の発光スペクトルと第4の材料の吸収スペクトルにおいて最も長波長の吸収帯が重なる、発光デバイスである。
【0018】
また、本発明の別の一態様は、一対の電極間に第1の発光層及び第2の発光層を有し、第1の発光層は、第1の材料と第2の材料とを有し、第1の材料は、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、第2の材料は、一重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、かつ発光団および5個以上の保護基を有し、発光団は縮合芳香環または縮合複素芳香環であり、5個以上の保護基は、それぞれ独立に炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基のいずれか一を有し、第2の材料から発光が得られ、第2の発光層は、第6の材料、第7の材料及び第4の材料を有し、第4の材料は三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、第6の材料及び第7の材料は励起錯体を形成し、励起錯体の発光スペクトルと第4の材料の吸収スペクトルにおいて最も長波長の吸収帯が重なる、発光デバイスである。
【0019】
上記構成において、5個以上の保護基の内、少なくとも4個がそれぞれ独立に、炭素数3以上10以下のアルキル基、置換または無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基のいずれか一であると好ましい。
【0020】
また、本発明の別の一態様は、一対の電極間に第1の発光層及び第2の発光層を有し、第1の発光層は、第1の材料と第2の材料とを有し、第1の材料は、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、第2の材料は、一重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、かつ発光団および少なくとも4つの保護基を有し、発光団は縮合芳香環または縮合複素芳香環であり、4つの保護基は縮合芳香環または縮合複素芳香環とは直接結合せず、4つの保護基はそれぞれ独立に、炭素数3以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基のいずれか一を有し、第2の材料から発光が得られ、第2の発光層は、第3の材料と第4の材料を有し、第4の材料は三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、第3の材料の発光スペクトルと第4の材料の吸収スペクトルにおいて最も長波長の吸収帯が重なる、発光デバイスである。
【0021】
また、本発明の別の一態様は、一対の電極間に第1の発光層及び第2の発光層を有し、第1の発光層は、第1の材料と第2の材料とを有し、第1の材料は、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、第2の材料は、一重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、かつ発光団および少なくとも4つの保護基を有し、発光団は縮合芳香環または縮合複素芳香環であり、4つの保護基は縮合芳香環または縮合複素芳香環とは直接結合せず、4つの保護基はそれぞれ独立に、炭素数3以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基のいずれか一を有し、第2の材料から発光が得られ、第2の発光層は、第3の材料と第4の材料を有し、第4の材料は三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、第3の材料の発光スペクトルと第4の材料の吸収スペクトルにおいて最も長波長の吸収帯が重なる、発光デバイスである。
【0022】
また、本発明の別の一態様は、一対の電極間に第1の発光層及び第2の発光層を有し、第1の発光層は、第1の材料と第2の材料とを有し、第1の材料は、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、第2の材料は、一重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、第2の材料は、発光団及び2以上のジアリールアミノ基を有し、発光団は縮合芳香環または縮合複素芳香環であり、縮合芳香環または縮合複素芳香環は2以上のジアリールアミノ基と結合し、2以上のジアリールアミノ基中のアリール基は、それぞれ独立に、少なくとも1つの保護基を有し、保護基は、炭素数3以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基のいずれか一を有し、第1の材料が有するT1準位は第2の材料が有するS1準位よりも高く、第2の発光層は、第3の材料と第4の材料を有し、第4の材料は三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、第3の材料の発光スペクトルと第4の材料の吸収スペクトルにおいて最も長波長の吸収帯が重なる、発光デバイスである。
【0023】
また、本発明の別の一態様は、一対の電極間に第1の発光層及び第2の発光層を有し、第1の発光層は、第1の材料と第2の材料とを有し、第1の材料は、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、第2の材料は、一重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、かつ発光団及び2以上のジアリールアミノ基を有し、発光団は縮合芳香環または縮合複素芳香環であり、縮合芳香環または縮合複素芳香環は2以上のジアリールアミノ基と結合し、2以上のジアリールアミノ基中のアリール基は、それぞれ独立に、少なくとも2つの保護基を有し、保護基は、炭素数3以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基のいずれか一を有し、第1の材料が有するT1準位は第2の材料が有するS1準位よりも高く、第2の発光層は、第3の材料と第4の材料を有し、第4の材料は三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、第3の材料の発光スペクトルと第4の材料の吸収スペクトルにおいて最も長波長の吸収帯が重なる、発光デバイスである。
【0024】
上記構成において、ジアリールアミノ基がジフェニルアミノ基であると好ましい。
【0025】
また、本発明の別の一態様は、一対の電極間に第1の発光層及び第2の発光層を有し、第1の発光層は、第1の材料と第2の材料とを有し、第1の材料は、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、第2の材料は、一重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、かつ発光団及び複数の保護基を有し、発光団は縮合芳香環または縮合複素芳香環であり、複数の保護基はそれぞれ独立に、炭素数3以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基のいずれか一を有し、複数の保護基を構成する原子の少なくとも一つが、縮合芳香環または縮合複素芳香環の一方の面の直上に位置し、かつ、複数の保護基を構成する原子の少なくとも一つが、縮合芳香環または縮合複素芳香環の他方の面の直上に位置し、第2の材料の発光が得られ、第2の発光層は、第3の材料と第4の材料を有し、第4の材料は三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、第3の材料の発光スペクトルと第4の材料の吸収スペクトルにおいて最も長波長の吸収帯が重なる、発光デバイスである。
【0026】
また、本発明の別の一態様は、一対の電極間に第1の発光層及び第2の発光層を有し、第1の発光層は、第1の材料と第2の材料とを有し、第1の材料は、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、第2の材料は、一重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、かつ発光団及び2以上のジフェニルアミノ基を有し、発光団は縮合芳香環または縮合複素芳香環であり、縮合芳香環または縮合複素芳香環は2以上のジフェニルアミノ基と結合し、2以上のジフェニルアミノ基中のフェニル基は、それぞれ独立に、3位および5位に保護基を有し、保護基は、それぞれ独立に、炭素数3以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基のいずれか一を有し、第2の材料の発光が得られ、第2の発光層は、第3の材料と第4の材料を有し、第4の材料は三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、第3の材料の発光スペクトルと第4の材料の吸収スペクトルにおいて最も長波長の吸収帯が重なる、発光デバイスである。
【0027】
また、上記構成において、アルキル基が分岐鎖アルキル基であると好ましい。
【0028】
また、上記構成において、分岐鎖アルキル基が4級炭素を有すると好ましい。
【0029】
また、上記構成において、縮合芳香環または縮合複素芳香環が、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、クリセン、トリフェニレン、ピレン、テトラセン、ペリレン、クマリン、キナクリドン、ナフトビスベンゾフランのいずれか一を含むと好ましい。
【0030】
また、上記構成において、発光層はさらに第5の材料を有し、第1の材料と第5の材料は励起錯体を形成すると好ましい。
【0031】
上記構成において、第1の励起錯体の発光スペクトルは第2の材料の最も長波長の吸収帯と重なると好ましい。
【0032】
上記構成において、第3の材料は、第6の材料及び第7の材料からなり、第6の材料及び第7の材料は第2の励起錯体を形成し、第3の材料は第2の励起錯体であると好ましい。
【0033】
また、上記構成において、第1の材料が第1の燐光性材料であり、第4の材料は第2の燐光性材料であると好ましい。
【0034】
また、上記構成において、第1の材料が熱活性化遅延蛍光を呈する化合物であり、第4の材料は燐光性材料であると好ましい。
【0035】
また、上記構成において、第3の材料の発光スペクトルのピークのエネルギー値と第4の材料の吸収スペクトルにおける最も長波長の吸収帯のピークのエネルギー値との差が0.2eV以下であると好ましい。
【0036】
また、上記構成において、第1の発光層から得られる発光色と第2の発光層から得られる発光色が異なると好ましく、第1の発光層から得られる発光スペクトルのピーク波長は、第2の発光層から得られる発光スペクトルのピーク波長よりも短波長であるとさらに好ましい。
【0037】
また、本発明の他の一態様は、上記各構成の発光デバイスと、カラーフィルタまたはトランジスタの少なくとも一方と、を有する表示装置である。また、本発明の他の一態様は、当該表示装置と、筐体またはタッチセンサの少なくとも一方と、を有する電子機器である。また、本発明の他の一態様は、上記各構成の発光デバイスと、筐体またはタッチセンサの少なくとも一方と、を有する照明装置である。また、本発明の一態様は、発光デバイスを有する発光装置だけでなく、発光デバイスを有する電子機器も範疇に含める。従って、本明細書中における発光装置とは、画像表示デバイス、または光源(照明装置含む)を指す。また、発光デバイスにコネクター、例えばFPC(Flexible Printed Circuit)、TCP(Tape Carrier Package)が取り付けられた表示モジュール、TCPの先にプリント配線板が設けられた表示モジュール、または発光デバイスにCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装された表示モジュールも発光装置に含む場合がある。
【発明の効果】
【0038】
本発明の一態様により、発光効率が高い発光デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様では、信頼性が高い発光デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様では、消費電力が低減された発光デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様では、新規な発光デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様では、新規な発光機器を提供することができる。または、本発明の一態様では、新規な表示装置を提供することができる。
【0039】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図2】
図2Aは、本発明の一態様の発光デバイスの発光層の断面模式図であり、
図2Bはエネルギー準位の相関を説明する図である。
【
図3】
図3Aは従来のゲスト材料の概念図である。
図3Bは本発明の一態様の発光デバイスに用いるゲスト材料の概念図である。
【
図4】
図4Aは本発明の一態様の発光デバイスに用いるゲスト材料の構造式である。
図4Bは、本発明の一態様の発光デバイスに用いるゲスト材料の球棒図である。
【
図5】
図5Aは、本発明の一態様の発光デバイスの発光層の断面模式図である。
図5B乃至
図5Dは、本発明の一態様の発光デバイスの発光層のエネルギー準位の相関を説明する図である。
【
図6】
図6Aは、本発明の一態様の発光デバイスの発光層の断面模式図である。
図6B及び
図6Cは、本発明の一態様の発光デバイスの発光層のエネルギー準位の相関を説明する図である。
【
図7】
図7Aは、本発明の一態様の発光デバイスの発光層の断面模式図である。
図7B及び
図7Cは、本発明の一態様の発光デバイスの発光層のエネルギー準位の相関を説明する図である。
【
図8】
図8Aは、本発明の一態様の発光デバイスの発光層の断面模式図である。
図8B及び
図8Cは、本発明の一態様の発光デバイスの発光層のエネルギー準位の相関を説明する図である。
【
図9】
図9Aは、本発明の一態様の発光デバイスの発光層の断面模式図である。
図9B及び
図9Cは、本発明の一態様の発光デバイスの発光層のエネルギー準位の相関を説明する図である。
【
図10】
図10Aは、本発明の一態様の発光デバイスの発光層の断面模式図である。
図10B及び
図10Cは、本発明の一態様の発光デバイスの発光層のエネルギー準位の相関を説明する図である。
【
図11】
図11Aは、本発明の一態様の発光デバイスの発光層の断面模式図である。
図11Bは、本発明の一態様の発光デバイスの発光層のエネルギー準位の相関を説明する図である。
【
図12】
図12は、本発明の一態様の発光デバイスの断面模式図である。
【
図13】
図13Aは、本発明の一態様の表示機器を説明する上面図である。
図13Bは、本発明の一態様の表示機器を説明する断面模式図である。
【
図19】
図19は、本発明の一態様の照明装置について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることが可能である。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されない。
【0042】
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0043】
また、本明細書等において、第1、第2等として付される序数詞は便宜上用いており、工程順又は積層順を示さない場合がある。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」又は「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明細書等に記載されている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場合がある。
【0044】
また、本明細書等において、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる場合がある。
【0045】
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0046】
また、本明細書等において、一重項励起状態(S*)は、励起エネルギーを有する一重項状態のことである。また、S1準位は一重項励起エネルギー準位の最も低い準位であり、最も低い一重項励起状態(S1状態)の励起エネルギー準位のことである。また、三重項励起状態(T*)は、励起エネルギーを有する三重項状態のことである。また、T1準位は、三重項励起エネルギー準位の最も低い準位であり、最も低い三重項励起状態(T1状態)の励起エネルギー準位のことである。なお、本明細書等において、単に一重項励起状態および一重項励起エネルギー準位と表記した場合であっても、S1状態およびS1準位を表す場合がある。また、三重項励起状態および三重項励起エネルギー準位と表記した場合であっても、T1状態およびT1準位を表す場合がある。
【0047】
また、本明細書等において蛍光性材料とは、一重項励起状態から基底状態へ緩和する際に可視光領域に発光を与える化合物である。燐光性材料とは、三重項励起状態から基底状態へ緩和する際に、室温において可視光領域に発光を与える化合物である。換言すると燐光性材料とは、三重項励起エネルギーを可視光へ変換可能な化合物の一つである。
【0048】
また、本明細書等において、青色の波長領域は、400nm以上490nm未満であり、青色の発光は、該波長領域に少なくとも一つの発光スペクトルピークを有する。また、緑色の波長領域は、490nm以上580nm未満であり、緑色の発光は、該波長領域に少なくとも一つの発光スペクトルピークを有する。また、赤色の波長領域は、580nm以上680nm以下であり、赤色の発光は、該波長領域に少なくとも一つの発光スペクトルピークを有する。
【0049】
また、本明細書等において、発光層は1種以上の蛍光性材料または燐光性材料を含む層である。蛍光発光層とは蛍光発光を有する発光が得られる層であり、燐光発光層とは燐光発光を有する発光が得られる層である。発光デバイスに電流を流した際に、発光デバイスからは発光層に含まれる蛍光性材料または燐光性材料に由来する発光が得られる。
【0050】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光デバイスについて、
図1乃至
図5を用いて以下説明する。
【0051】
<発光デバイスの構成例>
まず、本発明の一態様の発光デバイスの構成について、
図1を用いて、以下説明する。
【0052】
図1A及び
図1Bは、本発明の一態様の発光デバイス150及び発光デバイス152の断面模式図である。
【0053】
発光デバイス150及び発光デバイス152はそれぞれ、一対の電極(電極101及び電極102)を有し、該一対の電極間に設けられたEL層100またはEL層200を有する。EL層100及びEL層200は、少なくとも発光層130a及び発光層130bを有する。
【0054】
また、
図1Aに示すEL層100は、発光層130a及び発光層130bの他に、正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送層118、及び電子注入層119等の機能層を有し、
図1Bに示すEL層200はさらに分離層120を有する。すなわち、EL層200はEL層100に分離層120を加えた構成である。
【0055】
なお、本実施の形態においては、一対の電極のうち、電極101を陽極として、電極102を陰極として説明するが、発光デバイス150及び発光デバイス152の構成としては、その限りではない。つまり、電極101を陰極とし、電極102を陽極とし、当該電極間の各層の積層を、逆の順番にしてもよい。すなわち、陽極側から、正孔注入層111と、正孔輸送層112と、発光層130aと、発光層130bと、電子輸送層118と、電子注入層119と、が積層する順番とすればよい。
【0056】
また、
図1A及び
図1Bは、正孔輸送層112と発光層130aが、電子輸送層118と発光層130bがそれぞれ隣接するように図示しているが、発光デバイス150及び発光デバイス152の構成としてはその限りではない。つまり、発光デバイス150及び発光デバイス152は正孔輸送層112と発光層130bが、電子輸送層118と発光層130aがそれぞれ隣接する構成としても良い。
【0057】
なお、EL層100及びEL層200の構成は、
図1A及び
図1Bに示す構成に限定されず、正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送層118、及び電子注入層119の中から選ばれた少なくとも一つを有する構成とすればよい。あるいは、EL層100及びEL層200は、正孔または電子の注入障壁を低減する、正孔または電子の輸送性を向上する、正孔または電子の輸送性を阻害する、または電極による消光現象を抑制する、ことができる等の機能を有する機能層を有する構成としてもよい。なお、機能層はそれぞれ単層であっても、複数の層が積層された構成であってもよい。
【0058】
なお、本実施の形態において発光層130aは蛍光性材料を含む蛍光発光層、発光層130bは燐光性材料を含む燐光発光層として説明する。よって、本発明の一態様の発光デバイスから蛍光発光及び燐光発光双方を得ることができる。
【0059】
<発光層130aの発光機構>
次に、蛍光発光層である発光層130aの発光機構について、以下説明を行う。
【0060】
本発明の一態様の発光デバイス150及び発光デバイス152においては、一対の電極(電極101及び電極102)間に電圧を印加することにより、陰極から電子が、陽極から正孔(ホール)が、それぞれEL層100またはEL層200に注入され、電流が流れる。キャリア(電子および正孔)の再結合によって生じる励起子のうち、一重項励起子と三重項励起子の比(以下、励起子生成確率)は、統計的確率により、1:3となる。すなわち、一重項励起子が生成する割合は25%であり、三重項励起子が生成する割合は75%であるため、三重項励起子を発光に寄与させることが、発光デバイスの発光効率を向上させるためには重要である。したがって、発光層130aには、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する材料を用いると好ましい。
【0061】
三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する材料として燐光性材料が挙げられる。本明細書等において、燐光性材料とは、低温(例えば77K)以上室温以下の温度範囲(すなわち、77K以上313K以下)のいずれかにおいて、燐光を呈し、且つ蛍光を呈さない化合物のことをいう。該燐光性材料は、スピン軌道相互作用の大きい金属元素を有すると好ましく、具体的には遷移金属元素が好ましく、特に白金族元素(ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、または白金(Pt))を有することが好ましく、中でもイリジウムが好ましい。Irを有することで、一重項基底状態と三重項励起状態との間の直接遷移に係わる遷移確率を高めることができる。
【0062】
また、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する材料としては、TADF材料が挙げられる。なお、TADF材料とは、S1準位とT1準位との差が小さく、逆項間交差によって三重項励起エネルギーから一重項励起エネルギーへエネルギーを変換することができる材料である。そのため、三重項励起エネルギーをわずかな熱エネルギーによって一重項励起エネルギーにアップコンバート(逆項間交差)が可能で、一重項励起状態を効率よく生成することができる。また、2種類の物質で励起状態を形成する励起錯体(エキサイプレックス、エキシプレックスまたはExciplexともいう)は、S1準位とT1準位との差が極めて小さく、三重項励起エネルギーを一重項励起エネルギーに変換することが可能なTADF材料としての機能を有する。
【0063】
なお、T1準位の指標としては、低温(例えば10K)で観測される燐光スペクトルを用いればよい。TADF材料としては、室温または低温における蛍光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをS1準位とし、燐光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをT1準位とした際に、そのS1とT1の差が0.2eV以下であることが好ましい。
【0064】
また、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する材料としては、ペロブスカイト構造を有する遷移金属化合物のナノ構造体が挙げられる。特に金属ハロゲン化物ペロブスカイト類のナノ構造体がこのましい。該ナノ構造体としては、ナノ粒子、ナノロッドが好ましい。
【0065】
図2Aは本発明の一態様である発光デバイスの発光層130aを表す断面模式図である。本発明の一態様では、発光層130aは化合物131及び化合物132を有する。化合物131は三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有し、化合物132は一重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する。蛍光性材料は安定性が高いため、信頼性の高い発光デバイスを得るためには、化合物132として蛍光性材料を用いることが好ましい。また、化合物131は三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有するため、発光効率の高い発光デバイスを得るためには、化合物131でキャリアの再結合が生じると好ましい。したがって、化合物131でキャリアが再結合し生成した励起子の一重項励起エネルギー及び三重項励起エネルギーの双方が、最終的に化合物132の一重項励起状態にエネルギー移動し、化合物132が発光すると好ましい。ここで、発光層130aにおいて、化合物131はエネルギードナー、化合物132はエネルギーアクセプターである。
図2A及び
図2Bにおいては、発光層130aは化合物131をホスト材料、化合物132をゲスト材料とする蛍光発光層である。すなわち
図2A及び
図2Bにおいては、ホスト材料はエネルギードナー、ゲスト材料はエネルギーアクセプターとしての機能を有する。また、発光層130aはゲスト材料である化合物132に由来する発光を得ることができる。
【0066】
<発光層130aの構成例1>
図2Bは、本発明の一態様の発光デバイス中の発光層におけるエネルギー準位の相関の一例である。本構成例では化合物131にTADF材料を用いた場合について示している。
【0067】
また、発光層130aにおける化合物131と、化合物132と、のエネルギー準位の相関を
図2Bに示す。
図2Bの縦軸はエネルギー(Energy)(任意単位)を示す。なお、
図2Bにおける表記及び符号は、以下の通りである。
・Host(131):化合物131
・Guest(132):化合物132
・T
C1:化合物131のT1準位
・S
C1:化合物131のS1準位
・S
G:化合物132のS1準位
・T
G:化合物132のT1準位
【0068】
ここで、電流励起によって生じた化合物131の三重項励起エネルギーに着目する。化合物131はTADF性を有する。そのため、化合物131は三重項励起エネルギーをアップコンバージョンによって一重項励起エネルギーに変換する機能を有する(
図2B ルートA
1)。化合物131が有する一重項励起エネルギーは、速やかに化合物132へ移動することができる。(
図2B ルートA
2)。このとき、S
C1≧S
Gであると好ましい。具体的には、化合物131の蛍光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをS
C1とし、化合物132の吸収スペクトルの吸収端の波長のエネルギーをS
Gとした際に、S
C1≧S
Gであることが好ましい。なお、化合物131はTADF性を有する材料であるため、S
C1とT
C1が非常に小さい。そのためS
C1≧S
T1≧S
Gとなり得る。
【0069】
化合物131で生じた三重項励起エネルギーが、上記ルートA1及びルートA2を経てゲスト材料である化合物132のS1準位へエネルギー移動し化合物132が発光することによって、蛍光発光デバイスの発光効率を高めることができる。ルートA2において、化合物131がエネルギードナー、化合物132がエネルギーアクセプターとして機能する。
【0070】
ここで、発光層130aにおいて、化合物131と化合物132は混合されている。そのため、上記ルートA
1及びルートA
2と競合して化合物131の三重項励起エネルギーが化合物132の三重項励起エネルギーへ変換される過程(
図2B ルートA
3)が起こり得る。化合物132は蛍光性材料であるため、化合物132の三重項励起エネルギーは発光に寄与しない。すなわち、ルートA
3のエネルギー移動が生じると発光デバイスの発光効率が低下してしまう。なお実際は、T
C1からT
Gへのエネルギー移動(ルートA
3)は、直接ではなく、化合物132のT
Gよりも高位の三重項励起状態に一度エネルギー移動し、その後内部変換によりT
Gになる経路があり得るが、図中ではその過程を省略している。以降の本明細書中における望ましくない熱失活過程、すなわちT
Gへの失活過程は、全て同様である。
【0071】
ここで、分子間のエネルギー移動機構として、フェルスター機構(双極子-双極子相互作用)と、デクスター機構(電子交換相互作用)が知られている。エネルギーアクセプターである化合物132が蛍光性材料であるため、ルートA3のエネルギー移動はデクスター機構が支配的である。一般的に、デクスター機構はエネルギードナーである化合物131とエネルギーアクセプターである化合物132の距離が1nm以下で有意に生じる。そのため、ルートA3を抑制するためには、ホスト材料とゲスト材料の距離、すなわちエネルギードナーとエネルギーアクセプターの距離を遠ざけることが重要である。
【0072】
