(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】タイル壁面の改修管理システム、及びその改修管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20241022BHJP
G06F 30/13 20200101ALI20241022BHJP
G06F 30/12 20200101ALI20241022BHJP
【FI】
G06Q50/08
G06F30/13
G06F30/12
(21)【出願番号】P 2021004702
(22)【出願日】2021-01-15
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】521023045
【氏名又は名称】株式会社ハイビッグ建築図面工房
(74)【代理人】
【識別番号】110003018
【氏名又は名称】弁理士法人プロテクトスタンス
(72)【発明者】
【氏名】相原 和教
(72)【発明者】
【氏名】北野 宏明
【審査官】池田 聡史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-028595(JP,A)
【文献】特開2020-154467(JP,A)
【文献】特開平10-170482(JP,A)
【文献】国際公開第2016/038896(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/138416(WO,A1)
【文献】特開2015-194069(JP,A)
【文献】特開2020-173768(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1798165(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第103335606(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106600690(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G06F 30/10-30/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の表面を複数の三次元点群データとして計測する三次元レーザスキャナから受信した前記三次元点群データに基づいて、前記建築物の表面情報を取得した三次元点群画像を作成する点群画像作成部と、
前記三次元点群データに基づいて、前記建築物の壁面を作成する壁面作成部と、
前記三次元点群画像から前記壁面を展開する壁面展開部と、
展開された前記壁面の三次元点群画像を表示する表示装置と、
前記壁面の三次元点群画像を表示する前記表示装置に表示され、前記壁面に対してタイル割付図を生成するためにタイルに関する情報を入力するタイル情報入力部と、
前記タイルに関する情報に基づいて、前記タイル割付図を生成するタイル生成部と、
前記タイル生成部で生成されたタイル割付図と前記壁面の点群画像との位置の相違を調整
する調整部と、
を備えるタイル壁面の改修管理システム。
【請求項2】
前記タイルに関する情報は、前記タイルの縦横寸法、及び目地割(芋目地もしくは破れ目地)を含む請求項1に記載の改修管理システム。
【請求項3】
前記壁面展開部は、前記三次元点群画像の平面図を表示装置に表示させて、前記平面図に対して壁面を展開する、
請求項1又は請求項2に記載の改修管理システム。
【請求項4】
前記調整部は、前記壁面の点群画像に対して前記タイル割付図を移動させるカーソルを前記表示装置に表示する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の改修管理システム。
【請求項5】
さらに前記タイル割付図を、作業者の携帯端末に送信する送信部を有し、
前記携帯端末は、前記タイル割付図を表示する端末表示装置と、
前記端末表示装置に表示された前記タイル割付図の一つ一つのタイルに異常個所を入力する異常入力部と、
を有する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の改修管理システム。
【請求項6】
前記異常個所は、タイルの割れ又はタイルの浮きであり、
前記端末表示装置は、前記タイルの割れ又は前記タイルの浮きの異常個所を区別して表示する、請求項5に記載の改修管理システム。
【請求項7】
