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特許7574522マッチングシステム、プログラムおよびマッチング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】マッチングシステム、プログラムおよびマッチング方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 16/9038 20190101AFI20241022BHJP
   G06F 16/907 20190101ALI20241022BHJP
   G06F 16/908 20190101ALI20241022BHJP
【FI】
G06F16/9038
G06F16/907
G06F16/908
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2024534568
(86)(22)【出願日】2024-04-03
(86)【国際出願番号】 JP2024013718
【審査請求日】2024-06-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520353019
【氏名又は名称】Beatrust株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230121016
【弁護士】
【氏名又は名称】小笠原 匡隆
(74)【代理人】
【識別番号】100211225
【弁理士】
【氏名又は名称】足立 俊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(72)【発明者】
【氏名】久米 雅人
(72)【発明者】
【氏名】黄 勇太
【審査官】早川 学
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-510116(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2023-0150227(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00-16/958
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人材とプロジェクトとの間のマッチング処理を行う、マッチングシステムであって、
前記プロジェクトの内容を表すテキストデータを取得し、
前記テキストデータに基づいて、前記プロジェクトに関連する1個以上のプロジェクトスキルを特定し、
複数の人材について、それぞれ1個以上の属性を取得し、
前記プロジェクトスキルのそれぞれと、前記属性のそれぞれとに基づき、各人材の各属性についてスコアを算出し、
各人材のスコアを、当該人材の各属性のスコアに基づいて算出し、
各人材のスコアに基づき前記複数の人材を順序付けて出力するとともに、各人材のスコアを数値として出力
前記マッチングシステムは、
各属性について、1個以上の正規化スキルを関連付け、
各属性のスコアを、当該属性に関連付けられた各正規化スキルに基づいて算出する、
マッチングシステム。
【請求項2】
人材とプロジェクトとの間のマッチング処理を行う、マッチングシステムであって、
前記プロジェクトの内容を表すテキストデータを取得し、
前記テキストデータに基づいて、前記プロジェクトに関連する1個以上のプロジェクトスキルを特定し、
複数の人材について、それぞれ1個以上の属性を取得し、
前記プロジェクトスキルのそれぞれと、前記属性のそれぞれとに基づき、各人材の各属性についてスコアを算出し、
各人材のスコアを、当該人材の各属性のスコアに基づいて算出し、
各人材のスコアに基づき前記複数の人材を順序付けて出力するとともに、各人材のスコアを数値として出力
前記マッチングシステムは、
各属性について、1個以上の正規化スキルを関連付け、
各正規化スキル間の階層関係を表す階層情報を取得し、
前記階層情報に基づき、1人以上の前記人材に関連する前記正規化スキルののべ数を算出する、
マッチングシステム。
【請求項3】
人材とプロジェクトとの間のマッチング処理を行う、マッチングシステムであって、
前記プロジェクトの内容を表すテキストデータを取得し、
前記テキストデータに基づいて、前記プロジェクトに関連する1個以上のプロジェクトスキルを特定し、
複数の人材について、それぞれ1個以上の属性を取得し、
前記プロジェクトスキルのそれぞれと、前記属性のそれぞれとに基づき、各人材の各属性についてスコアを算出し、
各人材のスコアを、当該人材の各属性のスコアに基づいて算出し、
各人材のスコアに基づき前記複数の人材を順序付けて出力するとともに、各人材のスコアを数値として出力
前記マッチングシステムは、
第1の人材から、前記第1の人材に対して、新たな属性を付与するための入力を受け付け、
第2の人材から、前記第1の人材に対して、新たな属性を付与するための入力を受け付け、
前記第2の人材によって前記第1の人材に付与された属性のスコアを、前記第1の人材によって前記第1の人材に付与された属性のスコアより大きくする、
マッチングシステム。
【請求項4】
人材とプロジェクトとの間のマッチング処理を行う、マッチングシステムであって、
前記プロジェクトの内容を表すテキストデータを取得し、
前記テキストデータに基づいて、前記プロジェクトに関連する1個以上のプロジェクトスキルを特定し、
複数の人材について、それぞれ1個以上の属性を取得し、
前記プロジェクトスキルのそれぞれと、前記属性のそれぞれとに基づき、各人材の各属性についてスコアを算出し、
各人材のスコアを、当該人材の各属性のスコアに基づいて算出し、
各人材のスコアに基づき前記複数の人材を順序付けて出力するとともに、各人材のスコアを数値として出力
前記マッチングシステムは、
第1の人材の属性のいずれかに対する肯定的評価の入力を、第2の人材から受け付け、
各属性のスコアを、さらに、その属性に対する前記肯定的評価の数に基づいて算出する、
マッチングシステム。
【請求項5】
前記マッチングシステムは、
前記テキストデータに基づいて、さらに各プロジェクトスキルの強さを決定し、
各人材のスコアを、さらに各プロジェクトスキルの強さに基づいて算出する、
請求項1~4のいずれか一項に記載のマッチングシステム。
【請求項6】
前記マッチングシステムは、
前記プロジェクトに関連する各プロジェクトスキルを表示し、
1個以上のプロジェクトスキルを追加または削除するための入力を受け付ける、
請求項1~4のいずれか一項に記載のマッチングシステム。
【請求項7】
前記マッチングシステムは、
各プロジェクトスキルの強さを表示し、
いずれかのプロジェクトスキルの強さを変更するための入力を受け付ける、
請求項に記載のマッチングシステム。
【請求項8】
前記マッチングシステムは、
前記テキストデータを含む情報を大規模言語モデルに入力し、
前記大規模言語モデルから前記1個以上のプロジェクトスキルを取得する、
請求項1~4のいずれか一項に記載のマッチングシステム。
【請求項9】
前記マッチングシステムは、クライアント端末をさらに備え、
前記クライアント端末は、各人材の前記スコアを数値として出力する、
請求項1~4のいずれか一項に記載のマッチングシステム。
【請求項10】
