(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】ラゲージボードの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/20 20060101AFI20241021BHJP
B29C 43/52 20060101ALI20241021BHJP
B60R 5/04 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
B29C43/20
B29C43/52
B60R5/04 T
(21)【出願番号】P 2024035421
(22)【出願日】2024-03-08
【審査請求日】2024-03-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592048431
【氏名又は名称】株式会社中外
(74)【代理人】
【識別番号】110003373
【氏名又は名称】弁理士法人石黒国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】院南 元裕
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕人
(72)【発明者】
【氏名】成田 賢二
【審査官】浅野 弘一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-037150(JP,A)
【文献】実開平06-020024(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/20
B29C 43/52
B60R 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のラゲージルームに組み付けられるものであり、2つの樹脂板の間に、嵩上げ用の芯材を配置するとともに、少なくとも1つの樹脂板の外側表面に表皮材を配置したラゲージボードの製造方法において、
前記2つの樹脂板を加熱して軟化させる予熱工程と、
軟化した2つの樹脂板の間に前記芯材を配置した主材料部をプレス成型するプレス工程とを備え、
このプレス工程では、
前記2つの樹脂板の内、一方の樹脂板の外側表面を賦形する一方側の型と、他方の樹脂板の外側表面を賦形する他方側の型とにより、前記主材料部を挟んで加圧し、
前記一方の樹脂板の外側表面と前記一方側の型の賦形面との間、および、前記他方の樹脂板の外側表面と前記他方側の型の賦形面との間の少なくとも1つの間に、前記表皮材を、テンションが付与された状態で配置し、
さらに、前記表皮材を、テンションが付与された状態に保ちながら、前記主材料部とともに加圧し、
また、前記ラゲージボードの製造方法は、
前記表皮材を所定の治具にセットすることで、前記表皮材にテンションを付与する準備工程を備え、
前記治具は、前記一方側、他方側の型を外側から包囲することができる形状であり、自身の内周に前記表皮材を保持しながら前記表皮材にテンションを付与し、
前記プレス工程では、
前記一方側、他方側の型の内、一つの型がもう一つの型の下側に配置され、
前記表皮材がセットされた状態で前記治具を前記一方側、他方側の型の外周に配置することで、前記治具の内周側で、
前記一つの型の賦形面に、前記表皮材を向い合せるとともに、前記
一つの型に前記表皮材を載せて前記治具を
前記一つの型に吊り下がった状態にし、
引き続き、前記一方側、他方側の型により、前記表皮材を、吊り下がった状態のまま前記主材料部とともに挟んで加圧することを特徴とするラゲージボードの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のラゲージボードの製造方法において、
前記プレス工程では、前記もう一つの型を、前記一つの型に向かって下降させることで、前記主材料部および前記表皮材を加圧することを特徴とするラゲージボードの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のラゲージボードの製造方法において、
前記プレス工程の後の前記主材料部および前記表皮材を含む中間体を冷却する冷却工程を備え、
