(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】電子管楽器、電子管楽器の制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G10H 1/34 20060101AFI20241022BHJP
G10H 1/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
G10H1/34
G10H1/00 A
(21)【出願番号】P 2020152141
(22)【出願日】2020-09-10
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】外山 千寿
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-045108(JP,A)
【文献】特開2019-020504(JP,A)
【文献】特開2017-015809(JP,A)
【文献】特開2019-060996(JP,A)
【文献】特開2019-008122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00- 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
演奏者による接触操作を受け付ける接触操作手段に接触した演奏者の
下唇または親指の接触
を検出する、当該接触操作手段上に基準方向に配列された複数のセンサと、
前記複数のセンサの出力値に基づいて、前記演奏者の下唇または親指の接触位置を算出する接触位置算出手段と、
前記接触位置算出手段により算出された接触位置を、当該算出された接触位置に応じた補正値を用いて補正する接触位置補正手段と、
を備
え、
前記複数のセンサは、前記演奏者の下唇または親指が接触しないように設けられた基準センサを含み、
前記補正値は、前記基準センサの出力値及び前記接触位置算出手段により算出された前記接触位置に基づいて取得される、
ことを特徴とする
電子管楽器。
【請求項2】
前記接触位置補正手段により補正された接触位置に応じた楽音を出力する楽音出力手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の
電子管楽器。
【請求項3】
前記複数のセンサのうち前記基準センサ以外の各センサに、センサの位置を示す値が予め対応付けられており、
前記接触位置算出手段は、前記基準センサの出力値に応じて前記複数のセンサのうち前記基準センサ以外の各センサの出力値を減少させ、減少後の当該各センサの出力値を重みとして用いて当該各センサの位置を示す値を加重平均することにより接触位置を算出し、
前記接触位置補正手段は、前記接触位置算出手段により算出された接触位置に対応する係数を前記基準センサの出力値に乗算することにより
取得された前記補正値に応じて前記複数のセンサのうち前記基準センサ以外の各センサの出力値を減少させ、減少後の当該各センサの出力値を重みとして用いて当該各センサの位置を示す値を加重平均することにより補正後の接触位置を算出する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の
電子管楽器。
【請求項4】
前記接触位置補正手段は、前記接触位置算出手段により算出された接触位置が前記基準センサに第1の位置より近い第2の位置である場合、前記接触位置算出手段により算出された接触位置が当該第1の位置である場合の減少幅より小さい減少幅だけ前記複数のセンサのうち前記基準センサ以外の各センサの出力値を減少させ、減少後の当該各センサの出力値を重みとして用いて当該各センサの位置を示す値を加重平均することにより補正後の接触位置を算出する、
ことを特徴とする請求項3に記載の
電子管楽器。
【請求項5】
前記複数のセンサのうち前記基準センサ以外の各センサに、前記基準方向に離れた位置に配置されたセンサほど大きな値が対応付けられるように、センサの位置を示す値が予め対応付けられており、
前記接触位置補正手段は、前記接触位置算出手段により算出された接触位置が前記基準方向と反対の方向に第3の位置から離れた第4の位置である場合、前記接触位置算出手段により算出された接触位置が当該第3の位置である場合の減少幅より大きい減少幅だけ前記複数のセンサのうち前記基準センサ以外の各センサの出力値を減少させ、減少後の当該各センサの出力値を重みとして用いて当該各センサの位置を示す値を加重平均することにより補正後の接触位置を算出する、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の
電子管楽器。
【請求項6】
前記補正値を設定する操作を受け付け
る操作子を備え、
前記接触位置補正手段は、前記接触位置算出手段により算出された接触位置を、
前記操作子の操作により設定された前記補正値を用いて補正する、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の
電子管楽器。
【請求項7】
前記基準センサは、カバーで覆われている、
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の電子管楽器。
【請求項8】
前記接触操作手段は、演奏者による唇を用いた接触操作を受け付けるリード部、又は演奏者による指を用いた接触操作を受け付けるタッチパッド部に含まれる、
ことを特徴とする請求項1乃至
7の何れか一項に記載の
電子管楽器。
【請求項9】
演奏者による接触操作を受け付ける接触操作手段に接触した演奏者の
下唇または親指の接触
を検出する、当該接触操作手段上に基準方向に配列された複数のセンサを備えた電子管楽器の制御方法において、
前記複数のセンサの出力値に基づいて、前記演奏者の下唇または親指の接触位置を算出する接触位置算出ステップと、
前記接触位置算出ステップで算出された接触位置を、当該算出された接触位置に応じた補正値を用いて補正する接触位置補正ステップと、
を含
み、
前記補正値は、前記複数のセンサに含まれる、前記演奏者の下唇または親指が接触しないように設けられた基準センサの出力値、及び前記接触位置算出ステップで算出された前記接触位置に基づいて取得される、
ことを特徴とする
電子管楽器の制御方法。
【請求項10】
演奏者による接触操作を受け付ける接触操作手段に接触した演奏者の下唇または親指の接触を検出する、当該接触操作手段上に基準方向に配列された複数のセンサを備えた電子管楽器を制御するコンピュータを、
前記複数のセンサの出力値に基づいて、前記演奏者の下唇または親指の接触位置を算出する接触位置算出手段、
前記接触位置算出手段により算出された接触位置を、当該算出された接触位置に応じた補正値を用いて補正する接触位置補正手段、
として機能さ
せ、
前記複数のセンサは、前記演奏者の下唇または親指が接触しないように設けられた基準センサを含み、
前記補正値は、前記基準センサの出力値及び前記接触位置算出手段により算出された前記接触位置に基づいて取得される、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子管楽器、電子管楽器の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
演奏者による接触操作を受け付ける接触操作手段に演奏者の身体の一部が接触した場合に、当該身体の一部の接触位置に応じた楽音を出力する電子楽器が知られている。例えば、特許文献1は、演奏者が口に咥えて息を吹き込むマウスピースを備え、当該マウスピースに設けられたリード部に演奏者の唇が接触した場合に、唇の接触位置を検出し、検出された唇の接触位置に応じた楽音を出力する電子楽器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された電子楽器が備えるリード部は、マウスピースに設けられた息の吹込口側の端部であるティップ側端部と、ティップ側端部と反対側の端部であるヒール側端部と、を有している。特許文献1に記載された電子楽器は、演奏者がリード部上のヒール側端部近傍の位置に唇を接触させた状態で演奏を行った場合に、実際の唇の接触位置と異なる位置を唇の接触位置として誤検出してしまう場合があった。さらに、特許文献1に記載された電子楽器は、演奏者がリード部上のティップ側端部近傍の位置に唇を接触させた状態で唇の接触位置を微小に変化させつつ演奏を行った場合に、検出すべき唇の接触位置の微小な動きを検出できない場合があった。このような場合、特許文献1に記載された電子楽器は、誤検出された唇の接触位置に応じた楽音を出力することにより、演奏者が出力を所望する楽音と異なる楽音を出力してしまう虞があった。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、演奏者が出力を所望する楽音と異なる楽音が出力されてしまう可能性を低減できる電子管楽器、電子管楽器の制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る電子管楽器は、
