(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】スケートボード、及び操舵装置
(51)【国際特許分類】
A63C 17/04 20060101AFI20241021BHJP
A63C 17/26 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
A63C17/04
A63C17/26
(21)【出願番号】P 2024106929
(22)【出願日】2024-07-02
【審査請求日】2024-07-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524251441
【氏名又は名称】二江 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】二江 信太郎
【審査官】三田村 陽平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-067595(JP,A)
【文献】特開2013-240570(JP,A)
【文献】特表2005-537820(JP,A)
【文献】特開昭62-074384(JP,A)
【文献】特表2008-545480(JP,A)
【文献】特開2006-192078(JP,A)
【文献】国際公開第2019/165493(WO,A1)
【文献】米国特許第10384116(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63C 17/00-17/28
B62K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が乗る板部と、前記板部の裏面において前部に配置された前輪を有する前輪ユニットと、前記板部の裏面において後部に配置された後輪を有する後輪ユニットと、を備えたスケートボードであって、
前記前輪ユニットは、前記前輪を回転可能に支持する前輪支持部と、前記板部に交差する方向に延びる前部軸を中心とした回転を少なくとも実行可能に前記前輪支持部を支持する前輪座部と、を有し、
前記後輪ユニットは、前記後輪を回転可能に支持する後輪支持部と、前記板部に交差する方向に延びる後部軸を中心とした回転を少なくとも実行可能に前記後輪支持部を支持する後輪座部と、を有し、
前記前部軸及び前記後部軸は、前記板部の前方から後方に向かって上る方向に傾斜して配置され、
前記前輪ユニット及び前記後輪ユニットは、前記板部を幅方向に倒したカーブ走行の際に、前記後部軸を中心とした前記後輪支持部の回転量の方が、前記前部軸を中心とした前記前輪支持部の回転量よりも大きくなるように構成されている、スケートボード。
【請求項2】
前記前輪ユニット及び前記後輪ユニットを操舵する操舵装置を備え、
前記操舵装置は、前記前輪支持部及び前記後輪支持部を連結軸により連結することによって前記前輪支持部及び前記後輪支持部を連動させる連動機構を有し、
前記連結軸の一端は、前記前部軸を中心とした回転が少なくとも可能となるように前記前輪支持部に連結され、
前記連結軸の他端は、前記後部軸を中心とした回転が少なくとも可能となるように前記後輪支持部に連結されている、請求項1に記載のスケートボード。
【請求項3】
前記操舵装置は、前記連結軸の一端が前記前輪支持部に連結された箇所である前部連結点と、前記連結軸の他端が前記後輪支持部に連結された箇所である後部連結点と、を有し、
前記連結軸は、前記前部軸と前記前部連結点との距離と、前記後部軸と前記後部連結点との距離と、が異なることにより、前記前輪ユニット及び前記後輪ユニットが並ぶ前後方向に沿って延びる基準線に対して傾けて配置されている、請求項2に記載のスケートボード。
【請求項4】
前記連結軸は、前記基準線と交差する方向において前記基準線の両側のうちの一方に配置されている、請求項3に記載のスケートボード。
【請求項5】
前記連結軸の一端は、自在継手の機能を有する第1弾性体を介して前記前輪支持部に連結され、前記連結軸の他端は、自在継手の機能を有する第2弾性体を介して前記後輪支持部に連結されている、請求項2に記載のスケートボード。
【請求項6】
前記連結軸は、意匠表示が可能な表示部を有する、請求項2に記載のスケートボード。
【請求項7】
前記後輪は、前記後部軸に対して交差する方向において、前記後部軸の後方に配置されている、請求項1に記載のスケートボード。
【請求項8】
前記前輪は、前記前部軸の両側に一対配置され、
前記後輪は、1つ配置されている、請求項1に記載のスケートボード。
【請求項9】
走行体の前輪を回転可能に支持する前輪支持部と、前記前輪の車軸に対して交差する方向に延びる前部軸を中心とした回転を少なくとも実行可能に前記前輪支持部を支持する前輪座部と、を有する前輪ユニットと、
前記走行体の後輪を回転可能に支持する後輪支持部と、前記後輪の車軸に対して交差する方向に延びる後部軸を中心とした回転を少なくとも実行可能に前記後輪支持部を支持する後輪座部と、を有する後輪ユニットと、
前記前輪支持部及び前記後輪支持部を連結軸により連結することによって前記前輪支持部及び前記後輪支持部を連動させる連動機構と、を備えた操舵装置であって、
