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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】半導体を用いた回路遮断器
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/16 20060101AFI20241021BHJP
   H03K 17/693 20060101ALI20241021BHJP
   H02H 7/00 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
H03K17/16 M
H03K17/693 D
H02H7/00 B
H03K17/16 F
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023539772
(86)(22)【出願日】2022-02-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 KR2022095028
(87)【国際公開番号】W WO2022211605
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】10-2021-0040462
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】593121379
【氏名又は名称】エルエス、エレクトリック、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LS ELECTRIC CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】127,LS-ro,Dongan-gu,Anyang-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【復代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100232275
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 宣喜
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ドンジン
(72)【発明者】
【氏名】シム,ジョンウク
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ウォンヒョブ
(72)【発明者】
【氏名】カン,ソンヒ
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0014197(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0024069(KR,A)
【文献】特開2011-139553(JP,A)
【文献】特開2020-099039(JP,A)
【文献】特表2022-515499(JP,A)
【文献】特表2022-533840(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0365345(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/16
H03K 17/693
H02H 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統と負荷間に配置される半導体回路遮断器(Solid State Circuit Breaker)において、
前記電力系統と前記半導体回路遮断器を物理的に接離する遮断スイッチと、
互いに直列に接続される、前記電力系統にドレイン端子が接続される第1半導体スイッチ及び前記負荷にドレイン端子が接続される第2半導体スイッチ、並びに各半導体スイッチのソース端子とドレイン端子にそれぞれアノードとカソードが接続される第1及び第2ダイオードを有する半導体スイッチ部と、
前記第1半導体スイッチのドレイン端子と前記第2半導体スイッチのソース端子を接続する迂回電路と、
前記遮断スイッチにより前記電力系統と前記半導体回路遮断器が接続されると、前記第1及び第2半導体スイッチがオフになった状態で、前記迂回電路と前記第2ダイオードを介して前記電力系統の電流が前記負荷に供給されるように前記迂回電路を閉鎖し、所定条件が満たされると、前記半導体スイッチ部を経由して前記電力系統と前記負荷が接続される第1電路が形成されるように、前記第1及び第2半導体スイッチをオンにし、かつ前記第1電路を介して前記電力系統の電流が前記負荷に供給されるように、前記迂回電路を開放する制御部と、を含み、
前記迂回電路は、前記電力系統と負荷の初期接続時に発生する突入電流を抑制する少なくとも1つの突入電流抑制抵抗を含むことを特徴とする半導体回路遮断器。
【請求項2】
前記迂回電路は、
迂回スイッチにより前記迂回電路の開放又は閉鎖が制御され、
前記迂回スイッチは、
所定速度以上のスイッチング速度を有する高速スイッチ(Fast Switch, FS)であることを特徴とする請求項1に記載の半導体回路遮断器。
【請求項3】
前記迂回電路は、
前記第1及び第2半導体スイッチがオフになった状態で、前記第1半導体スイッチのドレイン端子に前記電力系統の電流が供給されると、供給される電流を前記迂回電路に誘導し、逆電圧による電流逆流を防止する誘導ダイオードをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体回路遮断器。
【請求項4】
前記電力系統から流入する電流を測定する電流センサをさらに含み、
前記制御部は、
前記電流センサの測定の結果、前記電力系統と負荷間の電流レベルが定格電流レベルに回復すると、前記所定条件が満たされたと判断することを特徴とする請求項1に記載の半導体回路遮断器。
【請求項5】
前記制御部は、
前記電流センサの計測の結果、前記電力系統と負荷間の電流レベルが定格電流レベルに所定時間以上回復しなければ、前記遮断スイッチを制御して前記半導体回路遮断器を前記電力系統から遮断することを特徴とする請求項に記載の半導体回路遮断器。
