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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/183 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
B62D1/183
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020146354
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022041257
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】北原 圭
(72)【発明者】
【氏名】野沢 康行
(72)【発明者】
【氏名】岡 邦洋
(72)【発明者】
【氏名】時岡 良一
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/193956(WO,A1)
【文献】実開平05-054089(JP,U)
【文献】実開昭61-132159(JP,U)
【文献】特開2019-182041(JP,A)
【文献】特開2015-101247(JP,A)
【文献】特開2016-107688(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2075346(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/183
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部材を操作軸周りに回転させて操舵するステアリング装置であって、
前記操作部材を前記操作軸と交差する回転軸周りに回転可能に支持する第一支持体と、
前記操作部材を前記操作軸周りに回転可能に前記第一支持体を介して支持する第二支持体と、
電動モータと、
前記電動モータの回転力を前記第一支持体に伝達する第一伝達機構と、
前記回転力により前記第一支持体を押圧し前記第一支持体の回転を規制するカム機構と、
前記回転力を前記カム機構に伝達する第二伝達機構と、を備え、
前記第一伝達機構は、
前記電動モータの所定の回転角度範囲以内において回転力を前記第一支持体に伝達し、前記回転角度範囲外において前記回転力を伝達せず、
前記第二伝達機構は、
前記回転角度範囲外において前記回転力を伝達する
ステアリング装置。
【請求項2】
前記第一伝達機構は、
間欠歯車群を備える
請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項3】
操作部材を操作軸周りに回転させて操舵するステアリング装置であって、
前記操作部材を前記操作軸と交差する回転軸周りに回転可能に支持する第一支持体と、
前記操作部材を前記操作軸周りに回転可能に前記第一支持体を介して支持する第二支持体と、
電動モータと、
前記電動モータの回転力を前記第一支持体に伝達する第一伝達機構と、
前記回転力により前記第一支持体を押圧し前記第一支持体の回転を規制するカム機構と、
前記回転力を前記カム機構に伝達する第二伝達機構と、を備え
前記カム機構は、
前記回転軸に沿って配置されるカム軸周りに回転するカムと、
前記カム軸における前記カムの端面に当接し、前記カムの回転に従い前記カム軸に沿って移動する従節と、を備え、
前記第一支持体は、
前記従節が挿入される凹部を備える
ステアリング装置。
【請求項4】
前記従節は、
球体であり、
前記第二支持体に往復動可能に保持される
請求項3に記載のステアリング装置。
【請求項5】
前記第一支持体は、
前記回転軸方向の長さが最も短い板部材を備え、
前記カム機構は、
前記従節の押圧方向において前記板部材に対し前記従節の反対側に配置され、前記第二支持体に固定される挟持体を備える
請求項3または4に記載のステアリング装置。
【請求項6】
前記第一伝達機構は、
間欠歯車群を備え、
前記電動モータの所定の回転角度範囲以内において回転力を前記第一支持体に伝達し、前記回転角度範囲外において前記回転力を伝達せず、
前記第二伝達機構は、
前記回転角度範囲外において前記回転力を伝達し、
前記第一支持体は、
前記回転軸と同軸上に前記第二支持体に回転可能に保持され、前記板部材を支持する回転軸体を備え、
前記回転軸体には、前記間欠歯車の一方が固定され、アイドラーが回転自在に保持される
請求項5に記載のステアリング装置。
【請求項7】
前記第一支持体は、
前記回転軸方向において前記第二支持体の両側に配置され、
前記カム機構は、
二つの前記第一支持体をそれぞれ押圧してそれぞれの回転を規制する