前記連結軸の一端は、前記前部軸を中心とした回転が少なくとも可能となるように前記前輪支持部に連結され、
前記連結軸の他端は、前記後部軸を中心とした回転が少なくとも可能となるように前記後輪支持部に連結され、
前記連結軸は、前記連結軸の一端が前記前輪支持部に連結された箇所である前部連結点と前記前部軸との距離と、前記連結軸の他端が前記後輪支持部に連結された箇所である後部連結点と前記後部軸との距離と、が異なることにより、前記前輪ユニット及び前記後輪ユニットが並ぶ前後方向に沿って延びる基準線に対して傾けて配置されている、操舵装置。
【請求項10】
前記連結軸は、前記基準線と交差する方向において前記基準線の両側のうちの一方に配置されている、請求項9に記載の操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スケートボード、及び操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、車輪が付いた板状のボードに乗って走行する乗り物としてスケートボードが周知である。特許文献1のスケートボードは、ボードの裏面の前後の各々に、複数のパーツから構成されたトラックが設けられている。この種のスケートボードにおいては、走行中にボードの幅方向の一方に荷重が加わると、車輪を有するシャフトがベースプレートのキングピンを中心に捩れるように回転することにより、荷重が加わる方向にカーブ走行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ボードの幅方向の一方に荷重をかけることによってカーブ走行する際、使用者の意図通りに滑らかにカーブ走行できることは重要な要素の一つであるが、同時に横滑り感を得たい要望もある。
【0005】
本発明の目的は、十分な横滑り感を発生させながら、より滑らかにカーブ走行できるスケートボード、及び操舵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するスケートボードは、使用者が乗る板部と、前記板部の裏面において前部に配置された前輪を有する前輪ユニットと、前記板部の裏面において後部に配置された後輪を有する後輪ユニットと、を備えた構成であって、前記前輪ユニットは、前記前輪を回転可能に支持する前輪支持部と、前記板部に交差する方向に延びる前部軸を中心とした回転を少なくとも実行可能に前記前輪支持部を支持する前輪座部と、を有し、前記後輪ユニットは、前記後輪を回転可能に支持する後輪支持部と、前記板部に交差する方向に延びる後部軸を中心とした回転を少なくとも実行可能に前記後輪支持部を支持する後輪座部と、を有し、前記前部軸及び前記後部軸は、前記板部の前方から後方に向かって上る方向に傾斜して配置され、前記前輪ユニット及び前記後輪ユニットは、前記板部を幅方向に倒したカーブ走行の際に、前記後部軸を中心とした前記後輪支持部の回転量の方が、前記前部軸を中心とした前記前輪支持部の回転量よりも大きくなるように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、十分な横滑り感を発生させながら、より滑らかにカーブ走行できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る操舵装置を有するスケートボードの斜視図である。
【
図6】カーブ走行の際のスケートボードの側面図である。
【
図7】カーブ走行の際のスケートボードの上面図である。
【
図8】(a)直進走行の際のスケートボードの背面図であり、(b)は、カーブ走行の際のスケートボードの背面図である。
【
図9】操舵装置の動作の概要を示し、(a)は直進の概要図であり、(b)は左カーブの概要図であり、(c)は右カーブの概要図である。
【
図10】(a)は本例のスケートボードのカーブ走行の概要図であり、(b)は一般的なスケートボードのカーブ走行の概略図である。
【
図11】操舵装置の動作の概要を示し、(a)は中立状態の概要図であり、(b)は前後輪が非同期のときの概要図である。
【
図12】操舵装置の動作の概要を示し、(a)は中立状態の概要図であり、(b)、(c)は前後輪が非同期のときの概要図である。
【
図13】操舵装置の動作の概要を示し、(a)は中立状態の概要図であり、(b)は前後輪が非同期のときの概要図である。
【
図14】操舵装置の動作の概要を示し、(a)は直進走行時の概要図であり、(b)はカーブ走行時の概要図である。
【
図15】操舵装置の動作の概要を示し、(a)は直進走行時の概要図であり、(b)はカーブ走行時の概要図である。
【
図16】(a)~(c)は、走行フィーリングの変更の説明図である。
【
図17】表示部を有するスケートボードの斜視図である。
【
図18】別例に係る連動機構の構造を示す断面図である。
【
図19】他の別例に係るスケートボードの斜視図である。
【
図20】他の別例に係るスケートボードの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一実施形態を説明する。
(走行体1)
図1に示すように、走行体1は、使用者が板部2に乗って走行するスケートボード1aである。スケートボード1aは、板部2が中立位置の場合に直進する。また、スケートボード1aは、板部2が幅方向の片側(
