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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】運転支援装置および鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20241021BHJP
   A61B 5/18 20060101ALI20241021BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20241021BHJP
   B60W 40/08 20120101ALI20241021BHJP
   B62J 27/00 20200101ALI20241021BHJP
   B62J 45/00 20200101ALI20241021BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20241021BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20241021BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20241021BHJP
【FI】
A61B5/16 200
A61B5/18
A61B5/107 300
B60W40/08
B62J27/00
B62J45/00
G08G1/00 D
G08G1/16 F
B60W50/14
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023508867
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2022008698
(87)【国際公開番号】W WO2022202155
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2021047495
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩丸 虎喜
(72)【発明者】
【氏名】武智 崚
(72)【発明者】
【氏名】西岡 修
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-502938(JP,A)
【文献】特開2019-73070(JP,A)
【文献】国際公開第2019/096683(WO,A1)
【文献】特開2017-178284(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108568080(CN,A)
【文献】特開平9-140688(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0146918(US,A1)
【文献】国際公開第2020/202266(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/16
A61B 5/18
A61B 5/107
B60W 40/08
B62J 27/00
B62J 45/00
G08G 1/00
G08G 1/16
B60W 50/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両に搭載可能な運転支援装置であって、
運転者の上半身及び下半身の状態を示す運転者状態情報を取得する取得手段と、
前記取得手段の取得結果に基づいて前記運転者の運転態様を評価する評価手段と、
前記評価手段の評価結果を通知する通知手段と、
前記評価手段の評価結果を記録する記録手段と、
を備え、
前記記録手段は、前記鞍乗型車両が起動されてから前記記録を開始し、
前記通知手段は、
前記記録手段による前記記録が開始されてから所定時間が経過した後、前記記録手段により記録されている前記評価手段の評価結果の推移に基づいて前記通知を行い、
前記鞍乗型車両が停止された時から所定時間以内に起動された場合には、該停止の前に前記記録手段により記録された前記評価手段の評価結果に更に基づいて前記通知を行う
ことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記評価手段は、前記運転者の運転態様として前記運転者の疲労度を評価する
ことを特徴とする請求項1記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記取得手段は、前記運転者を撮像して得られた画像に基づいて前記運転者状態情報を取得する
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記運転者状態情報に基づいて前記運転者の全身における特徴点を抽出する解析手段を更に備え、
