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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/092 20060101AFI20241021BHJP
   A61B 18/12 20060101ALI20241021BHJP
   A61B 5/287 20210101ALI20241021BHJP
   A61B 5/33 20210101ALI20241021BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
A61M25/092 500
A61B18/12
A61B5/287 200
A61B5/287 100
A61B5/33 100
A61M25/00 540
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023531265
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2021024865
(87)【国際公開番号】W WO2023276080
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-08-15
(73)【特許権者】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榊 航平
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/104679(WO,A1)
【文献】特表2021-511103(JP,A)
【文献】特表2009-500052(JP,A)
【文献】特表2007-522864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/092
A61B 18/12
A61B 5/287
A61B 5/33
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿って延在していると共に、複数の電極を含む先端付近構造を有するカテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトの基端側に装着されたハンドルと
を備え、
前記ハンドルが、
前記軸方向に沿って延在するハンドル本体と、
前記軸方向に沿った回転軸を中心として、前記ハンドル本体に対して回転自在に構成されていると共に、前記先端付近構造における前記軸方向の長さを固定させつつ前記回転軸を中心として前記先端付近構造を回転動作させる際に、回転操作される操作機構と
を有しており、
前記操作機構が、
更に、前記ハンドル本体において前記軸方向に沿ってスライド可能に構成されていると共に、
前記先端付近構造の形状を第1および第2の形状の間で変化させる変形動作の際に、前記軸方向に沿ってスライド操作されるようになっており、
前記第1の形状が、前記先端付近構造が前記軸方向に沿って展開されていない非展開形状であると共に、
前記第2の形状が、前記先端付近構造を前記非展開形状から前記軸方向に沿って展開させた展開形状である
カテーテル。
【請求項2】
前記ハンドル本体における前記操作機構のスライド位置に応じて、
前記先端付近構造が、前記非展開形状と前記展開形状との間の任意の中間形状に、設定可能となっている
請求項に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記回転動作および前記変形動作の際に用いられる操作用ワイヤにおける先端側が、前記先端付近構造に固定されていると共に、
前記操作用ワイヤにおける基端側が、前記ハンドル本体内において、前記回転操作に連動して回転するギヤを介して、前記操作機構に固定されている
請求項または請求項に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記先端付近構造が、
前記カテーテルシャフトの分岐点と、
前記カテーテルシャフトの最先端付近に位置する合流点と、
前記分岐点と前記合流点との間を湾曲状にて個別に繋ぐ部分であり、各々が前記電極を有する複数の分岐構造と
を含んでおり、
前記非展開形状が、前記複数の分岐構造により構成される花弁形状であると共に、
前記展開形状が、前記花弁形状が前記軸方向に沿って展開された形状である
請求項ないし請求項のいずれか1項に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記回転操作に応じて行われる前記先端付近構造の回転動作が、前記回転軸を中心とした、ねじり回転動作である
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルシャフトを有するカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
先端付近に電極を有する医療機器の一例として、そのような電極がカテーテルシャフトに設けられたカテーテル(電極カテーテル)が挙げられる(例えば、特許文献1)。この特許文献1のカテーテルでは、カテーテルシャフトの先端付近の構造が、変形可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3830521号公報
【発明の概要】
【0004】
ところで、上記したようなカテーテルでは一般に、利便性を向上させることが求められている。利便性を向上させることが可能なカテーテルを提供することが望ましい。
【0005】
