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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】頭部装着装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/64 20060101AFI20241021BHJP
   F16D 43/20 20060101ALI20241021BHJP
   F16M 13/04 20060101ALI20241021BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
H04N5/64 511A
F16D43/20
F16M13/04 A
G02B27/01
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023194863
(22)【出願日】2023-11-16
(62)【分割の表示】P 2020014022の分割
【原出願日】2020-01-30
(65)【公開番号】P2024019184
(43)【公開日】2024-02-08
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 嵩
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-5953(JP,A)
【文献】特表2002-515127(JP,A)
【文献】米国特許第05950245(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0364491(US,A1)
【文献】特開2018-129692(JP,A)
【文献】特開平08-223509(JP,A)
【文献】特表2019-537287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/64
F16M 13/04
F16D 43/20
G02B 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部に装着する装着部を有する頭部装着装置であって、
前記装着部は、
バンド部を有する第1のハウジングと、
前記バンド部を係合する係合部と、前記装着部の周長拡大方向に対して保持力を発生し前記装着部の周長縮小方向に対して保持力を発生しないトルクリミッタと、を有する第2のハウジングと、を有し、
前記周長拡大方向に対して前記保持力の上限を下回る力が前記トルクリミッタに加えられた場合、前記装着部の周長が拡大せず、
前記周長拡大方向に対して前記保持力の上限を上回る力が前記トルクリミッタに加えられた場合、前記周長が拡大する
ことを特徴とする頭部装着装置。
【請求項2】
前記装着部は、前記第1のハウジングのフロント部分で表示ユニットを吊り下げるように支持する
ことを特徴とする請求項1に記載の頭部装着装置。
【請求項3】
前記装着部は、表示ユニットを上下にシフト可能に支持する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の頭部装着装置。
【請求項4】
前記装着部は、前記表示ユニットを上下にシフトするダイヤルを有する
ことを特徴とする請求項3に記載の頭部装着装置。
【請求項5】
前記装着部は、表示ユニットをチルト可能に支持する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の頭部装着装置。
【請求項6】
前記装着部は、回動保持部を有し、前記回動保持部を介して、前記表示ユニットをチルト可能に支持する
ことを特徴とする請求項5に記載の頭部装着装置。
【請求項7】
前記バンド部は、ラックを有し、
前記係合部は、前記ラックと噛み合うピニオンを有する
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の頭部装着装置。
【請求項8】
前記第2のハウジングは、前記トルクリミッタを挿通し前記ピニオンと一体回転するように前記ピニオンに連結するピニオンシャフトを有する
ことを特徴とする請求項7に記載の頭部装着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部に装着するためのリング状の装着部を備えた頭部装着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
頭部に装着する頭部装着装置の一つに、ヘッドマウントディスプレイ(以後、HMD(Head Mounted Display)と呼ぶ)がある。HMDは、仮想現実(VR:Virtual Reality)や拡張現実(AR:Augmented Reality)を体感するデバイスの一つとして利用される。
頭部装着装置は、頭部に装着するためのリング状の装着部を備えている。頭部装着装置を着脱しやすくし、また、多種多様な頭部形状に対応するために、装着部に周長可変機構を持たせることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6529288号公報
【文献】米国特許第10251289号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、装着部が外ベルト及び内ベルトを有し、内ベルトの一部が外ベルトの内部に挿入される構成が開示されている。内ベルトが外ベルトから抜ける方向へ動かないようにする抜け止め機構を備え、所定の操作により抜け止めを解除できるようになっている。
しかしながら、特許文献1では、頭部にHMDを保持するための保持力を少し弱めるために、装着部の周長をわずかに拡大させるという微調を行うことができない。そのため、ユーザが使い勝手の悪さを感じるおそれがある。
