(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-18
(45)【発行日】2024-10-28
(54)【発明の名称】SOT及びMRAMデバイスのためのBiSbx(012)合金方位を促進するバッファ層及び中間層
(51)【国際特許分類】
H10N 50/80 20230101AFI20241021BHJP
H10B 61/00 20230101ALI20241021BHJP
G11B 5/39 20060101ALI20241021BHJP
【FI】
H10N50/80 Z
H10B61/00
G11B5/39
(21)【出願番号】P 2024501785
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(86)【国際出願番号】 US2022027962
(87)【国際公開番号】W WO2023018455
(87)【国際公開日】2023-02-16
【審査請求日】2024-01-12
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504056130
【氏名又は名称】ウェスタン デジタル テクノロジーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レ、クァン
(72)【発明者】
【氏名】ヨーク、ブライアン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ファン、チャンジー
(72)【発明者】
【氏名】岡村 進
(72)【発明者】
【氏名】グリベリュク、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】リュー、シャオヨン
(72)【発明者】
【氏名】ホ、クオック サン
(72)【発明者】
【氏名】高野 公史
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-057357(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0249038(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0104344(US,A1)
【文献】国際公開第2019/054484(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/179493(WO,A1)
【文献】中野総一郎,埋め込みMRAMに向けた純スピン流源BiSbの熱耐久性の向上,応用物理学会春季学術講演会講演予稿集,日本,2020年02月28日,Vol,67,P.14p-A501-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 50/80
H10B 61/00
G11B 5/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイスであって、
基板と、
前記基板上に形成されたバッファ層であって、前記バッファ層が、
アモルファス構造の材料を含むアモルファスサブ層を含み、前記材料が、共有結合炭化物、共有結合酸化物、又は共有結合窒化物を含む、バッファ層であって、前記アモルファス構造中の前記材料が、約2.0Å~約2.2Åに等しいd間隔を有する最近接XRD回折ピークを有する、前記バッファ層と、
前記バッファ層上に形成されたビスマスアンチモン(BiSb)層と、を備え、前記BiSb層が、(012)方位を有し、前記バッファ層が、前記BiSb層におけるSbのマイグレーションを低減するように構成されている、SOT MTJデバイス。
【請求項2】
前記バッファ層が、前記アモルファスサブ層に加えて、1つ以上のサブ層を更に備え、前記1つ以上のサブ層の各々が、正方晶(001)材料、正方晶(110)材料、体心立方晶(bcc)(100)材料、面心立方晶(fcc)(100)材料、テクスチャ化されたbcc(100)材料、テクスチャ化されたfcc(100)材料、テクスチャ化された(100)材料、アモルファス金属材料、及び先行材料のいずれかのうちの1つ以上の層状の組み合わせからなる群から選択される1つ以上の材料を含む、請求項1に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項3】
前記1つ以上のサブ層のうちの少なくとも1つのサブ層が、前記bcc(100)材料を含み、前記bcc(100)材料が、V、Nb、Mo、W、Ta、WTi50、Al10Nb40Ti50、Cr、CrMo、CrXであって、B2相において、Xは、Ti、W、Mo、Ru、又はRuAlである、CrX、並びにこれらと、Ti、Al
、Pd、Pt、Ni、Fe、及びCrからなる群から選択される元素との合金の組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項4】
前記1つ以上のサブ層のうちの少なくとも1つのサブ層が、前記fcc(100)材料を含み、前記fcc(100)材料が、FeO、CoO、ZrO、MgO、TiO、ScN、TiN、NbN、ZrN、HfN、TaN、ScC、TiC、NbC、ZrC、HfC、TaC、WC、CoO、SIC、GaN、FeN、ZnO、MoZr10、MoNi20、NbZr20、並びにこれらと、W、Al、及びSiからなる群から選択される1つ以上の元素との複合体の組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項5】
前記1つ以上のサブ層のうちの少なくとも1つのサブ層が、前記正方晶(001)材料又は前記正方晶(110)材料を含み、前記正方晶(001)材料又は前記正方晶(110)材料が、SbO2、TiO2、IrO2、RuO2、CrO2、VO2、OsO2、RhO2、PdO2、WVO4、CrNbO4、SnO2、GeO2
、これらの複合体、並びにこれらと、W、Ta、及びNbからなる群から選択される元素との合金からなる群から選択される、請求項2に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項6】
前記正方晶(001)材料又は前記正方晶(110)材料が、約4.49Å~約4.69Åの範囲のa軸と、約2.88Å~約3.15Åの範囲のc軸と、を有する、請求項5に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項7】
前記1つ以上のサブ層のうちの少なくとも1つのサブ層が、前記アモルファス金属材料を含み、前記アモルファス金属材料が、NiTa、NiFeTa、NiNb、NiW、NiFeW、NiFeHf、CoHfB、CoZrTa、CoFeB、NiFeB、CoB、FeB、並びにこれらと、Ni、Fe、Co、Zr、W、Ta、Hf、Ag、Pt、Pd、Si、Ge、Mn、Al、及びTiからなる群から選択される元素との合金の組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項8】
前記最近接XRD回折ピークが、afcc結晶構造からの(111)d間隔に対応し、afccが、約3.5Å~3.8Åである、請求項1に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項9】
最近接距離が、約2.0Å~約2.2Åである、請求項8に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項10】
前記BiSb層上に配設された中間層を更に備え、前記中間層が、正方晶(001)材料、正方晶(110)材料、体心立方晶(bcc)(100)材料、面心立方晶(fcc)(100)材料、テクスチャ化されたbcc(100)材料、テクスチャ化されたfcc(100)材料、テクスチャ化された(100)材料、共有結合炭化物、酸化物、又は窒化物を含むアモルファス材料、アモルファス金属材料、及び先行材料のいずれかのうちの1つ以上の層状の組み合わせからなる群から選択される1つ以上の材料を含む、請求項1に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項11】
磁気記録デバイスであって、
スピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイスを備え、
前記SOT MTJデバイスが、
基板と、
前記基板上に形成されたバッファ層であって、前記バッファ層が、
アモルファス構造の材料を含むアモルファスサブ層を含み、前記材料が、共有結合炭化物、共有結合酸化物、又は共有結合窒化物を含む、バッファ層であって、前記アモルファス構造中の前記材料が、約2.0Å~約2.2Åに等しいd間隔を有する最近接XRD回折ピークを有する、前記バッファ層と、
前記バッファ層上に形成されたビスマスアンチモン(BiSb)層と、を備え、前記BiSb層が、(012)方位を有し、前記バッファ層が、前記BiSb層におけるSbのマイグレーションを低減するように構成されている、磁気記録デバイス。
【請求項12】
磁気抵抗メモリであって、
スピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイスを備え、
前記SOT MTJデバイスが、
基板と、
前記基板上に形成されたバッファ層であって、前記バッファ層が、
アモルファス構造の材料を含むアモルファスサブ層を含み、前記材料が、共有結合炭化物、共有結合酸化物、又は共有結合窒化物を含む、バッファ層であって、前記アモルファス構造中の前記材料が、約2.0Å~約2.2Åに等しいd間隔を有する最近接XRD回折ピークを有する、前記バッファ層と、
前記バッファ層上に形成されたビスマスアンチモン(BiSb)層と、を備え、前記BiSb層が、(012)方位を有し、前記バッファ層が、前記BiSb層におけるSbのマイグレーションを低減するように構成されている、磁気抵抗メモリ。
【請求項13】
スピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイスであって、
基板と、
前記基板上に形成されたバッファ層であって、前記バッファ層が、
少なくとも1つの第1の中間層を備え、前記少なくとも1つの第1の中間層が、正方晶(001)材料、正方晶(110)材料、体心立方晶(bcc)(100)材料、面心立方晶(fcc)(100)材料、テクスチャ化されたbcc(100)材料、テクスチャ化されたfcc(100)材料、テクスチャ化された(100)材料、又は共有結合炭化物、共有結合酸化物、若しくは共有結合窒化物を含むアモルファス材料のうちの少なくとも1つを含む、バッファ層と、
