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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】眼底撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/15 20060101AFI20241022BHJP
   A61B 3/12 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
A61B3/15
A61B3/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020090567
(22)【出願日】2020-05-25
(65)【公開番号】P2021185930
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】芳野 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】青野 秀樹
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-005672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の眼底を撮影する眼底撮影装置であって、
前記眼底へ照明光を照射する照射光学系と、前記眼底上で前記照明光を走査する走査部と、前記照明光の眼底反射光であって、瞳孔上の受光領域を通過した眼底反射光を受光する受光光学系と、を有する撮影光学系と、
前記瞳孔上に設定される指標光通過領域を通じて、前記眼底上へフォーカス指標光を投影する指標投影光学系と、
制御手段と、
を備え、
前記瞳孔上において、前記指標光通過領域と、前記受光領域と、は前記走査部の走査方向に関して互いに分離した位置に形成されており、
前記制御手段は、少なくとも、前記照明光の眼底反射光が前記フォーカス指標光と重複し得る第1走査位置で走査される場合に、前記フォーカス指標光が照射されないように、且つ、前記照明光の眼底反射光が前記フォーカス指標光と重複しない2走査位置で走査される場合に、前記フォーカス指標光が照射されるように、前記走査位置に応じて前記眼底に対する前記フォーカス指標光の照射を制御することを特徴とする眼底撮影装置。
【請求項2】
請求項1の眼底撮影装置において、
角膜上にて前記フォーカス指標光が反射されることにより生じた角膜反射像を含まない眼底撮影画像であって、かつ、前記眼底上に前記フォーカス指標光が重畳された眼底撮影画像を、眼底観察画像として取得することを特徴とする眼底撮影装置。
【請求項3】
請求項2の眼底撮影装置において、
前記眼底反射光と前記フォーカス指標光とが角膜上にて重複する2つの第1走査位置に挟まれた眼底中心領域を、前記眼底観察画像の取得範囲として設定する設定手段を備えることを特徴とする眼底撮影装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかの眼底撮影装置において、
前記指標投影光学系は、前記瞳孔上に設定される、少なくとも2つの前記指標光通過領域を通じて、前記眼底上へ前記フォーカス指標光を投影することを特徴とする眼底撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼の眼底を撮影する眼底撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼の眼底を撮影する眼底撮影装置が知られている。例えば、眼底上にスリット状の照明光を走査させ、その眼底反射光に基づき、眼底撮影画像を取得するものがある(特許文献1参照)。特許文献1には、眼底上に一対のフォーカス指標(スプリット指標)を投影し、これらの合致状態から、撮影時のフォーカスを調整することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-006172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは、上記の眼底撮影装置において、眼底をより広域に撮影したり小瞳孔眼に対応させて撮影したりすることを検討した。この場合に、角膜にてフォーカス指標が反射された角膜反射像が、眼底観察画像に写り込む可能性があることがわかった。
【0005】
本開示は、上記従来技術に鑑み、眼底観察画像を良好に取得することができる眼底撮影装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は、以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1)被検眼の眼底を撮影する眼底撮影装置であって、前記眼底へ照明光を照射する照射光学系と、前記眼底上で前記照明光を走査する走査部と、前記照明光の眼底反射光であって、瞳孔上の受光領域を通過した眼底反射光を受光する受光光学系と、を有する撮影光学系と、前記瞳孔上に設定される指標光通過領域を通じて、前記眼底上へフォーカス指標光を投影する指標投影光学系と、制御手段と、を備え、前記瞳孔上において、前記指標光通過領域と、前記受光領域と、は前記走査部の走査方向に関して互いに分離した位置に形成されており、前記制御手段は、少なくとも、前記照明光の眼底反射光が前記フォーカス指標光と重複し得る第1走査位置で走査される場合に、前記フォーカス指標光が照射されないように、且つ、前記照明光の眼底反射光が前記フォーカス指標光と重複しない2走査位置で走査される場合に、前記フォーカス指標光が照射されるように、前記走査位置に応じて前記眼底に対する前記フォーカス指標光の照射を制御することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】眼底撮影装置の外観図である。
図2】眼底撮影装置の光学系である。
図3】走査部の一例である。
図4】眼底撮影装置の制御系である。
図5】被検眼における照明光の眼底反射光とスプリット指標光との位置関係を表す模式図である。
図6】眼底観察画像の一例である。
図7】眼底上の撮影範囲と赤外光源の制御を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<概要>
本開示に係る眼底撮影装置の実施形態を説明する。以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用されうる。
【0011】
なお、本開示において「共役」とは、必ずしも完全な共役関係に限定されるものではなく、「略共役」を含むものとする。すなわち、各部の技術意義との関係で許容される範囲で、完全な共役位置からずれて配置される場合についても、本開示における「共役」に含まれる。
【0012】
本実施形態の眼底撮影装置は、被検眼の眼底を撮影する。例えば、眼底撮影装置は、眼底カメラであってよい。また、例えば、眼底撮影装置は、眼底カメラの構成と、その他の装置(一例として、光干渉断層計、走査型レーザ検眼鏡、等)の構成と、が複合された複合装置であってもよい。
【0013】
<撮影光学系>
本実施形態の眼底撮影装置は、撮影光学系(例えば、撮影光学系10)を備える。撮影光学系は、被検眼の眼底を観察あるいは撮影するために利用される。撮影光学系は、観察光学系であってもよい。
【0014】
撮影光学系は、照射光学系(例えば、照射光学系10a)を有する。照射光学系は、眼底へ照明光を照射する。照射光学系は、光源を有していてもよい。例えば、光源として、眼底を観察する際に用いる赤外光源と、眼底を撮影する際に用いる可視光源と、を有していてもよい。
【0015】