演奏者による接触操作を受け付ける接触操作手段に接触した演奏者の下唇または親指の接触を検出する、当該接触操作手段上に基準方向に配列された複数のセンサと、
前記複数のセンサの出力値に基づいて、前記演奏者の下唇または親指の接触位置を算出する接触位置算出手段と、
前記接触位置算出手段により算出された接触位置を、当該算出された接触位置に応じた補正値を用いて補正する接触位置補正手段と、
を備え、
前記複数のセンサは、前記演奏者の下唇または親指が接触しないように設けられた基準センサを含み、
前記補正値は、前記基準センサの出力値及び前記接触位置算出手段により算出された前記接触位置に基づいて取得される、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、演奏者が出力を所望する楽音と異なる楽音が出力されてしまう可能性を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る電子楽器の正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る電子楽器の側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る電子楽器の電気的構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るマウスピースの断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るリード部を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る電子楽器の機能的構成を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るリップ位置と係数との対応関係を説明するための図である。
【
図8】(a)は、センサの出力値の一例を示す図である。(b)は、センサと、センサの位置を示す値と、温度ドリフト補正値に応じて減少されたセンサの出力値と、の対応関係の一例を示す図である。(c)は、センサと、センサの位置を示す値と、リップ位置に対応する温度ドリフト補正値に応じて減少されたセンサの出力値と、の対応関係の一例を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る電子楽器が実行する楽音発音処理を説明するためのフローチャートである。
【
図10】本発明の実施形態に係る電子楽器が実行するリップ検出処理を説明するためのフローチャートである。
【
図11】本発明の変形例に係る電子楽器の背面図である。
【
図12】本発明の変形例に係るタッチパッドを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る電子楽器について、図面を参照しながら説明する。図中、互いに同一又は同等の構成には、互いに同一の符号を付す。
【0010】
本発明の実施形態に係る電子楽器1は、
図1及び
図2に示すように、アコースティック管楽器であるサクソフォンの形状を模した形状を有している。電子楽器1は、管状の筐体を有し、演奏者が手で持つ管体部2と、管体部2の表面に設けられ、演奏者が指で操作する操作子3と、管体部2の一端に設けられ、演奏者が口に咥えて息を吹き込むマウスピース4と、管体部2の他端に設けられ、楽音を発音するサウンドシステム5と、を備えている。演奏者は、電子楽器1を用いて演奏を行うユーザである。
【0011】
操作子3は、演奏者による指を用いた操作を受け付ける複数のキーを備え、演奏者による当該複数のキーに対する操作を検出し、検出結果を示すキー/スイッチ情報を後述するCPU(Central Processing Unit)8へ出力する。操作子3が備える複数のキーには、演奏者による楽音の音高の指定を受け付ける演奏キーと、演奏者による設定操作を受け付ける設定キーと、が含まれている。設定キーには、電子楽器1の電源のオン/オフを切り替える設定操作を受け付ける電源キーと、楽曲のキーに応じて楽音の音高を変更する設定操作を受け付ける音高調整キーと、が含まれている。演奏キーは、管体部2の正面側の表面に設けられており、設定キーは、管体部2の正面側の表面に対向する管体部2の背面側の表面に設けられている。管体部2の背面側の表面には、
図2に示すように、演奏者の指に接触し、演奏者が電子楽器1を安定的に保持することを補助するフィンガーレスト20と、電子楽器1を演奏者の首から吊り下げるための図示しないストラップを通すストラップリング21と、が設けられている。
【0012】
電子楽器1は、
図3に示すように、上述した構成に加えて、息圧検出部6と、接触検出部7と、CPU8と、ROM(Read Only Memory)9と、RAM(Random Access Memory)10と、音源11と、を備えている。操作子3、息圧検出部6、接触検出部7、CPU8、ROM9、RAM10及び音源11は、コマンド及びデータの伝送経路であるシステムバス12を介して相互に接続されている。CPU8、ROM9、RAM10及び音源11は、管体部2に内蔵されている。なお、
図3には、電子楽器1が備える構成のうち、本発明の特徴部に関連する構成のみが示されている。電子楽器1は、
図3に示されていない任意の構成を備えていてもよい。例えば、電子楽器1は、各種画像を表示する表示部を備えていてもよい。
【0013】
息圧検出部6は、演奏者によりマウスピース4に吹き込まれた息の圧力を検出し、検出結果を示す息圧情報をCPU8へ出力する。接触検出部7は、演奏者による接触を検出する複数の静電容量方式のタッチセンサを備え、後述するマウスピース4が備えるリード部41に対する演奏者の下唇の接触を検出し、検出結果を示すリップ検出情報をCPU8へ出力する。さらに、接触検出部7は、リード部41に対する演奏者の舌の接触を検出し、検出結果を示すタン検出情報をCPU8へ出力する。演奏中にリード部41に対して舌を接触させることによりリード部41の振動を止める演奏動作であるタンギングを演奏者が行った場合、リード部41に対する舌の接触が接触検出部7により検出される。接触検出部7による演奏者の下唇及び舌の接触の検出の詳細については、後述する。CPU8は、ROM9に記憶されたプログラム及びデータに従って電子楽器1の各部を制御する。さらに、CPU8は、ROM9に記憶されたプログラム及びデータに従って各種処理を実行する。ROM9は、CPU8が各種処理を実行するために用いるプログラム及びデータを非一時的に記憶する。RAM10は、CPU8のワークエリアとして機能する。すなわち、CPU8は、ROM9によって記憶されているプログラム及びデータをRAM10へ読み出し、読み出されたプログラム及びデータを参照することによって各種処理を実行する。さらに、CPU8は、各種処理を実行することによって生成又は取得したデータをRAM10へ一時的に格納し、格納されたデータを参照することによって各種処理を実行する。音源11は、音源LSI(Large Scale Integrated Circuit)等のシンセサイザであり、楽音を表すデジタル楽音信号をCPU8による制御に従って生成し、生成されたデジタル楽音信号をサウンドシステム5へ出力する。サウンドシステム5は、音源11から入力されたデジタル楽音信号に応じた楽音を発音する。具体的に、サウンドシステム5は、DAC(Digital to Analog Converter)と、アンプと、スピーカと、を備えており、音源11から入力されたデジタル楽音信号を当該DACにより楽音を表すアナログ楽音信号へ変換し、当該アナログ楽音信号を当該アンプにより増幅し、増幅されたアナログ楽音信号が表す楽音を当該スピーカにより発音する。
【0014】
マウスピース4は、
図4に示すように、電子楽器1の管体部2に組み付けられる本体部40と、演奏者による下唇及び舌を用いた接触操作を受け付けるリード部41と、本体部40に対してリード部41を固定する固定金具42と、を備えている。演奏者がマウスピース4を口に咥えた状態でタンギングを行っている場合、演奏者の下唇及び舌がリード部41に接触する。演奏者がマウスピース4を口に咥えた状態でタンギングを行っていない場合、演奏者の下唇がリード部41に接触する一方、演奏者の舌はリード部41に接触しない。リード部41は、接触操作手段の一例である。後述するように、電子楽器1は、リード部41に対する演奏者による下唇を用いた接触操作に応じた音色と、リード部41に対する演奏者による舌を用いた接触操作に応じた音量と、を有する楽音を出力する。リード部41の一端は固定金具42によって本体部40に対して固定されており、振動しないように構成されている一方、リード部41の他端は固定されておらず、振動可能に構成されている。リード部41は、リード部41の固定金具42によって固定されていない側の端部と、本体部40の吹込口側端部40aとが、演奏者が息を吹き込む吹込口43を形成するように、本体部40に対して組み付けられている。
