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特許7574550画像形成装置、押圧力制御方法および押圧力制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】画像形成装置、押圧力制御方法および押圧力制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20241022BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
G03G15/20 535
G03G15/00 303
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020101135
(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公開番号】P2021196425
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(72)【発明者】
【氏名】羽田野 英紀
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-025965(JP,A)
【文献】特開2017-116704(JP,A)
【文献】特開2018-180044(JP,A)
【文献】特開2011-145543(JP,A)
【文献】特開2011-095320(JP,A)
【文献】特開2018-146916(JP,A)
【文献】特開2019-003055(JP,A)
【文献】特開2018-159852(JP,A)
【文献】特開平10-142995(JP,A)
【文献】米国特許第06580894(US,B1)
【文献】特開2008-298935(JP,A)
【文献】特開2017-107143(JP,A)
【文献】特開2020-046505(JP,A)
【文献】特開2020-095196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧ローラーと、
前記加圧ローラーを回転駆動する駆動部と、
前記加圧ローラーに対向して設けられ、前記加圧ローラーとの間でニップ部を形成する加熱部と、
前記加圧ローラーと前記加熱部との一方を他方に向けて押圧する押圧力を調整する押圧力調整部と、 前記ニップ部を通過する記録媒体のサイズに基づいて前記押圧力を決定する決定手段と、
前記加熱部が回転する負荷を検出する負荷検出手段と、を備え、
前記加熱部は、前記加圧ローラーに対向する位置に配置された押圧部材と、
前記押圧部材と前記加圧ローラーとの間を通り、前記ニップ部の少なくとも一部で前記加圧ローラーと直接接触し、前記加圧ローラーの回転に伴って前記押圧部材に対して摺動する無端の定着ベルトと、を含み、
前記決定手段は、前記負荷が所定の閾値以上の場合に、前記記録媒体のサイズが大きいほど前記押圧力を大きな値に決定する、画像形成装置。
【請求項2】
前記記録媒体の前記サイズは、前記ニップ部を通過する前記記録媒体の前記加圧ローラーの回転軸と平行な方向の長さである、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記所定の閾値は、前記記録媒体の前記サイズに対して定められる、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
記負荷検出手段は、前記駆動部が前記加圧ローラーを回転駆動するためのトルクを検出する、請求項1~3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記負荷検出手段は、前記駆動部が前記加圧ローラーを回転駆動する累積回数を検出する、請求項1~4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
装置の環境を示す環境情報を取得する環境情報取得手段をさらに備え、
前記決定手段は、前記環境情報にさらに基づいて前記閾値を変更する、請求項1~5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記押圧力調整部は、前記ニップ部を前記記録媒体が通過する間に前記加圧ローラーを押圧する、請求項1~のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記押圧力に応じて前記加熱部の発熱量を調整する発熱量調整手段を、さらに備えた請求項1~のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
画像形成装置で実行される押圧力制御方法であって、
前記画像形成装置は、
加圧ローラーと、
前記加圧ローラーを回転駆動する駆動部と、
前記加圧ローラーに対向して設けられ、前記加圧ローラーとの間でニップ部を形成する加熱部と、
前記加圧ローラーと前記加熱部との一方を他方に向けて押圧する押圧力を調整する押圧力調整部と、を備え、
前記加熱部は、前記加圧ローラーに対向する位置に配置された押圧部材と、
前記押圧部材と前記加圧ローラーとの間を通り、前記ニップ部の少なくとも一部で前記加圧ローラーと直接接触し、前記加圧ローラーの回転に伴って前記押圧部材に対して摺動する無端の定着ベルトと、を含み、
前記ニップ部を通過する記録媒体のサイズに基づいて前記押圧力を決定する決定ステップと、
前記押圧力調整部を制御して決定された前記押圧力に調整させる押圧力制御ステップと、を含み、
前記決定ステップは、前記加熱部が回転する負荷が所定の閾値以上の場合に、前記記録媒体のサイズが大きいほど前記押圧力を大きな値に決定することを含む押圧力制御方法。
【請求項10】
画像形成装置を制御するコンピューターで実行される押圧力制御プログラムであって、
前記画像形成装置は、
加圧ローラーと、
前記加圧ローラーを回転駆動する駆動部と、
前記加圧ローラーに対向して設けられ、前記加圧ローラーとの間でニップ部を形成する加熱部と、
前記加圧ローラーと前記加熱部との一方を他方に向けて押圧する押圧力を調整する押圧力調整部と、を備え、
前記加熱部は、前記加圧ローラーに対向する位置に配置された押圧部材と、
前記押圧部材と前記加圧ローラーとの間を通り、前記ニップ部の少なくとも一部で前記加圧ローラーと直接接触し、前記加圧ローラーの回転に伴って前記押圧部材に対して摺動する無端の定着ベルトと、を含み、
前記ニップ部を通過する記録媒体のサイズに基づいて前記押圧力を決定する決定ステップと、
前記押圧力調整部を制御して、決定された前記押圧力に調整させる押圧力制御ステップと、を前記コンピューターに実行させ、
前記決定ステップは、前記加熱部が回転する負荷が所定の閾値以上の場合に、前記記録媒体のサイズが大きいほど前記押圧力を大きな値に決定することを含む、押圧力制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像形成装置、押圧力制御方法および押圧力制御プログラムに関し、特に、記録媒体を加圧および加熱することによりトナーを記録媒体に定着させる画像形成装置、その画像形成装置で実行される押圧力制御方法およびその押圧力制御方法を画像形成装置を制御するコンピューターに実行させる押圧力制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置は、トナーで構成される画像が形成された用紙を加圧および加熱することにより用紙にトナーを定着させる定着装置が設けられている。例えば、特開2014-178633号公報には、可撓性を有する無端状の定着部材と、前記定着部材を加熱する加熱源と、前記定着部材とニップを形成する加圧部材と、前記定着部材の内部で前記加圧部材と対向しニップを形成するニップ形成部材と、前記ニップ形成部材を支持する支持部材と、前記定着部材の軸方向の両端部を保持する一対の保持部材と、前記加圧部材を回転させる回転駆動手段と、前記回転駆動手段によって前記加圧部材を回転させるトルクを計測するトルク計測手段と、を備え、前記トルク計測手段により計測して得たトルク情報から前記回転駆動手段の回転数を制御することを特徴とする定着装置が記載されている。
【0003】
特開2014-178633号公報に記載の定着装置は、定着部材と加圧部材との間の摩擦の状態が静止摩擦から動摩擦に移り空転しているような状態で急激にトルクが低下する現象を検出し、空転を防止するために回転数を制御するものである。
【0004】
