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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】アミノピリジン系化合物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/73 20060101AFI20241021BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20241021BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20241021BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20241021BHJP
   C07F 9/6561 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
C07D213/73 CSP
A61P31/10
A61K31/4545
A61K31/675
C07F9/6561 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023534396
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 CN2021137888
(87)【国際公開番号】W WO2022127782
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】202011482610.1
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110528944.6
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514138020
【氏名又は名称】シーセン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Cisen Pharmaceutical Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Tongji Industrial Park, New & High-tech Development Zone of Jining, Shangdong Province 272073 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン、シューホイ
(72)【発明者】
【氏名】チョン、シアオピン
(72)【発明者】
【氏名】チアン、チーカン
(72)【発明者】
【氏名】ホー、ハイイン
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/035726(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/052615(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/136324(WO,A1)
【文献】REGISTRY(STN)[online],2020.12.08[検索日 2024.04.03]CAS登録番号 2549906-43-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61P
A61K
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(P)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化1】


(ただし、
環Aは、
【化2】


から選択され、
及びTは、CH及びNから選択され、
は、-O-、-CHO-及び-OCH-から選択され、前記-CHO-及び-OCH-は、任意選択で1又は2つのハロゲンにより置換され、
各Rは、それぞれ独立してH、F、Cl、Br、I、OH及びNHから選択され、
各Rは、それぞれ独立してF、Cl、OH、NH及びC1-3アルキルから選択され、前記C1-3アルキルは、任意選択で1、2又は3つのRにより置換され、
は、
【化3】


から選択され、
各Rは、それぞれ独立してH、F、Cl、Br及びIから選択され、
各Rは、それぞれ独立してF、Cl、Br及びIから選択され、
mは、1、2、3及び4から選択され、
nは、1、2、3及び4から選択され、
zは、1、2及び3から選択される。)
ただし、式(P)で表される化合物は以下の構造を有する化合物ではない。
【化4】
【請求項2】
は、-O-、-CHO-及び-OCH-から選択される、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
は、Nから選択される、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
は、CHから選択される、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
各Rは、それぞれ独立してH及びFから選択される、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
構造単位
【化5】


から選択される、請求項1、3及び5のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
各Rは、それぞれ独立してF、Cl、OH、NH、CH、CHCH及びCH(CHから選択され、前記CH、CHCH及びCH(CHは、任意選択で1、2又は3つのRにより置換される、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
各Rは、それぞれ独立してF、Cl、OH、NH、CH、CHF及びCHFから選択される、請求項1又は7に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
構造単位
【化6】


は、
【化7】


から選択される、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
環Aは、
【化8】

から選択される、請求項1又は9に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
各Rは、それぞれ独立してH及びFから選択される、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
構造単位
【化9】


から選択される、請求項1又は11に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
下記の式から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化10】

(ただし、
、T、T、R、R、R及びmは、請求項1~12のいずれか一項で定義される通りである。)
【請求項14】
下記の式で表される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化11】
【請求項15】
真菌症の治療のための医薬の製造における、請求項1~14のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下記の優先権を主張する:
CN202011482610.1、出願日は2020年12月15日であり、
CN202110528944.6、出願日は:2021年05月14日である。
【0002】
本発明は、一連のアミノピリジル系化合物に関し、具体的には、式(P)で表される化合物及びその薬学的に許容される塩に関する。
【背景技術】
【0003】
侵襲性真菌症(IFD)は最も致死性の高い真菌感染症であり、罹患率と死亡率は急激な増加傾向を示している。真菌の細胞壁は主にグルカン、キチン及びマンノタンパク質で構成され、グリコシルホスファチジルイノシトールアンカー型タンパク質(GPI-AP)は細胞膜と細胞壁に固定されており、マンノタンパク質とデキストランの架橋を媒介し、真菌の細胞壁の合成、接着及び形態学的変換に大きな影響を与える。その中でも、Gwt1はGPI合成過程における重要なアセチラーゼであり、GPI前駆体の形成に重要な役割を果たしている。Gwt1活性の阻害によりGPI-AP合成が阻害され、真菌表面のマンノタンパク質が細胞壁上で架橋できなくなるため、宿主表面への接着能力と細胞壁の完全性が破壊され、抗真菌効果を発揮することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、式(P)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【化1】

ただし、
環Aは、
【化2】

から選択され、
及びTは、CH及びNから選択され、
は、-O-、-CHO-及び-OCH-から選択され、前記-CHO-及び-OCH-は任意選択で1又は2つのハロゲンにより置換され、
各Rは、それぞれ独立してH、F、Cl、Br、I、OH及びNHから選択され、
各Rは、それぞれ独立してF、Cl、OH、NH及びC1-3アルキルから選択され、前記C1-3アルキルは任意選択で1、2又は3つのRにより置換され、
は、
【化3】

から選択され、
各Rは、それぞれ独立してH、F、Cl、Br及びIから選択され、
各Rは、それぞれ独立してF、Cl、Br及びIから選択され、
mは、1、2、3及び4から選択され、
nは、1、2、3及び4から選択され、
zは、1、2及び3から選択される。
【0005】
本発明の一部の形態において、前記Lは、-O-、-CHO-及び-OCH-から選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0006】
本発明の一部の形態において、前記Tは、Nから選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0007】
本発明の一部の形態において、前記Tは、CHから選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0008】
本発明の一部の形態において、前記各Rは、それぞれ独立してH及びFから選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0009】
本発明の一部の形態において、前記構造単位
【化4】

から選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0010】
本発明の一部の形態において、前記各Rは、それぞれ独立してF、Cl、OH、NH、CH、CHCH及びCH(CHから選択され、前記CH、CHCH及びCH(CHは、任意選択で1、2又は3つのRにより置換され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0011】
本発明の一部の形態において、前記各Rは、それぞれ独立してF、Cl、OH、NH、CH、CHF及びCHFから選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0012】
本発明の一部の形態において、前記構造単位
【化5】

から選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0013】
本発明の一部の形態において、前記構造単位
【化6】
から選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0014】
本発明の一部の形態において、前記構造単位
【化7】
から選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0015】
本発明の一部の形態において、前記構造単位
【化8】

から選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0016】
本発明の一部の形態において、前記環Aは、
【化9】
から選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0017】
本発明の一部の形態において、前記各Rは、それぞれ独立してH及びFから選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0018】
本発明の一部の形態において、前記構造単位
【化10】

から選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0019】
本発明の一部の形態において、前記化合物又はその薬学的に許容される塩は、
【化11】
から選択され、
ただし、
、T、T、R、R、R及びmは、本発明で定義された通りである。
【0020】
本発明は、式(IV)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【化12】

ただし、
は、
【化13】

から選択され、
及びTは、CH及びNから選択され、
は、-O-、-CHO-及び-OCH-から選択され、
は、H、F、Cl、Br、I、OH及びNHから選択され、
各Rは、それぞれ独立してF、Cl、OH、NH及びC1-3アルキルから選択され、前記C1-3アルキルは、任意選択で1、2又は3つのRにより置換され、
各Rは、それぞれ独立してF、Cl、Br及びIから選択され、
mは、1、2、3及び4から選択され、
ここで、式(III)は、分子
【化14】

を含まない。
【0021】
本発明の一部の形態において、前記構造単位
【化15】

から選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0022】
本発明の一部の形態において、前記各Rは、それぞれ独立してF、Cl、OH、NH、CH、CHCH及びCH(CHから選択され、前記CH、CHCH及びCH(CHは、任意選択で1、2又は3つのRにより置換され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0023】
本発明の一部の形態において、前記各Rは、それぞれ独立してF、NH、CH、CHF及びCHFから選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0024】
本発明の一部の形態において、前記構造単位
【化16】

から選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0025】
本発明の一部の形態において、前記構造単位
【化17】

から選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0026】
本発明の一部の形態において、前記化合物又はその薬学的に許容される塩は、
【化18】