前記プレス工程では、前記一方の樹脂板から前記一方側の型への放熱、および、前記他方の樹脂板から前記他方側の型への放熱、のいずれか1つの放熱が、もう一つの放熱よりも放熱量が大きく、
前記冷却工程では、前記プレス工程において型への放熱量が小さい方の樹脂板から、前記プレス工程において型への放熱量が大きい方の樹脂板に向かって、前記中間体の周縁を押しながら前記中間体を保持することを特徴とするラゲージボードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ラゲージボードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のラゲージルームの床面を構成する部品として、次のようなラゲージボードが周知である。
すなわち、ラゲージルームは、例えば、自動車の室内において、後部座席の後方に設定されており、ラゲージボードは、例えば、床下の荷室を上から閉じる蓋体として設けられ、ラゲージボードを引き上げることで、荷室を開放することができるように設定されている。
【0003】
また、ラゲージボードでは、剛性、軽量性および外観性の観点から、次のような層構造となっている。すなわち、ラゲージボードでは、2つの樹脂板の間に、嵩上げ用の芯材が配置され、少なくとも一方の樹脂板の外側表面に表皮材が配置されている。そして、ラゲージボードは、表皮材がラゲージルーム内に露出するように組み付けられる。
【0004】
さらに、近年のラゲージボードの製造方法は、生産性の観点から、材料をプレス成型するプレス工程を備えるものが広まっている。このため、プレス工程では、上記のような層構造を形成する必要性から、2つの型の間で次のような材料の配置を構成した上で、材料を加圧する。
すなわち、加熱により予め軟化させた2つの樹脂板の間に芯材を挟み、かつ、少なくとも一方の樹脂板の外側表面に表皮材を配置し、このような配置をなす材料を2つの型により挟んで加圧して成型する。
【0005】
例えば、特許文献1では、2つの樹脂板の内、1つ目の樹脂板を下側の型に真空吸引して1つ目の樹脂板の下側の表面を賦形するとともに、この樹脂板の上に芯材を載せ、さらに、2つ目の樹脂板を芯材の上に載せる。その後、上側の型からも真空吸引して2つ目の樹脂板の上側の表面を賦形しつつ、型締めして上下の型の間に存在する材料を加圧する。
【0006】
ところで、特許文献1では、表皮材を、上側の型と2つ目の樹脂板との間に介在させた状態で加圧を行っているが、どのようにして上側の型と2つ目の樹脂板との間に介在させているのか、明確になっていない。
しかし、表皮材は、他の材料とは異なって極めて柔軟であり張りが少ない。このため、例えば、単純に2つ目の樹脂板の上に表皮材を載せて真空吸引しつつ型締めすると、皺が多い仕上がりになってしまう可能性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本開示は、材料のプレス成型を利用するラゲージボードの製造方法において、表皮材における皺の発生を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の製造方法により製造されるラゲージボードは、自動車のラゲージルームに組み付けられるものであり、2つの樹脂板の間に、嵩上げ用の芯材を配置するとともに、少なくとも1つの樹脂板の外側表面に表皮材を配置したものである。
また、本開示のラゲージボードの製造方法は次の予熱工程およびプレス工程を備える。まず、予熱工程では、2つの樹脂板を加熱して軟化させる。次に、プレス工程では、軟化した2つの樹脂板の間に芯材を配置した主材料部をプレス成型する。
【0010】
そして、プレス工程では、2つの樹脂板の内、一方の樹脂板の外側表面を賦形する一方側の型と、他方の樹脂板の外側表面を賦形する他方側の型とにより、主材料部を挟んで加圧する。また、プレス工程では、一方の樹脂板の外側表面と一方側の型の賦形面との間、および、他方の樹脂板の外側表面と他方側の型の賦形面との間の少なくとも1つの間に、表皮材を、テンションが付与された状態で配置する。さらに、プレス工程では、表皮材を、テンションが付与された状態に保ちながら、主材料部とともに加圧する。
