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  • 特許-化粧シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】化粧シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20241022BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/30 101
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020213729
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099752
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】前谷 枝保
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-241419(JP,A)
【文献】特開2018-192792(JP,A)
【文献】特開2004-307747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
B32B 27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ塩化ビニルを含む材料で構成された基材と、
反応性乳化剤を用いて形成されたエマルジョン系粘着剤および、反応性乳化剤による乳化処理が施された難燃剤を含む粘着剤層とを備えることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記難燃剤として臭素系難燃剤を含む請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記難燃剤としてリン系難燃剤を含む請求項1または2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記難燃剤として臭素系難燃剤およびリン系難燃剤を含む請求項1に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記粘着剤層における前記エマルジョン系粘着剤の含有率は、50質量%以上85質量%以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記粘着剤層における前記難燃剤の含有率は、10質量%以上45質量%以下である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項7】
前記粘着剤層における前記エマルジョン系粘着剤の含有率をX1[質量%]、前記粘着剤層における前記難燃剤の含有率をX2[質量%]としたとき、0.15≦X2/X1≦0.9の関係を満たす請求項1ないし6のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項8】
前記エマルジョン系粘着剤の平均粒子径は、80nm以上1000nm以下である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項9】
前記エマルジョン系粘着剤の形成に用いる反応性乳化剤と、前記難燃剤の乳化処理に用いる反応性乳化剤とが同種のものである請求項1ないし8のいずれか1項に記載の化粧シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
化粧シートは、一般に、基材に粘着剤層が設けられた構成を有し、基材が被着体の表面を覆うように被着体に貼着されることにより、被着体を装飾するとともに保護する。化粧シートには、例えば、内装建材として室内の壁面に貼着されるものがある。
【0003】
化粧シートの基材としては、耐久性や難燃性、加工性、施工性等の観点から、ポリ塩化ビニルを含む材料が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、従来、化粧シートの粘着剤層の形成には、広く溶剤系粘着剤が用いられてきたが、近年は、環境保護の観点から、エマルジョン系粘着剤を使用することが求められている。
【0005】
しかしながら、一般に、ポリ塩化ビニルを含む材料で構成された基材に、エマルジョン系粘着剤を用いた粘着剤層を形成した場合、基材と粘着剤層との密着性が低下するという課題がある。また、上記のように、化粧シートは内装建材として用いられる場合もあり、防火や火災被害の拡大抑制、被着体の保護等の観点から、化粧シートに対しては難燃性の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平4-055556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、難燃性に優れるとともに、基材と粘着剤層との密着性に優れる化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)~(9)に記載の本発明により達成される。
(1) ポリ塩化ビニルを含む材料で構成された基材と、
反応性乳化剤を用いて形成されたエマルジョン系粘着剤および、反応性乳化剤による乳化処理が施された難燃剤を含む粘着剤層とを備えることを特徴とする化粧シート。
【0009】
(2) 前記難燃剤として臭素系難燃剤を含む上記(1)に記載の化粧シート。
(3) 前記難燃剤としてリン系難燃剤を含む上記(1)または(2)に記載の化粧シート。
【0010】
(4) 前記難燃剤として臭素系難燃剤およびリン系難燃剤を含む上記(1)に記載の化粧シート。
【0011】
(5) 前記粘着剤層における前記エマルジョン系粘着剤の含有率は、50質量%以上85質量%以下である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の化粧シート。
【0012】
(6) 前記粘着剤層における前記難燃剤の含有率は、10質量%以上45質量%以下である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の化粧シート。
【0013】