前記評価手段は、前記特徴点に基づいて前記評価を行う
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記解析手段は、前記特徴点として、前記運転者の手首および足首の位置を抽出する
ことを特徴とする請求項4記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記評価手段は、前記足首の位置に基づいて膝の位置を算出し、該膝および前記足首の双方の位置に基づいて前記運転者の脚の姿勢を評価する
ことを特徴とする請求項5記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記解析手段は、前記特徴点として、前記運転者の肩の位置を更に抽出し、
前記評価手段は、前記肩の位置に基づいて前記運転者の胴体の姿勢を評価する
ことを特徴とする請求項5または請求項6記載の運転支援装置。
【請求項8】
前記解析手段は、前記運転者状態情報に基づいて所定の解析モデルにより前記運転者の骨格を解析し、
前記評価手段は、前記解析手段の解析結果に基づいて前記評価を行う
ことを特徴とする請求項4から請求項7の何れか1項記載の運転支援装置。
【請求項9】
前記鞍乗型車両のコーナリング中においては、前記記録手段は前記記録を抑制する
ことを特徴とする請求項1記載の運転支援装置。
【請求項10】
請求項1から請求項の何れか1項記載の運転支援装置と、車輪とを備える
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の運転者の眼の開閉の度合い、視線等に基づいて運転者の状態を評価する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許3890062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記評価は多様な観点から行われることが好ましく、このことは、一般に、自動二輪車等に代表される鞍乗型車両においては一層考慮されるべきである。
【0005】
本発明は、鞍乗型車両の運転者の運転態様を比較的簡便に評価することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの側面は運転支援装置に係り、前記運転支援装置は、
鞍乗型車両に搭載可能な運転支援装置であって、
運転者の上半身及び下半身の状態を示す運転者状態情報を取得する取得手段と、
前記取得手段の取得結果に基づいて前記運転者の運転態様を評価する評価手段と、を備える
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、鞍乗型車両の運転者の運転態様を適切に評価可能となる。
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照とした以下の説明により明らかになるであろう。なお、添付図面においては、同じ若しくは同様の構成には、同じ参照番号を付す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
添付図面は明細書に含まれ、その一部を構成し、本発明の実施の形態を示し、その記述と共に本発明の原理を説明するために用いられる。
図1】実施形態に係る鞍乗型車両の構成の一例を示す図。
図2】運転支援装置の運転支援の内容の一例を示すフローチャート。
図3】撮像画像の一例を説明するための図である。
図4】インバースキネマティクスに基づく算出方法の一例を示す図。
図5】運転支援装置の運転支援の内容の他の例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る鞍乗型車両1の構成の一例を示す。鞍乗型車両1は、車輪11、操舵装置12、撮像装置13、表示装置14および運転支援装置15を備える。鞍乗型車両1は、本実施形態では単一の前輪および単一の後輪を車輪11として備える二輪車とするが、車輪11の数は本例に限られるものではない。操舵装置12は、本実施形態では、車体に対する前輪11の向きを変更可能なハンドルバーとするが、ステアリングホイール等の他の操舵用操作子であってもよい。尚、後輪11には、内燃機関、電動モータ等の動力源の動力(回転)が動力伝達機構を介して伝達される。
【0011】
撮像装置13は、後述の運転者9(図3参照)の全身、具体的には上半身および下半身の其々、の姿勢を検出可能であればよく、本実施形態では、運転者9が着座するシート19の前方部および後方部のそれぞれに設置されるものとするが、付随的/代替的に他の位置に設置されてもよい。撮像装置13は、本実施形態ではCCD/CMOSイメージセンサ等を含むカメラとするが、運転者9の全身の姿勢を検出可能であればよい。そのため、付随的/代替的に、赤外線センサ、ミリ派レーダ、LiDAR(Light Detecting and Ranging)等が撮像装置13として用いられてもよい。