また、本開示のラゲージボードの製造方法は、次の準備工程を備える。すなわち、準備工程は、表皮材を所定の治具にセットすることで、表皮材にテンションを付与する。ここで、治具は、一方側、他方側の型を外側から包囲することができる形状であり、自身の内周に表皮材を保持しながら表皮材にテンションを付与する。また、プレス工程では、一方側、他方側の型の内、一つの型がもう一つの型の下側に配置される。そして、表皮材がセットされた状態で治具を一方側、他方側の型の外周に配置することで、治具の内周側で、一つの型の賦形面に、表皮材を向い合せるとともに、一つの型に表皮材を載せて治具を一つの型に吊り下がった状態にし、引き続き、一方側、他方側の型により、表皮材を、吊り下がった状態のまま主材料部とともに挟んで加圧する。
これにより、本開示のラゲージボードの製造方法によれば、潜在的に、材料のプレス成型を利用する場合でも表皮材における皺の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ラゲージボードの自動車における位置を示す説明図である(実施例1)。
【
図2】ラゲージボードの構成を示す断面図である(実施例1)。
【
図3】ラゲージボードの製造方法を示す工程図である(実施例1)。
【
図4】治具が表皮材を保持する状態を示す平面図である(実施例1)。
【
図6】プレス工程において型同士の間に材料を配置した状態を示す説明図である(実施例1)。
【
図7】プレス工程において材料を加圧している状態を示す説明図である(実施例1)。
【
図10】ラゲージボードの構成を示す断面図である(実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示を実施するための形態を以下の実施例により詳細に説明する。
【実施例】
【0013】
〔実施例1の構成〕
実施例1のラゲージボード1の構成を説明する。
まず、ラゲージボード1は、自動車2のラゲージルーム3の床面を構成する部品であり、例えば、床下の荷室4を上から閉じる蓋体として設けられ、ラゲージボード1を引き上げることで、荷室4を開放することができるように設定されている(
図1参照。)。なお、ラゲージルーム3は、例えば、自動車2の室内において、後部座席5の後方に設定されている。
【0014】
また、ラゲージボード1は、次のような層構造をとっている。すなわち、ラゲージボード1では、2つの樹脂板9の間に、芯材10および補強材11が配置され、一方の樹脂板9の2つの表面の内、芯材10および補強材11が位置する側とは反対側の表面に表皮材12が配置されている(
図2参照:以下、樹脂板9において、芯材10および補強材11が位置する側とは反対側の表面を外側表面と呼ぶことがある。)。
【0015】
なお、芯材10は、ラゲージボード1を嵩上げするものであり、補強材11は、ラゲージボード1の剛性を高めるものである。また、表皮材12は、外観性を高めるものであり、ラゲージボード1は、表皮材12がラゲージルーム3内に露出するように組み付けられる。
【0016】
ここで、2つの樹脂板9は、例えば、両方とも、ポリプロピレンにフィラーを配合したフィラー強化型の樹脂成型品であり、同一組成かつ同一の厚さである。また、フィラーとしては、シリカ、炭酸カルシウム、炭素繊維、ガラス繊維等、様々なものを採用することができる。
【0017】
また、芯材10は、例えば、発泡ポリプロピレンからなる樹脂発泡体であり、補強材11は、例えば、H字状の断面を有する金属体であり、アルミニウムを素材として設けられている。さらに、表皮材12には、例えば、繊維からなる不織布や、樹脂製の薄膜等を採用することができる。
以下、ラゲージボード1の製造方法を説明する。
【0018】
〔実施例1の製造方法〕
実施例1のラゲージボード1の製造方法を、図面に基づき説明する、
実施例1のラゲージボード1の製造方法は、次の予熱工程P1、準備工程P2、プレス工程P3および冷却工程P4を備える(
図3参照。)。
まず、予熱工程P1では、遠赤外線を利用する加熱炉にて、2つの樹脂板9を加熱して軟化させる。
【0019】
次に、準備工程P2では、表皮材12を所定の治具14にセットすることで、表皮材12にテンションを付与する(
図4および
図5等参照。)。また、治具14は、プレス工程P3で使用する2つの型15A、15Bを外側から包囲することができる形状であり、自身の内周に表皮材12を保持しながら表皮材12にテンションを付与する。
【0020】