前記異常入力部は、前記異常個所が修理された後、修理が完了したタイルを入力することができ、
前記端末表示装置は、修理された異常個所を区別して表示する、請求項5又は請求項6に記載の改修管理システム。
【請求項8】
コンピュータによるタイル壁面の改修管理方法であって、
前記コンピュータが、
三次元レーザスキャナで計測された建築物の表面を複数の三次元点群データを受信する受信工程と、
前記三次元点群データに基づいて、前記建築物の表面情報を取得した三次元点群画像を作成する点群画像作成工程と、
前記三次元点群データに基づいて、前記建築物の壁面を作成する壁面作成工程と、
前記三次元点群画像から前記壁面を展開する壁面展開工程と、
前記コンピュータに接続された表示装置に、展開された前記壁面の三次元点群画像を表示する表示工程と、
前記壁面に対してタイル割付図を生成するためにタイルに関する情報を入力するタイル入力ウィンドウを、展開された前記壁面の三次元点群画像を表示する前記表示装置に表示し、前記タイルに関する情報が入力される入力工程と、
前記タイルに関する情報に基づいて、前記タイル割付図を生成する工程と、
生成された前記タイル割付図と前記壁面の点群画像との位置の相違を調整する工程と、
を実行するタイル壁面の改修管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大規模修繕時の建築物のタイル壁面の改修管理システム、及びその修繕管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マンションもしくはビル等の建築物の外装材としてタイルが用いられることは多い。このようなタイル外壁では、一般に、建築物のコンクリート躯体の外側に形成されたモルタル層を介してタイルが貼り付けられており、経年によりタイルの割れ(以下、破損及びクラックも含む。)又はタイルの浮き(以下、剥落も含む。)が生じるため、建築時点から定期的に又は非定期的に建築物のタイルの破損等の確認が行われる。特に建築物の大規模修繕時等に確認されタイルが改修されることが多い。
【0003】
建築物の建築時には、特許文献1に示されるように、タイル施工対象面の縦横寸法及びタイル規格寸法データに基づいて、タイルの短辺がタイル施工対象面の両側端と面一になり、目地幅が一定で且つ許容範囲に収まるように、一列に含まれる長辺長さ別のタイル枚数と目地幅とを算出するタイル施工立案システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
しかし、実際のタイル施工現場では、タイルを施工するタイル施工者が壁面にタイルを割付ける際、壁面の全体の割付けで左右方向の寸法の調整が必要になることがある。このため、実際に、壁面に割り付けられたタイル枚数が異なっていることが多い。さらに、新築物件を設計する際にBIM(Building Information Modeling)モデルに準拠したソフトで三次元CAD図面を作成してから施工することが多いが、実際のタイル施工現場ではタイルの割付けを調整することから、大半の建築物ではタイルの割付けのBIMデータが存在していない。したがって、建築物のタイルの破損等の確認に際しては、壁面に対して手書きでタイル割付を描いて図面化したり、目視で確認しながら壁面及びタイル割付をBIMデータ化したりする必要があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、実際にタイルが貼られた壁面のタイル割付図を簡易に作成することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態のタイル壁面の改修管理システムは、建築物の表面を複数の三次元点群データとして計測する三次元レーザスキャナから受信した三次元点群データに基づいて、建築物の表面情報を取得した三次元点群画像を作成する点群画像作成部と、三次元点群データに基づいて建築物の壁面を作成する壁面作成部と、三次元点群画像を表示する表示装置と、を備える。またシステムは、三次元点群画像から壁面を展開する壁面展開部と、表示装置に表示され壁面に対してタイル割付図を生成するためにタイルに関する情報を入力するタイル情報入力部と、を備える。またシステムは、タイルに関する情報に基づいて、タイル割付図を生成するタイル生成部と、タイル生成部で生成されたタイル割付図と壁面の点群画像との位置の相違を調整しタイル割付図を作成する調整部と、を備える。
【0008】
またタイルに関する情報は、タイルの縦横寸法、及び目地割(芋目地もしくは馬目地など)を含むことが好ましい。