しかしながら、定着部材と加圧部材とが滑ると、定着部材および加圧部材に接触する用紙が滑るため、用紙に形成されたトナーが擦れて画質が低下するといった問題がある。このため、定着部材と加圧部材とが滑らないようにするのが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-178633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の目的の1つは、記録媒体が滑ることにより画質が低下するのを防止した画像形成装置を提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、記録媒体が滑ることにより画質が低下するのを防止した押圧力制御方法を提供することである。
【0008】
この発明のさらに他の目的は、記録媒体が滑ることにより画質が低下するのを防止した押圧力制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のある局面によれば、画像形成装置は、加圧ローラーと、加圧ローラーを回転駆動する駆動部と、加圧ローラーに対向して設けられ、加圧ローラーとの間でニップ部を形成する加熱部と、加圧ローラーと加熱部との一方を他方に向けて押圧する押圧力を調整する押圧力調整部と、ニップ部を通過する記録媒体のサイズに基づいて押圧力を決定する決定手段と、加熱部が回転する負荷を検出する負荷検出手段と、を備え、加熱部は、加圧ローラーに対向する位置に配置された押圧部材と、押圧部材と加圧ローラーとの間を通り、ニップ部の少なくとも一部で加圧ローラーと直接接触し、加圧ローラーの回転に伴って押圧部材に対して摺動する無端の定着ベルトと、を含み、決定手段は、負荷が所定の閾値以上の場合に、記録媒体のサイズが大きいほど押圧力を大きな値に決定する。
【0010】
この局面に従えば、ニップ部を通過する記録媒体のサイズに基づいて決定された押圧力で、加圧ローラーと加熱部との一方が他方に向けて押圧される。このため、記録媒体のサイズの違いにより、加圧ローラーと加熱部との間の摩擦力の変動を少なくすることができる。また、加圧ローラーと加熱部との間の摩擦力を加熱部が回転する負荷よりも大きくすることができる。その結果、記録媒体が滑ることにより画質が低下するのを防止した画像形成装置を提供することができる。
【0011】
好ましくは、記録媒体のサイズは、ニップ部を通過する記録媒体の加圧ローラーの回転軸と平行な方向の長さである。
【0012】
この局面に従えば、加圧ローラーと加熱部とが直接接触する面積に対応して押圧力を決定することができる。
【0015】
好ましくは、所定の閾値は、記録媒体のサイズに対して定められる。
【0016】
この局面に従えば、記録媒体のサイズに対して定められる閾値を用いて押圧力が決定される。このため、加圧ローラーと加熱部とが直接接触する面積が変動する場合に、加圧ローラーと加熱部との間の摩擦力を加熱部が回転する負荷よりも大きくすることができる。
【0017】
好ましくは、負荷検出手段は、駆動部が加圧ローラーを回転駆動するためのトルクを検出する。
【0018】
この局面に従えば、加圧ローラーを回転駆動するためのトルクから加熱部が回転する負荷が求められるので、加熱部が回転する負荷が変動する場合に変動後の負荷を検出できる。
【0019】
好ましくは、加圧ローラーを回転駆動する駆動部を、さらに備え、負荷検出手段は、駆動部が加圧ローラーを回転駆動する累積回数を検出する。
【0020】
この局面に従えば、加圧ローラーが回転駆動する累積回数から加熱部が回転する負荷が求められるので、消耗により加熱部が回転する負荷の変動する場合であっても加熱部が回転する負荷を検出できる。
【0021】
好ましくは、装置の環境を示す環境情報を取得する環境情報取得手段をさらに備え、決定手段は、環境情報にさらに基づいて閾値を変更する。
【0022】
この局面に従えば、装置の環境の変化に対応して、押圧力を決定することができる。例えば、絶対湿度が高いほど記録媒体と加圧ローラーまたは加熱部との間の摩擦力が低下するので、この摩擦力の低下に応じた押圧力を決定することができる。
【0023】
好ましくは、押圧力調整部は、ニップ部を記録媒体が通過する間に加圧ローラーを押圧する。
【0024】
この局面に従えば、ニップ部を記録媒体が通過する間に加圧ローラーが加熱部に押圧されるので、加圧ローラーの形状の変形を記録媒体が通過する間に制限することができる。
【0025】
好ましくは、押圧力に応じて加熱部の発熱量を調整する発熱量調整手段をさらに備える。
【0026】
この局面に従えば、押圧力が大きいほど発熱量を少なくできるので、消費電力を低減できる。
【0029】
この発明の他の局面によれば、押圧力制御方法は、画像形成装置で実行される押圧力制御方法であって、画像形成装置は、加圧ローラーと、加圧ローラーを回転駆動する駆動部と、加圧ローラーに対向して設けられ、加圧ローラーとの間でニップ部を形成する加熱部と、加圧ローラーと加熱部との一方を他方に向けて押圧する押圧力を調整する押圧力調整部と、を備え、加熱部は、前記加圧ローラーに対向する位置に配置された押圧部材と、押圧部材と加圧ローラーとの間を通り、ニップ部の少なくとも一部で加圧ローラーと直接接触し、加圧ローラーの回転に伴って押圧部材に対して摺動する無端の定着ベルトと、を含み、ニップ部を通過する記録媒体のサイズに基づいて押圧力を決定する決定ステップと、押圧力調整部を制御して決定された押圧力に調整させる押圧力制御ステップと、を含み、決定ステップは、加熱部が回転する負荷が所定の閾値以上の場合に、記録媒体のサイズが大きいほど押圧力を大きな値に決定することを含む。
【0030】
この局面に従えば、記録媒体が滑ることにより画質が低下するのを防止した押圧力制御方法を提供することができる。
【0031】
この発明の他の局面によれば、押圧力制御プログラムは、画像形成装置を制御するコンピューターで実行される押圧力制御プログラムであって、画像形成装置は、加圧ローラーと、加圧ローラーを回転駆動する駆動部と、加圧ローラーに対向して設けられ、加圧ローラーとの間でニップ部を形成する加熱部と、加圧ローラーと加熱部との一方を他方に向けて押圧する押圧力を調整する押圧力調整部と、を備え、加熱部は、加圧ローラーに対向する位置に配置された押圧部材と、押圧部材と加圧ローラーとの間を通り、ニップ部の少なくとも一部で加圧ローラーと直接接触し、加圧ローラーの回転に伴って押圧部材に対して摺動する無端の定着ベルトと、を含み、ニップ部を通過する記録媒体のサイズに基づいて押圧力を決定する決定ステップと、押圧力調整部を制御して、決定された押圧力に調整させる押圧力制御ステップと、をコンピューターに実行させ、決定ステップは、加熱部が回転する負荷が所定の閾値以上の場合に、記録媒体のサイズが大きいほど押圧力を大きな値に決定することを含む。
【0032】
この局面に従えば、記録媒体が滑ることにより画質が低下するのを防止した押圧力制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施の形態の1つにおけるプリンターの外観を示す第1の斜視図である。
図2】プリンターのハードウエア構成の一例を示すブロック図である。
図3】プリンターの内部構成の一例を模式的に示す断面図である。
図4】定着装置の断面図である。
図5】定着ベルトと加圧ローラーとが接触する面積の変化を説明するための第1の図である。
図6】定着ベルトと加圧ローラーとが接触する面積の変化を説明するための第2の図である。
図7】押圧力調整機構を示す第1の図である。
図8】押圧力調整機構を示す第2の図である。
図9】累積駆動回数と定着ベルトの負荷との関係の一例を示す図である。
図10】加圧ローラーを回転させるトルクと押圧力との関係の一例を示す図である。
図11】本実施の形態におけるプリンターが備えるCPUが有する機能の一例を示すブロック図である。
図12】押圧力制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下の説明では同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0035】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおけるプリンターの外観を示す第1の斜視図である。図2は、プリンターのハードウエア構成の一例を示すブロック図である。図1および図2を参照して、プリンター100は、画像形成装置の一例であり、メイン回路110と、画像データに基づいて用紙等に画像を形成するための画像形成部140と、画像形成部140に用紙を供給するための給紙部150と、ユーザーインターフェースとしての操作パネル160とを含む。
