(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】腸管毒素原性大腸菌に対する特異的な死滅能を有する新規なバクテリオファージおよびこれを含む抗菌組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 7/00 20060101AFI20241021BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241021BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20241021BHJP
A61P 31/02 20060101ALI20241021BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20241021BHJP
A23K 10/16 20160101ALI20241021BHJP
C02F 1/68 20230101ALI20241021BHJP
C02F 1/50 20230101ALI20241021BHJP
C11D 3/48 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
C12N7/00 ZNA
A61P31/04
A61P31/04 171
A61P1/00
A61P31/02
A61K35/76
A23K10/16
C02F1/68 510B
C02F1/68 520Z
C02F1/50 532Z
C02F1/50 510Z
C11D3/48
(21)【出願番号】P 2023551250
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(86)【国際出願番号】 KR2021007481
(87)【国際公開番号】W WO2022181891
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-08-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0024235
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCCM KCCM12936P
(73)【特許権者】
【識別番号】507406611
【氏名又は名称】シージェイ チェルジェダン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ジョン・ス
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジ・ウン
(72)【発明者】
【氏名】ムン,ジュン・オク
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジョン・ピョ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ユ・ジン
(72)【発明者】
【氏名】イ,スン・ウン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジン・ソン
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-518036(JP,A)
【文献】特表2017-512487(JP,A)
【文献】特表2016-515802(JP,A)
【文献】Food Science of Animal Resources,2020年,vol.40,p.746-757
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 7/00
A61P 1/00
A61P 31/00
A23K 10/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腸管毒素原性大腸菌(Enterotoxigenic Escherichia coli:ETEC)に特異的な死滅能を有し、受託番号KCCM12936Pで寄託されたバクテリオファージCJ_Eco_20-4。
【請求項2】
請求項1に記載のバクテリオファージCJ_Eco_20-4を有効成分として含む腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患の予防または治療用の組成物。
【請求項3】
前記腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患は、大腸菌症である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のバクテリオファージCJ_Eco_20-4を有効成分として含む抗生剤。
【請求項5】
請求項1に記載のバクテリオファージCJ_Eco_20-4を有効成分として含む飼料添加剤。
【請求項6】
請求項5に記載の飼料添加剤を含む飼料。
【請求項7】
請求項1に記載のバクテリオファージCJ_Eco_20-4を有効成分として含む飲用水添加剤。
【請求項8】
請求項7に記載の飲用水添加剤を含む飲用水。
【請求項9】
請求項1に記載のバクテリオファージCJ_Eco_20-4を有効成分として含む消毒剤。
【請求項10】
請求項1に記載のバクテリオファージCJ_Eco_20-4を有効成分として含む洗浄剤。
【請求項11】
請求項1に記載のバクテリオファージCJ_Eco_20-4または請求項2に記載の組成物をヒトを除いた動物に投与する段階を含む、腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患の予防または治療方法。
【請求項12】
前記腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患は大腸菌症である、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、腸管毒素原性大腸菌に対する特異的な死滅能を有する新規なバクテリオファージおよびこれを含む抗菌組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