【請求項6】
前記制御部は、
前記迂回電路が閉鎖された時点から所定時間経過すると、前記所定条件が満たされたと判断することを特徴とする請求項1に記載の半導体回路遮断器。
【請求項7】
前記半導体スイッチ部と並列に接続され、回路の接続が遮断されると前記回路の接続遮断により前記半導体スイッチ部の両端において発生する残留電流を消費するように形成されるTVS(Transient Voltage Suppressor)素子をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体回路遮断器。
【請求項8】
前記第1及び第2半導体スイッチは、
ソース端子とドレイン端子が逆方向に配置され、互いに直列に接続されたN-channel MOSFET素子で構成されることを特徴とする請求項1に記載の半導体回路遮断器。
【請求項9】
電力系統と負荷との間に配置され、互いに直列に接続される第1半導体スイッチと第2半導体スイッチとを含む半導体スイッチ部を含む半導体回路遮断器(Solid State Circuit Breaker)の制御方法において
遮断スイッチを制御して前記電力系統と前記半導体回路遮断器を接続するステップと、
前記電力系統にドレイン端子が接続される前記第1半導体スイッチのドレイン端子と、前記負荷にドレイン端子が接続される前記第2半導体スイッチのソース端子を接続する迂回電路を閉鎖し、前記第2半導体スイッチのソース端子とドレイン端子にそれぞれアノードとカソードが接続される第2ダイオードを介して、前記電力系統の電流を前記負荷に供給するステップと、
所定条件を満たすか否かを検出するステップと、
前記所定条件を満たすか否かに応じて、前記第1及び第2半導体スイッチをオンにし、前記第1及び第2半導体スイッチを経由して前記電力系統と負荷が接続される第1電路を形成するステップと、
前記第1電路を介して前記電力系統の電流が前記負荷に供給されるように前記迂回電路を開放するステップとを含み、
前記半導体回路遮断器が、前記半導体スイッチ部と並列に接続され、回路の接続が遮断されると前記回路の接続遮断により前記半導体スイッチ部の両端において発生する残留電流を消費するように形成されるTVS(Transient Voltage Suppressor)素子をさらに含み、
前記迂回電路は、前記電力系統と負荷の初期接続時に発生する突入電流を抑制する少なくとも1つの突入電流抑制抵抗を含むことを特徴とする半導体回路遮断器の制御方法。
【請求項10】
前記迂回電路は、
迂回スイッチにより前記迂回電路の開放又は閉鎖が制御され、
前記迂回スイッチは、
所定速度以上のスイッチング速度を有する高速スイッチ(Fast Switch, FS)であることを特徴とする請求項に記載の半導体回路遮断器の制御方法。
【請求項11】
前記迂回電路は、
前記第1及び第2半導体スイッチがオフになった状態で、前記第1半導体スイッチのドレイン端子に前記電力系統の電流が供給されると、供給される電流を前記迂回電路に誘導し、逆電圧による電流逆流を防止する誘導ダイオードをさらに含むことを特徴とする請求項に記載の半導体回路遮断器の制御方法。
【請求項12】
前記電力系統から流入する電流を測定する電流センサをさらに含み、
前記所定条件を満たすか否かを検出するステップは、
前記電流センサの測定の結果、前記電力系統と負荷間の電流レベルが定格電流レベルに回復すると、前記所定条件が満たされたと判断するステップであることを特徴とする請求項に記載の半導体回路遮断器の制御方法
【請求項13】
前記所定条件を満たすか否かを検出するステップは、
前記電流センサの計測の結果、検出される電流レベルが定格電流レベルを超える時間を検出するステップと、
前記検出した時間が所定時間であるか否かを判別するステップと、
前記判別した結果に応じて、前記遮断スイッチを制御して前記半導体回路遮断器を前記電力系統から遮断するステップとをさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の半導体回路遮断器の制御方法。
【請求項14】
前記所定条件を満たすか否かを検出するステップは、
前記迂回電路が閉鎖された時点から経過した時間を検出するステップと、
前記検出した時間が所定時間以上であれば前記所定条件が満たされたと判断するステップとをさらに含むことを特徴とする請求項に記載の半導体回路遮断器の制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路遮断器に関し、特に電力用半導体スイッチを用いた半導体回路遮断器(SSCB)に関する。
【背景技術】
【0002】
電力を供給する電力系統に故障が発生すると、電力系統を介して過電流や事故電流などの異常電流が負荷に流入する。また、流入した異常電流は、負荷の焼損を引き起こす。よって、電力系統の故障が発生した際に前記異常電流が負荷に流入することを防止するために、負荷への電流流入を遮断するように、電力系統から負荷を遮断する回路遮断器(Circuit Breaker)が用いられる。
【0003】
一方、従来の機械式遮断器においては、回路が遮断されるまでに数十msecという比較的長い時間がかかり、その間に異常電流が負荷に流入するという問題があった。よって、最近は、大電流を導通させることができ、高速のスイッチング周波数を有する電力用半導体からなるスイッチを含むことにより高速の電流遮断が可能な半導体回路遮断器(SSCB)が用いられている。このような半導体回路遮断器は、前記電力用半導体を用いて電気的に回路の接続を遮断するので、回路遮断速度が非常に速いという利点がある。
【0004】
しかし、半導体回路遮断器は、回路遮断速度が非常に速いので、過電流に対する感度が高い。よって、電力系統と負荷の接続が行われて回路が形成される際に、すなわち動作電源が供給されることにより負荷が起動を始める際に(初期起動時)、電力系統と負荷間に流れる電流が一時的に大幅に増加する突入電流が発生すると、それを事故電流と判断して回路を遮断する誤動作が行われる可能性がある。
【0005】