壁面展開部は、三次元点群画像の平面図を表示装置に表示させて、平面図に対して壁面を展開することが好ましい。
調整部は、壁面の点群画像に対してタイル割付図を移動させるカーソルを表示装置に表示することが好ましい。
【0009】
本実施形態のシステムは、さらにタイル割付図を、作業者の携帯端末に送信する送信部を有してもよい。その携帯端末は、タイル割付図を表示する端末表示装置と、
端末表示装置に表示されたタイル割付図の一つ一つのタイルに異常個所を入力する異常入力部と、を有することが好ましい。
異常個所は、タイルの割れ又は浮きであり、端末表示装置は、2以上の異常個所を区別して表示することが好ましい。
携帯端末の異常入力部は、異常個所が修理された後、修理が完了したタイルを入力することができ、端末表示装置は、修理された異常個所を区別して表示することができることが好ましい。
【0010】
本実施形態のタイル壁面の改修管理方法は、三次元レーザスキャナを用いて建築物の表面を複数の三次元点群データとして計測する計測工程と、三次元点群データに基づいて、建築物の表面情報を取得した三次元点群画像を作成する点群画像作成工程と、三次元点群データに基づいて建築物の壁面を作成する壁面作成工程と、表示装置に三次元点群画像を表示する表示工程と、を備える。さらに改修管理方法は、三次元点群画像から前記壁面を展開する壁面展開工程と、タイルに関する情報を入力するタイル入力ウィンドウを表示装置に表示させ、タイルに関する情報を入力させる入力工程と、タイルに関する情報に基づいて、タイル割付図を生成する工程と、タイル生成部で生成されたタイル割付図と壁面の点群画像との位置の相違を調整し、タイル割付図を作成する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明のタイル壁面の改修管理システムは、修繕予定の壁面に貼られたタイルのタイル割付図を簡易に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】タイル壁面の改修管理システムを示した図である。
【
図2】クライアント端末50の構成を示した説明図である。
【
図3】タイル壁面の改修管理工程を示したフローチャート図である。
【
図4】(a)は、点群データをリンクした三次元点群画像及び三次元壁面図の例を示した図である。 (b)は、断面展開するために、1つ1つの展開図面に名を付けるための建築物の平面図である。
【
図5】(a)は三次元点群画像D51及び入力ウィンドウD52を示した一例である。 (b)は、タイル情報入力部515であるタイルに関する情報の入力ウィンドウD52の詳細である。
【
図6】(a)は、調整前の三次元点群画像D51とタイル割付
図D61とを示した図である。 (b)は、調整後の三次元点群画像D51とタイル割付
図D61とを示した図である。
【
図7】(a)は、タイル割付図をレイアウト設定するための設定ウィンドウD71を示した図である。 (b)は、3つの壁面のタイル割付図のBIMモデル図面が1枚の図面レイアウトとして表示装置に表示された例である。
【
図8】(a) 携帯端末に表示されたタイル割付図のBIMモデル図面である(異常個所の入力前)。 (b) 携帯端末に表示されたタイル割付図のBIMモデル図面である(異常個所の入力後)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<<タイル壁面の改修管理システムの概要>>
図1は、実施形態に係るタイル壁面の改修管理システムの概略の構成を示した図である。このシステムはクライアント端末50からなり、タブレット端末30及び三次元レーザスキャナ70を含んでよい。なお、タブレット端末30は表示した建築物の壁面のタイル1枚1枚が浮いている割れているか等を指又はペンで入力できるように、タッチパネル機能付きの端末表示装置39を有していることが望ましい。タブレット端末30に代えて、コンピュータマウス付きの携帯可能なノートパソコンであってもよく、スマートフォンであってもよい。本実施形態では、これらの端末を総称して携帯端末30と呼ぶこともある。
【0014】
また、本実施形態では、壁面にタイルが貼られている場合を説明するが、床面及び天井面にも適用できる。本実施形態では、水平面から垂直な壁面だけでなく床面及び天井面も含めて、壁面と呼ぶ。床面及び天井面を壁面と区別する必要がある場合のみ、壁面を“側面”と呼んで説明する。
【0015】