大腸菌(Escherichia coli、以下、「E.coli」という)は、腸内細菌と(Enterobacteriaceae)、エシェリキア(Escherichia)属に属するグラム陰性の短桿菌で、ほ乳動物をはじめとする様々な動物の腸管内に存在する正常細菌叢の一つである。大腸菌は、ほとんど非病原性で日和見感染を引き起こすことができるが、一部の高病原性菌株は、人をはじめとする動物内で様々な腸疾患および敗血症などを引き起こすと知られている。
【0003】
特に、養豚、養鶏、畜牛など家畜の集団飼育に伴い、大腸菌症は家畜飼育農家で最も一般的で問題視される疾患として浮上しており、大腸菌症発病が増加しながら家畜の下痢による成長遅延および斃死など家畜農家に経済的に大きな損失を招いているのが現状である。大腸菌症を予防および治療するために、様々な抗生剤が使用されてきたが、抗生剤の誤用および乱用、または耐性問題や、動物の体内に残留する可能性など問題が浮上しながら現在は世界的に抗生剤の投与に多くの制限を設けいている。
【0004】
それにより、近年、特定の細菌に感染して細菌の成長を抑制する細菌特異ウイルスのバクテリオファージが抗生剤に比べて宿主特異性が強いことから、新たな抗生剤の代替剤として研究されているが、まだその数が絶対的に不足しているのが現状である。
【0005】
したがって、養豚をはじめとする畜産業において重要な問題となっている腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患を予防および治療するために、幅広い溶菌スペクトルを有し、耐酸性および耐熱性に優れ、産業的に活用の可能性が高い新たなバクテリオファージの開発が持続的に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願の目的は、腸管毒素原性大腸菌に特異的な死滅能を有し、受託番号KCCM12936Pで寄託されたバクテリオファージCJ_Eco_20-4、これを有効成分として含む腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患の予防または治療用組成物、抗生剤、飼料添加剤、飲用水添加剤、消毒剤、または洗浄剤、または、前記飼料添加剤を含む飼料、または、前記飲用水添加剤を含む飲用水を提供することにある。
【0008】
本出願の他の目的は、前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4またはこれを有効成分として含む腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患の予防または治療用組成物を利用した腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患の予防または治療方法を提供することにある。
【0009】
本出願の別の目的は、前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4、またはこれを有効成分として含む腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患の予防または治療用組成物の腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患の予防剤または治療剤製造のための用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願で開示されるそれぞれの説明および実施形態はそれぞれの他の説明および実施形態にも適用することができる。即ち、本出願で開示された様々な要素のすべての組み合わせが本出願の範疇に属する。また、下記記述された具体的な記述によって本出願の範疇が制限されることはない。また、当該技術分野の通常の知識を有する者は、通常の実験のみを用いて、本出願に記載された本出願の特定の様態に対する多数の等価物を認知または確認することができる。また、このような等価物は、本出願に含まれることが意図されている。
【0011】
一態様は、腸管毒素原性大腸菌に特異的な死滅能を有し、受託番号KCCM12936Pで寄託されたバクテリオファージCJ_Eco_20-4を提供する。
【0012】
本明細書で使用される用語、「腸管毒素原性大腸菌(Enterotoxigenic Escherichia coli:ETEC)」は、病原性大腸菌のうちの一つで、養豚など動物で感染性疾患を引き起こす原因菌に該当する。
【0013】
本明細書で使用される用語、「バクテリオファージ(bacteriophage)」は、特定の細菌に感染して当該細菌の成長を抑制する細菌特異的ウイルスに、単一あるいは二重鎖のDNAまたはRNAを遺伝物質として含むウイルスを意味する。
【0014】
他の態様は、前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4を有効成分として含む腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患の予防または治療用組成物を提供する。
【0015】
前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4は、前記の通りである。
【0016】
前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4は、腸管毒素原性大腸菌に特異的な死滅能を有するものであるため、個体に腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患発病前に投与した場合に、個体に流入される腸管毒素原性大腸菌を死滅させ、これによる感染を抑制して腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患を予防することができる。また、腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患が発病した個体に前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4を投与すれば、個体に存在する腸管毒素原性大腸菌を死滅させることで、これによって引き起こされる症状を緩和または消滅させ、腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患を治療することができる。