本発明の一実施の形態に係るカテーテルは、軸方向に沿って延在していると共に、複数の電極を含む先端付近構造を有するカテーテルシャフトと、このカテーテルシャフトの基端側に装着されたハンドルと、を備えたものである。このハンドルは、上記軸方向に沿って延在するハンドル本体と、上記軸方向に沿った回転軸を中心として、ハンドル本体に対して回転自在に構成されていると共に、上記先端付近構造における上記軸方向の長さを固定させつつ上記回転軸を中心として上記先端付近構造を回転動作させる際に、回転操作される操作機構と、を有している。また、上記操作機構は、更に、ハンドル本体において上記軸方向に沿ってスライド可能に構成されていると共に、上記先端付近構造の形状を第1および第2の形状の間で変化させる変形動作の際に、上記軸方向に沿ってスライド操作されるようになっている。そして、上記第1の形状が、上記先端付近構造が上記軸方向に沿って展開されていない非展開形状であると共に、上記第2の形状が、上記先端付近構造を上記非展開形状から上記軸方向に沿って展開させた展開形状であるようになっている。
【0006】
本発明の一実施の形態に係るカテーテルでは、上記回転軸を中心として上記ハンドル本体に対して回転自在に構成され、上記先端付近構造を回転動作させる際に回転操作される操作機構が、設けられている。これにより、そのような回転操作に応じて、上記回転軸を中心として上記先端付近構造が回転動作することから、上記先端付近構造における上記軸方向の長さを固定しつつ、上記先端付近構造における上記電極の位置を、上記軸方向を中心とした径方向や周方向に沿って、任意に調整可能となる。また、上記操作機構は、更に、ハンドル本体において上記軸方向に沿ってスライド可能に構成されていると共に、上記先端付近構造の形状を第1および第2の形状の間で変化させる変形動作の際に、上記軸方向に沿ってスライド操作されるようになっている。これにより、上記変形動作の際に、操作者がハンドル本体を片手で把持している状況において、上記操作機構に対する操作を、その片手(同じ手)にて行うことができるようになる。つまり、例えば、スライド操作に用いられるワイヤ(操作用ワイヤ)を、もう一方の手でハンドル本体に対して押し込む操作の場合のような、操作者の両手による操作が不要となり、操作者の片手のみを用いて、上記変形動作の際の操作(スライド操作)が容易に実行できるようになる。そして、上記変形動作に応じて、上記先端付近構造における上記電極の径方向の位置も、調整できることから、例えば、患者の血管の太さ(径の大きさ)に応じた電極の位置調整もできるようになる。これらのことから、カテーテルを使用する際の利便性が、更に向上することになる。
【0008】
本発明の一実施の形態に係るカテーテルでは、上記ハンドル本体における上記操作機構のスライド位置に応じて、上記先端付近構造を、上記非展開形状と上記展開形状との間の任意の中間形状に、設定可能としてもよい。このようにした場合、上記先端付近構造が、上記任意の中間形状に設定可能となることから、利便性の更なる向上が図られる。
【0009】
また、上記回転動作および上記変形動作の際に用いられる操作用ワイヤにおける先端側が、上記先端付近構造に固定されていると共に、上記操作用ワイヤにおける基端側が、ハンドル本体内において、上記回転操作に連動して回転するギヤを介して、上記操作機構に固定されているようにしてもよい。このようにした場合、上記回転動作および上記変形動作がそれぞれ、容易に実行できることから、カテーテルを使用する際の利便性が、更に向上することになる。
【0010】
なお、上記先端付近構造が、上記カテーテルシャフトの分岐点と、上記カテーテルシャフトの最先端付近に位置する合流点と、上記分岐点と上記合流点との間を湾曲状にて個別に繋ぐ部分であり、各々が上記電極を有する複数の分岐構造と、を含んでいるようにしてもよい。
【0011】
また、上記非展開形状が、上記複数の分岐構造により構成される花弁形状であると共に、上記展開形状が、上記花弁形状が上記軸方向に沿って展開された形状であるようにしてもよい。
【0012】
ちなみに、上記回転操作に応じて行われる上記先端付近構造の回転動作としては、例えば、上記回転軸を中心とした、ねじり回転動作が挙げられる。
【0013】
本発明の一実施の形態に係るカテーテルによれば、上記操作機構を設けるようにしたので、上記先端付近構造を回転動作させる際に回転操作されることで、以下のようになる。すなわち、上記先端付近構造における上記軸方向の長さを固定させつつ、上記先端付近構造における上記電極の位置を、上記軸方向を中心とした径方向や周方向に沿って、任意に調整できるようになる。よって、カテーテルを使用する際の利便性を、向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態に係るカテーテルの概略構成例を表す模式図である。
図2図1に示したハンドルの概略構成例を表す斜視図である。
図3図2に示したハンドルの一部分の概略構成例を表す斜視図である。
図4図1に示したカテーテルシャフトの先端付近における変形状態の一例を表す模式図である。
図5図1に示したカテーテルシャフトの先端付近における他の変形状態の一例を表す模式図である。
図6】比較例に係るカテーテルの概略構成を表す模式平面図である。
図7図1に示したカテーテルシャフトの先端付近における回転動作の一例を表す模式図である。
図8図1に示したカテーテルシャフトの先端付近における他の回転動作の一例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(回転操作およびスライド操作の双方が行われる操作機構の場合の例)
2.変形例(回転操作のみが行われてスライド操作が行われない操作機構の例など)
【0016】
<1.実施の形態>
[A.概略構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係るカテーテル(電極カテーテル1)の概略構成例を、模式的に表したものである。具体的には、図1(A)では、この電極カテーテル1の平面構成例(Z-X平面構成例)を、模式的に示しており、図1(B)では、この電極カテーテル1の側面構成例(Y-Z側面構成例)を、模式的に示している。