クライアント端末50には、改修管理のソフトウエアがダウンロードされており、三次元レーザスキャナ70から受信した複数の三次元点群データ(Point cloud)を三次元点群画像に処理し、表示装置59に三次元点群画像を表示したりすることができる。クライアント端末50は、携帯可能なノートパソコン又は設置式のディスクトップパソコンであってもよい。またクライアント端末50に代えて不図示のクラウドサーバに改修管理のソフトウエアが組み込まれていてもよい。この場合には、改修管理のソフトウエアを有しないクライアント端末50は三次元レーザスキャナ70から受信した複数の三次元点群データをクラウドサーバに送信し、クラウドサーバから取得された三次元点群画像をクライアント端末50が受信してもよい。また三次元点群データの処理をクライアント端末50とクラウドサーバとがそれぞれ分担してもよい。
【0016】
三次元レーザスキャナ70は、建築物等の計測対象物にレーザ光を照射して、そのレーザ光が計測対象物で反射して返ってくるまでの時間から距離を算出するとともに、この距離と照射されるレーザ光の角度から、計測対象物の反射ポイントの三次元座標(x座標、y座標、z座標)を算出する。レーザ光は、例えば水平方向に360度、垂直方法に320度の範囲で所定の角度ピッチで放射状に照射することができ、三次元レーザスキャナ70は、各反射ポイントを複数の三次元点群データとして取得することができる。例えば、建築物内のタイル貼りのロビーの形状を計測する場合には、床面や天井面もスキャニングできるように、垂直方向は上部を中心とする320度の範囲でレーザ光が照射することができる。照射ピッチは、レーザ光の照射角度ピッチによって決まり、例えば、10メートル先で2mm間隔というように設定される。取得された三次元点群データは、三次元レーザスキャナ70内の記憶部に記憶され、クライアント端末50等に送信される。
【0017】
図1では、携帯端末30、クライアント端末50及び三次元レーザスキャナ70が無線ネットワークで接続されているが、一部もしくはすべてが有線ケーブルで接続されてもよい。
【0018】
<<クライアント端末の概要>>
図2は、クライアント端末50の概略構成図である。クライアント端末50は、記憶部58に記憶されているプログラムおよび命令ライブラリをロードして実行し、三次元点群データを処理し、タイル割付図を作成する。実行部51は、例えば演算装置であるCPUとメモリとグラフィックスボードとで構成されている。実行部51は、受信部511、点群画像作成部512、壁面作成部513、壁面展開部514、タイル情報入力部515、タイル生成部516、調整部517及び送信部518を備えている。
【0019】
受信部511は三次元レーザスキャナ70から建築物の表面を計測した複数の三次元点群データを受信するとともに、作業者の確認のため三次元レーザスキャナ70からイメージデータも受信する。その三次元点群データは記憶部58に記憶される。点群画像作成部512は、三次元レーザスキャナ70から受信した三次元点群データに基づいて、建築物の表面情報を取得した三次元点群画像を作成する。この三次元点群画像は表示装置59に表示される。壁面作成部513は、三次元点群データに基づいて、壁面を作成する。本実施形態では、床面、天井面も含めて便宜上、壁面と呼び、壁面には内壁も外壁も含む概念である。壁面展開部514は、三次元点群画像から1つ1つの壁面を展開する。壁面展開部514は、壁面指定部514Aを有し、壁面名指定部514Aは、作業者に表示装置59に表示された1つ1つの壁面名を指定させる。そして壁面展開部514は、指定された1つの壁面の点群画像を表示装置59に展開して表示する。
【0020】
タイル情報入力部515は、壁面に対してタイル割付図を生成するためにタイルに関する情報を入力するウィンドウ画面を表示装置59に表示する。タイル生成部516は、タイル情報入力部515で入力されたタイルに関する情報に基づいて、タイル割付図を生成する。この生成されたタイル割付図は表示装置59に壁面の点群画像に重畳して表示されてもよい。調整部517は、壁面の点群画像とタイル割付図との位置の相違(位置ズレ)を調整する。調整されたタイル割付図は、BIMモデルに準拠したBIMモデル図面として、記憶部58に記憶される。送信部518は、タイル割付図(BIMモデル図面)を携帯端末30に送信することができる。
【0021】
<<タイル壁面の改修管理の全体工程>>
図3は、タイル壁面の改修管理の全体工程を示したフローチャートである。
図4から