【0017】
本明細書で使用される用語「予防」は、バクテリオファージまたは組成物の投与によって個体で疾患の発病を抑制または遅延させるすべての行為を意味し、用語「治療」は、バクテリオファージまたは組成物の投与によって個体で疾患の症状が好転、緩和、または消滅するようにするあらゆる行為を意味することができる。
【0018】
前記腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患は、例えば大腸菌症であるが、これに制限されない。
【0019】
本明細書で使用される用語、「大腸菌症(colibacillosis)」は、家畜に病原性大腸菌が感染して発生する疾患を意味し、症状としては敗血症、下痢(新生児期下痢および離乳後下痢)、毒血症(浮腫病および脳脊髄血管症)などが現れることがある。これらの中で、敗血症は、生後2~3日以内に新生児期に多く発生する急性の全身感染症であり斃死率が高い。下痢は、1~2週令以内の哺乳期および離乳直後に多発する腸管感染症であり、斃死または発育障害の原因になる。毒血症は、離乳後の8~12週令の子豚などに主に発生して全身が腫れ、神経症状を示し突然死亡する場合が多い。
【0020】
前記腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患の予防または治療用組成物は、前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4を1×102~1×1020PFU/mLまたは1×102~1×1020PFU/gで含むものであり、例えば、前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4を1×102~1×1012PFU/mLまたは1×105~1×1010PFU/gで含むものである。
【0021】
前記腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患の予防または治療用組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含むことができ、前記担体と共に製剤化されて食品、医薬品、飼料添加剤または飲用水添加剤などで提供することができる。
【0022】
本明細書で使用される用語、「薬学的に許容可能な担体」は、生体を刺激せず、投与化合物の生物学的活性および特性を阻害しない担体または希釈剤などを意味するができる。
【0023】
前記組成物に含まれてもよい担体の種類は、特に制限されず、当該技術分野で通常使用され薬学的に許容可能な担体ならば、どれでも使用することができる。前記担体の非制限的な例としては、食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、テキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロールなどが挙げられる。これらは単独で使用することも2種以上を混合して使用することもでき、必要に応じて抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤など他の通常の添加剤を添加することができる。また希釈剤、分散剤、結合剤および潤滑剤を付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用製剤、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができる。
【0024】
前記腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患の予防または治療用組成物は、経口投与または非経口投与により投与することができ、疾患部位への塗布または噴霧する方法も利用することができる。非経口投与の場合、静脈耐投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与または局所投与を利用して投与してもよい。前記組成物の適した塗布、噴霧および投与量は、製剤化方法、投与方式、対象となる動物および患者の年令、体重、性、疾患症状の程度、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度および反応感受性のような要因によって多様であり、通常熟練した医師や獣医師は、目的とする治療に効果的な投与量を容易に決定および処方することができる。
【0025】
前記腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患の予防または治療用組成物の経口投与用製剤には、例えば錠剤、トローチ剤、ロゼンジ(lozenge)、水溶性または油性懸濁液、調製粉末または顆粒、エマルジョン、ハードまたはソフトカプセル、シロップまたはエリキシル剤に製剤化することができる。錠剤およびカプセルなどの製剤で製剤化するために、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アミロペクチン、セルロースまたはゼラチンのような結合剤、リン酸二カルシウムのような賦形剤、とうもろこしデンプンまたはさつまいもデンプンのような崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウムまたはポリエチレングリコールワックスのような潤滑剤を含むことができ、カプセル製剤の場合、前記で言及した物質以外にも脂肪油のような液体担体をさらに含むことができる。
【0026】