【0012】
表示装置14には、液晶ディスプレイ、携帯端末等が用いられうる。表示装置14は、典型的にはハンドルバーに設置され、後述の通知を運転者9が視認可能となるように表示する。代替的/付随的に、同内容を音声ガイドにより通知可能な音源装置が用いられてもよいし、或いは、同内容を運転者9に対する振動により通知可能な振動装置が用いられてもよい。
【0013】
運転支援装置15は、CPU151及びメモリ152を含み、CPU151が所定のプログラムをメモリ152上に展開して実行することにより後述の運転支援を行う。運転支援装置15の機能は、ASIC(特定用途向け集積回路)等の処理回路を備える半導体装置によって実現されてもよい。即ち、運転支援装置15の機能は、ハードウェア及びソフトウェアの何れによっても実現可能である。
【0014】
尚、上述の要素の一部/全部(例えば撮像装置13、表示装置14、運転支援装置15等)は、典型的には、鞍乗型車両1の車体に着脱可能に構成され、鞍乗型車両1に搭載可能なデバイスである。
【0015】
図2は、運転支援装置15の運転支援の内容を示すフローチャートである。本フローチャートは、例えば動力源の始動後に開始され、主に運転支援装置15のCPU151により実行される。その概要は、運転者9の全身の姿勢に基づいて運転者9の運転態様(本実施形態では疲労度)を評価する、というものである。
【0016】
ステップS1000(以下、単に「S1000」と示す。後述の他のステップについても同様とする。)では、撮像装置13を駆動する。詳細については後述とするが、これにより、撮像装置13は所定周期で運転者9を撮像する。尚、S1000では、CPU151は、撮像装置13を所定周期で駆動する駆動部として機能すると云える。
【0017】
本実施形態では、撮像の結果は、例えば後述の画像img1(図3参照)等として、メモリ152に保存される。他の実施形態として、撮像の結果は、不図示のDRAM(Dynamic Random Access Memory)に一時的に保存されてもよい。
【0018】
S1010では、運転者9の撮像画像(例えば後述の画像img1等、運転者9を撮像して得られた画像。以下、単に「撮像画像」と示す場合がある。)をメモリ152から取得する/読み出す。尚、S1010では、CPU151は、撮像画像を取得する取得部、或いは、撮像画像を読み出す読出し部として機能すると云える。
【0019】
S1020では、運転者9の上半身および下半身の其々の状態(主に姿勢の状態)を示す運転者状態情報inf1を撮像画像に基づいて取得し、解析する。運転者状態情報inf1は運転者姿勢情報と表現されてもよい。解析方法の詳細については後述とする。尚、S1020では、CPU151は、運転者状態情報inf1を取得して解析する取得部ないし解析部として機能すると云える。
【0020】
S1030では、運転者状態情報inf1の解析結果に基づいて運転者9の運転態様を評価する。運転者9の運転態様として、本実施形態では運転者9の疲労度が評価されるものとするが、他の実施形態として運転者9の集中力、運転操作の是非等が評価されてもよい。尚、S1030では、CPU151は、運転者9の運転態様を評価する評価部として機能すると云える。
【0021】
S1040では、S1030の評価結果が基準を満たすか否か、本実施形態では運転者9の疲労度が基準値より大きいか否か、を判定する。評価結果が基準を満たす場合(Yes判定の場合)にはS1050に進み、そうでない場合(No判定の場合)にはS1000に戻る。尚、S1040では、CPU151は、評価結果が基準を満たすか否かを判定する判定部として機能すると云える。
【0022】
S1050では、S1030の評価結果が基準を満たすものとして、運転者9に対して所定の通知を行う。本実施形態においては、この通知は表示装置14への表示により行われる。その後、S1000に戻る。尚、S1050では、CPU151は、運転者9に対して所定の通知を行う通知部、該通知を出力する通知出力部、或いは、該通知を指示する通知指示部として機能すると云える。
【0023】
本フローチャートは、上記評価に求められる精度に基づいて繰り返されればよく、その周期は、数分~数十分毎でもよいし、数秒~数十秒ごとでもよいし、或いは、それ以上またはそれ以下でもよい。よって、S1000の撮像装置13による撮像は動画で行われ、該動画を構成する複数の静止画から所定間隔で選択された一部に基づいて上記評価が行われてもよい。
【0024】
図3は、上述のS1020の解析内容を説明するための撮像画像img1の一例である。S1020は、公知の解析モデルにより運転者9の骨格を解析することにより行われればよく、本実施形態ではインバースキネマティクス(IK(Inverse Kinematics))により行われるものとする。