【0036】
メイン回路110は、プリンター100の全体を制御するCPU(中央演算処理装置)111と、通信インターフェース(I/F)部112と、ROM(Read Only Memory)113と、RAM(Random Access Memory)114と、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)115と、外部記憶装置117と、を含む。CPU111は、画像形成部140、給紙部150および操作パネル160と接続され、プリンター100の全体を制御する。
【0037】
給紙部150は、給紙カセットに収納された用紙を画像形成部140に搬送する。画像形成部140は、CPU111により制御され、周知の電子写真方式により画像を形成するものであって、CPU111から入力される画像データに基づいて、給紙部150により搬送される用紙に画像を形成し、画像を形成した用紙を排紙トレイ39に排出する。CPU111が画像形成部140に出力する画像データは、外部のパーソナルコンピューター等から受信されるプリントデータ等の画像データを含む。
【0038】
ROM113は、CPU111が実行するプログラム、またはそのプログラムを実行するために必要なデータを記憶する。RAM114は、CPU111がプログラムを実行する際の作業領域として用いられる。
【0039】
操作パネル160は、プリンター100の上面に設けられる。操作パネル160は、表示部161と操作部163とを含む。表示部161は、例えば、液晶表示装置(LCD)であり、ユーザーに対する指示メニューや取得した画像データに関する情報等を表示する。なお、LCDに代えて、画像を表示する装置であれば、例えば、有機EL(electroluminescence)ディスプレイを用いることができる。
【0040】
操作部163は、タッチパネル165と、ハードキー部167とを含む。ハードキー部167は、複数のハードキーを含む。ハードキーは、例えば接点スイッチである。タッチパネル165は、表示部161の表示面中でユーザーにより指示された位置を検出する。
【0041】
通信I/F部112は、ネットワークにプリンター100を接続するためのインターフェースである。通信I/F部112は、TCP(Transmission Control Protocol)またはUDP(User Datagram Protocol)等の通信プロトコルで、ネットワークに接続された他のコンピューターと通信する。なお、通信I/F部112が接続されるネットワークは、ローカルエリアネットワーク(LAN)であり、接続形態は有線または無線を問わない。またネットワークは、LANに限らず、ワイドエリアネットワーク(WAN)、公衆交換電話網(PSTN)、インターネット等であってもよい。
【0042】
外部記憶装置117は、CPU111により制御され、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)118、または半導体メモリが装着される。本実施の形態においては、CPU111は、ROM113に記憶されたプログラムを実行する例を説明するが、CPU111は、外部記憶装置117を制御して、CD-ROM118からCPU111が実行するためのプログラムを読み出し、読み出したプログラムをRAM114に記憶し、実行するようにしてもよい。
【0043】
なお、CPU111が実行するためのプログラムを記憶する記録媒体としては、CD-ROM118に限られず、フレキシブルディスク、カセットテープ、光ディスク(MO(Magnetic Optical Disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc))、ICカード、光カード、マスクROM、EPROM(Erasable Programmable ROM)などの半導体メモリ等の媒体でもよい。さらに、CPU111がネットワークに接続されたコンピューターからプログラムをダウンロードしてHDD115に記憶する、または、ネットワークに接続されたコンピューターがプログラムをHDD115に書込みするようにして、HDD115に記憶されたプログラムをRAM114にロードしてCPU111で実行するようにしてもよい。ここでいうプログラムは、CPU111により直接実行可能なプログラムだけでなく、ソースプログラム、圧縮処理されたプログラム、暗号化されたプログラム等を含む。
【0044】
図3は、プリンターの内部構成の一例を模式的に示す断面図である。以下、説明のため、図3の左右の方向を左右方向といい、表裏の方向を奥行方向という。左右方向で左から右に向かう方向を右側面方向といい、右から左に向かう方向を左側面方向という。奥行方向の表から裏に向かう方向を正面方向といい、裏から表に向かう方向を背面方向という。
【0045】
プリンター100は、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックそれぞれの画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kを備える。ここで、“Y”、“M”、“C”および“K”は、それぞれイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックを表す。画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kの少なくとも1つが駆動されることにより、画像が形成される。画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kのすべてが駆動されると、フルカラーの画像が形成される。画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kには、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの印字用データがそれぞれ入力される。画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kは、取扱うトナーの色彩が異なるのみなので、ここでは、イエローの画像を形成するための画像形成ユニット20Yについて説明する。
【0046】
画像形成ユニット20Yは、イエローの印字用データが入力される露光装置21Yと、像担持体である感光体ドラム23Yと、感光体ドラム23Yの表面を一様に帯電するための帯電ローラー22Yと、現像器24Yと、感光体ドラム23Y上に形成されたトナー像を電界力の作用で像担持体である中間転写ベルト30上に転写するための1次転写ローラー25Yと、感光体ドラム23Y上の転写残トナーを除去するためのドラム清掃ブレード27Yと、トナーボトル41Yと、トナーホッパー42Yと、を備える。
【0047】
トナーボトル41Yは、イエローのトナーを収容する。トナーボトル41Yは、トナーボトルモーターを駆動源として回転し、トナーを外部に排出する。トナーボトル41Yから排出されたトナーは、トナーホッパー42Yに供給される。トナーホッパー42Yは、現像器24Yに収容されたトナーの残量が予め定められた下限値以下になることに応じて現像器24Yにトナーを供給する。
【0048】
感光体ドラム23Yの周辺に、帯電ローラー22Y、露光装置21Y、現像器24Y、1次転写ローラー25Y、ドラム清掃ブレード27Yが、感光体ドラム23Yの回転方向に沿って順に配置される。
【0049】
感光体ドラム23Yは、帯電ローラー22Yによって帯電された後、露光装置21Yが発光するレーザー光が照射される。露光装置21Yは、感光体ドラム23Yの表面の画像対応部を露光して静電潜像を形成する。これにより、感光体ドラム23Yに静電潜像が形成される。続いて、現像器24Yが、感光体ドラム23Yに形成された静電潜像を帯電したトナーで現像する。具体的には、感光体ドラム23Yに形成された静電潜像上に電界力の作用でトナーが載せられることにより、トナー像が感光体ドラム23Yに形成される。感光体ドラム23Y上に形成されたトナー像は、像担持体である中間転写ベルト30上に1次転写ローラー25Yにより電界力の作用で転写される。感光体ドラム23Y上で転写されずに残ったトナーは、ドラム清掃ブレード27Yにより感光体ドラム23Yから除去される。
【0050】
一方、中間転写ベルト30は、駆動ローラー33と従動ローラー34とにより弛まないように懸架されている。駆動ローラー33が図2中で反時計回りに回転すると、中間転写ベルト30が所定の速度で図中反時計回りに回転する。中間転写ベルト30の回転に伴って、従動ローラー34が、反時計回りに回転する。