(7) 前記粘着剤層における前記エマルジョン系粘着剤の含有率をX1[質量%]、前記粘着剤層における前記難燃剤の含有率をX2[質量%]としたとき、0.15≦X2/X1≦0.9の関係を満たす上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の化粧シート。
【0014】
(8) 前記エマルジョン系粘着剤の平均粒子径は、80nm以上1000nm以下である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の化粧シート。
【0015】
(9) 前記エマルジョン系粘着剤の形成に用いる反応性乳化剤と、前記難燃剤の乳化処理に用いる反応性乳化剤とが同種のものである上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の化粧シート。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、難燃性に優れるとともに、基材と粘着剤層との密着性に優れる化粧シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の化粧シートの好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[1]化粧シート
まず、本発明の化粧シートについて説明する。
図1は、本発明の化粧シートの好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【0019】
本実施形態の化粧シート10は、基材11と、基材11の一方の面側に積層された粘着剤層12とを備える。なお、本明細書において「シート」にはフィルムの概念が含まれるものとする。化粧シート10は、被着物の表面の少なくとも一部を覆うように貼着されて、被着物の表面を装飾するとともに被着物を保護する。
【0020】
基材11は、ポリ塩化ビニル(PVC)を含む材料で構成されている。また、粘着剤層12は、反応性乳化剤を用いて形成されたエマルジョン系粘着剤および難燃剤を含む。
【0021】
化粧シート10によれば、基材11がポリ塩化ビニルを含む材料で構成されていることにより、基材11の難燃性や、耐水性、耐候性、強度、耐久性、加工性、施工性等を向上させることができる。また、粘着剤層12に含まれるエマルジョン系粘着剤の形成に反応性乳化剤が用いられていることにより、ポリ塩化ビニルを含む基材11に対する粘着剤層12の密着性を向上させることができる。さらに、粘着剤層12には、難燃剤が含まれていることにより、化粧シート10の難燃性を向上させることができる。
【0022】
[1-1]基材
基材11は、シート状の部材であり、上述したように、ポリ塩化ビニルを含む材料で構成されている。
【0023】
ポリ塩化ビニルは、他の樹脂材料に比べて高い難燃性を有し、かつ、耐水性や耐侯性等にも優れ、可塑剤の添加等により強度や可塑性の調整も容易である。
【0024】
したがって、ポリ塩化ビニルを用いて基材11を構成することにより、基材11の難燃性や、耐水性、耐候性、強度、耐久性、加工性、施工性等を容易に向上させることができる。
【0025】
基材11は、ポリ塩化ビニルに加え、他の樹脂材料を含んでいてもよい。
また、基材11を構成する材料には、必要に応じて各種の添加剤が含有されていてもよい。
【0026】
添加剤としては、例えば、可塑剤や、安定剤、着色剤等が挙げられる。
可塑剤としては、例えば、フタル酸オクチル(ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP))、フタル酸ジブチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル(DINP)等のフタル酸エステル系可塑剤;アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチル等の脂肪族二塩基酸ジエステル系可塑剤;トリクレジルホスフエート、トリオクチルホスフエート等のリン酸エステル系可塑剤;エポキシ化大豆油、エポキシ樹脂等のエポキシ系可塑剤;ポリエステル可塑剤等を用いることができる。
【0027】
安定剤としては、例えば、脂肪酸カルシウム、脂肪酸亜鉛、脂肪酸バリウム等の金属石ケン;ハイドロタルサイト;エポキシ系安定剤;バリウム系安定剤;カルシウム系安定剤;スズ系安定剤;亜鉛系安定剤;カルシウム-亜鉛系(Ca-Zn系)、バリウム-亜鉛系(Ba-Zn系)等の複合安定剤等を用いることができる。上記金属石ケンの具体例としては、例えば、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸バリウム、ステアリン酸バリウム、リシノール酸バリウム等が挙げられる。
着色剤としては、例えば、有機顔料や、無機顔料、染料等を用いることができる。
【0028】
基材11は、少なくとも粘着剤層12と接触する部位がポリ塩化ビニルを含む材料で構成されていればよく、ポリ塩化ビニルを含まない部位を有していてもよい。
【0029】
なお、基材11の粘着剤層12と接触する部位におけるポリ塩化ビニルの含有率は、50質量%以上95質量%以下であるのが好ましく、55質量%以上93質量%以下であるのがより好ましく、60質量%以上90質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0030】
ポリ塩化ビニルの含有率が低すぎると、基材11の強度や剛性、難燃性等が低下してしまう可能性がある。ポリ塩化ビニルの含有率が高すぎると、基材11の強度や剛性が高くなりすぎる等して、加工性や施工性が低下してしまう可能性がある。
【0031】
基材11には、装飾を構成する印刷層が形成されてもよい。印刷層は、例えば、基材11の内部に形成されていてもよいし、粘着剤層12が接触する面とは反対側の面に積層されていてもよい。また、基材11の粘着剤層12が接触する面とは反対側の面には、上記の印刷層の上に、あるいは、上記の印刷層に代えて、基材11の表面を保護するコート層が設けられていてもよい。基材11の粘着剤層12が接触する面とは反対側の面には他の層が積層されてもよい。
【0032】
[1-2]粘着剤層