撮影光学系は、受光光学系(例えば、受光光学系10b)を有する。受光光学系は、照明光の眼底反射光であって、瞳孔上の受光領域を通過した眼底反射光を受光する。なお、瞳孔上の受光領域は、撮影光軸上に形成されてもよい。また、瞳孔上の受光領域は、後述の指標光通過領域とは異なる位置に形成されてもよい。受光光学系は、撮像素子を有していてもよい。撮像素子からの信号は、後述の画像処理手段に入力される。
【0016】
撮影光学系は、眼底上で照明光をスキャンすることで撮影を行う、走査型の光学系であってもよい。例えば、走査型の光学系は、スポットスキャン型の光学系でもよい。この場合、眼底上にて、スポット状の照明光が二次元的にスキャンされる。また、例えば、走査型の光学系は、ラインスキャン型の光学系でもよい。この場合、眼底上にて、ライン状の照明光が一方向にスキャンされる。ライン状の照明光は、眼底上で直線スキャンされてもよい。もちろん、例えば、走査型の光学系は、スポットスキャン型の光学系およびラインスキャン型の光学系とは異なるタイプの光学系でもよい。例えば、走査型の光学系は、撮像素子として、点受光素子、ラインセンサ、二次元受光素子、等のいずれかを、適宜、採用することができる。
【0017】
走査型の撮影光学系としては、有害光除去部と、走査部と、を有するものが知られている。走査型の撮影光学系において、照明光学系は、眼底における撮影範囲の一部に、局所的な照明領域を形成する。典型例としては、スリット状またはスポット状に照明領域を形成するものが知られている。
【0018】
例えば、有害光除去部は、対物レンズとの間に視度補正光学系(例えば、視度補正光学系25)を挟んで、受光光学系の光路上に配置される。この場合、有害光除去部は、被検眼の屈折度数に応じた補正量が設定された状態にて、少なくとも対物レンズおよび視度補正光学系に関して眼底と共役な位置に配置されてもよい。
【0019】
有害光除去部は、撮影範囲の一部である局所的な撮影領域(以下、「有効領域」と称する)からの眼底反射光を撮像素子に撮像させる。また、有害光除去部は、有効領域とは異なる領域からの光を除去するために利用される。例えば、有害光除去部は、絞りであってもよい。スポットスキャン型の光学系における典型的な絞りとしては、ピンホールが挙げられる。スリットスキャン型の光学系における典型的な絞りとしては、スリットが挙げられる。この場合、眼底における撮影範囲全体のうち、絞りの開口と対応する有効領域からの眼底反射光が選択的に撮像素子に導かれ、有効な像として取得される。また、特に、スリットスキャン型の光学系では、撮像素子そのものが有害光除去部として利用されることがある。この場合、撮像素子として、形状自体がスリット状に形成されたラインセンサが用いられてもよいし、2次元的な撮像面上でライン露光が行われる(換言すれば、ローリングシャッター機能をもつ)CMOSが用いられてもよい。この場合、眼底の撮影範囲全体のうち、ライン状の有効な画素と対応する有効領域からの眼底反射光が選択的に撮像素子に導かれ、有効な像として取得される。
【0020】
走査部は、眼底上の撮影領域を走査する。すなわち、走査部は、眼底上の有効領域を走査する。走査部は、眼底上で、局所的な照明領域と有効領域とを、同期して走査させてもよい。走査部は、照射光学系と受光光学系との間にて共用される、光スキャナであってもよい。この場合、光スキャナは、照射光学系と受光光学系との共通光路上に配置される。一例として、光スキャナは、ガルバノミラー、ポリゴンミラー、MEMS、等のいずれかであってもよい。
【0021】
また、走査部は、照射光学系に設けられた第1走査部と、受光光学系に設けられた第2走査部であって、第1走査部とは別体の第2走査部と、を含んでいてもよい。一例として、スリットスキャン型の光学系では、局所的な照明領域をスリット状に形成するために、照射光学系の光路上に第1スリット状部材が配置されてもよい。この場合、第1走査部は、第1スリット状部材と、第1スリット状部材を光軸と交差する方向へ動かすための駆動部と、を有していてもよい。さらに、第2スリット状部材を有害光除去部として用いる場合、第2走査部は、第2スリット状部材と、第2スリット状部材を光軸と交差する方向へ動かすための駆動部と、を有していてもよい。例えば、第1走査部の第1スリット状部材と、第2走査部の第2スリット状部材と、にはチョッパーを用いてもよい。例えば、第1走査部の駆動部と、第2走査部の駆動部と、は別体のデバイスであってもよいし、共通のデバイスであってもよい。
【0022】
また、スリットスキャン型の光学系にて、撮像素子としてCMOSを用いる場合、CMOSが第2走査部を兼用することができる。すなわち、上記のローリングシャッター機能によるライン露光が第1走査部と同期して制御されてもよい。この場合、撮像素子であるCMOSは、有害光除去部と第2走査部とを兼用する。これによって、光学系の部品点数が抑制される。
【0023】
<指標投影光学系>
本実施形態の眼底撮影装置は、指標投影光学系(例えば、フォーカス指標投影光学系50)を備える。指標投影光学系は、光源を有していてもよい。例えば、光源には、赤外波長の光を照射することができる赤外光源が利用されてもよい。
【0024】
指標投影光学系は、被検眼の瞳孔上に設定される指標光通過領域を通じて、被検眼の眼底上へフォーカス指標光を投影する。指標光通過領域は、1つの領域であってもよいし、複数の領域であってもよい。指標光通過領域は、撮影光学系によって形成される受光領域と重なり合わないように配置されてもよい。つまり、指標光通過領域は、撮影光学系によって形成される受光領域とは異なる位置に形成されてもよい。なお、指標光通過領域を複数設ける場合、指標光通過領域は、撮影光軸を挟んで形成されてもよい。
【0025】
指標投影光学系は、フォーカス指標光として、スプリット指標光を用いるものであってもよい。例えば、この場合、指標投影光学系は1つの光源およびプリズムを少なくとも備え、この光源から照射されたフォーカス指標光をプリズムで2つに分離する。これにより、フォーカス指標光は、瞳孔上に設定された2つの指標光通過領域を通過し、眼底に2つの指標光(スプリット指標光)として投影される。スプリット指標光の分離状態および合致状態に基づいて、フォーカスを調整できるようになる。もちろん、指標投影光学系は、フォーカス指標光として、スプリット指標光とは異なる光を用いる構成とされてもよい。
【0026】
本実施形態の眼底撮影装置は、走査部を有した撮影光学系を備えることによって、眼底上のより広範な撮影範囲にて撮影領域を走査させ、広角の眼底観察画像を得ることができる。言い換えると、眼底中心領域および眼底周辺領域を含む眼底観察画像を得ることができる。しかしながら、眼底上のより広範な撮影範囲にて撮影領域を走査させることで、その走査位置によっては、指標投影光学系におけるフォーカス指標光が反射された角膜反射像が、眼底観察画像に写り込むようになる。特に、眼底周辺部にて撮影領域が走査される際には、フォーカス指標光の角膜反射像が生じやすい。このために、本実施形態の眼底撮影装置では、瞳孔上において指標光通過領域と受光領域とが走査部の走査方向に関して互いに分離した位置に形成されるように、指標投影光学系を構成する。以下で説明する各々の制御においては、指標光通過領域と受光領域とを、撮影領域の走査方向に配置する構成であることが重要となり、これによって、眼底の広域を撮影する場合であっても、フォーカス指標光における角膜反射像の写り込みを抑制するための制御を適切に行うことができる。
【0027】
実施形態の眼底撮影装置は、被検眼の角膜上にてフォーカス指標光が反射されることにより生じた角膜反射像を含まない眼底撮影画像であって、かつ、眼底上にフォーカス指標光が重畳された眼底撮影画像を、眼底観察画像として取得する。例えば、このために、眼底撮影装置は、フォーカス指標光の照射を制御したり、あるいは、眼底観察画像の取得範囲を設定したりすることができる(詳細は後述)。
【0028】
<制御手段>
