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特許7574453耐退色性かつ水分散性でフェノールを含まないダイレクトサーマル媒体
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  • 特許-耐退色性かつ水分散性でフェノールを含まないダイレクトサーマル媒体 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】耐退色性かつ水分散性でフェノールを含まないダイレクトサーマル媒体
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/333 20060101AFI20241021BHJP
   B41M 5/41 20060101ALI20241021BHJP
   B41M 5/44 20060101ALI20241021BHJP
   B41M 5/323 20060101ALI20241021BHJP
   B41M 5/42 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
B41M5/333 220
B41M5/41 200
B41M5/44 210
B41M5/323 220
B41M5/42 220
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2023535312
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(86)【国際出願番号】 US2021062598
(87)【国際公開番号】W WO2022125770
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-11-06
(31)【優先権主張番号】17/118,217
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/407,491
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523209830
【氏名又は名称】アプヴィオン エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,マーク
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-314623(JP,A)
【文献】特開2007-237634(JP,A)
【文献】特開2017-177346(JP,A)
【文献】特開2020-82406(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044462(WO,A1)
【文献】特開2016-68418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/333
B41M 5/41
B41M 5/44
B41M 5/323
B41M 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材料であって、
水溶性紙又は水分散性紙を含む基材と、
前記基材によって担持された感熱層と、
前記基材と前記感熱層との間のベースコートと、を含み、
前記ベースコートが、非水溶性結合剤を含み、
前記感熱層が、ロイコ染料及び顕色剤を含み、前記顕色剤が、N,N’-ジフェニル尿素の誘導体を含む、記録材料。
【請求項2】
前記顕色剤が、
【化1】

のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の記録材料。
【請求項3】
前記顕色剤が、
【化2】

を含む、請求項1に記載の記録材料。
【請求項4】
前記顕色剤が、
【化3】

を含む、請求項1に記載の記録材料。
【請求項5】
前記顕色剤が、
【化4】

を含む、請求項1に記載の記録材料。
【請求項6】
前記顕色剤が、尿素ウレタン(「UU」)を含み、前記感熱層が、第2の顕色剤として、1,3ジフェニル尿素(「DPU」)を含む、請求項1に記載の記録材料。
【請求項7】
前記感熱層が、N,N’-ジフェニル尿素の誘導体ではないいずれの顕色剤も実質的に含まない、請求項1に記載の記録材料。
【請求項8】
前記顕色剤が、N,N’-ジフェニル尿素の誘導体であり、前記感熱層が、いずれの他の顕色剤も実質的に含まない、請求項1に記載の記録材料。
【請求項9】
前記記録材料が、実質的にフェノールを含まない、請求項1に記載の記録材料。
【請求項10】
前記ベースコートが、非水溶性であるにも関わらず、前記記録材料が、水分散性である、請求項1に記載の記録材料。
【請求項11】
前記非水溶性結合剤が、ラテックスを含む、請求項1に記載の記録材料。
【請求項12】
前記ベースコートが、中空球状顔料(HSP)と、粘土粒子、沈殿炭酸カルシウム、及びヒュームドシリカの群から選択される第2の顔料と、を含む、請求項1に記載の記録材料。
【請求項13】
6インチ/秒(ips)の印刷速度で11.7mJ/mmのサーマルプリンタエネルギー設定を用いて印刷された場合の前記記録材料の印刷品質が、少なくとも1.5のANSI値であることを特徴とする、請求項1に記載の記録材料。
【請求項14】
サーマル印刷が実施される前に、前記記録材料が、40℃及び相対湿度90%の空気に24時間暴露され、次いで、取り出され、冷却された場合でさえ、印刷された前記記録材料の前記印刷品質が、少なくとも1.5のANSI値であることを特徴とする、請求項13に記載の記録材料。
【請求項15】
印刷された前記記録材料が、40℃及び相対湿度90%の空気に24時間暴露され、次いで、取り出され、冷却された後、前記印刷された記録材料の前記印刷品質が、依然として少なくとも1.5のANSI値であることを特徴とする、請求項13に記載の記録材料。
【請求項16】
前記基材によって担持されたトップコートであって、前記感熱層が、前記トップコートと前記基材との間に配置されるようになっている、トップコートを更に含む、請求項1に記載の記録材料。
【請求項17】
前記感熱層とは反対側の前記基材の面上に配置された接着剤層を更に含む、請求項1に記載の記録材料。
【請求項18】
記録材料であって、
水溶性紙又は水分散性紙を含む基材と、
前記基材によって担持された感熱層と、
前記基材と前記感熱層との間のベースコートと、
前記基材によって担持されたトップコートであって、前記感熱層が、前記トップコートと前記基材との間に配置されるようになっている、トップコートと、を含み、
前記ベースコートが、非水溶性結合剤を含み、
6インチ/秒(ips)の印刷速度で11.7mJ/mmのサーマルプリンタエネルギー設定を用いて印刷された場合の前記記録材料の印刷品質が、少なくとも1.5のANSI値であることを特徴とし、