また、化合物131の一重項励起エネルギー準位(SC1)から、化合物132の三重項励起エネルギー準位(TG)へのエネルギー移動は、化合物132における一重項基底状態から三重項励起状態への直接遷移が禁制であることから、主たるエネルギー移動過程になりにくいため、図示していない。
【0073】
図2B中のT
Gはエネルギーアクセプター中の発光団に由来するエネルギー準位であることが多い。そのため、より詳細にはルートA
3を抑制するためには、エネルギードナーとエネルギーアクセプターが有する発光団の距離を遠ざけることが重要である。エネルギードナーとエネルギーアクセプターが有する発光団の距離を遠ざけるための手法として一般には、これら化合物の混合膜中のエネルギーアクセプターの濃度を低くすることが挙げられる。しかし、混合膜中のエネルギーアクセプターの濃度を低くすると、エネルギードナーからエネルギーアクセプターへのデクスター機構に基づくエネルギー移動だけでなく、フェルスター機構に基づくエネルギー移動も抑制されてしまう。その場合、ルートA
2がフェルスター機構に基づくため、発光デバイスの発光効率の低下や信頼性の低下といった問題が生じる。
【0074】
そこで、本発明者らはエネルギーアクセプターとして、エネルギードナーとの距離を遠ざけるための保護基を有する蛍光性材料を用いることで、上記発光効率の低下及び信頼性の低下を抑制可能であることを見出した。また、燐光発光層と蛍光発光層を組み合わせた際に生じる燐光発光層の発光効率の低下も抑制できることを見出した。
【0075】
<保護基を有する蛍光性材料の概念>
図3Aに一般的な蛍光性材料である、保護基を有さない蛍光性材料をゲスト材料としてホスト材料に分散させた場合の概念図を示し、
図3Bに本発明の一態様の発光デバイスに用いる、保護基を有する蛍光性材料をゲスト材料としてホスト材料に分散させた場合の概念図を示す。ホスト材料はエネルギードナー、ゲスト材料はエネルギーアクセプターと読み替えても構わない。ここで、保護基は、発光団とホスト材料との距離を遠ざける機能を有する。
図3Aにおいて、ゲスト材料301は発光団310を有する。ゲスト材料301はエネルギーアクセプターとしての機能を有する。一方、
図3Bにおいて、ゲスト材料302は発光団310と保護基320を有する。また、
図3A及び
図3Bにおいてゲスト材料301及びゲスト材料302はホスト材料330に囲まれている。
図3Aでは発光団とホスト材料の距離が近いため、ホスト材料330からゲスト材料301へのエネルギー移動として、フェルスター機構によるエネルギー移動(
図3A及び
図3B中、ルートA
4)とデクスター機構によるエネルギー移動(
図3A及び
図3B中、ルートA
5)の両方が生じうる。デクスター機構によるホスト材料からゲスト材料への三重項励起エネルギーのエネルギー移動が生じゲスト材料の三重項励起状態が生成すると、ゲスト材料が蛍光性材料である場合、三重項励起エネルギーが無放射失活するため、発光効率低下の一因となる。
【0076】
一方、
図3Bでは、ゲスト材料302は保護基320を有している。そのため、発光団310とホスト材料330の距離を遠ざけることができる。よって、デクスター機構によるエネルギー移動(ルートA
5)を抑制することができる。
【0077】
ここで、ゲスト材料302が発光するためには、デクスター機構を抑制しているため、ゲスト材料302はフェルスター機構によりホスト材料330からエネルギーを受け取る必要がある。すなわち、デクスター機構によるエネルギー移動は抑制しつつ、フェルスター機構によるエネルギー移動を効率良く利用することが好ましい。フェルスター機構によるエネルギー移動もホスト材料とゲスト材料の距離に影響を受けることが知られている。一般に、ホスト材料330とゲスト材料302の距離が1nm以下ではデクスター機構が優勢となり、1nm以上10nm以下ではフェルスター機構が優勢となる。一般にホスト材料330とゲスト材料302の距離が10nm以上ではエネルギー移動は生じにくい。ここで、ホスト材料330とゲスト材料302の距離はホスト材料330と発光団310との距離と読み替えて構わない。
【0078】
よって、保護基320は発光団310から1nm以上10nm以下の範囲に広がると好ましい。より好ましくは1nm以上5nm以下である。該構成とすることで、ホスト材料330からゲスト材料302へのデクスター機構によるエネルギー移動を抑制しつつ、効率良くフェルスター機構によるエネルギー移動を利用することができる。そのため、高い発光効率を有する発光デバイスを作製することができる。
【0079】
また、フェルスター機構によるエネルギー移動効率を高める(エネルギー移動速度を向上させる)ためには、ホスト材料330に対するゲスト材料301またはゲスト材料302の濃度を高めることが好ましい。しかし通常は、ゲスト材料の濃度が高まると、デクスター機構のエネルギー移動速度も向上してしまい、発光効率の低下してしまう。そのため、ゲスト材料の濃度を高めることは困難であった。三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する材料をホスト材料として用いた場合の蛍光発光デバイスでは、ゲスト材料の濃度は1wt%以下とゲスト材料濃度が薄い発光デバイスが報告されている。
【0080】
一方、本発明の一態様の発光デバイスには、発光層に発光団に保護基を有するゲスト材料を用いる。そのため、デクスター機構によるエネルギー移動を抑制しながら、フェルスター機構によるエネルギー移動を効率良く利用することができるため、エネルギーアクセプターであるゲスト材料の濃度を高めることができる。その結果、デクスター機構によるエネルギー移動を抑制しつつ、フェルスター機構によるエネルギー移動速度を高めるという、本来相矛盾する現象を可能とすることができる。フェルスター機構によるエネルギー移動速度を高めることによって、発光層中のエネルギーアクセプターの励起寿命が短くなるため、発光デバイスの信頼性を向上させることができる。ゲスト材料の濃度はホスト材料に対して、2wt%以上30wt%以下が好ましく、より好ましくは5wt%以上20wt%以下、さらに好ましくは5wt%以上15wt%以下である。該構成とすることによって、フェルスター機構によるエネルギー移動速度を高めることができるため、発光効率が高い発光デバイスを得ることができる。さらに、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する材料をホスト材料に利用することによって、燐光発光デバイスと同等の高い発光効率を有する蛍光発光デバイスを作製できる。また、安定性が高い蛍光性材料を用いて発光効率を向上させることができるので、信頼性の良好な発光デバイスを作製できる。なお、上記濃度は発光層において、主として発光を呈する材料をゲスト材料とし、ゲスト材料以外の材料をホスト材料とした場合の濃度である。
【0081】
また特に、本発明の一態様の発光デバイスの効果は、単に安定性の高い蛍光材料を用いることによる信頼性向上効果だけではない。上述したようなエネルギー移動は、常に劣化物や不純物の影響による消光過程と競合する。該消光過程の消光速度定数が経時的に大きくなると、発光デバイスが発光する割合が減少する。すなわち、発光デバイスの輝度が劣化してしまう。しかし上述の通り、本発明の一態様は、デクスター機構によるエネルギー移動を抑制しつつも、フェルスター機構によるエネルギー移動速度を従来の発光デバイスよりも高めることができるため、消光過程との競合の影響を小さくし、素子を長寿命化させることができる。
【0082】
ここで、発光団とは、蛍光性材料において、発光の原因となる原子団(骨格)を指す。発光団は一般的にπ結合を有しており、芳香環を含むことが好ましく、縮合芳香環または縮合複素芳香環を有すると好ましい。また、他の態様として、発光団とは、環平面上に遷移双極子ベクトルが存在する芳香環を含む原子団(骨格)と見なすことができる。また、一つの蛍光性材料が複数の縮合芳香環または縮合複素芳香環を有する場合、該複数の縮合芳香環または縮合複素芳香環のうち、最も低いS1準位を有する骨格を該蛍光性材料の発光団と考える場合がある。また、該複数の縮合芳香環または縮合複素芳香環のうち、最も長波長に吸収端を有する骨格を該蛍光性材料の発光団と考える場合がある。また、該複数の縮合芳香環または縮合複素芳香環それぞれの発光スペクトルの形状から該蛍光性材料の発光団を予想できる場合がある。
【0083】
縮合芳香環または縮合複素芳香環としては、フェナントレン骨格、スチルベン骨格、アクリドン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格等が挙げられる。特にナフタレン骨格、アントラセン骨格、フルオレン骨格、クリセン骨格、トリフェニレン骨格、テトラセン骨格、ピレン骨格、ペリレン骨格、クマリン骨格、キナクリドン骨格、ナフトビスベンゾフラン骨格を有する蛍光性材料は蛍光量子収率が高いため好ましい。
【0084】
また保護基として用いられる置換基は発光団及びホスト材料が有するT1準位よりも高い三重項励起エネルギー準位を有する必要がある。そのため飽和炭化水素基を用いることが好ましい。π結合を有さない置換基は三重項励起エネルギー準位が高いためである。また、π結合を有さない置換基は、キャリア(電子またはホール)を輸送する機能が低い。そのため、飽和炭化水素基はホスト材料の励起状態またはキャリア輸送性にほとんど影響を与えずに、発光団とホスト材料の距離を遠ざけることができる。また、π結合を有さない置換基とπ共役系を有する置換基を同時に有する有機化合物においては、π共役系を有する置換基側にフロンティア軌道{HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital、最高被占軌道ともいう)及びLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital、最低空軌道ともいう)}が存在する場合が多く、特に発光団がフロンティア軌道を有する場合が多い。後述するように、デクスター機構によるエネルギー移動には、エネルギードナー及びエネルギーアクセプターのHOMOの重なりと、LUMOの重なりが重要になる。そのため、飽和炭化水素基を保護基に用いることによって、エネルギードナーであるホスト材料のフロンティア軌道と、エネルギーアクセプターであるゲスト材料のフロンティア軌道との距離を遠ざけることができ、デクスター機構によるエネルギー移動を抑制することができる。
【0085】
保護基の具体例としては、炭素数1以上10以下のアルキル基が挙げられる。また、保護基は発光団とホスト材料との距離を遠ざける必要があるため、嵩高い置換基が好ましい。そのため、炭素数3以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基を好適に用いることができる。特にアルキル基としては、嵩高い分岐鎖アルキル基が好ましい。また、該置換基は4級炭素を有すると嵩高い置換基となるため特に好ましい。
【0086】
また、保護基は1つの発光団に対して5個以上有すると好ましい。該構成とすることで、発光団全体を保護基で覆うことができるため、ホスト材料と発光団との距離を適当に調整することができる。また、
図3Bでは発光団と保護基が直接結合している様子を表しているが、保護基は発光団と直接結合していない方がより好ましい。例えば、保護基はアリーレン基やアミノ基等の2価以上の置換基を介して発光団と結合していても良い。該置換基を介して保護基が発光団と結合することによって、効果的に発光団とホスト材料の距離を遠ざけることができる。そのため、発光団と保護基が直接結合しない場合、保護基は1つの発光団に対して4個以上有すると、効果的にデクスター機構によるエネルギー移動を抑制することができる。
【0087】
また、発光団と保護基を結ぶ2価以上の置換基はπ共役系を有する置換基であると好ましい。該構成とすることで、ゲスト材料の発光色やHOMO準位、ガラス転移点等の物性を調整することができる。なお、保護基は発光団を中心に分子構造を見た際に、最も外側に配置されると好ましい。
【0088】
<保護基を有する蛍光性材料と分子構造例>
ここで下記構造式(102)で示される、本発明の一態様の発光デバイスに用いることができる蛍光性材料である、N,N’-[(2-tert-ブチルアントラセン)-9,10-ジイル]-N,N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)アミン(略称:2tBu-mmtBuDPhA2Anth)の構造を示す。2tBu-mmtBuDPhA2Anthにおいて、アントラセン環が発光団であり、ターシャリーブチル(tBu)基が保護基として作用する。
【0089】
【0090】
上記2tBu-mmtBuDPhA2Anthの球棒モデルによる表示を
図4Bに示す。なお
図4Bは2tBu-mmtBuDPhA2Anthを
図4Aの矢印の方向(アントラセン環面に対して水平方向)から見た時の様子を表している。
図4Bの網掛け部分は発光団であるアントラセン環面の直上部分を表しており、該直上部分に保護基であるtBu基が重なる領域を有することが分かる。例えば、
図4B中、矢印(a)で示す原子は、該網掛け部分と重なるtBu基の炭素原子であり、矢印(b)で示す原子は、該網掛け部分と重なるtBu基の水素原子である。すなわち、2tBu-mmtBuDPhA2Anthは発光団面の一方の直上に保護基を構成する原子が位置し、他方の面直上にも、保護基を構成する原子が位置している。該構成とすることによって、ゲスト材料がホスト材料に分散した状態であっても、発光団であるアントラセン環の平面方向および垂直方向の双方において、アントラセン環とホスト材料の距離を遠ざけることができ、デクスター機構によるエネルギー移動を抑制することができる。
【0091】
また、デクスター機構によるエネルギー移動は、例えばエネルギー移動に係わる遷移がHOMOとLUMOとの間の遷移である場合、ホスト材料とゲスト材料のHOMOの重なり及びホスト材料とゲスト材料のLUMOの重なりが重要である。両材料のHOMO及びLUMOが重なるとデクスター機構は有意に生じる。そのため、デクスター機構を抑制するためには、両材料のHOMO及びLUMOの重なりを抑制することが重要である。すなわち、励起状態に関わる骨格とホスト材料との距離を遠ざけることが重要である。ここで、蛍光性材料においては、HOMO及びLUMO共に発光団が有することが多い。例えば、ゲスト材料のHOMO及びLUMOは発光団の面の上方と下方(2tBu-mmtBuDPhA2Anthにおいては、アントラセン環の上方と下方)に広がっている場合、発光団の面の上方及び下方を保護基で覆うことが分子構造において重要である。なお、アントラセン環の上方と下方とは、
図4Aの矢印からみてアントラセン環面を基準面として上、下を表現している。
【0092】
また、ピレン環やアントラセン環のような発光団として機能する縮合芳香環や縮合複素芳香環は、該環平面上に遷移双極子ベクトルが存在する。よって
図4Bにおいては2tBu-mmtBuDPhA2Anthは遷移双極子ベクトルが存在する面、すなわちアントラセン環の面直上に、保護基であるtBu基が重なる領域を有すると好ましい。具体的には、複数の保護基(
図4においてはtBu基)を構成する原子の少なくとも一つが、縮合芳香環または縮合複素芳香環(
図4においてはアントラセン環)の一方の面の直上に位置し、かつ、該複数の保護基を構成する原子の少なくとも一つが、該縮合芳香環または縮合複素芳香環の他方の面の直上に位置する。該構成とすることによって、ゲスト材料がホスト材料に分散した状態であっても、発光団とホスト材料の距離を遠ざけることができ、デクスター機構によるエネルギー移動を抑制することができる。また、アントラセン環のような発光団を覆うようにtBu基のような保護基が配置されていることが好ましい。
【0093】
<発光層130aの構成例2>
図5Cは、本発明の一態様の発光デバイス150及び発光デバイス152の発光層130aにおけるエネルギー準位の相関の一例である。
図5Aに示す発光層130aは、化合物131と、化合物132と、さらに化合物133と、を有する。本発明の一態様において、化合物132は、蛍光性材料であると好ましい。また、本構成例では、化合物131と化合物133は励起錯体を形成する組合せである。
【0094】
化合物131と化合物133との組み合わせは、励起錯体を形成することが可能な組み合わせであればよいが、一方が正孔を輸送する機能(正孔輸送性)を有する化合物であり、他方が電子を輸送する機能(電子輸送性)を有する化合物であることが、より好ましい。この場合、ドナー-アクセプター型の励起錯体を形成しやすくなり、効率よく励起錯体を形成することができる。また、化合物131と化合物133との組み合わせが、正孔輸送性を有する化合物と電子輸送性を有する化合物との組み合わせである場合、その混合比によってキャリアバランスを容易に制御することが可能となる。具体的には、正孔輸送性を有する化合物:電子輸送性を有する化合物=1:9から9:1(重量比)の範囲が好ましい。また、該構成を有することで、容易にキャリアバランスを制御することができることから、キャリア再結合領域の制御も簡便に行うことができる。
【0095】
また、効率よく励起錯体を形成するホスト材料の組み合わせとしては、化合物131及び化合物133のうち一方のHOMO準位が他方のHOMO準位より高く、一方のLUMO準位が他方のLUMO準位より高いことが好ましい。なお、化合物131のHOMO準位が化合物133のHOMO準位と同等、または化合物131のLUMO準位が化合物133のLUMO準位と同等であってもよい。
【0096】
なお、化合物のLUMO準位およびHOMO準位は、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって測定される化合物の電気化学特性(還元電位および酸化電位)から導出することができる。
【0097】
例えば、化合物131が正孔輸送性を有し、化合物133が電子輸送性を有する場合、
図5Bに示すエネルギーバンド図のように、化合物131のHOMO準位が化合物133のHOMO準位より高いことが好ましく、化合物131のLUMO準位が化合物133のLUMO準位より高いことが好ましい。このようなエネルギー準位の相関とすることで、一対の電極(電極101および電極102)から注入されたキャリアである正孔及び電子が、化合物131および化合物133に、それぞれ注入されやすくなり好適である。
【0098】
なお、
図5Bにおいて、Comp(131)は化合物131を表し、Comp(133)は化合物133を表し、ΔE
C1は化合物131のLUMO準位とHOMO準位とのエネルギー差を表し、ΔE
C3は化合物133のLUMO準位とHOMO準位とのエネルギー差を表し、ΔE
Eは化合物131のLUMO準位と化合物133のHOMO準位とのエネルギー差を表す、表記及び符号である。
【0099】
また、化合物131と化合物133とが励起錯体を形成する場合、化合物131のHOMOに正孔が注入され、化合物133のLUMOに電子が注入される。また、該励起錯体の励起エネルギーは、化合物133のLUMO準位と化合物131のHOMO準位とのエネルギー差(ΔEE)に概ね相当し、化合物131のLUMO準位とHOMO準位とのエネルギー差(ΔEC1)及び化合物133のLUMO準位とHOMO準位とのエネルギー差(ΔEC3)より小さくなる。したがって、化合物131と化合物133とで励起錯体を形成することで、より低い励起エネルギーで励起状態を形成することが可能となる。また、より低い励起エネルギーを有するため、該励起錯体は、安定な励起状態を形成することができる。
【0100】
また、発光層130aにおける化合物131と、化合物132と、化合物133と、のエネルギー準位の相関を
図5Cに示す。なお、
図5Cにおける表記及び符号は、以下の通りである。
・Comp(131):化合物131
・Comp(133):化合物133
・Guest(132):化合物132
・S
C1:化合物131のS1準位
・T
C1:化合物131のT1準位
・S
C3:化合物133のS1準位
・T
C3:化合物133のS1準位
・T
G:化合物132のT1準位
・S
E:励起錯体のS1準位
・T
E:励起錯体のT1準位
【0101】
本発明の一態様の発光デバイスにおいては、発光層130aが有する化合物131と化合物133とで励起錯体を形成する。励起錯体のS1準位(S
E)と励起錯体のT1準位(T
E)とは、互いに隣接したエネルギー準位となる(
図5C ルートA
6参照)。
【0102】
励起錯体の励起エネルギー準位(SEおよびTE)は、励起錯体を形成する各物質(化合物131および化合物133)のS1準位(SC1およびSC3)より低くなるため、より低い励起エネルギーで励起状態を形成することが可能となる。これによって、本発明の一態様の発光デバイスの駆動電圧を低減することができる。
【0103】
励起錯体のS1準位(S
E)とT1準位(T
E)は、互いに隣接したエネルギー準位であるため、逆項間交差しやすく、TADF性を有する。そのため、励起錯体は三重項励起エネルギーをアップコンバージョンによって一重項励起エネルギーに変換する機能を有する(
図5C ルートA
7)。励起錯体が有する一重項励起エネルギーは、速やかに化合物132へ移動することができる。(
図5C ルートA
8)。このとき、S
E≧S
Gであると好ましい。ルートA
8において、励起錯体がエネルギードナーであり、化合物132がエネルギーアクセプターとして機能する。具体的には、励起錯体の蛍光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをS
Eとし、化合物132の吸収スペクトルの吸収端の波長のエネルギーをS
Gとした際に、S
E≧S
Gであることが好ましい。
【0104】
なお、TADF性を高めるには、化合物131および化合物133の双方のT1準位、すなわちTC1およびTC3が、TE以上であることが好ましい。その指標としては、化合物131および化合物133の燐光スペクトルの最も短波長の発光ピーク波長が、いずれも励起錯体の最大発光ピーク波長以下であることが好ましい。あるいは、励起錯体の蛍光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをSEとし、化合物131および化合物133の燐光スペクトルの短波長側の裾において各々接線を引き、それらの外挿線の波長のエネルギーを各化合物のTC1およびTC3とした際に、SE-TC1≦0.2eV、かつ、SE-TC3≦0.2eVであることが好ましい。
【0105】
発光層130aで生じた三重項励起エネルギーが、上記ルートA6及び励起錯体のS1準位からゲスト材料へのS1準位へのエネルギー移動(ルートA8)を経ることで、ゲスト材料が発光することができる。よって、発光層130aに励起錯体を形成する組合せの材料を用いることで、蛍光発光デバイスデバイスの発光効率を高めることができる。
【0106】
ここで、本発明の一態様である発光デバイスでは、化合物132に発光団に保護基を有するゲスト材料を用いる。該構成とすることで、上述のように、ルートA9で表されるデクスター機構によるエネルギー移動を抑制し、三重項励起エネルギーの失活を抑制することができる。そのため、発光効率の高い蛍光発光デバイスデバイスを得ることができる。
【0107】
上記に示すルートA6乃至A8の過程を、本明細書等において、ExSET(Exciplex-Singlet Energy Transfer)またはExEF(Exciplex-Enhanced Fluorescence)と呼称する場合がある。別言すると、発光層130aは、励起錯体から蛍光性材料への励起エネルギーの供与がある。
【0108】
<発光層130aの構成例3>
本構成例では、上述のExEFを利用した発光デバイスの化合物133として、燐光性材料を用いた場合について説明する。すなわち、励起錯体を形成する化合物の一方に燐光性材料を用いた場合について説明する。
【0109】
本構成例では励起錯体を形成する一方の化合物に重原子を有する化合物を用いる。そのため、一重項状態と三重項状態との間の項間交差が促進される。よって、三重項励起状態から一重項基底状態への遷移が可能な(すなわち燐光を呈することが可能な)励起錯体を形成することができる。この場合、通常の励起錯体とは異なり、励起錯体の三重項励起エネルギー準位(TE)がエネルギードナーの準位となるため、TEが発光材料である化合物132の一重項励起エネルギー準位(SG)以上であることが好ましい。具体的には、一方の化合物に重原子を有する化合物を用いた励起錯体の発光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをTEとし、化合物132の吸収スペクトルの吸収端の波長のエネルギーをSGとした際に、TE≧SGであることが好ましい。
【0110】
このようなエネルギー準位の相関とすることで、生成した励起錯体の三重項励起エネルギーは、励起錯体の三重項励起エネルギー準位(TE)から化合物132の一重項励起エネルギー準位(SG)へエネルギー移動することができる。なお、励起錯体のS1準位(SE)とT1準位(TE)は、互いに隣接したエネルギー準位であるため、発光スペクトルにおいて、蛍光と燐光とを明確に区別することが困難な場合がある。その場合、発光寿命によって、蛍光または燐光を区別することが可能な場合がある。
【0111】
なお、上記構成で用いる燐光性材料はIr、Pt、Os、Ru、Pd等の重原子を含んでいることが好ましい。一方、本構成例では燐光性材料はエネルギードナーとして作用するため、量子収率は高くても低くても構わない。すなわち、励起錯体が有する三重項励起エネルギー準位からゲスト材料の一重項励起エネルギー準位へのエネルギー移動が許容遷移となれば良い。上述のような燐光性材料から構成される励起錯体や燐光性材料からゲスト材料へのエネルギー移動は、エネルギードナーの三重項励起エネルギー準位からゲスト材料(エネルギーアクセプター)の一重項励起エネルギー準位へのエネルギー移動が許容遷移となるため好ましい。よって、
図5C中のルートA
7の過程を経ることなく、励起錯体の三重項励起エネルギーをルートA
8の過程によってゲスト材料のS1準位(S
G)へ移動させることができる。すなわち、ルートA
6及びルートA
8の過程のみでゲスト材料のS1準位へ三重項及び一重項励起エネルギーを移動させることができる。ルートA
8において、励起錯体がエネルギードナーであり、化合物132がエネルギーアクセプターとして機能する。
【0112】
ここで、本発明の一態様である発光デバイスでは、化合物132に発光団に保護基を有するゲスト材料を用いる。該構成とすることで、上述のように、ルートA9で表されるデクスター機構によるエネルギー移動を抑制し、三重項励起エネルギーの失活を抑制することができる。そのため、発光効率の高い蛍光発光デバイスを得ることができる。
【0113】
<発光層130aの構成例4>
本構成例では上述のExEFを利用した発光デバイスの化合物133として、TADF性を有する材料を用いた場合について
図5Dを用いて説明する。
【0114】
化合物133はTADF材料であるため、励起錯体を形成していない化合物133は、三重項励起エネルギーをアップコンバージョンによって一重項励起エネルギーに変換する機能を有する(
図5D ルートA
10)。化合物133が有する一重項励起エネルギーは、速やかに化合物132へ移動することができる。(
図5D ルートA
11)。このとき、S
C3≧S
Gであると好ましい。
【0115】
先の発光層の構成例と同様に、本発明の一態様の発光デバイスでは、
図5D中のルートA
6乃至ルートA
8を経て、三重項励起エネルギーがゲスト材料である化合物132へ移動する経路と、
図5D中のルートA
10及びルートA
11を経て化合物132へ移動する経路が存在する。三重項励起エネルギーが蛍光性材料へ移動する経路が複数存在することで、さらに発光効率を高めることができる。ルートA
8において、励起錯体がエネルギードナーであり、化合物132がエネルギーアクセプターとして機能する。ルートA
11において、化合物133がエネルギードナーであり、化合物132がエネルギーアクセプターとして機能する。
【0116】
本構成例において、励起錯体及び化合物133がエネルギードナーであり、化合物132がエネルギーアクセプターとして機能する。
【0117】
<発光層130aの構成例5>
図6Aは発光層130aに4種の材料を用いた場合について示している。
図6Aにおいて発光層130aは化合物131、化合物132、化合物133、化合物134と、を有する。本発明の一態様において、化合物133は、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する。本構成例では化合物133が燐光性化合物である場合について説明する。化合物132は、蛍光発光を呈するゲスト材料である。また、化合物131は化合物134と励起錯体を形成する有機化合物である。
【0118】
また、発光層130aにおける化合物131と、化合物132と、化合物133と、化合物134のエネルギー準位の相関を
図6Bに示す。なお、
図6Bにおける表記及び符号は、以下の通りであり、その他の表記及び符号は
図5Cに示す表記及び符号と同様である。
・S
C4:化合物134のS1準位
・T
C4:化合物134のT1準位
【0119】
本構成例に示す、本発明の一態様の発光デバイスにおいては、発光層130aが有する化合物131と化合物134とで励起錯体を形成する。励起錯体のS1準位(S
E)と励起錯体のT1準位(T
E)とは、互いに隣接したエネルギー準位となる(
図6B ルートA
12参照)。
【0120】
上記の過程によって生成した励起錯体は、上述の通り、励起エネルギーを失うことによって励起錯体を形成していた2種類の物質は、また元の別々の物質として振る舞う。
【0121】
励起錯体の励起エネルギー準位(SEおよびTE)は、励起錯体を形成する各物質(化合物131および化合物134)のS1準位(SC1およびSC4)より低くなるため、より低い励起エネルギーで励起状態を形成することが可能となる。これによって、発光デバイス150及び発光デバイス152の駆動電圧を低減することができる。
【0122】
ここで、化合物133は燐光性材料であると、一重項状態と三重項状態との間の項間交差が許容される。そのため、励起錯体が有する一重項励起エネルギー及び三重項励起エネルギーの双方が速やかに化合物133へと移動する(ルートA
13)。このとき、T
E≧T
C3であると好ましい。また、化合物133が有する三重項励起エネルギーを効率良く化合物132の一重項励起エネルギーへと変換することができる(ルートA