コンピュータを、請求項1~4のいずれか一項に記載のマッチングシステムとして機能させるプログラム。
【請求項11】
人材とプロジェクトとの間のマッチング処理を行う、マッチング方法であって、
コンピュータが、前記プロジェクトの内容を表すテキストデータを取得するステップと、
コンピュータが、前記テキストデータに基づいて、前記プロジェクトに関連する1個以上のプロジェクトスキルを特定するステップと、
コンピュータが、複数の人材について、それぞれ1個以上の属性を取得するステップと、
コンピュータが、前記プロジェクトスキルのそれぞれと、前記属性のそれぞれとに基づき、各人材の各属性についてスコアを算出するステップと、
コンピュータが、各人材のスコアを、当該人材の各属性のスコアに基づいて算出するステップと、
コンピュータが、各人材のスコアに基づき前記複数の人材を順序付けて出力するとともに、各人材のスコアを数値として出力するステップと、
コンピュータが、各属性について、1個以上の正規化スキルを関連付けるステップと、
コンピュータが、各属性のスコアを、当該属性に関連付けられた各正規化スキルに基づいて算出するステップと、
を備える、マッチング方法。
【請求項12】
人材とプロジェクトとの間のマッチング処理を行う、マッチング方法であって、
コンピュータが、前記プロジェクトの内容を表すテキストデータを取得するステップと、
コンピュータが、前記テキストデータに基づいて、前記プロジェクトに関連する1個以上のプロジェクトスキルを特定するステップと、
コンピュータが、複数の人材について、それぞれ1個以上の属性を取得するステップと、
コンピュータが、前記プロジェクトスキルのそれぞれと、前記属性のそれぞれとに基づき、各人材の各属性についてスコアを算出するステップと、
コンピュータが、各人材のスコアを、当該人材の各属性のスコアに基づいて算出するステップと、
コンピュータが、各人材のスコアに基づき前記複数の人材を順序付けて出力するとともに、各人材のスコアを数値として出力するステップと、
コンピュータが、各属性について、1個以上の正規化スキルを関連付けるステップと、
コンピュータが、各正規化スキル間の階層関係を表す階層情報を取得するステップと、
コンピュータが、前記階層情報に基づき、1人以上の前記人材に関連する前記正規化スキルののべ数を算出するステップと、
を備える、マッチング方法。
【請求項13】
人材とプロジェクトとの間のマッチング処理を行う、マッチング方法であって、
コンピュータが、前記プロジェクトの内容を表すテキストデータを取得するステップと、
コンピュータが、前記テキストデータに基づいて、前記プロジェクトに関連する1個以上のプロジェクトスキルを特定するステップと、
コンピュータが、複数の人材について、それぞれ1個以上の属性を取得するステップと、
コンピュータが、前記プロジェクトスキルのそれぞれと、前記属性のそれぞれとに基づき、各人材の各属性についてスコアを算出するステップと、
コンピュータが、各人材のスコアを、当該人材の各属性のスコアに基づいて算出するステップと、
コンピュータが、各人材のスコアに基づき前記複数の人材を順序付けて出力するとともに、各人材のスコアを数値として出力するステップと、
コンピュータが、第1の人材から、前記第1の人材に対して、新たな属性を付与するための入力を受け付けるステップと、
コンピュータが、第2の人材から、前記第1の人材に対して、新たな属性を付与するための入力を受け付けるステップと、
コンピュータが、前記第2の人材によって前記第1の人材に付与された属性のスコアを、前記第1の人材によって前記第1の人材に付与された属性のスコアより大きくするステップと、
を備える、マッチング方法。
【請求項14】
人材とプロジェクトとの間のマッチング処理を行う、マッチング方法であって、
コンピュータが、前記プロジェクトの内容を表すテキストデータを取得するステップと、
コンピュータが、前記テキストデータに基づいて、前記プロジェクトに関連する1個以上のプロジェクトスキルを特定するステップと、
コンピュータが、複数の人材について、それぞれ1個以上の属性を取得するステップと、
コンピュータが、前記プロジェクトスキルのそれぞれと、前記属性のそれぞれとに基づき、各人材の各属性についてスコアを算出するステップと、
コンピュータが、各人材のスコアを、当該人材の各属性のスコアに基づいて算出するステップと、
コンピュータが、各人材のスコアに基づき前記複数の人材を順序付けて出力するとともに、各人材のスコアを数値として出力するステップと、
コンピュータが、第1の人材の属性のいずれかに対する肯定的評価の入力を、第2の人材から受け付けるステップと、
コンピュータが、各属性のスコアを、さらに、その属性に対する前記肯定的評価の数に基づいて算出するステップと、
を備える、マッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッチングシステム、プログラムおよびマッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
企業その他の組織の活動において、多数の人員がチームを組んで遂行されるプロジェクトを管理するに際し、候補となる人材のうちからそのプロジェクトに適した人材を選び出すことが重要である。このような選出作業においては、プロジェクトと人材とがどの程度よくマッチングするかの評価を行うことが有益である。
【0003】
このような目的のための様々な技術が公知である。たとえば特許文献1には、タスクおよび人材をそれぞれ分類し、スコアを計算して最適マッチングを行うマッチング情報処理システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2023-184514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、マッチング結果の順位評価が困難であるという課題があった。たとえば特許文献1では、要望される人材像に応じて、候補となる人材に理由を付して提案することが記載されているが、理由は自然言語による説明のみであり、これを閲覧したユーザが候補間での順位付けを行うことは困難である。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、マッチング結果の順位評価をより容易にするマッチングシステム、プログラムおよびマッチング方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るマッチングシステムの一例は、
人材とプロジェクトとの間のマッチング処理を行う、マッチングシステムであって、
前記プロジェクトの内容を表すテキストデータを取得し、
前記テキストデータに基づいて、前記プロジェクトに関連する1個以上のプロジェクトスキルを特定し、
複数の人材について、それぞれ1個以上の属性を取得し、
前記プロジェクトスキルのそれぞれと、前記属性のそれぞれとに基づき、各人材のスコアを算出し、
各人材のスコアに基づき前記複数の人材を順序付けて出力するとともに、各人材のスコアを数値として出力する。
【0008】
一例において、
前記マッチングシステムは、さらに、各人材の各属性についてスコアを算出し、
各人材のスコアを、当該人材の各属性のスコアに基づいて算出する。
【0009】
一例において、前記マッチングシステムは、