から選択され、
ただし、
Arは、
【化19】

から選択され、
、T、T、R、R及びmは、本発明で定義された通りであり、
また、式(I)は、分子
【化20】

を含まない。
【0027】
本発明は、式(III)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【化21】

ただし、
は、
【化22】

から選択され、
及びTは、CH及びNから選択され、
は、-O-、-CHO-及び-OCH-から選択され、
は、H、F、Cl、Br、I、OH及びNHから選択され、
ここで、式(III)は、分子
【化23】

を含まない。
【0028】
本発明の一部の形態において、前記構造単位
【化24】

から選択され、他の変量は本発明で定義された通りである。
【0029】
本発明の一部の形態において、前記化合物又はその薬学的に許容される塩は、
【化25】

から選択され、
ただし、
Arは、
【化26】

から選択され、
、T、T及びRは、本発明で定義された通りであり、
また、式(I)は、分子
【化27】

を含まない。
【0030】
本発明更なる一部の形態は、上記の変量を任意に組み合わせることにより形成される。
【0031】
本発明はまた、下記の式で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0032】
【化28】
【0033】
【化29】
【0034】
本発明はまた、Gwt1に関連する疾患を治療するための医薬の製造における、前記化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【発明の効果】
【0035】
本発明の化合物は、カンジダ、クリプトコッカス及びアスペルギルスに対して優れた抗菌活性を有し、カンジダ血症によるマウスの死亡に抵抗することができ、カンジダ膣感染症に対して優れた治療効果を有する。更に、本発明の化合物は、優れた薬物動態学的特性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
定義
別途に説明しない限り、本明細書で用いられる以下の用語及び連語は以下の意味を含む。1つの特定の用語又は連語は、特別に定義されない場合、不確定又は不明瞭ではなく、普通の定義として理解されるべきである。本明細書で商品名が出た場合、相応の商品又はその活性成分を指す。
【0037】
本明細書で用いられる「薬学的許容される塩」は、それらの化合物、材料、組成物及び/又は剤形に対するもので、これらは信頼できる医学判断の範囲内にあり、ヒト及び動物の組織との接触に適し、毒性、刺激性、アレルギー反応又はほかの問題又は合併症があまりなく、合理的な利益/リスク比に合う。
【0038】
用語「薬学的に許容される塩」とは、本発明の化合物の塩で、本発明で発見された特定の置換基を有する化合物と比較的に無毒の酸又は塩基とで製造される。本発明の化合物に比較的に酸性の官能基が含まれる場合、単独の溶液又は適切な不活性溶媒において十分な量の塩基でこれらの化合物と接触することで塩基付加塩を得ることができる。薬学的許容される塩基付加塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミン又はマグネシウム塩あるいは類似の塩を含む。本発明で化合物に比較的塩基性の官能基が含まれる場合、単独の溶液又は、適切な不活性溶媒において十分な量の酸でこれらの化合物と接触することで酸付加塩を得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の実例は、無機酸塩及び有機酸塩、さらにアミノ酸(例えばアルギニンなど)の塩、及びグルクロン酸のような有機酸の塩を含み、上記無機酸は、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、炭酸水素イオン、リン酸、リン酸一水素イオン、リン酸二水素イオン、硫酸、硫酸水素イオン、ヨウ化水素酸、亜リン酸などを含み、上記有機酸は、例えば酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、酒石酸やメタンスルホン酸などの類似の酸を含む。本発明の一部の特定的の化合物は、塩基性及び酸性の官能基を含有するため、任意の塩基付加塩又は酸付加塩に転換することができる。
【0039】
本発明の薬学的許容される塩は、酸基又は塩基性基を含む母体化合物から通常の方法で合成することができる。通常の場合、このような塩の製造方法は、水又は有機溶媒あるいは両者の混合物において、遊離酸又は塩基の形態のこれらの化合物を化学量論量の適切な塩基又は酸と反応させて製造する。
【0040】
本発明の化合物は、特定の幾何又は立体異性体の形態が存在してもよい。本発明は、全てのこのような化合物を想定し、シス及びトランス異性体、(-)-及び(+)-エナンチオマー、(R)-及び(S)-エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)-異性体、(L)-異性体、及びそのラセミ混合物並びに他の混合物、例えばエナンチオマー又は非エナンチオマーを多く含有する混合物を含み、全てのこれらの混合物は本発明の範囲内に含まれる。アルキル等の置換基に他の不斉炭素原子が存在してもよい。全てのこれらの異性体及びこれらの混合物はいずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0041】
別途に説明しない限り、用語「エナンチオマー」又は「光学異性体」とは互いに鏡像の関係にある立体異性体である。
【0042】
別途に説明しない限り、用語「シス-トランス異性体」又は「幾何異性体」とは二重結合又は環構成炭素原子の単結合が自由に回転できないことによるものである。
【0043】
別途に説明しない限り、用語「ジアステレオマー」とは分子が二つ又は複数のキラル中心を有し、かつ分子同士は非鏡像の関係にある立体異性体である。
【0044】
別途に説明しない限り、「(+)」は右旋性を意味し、「(-)」は左旋性を意味し、「(±)」はラセミ体を意味する。
【0045】
【化30】
【0046】
別途に定義しない限り、化合物に二重結合構造、例えば炭素炭素二重結合、炭素窒素二重結合及び窒素窒素二重結合が存在し、且つ二重結合における各原子に2つの異なる置換基が結合されている場合(窒素原子を含む二重結合において、窒素原子における一対の孤立電子対はそれに連結されている1つの置換基と見なされる)、当該化合物の二重結合上の原子とその置換基が波線(
【化31】