本実施形態の眼底撮影装置は、制御部(例えば、制御部100)を備えてもよい。制御部は、撮影光学系による撮影領域(有効領域)の走査位置に応じて、指標投影光学系によるフォーカス指標光の照射を制御する。例えば、制御部は、走査部による撮影領域の走査と、フォーカス指標光の照射と、を対応付けて制御する。なお、指標投影光学系は、フォーカス指標光が撮影領域の走査方向に関して形成された指標光通過領域を通過する構成となっている。このため、制御部によるフォーカス指標光の照射の制御で、フォーカス指標光の角膜反射像の写り込みが抑制される。
【0029】
制御部は、眼底に対するフォーカス指標光の照射の有無を変更することができればよい。例えば、制御部は、指標投影光学系が有する光源を制御し、フォーカス指標光の照射の有無を変更してもよい。すなわち、光源を点灯または消灯させることで、フォーカス指標光の照射の有無を変更してもよい。また、例えば、制御部は、指標投影光学系が有する光源から照射されたフォーカス指標光を遮るための遮光部材を制御し、フォーカス指標光の照射の有無を変更してもよい。この場合、フォーカス指標光が通過する光路上に、遮光部材が配置されてもよい。一例として、遮光部材には遮光板が利用されてもよく、遮光板を光路にて挿抜させることで、フォーカス指標光の照射の有無を変更してもよい。また、一例として、遮光部材にはシャッターが利用されてもよく、シャッターを光路にて開閉させることで、フォーカス指標光の照射の有無を変更してもよい。なお、遮光部材は、遮光板やシャッターとは異なる部材であってもよい。
【0030】
制御部は、被検眼の角膜上において、照射光学系における照明光の眼底反射光と、指標投影光学系におけるフォーカス指標光と、の重複を避けるように、フォーカス指標光の照射を制御してもよい。角膜上にて照明光の眼底反射光とフォーカス指標光とが重複すると、照明光の眼底反射像とともにフォーカス指標光の角膜反射像が撮影されやすくなる。例えば、照明光の眼底反射光の進行方向と、フォーカス指標光の角膜反射像の進行方向と、が一致(略一致)して、いずれの光も撮像素子に到達しやすくなる。このため、制御部が、照明光の眼底反射光とフォーカス指標光との重複を避けて、フォーカス指標光の照射を制御することで、フォーカス指標光の角膜反射像の写り込みを、より抑制することができる。
【0031】
詳細には、制御部は、被検眼の角膜上において、眼底上の撮影領域(有効領域)が第1走査位置にて走査されるときに、フォーカス指標光を照射しないように制御してもよい。撮影領域の第1走査位置は、照射光学系における照明光の眼底反射光と、指標投影光学系におけるフォーカス指標光と、が重複する走査位置であってもよい。例えば、撮影領域の第1走査位置は、眼底周辺領域であってもよい。また、例えば、撮影領域の第1走査位置は、人間の一般的な角膜の曲率に基づいて決定された所定の範囲であってもよい。一例としては、25°~60°程度の画角に相当する範囲であってもよい。また、制御部は、被検眼の角膜上において、眼底上の撮影領域(有効領域)が第2走査位置にて走査されるときに、フォーカス指標光を照射するように制御してもよい。撮影領域の第2走査位置は、照射光学系における照明光の眼底反射光と、指標投影光学系におけるフォーカス指標光と、が重複しない走査位置であってもよい。例えば、撮影領域の第2走査位置は、眼底中心領域であってもよい。また、例えば、撮影領域の第2走査位置は、人間の一般的な角膜の曲率に基づいて決定された所定の範囲であってもよい。一例としては、0°~25°程度の画角に相当する範囲であってもよい。制御部は、照明光の眼底反射光とフォーカス指標光との重複を避けるため、第2走査位置でのみフォーカス指標光を照射させることで、フォーカス指標光の角膜反射像の写り込みを適切に低減させることができる。
【0032】
制御部は、走査部による撮影領域(有効領域)の走査と、フォーカス指標光の照射の有無と、を同期させるように制御してもよい。例えば、眼底上の撮影領域が第1走査位置および第2走査位置にて走査される各々の所要時間に合わせて、所定の周期(言い換えると、時間間隔)にてフォーカス指標光の照射の有無を繰り返してもよい。また、例えば、眼底上の撮影領域の位置を検出した検出結果に基づいて、フォーカス指標光の照射の有無を繰り返してもよい。この場合、走査部の駆動を検出手段により検出することで撮影領域の位置を決定し、撮影領域の位置に基づいてフォーカス指標光の照射の有無を繰り返してもよい。検出手段には、光センサ、角度センサ、位置センサ、等のいずれかが利用されてもよい。
【0033】
なお、被検眼の瞳孔上において、フォーカス指標光が通過する指標光通過領域と、照明光の眼底反射光が通過する受光領域と、が撮影領域の走査方向とは異なる方向に関して互いに分離した位置に形成される構成とした場合には、制御部によるフォーカス指標光の照射の制御で、フォーカス指標光の角膜反射像の写り込みを抑制することが難しい。一例として、指標光通過領域と受光領域とが、撮影領域の走査方向と交差する方向に関して互いに分離した位置に形成される構成では、撮影領域のいずれの走査位置でも、照射光学系における照明光の眼底反射光と、指標投影光学系におけるフォーカス指標光と、が重複する。つまり、撮影領域が眼底中心部にて走査される際にも、照明光の眼底反射光とフォーカス指標光とが重複する。このため、照明光の眼底反射光とフォーカス指標光との重複を避けるようにフォーカス指標光の照射を制御すると、眼底上へフォーカス指標光を投影することができなくなる。また、眼底上へフォーカス指標光を投影すると、フォーカス指標光の角膜反射像が眼底観察画像に写り込むようになる。従って、本実施形態では、撮影領域の走査方向に指標光通過過領域を配置することが重要となる。
【0034】
<設定手段>
本実施形態の眼底撮影装置は、設定手段(例えば、制御部100)を備えてもよい。設定手段は、角膜上にて照明光の眼底反射光とフォーカス指標光とが重複する2つの第1走査位置に挟まれた眼底中心領域を、眼底観察画像の取得範囲として設定する。言い換えると、設定手段は、角膜上にて照明光の眼底反射光とフォーカス指標光とが重複しない眼底中心領域を、眼底観察画像の取得範囲として設定する。なお、設定手段は、前述の制御部が兼ねてもよい。
【0035】
設定手段は、眼底観察画像の取得範囲を設定し、これに基づいて眼底観察画像を画像処理してもよい。この場合、設定手段は、眼底観察画像の生成、眼底観察画像に対する各種の画像処理、等を実行してもよい。もちろん、例えば、設定手段は、眼底撮影画像に対して同様の処理を実行してもよい。また、設定手段は、眼底観察画像の取得範囲を設定し、これに基づいて撮影領域の走査位置を設定してもよい。
【0036】
本実施形態では、眼底撮影装置が設定手段を備えることによって、制御部によるフォーカス指標光の照射の制御を行わずに、フォーカス指標光の角膜反射像の写り込みがない眼底観察画像を取得することもできる。
【0037】
この場合、撮影領域が、眼底中心領域と、眼底中心領域の周辺である眼底周辺領域と、を含む広角領域にて走査されてもよい。設定手段は、広角領域に対する走査に基づく第1眼底観察画像から、眼底中心領域に対応する第2眼底観察画像を特定する。例えば、設定手段は、種々の画像処理技術を適用して、第2眼底観察画像を特定してもよい。一例として、設定手段は、所定の画素位置(画角)に基づいて、第2眼底観察画像を特定してもよい。詳細には、所定の画素位置に対応する像を抽出することで、第2眼底観察画像を特定してもよい。なお、所定の画素位置は、予め実験やシミュレーションから設定され、記憶手段(例えば、記憶部101)に記憶されていてもよい。また、一例として、設定手段は、各々の画素位置から輝度値を検出し、その検出結果に基づいて、第2眼底観察画像を特定してもよい。これによって、フォーカス指標光の角膜反射像が写り込んだ領域を画像処理にて除き、フォーカス指標光の角膜反射像が写り込んでいない領域の眼底撮影画像(第2眼底観察画像)を得ることができる。
【0038】