一方、通常の半導体回路遮断器は、電源側(電力系統)と負荷間に配置される少なくとも1つの半導体スイッチで構成される。また、電源側又は負荷側において故障が発生すると、前記電力用半導体スイッチがオフ(off)になり、電源側と負荷側の接続を遮断する。よって、負荷側又は電源側に異常電流が流入することを防止することができる。
【0006】
しかし、このように半導体スイッチにより回路を断線させると、既に流入している異常電流により前記半導体スイッチの両端の電圧が上昇する。よって、通常の半導体回路遮断器は、図1に示すスナバ(snubber)回路15及びフリーホイール(free wheeling)回路16a、16bのように、残留電流による電圧上昇を抑制する少なくとも1つの付加回路をさらに含むように形成される。
【0007】
図1に示すように、スナバ回路15は、主回路(半導体スイッチが直列に接続された回路10)に並列に配置され、直列に接続されるコンデンサCsと、抵抗Rsとを含む。ここで、双方向に流れる異常電流を全て遮断できるように、半導体スイッチは、互いに逆方向に配置されたダイオードを含み、スナバ回路15は、抵抗Rsを中心にその両側にそれぞれコンデンサCsが備えられる。よって、異常電流による回路遮断時に、いずれかのコンデンサCsに蓄電されたエネルギーが抵抗Rsに放電されるので、残留電流によるエネルギーが消費される。
【0008】
また、図1に示す半導体回路遮断器は、順方向ダイオードDfと接地に接続された抵抗Rfが直列に接続される第1フリーホイール回路16a及び第2フリーホイール回路16bを備える。ここで、異常電流により回路が遮断されると、回路の遮断により残留した電流は、フリーホイール回路16a、16bに流れ、フリーホイール回路に含まれるダイオードと抵抗によりエネルギーが消費される。
【0009】
しかし、フリーホイール回路16a、16bにおいて、より大きな残留電流エネルギーが消費されるようにするためには、より抵抗値の高い抵抗が求められるので、サイズの大きな抵抗が必要になるという問題がある。また、スナバ回路15において、消費可能なエネルギーの大きさはコンデンサCsのキャパシタンス(capacitance)に応じて決まるので、大きな残留電流エネルギーを消費させるためには、サイズの大きなコンデンサが必要になるという問題がある。よって、残留エネルギーを十分に消費させるためには、フリーホイール回路及びスナバ回路のサイズが大きくなるという問題がある。
【0010】
一方、通常の半導体回路遮断器の動作シーケンスのように、機械的スイッチ(例えば、リレースイッチ)により半導体回路遮断器と電力系統を先に接続し、半導体スイッチをオンにして負荷と電力系統を接続すると、前記機械的スイッチにより接続された電力系統から先に流入した電流がスナバ回路15に蓄電される。また、回路の接続のために前記半導体スイッチがオンになると、スナバ回路15に蓄電された電流が放電される。
【0011】
一方、前記半導体スイッチがオンになると、負荷の初期起動による突入電流が発生する。また、突入電流が発生した状態で、スナバ回路15から蓄積された電流が放電されると、スナバ回路15の抵抗Rsで消費されるエネルギーの限界値を越えることがある。よって、通常のシーケンスで半導体回路遮断器が動作する場合、突入電流により前記半導体回路遮断器が誤動作を起こす可能性が高くなるという問題がある。
【0012】
また、前述したように放電される電流による放電電流現象は、半導体回路遮断器の内部に流れる電流を増加させるので、前記半導体回路遮断器に制御シーケンスエラーなどを引き起こす可能性があるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題及び他の問題を解決することを目的とし、回路遮断による残留電流エネルギーの消費性能に優れ、サイズが小さい半導体回路遮断器及びその半導体回路遮断器の制御方法を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、通常の動作シーケンスで動作する場合に放電電流が発生しないようにすることにより、半導体回路遮断器の誤動作の可能性を低減することのできる半導体回路遮断器及びその半導体回路遮断器の制御方法を提供することを目的とする。
【0015】
さらに、本発明は、電力系統と負荷の接続が行われて回路が形成される際に発生する突入電流により回路が遮断される誤動作を防止することのできる半導体回路遮断器及びその半導体回路遮断器の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的又は他の目的を達成するために、本発明の一態様によれば、本発明は、電力系統と負荷間に配置される半導体回路遮断器において、前記電力系統と前記半導体回路遮断器を物理的に接離する遮断スイッチと、前記電力系統にドレイン端子が接続される第1半導体スイッチ、前記負荷にドレイン端子が接続される第2半導体スイッチ、並びに各半導体スイッチのソース端子とドレイン端子にそれぞれアノードとカソードが接続される第1及び第2ダイオードを有する半導体スイッチ部と、前記第1半導体スイッチのドレイン端子と前記第2半導体スイッチのソース端子を接続する迂回電路と、前記遮断スイッチにより前記電力系統と前記半導体回路遮断器が接続されると、前記第1及び第2半導体スイッチがオフになった状態で、前記迂回電路と前記第2ダイオードを介して前記電力系統の電流が前記負荷に供給されるように前記迂回電路を閉鎖し、所定条件が満たされると、前記半導体スイッチ部を経由して前記電力系統と前記負荷が接続される第1電路が形成されるように、前記第1及び第2半導体スイッチをオンにし、かつ前記第1電路を介して前記電力系統の電流が前記負荷に供給されるように、前記迂回電路を開放する制御部とを含むことを特徴とする。
【0017】
一実施形態において、前記迂回電路は、迂回スイッチにより前記迂回電路の開放又は閉鎖が制御され、前記迂回スイッチは、所定速度以上のスイッチング速度を有する高速スイッチ(Fast Switch, FS)であることを特徴とする。
【0018】
一実施形態において、前記迂回電路は、前記電力系統と負荷の初期接続時に発生する突入電流を抑制する少なくとも1つの突入電流抑制抵抗をさらに含むことを特徴とする。
【0019】