前記バッファ層上に形成されたビスマスアンチモン(BiSb)層スタックと、を備え、前記BiSb層スタックが、(012)方位を有するBiSb層を含み、前記BiSb層スタックが、
第1のBi層であって、前記BiSb層が、前記第1のBi層上に配設されている、第1のBi層と、
前記BiSb層上に配設された第2のBi層と、を更に備え、
前記第1のBi層及び前記第2のBi層は、
各々が、約0Å超かつ約10Å未満の厚さを有し、
前記BiSb層をサンドイッチ状にして、(012)BiSbテクスチャを促進し、Sbマイグレーションによって劣化した前記BiSb層の化学的均一性及び構造を改善するように構成されたSb組成変調層として機能する、SOT MTJデバイス。
【請求項14】
前記バッファ層が、前記第1の中間層の下に配設されたアモルファス層を更に備え、前記アモルファス層が、NiTa、NiFeTa、NiNb、NiW、NiFeW、NiFeHf、CoHfB、CoZrTa、CoFeB、NiFeB、CoB、FeB、並びにこれらと、Ni、Fe、Co、Zr、W、Ta、Hf、Ag、Pt、Pd、Si、Ge、Mn、Al、及びTiからなる群から選択される元素との合金の組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項13に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項15】
前記バッファ層が、少なくとも1つの第2の中間層を更に備える、請求項14に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項16】
前記少なくとも1つの第2の中間層が、テクスチャ化されたbcc(100)材料である、請求項15に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項17】
前記少なくとも1つの第2の中間層が、テクスチャ化されたfcc(100)材料である、請求項15に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項18】
前記BiSb層上に配設された中間層を更に備え、前記中間層が、前記少なくとも1つの第1の中間層と同じ材料を含む、請求項13に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項19】
前記第1のBi層及び前記第2のBi層が各々、約0Å~約10Åの幅を有する、請求項13に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項20】
前記少なくとも1つの第1の中間層が、前記正方晶(001)材料又は前記正方晶(110)材料を含み、前記正方晶(001)材料又は前記正方晶(110)材料が、約4.18Å~約4.75Åの範囲のa軸格子パラメータを有する、請求項13に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項21】
前記少なくとも1つの第1の中間層が、前記fcc(100)材料を含み、前記fcc(100)材料が、約4.18Å~約4.75Åの範囲の格子パラメータを有する、請求項13に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項22】
磁気記録デバイスであって、
スピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイスを備え、
前記SOT MTJデバイスが、
基板と、
前記基板上に形成されたバッファ層であって、前記バッファ層が、
少なくとも1つの第1の中間層を備え、前記少なくとも1つの第1の中間層が、正方晶(001)材料、正方晶(110)材料、体心立方晶(bcc)(100)材料、面心立方晶(fcc)(100)材料、テクスチャ化されたbcc(100)材料、テクスチャ化されたfcc(100)材料、テクスチャ化された(100)材料、又は共有結合炭化物、共有結合酸化物、若しくは共有結合窒化物を含むアモルファス材料のうちの少なくとも1つを含む、バッファ層と、
前記バッファ層上に形成されたビスマスアンチモン(BiSb)層スタックと、を備え、前記BiSb層スタックが、(012)方位を有するBiSb層を含み、前記BiSb層スタックが、
第1のBi層であって、前記BiSb層が、前記第1のBi層上に配設されている、第1のBi層と、
前記BiSb層上に配設された第2のBi層と、を更に備え、
前記第1のBi層及び前記第2のBi層は、
各々が、約0Å超かつ約10Å未満の厚さを有し、
前記BiSb層をサンドイッチ状にして、(012)BiSbテクスチャを促進し、Sbマイグレーションによって劣化した前記BiSb層の化学的均一性及び構造を改善するように構成されたSb組成変調層として機能する、磁気記録デバイス。
【請求項23】
磁気抵抗メモリであって、
スピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイスを備え、
前記SOT MTJデバイスが、
基板と、
前記基板上に形成されたバッファ層であって、前記バッファ層が、
少なくとも1つの第1の中間層を備え、前記少なくとも1つの第1の中間層が、正方晶(001)材料、正方晶(110)材料、体心立方晶(bcc)(100)材料、面心立方晶(fcc)(100)材料、テクスチャ化されたbcc(100)材料、テクスチャ化されたfcc(100)材料、テクスチャ化された(100)材料、又は共有結合炭化物、共有結合酸化物、若しくは共有結合窒化物を含むアモルファス材料のうちの少なくとも1つを含む、バッファ層と、
前記バッファ層上に形成されたビスマスアンチモン(BiSb)層スタックと、を備え、前記BiSb層スタックが、(012)方位を有するBiSb層を含み、前記BiSb層スタックが、
第1のBi層であって、前記BiSb層が、前記第1のBi層上に配設されている、第1のBi層と、
前記BiSb層上に配設された第2のBi層と、を更に備え、
前記第1のBi層及び前記第2のBi層は、
各々が、約0Å超かつ約10Å未満の厚さを有し、
前記BiSb層をサンドイッチ状にして、(012)BiSbテクスチャを促進し、Sbマイグレーションによって劣化した前記BiSb層の化学的均一性及び構造を改善するように構成されたSb組成変調層として機能する、磁気抵抗デバイス。
【請求項24】
スピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイスであって、
基板と、
前記基板上に形成されたバッファ層であって、前記バッファ層が、
(100)方位を有するテクスチャ化された層と、
前記テクスチャ化された層上に配設された第1の中間層であって、前記第1の中間層が、正方晶(001)、正方晶(110)、体心立方晶(bcc)(100)、面心立方晶(fcc)(100)、テクスチャ化されたbcc(100)、及びテクスチャ化されたfcc(100)からなる群から選択される立方晶構造の少なくとも1つを含む、第1の中間層と、を備える、バッファ層と、
前記バッファ層上に形成されたビスマスアンチモン(BiSb)層であって、前記BiSb層が、(012)方位を有し、前記バッファ層が、前記BiSb層におけるSbの拡散を低減するように構成されている、BiSb層と、
前記BiSb層上に配設された中間層と、を備える、SOT MTJデバイス。
【請求項25】
前記バッファ層が、NiTa、NiFeTa、NiNb、NiW、NiFeW、NiFeHf、CoHfB、CoZrTa、CoFeB、NiFeB、CoB、FeB、並びにこれらと、Ni、Fe、Co、Zr、W、Ta、Hf、Ag、Pt、Pd、Si、Ge、Mn、Al、及びTiからなる群から選択される元素との合金の組み合わせからなる群から選択される材料を含むアモルファス層を更に含む、請求項24に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項26】
前記アモルファス層が、前記基板上に配設されており、前記テクスチャ化された層が、前記アモルファス層上に配設されており、前記第1の中間層が、前記テクスチャ化された層上に配設されており、前記BiSb層が、前記第1の中間層上に配設されている、請求項25に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項27】
前記バッファ層が、1つ以上の第2の中間層を更に備え、前記1つ以上の第2の中間層が、前記第1の中間層とは異なる立方晶構造を有する、請求項24に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項28】
前記中間層が、正方晶(001)材料、正方晶(110)材料、体心立方晶(bcc)(100)材料、面心立方晶(fcc)(100)材料、テクスチャ化されたbcc(100)材料、テクスチャ化されたfcc(100)材料、テクスチャ化された(100)材料、共有結合炭化物、共有結合酸化物、又は共有結合窒化物を含むアモルファス材料、アモルファス金属材料、及び先行材料のいずれかのうちの1つ以上の層状の組み合わせからなる群から選択される1つ以上の材料を含む、請求項24に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項29】
前記テクスチャ化された層が、
RuAl、及び
Crからなる群から選択され、前記Crは、
約250℃以上の温度で堆積されたものであるか、
Xが、Ru、Mo、W、又はTiである加熱されたCrX合金中、約10原子パーセント未満であり、前記CrX合金が、約200℃以下の温度に加熱されているものであるか、
nが約20原子パーセント~約50原子パーセントであるCrMonとしてのものであるか、又は
nが約20原子パーセント~約50原子パーセントである加熱されたCr及びCrMon若しくはCrMon、Cr及びCrMonのサンドイッチ状のものである、請求項24に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項30】
前記第1の中間層が、前記正方晶(001)材料又は前記正方晶(110)材料を含み、前記正方晶(001)材料又は前記正方晶(110)材料が、酸化ルテニウム(IV)(RuO2)である、請求項24に記載のSOT MTJデバイス。
【請求項31】
磁気記録デバイスであって、
スピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイスを備え、
前記SOT MTJデバイスが、
基板と、
前記基板上に形成されたバッファ層であって、前記バッファ層が、
(100)方位を有するテクスチャ化された層と、