粘着剤層12は、上述したように、反応性乳化剤を用いて形成されたエマルジョン系粘着剤を含んでいる。反応性乳化剤は、エマルジョン系粘着剤の形成の際に、モノマー成分の乳化に用いられる。なお、本明細書において、「乳化」とは、液体の分散媒の中に、液体の分散質が分散している状態と、液体の分散媒の中に固体の分散質が分散している懸濁の状態の両方を含む概念である。
【0033】
ここで、「反応性乳化剤」は、エマルジョン系粘着剤の製造時にエマルジョン系粘着剤の高分子鎖に共有結合で取り込まれ、エマルジョン系粘着剤の一部となり得る乳化剤であり、エマルジョン系粘着剤の高分子鎖に取り込まれない「非反応性乳化剤」とは異なる。粘着剤層12には、反応性乳化剤がエマルジョン系粘着剤の高分子鎖に共有結合で取り込まれた状態で存在する。
【0034】
反応性乳化剤を用いて形成されたエマルジョン系粘着剤を含むことにより、粘着剤層12は、ポリ塩化ビニルを含む材料で構成された基材11に対する密着性に優れたものとなる。
【0035】
[1-2-1]エマルジョン系粘着剤
エマルジョン系粘着剤は、粘着剤成分またはその前駆体を分散質として含むエマルジョンである粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤である。通常、粘着剤層12を構成するエマルジョン系粘着剤自体は、前記粘着剤組成物の分散媒成分をほとんど含んでおらず、前記粘着剤組成物の分散媒成分を含む場合であっても、当該成分は、分散媒としての機能を有していない。
【0036】
前記粘着剤組成物は、アクリル系共重合体を含む水性エマルジョンであるのが好ましい。
【0037】
エマルジョン系粘着剤は、例えば、炭素数4以上12以下のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボキシル基含有不飽和単量体、カルボニル基含有不飽和単量体、および、必要に応じて、その他の不飽和単量体を含む単量体混合物を乳化重合させることにより得ることができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」と「メタクリル酸」の両方を含む概念である。後述の「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロ」、「(メタ)アリル」についても同様である。
【0038】
炭素数4以上12以下のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、特に限定されないが、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、イソウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、中でもn-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
カルボキシル基含有不飽和単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸、アクリル酸ダイマー、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でもアクリル酸、メタクリル酸等を好適に用いることができる。
【0040】
カルボニル基含有不飽和単量体としては、特に限定されないが、例えば、ダイアセトンアクリルアミド、2-(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でもダイアセトンアクリルアミドを好適に用いることができる。
【0041】
さらに、その他の不飽和単量体としては、特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート等の炭素数1以上3以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、トリデシル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート等の炭素数13以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、アルキルビニルエーテル等が挙げられる。
【0042】
不飽和単量体としては、上記の他に、官能基含有不飽和単量体、例えば、水酸基含有不飽和単量体、エポキシ基含有不飽和単量体、アルコキシシリル基含有不飽和単量体、アミド基やメチロール基を含有する不飽和単量体、多官能性不飽和単量体等を用いてもよい。
【0043】
水酸基含有不飽和単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0044】
エポキシ基含有不飽和単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0045】
アルコキシシリル基含有不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリクロロシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジクロロシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルクロロシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリプロピオキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロピオキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシヘキシルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシオクチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシデシルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシドデシルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシオクタデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリポロポキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジプロポキシシラン等が挙げられる。