14)。ここで、
図6Bに示すように、T
E≧T
C3≧S
Gであると、化合物133の励起エネルギーが一重項励起エネルギーとして効率良くゲスト材料である化合物132へ移動するため好ましい。具体的には、化合物133の燐光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをT
C3とし、化合物132の吸収スペクトルの吸収端の波長のエネルギーをS
Gとした際に、T
C3≧S
Gであることが好ましい。ルートA
14において、化合物133はエネルギードナー、化合物132はエネルギーアクセプターとして機能する。
【0123】
このとき、化合物131と化合物134との組み合わせは、励起錯体を形成することが可能な組み合わせであればよいが、一方が正孔輸送性を有する化合物であり、他方が電子輸送性を有する化合物であることが、より好ましい。
【0124】
また、化合物131のHOMO準位が化合物134のHOMO準位よりも高く、化合物131のLUMO準位が化合物134のLUMO準位よりも高い組み合わせ、または、化合物134のHOMO準位が化合物131のHOMO準位よりも高く、化合物134のLUMO準位が化合物131のLUMO準位よりも高い組み合わせであると、効率よく励起錯体を形成可能であるため好ましい。
【0125】
また、化合物131と化合物134とのエネルギー準位の相関は、
図6Bに限定されない。すなわち、化合物131の一重項励起エネルギー準位(S
C1)は、化合物134の一重項励起エネルギー準位(S
C4)より高くても低くてもよい。また、化合物131の三重項励起エネルギー準位(T
C1)は、化合物134の三重項励起エネルギー準位(T
C4)より高くても低くてもよい。
【0126】
また、本発明の一態様における発光デバイスにおいて、化合物131はπ電子不足骨格を有すると好ましい。該構成とすることで、化合物131のLUMO準位が低くなり、励起錯体の形成に好適となる。
【0127】
また、本発明の一態様における発光デバイスにおいて、化合物131はπ電子過剰骨格を有すると好ましい。該構成とすることで、化合物131のHOMO準位が高くなり、励起錯体の形成に好適となる。
【0128】
ここで、本発明の一態様である発光デバイスでは、化合物132に発光団に保護基を有するゲスト材料を用いる。該構成とすることで、上述のように、ルートA15で表されるデクスター機構によるエネルギー移動を抑制し、三重項励起エネルギーの失活を抑制することができる。そのため、発光効率の高い蛍光発光デバイスを得ることができる。また、エネルギードナーである化合物133の濃度を高めることができる。その結果、デクスター機構によるエネルギー移動を抑制しつつ、フェルスター機構によるエネルギー移動速度を高めるという、本来相矛盾する現象を可能とすることができる。フェルスター機構によるエネルギー移動速度を高めることによって、発光層中のエネルギーアクセプターの励起寿命が短くなるため、発光デバイスの信頼性を向上させることができる。エネルギードナーである化合物133が発光層に添加されるとき、その濃度はホスト材料に対して、2wt%以上50wt%以下が好ましく、より好ましくは5wt%以上30wt%以下、さらに好ましくは5wt%以上20wt%以下である。該構成とすることによって、フェルスター機構によるエネルギー移動速度を高めることができるため、発光効率が高い発光デバイスを得ることができる。
【0129】
なお、上記に示すルートA12及びA13の過程を、本明細書等においてExTET(Exciplex-Triplet Energy Transfer)と呼称する場合がある。別言すると、発光層130aは、励起錯体から化合物133への励起エネルギーの供与がある。よって、本構成例は、ExTETを利用可能な発光層に保護基を有する蛍光性材料を混合した構成と言うことができる。
【0130】
<発光層130aの構成例6>
本構成例では、上述の発光層の構成例5で説明した化合物134にTADF性を有する材料を用いた場合について説明する。
【0131】
図6Cは発光層130aに4種の材料を用いた場合について示している。
図6Cにおいて発光層130aは化合物131、化合物132、化合物133、化合物134と、を有する。本発明の一態様において、化合物133は三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する。化合物132は、蛍光発光を呈するゲスト材料である。また、化合物131は化合物134と励起錯体を形成する有機化合物である。
【0132】
ここで、化合物134はTADF材料であるため、励起錯体を形成していない化合物134は、三重項励起エネルギーをアップコンバージョンによって一重項励起エネルギーに変換する機能を有する(
図6C ルートA
16)。化合物134が有する一重項励起エネルギーは、速やかに化合物132へ移動することができる。(
図6C ルートA
17)。このとき、S
C4≧S
Gであると好ましい。具体的には、化合物134の蛍光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをS
C4とし、化合物132の吸収スペクトルの吸収端の波長のエネルギーをS
Gとした際に、S
C4≧S
Gであることが好ましい。
【0133】
先の発光層の構成例と同様に、本発明の一態様の発光デバイスでは、
図6B中のルートA
12乃至ルートA
14を経て、三重項励起エネルギーがゲスト材料である化合物132へ移動する経路と、
図6C中のルートA
16及びルートA
17を経て化合物132へ移動する経路が存在する。三重項励起エネルギーが蛍光性材料へ移動する経路が複数存在することで、さらに発光効率を高めることができる。ルートA
14において、化合物133はエネルギードナー、化合物132はエネルギーアクセプターとして機能する。また、ルートA
17において、化合物134はエネルギードナー、化合物132はエネルギーアクセプターとして機能する。
【0134】
<発光層130aの構成例7>
図7Bは、本発明の一態様の発光デバイス150及び発光デバイス152の発光層130aにおけるエネルギー準位の相関の一例である。
図7Aに示す発光層130aは、化合物131と、化合物132と、さらに化合物133と、を有する。本発明の一態様において、化合物132は、保護基を有する蛍光性材料である。また、化合物133は、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する。本構成例では化合物133が燐光性材料である場合について説明する。
【0135】
なお、
図7B及び後述する
図7Cにおける表記及び符号は、以下の通りである。
・Comp(131):化合物131
・Comp(133):化合物133
・Guest(132):化合物132
・S
C1:化合物131のS1準位
・T
C1:化合物131のT1準位
・T
C3:化合物133のT1準位
・T
G:化合物132のT1準位
・S
G:化合物132のS1準位
【0136】
本発明の一態様の発光デバイスにおいては、発光層130aが有する化合物131において主としてキャリアの再結合が生じることにより、一重項励起子及び三重項励起子が生じる。ここで化合物133は燐光性材料であるため、T
C3≦T
C1という関係の材料を選択することで、化合物131で生じた一重項及び三重項励起エネルギー双方を化合物133のT
C3準位へ移動することができる(
図7B ルートA
18)。なお、一部のキャリアは、化合物133で再結合し得る。
【0137】
なお、上記構成で用いる燐光性材料はIr、Pt、Os、Ru、Pd等の重原子を含んでいることが好ましい。一方、上述のように本構成例においても、燐光性材料はエネルギードナーとして作用するため、量子収率は高くても低くても構わない。燐光性材料を化合物133として用いた場合、エネルギードナーの三重項励起エネルギー準位からゲスト材料(エネルギーアクセプター)の一重項励起エネルギー準位へのエネルギー移動が許容遷移となるため好ましい。よって、化合物133の三重項励起エネルギーをルートA19の過程によってゲスト材料のS1準位(SG)へ移動させることができる。ルートA19において、化合物133はエネルギードナー、化合物132はエネルギーアクセプターとして機能する。この場合、TC3≧SGであると、化合物133の励起エネルギーが効率良くゲスト材料である化合物132の一重項励起状態へ移動するため好ましい。具体的には、化合物133の燐光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをTC3とし、化合物132の吸収スペクトルの吸収端の波長のエネルギーをSGとした際に、TC3≧SGであることが好ましい。
【0138】
ここで、本発明の一態様である発光デバイスでは、化合物132に発光団に保護基を有するゲスト材料を用いる。該構成とすることで、上述のように、ルートA20で表されるデクスター機構によるエネルギー移動を抑制し、三重項励起エネルギーの失活を抑制することができる。そのため、発光効率の高い蛍光発光デバイスを得ることができる。
【0139】
<発光層130aの構成例8>
図7Cは、本発明の一態様の発光デバイス150及び発光デバイスの発光層130aにおけるエネルギー準位の相関の一例である。
図7Aに示す発光層130aは、化合物131と、化合物132と、さらに化合物133と、を有する。本発明の一態様において、化合物132は、保護基を有する蛍光性材料である。また、化合物133は、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する。本構成例では化合物133がTADF性を有する化合物である場合について説明する。
【0140】
図7Cにおける表記及び符号は、以下の通りであり、その他の表記及び符号は
図7Bに示す表記及び符号と同様である。
・S
C3:化合物133のS1準位
【0141】
本発明の一態様の発光デバイスにおいては、発光層130aが有する化合物131において主としてキャリアの再結合が生じることにより、一重項励起子及び三重項励起子が生じる。ここでS
C3≦S
C1かつT
C3≦T
C1という関係の材料を選択することで、化合物131で生じた一重項励起エネルギー及び三重項励起エネルギー双方を化合物133のS
C3及びT
C3準位へ移動することができる(
図7C ルートA
21)。なお、一部のキャリアは、化合物133で再結合し得る。
【0142】
ここで、化合物133はTADF材料であるため、三重項励起エネルギーをアップコンバージョンによって一重項励起エネルギーに変換する機能を有する(
図7C ルートA
22)。また、化合物133が有する一重項励起エネルギーは、速やかに化合物132へ移動することができる。(
図7C ルートA
23)。このとき、S
C3≧S
Gであると好ましい。具体的には、化合物133の蛍光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをS
C3とし、化合物132の吸収スペクトルの吸収端の波長のエネルギーをS
Gとした際に、S
C3≧S
Gであることが好ましい。ルートA
21乃至ルートA
23の過程を経ることで、発光層130a中の三重項励起エネルギーを化合物132の蛍光発光へ変換することができる。ルートA
23において、化合物133はエネルギードナー、化合物132はエネルギーアクセプターとして機能する。
【0143】
ここで、本発明の一態様である発光デバイスでは、化合物132に発光団に保護基を有するゲスト材料を用いる。該構成とすることで、上述のように、ルートA24で表されるデクスター機構によるエネルギー移動を抑制し、三重項励起エネルギーの失活を抑制することができる。そのため、発光効率の高い蛍光発光デバイスを得ることができる。
【0144】
<発光層130bの構成例1>
次に、燐光発光層である発光層130bの発光機構について、以下説明を行う。
【0145】
図8Bは、本発明の一態様の発光デバイス150及び発光デバイス152の発光層130bにおけるエネルギー準位の相関の一例である。
図8A、
図8B及び
図8Cに示す発光層130bは、化合物135と及び化合物136を少なくとも有する。化合物136は三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する。本発明の一態様において、化合物136は、燐光性材料であると好ましい。なお、
図8A、
図8B及び
図8Cにおいて、本構成例では化合物136が燐光性材料の場合について示している。
【0146】
なお、
図8B及び
図8Cにおける表記及び符号は、以下の通りである。
・Host(135):化合物135
・Guest(136):化合物136
・S
PH1:化合物135のS1準位
・T
PH1:化合物135のT1準位
・T
PG:化合物136のT1準位
・S
PG:化合物136のS1準位
【0147】
本発明の一態様の発光デバイスにおいては、発光層130bが有する化合物135において主としてキャリアの再結合が生じることにより、一重項励起子及び三重項励起子が生じる。ここで化合物136は燐光性材料であるため、T
PH3≦T
GP1という関係の材料を選択することで、化合物135で生じた一重項及び三重項励起エネルギー双方を化合物136のT
PG1準位へ移動することができる(
図8B及び
図8C ルートE
1)。なお、一部のキャリアは、化合物136で再結合し得る。
【0148】
化合物136が効率良く発光するために、化合物136の吸収スペクトルにおける最も長波長の吸収帯と化合物135の発光スペクトルが重なりを有すると好ましい。燐光性材料の最も長波長の吸収帯は、吸収スペクトル全体に含まれる吸収帯の中で最も強く発光に寄与する吸収帯である。また、化合物135が呈する発光スペクトルとしては化合物の一重項励起状態に由来する発光である蛍光スペクトルと三重項励起状態に由来する燐光スペクトルが挙げられる。よって、化合物136が効率良く発光するために、化合物135が示す蛍光スペクトルと燐光スペクトルの双方が化合物136の最も長波長の吸収帯と重なりを有すると好ましい。該重なりを有することで、化合物135の励起エネルギーが化合物136の励起エネルギーに変換される。該構成とすることによって、発光層130bで生じる一重項励起エネルギーと三重項励起エネルギーの双方を効率良く化合物136の発光に変換することができる。
【0149】
化合物135の蛍光スペクトル及び燐光スペクトルを十分化合物136の最も長波長の吸収帯と重なるために、化合物135の蛍光スペクトルピークのエネルギー値と吸収スペクトルの最も長波長(低エネルギー側)の吸収帯のピーク値との差が0.2eV以下であると好ましい。より好ましくは0.1eV以下である。該構成とすることによって、発光効率が高い発光層とすることができる。なお、蛍光スペクトルのピークのエネルギー値と吸収スペクトルの最も長波長(低エネルギー側)の吸収帯のピーク値の大小関係は問わない。すなわち、蛍光スペクトルのピークのエネルギー値は吸収スペクトルの最も長波長(低エネルギー側)の吸収帯のピーク値よりも大きくても小さくても構わない。
【0150】
また、
図8Cに示すように化合物135としてはS1準位とT1準位とのエネルギー差が小さい材料を用いるとより好ましい。該構成とすることで、高い発光効率を有しつつ、発光デバイスの駆動電圧を低減することができる。S1準位とT1準位とのエネルギー差が小さい材料としては例えば、TADF材料や励起錯体が挙げられる。
【0151】
<発光層130bの構成例2>
図9B及び
図9Cは、本発明の一態様の発光デバイス150及び発光デバイス152の発光層130bにおけるエネルギー準位の相関の一例である。
図9A、
図9B及び
図9Cに示す発光層130bは、化合物135_1、化合物135_2及び化合物136を少なくとも有する。化合物136は三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する。本発明の一態様において、化合物136は、燐光性材料であると好ましい。なお、
図9A、
図9B及び
図9Cにおいて、本構成例では化合物136が燐光性材料の場合について示している。また、化合物135_1、化合物135_2は励起錯体を形成する組合せである。
【0152】
図5A及び
図5Bにおける化合物131及び化合物133と同様に、化合物135_1と化合物135_2との組み合わせは、励起錯体を形成することが可能な組み合わせであればよいが、一方が正孔を輸送する機能(正孔輸送性)を有する化合物であり、他方が電子を輸送する機能(電子輸送性)を有する化合物であることが、より好ましい。
図9Bは
図5Bと比べ、化合物の符号が異なり、他の構成は同様であり、化合物135_1と化合物135_2の構成は
図5Bにおける化合物131及び化合物133の構成と同様である。そのため、
図9Bの詳細な説明は省略する。
【0153】
なお、
図9Bにおいて、Comp(135_1)は化合物135_1を表し、Comp(135_2)は化合物135_2を表し、ΔE
PH2は化合物135_1のLUMO準位とHOMO準位とのエネルギー差を表し、ΔE
PH3は化合物135_2のLUMO準位とHOMO準位とのエネルギー差を表し、ΔE
PH1は化合物135_1のLUMO準位と化合物135_2のHOMO準位とのエネルギー差を表す、表記及び符号である。
【0154】
また、
図9Cにおける表記及び符号は、以下の通りである。
・Host(135_1):化合物135_1
・Host(135_2):化合物135_2
・Guest(136):化合物136
・S
PH2:化合物135_1のS1準位
・T
PH2:化合物135_1のT1準位
・S
PH3:化合物135_2のS1準位
・T
PH3:化合物135_2のT1準位
・T
PG:化合物136のT1準位
・S
PG:化合物136のS1準位
・S
PE:励起錯体のS1準位
・T
PE:励起錯体のT1準位
【0155】
化合物135_1及び化合物135_2は、一方がホールを、他方が電子を受け取ることで速やかに励起錯体を形成する(
図9C ルートE
2参照)。あるいは、一方が励起状態となると、速やかに他方と相互作用することで励起錯体を形成する。励起錯体の励起エネルギー準位(S
PEまたはT
PE)は、励起錯体を形成するホスト材料(化合物135_1及び化合物135_2)のS1準位(S
PH1及びS
PH2)より低くなるため、より低い励起エネルギーで化合物135の励起状態を形成することが可能となる。これによって、発光デバイスの駆動電圧を下げることができる。
【0156】
そして、励起錯体の(S
PE)と(T
PE)の双方のエネルギーを、化合物136(燐光性化合物)のT1準位へ移動させて発光が得られる(
図9C ルートE
3、E
4参照)。
【0157】
なお、上記に示すルートE1乃至E4の過程を、本明細書等においてExTETと呼称する場合がある。別言すると、発光層130bは、励起錯体から化合物136への励起エネルギーの供与がある。よって、本構成例では、発光層130bにExTETを適用した構成である。
【0158】
化合物136が効率良く発光するために、化合物136の吸収スペクトルにおける最も長波長の吸収帯と励起錯体の発光スペクトルが重なりを有すると好ましい。励起錯体のS1準位とT1準位は近接することが知られている。そのため、励起錯体の蛍光スペクトルまたは燐光スペクトルの少なくともどちらか一方が化合物136の最も長波長の吸収帯と重なることで、発光層130bで生じる一重項励起エネルギーと三重項励起エネルギーの双方を効率良く化合物136の発光に変換することができる。
【0159】
励起錯体の蛍光スペクトルまたは燐光スペクトルが十分化合物136の吸収スペクトルの最も長波長の吸収帯と重なるために、励起錯体の蛍光スペクトルのピークのエネルギー値と吸収スペクトルの最も長波長(低エネルギー側)の吸収帯のピーク値との差が0.2eV以下であると好ましい。より好ましくは0.1eV以下である。該構成とすることによって、発光効率が高い燐光発光層とすることができる。なお、励起錯体の蛍光スペクトルのピークのエネルギー値と化合物136の吸収スペクトルの最も長波長(低エネルギー側)の吸収帯のピーク値の大小関係は問わない。すなわち、励起錯体の蛍光スペクトルのピークのエネルギー値は化合物136の吸収スペクトルの最も長波長(低エネルギー側)の吸収帯のピーク値よりも大きくても小さくても構わない。
【0160】
<発光層130a及び発光層130bの構成例1>
本発明の一態様の発光デバイスは上述の発光層130aと発光層130bの双方を有する。
図10Bは、本発明の一態様の発光デバイス150及び発光デバイス152の発光層130a及び発光層130bにおけるエネルギー準位の相関の一例である。
図10Aは発光層130aと発光層130bを近接させた様子を表し、発光層130aは化合物131_f及び化合物132_fを有する。また発光層130bは化合物135_pと、化合物136_pを有する。本発明の一態様において、化合物132_fは、保護基を有する蛍光性材料である。また、化合物131_fは、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する。また本構成例では化合物131_fがTADF性を有する材料であり、化合物136_pが燐光性材料である場合について説明する。すなわち、本構成例では、発光層130aとして発光層130aの構成例1で示した構成を、発光層130bとして発光層130bの構成例1で示した構成を適用した例を示している。なお、ルートA
1乃至ルートA
3及びルートE
1のエネルギー移動に関しては上述の通りである。
【0161】
なお、
図10Bにおける表記及び符号は、以下の通りである。
・F-Host(131_f):化合物131_f
・F-Guest(132_f):化合物132_f
・P-Host(135_p):化合物135_p
・P-Guest(136_p):化合物136_p
・S
FH:化合物131_fのS1準位
・T
FH:化合物131_fのT1準位
・S
FG:化合物132_fのS1準位
・T
FG:化合物132_fのT1準位
・S
PH:化合物135_pのS1準位
・T
PH:化合物135_pのT1準位
・T
PG:化合物136_pのT1準位
【0162】
図10Aに示すように発光層130a及び発光層130bは近接している。通常、蛍光発光層と燐光発光層を近接させると燐光発光層で生じた三重項励起エネルギーは蛍光発光層が有するホスト材料(
図10B中、ルートQ
1参照)またはゲスト材料(
図10B中、ルートQ
2参照)へ移動し、失活してしまう。すなわち、蛍光発光層と燐光発光層を近接させると発光効率が低下する問題があった。これは、通常の蛍光発光層では、ホスト材料及びゲスト材料として、アントラセン骨格に代表される縮合芳香族炭化水素環を有する物質が用いられているためである。縮合芳香族炭化水素環を有する物質はT1準位が低い傾向にある。これらの骨格を用いずに良好な特性を有する蛍光発光層を作製するのは困難であった。
【0163】
また、三重項励起状態は緩和時間が長いため励起子の拡散距離も長く、蛍光発光層から離れた発光層内部で生成した励起子であっても、該励起子が蛍光発光層へ移動し、失活してしまう場合が考えられる。
【0164】
ここで、本発明の一態様の発光デバイスでは、化合物132_fに発光層130aで生じる三重項励起エネルギーを移動させるため、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する化合物を用いる。
図10B及び
図10Cでは化合物131_fとしてTADF性を有する材料を用いた例を示している。
図10BはさらにT
FH≦T
PHとなる化合物を化合物135_pとして用いた場合を示している。この場合、これまで問題になっていた、ルートQ
1によってT
FHに移動した三重項励起エネルギーはルートA
1及びルートA
2を経由し、蛍光発光に変換される。すなわち、ルートQ
1は失活経路にならない。なお、化合物131_fに燐光性化合物を用いた場合も同様にルートQ
1によってT
FHに移動した三重項励起エネルギーは蛍光発光に変換される(
図7B ルートA
19参照)。なお、燐光発光層である発光層130bで生じた一重項及び三重項励起エネルギーはルートE
1を経由し、燐光発光にも変換される。
【0165】
さらに、本発明の一態様の発光デバイスでは、化合物132_fとして保護基を有する蛍光性材料を用いる。そのため、化合物131_fからのデクスター機構による三重項励起エネルギー移動を抑制することができる。同様に、ルートQ2に示す燐光ホスト材料から蛍光ゲスト材料への三重項励起エネルギー移動もデクスター機構によるエネルギー移動であるため抑制される。
【0166】
すなわち、本発明の一態様の発光デバイスでは、蛍光発光層と燐光発光層が近接しているにも関わらず、燐光発光層の三重項励起エネルギーを抑制することができる。よって、蛍光発光と燐光発光双方を効率良く得ることができる。なお、発光デバイス中の発光領域を調整することで、蛍光発光と燐光発光の割合を変化させることができる。そのため、蛍光性材料と燐光性材料が異なる発光色を示す材料を用いることで、細かな発光色の調整を行うことができる。
【0167】
なお、TFH≦TPGである場合、化合物136_pの三重項励起エネルギーが化合物131_fへ移動することによって、三重項励起エネルギーは失活しないが、燐光発光が得られにくくなることが考えられる。そのため、本発明の一態様においてはTPG≦TFHであると好ましい。また、特に化合物131_fに燐光性化合物を用いる場合、上述のようにSFG≦TFHの構成が好ましい。すなわち、TPG≦SFG≦TFHとなると好ましい。よって、本発明の一態様の発光デバイスでは、蛍光性材料の発光色は燐光性材料の発光色よりも短波長であると好ましい。蛍光性材料の発光スペクトルのピーク波長が燐光性材料のピーク波長よりも短波長であると好ましい。
【0168】
<発光層130a及び発光層130bの構成例2>
図11Bは、本発明の一態様の発光デバイス150及び発光デバイス152の発光層130a及び発光層130bにおけるエネルギー準位の相関の一例である。
図11Aは発光層130aと発光層130bを近接させた様子を表し、発光層130aは化合物131_f及び化合物132_fを有する。また発光層130bは化合物135_pと、化合物136_pを有し、化合物135_pは化合物135_1p及び化合物135_2pからなる。本発明の一態様において、化合物132_fは、保護基を有する蛍光性材料である。また、化合物131_fは、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する。また本構成例では化合物131_fがTADF性を有する材料であり、化合物136_pが燐光性材料であり、化合物135_1p及び化合物135_2pは励起錯体を形成する組合せである場合について説明する。すなわち、本構成例では、発光層130aとして発光層130aの構成例1で示した構成を、発光層130bとして発光層130bの構成例2で示した構成を適用した例を示している。なお、ルートA
1乃至ルートA
3、ルートE
3及びE
4のエネルギー移動に関しては上述の通りである。なお、簡単のため、
図11Bには発光層130bのホスト材料の励起準位として、化合物135_pの励起準位しか示してないが、実際は化合物135_1p及び化合物135_2pの一重項準位と三重項準位がそれぞれ存在する。
【0169】
なお、
図11Bにおける表記及び符号は、以下の通りである。
・F-Host(131_f):化合物131_f
・F-Guest(132_f):化合物132_f
・P-Host(135_p):化合物135_p
・P-Guest(136_p):化合物136_p
・S
FH:化合物131_fのS1準位
・T
FH:化合物131_fのT1準位
・S
FG:化合物132_fのS1準位
・T
FG:化合物132_fのT1準位
・S
PH:化合物135_pのS1準位
・T
PH:化合物135_pのT1準位
・T
PG:化合物136_pのT1準位
・S
PE:励起錯体のS1準位
・T
PE:励起錯体のT1準位
【0170】
図11Aに示すように発光層130a及び発光層130bは近接しているが、
図10B及び
図10Cと同様に本構成例においても、化合物131_fに三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する材料を、化合物132_fに保護基を有する蛍光性材料を用いることによって発光層130bで生じた三重項励起エネルギーが発光層130bで消光されるのを抑制することができる(
図11B中、ルートQ
5参照)。
【0171】
ここで本構成例では燐光発光層である発光層130bにExTETを適用している。このため、発光層130bでは化合物135_1p及び化合物135_2pからなる励起錯体が生じ、発光層130bで生じる一重項及び三重項励起子のほとんどが励起錯体として存在すると考えられる。ここで、T
PH≧S
PE(またはT
PE)となる材料を選択することで、励起錯体の一重項及び三重項励起エネルギーの化合物135_pへのエネルギー移動(
図11B中、ルートQ
3及びQ
4)は生じない。また、励起錯体は励起状態であるため、励起錯体から他の励起錯体へのエネルギー移動(
図11B中、ルートQ
6)も生じない。そのため、ExTETを適用した燐光発光層の一重項励起エネルギー及び三重項励起エネルギーの拡散距離は非常に小さい。そのため、発光層130bで生じた一重項及び三重項励起エネルギーは発光層130aへ拡散しにくく、効率良く燐光発光に変換される。
【0172】
すなわち、蛍光発光層に化合物131_fに三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する材料を、化合物132_fに保護基を有する蛍光性材料を用いるだけでなく、燐光発光層にExTETを適用した発光デバイスとすることで、さらに三重項励起エネルギーの失活を抑制した発光デバイスとすることができる。
【0173】
なお、本発明の一態様の発光デバイスとして、
図2を用いて説明した発光層130aの構成例1及び、
図8を用いて説明した発光層130bの構成例1または
図9を用いて説明した発光層130bの構成例2に例示した発光層130aと発光層130bの組合せを例示したが、本発明の一態様の発光デバイスはこれに限られない。例えば発光層130aとして発光層130aの構成例1乃至8で述べた構成のいずれかを一を用い、発光層130bとして発光層130bの構成例1及び2で述べた構成のいずれか一を用いることができる。すなわち、適宜発光層130aの構成と発光層130bの構成を組み合わせることができる。なお、本発明の一態様の発光デバイスはこれらの組合せに限られない。