【0025】
図4に示されるように、IKによれば始点Pおよび終点Pに基づいて中間点Pの位置を算出ないし予測することが可能であり、IK技術はロボットマニピュレータ、アニメーション制作等において広く活用されている。
【0026】
ここで、IKに基づくS1030の評価の高精度化のため、運転者9の標準姿勢が固有情報として予め(S1020の解析に先立って)登録されていてもよい。標準姿勢の例としては、着座姿勢、直立姿勢、其れらの間の中間状態の姿勢/遷移中の姿勢等が挙げられる。標準姿勢を参照することにより、始点および終点から中間点の位置を更に高精度に算出ないし予測可能となる。
【0027】
再び図3を参照して、本実施形態では、運転者9の上半身および下半身の其々における複数の特徴点PCHが上述の始点および終点として撮像画像img1から抽出される。特徴点PCHの例としては、本実施形態では、運転者9の首91、手首92、足首93、肩94および腰95の位置とするが、これに限られるものではない。
【0028】
ここで、前述の運転者状態情報inf1は、上記特徴点PCHの個々の位置(位置座標)を示す情報を含む。IKに基づく解析によれば、始点および終点としての其れら特徴点PCHの位置に基づいて、中間点としての後述の膝96等の位置が算出可能である。また、始点および終点としての其れら特徴点PCHの位置が移動した場合には該位置に基づいて中間点としての膝96等の位置の移動が算出可能である。これにより、後述の脚9Lg全体の姿勢が評価可能となる。
【0029】
一例として、始点に相当する腰95と、終点に相当する足首93とに基づいて、中間点に相当する膝96の位置が算出可能である。そして、膝96および足首93の双方の位置に基づいて脚9Lg全体の姿勢が評価可能となる。具体的には、脚9Lgが鞍乗型車両1の車体から基準以上に離間している場合には、運転者9の疲労度が高まっているものと評価することができる。この評価に際して、標準姿勢が更に考慮されるとよく、また、つま先の位置が付随的に考慮されると更によい。
【0030】
他の例として、始点に相当する肩94と、終点に相当する手首92とに基づいて、中間点に相当する肘97の位置が算出可能である。そして、肘97および手首92の双方の位置に基づいて腕9Ar全体の姿勢が評価可能となる。具体的には、腕9Arが下がって胴体9Bdに近接している場合には、運転者9の疲労度が高まっているものと評価することができる。この評価に際して、標準姿勢が更に考慮されるとよく、また、指の位置が付随的に考慮されると更によい。
【0031】
同様の手順で、始点に相当する首91及び/又は肩94と、終点に相当する腰95とに基づいて、胴体9Bd全体の姿勢が評価可能となる。具体的には、胴体9Bdが基準以上に曲がって猫背姿勢となっている場合には、運転者9の疲労度が高まっているものと評価することができる。この評価に際して、標準姿勢が更に考慮されるとよく、また、肘97の位置が付随的に考慮されると更によい。
【0032】
このような方法によれば、撮像画像img1のみに基づいて評価するのではなく、中間点をIKに基づく解析により評価することにより、脚9Lg、腕9Ar、胴体9Bd等の各部位の姿勢を、例えば運転者9の衣服の態様に関わらず、高精度に評価可能となる。また、このような方法によれば、例えば、撮像画像img1のみに基づく評価を、IKに基づく解析に基づいて補正することも可能となる。このことは、予め登録された固有情報としての運転者9の標準姿勢を参照することにより上記評価を更に高精度化させうる。
【0033】
以上、本実施形態によれば、運転支援装置15は、好適には鞍乗型車両1に適用可能であり、運転者状態情報inf1に基づいて運転者9の運転態様として運転者9の疲労度を高精度に評価することができる。運転者状態情報inf1は運転者9の上半身および下半身の姿勢を示すため、これに基づいて運転者9の骨格を解析することにより運転者9の疲労度を適切に評価することが可能となり、例えば疲労度が基準値より大きい場合には運転者9に休憩を促す通知を行うことも可能となる。
【0034】
尚、一般に、鞍乗型車両1のコーナリングに際しては、運転者9の運転操作に個性が現れうる。そのため、本実施形態の変形例として、鞍乗型車両1のコーナリングの間においてはS1010~S1030の実行は抑制されてもよい。
【0035】
また、本実施形態では、運転者状態情報inf1は、運転者9の上半身および下半身の姿勢を示すものとするが、運転者9の疲労度の評価のため、脚9Lg全体、腕9Ar全体および胴体9Bd全体の姿勢を評価可能に構成されていればよい。よって、運転者状態情報inf1は、運転者9の疲労度の評価に必要な部位の実質的に全部を示していればよく、該評価に用いられない部位を示していなくてもよい。