【0015】
吹込口43に対向する本体部40の管体部側端部40bには、息圧検出部6が有する圧力センサ60が設けられている。圧力センサ60は、マウスピース4の吹込口43に吹き込まれた演奏者の息の圧力を検出する。息圧検出部6は、圧力センサ60の出力値、すなわち、圧力センサ60によって検出された圧力を、マウスピース4に吹き込まれた息の圧力の検出結果として取得し、当該出力値を示すデータを、当該検出結果を示す息圧情報としてCPU8へ出力する。
【0016】
リード部41は、
図4及び
図5に示すように、絶縁性素材により形成された板状のリード基板44を有している。リード基板44は、ティップ側端部44aと、ヒール側端部44bと、を有している。リード基板44のティップ側端部44aは、リード部41の固定金具42により固定されていない側の端部である。リード基板44のヒール側端部44bは、リード部41の固定金具42により固定されている側の端部である。
【0017】
リード基板44上には、リード基板44のティップ側端部44aからリード基板44のヒール側端部44bへ向かう方向に、接触検出部7が有する複数のセンサS0~S12が等間隔に配列されている。リード基板44のティップ側端部44aからリード基板44のヒール側端部44bへ向かう方向は、基準方向の一例である。センサS0~S12は、静電容量方式のタッチセンサであり、演奏者による接触を検出する。センサS0~S12は、何れも、センシングパッドとして平面視長方形状の電極を備えている。
【0018】
接触検出部7が備えるセンサS0~S12のうちセンサS0~S11は、リード部41に対する演奏者の下唇の接触を検出するリップセンサとして機能する。すなわち、接触検出部7は、センサS0~S11によって検出された静電容量であるセンサS0~S11の出力値を、リード部41に対する演奏者の下唇の接触の検出結果として取得し、当該出力値を示すデータを、当該検出結果を示すリップ検出情報としてCPU8へ出力する。接触検出部7が備えるセンサS0~S12のうちリード基板44のティップ側端部44aに最も近い位置に配置されたセンサS0は、上述したリップセンサとして機能すると共に、リード部41に対する演奏者の舌の接触を検出するタンセンサとしても機能する。すなわち、接触検出部7は、センサS0によって検出された静電容量であるセンサS0の出力値を、リード部41に対する演奏者の舌の接触の検出結果として取得し、当該出力値を示すデータを、当該検出結果を示すタン検出情報としてCPU8へ出力する。
【0019】
なお、リップセンサであるセンサS0~S11には、それぞれ、1から12までの整数のうち何れかが、識別子として一意的に予め対応付けられている。具体的に、センサS0~S11には、それぞれ、1から12までの整数のうち何れかが、センサS0~S11のうちリード基板44のヒール側端部44bに近い位置に配置されたセンサほど大きな値が対応付けられるように、識別子として対応付けられている。言い換えれば、センサS0~S11には、それぞれ、リード基板44のティップ側端部44aからリード基板44のヒール側端部44bへ向かう方向に離れた位置に配置されたセンサほど大きな値が識別子として対応付けられるように、識別子が対応付けられている。例えば、センサS0~S11のうち、リード基板44のヒール側端部44bに最も近い位置、すなわち、リード基板44のティップ側端部44aからリード基板44のヒール側端部44bへ向かう方向に最も離れた位置に配置されたセンサS11には、1から12までの整数のうち最も大きい12が識別子として対応付けられている。一方、センサS0~S11のうち、リード基板44のティップ側端部44aに最も近い位置、すなわち、リード基板44のヒール側端部44bからリード基板44のティップ側端部44aへ向かう方向に最も離れた位置に配置されたセンサS0には、1から12までの整数のうち最も小さい1が識別子として対応付けられている。
【0020】
演奏者の唇及び舌がリード部41に接触している場合、演奏者の体温がリード部41に伝わってリード部41の温度が上昇することが原因で、リード部41のリード基板44上に配置された静電容量方式のタッチセンサであるセンサS0~S12のうち演奏者の唇又は舌が接触していない位置に配置されたセンサを含む全てのセンサの出力値が増加する温度ドリフトと呼ばれる現象が発生する。後述するように、電子楽器1は、リード部41上の演奏者の下唇の接触位置であるリップ位置を、リップセンサであるセンサS0~S11の出力値に基づいて算出する。しかしながら、温度ドリフトの影響により増加したセンサS0~S11の出力値に基づいてリップ位置を算出した場合、実際の演奏者の下唇の接触位置とは異なる位置がリップ位置として誤って算出されてしまう虞がある。このような事情に鑑み、電子楽器1は、後述するように、接触検出部7を用いて温度ドリフトの影響、すなわち、温度ドリフトに起因するセンサS0~S11の出力値の増加量を検出し、検出された温度ドリフトの影響をセンサS0~S11の出力値から除去する処理を行い、当該処理後の出力値に基づいてリップ位置を算出することにより、リップ位置の検出精度を向上させている。
【0021】
接触検出部7が備えるセンサS0~S12のうちリード基板44のヒール側端部44bに最も近い位置、すなわち、リード基板44のティップ側端部44aからリード基板44のヒール側端部44bへ向かう方向に最も離れた位置に設けられたセンサS12は、演奏者の身体が接触しないように図示しないカバーで覆われており、温度ドリフトの影響を検出する温度ドリフトセンサとして機能する。すなわち、接触検出部7は、センサS12によって検出された静電容量であるセンサS12の出力値を、温度ドリフトの影響の検出結果として取得し、当該出力値を示すデータを、当該検出結果を示す温度ドリフト情報としてCPU8へ出力する。センサS12は、基準センサの一例である。なお、
図4及び
図5では、理解を容易にするため、センサS12が、カバーに覆われていない状態で図示されているものの、実際には、センサS12は、カバーで覆われている。一方、センサS0~S11は、カバーで覆われておらず、演奏者の身体が接触可能に構成されている。
【0022】
なお、本実施形態では、センサS0~S12が静電容量方式のタッチセンサであるものとして説明するが、これは一例に過ぎず、センサS0~S12は、演奏者による接触を検出可能な任意のセンサであってよい。例えば、センサS0~S12は、抵抗膜方式のタッチセンサであってもよい。或いは、センサS0~S12は、圧力センサであってもよい。さらに、本実施形態では、センサS0~S12の備える電極が、平面視長方形状であるものとして説明するが、これは一例に過ぎず、電極の形状は任意の形状であってよい。例えば、センサS0~S12の備える電極は、平面視V字形状や、平面視波形形状であってもよい。さらに、本実施形態では、リード基板44上に、センサS0~S12の13個のセンサが配置されているものとして説明するが、これは一例に過ぎず、センサの個数は任意の個数であってよい。さらに、本実施形態では、温度ドリフトセンサであるセンサS12が、カバーで覆われることにより演奏者の身体が接触しないように構成されるものとして説明するが、これは一例に過ぎず、センサS12は、任意の形態で演奏者の身体が接触しないように構成されればよい。例えば、センサS12は、リード基板44上の演奏者の身体が接触しない位置に配置されることにより演奏者の身体が接触しないように構成されてもよい。
【0023】
上述した物理的構成を備える電子楽器1は、機能的に、
図6に示すように、キー/スイッチ情報取得部100と、息圧情報取得部101と、タン検出情報取得部102と、リップ検出情報取得部103と、温度ドリフト情報取得部104と、音高決定部105と、音量決定部106と、リップ位置算出部107と、リップ位置補正部108と、音色決定部109と、楽音出力部110と、を備えている。キー/スイッチ情報取得部100~楽音出力部110は、CPU8によって実現される。すなわち、CPU8は、ROM9に記憶されたプログラムを実行して電子楽器1を制御することにより、キー/スイッチ情報取得部100~楽音出力部110として機能する。なお、
図6には、電子楽器1が備える機能的構成のうち、本発明の特徴部に関連する機能的構成のみが示されている。電子楽器1は、
図6に示されていない任意の機能的構成を備えていてもよい。例えば、電子楽器1は、上述した表示部による画像の表示を制御する表示制御部を備えていてもよい。
【0024】
キー/スイッチ情報取得部100は、操作子3から、演奏キー及び設定キーを含む操作子3が備える複数のキーに対する操作の検出結果を示すキー/スイッチ情報を取得する。息圧情報取得部101は、息圧検出部6から、マウスピース4に吹き込まれた演奏者の息の圧力の検出結果を示す息圧情報として、圧力センサ60の出力値を示すデータを取得する。タン検出情報取得部102は、接触検出部7から、リード部41に対する演奏者の舌の接触の検出結果を示すタン検出情報として、タンセンサであるセンサS0の出力値を示すデータを取得する。リップ検出情報取得部103は、接触検出部7から、リード部41に対する演奏者の下唇の接触の検出結果を示すリップ検出情報として、リップセンサであるセンサS0~S11の出力値を示すデータを取得する。温度ドリフト情報取得部104は、接触検出部7から、温度ドリフトの影響の検出結果を示す温度ドリフト情報として、温度ドリフトセンサであるセンサS12の出力値を示すデータを取得する。