【0174】
また、
図1Bに示すように発光層130aと発光層130bの間に分離層120を設けることもできる。分離層120は発光層130bで生じた三重項励起エネルギーが発光層130aへ移動するのを抑制する機能を有する。デクスター機構によるエネルギー移動は1nm以下で有意に生じるため、分離層120の膜厚は1nm以上であると好ましい。一方、分離層120の膜厚が厚すぎると、発光デバイス152における再結合領域の調整が困難になる。そのため分離層120の膜厚は1nm以上20nm以下が好ましく、2nm以上10nm以下がより好ましい。
【0175】
<エネルギー移動機構>
ここで、フェルスター機構と、デクスター機構について説明する。ここでは、励起状態である第1の材料から基底状態である第2の材料への励起エネルギーの供与に関し、第1の材料と第2の材料との分子間のエネルギー移動過程について説明するが、どちらか一方が励起錯体の場合も同様である。
【0176】
≪フェルスター機構≫
フェルスター機構では、エネルギー移動に、分子間の直接的接触を必要とせず、第1の材料及び第2の材料の双極子振動の共鳴現象を通じてエネルギー移動が起こる。双極子振動の共鳴現象によって第1の材料が第2の材料にエネルギーを受け渡し、励起状態の第1の材料が基底状態になり、基底状態の第2の材料が励起状態になる。なお、フェルスター機構の速度定数kh*→gを数式(1)に示す。
【0177】
【0178】
数式(1)において、νは、振動数を表し、f’h(ν)は、第1の材料の規格化された発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)を表し、εg(ν)は、第2の材料のモル吸光係数を表し、Nは、アボガドロ数を表し、nは、媒体の屈折率を表し、Rは、第1の材料と第2の材料の分子間距離を表し、τは、実測される励起状態の寿命(蛍光寿命や燐光寿命)を表し、cは、光速を表し、φは、発光量子収率(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光量子収率、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光量子収率)を表し、K2は、第1の材料と第2の材料の遷移双極子モーメントの配向を表す係数(0から4)である。なお、ランダム配向の場合はK2=2/3である。
【0179】
ここで、エネルギードナーを第1の材料、エネルギーアクセプターを第2の材料とした場合、第1の材料及び第2の材料の発光色が近いと、上記数式(1)より、f’h(ν)及びεg(ν)の重なりが小さくなる(εg(ν)は第2の材料の発光スペクトルよりも長波長側に存在)ため、kh*→gが小さくなってしまう。しかし、本発明の一態様の発光デバイスでは、上述の通り発光層中におけるエネルギードナーの濃度を高めることができるため、数式(1)中のRの値を大きくすることができ、kh*→gの低下を抑制することができる。よって本発明の一態様の発光デバイスでは、エネルギードナーに近い発光色を有する蛍光性材料を発光材料として用いることができる。なお、本発明の一態様の発光デバイスはエネルギードナーとエネルギーアクセプターの発光色が異なっていても用いることができる。
【0180】
≪デクスター機構≫
デクスター機構では、第1の材料と第2の材料が軌道の重なりを生じる接触有効距離に近づき、励起状態の第1の材料の電子と、基底状態の第2の材料との電子の交換を通じてエネルギー移動が起こる。なお、デクスター機構の速度定数kh*→gを数式(2)に示す。
【0181】
【0182】
数式(2)において、hは、プランク定数であり、Kは、エネルギーの次元を持つ定数であり、νは、振動数を表し、f’h(ν)は、第1の材料の規格化された発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)を表し、ε’g(ν)は、第2の材料の規格化された吸収スペクトルを表し、Lは、実効分子半径を表し、Rは、第1の材料と第2の材料の分子間距離を表す。
【0183】
ここで、第1の材料から第2の材料へのエネルギー移動効率φETは、数式(3)で表される。krは、第1の材料の発光過程(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光)の速度定数を表し、knは、第2の材料の非発光過程(熱失活や項間交差)の速度定数を表し、τは、実測される第1の材料の励起状態の寿命を表す。
【0184】
【0185】
数式(3)より、エネルギー移動効率φETを高くするためには、エネルギー移動の速度定数kh*→gを大きくし、他の競合する速度定数kr+kn(=1/τ)が相対的に小さくなれば良いことがわかる。
【0186】
≪エネルギー移動を高めるための概念≫
まず、フェルスター機構によるエネルギー移動を考える。数式(3)に数式(1)を代入することでτを消去することができる。したがって、フェルスター機構の場合、エネルギー移動効率φETは、第1の材料の励起状態の寿命τに依存しない。また、エネルギー移動効率φETは、発光量子収率φが高い方が良いと言える。
【0187】
また、第1の材料の発光スペクトルと第2の材料の吸収スペクトル(一重項基底状態から一重項励起状態への遷移に相当する吸収)との重なりが大きいことが好ましい。さらに、第2の材料のモル吸光係数も高い方が好ましい。このことは、第1の材料の発光スペクトルと、第2の材料の最も長波長に現れる吸収帯とが重なることを意味する。なお、第2の材料における一重項基底状態から三重項励起状態への直接遷移が禁制であることから、第2の材料において三重項励起状態が係わるモル吸光係数は無視できる量である。このことから、フェルスター機構による第1の材料の励起状態から第2の材料への三重項励起状態へのエネルギー移動過程は無視でき、第2の材料の一重項励起状態へのエネルギー移動過程のみ考慮すればよい。
【0188】
また、フェルスター機構によるエネルギー移動速度は数式(1)より第1の材料と第2の材料の分子間距離Rの6乗に反比例する。また上述のように、Rが1nm以下ではデクスター機構によるエネルギー移動が優勢となる。そのため、デクスター機構によるエネルギー移動を抑制しつつ、フェルスター機構によるエネルギー移動速度を高めるためには、分子間距離は1nm以上10nm以下が好ましい。よって、上述の保護基は嵩高くなりすぎないことが求められるため、保護基を構成する炭素数は3以上10以下が好ましい。
【0189】
次に、デクスター機構によるエネルギー移動を考える。数式(2)によれば、速度定数kh*→gを大きくするには第1の材料の発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)と第2の材料の吸収スペクトル(一重項基底状態から一重項励起状態への遷移に相当する吸収)との重なりが大きい方が良いことがわかる。したがって、エネルギー移動効率の最適化は、第1の材料の発光スペクトルと、第2の材料の最も長波長に現れる吸収帯とが重なることによって実現される。
【0190】
また、数式(3)に数式(2)を代入すると、デクスター機構におけるエネルギー移動効率φETは、τに依存することが分かる。デクスター機構は、電子交換に基づくエネルギー移動過程であるため、第1の材料の一重項励起状態から第2の材料の一重項励起状態へのエネルギー移動と同様に、第1の材料の三重項励起状態から第2の材料の三重項励起状態へのエネルギー移動も生じる。
【0191】
本発明の一態様の発光デバイスにおいては、第2の材料は蛍光性材料であるため、第2の材料の三重項励起状態へのエネルギー移動効率は低いことが好ましい。すなわち、第1の材料から第2の材料へのデクスター機構に基づくエネルギー移動効率は低いことが好ましく、第1の材料から第2の材料へのフェルスター機構に基づくエネルギー移動効率は高いことが好ましい。
【0192】
また、既に述べたように、フェルスター機構におけるエネルギー移動効率は、第1の材料の励起状態の寿命τに依存しない。一方、デクスター機構におけるエネルギー移動効率は、第1の材料の励起寿命τに依存し、デクスター機構におけるエネルギー移動効率を低下させるためには、第1の材料の励起寿命τは短いことが好ましい。
【0193】
そこで、本発明の一態様は、第1の材料として励起錯体や燐光性材料、TADF材料を用いる。これらの材料は三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する。フェルスター機構のエネルギー移動効率は、エネルギードナーの発光量子収率に依存するため、燐光性化合物、励起錯体、あるいはTADF材料のように三重項励起状態のエネルギーを発光に変換できる第1の材料は、その励起エネルギーをフェルスター機構により第2の材料に移動させることができる。一方、本発明の一態様の構成により、第1の材料(励起錯体またはTADF材料)の三重項励起状態から一重項励起状態への逆項間交差を促進させ、第1の材料の三重項励起状態の励起寿命τを短くすることができる。また、第1の材料(燐光性材料または燐光性材料を用いた励起錯体)の三重項励起状態から一重項基底状態への遷移を促進させ、第1の材料の三重項励起状態の励起寿命τを短くすることができる。その結果、第1の材料の三重項励起状態から蛍光性材料(第2の材料)への三重項励起状態へのデクスター機構におけるエネルギー移動効率を低下させることができる。
【0194】
また、本発明の一態様の発光デバイスでは、上述の通り、第2の材料として保護基を有する蛍光性材料を用いる。そのため、第1の材料と第2の材料の分子間距離を大きくすることができる。よって、本発明の一態様の発光デバイスでは、第1の材料に三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する材料を、第2の材料に保護基を有する蛍光性材料を用いることによって、デクスター機構によるエネルギー移動効率を低下させることができる。その結果、発光層130aにおける三重項励起エネルギーの無放射失活を抑制することができ、発光効率の高い発光デバイスを提供することができる。
【0195】
<材料>
次に、本発明の一態様に係わる発光デバイスの構成要素の詳細について、以下説明を行う。
【0196】
≪発光層130a≫
発光層130aに用いることができる材料について、それぞれ以下に説明する。本発明の一態様の発光デバイスの発光層130aには、三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有するエネルギーアクセプターと、発光団及び保護基を有するエネルギードナーを用いる。三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する材料としては、TADF性材料、励起錯体及び燐光性材料等が挙げられる。なお、化合物131に適用可能な材料は化合物131_fに、化合物132に適用可能な材料は化合物132_fにも同様に適用可能である。
【0197】
エネルギーアクセプターとして機能する化合物132が有する発光団としては、例えばフェナントレン骨格、スチルベン骨格、アクリドン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格等が挙げられる。特にナフタレン骨格、アントラセン骨格、フルオレン骨格、クリセン骨格、トリフェニレン骨格、テトラセン骨格、ピレン骨格、ペリレン骨格、クマリン骨格、キナクリドン骨格、ナフトビスベンゾフラン骨格を有する蛍光性化合物は蛍光量子収率が高いため好ましい。
【0198】
また、保護基としては炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上10以下の分岐鎖アルキル基、炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基が好ましい。
【0199】
炭素数1以上10以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられるが、後述する炭素数3以上10以下の分岐鎖アルキル基が特に好ましい。なお、該アルキル基はこれらに限定されない。
【0200】
炭素数3以上10以下のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。該シクロアルキル基はこれらに限定されない。また該シクロアルキル基が置換基を有する場合、該置換基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基のような炭素数1以上7以下のアルキル基や、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、8,9,10-トリノルボルナニル基、のような炭素数5以上7以下のシクロアルキル基や、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基のような炭素数6以上12以下のアリール基等が挙げられる。
【0201】
炭素数3以上10以下の分岐鎖アルキル基としては、イソプロピル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、2-エチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基等が挙げられる。該分岐鎖アルキル基はこれらに限定されない。
【0202】
炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基等が挙げられる。該トリアルキルシリル基はこれらに限定されない。
【0203】
また、該エネルギーアクセプターの分子構造としては、発光団と2つ以上のジアリールアミノ基が結合し、ジアリールアミノ基が有するアリール基のそれぞれが少なくとも一つの保護基を有する構造であると好ましい。該アリール基のそれぞれに少なくとも2つの保護基が結合するとさらに好ましい。保護基の数が多い方が、発光層に該ゲスト材料を用いた場合、デクスター機構によるエネルギー移動を抑制する効果が大きいためである。なお、分子量の増大を抑制し、昇華性を保つため、ジアリールアミノ基はジフェニルアミノ基であることが好ましい。なお、発光団とジアリールアミノ基はジアリールアミノ基が有する窒素原子で結合を有する構造が好ましい。
【0204】
また、発光団に2つ以上のジアリールアミノ基を結合させることによって、発光色を調整しつつ、量子収率が高い蛍光性材料を得ることができる。また、該ジアリールアミノ基は発光団に対して対称の位置に結合すると好ましい。該構成とすることによって、高い量子収率を有する蛍光性材料とすることができる。
【0205】
また、発光団に直接保護基を導入するのではなく、ジアリールアミノ基が有するアリール基を介して保護基を導入しても構わない。該構成とすることで、発光団を覆うように保護基を配置することができるため、どの方向からでもホスト材料と発光団との距離を遠ざけることができるため好ましい。また、発光団に直接保護基を結合させない場合、保護基は発光団1つに対して4つ以上導入することが好ましい。
【0206】
また、
図3で示したように、複数の保護基を構成する原子の少なくとも一つが、発光団すなわち縮合芳香環または縮合複素芳香環の一方の面の直上に位置し、かつ、複数の保護基を構成する原子の少なくとも一つが、該縮合芳香環または該縮合複素芳香環の他方の面の直上に位置する構成が好ましい。その具体的な手法としては、以下のような構成が挙げられる。すなわち、発光団である縮合芳香環または縮合複素芳香環が、2以上のジフェニルアミノ基と結合し、該2以上のジフェニルアミノ基中のフェニル基は、それぞれ独立に、3位および5位に保護基を有する。
【0207】
このような構成とすることで、
図4にて示したように、フェニル基上の3位または5位の保護基が、発光団である縮合芳香環または縮合複素芳香環の直上に来るような立体配置を取ることができる。その結果、該縮合芳香環または該縮合複素芳香環の面の上方及び下方を効率良く覆うことができ、デクスター機構によるエネルギー移動を抑制することができる。
【0208】
以上で述べたようなエネルギーアクセプター材料としては、下記一般式(G1)または(G2)で表される有機化合物を好適に用いることができる。
【0209】
【0210】
一般式(G1)及び(G2)中、Aは炭素数10乃至30の置換若しくは無置換の縮合芳香環または炭素数10乃至30の置換若しくは無置換の縮合複素芳香環を表し、Ar1乃至Ar6はそれぞれ独立に置換または無置換の炭素数6乃至13の芳香族炭化水素基を表し、X1乃至X12はそれぞれ独立に、炭素数3以上10以下の分岐鎖アルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基のいずれか一を表し、R1乃至R10はそれぞれ独立に、水素、炭素数3以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基のいずれか一を表す。
【0211】
炭素数6乃至13の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基等が挙げられる。なお、該芳香族炭化水素基はこれらに限定されない。また、該芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、該置換基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基のような炭素数1乃至7のアルキル基や、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、8,9,10-トリノルボルナニル基、のような炭素数5乃至7のシクロアルキル基や、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基のような炭素数6乃至12のアリール基等が挙げられる。
【0212】
一般式(G1)中、炭素数10乃至30の置換若しくは無置換の縮合芳香環または炭素数10乃至30の置換若しくは無置換の縮合複素芳香環は上述の発光団を表し、上述の骨格を用いることができる。また、一般式(G1)及び(G2)中、X1乃至X12は保護基を表す。
【0213】
また、一般式(G2)では、保護基が芳香族炭化水素基を介して発光団であるキナクリドン骨格と結合されている。該構成とすることによって、発光団を覆うように保護基を配置することができるため、デクスター機構によるエネルギー移動を抑制することができる。なお、発光団に直接結合する保護基を有していても構わない。
【0214】
また、該エネルギーアクセプター材料としては、下記一般式(G3)または(G4)で表される有機化合物を好適に用いることができる。
【0215】
【0216】
一般式(G3)及び(G4)中、Aは炭素数10乃至30の置換若しくは無置換の縮合芳香環または炭素数10乃至30の置換若しくは無置換の縮合複素芳香環を表しX1乃至X12はそれぞれ独立に、炭素数3以上10以下の分岐鎖アルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基のいずれか一を表す。R1、R3、R6及びR8はそれぞれ独立に、水素、炭素数3以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基のいずれか一を表す。
【0217】
また、保護基がフェニレン基を介して発光団と結合されていると好ましい。該構成とすることによって、発光団を覆うように保護基を配置することができるため、デクスター機構によるエネルギー移動を抑制することができる。また、発光団と保護基がフェニレン基を介して結合し、該フェニレン基に2つの保護基が結合される場合、一般式(G3)及び(G4)に示すように、該2つの保護基はフェニレン基に対してメタ位で結合されると好ましい。該構成とすることによって、発光団を効率良く覆うことができるため、デクスター機構によるエネルギー移動を抑制することができる。一般式(G3)で表される有機化合物の一例としては、上述の2tBu-mmtBuDPhA2Anthが挙げられる。すなわち、本発明の一態様において、一般式(G3)は特に好ましい例である。
【0218】
また、該エネルギーアクセプター材料としては、下記一般式(G5)で表される有機化合物を好適に用いることができる。
【0219】
【0220】
一般式(G5)中、X1乃至X8はそれぞれ独立に、炭素数3以上10以下の分岐鎖アルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基のいずれか一を表し、R11乃至R18はそれぞれ独立に、水素、炭素数3以上10以下の分岐鎖アルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基、置換若しくは無置換の炭素数6以上25以下のアリール基のいずれか一を表す。
【0221】
炭素数6以上25以下のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基、スピロフルオレニル基等が挙げられる。なお、炭素数6以上25以下のアリール基はこれらに限定されない。なお、該アリール基が置換基を有する場合、該置換基としては、上述の炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数3以上10以下の分岐鎖アルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基が挙げられる。
【0222】
アントラセン化合物は発光量子収率が高く、発光団の面積が小さいため、保護基によってアントラセンの面の上方及び下方を効率良く覆うことができる。一般式(G5)で表される有機化合物の一例としては、上述の2tBu-mmtBuDPhA2Anthが挙げられる。
【0223】
また、一般式(G1)乃至(G5)で挙げられる化合物の一例を以下に構造式(102)乃至(105)及び(200)乃至(284)に示す。なお、一般式(G1)乃至(G5)で挙げられる化合物はこれらに限定されない。また、構造式(102)乃至(105)及び(200)乃至(284)に示す化合物は本発明の一態様の発光デバイスの蛍光性材料として好適に用いることができる。なお、該蛍光性材料はこれらに限定されない。
【0224】
【0225】
【0226】
【0227】
【0228】
【0229】
【0230】
【0231】
【0232】
【0233】
【0234】
【0235】
【0236】
【0237】
【0238】
【0239】
【0240】
【0241】
【0242】
【0243】
【0244】
【0245】
【0246】
また、本発明の一態様の発光デバイスの蛍光性材料に好適に用いることができる材料の一例を構造式(100)及び(101)に示す。なお、蛍光性材料はこれらに限定されない。
【0247】
【0248】
化合物133がエネルギードナーとして機能する場合、例えばTADF材料を用いることができる。化合物133のS1準位とT1準位とのエネルギー差は小さいことが好ましく、具体的には0eVより大きく0.2eV以下である。
【0249】
化合物133がTADF材料の場合、正孔輸送性を有する骨格と、電子輸送性を有する骨格と、を有することが好ましい。あるいは、化合物133は、π電子過剰骨格または芳香族アミン骨格と、π電子不足骨格と、を有することが好ましい。そうすることで、分子内でドナー-アクセプター型の励起状態を形成しやすくなる。さらに、化合物133の分子内でドナー性とアクセプター性が共に強くなるよう、電子輸送性を有する骨格と、正孔輸送性を有する骨格と、が直接結合する構造を有することが好ましい。あるいは、π電子過剰骨格または芳香族アミン骨格と、π電子不足骨格と、が直接結合する構造を有すると好ましい。分子内でのドナー性とアクセプター性を共に強くすることで、化合物133のHOMOにおける分子軌道が分布する領域と、LUMOにおける分子軌道が分布する領域との重なりを小さくすることができ、化合物133の一重項励起エネルギー準位と三重項励起エネルギー準位とのエネルギー差を小さくすることが可能となる。また、化合物133の三重項励起エネルギー準位を高いエネルギーに保つことが可能となる。
【0250】
TADF材料が、一種類の材料から構成される場合、例えば以下の材料を用いることができる。
【0251】
まず、フラーレンやその誘導体、プロフラビン等のアクリジン誘導体、エオシン等が挙げられる。また、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、白金(Pt)、インジウム(In)、もしくはパラジウム(Pd)等を含む金属含有ポルフィリンが挙げられる。該金属含有ポルフィリンとしては、例えば、プロトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Proto IX))、メソポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Meso IX))、ヘマトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Hemato IX))、コプロポルフィリンテトラメチルエステル-フッ化スズ錯体(SnF2(Copro III-4Me))、オクタエチルポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(OEP))、エチオポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Etio I))、オクタエチルポルフィリン-塩化白金錯体(PtCl2OEP)等が挙げられる。
【0252】
【0253】
また、一種の材料から構成される熱活性化遅延蛍光性材料としては、π電子過剰骨格及びπ電子不足骨格の一方または双方を有する複素環化合物も用いることができる。具体的には、2-(ビフェニル-4-イル)-4,6-ビス(12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール-11-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:PIC-TRZ)、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)、2-[4-(10H-フェノキサジン-10-イル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PXZ-TRZ)、3-[4-(5-フェニル-5,10-ジヒドロフェナジン-10-イル)フェニル]-4,5-ジフェニル-1,2,4-トリアゾール(略称:PPZ-3TPT)、3-(9,9-ジメチル-9H-アクリジン-10-イル)-9H-キサンテン-9-オン(略称:ACRXTN)、ビス[4-(9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン)フェニル]スルホン(略称:DMAC-DPS)、10-フェニル-10H,10’H-スピロ[アクリジン-9,9’-アントラセン]-10’-オン(略称:ACRSA)、4-(9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4PCCzBfpm)、4-[4-(9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4PCCzPBfpm)、9-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9’-フェニル-2,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:mPCCzPTzn-02)等が挙げられる。該複素環化合物は、π電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有するため、電子輸送性及び正孔輸送性が高く、好ましい。中でも、π電子不足型複素芳香環を有する骨格のうち、ピリジン骨格、ジアジン骨格(ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格)、およびトリアジン骨格は、安定で信頼性が良好なため好ましい。特に、ベンゾフロピリミジン骨格、ベンゾチエノピリミジン骨格、ベンゾフロピラジン骨格、ベンゾチエノピラジン骨格はアクセプター性が高く、信頼性が良好なため好ましい。また、π電子過剰型複素芳香環を有する骨格の中でも、アクリジン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格、フラン骨格、チオフェン骨格、及びピロール骨格は、安定で信頼性が良好なため、当該骨格の少なくとも一を有することが好ましい。なお、フラン骨格としてはジベンゾフラン骨格が、チオフェン骨格としてはジベンゾチオフェン骨格が、それぞれ好ましい。また、ピロール骨格としては、インドール骨格、カルバゾール骨格、ビカルバゾール骨格、3-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール骨格が特に好ましい。なお、π電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環とが直接結合した物質は、π電子過剰型複素芳香環のドナー性とπ電子不足型複素芳香環のアクセプター性が共に強く、一重項励起状態の準位と三重項励起状態の準位の差が小さくなるため、特に好ましい。なお、π電子不足型複素芳香環の代わりに、シアノ基のような電子吸引基が結合した芳香環を用いても良い。また、π電子過剰型骨格として、芳香族アミン骨格、フェナジン骨格等を用いることができる。また、π電子不足型骨格として、キサンテン骨格、チオキサンテンジオキサイド骨格、オキサジアゾール骨格、トリアゾール骨格、イミダゾール骨格、アントラキノン骨格、フェニルボランやボラントレン等の含ホウ素骨格、ベンゾニトリルまたはシアノベンゼン等のニトリル基またはシアノ基を有する芳香環や複素芳香環、ベンゾフェノン等のカルボニル骨格、ホスフィンオキシド骨格、スルホン骨格等を用いることができる。このように、π電子不足型複素芳香環およびπ電子過剰型複素芳香環の少なくとも一方の代わりにπ電子不足型骨格およびπ電子過剰型骨格を用いることができる。
【0254】
【0255】