【0017】
なお、この電極カテーテル1は、本発明における「カテーテル」の一具体例に対応している。
【0018】
電極カテーテル1は、血管を通して患者の体内(例えば心臓の内部)に挿入され、不整脈などの検査や治療等に用いられるカテーテルである。具体的には、電極カテーテル1における後述する複数の電極(電極111)を利用して、体内の患部付近での電位の測定や、患部に対する焼灼(アブレーション)等が、行われるようになっている。
【0019】
また、図1に示したように、この電極カテーテル1は、そのようなアブレーションの際に、所定の灌注用の液体L(例えば、生理食塩水等)を先端付近(後述する先端付近構造6)から外部へと流し出す(噴射させる)、灌注機構を有している。
【0020】
このような電極カテーテル1は、図1に示したように、カテーテル本体(長尺部分)としてのカテーテルシャフト11(カテーテルチューブ)と、このカテーテルシャフト11の基端側に装着されたハンドル12とを備えている。
【0021】
なお、上記したハンドル12は、本発明における「ハンドル」の一具体例に対応している。
【0022】
(カテーテルシャフト11)
カテーテルシャフト11は、可撓性を有する管状構造(中空のチューブ状部材)からなり、自身の軸方向(Z軸方向)に沿って延伸する形状となっている(図1参照)。具体的には、カテーテルシャフト11の軸方向の長さは、ハンドル12の軸方向(Z軸方向)の長さと比べて、数倍~数十倍程度に長くなっている。
【0023】
図1に示したように、カテーテルシャフト11は、比較的可撓性に優れるように構成された、先端部(先端可撓部11A)を有している。また、この先端可撓部11A内には、図1に示したように、後述する所定の先端付近構造6が、設けられている。このカテーテルシャフト11はまた、自身の軸方向(Z軸方向)に沿って延在するように内部に複数のルーメン(内孔,細孔,貫通孔)が形成された、いわゆるマルチルーメン構造を有している。このようなカテーテルシャフト11におけるルーメン内には、各種の細線(後述する導線50や偏向用ワイヤ、操作用ワイヤ60等)がそれぞれ、互いに電気的に絶縁された状態で挿通されるようになっている。また、このカテーテルシャフト11の内部には、そのような各種の細線を挿通させるためのルーメンに加え、前述した灌注用の液体Lを流すためのルーメンが、軸方向に沿って延伸するように形成されている。
【0024】
このようなカテーテルシャフト11の外径は、例えば、1.0~5.0mm程度であり、カテーテルシャフト11の軸方向の長さは、例えば、300~1500mm程度である。また、カテーテルシャフト11の構成材料としては、例えば、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテルブロックアミド(PEBAX)(登録商標)およびナイロン等の、熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0025】
ここで、上記した先端付近構造6は、図1に示したように、カテーテルシャフト11の分岐点(先端付近構造6の基端側に位置)と、カテーテルシャフト11の最先端付近(後述する先端チップ110付近)に位置する合流点と、これらの分岐点と合流点との間を湾曲状にて個別に繋ぐ部分である複数(この例では5個)の分岐構造61a~61eと、を含んでいる。これらの分岐構造61a~61eは、カテーテルシャフト11の軸方向(Z軸方向)と直交する面内(X-Y平面内)において、略等間隔にて互いに離間配置されている。
【0026】
また、図1に示したように、これらの分岐構造61a~61eには、それらの湾曲状の延在方向に沿って、1または複数の電極111(この例では、4個の電極111)がそれぞれ、所定の間隔をおいて離間配置されている。各電極111は、リング状の電極となっている。一方、上記した分岐構造61a~61e同士の合流点(カテーテルシャフト11の最先端付近)には、先端チップ110が配置されている。
【0027】
このような電極111はそれぞれ、前述したように、例えば、電位測定用または焼灼用の電極であり、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、SUS、金(Au)、白金(Pt)等の、電気伝導性の良好な金属材料により構成されている。一方、先端チップ110は、例えば各電極111と同様の金属材料により構成されているほか、例えばシリコーンゴム樹脂やポリウレタン、ポリカーボネート等の、樹脂材料により構成されている。
【0028】
このような各電極111には、前述した導線50における先端側が、個別に電気的接続されている。また、各導線50における基端側は、カテーテルシャフト11内からハンドル12内を介して、電極カテーテル1の外部へと接続可能となっている。具体的には、図1に示したように、各導線50の基端側は、ハンドル12におけるZ軸方向に沿った基端部分(コネクタ部分)から、外部へと取り出されるようになっている。
【0029】
ここで、このような先端付近構造6の形状は、ハンドル12における後述するスライド操作(後述する操作機構123に対するスライド操作)に応じて、変化する(変形する)ように構成されている。具体的には、先端付近構造6が軸方向(Z軸方向)に沿って展開されていない非展開形状(収縮形状:後述する図4参照)と、先端付近構造6をこの非展開形状から軸方向に沿って展開させた展開形状(拡張形状:図1および後述する図5参照)との間で、先端付近構造6の形状が変化するようになっている。詳細は後述するが、このような非展開形状の一例としては、上記した複数の分岐構造61a~61eにより構成される、「花弁形状」(平坦形状の場合の一例:後述する図4参照)が挙げられる。一方、上記した展開形状の一例としては、このような花弁形状(各分岐構造61a~61e)が軸方向に沿って展開された形状(いわゆる「バスケット形状」:図1および後述する図5参照)が、挙げられる。