図1の矢印A方向)に倒されると、その倒された方向に向かってカーブ走行する。
【0010】
(操舵装置7)
図1に示す通り、走行体1は、前輪3が取付けられる前輪ユニット4と、後輪5が取付けられる後輪ユニット6と、を操舵する操舵装置7を備える。走行体1の進行方向は、操舵装置7によって操舵される。走行体1がスケートボード1aの場合、板部2が幅方向に倒し操作されると、操舵装置7によって前輪3及び後輪5が板部2の倒れに応じた方向を向くことにより、スケートボード1aがカーブ走行する。
【0011】
(前輪ユニット4)
図2及び
図3に示すように、前輪ユニット4は、前輪3を回転可能に支持する前輪支持部8と、前輪支持部8を回転可能に支持する前輪座部9と、を有する。
図3に示す通り、前輪座部9は、板部2の裏面に固定された座部本体10と、座部本体10に形成されるとともに前輪支持部8を回転可能に嵌合される嵌合突11と、を有する。座部本体10は、板部2の裏面の前部寄りの位置において、例えば、ねじ等の締結部によって固定されることが好ましい。嵌合突11は、例えば、座部本体10の端面において端面よりも小径の円環状に形成されている。
【0012】
図4に示すように、前輪支持部8は、前輪座部9に連結されるとともに前輪3を支持する支持本体12を有する。支持本体12は、板部2に近い側の端面において、嵌合突11が摺動可能に嵌合される嵌合凹部13を有する。支持本体12は、嵌合凹部13が嵌合突11に嵌合された構造により、嵌合突11の軸心回りに回転可能となっている。支持本体12は、板部2の反対側の端部において、前輪3の車軸14を回転可能に支持する車軸支持部15を有する。
【0013】
図5に示すように、前輪支持部8は、前輪3の車軸14に対して交差する方向に延びる前部軸L1を中心とした回転を少なくとも実行可能となるように前輪座部9に支持されている。前部軸L1は、走行体1(板部2)の前から後に向かって上る方向(
図5の+Z軸方向)に傾斜して配置されている。本例の場合、前部軸L1は、嵌合凹部13が嵌合突11に対して回転する際の回転軸である。なお、前輪座部9は、前輪支持部8を前部軸L1の少なくとも回転回りに支持するものであればよい。板部2の裏面に対して前部軸L1の成す角度θ1は、90度未満の値であればよい。
【0014】
(後輪ユニット6)
図2~
図4に示す通り、後輪ユニット6は、後輪5を回転可能に支持する後輪支持部17と、後輪支持部17を回転可能に支持する後輪座部18と、を有する。
図3に示す通り、後輪座部18は、前輪座部9と同様に、座部本体19及び嵌合突20を有する。座部本体19は、板部2の裏面の前部寄りの位置において、例えば、ねじ等の締結部によって固定されることが好ましい。なお、後輪座部18は、前輪座部9と同じ形状であることが好ましい。
【0015】
後輪支持部17は、第1パーツ21と第2パーツ22とを組み合わせた構造を有する。本例の場合、第1パーツ21は、後輪座部18に連結されるとともに、後輪5の車軸23の片側を回転可能に支持する。第2パーツ22は、第1パーツ21に組付けられるとともに、後輪5の車軸23のもう片側を回転可能に支持する。
図4に示す通り、第1パーツ21は、板部2に近い側の端面において、嵌合突20が摺動可能に嵌合される嵌合凹部24を有する。第1パーツ21及び第2パーツ22は、嵌合凹部24が嵌合突20に嵌合された構造により、嵌合突20の軸心回りに回転可能となっている。
【0016】
図5に示す通り、後輪支持部17は、後輪5の車軸23に対して交差する方向に延びる後部軸L2を中心とした回転を少なくとも実行可能となるように後輪座部18に支持されている。後部軸L2は、走行体1(板部2)の前方から後方に向かって上る方向(
図5の+Z軸方向)に傾斜して配置されている。後部軸L2は、嵌合凹部24が嵌合突20に対して回転する際の回転軸である。なお、後輪座部18は、後輪支持部17を後部軸L2の少なくとも回転回りに支持するものであればよい。板部2の裏面に対して後部軸L2の成す角度θ2は、90度未満であればよい。本例の場合、角度θ1及び角度θ2は、例えば、同じ値に設定されている。
【0017】
(前輪3及び後輪5の配置)
図5に示す通り、前輪3は、前部軸L1の線上に回転軸が位置するように配置されている。なお、前輪3は、前部軸L1の線上に配置されることに限らず、前部軸L1の線に対して前側又は後側に配置されてもよい。後輪5は、後部軸L2に対して交差する方向(
図5の矢印B方向)において、後部軸L2の後方に配置されている。
【0018】
(走行体1の車輪数)
図1~
図4に示す通り、前輪3は、前部軸L1の両側に一対配置されている。このように、本例の前輪3は、車軸14の両側に一対配置されることによって、計2つ設けられている。一方、後輪5は、1つ設けられている。以上のように、本例の走行体1は、2つの前輪3と1つの後輪5とを有する3輪型である。
【0019】
(連動機構27)
図1~
図3等に示す通り、操舵装置7は、前輪支持部8及び後輪支持部17を連結軸28により連結することによって前輪支持部8及び後輪支持部17を連動させる連動機構27を有する。連結軸28は、例えば、円柱状の棒である。