一実施形態において、前記迂回電路は、前記第1及び第2半導体スイッチがオフになった状態で、前記第1半導体スイッチのドレイン端子に前記電力系統の電流が供給されると、供給される電流を前記迂回電路に誘導し、逆電圧による電流逆流を防止する誘導ダイオードをさらに含むことを特徴とする。
【0020】
一実施形態において、前記電力系統から流入する電流を測定する電流センサをさらに含み、前記制御部は、前記電流センサの測定の結果、前記電力系統と負荷間の電流レベルが定格電流レベルに回復すると、前記所定条件が満たされたと判断することを特徴とする。
【0021】
一実施形態において、前記制御部は、前記電流センサの計測の結果、前記電力系統と負荷間の電流レベルが定格電流レベルに所定時間以上回復しなければ、前記遮断スイッチを制御して前記半導体回路遮断器を前記電力系統から遮断することを特徴とする。
【0022】
一実施形態において、前記制御部は、前記迂回電路が閉鎖された時点から所定時間経過すると、前記所定条件が満たされたと判断することを特徴とする。
【0023】
一実施形態において、前記半導体スイッチ部と並列に接続され、回路の接続が遮断されると前記回路の接続の遮断により前記半導体スイッチ部の両端において発生する残留電流を消費するように形成されるTVS(Transient Voltage Suppressor)素子をさらに含むことを特徴とする。
【0024】
一実施形態において、前記第1及び第2半導体スイッチは、ソース端子とドレイン端子が逆方向に配置され、互いに直列に接続されたN-channel MOSFET素子で構成されることを特徴とする。
【0025】
また、本発明は、電力系統と負荷間に配置される半導体回路遮断器の制御方法において、遮断スイッチを制御して前記電力系統と前記半導体回路遮断器を接続するステップと、前記電力系統にドレイン端子が接続される第1半導体スイッチのドレイン端子と、前記負荷にドレイン端子が接続される第2半導体スイッチのソース端子を接続する迂回電路を閉鎖し、前記第2半導体スイッチのソース端子とドレイン端子にそれぞれアノードとカソードが接続される第2ダイオードを介して、前記電力系統の電流を前記負荷に供給するステップと、所定条件を満たすか否かを検出するステップと、前記所定条件を満たすか否かに応じて、前記第1及び第2半導体スイッチをオンにし、前記第1及び第2半導体スイッチを経由して前記電力系統と負荷が接続される第1電路を形成するステップと、前記第1電路を介して前記電力系統の電流が前記負荷に供給されるように前記迂回電路を開放するステップとを含むことを特徴とする。
【0026】
一実施形態において、前記迂回電路は、迂回スイッチにより前記迂回電路の開放又は閉鎖が制御され、前記迂回スイッチは、所定速度以上のスイッチング速度を有する高速スイッチ(Fast Switch, FS)であることを特徴とする。
【0027】
一実施形態において、前記迂回電路は、前記電力系統と負荷の初期接続時に発生する突入電流を抑制する少なくとも1つの突入電流抑制抵抗をさらに含むことを特徴とする。
【0028】
一実施形態において、前記迂回電路は、前記第1及び第2半導体スイッチがオフになった状態で、前記第1半導体スイッチのドレイン端子に前記電力系統の電流が供給されると、供給される電流を前記迂回電路に誘導し、逆電圧による電流逆流を防止する誘導ダイオードをさらに含むことを特徴とする。
【0029】
一実施形態において、前記電力系統から流入する電流を測定する電流センサをさらに含み、前記所定条件を満たすか否かを検出するステップは、前記電流センサの測定の結果、前記電力系統と負荷間の電流レベルが定格電流レベルに回復すると、前記所定条件が満たされたと判断するステップであることを特徴とする。
【0030】
一実施形態において、前記所定条件を満たすか否かを検出するステップは、前記電流センサの計測の結果、検出される電流レベルが定格電流レベルを超える時間を検出するステップと、前記検出した時間が所定時間であるか否かを判別するステップと、前記判別した結果に応じて、前記遮断スイッチを制御して前記半導体回路遮断器を前記電力系統から遮断するステップとをさらに含むことを特徴とする。
【0031】
一実施形態において、前記所定条件を満たすか否かを検出するステップは、前記迂回電路が閉鎖された時点から経過した時間を検出するステップと、前記検出した時間が所定時間以上であれば前記所定条件が満たされたと判断するステップとをさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
以下、本発明による半導体回路遮断器及びその制御方法の効果について説明する。
【0033】
本発明の実施形態の少なくとも1つによれば、本発明による半導体回路遮断器は、スナバ回路及びフリーホイール回路に代えて、TVS(Transient Voltage Suppressor)素子を用いることにより、回路遮断による残留電流エネルギーを消費させるので、優れたエネルギー消費効果を有すると共に、そのサイズを大幅に小さくすることができるという効果がある。
【0034】
本発明の実施形態の少なくとも1つによれば、本発明による半導体回路遮断器は、電力系統が接続される際の突入電流を抑制する抵抗を備える迂回電路を介して先に前記電力系統と負荷を接続し、突入電流が消滅した後に、半導体スイッチを経由して前記電力系統と負荷を接続することにより、スナバ回路による放電電流が発生しないと共に、前記突入電流により回路が遮断される誤動作を防止することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】通常の半導体回路遮断器の回路構造を示す回路図である。
図2】本発明の実施形態によりTVS素子を備える半導体回路遮断器の回路構造を示す回路図である。
図3】本発明の実施形態による半導体回路遮断器が電力系統と負荷を接続する動作過程を示すフローチャートである。
図4A図3の動作過程により接続される電力系統と負荷間の電流の流れを順次示す概念図である。
図4B図3の動作過程により接続される電力系統と負荷間の電流の流れを順次示す概念図である。
図4C図3の動作過程により接続される電力系統と負荷間の電流の流れを順次示す概念図である。
図4D図3の動作過程により接続される電力系統と負荷間の電流の流れを順次示す概念図である。