)で連結している場合、当該化合物の(Z)形異性体、(E)形異性体、又は2つの異性体の混合物を意味する。例えば、下記の式(A)は、当該化合物が式(A-1)又は式(A-2)の単一の異性体の形で存在するか、又は式(A-1)と式(A-2)の2つの異性体の形で存在することを意味し;下記の式(B)は、当該化合物が式(B-1)又は式(B-2)の単一の異性体の形で存在するか、又は式(B-1)と式(B-2)の2つの異性体の形で存在することを意味する。下記の式(C)は、当該化合物が式(C-1)又は式(C-2)の単一の異性体の形で存在するか、又は式(C-1)と式(C-2)の2つの異性体の形で存在することを意味する。
【0047】
【化32】
【0048】
別途に説明しない限り、用語「互変異性体」又は「互変異性体の形態」とは室温において、異なる官能基の異性体が動的平衡にあり、かつ快速に互いに変換できることを指す。互変異性体は可能であれば(例えば、溶液において)、互変異性体の化学的平衡に達することが可能である。例えば、プロトン互変異性体(proton tautomer)(プロトトロピー互変異性体(prototropic tautomer)とも呼ばれる)は、プロトンの移動を介する相互変換、例えばケト-エノール異性化やイミン-エナミン異性化を含む。原子価互変異性体(valence tautomer)は、一部の結合電子の再構成による相互変換を含む。中では、ケト-エノール互変異性化の具体的な実例は、ペンタン-2,4-ジオンと4-ヒドロキシ-3-ペンテン-2-オンの2つの互変異性体の間の相互変換である。
【0049】
別途に説明しない限り、用語「1つの異性体に富む」、「異性体豊富な」、「1つのエナンチオマーに富む」又は「エナンチオマー豊富な」とは、1つの異性体又はエナンチオマーの含有量が100%未満で、且つこの異性体又はエナンチオマーの含有量が60%以上、又は70%以上、又は80%以上、又は90%以上、又は95%以上、又は96%以上、又は97%以上、又は98%以上、又は99%以上、又は99.5%以上、又は99.6%以上、又は99.7%以上、又は99.8%以上、又は99.9%以上であることを意味する。
【0050】
別途に説明しない限り、用語「異性体過剰率」又は「エナンチオマー過剰率」とは、2つの異性体又は2つのエナンチオマーの相対百分率の間の差を意味する。例えば、1つの異性体又はエナンチオマーの含有量が90%であり、もう1つの異性体又はエナンチオマーの含有量が10%である場合、異性体又はエナンチオマー過剰率(ee値)は80%である。
【0051】
本発明の化合物は、化合物を構成する1つ又は複数の原子には、非天然の原子同位元素が含まれてもよい。例えば三重水素(H)、ヨウ素-125(125I)又はC-14(14C)のような放射性同位元素で化合物を標識することができる。又、例えば重水素を水素に置換して重水素化薬物を形成することができ、重水素と炭素で形成された結合は、通常の水素と炭素で形成された結合よりも強く、重水素化されていない薬物と比較して、重水素化された薬物には、毒性の副作用が軽減され、薬物の安定性が増し、治療効果が向上され、薬物の生物学的半減期が延ばされるという利点がある。本発明の化合物の同位体組成の変換は、放射性であるかいやかに関わらず、本発明の範囲に含まれる。
【0052】
用語「任意」また「任意に」は後記の事項又は状況によって可能であるが必ずしも現れるわけではなく、かつ当該記述はそれに記載される事項又は状況が生じる場合によってその事項又は状況が乗じない場合を含むことを意味する。
【0053】
用語「置換された」は特定の原子における任意の1つ又は複数の水素原子が置換基で置換されたことで、特定の原子価状態が正常でかつ置換後の化合物が安定していれば、重水素及び水素の変形体を含んでもよい。置換基がケト基(即ち=O)である場合、2つの水素原子が置換されたことを意味する。ケト基置換は、芳香族基で生じない。用語「任意に置換される」は、置換されてもよく、置換されなくてもよく、別途に定義しない限り、置換基の種類と数は化学的に安定して実現できれば任意である。
【0054】
変量(例えばR)のいずれかが化合物の組成又は構造に1回以上現れた場合、その定義はいずれの場合においても独立である。そのため、例えば、1つの基が0~2個のRで置換された場合、上記基は任意に2個以下のRで置換され、かついずれの場合においてもRは独立して選択肢を有する。また、置換基及び/又はその変形体の組み合わせは、このような組み合わせであれば安定した化合物になる場合のみ許容される。
【0055】
連結基の数が0の場合、例えば、-(CRR)-は、当該連結基が単結合であることを意味する。
【0056】
そのうち1つの変量が単結合の場合、それで連結する2つの基が直接連結し、例えばA-L-ZにおけるLが単結合を表す場合、この構造は実際にA-Zになる。
【0057】
挙げられた連結基がほかの連結方向を明示しない場合、その連結方向は任意であり、例えば、
【化33】

における連結基Lは-M-W-であり、この時-M-W-は左から右への読み取る順序と同じ方向に環Aと環Bを構成
【化34】

することができ、また、左から右への読み取る順序と逆方向に環Aと環Bを構成
【化35】

することもできる。上記連結基、置換基及び/又はその変形体の組み合わせは、このような組み合わせであれば安定した化合物になる場合のみ許容される。
【0058】
特に明記しない限り、ある基が1つ以上の結合可能な部位を有する場合、該基の任意の1つ以上の部位は、化学結合によって他の基に結合することができる。該化学結合の結合方式が非局在であり、且つ結合可能な部位にH原子が存在する場合、化学結合を結合すると、該部位のH原子の個数は、結合された化学結合の個数に応じて相応の価数の基に減少する。前記部位が他の基と結合する化学結合は、
【化36】