前記テキストデータに基づいて、さらに各プロジェクトスキルの強さを決定し、
各人材のスコアを、さらに各プロジェクトスキルの強さに基づいて算出する。
【0010】
一例において、前記マッチングシステムは、
第1の人材から、前記第1の人材に対して、新たな属性を付与するための入力を受け付け、
第2の人材から、前記第1の人材に対して、新たな属性を付与するための入力を受け付け、
前記第2の人材によって前記第1の人材に付与された属性のスコアを、前記第1の人材によって前記第1の人材に付与された属性のスコアより大きくする。
【0011】
一例において、前記マッチングシステムは、
第1の人材の属性のいずれかに対する肯定的評価の入力を、第2の人材から受け付け、
各属性のスコアを、さらに、その属性に対する前記肯定的評価の数に基づいて算出す。
【0012】
一例において、前記マッチングシステムは、
前記プロジェクトに関連する各プロジェクトスキルを表示し、
1個以上のプロジェクトスキルを追加または削除するための入力を受け付ける。
【0013】
一例において、前記マッチングシステムは、
各プロジェクトスキルの強さを表示し、
いずれかのプロジェクトスキルの強さを変更するための入力を受け付ける。
【0014】
一例において、前記マッチングシステムは、
各属性について、1個以上の正規化スキルを関連付け、
各属性のスコアを、当該属性に関連付けられた各正規化スキルに基づいて算出する。
【0015】
一例において、前記マッチングシステムは、
各属性について、1個以上の正規化スキルを関連付け、
各正規化スキル間の階層関係を表す階層情報を取得し、
前記階層情報に基づき、1人以上の前記人材に関連する前記正規化スキルののべ数を算出する。
【0016】
一例において、前記マッチングシステムは、
前記テキストデータを含む情報を大規模言語モデルに入力し、
前記大規模言語モデルから前記1個以上のプロジェクトスキルを取得する。
【0017】
一例において、前記マッチングシステムは、クライアント端末をさらに備え、
前記クライアント端末は、各人材の前記スコアを数値として出力する。
【0018】
本発明に係るプログラムの一例は、コンピュータを、上述のマッチングシステムとして機能させる。
【0019】
本発明に係るマッチング方法の一例は、
人材とプロジェクトとの間のマッチング処理を行う、マッチング方法であって、
コンピュータが、前記プロジェクトの内容を表すテキストデータを取得するステップと、
コンピュータが、前記テキストデータに基づいて、前記プロジェクトに関連する1個以上のプロジェクトスキルを特定するステップと、
コンピュータが、複数の人材について、それぞれ1個以上の属性を取得するステップと、
コンピュータが、前記プロジェクトスキルのそれぞれと、前記属性のそれぞれとに基づき、各人材のスコアを算出するステップと、
コンピュータが、各人材のスコアに基づき前記複数の人材を順序付けて出力するとともに、各人材のスコアを数値として出力するステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るマッチングシステム、プログラムおよびマッチング方法によれば、マッチング結果の順位評価がより容易となる。
【0021】
上記以外の効果は、本明細書および図面に記載される実施形態および変形例によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態1に係るマッチングシステムの動作の概要。
図2】実施形態1に係るマッチングシステムの構成の概要。
図3図2のマッチングサーバ10のハードウェア構成例。
図4図3の人材データD1の構成例。
図5図2のマッチングサーバ10が出力するマッチング処理画面100の例。
図6図2のマッチングサーバ10が出力する属性表示画面200の例。
図7図2のマッチングサーバ10が出力する正規化スキル統計画面300の例およびその一部拡大図301
図8】人材に属性を付与する処理に関して図2のマッチングサーバ10が実行する処理の流れの一例。
図9】マッチング処理に関して図2のマッチングサーバ10が実行する処理の流れの一例。
図10図9のステップS12の詳細。
図11図9のステップS14の詳細。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係るマッチングシステムの動作の概要を説明する図である。マッチングシステムは、本明細書に記載されるマッチング方法を実行することにより、プロジェクトと人材との間のマッチング処理を行う。
【0024】
「プロジェクト」とは、たとえば1人以上の人材によって遂行されるべき企画、計画、事業、仕事(ジョブ)、等を意味するが、これらに限定されない。また、プロジェクトは、たとえば企業、公共団体、国、自治体、等の組織によって作成、実行および/または管理されるが、組織はこれらに限らない。
【0025】
「人材」とは、プロジェクトに関与する個人(自然人)の候補を意味し、たとえば多数の人材のうちからあるプロジェクトに適した人材が選出される。人材は、たとえば特定のグループ(企業またはその一部門)に属する各個人のうち一部または全員が該当するが、特定のグループに属する個人に限定する必要はなく、特定のグループに関連しない個人が人材となってもよい。
【0026】
マッチングシステムは、プロジェクトの内容を表す文章(テキストデータ)に基づき、そのプロジェクトに関連するスキル(以下「プロジェクトスキル」という場合がある)を特定する。プロジェクトスキルは、たとえばプロジェクトを遂行するために有用な、またはプロジェクトを遂行するために要求される、技術、能力、技能等を意味するが、これらに限らない。プロジェクトスキルはたとえば、自然文としてのテキストデータとして表される。
【0027】
また、マッチングシステムは、各人材についてその人材の属性を取得する。図1の例では、人材A、人材B、人材Cの3人が示されている。「属性」とは、たとえばその人材の持っている能力、性質、特徴等を意味するが、これらに限らない。組織が有しているその人材の評価情報等を含んでもよい。属性はたとえばテキストデータとして表される。テキストデータとして表現された属性は、「タグ」と呼ばれる場合がある。
【0028】
マッチングシステムは、人材ごとに、プロジェクトスキルとその人材の属性との間で、類似度に基づくスコアを算出する。類似度およびスコアの具体的な算出方法については後述する。そして、算出されたスコアに基づき、人材を順序付けて出力する。この際に、各人材のスコアを数値として出力し、たとえば数値によるランキングを出力する。
【0029】
出力結果は、たとえば後述の図5のマッチング処理画面100の結果表示欄140のようになる。このような出力を得たプロジェクトの管理者は、マッチング結果の順位評価を容易に把握することができる。とくに、順位のみならず数値としてのスコアが表示されているので、各人材のマッチング度合いを容易に認識できる。
【0030】
図2に、実施形態1に係るマッチングシステムの構成の概要を示す。マッチングシステムは、たとえばマッチングサーバ10によって構成される。マッチングサーバ10は、大規模言語モデルサーバ20、ベクトル変換モデルサーバ30、管理者端末41、人材端末42(図2では2台)のそれぞれと、通信ネットワーク(たとえばインターネットを含む)を介して通信可能に構成される。