【0030】
ちなみに、上記した「バスケット形状」とは、例えば図1図5に示したように、複数の分岐構造61a~61eにより形成される形状が、バスケットボールの表面上に形成された曲線状の模様に、類似した形状であることを意味している。
【0031】
なお、上記した非展開形状(および花弁形状)は、本発明における「第1の形状」の一具体例に対応している。また、上記した展開形状(およびバスケット形状)は、本発明における「第2の形状」の一具体例に対応している。
【0032】
(ハンドル12)
ハンドル12は、電極カテーテル1の使用時に、操作者(医師)が掴む(握る)部分である。このハンドル12は、図1に示したように、カテーテルシャフト11の基端側に装着されたハンドル本体121と、回転操作部122とを有している。
【0033】
ハンドル本体121は、操作者が実際に握る部分(把持部)に相当し、その軸方向(Z軸方向)に沿って延びる形状となっている。このハンドル本体121は、例えば、ポリカーボネート、ポリアセタール、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)等の合成樹脂により構成されている。
【0034】
回転操作部122は、詳細は後述するが、カテーテルシャフト11の先端付近(先端可撓部11A)を双方向に偏向させる(撓ませる)、偏向動作の際に操作される部分である。この回転操作部122は、図示しない一対の偏向用ワイヤとともに、そのような偏向動作の際に用いられるようになっている。具体的には、そのような偏向動作の際に、電極カテーテル1の操作者によって、回転操作部122が操作(回転操作)されるようになっている。このような回転操作部122は、図1に示したように、ロック機構40および回転板41を含んで構成されている。
【0035】
なお、上記した一対の偏向用ワイヤにおける各先端は、カテーテルシャフト11の先端側(例えば、先端付近構造6における前述した分岐点の基端側)に固定されている。また、これらの一対の偏向用ワイヤにおける各基端側は、カテーテルシャフト11内から、ハンドル12内(ハンドル本体121内)へと、延伸されるようになっている。
【0036】
回転板41は、図1に示したように、ハンドル本体121に対して、その軸方向(Z軸方向)に垂直な回転軸(Y軸方向)を回転中心として、回転自在に装着された部材である。この回転板41は、上記した回転操作の際に操作者が実際に操作を行う部分に相当し、略円盤状の形状からなる。具体的には、この例では図1(A)中の矢印d1a,d1bで示したように、ハンドル本体121に対して、回転板41をZ-X平面内で双方向に回転させる操作(上記したY軸方向の回転軸を回転中心とした回転操作)が可能となっている。
【0037】
なお、上記したロック機構40は、このような回転板41のZ-Y平面内での回転位置を、固定(ロック)するための機構である。
【0038】
ここで、この回転板41の側面には、図1に示したように、一対の摘み41a,41bが、回転板41と一体的に設けられている。この例では図1に示したように、回転板41の回転軸を中心として、摘み41aと摘み41bとが互いに点対称となる位置に配置されている。これらの摘み41a,41bはそれぞれ、操作者が回転板41を回転操作する際に、例えば片手の指で操作される(押される)部分に相当する。なお、このような回転板41は、例えば、前述したハンドル本体121と同様の材料(合成樹脂等)により構成されている。
【0039】
また、このような回転板41上には、図示しない一対の留め具が設けられている。これらの留め具はそれぞれ、前述した一対の偏向用ワイヤの各基端を、ねじ止め等により個別に固定するための部材(ワイヤ留め具)である。なお、これらの留め具ではそれぞれ、上記した一対の偏向用ワイヤの各基端を固定する際の、各基端付近の引き込み長を、任意に調整することが可能となっている。
【0040】
[B.ハンドル12の詳細構成]
次に、図1に加えて図2図3を参照して、上記したハンドル12の詳細構成例について、説明する。
【0041】
図2は、ハンドル12の概略構成例を、斜視図で表したものである。具体的には、図2(A)では、ハンドル12の概略構成例を斜視図にて示し、図2(B)では、ハンドル12の一部分の構成例(後述するハンドル部材121aを取り外した状態での構成例)を、分解斜視図にて示している。また、図3は、図2に示したハンドル12の一部分の構成例(後述する操作部材123aおよびギヤ124a~124cの部分の構成例)を、斜視図で表したものである。
【0042】
まず、図2に示したように、ハンドル本体121は、Y軸方向に沿って分割可能な、一対のハンドル部材121a,121bを用いて構成されている。言い換えると、これらのハンドル部材121a,121b同士が互いに連結されることで、ハンドル本体121が構成されている。
【0043】
なお、このようなハンドル本体121内では、前述した灌注用の液体Lが流れる経路と、導線50が通る経路とが、互いに分離して配置されるようになっている。具体的には、これらの液体Lおよび導線50の経路同士が、後述するギヤ124(図2(B)参照)を挟んで、互いに反対側となるようにして、互いに分離配置されている。
【0044】
ここで、図1図2に示したように、ハンドル12(ハンドル本体121)には、軸方向(Z軸方向)に沿った回転軸を中心として、ハンドル本体121に対して、X-Y平面内を双方向に回転自在(矢印d5参照)に構成された、操作機構123が設けられている。この操作機構123は、前述した先端付近構造6における軸方向の長さ(Z軸方向に沿った軸方向長)を固定させつつ、上記したZ軸方向の回転軸を回転中心として先端付近構造6を回転動作させる際に、操作者によって回転操作(矢印d5参照)が行われる部分である。また、詳細は後述するが、このような回転操作に応じて行われる先端付近構造6の回転動作は、上記したZ軸方向の回転軸を中心とした、ねじり回転動作(螺旋状の回転動作)となっている。