で表すことができる。例えば、-OCHの直線実線結合は、該基の酸素原子を介して他の基に結合されていることを意味する。
【0059】
【化37】

中の直線の破線結合は、該基内の窒素原子の両端が他の基に結合されていることを意味する。
【0060】
【化38】

中の波線は、当該フェニルの部位1と2の炭素原子を介して他の基に結合されていることを意味する。
【0061】
【化39】

は、当該ピペリジニルの任意の結合可能な部位が1つの化学結合によって他の基に結合できることを意味し、少なくとも
【化40】

の四つの結合形態を含み、H原子が-N-に描かれていても、
【化41】

この結合形態の基が含まれるが、1つの化学結合が接続されると、その部位のHは1つ減少して対応する一価ピペリジンになる。
【0062】
別途に定義しない限り、用語「C1-6アルキル」は直鎖又は分枝鎖の1~6個の炭素原子で構成された飽和炭化水素基を表す。前記C1-3アルキルにはC1-5、C1-4、C1-3、C1-2、C2-6、C2-4、CとCアルキルなどが含まれ、それは1価(例えばメチル)、2価(例えばメチレン)及び多価(例えばメチン)であってもよい。C1-6アルキルの実例は、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(n-プロピル及びイソプロピルを含む)、ブチル(n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチルを含む)、ペンチル(n-ペンチル、イソペンチル及びネオペンチルを含む)などを含むが、これらに限定されない。
【0063】
別途に定義しない限り、用語「C1-4アルキル」は直鎖又は分枝鎖の1~4個の炭素原子で構成された飽和炭化水素基を表す。前記C1-4アルキルにはC1-2、C1-3とC2-3アルキルなどが含まれ、それは1価(例えばメチル)、2価(例えばメチレン)及び多価(例えばメチン)であってもよい。C1-4アルキルの実例は、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(n-プロピル及びイソプロピルを含む)、ブチル(n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチルを含む)などを含むが、これらに限定されない。
【0064】
別途に定義しない限り、用語「C1-3アルキル」は直鎖又は分枝鎖の1~3個の炭素原子で構成された飽和炭化水素基を表す。前記C1-3アルキルにはC1-2とC2-3アルキル基などが含まれ、それは1価(例えばメチル基)、2価(例えばメチレン基)及び多価(例えばメチン)であってもよい。C1-3アルキルの実例は、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(n-プロピル及びイソプロピルを含む)を含むが、これらに限定されない。
【0065】
別途に定義しない限り、Cn-n+m又はC-Cn+mはn~n+m個の炭素の任意の1つの具体的な様態を含み、例えば、C1-12はC、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、及びC12を含み、n~n+mのうちの任意の1つの範囲も含み、例えば、C1-12はC1-3、C1-6、C1-9、C3-6、C3-9、C3-12、C6-9、C6-12、及びC9-12等を含む。同様に、n員~n+m員は環における原子数がn~n+m個であることを表し、例えば、3~12員環は3員環、4員環、5員環、6員環、7員環、8員環、9員環、10員環、11員環、及び12員環を含み、n~n+mのうちの任意の1つの範囲も含み、例えば、3~12員環は3~6員環、3~9員環、5~6員環、5~7員環、6~7員環、6~8員環、及び6~10員環等を含む。
【0066】
用語「保護基」は「アミノ保護基」、「ヒドロキシ保護基」又は「メルカプト保護基」を含むが、これらに限定されない。用語「アミノ保護基」とはアミノ基の窒素の位置における副反応の防止に適する保護基を指す。代表的なアミノ酸保護基は、ホルミル、アルカノイル(例えばアセチル、トリクロロアセチル又はトリフルオロアセチル)のようなアシル、t-ブトキシカルボニル(Boc)のようなアルコキシカルボニル、ベントキシカルボニル(Cbz)及び9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)のようなアリールメトキシカルボニル、ベンジル(Bn)、トリチル(Tr)、1,1-ビス(4’-メトキシフェニル)メチルのようなアリールメチル、トリメチルシリル(TMS)及びt-ブチルジメチルシリル(TBS)のようなシリルなどを含むが、これらに限定されない。用語「ヒドロキシ保護基」とはヒドロキシ基の副反応の防止に適する保護基を指す。代表的なヒドロキシ保護基は、メチル、エチル及びt-ブチルのようなアルキル、アルカノイル(例えばアセチル)のようなアシル、ベンジル(Bn)、p-メトキシベンジル(PMB)、9-フルオレニルチル(Fm)及びジフェニルメチル(DPM)のようなアリールメチル、トリメチルシリル(TMS)及びt-ブチルジメチルシリル(TBS)のようなシリルなどを含むが、これらに限定されない。
【0067】
本発明の化合物は当業者に熟知の様々な合成方法によって製造することができ、以下に挙げられた具体的な実施形態、他の化学合成方法と合わせた実施形態及び当業者に熟知の同等の代替方法を含み、好適な実施形態は本発明の実施例を含むが、これらに限定されない。
【0068】
本発明の化合物の構造は、当業者に周知の従来の方法によって確認することができ、本発明が化合物の絶対配置に関する場合、絶対配置は、当業者の従来の技術的手段によって確認することができる。例えば、単結晶X線回折(SXRD)、培養単結晶はBruker D8 venture回折計によって収集され、光源はCuKα放射線、走査方法:φ/ω走査、関連データを収集した後、更に直接法は(Shelxs97)結晶構造解析により、絶対配置を確認できる。
【実施例
【0069】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明の不利な制限を意味するものではない。本発明は本明細書で詳細に説明されており、その特定の実施形態も開示されており、当業者にとって、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の特定の実施形態において様々な変更及び修正を行うことができることは明らかである。
【0070】
実施例3
合成ルート:
【化42】
【0071】
ステップ1:化合物WX003-2の合成
化合物WX003-1(100mg、314.10μmol)及び化合物WX001-1(73mg、314.10μmol)をアセトニトリル(5mL)に溶解させ、炭酸セシウム(256mg、785.26μmol)、XPhos(45mg、94.23μmol)及びPd(CHCN)Cl(8mg、31.41μmol)を加え、反応系を窒素ガスの保護下で90℃で2時間撹拌した。LCMSは、原料が完全に反応したことを示した。反応溶液を直接に濾過し、濾液を濃縮した。粗生成物を分取薄層クロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=1:1)で分離・精製して化合物WX003-2を得た。MS m/z (ESI): 516.3 [M+H]
【0072】
ステップ2:化合物WX003の合成
化合物WX003-2(50mg、96.97μmol)をギ酸(233mg、4.85mmol)に溶解させ、15℃で16時間撹拌した。反応溶液を直接濃縮し、粗生成物を分取HPLC(ギ酸系、カラム:Phenomenex Luna C18、75×30mm×3μm;移動相:[水(0.2%のギ酸)-アセトニトリル];アセトニトリル%:20%~50%、8分)で分離・精製した。化合物WX003を得た。MS m/z (ESI): 316.1 [M+H]H NMR (400MHz, DMSO-d) δ = 8.17-8.16 (m, 1H), 7.92-7.90 (m, 1H), 7.73-7.70 (m, 1H), 7.49-7.47 (m, 1H), 7.47-7.42 (m, 4H), 6.99-6.97 (m, 1H), 6.86 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.52-6.49 (m, 1H), 6.08 (s, 2H), 5.33 (s, 2H), 3.92 (s, 2H)。
【0073】
実施例4
合成ルート:
【化43】
【0074】
ステップ1:化合物WX004-1の合成
WX001-1(7g、29.95mmol)及びCsCO(19.52g、59.91mmol)をTHF(210mL)に溶解させ、窒素ガスで置換した後、Pd(MeCN)Cl(777mg、3.00mmol)及びXPhos(2.14g、4.49mmol)を加え、更に窒素ガスで置換し、注射器でトリメチルシリルアセチレン(14.71g、149.77mmol、20.75mL)を加え、反応系を65℃に昇温させ、16時間撹拌した。反応溶液を減圧濃縮して粗生成物を得、カラムクロマトグラフィー(石油エーテルに0~10%の酢酸エチル)で精製してWX004-1を得た。H NMR (400 MHz, CDCl) δ = 8.21-8.19 (m, 1H), 7.65-7.60 (m, 1H), 7.46-7.42 (m, 2H), 7.40-7.36 (m, 2H), 6.92-6.90 (m, 1H), 6.84-6.81 (m, 1H), 5.39 (s, 2H), 3.68 (s, 2H), 0.21 (s, 9H)。
【0075】
ステップ2:化合物WX004-2の合成
WX004-1(0.9g、3.05mmol)をTHF(12mL)に溶解させ、HOAc(366mg、6.09mmol、348μL)及びTBAF(1MのTHF、6.09mL)を加え、反応系を20℃で16時間撹拌した。反応溶液に水(20mL)を加え、酢酸エチル(20mL×3)で抽出し、有機相を合わせて、飽和塩化ナトリウム溶液(10mL×3)で洗浄し、有機相を減圧濃縮して粗生成物を得、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテルに0~10%の酢酸エチル)で精製してWX004-2を得た。 H NMR (400 MHz, CDCl) δ = 8.20 (dd, J = 1.3, 5.0 Hz, 1H), 7.61-7.59 (m, 1H), 7.46-7.44 (m, 2H), 7.42-7.38 (m, 2H), 6.92-6.90 (m, 1H), 6.82 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 5.39 (s, 2H), 3.64 (d, J = 2.8 H, 2H), 2.21 (t, J = 2.8 Hz, 1H)。