【0036】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態に係る運転支援装置15の運転支援の内容を示すフローチャートである。本実施形態では、所定期間における評価結果(S1030)の推移に基づいて通知(S1050)を行う、という点で前述の第1実施形態と異なる。尚、S1000~S1050の内容については第1実施形態同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0037】
S2000では、鞍乗型車両1が備える不図示の計時装置により時間の計測を行う。計時装置には公知のタイマーが用いられればよい。尚、S2000では、CPU151は、計時装置を駆動する駆動部、或いは、計時装置による計時を開始させる計時開始部として機能すると云える。
【0038】
S2010では、S1030の評価結果を記録する。評価結果はメモリ152に保存されるものとするが、不図示のDRAMに一時的に保存されてもよい。尚、S2010では、CPU151は、評価結果を記録する記録部として機能すると云える。
【0039】
S2020では、S2000の計時結果に基づいて、鞍乗型車両1が起動されてから所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間が経過していた場合(Yes判定の場合)にはS2030に進み、そうでない場合(No判定の場合)にはS1000に戻る。尚、S2020では、CPU151は、所定時間が経過したか否かを判定する判定部として機能すると云える。
【0040】
S2030では、所定時間に亘って記録された評価結果が基準を満たすか否か、本実施形態では評価結果の推移が基準以上に変化しているか否か(例えば、疲労度が初期値から基準以上に変化しているか否か)を判定する。評価結果が基準を満たす場合(Yes判定の場合)にはS1050に進み、そうでない場合(No判定の場合)にはS1000に戻る。尚、S2030では、CPU151は、評価結果が基準を満たすか否かを判定する判定部として機能すると云える。
【0041】
即ち、本フローチャートによれば、鞍乗型車両1が起動されてから評価結果の記録を開始し、該記録が開始されてから所定時間が経過した後、評価結果の推移に基づいて所定の通知(S1050)が行われる。このような運転支援によれば、運転者9の疲労度が蓄積されていく態様を考慮して上記評価を行うことが可能となるため、該評価の高精度化に有利と云える。
【0042】
鞍乗型車両1の起動は、動力源を稼働状態にすること、例えば動力源が内燃機関の場合にはイグニッションオンの状態にすること、また、例えば動力源が電動モータの場合にはスタートスイッチをオンの状態にすること、に対応するものとする。これに対して、鞍乗型車両1の停止は、動力源を停止状態にすること、例えば動力源が内燃機関の場合にはイグニッションオフの状態にすること、また、例えば動力源が電動モータの場合にはスタートスイッチをオフの状態にすること、に対応する。
【0043】
ここで、鞍乗型車両1が停止された時から比較的短時間で起動された場合、運転者9の疲労度は実質的に変わっていないと考えられる。ここでいう比較的短時間とは、例えば数分~数十分あるいは1時間程度であるが、それ以上の時間等であってもよい。このような場合、S2020ではYes判定とし、かつ、S2030の判定に際しては鞍乗型車両1の停止前に記録された評価結果が更に参照されるとよい。このような運転支援によれば、運転者9の疲労度が蓄積されている様子を更に高精度に評価可能となる。
【0044】
S2020の所定時間は、典型的には数十分、1時間~数時間あるいは其れ以上であるが、数十分より小さくてもよい。また、S2030の所定時間は、S2020の所定時間と同じであってもよいし、これとは異なる値であってもよい。
【0045】
尚、鞍乗型車両1のコーナリングに際しては運転者9の運転操作に個性が現れうるため、本実施形態においても、鞍乗型車両1のコーナリングの間、S1010~S1030及びS2010の実行は抑制されてもよい。
【0046】
(その他)
前述のとおり、運転支援装置15の機能は、ハードウェア及びソフトウェアの何れによっても実現可能である。よって、各実施形態では各ステップの内容がCPU151により実現されるものとしたが、運転支援装置15の機能は処理回路により実現されてもよい。この場合、運転支援装置15は、各ステップを実現する回路部を備えてもよく、例えば、SIP(System in Package)として構成されてもよいし、複数の半導体パッケージが実装基板上に実装されて構成されていてもよい。
【0047】