前記腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患の予防または治療用組成物の非経口投与用製剤には、皮下注射、静脈注射または筋肉内注射などの注射用形態、座薬注入方式または呼吸器を通して吸入が可能にするエアロゾル剤などスプレー用で製剤化することができる。注射用製剤で製剤化するためには、本発明の組成物を安定化剤または緩衝剤と共に水で混合して溶液または懸濁液で製造し、これをアンプルまたはバイアルの単位投与用で製剤化することができる。エアロゾル剤などのスプレー用で製剤化する場合、水分散された濃縮物または湿潤粉末が分散するように推進剤などが添加剤と共に配合されてもよい。
【0027】
前記腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患の予防または治療用組成物は、保存剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、凍結保護剤(cryoprotectant)、または賦形剤などを含むことができる。
【0028】
前記保存剤、安定化剤、または賦形剤は、前記組成物の品質低下(deterioration)を減少させるのに十分な有効量で組成物に含まれるものであり得る。
【0029】
本明細書で使用される用語、「品質低下」は、組成物などに含まれるバクテリオファージCJ_Eco_20-4の菌数減少、活性減少、またはこれらの組み合わせを含むものであり得る。
【0030】
例えば、前記組成物は、組成物の品質低下を減少させるのに十分な有効量の保存剤、安定化剤、または賦形剤を含むことで、自然状態に存在するバクテリオファージとは異なり、組成物内でバクテリオファージCJ_Eco_20-4がより長い期間生存したり活性が維持されるものであり得る。
【0031】
前記保存剤、安定化剤、または賦形剤は、前記組成物の品質低下を減少さることができるものなら、当業界で通常使用されるものが制限なしに使用される。例えば、前記安定化剤は、アルギン酸塩(alginate)、アルギン酸ナトリウム(sodium alginate)、カゼイン、カゼインナトリウム、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(sodium carboxymethylcellulose)、ペクチン、ゼラチン、アラビアガム、キサンタンガム、デキストラン、シクロデキストリンおよびデンプンで構成される群から選択されるいずれか一つ以上であり得る。
【0032】
前記凍結保護剤は、前記組成物が凍結乾燥された状態である時、組成物の品質低下を減少させるのに十分な有効量で組成物に含まれるものであり得る。例えば、凍結乾燥された組成物内で活性が低下したり生存できない自然状態に存在するバクテリオファージとは異なり、前記組成物は、凍結乾燥された状態で組成物の品質低下を減少させるのに十分な有効量の凍結保護剤を含むことで、凍結乾燥された組成物内でもバクテリオファージ活性が維持されたりバクテリオファージが生存できるものであり得る。
【0033】
前記凍結保護剤は、凍結乾燥された状態の組成物の品質低下を減少させるためなら、当業界で通常使用されるものが制限なしに使用される。例えば、前記凍結保護剤は、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide:DMSO)、グルコース、トレハロース、マルトデキストリン、デキストリン、スキムミルクおよびデンプンで構成される群から選択されるいずれか一つ以上であり得る。
【0034】
他の態様は、前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4を有効成分として含む抗生剤を提供する。
【0035】
前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4は、前記の通りである。
【0036】
本明細書使用される用語、「抗生剤」は、菌を殺したり、菌の成長を抑制できる製剤を意味し、防腐剤、殺菌剤および抗菌剤を総称するものであり得る。
【0037】
前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4を有効成分として含む抗生剤は、従来の抗生剤に比べて腸管毒素原性大腸菌に対する特異性が非常に高く、有益菌は殺さず、特定病原菌だけを死滅させることができ、薬物耐性を誘導しないため、従来の抗生剤に比べて製品寿命が延びる効果を示すことができる。
【0038】
前記抗生剤は、当業界で通常使用される製造方法によって製造される。
【0039】
前記抗生剤は、抗生剤の品質低下を減少させるのに十分な有効量の添加剤を含むものであり、前記添加剤は保存剤、安定化剤、賦形剤、または凍結保護剤などであり得る。前記抗生剤は、前記添加剤を含むことで、自然状態に存在するバクテリオファージとは異なり、抗生剤内でバクテリオファージCJ_Eco_20-4がより長い期間生存したり活性が維持されるものであり得る。前記保存剤、安定化剤、賦形剤、または凍結保護剤は、抗生剤の品質低下を減少させることができるものであれば、当業界で通常使用されるものが制限なしに使用される。
【0040】
他の態様は、前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4を有効成分として含む飼料添加剤を提供する。さらに他の態様は、前記飼料添加剤を含む飼料を提供する。さらに他の態様は、前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4を有効成分として含む飲用水添加剤を提供する。さらに他の態様は、前記飲用水添加剤を含む飲用水を提供する。
【0041】
前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4は、前記の通りである。
【0042】