図4E図3の動作過程により接続される電力系統と負荷間の電流の流れを順次示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本明細書において用いる技術的用語は、単に特定の実施形態について説明するために用いるものであり、本発明を限定するものではない。また、本明細書において用いる単数表現には、特に断らない限り複数表現が含まれる。以下の説明において用いる構成要素に対する接尾辞である「モジュール」及び「部」は、明細書の作成を容易にするために付与又は混用されるものであり、それ自体が有意性や有用性を有するものではない。
【0037】
本明細書における「構成される」、「含む」などは、本明細書における様々な構成要素又はステップの全てを必ず含むものと解されてはならず、それらのうち一部の構成要素又はステップは含まないこともあり、さらなる構成要素又はステップを含むこともあるものと解されるべきである。
【0038】
また、本明細書に開示される技術について説明するにあたり、関連する公知技術についての具体的な説明が本明細書に開示される技術の要旨を不明にすると判断される場合は、その詳細な説明を省略する。
【0039】
さらに、添付図面は本明細書に開示される実施形態を容易に理解できるようにするためのものにすぎず、添付図面により本明細書に開示される技術的思想が限定されるものではなく、本発明の思想及び技術範囲におけるあらゆる変更、均等物又は代替物が含まれるものと解されるべきである。さらに、以下に説明される各実施形態だけでなく、それらの組み合わせも、本発明の思想及び技術範囲における変更、均等物又は代替物として本発明の思想及び技術範囲に含まれることは言うまでもない。
【0040】
まず、本発明の理解を助けるために、本発明の基本原理について説明する。本発明は、コンデンサや抵抗などの複数の回路構成要素を含むスナバ回路又はフリーホイール回路に代えて、過渡電圧をクランプ(clamp)するTVS(Transient Voltage Suppressor)素子を用いることにより、残留電流エネルギーを消費させるようにする。よって、比較的大きなサイズを有するコンデンサ及び抵抗に代えて、比較的小さなサイズを有するTVS素子を1つのみ備えるので、半導体回路遮断器のサイズを小さくすることができる。
【0041】
また、本発明は、機械的スイッチにより半導体回路遮断器と電力系統が初期接続される際に、突入電流抑制抵抗を備える迂回電路を介して前記電力系統と負荷が接続されるようにすることにより、前記負荷の初期起動時に発生する突入電流が抑制されるようにし、前記突入電流が消滅した後に、前記電力系統と負荷間が半導体スイッチにより接続されるようにする。よって、スナバ回路による放電電流が発生せず、突入電流による半導体回路遮断器の誤動作を防止することができる。
【0042】
図2はこのような本発明の実施形態による半導体回路遮断器の回路構造を示す回路図である。
【0043】
図2に示すように、本発明の実施形態による半導体回路遮断器は、A系統とB系統間に、ターンオン(turn on)/ターンオフ(turn off)を可能にし、互いに直列に接続される第1半導体スイッチ111及び第2半導体スイッチ112を含む半導体スイッチ部110を備える。
【0044】
ここで、A系統とB系統は、異なる電力系統であってもよい。例えば、A系統とB系統は、異なるマイクログリッド(Micro grid)であってもよい。その場合、A系統からB系統へだけでなく、B系統からA系統への双方向の電流の流れが形成される。
【0045】
あるいは、A系統は電力系統であり、B系統は負荷であってもよい。その場合、A系統からB系統への電流の流れが形成される。あるいは、A系統は負荷であり、B系統は電力系統であってもよい。その場合、B系統からA系統への電流の流れが形成される。
【0046】
このような双方向の遮断のために、第1半導体スイッチ111及び第2半導体スイッチ112は、A系統からB系統へ電流が流れる場合だけでなく、B系統からA系統へ電流が流れる場合も、回路を遮断できるように形成される。例えば、第1半導体スイッチ111及び第2半導体スイッチ112は、ソース(source)とドレイン(drain)が互いに逆方向に配置されたN-channel MOSFET素子からなる半導体スイッチであってもよい。
【0047】
しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、第1半導体スイッチ111及び第2半導体スイッチ112としては、制御部110により制御されるゲート電圧によりターンオン/ターンオフが可能なあらゆる素子、例えばIGBT、GTO、IGCTなどを前記MOSFET素子に代えて用いることができることは言うまでもない。しかし、以下の説明では、説明の便宜上、第1半導体スイッチ111及び第2半導体スイッチ112がN-channel MOSFET素子からなるものと仮定して説明する。
【0048】
一方、第1半導体スイッチ111及び第2半導体スイッチ112は、事故電流による回路遮断時の逆電圧によるMOSFET素子の損傷を防ぐために、電流の流れと逆方向に配置される第1ダイオード121及び第2ダイオード122をさらに含む。その場合、MOSFET素子111、112のそれぞれのソース端子とドレイン端子に、第1ダイオード121及び第2ダイオード122のそれぞれのアノードとカソードが接続される。
【0049】
よって、第1ダイオード121は、第1半導体スイッチ111のMOSFET素子と並列に接続され、A系統からB系統へ流れる電流と逆方向に配置される。また、第2ダイオード122は、第2半導体スイッチ112のMOSFET素子と並列に接続され、B系統からA系統へ流れる電流と逆方向に配置される。このように本発明の実施形態による半導体回路遮断器10は、相補対称の形態に構成される第1半導体スイッチ111及び第2半導体スイッチ112を備え、双方向に流れる事故電流を全て遮断できるように形成される。
【0050】
以下の説明では、説明の便宜上、A系統が電力系統であり、B系統が負荷であると仮定して説明する。しかし、前述したように、本発明の実施形態による半導体回路遮断器10は、双方向に流れる事故電流を全て遮断できるように形成されるので、本発明がこれに限定されるものでないことは言うまでもない。