また、この場合、撮影領域が、眼底中心領域でのみ走査されてもよい。これによって、フォーカス指標光の角膜反射像が写り込まない領域のみを撮影し、フォーカス指標光の角膜反射像が写り込んでいない領域の眼底撮影画像(第2眼底観察画像)を得ることができる。
【0039】
さらに、本実施形態の眼底撮影装置は、照射光学系における照明光が通過する光路と同一の光路を通過して、指標投影光学系におけるフォーカス指標光が投影されてもよい。例えば、照明光の投光光路とフォーカス指標光の投影光路とを結合および分離する光路分岐部材を介して、各々の光路が一致されてもよい。なお、指標投影光学系は、走査部の下流側に配置されてもよいし、走査部の上流側に配置されてもよい。
【0040】
指標投影光学系を走査部の下流側に配置する場合は、指標投影光学系が有する指標形成部材を、照射光学系における眼底共役位置に配置してもよい。例えば、指標投影光学系を走査部の下流側に配置する場合は、指標投影光学系を走査部の上流側に配置する場合(後述)に比べ、照射光学系を少ない光学部材によって構成することができる。従って、照射光学系の光路長が短くなり、装置が省スペース化される。このような構成では、眼底に対するフォーカス指標光の照射の制御、走査部による撮影領域の走査の制御、および、眼底観察画像の画像処理、等の少なくともいずれかの制御を実行することによって、フォーカス指標光の角膜反射像の写り込みを抑制した眼底観察画像を取得することができる。
【0041】
指標投影光学系を走査部の上流側に配置する場合は、照射光学系が有する光源と走査部との間に、瞳孔共役位置と眼底共役位置とをそれぞれ形成するリレー光学系を設け、指標投影光学系をリレー光学系にて形成される眼底共役位置に配置してもよい。この場合、照射光学系の光路長はリレー光学系によって長くなるが、眼底に対するフォーカス指標光の照射の制御、走査部による撮影領域の走査の制御、および、眼底観察画像の画像処理、等の制御を実行しなくても、フォーカス指標光の角膜反射像の写り込みを抑制した眼底観察画像を取得することができる。もちろん、これらの少なくともいずれかの制御を合わせて実行してもよく、これによって、フォーカス指標光の眼底反射像の写り込みをより軽減させた眼底観察画像を取得してもよい。
【0042】
<実施例>
本実施形態における眼底撮影装置の一実施例について説明する。
【0043】
眼底撮影装置1は、被検眼の眼底上で照明光をスリット状に形成し、眼底上でスリット状に形成された領域を走査し、照明光の眼底反射光を受光することで、眼底の正面画像を撮影する。
【0044】
図1は、眼底撮影装置1の外観図である。眼底撮影装置1は、撮影ユニット3を有する。撮影ユニット3は、図2で示す光学系を主に備える。眼底撮影装置1は、基台7、駆動部8、顔支持ユニット9、および、顔撮影カメラ110を有し、これらを用いて、被検眼Eと撮影ユニット3との位置関係を調整する。
【0045】
駆動部8は、基台7に対して左右方向(X方向)及び前後方向(Z方向であり、換言すれば、作動距離方向)に移動できる。また、駆動部8は、さらに、撮影ユニット3を、駆動部8上で被検眼Eに対して3次元方向に移動させる。駆動部8には、予め定められた各可動方向に駆動部8または撮影ユニット3を移動させるためのアクチュエータを有しており、制御部80からの制御信号に基づいて駆動される。顔支持ユニット9は、被検者の顔を支持する。顔支持ユニット9は基台7に固定されている。
【0046】
顔撮影カメラ110は、撮影ユニット3に対する位置関係が一定となるように、筐体6に固定されている。顔撮影カメラ110は、被検者の顔を撮影する。制御部100は、撮影された顔画像から被検眼Eの位置を特定し、駆動部8を駆動制御することで、特定した被検眼Eの位置に対して撮影ユニット3を位置合わせする。
【0047】
また、撮影装置1は、モニタ120をさらに有している。モニタ120には、眼底観察画像、眼底撮影画像、前眼部観察画像、等が表示される。
【0048】
<撮影ユニット>
図2は、眼底撮影装置1の光学系である。眼底撮影装置1は、撮影光学系(眼底撮影光学系)10、前眼部観察光学系40、等を有する。これらの光学系は、撮影ユニット3に設けられる。なお、撮影光学系10および前眼部観察光学系40において、被検眼の瞳と共役な瞳共役位置には光軸上に『△』を、眼底と共役な眼底共役位置には光軸上に『×』を付して、それぞれを示す。
【0049】
<撮影光学系>
撮影光学系10は、照射光学系10aと、受光光学系10bと、を有する。照射光学系10aは、光源ユニット11、レンズ13、スリット状部材15a、レンズ17aおよび17b、ミラー18、穴開きミラー20、対物レンズ22、等を有する。受光光学系10bは、対物レンズ22、穴開きミラー20、レンズ25aおよび25b、スリット状部材15b、撮像素子28、等を有する。
【0050】
光源ユニット11は、波長帯が異なる複数種類の光源を有している。例えば、光源ユニット11は、可視光源11aおよび11bと、赤外光源11cおよび11dと、を有する。このように、本実施例の光源ユニット11には、波長毎に光源が2つずつ設けられている。同じ波長の2つの光源は、瞳共役面上において、光軸Lから離れて配置される。2つの光源は、図2における走査方向であるX方向に沿って並べられており、光軸Lに関して軸対称に配置される。図2に示すように、2つの光源の外周形状は、走査方向に比べて、走査方向と交差する方向が長い矩形形状であってもよい。
【0051】
2つの光源からの光は、レンズ13を通過して、スリット状部材15aに照射される。本実施例において、スリット状部材15aは、Y方向に沿って細長く形成された透光部(開口)をもつ。これにより、眼底共役面において、照明光がスリット状に形成される(眼底Er上でスリット状に照明された領域を、符号Bとして図示する)。
【0052】
スリット状部材15aは、透光部が光軸LをX方向に横切るようにして、駆動部15c(図4参照)によって変位される。これにより、本実施例における照明光の走査が実現される。なお、本実施例では、受光系側でも、スリット状部材15bによる走査が行われる。本実施例では、投光側と受光側のスリット状部材は、1つの駆動部(アクチュエータ)によって、連動して駆動される。
【0053】
照射光学系10aでは、各光源の像が、レンズ13から対物レンズ22までの光学系によってリレーされて、瞳共役面上で結像される。つまり、瞳共役面上において、走査方向に関して分離した位置に、2つの光源の像が形成される。このようにして、本実施例では、瞳共役面上における2つの指標光通過領域P1,P2が、2つの光源の像として形成される。
【0054】
また、スリット状部材15aを通過したスリット状の光は、レンズ17aから対物レンズ22までの光学系によってリレーされて、眼底Er上に結像する。これにより、眼底Er上で照明光がスリット状に形成される。照明光は、眼底Er上で反射され、瞳孔Epから取り出される。
【0055】
穴開きミラー20は、照射光学系10aと受光光学系10bとの光路を結合する光路結合部である。穴開きミラー20は、光源ユニット11からの照明光を、被検眼E側へ反射し、被検眼Eからの眼底反射光のうち、開口を通過した一部を、撮像素子28側へ通過させる。穴開きミラー20以外の種々のビームスプリッターを用いることができる。例えば、穴開きミラー20に代えて、穴開きミラー20と透光部と反射部が逆転したミラーが光路結合部として用いられてもよい。但し、この場合、ミラーの反射側に受光光学系10bの独立光路が置かれ、ミラーの透過側に照射光学系10aの独立光路が置かれる。また、穴開きミラー、および、その代替手段としてのミラーは、それぞれ、ハーフミラーと遮光部との組み合わせに、さらに置き換えることができる。
【0056】
穴開きミラー20の開口は、被検眼の瞳と共役なので、眼底画像の撮影に利用される眼底反射光は、被検眼の瞳上において穴開きミラー開口の像(瞳像)を通過する一部に制限される。このため、被検眼の瞳上における開口の像が、本実施例における受光領域Rとなる。受光領域Rは、2つの指標光通過領域P1,P2(2つの光源の像)に挟まれて形成される。また、各像の結像倍率、開口の径、2つの光源の配置間隔が適宜設定された結果として、受光領域Rと、2つの指標光通過領域P1,P2とは、瞳上において互いに重ならないように形成される。