図7は、クライアント端末50の表示装置59に表示された表示画像の一例であり、
図8は、携帯端末30の端末表示装置39に表示された表示画像の一例である。以下、
図3に示されたフローチャートの各ブロックを説明するとともに、適宜、
図4から
図8を使って各ブロックの詳細を説明する。なお、
図4(a)では天井面、床面及び壁面が描かれているが、本実施形態では、壁面のみにタイルが貼られている前提で説明されている。
【0022】
ブロックS31において、三次元レーザスキャナ70が建築物にレーザ光を照射して、複数の三次元点群データとして取得する。三次元レーザスキャナ70は同時に、イメージデータも取得することができる。これらのデータは三次元レーザスキャナ70の記憶部に記憶される。
【0023】
クライアント端末50は三次元レーザスキャナ70にアクセスして、クライアント端末50の受信部511で複数の三次元点群データを受信する。
【0024】
<壁面の作成>
ブロックP31において、点群画像作成部512は、三次元レーザスキャナ70から受信した三次元点群データに基づいて、建築物の表面情報を取得した三次元点群画像D41を作成する。壁面作成部513は、三次元点群データに基づいて、三次元点群データの重心を求め、その重心から各点群までの距離によって、平均と標準偏差とを求める。さらに壁面作成部513は、平均+標準偏差×2の距離以内の点群データを抽出する。これにより、重心からかけ離れた点が除外される。なお本実施形態では標準偏差を2倍したが、1.5倍でも2.5倍でも良い。また壁面作成部513は、抽出した点群データに対して点と点のユークリッド距離(単純な距離)のみを考慮したユークリッドクラスタリング用いたセグメンテーションする。一つの平面に対して1セグメントが割り振られる。さらに壁面作成部513は、平面の法線ベクトルによって、側面(壁面)か床面か天井面かを判定する。壁面作成部513は、側面であれば1セグメントの最小立方体を求め、天井側はそのまま床側は床面までの高さに側面を伸ばし、床面又は天井面であれば、1セグメントの最小立方体を求め、そのまま使用のデータとする。壁面作成部513は、各セグメントのデータを使って天井面、床面、各方向の側面(三次元壁面
図D42)を作成することができる。作成された三次元点群画像D41及び三次元壁面
図D42は、表示装置59に表示される。
図4(a)は取得した三次元点群画像D41の一例であり、またその三次元点群画像D41の三次元壁面
図D42である。図示しないが、作業者は、三次元壁面
図D42の天井面、床面及び側面を適宜と整える作業を行っても良い。
【0025】
<壁面の指定>
ブロックP32において、壁面展開部514は、建築物の三次元点群画像D41に基づいて平面
図D43を表示する。
図4(b)は建築物の平面
図D43を示した一例である。
図4(b)では、共用部展開図―1(D46)、共用部展開図―2(D47)、及び共用部展開図―3(D48)が示されているが、ブロックP32の時点ではこれらの線は描かれていない。平面
図D43は、壁面展開部514が作成する壁面を作業者が確認するために、表示される。本実施形態では、建築物の平面
図D43には3つの側面(壁面)があり、それぞれの側面にタイル貼られているので、側面のタイル割付を確認するため断面展開(側面の画定)される。
【0026】
ブロックP33において、壁面指定部514Aは、表示装置59に断面展開のウィンドウD44を表示する。作業者は展開断面図名(
図4では「共用部展開図」と入力された例である。)を入力して、ウィンドウD44中の実行ボタンをクリックすれば、壁面指定部514Aが、側面(壁面)毎に、共用部展開図―1(D46)、共用部展開図―2(D47)、及び共用部展開図―3(D48)等の名前を付ける。なお、本実施形態では、ブロックP32にて、平面
図D43を作成したが、平面
図D43を作成することなく、三次元点群画像D41から「共用部展開図―1」、「共用部展開図―2」、及び「共用部展開図―3」を自動的に作成するようにしてもよい。
【0027】
ブロックP34において、作業者は例えば、共用部展開図―1(D46)を選択する。すると、壁面展開部514は、壁面の点群データに基づき「共用部展開図―1」の側面(壁面)の三次元点群画像D51を表示装置59に表示する。
図5(a)は三次元点群画像D51を示した一例である。また表示装置59には、タイルに関する情報の入力ウィンドウD52(タイル情報入力部515)が表示される。
【0028】
<タイル割付
図D61の作成>
再び