【0051】
これにより、画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kが、順に中間転写ベルト30上にトナー像を転写する。画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kそれぞれが、中間転写ベルト30上にトナー像を転写するタイミングは、中間転写ベルト30に付された基準マークを検出することにより、調整される。これにより、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックのトナー像が中間転写ベルト30上に重畳される。
【0052】
中間転写ベルト30に形成されたトナー像は、転写部材である2次転写ローラー26によって電界力の作用で用紙に転写される。タイミングローラー31により搬送される用紙は、中間転写ベルト30と2次転写ローラー26とが接するニップ部に搬送される。トナー像が転写された用紙は、定着装置50に搬送され、加熱および加圧される。これにより、トナーが溶かされて用紙に定着する。その後、用紙は排紙トレイ39に排出される。
【0053】
中間転写ベルト30の画像形成ユニット20Yの上流に、ベルト清掃ブレード28が設けられている。ベルト清掃ブレード28は、中間転写ベルト30上で用紙に転写されずに残ったトナーを除去する。
【0054】
プリンター100は、フルカラーの画像を形成する場合、画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kのすべてを駆動するが、モノクロの画像を形成する場合、画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kのいずれか1つを駆動する。また、画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kの2以上を組み合わせて画像を形成することもできる。なお、ここでは、プリンター100は、用紙に4色のトナーそれぞれを形成する画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kを備えたタンデム方式を採用する例について説明するが、1つの感光体ドラムで4色のトナーを順に用紙に転写する4サイクル方式を採用してもよい。
【0055】
給紙カセット35には、複数枚の用紙がセットされている。給紙カセット35に収容された用紙は、給紙カセット35に取付けられている取出ローラー36により、1枚ずつ順に搬送経路へ供給され、給紙ローラー37によりタイミングローラー31へ送られる。また、手差カセット35Aに、1枚以上の用紙がセットされる場合、手差カセット35Aにセットされた1枚以上の用紙は、手差カセット35Aに取付けられている取出ローラー36Aにより、1枚ずつ順に搬送経路へ供給され、給紙ローラー37によりタイミングローラー31へ送られる。
【0056】
用紙の搬送経路は、画像形成経路45、第1搬送経路46、第2搬送経路47および表裏反転経路48を含む。画像形成経路45は、タイミングローラー31から経路切換ゲート49までの経路であり、タイミングローラー31から順に、2次転写ローラー26、および定着装置50が配置される。タイミングローラー31は、給紙カセット35または手差カセット35Aから搬送される用紙を画像形成経路45に送り出す。タイミングローラー31は、中間転写ベルト30に形成されたトナー像が2次転写ローラー26に到達するタイミングで用紙が2次転写ローラー26に到達するように、用紙の搬送を開始する。タイミングローラー31により搬送される用紙は、2次転写ローラー26により中間転写ベルト30に押し当てられ、中間転写ベルト30上に重畳して形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像が用紙に転写される。
【0057】
2次転写ローラー26から搬送される用紙は、定着装置50に搬送される。定着装置50は、用紙を加熱するとともに加圧する。これにより、用紙にトナーが定着される。その後、用紙は経路切換ゲート49により第1搬送経路46および第2搬送経路47のいずれかに搬送される。
【0058】
第1搬送経路46は、経路切換ゲート49から排紙ローラー43までの経路である。第1搬送経路46に搬送される用紙は、排紙ローラー43によって排紙トレイ39に排紙される。
【0059】
第2搬送経路47は、経路切換ゲート49から反転ローラー44までの経路である。第2搬送経路47は、経路切換ゲート49において、画像形成経路45と表裏反転経路48と繋がる。経路切換ゲート49から第2搬送経路47に進入する用紙は、反転ローラー44まで搬送される。反転ローラー44は、待機動作と、反転動作と、排紙動作と、の3つの動作をする。反転ローラー44は、待機動作をする場合、正回転して、タイミングローラー31が駆動してから所定の時間経過後に停止する。これにより、反転ローラー44は、経路切換ゲート49から進入する用紙を、その後端が経路切換ゲート49を通過した状態で保持する。反転ローラー44は、待機動作後に反転動作をする。反転ローラー44は、反転動作をする場合、逆回転し、保持した用紙を経路切換ゲート49側に搬送する。これにより、用紙は、反転ローラー44により第2搬送経路47を搬送され、経路切換ゲート49により表裏反転経路48に導かれる。また、反転ローラー44は、排出動作をする場合、正回転して用紙を排紙トレイ39に排紙する。
【0060】
表裏反転経路48は、経路切換ゲート49と画像形成経路45中のタイミングローラー31とを結ぶ経路である。経路切換ゲート49から表裏反転経路48に進入する用紙は、搬送ローラー38によりタイミングローラー31まで搬送される。したがって、用紙が最初に画像形成経路45を通過する間に用紙の表面に画像が形成され、その用紙が表裏反転経路48を経由して再度画像形成経路45を通過する間に用紙の裏面に画像が形成される。裏面に画像が形成された用紙は、経路切換ゲート49により第1搬送経路46に導かれ、排紙トレイ39に排紙される。
【0061】
図4は、定着装置の断面図である。図4では、定着装置50を加圧ローラー59の回転軸を法線とする面で切断した断面を示している。図3を参照して、定着装置50は、加熱部51と、加圧ローラー59と、を含む。加熱部51は、加圧ローラー59に対向して設けられ、加圧ローラー59との間でニップ部Nを形成する。ニップ部Nは、加熱部51と加圧ローラー59とが接触する部分である。加圧ローラー59は、加熱部51に向かって所定の押圧力で加圧される。
【0062】
トナー像Toをその表面に担持する用紙Paが定着装置50の下方から上方に向かって搬送され、用紙Paがニップ部Nを通過する。用紙Paがニップ部Nを通過する間に用紙Paが加圧ローラー59と加熱部51とにより加熱および加圧され、トナー像Toが用紙Paに定着する。
【0063】
加圧ローラー59は、芯金、中間層、表層から構成されている。本実施の形態では、加圧ローラー59の外径は30mmである。芯金は、アルミまたは鉄製であり、芯金の厚さは、2~3mmである。中間層は、弾性層であり、シリコーンゴムやシリコーンスポンジなどの耐熱性および弾性を有する材料から形成される。中間層は、厚さ2~5mm程度が好ましい。表層は、フッ素チューブなどの離型性を有する材料から形成され、表層離型層の厚さは、20~80μm程度が好ましい。
【0064】
加熱部51は、加熱ローラー53と、加圧部55と、無端状の定着ベルト57と、サーミスター91と、を含む。定着ベルト57は、可撓性を有する無端状のベルトである。定着ベルト57は、加熱ローラー53と加圧部55とにより弛まないように懸架される。定着ベルト57は、基層と弾性層から構成されている。基層は、内径40mm、幅340mm、厚さ70μmのポリイミドフィルムで構成されている、弾性層は、シリコーンゴムを用い厚さ100~150μm程度が好ましい、また、表層には、厚さ30μm程度のフッ素コートからなる離型層を被覆して形成している。
【0065】
加熱ローラー53は、定着ベルト57の回転に従動して回転する。なお、加熱ローラー53を回転しないようにして、定着ベルト57が加熱ローラー53の表面を摺動するようにしてもよい。
【0066】