【0025】
音高決定部105は、キー/スイッチ情報取得部100により取得されたキー/スイッチ情報に応じて楽音の音高を決定する。音量決定部106は、息圧情報取得部101により取得された息圧情報と、タン検出情報取得部102により取得されたタン検出情報と、に応じて楽音の音量を決定する。なお、本実施形態では、タン検出情報取得部102により取得されたタン検出情報に応じて楽音の音量を決定するものとして説明するが、これは一例に過ぎず、CPU8が、タン検出情報が示すタンセンサであるセンサS0の出力値に基づいてタンギングの実行状態を判定し、当該判定の結果に応じて楽音のノートオン及びノートオフを制御してもよい。リップ位置算出部107は、リップ検出情報取得部103により取得されたリップ検出情報と、温度ドリフト情報取得部104により取得された温度ドリフト情報と、に基づいて、リード部41に接触した演奏者の下唇の接触位置であるリップ位置を算出する。リップ位置は、演奏者の身体の一部の接触位置の一例である。リップ位置算出部107は、接触位置算出手段の一例である。リップ位置補正部108は、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置を、当該算出されたリップ位置に応じた補正値を用いて補正する。リップ位置補正部108は、接触位置補正手段の一例である。リップ位置算出部107によるリップ位置の算出及びリップ位置補正部108によるリップ位置の補正の詳細については後述する。音色決定部109は、リップ位置補正部108により補正された後のリップ位置に応じて楽音の音色を決定する。
【0026】
楽音出力部110は、音高決定部105により決定された音高、音量決定部106により決定された音量、及び音色決定部109により決定された音色を有する楽音を出力する。具体的に、楽音出力部110は、音源11を制御して、上述した音高、音量及び音色を有する楽音を表すデジタル楽音信号を生成させ、当該デジタル楽音信号をサウンドシステム5へ出力させるとともに、サウンドシステム5を制御して、音源11から入力された当該デジタル楽音信号が表す楽音を発音させる。なお、上述したように、音色決定部109は、リップ位置補正部108により補正された後のリップ位置に応じて楽音の音色を決定する。すなわち、楽音出力部110は、音色決定部109により決定された音色を有する楽音を出力することにより、リップ位置補正部108により補正されたリップ位置に応じた楽音を出力する。
【0027】
このような構成により、電子楽器1は、演奏者による操作子3に対する指を用いた操作に応じた音高と、演奏者によるマウスピース4に息を吹き込む演奏操作、及び、演奏者によるリード部41に対する舌を用いた接触操作に応じた音量と、演奏者によるリード部41に対する下唇を用いた接触操作に応じた音色と、を有する楽音を出力する。
【0028】
なお、本実施形態では、電子楽器1が、リップ位置に応じて楽音の音色を決定するものとして説明するが、これは一例に過ぎない。電子楽器1は、リップ位置に応じて楽音の音量を決定してもよい。或いは、電子楽器1は、リップ位置に応じて楽音の音高を決定してもよい。或いは、電子楽器1は、リップ位置に応じて、楽音の音色、楽音の音高、及び楽音の音量のうち複数の要素を決定してもよい。さらに、電子楽器1は、リップ位置に応じて楽音の音色、楽音の音高、及び楽音の音量のうち何れを決定するかを設定する演奏者による操作を受け付けるように構成されていてもよい。例えば、操作子3が備える設定キーに、リップ位置に応じて楽音の音色、楽音の音高、及び楽音の音量のうち何れを決定するかを設定する演奏者による操作を受け付ける選択キーが含まれるように構成し、電子楽器1が、当該選択キーに対する操作の検出結果に従って、リップ位置に応じて楽音の音色、楽音の音高、及び楽音の音量のうち何れを決定するかを選択するように構成してもよい。
【0029】
なお、本実施形態では、楽音出力部110が、サウンドシステム5に楽音を発音させることにより楽音を出力するものとして説明するが、これは一例に過ぎず、楽音出力部110は、任意の方法で楽音を出力できる。例えば、楽音出力部110は、音源11を制御して楽音を表すデジタル楽音信号を生成させ、当該デジタル楽音信号を、図示しない出力ポートを介して、PC(Personal Computer)、スマートフォン等の外部の情報処理装置へ出力することにより、当該楽音を出力してもよい。
【0030】
以下、リップ位置算出部107によるリップ位置の算出の詳細について説明する。リップ位置算出部107は、リップ検出情報取得部103により取得されたリップ検出情報が示すリップセンサであるセンサS0~S11の出力値に基づいてリップ位置を算出する。しかしながら、上述したように、センサS0~S11の出力値には、温度ドリフトに起因する出力値の増加量が含まれているため、センサS0~S11の出力値に基づいてリップ位置を算出した場合、誤ったリップ位置を算出してしまう虞がある。このような事情に鑑み、リップ位置算出部107は、温度ドリフト情報取得部104により取得された温度ドリフト情報が示す温度ドリフトの影響の検出結果に応じて、センサS0~S11の出力値から温度ドリフトの影響を除去する処理を行い、当該処理後のセンサS0~S11の出力値に基づいてリップ位置を算出することにより、リップ位置の検出精度を向上させている。
【0031】
具体的に、リップ位置算出部107は、温度ドリフト情報が示すセンサS12の出力値を温度ドリフトに起因するセンサの出力値の増加量と見なし、当該出力値を、センサS0~S11の出力値から温度ドリフトの影響を除去するための補正値である温度ドリフト補正値として取得する。そして、リップ位置算出部107は、リップ検出情報が示すセンサS0~S11の出力値から温度ドリフトの影響を除去するために、センサS0~S11の出力値を、取得された温度ドリフト補正値に応じて減少させる。すなわち、リップ位置算出部107は、センサS0~S11の出力値から温度ドリフト補正値を減算し、減算後の出力値が0以上である場合、当該減算後の出力値を減少後の出力値として取得し、当該減算後の出力値が0より小さい場合、0を減少後の出力値として取得する。なお、温度ドリフト補正値を減算した後のセンサの出力値の小数点以下は切り捨てる。なお、これは一例に過ぎず、温度ドリフト補正値を減算した後のセンサの出力値の小数点以下を切り上げてもよい。
【0032】
リップ位置算出部107は、温度ドリフト補正値として取得されたセンサS12の出力値に応じてリップ検出情報が示すセンサS0~S11の出力値を減少させることによりセンサS0~S11の出力値から温度ドリフトの影響を除去した後、減少後のセンサS0~S11の出力値に基づいてリップ位置を算出する。具体的に、センサS0~S11には、各センサの位置を示す値が予め対応付けられており、リップ位置算出部107は、下記の式(1)に従い、センサS0~S11の位置を示す値を、温度ドリフト補正値に応じて減少させた後の各センサの出力値を重みとして用いて加重平均することによりリップ位置を算出する。式(1)中、Xgは、リップ位置を表し、Xiは、センサS0~S11のうち番号iが上述した識別子として対応付けられたセンサの位置を示す値を表す。さらに、式(1)中、Miは、温度ドリフト補正値に応じて減少された、センサS0~S11のうち番号iが識別子として対応付けられたセンサの出力値を表し、Nは、電子楽器1が備えるリップセンサの個数を表している。上述したように、電子楽器1は、リップセンサとして、センサS0~S11の12個のセンサを備えているため、Nは12である。
【0033】
【0034】
センサS0~S11には、それぞれ、0から11までの整数のうち何れかが、位置を示す値として一意的に予め対応付けられている。具体的に、センサS0~S11には、それぞれ、0から11までの整数のうち何れかが、センサS0~S11のうちリード基板44のヒール側端部44bに近い位置に配置されたセンサほど大きな値が対応付けられるように、位置を示す値として対応付けられている。言い換えれば、センサS0~S11には、それぞれ、リード基板44のティップ側端部44aからリード基板44のヒール側端部44bへ向かう方向に離れた位置に配置されたセンサほど大きな値が位置を示す値として対応付けられるように、位置を示す値が対応付けられている。例えば、センサS0~S11のうち、リード基板44のヒール側端部44bに最も近い位置、すなわち、リード基板44のティップ側端部44aからリード基板44のヒール側端部44bへ向かう方向に最も離れた位置に配置されたセンサS11には、0から11までの整数のうち最も大きい11が位置を示す値として対応付けられている。一方、センサS0~S11のうち、リード基板44のティップ側端部44aに最も近い位置、すなわち、リード基板44のヒール側端部44bからリード基板44のティップ側端部44aへ向かう方向に最も離れた位置に配置されたセンサS0には、0から11までの整数のうち最も小さい0が位置を示す値として対応付けられている。