【0031】
図2の例では、マッチングシステムは、マッチングサーバ10のみによって構成することが可能であるが、他の構成要素を含んでもよい。たとえば、マッチングシステムは、上述の大規模言語モデルサーバ20、ベクトル変換モデルサーバ30、管理者端末41、人材端末42のいずれかまたはすべてを含んでもよい。
【0032】
管理者端末41は、たとえばマッチングサーバ10を管理する管理者が操作するクライアント端末である。人材端末42は、たとえば各人材が操作するクライアント端末である。これら以外の使用者が操作するクライアント端末が設けられていてもよい。
【0033】
図2の例では、マッチングサーバ10が接続されるネットワークとして、大規模言語モデルサーバ20およびベクトル変換モデルサーバ30と通信するためのネットワークと、管理者端末41および人材端末42と通信するためのネットワークとが分離しているが、これらは同一のネットワークであってもよく、たとえばインターネットであってもよい。
【0034】
図3に、マッチングサーバ10のハードウェア構成例を示す。マッチングサーバ10は公知のコンピュータとしてのハードウェア構成を有し、たとえば演算手段11、記憶手段12および入出力手段13を備える。演算手段11はたとえばプロセッサを含む。プロセッサは、集積回路、ASIC、FPGA、等を用いて製造することが可能である。記憶手段12はたとえば半導体メモリ装置および磁気ディスク装置等の記憶媒体を含む。記憶媒体の一部または全部が、過渡的でない(non-transitory)記憶媒体であってもよい。
【0035】
記憶手段12は、人材データD1を記憶する。また、記憶手段12は図示しないプログラムを記憶してもよい。コンピュータのプロセッサがこのプログラムを実行することにより、当該コンピュータは本実施形態において説明されるマッチングサーバ10としての機能を実行してもよい。すなわち、このプログラムは、コンピュータを、本実施形態に係るマッチングサーバ10またはマッチングシステムとして機能させ、本実施形態に係るマッチング方法を実行させてもよい。マッチング方法は、本実施形態に関連して説明される各ステップを含んでもよい。
【0036】
入出力手段13は、たとえばキーボードおよびマウス等の入力装置と、ディスプレイおよびプリンタ等の出力装置と、ネットワークインタフェース等の通信装置とを含む。通信装置は、入力装置および出力装置のいずれとしても機能することができる。通信装置は、有線通信および/または無線通信を行うことができる。
【0037】
大規模言語モデルサーバ20、ベクトル変換モデルサーバ30、管理者端末41、および人材端末42のハードウェア構成についての図示は省略するが、それぞれ公知のコンピュータとしてのハードウェア構成を有し、たとえばマッチングサーバ10について上述した構成と同様の構成を有する。大規模言語モデルサーバ20、ベクトル変換モデルサーバ30、管理者端末41、および人材端末42の各記憶装置は、図示しないプログラムを記憶してもよい。コンピュータのプロセッサがこれらのプログラムを実行することにより、各コンピュータは本実施形態において説明される大規模言語モデルサーバ20、ベクトル変換モデルサーバ30、管理者端末41、および人材端末42としての機能を実行してもよい。すなわち、これらのプログラムは、コンピュータを、本実施形態に係る大規模言語モデルサーバ20、ベクトル変換モデルサーバ30、管理者端末41、および人材端末42として機能させてもよい。なお、大規模言語モデルサーバ20、ベクトル変換モデルサーバ30、管理者端末41、および人材端末42は、人材データD1を記憶する必要はない。
【0038】
図4に、人材データD1の構成例を示す。人材データD1は、複数の人材について、各人材を識別する人材IDと、その人材に関する情報とを関連付ける。人材に関する情報は、人材の氏名と、属性に関する情報とを含む。属性に関する情報は、属性の名称(タグとして表されるもの)と、種別と、評価数と、正規化スキルとを含む。
【0039】
属性の名称は、たとえば属性をテキストデータとして表現したものであるが、テキストデータ以外の形式であってもよい。種別は、その属性の付与者を表し、たとえば当該人材本人が自分に対して付与した属性(本人タグ)であるか、または他人が付与した属性(ピアタグ)であるかを表す。ここで「他人」とは、たとえば他の人材、人材に含まれない個人、人材が属する組織、人材とは直接関連のない組織、等を含むが、これらに限らない。評価数は、その属性について、他の人材等が肯定的評価(たとえば「いいね!」操作)を与えた回数または程度を表す。正規化スキルは、その属性とプロジェクトスキルとのマッチングを行う際に実際に用いられる表現である。この正規化スキルは、たとえばテキストデータであるが、テキストデータ以外の形式であってもよい。
【0040】
正規化スキルとは、たとえば公的機関によって定義されたスキルの集合に属するスキルをいう。一例として、ESCO(European Skills, Competences, Qualifications and Occupations <https://esco.ec.europa.eu/en/classification/skill_main>)によるものを利用することができる。ESCOのスキル分類によれば、多数のスキルの名称と、各スキル間の階層関係とが定義されており、人材が有するスキルの分析に有用である。
【0041】
ただし、正規化スキルはこれに限らず、複数の属性に共通して関連付けることが可能な形式のものであれば、どのような表現、内容および形式のスキルを用いてもよい。
【0042】
図5に、マッチングサーバ10が出力するマッチング処理画面100の例を示す。このマッチング処理画面100は、たとえば管理者端末41に表示される。マッチング処理画面100は、テキスト入力欄110と、スキル欄120と、提出ボタン130と、結果表示欄140とを含む。テキスト入力欄110は、プロジェクトの内容を表す文章の入力を受け付けるための入力欄である。この例では、「動画サイトで人気が出る動画を作りたい」という文が入力されている。
【0043】
スキル欄120は、スキル表示欄121と、スキル入力欄122と、強さ変更欄123と、追加ボタン124と、削除ボタン125とを含む。
【0044】
スキル表示欄121は、プロジェクトスキルの名称と、そのプロジェクトスキルの重要性を表すパラメータ(本実施形態では「強さ」とするが、名称はこれに限らない)とを含む。このように、マッチングサーバ10は、スキル表示欄121において、プロジェクトに関連する各プロジェクトスキルと、各プロジェクトスキルの強さとを表示する。
【0045】
図5の例では、たとえば「video creation」という名称のプロジェクトスキルの強さが100[%]であり、「social media marketing」という名称のプロジェクトスキルの強さが50[%]であることが示されている。スキル表示欄121の最上部には、その時点で選択されているプロジェクトスキル(この例では「video creation」)が表示されている。選択されているプロジェクトスキルは、スキル表示欄121内で任意のプロジェクトスキルに対する操作を行う(たとえばマウスクリック)ことにより変更することができる。すなわち、たとえば「content creation」と表示されている部分が操作されると、マッチングサーバ10は「content creation」に対する選択を受け付け、これに応じてスキル表示欄121の最上部の表示を変更する。