(a)印刷された前記記録材料が、40℃及び相対湿度90%の空気に24時間暴露され、次いで、取り出され、冷却された後に、又は(b)サーマル印刷が実施される前に、前記記録材料が、40℃及び相対湿度90%の空気に24時間暴露され、次いで、取り出され、冷却された場合に、前記印刷された記録材料の前記印刷品質が、少なくとも1.5のANSI値であることを特徴とし、
前記感熱層が、ロイコ染料及び顕色剤を含み、前記顕色剤が、
【化5】

のうちの少なくとも1つから選択されるN,N’-ジフェニル尿素の誘導体を含む、記録材料。
【請求項19】
前記顕色剤が、
【化6】

のうちの少なくとも1つを含む、請求項18に記載の記録材料。
【請求項20】
前記顕色剤が、尿素ウレタン(「UU」)を含み、前記感熱層が、第2の顕色剤として、1,3ジフェニル尿素(「DPU」)を含む、請求項18に記載の記録材料。
【請求項21】
前記感熱層が、N,N’-ジフェニル尿素の誘導体ではないいずれの顕色剤も実質的に含まない、請求項18に記載の記録材料。
【請求項22】
前記顕色剤が、N,N’-ジフェニル尿素の誘導体であり、前記感熱層が、いずれの他の顕色剤も実質的に含まない、請求項18に記載の記録材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイレクトサーマル記録媒体に関し、特に水分散性であるこのような媒体、並びにロイコ染料及び酸性顕色剤を組み込んで熱活性化印刷機構を提供しながら、実質的にフェノールを含まないこのような媒体に適用する。本発明はまた、関連する方法、システム、及び物品にも関する。
【背景技術】
【0002】
ダイレクトサーマル記録では、画像は、サーマル印刷ヘッドの下に又はさもなければ横切って材料を通過させることによって、選択された場所で記録材料(コーティングされたサーモクロミズム紙、サーマル紙、サーマル記録材料若しくは媒体、又は感熱記録材料と称されることもある)を選択的に加熱することによって生成される。記録材料は、感熱層のコーティングを含み、画像は、感熱層の色の熱誘発変化によって提供される。ダイレクトサーマル記録のいくつかの一般的な使用としては、キャシュレジスター領収書、食品若しくは他の商品のラベル、又はイベントチケットを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0003】
非常に多くの種類のダイレクトサーマル記録媒体が知られている。例えば、米国特許第3,539,375号(Baum)、第3,674,535号(Bloseら)、第3,746,675号(Bloseら)、第4,151,748号(Baum)、第4,181,771号(Hansonら)、第4,246,318号(Baum)、及び第4,470,057号(Glanz)を参照されたい。これらの場合、基本的な無色又は淡色の発色性材料、例えば、ロイコ染料及び酸性色顕色剤材料が、好適な温度に加熱された場合、材料が反応することを可能にするように溶融又は軟化し、それによって、加熱された場所で着色されたマーク又は画像を生成する、基材上のコーティングに含まれる。感熱記録材料は、特徴的な感熱性を有し、選択的な熱暴露時に十分な強度の着色された画像を生成する。
【0004】
いくつかのダイレクトサーマル記録媒体は、(水溶解性でも水分散性でもない従来の紙基材とは対照的に)製品の基材又はベース材料が水溶解性又は水分散性紙材料であり、その結果得られるダイレクトサーマル記録媒体全体がエンドユーザによって、最小限の撹拌で水の影響下で容易に溶解又は分散され得る特殊用途のために説明又は提案されている。例えば、米国特許第7,476,448号(Natsuiら)を参照されたい。このような製品もいくつか販売されているが、不十分な画像形成品質を欠点として持つ。すなわち、このような製品が従来のダイレクトサーマルプリンタを通して供給されて、6インチ/秒(ips)などの通常の印刷速度で画像を印刷した場合、得られる画像品質は、典型的には、非常に不十分であり、標準的なバーコード読み取り機では、バーコード画像を確実にスキャンして読み取ることができない。不十分な画像品質は、第1の層がベースストックの表面に水溶液でコーティングされる場合の製造中の水分散性ベースストックのしわ又は膨潤の結果であり得る、製品の外側表面があまりにも粗い又は平滑でないことに起因すると考えられる。
【0005】
更に、従来のダイレクトサーマル記録材料中にフェノール系化学物質が存在することについては、何年も前から懸念が提起されていた。もともと、フェノール材料は、サーマル記録材料の感熱層中、より具体的には、その層中のロイコ染料と反応して熱誘起色変化を生成する顕色剤化学物質中に存在していた。これらの懸念に対処するために、代替的なフェノールを含まない顕色剤化学物質が開発された。このような化学物質の1つの群は、約20年前にPergafast 201(p-トルエンスルホン酸3-(3-トシルウレイド)フェニル)を含むブランドPergafast(商標)の下でCiba Specialty Chemical Corp.によって導入された。これは、フェノールを含まないダイレクトサーマル記録材料の製造において最も広く使用されているフェノールを含まない顕色剤であると考えられている。
【発明の概要】
【0006】
フェノールを含まないこと及び水分散性であることの特徴を組み合わせたダイレクトサーマル記録媒体の調査に関連して、フェノールを含まない/水分散性の組み合わせに固有の問題である、特定の厳しい環境での保管条件に関連する予期しない画像退色及び画像形成の問題を見出した。次いで、記録媒体の感熱層において、特定のあまり知られていないフェノールを含まない酸性顕色剤、すなわちN,N’-ジフェニル尿素の誘導体である顕色剤を慎重に選択し、使用することによって、これらの問題が克服され得ることが判明した。
【0007】
したがって、水分散性であり、かつフェノールを含まないダイレクトサーマル記録材料又は媒体の新しいファミリーを開発し、このような媒体が上記の厳しい環境での保管条件に供された場合でさえ、従来のダイレクトサーマルプリンタを使用して良好なサーマル画像品質を提供し得る。
【0008】
したがって、とりわけ、基材と、基材によって担持された感熱層と、基材と感熱層との間のベースコートと、を含む記録材料又は媒体を本明細書に開示する。基材は、好ましくは、水溶性又は水分散性紙であるか、又はそれを含む。感熱層は、ロイコ染料及び顕色剤を含む。記録材料はまた、基材によって担持されたトップコートであって、感熱層がトップコートと基材との間にあるようになっている、トップコートも含み得る。
【0009】
厳しい保管条件下でも良好なサーマル画像品質を確保するために、顕色剤は、好ましくは、N,N’-ジフェニル尿素の誘導体であり、場合によっては、
【化1】

のうちの少なくとも1つであり得るか、又はそれらを含み得る。
それらは、便宜上、それらそれぞれの商品名又は化学名、NKK-1304(日本曹達株式会社)、TGMD(日本化薬株式会社)、S-176(三光株式会社)、及び尿素ウレタン(「urea urethane、UU」)によって称され得る。