【0035】
リップ位置算出部107は、上述した式(1)に従い、センサS0~S11の位置を示す値である0から11までの整数を、温度ドリフト補正値に応じて減少させた後の各センサの出力値を重みとして用いて加重平均することにより、0以上11以下の範囲に属する値をリップ位置として算出する。なお、本実施形態では、センサS0~S11に、各センサの位置を示す値として、0から11までの整数が対応付けられるものとして説明するが、これは一例に過ぎず、センサS0~S11には、各センサの位置を示す値として、任意の値を対応付けることができる。例えば、センサS0~S11に、それぞれ、各センサの位置を示す値として、リード基板44のティップ側端部44aから各センサまでの距離を予め対応付けてもよい。
【0036】
以上説明したように、リップ位置算出部107は、リップ位置の検出精度を向上させるために、温度ドリフトの影響を除去する処理を行った後のセンサS0~S11の出力値に基づいてリップ位置を算出している。しかしながら、上述の処理を行っているにも関わらず、演奏者の下唇がリード基板44のヒール側端部44bの近傍の位置に接触している場合や、演奏者の下唇がリード基板44のティップ側端部44aの近傍の位置に接触している状態において、下唇の接触位置が微小に変化した場合、リップ位置算出部107が、誤ったリップ位置を算出してしまう場合がある。
【0037】
具体的に、演奏者の下唇が、リード基板44のヒール側端部44bの近傍の位置、すなわち、温度ドリフトセンサであるセンサS12の近傍の位置に接触している場合、センサS12の出力値に、温度ドリフトの影響によるセンサの出力値の増加量と共に、演奏者の下唇の接触に起因するセンサの出力値の増加量が含まれている場合がある。このような場合において、リップ位置算出部107が、センサS12の出力値を温度ドリフトに起因するセンサの出力値の増加量と見なして温度ドリフト補正値として取得し、当該温度ドリフト補正値に応じてセンサS0~S11の出力値を減少させた場合、出力値の減少幅が、実際の温度ドリフトの影響によるセンサの出力値の増加量を超えてしまう。このような場合において、リップ位置算出部107が、温度ドリフト補正値であるセンサS12の出力値に応じて減少させた後のセンサS0~S11の出力値に基づいてリップ位置を算出した場合、実際の下唇の接触位置と異なる位置をリップ位置として誤って算出してしまう虞がある。
【0038】
また、演奏中の下唇の接触位置の変化に起因してリップセンサであるセンサS0~S11の出力値が変化した場合、リップ位置算出部107によるリップ位置の算出に用いられる上述の式(1)から明らかなように、位置を示す値としてセンサに対応付けられた値が小さいほど、当該センサの出力値の変化に起因する算出されたリップ位置の変化は小さい。上述したように、センサS0~S11のうちリード基板44のヒール側端部44bに近い位置に配置されたセンサほど大きな値が位置を示す値として対応付けられている。このため、演奏者の下唇が、リード基板44のティップ側端部44aの近傍の位置、すなわち、センサS0~S11のうち位置を示す値として最も小さな値が対応付けられたセンサS0の近傍の位置に接触している状態で、下唇の接触位置が微小に変化した場合、当該微小な変化が、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置の変化として捕捉されない虞がある。
【0039】
リップ位置補正部108は、上述の事情に鑑み、センサS0~S11の出力値から温度ドリフトの影響を除去するためのリップ位置算出部107により算出されたリップ位置に応じた補正値を取得し、当該補正値に応じて減少させたセンサS0~S11の出力値に基づいて補正後のリップ位置を算出することにより、リップ位置の検出精度を向上させている。以下、リップ位置補正部108により取得される、リップ位置算出部107によって算出されたリップ位置に応じた上述の補正値を「リップ位置に対応する温度ドリフト補正値」と称し、リップ位置算出部107により取得される上述の「温度ドリフト補正値」と区別する。
【0040】
リップ位置補正部108は、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置に対応する係数を、ROM9に予め記憶された係数決定情報を参照することにより決定し、決定された係数を温度ドリフト情報が示すセンサS12の出力値に乗算することにより、リップ位置に対応する温度ドリフト補正値を算出する。係数決定情報は、リップ位置と係数との対応関係を表すデータである。係数決定情報が表すリップ位置と係数との対応関係の詳細については、後述する。係数決定情報は、リップ位置毎に、電子楽器1を用いて演奏を行った場合に演奏者が出力を所望する楽音が出力される係数を実験により求めることで生成された後、ROM9に予め格納されている。なお、上述した係数決定情報の生成方法は一例に過ぎず、係数決定情報は、任意の方法により生成できる。例えば、リップ位置毎に、電子楽器1を用いて演奏を行った場合に演奏者が出力を所望する楽音が出力される係数をコンピュータシミュレーションにより求めることで係数決定情報を生成してもよい。
【0041】
リップ位置補正部108は、リップ検出情報が示すセンサS0~S11の出力値から温度ドリフトの影響を除去するために、センサS0~S11の出力値を、リップ位置に対応する温度ドリフト補正値に応じて減少させる。すなわち、リップ位置補正部108は、センサS0~S11の出力値からリップ位置に対応する温度ドリフト補正値を減算し、減算後の出力値が0以上である場合、当該減算後の出力値を減少後の出力値として取得し、当該減算後の出力値が0より小さい場合、0を減少後の出力値として取得する。なお、リップ位置に対応する温度ドリフト補正値を減算した後のセンサの出力値の小数点以下は切り捨てる。なお、これは一例に過ぎず、リップ位置に対応する温度ドリフト補正値を減算した後のセンサの出力値の小数点以下を切り上げてもよい。
【0042】
リップ位置補正部108は、リップ位置に対応する温度ドリフト補正値に応じて減少させた後のセンサS0~S11の出力値に基づいて、補正後のリップ位置を算出する。具体的に、リップ位置補正部108は、下記の式(2)に従い、センサS0~S11の位置を示す値を、リップ位置に対応する温度ドリフト補正値に応じて減少させた後のセンサS0~S11の出力値を重みとして用いて加重平均することにより補正後のリップ位置を算出する。式(2)中、Xg’は、補正後のリップ位置を表し、Xiは、センサS0~S11のうち番号iが識別子として対応付けられたセンサの位置を示す値を表す。また、式(2)中、Nは、電子楽器1が備えるリップセンサの個数を表し、M’iは、リップ位置に対応する温度ドリフト補正値に応じて減少された、センサS0~S11のうち番号iが識別子として対応付けられたセンサの出力値を表している。
【0043】
【0044】
リップ位置補正部108は、上述した式(2)に従い、センサS0~S11の位置を示す値である0から11までの整数を、リップ位置に対応する温度ドリフト補正値に応じて減少させた後の各センサの出力値を重みとして用いて加重平均することにより、0以上11以下の範囲に属する値を補正後のリップ位置として算出する。上述した音色決定部109は、リップ位置補正部108により補正後のリップ位置として算出された0以上11以下の範囲に属する値に応じて楽音の音色を決定する。なお、リップ位置補正部108は、上述した式(2)に従って算出された0以上11以下の範囲に属する値を、当該値に対して127/11を乗算して得られた値の小数点以下を切り捨てることにより、0以上127以下の範囲に属する整数値であり、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)規格に対応する7ビットで表される値へ変換し、当該7ビットで表される値を補正後のリップ位置として取得してもよい。この場合、音色決定部109は、リップ位置補正部108により補正後のリップ位置として取得された7ビットで表される値に応じて楽音の音色を決定すればよい。例えば、補正後のリップ位置として取得された7ビットで表される値を、MIDI規格のコントロールチェンジメッセージのひとつであるモジュレーションの深さのパラメータとして利用することにより、楽音の音色を決定すればよい。なお、リップ位置補正部108は、上述した式(2)に従って算出された0以上11以下の範囲に属する値を、当該値に対して127/11を乗算して得られた値の小数点以下を切り上げることにより、7ビットで表される値へ変換し、当該7ビットで表される値を補正後のリップ位置として取得してもよい。