図2に示す通り、連結軸28は、前輪ユニット4及び後輪ユニット6が並ぶ前後方向に沿って延びる基準線Laに対して傾けて配置されている。具体的には、連結軸28は、連結軸28の一端(前端)が連結軸28の他端(後端)よりも基準線Laから離れて位置するように傾斜した状態で配置されている。また、連結軸28は、基準線Laと交差する方向において基準線Laの両側のうちの一方に配置されている。
【0020】
連結軸28の一端は、前部軸L1を中心とした回転が少なくとも可能となるように前輪支持部8に連結されている。具体的には、連結軸28の一端は、自在継手の機能を有する第1弾性体29を介して前輪支持部8に連結されている。本例の場合、連結軸28の一端は、前輪支持部8が有する連結部30に第1弾性体29を介して摺動可能に連結されている。連結部30は、連結部30の本体をなす基端部30aと、基端部30aの一部分から突設された突片30bと、を有する。連結部30は、例えば、支持本体12に着脱可能に構成されることが好ましい。突片30bは、例えば、板状に形成されることが好ましい。
【0021】
連結軸28の他端は、後部軸L2を中心とした回転が少なくとも可能となるように後輪支持部17に連結されている。具体的には、連結軸28の他端は、自在継手の機能を有する第2弾性体31を介して後輪支持部17に連結されている。本例の場合、連結軸28の他端は、後輪支持部17が有する第2パーツ22に第2弾性体31を介して摺動可能に連結されている。本例の場合、第2パーツ22は、第2パーツ22の本体をなす車軸支持部32aと、車軸支持部32aの一部分から突設された突片32bと、を有する。第2パーツ22は、例えば、第1パーツ21に着脱可能に構成されることが好ましい。突片32bは、例えば、板状に形成されることが好ましい。
【0022】
図3に示す通り、連結軸28の一端は、前輪支持部8の突片30bに貫設された孔34に摺動可能に挿入されている。第1弾性体29は、孔34に挿入された連結軸28の一端に固定されるとともに突片30bを挟むように配置された一対の環状弾性片35、36を有する。連結軸28の他端は、後輪支持部17の突片32bに貫設された孔38に摺動可能に挿入されている。第2弾性体31は、第1弾性体29と同様の一対の環状弾性片39、40を有する。環状弾性片35、36、39、40は、例えば、連結軸28のブッシュ(例えば、軸受)の機能を有する。
【0023】
第1弾性体29の両側には、連結軸28に取付けられた第1弾性体29の位置を固定するワッシャ41及びナット42が配置されている。ナット42は、例えば、連結軸28の所定位置に形成されたネジ溝(図示略)に螺着されている。ワッシャ41及びナット42は、第2弾性体31の両側にも配置されている。第1弾性体29及び第2弾性体31は、例えば、樹脂やゴムが使用される。
【0024】
以上の構成により、連動機構27は、連結軸28の一端と前輪支持部8とが連結された箇所を前部連結点P1(
図2等参照)として、前部連結点P1の周りに全方位回転する。また、連動機構27は、連結軸28の他端と後輪支持部17とが連結された箇所を後部連結点P2(
図2等参照)として、後部連結点P2の周りに全方位回転する。このように、連動機構27は、連結軸28の一端の前部連結点P1の全方位回転、及び、連結軸28の他端の後部連結点P2の全方位回転により、連結軸28による前輪支持部8及び後輪支持部17の連動が許容されている。
【0025】
(カーブ走行時の車輪回転量)
図6及び
図7に示すように、走行体1でカーブ走行する場合には、板部2に乗った操作者が板部2を幅方向(
図6の矢印A1方向)に倒し操作する。このとき、倒し操作された板部2にかかる荷重によって、前輪支持部8が前部軸L1の軸回り(
図6の矢印C1方向)に回転するとともに、後輪支持部17が後部軸L2の軸回り(
図6の矢印C2方向)に回転する。すなわち、板部2にかけられた荷重が前輪支持部8及び後輪支持部17の軸回りの回転のための荷重として作用し、前輪支持部8及び後輪支持部17が所定量回転する。
【0026】
図7に示す通り、本例の場合、前輪支持部8の回転量Rを「R1」とし、後輪支持部17の回転量Rを「R2」とする。また、本例の場合、回転量Rは、板部2の幅方向の中央において前後方向に延びる基準線Laに対して前輪支持部8及び後輪支持部17の各々が成す角とする。前輪ユニット4及び後輪ユニット6は、板部2を幅方向に倒したカーブ走行の際に、後部軸L2を中心とした後輪支持部17の回転量R2が、前部軸L1を中心とした前輪支持部8の回転量R1よりも大きくなるように構成されている。
【0027】
(実施形態の作用)
次に、本実施形態の走行体1の作用について説明する。
(直進走行時)
図2、
図5、及び
図8(a)に示すように、走行体1で直進する場合には、操舵装置7を中立状態とすることにより、板部2を傾けずに水平にする。このとき、前輪支持部8の回転量R1、及び後輪支持部17の回転量R2がともに「0」、すなわち、前輪支持部8及び後輪支持部17がいずれも回転していない中立位置をとる。これにより、走行体1が直進方向(
図2の白抜き矢印方向)に走行する。
【0028】
(カーブ走行時)
図6、
図7、及び