請求項1から6のいずれか一項に記載のステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作部材を操作軸周りに回転させることにより転舵輪を操舵するステアリング装置であって、操作軸と交差する回転軸周りに操作部材を回転させることにより、操作部材の姿勢を通常の手動運転を行う正立状態から非正立状態に変更するステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆるステアリングホイールなどの操作部材を操作軸周りに回転操作することにより操舵を行うステアリング装置において、自動運転時にステアリングホイールをダッシュボードに収容するために、操作軸に直交し車両の幅方向に延在する回転軸周りにステアリングホイールを操作軸と平行になるまで回転させるステアリング装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019‐182041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、ステアリングホイールの姿勢を自動的に変更するためには、電動モータなどのアクチュエータを備える。また、正立状態にあるステアリングホイールは運転者の操作を受けるため、がたつきなく正立状態を維持するために別のアクチュエータが用いられている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、1つのアクチュエータで、操作部材の姿勢の変更と、操作部材の正立状態の維持を可能にするステアリング装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の1つであるステアリング装置は、操作部材を操作軸周りに回転させて操舵するステアリング装置であって、前記操作部材を前記操作軸と交差する回転軸周りに回転可能に支持する第一支持体と、前記操作部材を前記操作軸周りに回転可能に前記第一支持体を介して支持する第二支持体と、電動モータと、前記電動モータの回転力を前記第一支持体に伝達する第一伝達機構と、前記回転力により前記第一支持体を押圧し前記第一支持体の回転を規制するカム機構と、前記回転力を前記カム機構に伝達する第二伝達機構と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アクチュエータである一つの電動モータにより、操作部材の姿勢を正立状態と非正立状態に転換し、かつ正立状態で操作部材をロックすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】正立状態の操作部材を保持するステアリング装置を示す斜視図である。
図2】非正立状態の操作部材を保持するステアリング装置を示す斜視図である。
図3】操作部材を省略してステアリング装置を正面から示す平面図である。
図4】ステアリング装置が備える部材の一部を分解して示す斜視図である。
図5】第一伝達機構、第一支持体、および挟持体を示す平面図である。
図6】第二間欠歯車を分解して示す斜視図である。
図7】従節近傍を断面で示す断面図である。
図8】第一支持体、第一伝達機構の動作、およびカム機構の動作の第一状態を示す図である。
図9】第一支持体、第一伝達機構の動作、およびカム機構の動作の第二状態を示す図である。
図10】第一支持体、第一伝達機構の動作、およびカム機構の動作の第三状態を示す図である。
図11】第一支持体、第一伝達機構の動作、およびカム機構の動作の第四状態を示す図である。
図12】別例のステアリング装置の正立状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係るステアリング装置の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の位置関係、および接続状態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下では複数の発明を一つの実施の形態として説明する場合があるが、請求項に記載されていない構成要素については、その請求項に係る発明に関しては任意の構成要素であるとして説明している。また、図面は、本発明を説明するために適宜強調や省略、比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状や位置関係、比率とは異なる場合がある。
【0010】
図1は、正立状態の操作部材を保持するステアリング装置を示す斜視図である。図2は、非正立状態の操作部材を保持するステアリング装置を示す斜視図である。図3は、操作部材を省略してステアリング装置を正面から示す平面図である。ステアリング装置100は、操作部材200を操作軸210周りに回転させて車両などを操舵する装置であって、第一支持体110と、第二支持体120と、電動モータ130と、第一伝達機構140と、第二伝達機構150と、カム機構160と、を備えている。
【0011】
本実施の形態の場合、ステアリング装置100は、転舵輪と機械的には接続されておらず、操作部材200に対する運転者の操作に応じた情報を出力し、当該情報に基づいてアクチュエータを制御して転舵輪を転舵する、いわゆるSBW(steer-by-wire)システムである。