【0046】
マッチングサーバ10は、削除ボタン125の操作を受け付けると、プロジェクトに要求されるプロジェクトスキルのうちからその時点で選択されているプロジェクトスキルを削除し、これに伴ってスキル表示欄121からもその表示を消去する。
【0047】
スキル入力欄122は、新たに追加すべきプロジェクトスキルの入力を受け付ける。マッチングサーバ10は、追加ボタン124の操作を受け付けると、その時点でスキル入力欄122に表示されているプロジェクトスキルを、プロジェクトに要求されるプロジェクトスキルとして記憶し、これに伴ってスキル表示欄121にもその表示を追加する。
【0048】
このように、マッチングサーバ10は、1個以上のプロジェクトスキルを追加または削除するための入力を受け付けることができる。
【0049】
強さ変更欄123は強さ変更ツマミ123aを備え、いずれかのプロジェクトスキルの強さを変更するために用いられる。マッチングサーバ10は、強さ変更ツマミ123aに対する操作(たとえばドラッグ操作)に応じて、その時点で選択されているプロジェクトスキルの強さを変更する。このように、マッチングサーバ10は、任意のプロジェクトスキルの強さを変更するための入力を受け付けることができる。
【0050】
なお、スキルの強さを変更するためのGUIはこれに限らず、数値を直接入力するようにしてもよいし、ブルダウンリスト等を用いて所定値のうちから選択できるようにしてもよい。
【0051】
提出ボタン130は、マッチングに用いるプロジェクトスキルが確定した後、マッチング処理を実行することを指示するために用いられる。マッチングサーバ10は、提出ボタン130が操作されると、その時点のプロジェクトスキルおよび強さに基づいて、プロジェクトと人材とのマッチング処理を実行する。
【0052】
結果表示欄140は、プロジェクトと人材とのマッチング結果を表示する。図5の例では、4人の人材(user)について、各人材のスコア(total_score)と、その内訳(related_tags)とが表示されている。たとえば人材「Aさん」について、「動く絵文字使いがち」という属性に対して最も高い0.34のスコアが表示され、「原点思考」という属性に対して次に高い0.31のスコアが表示され、以下同様にしてスコアの降順に属性とそのスコアが表示されている。なお図示の便宜上、図5では内訳の一部を省略しているため、人材のスコアと内訳の総和とが一致しない。
【0053】
図6に、マッチングサーバ10が出力する属性表示画面200の例を示す。この属性表示画面200は、たとえば管理者端末41および人材端末42に表示される。この例では、1人の人材についての複数の属性が「タグ」として表示されている。この例では各属性が複数のカテゴリ(「特技・得意なこと」「趣味・興味のあること」「自分について」)のいずれかに分類されて表示されているが、このようなカテゴリ分類表示形式は必須ではなく、図示のもの以外のカテゴリ分類を行ってもよいし、カテゴリ分類を行わずに表示してもよい。なお、図6では、図示の都合上、一部の属性について表示を省略している。
【0054】
属性はタグ201の形式で表示される。属性は、上述のように、人材が自分自身で付与することもでき、他人が付与することもできる。図6の例では、人材が自分自身に対して付与した属性(「自分でつけたタグ」。たとえば「白ワイン派」のタグ201a)については濃いグレーで示し、他人から付与された属性(「ピアタグ」。たとえば「AI」のタグ201b)については薄いグレーで示す。各タグの表示の色は適宜設計可能である。ここで、解釈の一例として、ピアタグに係る属性は、自分でつけたタグに係る属性よりも客観的にその人材を表しているということができ、したがって信頼性が高いということができる。
【0055】
属性表示画面200は、複数のタグ201と、各タグ201に対する評価数表示202とを含む。評価数表示202は、その人材のその属性に対する肯定的評価の数を表す。属性表示画面200において、肯定的評価の数が0である場合には、肯定的評価の数は表示されない。解釈の一例として、肯定的評価の数がより大きいタグに係る属性は、肯定的評価の数がより小さいタグに係る属性よりも適切にその人材を表しているということができ、したがって信頼性が高いということができる。
【0056】
肯定的評価の数は、たとえば他人が所定の肯定的評価操作をした回数、またはそのような他人の人数を表す。肯定的評価操作は、たとえばそのタグに対する賛意または称賛を表す操作であり、より具体的な例としてはSNS(Social Networking Service)における「いいね!」操作と同様の操作とすることができる。このような操作は、たとえば人材端末42から、属性表示画面200を介して入力することができる。人材端末42はこの操作をマッチングサーバ10に送信する。マッチングサーバ10は、この操作を受信すると、人材データD1において当該人材の当該属性の評価数を増加させる。このように、マッチングサーバ10は、ある人材(第1の人材とする)の属性のいずれかに対する肯定的評価の入力を、別の主体(たとえば第2の人材とする)から受け付けることができる。
【0057】
図7に、マッチングサーバ10が出力する正規化スキル統計画面300の例およびその一部拡大図301を示す。この正規化スキル統計画面は、たとえば管理者端末41および人材端末42に表示される。正規化スキル統計画面300は、1以上の人材からなるグループについて、各人材の正規化スキルの統計的情報を表示する。図7の例では、各正規化スキルの総数が円グラフに準じる形式で表示されており、各領域の角度範囲によって総数が表される。
【0058】
図7の例では、正規化スキル統計画面300は、正規化スキルの階層関係も表示している。たとえば、正規化スキルは上位階層・中位階層・下位階層の3階層に分類され、スキル名称の末尾にそれぞれ「_1」・「_2」・「_3」が付されることで区別される。図7の一部拡大図301の例では、上位階層の正規化スキル「社会性とコミュニケーション能力」に、中位階層の正規化スキル「コミュニケーション能力」等が関連付けられ、これにさらに下位階層の「聴衆に語る能力」等が関連付けられている。
【0059】
このような正規化スキル統計画面300を生成する具体的な方法は、当業者が適宜設計可能であるが、一例を以下に説明する。マッチングサーバ10は、各正規化スキル間の階層関係を表す階層情報を、予め取得しておくことができる。階層情報は、たとえばESCOのスキル分類に基づいて、マッチングサーバ10または他のコンピュータが生成することが可能である。ESCOのスキル分類等に基づいて、手作業で生成されたものであってもよい。
【0060】
次に、マッチングサーバ10は、統計的情報を表示する対象となる人材を特定する情報の入力を受け付ける。この情報は、たとえば1個以上の人材IDを含んでもよいし、各人材が属するグループを特定する情報を含んでもよい。次に、マッチングサーバ10は、人材データD1を参照し、表示対象となる1人以上の人材に関連する各正規化スキル(下位階層に該当する)ののべ数を算出する。さらに、マッチングサーバ10は、上記の階層情報に基づき、より上位の正規化スキルについても、同様にのべ数を算出する。そして、マッチングサーバ10は、各階層の正規化スキルののべ数に基づき、正規化スキル統計画面300を生成する。