【0010】
少なくとも、顕色剤がUUである場合、感熱層は、好ましくは、第2の顕色剤である1,3ジフェニル尿素(「DPU」)も含み、これは、本明細書の目的のために、それ自体がN,N’-ジフェニル尿素の誘導体であるとはみなされない。
【0011】
場合によっては、感熱層は、N,N’-ジフェニル尿素の誘導体ではないいずれの顕色剤も実質的に含まなくてもよい。場合によっては、顕色剤は、N,N’-ジフェニル尿素の誘導体であり得、感熱層は、いずれの他の顕色剤も実質的に含まなくてもよい。場合によっては、感熱層、及び記録材料全体が、実質的にフェノールを含まなくてもよい。
【0012】
サーマル画像の品質にとって重要であり得、したがって顕色剤の適切な選択と相乗的であり得る他の製品特徴は、ベースコートの設計の詳細である。ベースコートの設計において注意が払われていない場合、従来のダイレクトサーマルプリンタによって記録材料上に形成されたサーマル画像の品質は、過酷な保管環境への暴露に関係なく、標準以下で読み取れない場合があるか、又は製品が所望の水分散性を達成できない場合があるか、又はその両方となる場合がある。このため、ベースコートは、好ましくは、非水溶性、非樹脂性、粒子状、分散液由来、及び/又はラテックスである結合剤を含む。このような結合剤材料を他の要素とともに注意深く選択された濃度で使用すると、感熱層において通常の印刷速度及び更に高い印刷速度でサーマル印刷される高品質画像を可能にするベースコートを提供する。このような性能を促進するのに役立つベースコートの特性は、そのバルク又は厚さ、その比較的低い熱伝導率、及びその比較的弱い内部凝集性である。
【0013】
ラテックスは、10~30重量%、又は15~20重量%の濃度でベースコート中に存在し得る。ベースコートはまた、20~50重量%、又は30~50重量%の濃度でベースコート中に存在し得る中空球状顔料(HSP)も含み得る。ベースコートは、粘土粒子、沈殿炭酸カルシウム、及びヒュームドシリカの群から選択される第2の顔料を更に含み得、第2の顔料は、80重量%未満、又は10~50重量%の範囲の濃度でベースコート中に存在し得る。
【0014】
したがって、ベースコートの結合剤材料及びベースコート自体は、非水溶性であるが、それにもかかわらず、記録材料全体がフェノールを含まないだけでなく、水分散性でもあるように調整されている、すなわち、最小限の撹拌で水の影響下で分離する。
【0015】
記録材料は、好ましくは、6インチ/秒(ips)の印刷速度で11.7mJ/mmのサーマルプリンタエネルギー設定を用いて印刷された場合、少なくとも1.5のANSI値であることを特徴とする、印刷品質を提供する。このような印刷品質は、サーマル印刷のプロセスの前又は後に、厳しいが現実的な保管又は輸送条件を表す、記録材料が高熱及び高湿に長期間暴露される場合にも達成される。したがって、サーマル印刷が実施される前に、記録材料が、40℃及び相対湿度90%の空気に24時間暴露され、次いで、取り出され、冷却された場合でさえ、印刷された記録材料の印刷品質は、少なくとも1.5のANSI値であることを特徴とし得る。代替的又は追加的には、印刷された記録材料が、40℃及び相対湿度90%の空気に24時間暴露され、次いで、取り出され、冷却された後、印刷された記録材料の印刷品質は、依然として少なくとも1.5のANSI値であることを特徴し得る。
【0016】
記録材料はまた、基材によって担持されたトップコートであって、感熱層がトップコートと基材との間に配置されるようになっている、トップコートも含み得る。記録材料はまた、感熱層とは反対側の基材の面上に配置された接着剤層も含み得る。
【0017】
また、非常に多くの関連する方法、システム、及び物品も開示する。
【0018】
本開示のこれらのかつ他の態様は、以下の発明を実施するための形態から明らかとなるであろう。しかしながら、いかなる場合においても、上記の要約は、特許請求される主題の限定として解釈されるべきではなく、その主題は、審査中に修正される場合があるように、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の物品、システム、及び方法は、以下の添付の図面を参照して更に詳細に記載される。
【0020】
図1A】ダイレクトサーマル記録材料又は媒体のロールの概略斜視図である。
図1B】このような記録材料の概略断面図としても機能する拡大概略正面図である。
図2図1Bの記録材料において使用されたベースコートの一部の概略拡大図である。
【0021】
図面では、同様の参照番号は、同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の態様は、特徴と能力との新しい組み合わせを有する新しい種類のダイレクトサーマル記録材料/媒体、及びそれを作製する方法を含む。ダイレクトサーマル記録媒体として、製品は、バーコード、英数字、グラフィック、又はこれらの組み合わせの画像を生成するために、ダイレクトサーマルプリンタを介して製品を供給するときなど、局所的に印加された熱に応答して色を変化させるように適合されている。
【0023】
本発明製品は、好ましくは、フェノールを含まない化学的性質と水分散性の構造という特徴の独自の組み合わせであることを特徴とし、これは、サーマル画像に関して複数の課題を提示することが判明した:第1の課題は、基材がデリケートな水溶性又は水分散性紙である、又はそれを含む場合、標準的なダイレクトサーマルプリンタ設定下で許容可能な初期印刷品質を達成することであり、第2の課題は、このような印刷されたダイレクトサーマル媒体が特定の厳しい高温高湿の保管条件に暴露された後(及び/又はダイレクトサーマル画像を受け取る前のダイレクトサーマル媒体がこのような条件に暴露された場合)に、許容可能な画像品質を維持することである。
【0024】
第1の課題は、米国特許出願公開第2021/0155027号(Fisher)「水分散性ダイレクトサーマル又はインクジェット印刷可能媒体」として公開されている、共通に譲渡された米国特許出願第17/100,349号において実質的に考察されているようなベースコートを適切に調整することによって対処され得る。簡潔に言えば、ベースコートは、非水溶性であり非樹脂性である、粒子状で、かつ/又はラテックスなどの分散液に由来する、注意深く調整された濃度の結合剤材料を含む、多数の成分を含む。このような結合剤材料の使用は、それが一部である製品が水分散性であることを意味する限り、直感に反する。
【0025】
フェノールを含まないという追加要件を課す場合、これらの種類の製品の更なる調査に関連して第2の課題を見出した。40℃、相対湿度90%の空気中に24時間、又は60℃、相対湿度90%の空気中に同じ長さの時間の暴露など、高温高湿の保管条件への暴露に関連する、予想外に深刻な画像退色及び画像形成の問題に気が付いた。理論に拘束されることを望むものではないが、これらの画像退色/形成の問題は、典型的には(酸性とは対照的に)多量の塩基性材料を含有する、水溶性又は水分散性の紙基材への/との感熱層中の化学材料の近接性及び相互作用に起因する可能性があると考えられる。