図8(b)に示すように、走行体1でカーブ走行する場合には、板部2に対して幅方向の一方に荷重をかけて傾けることにより、操舵装置7を操舵する。本例の場合、前部軸L1及び後部軸L2は、ともに板部2の前方から後方に向かって上る方向(
図6の+Z軸方向)に傾斜している。このため、板部2が幅方向に倒し操作されると、前輪支持部8及び後輪支持部17は、前部軸L1及び後部軸L2の軸線を中心として、カーブしたい方向とは逆方向(
図6の矢印C1、C2方向)に回転する。これにより、
図7に示す通り、前輪支持部8及び後輪支持部17は、いずれも走行方向に対して斜め右方向(
図7の矢印D1、D2方向)を向いた状態をとる。
【0029】
図9(a)~
図9(c)は、カーブ走行の際の連動機構27の動きの原理を示す説明図である。なお、これら図においては、連動機構27の構成について、前部軸L1、後部軸L2、前部連結点P1、及び後部連結点P2の各々を、「◎」や「○」で簡易的に図示する。また、これら図では、前部軸L1、後部軸L2、前部連結点P1、及び後部連結点P2を同一水平面上に図示している。
【0030】
図9(a)に示すように、連結軸28は、前部軸L1から前部連結点P1までの第1距離Lsと、後部軸L2から後部連結点P2までの第2距離Ltと、が異なることにより、基準線Laに対して傾けて配置されている。本例の場合、この構造によって、回転量R1と回転量R2との回転差が生じる。これにより、板部2が倒し操作された際には、前輪支持部8の前部軸L1の軸回りの回転量R1が少なく、後輪支持部17の後部軸L2の軸回りの回転量R2が多くなる。従って、この回転差が走行体1をカーブさせるモーメントとして作用する。本例の場合、この回転差が作用することにより、板部2の倒した向きに応じた方向に走行体1がカーブ走行する。
【0031】
このように、カーブ走行のために板部2が倒し操作された際、前輪支持部8及び後輪支持部17には、カーブ方向とは反対方向に回転する。すなわち、カーブ走行の方向とは逆側の方向に前輪3及び後輪5が向く。このため、カーブ走行するために板部2を傾けた際には、カーブ方向とは反対側へのモーメントを発生させることが可能となる。また、前輪支持部8及び後輪支持部17の回転量R1、R2に回転差に生じているので、この回転差に応じた旋回量でカーブ走行する。これにより、前輪3及び後輪5の向きに応じた横滑りを発生させながら、カーブ走行することが可能となる。
【0032】
図10(a)は、本例のスケートボード1aのカーブ走行のイメージ図である。
図10(b)は、一般的なスケートボード1bのカーブ走行のイメージ図である。一般的なスケートボード1bの場合、スケートボード1bがカーブ走行の軌跡上に常時位置するので、十分な横滑り感が得られない。一方、本例のスケートボード1aの場合、板部2の後部がカーブ走行の軌跡から遠心力方向に飛び出すように移動するので、十分な横滑り感が得られる。
【0033】
また、
図8(b)に示す通り、カーブ走行の際には、前輪3は路面にべた付きするものの、後輪5は片側が浮いた状態となる。このように、路面に対する接地面は、前輪3に比べ、後輪5の方が小さくなる。このため、カーブ走行時に路面から車輪にかかる抵抗が低く抑えられるので、カーブ走行時の減速を少なく抑えることが可能となる。よって、カーブ走行の滑らかさの向上に一層寄与する。
【0034】
(カーブ走行の際の連動機構27の動きの原理)
図9(a)から
図9(b)の流れで示すように、直進方向に対して左方向にカーブ走行する場合には、前輪支持部8が前部軸L1の軸回りにおいて紙面時計回り方向に回転するとともに、後輪支持部17も連結軸28にアシストされながら前輪支持部8とともに回転量Rの差をもって同じ方向に回転する。これにより、直進方向に対して左方向に走行の荷重が発生することによって、走行体1が左方向にカーブ走行する。
【0035】
また、
図9(a)から
図9(c)の流れで示すように、直進方向に対して右方向にカーブ走行する場合には、前輪支持部8が前部軸L1の軸回りにおいて紙面反時計回り方向に回転するとともに、後輪支持部17も連結軸28にアシストされながら前輪支持部8とともに回転量Rの差をもって同じ方向に回転する。これにより、直進方向に対して右方向に走行の荷重が発生することによって、走行体1が右方向にカーブ走行する。
【0036】
(連動機構27の構造上の特徴)
図11(a)は、例えば、操舵装置7の中立状態において、前部軸L1、後部軸L2、前部連結点P1、及び後部連結点P2が基準線Laの線上に位置する連動機構27を図示する。この構造の連動機構27の場合、連結軸28が初期位置にあるときには、後部軸L2が連結軸28の軸上に位置するので、連結軸28が後部軸L2を中心に紙面時計回り方向及び紙面反時計回り方向のどちらにも回転し易い。このため、
図11(b)に示すように、前部軸L1と後部軸L2とでそれぞれ逆方向の回転が生じてしまう場合がある。よって、この構造を連動機構27の構造として採用することは好ましくない。
【0037】
図12(a)は、例えば、操舵装置7の中立状態において、基準線Laに対して傾き配置された連結軸28の軸上に後部軸L2が位置する連動機構27を図示する。この構造の連動機構27の場合も、連結軸28が初期位置にあるときには、後部軸L2が連結軸28の軸上に位置するので、連結軸28が後部軸L2を中心に紙面時計回り方向及び紙面反時計回り方向のどちらにも回転し易い。このため、