【0045】
図7は、上述した係数決定情報により表されるリップ位置と係数との対応関係を示している。
図7に示す対応関係は、リップ位置が、温度ドリフトセンサであるセンサS12に第1の位置より近い第2の位置である場合の係数が、リップ位置が当該第1の位置である場合の係数より小さくなるように設定されている。例えば、
図7に示す対応関係では、リップ位置が、第1の位置の一例である5.5である場合の係数が1.0に設定されている一方、リップ位置が、第2の位置の一例である10.0である場合の係数は1.0より小さい0.9に設定されている。上述したように、センサS12は、センサS0~S12のうちリード基板44のティップ側端部44aからリード基板44のヒール側端部44bへ向かう方向に最も離れた位置に設けられている。さらに、上述したように、センサS0~S11には、それぞれ、リード基板44のティップ側端部44aからリード基板44のヒール側端部44bへ向かう方向に離れた位置に配置されたセンサほど大きな値が位置を示す値として対応付けられるように、位置を示す値が対応付けられている。すなわち、
図7に示す対応関係は、リップ位置が、センサの位置を示す値が大きくなる方向に第1の位置から離れた第2の位置である場合の係数が、リップ位置が当該第1の位置である場合の係数より小さくなるように設定されている。
【0046】
リップ位置補正部108は、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置が、センサS12に第1の位置より近い第2の位置である場合、当該第1の位置に対応する係数より小さい当該第2の位置に対応する係数をセンサS12の出力値に乗じることにより、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置が当該第1の位置である場合のリップ位置に対応する温度ドリフト補正値より小さい値を、リップ位置に対応する温度ドリフト補正値として取得する。例えば、センサS12の出力値が150であり、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置が第1の位置の一例である5.5である場合、リップ位置補正部108は、センサ12の出力値である150に対して当該リップ位置に対応する係数である1.0を乗じて得られる150をリップ位置に対応する温度ドリフト値として取得する。一方、センサS12の出力値が150であり、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置が第2の位置の一例である10.0である場合、リップ位置補正部108は、センサ12の出力値である150に対して当該リップ位置に対応する係数である0.9を乗じて得られる135をリップ位置に対応する温度ドリフト値として取得する。
【0047】
リップ位置補正部108は、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置が、センサS12に第1の位置より近い第2の位置である場合、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置が当該第1の位置である場合のリップ位置に対応する温度ドリフト補正値より小さいリップ位置に対応する温度ドリフト補正値に応じて、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置が当該第1の位置である場合の減少幅より小さい減少幅だけセンサS0~S11の出力値を減少させる。そして、リップ位置補正部108は、上述の式(2)に従い、減少後のセンサS0~S11の出力値を重みとして用いてセンサS0~S11の位置を示す値を加重平均することにより補正後のリップ位置を算出する。
【0048】
リップ位置補正部108は、このような構成により、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置が、温度ドリフトセンサであるセンサS12の近傍の位置、すなわち、リード基板44のヒール側端部44bの近傍の位置である場合に、温度ドリフトの影響を除去するためにセンサS0~S11の出力値を減少させたときに、減少幅が実際の温度ドリフトの影響によるセンサの出力値の増加量を超えてしまう可能性を低減し、リップ位置の検出精度を向上させている。このような構成によれば、演奏者が、温度ドリフトセンサであるセンサS12の近傍の位置に下唇を接触させた状態で演奏を行った場合に、下唇の接触位置であるリップ位置の検出精度を向上させ、演奏者が出力を所望する楽音と異なる楽音が出力されてしまう可能性を低減できる。
【0049】
さらに、係数決定情報により表される
図7に示す対応関係は、リップ位置が、リード基板44のヒール側端部44bからリード基板44のティップ側端部44aへ向かう方向に第3の位置から離れた第4の位置である場合の係数が、リップ位置が当該第3の位置である場合の係数より大きくなるように設定されている。例えば、
図7に示す対応関係では、リップ位置が第3の位置の一例である5.5である場合の係数が1.0に設定されている一方、リップ位置が第4の位置の一例である1.3である場合の係数は1.0より大きい1.3に設定されている。すなわち、
図7に示す対応関係は、リップ位置が、センサの位置を示す値が小さくなる方向に第3の位置から離れた第4の位置である場合の係数が、リップ位置が当該第3の位置である場合の係数より大きくなるように設定されている。リード基板44のヒール側端部44bからリード基板44のティップ側端部44aへ向かう方向は、基準方向の一例であるリード基板44のティップ側端部44aからリード基板44のヒール側端部44bへ向かう方向と反対の方向である。
【0050】
リップ位置補正部108は、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置が、リード基板44のヒール側端部44bからリード基板44のティップ側端部44aへ向かう方向に第3の位置から離れた第4の位置である場合、当該第3の位置に対応する係数より大きい当該第4の位置に対応する係数をセンサS12の出力値に乗じることにより、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置が当該第3の位置である場合のリップ位置に対応する温度ドリフト補正値より大きい値をリップ位置に対応する温度ドリフト補正値として取得する。例えば、センサS12の出力値が150であり、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置が第3の位置の一例である5.5である場合、リップ位置補正部108は、センサ12の出力値である150に対して当該リップ位置に対応する係数である1.0を乗じて得られる150をリップ位置に対応する温度ドリフト値として取得する。一方、センサS12の出力値が150であり、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置が第4の位置の一例である1.3である場合、リップ位置補正部108は、センサ12の出力値である150に対して当該リップ位置に対応する係数である1.3を乗じて得られる195をリップ位置に対応する温度ドリフト値として取得する。
【0051】
リップ位置補正部108は、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置が、リード基板44のヒール側端部44bからリード基板44のティップ側端部44aへ向かう方向に第3の位置から離れた第4の位置である場合、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置が当該第3の位置である場合のリップ位置に対応する温度ドリフト補正値より大きいリップ位置に対応する温度ドリフト補正値に応じて、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置が当該第3の位置である場合の減少幅より大きい減少幅だけセンサS0~S11の出力値を減少させる。そして、リップ位置補正部108は、上述の式(2)に従い、減少後のセンサS0~S11の出力値を重みとして用いてセンサS0~S11の位置を示す値を加重平均することにより補正後のリップ位置を算出する。温度ドリフトの影響を除去する処理におけるセンサS0~S11の出力値の減少幅が大きいほど、式(2)の右辺の数式の分母である減少後のセンサS0~S11の出力値の総和が小さくなる。式(2)から明らかなように、式(2)の右辺の数式の分母が小さいほど、センサS0~S11のうち位置を示す値として小さな値が対応付けられたセンサの出力値の変化に応じた補正後のリップ位置の変化が大きくなる。
【0052】