図3に戻り、ブロックP35において、作業者は例えば、共用部展開図―1(D46)を選択する。
図5(b)に例示されるように、タイル情報入力部515であるタイルに関する情報の入力ウィンドウD52は、タイルに関する複数の項目が入力される。タイル種類D54は、例えば平物タイル、役物タイル等のタイル種類を作業者が作成しておくことによりドロップダウンメニューから選択したりすることができる。タイル種類D54で平物タイルが入力されると、あらかじめ設定された作業者は平物タイルサイズD55の幅高さの長さ(mm単位)が表示される。ドロップダウンメニューで作業者が選択できるようにしてもよい。本実施形態では、平物タイルサイズD55において目地込みでサイズを含んでタイルの幅高さを入力できるようになっているが、目地を含まないタイルの幅高さを入力し、目地の幅高さをタイルの幅高さとは別に入力できるようにしてもよい。また、側面(壁面)に折れ曲がりとなる角部分がある場合等には、半分の長さのタイルが用いられることがある。このような場合には、半マスタイル(平物タイルの場合には、“半平”と呼ばれることが多い。)を入力できるようにしてもよい。
【0029】
入力ウィンドウD52に示されるように、作業者は、貼り方D56に関して、例えば「馬目地貼り」又は「芋目地貼り」が選択できる。貼り方の選択を間違えないように、「馬目地貼り」の図又は「芋目地貼り」の図も描かれても良い。この2種の貼り方以外にも、貼り方D56に「網代貼り」、「バスケット貼り」等が選択できるようにしてもよい。
【0030】
また、入力ウィンドウD52では、作業者は、伸縮目地設定D57を設定できる。コンクリートなどでできた建築物は、温度変化などによる伸縮で亀裂が生じることがあるので、この亀裂を最小限にとどめるため、数m毎に弾力性(伸縮性)を持たせた伸縮目地を入れることが多い。この伸縮目地が、例えば垂直方向にピッチ3000mm、水平方向にピッチ2000mm毎に、伸縮目地幅15mmで形成されていることを、作業者が入力する。
【0031】
さらに、入力ウィンドウD52では、入力されたタイル種類D54、平物タイルサイズD55、貼り方D56及び伸縮目地設定D57に基づいて、それらタイル割付を配置選択ボタンD58で、「共用部展開図―1」の側面(壁面)の全面に配置するか、「共用部展開図―1」の側面の一部の範囲選択をして配置するかを選択できる。
【0032】
配置選択ボタンD58がクリックされると、タイル情報入力部515で入力されたタイル情報に基づいて、タイル生成部516がタイル割付
図D61(
図6(a)を参照。)を生成し、例えば側面(壁面)の三次元点群画像D51に重畳してタイル割付
図D61が表示装置59に表示される。
図6(a)は、ブロックP35の処理が完了し、表示装置59に三次元点群画像D51とタイル割付
図D61とが重畳して表示された例である。三次元点群画像D51とタイル割付
図D61とは必ずしも重畳される必要はない。
【0033】
<タイル割付
図D61の調整>
再び
図3に戻り、ブロックP36において、側面の三次元点群画像D51とタイル生成部516がタイル割付
図D61とが調整される。調整部517は、例えば側面の三次元点群画像D51は、目地においてタイルとの段差(凹凸)があるため、点の位置がずれている。これらの三次元点群画像D51の点に基づいて、三次元点群画像D51の目地を画定する。そして、調整部517は、三次元点群画像D51の目地とタイル割付
図D61の目地とを、幅方向及び高さ方向に調整して、両者を一致させる。
【0034】
図6(a)は、三次元点群画像D51とタイル割付
図D61とが重畳して表示され、調整される前の状態である。
図6(b)は、三次元点群画像D51とタイル割付
図D61とが調整された後の状態である。
図6(a)において、三次元点群画像D51の縦の目地D511とタイル割付
図D61の縦の目地D611とは幅方向に相違している。また三次元点群画像D51の横の目地D513とタイル割付
図D61の横の目地D613とは高さ方向に相違している。調整部517による調整後は、
図6(b)に示されるように、三次元点群画像D51の縦の目地D511とタイル割付
図D61の縦の目地D611とは一致し、横の目地D513と横の目地D613とは一致している。
【0035】
別の調整方法として、調整部517は、タイル割付
図D61を表示装置59上で移動させることができるポインタD64を表示させるようにしてもよい。作業者は、目視でタイル割付