【0026】
本明細書に開示されるものを含むダイレクトサーマル記録材料は、多くの場合、紙材料の連続的ウェブなどを使用して、工業サイズのコーティング機上で、ジャンボロールを含む大きなロール形態で製造される。このようなダイレクトサーマル記録材料104のロール100が、図1Aに概略的に示される。製造後、ロール100は、別の施設又は顧客に出荷されて得、そこで材料104は、スリッティング、裁断、又は他の標準操作によって個々のシート、ラベル、又はより小さいロールに加工され得る。このような施設への輸送中、このような加工操作の前に保管されている間、又は製品のライフサイクルの後のある時点で、ロール100又はその一部は、トラック、輸送コンテナ、又は倉庫内に見出され得るような高温高湿保管条件に長期間暴露され得る。
【0027】
記録材料104の例示的な実施形態の拡大面又は断面図が図1Bに概略的に示されて、成分層又はコーティングから構成される典型的なサブ構造を例示する。
【0028】
記録材料104は、基材110の少なくとも1つの面又は主表面110aにいくつかの異なるコーティングを塗布することによって作製され得る。基材の表側表面は、主表面110aと称され得、暴露された主表面104aは、記録材料104の表側表面であり得る。反対側の主表面104bは、記録材料の裏側表面であり得る。簡潔に言えば、基材110は、ベースコート層112、感熱層114、及びトップコート層116を担持するようにコーティングされる。コーティングは、好ましくは、層114が層112と116との間に位置し、層112が層114と基材110との間に位置する、示される順序で塗布される。場合によっては、トップコート116は、省略され得る。コーティングは、ロールコーティング、ナイフコーティング、ロッドコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、スポットコーティングなどを含む、任意の好適なコーティング技術によって形成され得る。更に、追加の層及びコーティングが、その表及び/又は裏面に記録材料に追加され得るか、又は記録材料に含まれ得る。例えば、以下で更に考察されるように、1つ以上のコーティングが基材の反対面、すなわち主表面110bに塗布され得る。しかし、まず、ダイレクトサーマル記録材料104の他の要素が、ここでより詳細に説明される。
【0029】
記録材料104は、フェノールを含まず、かつ水分散性であることに留意されたい。水分散性である(水に暴露された場合、最小限の撹拌で崩壊又は分解/分散するように適応される)ために、材料104の最も質量の大きい単一の成分であるベースストック又は基材110は、水溶性紙又は水分散性紙であるか、又はそれを含むべきである。これは、水溶性でもなく、水分散性でもない通常の紙基材とは対照的である。基材110の紙は、その厚さ及び組成に応じて、通常の事務用紙と同様に薄くて柔軟であり得るか、又はやや厚くて剛直であり得る。「紙」という用語を使用して、このような可能性を全て包含する。基材110は、例えば、2.5ミル~20ミルの範囲の厚さを有し得る。基材110は、過度の引き裂き又は破損なしにコーティング機で操作及び取り扱われることを可能にするのに十分な物理的強度及び厚さを有する。したがって、基材110は、2つの反対側の主表面110a、110bを有するウェブの形態であり得る。これらの表面は、不均一又は粗いものとして示され、表面が濡れている場合悪化する。
【0030】
基材110としての使用に好適な紙は、Neenah,Inc.(Alpharetta、Georgia)から入手可能なNeenah Dispersa(商標)分散性紙である。水分散性紙が作製されるパルプは、少なくとも88重量%のαセルロースを含有するか、又は12重量%未満のヘミセルロースを含有する、いわゆる精製パルプを大量に含有する必要はない。このような精製パルプは、例えば、基材中の全てのパルプの15重量%未満を占め得る。Neenah(商標)Dispersa(商標)ブランドには、製品コード7630P0(3.0~3.4ミル厚さ、ラベル用と言われる)、製品コード7741P0(14ミル厚さ、タグ及びボードストック用と言われる)、並びに製品コード7742P0(17ミル厚さ、タグ及びボードストック用と言われる)を含む、いくつかの製品が提供されている。
【0031】
基材110としての使用に好適な他の水分散性紙も入手可能である。Aquasol Corporation(North Tonawanda、NY)は、製品コードASW-35/Sで3ミル厚さの水分散性柔軟紙を販売している。SmartSolve Industries(CMC Group(Bowling Green、OH)の一部)は、製品コードIT117970で3ミル厚さの水分散性柔軟紙などの、多数の水分散性紙製品を販売している。
【0032】
上記の市販の水分散性紙の一部は、それぞれの製造業者のマーケティング文献に「水溶性」として記載されている。
【0033】
いくつかの実施形態では、基材110の水分散性紙は、米国特許第8,877,678号(Koyamaら)において開示されているように、精製パルプの増加した量を含有し得る。精製パルプは、例えば、基材中の全てのパルプの15~95重量%を占め得る。
【0034】
信頼性の高い機械読み取り可能である十分に高い品質のダイレクトサーマル画像をもたらす記録材料を生成することに関心がある場合(全ての製造業者がこのような懸念を有しているわけではない)、基材110の水溶性/水分散性の性質は、その目的に対して課題をもたらす。通常の水性コーティングを基材110の表面に塗布することは、しわ又は膨張を引き起こし得、これは、最終製品が通常の印刷条件及び印刷速度の下で高品質のダイレクトサーマル画像を確実に形成することができないように、過度に粗い又は平滑でない表面を生成し得る。その結果として、主表面110aに直接塗布され得るベースコート112は、全体的な製品が水分散性であることも可能にしながら、このような問題を回避するように注意深く設計される。
【0035】
ベースコート112は、特徴のバランスのとれた組み合わせを提供するように特別に調整されている。これらは、基材の主表面110aの起伏又は粗さを平滑にし得るのに十分なバルク又は厚さを有することと、良好な熱分離(低熱伝導率)を提供するのに十分な空気含有量を有することと、製品の通常の取り扱い中に無傷のままであるほど十分強いが、下層にある基材110が溶解した後、又は溶解し始めた後、又は分散した後、又は分散し始めた後に、水に暴露された場合、分離(分散)するのに十分に弱い内部凝集性を有することと、を含む。
【0036】