【0046】
アミド基やメチロール基を含有する不飽和単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ブトキシN-メチロールアクリルアミド等が挙げられる。
【0047】
多官能性不飽和単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシフォスフェート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジアリルテレフタレート、テトラアリルオキシエタン、ジビニルベンゼン、トリ(メタ)アリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0048】
粘着剤層12におけるエマルジョン系粘着剤の含有率は、50質量%以上85質量%以下であるのが好ましく、60質量%以上80質量%以下であるのがより好ましく、65質量%以上75質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0049】
粘着剤層12におけるエマルジョン系粘着剤の含有率が前記下限値未満であると、基材11に対する粘着剤層12の密着性や、被着体に対する化粧シート10の密着性が低下してしまう可能性がある。一方、粘着剤層12におけるエマルジョン系粘着剤の含有率が前記上限値を超えると、粘着剤層12における難燃剤の含有量が低下し、化粧シート10の難燃性を向上させにくくなる可能性がある。
【0050】
粘着剤層12のエマルジョン系粘着剤の平均粒子径は、80nm以上1000nm以下であるのが好ましく、200nm以上800nm以下であるのがより好ましく、300nm以上600nm以下であるのがさらに好ましい。本明細書において、「平均粒子径」とは、体積基準の平均粒子径をいう。
【0051】
エマルジョン系粘着剤の平均粒子径が前記下限値未満であると、被着体に対する粘着剤層12の密着性が高くなりすぎてしまい、化粧シート10を被着体から剥離したときに、被着体に粘着剤層12の一部が残留してしまう可能性がある。一方、エマルジョン系粘着剤の平均粒子径が前記上限値を超えると、基材11に対する粘着剤層12の密着性が低下する可能性や、被着体に対する化粧シート10の粘着性が低下してしまう可能性がある。
【0052】
[1-2-2]反応性乳化剤
反応性乳化剤としては、アニオン型反応性乳化剤、または、ノニオン型反応性乳化剤を用いることができる。アニオン型反応性乳化剤としては、アニオン型であって、下記一般式(1)~(11)のような構造をもつものが挙げられる。
【0053】
【化1】
【0054】
【化2】
【0055】
【化3】
【0056】
【化4】
【0057】
【化5】
【0058】
【化6】
【0059】
【化7】
【0060】
【化8】
【0061】
【化9】
【0062】
【化10】
【0063】
【化11】
【0064】
一般式(1)~(11)において、Rはアルキル基、Rは水素またはメチル基、Rはアルキレン基、nは1以上の整数、mおよびlはm+l=3となる1以上の整数、XはSONHまたはSONaのいずれかである。
【0065】
市販のアニオン型反応性乳化剤としては、例えば、ADEKA社製の「アデカリアソープSE-10N」、「アデカリアソープPP-70」、「アデカリアソープSR-10」、「アデカリアソープSR-20」;三洋化成工業社製の「エレミノールJS-20」、「エレミノールRS-3000」;花王社製の「ラテムルPD-104」;第一工業製薬社製の「アクアロンBC-05」、「アクアロンBC-10」、「アクアロンBC-20」、「アクアロンHS-05」、「アクアロンHS-10」、「アクアロンHS-20」、「アクアロンKH-05」、「アクアロンKH-10」;東邦化学工業社製の「サーフマーFP-80 」等が挙げられる。
【0066】
ノニオン型反応性乳化剤としては、例えば、上記一般式(1)~(11)において、Xが水素に変更されたもの等が挙げられる。
【0067】
ノニオン型反応性乳化剤の市販品としては、例えば、ADEKA社製の「アデカリアソープNE-10」、「アデカリアソープNE-20」、「アデカリアソープNE-30」、「アデカリアソープNE-40」、「アデカリアソープER-10」、「アデカリアソープER-20」、「アデカリアソープER-30」、「アデカリアソープER-40」;第一工業製薬社製の「アクアロンRN-10」、「アクアロンRN-20」、「アクアロンRN-30」、「アクアロンRN-50」等が挙げられる。
【0068】
[1-2-3]難燃剤
粘着剤層12は、上述したように、難燃剤を含んでおり、エマルジョン系粘着剤に難燃剤が混合された「難燃剤混合粘着剤」によって構成されている。
【0069】
これにより、粘着剤層12の難燃性を向上させることができ、化粧シート10全体の難燃性を、さらに向上させることができる。
【0070】
粘着剤層12を構成する難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤を用いることができる。
【0071】
ハロゲン系難燃剤は、燃焼時に生成される活性ラジカルのトラップや、一酸化炭素発生反応の優先による発熱量の低減およびハロゲンガス等の不燃性ガスによる隠蔽効果により、難燃性を発現する。このようなことから、粘着剤層12や化粧シート10全体としての難燃性をより優れたものとすることができる。
【0072】
中でも、粘着剤層12が難燃剤として臭素系難燃剤を含む場合に、上記のような効果がより顕著に発揮される。
【0073】