【0057】
対物レンズ22および穴開きミラー20の開口を通過した眼底反射光は、レンズ25aおよび25bを介して、眼底共役位置に、眼底Erのスリット状領域を結像する。このとき、結像の位置にスリット状部材15bの透光部が配置されていることで、有害光が除去される。
【0058】
撮像素子28は、眼底共役位置に配置されている。本実施例では、スリット状部材15bと撮像素子28の間にリレー光学系27が設けられており、これにより、スリット状部材15bと撮像素子28との双方が、眼底共役位置で配置される。その結果、有害光の除去と、結像と、の両方が良好に行われる。これに代えて、撮像素子28とスリット状部材15bとの間のリレー光学系27を省略し、両者を近接配置してもよい。本実施例では、撮像素子28として、2次元的な受光面をもつデバイスが用いられている。例えば、CMOS、二次元CCD、等であってもよい。撮像素子28には、スリット状部材15bの透光部で結像した、眼底Erのスリット状領域の像が投影される。撮像素子28は、赤外光および可視光の両方に感度をもつ。
【0059】
本実施例では、スリット状の照明光が眼底Er上で走査されるに従って、撮像素子28の走査線毎に、眼底Er上の走査位置の像(スリット状の像)が順次投影される。このように、撮像素子28には、時分割で走査範囲の全体像が投影される。その結果、走査範囲の全体像として、眼底Erの正面画像が撮像される。
【0060】
なお、本実施例では、受光光学系10bにおける走査部がメカニカルにスリットを走査するデバイスであったが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、受光光学系10b側の走査部は、電子的にスリットを走査するデバイスであってもよい。一例として、撮像素子28がCMOSである場合、CMOSのローリングシャッター機能によって、スリットの走査が実現されてもよい。この場合には、撮像面上で露光される領域を、照射光学系10aにおける走査部と同期して変位させることで、有害光を除去しつつ、効率良く撮影することができる。また、液晶シャッター等を、電子的にスリットを走査する走査部として用いることもできる。
【0061】
撮影光学系10は、視度補正部を有している。本実施例では、照射光学系10aの独立光路と、受光光学系10bの独立光路と、のそれぞれに視度補正部(視度補正光学系17および25)が設けられている。なお、本実施例では、照射光学系10aと受光光学系10bとの共通光路に、視度補正部を設けることも可能である。例えば、この場合には、ダイクロイックミラー43と対物レンズ22との間に、視度補正部を設けてもよい。
【0062】
以下では、便宜上、照射側の視度補正光学系を照射側視度補正光学系17と称し、受光側の視度補正光学系を受光側視度補正光学系25と称する。本実施例の照射側視度補正光学系17は、レンズ17a、レンズ17b、および駆動部17c(図3参照)を含む。また、本実施例の受光側視度補正光学系25は、レンズ25a、レンズ25b、および駆動部25c(図3参照)を含む。照射側視度補正光学系17においてはレンズ17aとレンズ17bとの間隔が、受光側視度補正光学系25においては、レンズ25aとレンズ25bとの間隔が変更される。これにより、照射光学系10aと受光光学系10bとの各々において、視度補正が行われる。
【0063】
撮影光学系10は、さらに、フォーカス指標投影光学系の一例として、スプリット指標投影光学系50を有する。スプリット指標投影光学系50は、2つのスプリット指標を眼底Erに投影する。スプリット指標は、フォーカス状態の検出に利用される。また、本実施例では、フォーカス状態の検出結果から、被検眼Eの屈折度数が取得される。
【0064】
例えば、スプリット指標投影光学系50は、赤外光源51、指標板52、偏角プリズム53、を少なくとも有していてもよい。本実施例において、指標板52は、受光光学系10bにおける撮像面と対応する位置に配置されている。同様に、指標板52は、各々のスリット状部材15aおよび15bとも対応する位置へ配置される。例えば、詳細には、指標板52は、照射側および受光側の視度補正量が0Dである場合に、正視眼(0D眼)の眼底と略共役な位置に配置される。偏角プリズム53は、指標板52よりも被検眼側において、指標板52に近接して配置される。
【0065】
例えば、指標板52は、スリット光を指標として形成する。偏角プリズム53は、指標板52を介した指標光束を分離し、スプリット指標を形成する。分離されたスプリット指標は、照射側視度補正光学系17から対物レンズ22までを介して、被検眼Eの眼底Erへ投影される。このため、スプリット指標は、眼底画像(例えば、眼底観察画像)に写り込む。
【0066】
指標板52が眼底共役位置からずれている場合、眼底上で2つのスプリット指標は分離し、指標板52が眼底共役位置に配置されている場合、2つのスプリット指標は一致する。共役関係は、偏角プリズム53と眼底Erとの間に配置される照射側視度補正光学系17によって調整される。そこで、本実施例では、照射側視度補正量と受光側視度補正量とを一致させつつデフォーカスが行われる。このとき、スプリット指標の分離状態が、フォーカス状態を示す。2つのスプリット指標が合致されるように、照射側および受光側の視度補正量の各々が調整されることによって、撮像面とスリット状部材15aおよび15bとの各々が、眼底と共役な位置関係となる。
【0067】
撮像面と、スリット状部材15aおよび15bと、の各々が眼底と共役な位置関係であるときの視度補正量から、被検眼Eの屈折度数を導くことができる。そこで、本実施例においては、さらに、レンズ17aとレンズ17bとの間隔、または、レンズ25aとレンズ25bとの間隔のうち、いずれかを読み出す図示なきエンコーダを有していてもよく、エンコーダからの信号に基づいて、被検眼Eの屈折度数が取得されてもよい。
【0068】
なお、例えば、走査部は、図3に示すようなオプティカルチョッパーであってもよい。オプティカルチョッパーは、外周に複数のスリットが形成されたホイールをもち、ホイールを回転させることで、高速にスリットをスキャンできる。
【0069】
本実施例では、照射光学系10aの光源ユニット11からミラー18までと、受光光学系10bの穴開きミラー20から撮像素子28までとが、X方向に並列されているが、例えば、穴開きミラー20とミラー18との向きを、図示した状態から90°回転させ、両者をY方向に並列させることによって、オプティカルチョッパーを走査部として適用可能になる。この場合、ホイールの上端と下端との2箇所で、照射光学系10aの光軸と受光光学系10bの光軸とをそれぞれ横切らせることで、1体のオプティカルチョッパーで、投光系および受光系の走査を、容易に同期させることができる。
【0070】
また、例えば、照射光学系10aにおける赤外光源(赤外光源11cおよび11d)と、スプリット指標投影光学系50における赤外光源(赤外光源51)と、は同一の赤外波長であってもよい。これによって、本実施例では、照射光学系10aによる眼底反射光と、スプリット指標投影光学系50による眼底反射光と、を1つの撮像素子28にて撮像し、眼底Erのスプリット指標像を含む正面画像を得ることができる。もちろん、各々の赤外光源における赤外波長は異なっていてもよく、この場合には、所定の赤外波長域に感度をもつ撮像素子、等を用いてもよい。
【0071】
<前眼部観察光学系>