前記飼料添加剤または飲用水添加剤は、バクテリオファージCJ_Eco_20-4を含む組成物の形態で製造されて飼料または飲用水に混合させたり、前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4を飼料または飲用水製造時直接添加する方式で使用するものであり得る。
【0043】
前記飼料添加剤または飲用水添加剤内に含まれるバクテリオファージCJ_Eco_20-4は、液体状態または乾燥された固体状態であってもよく、具体的に、乾燥された粉末形態であり得る。前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4の乾燥方法は、通風乾燥、自然乾燥、噴霧乾燥または凍結乾燥方法であってもよいが、これに制限されない。前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4は、乾燥された粉末形態で飼料添加剤または飲用水添加剤重量の0.05~10重量%、具体的に、0.1~2重量%で混合されるものであり得る。
【0044】
前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4を有効成分として含む飼料添加剤または飲用水添加剤は、必要に応じてその他の添加剤を追加的に含むことができる。前記使用可能な添加剤の非制限的な例としては、飼料または飲用水の品質低下を防止するために添加する結合剤、乳化剤、保存剤など;飼料または飲用水の効用増大のために添加するアミノ酸剤、ビタミン剤、酵素剤、生菌剤、香味剤、非タンパク質窒素化合物(non-protein nitrogen compound:NPN)、ケイ酸塩剤、緩衝剤、着色剤、抽出剤またはオリゴ糖などがあり、これらは単独で添加されたりまたは2種以上が共に添加されてもよい。
【0045】
前記飼料または飲用水に含まれるバクテリオファージCJ_Eco_20-4以外の原料は、当業界で通常使用されるものが制限なく使用される。前記飼料の非制限的な例としては、穀物類、根菜類、食品加工副産物類、藻類、繊維質類、製薬副産物類、油脂類、デンプン類、瓜類または穀物副産物類などのような植物性飼料;タンパク質類、無機物類、油脂類、鉱物性類、油脂類、単細胞タンパク質類、動物性プランクトン類または飲食物などのような動物性飼料が挙げられる。これらは単独で使用されたり2種以上を混合して使用されてもよい。
【0046】
前記飼料添加剤は、飼料100重量部に対して、0.05~10重量部、例えば、0.1~2重量部で含まれるものであり得る。前記飲用水添加剤は、飲用水100重量部に対して、0.0001~0.01重量部、例えば、0.001~0.005重量部で含まれるものであり得る。
【0047】
前記飼料添加剤、飼料、飲用水添加剤または飲用水は、当業界で通常使用される製造方法によって製造することができる。
【0048】
前記飼料添加剤、飼料、飲用水添加剤または飲用水は、これらの品質低下を減少させるのに十分な有効量の添加剤を含むものであり、前記添加剤は、保存剤、安定化剤、賦形剤、または凍結保護剤などであり得る。前記飼料添加剤、飼料、飲用水添加剤または飲用水は、前記添加剤を含むことで、自然状態に存在するバクテリオファージとは異なり、飼料添加剤、飼料、飲用水添加剤または飲用水内でバクテリオファージCJ_Eco_20-4がより長い期間生存したり活性が維持されるものであり得る。前記保存剤、安定化剤、賦形剤、または凍結保護剤は、飼料添加剤、飼料、飲用水添加剤または飲用水の品質低下を減少させることができるものであれば、当業界で通常使用されるものが制限なしに使用される。
【0049】
他の態様は、前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4を有効成分として含む消毒剤を提供する。さらに他の態様は、前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4を有効成分として含む洗浄剤を提供する。
【0050】
前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4は、前記の通りである。
【0051】
前記消毒剤または洗浄剤の製剤は、特に制限されず、当業界で通常知られた製剤で製造されて用いることができる。前記消毒剤または洗浄剤は、当業界で通常使用される製造方法によって製造することができる。
【0052】
前記消毒剤は、腸管毒素原性大腸菌を除去するために散布され、動物の活動領域、屠殺場、斃死地域、調理場または調理設備などに散布されるがこれに制限されない。
【0053】
前記洗浄剤は、腸管毒素原性大腸菌に暴露されたまたは暴露される可能性がある動物の皮膚表面または体の各部位などを洗浄する用途に使用することができるが、これに制限されない。
【0054】
前記消毒剤または洗浄剤は、これらの品質低下を減少させるのに十分な有効量の添加剤を含むものであり、前記添加剤は、保存剤、安定化剤、賦形剤、または凍結保護剤などであり得る。前記消毒剤または洗浄剤は、前記添加剤を含むことで、自然状態に存在するバクテリオファージとは異なり、消毒剤または洗浄剤内でバクテリオファージCJ_Eco_20-4がより長い期間生存したり活性が維持されるものであり得る。前記保存剤、安定化剤、賦形剤、または凍結保護剤は、消毒剤または洗浄剤の品質低下を減少させることができるものであれば、当業界で通常使用されるものが制限なしに使用される。
【0055】
他の態様は、前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4、またはこれを有効成分として含む腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患の予防または治療用組成物をヒトを除いた動物に投与する段階を含む、腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患の予防または治療方法を提供する。
【0056】