【0012】
操作部材200は、車両が手動運転状態になっている場合において、車両が備える転舵輪を転舵させるために運転者が操作する部材である。操作部材200の種類や形状は、特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、円環状リムとスポークとを備えるいわゆるステアリングホイールを用いて操作部材200を説明する。
【0013】
第二支持体120は、操作部材200を操作軸210周りに回転可能に支持する部材であり、第一支持体110を介して操作部材200を支持する。本実施の形態の場合、第二支持体120は、操作軸体121と、筐体122と、を備えている。
【0014】
操作軸体121は、車両(車体)に回転可能に取り付けられ、筐体122、および第一支持体110を介して操作部材200を操作軸210周りに回転可能に保持する。操作軸体121は、車両に直接取り付けられてもよく、また、操作部材200の位置を運転者に対して出退させる伸縮機構などを介して車両に取り付けられても構わない。
【0015】
筐体122は、操作軸体121の一端部に固定され操作軸体121と共に車両に対して回転する部材であり、第一支持体110、電動モータ130、および第一伝達機構140を含む回転機構と、電動モータ130、第二伝達機構150、およびカム機構160を含むロック機構と、の少なくとも一部を収容している。なお、図1図2図3において、筐体122の内側を記載しているが、筐体122は蓋を備えていてもよい。また、筐体122は、操作部材200側にエアバッグなどが取り付けられる場合がある。
【0016】
第一支持体110は、操作部材200を操作軸210と交差する回転軸220周りに回転可能に支持する部材である。本実施の形態の場合、第一支持体110は、第二支持体120に回転可能に取り付けられており、回転軸220方向において第二支持体120の両側にそれぞれ配置される。第一支持体110は、板部材111と、回転軸体112と、を備えている。回転軸体112は、二つの第一支持体110に共通して備えられる。
【0017】
図4は、ステアリング装置が備える部材の一部を分解して示す斜視図である。
【0018】
板部材111は、回転軸220方向の長さが最も短い板状の部材である。板部材111の形状は特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、回転軸220方向に垂直な面の形状は中心角が90°程度の扇形になっている。なお、板部材111の中心角近傍は丸められている。また、板部材111は、突出部113と、凹部114と、スリット115とを備えている。板部材111は、筐体122の外部に配置されており、二つの板部材111は、面対称となっている。
【0019】
突出部113は、板部材111の円弧状の外縁から回転軸220を中心とする放射方向に突出する部分であり、操作部材200が取り付けられる部分である。
【0020】
凹部114は、回転軸220方向の端面において窪んでいる部分であり、カム機構160の従節(後述)が挿入される部分である。凹部114は、筐体122の外側に配置される板部材111の筐体122に対向する面に筐体122から遠ざかる方向に窪んだ部分である。凹部114の形状は、特に限定されるものではない。本実施の形態の場合、凹部114の内面形状は、球面の一部の形状ではなく、球面の一部の形状から若干歪んだ形状となっている。また、凹部114の内面形状は、後述のカム機構160の従節162の外面形状よりも曲率半径が大きく、凹部114の内面と従節162の外面とが1点で接触する形状となっている。
【0021】
スリット115は、カム機構160が備える挟持体163(後述)が挿通される無底の溝であり、回転軸220を中心とした円弧状に湾曲している。これにより、板部材111が回転軸220を中心として回転した場合でも挟持体163と板部材111との干渉を抑制できる。
【0022】
回転軸体112は、操作部材200が第二支持体120に対して回転する際の軸である回転軸220と同軸上に配置された棒状の部材である。回転軸体112は、第二支持体120に回転可能に保持され、板部材111を固定的に保持する。回転軸体112は、筐体122の内側から外側に向かって筐体122を貫通しており、図示しない軸受を介して筐体122に取り付けられている。回転軸体112の筐体122から突出した部分に板部材111が取り付けられており、回転軸体112が回転軸220周りに回転することにより、板部材111は、筐体122に対して回転軸220周りに回転し、板部材111に取り付けられた操作部材200も回転軸220周りに回転する。
【0023】
電動モータ130は、操作部材200を回転軸220周りに回転駆動させる駆動力、および操作部材200が正立状態の際に、第二支持体120の筐体122に対し第一支持体110の回転動作をロックする駆動力を発生させる。本実施の形態の場合、電動モータ130は、減速機131を備え、減速機131を介して第二支持体120の筐体122の内側に固定されている。また、電動モータ130は、出力軸体132の回転角を検出するレゾルバなどのセンサーを備えても構わない。