【0005】
特許文献2には、ラックアンドピニオンとラッチ機構を組み合わせた周長可変機構が開示されている。
しかしながら、特許文献2では、ダイアル操作でしか装着部の周長を拡大させることができず、最大周長にするには、ダイアルを回し続ける必要があった。そのため、ユーザが使い勝手の悪さを感じるおそれがある。
【0006】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、装着部の周長可変機構を使い勝手の良いものにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の頭部装着装置は、頭部に装着する装着部を有する頭部装着装置であって、前記装着部は、バンド部を有する第1のハウジングと、前記バンド部を係合する係合部と、前記装着部の周長拡大方向に対して保持力を発生し前記装着部の周長縮小方向に対して保持力を発生しないトルクリミッタと、を有する第2のハウジングと、を有し、前記周長拡大方向に対して前記保持力の上限を下回る力が前記トルクリミッタに加えられた場合、前記装着部の周長が拡大せず、前記周長拡大方向に対して前記保持力の上限を上回る力が前記トルクリミッタに加えられた場合、前記周長が拡大することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、装着部の周長可変機構を使い勝手の良いものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係るHMDを示す斜視図である。
図2】第1の実施形態に係るHMDにおいて装着部に対して表示ユニットを動かした状態を示す図である。
図3】第1の実施形態に係るHMDの装着部を示す平面図である。
図4】第1の実施形態に係るHMDの第1のハウジングを示す斜視図である。
図5】第1の実施形態に係るHMDの第2のハウジングを示す分解斜視図である。
図6】第1の実施形態に係るHMDの装着部の断面構成を示す図である。
図7】第2の実施形態に係るHMDの装着部の断面構成を示す図である。
図8】第3の実施形態に係るHMDの装着部を示す平面図である。
図9】第3の実施形態に係るHMDのインナーとピニオンとの係合構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
実施形態では、本発明を適用した頭部装着装置の例としてHMDを説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係るHMD1を示す斜視図である。HMD1は、頭部に装着するためのリング状の装着部100と、表示部である表示ユニット200とを備える。なお、以下の説明において上下、左右、前後の方向は、ユーザがHMD1を装着した状態を基準とする方向をいう。
【0011】
装着部100は、そのフロント部分で表示ユニット200を吊り下げるように支持する。装着部100はケーブルガイド101F、101Bを備え、ケーブルガイド101F、101Bにより、表示ユニット200に接続するケーブル201をユーザの後背側にガイドする。
【0012】
表示ユニット200は、表示素子と、表示光学系とにより、表示素子の拡大虚像をユーザの眼に導光する。これにより、ユーザは現実世界と異なる画像を眼前で観察し、VRを体感することができる。表示素子はELパネルやLCD等が適用できるが、これらに限られない。
また、表示ユニット200は、ユーザの眼前を撮像する複数のカメラ202を備えていてもよい。カメラ202の現実画像に対してCG(Computer Graphics)等が重畳された画像を表示することで、ユーザは現実世界がCG等で拡張された画像を観察し、ARを体感することができる。撮像した現実画像にCG等を重畳するのは、表示ユニット200により実現される構成でも、ケーブル201を介して接続される不図示の外部装置により実現される構成でもよい。
【0013】
装着部100は、表示ユニット200を上下にシフト可能に支持し、表示ユニット200を上下にシフトさせるダイアル103を備える。また、装着部100は、回動保持部102を介して、表示ユニット200をチルト可能に支持する。図2に、装着部100に対して表示ユニット200を動かした状態を示す。図2(a)は、表示ユニット200を上方にシフトさせた状態を示し、図2(b)は、表示ユニット200を下方にシフトさせた状態を示す。また、図2(c)は、表示ユニット200を上方向にチルトさせた状態を示す。このように、装着部100に対して表示ユニット200を可動にすることで、HMD1の使い勝手を良くすることができる。
【0014】
次に、装着部100の構成について詳細に説明する。装着部100は、以下に詳述するように、周長を拡大及び縮小させる周長可変機構を備える。
図3は、装着部100を示す平面図である。矢印D1で示す方向を周長拡大方向と呼び矢印D2で示す方向を周長縮小方向と呼ぶ。
【0015】
図3に示すように、装着部100は、フロント部分及びサイド部分を構成する第1のハウジング104と、リア部分を構成する第2のハウジング105とを組み合わせることによりリング状に構成される。図4は、第1のハウジング104を示す斜視図である。また、図5は、第2のハウジング105を示す分解斜視図である。
【0016】
第1のハウジング104のフロント部分の内周面に頭部接触部材106が設けられ、また、第2のハウジング105の内周面に頭部接触部材107が設けられる。頭部接触部材106、107は、スポンジ等の材質から構成される。また、頭部接触部材106、107は、頭部にHMD1を保持するための保持力を高めるために、摩擦係数の高い材質で覆われていてもよい。また、装着部100のフロント部分やリア部分は高い剛性を有しており、装着部100の周長が変化しても頭部にならわない。そのため、装着部100は、頭部接触部材106、107以外の部位では、頭部を圧迫しない。これにより、ユーザが接触や圧迫により不快感を覚える部位を避けることができる。