【0076】
ステップ3:化合物WX004の合成
反応フラスコにWX004-3(1g、4.55mmol)、WX004-2(1.01g、4.55mmol)及びTHF(100mL)を加え、次にPd(MeCN)Cl(177mg、681.79μmol)、XPhos(325mg、681.79μmol)、CuI(87mg、454.52μmol)、TEA(3.68g、36.36mmol、5.06mL)を順次に加え、窒素ガスで3回置換し、反応溶液を15℃で16時間撹拌した。珪藻土で濾過し、濾液に水(50mL)を加え、酢酸エチル(3×50mL)で抽出し、有機相を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=1:1~0:1)で分離・精製し、HPLC(カラム:Phenomenex Luna C18 200×40mm×10μm;移動相:[水(0.2%のFA)-ACN];ACN%:15%~55%、8分)で精製してWX004を得た。MS m/z (ESI): 316 [M+H]H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ = 8.17-8.16 (m, 1 H), 7.99 (s, 1 H), 7.72-7.71 (m, 1 H), 7.42-7.36 (m, 5 H), 7.00-6.98 (m, 1 H), 6.85 (d, J = 8.4 Hz, 1 H), 6.39 (d, J = 8.8 Hz, 1 H), 6.24 (s, 2 H), 5.32 (s, 2 H), 3.83 (s, 2 H)。
【0077】
実施例5
合成ルート:
【化44】
【0078】
化合物WX004-2(563mg、2.52mmol)及びWX005-1(500mg、2.10mmol)をTHF(20mL)に溶解させ、Pd(MeCN)Cl(54mg、210.08μmol)、XPhos(150mg、315.12μmol)、CuI(40mg、210.08μmol)及びTEA(1.70g、16.81mmol、2.34mL)を加え、窒素ガスで3回置換し、15℃で16時間撹拌した。反応溶液を直接に濾過し、濾液を濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(勾配溶出し、石油エーテル:酢酸エチル=10:1~2:1)で最初に分離・精製した後、分取(ギ酸系、カラム:Phenomenex Luna C18 200×40mm×10μm;移動相:[水(0.2%のFA)-ACN];ACN%:50%~90%、8分)で分離・精製してWX005を得た。MS m/z (ESI): 334 [M+H]H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ: 8.17-8.16 (m, 1 H), 7.72-7.70 (m, 1 H), 7.53-7.51 (m, 1 H), 7.43-7.36 (m, 4 H), 6.99-6.98 (m, 1H), 6.86 (d, J = 8.4 Hz, 1 H), 6.70 (s, 2H), 6.30-6.27 (m, 1 H), 5.33 (s, 2 H), 3.86 (s, 2 H)。
【0079】
実施例6
合成ルート:
【化45】
【0080】
反応フラスコにWX006-1(100mg、427.28μmol)及びWX004-2(95mg、427.28μmol)を加え、THF(5mL)を加えて撹拌し、次にPd(MeCN)Cl(11mg、42.73μmol)、XPhos(30mg、64.09μmol)、CuI(8mg、42.73μmol)及びTEA(346mg、3.42mmol、476μL)を順次に加え、窒素ガスで3回置換し、15℃で16時間撹拌した。反応溶液を珪藻土で濾過し、減圧濃縮して粗生成物を得た。粗生成物を分取薄層クロマトグラフィープレート(石油エーテル:酢酸エチル=2:1)で分離し、更に分取HPLC(カラム:Phenomenex Gemini-NX C18 75×30mm×3μm;移動相:[水(10mMのNHHCO)-ACN];ACN%:35%~55%、8分)で精製してWX006を得た。MS m/z (ESI) : 330 [M+H]H NMR (400 MHz, CDCl) δ: 8.19 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 7.58 - 7.61 (m, 1 H), 7.41 - 7.46 (m, 5 H), 6.87-6.90 (m, 1 H), 6.81 (d, J = 8.4 Hz, 1 H), 6.29 (d, J = 8.4 Hz, 1 H), 5.40 (s, 2 H), 4.51 (s, 2 H), 3.86 (s, 2 H), 2.52 (s, 3 H)。
【0081】
実施例7
合成ルート:
【化46】
【0082】
化合物WX004-2(191mg、854.57μmol)及び化合物WX007-1(0.2g、854.57μmol)をテトラヒドロフラン(4mL)に溶解させ、トリエチルアミン(692mg、6.84mmol、952μL)を加え、窒素ガスで置換した後、ヨウ化第一銅(16mg、85.46μmol)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)(22mg、85.46μmol)及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2,4,6-トリイソプロピルビフェニル(61mg、128.18μmol)を加えた。更に窒素ガスで置換し、40℃で16時間撹拌した。反応溶液を濾過した後、減圧濃縮して粗生成物を得、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶離液:石油エーテルに0~50%の酢酸エチル)で精製して化合物WX007を得た。MS m/z (ESI): 330.2 [M+H]H NMR (400 MHz, CDCl) δ = 8.23 - 8.17 (m, 1H), 8.08 (s, 1H), 7.65-7.57 (m, 1H), 7.49-7.41 (m, 4H), 7.37 (s, 1H), 6.94-6.89 (m, 1H), 6.82 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 5.39 (s, 2H), 4.60 (s, 2H), 3.84 (s, 2H), 2.13 (s, 3H)。
【0083】
実施例8
合成ルート:
【化47】
【0084】
化合物WX008-1(200mg、840.33μmol)及び化合物WX004-2(225mg、1.01mmol)をテトラヒドロフラン(8mL)に溶解させ、トリエチルアミン(680mg、6.72mmol)を加え、窒素ガスで置換した後、ヨウ化第一銅(16mg、84.03μmol)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)(22mg、84.03μmol)及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2,4,6-トリイソプロピルビフェニル(60mg、126.05μmol)を加えた。更に窒素ガスで置換し、40℃で16時間撹拌した。反応溶液を室温に冷却させた後濾過し、減圧濃縮して粗生成物を得た。粗生成物を分取HPLC(カラム:Phenomenex Gemini-NX C18 75×30mm×3μm;移動相:[水(0.225%のFA)-ACN];ACN%:50%~60%、7分)で精製してWX008を得た。MS m/z (ESI): 334.0 [M+H]H NMR (400 MHz, CDCl) δ = 8.11 (dd, J = 1.2, 5.0 Hz, 1H), 7.53-7.50 (m, 1H), 7.40-7.36 (m, 2H), 7.34-7.31 (m, 2H), 7.21 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 7.18 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 6.81 (dd, J = 5.6, 6.8 Hz, 1H), 6.73 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 5.30 (s, 2H), 4.71 (s, 2H), 3.74 (s, 2H)。
【0085】
実施例9
合成ルート:
【化48】
【0086】
ステップ1:化合物WX009-3の合成
化合物WX009-1(3.97g、26.07mmol)及び化合物WX009-2(3g、26.07mmol、2.38mL)をアセトニトリル(30mL)に溶解させ、KCO(10.81g、78.21mmol)を加え、85℃で21時間撹拌した。反応溶液に水(30mL)を加え、酢酸エチル(30mL×2)で抽出した。有機相を合わせて、飽和塩化ナトリウム溶液(20mL)で洗浄した。有機相を減圧濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテルに0~15%の酢酸エチル)で精製して化合物WX009-3を得た。MS m/z (ESI): 247.8 [M+H]H NMR (400 MHz, CDCl) δ = 8.14-8.07 (m, 2 H), 7.83-7.79 (m, 1 H), 7.24-7.20 (m, 2 H), 6.84-6.82 (m, 1 H), 6.65-6.74 (m, 1 H), 3.94 (s, 3 H)。
【0087】
ステップ2:化合物WX009-4の合成
化合物WX009-3(2g、8.09mmol)をトルエン(30mL)に溶解させ、窒素ガスで置換した後、反応系を0℃に冷却させ、水素化ジイソブチルアルミニウム(1MのTHF溶液、24.27mL)をゆっくりと滴下し、反応溶液を2時間撹拌し続けた。反応溶液を硫酸水素カリウム溶液(20mL)にゆっくりと加え、10分間撹拌し、酢酸エチル(20mL×3)で抽出した。有機相を合わせて、減圧濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテルに0~30%の酢酸エチル)で精製した。化合物WX009-4を得た。MS m/z (ESI): 220.0 [M+H]H NMR (400 MHz, CDCl) δ = 7.76-7.72 (m, 1 H), 7.40 (d, J = 8.4 Hz, 2 H), 7.13 (d, J = 8.4 Hz, 2 H), 6.74-6.72 (m, 1 H), 6.63-6.61 (m, 1 H), 4.69 (s, 2 H)。
【0088】
ステップ3:化合物WX009-5の合成