図D61の目地を三次元点群画像D51の目地に一致するように、幅方向及び高さ方向に調整することができる。そして調整の完了後に完了ボタン(不図示)をクリックすればよい。
【0036】
再び
図3に戻り、ブロックP37において、調整されたタイル割付
図D61が記憶部58に記憶される。この調整されたタイル割付
図D61はBIMモデルに準拠したBIMモデル図面として記憶される。ブロックP34において、「共用部展開図―1」の側面(壁面)が選択されたので、「共用部展開図―1」のタイル割付
図D61のBIMモデル図面が記憶されたが、
図4に示されたように「共用部展開図―2」、及び「共用部展開図―3」が未だ残っているのであれば、ブロックP34からブロックP37までの処理が繰り返され、すべての壁面のタイル割付
図D61が記憶部58に記憶される。
【0037】
<図面の自動レイアウト>
作業者は、タイル割付
図D61を紙図面として印刷したり保管したりすることがあり、PDF(Portable Document Format)保管したりすることがある。このような場合に、作業者は、1枚の紙図面にタイル割付図をどのようにレイアウトするかを設定することができる。
【0038】
図3のブロックP38において、記憶部38に記憶されたタイル割付
図D61は、作業者の図面印刷もしくは管理のためレイアウトが設定される。
図7(a)は、タイル割付図をどのようにレイアウト設定するかを示した図であり、建築物の平面
図D43(
図4を参照。)と設定ウィンドウD71が表示されている。設定ウィンドウD71には、どのタイル割付
図D61のレイアウトを実行するかを選択する配置選択D73が設けられてある。一般に、調整されたタイル割付
図D61はすべて印刷もしくは管理される。このため調整されたタイル割付
図D61は実行ボタンにレ点が付されている。しかしながら作業者は、印刷もしくは管理不要なタイル割付
図D61のレ点を外すことができる。また設定ウィンドウD71には、どのタイル割付
図D61のレイアウトを自動で実行するか、1段表記、2段表記、3段表記又は4段表記で実行するかを選択する表記選択D75が設けられてある。自動表記が選択された場合には、配置選択D73で選択されたタイル割付
図D61を例えばA3用紙もしくはA4用紙等の大きさに合わせて、タイル割付
図D61を自動的に配置する。2段表記が選択された場合には、配置選択D73で選択されたタイル割付
図D61を例えばA3用紙等に、タイル割付
図D61を2段に配置する。
【0039】
図7(b)は、ブロックP38において設定ウィンドウD71で示された設定が処理された例である。つまり、「共用部展開図―1」、「共用部展開図―2」、及び「共用部展開図―3」の3つの壁面のタイル割付
図D61のBIMモデル図面が、自動的に配置され、印刷された際に、1枚の図面(紙図面又はPDF)に3枚のBIMモデル図面のレイアウト例である。また
図7(b)は、タイル割付
図D61のBIMモデル図面が三次元点群画像D51に重畳されて表示された例である。図示しないが、三次元点群画像D51無しのタイル割付図のBIMモデル図面を表示することも可能である。これらのタイル割付図のBIMモデル図面は、送信部518によって記憶部58から携帯端末30に送信することができ、携帯端末30の記憶部に記憶される。携帯端末30はタイル割付図のBIMモデル図面を端末表示装置39に表示する。
【0040】
<タイルの異常個所の入力>
従来は、手書きで描かれたタイル割付の紙図面に、作業者がタイルの打診検査で見つかったタイルの異常個所(割れ、浮き等)をペンで書き入れたり、異常個所が見つかったタイル自体にシールを貼り写真に撮ってその写真からタイル割付の紙図面に記入したりして異常個所を把握していた。本実施形態では、携帯端末30に表示されたBIMモデル図面に異常個所のタイルをタッチしていくことで、効率的にタイルの打診検査の入力を行うことができる。
【0041】
再び
図3に戻り、ブロックR31において、作業者が携帯端末30を使ってタイルの異常個所を入力していく。入力されたタイルの異常個所は、端末表示装置39に表示されるとともに、携帯端末30の記憶部に記憶される。
図8を使って、タイルの異常個所の入力を詳述する。
【0042】
図8(a)は、タイルの異常入力部D81とタイル割付
図D61のBIMモデル図面82とを表した端末表示装置39である。
図8(b)は、タイルの異常個所がタイル割付
図D61のBIMモデル図面82に表示された端末表示装置39である。
【0043】