加圧部55は、定着パッド63と、グリス塗布部65と、を有する。定着パッド63は、ニップ部Nに対応する部分が加圧ローラー59の曲率に近似する形状を有する。このため、加圧ローラー59の弾性変形量を小さくしつつ、ニップ部Nの面積をできるだけ大きくすることができる。ニップ部Nの面積を大きくできるので、用紙を加圧および加熱する時間を長くすることができる。また、加圧ローラーの外径を所定の値以下にできるので、定着装置50を小型化することができる。また、加圧ローラー59の弾性変形量を小さくできるので、加圧ローラー59を加圧する押圧力を小さくすることができる。このため、加圧ローラー59の強度を所定の値以下にすることができるので、加圧ローラー59の肉厚を小さくして、熱容量を小さくすることができる。さらに、加圧ローラー59の熱容量を小さくできるので、電力の消費量が小さくなる。
【0067】
定着パッド63のニップ部N側には、定着パッド63の表面の摺動性を高めるために摺動シートが固定されている。摺動シートは、材料は耐熱性を有するガラスクロスにフッ素樹脂をコーティングしたものであり、耐熱性、耐摩耗性、摺動性を備えている。定着ベルト57は摺動シートと接触する。このため、定着ベルト57が摩擦により消耗する度合いをできるだけ小さくできる。
【0068】
グリス塗布部65は、グリスを蓄積しており、定着ベルト57と接触する部分で、定着ベルト57にグリスを塗布する。定着ベルト57がグリス塗布部65を通過する間に、定着ベルト57とグリス塗布部65との摩擦によって、定着ベルト57の内側の面にグリスが塗布される。これにより、定着ベルト57が定着パッド63から受ける摩擦抵抗が小さくなるので、定着ベルト57を加熱ローラー53と加圧部55の周りで回転させるために受ける負荷が小さくなる。
【0069】
加熱ローラー53は、中空円筒形状の部材であり、内部に熱源61を内蔵する。加熱ローラー53の内径は、熱源61が接触しないサイズに設定されている。加熱ローラー53はステンレス製である。加熱ローラー53をステンレス製とするので、強度があり、加工性も良い。この場合、加熱ローラー53の厚みは、0.1mm~0.2mm前後にできる。なお、加熱ローラー53をアルミニウム製としてもよい。この場合、ベンディングや局部的な変形に対する強度を確保するために、加熱ローラー53の厚みは0.25mm以上にすることが好ましい。また、加熱ローラー53を、STKM(機械構造用炭素鋼鋼管)等の鉄系金属製としてもよい。
【0070】
熱源61は、例えば、ハロゲンヒーターである。本実施の形態においては、熱源61として、発光長の異なる2本のハロゲンヒーターが用いられる。なお、熱源61はハロゲンヒーターに限定されず、抵抗発熱体またはIH(Induction Heating)が用いられてもよい。
【0071】
熱源61が発熱することにより、加熱ローラー53が加熱され、加熱ローラー53の温度が上昇する。サーミスター91によって、加熱ローラー53の温度が検出される。このサーミスター91が検出した温度に応じて、熱源61がオン/オフに制御され、加熱ローラー53が所定の温度になるように制御される。加熱ローラー53を薄肉化することで、加熱ローラー53の熱容量が小さくなる。このため、加熱ローラー53の昇温速度が速くなるので、加熱ローラー53が所定の温度に達するまでのウォームアップ時間を短くすることができる。また、熱源61の消費電力量を低減することができる。
【0072】
定着ベルト57は、加熱ローラー53と接触する間に加熱ローラー53から伝達される熱により所定の温度まで熱せられる。
【0073】
加圧ローラー59は、駆動モーター59Bにより回転される。加圧ローラー59の回転に伴って、定着ベルト57が従動回転する。定着ベルト57は回転される間に加熱ローラー53によって加熱される。定着ベルト57が所定の温度に加熱された後、トナー像Toを担持する用紙Paがニップ部Nに進入するように制御される。用紙Paがニップ部Nを通過する間に熱と圧力によってトナー像Toが用紙Paに定着される。
【0074】
なお、本実施の形態においては、定着ベルト57を加熱するために、加熱ローラー53の熱が伝導により伝達される例を示すが、加熱ローラー53から放射される輻射熱を利用して定着ベルト57を加熱してもよい。この場合、定着ベルト57と加熱ローラー53とは接触する必要がない。したがって、定着ベルト57は、加熱ローラー53と加圧部55とにより懸架される必要はない。具体的には、定着ベルト57は、加圧部55と加圧ローラー59との間で加圧され、加圧部55と加圧ローラー59とによって支持される。また、定着ベルト57は、加圧ローラー59の回転に伴って定着パッド63に対して摺動する。これにより、定着ベルト57が加圧部55および加熱ローラー53の周りを回転する。
【0075】
また、加熱ローラー53は、定着ベルト57の外側に配置されてもよい。この場合、定着ベルト57が加圧部55の周りを回転する。また、加熱ローラー53は、円柱形状である必要はなく、熱源として機能する誘導加熱装置やセラミックヒーターを用いることができる。
【0076】
定着ベルト57と加圧ローラー59との間の摩擦力は、定着ベルト57と加圧ローラー59とが接触する面積と、加圧ローラー59が定着ベルト57を押圧する押圧力と所定の関係を有する。面積が大きいほど摩擦力が大きくなり、押圧力が大きいほど摩擦力が大きくなる。定着ベルト57と加圧ローラー59とが接触する面積は、用紙がニップ部Nを通過する際に小さくなる。このため、本実施の形態における定着装置50は、用紙のサイズに応じて、加圧ローラー59が定着ベルト57を押圧する押圧力を調整する。具体的には、ニップ部Nを通過する用紙のサイズが異なる場合には、定着ベルト57と加圧ローラー59とが接触する面積は、用紙のサイズが大きくなるほど小さくなるので、用紙のサイズが大きいほど加圧ローラー59が定着ベルト57を押圧する押圧力を大きくする。
【0077】
図5は、定着ベルト57と加圧ローラー59とが接触する面積の変化を説明するための第1の図である。図6は、定着ベルト57と加圧ローラー59とが接触する面積の変化を説明するための第2の図である。以下、定着装置50を通過する用紙の加圧ローラー59の回転軸と平行な方向の長さを用紙のサイズという。用紙のサイズは、用紙種類と用紙方向とにより定まる。用紙種類は、A3,B4,A4などの用紙の種類を示す。用紙方向は、用紙が搬送される方向を示す。用紙が搬送される方向は、用紙が搬送される方向と用紙の長手方向とが平行な縦方向と、用紙が搬送される方向と用紙の短手方向とが平行な横方向と、を含む。以下、用紙のサイズを用紙種類と用紙方向との組み合わせで示す。例えば、用紙種類がA3で用紙方向が縦方向における用紙のサイズはA3縦で示され、用紙種類がB4で用紙方向が縦方向における用紙のサイズはB4縦で示され、用紙種類がA4で用紙方向が縦方向における用紙のサイズはA4縦で示される。用紙のサイズは、A3縦,B4縦,A4縦の順に大きい。
【0078】
図5においては、種類がA4の用紙Pa1を、用紙方向が縦方向で搬送される場合を例に示している。用紙Pa1の用紙のサイズはL2である。図6においては、種類がA3の用紙Pa2を、用紙方向が縦方向で搬送される場合を例に示している。用紙Pa2の用紙サイズはL4である。
【0079】
図5および図6を参照して、加圧ローラー59は、その回転軸が駆動モーター59Bと接続されており、駆動モーター59Bが駆動することにより回転する。加圧ローラー59が回転することにより、定着ベルト57が従動回転するとともに、ニップ部Nに送られた用紙pa1,Pa2が搬送される。定着ベルト57は、回転する間に加熱ローラー53から熱が供給され、定着ベルト57の円周面が一様に熱せられる。
【0080】
ここで、ニップ部Nのうち用紙Pa1,Pa2と接触する領域を通紙領域といい、用紙Pa1,Pa2と接触することなく、定着ベルト57と加圧ローラー59とが直接接触する領域を接触領域という。
【0081】
定着装置50において用紙Pa1が通過する場合の接触領域の長さの合計は2×L1であり、定着装置50において用紙Pa2が通過する場合の接触領域の長さの合計は2×L3である。L1>L2である。
【0082】
加圧ローラー59から定着ベルト57への回転力は、接触領域では加圧ローラー59から定着ベルト57に直接伝達され、通紙領域では用紙を介して伝達される。用紙Pa1,Pa2と定着ベルト57とが擦れると、用紙Pa1,Pa2に担持されたトナー像Toがこすれるので画質が低下する。このため、加圧ローラー59と定着ベルト57とが滑らないようにする必要がある。このため、定着装置50において用紙Pa1が通過する場合における接触領域は、用紙Pa2が通過する場合における接触領域よりも大きい。このため、定着装置50を通過する用紙のサイズが異なると、加圧ローラー59から定着ベルト57に伝達される回転力が異なる。具体的には、加圧ローラー59が加熱部51を押圧する押圧力が一定の場合、用紙が定着装置50を横切る方向の長さが大きいほど加圧ローラー59から定着ベルト57に伝達される回転力が小さくなる。