前眼部観察光学系40は、被検眼Eの前眼部を撮像する。前眼部観察光学系40は、赤外光で前眼部を照明し、前眼部の正面画像を撮影する。前眼部観察光学系は、光源41、ハーフミラー45、撮像素子47、ダイクロイックミラー43、対物レンズ22、等を有する。例えば、光源41は、赤外光源であり、被検眼Eを照明する。例えば、撮像素子47は二次元撮像素子であり、瞳孔Epと光学的に共役な位置に配置される。ダイクロイックミラー43と対物レンズ22は、撮影光学系10と共用される。なお、前眼部観察光学系40は、他の光学系と独立した光路で前眼部を撮像するように構成されてもよい。
【0072】
<制御部>
図4は、眼底撮影装置1の制御系である。制御部100は、各部の制御処理と、演算処理とを行う電子回路を有する処理装置(プロセッサ)である。制御部100は、一般的なCPU(Central Processing Unit)、RAM、ROM、等を備える。例えば、CPUは、眼底撮影装置1における各部材の制御を司る。例えば、RAMは、各種の情報を一時的に記憶する。例えば、ROMには、眼底撮影装置1の動作を制御するための各種プログラムが記憶される。また、制御部100は、便宜上、眼底撮影装置1にて得られた各種画像の画像処理を行うものとする。換言すれば、制御部100が画像処理部を兼用する。
【0073】
制御部100には、駆動部8、光源11a~11d、駆動部15c、駆動部17c、駆動部25c、撮像素子28、光源41、撮像素子47、光源51、モニタ120、入力インターフェイス130、記憶部101、等の各部と電気的に接続される。
【0074】
制御部100は、入力インターフェイス130から出力される操作信号に基づいて、上記の各部材を制御する。入力インターフェイス130は、検者の操作を受け付ける操作入力部である。例えば、マウス、キーボード、等であってもよい。
【0075】
記憶部101は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる、非一過性の記憶媒体であってもよい。例えば、記憶部101は、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、USBメモリ、等でもよい。例えば、記憶部101には、各種の制御プログラム、固定データ、等が格納される。また、例えば、記憶部101には、眼底撮影装置1による撮影画像が記憶される。但し、撮影画像の記憶は必ずしもこれに限られるものではない。撮影画像は、外部の記憶装置(例えば、制御部100にLANおよびWANで接続された記憶装置)へ記憶されてもよい。
【0076】
<制御動作>
眼底撮影装置1の制御動作を説明する。
【0077】
検者は、被検者へ、顔を顔支持ユニット9に乗せるように指示を出す。制御部100は、被検者の顔が顔撮影カメラ110の撮影範囲に含まれたことを検出し、自動的に眼底を撮影するための動作を開始してもよい。
【0078】
まず、制御部100は、顔撮影カメラ110と前眼部観察光学系40とによる撮影を並行して行い、両者の撮影結果を用いたアライメント調整を実行する。
【0079】
制御部100は、顔検出カメラに撮影された顔画像に含まれる、左眼または右眼の位置を検出する。また、制御部100は、左眼または右眼の位置情報に基づいて、駆動部8を駆動させる。これにより、撮影ユニット3の位置は、前眼部観察光学系40による前眼部観察が可能な位置まで調整される。
【0080】
続いて、制御部100は、撮像素子47に撮影された前眼部観察画像に基づいて、被検眼Eと撮影ユニット3とのアライメントの基準となる位置(アライメント基準位置)を設定し、撮影ユニット3をアライメント基準位置へと誘導する。例えば、制御部100は、前眼部観察画像における瞳孔Epの中心と、前眼部観察画像の中心(本実施例では、光軸Lの位置)と、が一致する位置をアライメント基準位置とし、アライメント基準位置に対する撮影ユニット3のアライメントずれを検出する。また、例えば、制御部100は、被検眼Eに対して撮影ユニット3を左右方向、上下方向、および前後方向の少なくともいずれかの方向へ移動させ、アライメントずれを解消し、アライメント基準位置に配置する。このとき、被検眼Eから眼底撮影装置1までは所定の作動距離となり、前眼部観察画像のピントが瞳孔Epに合わせられる。また、このとき、被検眼Eの瞳孔Epの中心と、瞳上における受光領域Rの中心(つまり、光軸L)と、が一致するようになる。
【0081】
なお、眼底撮影装置1が、被検眼Eの角膜に向けてアライメント指標を投影するアライメント指標投影光学系を有している場合、アライメント指標像と光軸Lとのずれ量に基づいて、撮影ユニット3を移動させてもよい。
【0082】
続いて、制御部100は、撮影光学系10による撮影を行うために、照射光学系10aの赤外光源11cおよび赤外光源11dを点灯させる。これにより、眼底Erに照明光が照射される。また、制御部100は、照射光学系10aおよび受光光学系10bにおけるフォーカス状態を調整するために、スプリット指標投影光学系50の光源51を点灯させる。これにより、眼底Erにスプリット指標光が投影される。
【0083】
図5は、被検眼における照明光の眼底反射光とスプリット指標光との位置関係を表す模式図である。実線で示す光線は、照明光の眼底反射光S1である。例えば、照明光が指標光通過領域P1およびP2を通過して眼底Er上をスリット状に照明すると、照明光の眼底反射光束S1は穴開きミラー20によって受光領域Rから取り出されて、撮像素子28に撮像される。例えば、眼底Er上において、照明光が走査位置A1から走査位置A2へ向かって、走査部(スリット状部材15aおよび15b)により走査されると、眼底反射光S1は受光領域Rから随時に取り出されて、撮像素子28に撮像される。例えば、照明光が走査位置A1から走査位置A2に到達するまでを1回の走査とすると、少なくとも1回の走査毎に、眼底観察画像が生成され得る。点線で示す光線は、スプリット指標光S2である。例えば、スプリット指標光S2は、指標光通過領域P1およびP2を通過して、眼底Erに投影される。このため、スプリット指標像M(図6参照)が、眼底観察画像に写り込む。
【0084】
図6は、眼底観察画像60の一例である。被検眼Eの角膜Ecにおいて、スプリット指標光S2は反射および散乱を起こす。撮影領域が眼底Er上の周辺部(例えば、走査位置A1や走査位置A2)にて走査されたときは、スプリット指標光S2が、眼底反射光S1と角膜Ecにて重なり合う。例えば、このような状態では、スプリット指標光S2における角膜反射光の進行方向と、眼底反射光S1の進行方向と、が一致(略一致)し、角膜反射光が眼底反射光S1とともにスリット開口を通り抜け、いずれの光も撮像素子28に撮像される。撮影領域が眼底Erの中心部(例えば、光軸L付近の走査位置)にて走査されたときは、スプリット指標光S2が、眼底反射光S1と角膜Ecにて重なり合わない。例えば、このような状態では、スプリット指標光S2における角膜反射光の進行方向と、眼底反射光S1の進行方向と、が一致(略一致)しにくくなる。また、スプリット指標光S2における角膜反射光の進行方向と、眼底反射光S1の進行方向と、が一致しても、角膜反射光がスリット開口とは異なる領域に遮られ、眼底反射光S1のみがスリット開口を通り抜けて撮像素子28に撮像される。このため、撮影領域が走査位置A1から走査位置A2までの撮影範囲にて走査されることにより得られた眼底観察画像60には、スプリット指標像Mとともに、スプリット指標光S2の角膜反射像Qが写り込む。
【0085】
そこで、制御部100は、眼底Er上の走査位置に応じて、スプリット指標投影光学系50によるスプリット指標光の照射を制御する。例えば、制御部100は、眼底Er上にて照明光が走査位置A1(始点A1)から走査位置A2(終点A2)まで走査される間に、光源51の点灯および消灯を制御する。これによって、スプリット指標光S2の角膜反射像Qの写り込みを抑制し、良好な眼底観察画像60を得ることができる。
【0086】