前記テクスチャ化された層上に配設された第1の中間層であって、前記第1の中間層が、正方晶(001)、正方晶(110)、体心立方晶(bcc)(100)、面心立方晶(fcc)(100)、テクスチャ化されたbcc(100)、及びテクスチャ化されたfcc(100)からなる群から選択される立方晶構造の少なくとも1つを含む、第1の中間層と、を備える、バッファ層と、
前記バッファ層上に形成されたビスマスアンチモン(BiSb)層であって、前記BiSb層が、(012)方位を有し、前記バッファ層が、前記BiSb層におけるSbの拡散を低減するように構成されている、BiSb層と、
前記BiSb層上に配設された中間層と、を備える、前記磁気記録デバイス。
【請求項32】
磁気抵抗メモリであって、
スピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイスを備え、
前記SOT MTJデバイスが、
基板と、
前記基板上に形成されたバッファ層であって、前記バッファ層が、
(100)方位を有するテクスチャ化された層と、
前記テクスチャ化された層上に配設された第1の中間層であって、前記第1の中間層が、正方晶(001)、正方晶(110)、体心立方晶(bcc)(100)、面心立方晶(fcc)(100)、テクスチャ化されたbcc(100)、及びテクスチャ化されたfcc(100)からなる群から選択される立方晶構造の少なくとも1つを含む、第1の中間層と、を備える、バッファ層と、
前記バッファ層上に形成されたビスマスアンチモン(BiSb)層であって、前記BiSb層が、(012)方位を有し、前記バッファ層が、前記BiSb層におけるSbの拡散を低減するように構成されている、BiSb層と、
前記BiSb層上に配設された中間層と、を備える、前記磁気抵抗メモリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年8月13日に出願された「Buffer Layers And Interlayers That Promote Bisbx(012)Alloy Orientation For Sot And MRAM Devices」と題する米国特許非仮出願第17/401,856号の利益を主張し、その内容の全体はあらゆる目的のために参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示の実施形態は、概して、(012)方位を有するビスマスアンチモン(BiSb)層内のアンチモン(Sb)のマイグレーションを抑制するバッファ層及び中間層に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
BiSbは、スピントルク発振器(spin torque oscillator、STO)及び磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(magnetoresistive random access memory、MRAM)デバイスのためのスピンホール層として提案されている材料である。BiSbは、巨大なスピンホール効果と高い導電率の両方を有する狭いギャップのトポロジカル絶縁体である。
【0004】
N.H.D.Khang,Y.Ueda,and P.N.Hai,「A conductive topological insulator with large spin Hall effect for ultralow power spin-orbit torque switching」Nature Materials,v.17,808(2018)は、(012)結晶方位を有するBiSbが、(001)結晶方位を有するBiSbと比較して、高いスピンホール角及び高い導電率を有することを発見した。(001)結晶方位を有するGaAs基板上に形成された(001)結晶方位を有するMnGa膜上に、(012)結晶方位を有するBiSbが形成された。
【0005】
N.Roschewsky,E.S.Walker,P.Gowtham,S.Muschinske,F.Hellman,S.R.Bank,and S.Salahuddin,「Spin-orbit torque and Nernst effect in Bi-Sb/Co heterostructures」,Phys.Rev.B,vol.99,195103(2 May 2019)は、BiSb成長、結晶方位、スピンホール角、及び高い導電率の一貫性が実験間で低いことを認識した。
【0006】
E.S.Walker,S.Muschinske,C.J.Brennan,S.R.Na,T.Trivedi,S.D.March,Y.Sun,T.Yang,A.Yau,D.Jung,A.F.Briggs,E.M.Krivoy,M.L.Lee,K.M.Liechti,E.T.Yu,D.Akinwande,and S.R.Bank,「Composition-dependent structural transition in epitaxial Bi1-xSbx thin films on Si(111)」,Phys.Rev.Materials 3,064201(7 June 2019)は、Si(111)基板上に任意の厚さ(極超薄膜を含む)でBi1-xSbx薄膜を成長させることを確立したが、9%~28%のSb濃度範囲の濃度についてのみであり、これは、TI(トポロジカル絶縁体)特性を呈するのに必要な範囲と偶然重なり合う。更に、20Å未満の極薄Bi膜を強い(012)方位で成長させることができ、極薄Bi/BiSb膜積層体を強い(012)方位でエピタキシャル成長させることができることを示唆している。
【0007】
図11は、適切な隣接するバッファ及び中間層のないSOTスタック内の100Å厚のBiSb層における相対的なSb濃度のTEM-EELSラインスキャンを例示している。
図11は、バルクから界面へのSbマイグレーションの問題を示しており、これは、化学的均一性を改善し、かつSbマイグレーションによって劣化したBiSb層の(012)テクスチャ及び構造を維持するのに役立つ、Sb組成変調層として機能することができるBiSb SOT層をサンドイッチ状にする、0<t<10Åの厚さtの極薄Bi層の使用によって改善され得る。しかしながら、Si(111)上の(012)方位を有するBiSb層のBi及びBiSbの薄膜の両方の接着性が劣っていた。
【0008】
したがって、高いスピンホール角及び高い導電率を有するBiSbを形成するための改善されたプロセスと、高いスピンホール角及び高い導電率を有するBiSb層を有する改善されたデバイスと、が必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、概して、バッファ層と、バッファ層上に配設された(012)方位を有するビスマスアンチモン(BiSb)層と、BiSb層上に配設された中間層と、を備えるスピン軌道トルク(spin-orbit torque、SOT)磁気トンネル接合(magnetic tunnel junction、MTJ)デバイスに関する。バッファ層及び中間層は各々、独立して、単層の材料又は多層の材料であり得る。バッファ層及び中間層は各々、共有結合アモルファス材料、正方晶(001)材料、正方晶(110)材料、体心立方晶(body-centered cubic、bcc)(100)材料、面心立方晶(face-centered cubic、fcc)(100)材料、テクスチャ化されたbcc(100)材料、テクスチャ化されたfcc(100)材料、テクスチャ化された(100)材料、又はアモルファス金属材料のうちの少なくとも1つを含む。バッファ層及び中間層は、BiSb層内のアンチモン(Sb)のマイグレーションを抑制し、BiSb層の均一性を高め、それと同時にBiSb層の(012)方位を更に促進する。
【0010】
一実施形態では、スピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイスは、基板と、基板上に形成されたバッファ層であって、バッファ層が、アモルファス構造の材料を含むアモルファス層であって、材料が、共有結合炭化物、共有結合酸化物、又は共有結合窒化物を含む、アモルファス層を備える、バッファ層と、バッファ層上に形成されたビスマスアンチモン(BiSb)層であって、BiSb層が、(012)方位を有し、バッファ層が、BiSb層中のSbのマイグレーションを低減するように構成されている、BiSb層と、を備える。
【0011】
別の実施形態では、SOT MTJデバイスは、基板と、基板上に形成されたバッファ層であって、バッファ層が、少なくとも1つの第1の中間層を備え、少なくとも1つの第1の中間層が、正方晶(001)材料、正方晶(110)材料、体心立方晶(bcc)(100)材料、面心立方晶(fcc)(100)材料、テクスチャ化されたbcc(100)材料、テクスチャ化されたfcc(100)材料、テクスチャ化された(100)材料、又は共有結合炭化物、共有結合酸化物、若しくは共有結合窒化物を含むアモルファス材料のうちの少なくとも1つを含む、バッファ層と、(012)方位を有するビスマスアンチモン(BiSb)層を備える、バッファ層上に形成されたBiSb層スタックであって、BiSb層スタックが、第1のBi層であって、BiSb層が、第1のBi層上に配設されている、第1のBi層と、BiSb層上に配設された第2のBi層と、を更に備え、第1のBi層及び第2のBi層が各々、約0Å超かつ約10Å未満の厚さを有し、BiSb層をサンドイッチ状にして、(012)BiSbテクスチャを促進し、Sbマイグレーションによって劣化したBiSb層の化学的均一性及び構造を改善するように構成されたSb組成変調層として機能する、BiSb層スタックと、を備える。
【0012】
また別の実施形態では、SOT MTJデバイスは、基板と、基板上に形成されたバッファ層と、を備え、バッファ層が、(100)方位を有するテクスチャ化された層と、テクスチャ化された層上に配設された第1の中間層と、を備え、第1の中間層が、正方晶(001)、正方晶(110)、体心立方晶(bcc)(100)、面心立方晶(fcc)(100)、テクスチャ化されたbcc(100)、及びテクスチャ化されたfcc(100)からなる群から選択される立方晶構造の少なくとも1つを備える。SOT MTJデバイスは、バッファ層上に形成されたビスマスアンチモン(BiSb)層であって、BiSb層が、(012)方位を有し、バッファ層が、BiSb層中のSbの拡散を低減するように構成されている、BiSb層と、BiSb層上に配設された中間層と、を更に備える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示の上記の特徴を詳細に理解することができるように、簡潔に上で要約した本開示のより具体的な説明は、実施形態を参照することによってなされ得、それらのいくつかが添付の図面に例示されている。しかしながら、添付の図面は、本開示の典型的な実施形態のみを例示し、したがって、その範囲を限定するものとみなされるべきではなく、本開示が他の同等に有効な実施形態を認め得ることに留意すべきである。