【0083】
本実施の形態におけるプリンター100は、加圧ローラー59が加熱部51を押圧する押圧力を調整する押圧力調整機構を備えている。
【0084】
図7および図8は、押圧力調整機構を示す図である。図7および図8を参照して、定着装置50は、加圧フレーム71と、レバー部材73と、荷重可変ギア75と、ばね77と、を含む。加圧部55は、その両端が本体フレームに固定的に支持されている。
【0085】
加圧フレーム71は、加圧フレーム回転軸71Aを中心に回転可能に軸支されている。加圧フレーム回転軸71Aは本体フレームに固定的に支持されている。加圧フレーム71は、加圧ローラー59の回転軸59Aを軸支する。このため、加圧ローラー59の回転軸59Aは、加圧フレーム回転軸71Aを中心に回転可能である。また、加圧フレーム71は、ばね77の一端と接続される第1接続部71Bを有する。
【0086】
レバー部材73は、レバー部材回転軸73Aを中心に回転可能に軸支されている。レバー部材回転軸73Aは本体フレームに固定的に支持されている。また、レバー部材73は、ばね77の他端と接続される第2接続部73Cを有する。ばね77は、第1接続部71Bと第2接続部73Cとの間の距離を短くする方向に付勢する。このため、加圧フレーム71は、加圧フレーム回転軸71Aを中心に反時計回りの方向にばね77により付勢され、レバー部材73は、レバー部材回転軸73Aを中心に時計回りの方向にばね77により付勢される。したがって、加圧ローラー59が加熱部51に向かう方向に押圧される。
【0087】
荷重可変ギア75は、本体フレームに軸支されたギア回転軸75Aと、ギア回転軸75Aと平行な調整棒75Bを有する。荷重可変ギア75は、駆動モーターにより回転し、ギア回転軸75Aを中心に回転する。
【0088】
レバー部材73は、荷重可変ギア75の調整棒75Bが貫通する調整穴73Bが形成されている。荷重可変ギア75が時計回りに回転すると、調整棒75Bが調整穴73Bの側面に当接し、その後摺動する。これにより、レバー部材73がレバー部材回転軸73Aを中心に回転する。これにより、ばね77の他端を引っ張るので、ばね77の付勢力が増加する。このため、加圧ローラー59を加熱部51に向かう方向に押圧する押圧力が増加する。
【0089】
また、定着ベルト57を加熱ローラー53と加圧部55との周りを回転させる際に所定の負荷が発生する。特に、定着装置50の使用回数が増加するにつれて負荷が増加する。例えば、定着ベルト57の内面に摩耗紛が徐々に蓄積されるなどして、摺動負荷が増加する。
【0090】
図9は、累積駆動回数と定着ベルトの負荷との関係の一例を示す図である。累積駆動回数は、プリンター100が設定されてから定着装置50を用紙が通過した回数の累積値である。定着ベルトの負荷は、定着ベルト57を回転させる際に発生する負荷である。図9を参照して、累積駆動回数と、定着ベルトの負荷とは比例し、累積駆動回数が大きくなるほど定着ベルトの負荷が大きくなる。
【0091】
また、上述の通り加圧ローラー59が加熱部51を押圧する押圧力が一定の場合、用紙が定着装置50を横切る方向の長さが大きいほど加圧ローラー59から定着ベルト57に伝達される回転力が小さくなる。図9においては、用紙のサイズ別に、加圧ローラー59と定着ベルト57とが滑りだす定着ベルトの負荷と累積駆動回数とが示される。加圧ローラー59が加熱部51を押圧する押圧力が一定の場合、用紙のサイズがA3縦,B4縦,A4縦の順に、加圧ローラー59と定着ベルト57とが滑りだす場合の定着ベルトの負荷と累積駆動回数とが小さいことが示される。
【0092】
図10は、加圧ローラー59を回転させるトルクと押圧力との関係の一例を示す図である。押圧力は、加圧ローラー59が加熱部51を押圧する力である。図10においては、用紙のサイズ別に、加圧ローラー59を回転させるトルクに対して定められる押圧力の一例を示す。
【0093】
図10に示される、加圧ローラー59を回転させるトルクと押圧力との関係は、加圧ローラー59と定着ベルト57とが滑らない状態を維持するのに十分な関係を示す。なお、T1<T2<T3<T4であり、W1<W2<W3<W4である。
【0094】
具体的には、用紙のサイズがA4縦より小さいサイズの場合は、トルクに関わらず押圧力W1が定められる。用紙のサイズがA4縦の場合は、トルクがT3までは押圧力W1が定められ、トルクがT3以上では押圧力W2が定められる。用紙のサイズがB4縦の場合は、トルクがT2までは押圧力W1が定められ、トルクがT2以上T3までは押圧力W2が定められ、トルクがT3以上では押圧力W3が定められる。用紙のサイズがA3縦の場合は、トルクがT1までは押圧力W1が定められ、トルクがT1以上T2までは押圧力W2が定められ、トルクがT2以上T3までは押圧力W3が定められ、トルクがT3以上では押圧力W4が定められる。
【0095】
図11は、本実施の形態におけるプリンターが備えるCPUが有する機能の一例を示すブロック図である。図11に示す機能は、プリンター100が備えるCPU111がROM113、HDD115またはCD-ROM118に記憶された押圧力制御プログラムを実行することによりCPU111により実現される機能である。図11を参照して、プリンター100が備えるCPU111は、定着装置50を制御する定着装置制御部201と、押圧力を決定する決定部203と、プリンター100に設置されるセンサーを制御するセンサー制御部207と、給紙部150を制御する搬送制御部205と、を含む。
【0096】
定着装置制御部201は、駆動制御部211と、押圧力制御部213と、熱量制御部215と、を含む。決定部203は、負荷検出部221と、環境情報取得部223と、サイズ検出部225と、閾値決定部227と、閾値変更部229と、比較部231と、押圧力決定部233と、を含む。
【0097】
駆動制御部211は、駆動モーター59Bを制御し、駆動モーター59Bを駆動する。具体的には、駆動制御部211は、加圧ローラー59の回転速度が一定となるように駆動モーター59Bを駆動する。本実施の形態においては、駆動制御部211は、駆動モーター59Bを電流制御する。駆動制御部211は、駆動モーター59Bに流れる電流の値を負荷検出部221に出力する。
【0098】
負荷検出部221は、加圧ローラー59を回転させる駆動モーター59Bに流れる電流に基づいて定着ベルト57の負荷を検出する。定着ベルト57の負荷は、一定速度で回転する定着ベルト57の負荷である。定着ベルト57と加圧ローラー59とが滑らない場合、定着ベルト57の負荷は、加圧ローラー59を一定速度で回転させるためのトルクと同じとみなせる。負荷検出部221は、加圧ローラー59を一定速度で回転させるためのトルクを定着ベルト57の負荷として決定する。駆動モーター59Bに流れる電流の値は、加圧ローラー59を一定速度で回転させるためのトルクと処理の関係を有する。負荷検出部221は、予め実験などで求めた電流値とトルクとの関係を用いて、駆動制御部211から入力される電流値から加圧ローラー59を一定速度で回転させるためのトルクを検出する。負荷検出部221は、加圧ローラー59を一定速度で回転させるためのトルクを比較部231に出力する。
【0099】
センサー制御部207は、給紙カセット35の内部に設置された温度センサーおよび湿度センサーを制御し、温度センサーおよび湿度センサーの出力を環境情報取得部223に出力する。なお、温度センサーおよび湿度センサーは、給紙カセット35の外部に設定されてもよい。
【0100】
環境情報取得部223は、プリンター100の環境を示す環境情報を取得し、環境情報を閾値変更部229に出力する。環境情報は、温度と湿度である。環境情報取得部223は、センサー制御部207から入力される温度センサーの出力と湿度センサーの出力とを、環境情報として閾値変更部229に出力する。
【0101】
搬送制御部205は、給紙部150を制御し、給紙カセット35に収容された用紙を搬送する。搬送制御部205は、搬送される用紙に関する情報をサイズ検出部225に出力する。用紙に関する情報は、用紙種類と、用紙方向とを含む。用紙種類は、A3,B4,A4などの用紙の種類を示す。用紙方向は、用紙が搬送される方向を示す。用紙が搬送される方向は、用紙が搬送される方向と用紙の長手方向とが平行な縦方向と、用紙が搬送される方向と用紙の短手方向とが平行な横方向と、を含む。
【0102】