臭素系難燃剤としては、例えば、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAジアリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジメタリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルのトリブロモフェノール付加物;テトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2-ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールS等の臭素化ビスフェノール系化合物あるいはその誘導体;ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ペンタブロモベンジルブロマイド、ビス(2,4,6ートリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモ無水フタル酸、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、ペンタブロモベンジルアクリレート、トリブロモフェニルアリルエーテル、2,3-ジブロモプロピルペンタブロモフェニルエーテル等の臭素化芳香族化合物あるいはその誘導体;モノ(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌラート、ジ(2,3-ジブロモプロピルイソシアヌラート)、p(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌラート、モノ(2,3,4-トリブロモブチル)イソシアヌラート、ジ(2,3,4-トリブロモブチル)イソシアヌラート、トリス(2,3,4-トリブロモブチル)イソシアヌラート、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌラート等の臭素化イソシアヌラートあるいはエチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、2,4,6-トリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)1,3,5-トリアジン等の臭素及び窒素原子含有化合物;テトラブロモビスフェノールAポリカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとブロモ化ビスフェノール付加物エポキシオリゴマー等の臭素化ビスフェノール類誘導体オリゴマー;ペンタブロモベンジルアクリレートポリマー等の臭素化アクリル樹脂;トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、トリス(ブロモフェニル)ホスフェート等の臭素及び燐原子含有化合物;臭化アンモニウム等の臭素化無機化合物等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
これらの中でも、より優れた難燃性や溶剤への溶解性等の観点から、臭素化イソシアヌラートが好ましく、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌラートがより好ましい。市販のトリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌラートとしては、例えば、マナック社製「EB-70」等が挙げられる。
【0075】
また、粘着剤層12は、難燃剤として、リン系難燃剤を含んでいてもよい。
リン系難燃剤は、燃焼時に生成されるリン酸やポリリン酸等が、ポリマー中の水素や酸素を引き抜き、ポリマーを炭化させ、高難燃性の炭化層膜を形成して、酸素を遮断することにより、難燃性を発現する。
【0076】
リン系難燃剤としては、例えば、リン酸エステル系難燃剤、ポリリン酸アンモニウム系難燃剤、メラミンリン酸塩系難燃剤、リン酸アミド系難燃剤、フォスファゼン化合物系難燃剤等が挙げられる。
【0077】
市販のリン酸エステル系難燃剤としては、例えば、大八化学工業社製の非ハロゲンリン酸エステルである「TMP(トリメチルホスフェート)」、「TEP(トリエチルホスフェート)」、「TPP(トリフェニルホスフェート)」、「TCP(トリクレジルホスフェート)」、「TXP(トリキシレニルホスフェート)」、「CDP(クレジルジフェニルホスフェート)」、「PX-110(クレジルジ2,6-キシレニルホスフェート)」、非ハロゲン縮合リン酸エステルである「CR-733S」、「CR-741」、「PX-200」、「DAIGUARD-580」、「DAIGUARD-850」、「DAIGUARD-880」、含ハロゲンリン酸エステルである「TMCPP(トリス(クロロプロピル)ホスフェート)」、「CR-900(トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート)」、含ハロゲン縮合リン酸エステルである「CR-504L」、「CR-570」、「DAIGUARD-540」;アクゾノーベルジャパン社製「フォスフレックス4、71B、TXP、T-BEP」等のフォスフレックスシリーズ、「ファイロールフレックスRDP、Sol-DP、ファイヤクエル220、EHC、ファイロールPCF、6」等のファイロールシリーズ;味の素ファインテクノ社製の非ハロゲンリン酸エステルである「レオフォス35、50、65、95、110、BAPP」といったレオフォスシリーズ、「クロニテックスCDP、TCP、TXP」といったクロニテックスシリーズ等のレオモールシリーズ、「レオルーブHYD-110、デュラッドTXP」等のデュラッドシリーズ;ADEKA社製の縮合リン酸エステルである「アデカスタブPFR、FP-600、FP-900L」等のアデカスタブシリーズ;アルベマール日本社製の縮合リン酸エステルである「NcendXP-30」、含ハロゲンリン酸エステルである「AntiblazeTMCP、195」、含ハロゲン縮合リン酸エステルである「AntiblazeV-6」等が挙げられる。
【0078】
ポリリン酸アンモニウム系難燃剤としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム単体、もしくは該ポリリン酸アンモニウムを主成分とする複合材料等が挙げられる。
【0079】
ポリリン酸アンモニウムは、一般式(NHr+23r+1(ただし、rは20以上1000以下の整数)で表すことができる化合物であり、rが十分に大きいときはメタリン酸の式(NHPO(ここでrは前記と同じ)で近似できる化合物である。
【0080】