この特性の組み合わせを達成するのに役立てるために、ベースコート112は、好ましくは、非水溶性結合剤材料を使用する。このような結合剤材料は、適量で、かつベースコートの他の成分と組み合わせて使用される場合、得られる記録媒体が水分散性であること、すなわち、最小限の撹拌で水の影響下で分離することを可能にする。したがって、ベースコートの結合剤材料及びベースコート自体は、非水溶性であるが、それにもかかわらず、記録材料全体が水分散性であるように調整されている。ベースコートの結合剤材料は、好ましくは、非樹脂性結合剤、粒子状結合剤、及び/又はラテックスなどの分散液由来の結合剤である。このような結合剤材料を他の要素とともに注意深く選択された濃度で使用すると、感熱層上に通常の印刷速度、例えば6インチ/秒(ips)、並びにより高い印刷速度でサーマル印刷される高品質画像を可能にするベースコートを提供する。
【0037】
基材110の外側表面に(直接)塗布される好適に調整されたベースコート112は、ベースストックに水系コーティングを塗布することが表面粗さを増加させるにもかかわらず、製品の画像化特性を実質的に改善し得る。ベースコート112は、好ましくは、薄すぎず、厚すぎない。不十分なコート重量は、基材から感熱層114を十分に断熱せず、単に基材の起伏のプロファイルに適合するベースコートを生成する。ベースコート112のコート重量を増加させることは、より多くの水が、コーティング手順中にシートのより多くの不安定性及び粗化を引き起こす可能性があるため、実用的な制限を有する。また、厚すぎるベースコート112は、層の内部凝集性をあまりにも強くすることができ、層112(及び全体の製品104)が水に暴露された場合、迅速に分解し、分散する能力を妨害する。好ましくは、ベースコート112は、少なくとも2マイクロメートルの厚さ、及び1~5lbs/3300ft(1.5~7.5g/m)の範囲のコート重量を有し得るが、必要に応じて、他のコート重量及び厚さも使用され得る。
【0038】
ベースコート112のバルク並びに空気含有量を増加させるために、Dow ChemicalのRopaque(商標)顔料などの中空球状顔料(HSP)をベースコートに組み込むことが有用であることを見出した。HSPの中空ポリマー粒子は、基材110の表面の粗化の影響を平滑にするために、ベースコートのバルク(厚さ)を改善し得る。HSPの有益性は、製品が製造プロセス中に(ベースコートがベースストックに塗布され、乾燥された後に)カレンダリングされる場合、HSP粒子が、ニップの圧力下で、カレンダー表面と接触して表面上で変形し、従来の顔料を使用して作製され得るよりも高平滑な表面を提供し得ることである。HSP粒子は、典型的には、例えば0.4~2マイクロメートルの範囲で、数マイクロメートル以下の平均直径を有する。HSP粒子は、水溶性ではない。
【0039】
HSP以外の他の顔料、例えば、焼成粘土若しくは他の粘土粒子、及び/又は良好なバルク及び吸水特性を有する他の粒子、例えば、沈殿炭酸カルシウム(PCC)若しくはヒュームドシリカも、ベースコート112において使用され得、好ましくは使用されるが、典型的には、それ自体で、ベースストックの粗化を克服するために必要なバルクを提供することはない。このような他の顔料は、水溶性ではないか、又は水溶性ではない可能性がある。ベースコート112中のHSPと1つ以上の他の顔料との混合物は、改善された被覆性、平滑性、及びシート一体性の良好なバランスを提供し得、機械読み取り可能なバーコードの高速(及び通常の速度)のダイレクトサーマル印刷を可能にする。
【0040】
別の重要な設計上の考慮事項及び本発明の態様は、ベースコート112において使用される結合剤材料である。従来の知見は、水分散性記録材料104のベースコート112において使用される結合剤材料が水溶性であるべきであることを示唆するであろう。しかしながら、水溶性結合剤材料が、ベースコートの熱伝導率を増加させ、断熱特性を低減させる傾向にあることを見出した。ダイレクトサーマル画像の印刷品質は、ダイレクトサーマル層をベースストックから可能な限り熱的に隔離することによって向上するため、断熱性が低減すると、画像品質が劣化する。対照的に、水溶性ではない好ましい結合剤材料は、速乾性溶液を提供し、注意深く調整された濃度で使用される場合、基材の水分散性の性質を妨げることなく、水溶性結合剤よりも改善された断熱特性を提供する。ベースコート112のための好ましい結合剤材料としては、非水溶性であるもの、非樹脂性であるもの、粒子状結合剤であるもの、及び/又は分散液由来であるものが挙げられる。例示的なこのような結合剤材料は、ラテックスである。代替又は追加の結合剤材料としては、加熱されたデンプン、ポリビニルアルコール(PVA)、及びEastman Chemical Companyから市販されているAQ(商標)ポリマーを挙げることができる。
【0041】
この結合剤濃度を注意深く調整することは、材料104の通常の取り扱いに耐えるために、顔料粒子を一緒に保持する必要性と、断熱性を高めるためにベースコート112全体に豊富な数の空気ポケット及び空気ギャップを提供する必要性と、下層にある基材110が水の作用下で崩壊又は溶解し始めたときに容易に分離するようにベースコートの比較的弱い内部凝集性を提供する必要性と、のバランスをとる。このようなバランスのとれた又は調整された状態の概略図は、図2の拡大図に示される。そこで、ベースコート112の代表的であるが小さい部分230は、HSP粒子232、焼成粘土などの第2の顔料の粒子234、及びラテックスなどの結合剤粒子236から構成される。結合剤粒子236は、顔料粒子を適切に一緒に保持するのに十分な数であるが、適切な断熱性のために粒子間に豊富な数の空気ポケット及び空気ギャップを維持するのに十分にまばらである。
【0042】
所望の特性のバランスを提供するために、ラテックス又は他の好適な非水溶性結合剤は、好ましくは、10~30重量%、又は15~20重量%の濃度でベースコート112中に存在する。HSPは、好ましくは、20~50重量%、又は30~50重量%の濃度でベースコート112中に存在する。焼成粘土又は他の好適な第2の顔料は、好ましくは、80重量%未満、又は10~50重量%の範囲の濃度で、ベースコート中に存在する。
【0043】
図1Bに戻ると、感熱層114は、次いでベースコート112のトップにコーティングされる。サーマル印刷機能を提供するために、この層114は、ロイコ染料又は他の基本的な発色性材料と、固体マトリックス又は結合剤中で層全体に実質的に均一に分散された酸性色顕色剤材料との組み合わせを含む。
【0044】
ロイコ染料は、一般に、フェノール系ではなく、本明細書で考察される問題の種類は、層114中で使用されるロイコ染料の選択によって実質的に影響を受けないことが見出された。したがって、実質的に、任意の好適なロイコ染料が使用され得る。
【0045】
顕色剤については、同じことは言えない。記録材料104における任意の相当量のフェノール系化学物質の使用を回避するために、層114中で使用される顕色剤は、実質的にフェノールを含まない必要があり、1つではなく複数の顕色剤が使用される場合、それらは、好ましくは、全て実質的にフェノールを含まない必要がある。しかし、上記のように、最も広く使用されているフェノールを含まない顕色剤を含む、いくつかのフェノールを含まない顕色剤材料は、長期的な画像退色又は画像形成の問題を引き起こす可能性があることを見出した。これらの問題は、製品設計者によって容易に見過ごされる可能性がある。なぜなら、これらの化学物質を組み込むダイレクトサーマル記録製品は、我々が記載する高温高湿の保管条件の種類に製品が供されない限り、完全に許容可能なダイレクトサーマル画像を提供し得るからである。