【0045】
また、本実施の形態では、図1図2に示したように、このような操作機構123が、更に、ハンドル本体121において軸方向(Z軸方向)に沿って、スライド可能(矢印d3参照)に構成されている。そして、先端付近構造6の形状を、前述した非展開形状(花弁形状)および展開形状(バスケット形状)の間で変化させる変形動作の際に、操作者によって、操作機構123に対する双方向のスライド操作(矢印d3参照)が行われるようになっている。なお、このような操作機構123に対するスライド操作は、図1(A),図2に示したように、ハンドル本体121(ハンドル部材121a,121b)上に形成された、Z軸方向のレール(開口部分)に沿って、なされるようになっている。
【0046】
また、このような操作機構123は、ハンドル本体121上において、軸方向(Z軸方向)に沿った任意のスライド位置に、設定可能となっている。したがって、このような操作機構123のスライド位置に応じて、上記した変形動作の際の先端付近構造6の形状が、前述した非展開形状(花弁形状)と展開形状(バスケット形状)との間の任意の中間形状に、設定可能となっている。
【0047】
図1図2図3に示したように、このような操作機構123は、前述したハンドル本体121と同様に、Y軸方向に沿って分割可能な、一対の操作部材123a,123bを用いて構成されている。言い換えると、これらの操作部材123a,123b同士が互いに連結されることで、操作機構123が構成されている。また、ハンドル本体121内において、これらの操作部材123a,123bの間には、図2(B),図3に示したように、ギヤ124が設けられている。このギヤ124は、図3に示したように、Y軸方向に沿って並んで配置されていると共に互いに噛み合っている、3つのギヤ124a,124b,124cを用いて構成されている。図3に示したように、ギヤ124cが、操作機構123(操作部材123b)における内歯車125と噛み合っていると共に、ギヤ124a,124b,124cが互いに噛み合っていることで、以下のようになっている。すなわち、これらのギヤ124a,124b,124cはそれぞれ、操作機構123における上記した回転操作に連動して、回転するようになっている(図3中に、ギヤ124aに関して代表して示した、矢印d5a参照)。
【0048】
ここで、上記したような、先端付近構造6の回転動作および変形動作の際に用いられる操作用ワイヤ60(図1(A),図2(B),図3参照)では、その先端側が、先端付近構造6(前述した先端チップ110付近)に、固定されている。一方、この操作用ワイヤ60の基端側は、図2(B),図3に示したように、ハンドル本体121内において、上記したギヤ124を介して、操作機構123に固定されている。具体的には、図3に示した例では、操作用ワイヤ60の基端側がギヤ124aに挿通されていることで、このギヤ124aからギヤ124b,124cを介して、操作用ワイヤ60の基端側が、操作機構123に固定されるようになっている。
【0049】
[C.動作および作用・効果]
続いて、本実施の形態の電極カテーテル1の動作および作用・効果について、比較例と比較しつつ詳細に説明する。
【0050】
(C-1.回転操作による先端可撓部11Aの偏向動作)
まず、この電極カテーテル1では、操作者による回転板41の回転操作(前述したY軸方向の回転軸を回転中心とした回転操作)に応じて、カテーテルシャフト11における先端付近(先端可撓部11A)の形状が、双方向に変化する。つまり、前述したような、体内の患部付近での電位の測定や、患部に対する焼灼の際に、このような回転操作に応じて、先端可撓部11Aを双方向に偏向させる動作(前述した双方向の偏向動作)が、行われる。
【0051】
具体的には、例えば、操作者がハンドル12(ハンドル本体121)を片手で掴み、その片手の指で摘み41aを操作することによって、回転板41を図1(A)中の矢印d1a方向(右回り)に回転させた場合、以下のようになる。すなわち、カテーテルシャフト11内で、前述した一対の偏向用ワイヤのうちの一方の偏向用ワイヤが、基端側へ引っ張られる。すると、このカテーテルシャフト11の先端可撓部11Aが、図1(A)中の矢印d2aで示した方向に沿って湾曲する(撓む)。
【0052】
また、例えば、操作者が摘み41bを操作することによって、回転板41を図1(A)中の矢印d1b方向(左回り)に回転させた場合、以下のようになる。すなわち、カテーテルシャフト11内で、一対の偏向用ワイヤのうちの他方の偏向用ワイヤが、基端側へ引っ張られる。すると、このカテーテルシャフト11の先端可撓部11Aが、図1(A)中の矢印d2bで示した方向に沿って湾曲する。
【0053】
このように、操作者が回転板41を回転操作することで、カテーテルシャフト11における双方向の(首振り)偏向動作を行うことができる。なお、ハンドル本体121を軸回りに(X-Y平面内で)回転させることで、例えば、カテーテルシャフト11が患者の体内に挿入された状態のまま、カテーテルシャフト11の先端可撓部11Aの湾曲方向(偏向方向)の向きを、自由に設定することができる。このようにして電極カテーテル1では、先端可撓部11Aを双方向に偏向させるための偏向機構が設けられているため、カテーテルシャフト11をその先端付近(先端可撓部11A)の形状を変化させながら、患者の体内に挿入することができる。
【0054】
以上のようにして、先端可撓部11A(複数の電極111を有する先端付近構造6)において、前述した電位測定や焼灼(アブレーション)が行われる。
【0055】