【0051】
一方、遮断スイッチ150は、いずれかの系統から、半導体回路遮断器及び他の系統への接続を遮断することができる。遮断スイッチ150は、機械的スイッチであり、半導体回路遮断器を物理的に分離し、事故が発生した電力系統から他の系統又は負荷を物理的に遮断するものである。
【0052】
遮断スイッチ150は、図2に示すように、A系統と半導体スイッチ部110間に配置される。一方、遮断スイッチ150の位置がこれに限定されるものでないことは言うまでもなく、他の位置(例えば、B系統と半導体スイッチ部110間)に配置されてもよい。
【0053】
一方、第1半導体スイッチ111及び第2半導体スイッチ112は、MOSFETなどの電力用半導体からなるスイッチであり、スイッチング速度が非常に速いのに対して、遮断スイッチ150は、スイッチング速度が遅い。よって、第1半導体スイッチ111及び第2半導体スイッチ112が回路を遮断した後に、遮断スイッチ150が回路を遮断することになるので、半導体回路遮断器内に既に流入している事故電流が残留する(以下、これを残留電流という)。このように回路遮断により発生する残留電流エネルギーを消費させるために、本発明の実施形態による半導体回路遮断器は、TVS素子200を備える。
【0054】
TVS素子200は、出力される電圧を所定レベルの電圧にクランプするクランプ(clamp)素子であり、過渡電圧が印加される際に所定レベル以上の電圧が出力されるのを制限し、回路を保護する素子である。このようなTVS素子200は、アバランシェ(Avalanche)効果により、印加された高電圧をクランプするために伝導することができ、クランプ機能により、損傷が持続することなく、より多くの電流を伝導し、接地することができる。
【0055】
このようにTVS素子200は、過渡電圧を抑制する素子であるが、クランプのために多くの電流を伝導し、接地することができるので、前記回路遮断の際に発生する残留電流エネルギーを消費させることができる。
【0056】
TVS素子200は、半導体スイッチ部110と並列に接続される。よって、第1半導体スイッチ111及び第2半導体スイッチ112により回路が遮断されると、TVS素子200を介して半導体スイッチ部110の両端間が接続される。その場合、TVS素子200により所定レベル以上の電圧出力が制限されるので、TVS素子200を経由して他の系統で発生した地絡又は短絡事故による事故電流が他の系統に流入することが防止される。
【0057】
また、第1ゲートドライバ141及び第2ゲートドライバ142は、制御部100の制御により第1半導体スイッチ111及び第2半導体スイッチ112のゲート端子にそれぞれゲート電圧を印加する。その場合、第1半導体スイッチ111及び第2半導体スイッチ112のそれぞれの閾電圧を越えるゲート電圧が印加されると、第1半導体スイッチ111及び第2半導体スイッチ112の出力端の抵抗の大きさが入力端より小さくなる。
【0058】
よって、第1半導体スイッチ111及び第2半導体スイッチ112の入力端と出力端が導通し、A系統とB系統が電気的に接続される。以下、このように閾電圧以上のゲート電圧が印加されて入力端と出力端が導通することを、半導体スイッチがオン(on)になったという。
【0059】
それに対して、第1ゲートドライバ141及び第2ゲートドライバ142が所定の閾電圧より低いゲート電圧を第1半導体スイッチ111及び第2半導体スイッチ112のゲート端子に印加するか、又はゲート電圧を印加しない場合、第1半導体スイッチ111及び第2半導体スイッチ112の出力端の抵抗の大きさは、入力端の抵抗と同等であるか、又は入力端の抵抗より大きい。
【0060】
よって、第1半導体スイッチ111及び第2半導体スイッチ112の入力端と出力端が導通せず、A系統とB系統が電気的に分離(絶縁)され、接続が遮断される。以下、このように閾電圧未満のゲート電圧が印加されて入力端と出力端が導通しないことを、半導体スイッチがオフ(off)になったという。
【0061】
電流センサ160は、A系統とB系統間に流れる電流の大きさを測定する。また、測定した電流の大きさを制御部100に送信する。よって、電流センサ160の測定の結果、所定の大きさ以上の電流が検出されると、突入電流又は事故電流が発生したと判断する。
【0062】
電流センサ160は、図2に示すように、半導体スイッチ部110とA系統間に配置されるが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、前記電流センサは、半導体スイッチ部110とB系統間に配置されてもよい。
【0063】
一方、本発明の実施形態による半導体回路遮断器は、一半導体スイッチのドレイン端子と他の半導体スイッチのソース端子を接続する迂回電路を備える。すなわち、本発明の実施形態による半導体回路遮断器は、第1半導体スイッチ111のドレイン端子251と第2半導体スイッチ112のソース端子262を接続する第1迂回電路210を備え、第2半導体スイッチ112のドレイン端子261と第1半導体スイッチ111のソース端子252を接続する第2迂回電路220を備える。
【0064】
また、第1迂回電路210は、A系統から流入する突入電流を抑制する少なくとも1つの抵抗(第1抵抗211)を含み、逆電圧による電流逆流を防止し、A系統から流入する電流を第1迂回電路210に誘導する第1誘導ダイオード212を含む。さらに、第2迂回電路220は、B系統から流入する突入電流を抑制する少なくとも1つの抵抗(第2抵抗221)を含み、逆電圧による電流逆流を防止し、B系統から流入する電流を第2迂回電路220に誘導する第2誘導ダイオード222を含む。
【0065】
一方、第1迂回電路210及び第2迂回電路220は、迂回スイッチ231により開閉が制御される。迂回スイッチ231は、所定速度以上のスイッチング速度を有する高速スイッチ(Fast Switch)であり、制御部100の制御により高速で第1迂回電路210及び第2迂回電路220を開閉するように形成される。
【0066】