【0046】
高温高湿の保管条件に関連する画像退色及び画像形成の問題、並びにこのような問題を回避するために使用され得る顕色剤は、以下に記載の試験結果において実証される。簡単に要約すると、記録材料104の感熱層114において使用される顕色剤は、好ましくは、N,N’-ジフェニル尿素の誘導体である。例示的なこのような材料としては、
【化2】

が挙げられ、
それらは、便宜上、それらのそれぞれの商品名又は化学名、NKK-1304(日本曹達株式会社)、TGMD(日本化薬株式会社)、S-176(三光株式会社)、及び尿素ウレタン(「urea urethane、UU」)によって称され得る。
【0047】
この例示的な化学物質のリストの中で、尿素ウレタン(「UU」)は、特別な場合であり、なぜなら、層114中の唯一の顕色剤としてそれ自体が使用される場合、ダイレクトサーマル記録材料104によって生成される画像(標準的な条件下で、6インチ/秒の印刷速度で11.7mJ/mmのサーマルプリンタエネルギー設定を用いて印刷された場合)は、標準以下で、許容できないものであり、1.5を大きく下回るANSI値を有する非常に淡い画像であることを特徴とするからである。一方、1,3ジフェニル尿素(「DPU」、これはフェノールを含まないが、本明細書の目的のためには、それ自体がN,N’-ジフェニル尿素の誘導体とはみなされない)を、層114中の唯一の顕色剤としてそれ自体で使用することも許容できないが、理由は異なっている:標準的な条件下で印刷されたサーマル画像は、典型的には、十分に適切な暗さ/コントラスト/視認性、及び1.5を超えるANSI値を有するが、ANSI値が1.5を下回るような大幅な画像退色を示す。DPUの一部がUUで置換され、それによりUUとDPUとが組み合わせで使用され、好適なロイコ染料とともに層114全体に一緒に分散される場合、得られる製品は、予想通り、「DPU単独」の対応物よりもいくぶん淡く、暗くない(しかしながら、そのANSI値は、依然として許容可能な1.5以上の)サーマル画像を提供するが、予想に反して意外なことに、画像の視認性は、良好な持続性を有し、「DPU単独」の対応物の画像退色問題を欠点として有さない。実質的に、DPU及びUU以外の顕色剤は、感熱層中に存在しなくてもよく、DPU及びUUは、1/3~3、又は1/2~2の範囲内に収まる、又は実質的に1であり得る相対重量比で、感熱層中に存在し得る。層114は、1.48g/m(1lb/3300ft)未満、又は0.9~1.48g/m未満の範囲のコート重量を有し得る。
【0048】
本明細書の目的のために、「DPU」は、代替的に、1-3-ジフェニル尿素又は1-3-ジフェニル尿素、N,N’-ジフェニル尿素、ジフェニル尿素、尿素、N,N’-ジフェニル-、CARBANILIDE、又はジフェニルカルバミド等の名称で称され得る。「UU」は、代替的に、ウレタン尿素、ウレタン-尿素コポリマー、ポリウレタン尿素又はポリ(ウレタン尿素)、ポリウレタン尿素エラストマー若しくはポリ(ウレタン尿素)エラストマー、ポリ尿素-ウレタン、ポリ(尿素)ウレタン、ポリ(尿素-ウレタン)ポリマー、ポリ(尿素-ウレタン)熱硬化物、ポリ(エーテルウレタン尿素)、ポリ(エステルウレタン尿素)、又はポリ(エステルウレタン)尿素エラストマーなどの名称で称され得る。
【0049】
DPU/UUの組み合わせの更なる詳細は、2020年12月10日に出願された上記の米国特許出願第17/118,217号、「多目的のフェノールを含まないダイレクトサーマル記録媒体」中に見出され得る。標準的な紙基材(水分散性又は水溶解性ではない)、並びに感熱層中の1:3~1:1~3:1の範囲の重量比でDPUとUUとの組み合わせを使用する、ダイレクトサーマル記録媒体の例がそこに提供される。実施例は、標準的なダイレクトサーマル印刷条件下で最初に印刷された場合、許容可能な画像品質(少なくとも1.5のANSI)を示し、また、乾燥熱、可塑剤フィルムとの接触、室温水浸漬、沸騰水、40℃/90%RH、日光、及び液体手指消毒剤との接触を含む様々な環境試験に供された場合、ほとんどが許容可能な画像品質(少なくとも1.5のANSI)を示す。
【0050】
DPU/UUの組み合わせとは対照的に、以下の例は、N、N’-ジフェニル尿素の誘導体である他の非フェノール顕色剤(NKK-1304、TGMD、及びS-176を含む)が、層114中の唯一の顕色剤として成功裏に使用され、標準的なダイレクトサーマル印刷条件下で印刷された場合、鮮明なサーマル画像を生成し得ることを実証する。あるいは、必要に応じて、これらの顕色剤は、層114中で、互いに、又は他の非フェノール顕色剤と組み合わせて使用され得る。DPUとUUとの組み合わせを伴う場合を除き、層114は、好ましくは、N,N’-ジフェニル尿素の誘導体でないいずれの顕色剤も実質的に含まない。
【0051】
図1Bに戻ると、任意選択的な保護トップコート116を感熱層114に塗布して、擦れなどの取り扱いに対する耐久性を改善し得、水分散性及び高品質のサーマル印刷の製品特徴を保持しながら、製品に追加し得る。トップコート116は、従来の設計のものであり得、例えば、変性又は未変性ポリビニルアルコールなどの結合剤、アクリル結合剤、架橋剤、潤滑剤、及びアルミニウム三水和物及び/又はシリカなどの充填剤を含む。
【0052】
基材110の反対面では、感圧接着剤(PSA)又は他の接着剤材料などの任意選択的な接着層118が、記録材料104が自己接着性ラベルとして使用されることを可能にするために、主表面110bに塗布され得る。このような接着剤は、好ましくは、それ自体が水分散性又は水溶解性であり、使用後、例えばダイレクトサーマル印刷後に、ラベル全体が容易に洗い流され得、ユーザによって取り付けられた加工品から完全に除去される。接着剤は、任意選択的な剥離ライナー120によって剥離可能に支持又は担持され得る。ラベル製品の場合、ユーザは、ダイレクトサーマル層114中にサーマル画像を形成した後、剥離ライナー120を取り外し得、そのように印刷されたラベルを、接着層118を用いて容器又は他の好適な加工品に貼付し得る。使用後、ラベルは、最小限又は穏やかな撹拌を用いて水を適用することによって、容器表面を元の状態に戻すためにラベルを分解させることによって、容器から完全に除去され得る。
【実施例
【0053】
実施例1:一般的に図1Bに示されるが、層118及び120を含まない記録材料を作製し、試験した。使用された基材110は、上記参照のNeenah Dispersa(商標)分散性紙、製品コード7630P0であった。次いで、ベースコート112を、6グラム/平方メートル(gsm)のコート重量で主表面110aに塗布した。ベースコートの配合は、以下の通りであった(全ての部は、別段の記載がない限り、重量によるものである):