リップ位置補正部108は、このような構成により、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置が、センサS0~S11のうち位置を示す値として小さな値が対応付けられたセンサの配置された位置、すなわち、リード基板44のティップ側端部44aの近傍の位置である場合に、当該センサの出力値の変化に応じた補正後のリップ位置の変化を大きくし、リップ位置の変化の検出精度を向上させている。このような構成によれば、演奏者が、リード基板44のティップ側端部44aの近傍の位置に下唇を接触させた状態で、下唇の接触位置を微小に変化させつつ演奏を行った場合に、リップ位置の検出精度を向上させ、演奏者の細やかな演奏表現を再現することを可能にすると共に、演奏者が出力を所望する楽音と異なる楽音が出力されてしまう可能性を低減できる。
【0053】
以上説明したように、リップ位置補正部108は、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置を、当該算出されたリップ位置に対応する温度ドリフト補正値を用いて補正することにより、リップ位置の検出精度を向上させ、細やかな演奏表現を可能とすると共に、演奏者が出力を所望する楽音と異なる楽音が出力されてしまう可能性を低減している。
【0054】
以下、
図8(a)~
図8(c)を参照し、リップ位置算出部107によるリップ位置の算出と、リップ位置補正部108によるリップ位置の補正と、について、リード部41上のセンサS12の近傍の位置である9.5に演奏者の下唇が接触している場合を例に用いて説明する。具体的に、以下、
図8(a)に示す出力値がセンサS0~S12から出力された場合を例に用いて説明する。
図8(a)は、センサと、センサの出力値と、の対応関係を示している。
【0055】
リップ位置算出部107は、リップ検出情報取得部103により取得されたリップ検出情報に基づいて
図8(a)に示すセンサS0~S11の出力値を取得するとともに、温度ドリフト情報取得部104により取得された温度ドリフト情報に基づいて
図8(a)に示すセンサS12の出力値を取得する。リップ位置算出部107は、センサS12の出力値である123を温度ドリフト補正値として取得し、取得した温度ドリフト補正値に応じてセンサS0~S11の出力値を減少させる。
図8(b)は、センサと、センサに予め対応付けられたセンサの位置を示す値と、リップ位置算出部107により温度ドリフト補正値に応じて減少された後のセンサの出力値と、の対応関係を示している。リップ位置算出部107は、上述した式(1)に従い、
図8(b)に示すセンサS0~S11の位置を示す値を、
図8(b)に示す温度ドリフト補正値に応じて減少させた後のセンサS0~S11の出力値を重みとして用いて加重平均することにより、10.03をリップ位置として算出する。
【0056】
リップ位置補正部108は、リップ検出情報取得部103により取得されたリップ検出情報に基づいて
図8(a)に示すセンサS0~S11の出力値を取得するとともに、温度ドリフト情報取得部104により取得された温度ドリフト情報に基づいて
図8(a)に示すセンサS12の出力値を取得する。リップ位置補正部108は、ROM9に記憶された係数決定情報を参照することにより、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置である10.03に応じた係数として0.9を取得する。リップ位置補正部108は、取得した係数である0.9をセンサS12の出力値である123に乗じることにより、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置に対応する温度ドリフト補正値として110.7を取得する。リップ位置補正部108は、取得したリップ位置に対応する温度ドリフト補正値である110.7に応じてセンサS0~S11の出力値を減少させる。
図8(c)は、センサと、センサに予め対応付けられたセンサの位置を示す値と、リップ位置補正部108によりリップ位置に対応する温度ドリフト補正値に応じて減少された後のセンサの出力値と、の対応関係を示している。リップ位置補正部108は、上述した式(2)に従い、
図8(c)に示すセンサS0~S11の位置を示す値を、
図8(c)に示すリップ位置に対応する温度ドリフト補正値に応じて減少させた後のセンサS0~S11の出力値を重みとして用いて加重平均することにより、9.404を補正後のリップ位置として算出する。
【0057】
上述した例において、リップ位置補正部108により算出された補正後のリップ位置である9.404は、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置である10.03に比べて、実際の演奏者の下唇の接触位置である9.5に近い。すなわち、リップ位置補正部108は、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置を、当該算出されたリップ位置に対応する温度ドリフト補正値を用いて補正することにより、リップ位置の検出精度を向上させている。
【0058】
以下、上述した物理的・機能的構成を備える電子楽器1が実行する楽音発音処理について、
図9のフローチャートを参照して説明する。なお、
図9には、電子楽器1が実行可能な処理のうち、本発明の特徴部に関連する処理のみが示されている。電子楽器1は、
図9に示されていない任意の処理を実行できる。例えば、電子楽器1は、上述した表示部による画像の表示を制御する表示制御処理を実行してもよい。演奏者が、操作子3が備える上述の電源キーを操作することにより電子楽器1の電源をオンにすると、CPU8が、
図9のフローチャートに示す楽音発音処理を開始する。
【0059】
楽音発音処理が開始されると、まず、CPU8は、電子楽器1の各種設定を初期化するイニシャライズ処理を実行する(ステップS101)。ステップS101の処理の実行後、キー/スイッチ情報取得部100が、操作子3から、操作子3が備える複数のキーに対する操作の検出結果を示すキー/スイッチ情報を取得する(ステップS102)。ステップS102の処理の実行後、音高決定部105が、ステップS102で取得されたキー/スイッチ情報が示す複数のキーに対する操作の検出結果に応じて楽音の音高を決定する(ステップS103)。
【0060】
ステップS103の処理の実行後、息圧情報取得部101が、息圧検出部6から、マウスピース4に吹き込まれた演奏者の息の圧力を検出する圧力センサ60の出力値を示す息圧情報を取得する(ステップS104)。ステップS104の処理の実行後、タン検出情報取得部102が、接触検出部7から、タンセンサであるセンサS0の出力値を示すタン検出情報を取得する(ステップS105)。ステップS105の処理の実行後、音量決定部106が、ステップS104で取得された息圧情報が示す圧力センサ60の出力値と、ステップS105で取得されたタン検出情報が示すセンサS0の出力値と、に応じて楽音の音量を決定する(ステップS106)。
【0061】
ステップS106の処理の実行後、CPU8は、リップ位置を取得するリップ検出処理を実行する(ステップS107)。ステップS107で実行されるリップ検出処理の詳細については、後述する。ステップS107の処理の実行後、音色決定部109が、ステップS107で取得されたリップ位置に応じて楽音の音色を決定する(ステップS108)。
【0062】
ステップS108の処理の実行後、楽音出力部110が、サウンドシステム5を制御して、ステップS103で決定された音高、ステップS106で決定された音量、及びステップS108で決定された音色を有する楽音を発音させる(ステップS109)。具体的に、ステップS109の処理において、楽音出力部110は、音源11を制御して、ステップS103で決定された音高、ステップS106で決定された音量、及びステップS108で決定された音色を有する楽音を表すデジタル楽音信号を生成させ、当該デジタル楽音信号をサウンドシステム5へ出力させるとともに、サウンドシステム5を制御して、音源11から入力された当該デジタル楽音信号が表す楽音を発音させる。なお、ステップS109の処理において、楽音を発音中であり、かつ、ステップS106で決定された音量が0である場合、発音していた楽音を消音する処理が行われる。これに対し、ステップS109の処理において、楽音が発音されておらず、かつ、ステップS106で決定された音量が0である場合、楽音が発音されない状態、すなわち、無音の状態を維持する処理が行われる。
【0063】
ステップS109の処理の実行後、CPU8は、所定の終了条件が成立しているか否かを判定する(ステップS110)。本実施形態において、終了条件は、演奏者が、操作子3が備える電源キーを操作することにより電子楽器1の電源をオフにした場合に成立する。なお、これは一例に過ぎず、終了条件は任意に設定できる。例えば、動作エラーの発生が検出された場合に終了条件が成立するように構成してもよい。ステップS110において、終了条件が成立していないと判定された場合(ステップS110;No)、処理はステップS102へ戻る。一方、終了条件が成立したと判定された場合(ステップS110;Yes)、CPU8は、楽音発音処理を終了する。このような構成により、CPU8は、ステップS110で終了条件が成立したと判定される(ステップS110;Yes)まで、ステップS102~ステップS110の処理を繰り返し実行する。