前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4、これを有効成分として含む腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患の予防または治療用組成物、および腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患は、前記の通りである。具体的に、前記腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患は例えば大腸菌症であり得る。
【0057】
前記予防または治療方法は具体的に、腸管毒素原性大腸菌に感染したり感染する危険がある、ヒトを除いた動物に前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4、またはこれを有効成分として含む組成物を薬学的に有効な量で投与する段階を含む。前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4またはこれを有効成分として含む組成物は、薬学的製剤の形態で動物に投与されたり、飼料添加剤または飲用水添加剤の形態で動物の飼料または飲用水に混合してこれを摂食させる方法により投与されるものであり得る。
【0058】
前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4またはこれを有効成分として含む組成物の投与経路は、目的組織に到達できる限り経口または非経口の様々な経路を通じて投与され、具体的に、口腔、直腸、局所、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、経皮、鼻腔内、吸入などにより通常の方式で投与することができる。
【0059】
前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4またはこれを有効成分として含む組成物の適した1日総使用量は、正しい医学的判断範囲内で処置医によって決定することができ、これは当該技術分野の通常の知識を有する者にとって自明な事項である。
【0060】
特定動物に対する前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4またはこれを有効成分として含む組成物の具体的な薬学的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、当該個体の年令、体重、一般的な健康状態、性別または食餌はもちろん、前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4またはこれを有効成分として含む組成物の投与時間、投与経路および組成物の分泌率、治療期間などを考慮して決定され、同時または異時に共に使用される薬物その他の組成物の成分などをはじめとする様々な因子および医薬分野でよく知られている類似因子により多様化することができる。
【0061】
前記ヒトを除いた動物は、腸管毒素原性大腸菌に感染することができる動物なら特に制限されない。例えば、前記動物は、鳥類および哺乳類であってもよく、具体的に、鶏、鴨、豚などを含んでもよいが、これに制限されない。
【0062】
他の態様は、前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4、またはこれを有効成分として含む腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患の予防または治療用組成物の腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患の予防剤または治療剤製造のための用途を提供する。
【0063】
前記バクテリオファージCJ_Eco_20-4、これを有効成分として含む腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患の予防または治療用組成物、および腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患は、前記の通りである。具体的に、前記腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患は、例えば大腸菌症であり得る。
【発明の効果】
【0064】
新規なバクテリオファージCJ_Eco_20-4は、腸管毒素原性大腸菌を特異的に死滅させる効果を有し、耐酸性および耐熱性に優れて、腸管毒素原性大腸菌による感染性疾患の予防または治療用途として、抗生剤、飼料添加剤、飲用水添加剤、飼料、飲用水、消毒剤または洗浄剤などに幅広く活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】新規バクテリオファージCJ_Eco_20-4の電子顕微鏡写真である。
【
図2】新規バクテリオファージCJ_Eco_20-4のpH安定性を確認した結果グラフである。
【
図3】新規バクテリオファージCJ_Eco_20-4の60℃での安定性を確認した結果グラフである。
【
図4】新規バクテリオファージCJ_Eco_20-4の腸管毒素原性大腸菌(enterotoxigenicEscherichia coli:ETEC)菌株に対する溶菌能を確認した結果グラフである。
【
図5】新規バクテリオファージCJ_Eco_20-4の腸管毒素原性大腸菌(enterotoxigenic Escherichia coli:ETEC)菌株に対する溶菌能を確認した結果グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下、本発明につき実施例を通してより詳細に説明する。但し、これらの実施例は一つ以上の具体的な例を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0067】
実施例1.腸管毒素原性大腸菌(enterotoxigenic Escherichia coli:ETEC)に対する死滅能を有するバクテリオファージの分離
【0068】
実施例1-1.糞便試料前処理液の製造