【0061】
以上のような構成を有するマッチングシステムの動作を、以下に説明する。
【0062】
図8に、人材に属性を付与する処理に関してマッチングサーバ10が実行する処理の流れの一例を示す。図8の処理は、所定の指示(たとえば人材が自分自身または他の人材に属性を付与する操作)に応じて実行が開始される。
【0063】
図8の処理において、まずマッチングサーバ10は、ある特定の人材に対して付与される属性を取得する(ステップS1)。属性の取得は、たとえば管理者端末41、人材端末42、または他のコンピュータから行われる。たとえば人材は、自身の人材端末42を操作して、自分自身または他の人材に係る属性表示画面200を表示させ、この画面を介してその人材に対して新たに付与する属性を入力することができる。
【0064】
より厳密に表現すると、マッチングサーバ10がある人材(第1の人材とする)に対して新たに属性を付与する際の処理は、以下のようになる。すなわち、マッチングサーバ10は、第1の人材から、当該第1の人材(本人)に対して、新たな属性を付与するための入力を受け付けることができる。このように、新たな属性が第1の人材によって第1の人材(本人)に付与された場合には、その属性の種別は本人タグとなる。また、マッチングサーバ10は、第1の人材とは異なる主体(たとえば第2の人材とする)から、第1の人材に対して、新たな属性を付与するための入力を受け付けることができる。このように、新たな属性が第2の人材によって第1の人材に付与された場合には、その属性の種別はピアタグとなる。
【0065】
人材端末42はこの属性の入力を受け付けてマッチングサーバ10に送信し、マッチングサーバ10はこれを受信することにより属性を取得する。
【0066】
次に、マッチングサーバ10は、取得した属性のそれぞれについて、1個以上の正規化スキルを関連付ける(下記ステップS2~S7)。この処理の具体例を以下に説明するが、具体的な実装方法はこれに限らない。
【0067】
マッチングサーバ10は、属性の名称を大規模言語モデルに入力する(ステップS2)。この入力は、たとえば属性の名称を大規模言語モデルサーバ20に送信することによって行われる。
【0068】
大規模言語モデルサーバ20は大規模言語モデルを記憶しており、言語を大規模言語モデルに入力してその出力を取得することができる。大規模言語モデルは、たとえば大量の文章データを用いて、自然言語(より典型的には自然文)による入力に対して自然言語による適切な回答を出力するように学習が行われた学習済みモデルであり、様々な公知のモデルを利用することができる。たとえばBERT、GPT-3、GPT-4、PaLM等が公知であるが、これらに限らない。大規模言語モデルサーバ20は、大規模言語モデルからの出力をマッチングサーバ10に送信する。
【0069】
ここで、マッチングサーバ10は、属性を大規模言語モデルに入力する際に、属性の名称以外の情報を追加して入力してもよい。追加される情報は、属性が人材の能力等を表すものであるという説明文、その属性に関連してプロジェクトに有用なスキルを1個以上出力せよという命令文、等を含んでもよい。ここで入力される追加の情報は、固定された内容のものがマッチングサーバ10に予め入力されていてもよい。
【0070】
次に、マッチングサーバ10は、大規模言語モデルから出力されたスキルを取得する(ステップS3)。これは、たとえば大規模言語モデルサーバ20から送信される情報を受信することによって行われる。ここで、プロジェクトスキルおよび正規化スキルとの区別のため、ステップS3で取得するスキルを、以下では「仮スキル」と呼ぶ。
【0071】
次に、マッチングサーバ10は、仮スキルの名称をベクトル変換モデルサーバ30に送信する(ステップS4)。ベクトル変換モデルサーバ30は、学習済みモデルを記憶しており、名称等の言語表現をベクトル(たとえば768次元)に変換することができる。このようなベクトル変換モデルサーバ30は、たとえばparaphrase-multilingual-mpnet-base-v2(https://huggingface.co/sentence-transformers/paraphrase-multilingual-mpnet-base-v2)を用いて構成することができるが、これに限らない。
【0072】
ベクトル変換モデルサーバ30は、仮スキルを表すベクトル(変換後のベクトル)をマッチングサーバ10に送信し、マッチングサーバ10はこれを受信して取得する(ステップS5)。このようにして仮スキルがベクトル化される。すなわち、仮スキルの名称に基づき、複数次元のベクトルを取得する。
【0073】
次に、マッチングサーバ10は、正規化スキルのうちから、受信したベクトル(仮スキルを表すベクトル)に類似するものを選択する(ステップS6)。正規化スキルは、ステップS4およびS5と同様の処理により、事前に、属性を表すベクトルと同次元のベクトルに変換されていることが好適であるが、そうでない場合にはステップS6において同様の処理を行ってもよい。仮スキルを表すベクトルと、正規化スキルを表すベクトルとの類似度の具体的な計算方法は、当業者が公知技術等に基づいて適宜設計可能であるが、たとえばコサイン類似度に基づいて算出することができる。マッチングサーバ10は、最も高い類似度を与える正規化スキルを選択する。
【0074】
次に、マッチングサーバ10は、人材データD1において、選択された正規化スキルを属性に関連付けて記憶する(ステップS7)。なお、1つの属性に対して仮スキルが複数取得された場合には、仮スキルのそれぞれに対して正規化スキルを選択することができ、その場合には1つの属性に対して複数の正規化スキルが関連付けられることになる。このようにして図8の処理が終了する。
【0075】
このような処理によれば、大規模言語モデルによって発生する出力のぶれを軽減することができる。大規模言語モデルは、その特性上、同一の入力に対する出力として、類似してはいるがわずかに異なる言語表現を生成する場合がある。このような場合であっても、類似した正規化スキルを選択し、これを用いることにより、多少のぶれを吸収して同一の正規化スキルとして扱うことが可能となり、マッチングの精度が向上する。
【0076】
図9に、マッチング処理に関してマッチングサーバ10が実行する処理の流れの一例を示す。図9の処理は、所定の指示(たとえば管理者端末41から入力される処理開始操作に応じて実行が開始される。
【0077】
図9の処理において、まずマッチングサーバ10は、プロジェクトの内容を表す自然文(テキストデータ)を取得する(ステップS11)。テキストデータの例は、「動画サイトで人気が出る動画を作りたい」という単文であるが、当然ながらこれには限らず、複数の文からなる文章であってもよい。また、本実施例では自然文としているが、変形例においては自然文を形成しない表現(単語の羅列等)であってもよい。テキストデータは、プロジェクトの内容をよく表すものとすると好適である。
【0078】