異常入力部D81は、BIMモデル図面82中の割付されたタイルの範囲を特定の色で色付けするタイル範囲ボタンD811と、張替が必要なタイルの浮き異常を特定の色で色付けするタイル浮き(張替)ボタンD812と、張替が必要なタイルの割れ異常を特定の色で色付けするタイル割れ(張替)ボタンD813と、張替が不必要なタイルの割れ異常を特定の色で色付けするタイル割れ(注入)ボタンD814とを有している。また異常入力部D81は、タイルの張替やタイルへの接着剤の注入が終了してタイルの改修が完了したことを特定の色で色付けするタイル改修完了ボタンD815と、足場が倒れないようにタイルに孔等を形成することがあるため、そのタイルを特定するタイルの足場繋ぎ設置(張替)ボタンD816、入力を間違えた際に元に戻すタイル既存ボタン等を有する。これは例示であって、別のボタンがあっても良く、また色を付けるのではなく数字や文字でタイルを特定するようにしてもよい。
【0044】
図8(a)では、タイル範囲ボタンD811がクリックされており、タイルの範囲D831が特定の色で色付けされている。また、BIMモデル図面82の断面をコントロールする矢印D83がBIMモデル図面82の中央付近に表示される。矢印D83は水平方向矢印、垂直方向矢印、法線方向矢印を含む。法線方向矢印はBIMモデル図面82の断面位置を変更することができ、水平方向矢印は、BIMモデル図面82の断面を水平回転させることができ、垂直方向矢印は、BIMモデル図面82の断面を垂直回転させることができる。
【0045】
図8(b)では、作業者が打診検査でタイルの浮きがあったタイル箇所を、タイル浮き(張替)ボタンD812を指もしくはタッチペンでタッチして且つBIMモデル図面82内のタイル箇所を指もしくはタッチペンでタッチする。すると、タイルの浮きがあったタイル箇所D832が特定の色で色付けされる。同様に、作業者が打診検査で張替が必要なタイルの割れがあったタイル箇所を、タイル割れ(張替)ボタンD813をタッチして且つBIMモデル図面82内のタイル箇所をタッチする。すると、タイルの割れがあったタイル箇所D833が特定の色で色付けされる。同様に、作業者が打診検査で接着剤の注入が必要なタイルの割れがあったタイル箇所を、タイル割れ(注入)ボタンD814をタッチして且つBIMモデル図面82内のタイル箇所をタッチする。すると、タイルの割れがあったタイル箇所D834が特定の色で色付けされる。作業者が入力したタイルの異常個所の情報は、携帯端末30からクライアント端末50に送信されることが好ましい。
【0046】
再び
図3に戻り、ブロックR32において、張替が必要なタイルの数量を計算する。すなわち、
図8で示されたタイル浮き(張替)ボタンD812、タイル割れ(張替)ボタンD813及び足場繋ぎ設置(張替)ボタンD816をタッチした状態で、タッチしたタイル枚数を計算する。張替が必要なタイル枚数は、携帯端末30からタイル販売業者へもしくは携帯端末30からクライアント端末50を介してタイル販売業者へ発注される。
【0047】
ブロックR33において、作業者はタイルの異常箇所を改修する。
図8(b)では図示されていないが、作業者がこれらのタイルの異常個所を改修した後に、タイル改修完了ボタンD815をタッチして、改修したタイルをタッチすれば、改修したタイルが特定の色で色付けされる。作業者が入力したタイルの改修個所の情報は、携帯端末30からクライアント端末50に送信される。
【0048】
ブロックP39において、クライアント端末50の記憶部58は、携帯端末30からタイルの異常箇所等を改修した情報を受信し、タイルの異常個所・改修箇所を記憶する。記憶された改修情報は、今後の建築物のメンテナンスにも活用できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本実施形態では、水平面から鉛直に立つ側面(壁面)にタイルが貼られている前提で説明した。しかし、本発明は、タイルが床面に貼られている場合及び天井面にタイルが貼られている場合にも適用できる。タイルが内壁に貼られていても外壁に貼られていても本発明は適用できる。
【符号の説明】
【0050】
30 … 携帯端末(タブレット端末)、 39 … 端末表示装置
50 … クライアント端末、 58 … 記憶部、 59 … 表示装置
511 … 受信部、 512 … 点群画像作成部、 513 … 壁面作成部
514 … 壁面展開部(514A … 壁面指定部)、
515(D52) … タイル情報入力部
516 … タイル生成部、 517 … 調整部、 518 …送信部
70 … 三次元レーザスキャナ