水: 40.5部
鉱物顔料1A: 21.5部
水中19.5%の固形分のHSP: 26.3部
水中50%の固形分のラテックス: 11.5部
【0054】
鉱物顔料1Aは、焼成粘土(Thiele Kaolin CompanyによるKaocal)であった。使用されたHSPは、名目上1.6マイクロメートルの平均直径を有する、Dow ChemicalによるRopaque TH-2000AFであった。使用されたラテックスは、SBRラテックス(Trinseo LLC.によるLIGOS KX4505)であった。
【0055】
乾燥後、感熱層114をベースコートの暴露された表面に塗布した。層を、以下のコーティング配合を使用して作製した。
分散液A(ロイコ染料): 22.0部
分散液B(顕色剤): 38.0部
結合剤、ポリビニルアルコールの10%水溶液: 25.0部
充填剤スラリー、水中30%: 15.0部
ここで、(ロイコ染料又は発色性材料を含む)分散液Aは:
ODB-2(2-アニリノ-3-メチル-6-ジブチルアミノフルオラン):30.0部
結合剤、ポリビニルアルコールの20%水溶液): 25.0部
消泡剤及び分散剤: 0.4部
水: 44.6部
(顕色剤を含む)分散液Bは:
NKK-1304(日本曹達株式会社): 38.0部
結合剤、ポリビニルアルコールの20%水溶液: 18.0部
消泡剤及び分散剤: 0.4部
水: 43.6部
【0056】
NKK-1304の化学式を上記に示す。この配合物を、2.0gsmのコート重量でベースコートに塗布して、感熱層114を形成した。
【0057】
乾燥後、トップコート116を感熱層の暴露された表面に塗布した。この層を、以下のコーティング配合を使用して作製した:
充填剤スラリー、水中30%の水酸化アルミニウム: 23.0部
10%の量のポリビニルアルコール水溶液: 63.0部
水中44%の量の亜鉛状態: 1.0部
架橋剤、水中12.5%: 13.0部
【0058】
この配合物を、1.5gsmのコート重量で感熱層に塗布して、トップコート116を形成した。
【0059】
実施例1-SS:基材として、Neenah Dispersa(商標)分散性紙の代わりにSmartSolve IndustriesのSmartSolve(商標)3ポイント(「3pt」)水分散性(「水溶性」)紙を使用したことを除いて、実施例1と同様にして記録材料を作製した。
【0060】
実施例2:分散液Bでは、NKK-1304の代わりに顕色剤TGMD(日本化薬株式会社)を使用したことを除いて、実施例1と同様に記録材料を作製した。TGMDの化学式を上記に示す。
【0061】
実施例2-SS:基材として、Neenah Dispersa(商標)分散性紙の代わりに上記参照の3pt.SmartSolve(商標)分散性紙を使用したことを除いて、実施例2と同様に記録材料を作製した。
【0062】
実施例3:分散液Bでは、NKK-1304の代わりに顕色剤S-176(三光株式会社)を使用したことを除いて、実施例1と同様に記録材料を作製した。S-176の化学式を上記に示す。
【0063】
実施例3-SS:基材として、Neenah Dispersa(商標)分散性紙の代わりに上記参照の3pt.SmartSolve(商標)分散性紙を使用したことを除いて、実施例3と同様に記録材料を作製した。
【0064】
実施例4:分散液Bでは、NKK-1304をUU(ケミプロ化成株式会社)とDPUとの50/50溶液に置換したことを除いて、実施例1と同様に記録材料を作製した。UU及びDPUの化学式を上記に示す。
【0065】
比較実施例5:分散液Bでは、顕色剤NKK-1304を以下の式によって表される4-ヒドロキシフェニル-4-イソプロポキシフェニルスルホン(商標名「D-8」)に置換したことを除いて、実施例1と同様に記録材料を作製した。
【化3】
【0066】
比較実施例5-SS: 基材として、Neenah Dispersa(商標)分散性紙の代わりに上記参照の3pt.SmartSolve(商標)分散性紙を使用したことを除いて、比較実施例5と同様に記録材料を作製した。
【0067】
比較実施例6:分散液Bでは、顕色剤NKK-1304を以下の式によって表される4-ヒドロキシフェニルスルホン(商標名「BPS」)に置換したことを除いて、実施例1と同様に記録材料を作製した。
【化4】
【0068】
比較実施例7:分散液Bでは、顕色剤NKK-1304を以下の式によって表される4-ベンジルオキシフェニル-4’-ヒドロキシフェニルスルホン(商標名「BPS-MBE」)に置換したことを除いて、実施例1と同様に記録材料を作製した。
【化5】
【0069】
比較実施例8:分散液Bでは、顕色剤NKK-1304を以下の式によって表される2,2’-ジアリル-4,4’スルホニルジフェノール(商標名「TGSH」)に置換したことを除いて、実施例1と同様に記録材料を作製した。
【化6】
【0070】
比較実施例8-SS: 基材として、Neenah Dispersa(商標)分散性紙の代わりに上記参照の3pt.SmartSolve(商標)分散性紙を使用したことを除いて、比較実施例8と同様に記録材料を作製した。
【0071】
比較実施例9:分散液Bでは、顕色剤NKK-1304を以下の式によって表される1-ブチル-3-(4-メチルフェニル)スルホニル尿素(商標名「トルブタミド」)に置換したことを除いて、実施例1と同様に記録材料を作製した。
【化7】
【0072】
比較実施例10:分散液Bでは、顕色剤NKK-1304を以下の式によって表されるSolenis LLCのN-(p-トルエンスルホニル)-N’-(3-p-トルエンスルホニルオキシフェニル)尿素(商標名「Pergafast 201」)に置換したことを除いて、実施例1と同様に記録材料を作製した。
【化8】
【0073】
比較実施例10-SS: 基材として、Neenah Dispersa(商標)分散性紙の代わりに上記参照の3pt.SmartSolve(商標)分散性紙を使用したことを除いて、比較実施例10と同様に記録材料を作製した。
【0074】
分散性紙基材を「標準」(水分散性でもなく水溶解性でもない)紙基材に置換した追加の比較実施例も製作した。使用された標準紙基材は、62gsmの坪量を有するコーティングされていないフリーシートであった。参考のために、これらの比較実施例を指定するために接尾辞「-Std」を使用する。したがって、Dispersa(商標)基材を標準紙基材に置換したことを除いて、実施例1と実質的に同じダイレクトサーマル記録材料を作製し、比較実施例1-Stdと称し、同様に実施例2、3、及び4についても、対応する比較実施例(Dispersa(商標)基材ではなく標準紙基材を含有する)をそれぞれ比較実施例2-Std、3-Std、4-Stdと称する。同様に、Dispersa(商標)基材を標準紙基材に置換したことを除いて、比較実施例5と同様のダイレクトサーマル記録材料を作製し、比較実施例5-Stdと称し、比較実施例6、7、8、9、及び10についても同様にした。