テキストデータの取得方法は任意に設計可能であるが、以下に例を示す。マッチングサーバ10は、マッチング処理画面100のテキスト入力欄110を管理者端末41に表示する。さらに、マッチングサーバ10または管理者端末41は、プロジェクトの内容を表すテキストデータの入力を促す表示を行ってもよい。管理者端末41は、マッチング処理画面100のテキスト入力欄110を介してその入力を受け付け、これをマッチングサーバ10に送信してもよい。管理者端末41における入力は、キーボードを介した入力であってもよいし、予め入力され管理者端末41に記憶されたテキストデータの所在を表す情報の指定であってもよい。また、テキストデータを予めマッチングサーバ10に記憶しておくこともでき(以前のテキストデータの再利用等)、管理者端末41からマッチングサーバ10にその記憶されたテキストデータの所在を表す情報が送信されてもよい。
【0079】
次に、マッチングサーバ10は、このテキストデータに基づいて、プロジェクトスキルに関する情報を特定する(ステップS12)。プロジェクトスキルに関する情報は、たとえば1個以上のプロジェクトスキルについて、そのプロジェクトスキルを表す名称(文字列)と、そのプロジェクトスキルの強さとを含む。
【0080】
図10に、このステップS12の詳細を示す。ステップS12において、まずマッチングサーバ10は、プロジェクトの内容を表すテキストデータを含む情報を大規模言語モデルに入力する(ステップS121)。この入力は、たとえばテキストデータを大規模言語モデルサーバ20に送信することによって行われる。
【0081】
大規模言語モデルサーバ20は大規模言語モデルを記憶しており、言語を大規模言語モデルに入力してその出力を取得することができる。大規模言語モデルサーバ20は、大規模言語モデルからの出力をマッチングサーバ10に送信する。
【0082】
ここで、マッチングサーバ10は、テキストデータを大規模言語モデルに入力する際に、テキストデータ以外の情報を追加して入力してもよい。追加される情報は、当該テキストデータがプロジェクトの内容を記述するものであるという説明文、プロジェクトに必要なプロジェクトスキルを1個以上特定して出力せよという命令文、各プロジェクトスキルがそのプロジェクトにどの程度必要とされるかを表す「強さ」を数値として各プロジェクトスキルに関連付けて出力せよという命令文、等を含んでもよい。ここで入力される追加の情報は、固定された内容のものがマッチングサーバ10に予め入力されていてもよい。
【0083】
次に、マッチングサーバ10は、大規模言語モデルから、1個以上のプロジェクトスキルと、各プロジェクトスキルに関連付けられた強さとを取得する(ステップS122)。これは、たとえば大規模言語モデルサーバ20から送信される情報を受信することによって行われる。このようにして、マッチングサーバ10は、テキストデータに基づいて、プロジェクトスキルと、各プロジェクトスキルの強さとを決定することができる。
【0084】
次に、マッチングサーバ10は、受信したプロジェクトスキルおよび強さを出力し、プロジェクトスキルの変更操作を受け付ける(ステップS123)。プロジェクトスキルの変更操作は、図5のマッチング処理画面100のスキル欄120を介して受け付けることができ、例として、下記の操作を含む。
‐プロジェクトスキルの追加
‐プロジェクトスキルの削除
‐プロジェクトスキルの強さの変更(たとえば増加または減少)
なお、変形例として、ステップS123は省略することも可能である。
【0085】
次に、マッチングサーバ10は、プロジェクトスキルを確定させる操作の入力を受け付ける(ステップS124)。たとえばこの操作は、図5のマッチング処理画面100の提出ボタン130に対する操作として受け付けられる。以上のようにして、マッチングサーバ10は、テキストデータに基づいてプロジェクトスキルに関する情報を特定し、ここで図9のステップS12の処理が終了する。
【0086】
図9に戻り、ステップS12の後、マッチングサーバ10は、属性に関する情報を取得する(ステップS13)。たとえば、人材データD1を参照し、複数の人材について、それぞれ1個以上の属性を取得する。
【0087】
次に、マッチングサーバ10は、プロジェクトスキルのそれぞれと、属性のそれぞれとに基づき、各人材のスコアを算出する(ステップS14)。
【0088】
図11に、このステップS14の詳細を示す。ステップS14において、まずマッチングサーバ10は、プロジェクトスキルをベクトル化する(ステップS141)。すなわち、プロジェクトスキルの名称(たとえば「video creation」)に基づき、複数次元(たとえば768次元)のベクトルを取得する。この処理は、たとえば図8のステップS4およびS5と同様の処理により実行することができる。
【0089】
次に、マッチングサーバ10は、その人材の属性のそれぞれについて、正規化スキルをベクトル化する(ステップS142)。すなわち、正規化スキルの名称に基づき、複数次元(たとえば768次元)のベクトルを取得する。この処理は、たとえば図8のステップS4およびS5と同様の処理により実行することができる。なお、正規化スキルについて、以前に実行したベクトル化の結果がマッチングサーバ10(たとえば人材データD1)または他のコンピュータに記憶されている場合には、ステップS142は単にその結果を取得することによって実行可能である。
【0090】
次に、マッチングサーバ10は、プロジェクトスキルのそれぞれと、その人材の属性との間で、類似度に基づくスコアを算出する(ステップS143)。ここで、スコアは属性の正規化スキルに基づいて算出することができ、1つの属性に複数の正規化スキルが関連付けられている場合には、それらのうち最も適切なものを選択して用いることができる。最も適切な正規化スキルは、たとえば当該プロジェクトスキルとの間の類似度(たとえばコサイン類似度)が最も高いものである。
【0091】
属性に関連付けられた正規化スキル(複数ある場合にはそのうち1つ)と、プロジェクトスキルとの間で類似度(以下では例としてコサイン類似度)が計算され、このコサイン類似度に基づいて、その属性と、そのプロジェクトスキルとの組み合わせに対するスコアが計算される。スコアの計算方法は、当業者が適宜設計することができるが、非限定的な例として、次の数式を用いて計算することができる。
Score(s,t) = CosineSimilarity * Strength * (1 + w_reaction * reaction_count ) * (1 + w_peer * is_peer) … (式1)
ここで、Score(s,t)はプロジェクトスキルsとその属性tとの組み合わせに対するスコア、CosineSimilarityはプロジェクトスキルと正規化スキルとの間のコサイン類似度、Strengthはプロジェクトスキルの強さ、reaction_countはその属性に関連付けられた評価数、w_reactionは評価数の重み、is_peerはピアタグであるか否かを示す値(たとえば本人タグの場合には0、ピアタグの場合には1)、w_peerはピアタグであるか否かの重み、をそれぞれ表す。
【0092】
上記の式1によれば、マッチングサーバ10は、変数is_peerの値により、他の変数がすべて同一であると仮定すると、ピアタグのスコアを、本人タグのスコアより大きくするということができる。これにより、より客観的な属性はより高いスコアを得ることができ、マッチングの精度が向上する。なお、ピアタグのスコアを本人タグのスコアより大きくするための具体的な数式は、上記の式1に限らず、当業者が適宜設計することができる。なお、変形例として、変数is_peerを用いない算出式としてもよい。その場合には、ピアタグであるか本人タグであるかは考慮されないことになる。