【0017】
図4に示すように、第1のハウジング104は、樹脂等により湾曲する帯状に成形されており、両側で延伸するバンド部108L、108Rを有する。バンド部108L、108Rは可撓性を有し、バンド部108L、108Rにはラック108aが構成されている。これらバンド部108L、108Rを第2のハウジング105の両側から内側に挿入して、ラック108aを第2のハウジング105内に設けられたピニオン114を噛み合わせる。
【0018】
図5に示すように、第2のハウジング105は、内周面側を構成するインナー109と、外周面側を構成するアウター110とを備え、樹脂等により湾曲する帯状に成形されている。第2のハウジング105の両側には開口部111L、111Rが構成され、これら開口部111L、111Rに第1のハウジング104のバンド部108L、108Rをそれぞれ挿入することができる。
【0019】
また、インナー109とアウター110との内側には、左右一対のコロ112及びシャフト113と、ピニオン114と、トルクリミッタ115とが配設される。
コロ112及びシャフト113は、インナー109の両側に取り付けられ、開口部111L、111Rから挿入されるバンド部108L、108Rに対して転がり抵抗を生じさせる。
ピニオン114及びトルクリミッタ115は、第2のハウジング105の中央部において同軸上に配置される。ピニオン114は、開口部111L、111Rから挿入されるバンド部108L、108Rのラック108aが噛み合う。本実施形態では、ピニオン114が本発明でいう係合部に相当する。
【0020】
アウター110には、ダイアル型の操作部材116が設けられる。操作部材116に設けられたピニオンシャフト117が、トルクリミッタ115を挿通して、ピニオン114に一体回転するように連結する。ピニオン114とトルクリミッタ115との間においてピニオンシャフト117に抜け止め用のリング118が装着され、ピニオンシャフト117が軸方向に移動することを規制する。
【0021】
図6に、図3のVI-VI線の断面構成を示す。ピニオン114の上部にバンド部108Lのラック108aが噛み合い、ピニオン114の下部にバンド部108Rのラック108aが噛み合う。これにより、装着部100は周長拡大及び周長縮小可能なリング状に構成される。例えば第1のハウジング104及び第2のハウジング105のうちのいずれか一方を手で押さえ、装着部100の周長を拡大又は縮小させるように他方に力を加える操作(以下、操作Aと呼ぶ)を行う。操作Aを行うことにより、バンド部108L、108Rのラック108aからピニオン114を回転させるトルクが発生して、装着部100の周長が変化する。
【0022】
ここで、トルクリミッタ115は、ピニオンシャフト117に対して、静止摩擦力を利用した保持トルクを発生させており、最大静止摩擦力のときの保持トルクを上限として、装着部100の周長の変化に対する保持力を発生させる。そして、最大静止摩擦力を上回る操作Aにより、上述したようにバンド部108L、108Rのラック108aからピニオン114を回転させるトルクが発生して、ピニオン114及びピニオンシャフト117が回転し、装着部100の周長が変化する。操作Aにより、装着部100の周長の粗調及び微調が双方向(周長拡大方向D1及び周長縮小方向D2)に可能である。
【0023】
次に、HMD1を着脱するときの動作を説明する。
HMD1を頭部に装着するときは、操作Aを行って装着部100の周長を例えば最大周長まで拡大させ、装着部100の中に頭部を入れる。そして、操作Aを行って装着部100の周長を頭部周長と略一致するまで縮小させる。頭部にHMD1を保持するための保持力を微調したい場合は、操作Aを行って装着部100の周長をわずかに拡大又は縮小させればよい。
HMD1を取り外すときは、操作Aを行って装着部100の周長を拡大させる。なお、第1のハウジング104を両手で押さえつつ、後頭部で第2のハウジング105を押し拡げるという操作でも、装着部100の周長を拡大させることができる。
このようにリリースボタン等の所定の操作が不要で、直感的な操作で装着部100の周長を変化させることができる。
【0024】
また、装着部100は、ダイアル型の操作部材116を備える。トルクリミッタ115の保持トルクを上回るトルクで操作部材116を回転させると(以下、操作Bと呼ぶ)、ピニオン114が回転する。これにより、ピニオン114からバンド部108L、108Rを動かす力が発生することになり、装着部100の周長がわずかに変化する。本実施形態では、操作部材116が時計回りに回転することで装着部100の周長が縮小し、反時計回りに回転することで装着部100の周長が拡大するように設定されている。このように、操作部材116を使用する操作Bにより、操作Aよりも直感的に微調しやすくなる。
【0025】
以上述べたように、トルクリミッタ115の保持トルクを上回る操作A及び操作Bにより、直感的な操作で、装着部100の周長の粗調及び微調が双方向(周長拡大方向D1及び周長縮小方向D2)に可能となる。
【0026】
本実施形態では、トルクリミッタ115により、装着部100の周長拡大方向D1及び周長縮小方向D2に対して保持力を発生させるようにしたが、頭部にHMD1を保持するようにするには、周長拡大方向D1に対して保持力を発生させて、周長の拡大を防ぐようにすればよい。したがって、トルクリミッタ115は周長縮小方向D2に対しては保持力を発生させないワンウェイ機能を備えるようにしてもよい。この場合、装着部100の周長縮小方向D2の保持力が弱いので、着脱フローを簡便に行うことができる。