ジクロロスルホキシド(10mL)を反応フラスコに加え、反応系を0℃に冷却させ、化合物WX009-4(1g、4.56mmol)を加えた。反応溶液を20℃に昇温させ、30分間撹拌した。反応溶液を減圧濃縮して粗生成物を得た。粗生成物に飽和炭酸水素ナトリウム溶液(50mL)を加え、酢酸エチル(50mL×2)で抽出し、有機相を合わせ、減圧濃縮して化合物WX009-5を得た。MS m/z (ESI): 238.0 [M+H]H NMR (400 MHz, CDCl) δ = 7.70-7.68 (m, 1H), 7.39-7.32 (m, 2H), 7.09-7.04 (m, 2H), 6.68 (dd, J = 1.2, 8.0 Hz, 1H), 6.55 (dd, J = 2.4, 7.6 Hz, 1H), 4.54 (s, 2H)。
【0089】
ステップ4:化合物WX009-7の合成
化合物WX009-5(0.7g、2.95mmol)をテトラヒドロフラン(15mL)に溶解させ、炭酸セシウム(1.92g、5.89mmol)を加え、窒素ガスで置換した後、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2,4,6-トリイソプロピルビフェニル(211mg、441.81μmol)及びビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)(76mg、294.54μmol)を加え、更に窒素ガスで置換し、注射器でトリメチルシリルアセチレン(1.45g、14.73mmol、2.04mL)を加えた。反応溶液を65℃で16時間撹拌した。室温に冷却させた後、反応溶液を減圧濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテルに0~10%の酢酸エチル)で精製して化合物WX009-7を得た。MS m/z (ESI) : 300.1 [M+H]H NMR (400 MHz, CDCl) δ = 7.80-7.75 (m, 1H), 7.40 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.14-7.10 (m, 2H), 6.74-6.73 (m, 1H), 6.62 (dd, J = 2.4, 7.6 Hz, 1H), 3.69 (s, 2H), 0.21 (s, 9H)。
【0090】
ステップ5:化合物WX009-8の合成
化合物WX009-7(0.7g、2.34mmol)をテトラヒドロフラン(10mL)に溶解させ、酢酸(281mg、4.68mmol、267μL)及びフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(1Mのテトラヒドロフラン溶液)(1M、4.68mL)を加えた。反応系を20℃で16時間撹拌した。反応溶液に水(10mL)を加え、酢酸エチル(10mL×3)で抽出した。有機相を合わせ、減圧濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテルに0~10%の酢酸エチル)で精製した。化合物WX009-8を得た。MS m/z (ESI) : 228.0 [M+H]H NMR (400 MHz, CDCl) δ = 7.79-7.73 (m, 1H), 7.41 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.13 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.75-6.73 (m, 1H), 6.64-6.62 (m, 1H), 3.65 (d, J = 2.8 Hz, 2H), 2.23 (t, J = 2.8 Hz, 1H)。
【0091】
ステップ6:化合物WX009の合成
化合物WX004-3(0.5g、2.27mmol)及び化合物WX009-8(620mg、2.73mmol)をテトラヒドロフラン(20mL)に溶解させ、トリエチルアミン(1.84g、18.18mmol、2.53mL)を加え、窒素ガスで置換した後、ヨウ化第一銅(43mg、227.26μmol)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)(59mg、227.26μmol)及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2,4,6-トリイソプロピルビフェニル(163mg、340.89μmol)を加えた。更に窒素ガスで置換し、反応溶液を40℃で16時間撹拌した。反応溶液を室温に冷却させた後、濾過し、減圧濃縮して粗生成物を得た。粗生成物を分取HPLC(カラム:Phenomenex Gemini-NX C18 75×30mm×3μm;移動相:[水(0.225%のFA)-ACN];ACN%:15%~45%、7分)で精製した。化合物WX009を得た。MS m/z (ESI) : 320.1 [M+H]H NMR (400 MHz, CDCl) δ = 8.14 (s, 1H), 7.78-7.76 (m, 1H), 7.54 (dd, J = 2.0, 8.8 Hz, 1H), 7.44 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.17-7.10 (m, 2H), 6.75 (dd, J = 1.2, 8.0 Hz, 1H), 6.62 (dd, J = 2.4, 7.6 Hz, 1H), 6.49 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 5.17 (s, 2H), 3.84 (s, 2H)。
【0092】
実施例10
合成ルート:
【化49】
【0093】
ステップ1:化合物WX010-2の合成
化合物WX010-1(0.2g、1.59mmol)を酢酸(2mL)に溶解させ、反応系を0℃に冷却させ、N-ヨードスクシンイミド(357mg、1.59mmol)を加えた。反応系を20℃で2時間撹拌した。反応溶液に水(10mL)を加え、酢酸エチル(10mL×3)で抽出した。有機相を合わせ、減圧濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテルに0~30%の酢酸エチル)で精製した。化合物WX010-2を得た。 MS m/z (ESI): 252.7 [M+H]
【0094】
ステップ2:化合物WX010の合成
化合物WX010-2(0.1g、396.78μmol)及び化合物WX004-2(106mg、476.14μmol)をテトラヒドロフラン(4mL)に溶解させ、トリエチルアミン(321mg、3.17mmol、441.82μL)を加え、窒素ガスで置換した後、ヨウ化第一銅(8mg、39.68μmol)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)(10mg、39.68μmol)及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2,4,6-トリイソプロピルビフェニル(28mg、59.52μmol)を加えた。更に窒素ガスで置換し、反応溶液を40℃で16時間撹拌した。反応溶液を濾過した後、減圧濃縮して粗生成物を得た。粗生成物を分取HPLC(カラム:Phenomenex Gemini-NX C18 75×30mm×3μm;移動相:[水(0.225%のFA)-ACN];ACN%:30%~60%、7分)で精製して化合物WX010を得た。MS m/z (ESI): 348.1 [M+H]H NMR (400 MHz, CDCl) δ = 8.20 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 7.66-7.58 (m, 1H), 7.52-7.41 (m, 4H), 7.23 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 6.95-6.89 (m, 1H), 6.82 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 5.39 (s, 2H), 4.75 (s, 2H), 3.87 (s, 2H), 2.50 (s, 3H)。
【0095】
実施例11
合成ルート:
【化50】
【0096】
ステップ1:化合物WX011-2の合成
化合物WX011-1(2g、10.75mmol)をジクロロメタン(20mL)に溶解させ、反応系を0℃に冷却させ、ジエチルアミノ硫黄トリフルオリド(2.25g、13.98mmol、1.85mL)を加えた。反応溶液を20℃に昇温させ、16時間撹拌した。反応溶液を飽和炭酸水素ナトリウム溶液(10mL)に加え、酢酸エチル(10mL×3)で抽出した。有機相を減圧濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテルに0~30%の酢酸エチル)で精製して化合物WX011-2を得た。 MS m/z (ESI): 209.9 [M+H]
【0097】
ステップ2:化合物WX011-3の合成
化合物WX011-2(1.5g、7.21mmol)、N,N-ジメチルエチレンジアミン(64mg、721.14μmol、77.62μL)及び酸化第一銅(52mg、360.57μmol)をエチレングリコール(15mL)に溶解させ、アンモニア水(9.64g、76.98mmol、10.59mL、28%の含有量)及び炭酸カリウム(199mg、1.44mmol)を加えた。反応溶液を120℃で12時間撹拌した。反応溶液を室温に冷却させた後、水(20mL)に加え、酢酸エチル(20mL×3)で抽出した。有機相を合わせて、減圧濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテルに0~30%の酢酸エチル)で精製して化合物WX011-3を得た。H NMR (400 MHz, CDCl) δ = 7.57-7.53 (m, 1H), 6.95 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 6.63-6.29 (m, 2H), 4.68 (s, 2H)。
【0098】
ステップ3:化合物WX011-4の合成
化合物WX011-3(0.3g、2.08mmol)を酢酸(1.5mL)に溶解させ、ジクロロメタン(1.5mL)を加え、反応系を0℃に冷却させ、N-ヨードスクシンイミド(468mg、2.08mmol)を加え、得られた反応溶液を2時間撹拌し続けた。反応溶液に水(10mL)を加え、ジクロロメタン(10mL×2)で抽出し、有機相を合わせて、減圧濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテルに0~30%の酢酸エチル)で精製して化合物WX011-4を得た。MS m/z (ESI): 270.9 [M+H]H NMR (400 MHz, CDCl) δ = 7.52 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.44 (t, J = 54.0 Hz, 1H), 6.11 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 4.51 (s, 2H)。