一方、該ポリリン酸アンモニウムを主成分とする複合材料としては、該ポリリン酸アンモニウムを熱硬化性樹脂で被覆もしくはマイクロカプセル化したもの、メラミンモノマーや他の含窒素有機化合物等で該ポリリン酸アンモニウム表面を被覆したもの、界面活性剤やシリコン化合物で処理したもの、あるいはポリリン酸アンモニウムを製造する過程でメラミン等を添加し難溶化したもの等が挙げられる。
【0081】
市販のポリリン酸アンモニウム系難燃剤としては、例えば、クラリアント社製「エクソリット(Exolit)-AP422、AP423、AP462」、ブーデンハイム社製「テラージュ(TERRAJU)-S10、C30、C60、C70、C80」、鈴裕化学社製「ファイアカットP-770、P-790」、太平化学産業社製「タイエンK、C=II」等が挙げられる。
【0082】
市販のフォスファゼン化合物系難燃剤としては、例えば、伏見製薬所社製「ラビトルFP-110、FP-100」等が挙げられる。
【0083】
粘着剤層12は、難燃剤として、臭素系難燃剤およびリン系難燃剤の両方を含んでいるのが特に好ましい。臭素系難燃剤やリン系難燃剤としては、上述のいずれかを用いることができる。
【0084】
臭素系難燃剤およびリン系難燃剤の両方を含有していることにより、粘着剤層12の粘着性の低下を抑制しつつ、粘着剤層12中における難燃剤の含有量を増加させることができる。その結果、化粧シート10の難燃性をより効果的に高めることができる。
【0085】
粘着剤層12における臭素系難燃剤の含有率をX2B[質量%]、粘着剤層12におけるリン系難燃剤の含有率をX2P[質量%]としたとき、0.1≦X2P/X2B≦3.0の関係を満たすのが好ましい。また、0.3≦X2P/X2B≦2.5の関係を満たすのがより好ましく、0.5≦X2P/X2B≦2.0の関係を満たすのがさらに好ましい。
【0086】
このような関係を満たすことにより、臭素系難燃剤とリン系難燃剤とを併用することによる効果がより顕著に発揮され、粘着剤層12の粘着性の低下を抑制しつつ、化粧シート10の難燃性をさらに優れたものとすることができる。
【0087】
粘着剤層12における難燃剤の含有率は、10質量%以上45質量%以下であるのが好ましく、15質量%以上40質量%以下であるのがより好ましく、20質量%以上35質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0088】
粘着剤層12における難燃剤の含有率が前記下限値未満であると、粘着剤層12に含まれる難燃剤の量が少なすぎるために、化粧シート10の難燃性が向上しにくくなる。一方、粘着剤層12における難燃剤の含有率が前記上限値を超えると、粘着剤層12に含まれる難燃剤の量が多すぎて、粘着剤層12の粘着特性に影響し、基材11や被着体に対する粘着剤層12の密着性が低下してしまう可能性がある。
【0089】
なお、粘着剤層12に含まれる難燃剤の平均粒子径は、50nm以上1000nm以下であるのが好ましく、100nm以上800nm以下であるのがより好ましく、150nm以上600nm以下であるのがさらに好ましい。
【0090】
難燃剤の平均粒子径が前記下限値未満であると、難燃剤の難燃性が発現しにくくなる可能性がある。一方、難燃剤の平均粒子径が前記上限値を超えると、難燃剤が大きすぎることにより、基材11や被着体に対する粘着剤層12の密着性が低下してしまう可能性がある。
【0091】
粘着剤層12の難燃剤は、乳化処理が施されたものであるのが好ましい。
難燃剤が乳化処理を施されていることにより、例えば、粘着剤層12中において難燃剤が二次凝集体を形成して沈降することを、より効果的に防止したり、エマルジョン系粘着剤と難燃剤との親和性を高めることができる。その結果、粘着剤層12の粘着性の低下をより効果的に防止しつつ、化粧シート10の難燃性をより優れたものとすることができる。
【0092】
難燃剤の乳化処理は、例えば、反応性乳化剤を用いて行ってもよいし、非反応性乳化剤を用いて行ってもよい。また、反応性乳化剤と非反応性乳化剤とを併用して難燃剤の乳化処理を行ってもよい。
【0093】
反応性乳化剤としては、例えば、上記[1-2-2]で説明したものを用いることができる。このような反応性乳化剤を用いる場合、エマルジョン系粘着剤の形成に用いる反応性乳化剤と、難燃剤の乳化処理に用いる反応性乳化剤とは、同一または同種であってもよいし、そうでなくでもよい。
【0094】
非反応性乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウム等のアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等のノニオン系乳化剤等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0095】
[1-2-4]粘着剤層におけるエマルジョン系粘着剤と難燃剤の関係
粘着剤層12におけるエマルジョン系粘着剤の含有率をX1[質量%]、粘着剤層12における難燃剤の含有率をX2[質量%]としたとき、0.15≦X2/X1≦0.9の関係を満たすのが好ましく、0.2≦X2/X1≦0.8の関係を満たすのがより好ましく、0.3≦X2/X1≦0.6の関係を満たすのがさらに好ましい。
【0096】
X2/X1が前記下限値未満であると、難燃剤の含有量が少なくなり、化粧シート10の難燃性が向上しにくくなる。一方、X2/X1が前記上限値を超えると、エマルジョン系粘着剤の含有量が少なくなり、被着体に対する粘着剤層12の密着性が低下してしまう可能性がある。
【0097】
粘着剤層12に含まれるエマルジョン系粘着剤の平均粒子径をD1[nm]、粘着剤層12に含まれる難燃剤の平均粒子径をD2[nm]としたとき、0.1≦D2/D1≦0.9の関係を満たすのが好ましく、0.2≦D2/D1≦0.8の関係を満たすのがより好ましく、0.3≦D2/D1≦0.7の関係を満たすのがさらに好ましい。
【0098】
D2/D1が前記下限値未満であると、難燃剤の平均粒子径が小さくなりすぎ、化粧シート10の難燃性が向上しにくくなる可能性がある。D2/D1が前記上限値を超えると、難燃剤の平均粒子径が大きくなりすぎ、基材11や被着体に対する粘着剤層12の密着性が低下してしまう可能性がある。
【0099】
[1-3]剥離シート
未使用の化粧シート10の粘着剤層12の表層は、図1に示されているように、剥離シート20によって覆われているのが好ましい。
【0100】