図7は、眼底Er上の撮影範囲と赤外光源51の制御を説明する図である。図7(a)は、角膜Ecにて眼底反射光S1とスプリット指標光S2とが重なり合う撮影範囲C1を表している。なお、例えば、撮影範囲C1は、後述の撮影範囲C2を挟んで始点側に位置する撮影範囲C1aと、撮影範囲C2を挟んで終点側に位置する撮影範囲C1bと、の2つの範囲からなる。図7(b)は、角膜Ecにて眼底反射光S1とスプリット指標光S2とが重なり合わない撮影範囲C2を表している。
【0087】
撮影範囲C1および撮影範囲C2は、予め実験やシミュレーションから設定されている。撮影範囲C1aおよび撮影範囲C1bは、眼底Erの周辺部における所定の範囲である。例えば、撮影範囲C1aは、走査位置A1から、眼底反射光S1とスプリット指標光S2とが重複するか否かの境界である走査位置B1までの範囲でもよい。また、例えば、撮影範囲C1bは、眼底反射光S1とスプリット指標光S2とが重複するか否かの境界である走査位置B2から、走査位置A2までの範囲でもよい。一例として、撮影範囲C1aと撮影範囲C1bは、25°よりも大きな画角であってもよい。撮影範囲C2は、眼底Erの中心部における所定の範囲である。例えば、撮影範囲C2は、走査位置B1から走査位置B2までの範囲でもよい。一例として、撮影範囲C2は、0°~25°の画角であってもよい。
【0088】
制御部100は、走査部による走査位置の走査と、光源51の点灯および消灯と、を対応付けて、これらの制御を同期させる。例えば、撮影範囲C1aにて走査位置が走査される際に要する時間は、設計上、既知である。同様に、例えば、撮影範囲C2にて走査位置が走査される際に要する時間と、撮影範囲C1bにて走査位置が走査される際に要する時間も、設計上、既知である。このため、制御部100は、走査部の駆動に合わせ、照明光が走査位置A1から走査位置B1へと走査される所定の時間は、光源51を消灯させる。また、照明光が走査位置B1から走査位置B2へと走査される所定の時間は、光源51を点灯させる。また、照明光が走査位置B2から走査位置A2へと走査される所定の時間は、光源51を消灯させる。
【0089】
すなわち、制御部100は、角膜Ecにて眼底反射光S1とスプリット指標光S2とが重なり合う撮影範囲を走査するときは、光源51を消灯させる。また、制御部100は、角膜Ecにて眼底反射光S1とスプリット指標光S2とが重なり合わない撮影範囲を走査するときは、光源51を点灯させる。これによって、眼底反射光S1とスプリット指標光S2との重複を避けつつ、スプリット指標光S2を眼底Erに投影することができる。
【0090】
制御部100は、走査部の制御によって、照明光が走査位置A1から走査位置A2まで走査される毎に、上述のような赤外光源51の制御を繰り返す。つまり、走査部による照明光の走査に応じて、赤外光源51に周期的な制御を繰り返す。これによって、眼底Erに投影されたスプリット指標光S2の像M(スプリット指標像M)を含むが、スプリット指標光S2の角膜反射像Qは含まれない良好な眼底観察画像が、略リアルタイムに生成される。制御部100は、眼底観察画像を動画像として、モニタ120へ表示させてもよい。
【0091】
さらに、制御部100は、眼底観察画像からスプリット指標像Mの分離状態を検出し、スプリット指標像が合致するまで、照射側視度補正量と受光側視度補正量とを変化させ、デフォーカスを行う。これによって、撮像素子28の撮像面と、スリット状部材15aおよび15bと、が眼底と共役な位置関係となる。
【0092】
制御部100は、照射光学系10aおよび受光光学系10bにおけるフォーカス状態を調整すると、眼底撮影画像(カラー静止画像)を取得する。制御部100は、照射光学系10aにおいて、可視光源11aおよび可視光源11bを点灯させるとともに、赤外光源11cおよび赤外光源11dを消灯させる。また、制御部100は、スプリット指標投影光学系50において、赤外光源51を消灯させる。例えば、可視光源からの可視光は、眼底Er上の走査位置A1から走査位置A2へ向かって走査部により走査され、各々の走査位置にて反射され、撮像素子28に撮像される。これによって、眼底撮影画像が生成される。制御部100は、得られた眼底撮影画像を、記憶部101に記憶させてもよい。また、制御部100は、眼底観察画像をモニタ120へ表示させてもよい。
【0093】
以上、説明したように、例えば、本実施例における眼底撮影装置は、眼底へ照明光を照射する照射光学系と、眼底上の撮影領域を走査する走査部と、眼底反射光であって、瞳孔上の受光領域を通過した照明光の眼底反射光を受光する受光光学系と、を有する撮影光学系と、瞳孔上に設定される指標光通過領域を通じて、眼底上へフォーカス指標光を投影する指標投影光学系と、を備えており、瞳孔上において、指標光通過領域と受光領域とは、走査部の走査方向に関して互いに分離した位置に形成される。これにより、眼底撮影装置が広域の撮影範囲を撮影可能に構成された場合であっても、フォーカス指標光における角膜反射像の写り込みを抑制するための制御を、適切に行うことができるようになる。
【0094】
また、例えば、本実施例における眼底撮影装置は、眼底に対するフォーカス指標光の照射を、眼底上の撮影領域の走査位置に応じて制御する。フォーカス指標光が走査部の走査方向に関して形成された指標光通過領域を通過する構成であれば、このようなフォーカス指標光の照射の制御によって、フォーカス指標光の角膜反射像の写り込みを抑制することができる。従って、眼底上にフォーカス指標像が重畳され、かつ、フォーカス指標光の角膜反射像の写り込みを抑制した、良好な眼底観察画像を取得することができる。
【0095】
また、例えば、本実施例における眼底撮影装置は、照射光学系における照明光の眼底反射光と、フォーカス指標光と、の角膜上での重複を避けるように、フォーカス指標光の照射を制御する。例えば、角膜上にて照明光の眼底反射光とフォーカス指標光とが重複すると、各々の光の進行方向が一致しやすく、このために、照明光の眼底反射像とともにフォーカス指標光の角膜反射像が撮影されやすくなる。しかし、各々の光の重複を避けるようにフォーカス指標光の照射を制御すれば、フォーカス指標光の角膜反射像の写り込みをより抑制することができる。
【0096】
また、例えば、本実施例における眼底撮影装置は、照射光学系における照明光の眼底反射光と、フォーカス指標光と、が角膜上にて重複する第1走査位置にて撮影領域が走査されるときに、フォーカス指標光を照射しないように制御する。また、照射光学系における照明光の眼底反射光と、フォーカス指標光と、が角膜上にて重複しない第2走査位置にて撮影領域が走査されるときに、フォーカス指標光を照射するように制御する。これにより、照明光の眼底反射光とフォーカス指標光とが重複しない撮影範囲のみにフォーカス指標光が照射されるため、フォーカス指標光の角膜反射像の写り込みを適切に抑制することができる。
【0097】
<変容例>
なお、本実施例における眼底撮影装置1は、小瞳孔眼に対応することができてもよい。小瞳孔眼では、赤外光源51から照射された2つのスプリット指標光S2が瞳孔からずれた位置(瞳孔の外側)に照射され、眼底Erに到達しなくなる。このため、制御部100は、撮影ユニット3の左右方向および上下方向のアライメント基準位置を変更し、赤外光源51から照射される2つのスプリット指標光S2のいずれかを、瞳孔上の指標光通過領域P1またはP2のいずれかの位置に一致させてもよい。すなわち、2つのスプリット指標光S2のうち、いずれか一方のみを眼底Erに投影させてもよい。
【0098】
なお、通常瞳孔眼に対する眼底撮影では、スプリット指標光S2の角膜反射像Qが、眼底観察画像60の周囲に現れやすい。しかし、小瞳孔眼に対する眼底撮影では、撮影ユニット3のアライメント基準位置を変更したことによって、スプリット指標光S2の角膜反射像Qが、眼底観察画像60の中央付近に現れやすくなる。このため、後述するような、画像処理にて角膜反射像Qをマスクする制御や、角膜反射像Qの写り込みを防ぐように照明光を走査する制御では、角膜反射像Qを取り除くことが難しい。小瞳孔眼に対する眼底撮影では、本実施例における赤外光源51の点灯と消灯の制御が効果的であり、角膜Ecにて照明光の眼底反射光S1とスプリット指標光S2との重複を避けることで、角膜反射像Qの写り込みを抑制した眼底観察画像60を良好に得ることができる。