【0024】
第一伝達機構140は、電動モータ130の回転力を第一支持体110に伝達する機構である。本実施の形態の場合、第一伝達機構140は、電動モータ130の所定の回転角度範囲以内において回転力を第一支持体110に伝達し、回転角度範囲外において回転力を伝達しないように設定されている。第一伝達機構140の種類は特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、第一伝達機構140は、第一間欠歯車141、および第二間欠歯車142を含む間欠歯車群を備えることにより、所定の回転角度範囲内のみ電動モータ130の回転力を第一支持体110に伝達するものとなっている。
【0025】
図5は、第一伝達機構140、第一支持体110、および挟持体163を示す平面図である。第一間欠歯車141は、電動モータ130の出力軸体132が刺し通された状態で固定されており、出力軸体132と共に回転する。従って、第一間欠歯車141の歯が設けられている範囲143が回転角度範囲になる。
【0026】
第二間欠歯車142は、第一支持体110の回転軸体112が刺し通された状態で固定されており、第二間欠歯車142の回転が第一支持体110を介して操作部材200の回転になる。具体的には、操作部材200が正立状態に達した時に第一間欠歯車141と第二間欠歯車142の噛み合わせが解除される。
【0027】
図6は、第二間欠歯車を分解して示す斜視図である。同図に示すように、第二間欠歯車142は、第一間欠歯車141と噛み合わせが解除される位置と、操作部材200の正立位置とを合致させるため、位相調整構造が採用されている。具体的には、第二間欠歯車142は、回転軸体112に固定される基礎部材144と、第一間欠歯車141と噛み合う歯が外周に設けられ、基礎部材144が隙間ばめされる有底円筒状の歯部材145を備えている。歯部材145の底には、締結部材146の雄ねじ部を刺し通し、基礎部材144に対する歯部材145の位相を調整するための円弧状の長孔が複数箇所に設けられている。位相調整構造により、回転軸体112に固定された基礎部材144に対する歯部材145の歯が設けられていない位相(位置)を調整し、締結部材146を締め込むことにより調整した位相を固定することができる。
【0028】
カム機構160は、電動モータ130の回転力により第二支持体120を基準として第一支持体110を押圧し、第一支持体110の回転を規制する。本実施の形態の場合、カム機構160は、図4に示すように、カム161と、従節162と、挟持体163と、カム軸体164と、を備えている。本実施の形態の場合、カム機構160は、第二支持体120に取り付けられており、カム161、従節162、および挟持体163は、カム軸230の方向において筐体122の両側にそれぞれ配置される。カム軸体164は、二つのカム機構160に共通して備えられる。
【0029】
カム161は、回転軸220に沿って配置されるカム軸230(図3参照)を中心として回転するカム軸体164が刺し通された状態で筐体122の内側に固定され、カム軸230周りに回転するカムである。カムの形状は、操作部材200が正立状態の場合において、第一支持体110を第二支持体120に対して固定できるように、従節162を移動させることができる形状であれば特に限定されるものではない。本実施の形態の場合、カム161は、立体カムの内の端面カムが採用されている。具体的にカム161の従節162側の端面には周方向に傾斜する傾斜面が設けられており、カム161の厚みは周方向で異なる。
【0030】
従節162は、カム軸230におけるカム161の端面に当接し、カム161のカム軸230周りの回転に従いカム軸230に沿って移動する。本実施の形態の場合、従節162は、第二支持体120の筐体122の側壁に設けられた貫通孔123(図4参照)に保持され、貫通孔123によりカム軸230方向の移動が案内されている。従節162の形状は、特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、球形状となっている。従節162が球形状であるため、図7に示すように、従節162がカム161の端面により筐体122の外側に一部が突出するように押し出され、板部材111の凹部114に嵌まり込んで板部材111を押圧することにより、従節162は、カム161の傾斜面、貫通孔123の内周面、および板部材111の凹部114の三点(図7中、黒点)において当接し、板部材111の回転軸220周りの回転に抗する強い力を発生させることができる。特に、従節162と凹部114の内面との接触点は、従節162の押圧方向に対して斜めの面に存在しているため、第一支持体110を第二支持体120に対し上方へ押圧する分力が板部材111に働く。この分力により、正立状態の操作部材200を下げようとする重力や運転者の腕の重みを抑えて第一支持体110を強固にロックすることができる。