また、トルクリミッタ115は、保持トルクを可変にするものとしてもよい。
【0027】
[第2の実施形態]
次に、図7を参照して、第2の実施形態を説明する。第1の実施形態では、本発明でいう周長保持手段としてトルクリミッタ115を利用したのに対して、第2の実施形態では、周長保持手段として摩擦板を利用する。以下では、第1の実施形態に係るHMD1と共通の構成要素に同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0028】
図7は、図6に対応する断面図である。図6との相違として、トルクリミッタ115ではなく、摩擦板119、120及びバネ121により、静止摩擦力を利用した保持トルクを発生させている。
摩擦板119は、バネ121の付勢力によってアウター110に押し当てられる。摩擦板119は、ピニオンシャフト117に対して回動可能であっても、回転方向に連結されていてもよい。また、摩擦板120は、バネ121の付勢力によってピニオン114に押し当てられている。摩擦板120は、ピニオンシャフト117に対して回動可能であっても、回転方向に連結されていてもよい。なお、摩擦板119、120の間においてピニオンシャフト117に抜け止め用のリング118が装着される。
【0029】
このようにした第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様、装着部100の周長の変化に対する保持力を発生させることができる。
なお、摩擦板119、120がバネ121の付勢力によって押し当てられる相手部品は、インナー109でも、バンド部108L、108Rでもよく、装着部100の周長の変化に対する保持力となる静止摩擦力が発生すればよい。また、摩擦板119、120は、ピニオンシャフト117と同軸上に配置される必要はない、装着部100の周長の変化に対する保持力となる静止摩擦力が発生すればよい。
【0030】
[第3の実施形態]
上述したように、頭部にHMD1を保持するためには、周長拡大方向D1に対して適当な保持力を発生させればよく、周長縮小方向D2に対する保持力は弱くてもよい。第3の実施形態として、周長縮小方向D2に対する保持力を周長拡大方向D1に対する保持力よりも弱くする構成例を説明する。以下では、第1の実施形態に係るHMD1と共通の構成要素に同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0031】
図8は、装着部100を示す平面図である。装着部100の左右の内側において、第1のハウジング104と第2のハウジング105との間に掛け渡すように弾性体122を取り付ける。弾性体122は、装着部100の周長拡大方向D1に対して弾性力を作用させる。すなわち、周長拡大方向D1に対しては、トルクリミッタ115や摩擦板119、120及びバネ121による摩擦力に加えて、弾性体122の弾性力が保持力となる。これにより、周長縮小方向D2に対する保持力は、周長拡大方向D1に対する保持力よりも弱くなる。弾性体122は、例えばゴムやバネを用いればよい。
なお、弾性体の構成は図8に示すものに限られるものではなく、例えばインナー109とピニオン114との間に、回転方向の弾性体であるゼンマイを接続するようにしてもよい。
【0032】
図9は、ピニオン114の回転軸方向から見た、インナー109とピニオン114との係合構造を示す模式図である。図9(a)は、装着部100の周長縮小方向D2にピニオン114が回転する状態を示す。図9(b)は、装着部100の周長拡大方向D1にピニオン114が回転する状態を示す。ピニオン114には、その回転軸に対して径方向に突出する例えば複数の凸部124が設けられる。凸部124は、周長縮小方向D2で斜面角度θ1を有し、周長拡大方向D1で斜面角度θ2を有する(θ1>θ2)。また、インナー109には、凸部124に対応する例えば複数の凸部123が設けられる。凸部123は、周長縮小方向D2で斜面角度θ2を有し、周長拡大方向D1で斜面角度θ1を有する。ピニオン114に設けられた不図示の弾性体により、凸部124の斜面が凸部123の斜面に当接する。図9(a)に示すように、装着部100の周長縮小方向D2では、ピニオン114が斜面角度θ1を乗り越えるように回転する。それに対して、図9(b)に示すように、装着部100の周長拡大方向D1では、ピニオン114が斜面角度θ2を乗り越えるように回転する。θ1>θ2であるので、周長縮小方向D2に対する保持力は、周長拡大方向D1に対する保持力よりも弱くなる。
なお、斜面角度が異なる形状は、必ずしもインナー109とピニオン114とが有する必要はなく、バンド部108L、108Rが有していてもよい。
【0033】
周長縮小方向D2に対する保持力を周長拡大方向D1に対する保持力よりも弱くする構成例は、図8図9に示したものに限られるものではない。例えば弾性体を用いるのではなく、部品形状によって、周長縮小方向D2に対する保持力を周長拡大方向D1に対する保持力よりも弱くする構成にしてもよい。
【0034】
以上、本発明を実施形態と共に説明したが、上記実施形態は本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0035】
1:ヘッドマウントディスプレイ、100:装着部、104:第1のハウジング、105:第2のハウジング、108L、108R:バンド部、108a:ラック、114:ピニオン、115:トルクリミッタ、116:操作部材、117:ピニオンシャフト、119、120:摩擦板、121:バネ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9