【
図1】SOT MTJデバイスを有するMAMR書き込みヘッドを含む磁気媒体ドライブの特定の実施形態の概略図である。
【
図2】SOT MTJデバイスを有する読み取り/書き込みヘッドの特定の実施形態の部分断面側面図である。
【
図3A】様々な実施形態による、スピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイスを例示するものである。
【
図3B】様々な実施形態による、スピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイスを例示するものである。
【
図4A】様々な実施形態による、
図3A及び
図3BのSOT MTJデバイスとともに利用され得るバッファ層及び/又は中間層の例示的な多層構造を例示するものである。
【
図4B】様々な実施形態による、
図3A及び
図3BのSOT MTJデバイスとともに利用され得るバッファ層及び/又は中間層の例示的な多層構造を例示するものである。
【
図4C】様々な実施形態による、
図3A及び
図3BのSOT MTJデバイスとともに利用され得るバッファ層及び/又は中間層の例示的な多層構造を例示するものである。
【
図4D】様々な実施形態による、
図3A及び
図3BのSOT MTJデバイスとともに利用され得るバッファ層及び/又は中間層の例示的な多層構造を例示するものである。
【
図5】一実施形態による、
図3A及び
図3BのSOT MTJデバイスのBiSb層であり得るサブ層を備えるBiSb層の概略断面図である。
【
図6A】様々な実施形態による、
図3A及び
図3BのSOT MTJデバイス内の層の原子格子構造を例示する概略図である。
【
図6B】様々な実施形態による、
図3A及び
図3BのSOT MTJデバイス内の層の原子格子構造を例示する概略図である。
【
図6C】様々な実施形態による、
図3A及び
図3BのSOT MTJデバイス内の層の原子格子構造を例示する概略図である。
【
図6D】様々な実施形態による、
図3A及び
図3BのSOT MTJデバイス内の層の原子格子構造を例示する概略図である。
【
図6E】様々な実施形態による、
図3A及び
図3BのSOT MTJデバイス内の層の原子格子構造を例示する概略図である。
【
図7】30ÅのNiFeTaのアモルファス層上に配設されたB2相の30ÅのRuAlのテクスチャ化された層のグラフであり、テクスチャ化された層の上に、(100)fccテクスチャ化された層(MgO)、(100)bccテクスチャ化された層(Cr、Ta、W、W/Ta)、及び(100)B2テクスチャ層(NiAl)を成長させてある。
【
図8】30ÅのNiFeTaのアモルファス層上に配設されたB2相の30ÅのRuAlのテクスチャ化された層のグラフであり、テクスチャ化された層の上に、(100)fccテクスチャ化された層(MgO)、(100)bccテクスチャ化された層(Cr、Ta、W、W/Ta)、及び(100)B2テクスチャ層(NiAl)を成長させてある。
【
図9A】
図1のドライブ又は他の好適な磁気媒体ドライブのMAMR書き込みヘッドなどのMAMR書き込みヘッドにおいて使用するためのSOTデバイスの概略断面図である。
【
図9B】
図9AのSOTデバイスを有するMAMR書き込みヘッドの一部分の特定の実施形態の概略MFS図である。
【
図9C】
図9AのSOTデバイスを有するMAMR書き込みヘッドの一部分の特定の実施形態の概略MFS図である。
【
図10】MRAMデバイスとして使用されるSOT MTJの概略断面図である。
【
図11】一実施形態による、バルクBiSb層から界面へのSbマイグレーションの問題を示す。
【0014】
理解を容易にするために、図面に共通する同一の要素を示すために、可能な限り、同一の参照番号を使用している。一実施形態で開示される要素は、特に断ることなく、他の実施形態に有益に利用され得ることが企図される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本開示の実施形態を参照する。しかしながら、本開示は、具体的に説明される実施形態に限定されないことを理解されたい。その代わりに、以下の特徴及び要素の任意の組み合わせが、異なる実施形態に関連するか否かに関わらず、本開示を実施及び実践すると企図される。更に、本開示の実施形態は、他の可能な解決策に勝る、及び/又は先行技術に勝る利点を達成し得るが、特定の利点が所与の実施形態によって達成されるか否かは、本開示を限定するものではない。したがって、以下の態様、特徴、実施形態、及び利点は、単なる例示に過ぎず、請求項(複数可)に明示的に記載されている場合を除いて、添付の特許請求の範囲の要素又は限定とみなされない。同様に、「本開示」への言及は、本明細書に開示される任意の発明の主題の一般化として解釈されるものではなく、請求項に明示的に記載されている場合を除いて、添付の特許請求の範囲の要素又は限定であるとみなされるべきではない。
【0016】
本開示は、概して、バッファ層と、バッファ層上に配設された(012)方位を有するビスマスアンチモン(BiSb)層と、BiSb層上に配設された中間層と、を備えるスピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイスに関する。バッファ層及び中間層は各々、独立して、単層の材料又は多層の材料であり得る。バッファ層及び中間層は各々、共有結合アモルファス材料、正方晶(001)材料、正方晶(110)材料、体心立方晶(bcc)(100)材料、面心立方晶(fcc)(100)材料、テクスチャ化されたbcc(100)材料、テクスチャ化されたfcc(100)材料、テクスチャ化された(100)材料、又はアモルファス金属材料のうちの少なくとも1つを含む。バッファ層及び中間層は、BiSb層内のアンチモン(Sb)のマイグレーションを抑制し、BiSb層の均一性を高め、それと同時にBiSb層の(012)方位を更に促進する。
【0017】
本開示の実施形態は、概して、(012)方位を有するビスマスアンチモン(BiSb)層の保存を促進するバッファ層に関する。アンチモン(Sb)は、高反応性であり、バッファ層は、(012)方位におけるBiSbの成長を促進しながら、BiSb層と外部材料との間の化学的相互作用を低減する低反応性媒体を提供する。バッファ層の構成は、BiSb層におけるSbのマイグレーションを低減する。
【0018】
(012)方位を有する従来のBiSb層は、大きなスピンホール角効果及び高い導電率を有する。(012)方位を有するBiSb層を使用して、スピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイスを形成することができる。例えば、(012)方位を有するBiSb層を、磁気記録ヘッドのスピン軌道トルクデバイスにおけるスピンホール層として、例えば、読み取りヘッド及び/又はマイクロ波アシスト磁気記録(microwave assisted magnetic recording、MAMR)書き込みヘッドの一部として、使用することができる。別の例では、(012)方位を有するBiSb層を、磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)デバイスにおけるスピンホール電極層として使用することができる。SOT MTJデバイスを、垂直スタック構成又は面内スタック構成とすることができる。SOT MTJデバイスを、例えば、MAMR書き込みヘッドで、MRAMで、人工知能チップで、及び他の用途で利用することができる。(012)方位を有するBiSb層スタック304は、SOT MTJデバイスにおいて、(001)方位を有するBiSb層よりも高いスピンホール角及び高い性能を有する。
【0019】
図1は、SOT MTJデバイスを有するMAMR書き込みヘッドを含む磁気媒体ドライブ100の特定の実施形態の概略図である。そのような磁気媒体ドライブは、単一のドライブであり得るか、又は複数のドライブ/デバイスを含み得る。例示を容易にするために、特定の実施形態による単一のディスクドライブ100が示されている。図示のとおり、少なくとも1つの回転可能な磁気ディスク112は、スピンドル114上に支持され、駆動モータ118によって回転される。各磁気ディスク112上の磁気記録は、磁気ディスク112上の同心データトラック(図示せず)の環状パターンなどの、データトラックの任意の好適なパターンの形態である。
【0020】
少なくとも1つのスライダ113は、磁気ディスク112の近傍に配置され、各スライダ113は、SOTデバイスを含む1つ以上の磁気ヘッドアセンブリ121を支持する。磁気ディスク112が回転するにつれて、スライダ113は、所望のデータが書き込まれる磁気ディスク112の異なるトラックに磁気ヘッドアセンブリ121がアクセスし得るように、ディスク表面122の上方で半径方向内外に移動する。各スライダ113は、サスペンション115によってアクチュエータアーム119に取り付けられる。サスペンション115は、スライダ113をディスク表面122に向かって付勢するわずかなばね力を提供する。各アクチュエータアーム119は、アクチュエータ手段127に取り付けられる。
図2に示されるようなアクチュエータ手段127は、ボイスコイルモータ(voice coil motor、VCM)であり得る。VCMは、固定磁場内で移動可能なコイルを含み、コイル移動の方向及び速度は、制御ユニット129によって供給されるモータ電流信号によって制御される。
【0021】
ディスクドライブ100の動作中、磁気ディスク112の回転は、スライダ113とディスク表面122との間に空気軸受を生成し、これがスライダ113に上向きの力又は揚力を作用させる。したがって、空気軸受は、サスペンション115のわずかなばね力と相殺し、通常の動作中、スライダ113をディスク表面122から、小さい、実質的に一定の間隔だけ離して、ディスク表面122のわずかに上方で支持する。
【0022】