化合物133が三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有さない場合、化合物131と化合物133または化合物131と化合物134の組合せとしては、互いに励起錯体を形成する組み合わせが好ましいが、特に限定はない。一方が電子を輸送する機能を有し、他方が正孔を輸送する機能を有すると好ましい。また、一方がπ電子不足型複素芳香環を有し、他方がπ電子過剰型複素芳香環を有すると好ましい。
【0256】
化合物131としては、亜鉛やアルミニウム系金属錯体の他、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、キノキサリン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体などが挙げられる。他の例としては、芳香族アミンやカルバゾール誘導体などが挙げられる。
【0257】
また、以下の正孔輸送性材料および電子輸送性材料を用いることができる。
【0258】
正孔輸送性材料としては、電子よりも正孔の輸送性の高い材料を用いることができ、1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する材料であることが好ましい。具体的には、芳香族アミン、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、スチルベン誘導体などを用いることができる。また、該正孔輸送性材料は高分子化合物であっても良い。
【0259】
これら正孔輸送性の高い材料として、例えば、芳香族アミン化合物としては、N,N’-ジ(p-トリル)-N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’-ビス{4-[ビス(3-メチルフェニル)アミノ]フェニル}-N,N’-ジフェニル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン(略称:DNTPD)、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を挙げることができる。
【0260】
また、カルバゾール誘導体としては、具体的には、3-[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA1)、3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA2)、3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-(1-ナフチル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzTPN2)、3-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6-ビス[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3-[N-(1-ナフチル)-N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等を挙げることができる。
【0261】
また、カルバゾール誘導体としては、他に、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5-トリス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、1,4-ビス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]-2,3,5,6-テトラフェニルベンゼン等を用いることができる。
【0262】
また、芳香族炭化水素としては、例えば、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、2-tert-ブチル-9,10-ジ(1-ナフチル)アントラセン、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2-tert-ブチル-9,10-ビス(4-フェニルフェニル)アントラセン(略称:t-BuDBA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10-ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2-tert-ブチルアントラセン(略称:t-BuAnth)、9,10-ビス(4-メチル-1-ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、2-tert-ブチル-9,10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン、9,10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7-テトラメチル-9,10-ジ(1-ナフチル)アントラセン、2,3,6,7-テトラメチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン、9,9’-ビアントリル、10,10’-ジフェニル-9,9’-ビアントリル、10,10’-ビス(2-フェニルフェニル)-9,9’-ビアントリル、10,10’-ビス[(2,3,4,5,6-ペンタフェニル)フェニル]-9,9’-ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11-テトラ(tert-ブチル)ペリレン等が挙げられる。また、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。このように、1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有し、炭素数14乃至炭素数42である芳香族炭化水素を用いることがより好ましい。
【0263】
なお、芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよい。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’-ビス(2,2-ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
【0264】
また、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N-(4-{N’-[4-(4-ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly-TPD)等の高分子化合物を用いることもできる。
【0265】
また、正孔輸送性の高い材料としては、例えば、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα-NPD)やN,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’-トリス(カルバゾール-9-イル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)、4,4’,4’’-トリス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:1’-TNATA)、4,4’,4’’-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-N-{9,9-ジメチル-2-[N’-フェニル-N’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミノ]-9H-フルオレン-7-イル}フェニルアミン(略称:DFLADFL)、N-(9,9-ジメチル-2-ジフェニルアミノ-9H-フルオレン-7-イル)ジフェニルアミン(略称:DPNF)、2-[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:DPASF)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、4-フェニルジフェニル-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)アミン(略称:PCA1BP)、N,N’-ビス(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N,N’-ジフェニルベンゼン-1,3-ジアミン(略称:PCA2B)、N,N’,N’’-トリフェニル-N,N’,N’’-トリス(9-フェニルカルバゾール-3-イル)ベンゼン-1,3,5-トリアミン(略称:PCA3B)、N-(4-ビフェニル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9-フェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCBiF)、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-アミン(略称:PCBASF)、2-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:PCASF)、2,7-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:DPA2SF)、N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N-(4-フェニル)フェニルアニリン(略称:YGA1BP)、N,N’-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニル-9,9-ジメチルフルオレン-2,7-ジアミン(略称:YGA2F)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。また、3-[4-(1-ナフチル)-フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPN)、3-[4-(9-フェナントリル)-フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPPn)、3,3’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P-II)、1,3,5-トリ(ジベンゾチオフェン-4-イル)-ベンゼン(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)、4-[3-(トリフェニレン-2-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:mDBTPTp-II)等のアミン化合物、カルバゾール化合物、チオフェン化合物、フラン化合物、フルオレン化合物、トリフェニレン化合物、フェナントレン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外の物質を用いてもよい。
【0266】
電子輸送性材料としては、正孔よりも電子の輸送性の高い材料を用いることができ、1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する材料であることが好ましい。電子を受け取りやすい材料(電子輸送性を有する材料)としては、含窒素複素芳香族化合物のようなπ電子不足型複素芳香族化合物や金属錯体などを用いることができる。具体的には、キノリン配位子、ベンゾキノリン配位子、オキサゾール配位子、あるいはチアゾール配位子を有する金属錯体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、ピリミジン誘導体などが挙げられる。
【0267】
例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq3)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等が挙げられる。また、この他ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm-II)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(略称:NBPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)などの複素環化合物や、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq-II)、2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)、2-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、2-[4-(3,6-ジフェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2CzPDBq-III)、7-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:7mDBTPDBq-II)、及び、6-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:6mDBTPDBq-II)、4,6-ビス[3-(フェナントレン-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6-ビス[3-(4-ジベンゾチエニル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm-II)、4,6-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mCzP2Pm)などのジアジン骨格を有する複素環化合物や、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)などのトリアジン骨格を有する複素環化合物や、3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5-トリ[3-(3-ピリジル)フェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)などのピリジン骨格を有する複素環化合物、4,4’-ビス(5-メチルベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン(略称:BzOs)などの複素芳香族化合物も用いることができる。また、ポリ(2,5-ピリジンジイル)(略称:PPy)、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(ピリジン-3,5-ジイル)](略称:PF-Py)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(2,2’-ビピリジン-6,6’-ジイル)](略称:PF-BPy)のような高分子化合物を用いることもできる。ここに述べた物質は、主に1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を用いても構わない。
【0268】
化合物133または化合物134としては、化合物131と励起錯体を形成できる材料が好ましい。具体的には、上記で示した正孔輸送性材料および電子輸送性材料を用いることができる。この場合、化合物131と化合物133または化合物131と化合物134とで形成される励起錯体の発光ピークが、化合物132(蛍光性材料)の最も長波長(低エネルギー側)の吸収帯と重なるように化合物131と化合物133または化合物131と化合物134、および化合物132(蛍光性材料)を選択することが好ましい。これにより、発光効率が飛躍的に向上した発光デバイスとすることができる。
【0269】
また、化合物133としては、燐光性材料を用いることができる。燐光性材料としては、イリジウム、ロジウム、または白金系の有機金属錯体、あるいは金属錯体が挙げられる。また、ポルフィリン配位子を有する白金錯体や有機イリジウム錯体が挙げられ、中でも例えば、イリジウム系オルトメタル錯体等の有機イリジウム錯体が好ましい。オルトメタル化する配位子としては4H-トリアゾール配位子、1H-トリアゾール配位子、イミダゾール配位子、ピリジン配位子、ピリミジン配位子、ピラジン配位子、あるいはイソキノリン配位子などが挙げられる。この場合、化合物133(燐光性材料)は三重項MLCT(Metal to Ligand Charge Transfer)遷移の吸収帯を有する。また化合物133の発光ピークが、化合物132(蛍光性材料)の最も長波長(低エネルギー側)の吸収帯と重なるよう化合物133、および化合物132(蛍光性材料)を選択することが好ましい。これにより、発光効率が飛躍的に向上した発光デバイスとすることができる。また、化合物133が燐光性材料の場合であっても、化合物131と励起錯体を形成して構わない。励起錯体を形成する場合、燐光性化合物は常温で発光する必要はなく、励起錯体を形成した際に常温で発光できればよい。この場合、例えば、Ir(ppz)3などを燐光性化合物として用いることができる。
【0270】
青色または緑色に発光ピークを有する物質としては、例えば、トリス{2-[5-(2-メチルフェニル)-4-(2,6-ジメチルフェニル)-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル-κN2]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:Ir(mpptz-dmp)3)、トリス(5-メチル-3,4-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:Ir(Mptz)3)、トリス[4-(3-ビフェニル)-5-イソプロピル-3-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:Ir(iPrptz-3b)3)、トリス[3-(5-ビフェニル)-5-イソプロピル-4-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:Ir(iPr5btz)3)、のような4H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス[3-メチル-1-(2-メチルフェニル)-5-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:Ir(Mptz1-mp)3)、トリス(1-メチル-5-フェニル-3-プロピル-1H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:Ir(Prptz1-Me)3)のような1H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、fac-トリス[1-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-フェニル-1H-イミダゾール]イリジウム(III)(略称:Ir(iPrpmi)3)、トリス[3-(2,6-ジメチルフェニル)-7-メチルイミダゾ[1,2-f]フェナントリジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(dmpimpt-Me)3)のようなイミダゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1-ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス{2-[3’,5’-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CF3ppy)2(pic))、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIr(acac))のような電子吸引基を有するフェニルピリジン誘導体を配位子とする有機金属イリジウム錯体が挙げられる。上述した中でも、4H-トリアゾール骨格、1H-トリアゾール骨格およびイミダゾール骨格のような含窒素五員複素環骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、高い三重項励起エネルギーを有し、信頼性や発光効率にも優れるため、特に好ましい。
【0271】
また、緑色または黄色に発光ピークを有する物質としては、例えば、トリス(4-メチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppm)3)、トリス(4-t-ブチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tBuppm)3)、(アセチルアセトナト)ビス(6-メチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppm)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(6-tert-ブチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tBuppm)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[4-(2-ノルボルニル)-6-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(nbppm)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[5-メチル-6-(2-メチルフェニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(mpmppm)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス{4,6-ジメチル-2-[6-(2,6-ジメチルフェニル)-4-ピリミジニル-κN3]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:Ir(dmppm-dmp)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(4,6-ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(dppm)2(acac))のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、(アセチルアセトナト)ビス(3,5-ジメチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr-Me)2(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(5-イソプロピル-3-メチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr-iPr)2(acac))のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy)3)、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)2(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)2(acac))、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:Ir(bzq)3)、トリス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(pq)3)、ビス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pq)2(acac))のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、ビス(2,4-ジフェニル-1,3-オキサゾラト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)2(acac))、ビス{2-[4’-(パーフルオロフェニル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p-PF-ph)2(acac))、ビス(2-フェニルベンゾチアゾラト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)2(acac))など有機金属イリジウム錯体の他、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)3(Phen))のような希土類金属錯体が挙げられる。上述した中でも、ピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性や発光効率にも際だって優れるため、特に好ましい。
【0272】
また、黄色または赤色に発光ピークを有する物質としては、例えば、(ジイソブチリルメタナト)ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(5mdppm)2(dibm))、ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:Ir(5mdppm)2(dpm))、ビス[4,6-ジ(ナフタレン-1-イル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:Ir(d1npm)2(dpm))のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)2(acac))、ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)2(dpm))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3-ビス(4-フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)2(acac))のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(piq)3)、ビス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)2(acac))のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)のような白金錯体や、トリス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)3(Phen))、トリス[1-(2-テノイル)-3,3,3-トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)3(Phen))のような希土類金属錯体が挙げられる。上述した中でも、ピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性や発光効率にも際だって優れるため、特に好ましい。また、ピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、色度の良い赤色発光が得られる。
【0273】
また、上述のエネルギードナーとして用いることができる材料としては、金属ハロゲン化物ペロブスカイト類を挙げることができる。該金属ペロブスカイト類は下記一般式(g1)乃至(g3)のいずれかで表すことができる。
【0274】
(SA)MX3:(g1)
(LA)2(SA)n-1MnX3n+1:(g2)
(PA)(SA)n-1MnX3n+1:(g3)
【0275】
上記一般式においてMは2価の金属イオンを表し、Xはハロゲンイオンを表す。
【0276】
2価の金属イオンとしては具体的には、鉛、スズなどの2価の陽イオンが用いられている
【0277】
ハロゲンイオンとしては、具体的には、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素などのアニオンが用いられる。
【0278】
また、nは1乃至10の整数を表しているが、一般式(g2)または一般式(g3)において、nが10よりも大きい場合、その性質は一般式(g1)で表される金属ハロゲン化物ペロブスカイト類に近いものとなる。
【0279】
また、LAはR30-NH3
+で表されるアンモニウムイオンを表す。
【0280】
一般式R30-NH3
+で表されるアンモニウムイオンにおいて、R30は炭素数2乃至20のアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基のいずれか1又は炭素数2乃至20のアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基と、炭素数1乃至12のアルキレン基、ビニレン基、炭素数6乃至13のアリーレン基及びヘテロアリーレン基の組み合わせからなる基であり、後者の場合はアルキレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基は複数連なっていても良く、同じ種類の基が複数個用いられても良い。なお、上記アルキレン基、ビニレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基が複数連なっている場合、アルキレン基、ビニレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基の総数は35以下であることが好ましい。
【0281】
また、SAは一価の金属イオンまたはR31-NH3
+で表され、R31が炭素数1乃至6のアルキル基であるアンモニウムイオンを表す。
【0282】
また、PAは、NH3
+-R32-NH3
+若しくはNH3
+-R33-R34-R35-NH3
+、またはアンモニウムカチオンを有する分岐ポリエチレンイミンの一部または全部を表し、当該部分の価数は+2である。なお、一般式中の電荷はほぼつりあっている。
【0283】