図12(b)に示すように、前部軸L1と後部軸L2とでそれぞれ逆方向の回転が生じてしまう場合がある。また、
図12(c)に示すように、連結軸28が初期位置から紙面時計回り方向に回転する場合に、後部軸L2に半径外側方向の力Faがかかってしまうことがある。こうなると、後部軸L2の軸回り回転がロックされ、前輪支持部8が軸回り回転しない状態となる。以上により、この構造を連動機構27の構造として採用することは好ましくない。
【0038】
図13(a)は、例えば、操舵装置7の中立状態において、基準線Laに対して傾き配置された連結軸28の後部連結点P2が基準線Laの線上に位置する連動機構27を図示する。この構造の場合、
図13(b)に示すように、前部連結点P1が初期位置から少し回転したとき、連結軸28の軸上に後部軸L2が位置する状態をとる。こうなると、前述の
図12(c)と同様の状態となってしまうので、後部軸L2の軸回り回転がロックされた状態、すなわち、前輪支持部8が軸回り回転しない状態となる。よって、この構造を連動機構27の構造として採用することは好ましくない。
【0039】
一方、
図9(a)~(c)に示す通り、本例の連動機構27の場合、前輪支持部8の前部軸L1を中心とした回転範囲においては、連結軸28の軸上に後部軸L2が位置する状態にはならない。すなわち、前部軸L1の回転範囲において、前部連結点P1、後部連結点P2、及び後部軸L2が同一直線上に位置しない。このため、前部軸L1を中心とした前輪3の回転と、後部軸L2を中心とした後輪5の回転とが、それぞれ逆方向になり難い。また、前部軸L1を中心とした前輪3の回転の際に、後部軸L2に半径外側方向の力Faがかかってしまう状況(
図12(c)、及び
図13(b)を参照)も生じ難い。
【0040】
以上により、前輪3が前部軸L1を中心として回転するときの後輪5の制御がし易くなるので、前輪3及び後輪5の連動を取り易くすることが可能となる。また、直進走行時に後輪5を直進方向に保つ「ゼロ点保持」も実現し易くなる。
【0041】
また、別の観点から見て、
図14(a)に示すように、操舵装置7の中立状態において、連結軸28が実施例とは逆方向に傾斜する場合を検討してみる。具体的には、連結軸28の他端(後端)が連結軸28の一端(先端)よりも基準線Laから離れて位置する場合を検討する。この構造の場合、前部軸L1の軸回りに回転が生じた際には、後部軸L2回りの回転も同じ方向とすることが可能である。しかし、
図14(b)に示すように、後部軸L2の軸回りの回転量R2が前部軸L1の軸回りの回転量R1よりも小さくなってしまい、カーブ方向が逆になってしまう。
【0042】
さらに、別の観点から見て、
図15(a)に示すように、操舵装置7の中立状態において、連結軸28が走行体1の前後方向の基準線Laと平行をとる場合を検討してみる。この構造の場合も、
図15(b)に示すように、後部軸L2の軸回りの回転量R2が前部軸L1の軸回りの回転量R1よりも小さくなってしまい、カーブ方向が逆になってしまう。
【0043】
以上により、連結軸28は、連結軸28の一端(前端)が連結軸28の他端(後端)よりも基準線Laから離れて位置するように傾斜した状態に配置されることが好ましい。また、換言するならば、前部軸L1(後部軸L2)を中心とした回転の回転範囲は、連結軸28が基準線Laと平行となる位置を最大回転量として超えないように設定されることが好ましい。
【0044】
(第1弾性体29及び第2弾性体31を用いた連動機構27の利点)
図3等に示す通り、本例の連動機構27は、第1弾性体29及び第2弾性体31によって連結軸28の端部を前輪支持部8及び後輪支持部17に連結する構造である。このため、連動機構27は、連結軸28を単にゴム等の弾性部材で前輪支持部8及び後輪支持部17に連結する構造となるので、複雑な構造を必要としない。このため、連動機構27ひいては走行体1の構造を簡素化することが可能となる。
【0045】
また、前輪支持部8及び前輪座部9は、前部軸L1の軸回りに単に回転するように形成すればよい。同様に、後輪支持部17及び後輪座部18も、後部軸L2の軸回りに単に回転するように形成すればよい。従って、前輪支持部8及び前輪座部9を連結する箇所、及び後輪支持部17及び後輪座部18を連結する箇所の構造も複雑化しない。よって、このことは、走行体1の構造の簡素化に一層寄与する。
【0046】
(前部連結点P1及び後部連結点P2の位置の変更)
図16(a)~
図16(c)に示すように、前部連結点P1及び後部連結点P2の少なくとも一方は、横滑りやカーブ走行のフィーリングを変更するために、位置を変更可能に構成されてもよい。例えば、前部連結点P1の位置は、前輪ユニット4の連結部30の形状を変更することで対応する。これは、例えば、複数用意された形状の異なる連結部30を交換することで実現してもよい。また、後部連結点P2の位置は、後輪ユニット6の第2パーツ22の形状を変更することで対応する。これは、例えば、複数用意された形状の異なる第2パーツ22を交換することで実現してもよい。
【0047】
ところで、
図16(b)の実線で示した連結軸28の場合と、