【0075】
便宜上、上記の実施例及び比較実施例の適切な特性を、表1に要約する。
【表6】
【0076】
表1の試料は全て、フェノールを含まない又は実質的にフェノールを含まなかった。次いで、上記実施例及び比較実施例のダイレクトサーマル記録材料の試料を、様々な試験及び測定に供した。
【0077】
第1の試験では、Zebra(商標)モデル140-401サーマルプリンタを使用して、工場出荷時のデフォルトの熱設定(公称11.7mJ/mm)で6ipsの標準速度で、試料にダイレクトサーマルバーコード画像を与えた。次いで、波長650nmで動作する較正されたTruCheck(商標)バーコード検証器、モデルTC-843を使用して、米国規格協会(ANSI)のバーコード方法に従って得られたバーコード画像の品質を評価し、また波長670nmで動作する較正されTruCheck(商標)バーコード検証器、モデルTC-854を使用して別途測定した。これらのデバイスの各々の出力を、試験されたバーコード画像の「初期」ANSI値と称する。少なくとも1.5のANSI値は、合格スコア、すなわち、画像が機械的バーコード読み取りに信頼できることを示す。1.5未満のANSI値は、不合格スコアであり、機械的バーコード読み取り機を使用して画像を確実に読み取ることができないことを示す。試料に対して実施した全ての関連する試験では、2つの別個のANSI値(1つは、TC-843を用いて650nmで測定され、他方は、TC-854を用いて670nmで測定された)は一致していた、すなわち、それらは両方とも「合格」(少なくとも1.5)又は両方とも「不合格」(1.5未満)であった。
【0078】
上記の様式でサーマル印刷された試料のいくつかを、次いで、「熱のみ」の試験に供した。ここでは、ダイレクトサーマル画像で画像化された所定の試料を、60℃の熱風の温度制御された環境に24時間置き、次いで、取り出し、周囲の室温に冷却した。温度制御された環境における湿度は、低く、20%RH未満であった。次いで、画像の品質を、TruCheckデバイスを使用して再測定した。
【0079】
試料の一部を、「40/90後」試験に供した。ここでは、上記のようなダイレクトサーマル画像で既に画像化されたが、「熱のみ」の試験に供されていない所定の試料を、温度及び湿度が制御されたチャンバー内に配置した。温度を40℃に制御し、相対湿度を90%に制御した。チャンバー内での24時間後、試料を取り出し、周囲の室温に冷却し、画像の品質を、TruCheckデバイスを使用して再測定した。
【0080】
試料の一部を、「60/90後」試験に供した。これは、「40/90後」試験と実質的に同じであった(既にサーマル画像化されていたが、それ以外では加熱された環境に暴露されていなかった試料で実施した)が、チャンバーは、60℃の温度及び90%の相対湿度に制御された。高温高湿の環境から取り出し、冷却させた後、画像の品質を、TruCheckデバイスを使用して再測定した。
【0081】
試料の一部を、「40/90前」試験に供した。ここでは、まだ画像化されておらず、「熱のみ」の試験又は任意の他の加熱環境に供されていない所定の試料を、温度及び湿度が制御されたチャンバー内に配置した。温度を40℃に制御し、相対湿度を90%に制御した。チャンバー内での24時間後、試料を取り出し、周囲の室温に冷却した。次いで、上記の同じZebra(商標)140-401サーマルプリンタ、同じ印刷設定を使用して、試料にダイレクトサーマルバーコード画像を与えた。そのようにして作製された画像の品質を、上記の上述のTruCheckデバイスを使用して測定した。
【0082】
これらの試験の結果は、以下の通りであった。
【表7】
【0083】
表2の結果は、従来の紙基材を使用した試料について、画像退色又は画像形成の問題が存在しなかったことを実証している。
【表8】
【0084】
表3の結果は、Dispersaブランドの水分散性基材を使用して、フェノールを含まないダイレクトサーマル記録材料を作製した場合、全ての試料が初期試験及び「熱のみ」の試験に合格したが、N,N’-ジフェニル尿素の誘導体を含む顕色剤を使用した試料のみが、拡張された高熱/高湿試験に関連する許容可能でない画像退色問題及び許容可能でない画像形成の問題を回避したことを実証している。
【表9】
【0085】
表4の結果は、表3の結果と同様であり、SmartSolveブランドの水分散性基材を使用して、フェノールを含まないダイレクトサーマル記録材料を作製した場合、全ての入手可能な試料が初期試験及び「熱のみ」の試験に合格したが、N,N’-ジフェニル尿素の誘導体を含む顕色剤を使用した試料のみが、拡張された高熱/高湿試験に関連する許容可能でない画像退色問題及び許容可能でない画像形成の問題を回避したことを実証している。
【表10】
【0086】
表5における「初期」及び「熱のみ」の結果は、表3から単に繰り返されるが、最後の列の「60/90後」の結果は、感熱層中の顕色剤にS-176を使用する実施例3が、その点で、他の3つの実施例よりも更に堅牢であることを実証する。
【0087】
本開示の前述の発明を実施するための形態では、本明細書の一部を形成する添付の図面が参照され、例示として、開示の少なくともいくつかの実施例がどのように実施され得るかが示されている。これらの実施例は、当業者が本発明を実施することを可能にするのに十分に詳細に記載されている。
【0088】
別段の指示がない限り、本明細書又は特許請求の範囲で使用される量、測定された特性などを表す全ての数値は、「約」という用語によって修正されるものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、近似値であり、本明細書の教示を利用して当業者が取得しようとする所望の特性に応じて変化し得る。等価物の見解の適用を特許請求の範囲に限定するものではないが、各数値パラメータは、少なくとも報告された有意な桁の数に照らし合わせて、かつ通常の四捨五入技法を適用することによって解釈されるべきである。
【0089】
様々な実施形態を説明するための「トップ」、「ボトム」、「上部」、「下部」、「上」、「下」などの関係用語の使用は、本明細書のいくつかの実施形態の説明を容易にするために便宜上のみ使用される。このような用語の使用にもかかわらず、本開示は、任意の特定の方向又は相対位置に限定されるものとして解釈されるべきではなく、むしろ、上記のものに加えて、任意の方向及び相対位置を有する実施形態を包含することが理解されるべきである。
【0090】
本発明の様々な修正及び変更は、本明細書に記載される例示的な実施形態に限定されず、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。読者は、別段の指示がない限り、1つの開示される実施形態の特徴も、他の全ての開示される実施形態に適用され得ると想定すべきである。
図1A
図1B
図2