韓国ソウル市、京畿道(キョンギド)、忠清道(チュンチョンド)、慶尚道(キョンサンド)地域の農場から養豚、養鶏および畜牛の糞便試料を採取して、各試料20gを80mLのPBSに希釈して10,000rpmで15分間遠心分離した。上澄み液を0.2μmフィルターにろ過した後、濾液に10%(w/v)塩化ナトリウム水溶液を添加して4℃で12時間保存した。以降、これに10%(w/v)ポリエチレングリコール8000(Sigma-Aldrich,Cat.No.P2139)を添加して、4℃で12時間保存した後、濃縮のために15,000rpmで1時間遠心分離して上澄み液を除去した。沈殿物を10mLのSMバッファー5.8g/L塩化ナトリウム、2g/L MgSO4・7H2O、0.05M Tris-Cl(pH7.5)に溶かした後、0.2μmフィルターにろ過してその濾液を4℃で保存した。
【0069】
実施例1-2.バクテリオファージ濃縮液作製
韓国ソウル市、京畿道(キョンギド)、忠清道(チュンチョンド)、慶尚道(キョンサンド)地域の家畜農家から収集した糞便試料から分離したETEC菌株および国立獣医科学検疫院から分譲を受けたETEC菌株を2mLのLB培地(Luria-Bertani medium;10g/Lトリプトン(tryptone)、5g/L酵母抽出物、10g/L塩化ナトリウム)に接種して30℃および180rpmで20時間培養後、50mLのLB培地に前記ETEC菌株培養液1mLおよび前記実施例1-1で収得した糞便試料前処理液1mLを接種して30℃および180rpmで20時間混合培養した。混合培養液を6,000rpmで20分間の遠心分離後、上澄み液を0.2μmフィルターにろ過して、これに10%(w/v)ポリエチレングリコール8000を添加して、4℃で12時間保存した。以降、濃縮のために15,000rpmで1時間遠心分離して上澄み液を除去して、沈殿物を1mLのSMバッファーに溶かして、0.2μmフィルターにろ過してその濾液を4℃で保存した。
【0070】
実施例1-3.バクテリオファージのスクリ-ニングおよび分離
前記実施例1-2で作製したバクテリオファージ濃縮液50μLを0.7%(w/v)寒天(BDDIFCO,Cat.No.44164)5mL、および前記実施例1-2で使ったのと同じETEC菌株を600nmで吸光度(O.D.)が2になるように振とう培養した培養液50μLと混合して、直径150mmの平板培地を利用して二重寒天プラークアッセイ(Double-layer agar plaque assay)を行った。軟寒天に形成された溶菌班を200μLチップでパンチングして、0.5mLのSMバッファーに入れて溶出した。溶出されたバクテリオファージ含有溶液は、同じ形態の単一溶菌班が形成されるまで二重寒天プラークアッセイ(Double-layer agar plaque assay)を繰り返して純粋なバクテリオファージを含む溶液を分離した。収得したバクテリオファージ含有溶液を0.2μmフィルターでろ過して、これに10%(w/v)ポリエチレングリコール8000を添加して、4℃で12時間保存した。以降、濃縮のために15,000rpmで1時間遠心分離して上澄み液を除去して、沈殿物を1mLのSMバッファーに溶かして、0.2μmフィルターでろ過してその濾液を4℃で保存した。
【0071】
実施例2.分離したバクテリオファージの全ゲノム(whole genome sequencing:WGS)分析
Cs Clgradient法およびファージDNA分離キット(Norgen Biotek-Corp.Kit,Cat.No.46800)を利用して前記実施例1-3で純粋分離したバクテリオファージ濃縮液1mLからDNAを抽出した。(株)マクロジェン(Macrogen Inc.)に依頼して全ゲノム分析を行って、De novo assemblyソフト(SPAdes 3.13.0)を使って遺伝子を組み合わせ、オープンリーディングフレーム(Open reading frame:ORF)は、GeneMark.hmmとNCBI ORF finderを使って行った。BLASTP(E values of<0.1)とPSI-BLAST(E value of<0.005)プログラムを使って各ORFの機能を命名(annotation)した。
【0072】
その結果、分離したバクテリオファージは、170,632bp、276 ORF,G+C含有量39.6%である配列番号1の塩基配列を持つことを確認し、これは従来に報告されたEnterobacteria phage vB_EcoM_IME281(MH051913.1)と92%の配列同一性を示したが、すべての断片が100%一致するバクテリオファージはないことを確認して、前記バクテリオファージは、新規分離されたバクテリオファージであることが分かった。そこで、前記新規なバクテリオファージをバクテリオファージCJ_Eco_20-4と命名し、2021年1月18日付でブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganisms)に寄託して受託番号KCCM12936Pが付与された。
【0073】
実施例3.バクテリオファージCJ_Eco_20-4の形態分析
【0074】
高純度のバクテリオファージ溶液を得るために、CsClグラジエント(gradient)法を行った。具体的に、密度が1.7、1.5、1.45または1.3のSMバッファーに溶解したCsCl溶液を用意して、15mL超遠心分離(ultracentrifuge)用チューブ(Beckman Coulter,Cat.No.Z00901SCA)に前記CsCl溶液を高密度から低密度に層状になるように2mLずつ分注して、最上端に実施例1-3で収得したバクテリオファージCJ_Eco_20-4濃縮液2mLを分注した。これを4℃および25,000rpmで2時間遠心分離後、チューブに形成された白いバクテリオファージ層だけをシリンジ(Satorius,Cat.No.17822-K)に採取した。採取したバクテリオファージ溶液1μLをcarbon-coated copper gridの上に点滴後、2%ウラニルアセテートで15秒間染色して電子顕微鏡(TEM,JEOL JEM-101,Tokyo,Japan)で形態を観察した。