また、本実施の形態では、このようなアブレーションの際に、電極カテーテル1に対して、前述した灌注用の液体Lが供給される。具体的には、例えば図1(A)に示したように、ハンドル本体121の基端側の側面(液体流入口)から、このハンドル本体121内に対して、液体Lが供給される。そして、例えば図1(A)に示したように、この電極カテーテル1の先端付近(先端付近構造6における前述した分岐点付近)から外部に対して、この液体Lが流し出る(噴射される)。これにより、アブレーションの際の処置部分の温度が上昇しすぎて損傷が起こったり、処置部分に血栓がこびりついたりすることが、回避されることになる(血液滞留が改善される)。
【0056】
(C-2.スライド操作による先端付近構造6の変形動作)
続いて、図4図5を参照して、前述した操作機構123に対するスライド操作による、カテーテルシャフト11における先端付近構造6の変形動作について、詳細に説明する。
【0057】
図4図4(A)~図4(C))は、カテーテルシャフト11の先端付近(先端付近構造6)における変形状態(前述した非展開形状の一例としての、前述した花弁形状の状態)の一例を、模式的に表したものである。また、図5図5(A)~図5(C))は、カテーテルシャフト11の先端付近(先端付近構造6)における他の変形状態(前述した展開形状の一例としての、前述したバスケット形状の状態)の一例を、模式的に表したものである。なお、図5に示した展開形状(バスケット形状)は、あくまでも一例であり、例えば、図5に示した形状から多少萎んだ(歪んだ)形状等であってもよい。
【0058】
まず、例えば図4(A)中の矢印d3aで示したように、操作者による操作機構123に対するスライド操作により、ハンドル本体121の基端側へ向けて、操作機構123がスライドすると、以下のようになる。すなわち、前述したように、この操作機構123によって操作用ワイヤ60の基端側が固定されていることから、この場合には、例えば図4(A)~図4(C)中の矢印d4aで示したように、操作機構123の基端側へのスライド動作に伴って、操作用ワイヤ60も基端側へと引っ張られる。すると、前述したように、この操作用ワイヤ60先端側は、先端付近構造6(先端チップ110付近)に固定されていることから、例えば図4(B),図4(C)に示したように、先端チップ110が基端側へと引っ張られることで、各分岐構造61a~61eが、基端側へと収縮した形状となる。つまり、先端付近構造6が、前述した非展開形状(この例では、X-Y平面内で略平坦化した形状)となる。具体的には、この例では図4(B)に示したように、先端付近構造6の形状が、各分岐構造61a~61eにより構成される、前述した花弁形状となる。
【0059】
一方、例えば図5(A)中の矢印d3bで示したように、操作者による操作機構123に対するスライド操作により、ハンドル本体121の先端側へ向けて、操作機構123がスライドすると、以下のようになる。すなわち、この場合には、例えば図5(A)~図5(C)中の矢印d4bで示したように、操作機構123の先端側へのスライド動作に伴って、操作用ワイヤ60も先端側へと押し出される。すると、例えば図5(B),図5(C)に示したように、先端チップ110が先端側へと押し出されることで、各分岐構造61a~61eが、先端側へと展開された形状となる。つまり、先端付近構造6が、前述した展開形状(Z軸方向に沿って先端側へと展開された形状)となる。具体的には、この例では図5(B)に示したように、先端付近構造6の形状が、各分岐構造61a~61eにより構成される、前述したバスケット形状となる。
【0060】
このようにして、操作機構123に対するスライド操作に応じて、先端付近構造6の変形動作がなされることになる。
【0061】
(C-3.比較例)
ここで、図6は、比較例に係るカテーテル(電極カテーテル101)の概略構成を、模式的に平面図(Z-X平面図)で表したものである。
【0062】
この比較例の電極カテーテル101は、先端付近構造6を有するカテーテルシャフト11と、ハンドル本体103および回転操作部122を有するハンドル102と、を備えている。つまり、この比較例の電極カテーテル101は、本実施の形態の電極カテーテル1(図1参照)において、ハンドル12およびハンドル本体121の代わりにそれぞれ、ハンドル102およびハンドル本体103を設けるようにしたものとなっている。
【0063】
具体的には、図6に示したように、このハンドル本体103では、前述した本実施の形態における操作機構123(前述したスライド操作が行われる部分)の代わりに、以下のような押し込み操作部104が、設けられている。この押し込み操作部104には、ハンドル本体103の基端から取り出された操作用ワイヤ60の基端側が、取り付けられている。そして、操作者によって、この押し込み操作部104が、矢印d103の方向(Z軸方向:操作用ワイヤ60の延在方向)に沿って操作されることで、操作用ワイヤ60をハンドル本体121に対して押し込む操作が、行われる。これにより、上記した本実施の形態と同様にして、先端付近構造6の変形動作がなされることになる。つまり、この比較例では、このような押し込み操作部104に対する矢印d103の方向への操作が、先端付近構造6を変形させるための操作に対応している。
【0064】
なお、この比較例のハンドル本体103では、図1に示した本実施の形態のハンドル本体121とは異なり、ハンドル本体103の基端側の側面から、灌注用の液体Lが流入されると共に、導線50も引き出されるようになっている。つまり、ハンドル本体103の基端からは、上記した操作用ワイヤ60が引き出されていることから、本実施の形態とは異なり、ハンドル本体103の基端からではなく、上記した側面から、導線50も引き出されている。
【0065】