図16(c)の実線で示した連結軸28の場合とでは、前部軸L1及び後部軸L2の軸回り回転の角度変化がほぼ等しい。さらに、
図16(b)の破線で示した連結軸28の場合と、
図16(c)の破線で示した連結軸28の場合とにおいても、前部軸L1及び後部軸L2の軸回り回転の角度変化がほぼ等しい。よって、前部軸L1を通るとともに基準線Laに直交する第1幅方向線Lbの線上に前部連結点P1を配置し、さらに、後部軸L2を通るとともに基準線Laに直交する第2幅方向線Lcの線上に後部連結点P2を配置すれば、左方向のカーブと右方向のカーブとでフィーリングを同等のものとすることが可能となる。
【0048】
(表示部44)
図17に示すように、連結軸28は、意匠表示が可能な表示部44を有してもよい。表示部44は、例えば、意匠表示箇所となる表示板44aと、表示部44を連結軸28に固定するための固定部44bと、を有する。表示部44は、走行体1の走行に関係しない部位であって、連結軸28と一体回転する。表示部44(具体的には、表示板44a)には、例えば、絵、文字、数字などのデザインが表示される。また、表示部44に広告等を載せることも可能である。
【0049】
(実施形態の効果)
上記実施形態の操舵装置7(スケートボード1a)によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0050】
(1)本構成によれば、前部軸L1及び後部軸L2の各々が走行体1の前から後に向かって上る方向に傾斜して配置されているので、カーブ走行のために走行体1が幅方向に傾いた状態をとった際には、前輪支持部8及び後輪支持部17がカーブ方向とは反対方向に回転する。また、前輪支持部8及び後輪支持部17がカーブ方向とは反対方向に回転しても、これらの回転量Rには回転差が生じているので、走行体1を傾けた方向に回転差に応じた旋回半径で走行体1がカーブ走行する。
【0051】
以上のように、カーブ走行の際には、前輪支持部8及び後輪支持部17がカーブ方向とは反対方向に回転することによって前輪3及び後輪5がカーブ走行とは反対方向を向くので、走行体1に横滑り感を発生させることが可能となる。また、カーブ走行時に走行体1に横滑り感を発生可能としても、前輪支持部8及び後輪支持部17に回転差を生じさせることにより、走行体1も所望の方向にカーブ走行する。よって、十分な横滑り感を発生させながら、より滑らかにカーブ走行することができる。
【0052】
(2)スケートボード1aは、前輪ユニット4及び後輪ユニット6を操舵する操舵装置7を備える。操舵装置7は、前輪支持部8及び後輪支持部17を連結軸28により連結することによって前輪支持部8及び後輪支持部17を連動させる連動機構27を有する。連結軸28の一端は、前部軸L1を中心とした回転が少なくとも可能となるように前輪支持部8に連結されている。連結軸28の他端は、後部軸L2を中心とした回転が少なくとも可能となるように後輪支持部17に連結されている。この構成によれば、前輪支持部8及び後輪支持部17が連動機構27によって連動するので、カーブ走行の際に前輪3及び後輪5を同じ方向に向かせ易くなる。よって、ユーザの意図した方向にカーブ走行できる。
【0053】
(3)操舵装置7は、連結軸28の一端が前輪支持部8に連結された箇所である前部連結点P1と、連結軸28の他端が後輪支持部17に連結された箇所である後部連結点P2と、を有する。連結軸28は、前部軸L1と前部連結点P1との第1距離Lsと、後部軸L2と後部連結点P2との第2距離Ltと、が異なることにより、前輪ユニット4及び後輪ユニット6が並ぶ前後方向に沿って延びる基準線Laに対して傾けて配置されている。この構成によれば、前部軸L1、後部軸L2、前部連結点P1、及び後部連結点P2の位置関係を最適化することにより、前輪支持部8及び後輪支持部17を所望の方向に向け易くなる。よって、ユーザの意図した方向へのカーブ走行に実現に一層寄与する。
【0054】
(4)連結軸28は、基準線Laと交差する方向において基準線Laの両側のうちの一方に配置されている。この構成によれば、連動機構27を基準線Laの片方にまとめて配置することが可能となるので、部品配置を最適化できる。
【0055】
(5)連結軸28の一端は、自在継手の機能を有する第1弾性体29を介して前輪支持部8に連結され、連結軸28の他端は、自在継手の機能を有する第2弾性体31を介して後輪支持部17に連結されている。この構成によれば、連動機構27の構造を、弾性部材を用いた簡素な構造とすることができる。
【0056】
(6)連結軸28は、意匠表示が可能な表示部44を有する。この構成によれば、連結軸28に設けられた表示部44によって、絵、数字、文字などのデザインを表示することができる。
【0057】
(7)後輪5は、後部軸L2に対して交差する方向において、後部軸L2の後方に配置されている。この構成によれば、後輪5が前輪3から離れた位置に配置されるので、走行の際に幅方向に傾けられた走行体1が元の中立状態に戻される際に、後輪5を中立位置の方向に戻すための大きな弾性を後輪5に発生させることが可能となる。よって、この弾性を加速に活かすことができる。
【0058】