以上の説明においては、理解の容易化のため、各要素をその機能面に関連する名称で示したが、各要素は、実施形態で説明された内容を主機能として備えるものに限られるものではなく、それを補助的に備えるものであってもよい。よって、各要素は、その表現に厳密に限定されるものではなく、その表現は同様の表現に置換え可能とする。同様の趣旨で、「装置(apparatus)」という表現は、「部(unit)」、「部品(component, piece)」、「部材(member)」、「構造体(structure)」、「組立体(assembly)」等に置換されてもよいし或いは省略されてもよい。
【0048】
(実施形態のまとめ)
第1の態様は運転支援装置(例えば15)に係り、前記運転支援装置は、
鞍乗型車両(例えば1)に搭載可能な運転支援装置であって、
運転者(例えば9)の上半身及び下半身の状態を示す運転者状態情報(例えばinf1)を取得する取得手段(例えばS1010~S1020)と、
前記取得手段の取得結果に基づいて前記運転者の運転態様を評価する評価手段(例えばS1030)と、を備える
ことを特徴とする。第1の態様によれば、運転者の全身の姿勢を示す運転者姿勢情報に基づいて運転者の運転態様を比較的簡便に評価可能となる。
【0049】
第2の態様では、
前記評価手段は、前記運転者の運転態様として前記運転者の疲労度を評価する
ことを特徴とする。これにより、例えば疲労度が基準値より大きい場合には運転者に休憩を促す通知を行うことが可能となる。
【0050】
第3の態様では、
前記取得手段は、前記運転者を撮像して得られた画像に基づいて前記運転者状態情報を取得する
ことを特徴とする。これにより、運転者姿勢情報を適切に取得可能となる。
【0051】
第4の態様では、
前記運転者状態情報に基づいて前記運転者の全身における特徴点(例えばPCH)を抽出する解析手段を更に備え、
前記評価手段は、前記特徴点に基づいて前記評価を行う
ことを特徴とする。これにより、運転者の運転態様を解析結果に基づいて比較的簡便に評価可能となる。
【0052】
第5の態様では、
前記解析手段は、前記特徴点として、前記運転者の手首および足首の位置を抽出する
ことを特徴とする。これにより、上述の解析を適切に実現可能となる。
【0053】
第6の態様では、
前記評価手段は、前記足首の位置に基づいて膝の位置を算出し、該膝および前記足首の双方の位置に基づいて前記運転者の脚の姿勢を評価する
ことを特徴とする。これにより、上述の解析を適切に実現可能となる。
【0054】
第7の態様では、
前記解析手段は、前記特徴点として、前記運転者の肩の位置を更に抽出し、
前記評価手段は、前記肩の位置に基づいて前記運転者の胴体の姿勢を評価する
ことを特徴とする。これにより、上述の解析を適切に実現可能となる。
【0055】
第8の態様では、
前記解析手段は、前記運転者状態情報に基づいて所定の解析モデル(例えばIK)により前記運転者の骨格を解析し、
前記評価手段は、前記解析手段の解析結果に基づいて前記評価を行う
ことを特徴とする。これにより、上述の解析を比較的簡便に実現可能となる。
【0056】
第9の態様では、
前記評価手段の評価結果を通知する通知手段(例えばS1050)を更に備える
ことを特徴とする。これにより、運転者が評価結果を認識可能となる。
【0057】
第10の態様では、
前記評価手段の評価結果を記録する記録手段(例えばS2010)を更に備える
ことを特徴とする。これにより、上述の通知を適切に実現可能となる。
【0058】
第11の態様では、
前記記録手段は、前記鞍乗型車両が起動されてから前記記録を開始し、
前記通知手段は、前記記録手段による前記記録が開始されてから所定時間が経過した後、前記記録手段により記録されている前記評価手段の評価結果の推移に基づいて前記通知を行う
ことを特徴とする。これにより、運転者の運転態様を更に高精度に評価可能となる。
【0059】
第12の態様では、
前記鞍乗型車両が停止された時から所定時間以内に起動された場合には、前記通知手段は、該停止の前に前記記録手段により記録された前記評価手段の評価結果に更に基づいて前記通知を行う
ことを特徴とする。これにより、運転者の運転態様を更に高精度に評価可能となる。
【0060】
第13の態様では、
前記鞍乗型車両のコーナリング中においては、前記記録手段は前記記録を抑制する
ことを特徴とする。これにより、コーナリングの間においては運転者の個性が現れうるため、上述の評価が無用に実行されることを防ぐ。
【0061】
第14の態様は鞍乗型車両(例えば1)に係り、前記鞍乗型車両は、
上述の運転支援装置(例えば15)と、車輪(例えば11)とを備える
ことを特徴とする。即ち、実施形態に係る運転支援装置は典型的な鞍乗型車両に適用可能である。
【0062】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【0063】
本願は、2021年3月22日提出の日本国特許出願特願2021-047495を基礎として優先権を主張するものであり、その記載内容の全てを、ここに援用する。
【符号の説明】
【0064】
1:鞍乗型車両、15:運転支援装置
図1
図2
図3
図4
図5