ここで、金属ハロゲン化物ペロブスカイト類の電荷は、上記式により材料中すべての部分において厳密に釣り合っているものではなく、材料全体の中性が概ね保たれていれば良い。材料中には局所的に遊離のアンモニウムイオンや遊離のハロゲンイオン、不純物イオンなどその他のイオンなどが存在する場合があり、それらが電荷を中和している場合がある。また、粒子や膜の表面、結晶のグレイン境界などでも局所的に中性が保たれていない場合があり、必ずしもすべての場所において、中性が保たれていなくとも良い。
【0284】
なお、上記式(g2)における(LA)には例えば、下記一般式(a-1)乃至(a-11)、一般式(b-1)乃至(b-6)で表される物質などを用いることができる。
【0285】
【0286】
【0287】
また、上記一般式(g3)における(PA)は、代表的には下記一般式(c-1)、(c-2)及び(d)のいずれかで表される物質およびアンモニウムカチオンを有する分岐ポリエチレンイミンなどの一部分、または全部を表しており、+2価の電荷を有している。これらポリマーは、複数の単位格子にわたって電荷を中和している場合があり、また、異なる二つのポリマー分子が有する電荷一つずつによって一つの単位格子の電荷が中和されている場合もある。
【0288】
【0289】
【0290】
但し、上記一般式においてR20は炭素数2乃至18のアルキル基を表し、R21、R22およびR23は水素または炭素数1乃至18のアルキル基を表し、R24は下記構造式および一般式(R24-1)乃至(R24-14)を表す。また、R25およびR26はそれぞれ独立に水素または炭素数1乃至6のアルキル基を表す。また、Xは上記(d-1)乃至(d-6)のいずれかの組で表されるモノマーユニットAおよびBの組み合わせを有し、Aがu個、Bがv個含まれている構造を表している。なお、AおよびBの並び順は限定されない。また、mおよびlはそれぞれ独立に0乃至12の整数であり、tは1乃至18の整数である。また、uは0乃至17の整数、vは1乃至18の整数であり、u+vは1乃至18の整数である。
【0291】
【0292】
なお、これらは例示であり、(LA)、(PA)として用いることができる物質はこれらに限られることはない。
【0293】
一般式(g1)で表される(SA)MX3の組成を有する3次元構造の金属ハロゲン化物ペロブスカイト類では、中心に金属原子Mを置き6個の頂点にハロゲン原子を配置した正八面体構造が各頂点のハロゲン原子を共有して3次元に配列することで骨格を形成している。この各頂点にハロゲン原子を有する正八面体の構造ユニットをペロブスカイトユニットと呼ぶことにする。このペロブスカイトユニットが孤立して存在するゼロ次元構造体、頂点のハロゲン原子を介して1次元的に連結した線状構造体、2次元的に連結したシート状構造体、3次元的に連結した構造体があり、更にペロブスカイトユニットが2次元的に連結したシート状構造体が複数層積層して形成される複雑な2次元構造体もある。更により複雑な構造体もある。これらのペロブスカイトユニットを有するすべての構造体の総称として、金属ハロゲン化物ペロブスカイト類と定義して用いる。
【0294】
なお、発光層130aは2層以上の複数層でもって構成することもできる。例えば、第1の発光層と第2の発光層を正孔輸送層側から順に積層して発光層130aとする場合、第1の発光層のホスト材料として正孔輸送性を有する物質を用い、第2の発光層のホスト材料として電子輸送性を有する物質を用いる構成などがある。
【0295】
また、発光層130aにおいて、化合物131、化合物132、化合物133及び化合物134以外の材料(化合物135)を有していても良い。その場合、化合物131及び化合物133(または化合物134)が効率よく励起錯体を形成するためには、化合物131及び化合物133(または化合物134)のうち一方のHOMO準位が発光層130a中の材料のうち最も高いHOMO準位を有し、他方のLUMO準位が発光層130a中の材料のうち最も低いLUMO準位を有すると好ましい。そのようなエネルギー準位の相関とすることで、化合物131と化合物135とで励起錯体を形成する反応を抑制することができる。
【0296】
例えば、化合物131が正孔輸送性を有し、化合物133(または化合物134)が電子輸送性を有する場合、化合物131のHOMO準位が化合物133のHOMO準位および化合物135のHOMO準位より高いことが好ましく、化合物133のLUMO準位が化合物131のLUMO準位および化合物135のLUMO準位より低いことが好ましい。この場合、化合物135のLUMO準位は、化合物131のLUMO準位より高くても低くてもよい。また、化合物135のHOMO準位は、化合物133のHOMO準位より高くても低くてもよい。
【0297】
発光層130aに用いることが可能な材料(化合物135)としては、特に限定はないが、例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq3)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)などの複素環化合物、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα-NPD)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物が挙げられる。また、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、ジベンゾ[g,p]クリセン誘導体等の縮合多環芳香族化合物が挙げられ、具体的には、9,10-ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、N,N-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:CzA1PA)、4-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、N,9-ジフェニル-N-{4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]フェニル}-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPBA)、N,9-ジフェニル-N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPA)、6,12-ジメトキシ-5,11-ジフェニルクリセン、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン(略称:DBC1)、9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、3,6-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:DPCzPA)、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、9,9’-ビアントリル(略称:BANT)、9,9’-(スチルベン-3,3’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’-(スチルベン-4,4’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、1,3,5-トリ(1-ピレニル)ベンゼン(略称:TPB3)などを挙げることができる。また、これら及び公知の物質の中から、上記化合物131及び化合物132のエネルギーギャップより大きなエネルギーギャップを有する物質を、一種もしくは複数種選択して用いればよい。
【0298】
≪発光層130b≫
本発明の一態様の発光デバイスの発光層130bには、ホスト材料及び三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有するゲスト材料を用いる。ゲスト材料(化合物136及び化合物136_p)としては、TADF性材料、励起錯体及び燐光性材料等が挙げられるがTADF材料及び燐光性材料が好ましく、燐光性材料がより好ましい。具体的には、発光層130aのエネルギードナーとして用いることができるTADF材料や燐光性材料を用いることができる。
【0299】
発光層130bのホスト材料(化合物135及び化合物135_p)としては上述の正孔輸送性材料または電子輸送性材料を用いることができる。正孔輸送性材料としては、電子よりも正孔の輸送性の高い材料を用いることができ、1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する材料であることが好ましい。具体的には、発光層130aに用いることができる正孔輸送性材料として挙げた芳香族アミンおよびカルバゾール誘導体を用いることができる。また、電子輸送性材料としては、正孔よりも電子の輸送性の高い材料を用いることができ、1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する材料であることが好ましい。電子を受け取りやすい化合物(電子輸送性を有する材料)としては、含窒素複素芳香族化合物のようなπ電子不足型複素芳香族や金属錯体などを用いることができる。具体的には、発光層130aに用いることができる電子輸送性材料として挙げたキノリン配位子、ベンゾキノリン配位子、オキサゾール配位子、あるいはチアゾール配位子を有する金属錯体が挙げられる。また、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、ピリミジン誘導体などが挙げられる。また、1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質であることが好ましい。
【0300】
また、発光層130bのホスト材料は
図11Aに示すように2種の材料(化合物135_1p及び化合物135_2p)を有すると好ましく、該2種の材料が励起錯体を形成するとより好ましい。よって、化合物135_1pまたは化合物135_2pのどちらか一方に正孔輸送性材料を用い、他方に電子輸送性材料を用いることが好ましい。該構成とすることによって、発光層130bにExTETを適用することが可能になる。
【0301】
≪分離層120≫
分離層120は発光層130bで生じた三重項励起エネルギーが発光層130aへ移動するのを抑制する機能を有する。また、分離層120は発光層130a及び発光層130bの間にあるため、発光層130a及び発光層130bから効率良く発光を得るためには、分離層120はキャリア(電子及び/または正孔)輸送性を有すると好ましい。そのため、分離層120へは上述の正孔輸送性材料及び電子輸送性材料を用いることができる。
【0302】
また、分離層120は2種以上の材料から構成されても構わない。分離層120が2種以上の材料から構成される場合、正孔輸送性材料及び電子輸送性材料双方を含むと好ましい。また、分離層120が正孔輸送性材料及び電子輸送性材料双方を含む場合、その混合比によってキャリアバランスを容易に制御することが可能となる。具体的には、正孔輸送性材料:電子輸送性材料=1:9から9:1(重量比)の範囲が好ましい。また、該構成を有することで、容易にキャリアバランスを制御することができることから、キャリア再結合領域の制御も簡便に行うことができる。また、分離層120が正孔輸送性材料及び電子輸送性材料双方を含む場合、正孔輸送性材料及び電子輸送性材料は励起錯体を形成する組合せであると好ましい。
【0303】
また、分離層120に用いる材料のT1準位≧発光層130bに用いるホスト材料のT1準位であると、発光層130bで生じた三重項励起子の拡散を抑制できるため好ましい。なお、発光層130bに用いるホスト材料のT1準位≧分離層120に用いる材料のT1準位≧発光層130aに用いるエネルギードナーのT1準位であっても構わない。この場合、発光層130bで生じた三重項励起子が発光層130aに移動し、蛍光発光に変換される。
【0304】
≪一対の電極≫
電極101及び電極102は、発光層130a及び発光層130bへ正孔と電子を注入する機能を有する。電極101及び電極102は、金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物や積層体などを用いて形成することができる。金属としてはアルミニウム(Al)が典型例であり、その他、銀(Ag)、タングステン、クロム、モリブデン、銅、チタンなどの遷移金属、リチウム(Li)やセシウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム(Mg)などの第2族金属を用いることができる。遷移金属としてイッテルビウム(Yb)などの希土類金属を用いても良い。合金としては、上記金属を含む合金を使用することができ、例えばMgAg、AlLiなどが挙げられる。導電性化合物としては、例えば、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide、以下ITO)、珪素または酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(略称:ITSO)、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide)、タングステン及び亜鉛を含有したインジウム酸化物などの金属酸化物が挙げられる。導電性化合物としてグラフェンなどの無機炭素系材料を用いても良い。上述したように、これらの材料の複数を積層することによって電極101及び電極102の一方または双方を形成しても良い。
【0305】
また、発光層130a及び発光層130bから得られる発光は、電極101及び電極102の一方または双方を通して取り出される。したがって、電極101及び電極102の少なくとも一つは可視光を透過する機能を有する。光を透過する機能を有する導電性材料としては、可視光の透過率が40%以上100%以下、好ましくは60%以上100%以下であり、かつその抵抗率が1×10-2Ω・cm以下の導電性材料が挙げられる。また、光を取り出す方の電極は、光を透過する機能と、光を反射する機能と、を有する導電性材料により形成されても良い。該導電性材料としては、可視光の反射率が20%以上80%以下、好ましくは40%以上70%以下であり、かつその抵抗率が1×10-2Ω・cm以下の導電性材料が挙げられる。光を取り出す方の電極に金属や合金などの光透過性の低い材料を用いる場合には、可視光を透過できる程度の厚さ(例えば、1nmから10nmの厚さ)で電極101及び電極102の一方または双方を形成すればよい。
【0306】
なお、本明細書等において、光を透過する機能を有する電極には、可視光を透過する機能を有し、且つ導電性を有する材料を用いればよく、例えば上記のようなITOに代表される酸化物導電体層に加えて、酸化物半導体層、または有機物を含む有機導電体層を含む。有機物を含む有機導電体層としては、例えば、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を含む層、有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを混合してなる複合材料を含む層等が挙げられる。また、透明導電層の抵抗率としては、好ましくは1×105Ω・cm以下、さらに好ましくは1×104Ω・cm以下である。
【0307】
また、電極101及び電極102の成膜方法は、スパッタリング法、蒸着法、印刷法、塗布法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD(Atomic Layer Deposition)法等を適宜用いることができる。
【0308】
≪正孔注入層≫
正孔注入層111は、一対の電極の一方(電極101または電極102)からのホール注入障壁を低減することでホール注入を促進する機能を有し、例えば遷移金属酸化物、フタロシアニン誘導体、あるいは芳香族アミンなどによって形成される。遷移金属酸化物としては、モリブデン酸化物やバナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物などが挙げられる。フタロシアニン誘導体としては、フタロシアニンや金属フタロシアニンなどが挙げられる。芳香族アミンとしてはベンジジン誘導体やフェニレンジアミン誘導体などが挙げられる。ポリチオフェンやポリアニリンなどの高分子化合物を用いることもでき、例えば自己ドープされたポリチオフェンであるポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)などがその代表例である。
【0309】
正孔注入層111として、正孔輸送性材料と、これに対して電子受容性を示す材料の複合材料を有する層を用いることもできる。あるいは、電子受容性を示す材料を含む層と正孔輸送性材料を含む層の積層を用いても良い。これらの材料間では定常状態、あるいは電界存在下において電荷の授受が可能である。電子受容性を示す材料としては、キノジメタン誘導体やクロラニル誘導体、ヘキサアザトリフェニレン誘導体などの有機アクセプターを挙げることができる。具体的には、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(略称:F4-TCNQ)、クロラニル、2,3,6,7,10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT-CN)、1,3,4,5,7,8-ヘキサフルオロテトラシアノ-ナフトキノジメタン(略称:F6-TCNNQ)等の電子吸引基(特にフルオロ基のようなハロゲン基やシアノ基)を有する化合物を挙げることができる。特に、HAT-CNのように複素原子を複数有する縮合芳香環に電子吸引基が結合している化合物が、熱的に安定であり好ましい。また、電子吸引基(特にフルオロ基のようなハロゲン基やシアノ基)を有する[3]ラジアレン誘導体は、電子受容性が非常に高いため好ましく、具体的にはα,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[4-シアノ-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,6-ジクロロ-3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンアセトニトリル]などが挙げられる。また、遷移金属酸化物、例えば第4族から第8族金属の酸化物を用いることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムなどである。中でも酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0310】
正孔輸送性材料としては、電子よりも正孔の輸送性の高い材料を用いることができ、1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する材料であることが好ましい。具体的には、発光層130aに用いることができる正孔輸送性材料として挙げた芳香族アミンおよびカルバゾール誘導体を用いることができる。また、芳香族炭化水素およびスチルベン誘導体などを用いることができる。また、該正孔輸送性材料は高分子化合物であっても良い。
【0311】
芳香族炭化水素としては、例えば、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、2-tert-ブチル-9,10-ジ(1-ナフチル)アントラセン、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2-tert-ブチル-9,10-ビス(4-フェニルフェニル)アントラセン(略称:t-BuDBA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10-ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2-tert-ブチルアントラセン(略称:t-BuAnth)、9,10-ビス(4-メチル-1-ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、2-tert-ブチル-9,10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン、9,10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7-テトラメチル-9,10-ジ(1-ナフチル)アントラセン、2,3,6,7-テトラメチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン、9,9’-ビアントリル、10,10’-ジフェニル-9,9’-ビアントリル、10,10’-ビス(2-フェニルフェニル)-9,9’-ビアントリル、10,10’-ビス[(2,3,4,5,6-ペンタフェニル)フェニル]-9,9’-ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11-テトラ(tert-ブチル)ペリレン等が挙げられる。また、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。このように、1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有し、炭素数14以上炭素数42以下である芳香族炭化水素を用いることがより好ましい。
【0312】
なお、芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよい。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’-ビス(2,2-ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
【0313】
また、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N-(4-{N’-[4-(4-ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly-TPD)等の高分子化合物を用いることもできる。
【0314】
≪正孔輸送層≫
正孔輸送層112は正孔輸送性材料を含む層であり、正孔注入層111の材料として例示した材料を使用することができる。正孔輸送層112は正孔注入層111に注入された正孔を発光層130aまたは発光層130bへ輸送する機能を有するため、正孔注入層111のHOMO準位と同じ、あるいは近いHOMO準位を有することが好ましい。
【0315】
上記正孔輸送性材料として、正孔注入層111の材料として例示した材料を用いることができる。また、1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外の物質を用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層だけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層してもよい。
【0316】
≪電子輸送層≫
電子輸送層118は、電子注入層119を経て一対の電極の他方(電極101または電極102)から注入された電子を発光層130aまたは発光層130bへ輸送する機能を有する。電子輸送性材料としては、正孔よりも電子の輸送性の高い材料を用いることができ、1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する材料であることが好ましい。電子を受け取りやすい化合物(電子輸送性を有する材料)としては、含窒素複素芳香族化合物のようなπ電子不足型複素芳香族や金属錯体などを用いることができる。具体的には、発光層130aに用いることができる電子輸送性材料として挙げたキノリン配位子、ベンゾキノリン配位子、オキサゾール配位子、あるいはチアゾール配位子を有する金属錯体が挙げられる。また、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、ピリミジン誘導体などが挙げられる。また、1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質であることが好ましい。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層として用いても構わない。また、電子輸送層118は、単層だけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層してもよい。
【0317】
また、電子輸送層118と発光層130aまたは発光層130bとの間に電子キャリアの移動を制御する層を設けても良い。電子キャリアの移動を制御する層は、上述したような電子輸送性の高い材料に、電子トラップ性の高い物質を少量添加した層であり、電子キャリアの移動を抑制することによって、キャリアバランスを調節することが可能となる。このような構成は、発光層を電子が突き抜けてしまうことにより発生する問題(例えば素子寿命の低下)の抑制に大きな効果を発揮する。
【0318】
≪電子注入層≫
電子注入層119は電極102からの電子注入障壁を低減することで電子注入を促進する機能を有し、例えば第1族金属、第2族金属、あるいはこれらの酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩などを用いることができる。また、先に示す電子輸送性材料と、これに対して電子供与性を示す材料の複合材料を用いることもできる。電子供与性を示す材料としては、第1族金属、第2族金属、あるいはこれらの酸化物などを挙げることができる。具体的には、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)、リチウム酸化物(LiOx)等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウム(ErF3)のような希土類金属化合物を用いることができる。また、電子注入層119にエレクトライドを用いてもよい。該エレクトライドとしては、例えば、カルシウムとアルミニウムの混合酸化物に電子を高濃度添加した物質等が挙げられる。また、電子注入層119に、電子輸送層118で用いることが出来る物質を用いても良い。
【0319】
また、電子注入層119に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生するため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送層118を構成する物質(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
【0320】
なお、上述した、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、及び電子注入層は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法、ノズルプリント法、グラビア印刷等の方法で形成することができる。また、上述した、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、及び電子注入層には、上述した材料の他、量子ドットなどの無機化合物または高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いてもよい。
【0321】
なお、量子ドットとしては、コロイド状量子ドット、合金型量子ドット、コア・シェル型量子ドット、コア型量子ドット、などを用いてもよい。また、2族と16族、13族と15族、13族と17族、11族と17族、または14族と15族の元素グループを含む量子ドットを用いてもよい。または、カドミウム(Cd)、セレン(Se)、亜鉛(Zn)、硫黄(S)、リン(P)、インジウム(In)、テルル(Te)、鉛(Pb)、ガリウム(Ga)、ヒ素(As)、アルミニウム(Al)、等の元素を有する量子ドットを用いてもよい。
【0322】
ウェットプロセスに用いる液媒体としては、たとえば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の有機溶媒を用いることができる。
【0323】
また、発光層に用いることができる高分子化合物としては、例えば、ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン](略称:MEH-PPV)、ポリ(2,5-ジオクチル-1,4-フェニレンビニレン)等のポリフェニレンビニレン(PPV)誘導体、ポリ(9,9-ジ-n-オクチルフルオレニル-2,7-ジイル)(略称:PF8)、ポリ[(9,9-ジ-n-オクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-(ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール-4,8-ジイル)](略称:F8BT)、ポリ[(9,9-ジ-n-オクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-(2,2’-ビチオフェン-5,5’-ジイル)](略称F8T2)、ポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレニレン)-alt-(9,10-アントラセン)]、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジイル)-alt-(2,5-ジメチル-1,4-フェニレン)]等のポリフルオレン誘導体、ポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)(略称:P3HT)等のポリアルキルチオフェン(PAT)誘導体、ポリフェニレン誘導体等が挙げられる。また、これらの高分子化合物や、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(2-ビニルナフタレン)、ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン](略称:PTAA)等の高分子化合物に、発光性の化合物をドープして発光層に用いてもよい。発光性の化合物としては、先に挙げた発光性の化合物を用いることができる。
【0324】
≪基板≫
また、本発明の一態様に係る発光デバイスは、ガラス、プラスチックなどからなる基板上に作製すればよい。基板上に作製する順番としては、電極101側から順に積層しても、電極102側から順に積層しても良い。