【0099】
ステップ4:化合物WX011の合成
化合物WX011-4(120mg、444.41μmol)及び化合物WX004-2(119mg、533.30μmol)をTHF(5mL)に溶解させ、トリエチルアミン(360mg、3.56mmol)、ヨウ化第一銅(13mg、66.66μmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2,4,6-トリイソプロピルビフェニル(32mg、66.66μmol)を加え、窒素ガスで置換した後、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)(12mg、44.44μmol)を加えた。更に窒素ガスで置換し、反応溶液を40℃で16時間撹拌した。反応溶液を減圧濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテルに0~50%の酢酸エチル)で精製して化合物WX011を得た。MS m/z (ESI): 365.9 [M+H]H NMR (400 MHz, CDCl) δ = 8.20 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 7.64-7.55 (m, 2H), 7.50-7.46 (m, 2H), 7.44-7.40 (m, 2H), 7.05-6.78 (m, 3H), 6.56 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 5.40 (s, 2H), 4.81 (s, 2H), 3.88 (s, 2H)。
【0100】
実施例12
合成ルート:
【化51】
【0101】
ステップ1:化合物WX012-2の合成
化合物WX012-1(CAS:34160-40-2、2.6g、13.98mmol)をメタノール(40mL)に溶解させ、水素化ホウ素ナトリウム(529mg、13.98mmol)を加え、反応溶液を20℃で0.5時間撹拌した。反応溶液に水(50mL)を加え、酢酸エチル(50mL×2)で抽出し、有機相を合わせて、飽和塩化ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して化合物WX012-2を得た。H NMR (400MHz, CDCl) δ = 7.58-7.53 (m, 1H), 7.38 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.31 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 4.75 (s, 2H)。
【0102】
ステップ2:化合物WX012-3の合成
-78℃で、窒素ガスの保護下で、化合物WX012-2(2.55g、13.56mmol)をジクロロメタン(40mL)に溶解させ、ジエチルアミノ硫黄トリフルオリド(6.56g、40.69mmol、5.38mL)のジクロロメタン(65mL)溶液にゆっくりと滴下し、得られた反応溶液を1時間撹拌し続け、次に20℃に昇温させて15時間撹拌した。撹拌しながら反応溶液を氷水(200mL)に注ぎ、ジクロロメタン(50mL×2)で抽出し、有機相を合わせて、飽和塩化ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して減圧濃縮した。残留物を自動カラムパサーCOMBI-FLASH(溶離液:石油エーテル:酢酸エチル=100:0~2:1)で分離して化合物WX012-3を得た。 HNMR (400 MHz, CDCl) δ = 7.67-7.61 (m, 1H), 7.46-7.43 (m, 2H), 5.46 (d, J = 46.4 Hz, 2H)。
【0103】
ステップ3:化合物WX012-4の合成
化合物WX012-3(2g、10.53mmol)、アンモニア水(15.81g、126.31mmol、17.37mL、28%の含有量)及び炭酸カリウム(291mg、2.11mmol)をエチレングリコール(20mL)に加え、撹拌しながら酸化第一銅(75mg、526.28μmol)及びN,N′-ジメチルエチレンジアミン(93mg、1.05mmol、114.97μL)を加え、得られた反応溶液を130℃で12時間撹拌した。室温に冷却させた後、反応溶液に水(50mL)を加え、酢酸エチル(50mL×2)抽出し、有機相を合わせて、飽和塩化ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して減圧濃縮した。残留物を自動カラムパサーCOMBI-FLASH(溶離液:石油エーテル:酢酸エチル=100:0~2:1)で分離・精製して化合物WX012-4を得た。H NMR (400 MHz, CDCl) δ = 7.41-7.37 (m, 1H), 6.69 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 6.37 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 5.22 (d, J = 47.2 Hz, 2H), 4.49 (s, 2H)。
【0104】
ステップ4:化合物WX012-5の合成
化合物WX012-4(210mg、1.66mmol)をジクロロメタン(1mL)及び氷酢酸(1mL)に溶解させ、N-ヨードスクシンイミド(374mg、1.66mmol)を加えた。当該反応系を20℃で1時間撹拌した。反応溶液にジクロロメタン(10mL)、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液(20mL×2)及び飽和塩化ナトリウム水溶液(20mL)を加えて洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して減圧濃縮した。残留物を自動カラムパサーCOMBI-FLASH(溶離液:石油エーテル:酢酸エチル=100:0~2:1)で分離・精製して化合物WX012-5を得た。MS m/z (ESI): 252.8 [M+H]H NMR (400 MHz, CDCl) δ = 7.68 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 6.21 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 5.32 (d, J = 47.2 Hz, 2H), 4.68 (s, 2H)。
【0105】
ステップ5:化合物WX012の合成
化合物WX012-5(100mg、396.78μmol)、WX004-2(133mg、595.17μmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(205mg、1.59mmol、276μL)、ヨウ化第一銅(7mg、39.68μmol)及びジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(14mg、19.84μmol、0.05eq)をDMF(2mL)に加え、窒素ガスで3回置換し、30℃で2時間撹拌した。反応溶液に酢酸エチル(10mL)、水(10mL×2)及び飽和塩化ナトリウム水溶液(20mL)を加えて洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して減圧濃縮した。残留物を自動カラムパサーCOMBI-FLASH(石油エーテル:酢酸エチル=100:0~2:1)で分離・精製して化合物WX012を得た。MS m/z (ESI): 347.9 [M+H]HNMR (400 MHz, DMSO-d) δ = 8.19-8.18 (m, 1H), 7.75-7.70 (m, 1H), 7.48-7.39 (m, 5H), 7.01-6.98 (m, 1H), 6.87 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.46-6.45 (m, 3H), 5.34 (s, 2H), 5.32 (d, J = 47.6 Hz, 2H), 3.90 (s, 2H)。
【0106】
実施例13
合成ルート:
【化52】
【0107】
NaI(3.18g、21.25mmol)を反応フラスコに加え、次に化合物WX004(6.7g、21.25mmol)を加え、窒素ガスで置換した後、無水THF(70mL)及びWX013-1(16.49g、63.74mmol)を加え、得られた反応溶液を25℃で16時間撹拌した。反応溶液に酢酸エチル(50mL)を加え、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(30mL×2)で洗浄し、有機相を減圧濃縮して粗生成物WX013-2を得た。粗生成物WX013-2(10g、18.60mmol)をDCM(100mL)に溶解させ、反応系を0℃に冷却させ、TFA(25mL、337.65mmol)を加え、得られた反応溶液を25℃で1時間撹拌した。反応溶液を減圧濃縮して粗生成物を得た。水(20mL)を加え、アンモニア水でpHを7~8に調節し、酢酸エチル(30mL×3)で洗浄した。水相をカラム(逆相C18カラム:40g、溶離液:アセトニトリル/水(0.1%のアンモニア水)、勾配:0~20%)で精製し、得られた画分を減圧濃縮してアセトニトリルを去除した後、少量のギ酸を加えてWX013を得た。MS m/z (ESI): 426.1 [M+H]H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ = 8.14-8.10 (m, 2H), 7.80-7.76 (m, 2H), 7.46 - 7.40 (m, 4H), 7.09 - 7.01 (m, 2H), 6.90 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 5.64 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 5.29 (s, 2H), 3.84 (s, 2H)。
【0108】
試験例1. 抗真菌薬物の最小抗菌活性試験
1.実験目的
真菌に対する試験薬物の最小発育阻止濃度(MIC)及び最小有効濃度(MEC)を試験するためである。
【0109】
2.実験株及び試験培地