より具体的には、治具14は、例えば、次の枠体14Aと複数の針16とを有する構成である。すなわち、枠体14Aは、矩形の環状であり、内周の形状は、型15A、15Bを外側から包囲することができるように設けられている。また、針16は、枠体14Aの内周の一辺ごとに、例えば、3本ずつ組み付けられている。
【0021】
さらに詳しくは、枠体14Aの内周には、内側に突き出る3つの突き出し14Bが設けられており、それぞれの突き出し14Bに、1本の針16が固定されている。なお、針16が突き出る方向は、枠体14Aの環がなす平面に対して垂直である。また、全ての突き出し14Bは、自身の内周端の内側に型15A、15Bが収まるように設けられている。
そして、表皮材12の周縁近傍にそれぞれの針16を貫通させることで、治具14に表皮材12を保持させつつ、表皮材12にテンションを付与する。
【0022】
次に、プレス工程P3では、各種の材料を型15A、15Bにより挟んでプレス成型する(
図6および
図7参照。)。
ここで、プレス工程P3は、次のプレス装置18により実行される(
図8参照。)。プレス装置18は、上記の型15A、15B、駆動部18a、および、制御部18b等により構成されている。
【0023】
まず、型15A、15Bは、プレス装置18において下側、上側の型であり、型15Bは、型15Aに上下方向に向かい合うように、かつ、型15Aに対して上側から近づいたり、上側に遠ざかったりすることができるように組み付けられている。
また、駆動部18aは、型15Bを駆動するものである。なお、駆動方式には、エア駆動、モータ駆動等、様々な方式を採用することができる。さらに、制御部18bは、例えば、周知の制御盤であり、駆動部18a等に各種の制御信号を出力して型15Bの動作を制御する。
【0024】
そして、プレス装置18は、例えば、以下のようにして材料をプレス成型する。まず、型15Bを型15Aに対して上側に引き上げておき、型15Aの上に各種の材料を重ねて載せることで、型15A、15Bの間に材料を配置する。引き続き、型15Bを型15Aに向かって下降させて型締めすることで、材料を加圧してプレス成型する。
【0025】
また、プレス工程P3でプレス成型される各種の材料は、2つの樹脂板9の間に芯材10および補強材11を配置した主材料部19、ならびに、表皮材12である。そして、これらの材料は、型15A、15Bの間で、主材料部19の下側に表皮材12が配置される。より具体的には、型15A、15Bの間で、下から上に向かって、表皮材12、一方の樹脂板9、芯材10および補強材11、ならびに、他方の樹脂板9の順に配置される。
【0026】
そして、プレス工程P3では、型15A、15Bそれぞれの賦形面15As、15Bsにより、下側、上側に位置する樹脂板9の外側表面が賦形される(以下、型15A、15Bの間に配置された主材料部19において、下側、上側に位置する樹脂板9をそれぞれ樹脂板9A、9Bと呼ぶことがある。)。
【0027】
さらに、プレス工程P3では、表皮材12を、テンションが付与された状態に保ちながら、主材料部19とともにプレス成型する。このため、プレス工程P3では、樹脂板9Aの外側表面と賦形面15Asとの間に、テンションが付与された状態の表皮材12を配置する。つまり、表皮材12がセットされた状態で治具14を型15A、15Bの外周に配置することで、治具14の内周側で、表皮材12を賦形面15Asに向い合せる。
以下、プレス工程P3を、さらに複数の工程に分けて順次説明する。
【0028】
プレス工程P3は、次の第1~第4前処理工程P3a~P3dおよび加圧工程P3eを有する(
図3参照。)。
第1~第4前処理工程P3a~P3dは、型15A、15Bの間で2つの樹脂板9、芯材10および補強材11を配置して主材料部19を形成するとともに、主材料部19と型15Aとの間に表皮材12を配置させる工程である。
【0029】
まず、第1前処理工程P3aでは、準備工程P2を経た表皮材12を型15Aに載せる。すなわち、表皮材12を、治具14に保持されてテンションを付与された状態に保ちつつ、型15Aに載せる(
図4、
図5等参照。)。ここで、治具14の突き出し14Bは、自身の内周端の内側に型15A、15Bが収まるように設けられているので、表皮材12は、例えば、型15Aの上側周縁に載り、突き出し14Bを含む治具14は、全体が型15Aの外側で表皮材12の周縁近傍に吊り下がった状態になる。