【0093】
また、式1によれば、マッチングサーバ10は、変数reaction_countの値により、各属性のスコアを、さらに、その属性に対する評価数に基づいて算出するということができる。このため、たとえば他人から肯定的評価を多数得ている属性は、そのスコアが大きくなる。これにより、より客観的な属性についてはスコアがより高くなり、マッチングの精度が向上する。なお、変形例として、変数reaction_countを用いない算出式としてもよい。その場合には、肯定的評価は考慮されないことになる。
【0094】
また、式1によれば、マッチングサーバ10は、変数Strengthの値により、各属性のスコア(ひいては各人材のスコア)を、各プロジェクトスキルの強さに基づいて算出するということができる。このため、対象とするプロジェクトに対して、より関連度の高いプロジェクトスキルを重視したスコアを算出することができ、マッチングの精度が向上する。なお、変形例として、変数Strengthを用いない算出式としてもよい。その場合には、プロジェクトスキルがすべて一律の重みをもって考慮されることになる。
【0095】
また、式1によれば、変数CosineSimilarityはプロジェクトスキルと正規化スキルとの間のコサイン類似度を表すので、マッチングサーバ10は、この変数の値により、各属性のスコアを、当該属性に関連付けられた各正規化スキルに基づいて算出するということができる。なお、変形例として、コサイン類似度以外の類似度を用いてもよい。
【0096】
次に、マッチングサーバ10は、各人材の各属性についてスコアを算出する(ステップS144)。属性のスコアは、たとえばその属性と各プロジェクトスキルとのスコアの総和として算出される。すなわち、
Score(t) = Σ_skill { Score(s,t) }
ここで、Score(t)は属性tのスコア、Score(s,t)は上述の通りプロジェクトスキルsと属性tとの組み合わせに対するスコア、Σ_skillは全プロジェクトスキルについての総和を取る演算を表す。
【0097】
次に、マッチングサーバ10は、人材のスコアを算出する(ステップS145。人材のスコアは、その人材の各属性のスコアに基づいて算出することができ、たとえば各属性のスコアの総和として算出される。すなわち、
Score_Person = Σ_tag { Score(t) }
ここで、Score_Personは人材のスコア、Score(t)は上述の通り属性tのスコア、Σ_tagは全属性についての総和を取る演算を表す。このようにして、すべての人材についてスコアが算出され、図9のステップS14が終了する。
【0098】
図9に戻り、ステップS14の後に、マッチングサーバ10は、各人材のスコアに基づき、複数の人材を順序付けて出力する(ステップS15)。この際に、各人材のスコアを数値として出力する。この出力は、たとえば図5に示すマッチング処理画面100の結果表示欄140に表示される。上述のように、マッチング処理画面100は管理者端末41等のクライアント端末に表示されるものであり、クライアント端末が各人材のスコアを数値として出力するということができる。
【0099】
図5の例では、結果表示欄140のuser欄には、第1位の人材(最も高いスコアを有する人材)としてAさんが、第2位の人材(次に高いスコアを有する人材)としてBさんが表示されており、以下、Cさん、Dさんと続く。また、順位を示すのみならず、total_score欄には各人材のスコアが表示されており、たとえばAさんのスコアが1.688程度であり、同様に表示される他の人材のスコアと比較してどの程度大きいかを容易に把握できるようになっている。
【0100】
また、related_tags欄にはスコアの内訳として、属性ごとにスコアが表示されており、とくに各属性がスコアに応じて順序付けて出力されている。たとえばAさんの場合には、「動く絵文字使いがち」という属性が最も高い0.34というスコアを有しており、第1位(左端)に表示されている。そして、「原点思考」という属性が次に高い0.31というスコアを有しており、第2位(左から2番目)に表示されている。以下同様に、「資料が見やすい」、「オペレーション設計」、と続く。このように、人材のスコアのみならず、人材の各属性まで順序付けして、スコアとともに表示することにより、その人材がそのプロジェクトに対してなぜスコアが高いかの理由を容易に把握することができるようになっている。このように、本実施形態に係るマッチングシステムによれば、マッチング結果の順位評価がより容易となる。
【0101】
[その他の実施形態]
当業者は、上述の各実施形態において、本発明の範囲内で、構成要素を任意に追加、変更または削除することができる。たとえばマッチングシステムのハードウェア構成として、図2の全体を1台のコンピュータによって構成することもでき、図2に示すものより多くのコンピュータによって構成することもできる。その場合には、図8~11に記載の各ステップがどのコンピュータによって実行されるかは、当業者が適宜設計することができる。
【0102】
図2の例では人材端末42が2台示されているが、人材端末42は1台であってもよく、3台以上であってもよい。また、複数の人材が1台の人材端末42を共用してもよい。
【0103】
上述の実施形態1では、属性のスコアを計算する際に正規化スキルを用いるが、属性の一部または全部について正規化スキルを用いないよう変更することも可能である。いずれの属性についても正規化スキルを用いない場合には、図8のステップS2およびS3を省略し、それより後の処理では正規化スキルに代えて属性そのものを用いることができる。
【0104】
各図に記載のステップの順序は、適宜変更することが可能である。たとえば、図11のステップS141およびS142の順序は入れ替えることができる。
【符号の説明】
【0105】
10…マッチングサーバ(マッチングシステム)
20…大規模言語モデルサーバ
30…ベクトル変換モデルサーバ
41…管理者端末
42…人材端末
100…マッチング処理画面
110…テキスト入力欄
120…スキル欄
121…スキル表示欄
122…スキル入力欄
123…強さ変更欄
123a…強さ変更ツマミ
124…追加ボタン
125…削除ボタン
130…提出ボタン
140…結果表示欄
200…属性表示画面
201(201a、201b)…タグ
202…評価数表示
300…正規化スキル統計画面
301…一部拡大図
D1…人材データ
【要約】
マッチングシステムは、人材とプロジェクトとの間のマッチング処理を行う。マッチングシステムは、前記プロジェクトの内容を表すテキストデータを取得し、前記テキストデータに基づいて、前記プロジェクトに関連する1個以上のプロジェクトスキルを特定し、複数の人材について、それぞれ1個以上の属性を取得し、前記プロジェクトスキルのそれぞれと、前記属性のそれぞれとに基づき、各人材のスコアを算出し、各人材のスコアに基づき前記複数の人材を順序付けて出力するとともに、各人材のスコアを数値として出力する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11