【0031】
挟持体163は、図7に示すように、従節162の押圧方向において板部材111に対し従節162の反対側に配置される挟持部165と、挟持部165を第二支持体120から所定距離(板部材111の厚み程度)離れた位置に固定する接続部166とを備えている。板部材111の凹部114は、従節162に押圧されることにより第二支持体120から離れる方向に曲がろうとするが、挟持体163の挟持体163が第二支持体120と共に板部材111を挟んでいるため、板部材111の曲がりを防止する。
【0032】
カム軸体164は、カム161が回転する際の軸であるカム軸230と同軸上に配置された棒状の部材である。カム軸体164は、第一支持体110の筐体122に軸受124を介して回転可能に保持され、カム161を固定的に保持する。本実施の形態の場合、カム軸体164は、回転軸体112と平行に配置され、電動モータ130の出力軸体132と平行に配置されている。
【0033】
第二伝達機構150は、電動モータ130の回転力をカム機構160のカム161に伝達する。第二伝達機構150は、本実施の形態の場合、第一伝達機構140が電動モータ130の回転力を伝達しなくなる回転角度範囲外においても電動モータ130の回転力を伝達する。第二伝達機構150の種類は、特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、第二伝達機構150は、歯車の組み合わせにより電動モータ130の回転力をカム機構160のカム161に伝達するものとなっている。
【0034】
具体的には、図3等で示すとおり、第二伝達機構150は、第一歯車151と、第一歯車151に噛み合う第二歯車152と、第二歯車152に噛み合う第三歯車153と、を備えている。また、第一歯車151、第二歯車152、および第三歯車153のそれぞれ回転軸を構成する電動モータ130の出力軸体132と、第一支持体110の回転軸体112と、カム機構160のカム軸体164とは、同一平面内において平行に、かつ前記記載順で配置されている。第一歯車151は、出力軸体132に刺し通された状態で固定されている。第二歯車152は、回転軸体112に刺し通された状態で、回転軸体112に対し回転自在に保持されている。つまり、第二歯車152は、アイドラーとして機能している。第三歯車153は、カム軸体164に刺し通された状態で固定されており、カム軸体164により第三歯車153の回転がカム161の回転に伝達される。
【0035】
なお、第三歯車153は、第二間欠歯車142と同様の位相調整機構を備えている。これにより、第三歯車153とカム161との位相を調整し、操作部材200が正立状態に配置された際に従節162を板部材111の凹部114に押し当てることができる。
【0036】
次に、ステアリング装置100による操作部材200の姿勢の変更動作を説明する。
【0037】
図2図8に示すように、操作部材200が下方を向いて水平面内に配置される非正立状態の場合、第一間欠歯車141と、第二間欠歯車142とは、噛み合った状態である。また、電動モータ130は、停止している。以上により板部材111は、図8のaの段に示すような状態で固定される。また、電動モータ130が停止している際の回転角度に応じ、従節162が筐体122の内側に後退するようにカム161の形状が決定されている。この状態では、従節162は、板部材111を押圧していない。
【0038】
次に、図9に示すように、電動モータ130を動作させて操作部材200を正立位置に向かわせる。この段階では、第一間欠歯車141と、第二間欠歯車142とは噛み合った状態で電動モータ130の回転力が第一支持体110に伝達されている。また、カム161は、第二伝達機構150により回転しているが、従節162が板部材111を押圧していない状態が維持される。なお、従節162と板部材111の表面とが接触する場合はあるが、従節162が球体であるため板部材111に対して転がり、発生する摩擦力を抑制している。
【0039】
さらに電動モータ130を動作させると、図1図10に示すように、操作部材200が正面を向いてほぼ垂直面内に配置される正立状態になる。この段階になると、第一間欠歯車141と、第二間欠歯車142とは噛み合わなくなり、第一間欠歯車141は空回りし始める。また、従節162の正面には板部材111の凹部114が配置される。また、従節162は、カム161の傾斜面に押し出され、凹部114に一部が挿入される。
【0040】
さらに電動モータ130を動作させると、図11に示すように、第一間欠歯車141は空回りし、第一伝達機構140は回転力を伝達しなくなる。一方、第二伝達機構150は、回転力を伝達し続け、カム161の回転動作は維持される。以上により、従節162は、カム161の傾斜面に従って板部材111の凹部114を押圧し、板部材111は、挟持体163と従節162との間で締め付けられる。電動モータ130は、例えば第二伝達機構150の動作の停止による過負荷の発生に基づき動作を停止してもよい。また、従節162が所定の押圧力で板部材111を押圧する回転角を検出して停止してもよい。