【0325】
なお、本発明の一態様に係る発光デバイスを形成できる基板としては、例えばガラス、石英、又はプラスチックなどを用いることができる。また可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板とは、曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレートからなるプラスチック基板等が挙げられる。また、フィルム、無機蒸着フィルムなどを用いることもできる。なお、発光デバイス、及び光学素子の作製工程において支持体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。あるいは、発光デバイス、及び光学素子を保護する機能を有するものであればよい。
【0326】
例えば、本発明の一態様においては、様々な基板を用いて発光デバイスを形成することが出来る。基板の種類は、特に限定されない。その基板の一例としては、半導体基板(例えば単結晶基板又はシリコン基板)、SOI基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、金属基板、ステンレス・スチル基板、ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングステン基板、タングステン・ホイルを有する基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含むセルロースナノファイバ(CNF)や紙、又は基材フィルムなどがある。ガラス基板の一例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、又はソーダライムガラスなどがある。可撓性基板、貼り合わせフィルム、基材フィルムなどの一例としては、以下が挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表されるプラスチックがある。または、一例としては、アクリル等の樹脂などがある。または、一例としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、又はポリ塩化ビニルなどがある。または、一例としては、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、エポキシ、無機蒸着フィルム、又は紙類などがある。
【0327】
また、基板として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、発光デバイスを形成してもよい。または、基板と発光デバイスとの間に剥離層を設けてもよい。剥離層は、その上に発光デバイスを一部あるいは全部完成させた後、基板より分離し、他の基板に転載するために用いることができる。その際、耐熱性の劣る基板や可撓性の基板にも発光デバイスを転載できる。なお、上述の剥離層には、例えば、タングステン膜と酸化シリコン膜との無機膜の積層構造の構成や、基板上にポリイミド等の樹脂膜が形成された構成等を用いることができる。
【0328】
つまり、ある基板を用いて発光デバイスを形成し、その後、別の基板に発光デバイスを転置し、別の基板上に発光デバイスを配置してもよい。発光デバイスが転置される基板の一例としては、上述した基板に加え、セロファン基板、石材基板、木材基板、布基板(天然繊維(絹、綿、麻)、合成繊維(ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル)若しくは再生繊維(アセテート、キュプラ、レーヨン、再生ポリエステル)などを含む)、皮革基板、又はゴム基板などがある。これらの基板を用いることにより、壊れにくい発光デバイス、耐熱性の高い発光デバイス、軽量化された発光デバイス、または薄型化された発光デバイスとすることができる。
【0329】
また、上述した基板上に、例えば電界効果トランジスタ(FET)を形成し、FETと電気的に接続された電極上に発光デバイス150を作製してもよい。これにより、FETによって発光デバイスの駆動を制御するアクティブマトリクス型の表示装置を作製できる。
【0330】
以上、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0331】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光デバイスに好適に用いることのできる有機化合物の合成方法の一例について、一般式(G1)及び(G2)で表される有機化合物を例に説明する。
【0332】
<一般式(G1)で表される有機化合物の合成方法>
上記一般式(G1)で表される有機化合物は、種々の反応を適用した合成方法により合成することができる。例えば、下記に示す合成スキーム(S-1)および(S-2)により合成することができる。化合物1と、アリールアミン(化合物2)と、アリールアミン(化合物3)とをカップリングすることにより、ジアミン化合物(化合物4)を得る。
【0333】
続いて、ジアミン化合物(化合物4)と、ハロゲン化アリール(化合物5)と、ハロゲン化アリール(化合物6)とをカップリングすることにより、上記一般式(G1)で表される有機化合物を得ることができる。
【0334】
【0335】
【0336】
なお、上記合成スキーム(S-1)および(S-2)において、Aは炭素数10乃至30の置換若しくは無置換の縮合芳香環または炭素数10乃至30の置換若しくは無置換の縮合複素芳香環を表し、Ar1乃至Ar4はそれぞれ独立に置換または無置換の炭素数6乃至13の芳香族炭化水素基を表し、X1乃至X8はそれぞれ独立に、炭素数3以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上12以下のトリアルキルシリル基のいずれか一を表す。該縮合芳香環または縮合複素芳香環としては、クリセン、フェナントレン、スチルベン、アクリドン、フェノキサジン、フェノチアジン等が挙げられる。特にアントラセン、ピレン、クマリン、キナクリドン、ペリレン、テトラセン、ナフトビスベンゾフランであると好ましい。
【0337】
なお、上記合成スキーム(S-1)及び(S-2)において、パラジウム触媒を用いたブッフバルト・ハートウィッグ反応を行う場合、X10乃至X13はハロゲン基又はトリフラート基を表し、ハロゲンとしては、ヨウ素又は臭素又は塩素が好ましい。当該反応では、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)等のパラジウム化合物と、トリ(tert-ブチル)ホスフィン、トリ(n-ヘキシル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジ(1-アダマンチル)-n-ブチルホスフィン、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル等の配位子を用いることができる。また、ナトリウム tert-ブトキシド等の有機塩基や、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基等を用いることができる。また、溶媒として、トルエン、キシレン、メシチレン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を用いることができる。なお、当該反応で用いることができる試薬類は、これらの試薬類に限られるものではない。
【0338】
また、上記合成スキーム(S-1)及び(S-2)において行う反応は、ブッフバルト・ハートウィッグ反応に限られるものではなく、有機錫化合物を用いた右田・小杉・スティルカップリング反応、グリニヤール試薬を用いたカップリング反応、銅、又は銅化合物を用いたウルマン反応等を用いることができる。
【0339】
上記合成スキーム(S-1)において、化合物2と化合物3とが異なる構造である場合、化合物1と化合物2とを先に反応させてカップリング体とし、得られたカップリング体と、化合物3とを反応させることが好ましい。なお、化合物1に対して、化合物2及び化合物3を段階的に反応させる場合は、化合物1は、ジハロゲン体であることが好ましく、X10及びX11は異なるハロゲンを用いて選択的に1つずつアミノ化反応を行うことが好ましい。
【0340】
さらに合成スキーム(S-2)において、化合物5と化合物6とが異なる構造である場合、化合物4と化合物5とをまず反応させてカップリング体を得てから、さらに得られたカップリング体と化合物6とを反応させることが好ましい。
【0341】
<一般式(G2)で表される有機化合物の合成方法>
一般式(G2)で表される本発明の一態様の有機化合物は、あらゆる有機反応を利用することで合成することができる。例として、二種の方法を下記に示す。
【0342】
一つ目の手法は、以下の合成スキーム(S-3)乃至(S-8)から成り立つ。最初の工程では、アニリン化合物(化合物7)と1,4-シクロヘキサジエン-1,4-ジカルボン酸化合物(化合物8)の縮合反応により、アミン化合物(化合物9)を得る。該工程をスキーム(S-3)に示す。ただし、一段階で同一の置換基を有するアニリン化合物(化合物7)を2つ縮合し、同一の置換基を有するアミノ基を導入する場合は、2当量のアニリン化合物(化合物7)を加えて同反応を行うことが好ましい。その場合、化合物8のカルボニル基に反応選択性が無くても目的物を得ることができる。
【0343】
次いで、アミン化合物(化合物9)とアニリン誘導体(化合物10)を縮合反応させることで1,4-シクロヘキサジエン化合物(化合物11)を得ることができる。化合物11を得る工程をスキーム(S-4)に示す。
【0344】
次いで、1,4-シクロヘキサジエン化合物(化合物11)を空気中において酸化することによりテレフタル酸化合物(化合物12)を得ることができる。化合物12を得る工程をスキーム(S-5)に示す。
【0345】
次いで、テレフタル酸化合物(化合物12)を、酸を用いて縮環させることにより、キナクリドン化合物(化合物13)を得ることができる。化合物13を得る工程をスキーム(S-6)に示す。
【0346】
次いで、キナクリドン化合物(化合物13)とハロゲン化アリール(化合物14)をカップリングすることにより、キナクリドン化合物(化合物15)を得ることができる。化合物15を得る工程をスキーム(S-7)に示す。ただし、一段階で同一の置換基を有するハロゲン化アリール(化合物8)を2つカップリングすることができ、同一の置換基を有するアミノ基を導入する場合は、2当量のハロゲン化アリール(化合物14)を加えて同反応を行うことが好ましい。その場合、化合物14のアミノ基に反応選択性が無くても目的物が得られる。
【0347】
次いで、キナクリドン化合物(化合物15)とハロゲン化アリール(化合物16)をカップリングすることにより、上記一般式(G2)で表される有機化合物を得ることができる。該工程をスキーム(S-8)に示す。
【0348】
【0349】
【0350】
二つ目の手法は、合成スキーム(S-3)乃至(S-5)、以下の(S-9)、(S-10)、及び(S-11)から成り立つ。(S-3)乃至(S-5)の説明は上記の通りである。テレフタル酸化合物(化合物12)とハロゲン化アリール(化合物14)をカップリングすることにより、ジアミン化合物(化合物17)を得ることができる。化合物17を得る工程をスキーム(S-9)に示す。ただし、一段階で同一の置換基を有するハロゲン化アリール2分子をカップリングすることができ、同一の置換基を有するアミノ基を導入する場合は、2当量のハロゲン化アリール(化合物14)を加えて同反応を行うことが好ましい。その場合、化合物12のアミノ基に反応選択性が無くても目的物が得られる。
【0351】
次いで、ジアミン化合物(化合物17)とハロゲン化アリール(化合物16)をカップリングすることにより、ジアミン化合物(化合物18)を得ることができる。化合物18を得る工程をスキーム(S-10)に示す。
【0352】
最後に、ジアミン化合物(化合物18)を、酸を用いて縮環させることで、上記一般式(G2)で表される有機化合物を得ることができる。該工程をスキーム(S-11)に示す。ただし、縮環反応の際にAr5またはAr6のオルト位の水素が反応し、上記一般式(G2)で表される有機化合物の異性体が生じる可能性がある。
【0353】
スキーム(S-11)において、対称的な構造を有するジアミン化合物(化合物18)を用いることで、上記一般式(G2)で表される有機化合物を合成することが可能である。
【0354】
【0355】
合成スキーム(S-3)乃至(S-6)及び(S-9)乃至(S-11)において、Al1はメチル基等のアルキル基を表す。
【0356】
合成スキーム(S-7)乃至(S-10)において、Y1とY2は塩素、臭素、ヨウ素、トリフラート基を表す。
【0357】
合成スキーム(S-7)乃至(S-10)においては、高温下で反応を進めることが出来、比較的高収率で目的化合物を得られることから、ウルマン反応を行うことが好ましい。当該反応で用いることができる試薬は、銅もしくは銅化合物、塩基としては、炭酸カリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基が挙げられる。当該反応において、用いることができる溶媒は、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)ピリミジノン(DMPU)、トルエン、キシレン、ベンゼン等が挙げられる。ウルマン反応では、反応温度が100℃以上の方がより短時間かつ高収率で目的物が得られるため、沸点の高い2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン、DMPU、キシレンを用いることが好ましい。また、反応温度は150℃以上より高温が更に好ましいため、より好ましくはDMPUを用いることとする。当該反応において、用いることができる試薬類は、上記試薬類に限られるものではない。
【0358】
合成スキーム(S-7)乃至(S-10)において、パラジウム触媒を用いたブッフバルト・ハートウィッグ反応を行うことが出来、当該反応では、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)、[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、アリルパラジウム(II)クロリド(ダイマー)等のパラジウム化合物と、トリ(tert-ブチル)ホスフィン、トリ(n-ヘキシル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジ(1-アダマンチル)-n-ブチルホスフィン、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル、トリ(オルト-トリル)ホスフィン、(S)-(6,6’-ジメトキシビフェニル-2,2’-ジイル)ビス(ジイソプロピルホスフィン)(略称:cBRIDP(登録商標))等の配位子を用いる事ができる。当該反応では、ナトリウム tert-ブトキシド等の有機塩基や、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基等を用いることができる。当該反応では、溶媒として、トルエン、キシレン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を用いることができる。当該反応で用いることができる試薬類は、上記試薬類に限られるものではない。
【0359】
また、本発明の一般式(G2)で表される有機化合物を合成するための方法は合成スキーム(S-1)乃至(S-11)に限られるものではない。
【0360】
キナクリドン骨格に置換しているR1乃至R10の具体例としては、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリブチルシリル基などが挙げられる。
【0361】
X9及びX10が置換したAr5と、X11及びX12が置換したAr6の具体例としては、2-イソプロピルフェニル基、2-ブチルフェニル基、2-イソブチルフェニル基、2-tert-ブチルフェニル基、2-イソプロピルフェニル基、2-ブチルフェニル基、3-プロピルフェニル基、3-イソブチルフェニル基、3-tert-ブチルフェニル基、4-プロピルフェニル基、4-イソプロピルフェニル基、4-ブチルフェニル基、4-イソブチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、3,5-ジプロピルフェニル基、3,5-ジ-イソプロピルフェニル基、3,5-ジブチルフェニル基、3,5-ジ-イソブチルフェニル基、(3,5-ジ-tert-ブチル)フェニル基、1,3-ジプロピルフェニル基、1,3-ジ-イソプロピルフェニル基、1,3-ジブチルフェニル基、1,3-ジ-イソブチルフェニル基、(1,3-ジ-tert-ブチル)フェニル基、1,3,5-トリイソプロピルフェニル基、(1,3,5-トリ-tert-ブチル)フェニル基、4-シクロヘキシルフェニル基などが挙げられる。
【0362】
以上、本発明の一態様であり、一般式(G1)および一般式(G2)で表される有機化合物の合成方法について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、他の合成方法によって合成してもよい。
【0363】
(実施の形態3)
本実施の形態においては、実施の形態1に示す発光デバイスの構成と異なる構成の発光デバイスについて、
図12を用いて、以下説明を行う。なお、
図12において、
図1Aに示す符号と同様の機能を有する箇所には、同様のハッチパターンとし、符号を省略する場合がある。また、同様の機能を有する箇所には、同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する場合がある。
【0364】
<発光デバイスの構成例2>
図12は、発光デバイス250の断面模式図である。
【0365】
図12に示す発光デバイス250は、一対の電極(電極101及び電極102)の間に、複数の発光ユニット(発光ユニット106及び発光ユニット108)を有する。複数の発光ユニットのうちいずれか一つの発光ユニットは、
図1Aに示した、EL層100と同様な構成を有すると好ましい。つまり、
図1Aで示した発光デバイス150は、1つの発光ユニットを有し、発光デバイス250は、複数の発光ユニットを有すると好ましい。なお、発光デバイス250において、電極101が陽極として機能し、電極102が陰極として機能するとして、以下説明するが、発光デバイス250の構成としては、逆であっても構わない。
【0366】
また、
図12に示す発光デバイス250において、発光ユニット106と発光ユニット108とが積層されており、発光ユニット106と発光ユニット108との間には電荷発生層115が設けられる。なお、発光ユニット106と発光ユニット108は、同じ構成でも異なる構成でもよい。例えば、発光ユニット108に、EL層100と同様な構成を用いると好ましい。
【0367】
また、発光デバイス250は、発光層160と、発光層170と、を有する。また、発光ユニット106は、発光層160の他に、正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送層113、及び電子注入層114を有する。また、発光ユニット108は、発光層170の他に、正孔注入層116、正孔輸送層117、電子輸送層118、及び電子注入層119を有する。
【0368】
発光デバイス250は発光ユニット106及び発光ユニット108が有するいずれかの層に本発明の一態様に係る化合物が含まれているとこのましい。なお、該化合物が含まれる層として好ましくは発光層160または発光層170である。
【0369】
電荷発生層115は、正孔輸送性材料に電子受容体であるアクセプター性物質が添加された構成であっても、電子輸送性材料に電子供与体であるドナー性物質が添加された構成であってもよい。また、これらの両方の構成が積層されていても良い。
【0370】
電荷発生層115に、有機化合物とアクセプター性物質の複合材料が含まれる場合、該複合材料には実施の形態1に示す正孔注入層111に用いることができる複合材料を用いればよい。有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール化合物、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、有機化合物としては、正孔移動度が1×10-6cm2/Vs以上であるものを適用することが好ましい。ただし、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。有機化合物とアクセプター性物質の複合材料は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、低電圧駆動、低電流駆動を実現することができる。なお、発光ユニットの陽極側の面が電荷発生層115に接している場合は、電荷発生層115が該発光ユニットの正孔注入層または正孔輸送層の役割も担うことができるため、該発光ユニットには正孔注入層または正孔輸送層を設けない構成であっても良い。あるいは、発光ユニットの陰極側の面が電荷発生層115に接している場合は、電荷発生層115が該発光ユニットの電子注入層または電子輸送層の役割も担うことができるため、該発光ユニットには電子注入層または電子輸送層を設けない構成であっても良い。
【0371】
なお、電荷発生層115は、有機化合物とアクセプター性物質の複合材料を含む層と他の材料により構成される層を組み合わせた積層構造として形成してもよい。例えば、有機化合物とアクセプター性物質の複合材料を含む層と、電子供与性物質の中から選ばれた一の化合物と電子輸送性の高い化合物とを含む層とを組み合わせて形成してもよい。また、有機化合物とアクセプター性物質の複合材料を含む層と、透明導電膜を含む層とを組み合わせて形成してもよい。
【0372】
なお、発光ユニット106と発光ユニット108とに挟まれる電荷発生層115は、電極101と電極102とに電圧を印加したときに、一方の発光ユニットに電子を注入し、他方の発光ユニットに正孔を注入するものであれば良い。例えば、
図12において、電極101の電位の方が電極102の電位よりも高くなるように電圧を印加した場合、電荷発生層115は、発光ユニット106に電子を注入し、発光ユニット108に正孔を注入する。
【0373】
なお、電荷発生層115は、光取出し効率の点から、可視光に対して透光性(具体的には、電荷発生層115に対する可視光の透過率が40%以上)を有することが好ましい。また、電荷発生層115は、一対の電極(電極101及び電極102)よりも低い導電率であっても機能する。
【0374】
上述した材料を用いて電荷発生層115を形成することにより、発光層が積層された場合における駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0375】
また、
図12においては、2つの発光ユニットを有する発光デバイスについて説明したが、3つ以上の発光ユニットを積層した発光デバイスについても、同様に適用することが可能である。発光デバイス250に示すように、一対の電極間に複数の発光ユニットを電荷発生層で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度発光を可能とし、さらに長寿命な発光デバイスを実現できる。また、消費電力が低い発光デバイスを実現することができる。
【0376】
なお、上記各構成において、発光ユニット106及び発光ユニット108に用いるゲスト材料が呈する発光色としては、互いに同じであっても異なっていてもよい。発光ユニット106及び発光ユニット108で互いに同じ色の発光を呈する機能を有するゲスト材料を有する場合、発光デバイス250は少ない電流値で高い発光輝度を呈する発光デバイスとなり好ましい。また、発光ユニット106及び発光ユニット108、で互いに異なる色の発光を呈する機能を有するゲスト材料を有する場合、発光デバイス250は多色発光を呈する発光デバイスとなり好ましい。この場合、発光層160及び発光層170のいずれか一方もしくは双方に発光波長の異なる複数の発光材料を用いることによって、発光デバイス250が呈する発光スペクトルは異なる発光ピークを有する発光が合成された光となるため、少なくとも二つの極大値を有する発光スペクトルとなる。
【0377】
上記の構成は白色発光を得るためにも好適である。発光層160及び発光層170の光を互いに補色の関係とすることによって、白色発光を得ることができる。特に、演色性の高い白色発光、あるいは少なくとも赤色と緑色と青色とを有する発光、になるようゲスト材料を選択することが好適である。例えば、発光層160に実施の形態1で示した発光層130a及び発光層130bの構成を用い、発光層160からは緑及び赤の発光が得られ、発光層170からは青色の発光が得られる構成が考えられる。
【0378】
発光層160及び発光層170の一方または両方に実施の形態1で示した発光層130a及び発光層130bの構成を用いると好ましい。該構成にすることによって、発光効率及び信頼性が良好な発光デバイスを得ることができる。また、発光層160に実施の形態1に示した発光層130a及び発光層130bの構成を用いた場合、発光層170は燐光発光層、蛍光発光層または蛍光発光及び燐光発光の双方の発光を呈する発光層であっても構わないが、青色蛍光発光層であると白色発光を得やすいため好ましい。
【0379】
また、3つ以上の発光ユニットを積層した発光デバイスの場合、それぞれの発光ユニットに用いるゲスト材料が呈する発光色は、互いに同じであっても異なっていてもよい。同色の発光を呈する発光ユニットを複数有する場合、この複数の発光ユニットは、少ない電流値で高い強度の光を発することができる。このような構成は、発光色の調整に好適に用いることができる。特に、発光効率が異なり且つ、異なる発光色を呈するゲスト材料を用いる場合に好適である。例えば、3層の発光ユニットを有する場合、同色の蛍光性材料を有する発光ユニットを2層、該蛍光性材料とは異なる発光色を呈する燐光材料を有する発光ユニットを1層とすることで、蛍光発光と燐光発光の発光強度を調整することができる。すなわち、発光ユニットの数によって発光色の強度を調整可能である。
【0380】
また、発光層160または発光層170の少なくとも一つを層状にさらに分割し、当該分割した層ごとに異なる発光材料を含有させるようにしても良い。すなわち、発光層160、または発光層170の少なくとも一つが2層以上の複数層でもって構成することもできる。例えば、第1の発光層と第2の発光層を正孔輸送層側から順に積層して発光層とする場合、第1の発光層のホスト材料として正孔輸送性を有する材料を用い、第2の発光層のホスト材料として電子輸送性を有する材料を用いる構成などがある。この場合、第1の発光層と第2の発光層とが有する発光材料は、同じ材料あっても異なる材料であってもよく、同じ色の発光を呈する機能を有する材料であっても、異なる色の発光を呈する機能を有する材料であってもよい。互いに異なる色の発光を呈する機能を有する複数の発光材料を有する構成により、三原色や、4色以上の発光色からなる演色性の高い白色発光を得ることもできる。
【0381】
なお、実施の形態3で述べた燐光発光層には実施の形態1で述べた正孔輸送性材料、電子輸送性材料及び燐光性材料を適宜組み合わせて用いることができる。
【0382】
なお、実施の形態3で述べた青色蛍光発光層に用いるホスト材料及びゲスト材料としては、特に限定は無いが、例えば以下の材料を挙げることができる。
【0383】
ゲスト材料としては、例えば、ピレン誘導体、ペリレン誘導体などを用いることができ、例えば以下の材料を用いることができる。
【0384】
具体的には、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)、N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-N,N’-ビス(4-tert-ブチルフェニル)-ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6tBu-FLPAPrn)、N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニル-3,8-ジシクロヘキシルピレン-1,6-ジアミン(略称:ch-1,6FLPAPrn)、5,10,15,20-テトラフェニルビスベンゾ[5,6]インデノ[1,2,3-cd:1’,2’,3’-lm]ペリレン(略称:DBP)などが挙げられる。
【0385】
ホスト材料としては、例えば、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、ジベンゾ[g,p]クリセン誘導体等の縮合多環芳香族化合物が挙げられ、具体的には、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq3)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)などの複素環化合物、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα-NPD)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物が挙げられる。また、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、ジベンゾ[g,p]クリセン誘導体等の縮合多環芳香族化合物が挙げられ、具体的には、9,10-ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、N,N-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:CzA1PA)、4-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、N,9-ジフェニル-N-{4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]フェニル}-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPBA)、N,9-ジフェニル-N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPA)、7-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:cgDBCzPA)、6,12-ジメトキシ-5,11-ジフェニルクリセン、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン(略称:DBC1)、9-フェニル-3-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:PCzPA)、3,6-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:DPCzPA)、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、9,9’-ビアントリル(略称:BANT)、9,9’-(スチルベン-3,3’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’-(スチルベン-4,4’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、1,3,5-トリ(1-ピレニル)ベンゼン(略称:TPB3)などを挙げることができる。また、これら及び公知の物質の中から、上記ゲスト材料のエネルギーギャップより大きなエネルギーギャップを有する物質を、一種もしくは複数種選択して用いればよい。