これにより、被着体に貼着される前の粘着剤層12を好適に保護できるとともに、未使用の化粧シート10が取り回しやすくなる。
【0101】
剥離シート20としては、例えば、紙基材の一方の面をポリエチレンによってコートし、そのポリエチレンのコート層の表面にシリコーンを塗布したものを用いることができる。剥離シート20としては、これに限定されることはなく、例えば、樹脂フィルムが用いられてもよい。
【0102】
[2]化粧シートの製造方法
化粧シート10は、いかなる方法で製造してもよいが、例えば、反応性乳化剤を用いて形成したエマルジョン系粘着剤と難燃剤とを混合した難燃剤混合粘着剤を製造する第1の工程と、基材11に難燃剤混合粘着剤を付与する第2の工程とを備える方法を用いて好適に製造することができる。
【0103】
[2-1]第1の工程
第1の工程において、難燃剤混合粘着剤を製造する方法としては、例えば、以下の2つの方法A,Bが挙げられる。
【0104】
[2-1-1]方法A
方法Aでは、エマルジョン系粘着剤を生成する際に難燃剤を系内に分散させることにより、難燃剤混合粘着剤を製造する。
【0105】
より具体的には、粘着剤のモノマー成分と反応性乳化剤とを含む液中に、難燃剤を含ませ、この状態で乳化重合を行うことにより、粘着剤組成物であるポリマーエマルジョンを生成する。
【0106】
この方法Aによれば、エマルジョン系粘着剤を生成するときにエマルジョン系粘着剤中に難燃剤を満遍なく分散させることができるため、難燃剤混合粘着剤中にエマルジョン系粘着剤と難燃剤とが偏って存在することが抑制される。よって、粘着剤層12中における難燃剤の分布の不本意なばらつきの発生をより効果的に防止することができる。
【0107】
このような方法では、必要に応じて、増粘剤を添加して粘度を調整し、架橋剤を添加して架橋反応を行ってもよい。
以上のようにして、難燃剤混合粘着剤が製造される。
【0108】
[2-1-2]方法B
方法Bでは、エマルジョン系粘着剤を生成した後、反応性乳化剤を用いて製造されたエマルジョン系粘着剤と難燃剤とを混合することにより、難燃剤混合粘着剤を製造する。
【0109】
より具体的には、まず、粘着剤のモノマー成分と反応性乳化剤とを用いて乳化重合を行うことにより、粘着剤組成物であるポリマーエマルジョンを生成するとともに、別途、難燃剤乳化液を準備する。難燃剤乳化液は、難燃剤と乳化剤と水とを混合することにより、得ることができる。
【0110】
次に、上記のポリマーエマルジョンと難燃剤乳化液とを混合し、その後、必要に応じて、増粘剤を添加して粘度を調整し、架橋剤を添加して架橋反応を行い、エマルジョン系粘着剤を生成することにより、粘着剤層12を構成する難燃剤混合粘着剤が製造される。
【0111】
この方法Bによれば、例えば、粘着剤層12の物性の制御をより容易に行うことができる。
【0112】
なお、難燃剤として臭素系難燃剤およびリン系難燃剤の両方を用いる場合には、臭素系難燃剤が混合された第1の難燃剤乳化液と、リン系難燃剤が混合された第2の難燃剤乳化液と、をそれぞれ別々に準備して添加するようにしてもよい。また、難燃剤は乳化処理された状態で用いられなくてもよい。この場合には、難燃剤は、例えば水等の分散媒に分散された状態で添加、混合されればよい。
【0113】
[2-2]第2の工程
第2の工程では、基材11に、第1の工程で準備した難燃剤混合粘着剤を付与する。
【0114】
本工程は、例えば、難燃剤混合粘着剤を基材11の表面に塗布することにより行うことができる。
【0115】
また、本工程は、例えば、剥離シート20上に難燃剤混合粘着剤を塗布し、所定時間、乾燥させた後、この剥離シート20上に付与された難燃剤混合粘着剤を基材11の一方の面に転写することにより好適に行うことができる。
【0116】
上記のような方法により、基材11の表面に粘着剤層12を形成し、化粧シート10を得ることができる。
【0117】
上記のようにして得られた化粧シート10は、基材11に難燃剤混合粘着剤を付与した後、温度および湿度が管理された環境下で、所定の期間、静置されるのが好ましい。
【0118】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0119】
例えば、本発明の化粧シートは、粘着剤層に含まれる難燃剤として、臭素系難燃剤や、リン系難燃剤以外の難燃剤を含んでいてもよい。また、難燃剤は、乳化処理が施されたものでなくてもよい。
【0120】
また、本発明の化粧シートは、いかなる方法で製造されたものであってもよく、前述した実施形態で述べたような方法で製造されたものに限定されない。
【実施例
【0121】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0122】
[3]化粧シートの製造
(実施例1)
(1)基材の製造
まず、ポリ塩化ビニル:100質量部、フタル酸ジオクチル(DEHP):20質量部、エポキシ系可塑剤:5質量部、バリウム亜鉛系安定剤:2質量部、酸化チタン(顔料):10質量部の割合で、上記の各成分を含む溶融組成物を、カレンダーロールにより、160μmの厚みに成膜することにより、基材を得た。
【0123】
(2)難燃剤混合粘着剤の製造
一方、上記の方法Aにより、臭素系難燃剤とリン系難燃剤とを含む難燃剤混合粘着剤を製造した。具体的には以下の通りである。
【0124】
(2.1)難燃剤乳化液の製造
まず、以下のように、臭素系難燃剤を含む乳化液である難燃剤乳化液Aとリン系難燃剤を含む乳化液である難燃剤乳化液Bとを調製した。
【0125】
臭素系難燃剤B1(マナック社製「EB-70」、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌラート):100質量部、アニオン型反応性乳化剤RE1(三洋化成工業社製「エレミノールJS-20」、固形分濃度38.5質量%):6質量部、水:47質量部を混合攪拌し、難燃剤乳化液Aを得た。
【0126】
リン酸エステル系難燃剤P1(大八化学工業社製「CR741」):100質量部、アニオン型反応性乳化剤RE1(三洋化成工業社製「エレミノールJS-20」、固形分濃度38.5質量%):5質量部、水:42質量部を混合攪拌し、難燃剤乳化液Bを得た。
【0127】
(2.2)難燃剤混合粘着剤の製造