【0030】
次に、第2前処理工程P3bでは、型15Aに載った表皮材12に、予熱工程P1を経た一方の樹脂板9を載せる。このとき、一方の樹脂板9は予熱工程P1で軟化しており、軟化した樹脂板9が表皮材12の上に載る。
次に、第3前処理工程P3cでは、表皮材12に載った樹脂板9の上に芯材10および補強材11を載せる。
そして、第4前処理工程P3dでは、一方の樹脂板9に載った芯材10および補強材11の上に、予熱工程P1を経た他方の樹脂板9を載せる。このとき、他方の樹脂板9も予熱工程P1で軟化しており、軟化した樹脂板9が芯材10および補強材11に載る。
【0031】
以上により、型15A、15Bの間で、主材料部19が形成され(
図6参照。)、また、主材料部19の下側、かつ、型15Aの上側に表皮材12が配置される。
続いて、加圧工程P3eでは、型15Bを型15Aに向かって下降させて型締めすることで、主材料部19および表皮材12を加圧してプレス成型する(
図7参照。)。
【0032】
これにより、樹脂板9Aの外側表面は表皮材12とともに賦形面15Asにより賦形され、樹脂板9Bの外側表面は賦形面15Bsにより賦形される。また、樹脂板9A、9Bは、周縁部同士が溶着して一体化し、芯材10や補強材11は、樹脂板9A、9Bの間で固定される。さらに、表皮材12は、樹脂板9A、9Bの溶着部に溶着するとともに樹脂板9Aの外側表面に貼り合わされる。
【0033】
同時に、加圧工程P3eでは、型締めにより、樹脂板9A、9B周縁の溶着部や表皮材12がせん断される。
その後、型15Bを型15Aから引き上げ、表皮材12と主材料部19とが一体化された材料を取り出す(以下、表皮材12と主材料部19とが一体化された材料を中間体20と呼ぶことがある。)。
【0034】
なお、プレス工程P3では、樹脂板9Aから型15Aへの放熱、および、樹脂板9Bから型15Bへの放熱に関し、樹脂板9Bから型15Bへの放熱が、樹脂板9Aから型15Aへの放熱よりも放熱量が大きい。つまり、樹脂板9Bから型15Bへの単位時間当たりの伝熱量が、樹脂板9Aから型15Aへの単位時間当たりの伝熱量よりも大きい。
【0035】
すなわち、樹脂板9Aと型15Aとの間には表皮材12が存在するが、表皮材12は、伝熱抵抗が大きい。このため、樹脂板9Bから型15Bへの放熱が、樹脂板9Aから型15Aへの放熱よりも放熱量が大きくなるので、型15A、15Bから取り出された中間体20では、樹脂板9Bの方が樹脂板9Aよりも冷却が進んでいる。
【0036】
次に、冷却工程P4では、所定の治具22に中間体20を保持させて冷却する(
図9参照。)。治具22は、中間体20の周縁が中央部よりも一方側に向かって押されるように保持するものであり、例えば、中央ほど窪む凹部22aを有する凹状体22Aと、中央ほど突き出る凸部22bを有する凸状体22Bとを有する。
【0037】
ここで、冷却工程P4では、プレス工程P3における樹脂板9A、9Bそれぞれの型15A、15Bへの放熱に関して、放熱量が大きい方の樹脂板9Bに向かって、中間体20の周縁を押しながら中間体20を保持する。つまり、冷却工程P4では、凹状部22Aの側に表皮材12および樹脂板9Aが位置するように、かつ、凸状部22Bの側に樹脂板9Bが位置するように、中間体20を治具22に保持させる。これにより、中間体20は、周縁が樹脂板9Bの方に向かって押されるように保持される。つまり、中間体20は、プレス工程P3において冷却が早かった樹脂板9Bの方に向かって周縁が押されるように保持される。
【0038】
〔実施例1の効果〕
実施例1のラゲージボード1は、自動車2のラゲージルーム3に組み付けられるものであり、2つの樹脂板9の間に嵩上げ用の芯材10を配置するとともに一方の樹脂板9の外側表面に表皮材12を配置したものである。
また、実施例1のラゲージボード1の製造方法は、次の予熱工程P1およびプレス工程P3を備える。
【0039】
すなわち、予熱工程P1では、2つの樹脂板9を加熱して軟化させる。また、プレス工程P3では、軟化した2つの樹脂板9の間に芯材10を配置した主材料部19をプレス成型する。また、プレス工程P3では、一方の樹脂板9の外側表面を賦形する型15Aと、他方の樹脂板9の外側表面を賦形する型15Bとにより、主材料部19を挟んで加圧する。そして、プレス工程P3では、一方の樹脂板9の外側表面と型15Aの賦形面15Asとの間に、表皮材12を、テンションが付与された状態で配置し、さらに、表皮材12を、テンションが付与された状態に保ちながら、主材料部19とともに加圧する。