(8)前輪3は、前部軸L1の両側に一対配置されている。後輪5は、1つ配置されている。この構成によれば、輪数を少なくすることが可能となるので、走行体1の部品点数の削減に寄与する。また、部品コストの低減にも寄与する。
【0059】
(9)カーブ走行時、前輪3が路面にべた付きするものの後輪5は片側が浮いた状態となるので、路面に対する接地面は前輪3に比べて後輪5の方が小さくなる。従って、カーブ走行時に路面から車輪にかかる抵抗が低く抑えられるので、カーブ走行時の減速を少なく抑えることが可能となる。よって、カーブ走行の滑らかさの向上に一層寄与する。
【0060】
(他の実施形態)
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0061】
・
図18に示すように、連結軸28の軸方向の各端部に、所定量膨らんだ膨出部45a、45bを形成してもよい。膨出部45a、45bは、表面が球面形状に形成されるとともに、連結軸28の軸回りに周状に形成されることが好ましい。この構成の場合、膨出部45a、45bの表面形状によって、連結軸28の各端部における自在継手としてのスムーズな動きが案内される。よって、連動機構27の機能性を向上することができる。
【0062】
・
図19に示すように、板部2は、幅方向に傾けられた際に、前輪ユニット4との干渉を回避するための切込部49が形成されていてもよい。この場合、カーブ走行時に板部2が大きく傾き操作される構成をとっても、板部2が前輪ユニット4に接触しないようになる。
【0063】
・
図20及び
図21に示すように、走行体1は、前輪ユニット4と後輪ユニット6とが連動機構27によって連結されていない構造であってもよい。具体的には、
図20に示す通り、前輪ユニット4及び後輪ユニット6の各々の車輪数を2輪とし、これらを連動機構27で連結せず、独立した構造とする。そして、
図21に示す通り、前部軸L1の角度θ1よりも、後部軸L2の角度θ2を大きく設定する。これにより、板部2を傾けたカーブ走行時に前輪3及び後輪5に「R2>R1」の回転差を発生させることが可能となるので、十分な横滑り感を発生させながら滑らかにカーブ走行することができる。
【0064】
・第1弾性体29及び第2弾性体31は、複数の弾性片から構成されることに限らず、1つの部材のみから構成されてもよい。
・連結軸28は、操舵装置7の中立状態において、前端が基準線Laに近く後端が基準線Laから遠いように傾斜して配置されてもよい。また、連結軸28は、操舵装置7の中立状態において、基準線Laに平行に配置されてもよい。
【0065】
・連結軸28は、例えば
図9(a)において、前部連結点P1が基準線Laの紙面左右方向の一方に配置され、後部連結点P2が基準線Laの紙面左右方向の他方に配置された構成であってもよい。
【0066】
・連動機構27は、例えば、連結軸28の各々の両端を軸中心に回転させる構造でもよい。具体的には、連結軸28の一端が軸回転可能に前輪支持部8に連結され、連結軸28の他端が軸回転可能に後輪支持部17に連結される構造としてもよい。
【0067】
・連動機構27は、板部2の幅方向の操作に対して連結軸28が両端で回転する回転式に限定されない。例えば、連動機構27は、軸方向に互いに直線移動可能なスライダ部材から構成されたスライダ式であってもよい。
【0068】
・前部軸L1の軸回り回転と後部軸L2の軸回りの回転との回転差は、例えば、前後輪で同じ車輪数とするものの、車輪幅を変えることによって、回転差を発生させてもよい。
・前輪ユニット4及び後輪ユニット6は、弾性部材(第1弾性体29、第2弾性体31)を利用した構造に限らず、例えば、一般的な構造として広く用いられているトラックを用いた構造でもよい。
【0069】
・走行体1は、スケートボード1aに限らず、例えば、キックボード(登録商標)でもよい。
・本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0070】
1…走行体、1a…スケートボード、2…板部、3…前輪、4…前輪ユニット、5…後輪、6…後輪ユニット、7…操舵装置、8…前輪支持部、9…前輪座部、14…車軸、17…後輪支持部、18…後輪座部、23…車軸、27…連動機構、28…連結軸、29…第1弾性体、31…第2弾性体、44…表示部、L1…前部軸、L2…後部軸、R、R1、R2…回転量、Ls…第1距離、Lt…第2距離、La…基準線。
【要約】
【課題】十分な横滑り感を発生させながら、より滑らかにカーブ走行できるスケートボード、及び操舵装置を提供する。
【解決手段】スケートボード1aは、板部2と、前輪3を有する前輪ユニット4と、後輪5を有する後輪ユニット6と、を備える。前輪ユニット4は、前輪3を回転可能に支持する前輪支持部8と、前部軸L1を中心とした回転を少なくとも実行可能に前輪支持部8を支持する前輪座部9と、を有する。後輪ユニット6は、後輪5を回転可能に支持する後輪支持部17と、後部軸L2を中心とした回転を少なくとも実行に後輪支持部17を支持する後輪座部18と、を有する。前部軸L1及び後部軸L2は、走行体1の前から後に向かって上る方向に傾斜して配置されている。カーブ走行の際の後部軸L2を中心とした後輪支持部17の回転量は、前部軸L1を中心とした前輪支持部8の回転量よりも大きくなるように設定されている。
【選択図】
図6