【0099】
なお、本実施例では、眼底Erに対するスプリット指標光S2の照射を制御するために、赤外光源51の点灯および消灯を制御する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本実施例では、眼底Erに対するスプリット指標光S2の照射を制御するために、光路上に遮光部材を設け、遮光部材を制御する構成としてもよい。例えば、この場合、遮光部材は遮光板でもよく、制御部100は遮光板を挿抜させてもよい。また、例えば、この場合、遮光部材はシャッターでもよく、制御部100はシャッターを開閉してもよい。もちろん、遮光部材は、遮光板やシャッターとは異なる部材であってもよい。
【0100】
なお、本実施例では、スプリット指標光S2の角膜反射像Qが写り込まない眼底観察画像60を取得するために、赤外光源51の点灯および消灯を制御する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本実施例では、スプリット指標光S2の角膜反射像Qが写り込まない眼底観察画像60を取得するために、眼底中心部を眼底観察画像の取得範囲として設定するようにしてもよい。これにより、フォーカス指標光の角膜反射像が写り込まない領域での眼底観察画像を得てもよい。
【0101】
この場合、角膜反射像Qが写り込まない眼底観察画像を取得するために、角膜反射像Qが写り込んだ眼底観察画像に対して、画像処理が行われてもよい。すなわち、眼底Er上において、照明光が走査位置A1から走査位置A2へ向かって走査され、角膜反射像Qを含む眼底観察画像が生成されると、この眼底観察画像に対して画像処理が行われてもよい。例えば、制御部100は、眼底観察画像の各々の画素位置に対する輝度値を算出する。また、例えば、制御部100は、眼底観察画像を上下方向(走査方向に交差する方向)へ所定の数で分割し、各々の領域の平均輝度値を算出する。さらに、例えば、制御部100は、予め設定された閾値を超える領域をマスクする。なお、閾値は、実験やシミュレーション等に基づき、記憶部101に記憶されていてもよい。このような構成では、フォーカス指標光の角膜反射像が写り込んだ領域を画像処理にて除くことで、フォーカス指標光の角膜反射像が写り込んでいない領域における眼底観察画像を得ることができるようになる。
【0102】
また、この場合、角膜反射像Qが写り込まない眼底観察画像60を取得するために、照明光の走査位置が制御されてもよい。例えば、眼底Er上において、照明光が走査位置B1から走査位置B2へ向かって走査されるように、スリット状部材15aおよび15bにおけるスリット開口の大きさや間隔が、予め設定されていてもよい。つまり、照明光が、眼底反射光S1とスプリット指標光S2とが重複しない撮影範囲C2のみを走査するように、スリット状部材15aおよび15bが設けられていてもよい。このような構成では、フォーカス指標光の角膜反射像が写り込まない領域のみを撮影して、フォーカス指標光の角膜反射像が写り込んでいない眼底観察画像を得られるようになる。なお、眼底観察画像を利用してフォーカスを調整し、その後に眼底撮影画像(カラー静止画像)を取得する際には、可視光源からの可視光を走査位置A1から走査位置A2へ向かって走査させ、眼底の広域を撮影してもよい。
【0103】
なお、本実施例では、スプリット指標投影光学系50をスリット状部材15aの下流側に配置する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本実施例では、スプリット指標投影光学系50をスリット状部材15aの上流側に配置する構成としてもよい。この場合、赤外光源11cおよび11dからスリット状部材15aまでの間に、瞳共役位置と眼底共役位置とをリレーするリレー光学系が設けられてもよい。また、スプリット指標投影光学系50における指標板52を、リレー光学系が有する眼底共役位置に配置してもよい。
【0104】
例えば、このような構成では、赤外光源11cおよび11dからの照明光と同様に、赤外光源51から照射されるスプリット指標光S2が、スリット開口を通過するようになる。このため、照明光の走査位置によっては(言い換えると、スリット開口の移動位置によっては)、スプリット指標光S2がスリット状部材15aに遮られる。例えば、眼底Erの周辺部に照明光が走査されるときは、スプリット指標光S2がスリット開口とは異なる領域に遮られる。また、例えば、眼底Erの中心部に照明光が走査されるときは、スプリット指標光S2がスリット開口を通過する。これによって、赤外光源51の点灯と消灯を制御しなくても、スプリット指標光S2が撮影範囲C2のみに投影され、角膜反射像Qを含まない眼底観察画像60を得ることができる。
【0105】
もちろん、スプリット指標投影光学系50をスリット状部材15aの上流側に配置する構成であっても、赤外光源51の点灯と消灯を制御してもよい。例えば、スリット状部材15aおよび15bのスリット開口を大きくすると、スプリット指標光S2が撮影範囲C1aおよびC2bにおいても投影されるようになり、角膜反射像Qが眼底観察画像60に写り込むようになる。赤外光源51を制御すれば、スリット開口を大きく設計しても、角膜反射像Qの写り込みを抑制することができる。
【0106】
本実施例における眼底撮影装置1は、眼底Erから発せられる蛍光に基づく蛍光眼底撮影画像を取得することができてもよい。この場合、照射光学系10aでは照明光が励起光として照射され、受光光学系10bでは、眼底Erからの励起光に基づく蛍光が撮像素子28へと導かれる。なお、蛍光物質は、造影剤(一例として、インドシアニングリーン、フルオレセイン、等)でもよいし、眼底Erに蓄積する自発蛍光物質(一例として、リポフスチン)であってもよい。照明光の波長域は、蛍光物質に応じて、適宜、設定される。
【0107】
例えば、被検眼Eに対して蛍光眼底撮影を行う際、受光光学系10bの独立光路上には、バリアフィルタが配置される。例えば、制御部100がバリアフィルタを駆動させるための駆動部を制御することで、バリアフィルタは光路上にて挿抜される。また、例えば、バリアフィルタは、眼底Erからの蛍光を通過させ、励起光と同じ波長域の光は遮光するような分光特性をもつ。このため、眼底Erからの蛍光と、励起光の眼底反射光と、のうち、蛍光が選択的に撮像素子28に撮像され、蛍光眼底撮影画像を良好に得ることができる。
【0108】
なお、このような蛍光眼底撮影では、眼底Erからの蛍光の撮像感度を向上させるために、スリット状部材15aおよび15bのスリット開口を広く設けてもよい。しかし、スリット開口を広くすると、光源から照射される励起光の角膜反射光が、スリット開口を通り抜けて、撮像素子28に到達しやすくなる。すなわち、眼底Erからの蛍光に基づいて生成される蛍光眼底撮影画像に、励起光の角膜反射像が写り込みやすくなる。そこで、制御部100は、励起光の角膜反射像が写り込んだ蛍光眼底撮影画像に対して画像処理を行い、励起光の角膜反射像をマスクしてもよい。また、制御部100は、励起光の角膜反射像が蛍光眼底撮影画像に写り込まないように、眼底Erにて励起光を走査する撮影範囲を制御してもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 眼底撮影装置
10 撮影光学系
10a 照射光学系
10b 受光光学系
50 スプリット指標投影光学系
100 制御部
図1
図2
図3
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図5
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図7