このような比較例では、操作者がハンドル本体103を片手で把持している状況において、上記した押し込み操作部104に対する操作(先端付近構造6を変形させるための操作)が、操作者のもう一方の手を用いて、行われることになる。したがって、このような押し込み操作部104に対する操作の際に、操作者の両手による操作が必要となるため、先端付近構造6を変形させるための操作が、煩雑な操作となってしまう(変形させるための操作を容易に実行するのが、困難となってしまう)。
【0066】
このようにして、この比較例の電極カテーテル101では、使用する際の利便性が、損なわれてしまうことになる。
【0067】
(C-4.回転操作による先端付近構造6の回転動作)
続いて、図7図8を参照して、前述した操作機構123に対する回転操作(前述したZ軸方向の回転軸を回転中心とした回転操作)による、カテーテルシャフト11における先端付近構造6の回転動作(ねじり回転動作)について、詳細に説明する。
【0068】
図7図7(A),図7(B))は、カテーテルシャフト11の先端付近(先端付近構造6)におけるにおける回転動作の一例を、模式的に表したものである。また、図8図8(A),図8(B))は、カテーテルシャフト11の先端付近(先端付近構造6)におけるにおける他の回転動作の一例を、模式的に表したものである。具体的には、図7では、前述した非展開形状の一例としての、前述した花弁形状の状態の場合における、回転動作の一例を、示している。また、図8では、前述した展開形状の一例としての、前述したバスケット形状の状態の場合における、回転動作の一例を、示している。
【0069】
まず、図7(A)に示したように、先端付近構造6が非展開形状(花弁形状)に設定されている場合において、例えば図7(B)中の矢印d5で示したように、操作者による操作機構123に対する回転操作(Z軸方向の回転軸を中心とした回転操作)が行われると、以下のようになる。すなわち、前述したように、この操作機構123によって操作用ワイヤ60の基端側が固定されていることから、操作機構123に対する回転操作に伴って、この操作用ワイヤ60においても、Z軸方向の回転軸を中心とした回転動作がなされる(図7(B)中の矢印d60参照)。すると、前述したように、この操作用ワイヤ60先端側は、先端付近構造6(先端チップ110付近)に固定されていることから、この先端チップ110においても、Z軸方向の回転軸を中心とした回転動作がなされる。その結果、先端付近構造6における各分岐構造61a~61eおよび各電極111において、例えば図7(B)中の矢印d6で示したように、Z軸方向の回転軸を中心とした回転動作(ねじり回転動作)がなされることになる。
【0070】
一方、図8(A)に示したように、先端付近構造6が展開形状(バスケット形状)に設定されている場合において、例えば図8(B)中の矢印d5で示したように、操作者による操作機構123に対する回転操作が行われると、以下のようになる。すなわち、この場合においても、上記した図7(A),図7(B)の場合と同様にして、操作機構123に対する回転操作に伴って、この操作用ワイヤ60においても、Z軸方向の回転軸を中心とした回転動作がなされる(図8(B)中の矢印d60参照)。すると、上記した図7(A),図7(B)の場合と同様にして、先端付近構造6の先端チップ110においても、Z軸方向の回転軸を中心とした回転動作がなされる。その結果、先端付近構造6における各分岐構造61a~61eおよび各電極111において、例えば図8(B)中の矢印d6で示したように、Z軸方向の回転軸を中心とした回転動作(ねじり回転動作)がなされることになる。
【0071】
このようにして、操作機構123に対する回転操作に応じて、先端付近構造6の回転動作(ねじり回転動作)がなされることになる。
【0072】
(C-5.本実施の形態の作用・効果)
以上のようにして、本実施の形態の電極カテーテル1では、前述した各構成となっていることで、例えば、以下のような作用・効果が得られる。
【0073】
まず、本実施の形態の電極カテーテル1では、前述したZ軸方向の回転軸を中心としてハンドル本体121に対して回転自在に構成され、先端付近構造6を回転動作させる際に回転操作される操作機構123が、設けられている。これにより、そのような回転操作に応じて、上記した回転軸を中心として先端付近構造6が回転動作することから、以下のようになる。すなわち、先端付近構造6におけるZ軸方向の軸方向長を固定しつつ、先端付近構造6における各電極111の位置を、軸方向(Z軸方向)を中心とした径方向や周方向に沿って、任意に調整できるようになる。よって、本実施の形態では、電極カテーテル1を使用する際の利便性を、向上させることが可能となる。
【0074】
また、本実施の形態では、上記した操作機構123が、更に、ハンドル本体121において軸方向(Z軸方向)に沿って、スライド可能に構成されている。そして、先端付近構造6の形状を、前述した非展開形状(花弁形状)および展開形状(バスケット形状)の間で変化させる変形動作の際に、この操作機構123に対して、Z軸方向に沿ったスライド操作が行われるようになっている。
【0075】
これにより本実施の形態では、そのような変形動作の際に、操作者がハンドル本体121を片手で把持している状況において、操作機構123に対する操作を、その片手(同じ手)にて行うことができるようになる。つまり、例えば上記比較例のように、もう一方の手を用いて操作用ワイヤ60をハンドル本体103に対して押し込む操作の場合のような、操作者の両手による操作が不要となり、操作者の片手のみを用いて、上記した変形動作の際の操作(スライド操作)が、容易に実行できるようになる。
【0076】
また、そのような変形動作に応じて、先端付近構造6における各電極111の径方向の位置も、調整できることから、例えば、患者の血管の太さ(径の大きさ)に応じた各電極111の位置調整も、できるようになる。具体的には、例えば、血管が細い(径が小さい)患者の場合には、前述した展開形状(バスケット形状)に設定し、血管が太い(径が大きい)患者の場合には、前述した非展開形状(花弁形状)に設定するといった、対応ができるようになる。