ディスクドライブ100の各種構成要素は、アクセス制御信号及び内部クロック信号などの、制御ユニット129によって生成された制御信号によって動作制御される。典型的には、制御ユニット129は、論理制御回路、記憶手段、及びマイクロプロセッサを備える。制御ユニット129は、ライン123のドライブモータ制御信号及びライン128のヘッド位置及びシーク制御信号など、様々なシステム動作を制御するための制御信号を生成する。ライン128上の制御信号は、スライダ113をディスク112上の所望のデータトラックに最適に移動及び配置するために、所望の電流プロファイルを提供する。書き込み及び読み取り信号は、記録チャネル125によってアセンブリ121上の書き込み及び読み取りヘッドへ/から通信される。
【0023】
典型的な磁気媒体ドライブについての上記説明、及びそれに伴う
図1の例示は、例示目的に過ぎない。磁気媒体ドライブが、多数の媒体、又はディスク、及びアクチュエータを含み得、各アクチュエータが、多数のスライダを支持し得ることは明らかであろう。
【0024】
図2は、SOT MTJデバイスを有する読み取り/書き込みヘッド200の特定の実施形態の部分断面側面図である。読み取り/書き込みヘッド200は、磁気媒体112に対向する。読み取り/書き込みヘッド200は、
図1に示す磁気ヘッドアセンブリ121に対応し得る。読み取り/書き込みヘッド200は、ディスク112に対向する、ガスベアリング面などの媒体対向面(media facing surface、MFS)212と、MAMR書き込みヘッド210と、磁気読み取りヘッド211と、を含む。
図2に示されるように、磁気媒体112は、矢印232によって示される方向に、MAMR書き込みヘッド210を通過して移動し、読み取り/書き込みヘッド200は、矢印234によって示される方向に移動する。
【0025】
いくつかの実施形態では、磁気読み取りヘッド211は、磁気抵抗(magnetoresistive、MR)読み取りヘッドであり、MRシールドS1とS2との間に位置付けられるMR感知素子204を含む。他の実施形態では、磁気読み取りヘッド211は、MRシールドS1及びS2間に位置付けられるMTJ感知デバイス204を含む磁気トンネル接合(MTJ)読み取りヘッドである。磁気ディスク112内の隣接する磁化領域の磁場は、記録ビットとしてMR(又はMTJ)感知素子204によって検出可能である。様々な実施形態のSOT MTJデバイスを、読み取りヘッド211に組み込むことができる。
【0026】
MAMR書き込みヘッド210は、主磁極220と、リーディングシールド206と、トレーリングシールド240と、スピン軌道トルク(SOT)デバイス250と、主磁極220を励起するコイル218と、を含む。コイル218は、
図2に示される「らせん」構造の代わりに、主磁極220とトレーリングシールド240との間の後部接点の周りに巻き付く「パンケーキ」構造を有してもよい。SOTデバイス250は、主磁極220とトレーリングシールド240との間のギャップ254に形成されている。主磁極220は、トレーリングテーパ部242及びリーディングテーパ部244を含む。トレーリングテーパ部242は、MFS212から凹んだ場所からMFS212まで延在する。リーディングテーパ部244は、MFS212から凹んだ場所からMFS212まで延在する。トレーリングテーパ部242及びリーディングテーパ部244は、同じテーパ度を有してもよく、テーパ度は、主磁極220の長手方向軸260に対して測定される。いくつかの実施形態では、主磁極220は、トレーリングテーパ部242及びリーディングテーパ部244を含まない。その代わりに、主磁極220は、トレーリング側(図示せず)及びリーディング側(図示せず)を含み、トレーリング側とリーディング側とは、実質的に平行である。主磁極220は、FeCo合金などの磁性材料であり得る。リーディングシールド206及びトレーリングシールド240は、NiFe合金などの磁性材料であり得る。特定の実施形態では、トレーリングシールド240は、トレーリングシールドホットシード層241を含むことができる。トレーリングシールドホットシード層241は、CoFeN又はFeXNなどの高モーメントスパッタ材料を含むことができ、Xは、Rh、Al、Ta、Zr、及びTiのうちの少なくとも1つを含む。特定の実施形態では、トレーリングシールド240は、トレーリングシールドホットシード層を含まない。
【0027】
図3A及び
図3Bは、様々な実施形態による、スピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイス300、301を例示している。SOT MTJデバイス300、301は各々、
図1のドライブ100のMAMR書き込みヘッド、
図2の読み取り/書き込みヘッド200、又は他の好適な磁気媒体ドライブにおいて個々に使用され得る。
【0028】
図3Aは、一実施形態による、SOT MTJデバイス300を例示している。SOT MTJデバイス300は、基板302と、基板302上に配設されたバッファ層310と、バッファ層310上に配設された(012)の結晶方位を有するBiSb層304又はBiSb層スタック304と、BiSb層304上に配設された中間層320と、中間層320上に配設されたトンネル磁気抵抗(tunnel magnetoresistance、TMR)様自由層322と、TMR様自由層322上に配設されたMgO層324と、を備える。
図3Bは、一実施形態による、逆SOT MTJデバイス301を例示している。SOT MTJデバイス301は、基板302と、基板302上に配設されたMgO層324と、MgO層324上に配設されたTMR様自由層322と、TMR様自由層322上に配設されたバッファ層310と、バッファ層310上に配設された(012)の結晶方位を有するBiSb層304と、BiSb層304上に配設された中間層320と、を備える。SOT MTJデバイス300、301は、異なる配置で同じ層302、304、310、320、322、324を備える。
【0029】
基板302を、シリコン基板又はアルミナ基板とすることができる。シリコン基板302は、(111)、(100)、(100)、又は他の結晶方位の立方晶構造を有する。アルミナ基板302は、(001)方位を有するか、又は他の結晶方位を有する六方晶構造を有するか、又はアモルファス構造を有する。基板302を、ベア基板とすることができるし、基板302は、上に熱成長又は堆積された酸化物層などの、上に形成された1つ以上の層を有することができる。
【0030】
一実施形態では、中間層320は、バッファ層310と同じ材料であり得る。例えば、
図3A及び
図3Bに示されるように、中間層320及びバッファ層310は各々、結晶材料又はアモルファス材料の単層を個々に含み得る。別の例では、中間層320及びバッファ層310は各々、結晶材料及び/又はアモルファス材料の複数の層を個々に含み得る。別の実施形態では、中間層320及びバッファ層310は各々、1つ以上の異なる材料を個々に含む。
【0031】
バッファ層310及び中間層320は各々、
図4A~
図4Dにおいて以下で更に議論されるように、個々に多層構造であり得る。一実施形態では、バッファ層310及び/又は中間層320は、共有結合アモルファス層である。共有結合アモルファス材料は、共有結合炭化物、共有結合酸化物、又は共有結合窒化物のうちの1つを含み得る。共有結合アモルファス材料は、約3.5Å~3.71Åの結晶構造の格子定数(afcc)を有し、共有結合アモルファス材料は、およそafccを3の平方根で除したものに等しい最近接距離を有する。いくつかの構成では、最近接距離は、約2.0Å~約2.2Åである。
【0032】
いくつかの実施形態では、バッファ層310及び中間層320は各々、1つ以上の高度に結合された材料を個々に含み、これにより、材料は、イオン性化学物質よりもBiSb層304中のSb又はBiと相互作用する可能性が低い。
図4A~
図4Dにおいて以下で更に議論されるように、バッファ層310及び中間層320は各々、共有結合アモルファス材料、正方晶(001)材料、正方晶(110)材料、体心立方晶(bcc)(100)材料、面心立方晶(fcc)(100)材料、テクスチャ化されたbcc(100)材料、テクスチャ化されたfcc(100)材料、テクスチャ化された(100)材料、アモルファス金属材料、及び先行材料のいずれかのうちの1つ以上の層状の組み合わせからなる群から選択される1つ以上の材料を個々に含み得る。
【0033】
図4A~
図4Dは、様々な実施形態による、
図3A及び
図3BのSOT MTJデバイス300、301とともに利用され得るバッファ層310及び/又は中間層320の例示的な多層構造を例示している。
図4A~
図4Dに示されるように、バッファ層310及び中間層320は各々、1つ以上のアモルファス又は結晶性のサブ層又は中間層312、314、316、318、及び326を個々に含み得る。
【0034】
図4A~
図4Dの実施形態を互いに組み合わせて使用することができ、これらの実施形態は、可能なバッファ層310及び/又は中間層320の排他的な列挙ではない。更に、
図4A~
図4Dの各々は、バッファ層310及び中間層320の両方について記載しているが、バッファ層310及び中間層320は、異なる構成又は異なる量のサブ層又は中間層312、314、316、318、及び326を有してもよい。更に、バッファ層310は、
図3A及び
図3Bにおいて上で記載され、示されるような結晶材料又はアモルファス材料の単層であってもよく、中間層320は、
図4A~
図4Dにおいて下で記載されるような多層構造であってもよく、又はその逆であってもよい。
【0035】
図4Aにおいて、バッファ層310及び/又は中間層320は、第1の中間層312と、第1の中間層312上に配設された第2の中間層314と、を備える。一実施形態では、第1の中間層312は、金属アモルファス材料を含み、第2の中間層314は、正方晶(001)材料又は正方晶(110)材料を含む。別の実施形態では、第1の中間層312は、金属アモルファス材料を含み、第2の中間層314は、テクスチャ化された(100)層を含む。
【0036】
正方晶(001)材料又は正方晶(110)材料は、約4.49Å~約4.69Åの範囲のa軸と、約2.88Å~約3.15Åの範囲のc軸と、を有し得る。正方晶(001)材料又は正方晶(110)材料は、約4.20Å~約4.75Åの範囲のa軸格子パラメータを有し得る。正方晶(001)材料又は正方晶(110)材料は、SbO2、TiO2、IrO2、RuO2、CrO2、VO2、OsO2、RhO2、PdO2、WVO4、CrNbO4、SnO2、GeO2、並びにこれらと、W、Ta、及びNbからなる群から選択される1つ以上の元素との複合体からなる群から選択され得る。
【0037】