サイズ検出部225は、用紙のサイズを検出する。用紙のサイズは、定着装置50を横切る用紙の加圧ローラー59の回転軸と平行な方向の長さである。サイズ検出部225は、搬送制御部205から入力される用紙種類および用紙方向に基づいて用紙のサイズを決定する。サイズ検出部225は、用紙のサイズを閾値決定部227に出力する。
【0103】
閾値決定部227は、用紙のサイズに基づいて、閾値を決定する。閾値決定部227は、図10に示した加圧ローラー59を回転させるトルクと押圧力との関係を用いて、閾値を決定する。具体的には、用紙のサイズがA4縦の場合は、押圧力W2に対する閾値としてトルクT3が定められる。用紙のサイズがB4の場合は、押圧力W2に対する閾値としてトルクT2が定められ、押圧力W3に対する閾値としてトルクT3が定められる。用紙のサイズがA3の場合は、押圧力W2に対する閾値としてトルクT1が定められ、押圧力W3に対する閾値としてトルクT2が定められ、押圧力W4に対する閾値としてトルクT3が定められる。用紙のサイズがA4縦より小さい場合は、閾値は定められない。閾値決定部227は、決定された閾値を閾値変更部229に出力する。
【0104】
閾値変更部229は、閾値決定部227から閾値が入力され、環境情報取得部223から環境情報が入力される。環境情報は、温度と湿度である。定着装置50を横切る用紙において、用紙がニップ部Nを通過する際に、ニップ部Nで用紙内の水分が表面に出て、加圧ローラー59との間の摩擦力、定着ベルト57との間の摩擦力が低下することが経験上知られている。このため、閾値変更部229は、用紙が含有する水分の量に基づいて閾値を変更する。
【0105】
具体的には、閾値変更部229は、温度と湿度から絶対湿度を決定し、絶対湿度と給紙カセット35に用紙が収容される時間とから水分量を予測する。閾値変更部229は、給紙カセット35の開閉を検出するセンサー出力に基づいて、給紙カセット35が閉じられてからの経過時間を、用紙が収容される時間に決定する。閾値決定部227において決定される閾値は、基準となる水分量に対して定められた値である。閾値変更部229は、決定された水分量と基準となる水分量との比率に基づいて、閾値を変更する。閾値変更部229は、決定された水分量が基準となる水分量よりも大きい場合は閾値をより大きな値に変更し、決定された水分量が基準となる水分量よりも小さい場合は閾値をより小さな値に変更する。水分量と閾値との関係を実験などで求めておき、その関係に基づいて閾値を変更する。水分量と閾値との関係は、テーブルで定められてもよいし、演算式で定められてもよい。
【0106】
なお、用紙が含有する水分の量をセンサーで検出することができる。例えば、用紙の搬送経路で定着装置50よりも上流の位置に、水分量検知用のローラーが配置される場合、水分検知用のローラーに流れる電流を検出することにより、用紙が含有する水分の量を測定することができる。この場合には、温度センサーおよび湿度センサーに代えて、水分検知用のローラーに流れる電流を検知するセンサーが設けられてもよい。
【0107】
比較部231は、負荷検出部221から加圧ローラー59のトルクが入力され、閾値変更部229から閾値が入力される。比較部231は、加圧ローラー59のトルクと閾値とを比較し、比較結果を押圧力決定部233に出力する。
【0108】
押圧力決定部233は、比較結果に基づいて押圧力を決定する。押圧力決定部233は、決定された押圧力を押圧力制御部213および熱量制御部215に出力する。具体的には、押圧力決定部233は、用紙のサイズがA4縦の場合は、比較結果が加圧ローラー59のトルクが押圧力W2に対する閾値T3より小さい場合は押圧力W1に決定し、加圧ローラー59のトルクが閾値T3以上の場合は押圧力W2に決定する。押圧力決定部233は、用紙のサイズがB4縦の場合は、比較結果が加圧ローラー59のトルクが押圧力W2に対する閾値T2より小さい場合は押圧力W1に決定し、加圧ローラー59のトルクが閾値T2以上かつ押圧力W3に対する閾値T3より小さい場合は押圧力W2に決定し、加圧ローラー59のトルクが閾値T3以上の場合は押圧力W3に決定する。押圧力決定部233は、用紙のサイズがA3縦の場合は、比較結果が加圧ローラー59のトルクが押圧力W2に対する閾値T1より小さい場合は押圧力W1に決定し、加圧ローラー59のトルクが閾値T1以上かつ押圧力W3に対する閾値T2より小さい場合は押圧力W2に決定し、加圧ローラー59のトルクが閾値T2以上かつ押圧力W4に対する閾値T3より小さい場合は押圧力W3に決定し、加圧ローラー59のトルクが閾値T3以上の場合は押圧力W4に決定する。
【0109】
押圧力制御部213は、押圧力調整機構を制御し、押圧力を調整する。具体的には、加圧ローラー59が定着ベルト57を押圧する押圧力が、押圧力決定部233から入力される押圧力と同じ値になるように、荷重可変ギア75を回転させる。
【0110】
熱量制御部215は、熱源61を制御し、加熱ローラー53の温度を調整する。押圧力が大きいほどニップ部Nでトナーを用紙の繊維内に定着させる性能が向上する。このため、押圧力が大きいほど定着ベルト57の温度を低くすることができる。熱量制御部215は、押圧力に対して加熱ローラー53の温度が予め定められた温度となるように熱源61を制御する。例えば、押圧力が50N高くなるごとに、加熱ローラー53の温度を3℃低下させる。これにより、熱源61で消費される電力を低くすることができる。
【0111】
押圧力を大きくするとともに定着ベルト57の温度を下げることにより、用紙がニップ部Nで加熱される間に用紙の内部から排出される水分の量を抑制することができ、ニップ部Nにおいて用紙と定着ベルト57または加圧ローラー59との間の摩擦力が低下するのを抑制できる。このため、用紙が定着ベルト57または加圧ローラー59のいずれに対しても滑らないようにでき、用紙を搬送する性能が低下しないようにできる。
【0112】
図12は、押圧力制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。押圧力制御処理は、プリンター100が備えるCPU111がROM113、HDD115またはCD-ROM118に記憶された押圧力制御プログラムを実行することによりCPU111により実行される処理である。図12を参照して、プリンター100が備えるCPU111は、定着装置50の駆動を開始する(ステップS01)。これにより、駆動モーター59Bが駆動し、熱源61により加熱される。駆動モーター59Bの駆動にともない、加圧ローラー59が回転する。さらに、加圧ローラー59の回転に伴い定着ベルト57が回転する。次のステップS02においては、加圧ローラー59のトルクが検出される。駆動モーター59Bに流れる電流から加圧ローラー59のトルクが検出される。そして、定着ベルト57の負荷が決定され(ステップS03)、処理はステップS04に進む。加圧ローラー59のトルクと定着ベルト57の負荷とは所定の関係がある。ここでは、加圧ローラーのトルクが定着ベルト57の負荷に決定される。
【0113】
ステップS04においては、絶対湿度が検出され、処理はステップS05に進む。温度センサーおよび湿度センサーにより検出された温度と湿度とから絶対湿度が検出される。ステップS05においては、用紙のサイズが取得され、処理はステップS06に進む。画像形成の対象となる用紙のサイズが決定される。用紙のサイズは、定着装置50を通過する用紙の加圧ローラー59の回転軸と平行な方向の長さである。用紙のサイズは、用紙種類と用紙方向により定まる。
【0114】
ステップS06においては、閾値が決定され、処理はステップS07に進む。用紙の際に対応する閾値が決定される。図10に示した加圧ローラー59を回転させるトルクと押圧力との関係を用いて、閾値が決定される。具体的には、用紙のサイズがA4縦の場合は、押圧力W2に対する閾値としてトルクT3が定められる。用紙のサイズがB4の場合は、押圧力W2に対する閾値としてトルクT2が定められ、押圧力W3に対する閾値としてトルクT3が定められる。用紙のサイズがA3の場合は、押圧力W2に対する閾値としてトルクT1が定められ、押圧力W3に対する閾値としてトルクT2が定められ、押圧力W4に対する閾値としてトルクT3が定められる。用紙のサイズがA4縦より小さい場合は、閾値は定められない。
【0115】
次のステップS07においては、絶対湿度に基づき閾値が変更され、処理はステップS08に進む。ステップS04において検出された絶対湿度が、基準となる絶対湿度より大きいほど閾値がより小さい値に変更され、基準となる絶対湿度より小さいほど閾値がより大きな値に変更される。これにより、用紙がニップ部Nを通過する際に用紙が含有する水分が表面に出ることにより用紙と定着ベルト57または加圧ローラー59との間の摩擦力が低下する場合であっても、用紙が定着ベルト57または加圧ローラー59と滑らないようにできる。