【0041】
なお、操作部材200の正立状態から非正立状態への変更動作は、上記と逆の動作になる。
【0042】
以上の実施の形態にかかるステアリング装置100によれば、カム機構160の従節162を第一支持体110の板部材111に押しつけることにより、第二支持体120に対し第一支持体110を固定している。これにより、正立状態の操作部材200が、がたつくことを抑制し、操作部材200を操作する運転者の違和感を抑制することができる。
【0043】
また、1つの電動モータ130により操作部材200の姿勢の変更動作と、正立状態の操作部材200の固定動作との二つの動作を実現している。従って、ステアリング装置100の部品点数を抑制し、重量増加を抑制することができる。
【0044】
また、第一伝達機構140の歯車を保持する軸体と、第二伝達機構150の歯車を保持する軸体の一部を共通化しているため、ステアリング装置100の部品点数を抑制し、重量増加を抑制することができる。
【0045】
また、正立状態の操作部材200を固定するためのソレノイドなど直動アクチュエータを使用していないため、強い動作音が発生しない。
【0046】
また、正立状態を固定する際において過負荷により電動モータ130を停止させる場合、摩耗などにより従節162が小さくなった場合でも、カム161が備える傾斜面が従節162の摩耗に対応して一定の押圧力が発生した段階で電動モータ130の動作が停止するため、長期間に渡って安定的に正立状態を固定することができる。また、電動モータ130を所定の回転角で停止させる場合、回転角を徐々に増加させる制御を採用することで、従節162による一定の押圧力を確保することが可能となる。いずれの場合でも従節162などの経年劣化による操作部材200のガタを吸収することができる。
【0047】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本発明の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本発明の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本発明に含まれる。
【0048】
例えば、第一伝達機構140、および第二伝達機構150をいずれも歯車を用いて回転力を伝達するものとして説明したが、これらの一方、または両方がベルト、リンク、カムなど歯車以外の機械要素を備えていても構わない。
【0049】
また、第一伝達機構140と、第二伝達機構150とは、部品を共有することなく相互に別構成でも構わない。
【0050】
従節162は、球体ばかりでなく、砲弾型、棒状など任意の形状を採用しても構わない。また、カム161も端面カムばかりでなく、平面カムなど任意の形状を採用しても構わない。
【0051】
また、図12に示すように、第二支持体120は、ストッパ125を備えても構わない。ストッパ125は、非正立状態の操作部材200が正立状態に向かって回転する際に、操作部材200が正立位置よりも上方向への移動しないように操作部材200を正立状態に規制する部材である。ストッパ125は、筐体122の外面に突出状態で固定されており、操作部材200の正立状態において、第一支持体110の回転を規制するように第一支持体111に係合する。ストッパ125に対して第一支持体110を押しつけることにより、第二支持体120に対して第一支持体110を固定しても良い。これにより、正立状態への位置決めが容易となり、正立状態の操作部材200のがたつきを抑制することができる
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、運転者が操作部材200を操作しない状態が走行中に発生するような自動運転車などに利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
100…ステアリング装置、110…第一支持体、111…板部材、112…回転軸体、113…突出部、114…凹部、115…スリット、120…第二支持体、121…操作軸体、122…筐体、123…貫通孔、124…軸受、125…ストッパ、130…電動モータ、131…減速機、132…出力軸体、140…第一伝達機構、141…第一間欠歯車、142…第二間欠歯車、143…範囲、144…基礎部材、145…歯部材、146…締結部材、150…第二伝達機構、151…第一歯車、152…第二歯車、153…第三歯車、160…カム機構、161…カム、162…従節、163…挟持体、164…カム軸体、165…挟持部、166…接続部、200…操作部材、210…操作軸、220…回転軸、230…カム軸
図1
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図12