迂回スイッチ231は、各迂回電路210、222毎に配置されるようにしてもよいが、図2に示すように、各迂回電路210、222が1つの迂回スイッチ231を経由して他の半導体スイッチのソース端子(262又は252)に接続されるように形成され、前記1つの迂回スイッチ231により第1迂回電路210及び第2迂回電路220の開放(open)及び閉鎖(close)が制御されるようにしてもよい。
【0067】
一方、制御部100は、本発明の実施形態による半導体回路遮断器の全般的な動作を制御する。例えば、制御部100は、半導体回路遮断器の駆動が開始されると、A系統とB系統を接続するために、通常の動作シーケンスで、先に遮断スイッチ150をオン(on)にする。そうすると、電流が供給される電力系統と半導体スイッチ部111が接続される。
【0068】
以下、説明の便宜上、A系統は電流を供給する電力系統であると仮定し、B系統は前記電流が供給される負荷が接続される系統であると仮定する。また、遮断スイッチ150がオン(on)になると、回路が接続されるものとし、遮断スイッチ150がオフ(off)になると、回路が遮断されるものとする。
【0069】
一方、遮断スイッチ150がオンになり、A系統と半導体回路遮断器が接続されると、制御部100は、先に迂回スイッチ231を制御して第1迂回電路210を閉鎖する。ここで、各半導体スイッチ111、112はオンになっていない状態、すなわちオフになった状態であるので、第1半導体スイッチ111はオフになった状態であり、第1半導体スイッチ111はA系統と電気的に接続されていない状態である。
【0070】
この状態で、制御部100は、迂回スイッチ231をオン(on)にして前記迂回電路を接続させる。よって、前記A系統から電流が供給されると、供給された電流は、第1迂回電路210を介して第2半導体スイッチ112のソース端子262に供給される。
【0071】
ここで、第2半導体スイッチ112もオフになった状態を維持する。よって、第2半導体スイッチ112は、前記B系統と電気的に接続されていない状態である。
【0072】
しかし、第2半導体スイッチ112に並列に接続された第2ダイオード122は、図2に示すように、第2半導体スイッチ112のソース端子262とドレイン端子261にそれぞれアノードとカソードが接続される。よって、第2半導体スイッチ112のソース端子262に供給された電流は、第2ダイオード122に対して順方向バイアス電圧を形成する。
【0073】
よって、第2ダイオード122を介して第2半導体スイッチ112のソース端子262とドレイン端子261が導通するので、第2ダイオード122を介してB系統、すなわち負荷に供給される。
【0074】
一方、このように第1迂回電路210を介してA系統の電流が供給されると、前記A系統の電流は、第1迂回電路210に含まれる第1抵抗211を経由してB系統に伝達される。よって、B系統、すなわち負荷が電力系統に接続されるので、突入電流が発生すると、前記突入電流は、第1抵抗211によりその大きさが抑制される。よって、前記突入電流により回路が遮断される半導体回路遮断器の誤動作を防止することができる。
【0075】
一方、制御部100は、電流状態が回復するまで、すなわち突入電流が消滅するまで、第1迂回電路210を介してA系統の電流をB系統に供給する状態を維持する。また、突入電流が消滅すると、所定の閾電圧以上のゲート電圧を印加するように各ゲートドライバ141、142を制御する。そうすると、各ゲートドライバ141、142により印加されるゲート電圧により、各半導体スイッチ111、112の入力端と出力端間が導通し、各半導体スイッチ111、112がオン状態に切り替えられる。
【0076】
このように、各半導体スイッチ111、112がオン状態に切り替えられると、制御部100は、迂回スイッチ231を制御して第1迂回電路210を開放する。そうすると、回路開放により第1迂回電路210のインピーダンスが無限大に増加するので、A系統から供給される電流は、第1迂回電路210に代えて各半導体スイッチ111、112の入力端と出力端が導通して形成される電路を経由してB系統に伝達される。
【0077】
図3は本発明の実施形態による半導体回路遮断器が電力系統と負荷を接続する制御部の動作過程を示すフローチャートである。また、図4a~図4eは図3の動作過程により接続される電力系統と負荷間の電流の流れを順次示す概念図である。以下、説明の便宜上、A系統が電力系統であり、B系統が負荷であると仮定して説明する。
【0078】
まず、図3に示すように、本発明の実施形態による半導体回路遮断器の制御部100は、半導体回路遮断器が駆動を開始すると、各半導体スイッチ111、112をオンにしていない状態で、先に遮断スイッチ150をオンにする(S300)。そうすると、遮断スイッチ150により電力系統(A系統)と半導体回路遮断器が接続される。よって、図4aに示すように、A系統から供給される電流が半導体回路遮断器に流入する。
【0079】
次に、制御部100は、各半導体スイッチ111、112がオフになった状態で、迂回電路が閉鎖されるように、迂回スイッチ231をオンにする(S302)。ここで、各半導体スイッチ111、112がオンになっていない状態であるので、第1半導体スイッチ111は、ゲート電圧が印加されていない状態、すなわち入力端と出力端が導通していないオフになった状態である。よって、第1半導体スイッチ111により電路が開放された状態であれば、A系統から供給された電流は、第1誘導ダイオード212に対する順方向バイアス電圧を形成し、第1誘導ダイオード212の順方向に沿って第1迂回電路210に流入する。
【0080】
一方、第1迂回電路210は、突入電流が発生すると突入電流の大きさを抑制する第1抵抗211を含む。よって、図4b及び図4cに示すように、A系統から供給された電流は、第1抵抗211を経てその大きさが抑制され、抑制された大きさの電流が第2半導体スイッチ112のソース端子262に供給される。
【0081】
一方、第2半導体スイッチ112は、ソース端子262とドレイン端子261にそれぞれアノードとカソードが接続される第2ダイオード122を備える。よって、第2半導体スイッチ112のソース端子262に供給された電流は、第2ダイオード122の両極に供給され、第2ダイオード122の順方向バイアス電圧を形成する。よって、第1迂回電路210を介して第2半導体スイッチ112のソース端子262に供給された電流は、第2ダイオード122を介して第2半導体スイッチ112のドレイン端子261に供給されるので、図4dに示すように、第2ダイオード122を介してB系統に出力される。