アモルファス金属材料は、NiTa、NiFeTa、NiNb、NiW、NiFeW、NiFeHf、CoHfB、CoZrTa、CoFeB、NiFeB、CoB、FeB、並びにこれらと、Ni、Fe、Co、Zr、W、Ta、Hf、Ag、Pt、Pd、Si、Ge、Mn、Al、及びTiからなる群から選択される1つ以上の元素との合金の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0038】
テクスチャ化された(100)層は、(1)RuAl、(2)以下のいくつかの選択肢に従って組み込まれたCrからなる群から選択され得る:(2a)250℃以上の温度で堆積される、(2b)X=10原子%未満であるRu、Mo、W、若しくはTiである加熱されたCrX合金中、又はnが約20原子%~約50原子%であるCrMon中のものである、(2c)加熱された(例えば、約200℃以下に)Cr/CrMon又はCrMon/Cr/CrMonのスタック中のもの。
【0039】
図4Bにおいて、バッファ層310及び/又は中間層320は、第1の中間層312と、第1の中間層312上に配設された第2の中間層314と、第2の中間層314上に配設された第3の中間層316と、を備える。第1の中間層312は、金属アモルファス材料を含み、第2の中間層314は、テクスチャ化された(100)層を含む。一実施形態では、第3の中間層316は、テクスチャ化されたbcc(100)層を含む。別の実施形態では、第3の中間層316は、fcc(100)層を含む。また別の実施形態では、第3の中間層316は、正方晶(001)層を含む。
【0040】
bcc(100)材料は、V、Nb、Mo、W、Ta、WTi50、Al10Nb40Ti50、Cr、B2相のRuAl、B2相のNiAl、B2相のRhAl、並びにこれらと、Ti、Al、Pd、Pt、Ni、Fe、及びCrからなる群から選択される1つ以上の元素との合金の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0041】
fcc(100)材料は、約4.20Å~約4.70Åの範囲の格子パラメータを有し得る。fcc(100)材料は、(1)FeO、CoO、NiO、ZrO、MgO、TiO、ScN、TiN、NbN、ZrN、HfN、TaN、ScC、TiC、NbC、ZrC、HfC、TaC、及びWC、(2)CoO、SIC、GaN、FeN、及びZnOからなる群から選択されるジンクブレンド立方晶fcc(100)材料、(3)W、Al、及びSiからなる群から選択される1つ以上の元素との、酸化物、炭化物、及び窒化物のうちの(1)及び(2)の複合体の組み合わせ、並びに(4)MoZr10、MoNi20、NbZr20からなる群から選択されるfcc金属、及びこれらと、W、Al、及びSiからなる群から選択される1つ以上の元素との合金の組み合わせ、の酸化物、炭化物、及び窒化物からなる群から選択され得る。言い換えれば、fcc(100)は、FeO、CoO、ZrO、MgO、TiO、ScN、TiN、NbN、ZrN、HfN、TaN、ScC、TiC、NbC、ZrC、HfC、TaC、WC、CoO、SIC、GaN、FeN、ZnO、MoZr10、MoNi20、NbZr20、並びにW、Al、及びSiからなる群から選択される1つ以上の元素とのそれらの複合体の組み合わせからなる群から選択される。
【0042】
図4Cでは、バッファ層310及び/又は中間層320は、第1の中間層312と、第1の中間層312上に配設された第2の中間層314と、第2の中間層314上に配設された第3の中間層316と、第3の中間層316上に配設された第4の中間層318と、を備える。第1の中間層312は、金属アモルファス材料を含み、第2の中間層314は、テクスチャ化された(100)層を含む。一実施形態では、第3の中間層316は、テクスチャ化されたbcc(100)層を含み、第4の中間層318は、fcc(100)層を含む。
【0043】
別の実施形態では、第3の中間層316は、テクスチャ化された(100)bcc材料を含み、第4の中間層318は、正方晶(110)材料を含む。また別の実施形態では、第3の中間層316は、テクスチャ化された(100)bcc材料を含み、第4の中間層318は、正方晶(001)材料を含む。
【0044】
図4Dにおいて、バッファ層310及び/又は中間層320は、金属アモルファス材料を含む第1の中間層312と、テクスチャ化された(100)材料を含む第2の中間層314と、テクスチャ化された(100)bcc材料を含む第3の中間層316と、正方晶(001)材料を含む第4の中間層318と、fcc(100)材料を含む第5の中間層326と、を備える。
【0045】
特定の実施形態では、バッファ層310及び/又は中間層320は、スパッタリング、分子線エピタキシ、イオンビーム堆積、他の好適なPVDプロセス、及びそれらの組み合わせなどの、物理気相堆積(PVD)によって堆積される。特定の実施形態では、バッファ層310及び/又は中間層320は、20℃~約25℃などの周囲温度で堆積される。一態様では、バッファ層310及び/又は中間層320を周囲温度で形成することにより、中間層312、314、316、318、及び326の熱マイグレーションが低減される。別の態様では、バッファ層310を周囲温度で形成することにより、バッファ層310を形成する前に基板302上に形成された磁性材料の磁化方向の変化が最小限に抑えられる。
【0046】
特定の実施形態では、バッファ層310及び/又は中間層320のポストエッチングが行われる。例えば、バッファ層310及び/又は中間層320を、BiSb層304が上に配設された中間層312、314、316、318、及び326をエッチングするためにアルゴンイオンを向けることなどのイオンエッチングによってポストエッチングすることができる。ポストエッチングは、中間層312、314、316、318、及び326の表面を清浄化することによって、かつ/又は中間層312、314、316、318、及び326を歪めて、その上のBiSb層304の(012)成長を促進することによって、中間層312、314、316、318、及び326とBiSb層304との間の界面を強化すると考えられる。
【0047】
共有結合アモルファス材料、正方晶(001)材料、正方晶(110)材料、体心立方晶(bcc)(100)材料、面心立方晶(fcc)(100)材料(岩塩及びジンクブレンドの両方)、テクスチャ化されたbcc(100)材料、テクスチャ化されたfcc(100)材料、テクスチャ化された(100)材料、又はアモルファス金属材料のうちの少なくとも1つなどの、BiSb層304のBiSb(012)テクスチャ化された表面に適合する材料を、BiSb層304に接触して配設されたバッファ層310及び中間層320に含めることによって、BiSb層304の(012)成長が促進され、BiSb層304のBi原子及びSb原子の全体的な粒径を低減することによって、BiSb層304の表面粗さが低減される。BiSb(012)テクスチャ化された表面を改善又は維持することにより、BiSb層304との化学的相互作用が低減され、これにより、BiSb層304のSbマイグレーションが抑制される。更に、BiSb層304と接触して配設されたBiSb層304のBiSb(012)テクスチャ化された表面に適合する材料を含めることにより、エピタキシが改善され、粗さが低減され、BiSb層304の均一性が高まる。
【0048】
図5は、一実施形態による、
図3A及び
図3BのSOT MTJデバイス300、301のBiSb層スタック304であり得るサブ層を備えるBiSb層スタック304の概略断面図である。BiSb層スタック304は、Bi積層体304a、304cを備える。バッファ層310上に、第1のBi積層体304aが配設されている。第1のBi積層体304a上に、BiSb層304bが配設されている。BiSb層304bは、約10%~約20%の原子百分率でSbを含み得る。第2のBi積層体304cは、BiSb層304b上に配設されている。いくつかの実施形態では、第1のBi積層体及び第2のBi積層体304a、304cは各々、約0Å~約10Åの厚さを有する。
【0049】
BiSb層スタック304は、(012)方位を有する。いくつかの実施形態では、BiSb層スタック304は、Bi1-xSbxを含み、xは、0<x<1である。特定の実施形態では、BiSb層スタック304は、Bi1-xSbxを含み、xは、0.05<x<0.22であるか、又は約7%~約22%の原子パーセント含有量のアンチモンを含む。BiSb層スタック304は、約50Å~約150Åなどの、約20Å~約200Åの厚さを有する。
【0050】
表1は、ベータ-タンタル及び(001)方位を有するBiSb層と比較した、(012)方位を有するBiSb層スタック304の特性の一例を示す。
【0051】
【0052】
(012)方位を有するBiSb層スタック304は、ベータ-タンタル(ベータ-Ta)と同様の導電率、及び、ベータ-Ta又は(001)方位を有するBiSb層よりもはるかに大きいスピンホール角を有する。したがって、スピンホール効果を生じさせるための相対電力は、ベータ-Ta又はBiSb(001)と比較してBiSb(012)の方が低い。
【0053】
図6A~
図6Eは、様々な実施形態による、
図3A及び
図3BのSOT MTJデバイス300、301内の層の原子格子構造を例示する概略図である。
図6A~
図6Eの各々における様々な原子は、ドットによって表されている。
【0054】
図6Aに示されるように、(012)方位を有するBiSb層304又はBiSb層スタック304は、a=約4.54Å及びb=約4.75Åの寸法を有する長方形表面を有し、一方向に約3%の不整合を有する。BiSb層又はBiSb層スタック304の結晶格子構造は長方形であるが、a=4.64Åである正方格子として近似することができる。バッファ層310及び/又は中間層320が、格子構造又は4.64Åに近い最近接距離を有する材料から作製される場合、バッファ層310材料及び/又は中間層320材料はまた、(012)方位におけるBiSbの成長を促進するために使用され得る。
【0055】
図6Bは、fcc格子構造及びbcc格子構造の結晶構成の比較を例示している。黒丸は、bcc原子を表し、白丸は、fcc原子を表す。
図6Bに示されるように、a
fccは、a
bcc√2に等しい。したがって、fcc格子構造及びbcc格子構造の両方の結晶構成を、正方格子として近似することができる。
【0056】
図6Cは、(001)方位のRuO
2の正方晶構造を例示する例示的な直交ビューであり、黒丸は、Ruを表し、白丸は、Oを表す。RuO
2は、バッファ層310及び/又は中間層320において利用され得る、(001)方位の正方晶結晶格子構造の一例である。しかしながら、当業者であれば、正方晶(001)方位を有する他の化学物質が代わりに利用されてもよいこと、及び正方晶(001)方位はRuO