【0116】
ステップS08においては、定着ベルト57の負荷が閾値と比較される。ステップS03において決定された定着ベルト57の負荷が閾値以上ならば処理はステップS09に進むが、そうでなければ処理はステップS10に進む。ステップS09においては、定着ベルト57の負荷に対応する押圧力が決定され、処理はステップS11に進む。具体的には、ステップS05において決定された用紙のサイズがA4縦の場合は、ステップS06において押圧力W2に対する閾値T3が決定されている。定着ベルト57の負荷、換言すれば、加圧ローラー59の負荷が閾値T3以上の場合、処理はステップS09に進むが、そうでなければ処理はステップS10に進む。ステップS09においては、加圧ローラー59の負荷に対する押圧力W2が決定される。ステップS10においては、押圧力が基準値に決定される。基準値は押圧力W1である。
【0117】
ステップS05において決定された用紙のサイズがB4縦の場合は、ステップS06において押圧力W2に対する閾値T2と押圧力W3に対する閾値T3が決定されている。定着ベルト57の負荷、換言すれば、加圧ローラー59の負荷が閾値T2以上の場合、処理はステップS09に進むが、そうでなければ処理はステップS10に進む。ステップS09においては、加圧ローラー59の負荷が閾値T3より小さい場合に押圧力W2が決定され、加圧ローラー59の負荷が閾値T3以上の場合に押圧力W3が決定される。ステップS10においては、押圧力が基準値に決定される。基準値は押圧力W1である。
【0118】
ステップS05において決定された用紙のサイズがA3縦の場合は、ステップS06において押圧力W2に対する閾値T1と、押圧力W3に対する閾値T2と、押圧力W4に対する閾値T3と、が決定されている。定着ベルト57の負荷、換言すれば、加圧ローラー59の負荷が閾値T1以上の場合、処理はステップS09に進むが、そうでなければ処理はステップS10に進む。ステップS09においては、加圧ローラー59の負荷が閾値T2より小さい場合に押圧力W2が決定され、加圧ローラー59の負荷が閾値T2以上かつT3より小さい場合に押圧力W3が決定され、加圧ローラー59の負荷が閾値T3以上の場合に押圧力W4が決定される。ステップS10においては、押圧力が基準値に決定される。基準値は押圧力W1である。
【0119】
ステップS09またはステップS10において押圧力が決定されると、処理はステップS11に進む。ステップS11においては、押圧力に調整され、処理はステップS12に進む。加圧ローラー59が定着ベルト57を押圧する押圧力が、ステップS09またはステップS10で決定された押圧力と同じ値になるように、荷重可変ギア75が回転される。
【0120】
ステップS12においては、ステップS09またはステップS10において決定された押圧力から加熱温度が決定される。加熱温度は、加熱ローラー53の温度である。押圧力が大きいほど加熱温度が低い値に決定される。次のステップS13においては、加熱ローラー53の温度が調整され、処理はステップS14に進む。加熱ローラー53の温度がステップS12において決定された加熱温度になるように熱源61が制御される。
【0121】
ステップS14においては、用紙が定着装置50を通過したか否かが判断される。用紙が定着装置50を通過したならば処理はステップS15に進むが、そうでなければ処理はステップS13に戻る。ステップS15においては、次に処理対象なるべき用紙が存在するか否かが判断される。処理対象になるべき用紙が存在するならば処理はステップS03に戻るが、そうでなければ処理は終了する。
【0122】
<第1の変形例>
押圧力は、用紙のサイズのみから決定されてもよい。例えば、用紙のサイズがA4縦より小さい場合に押圧力W1にし、用紙のサイズがA4縦の場合に押圧力W2にし、用紙のサイズがB4縦の場合に押圧力W3にし、用紙のサイズがA3縦の場合に押圧力W4にする。
【0123】
<第2の変形例>
絶対湿度に基づいて閾値が変更されないようにしてもよい。この場合、図11のブロック図において、センサー制御部207、環境情報取得部223、閾値変更部229は、不要である。比較部231においては、閾値決定部227において決定された閾値と負荷検出部221において検出された定着ベルト57の負荷とが比較される。
【0124】
なお、本実施の形態においては、加圧ローラー59を加熱部51に向かう方向に押圧する押圧力が段階的に調整される例が示されたが、押圧力が線形的に変化するようにしてもよい。この場合、押圧力調整機構は、定着装置50を通過する用紙のサイズが異なる場合であっても加圧ローラー59から定着ベルト57に伝達される回転力を同じにできる。
【0125】
また、本実施の形態においては、加圧ローラー59が加熱部51に押圧されるが、加熱部51が加圧ローラー59に押圧されてもよい。
【0126】
また、本実施の形態においては、定着ベルト57の負荷が加圧ローラー59のトルクから求められるが、定着ベルト57の負荷が定着装置50の駆動回数または回転距離から求められてもよい。図9に示したように、定着ベルト57の負荷は定着装置50の駆動回数に比例する。このため、実験などにより、定着ベルト57の負荷と定着装置50の駆動回数との関係を求めておくことで、定着ベルト57の負荷を定着装置50の駆動回数から求めることができる。定着装置50の駆動回数は、加圧ローラー59の回転数の累積値を用いてもよいし、定着ベルト57の回転数の累積値を用いてもよい。また、比較部231は、定着ベルト57の負荷を閾値と比較するようにしたが、駆動回数を閾値と比較してもよい。この場合における閾値は、定着装置50の駆動回数と押圧力との関係を予め定めておくことにより決定される。
【0127】
なお、本実施の形態においては、加圧ローラー59が定着ベルト57に押圧される例を示したが、定着装置50が駆動していない間は、加圧ローラー59は定着ベルト57から離間してもよい。好ましくは、加圧ローラー59は、少なくとも用紙がニップ部Nを通過する間に加熱部51に押圧される。これにより、加圧ローラーが弾性変形する期間を記録媒体が通過する間に制限することができる。
【0128】
また、本実施の形態においては、画像形成装置の一例としてプリンター100が例に説明されたが、画像形成装置は、複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ装置、これらを組み合わせた複合機(Multi Function Peripheral)などあってもよい。
【0129】
また、本実施の形態では、画像形成装置の一例として、タンデム型のカラーの画像を形成するプリンター100が説明されたが、これに限られるものではなく、モノクロの画像を形成する画像形成装置であってもよい。画像形成ユニット20Y,20M,20C,20K、露光装置21Y,21M,21C,21K、帯電ローラー22Y,22M,22C,22K、感光体ドラム23Y,23M,23C,23K、現像器24Y,24M,24C,24K、1次転写ローラー25Y,25M,25C,25K、2次転写ローラー26、定着装置50の構成や配置は、本実施の形態に限定されず、他の構成や配置であっても良い。
【0130】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0131】
<付記>
(1) 好ましくは、前記加熱ローラーは、中空円筒形状であり、
前記加熱ローラーの内部に配置され、熱を発する熱源が配置される。
【符号の説明】
【0132】
100 プリンター、111 CPU、140 画像形成部、150 給紙部、50 定着装置、51 加熱部、53 加熱ローラー、55 加圧部、57 定着ベルト、59 加圧ローラー、59A 回転軸、59B 駆動モーター、61 熱源、63 定着パッド、65 グリス塗布部、71 レバー部材、71A レバー部材回転軸、71B 第1接続部、73 加圧フレーム、73A 加圧フレーム回転軸、73B 調整穴、73C 第2接続部、75 荷重可変ギア、75A ギア回転軸、75B 調整棒、77 ばね、91 サーミスター、201 定着装置制御部、203 決定部、205 搬送制御部、207 センサー制御部、211 駆動制御部、213 押圧力制御部、215 熱量制御部、221 負荷検出部、223 環境情報取得部、225 サイズ検出部、227 閾値決定部、229 閾値変更部、231 比較部、233 押圧力決定部、N ニップ部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12