実験株:Candida parapsilosis ATCC 22019;Candida albicans ATCC MYA-2876; Candida albicans WX-CA009; Candida glabrata ATCC15126; Candida tropicalis ATCC 750;
Cryptococcus neoformans H99 ATCC 208821;
Aspergillus fumigatus ATCC-MYA-4609; Aspergillus flavusATCC MYA-1004
試験培地:RPMI1640(0.165MのMOPSを含み、pH7.0)
【0110】
3.実験プログラム
3.1.化合物マスターボードの製造
実験当日、バイアル内の化合物を100%のDMSOに溶解させ、母液の濃度を6.24mg/mLとした。次に、使用のためにDMSOで0.624mg/mLになるまで10倍に希釈した。
【0111】
96ウェルマイクロプレート(V底)上でDMSOを使用して化合物溶液(0.624mg/mL)を2倍に勾配希釈し、順次に100×作業溶液(ウェル1~ウェル11)を得た。624、312、156、78、39、20、10、5、2.5、1.25、0.625μg/mL。100%のDMSOを陽性対照(ウェル12)として使用した。これが化合物マスターボードである。
【0112】
3.2.接種液の製造
-80℃で凍結した菌株Candida parapsilosis ATCC 22019及びCandida albicans ATCC MYA-2876; Candida albicans WX-CA009; Candida glabrata ATCC15126; Candida tropicalis ATCC 750をSDAプレートに画線し、35±2℃のインキュベータに入れて24時間好気培養した。
【0113】
-80℃で凍結した菌株Cryptococcus neoformans H99 ATCC 208821をSDAプレートに画線し、35±2℃のインキュベータに入れて48時間好気培養した。
【0114】
-80℃で凍結した菌株Aspergillus fumigatus ATCC-MYA-4609; Aspergillus flavus ATCC MYA-1004をSDAプレートに画線した。30±2℃のインキュベータに入れて6日間好気培養した。
【0115】
実験当日、菌株Candida parapsilosis ATCC 22019,Candida albicans ATCC MYA-2876; Candida albicans WX-CA009; Candida glabrata ATCC15126; Candida tropicalis ATCC 750及びCryptococcus neoformans H99 ATCC 208821の場合、プレートを取り出し、プレート上のクローンを取り、生理食塩水に懸濁し、次に濁度計で細菌懸濁液の濁度をOD600=0.2に調節し、当該細菌懸濁液は~3.0×10CFU/mLを含む。次に、濁度を調節した細菌懸濁液を試験培地で濃度:~3.0×10CFU/mLに希釈した。これが接種液である。
【0116】
菌株Aspergillus fumigatus ATCC MYA-4609; Aspergillus flavusATCC MYA-1004の場合、プレートを取り出し、プレートに3mLの0.1%のTween20を含む0.9%生理食塩水を加え、胞子を静かに収集し、血球計算板で計数し、胞子懸濁液を~5×10胞子/mLに調節した。次に、試験培地で当該胞子懸濁液を0.8~1×10胞子/mLに希釈した。
【0117】
3.3.MIC及びMECの検出
化合物マスターボード(3.1で製造)から2μLの100×作業溶液を丸底96ウェルプレート(98μLの試験培地を含む)に移し、次に各ウェルに100μLの細菌接種液(3.2で製造)を加え、MIC試験プレートを得た。従って、化合物の最終試験濃度は、6.24、3.12、1.56、0.78、0.39、0.20、0.10、0.05、0.025、0.0125、0.006μg/mLであった。1%のDMSOを増殖コントロールとして使用した。
【0118】
菌株Candida parapsilosis ATCC 22019; Candida albicans ATCC MYA-2876; Candida albicans WX-CA009; Candida glabrata ATCC15126; Candida tropicalis ATCC 750の場合、すべての試験プレートを35±2℃のインキュベータに入れて24時間好気培養した。
【0119】
カビ菌株Aspergillus fumigatus ATCC-MYA-4609及Aspergillus flavusATCC MYA-1004の場合、すべての試験プレートを35±2℃のインキュベータに入れて48時間好気培養した。
【0120】
Cryptococcus neoformans H99 ATCC 208821クリプトコッカスの場合、すべての試験プレートを35±2℃のインキュベータに入れて72時間好気培養した。
【0121】
3.4.MIC及びMECの読み込み
培養した後、下記の表1の基準に従い、目視観察又は顕微鏡観察により試験プレートを観察し、酵母菌及びカビに対する試験化合物のMIC(μg/mL)及びMEC(μg/mL)を試験した。
【0122】
【表1】
【0123】
4.実験結果
【表2】
【0124】
結論:本発明の化合物は、カンジダ、クリプトコッカス及びアスペルギルスに対して優れた抗菌活性を有している。
【0125】
試験例2:マウスにおける薬物動態評価実験
実験目的:メスCD-1マウスを試験動物として使用し、LC/MS/MS法により試験化合物の腹腔内注射投与後、異なる時間の血漿薬物濃度を測定するためである。マウス体内における試験化合物の薬物動態行動を研究し、その薬物動態特性を評価した。
【0126】
薬物の調製:適切な量の試料を秤量し、透明又は懸濁液に調製した。
投与方法:2匹の健康なメスCD-1マウスを使用し、Beijing Charles River Laboratory Animal Technology Co., Ltd.から購入し、正常に飲食させ、腹腔内注射により投与した。
【0127】
操作ステップ:投与2時間前に、1-アミノベンゾトリアゾール(ABT)(50mg/kg、生理食塩水に5mg/mL)を経口投与し、動物に投与した後、0.083、0.25、0.5、1、2、4、8及び24時間にそれぞれ約30μLを採血し、予めEDTA-K2を加えた市販抗凝固チューブに入れた。チューブを10分間遠心分離して血漿を分離し、-60℃で保存した。LC/MS/MS法により血漿試料中の標的化合物の含有量を測定し、実験結果は表3に示される通りである。
【0128】
【表3】
【0129】
結論:マウスに化合物とABTとを併用することにより、より高い曝露量を示した。
【0130】
試験例3:ラット、イヌ及びサルにおける薬物動態評価実験
実験目的:異なる動物種で薬物動態特性を測定することにより、化合物の創薬可能性を評価するためである。
実験材料:CD-1マウス、Sprague-Dawley系ラット、ビーグル、カニクイザル。
薬物の調製:適切な量の試料を秤量し、透明又は懸濁液に調製した。
【0131】
実験プロセス:化合物の静脈内注射及び経口投与後の動物の薬物動態特性を標準プロトコルで試験し、実験では、候補化合物は透明な溶液(静脈内注射)又は均一な懸濁液(経口投与)に調製し、動物に単回投与した。0.083、0.25、0.5、1、2、4、8及び24時間に全血試料を収集し、3200gで10分間遠心分離し、上清を分離して血漿試料を得、LC-MS/MS分析法により血中薬物濃度を定量分析し、ピーク濃度、ピーク時間、クリアランス、半減期、薬物-時間曲線下の面積などの薬物動態パラメーターを計算した。
【0132】
【表4】
【0133】
実験結果:表4に示されるように、検出の結果、WX013はラット、イヌ及びサルの血漿において0.5時間内に親薬物WX004に完全に分解された。
結論:本発明の化合物は優れた薬物動態学的特性を有し、薬物形成特性の要件を満たしている。
【0134】
試験例4:マウスカンジダ血症の薬力学モデル
実験動物:メスCD-1マウス、7週齢、27~29g、n=5又は8;
微生物病原体:カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)ATCC MYA-2876;
接種レベル、接種経路:2.0~4.0E+05CFU/マウス、尾静脈注射による感染;
治療:感染1時間後から治療を開始し、まずABTを経口投与し、2時間後に試験化合物を腹腔内注射し、1日1回、合計7日間投与し、投与体積は10mL/kgであった。
観察指標:感染後7日以内の各群のマウスの体重変化及び死亡状況。
【0135】
結論:所定投与量のATCC MYA-2876をCD-1マウスに尾静脈注射により投与した後、動物の死亡率は7日以内に100%に達し、マウスに重度のカンジダ血症を引き起こした。当該モデルにおいて、動物に50mg/kgのABTを経口投与した後、試験化合物WX004、WX006及びWX009は、26mg/kgの低用量(n=5)である時、カンジダ・アルビカンスATCC MYA-2876に感染したマウスを完全に保護でき、カンジダ血症による死亡から保護することができた。また、6mpkの投与量では、WX004の生存率も100%(n=8)であった。
【0136】
試験例5:マウスカンジダ膣感染症モデルの薬効研究
実験動物:メスC3H/NeHマウス、6~8週齢、19~21g、n=5~6;
微生物病原体:カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)ATCC MYA-4788;
接種レベル、接種経路:5.0E+05CFU/マウス、膣に点滴により感染;
試験物質:WX004:20mpk
【0137】
治療:感染22時間後からABTを経口投与し、24時間目に試験化合物を腹腔内注射して治療を開始した。本実験ではVehicle群及び化合物試験群を設定し、1日1回、合計3日間投与し、投与体積は10mL/kgであった。
【0138】
観察指標:各群のマウスは感染から96時間後、マウスの膣組織及び膣洗浄液を収集してCFUカウントを実行した。最後の投与から0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間目に血漿試料を収集した。
【0139】
結論:所定投与量のカンジダ・アルビカンスATCC MYA-4788をマウスに膣内に点滴した後、安定した膣感染症モデルを構築することができ、Vehicle群の膣組織及び膣洗浄液の菌量はそれぞれ4.8±0.08lg、3.7±0.15lgであった。Vehicle群と比べて、試験化合物WX004の20mpk投与量での膣組織及び膣洗浄液の菌量はそれぞれ2.7lg及び2.5lg減少した(P<0.001)。