2に限定されることを意図するものではないことが分かるであろう。RuO
2の場合、長方形角柱寸法は、a=4.50Å、b=4.50Å、及びc=3.10Åである。したがって、RuO
2は、a=4.50Åである2D正方格子構造を有する。a=4.64ÅであるBiSbの結晶格子構造と比較すると、3%の差がある。したがって、(001)方位を有するRuO
2を利用して、BiSbを(012)テクスチャで成長させることができる。
【0057】
図6Dは、(110)方位のRuO
2の正方晶構造を例示する概略平面図である。
図6Eは、fcc(100)方位のMgO及び正方晶(110)方位のRuO
2の結晶構成の比較を例示している。(110)方位を有するRuO2の場合、RuO
2は、a=6.36Å及びb=3.10Åである結晶格子構造を有する。
図6Dの破線の四角形に見られるように、Ru-Ru結合長及びRu-O結合長の差に起因して、正方晶(110)方位におけるBiSbとRuO
2との間により大きな不整合がある。BiSbのa値とRuO
2のa値との間に37%の不整合があり、BiSbのa値とRuO
2のb値との間に33%の不整合がある。しかしながら、
図6D~
図6Eに見られるように、酸素原子(白丸によって表される)間の距離は、(012)方位のBiSbと一致する。
【0058】
図7及び
図8は、約30ÅのNiFeTaのアモルファス層上に配設された、B2相の約30ÅのRuAlのテクスチャ化された層のグラフ700、800である。
図7において、グラフ700は、近接した格子整合を有するこの層構成が均一な結晶格子構造をもたらすことを示す。希薄な格子整合は、材料の一部が材料のバルクとは異なる結晶格子構造を形成することをもたらす。
図7において、MgO又はTaのいずれかが、RuAl層上に配設されている。B2相のRuAlは、3.000Åのa
bccを有し、Taは、3.306Åのa
bccを有し、値に10%よりも大きい差がある。この不十分な格子整合に起因して、Taの一部は、(110)方位で形成され、残りは、(200)方位で形成される。対照的に、B2相のRuAlのa√2値は、4.243Åであり、MgOのa
fccは、4.210Åである。これらの値は近接していることから、MgOの大部分は、(100)方位で形成される。
【0059】
MgOと同様の他のfcc材料は、導電性を有する。したがって、fcc材料は、シャンティングを低減し、エピタキシを改善し、BiSbの成長を改善する。正方晶系酸化物のいくつかはまた、高い抵抗率で導電性であり、fcc材料と同様の改善された成長特性に寄与する。
【0060】
図8において、グラフ800は、より近い格子構造を有するように材料を層状にすることが、BiSb層又はBiSb層スタック304についてより均一な結晶格子構造成長をもたらすことを示す。
図8において、10ÅのWがRuAl層上に層状にされ、30ÅのTaがW層上に積層されている。B2相のRuAlは、3.000Åのa
bccを有し、Wは、3.165Åのa
bccを有し、Taは、3.306Åのa
bccを有する。各層間のa
bccの差が10%未満であることから、結晶格子構造は、10%を超える差で形成された格子構造よりも均一である。Ta(100)テクスチャは、Wを歪みバッファ層として使用することによって改善される。また、RuAlに近接した格子を有する他のB2材料を、(100)テクスチャ(例えば、NiAlのような)で成長させることができる。
【0061】
図9Aは、
図1のドライブ100又は他の好適な磁気媒体ドライブのMAMR書き込みヘッドなどのMAMR書き込みヘッドにおいて使用するためのSOTデバイス900の概略断面図である。SOTデバイス900は、
図3A~
図5のBiSb層304及びバッファ層310などの、基板302上に形成されたバッファ層310上に形成された、(012)方位を有するBiSb層304を備える。BiSb層304上には、スピントルク層(spin torque layer、STL)970が形成されている。STL970は、CoFe、CoIr、NiFe、及びCoFeX合金(式中、X=B、Ta、Re、又はIr)のうちの1つ以上などの強磁性材料を含む。
【0062】
特定の実施形態では、BiSb層304とSTL970との間に、電流シャントブロック層960が配設されている。電流シャントブロッキング層960は、BiSb層304からSTL970に流れる電流を低減するが、BiSb層304とSTL970とのスピン軌道結合を可能にする。特定の実施形態では、電流シャントブロッキング層960は、BiSb層304とSTL970との間に、非磁性材料よりも大きいスピン軌道結合を提供する磁性材料を含む。特定の実施形態では、電流シャントブロッキング層960は、FeCo、FeCoM、FeCoMO、FeCoMMeO、FeCoM/MeOスタック、FeCoMNiMnMgZnFeO、FeCoM/NiMnMgZnFeOスタック、それらの複数の層/スタック、又はそれらの組み合わせの磁性材料を含み、Mは、B、Si、P、Al、Hf、Zr、Nb、Ti、Ta、Mo、Mg、Y、Cu、Cr、及びNiのうちの1つ以上であり、Meは、Si、Al、Hf、Zr、Nb、Ti、Ta、Mg、Y、又はCrである。特定の実施形態では、電流シャントブロッキング層960は、約10Å~約100Åの厚さに形成されている。特定の態様では、100Åを超える厚さを有する電流シャントブロッキング層960は、BiSb層304とSTL970とのスピン軌道結合を低減し得る。特定の態様では、10Å未満の厚さを有する電流シャントブロッキング層は、BiSb層304からSTL970への電流を十分に低減しない場合がある。
【0063】
特定の実施形態では、STL970上に、スペーサ層980及びピン止め層990などの追加の層が形成されている。ピン止め層990は、STL970を部分的にピン止めすることができる。ピン止め層990は、PtMn、NiMn、IrMn、IrMnCr、CrMnPt、FeMn、他の反強磁性材料、又はそれらの組み合わせの単層又は複数の層を含む。スペーサ層980は、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、他の非磁性材料、又はそれらの組み合わせの単層又は複数の層を含む。
【0064】
図9B~
図9Cは、
図9AのSOTデバイス900を有するMAMR書き込みヘッド210の一部分の特定の実施形態の概略MFS図である。MAMR書き込みヘッド210を、書き込みヘッド
図2、又は
図1のドライブ100における他の好適な書き込みヘッド、又はテープドライブなどの他の好適な磁気媒体ドライブとすることができる。MAMR書き込みヘッド210は、トラック方向に主磁極220及びトレーリングシールド240を含む。SOTデバイス900は、主磁極とトレーリングシールド240との間のギャップに配設されている。
【0065】
動作中、スピンホール層として作用するBiSb層又はBiSb層スタック304を流れる充電電流が、BiSb層にスピン電流を発生させる。BiSb層とスピントルク層(STL)970とのスピン軌道結合は、BiSb層304からのスピン電流のスピン軌道結合によって、STL970の磁化のスイッチング又は歳差運動を引き起こす。STL970の磁化のスイッチング又は歳差運動は、書き込み磁界に対するアシストAC磁場を生成することができる。SOTに基づくエネルギーアシスト書き込みヘッドは、スピン移行トルクに基づくMAMR書き込みヘッドと比較して、数倍大きい電力効率を有する。
図9Bに示されるように、STL970の磁化方向の容易軸は、STL970の形状異方性から、
図9Aのピン止め層990から、及び/又はSTL970に近接するハードバイアス素子から、MFSに垂直である。
図9Cに示されるように、STL970の磁化方向の容易軸は、STL970の形状異方性から、
図9Aのピン止め層990から、及び/又はSTL970に近接するハードバイアス素子から、MFSに平行である。
【0066】
図10は、MRAMデバイス1000として使用されるSOT MTJ1001の概略断面図である。MRAMデバイス1000は、基準層(reference layer、RL)1010と、RL1010上のスペーサ層1020と、スペーサ層1020上の記録層1030と、記録層1030上の電流シャントブロック層1040上のバッファ層310と、バッファ層310上のBiSb層又はBiSb層スタック304と、を備える。BiSb層304及びバッファ層310は、
図3A~
図5のBiSb層304及びバッファ層310であり得る。
【0067】
RL1010は、CoFe、他の強磁性材料、及びそれらの組み合わせの単層又は複数の層を含む。スペーサ層1020は、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、他の誘電体材料、又はそれらの組み合わせの単層又は複数の層を含む。記録層1030は、CoFe、NiFe、他の強磁性材料、又はそれらの組み合わせの単層又は複数の層を含む。
【0068】
上述したように、特定の実施形態では、電流シャントブロック層1040は、バッファ層310と記録層1030との間に配設されている。電流シャントブロッキング層1040は、BiSb層304から記録層1030に流れる電流を低減するが、BiSb層304と記録層1030とのスピン軌道結合を可能にする。例えば、MRAMデバイスへの書き込みを、BiSb層と記録層1030とのスピン軌道結合によって可能にすることができ、これにより、BiSb層304からのスピン電流のスピン軌道結合によって記録層1030の磁化のスイッチングが可能になる。特定の実施形態では、電流シャントブロッキング層1040は、BiSb層304と記録層1030との間に、非磁性材料よりも大きいスピン軌道結合を提供する磁性材料を含む。特定の実施形態では、電流シャントブロッキング層1040は、FeCoM、FeCoMO、FeCoMMeO、FeCoM/MeOスタック、FeCoMNiMnMgZnFeO、FeCoM/NiMnMgZnFeOスタック、それらの複数の層/スタック、又はそれらの組み合わせの磁性材料を含み、Mは、B、Si、P、Al、Hf、Zr、Nb、Ti、Ta、Mo、Mg、Y、Cu、Cr、及びNiのうちの1つ以上であり、Meは、Si、Al、Hf、Zr、Nb、Ti、Ta、Mg、Y、又はCrである。
【0069】
図10のMRAMデバイス1000は、ピン止め層、ピン止め構造(例えば、合成反強磁性(synthetic antiferromagnetic、SAF)ピン止め構造)、電極、ゲート、及び他の構造などの、他の層を含み得る。(012)方位を有するBiSb層304を利用してバッファ層310上に