【0386】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0387】
(実施の形態4)
本実施の形態では実施の形態1及び実施の形態3で説明した発光デバイスを用いた発光装置について、
図13A及び
図13Bを用いて説明する。
【0388】
図13Aは、発光装置を示す上面図、
図13Bは
図13AをA-BおよびC-Dで切断した断面図である。この発光装置は、発光デバイスの発光を制御するものとして、点線で示された駆動回路部(ソース側駆動回路)601、画素部602、駆動回路部(ゲート側駆動回路)603を含んでいる。また、604は封止基板、625は乾燥材、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空間607になっている。
【0389】
なお、引き回し配線608はソース側駆動回路601及びゲート側駆動回路603に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB:Printed Wiring Board)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態を含むものとする。
【0390】
次に、上記発光装置の断面構造について
図13Bを用いて説明する。素子基板610上に駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路601と画素部602中の一つの画素が示されている。
【0391】
なお、ソース側駆動回路601はnチャネル型TFT623とpチャネル型TFT624とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路は種々のCMOS回路、PMOS回路、NMOS回路で形成しても良い。また本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバー一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく、外部に形成することもできる。
【0392】
また、画素部602はスイッチング用TFT611と電流制御用TFT612とそのドレインに電気的に接続された第1の電極613とを含む画素により形成される。なお、第1の電極613の端部を覆うように絶縁物614が形成されている。絶縁物614は、ポジ型の感光性樹脂膜を用いることにより形成することができる。
【0393】
また、絶縁物614上に形成される膜の被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有する面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料として感光性アクリルを用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲面をもたせることが好ましい。該曲面の曲率半径は0.2μm以上0.3μm以下が好ましい。また、絶縁物614として、ネガ型、ポジ型、いずれの感光材料も使用することができる。
【0394】
第1の電極613上には、EL層616、および第2の電極617がそれぞれ形成されている。ここで、陽極として機能する第1の電極613に用いる材料としては、仕事関数の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO膜、またはケイ素を含有したインジウム錫酸化物膜、2wt%以上20wt%以下の酸化亜鉛を含む酸化インジウム膜、窒化チタン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜の他、窒化チタンとアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との3層構造等を用いることができる。なお、積層構造とすると、配線としての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクトがとれ、さらに陽極として機能させることができる。
【0395】
また、EL層616は、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法、スピンコート法等の種々の方法によって形成される。EL層616を構成する材料としては、低分子化合物、または高分子化合物(オリゴマー、デンドリマーを含む)であっても良い。
【0396】
さらに、EL層616上に形成され、陰極として機能する第2の電極617に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Mg、Li、Ca、またはこれらの合金や化合物、MgAg、MgIn、AlLi等)を用いることが好ましい。なお、EL層616で生じた光が第2の電極617を透過させる場合には、第2の電極617として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(ITO、2wt%以上20wt%以下の酸化亜鉛を含む酸化インジウム、ケイ素を含有したインジウム錫酸化物、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層を用いるのが良い。
【0397】
なお、第1の電極613、EL層616、第2の電極617により、発光デバイス618が形成されている。発光デバイス618は実施の形態1及び実施の形態2の構成を有する発光デバイスであると好ましい。なお、画素部は複数の発光デバイスが形成されてなっているが、本実施の形態における発光装置では、実施の形態1及び実施の形態2で説明した構成を有する発光デバイスと、それ以外の構成を有する発光デバイスの両方が含まれていても良い。
【0398】
さらにシール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光デバイス618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、樹脂若しくは乾燥材又はその両方で充填される場合もある。
【0399】
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂やガラスフリットを用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiber Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0400】
以上のようにして、実施の形態1及び実施の形態3で説明した発光デバイスを用いた発光装置を得ることができる。
【0401】
<発光装置の構成例1>
図14には表示装置の一例として、白色発光を呈する発光デバイスを形成し、着色層(カラーフィルタ)を形成した発光装置の例を示す。
【0402】
図14Aには基板1001、下地絶縁膜1002、ゲート絶縁膜1003、ゲート電極1006、1007、1008、第1の層間絶縁膜1020、第2の層間絶縁膜1021、周辺部1042、画素部1040、駆動回路部1041、発光デバイスの第1の電極1024W、1024R、1024G、1024B、隔壁1025、EL層1028、発光デバイスの第2の電極1029、封止基板1031、シール材1032、赤色画素1044R、緑色画素1044G、青色画素1044B、白色画素1044Wなどが図示されている。
【0403】
また、
図14A、
図14Bには着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034Bを透明な基材1033に設けている。また、黒色層(ブラックマトリックス)1035をさらに設けても良い。着色層及び黒色層が設けられた透明な基材1033は、位置合わせし、基板1001に固定する。なお、着色層、及び黒色層は、オーバーコート層1036で覆われている。また、
図14Aにおいては、光が着色層を透過せずに外部へと出る発光層と、各色の着色層を透過して外部に光が出る発光層とがあり、着色層を透過しない光は白、着色層を透過する光は赤、青、緑となることから、4色の画素で映像を表現することができる。
【0404】
図14Bでは赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034Bをゲート絶縁膜1003と第1の層間絶縁膜1020との間に形成する例を示した。
図14Bに示すように着色層は基板1001と封止基板1031の間に設けられても良い。
【0405】
また、以上に説明した発光装置では、TFTが形成されている基板1001側に光を取り出す構造(ボトムエミッション型)の発光装置としたが、封止基板1031側に発光を取り出す構造(トップエミッション型)の発光装置としても良い。
【0406】
<発光装置の構成例2>
トップエミッション型の発光装置の断面図を
図15A及び
図15Bに示す。この場合、基板1001は光を通さない基板を用いることができる。TFTと発光デバイスの陽極とを接続する接続電極を作製するまでは、ボトムエミッション型の発光装置と同様に形成する。その後、第3の層間絶縁膜1037を電極1022を覆って形成する。この絶縁膜は平坦化の役割を担っていても良い。第3の層間絶縁膜1037は第2の層間絶縁膜1021と同様の材料の他、他の様々な材料を用いて形成することができる。
【0407】
発光デバイスの下部電極1025W、下部電極1025R、下部電極1025G、下部電極1025Bはここでは陽極とするが、陰極であっても構わない。また、
図15A及び
図15Bのようなトップエミッション型の発光装置である場合、下部電極1025W、下部電極1025R、下部電極1025G、下部電極1025Bは反射電極とすることが好ましい。なお、第2の電極1029は光を反射する機能と、光を透過する機能を有すると好ましい。また、第2の電極1029と下部電極1025W、下部電極1025R、下部電極1025G、下部電極1025Bとの間でマイクロキャビティ構造を適用し特定波長の光を増幅する機能を有すると好ましい。EL層1028の構成は、実施の形態1及び実施の形態3で説明したような構成とし、白色の発光が得られるような素子構造とする。
【0408】
図14A、
図14B、
図15A及び
図15Bにおいて、白色の発光が得られるEL層の構成としては、発光層を複数層用いること、複数の発光ユニットを用いることなどにより実現すればよい。なお、白色発光を得る構成はこれらに限られない。
【0409】
図15A及び
図15Bのようなトップエミッション構造では着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)を設けた封止基板1031で封止を行うことができる。封止基板1031には画素と画素との間に位置するように黒色層(ブラックマトリックス)1030を設けても良い。着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)や黒色層(ブラックマトリックス)はオーバーコート層によって覆われていても良い。なお封止基板1031は透光性を有する基板を用いる。
【0410】
また、
図15Aでは赤、緑、青の3色でフルカラー表示を行う構成を示したが、
図15Bに示すように、赤、緑、青、白の4色でフルカラー表示を行っても構わない。また、フルカラー表示を行う構成はこれらに限定されない。例えば、また、赤、緑、青、黄の4色でフルカラー表示を行ってもよい。
【0411】
本発明の一態様に係る発光デバイスは、ゲスト材料として蛍光性材料を用いる。蛍光性材料は燐光材料と比較し、スペクトルがシャープであるため、色純度が高い発光を得ることができる。そのため、本実施の形態に示す発光装置に該発光デバイスを用いることによって、色再現性が高い発光装置を得ることができる。
【0412】
以上のようにして、実施の形態1及び実施の形態3で説明した発光デバイスを用いた発光装置を得ることができる。
【0413】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0414】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の電子機器及び表示装置について説明する。
【0415】
本発明の一態様によって、平面を有し、発光効率が良好な、信頼性の高い電子機器及び表示装置を作製できる。また、本発明の一態様により、曲面を有し、発光効率が良好な、信頼性の高い電子機器及び表示装置を作製できる。また、上述のように色再現性が高い発光デバイスを得ることができる。
【0416】
電子機器としては、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
【0417】
図16A、
図16Bに示す携帯情報端末900は、筐体901、筐体902、表示部903、及びヒンジ部905等を有する。
【0418】
筐体901と筐体902は、ヒンジ部905で連結されている。携帯情報端末900は、折り畳んだ状態(
図16A)から、
図16Bに示すように展開させることができる。これにより、持ち運ぶ際には可搬性に優れ、使用するときには大きな表示領域により、視認性に優れる。
【0419】
携帯情報端末900には、ヒンジ部905により連結された筐体901と筐体902に亘って、フレキシブルな表示部903が設けられている。
【0420】
本発明の一態様を用いて作製された発光装置を、表示部903に用いることができる。これにより、高信頼性を有する携帯情報端末を作製することができる。
【0421】
表示部903は、文書情報、静止画像、及び動画像等のうち少なくとも一つを表示することができる。表示部に文書情報を表示させる場合、携帯情報端末900を電子書籍端末として用いることができる。
【0422】
携帯情報端末900を展開すると、表示部903は曲率半径が大きい状態で保持される。例えば、曲率半径1mm以上50mm以下、好ましくは5mm以上30mm以下に湾曲した部分を含んで、表示部903が保持される。表示部903の一部は、筐体901から筐体902にかけて、連続的に画素が配置され、曲面状の表示を行うことができる。
【0423】
表示部903は、タッチパネルとして機能し、指やスタイラスなどにより操作することができる。
【0424】
表示部903は、一つのフレキシブルディスプレイで構成されていることが好ましい。これにより、筐体901と筐体902の間で途切れることのない連続した表示を行うことができる。なお、筐体901と筐体902のそれぞれに、ディスプレイが設けられる構成としてもよい。
【0425】
ヒンジ部905は、携帯情報端末900を展開したときに、筐体901と筐体902との角度が所定の角度よりも大きい角度にならないように、ロック機構を有することが好ましい。例えば、ロックがかかる(それ以上に開かない)角度は、90度以上180度未満であることが好ましく、代表的には、90度、120度、135度、150度、または175度などとすることができる。これにより、携帯情報端末900の利便性、安全性、及び信頼性を高めることができる。
【0426】
ヒンジ部905がロック機構を有すると、表示部903に無理な力がかかることなく、表示部903が破損することを防ぐことができる。そのため、信頼性の高い携帯情報端末を実現できる。
【0427】
筐体901及び筐体902は、電源ボタン、操作ボタン、外部接続ポート、スピーカ、マイク等を有していてもよい。
【0428】
筐体901または筐体902のいずれか一方には、無線通信モジュールが設けられ、インターネットやLAN(Local Area Network)、Wi-Fi(登録商標)などのコンピュータネットワークを介して、データを送受信することが可能である。
【0429】
図16Cに示す携帯情報端末910は、筐体911、表示部912、操作ボタン913、外部接続ポート914、スピーカ915、マイク916、カメラ917等を有する。
【0430】
本発明の一態様を用いて作製された発光装置を、表示部912に用いることができる。これにより、高い歩留まりで携帯情報端末を作製することができる。
【0431】
携帯情報端末910は、表示部912にタッチセンサを備える。電話を掛ける、或いは文字を入力するなどのあらゆる操作は、指やスタイラスなどで表示部912に触れることで行うことができる。
【0432】
また、操作ボタン913の操作により、電源のON、OFF動作や、表示部912に表示される画像の種類の切り替えを行うことができる。例えば、メール作成画面から、メインメニュー画面に切り替えることができる。
【0433】
また、携帯情報端末910の内部に、ジャイロセンサまたは加速度センサ等の検出装置を設けることで、携帯情報端末910の向き(縦か横か)を判断して、表示部912の画面表示の向きを自動的に切り替えることができる。また、画面表示の向きの切り替えは、表示部912に触れること、操作ボタン913の操作、またはマイク916を用いた音声入力等により行うこともできる。
【0434】
携帯情報端末910は、例えば、電話機、手帳または情報閲覧装置等から選ばれた一つまたは複数の機能を有する。具体的には、スマートフォンとして用いることができる。携帯情報端末910は、例えば、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、動画再生、インターネット通信、ゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
【0435】
図16Dに示すカメラ920は、筐体921、表示部922、操作ボタン923、シャッターボタン924等を有する。またカメラ920には、着脱可能なレンズ926が取り付けられている。
【0436】
本発明の一態様を用いて作製された発光装置を、表示部922に用いることができる。これにより、高信頼性を有するカメラを作製することができる。
【0437】
ここではカメラ920を、レンズ926を筐体921から取り外して交換することが可能な構成としたが、レンズ926と筐体921とが一体となっていてもよい。
【0438】
カメラ920は、シャッターボタン924を押すことにより、静止画または動画を撮像することができる。また、表示部922はタッチパネルとしての機能を有し、表示部922をタッチすることにより撮像することも可能である。
【0439】
なお、カメラ920は、ストロボ装置や、ビューファインダーなどを別途装着することができる。または、これらが筐体921に組み込まれていてもよい。
【0440】
図17Aは、掃除ロボットの一例を示す模式図である。
【0441】
掃除ロボット5100は、上面に配置されたディスプレイ5101、側面に配置された複数のカメラ5102、ブラシ5103、操作ボタン5104を有する。また図示されていないが、掃除ロボット5100の下面には、タイヤ、吸い込み口等が備えられている。掃除ロボット5100は、その他に赤外線センサ、超音波センサ、加速度センサ、ピエゾセンサ、光センサ、ジャイロセンサなどの各種センサを備えている。また、掃除ロボット5100は、無線による通信手段を備えている。
【0442】
掃除ロボット5100は自走し、ゴミ5120を検知し、下面に設けられた吸い込み口からゴミを吸引することができる。
【0443】
また、掃除ロボット5100はカメラ5102が撮影した画像を解析し、壁、家具または段差などの障害物の有無を判断することができる。また、画像解析により、配線などブラシ5103に絡まりそうな物体を検知した場合は、ブラシ5103の回転を止めることができる。
【0444】
ディスプレイ5101には、バッテリーの残量や、吸引したゴミの量などを表示することができる。掃除ロボット5100が走行した経路をディスプレイ5101に表示させてもよい。また、ディスプレイ5101をタッチパネルとし、操作ボタン5104をディスプレイ5101に設けてもよい。
【0445】
掃除ロボット5100は、スマートフォンなどの携帯電子機器5140と通信することができる。カメラ5102が撮影した画像は、携帯電子機器5140に表示させることができる。そのため、掃除ロボット5100の持ち主は、外出先からでも、部屋の様子を知ることができる。また、ディスプレイ5101の表示をスマートフォンなどの携帯電子機器5140で確認することもできる。
【0446】
本発明の一態様の発光装置はディスプレイ5101に用いることができる。
【0447】
図17Bに示すロボット2100は、演算装置2110、照度センサ2101、マイクロフォン2102、上部カメラ2103、スピーカ2104、ディスプレイ2105、下部カメラ2106、障害物センサ2107、および移動機構2108を備える。
【0448】
マイクロフォン2102は、使用者の話し声及び環境音等を検知する機能を有する。また、スピーカ2104は、音声を発する機能を有する。ロボット2100は、マイクロフォン2102およびスピーカ2104を用いて、使用者とコミュニケーションをとることが可能である。
【0449】
ディスプレイ2105は、種々の情報の表示を行う機能を有する。ロボット2100は、使用者の望みの情報をディスプレイ2105に表示することが可能である。ディスプレイ2105は、タッチパネルを搭載していてもよい。また、ディスプレイ2105は取り外しのできる情報端末であっても良く、ロボット2100の定位置に設置することで、充電およびデータの受け渡しを可能とする。
【0450】
上部カメラ2103および下部カメラ2106は、ロボット2100の周囲を撮像する機能を有する。また、障害物センサ2107は、移動機構2108を用いてロボット2100が前進する際の進行方向における障害物の有無を察知することができる。ロボット2100は、上部カメラ2103、下部カメラ2106および障害物センサ2107を用いて、周囲の環境を認識し、安全に移動することが可能である。
【0451】
本発明の一態様の発光装置はディスプレイ2105に用いることができる。
【0452】
図17Cはゴーグル型ディスプレイの一例を表す図である。ゴーグル型ディスプレイは、例えば、筐体5000、表示部5001、スピーカ5003、LEDランプ5004、操作キー(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端子5006、センサ5007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい、又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン5008、第2の表示部5002、支持部5012、イヤホン5013等を有する。
【0453】
本発明の一態様の発光装置は表示部5001および第2の表示部5002に用いることができる。
【0454】
また、
図18A、
図18Bに、折りたたみ可能な携帯情報端末5150を示す。折りたたみ可能な携帯情報端末5150は筐体5151、表示領域5152および屈曲部5153を有している。
図18Aに展開した状態の携帯情報端末5150を示す。
図18Bに折りたたんだ状態の携帯情報端末5150を示す。携帯情報端末5150は、大きな表示領域5152を有するにも関わらず、折りたためばコンパクトで可搬性に優れる。
【0455】
表示領域5152は屈曲部5153により半分に折りたたむことができる。屈曲部5153は伸縮可能な部材と複数の支持部材とで構成されており、折りたたむ場合は、伸縮可能な部材が伸びて、屈曲部5153は2mm以上、好ましくは5mm以上の曲率半径を有して折りたたまれる。
【0456】
なお、表示領域5152は、タッチセンサ(入力装置)を搭載したタッチパネル(入出力装置)であってもよい。本発明の一態様の発光装置を表示領域5152に用いることができる。
【0457】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0458】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光デバイスを様々な照明装置に適用する一例について、
図19を用いて説明する。本発明の一態様である発光デバイスを用いることで、発光効率が良好な、信頼性の高い照明装置を作製できる。
【0459】
本発明の一態様の発光デバイスを、可撓性を有する基板上に作製することで、曲面を有する発光領域を有する電子機器、照明装置を実現することができる。
【0460】
また、本発明の一態様の発光デバイスを適用した発光装置は、自動車の照明にも適用することができ、例えば、フロントガラス、天井等に照明を設置することもできる。
【0461】
図19は、発光デバイスを室内の照明装置8501として用いた例である。なお、発光デバイスは大面積化も可能であるため、大面積の照明装置を形成することもできる。その他、曲面を有する筐体を用いることで、発光領域が曲面を有する照明装置8502を形成することもできる。本実施の形態で示す発光デバイスは薄膜状であり、筐体のデザインの自由度が高い。したがって、様々な意匠を凝らした照明装置を形成することができる。さらに、室内の壁面に大型の照明装置8503を備えても良い。また、照明装置8501、8502、8503に、タッチセンサを設けて、電源のオンまたはオフを行ってもよい。
【0462】
また、発光デバイスをテーブルの表面側に用いることによりテーブルとしての機能を備えた照明装置8504とすることができる。なお、その他の家具の一部に発光デバイスを用いることにより、家具としての機能を備えた照明装置とすることができる。
【0463】
以上のようにして、本発明の一態様の発光デバイスを適用して照明装置及び電子機器を得ることができる。なお、適用できる照明装置及び電子機器は、本実施の形態に示したものに限らず、あらゆる分野の照明装置及び電子機器に適用することが可能である。
【0464】
また、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【符号の説明】
【0465】
100:EL層、101:電極、102:電極、106:発光ユニット、108:発光ユニット、111:正孔注入層、112:正孔輸送層、113:電子輸送層、114:電子注入層、115:電荷発生層、116:正孔注入層、117:正孔輸送層、118:電子輸送層、119:電子注入層、120:分離層、130a:発光層、130b:発光層、131:化合物、131_f:化合物、132:化合物、132_f:化合物、133:化合物、134:化合物、135:化合物、135_p:化合物、135_1:化合物、135_1p:化合物、135_2:化合物、135_2p:化合物、136:化合物、136_p:化合物、150:発光デバイス、152:発光デバイス、160:発光層、170:発光層、200:EL層、250:発光デバイス、301:ゲスト材料、302:ゲスト材料、310:発光団、320:保護基、330:ホスト材料、601:ソース側駆動回路、602:画素部、603:ゲート側駆動回路、604:封止基板、605:シール材、607:空間、608:配線、609:FPC、610:素子基板、611:スイッチング用TFT、612:電流制御用TFT、613:電極、614:絶縁物、616:EL層、617:電極、618:発光デバイス、623:nチャネル型TFT、624:pチャネル型TFT、625:乾燥材、900:携帯情報端末、901:筐体、902:筐体、903:表示部、905:ヒンジ部、910:携帯情報端末、911:筐体、912:表示部、913:操作ボタン、914:外部接続ポート、915:スピーカ、916:マイク、917:カメラ、920:カメラ、921:筐体、922:表示部、923:操作ボタン、924:シャッターボタン、926:レンズ、1001:基板、1002:下地絶縁膜、1003:ゲート絶縁膜、1006:ゲート電極、1007:ゲート電極、1008:ゲート電極、1020:層間絶縁膜、1021:層間絶縁膜、1022:電極、1024B:電極、1024G:電極、1024R:電極、1024W:電極、1025B:下部電極、1025G:下部電極、1025R:下部電極、1025W:下部電極、1025:隔壁、1028:EL層、1029:電極、1031:封止基板、1032:シール材、1033:基材、1034B:着色層、1034G:着色層、1034R:着色層、1036:オーバーコート層、1037:層間絶縁膜、1040:画素部、1041:駆動回路部、1042:周辺部、1044R:赤色画素、1044G:緑色画素、1044B:青色画素、1044W:白色画素、2100:ロボット、2101:照度センサ、2102:マイクロフォン、2103:上部カメラ、2104:スピーカ、2105:ディスプレイ、2106:下部カメラ、2107:障害物センサ、2108:移動機構、2110:演算装置、5000:筐体、5001:表示部、5002:表示部、5003:スピーカ、5004:LEDランプ、5006:接続端子、5007:センサ、5008:マイクロフォン、5012:支持部、5013:イヤホン、5100:掃除ロボット、5101:ディスプレイ、5102:カメラ、5103:ブラシ、5104:操作ボタン、5120:ゴミ、5140:携帯電子機器、5150:携帯情報端末、5151:筐体、5152:表示領域、5153:屈曲部、8501:照明装置、8502:照明装置、8503:照明装置、8504:照明装置