【0040】
これにより、潜在的に、材料のプレス成型を利用する場合でも表皮材12における皺の発生を抑制することができる。
すなわち、表皮材12を、テンションが付与された状態に保ちながら、主材料部19とともに、加圧するので、材料のプレス成型を利用する場合でも表皮材12における皺の発生を抑制することができる。
【0041】
また、実施例1のラゲージボード1の製造方法は、次の準備工程P2を備える。すなわち、準備工程P2では、表皮材12を治具14にセットすることで、表皮材12にテンションを付与する。また、治具14は、型15A、15Bを外側から包囲することができる形状であり、自身の内周に表皮材12を保持しながら表皮材12にテンションを付与する。
【0042】
そして、プレス工程P3では、表皮材12がセットされた状態で治具14を型15A、15Bの外周に配置することで、治具14の内周側で、表皮材12を賦形面15Asに向い合せる。
これにより、プレス工程P3の実行中でも、簡便に、表皮材12にテンションを付与し続けることができる。このため、表皮材12における皺の発生を、より一層、抑制することができる。
【0043】
また、実施例1のラゲージボード1の製造方法によれば、プレス工程P3では、型15Aが型15Bの下側に配置され、型15Bを型15Aに向かって下降させることで、主材料部19および表皮材12を加圧する。
これにより、下側に位置する型15Aと下側に位置する樹脂板9とにより表皮材12を挟んだ状態でプレス成型することができる。このため、表皮材12の位置が安定するので、表皮材12における皺の発生を、より一層、抑制することができる。
【0044】
また、実施例1のラゲージボード1の製造方法は、次の冷却工程P4を備える。すなわち、冷却工程P4では、プレス成型後の主材料部19および表皮材12を含む中間体20を冷却する。また、冷却工程P4では、プレス工程P3における樹脂板9A、9Bそれぞれの型15A、15Bへの放熱に関して、放熱量が大きい方の樹脂板9Bに向かって、中間体20の周縁を押しながら中間体20を保持する。つまり、中間体20は、プレス工程P3において冷却が早かった樹脂板9Bの方に向かって周縁が押されるように保持される。
これにより、中間体20に反りが発生するのを抑制することができる。
【0045】
すなわち、型15A、15Bから取り出された中間体20は、プレス工程P3における冷却が遅かった樹脂板9Aの方に向かって反り返る可能性が高い。そこで、冷却工程P4において、中間体20の周縁を樹脂板9Bの方に向かって押すように、中間体20を保持する。これにより、中間体20に反りが発生するのを抑制することができる。
【0046】
〔実施例2の構成〕
実施例2のラゲージボード1によれば、補強材11は、ロの字状の断面を有する金属体であり、アルミニウムを素材として設けられている(
図10参照。)。
【0047】
〔変形例〕
本願発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形例を考えることができる。
例えば、実施例1のラゲージボード1の製造方法によれば、プレス工程P3では、型15Aの上に、表皮材12、一方の樹脂板9、芯材10および補強材11、他方の樹脂板9を順次載せてから型15Bを下降させてプレス成型したが、プレス成型の態様は、このような態様に限定されない。
【0048】
例えば、型15Aに真空吸引するための孔を設けておき、真空引きにより、型15Aに表皮材12および一方の樹脂板9を密着させた上で、芯材10および補強材11、ならび他方の樹脂板9を順次載せてもよい。この場合、賦形面15Asと表皮材12との隙間を真空引きすることで、表皮材12および樹脂板9Aの外側表面を、より確実に賦形することができる。
【0049】
また、型15Bにも真空吸引するための孔を設けておき、真空引きにより、型15Bに他方の樹脂板9を密着させた上で、型15Bを型15Aに向かって下降させてプレス成型してもよい。この場合、賦形面15Bsと樹脂板9Bの外側表面との隙間を真空引きすることで、樹脂板9Bの外側表面を、より確実に賦形することができる。