【0075】
その結果、
図1に示したように、バクテリオファージCJ_Eco_20-4は、形態学的に二十面体の頭部と約100nm長さの収縮性ある尾部(contractile tail)を持つことが観察され、カウドウイルス目(Caudovirales order)、マイオウイルス科(Myoviridae family)に属することが分かった。
【0076】
実施例4.バクテリオファージCJ_Eco_20-4のpH安定性評価
【0077】
バクテリオファージCJ_Eco_20-4が広いpH範囲で安定性があるか確認するために、pH3、4、7、7.5または10の溶液(pH3、4:0.2M酢酸ナトリウム(sodium acetate)溶液;pH7、7.5:0.2Mリン酸ナトリウム(sodium phosphate)溶液;およびpH10:0.2Mトリス(Tris-HCl)溶液)を用意した。各pH別溶液450μLと2×1010PFU/mLのバクテリオファージ溶液50μLを混合して4℃で2時間静置後、二重寒天プラークアッセイ(Double-layer agar plaque assay)を行って力価(titer)増減を評価した。
【0078】
その結果、
図2に示したように、バクテリオファージCJ_Eco_20-4は、pH3から10までの範囲で活性を失うことなく安定的しており、優れた耐酸性を有するバクテリオファージであることが分かった。
【0079】
実施例5.バクテリオファージCJ_Eco_20-4の熱安定性評価
【0080】
バクテリオファージCJ_Eco_20-4が高温で安定性があるか確認するために、2×108PFU/mLのバクテリオファージ溶液500μLを60℃で0、3、6または24時間静置後、二重寒天プラークアッセイ(Double-layer agar plaque assay)を行って力価(titer)増減を評価した。
【0081】
その結果、
図3に示したように、バクテリオファージCJ_Eco_20-4は、60℃で3時間暴露した時、0時間暴露した対照群対比約3.3ログの活性減少を示し、6時間暴露時対照群対比約4.8ログの活性減少を示した。したがって、バクテリオファージCJ_Eco_20-4は、優れた耐熱性を有するバクテリオファージであることが分かった。
【0082】
実施例6.バクテリオファージCJ_Eco_20-4の溶菌スペクトル(spectrum)評価
【0083】
バクテリオファージCJ_Eco_20-4の溶菌スペクトルを評価するために、韓国ソウル市、京畿道(キョンギド)、忠清道(チュンチョンド)、慶尚道(キョンサンド)地域の家畜農家から収集した糞便試料から分離したETEC菌株および国立獣医科学検疫院から分譲を受けたETEC菌株総10種をそれぞれLB液状培地で培養後、0.7%軟寒天5mLに前記菌株培養物各50μLを接種して、ペトリ皿に注ぎプレーティング後、5分間静置した。以降、軟寒天の上に前記実施例1-3で収得したバクテリオファージCJ_Eco_20-4濃縮液10μLを滴加(spotting)した後30℃で20時間静置培養した。培養終了後、軟寒天の上に形成された溶菌班の有無により、バクテリオファージCJ_Eco_20-4の溶菌スペクトルを評価した。
【0084】
【0085】
その結果、表1に示したように、試験した10種のETEC菌株全部において、溶菌班が形成されて、バクテリオファージCJ_Eco_20-4は広スペクトルなETEC菌株に死滅能を有することを確認した。
【0086】
実施例7.バクテリオファージCJ_Eco_20-4の溶菌能評価
【0087】
バクテリオファージCJ_Eco_20-4の溶菌能を評価するために、Time-kill assayを行った。具体的に、韓国、京畿道(キョンギド)地域の養豚農家から収集した糞便試料から分離したETEC-11菌株を30℃および180rpmで3時間培養後、600nmで吸光度(O.D.)が0.2になるように希釈して2×108CFU/mLの培養液を30mLずつチューブに入れて各4つのチューブを用意した。バクテリオファージCJ_Eco_20-4の濃縮液を2×109PFU/mLで用意し、MOI(multiplicity of infection)が0.1、1または10になるようにETEC菌株培養液が入った各チューブに添加し、対照群としては、バクテリオファージが添加されないETEC菌株培養液を使った。各チューブを30℃および180rpmで6時間培養しながら、1時間間隔で1mLの培養液を取って600nmで吸光度を測定した。
【0088】
その結果、
図4に示したように、培養後6時間後に対照群は、吸光度が4.0まで増加したのに対して、バクテリオファージCJ_Eco_20-4が添加されたETEC菌株培養液は、MOIが0.1と最も低い群でも吸光度が0.1で示され、バクテリオファージCJ_Eco_20-4が非常に強い溶菌能を持つことが分かった。
【0089】
また、前記実験過程で、対照群とバクテリオファージCJ_Eco_20-4がMOI0.1で添加されたETEC菌株培養液を24時間培養して、培養液の吸光度を測定したことを除いては、前記記載されたのと同様に追加実験を行った結果、
図5に示したように、バクテリオファージCJ_Eco_20-4は、0.1の低いMOIで処理された時にも24時間まで強力な溶菌活性を示すことを確認した。
【0090】
以上の説明から、本出願が属する技術分野の通常の知識を有する者は、本出願が、その技術思想や必須的特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施することができることを理解できるであろう。これに関連して、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的なものではないと理解されるべきである。本出願の範囲は、前記詳細な説明よりも後述する特許請求の範囲の意味および範囲、そしれその等価概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本出願の範囲に含まれると解釈されるべきである。
【配列表】