図10の構造以外の他のMRAMデバイスを形成して、SOT MTJ1001を形成することができる。
【0070】
共有結合アモルファス材料、正方晶(001)材料、正方晶(110)材料、体心立方晶(bcc)(100)材料、面心立方晶(fcc)(100)材料、テクスチャ化されたbcc(100)材料、テクスチャ化されたfcc(100)材料、テクスチャ化された(100)材料、又はアモルファス金属材料のうちの少なくとも1つなどの、BiSb層のBiSb(012)テクスチャ化された表面に適合する材料を、BiSb層に接触して配設されたバッファ層及び中間層に含めることによって、BiSb層の(012)成長が促進され、BiSb層のBi原子及びSb原子の全体的な粒径を低減することによって、BiSb層の表面粗さが低減される。BiSb(012)テクスチャ化された表面を改善又は維持することにより、BiSb層との化学的相互作用が低減され、これにより、BiSb層のSbマイグレーションが抑制される。更に、BiSb層と接触して配設されたBiSb層のBiSb(012)テクスチャ化された表面に適合する材料を含めることにより、エピタキシが改善され、粗さが低減され、BiSb層の均一性が高まる。
【0071】
一実施形態では、スピン軌道トルク(SOT)磁気トンネル接合(MTJ)デバイスは、基板と、基板上に形成されたバッファ層であって、バッファ層が、アモルファス構造の材料を含むアモルファス層であって、材料が、共有結合炭化物、共有結合酸化物、又は共有結合窒化物を含む、アモルファス層を備える、バッファ層と、バッファ層上に形成されたビスマスアンチモン(BiSb)層であって、BiSb層が、(012)方位を有し、バッファ層が、BiSb層中のSbのマイグレーションを低減するように構成されている、BiSb層と、を備える。
【0072】
バッファ層は、1つ以上のサブ層を更に備え、1つ以上のサブ層の各々が、正方晶(001)材料、正方晶(110)材料、体心立方晶(bcc)(100)材料、面心立方晶(fcc)(100)材料、テクスチャ化されたbcc(100)材料、テクスチャ化されたfcc(100)材料、テクスチャ化された(100)材料、アモルファス金属材料、及び先行材料のいずれかのうちの1つ以上の層状の組み合わせからなる群から選択される1つ以上の材料を含む。1つ以上のサブ層のうちの少なくとも1つのサブ層は、bcc(100)材料を含み、bcc(100)材料が、V、Nb、Mo、W、Ta、WTi50、Al10Nb40Ti50、Cr、CrMo、CrXであって、B2相において、X=Ti、W、Mo、Ru、又はRuAlである、CrX、並びにこれらと、Ti、Al、Pd、Pt、Ni、Fe、及びCrからなる群から選択される元素との合金の組み合わせからなる群から選択される。1つ以上のサブ層のうちの少なくとも1つのサブ層は、fcc(100)材料を含み、fcc(100)材料が、FeO、CoO、ZrO、MgO、TiO、ScN、TiN、NbN、ZrN、HfN、TaN、ScC、TiC、NbC、ZrC、HfC、TaC、WC、CoO、SIC、GaN、FeN、ZnO、MoZr10、MoNi20、NbZr20、並びにW、Al、及びSiからなる群から選択される1つ以上の元素とのそれらの複合体の組み合わせからなる群から選択される。
【0073】
1つ以上のサブ層のうちの少なくとも1つのサブ層は、正方晶(001)材料又は正方晶(110)材料を含み、正方晶(001)材料又は正方晶(110)材料が、SbO2、TiO2、IrO2、RuO2、CrO2、VO2、OsO2、RhO2、PdO2、WVO4、CrNbO4、SnO2、GeO2、並びにこれらと、W、Ta、及びNbからなる群から選択される元素との複合体からなる群から選択される。正方晶(001)材料又は正方晶(110)材料は、約4.49Å~約4.69Åの範囲のa軸と、約2.88Å~約3.15Åの範囲のc軸と、を有する。1つ以上のサブ層のうちの少なくとも1つのサブ層は、アモルファス金属材料を含み、アモルファス金属材料が、NiTa、NiFeTa、NiNb、NiW、NiFeW、NiFeHf、CoHfB、CoZrTa、CoFeB、NiFeB、CoB、FeB、並びにこれらと、Ni、Fe、Co、Zr、W、Ta、Hf、Ag、Pt、Pd、Si、Ge、Mn、Al、及びTiからなる群から選択される元素との合金の組み合わせからなる群から選択される。
【0074】
アモルファス構造中の材料は、afcc結晶構造からの(111)d間隔に対応する、約2.0Å~約2.2Åに等しいd間隔を有する最近接XRD回折ピークを有し、afccが、約3.5Å~3.8Åである。SOT MTJデバイスは、BiSb層上に配設された中間層を更に備え、中間層が、正方晶(001)材料、正方晶(110)材料、体心立方晶(bcc)(100)材料、面心立方晶(fcc)(100)材料、テクスチャ化されたbcc(100)材料、テクスチャ化されたfcc(100)材料、テクスチャ化された(100)材料、共有結合炭化物、酸化物、又は窒化物を含むアモルファス材料、アモルファス金属材料、及び先行材料のいずれかのうちの1つ以上の層状の組み合わせからなる群から選択される1つ以上の材料を含む。
【0075】
別の実施形態では、SOT MTJデバイスは、基板と、基板上に形成されたバッファ層であって、バッファ層が、少なくとも1つの第1の中間層を備え、少なくとも1つの第1の中間層が、正方晶(001)材料、正方晶(110)材料、体心立方晶(bcc)(100)材料、面心立方晶(fcc)(100)材料、テクスチャ化されたbcc(100)材料、テクスチャ化されたfcc(100)材料、テクスチャ化された(100)材料、又は共有結合炭化物、共有結合酸化物、若しくは共有結合窒化物を含むアモルファス材料のうちの少なくとも1つを含む、バッファ層と、(012)方位を有するビスマスアンチモン(BiSb)層を備える、バッファ層上に形成されたBiSb層スタックであって、BiSb層スタックが、第1のBi層であって、BiSb層が、第1のBi層上に配設されている、第1のBi層と、BiSb層上に配設された第2のBi層と、を更に備え、第1のBi層及び第2のBi層が各々、約0Å超かつ約10Å未満の厚さを有し、BiSb層をサンドイッチ状にして、(012)BiSbテクスチャを促進し、Sbマイグレーションによって劣化したBiSb層の化学的均一性及び構造を改善するように構成されたSb組成変調層として機能する、BiSb層スタックと、を備える。
【0076】
バッファ層は、第1の中間層の下に配設されたアモルファス層を更に備え、アモルファス層が、NiTa、NiFeTa、NiNb、NiW、NiFeW、NiFeHf、CoHfB、CoZrTa、CoFeB、NiFeB、CoB、FeB、並びにこれらと、Ni、Fe、Co、Zr、W、Ta、Hf、Ag、Pt、Pd、Si、Ge、Mn、Al、及びTiからなる群から選択される元素との合金の組み合わせからなる群から選択される材料を含む。バッファ層は、少なくとも1つの第2の中間層を更に備える。少なくとも1つの第2の中間層は、テクスチャ化されたbcc(100)材料である。少なくとも1つの第2の中間層は、テクスチャ化されたfcc(100)材料である。SOT MTJデバイスは、BiSb層上に配設された中間層を更に備え、中間層が、少なくとも1つの第1の中間層と同じ材料を含む。第1のBi層及び第2のBi層は各々、約0Å~約10Åの幅を有する。少なくとも1つの第1の中間層は、正方晶(001)材料又は正方晶(110)材料を含み、正方晶(001)材料又は正方晶(110)材料が、約4.18Å~約4.75Åの範囲のa軸格子パラメータを有する。少なくとも1つの第1の中間層は、fcc(100)材料を含み、fcc(100)材料が、約4.18Å~約4.75Åの範囲の格子パラメータを有する。
【0077】
また別の実施形態では、SOT MTJデバイスは、基板と、基板上に形成されたバッファ層と、を備え、バッファ層が、(100)方位を有するテクスチャ化された層と、テクスチャ化された層上に配設された第1の中間層と、を備え、第1の中間層が、正方晶(001)、正方晶(110)、体心立方晶(bcc)(100)、面心立方晶(fcc)(100)、テクスチャ化されたbcc(100)、及びテクスチャ化されたfcc(100)からなる群から選択される立方晶構造の少なくとも1つを備える。SOT MTJデバイスは、バッファ層上に形成されたビスマスアンチモン(BiSb)層であって、BiSb層が、(012)方位を有し、バッファ層が、BiSb層中のSbの拡散を低減するように構成されている、BiSb層と、BiSb層上に配設された中間層と、を更に備える。
【0078】
バッファ層は、NiTa、NiFeTa、NiNb、NiW、NiFeW、NiFeHf、CoHfB、CoZrTa、CoFeB、NiFeB、CoB、FeB、並びにこれらと、Ni、Fe、Co、Zr、W、Ta、Hf、Ag、Pt、Pd、Si、Ge、Mn、Al、及びTiからなる群から選択される元素との合金の組み合わせからなる群から選択される材料を含むアモルファス層を更に備える。アモルファス層は、基板上に配設されており、テクスチャ化された層が、アモルファス層上に配設されており、第1の中間層が、テクスチャ化された層上に配設されており、BiSb層が、第1の中間層上に配設されている。バッファ層は、1つ以上の第2の中間層を更に備え、1つ以上の第2の中間層が、第1の中間層とは異なる立方晶構造を有する。
【0079】
中間層は、正方晶(001)材料、正方晶(110)材料、体心立方晶(bcc)(100)材料、面心立方晶(fcc)(100)材料、テクスチャ化されたbcc(100)材料、テクスチャ化されたfcc(100)材料、テクスチャ化された(100)材料、共有結合炭化物、共有結合酸化物、又は共有結合窒化物を含むアモルファス材料、アモルファス金属材料、及び先行材料のいずれかのうちの1つ以上の層状の組み合わせからなる群から選択される1つ以上の材料を含む。テクスチャ化された層は、RuAlと、約250℃以上の温度で堆積されたCrか、約10原子パーセント未満のX=Ru、Mo、W、又はTiである、加熱されたCrX合金中のCrであって、CrX合金が、約200℃以下の温度に加熱される、Crか、nが約20原子パーセント~約50原子パーセントであるCrMonとしてのCr、又はnが約20原子パーセント~約50原子パーセントである、加熱されたCr/CrMon若しくはCrMon/Cr/CrMonのサンドイッチ状のCrとからなる群から選択される。
【0080】
上記は本開示の実施形態を目的とするが、本開示の他の及び更なる実施形態が、その基本的範囲から逸脱することなく考案され得、その範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。