n-ブチルアクリレート:91.0質量部、アクリル酸:8.8質量部、メタクリル酸:0.2質量部、アニオン型反応性乳化剤RE1(三洋化成工業社製「エレミノールJS-20」、固形分濃度38.5質量%):3質量部、水:45質量部を混合攪拌し、単量体混合物からなる乳化液を得た。
【0128】
次に、冷却管、および、撹拌機を備えたフラスコに、アニオン型反応性乳化剤RE1(三洋化成工業社製「エレミノールJS-20」、固形分濃度38.5質量%):0.3質量部、水:30質量部を仕込んで攪拌した。フラスコを加熱し、75℃に昇温させた後、ここに、上記のようにして調製した乳化液全量のうち5%分を添加した。
【0129】
さらに、フラスコを加熱して80℃に昇温した後、フラスコに、5質量%の過硫酸アンモニウム水溶液:0.5質量部を添加し、乳化重合を行い、その15分後に、ここに、上記の乳化液の残量全部(すなわち、調製した乳化液全量のうち95%分)と、濃度5質量%の過硫酸アンモニウム水溶液:5質量部とを混合した混合液を、4時間かけて滴下した。
【0130】
滴下終了後、フラスコを2時間80℃に保った状態で反応を継続させた。その後、フラスコを60℃まで冷却し、アンモニア水を用いて中和することで、pH7.0、固形分濃度55質量%のポリマーエマルジョンCを得た。
【0131】
ポリマーエマルジョンC:100質量部に対して、難燃剤乳化液A:15質量部、難燃剤乳化液B:25質量部を添加混合した後、増粘剤(ADEKA社製「アデカノールUH-526」)を添加し、粘度を7000mPa・s(B型粘度計使用、12rpm、25℃)となるように調整した。さらに、イソシアネート系架橋剤(旭化成社製「デュラネートWT20-100」)を3.45質量部添加し、難燃剤混合粘着剤を得た。
【0132】
(3)化粧シートの製造
難燃剤混合粘着剤を、予め準備した剥離シートに、乾燥後の粘着剤層の厚みが50μmとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥させた後、基材に転写して粘着剤層を形成した。その後、25℃、50%RHの条件下で7日間静置して、化粧シートを得た。
【0133】
本実施例では、粘着剤層におけるエマルジョン系粘着剤の含有率X1は、68.1質量%であり、粘着剤層における難燃剤の含有率X2は、31.9質量%であり、X2/X1は、0.47であった。また、粘着剤層における臭素系難燃剤の含有率X2Bは、11.7質量%であり、リン系難燃剤の含有率X2Pは、20.2質量%であり、X2P/X2Bは、1.7であった。また、本実施例でのエマルジョン系粘着剤の平均粒子径は、250nmであった。
【0134】
(実施例2)
難燃剤として、リン酸エステル系難燃剤P1を用いず、臭素系難燃剤B1のみを用いた以外は、前記実施例1と同様にして化粧シートを製造した。
【0135】
(実施例3)
難燃剤として、臭素系難燃剤B1を用いず、リン酸エステル系難燃剤P1のみを用いた以外は、前記実施例1と同様にして化粧シートを製造した。
【0136】
(実施例4)
反応性乳化剤として、上記RE1の代わりに、ノニオン型反応性乳化剤RE3(ADEKA社製「アデカリアソープNE-10」)を用い、難燃剤として、乳化処理を施した臭素系難燃剤B3(テトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル))、および、乳化処理を施したリン系難燃剤P3(大八化学工業社製「CR-504L」)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして化粧シートを製造した。
【0137】
(実施例5)
リン系難燃剤として、乳化処理を施したリン酸エステル系難燃剤P1の代わりに、乳化処理を施していないリン酸エステル系難燃剤P1を用いた以外は、前記実施例1と同様にして化粧シートを製造した。
【0138】
(実施例6)
臭素系難燃剤として、乳化処理を施した臭素系難燃剤B1の代わりに、乳化処理を施していない臭素系難燃剤B1を用いた以外は、前記実施例1と同様にして化粧シートを製造した。
【0139】
(比較例1)
エマルジョン系粘着剤の形成に用いる乳化剤として、アニオン性非反応型乳化剤NR1(三洋化成工業社製「サンデットONA」、固形分濃度40質量%)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして化粧シートを製造した。
【0140】
(比較例2)
エマルジョン系粘着剤の形成に用いる乳化剤として、ノニオン性非反応型乳化剤NR2(三洋化成工業社製「エレミノール200L」、有効成分85質量%)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして化粧シートを製造した。
【0141】
[4]評価
前記各実施例および各比較例の化粧シートについて、以下のような評価を行った。
【0142】
[4-1]基材密着性
前記各実施例および各比較例の化粧シートを、25℃、50%RHの条件下で1日間静置した後、剥離シートを剥離した。次いで、露出した粘着剤層に対してカッターナイフで、十字の切込み(50mm×50mm)を入れた。そして、切込みを入れた部位の粘着剤層を指の腹で擦り、粘着剤層の脱落度合いを確認し、以下の基準で基材に対する粘着剤層の密着の度合いを示す基材密着性を評価した。
【0143】
〇:基材から粘着剤層が脱落せず、良好な密着性が維持された。
×:基材から粘着剤層が脱落し、密着性が不十分であった。
【0144】
[4-2]凝集物発生による不具合
前記各実施例および各比較例の化粧シートの粘着剤層の表面を観察し、以下の基準で凝集物の発生による不具合の有無を評価した。
【0145】
〇:凝集物の発生による塗工すじの発生が認められない。
△:凝集物の発生による塗工すじの発生が僅かに認められるが使用可能レベルである。
×:凝集物の発生による塗工すじの発生が認められ、使用できないレベルである。
これらの結果を、表1にまとめて示す。
【0146】
【表1】
【0147】
表1から明らかなように、本発明の化粧シートでは、優れた結果が得られた。また、本発明の化粧シートでは、十分な難燃性を有することが確認された。これに対し、各比較例では、満足のいく結果が得られなかった。
【符号の説明】
【0148】
10…化粧シート
11…基材
12…粘着剤層
20…剥離シート
図1