【0082】
なお、図4dに示すように、第1迂回電路210を介してA系統とB系統が接続されると、B系統、すなわち負荷の初期起動による突入電流が発生する。しかし、第1迂回電路210においては、図2に示すように、前記突入電流を抑制する第1抵抗211を備えるので、突入電流が発生すると、第1抵抗211によりその大きさが抑制される。
【0083】
一方、制御部100は、ステップS302で迂回スイッチ231をオンにし、迂回電路を介してA系統とB系統が接続されると、系統間の初期接続による突入電流が解消されたか否かを検出する(S304)。
【0084】
例えば、制御部100は、電流センサ160の検出結果に基づいて、前記突入電流が解消されたか否かを判断する。ここで、制御部100は、電流センサ160の検出の結果、電流レベルが定格電流レベルに回復していると、突入電流が解消されたと判断する。しかし、仮に、前記電流レベルに所定時間以上回復しなければ、制御部100は、突入電流ではなく、事故電流が発生したと判断し、現状態、すなわち半導体スイッチ111、112がオンになっていない状態で、直ちに遮断スイッチ150をオフにし、接続された系統(例えば、A系統)から半導体回路遮断器を遮断することは言うまでもない。
【0085】
そのために、ステップS304は、検出された電流レベルが定格電流レベルを超える時間を検出するステップと、前述したように検出した時間が所定時間以上であるか否かを判別するステップと、判別結果に応じて、遮断スイッチ150をオフにするステップとをさらに含む。
【0086】
あるいは、制御部100は、所定時間経過したか否かによって、前記突入電流が解消されたか否かを判断するようにしてもよいことは言うまでもない。電力系統と負荷の初期接続時に一時的に発生する突入電流の特性上、所定時間経過すると自然に解消され、電流レベルが回復する。
【0087】
よって、制御部100は、迂回電路を介してA系統とB系統が接続されると、接続が行われた時点、すなわち迂回スイッチ231がオンになった時点から所定時間経過したか否かを検出し、所定時間経過すれば突入電流が解消されたと判断する。
【0088】
そのために、ステップS304は、前記迂回電路が閉鎖された時点から経過した時間を検出するステップと、前述したように検出した時間が所定時間以上であれば前記所定条件が満たされたと判断するステップとをさらに含む。
【0089】
ここで、前記所定時間は、本発明に関連して行われる複数の実験結果に基づいて決定される最適な時間であってもよい。あるいは、ユーザにより任意に設定される時間であってもよい。
【0090】
一方、ステップS304の突入電流が解消されたか否かの判断の結果、突入電流が解消されていなければ、制御部100は、現状態、すなわち迂回電路を介してA系統とB系統が接続された状態を維持する。それに対して、ステップS304の突入電流が解消されたか否かの判断の結果、突入電流が解消されていれば、制御部100は、所定の閾電圧を越えるゲート電圧を印加するように各ゲートドライバ141、142を制御し、半導体スイッチ111、112をオンにする(S306)。そうすると、各半導体スイッチ111、112の入力端と出力端が導通し、各半導体スイッチ111、112を経由してA系統とB系統が電気的に接続される電路が形成される。ここで、図4eに示すように、各半導体スイッチ111、112を経由してA系統とB系統が接続される電路、及び第1迂回電路210の全てを介して、A系統の電流がB系統に供給される。
【0091】
一方、このように各半導体スイッチ111、112を経由してA系統とB系統が接続される電路が形成されると、制御部100は、迂回スイッチ231をオフにする(S308)。そうすると、迂回電路、例えば第1迂回電路210が開放(open)される。そうすると、第1迂回電路210のインピーダンスが無限大になるので、前記A系統から流入する電流は、各半導体スイッチ111、112を経由してA系統とB系統が接続される電路にのみ流入する。よって、図4fに示すように、各半導体スイッチ111、112を経由してA系統とB系統が接続される電路を介して、A系統の電流がB系統に供給される。
【0092】
一方、前述した説明においては、A系統から電流が供給されると仮定し、負荷(B系統)との接続初期に第1迂回電路210を介してA系統の電流がB系統に供給されることについて説明したが、それと同様に、B系統から電流が供給されると、A系統との接続初期に第2迂回電路220を介してB系統の電流がA系統に供給されることは言うまでもない。
【0093】
その場合、前記系統間の接続による突入電流が消滅すると、前述した説明と同様に、制御部100の制御により、迂回スイッチ231がオフになり、第2迂回電路220が開放されるので、B系統から供給される電流は、半導体スイッチ111、112を経由してA系統に伝達される。
【0094】
前述した本発明による半導体回路遮断器を制御する制御部の制御方法は、プログラム記録媒体にコンピュータ可読コードで実現することができる。コンピュータ可読媒体には、コンピュータシステムにより読み取り可能なデータが記録されるあらゆる種類の記憶装置が含まれる。コンピュータ可読媒体には、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Disk)、SDD(Silicon Disk Drive)、ROM、RAM、CD-ROM、磁気テープ、フロッピーディスク、光データ記憶装置などが含まれ、かつ搬送波(例えば、インターネットによる送信)状に実現されるものも含まれる。さらに、前記コンピュータは、半導体回路遮断器の制御部を含んでもよい。
【0095】
よって、前述した詳細な説明はあらゆる面で制限的に解釈されてはならず、例示的なものとして考慮されるべきである。本発明の範囲は請求の範囲の合理的解釈により定められるべきであり、本発明の等価的範囲内でのあらゆる変更が本発明に含まれる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E