【0050】
さらに、型15A、15Bのいずれか一方に、型内へ圧力空気を注入するための孔を設けておき、中間体20の内部空間へ圧力空気を注入するようにしてもよい。この場合、表皮材12および樹脂板9Aの外側表面を、より強力に賦形面15Asに密着させることができ、また、樹脂板9Bの外側表面を、より強力に賦形面15Bsに密着させることができる。このため、表皮材12および樹脂板9Aの外側表面、ならびに、樹脂板9Bの外側表面を、さらに確実に賦形することができる。
【0051】
また、実施例1のラゲージボード1の製造方法によれば、治具14は、針16により表皮材12を保持してテンションを付与するものであったが、治具14の態様は、このような態様に限定されない。例えば、枠体14Aの内周に、針16に替えてクリップを取り付け、クリップにより、表皮材12を保持してテンションを付与するようにしてもよい。また、針16やクリップのような、表皮材12を保持してテンションを付与する手段を、型15A、15Bのいずれか一方に一体的に設けてもよい。
【0052】
また、実施例1のラゲージボード1によれば、表皮材12は、樹脂板9Aの外側表面にのみ貼り付いていたが、表皮材12を樹脂板9A、9B両方の外側表面に貼り付けてもよい。また、表皮材12を樹脂板9A、9B両方の外側表面に貼り付ける場合、それぞれの表皮材12の種類や嵩密度を異ならせてもよい。この場合、樹脂板9Aから型15Aへの放熱量と、樹脂板9Bから型15Bへの放熱量とが異なり、樹脂板9A、9Bのいずれかの冷却が早い可能性が高い。このため、冷却工程P4では、放熱が早かった方の樹脂板9に向かって周縁を押しながら中間体20を保持するのが好ましい。
【0053】
また、実施例1のラゲージボード1によれば、2つの樹脂板9は、両方とも、ポリプロピレンにフィラーを配合した樹脂成型品であったが、ポリプロピレン以外の熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂として採用してもよく、例えば、ポリアミド、ポリエステル等を採用してもよく、ポリプロピレン以外のポリオレフィンを採用してもよい。
【0054】
また、実施例1のラゲージボード1によれば、芯材10は、発泡ポリプロピレンからなる樹脂発泡体であったが、芯材10の材料として、発泡ポリスチレンを採用してもよく、ポリスチレンとポリオレフィンの複合樹脂発泡体を採用してもよい。また、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、レゾール型フェノール,メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂などの発泡体を採用してもよい。
【0055】
また、実施例1のラゲージボード1によれば、補強材11は、H字状の断面を有する金属体であり、実施例2のラゲージボード1によれば、補強材11は、ロの字状の断面を有する金属体であったが、補強材11として、ハニカム構造を有するように成形したものや、エンボス加工を施したものを採用してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 ラゲージボード 2 自動車 3 ラゲージルーム 9、9A、9B 樹脂板 10 芯材 12 表皮材 15A 型(一方側の型) 15B 型(他方側の型) 15As 賦形面(一方側の型の賦形面) 15Bs 賦形面(他方側の型の賦形面) 19 主材料部 P1 予熱工程 P3 プレス工程
【要約】
【課題】材料のプレス成型を利用するラゲージボードの製造方法において、表皮材12における皺の発生を抑制する。
【解決手段】ラゲージボードの製造方法によれば、プレス工程では、2つの樹脂板9の間に芯材10を配置した主材料部19をプレス成型する。また、プレス工程では、一方の樹脂板9の外側表面を賦形する型15Aと、他方の樹脂板9の外側表面を賦形する型15Bとにより、主材料部19を挟んでプレス成型する。そして、プレス工程では、一方の樹脂板9の外側表面と型15Aの賦形面15Asとの間に、テンションが付与された状態の表皮材12を配置し、さらに、表皮材12を、テンションが付与された状態に保ちながら、主材料部19とともにプレス成型する。
【選択図】
図6