【0077】
これらのことから、本実施の形態では、電極カテーテル1を使用する際の利便性を、更に向上させることが可能となる。
【0078】
また、このような操作機構123を利用してスライド操作を行うようにしたので、例えば、以下のような効果も得ることが可能となる。すなわち、例えば、所定の台上にハンドル12を置いた状態において、一方の手でスライド操作を行いつつ、もう一方の手で、前述した回転操作を容易に行うことが可能となる。また、上記した比較例のハンドル本体103の場合とは異なり、灌注用の液体Lの流入経路と分離した状態で、ハンドル本体121の基端から、導線50を容易に引き出すことが可能となる。
【0079】
更に、本実施の形態では、ハンドル本体121における操作機構123のスライド位置に応じて、先端付近構造6を、上記した非展開形状と展開形状との間の任意の中間形状に設定可能としたので、以下のようになる。すなわち、電極カテーテル1を使用する際の利便性の、更なる向上を図ることが可能となる。
【0080】
加えて、本実施の形態では、上記した回転動作および変形動作の際に用いられる操作用ワイヤ60における先端側が、先端付近構造6(前述した先端チップ110付近)に固定されている。そして、この操作用ワイヤ60における基端側が、ハンドル本体121内において、上記した回転操作に連動して回転するギヤ124(ギヤ124a~124c)を介して、操作機構123に固定されている。これにより、そのような回転動作および変形動作がそれぞれ、容易に実行できることから、電極カテーテル1を使用する際の利便性を、更に向上させることが可能となる。
【0081】
<2.変形例>
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこの実施の形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【0082】
例えば、上記実施の形態において説明した各部材の形状や配置位置、サイズ、個数、材料等は限定されるものではなく、他の形状や配置位置、サイズ、個数、材料等としてもよい。
【0083】
具体的には、例えば上記実施の形態では、カテーテルシャフト11の構成を具体的に挙げて説明したが、必ずしも全ての部材を備える必要はなく、また、他の部材を更に備えていてもよい。具体的には、例えばカテーテルシャフト11の内部に、首振り部材として、撓み方向に変形可能な板バネが設けられているようにしてもよい。また、カテーテルシャフト11の先端付近(先端付近構造6内)における、各電極111の配置や形状、個数(1または複数個)等は、上記実施の形態で挙げたものには限られない。更に、この先端付近構造6の形状(前述した非展開形状や展開形状)についても、上記実施の形態で説明した形状(前述した平坦形状の一例としての花弁形状や、バスケット形状など)には限られず、他の非展開形状や、他の展開形状であってもよい。加えて、この先端付近構造6自体の構成(前述した分岐点や合流点、複数の分岐構造における、配置や形状、個数等)についても、上記実施の形態で説明した構成には限られず、他の構成であってもよい。
【0084】
また、上記実施の形態では、ハンドル12(ハンドル本体121、回転操作部122および操作機構123等)の構成を具体的に挙げて説明したが、必ずしも全ての部材を備える必要はなく、また、他の部材を更に備えていてもよい。具体的には、例えば、先端付近構造6を変形させる際の形状の種類については、上記実施の形態で説明したように、任意の中間形状に設定可能な場合だけでなく、他の場合であってもよい。すなわち、例えば、任意の中間形状ではなく、予め設定された複数種類の中間形状のみに、設定可能であってもよいし、あるいは、例えば、前述した非展開形状および展開形状の2種類の形状のみに、設定可能(中間形状には設定できない)であってもよい。また、上記実施の形態では、操作機構123に対する回転操作に応じて行われる、先端付近構造6の回転動作が、回転軸を中心としたねじり回転動作である場合を例に挙げて説明したが、この場合の例には限られない。すなわち、先端付近構造6の回転動作の態様としては、そのようなねじり回転動作以外の、他の回転動作であってもよい。更に、上記実施の形態では、前述した回転操作およびスライド操作の双方が行われる操作機構123の場合を例に挙げて説明したが、この場合の例には限られない。すなわち、例えば場合によっては、前述した回転操作のみが行われて前述したスライド操作が行われない、操作機構の構成としてもよい。
【0085】
加えて、カテーテルシャフト11における先端付近の形状の態様は、上記実施の形態で説明したものには限られない。具体的には、上記実施の形態では、カテーテルシャフト11における先端付近の形状が、回転板41に対する回転操作に応じて両方向に変化するタイプ(バイディレクションタイプ)の電極カテーテル1を例に挙げて説明したが、これには限られない。すなわち、例えば、カテーテルシャフト11における先端付近の形状が、回転板41に対する回転操作に応じて片方向に変化するタイプ(シングルディレクションタイプ)の電極カテーテルであってもよい。この場合、前述した偏向用ワイヤを、1本(1つ)だけ設けることとなる。
【0086】
また、上記実施の形態では、灌注用の液体Lを外部に噴射する(灌注機構を有する)電極カテーテル1を例に挙げて説明したが、この例には限られず、例えば、そのような灌注機構を有しない電極カテーテルにおいて、本発明を適用するようにしてもよい。更に、上記実施の形態では、前述した電位測定や焼灼(アブレーション)を行う電極カテーテル1を例に挙げて説明したが、この例には限られず、例えば他の用途に用いられる電極カテーテルにおいて、本発明を適用するようにしてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8