【0064】
以下、楽音発音処理のステップS107で実行されるリップ検出処理の詳細について、
図10のフローチャートを参照して説明する。
【0065】
リップ検出処理が開始されると、まず、リップ検出情報取得部103が、接触検出部7から、リップセンサであるセンサS0~S11の出力値を示すリップ検出情報を取得する(ステップS201)。ステップS201の処理の実行後、温度ドリフト情報取得部104が、接触検出部7から、温度ドリフトセンサであるセンサS12の出力値を示す温度ドリフト情報を取得する(ステップS202)。ステップS202の処理の実行後、リップ位置算出部107が、ステップS202で取得された温度ドリフト情報が示すセンサS12の出力値を温度ドリフト補正値として取得する(ステップS203)。
【0066】
ステップS203の処理の実行後、リップ位置算出部107は、ステップS201で取得されたリップ検出情報が示すセンサS0~S11の出力値を、ステップS203で取得された温度ドリフト補正値に応じて減少させる(ステップS204)。具体的に、ステップS204の処理で、リップ位置算出部107は、センサS0~S11の出力値から温度ドリフト補正値を減算し、減算後の出力値が0以上である場合、当該減算後の出力値を減少後の出力値として取得する一方、当該減算後の出力値が0より小さい場合、0を減少後の出力値として取得する。なお、温度ドリフト補正値を減算した後のセンサの出力値の小数点以下は切り捨てるものとする。
【0067】
ステップS204の処理の実行後、CPU8が、ステップS204で減少された後のセンサS0~S11の出力値の総和を算出する(ステップS205)。ステップS205の処理の実行後、CPU8は、ステップS205で算出された総和が所定の接触閾値以上であるか否かを判定することにより、演奏者がマウスピース4を口に咥えているか否かを判定する(ステップS206)。具体的に、ステップS206の処理において、CPU8は、ステップS205で算出された総和が接触閾値以上である場合、演奏者がマウスピース4を口に咥えていると判定する一方、当該総和が接触閾値より小さい場合、演奏者がマウスピース4を口に咥えていないと判定する。接触閾値は、演奏者がマウスピース4を口に咥えた状態における、温度ドリフト補正値としてのセンサS12の出力値に応じて減少された後のセンサS0~S11の出力値の総和の平均値を実験により求め、当該総和の平均値に0.8を乗じて得られる値に予め設定されている。なお、上述した接触閾値の決定方法は一例に過ぎず、接触閾値は、任意の方法により決定できる。例えば、実験により求めた演奏者がマウスピース4を口に咥えた状態における、温度ドリフト補正値としてのセンサS12の出力値に応じて減少された後のセンサS0~S11の出力値の総和の平均値に0.7を乗じて得られる値を接触閾値として設定してもよい。
【0068】
ステップS206の処理において、ステップS205で算出された総和が接触閾値より小さいと判定した場合、すなわち、演奏者がマウスピース4を口に咥えていないと判定した場合(ステップS206;No)、CPU8は、所定のデフォルト位置(本実施形態では、5.0)をリップ位置として取得し(ステップS207)、リップ検出処理を終了する。
【0069】
一方、ステップS206の処理において、ステップS205で算出された総和が接触閾値以上であると判定した場合、すなわち、演奏者がマウスピース4を口に咥えていると判定された場合(ステップS206;Yes)、リップ位置算出部107が、ステップS204で減少された後のセンサS0~S11の出力値に基づいて、リップ位置を算出する(ステップS208)。具体的に、ステップS208の処理で、リップ位置算出部107は、上述した式(1)に従い、ステップS204で減少された後のセンサS0~S11の出力値を重みとして用いて、センサS0~S11の位置を示す値を加重平均することによりリップ位置を算出する。
【0070】
ステップS208の処理の実行後、リップ位置補正部108が、ROM9に予め記憶された係数決定情報を参照することにより、ステップS208で算出されたリップ位置に対応する係数を決定する(ステップS209)。ステップS209の処理の実行後、リップ位置補正部108は、ステップS202で取得された温度ドリフト情報が示すセンサS12の出力値に、ステップS209で取得された係数を乗算することにより、ステップS208で算出されたリップ位置に対応する温度ドリフト補正値を算出する(ステップS210)。
【0071】
ステップS210の処理の実行後、リップ位置補正部108は、ステップS201で取得されたリップ検出情報が示すセンサS0~S11の出力値を、ステップS210で算出されたリップ位置に対応する温度ドリフト補正値に応じて減少させる(ステップS211)。具体的に、ステップS211の処理で、リップ位置補正部108は、センサS0~S11の出力値からリップ位置に対応する温度ドリフト補正値を減算し、減算後の出力値が0以上である場合、当該減算後の出力値を減少後の出力値として取得する一方、当該減算後の出力値が0より小さい場合、0を減少後の出力値として取得する。なお、リップ位置に対応する温度ドリフト補正値を減算した後のセンサの出力値の小数点以下は切り捨てる。
【0072】
ステップS211の処理の実行後、リップ位置補正部108は、ステップS211でリップ位置に対応する温度ドリフト補正値に応じて減少された後のセンサS0~S11の出力値に基づいて補正後のリップ位置を算出し(ステップS212)、リップ検出処理を終了する。具体的に、ステップS212の処理で、リップ位置補正部108は、上述した式(2)に従い、ステップS211で減少された後のセンサS0~S11の出力値を重みとして用いて、センサS0~S11の位置を示す値を加重平均することにより補正後のリップ位置を算出する。
【0073】
以上説明したように、電子楽器1は、リップ位置をセンサS0~S12の出力値に基づいて算出し、算出されたリップ位置を、当該算出されたリップ位置に対応する温度ドリフト補正値を用いて補正し、補正されたリップ位置に応じた楽音を出力する。このような構成によれば、リップ位置の検出精度を向上させ、演奏者が出力を所望する楽音と異なる楽音が出力されてしまう可能性を低減できる。
【0074】
また、電子楽器1は、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置が温度ドリフトセンサであるセンサS12に第1の位置より近い第2の位置である場合、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置が当該第1の位置である場合の減少幅より小さい減少幅だけセンサS0~S11の出力値を減少させ、減少後のセンサS0~S11の出力値を重みとして用いてセンサS0~S11の位置を示す値を加重平均することにより補正後のリップ位置を算出する。このような構成によれば、演奏者が、センサS12の近傍の位置に下唇を接触させた状態で演奏を行った場合に、下唇の接触位置であるリップ位置の検出精度を向上させ、演奏者が出力を所望する楽音と異なる楽音が出力されてしまう可能性を低減できる。
【0075】
また、電子楽器1は、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置が、リード基板44のヒール側端部44bからリード基板44のティップ側端部44aへ向かう方向に第3の位置から離れた第4の位置である場合、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置が当該第3の位置である場合の減少幅より大きい減少幅だけセンサS0~S11の出力値を減少させ、減少後のセンサS0~S11の出力値を重みとして用いてセンサS0~S11の位置を示す値を加重平均することにより補正後の接触位置を算出する。このような構成によれば、演奏者が、リード基板44のティップ側端部44aの近傍の位置に下唇を接触させた状態で、下唇の接触位置を微小に変化させつつ演奏を行った場合に、リップ位置の検出精度を向上させ、演奏者が出力を所望する楽音と異なる楽音が出力されてしまう可能性を低減できる。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0077】
例えば、上記実施形態では、接触操作手段が、演奏者による下唇を用いた接触操作を受け付けるリード部41であるものとして説明したが、これは一例に過ぎず、接触操作手段は、演奏者による接触操作を受け付ける任意の構成であってよい。例えば、接触操作手段は、演奏者が手で持つ管体部2に設けられ、演奏者による指を用いた接触操作を受け付けるタッチパッドであってもよい。
【0078】
図11は、本発明の変形例に係る電子楽器1の背面図である。
図11に示すように、本変形例に係る電子楽器1の管体部2の背面側の表面には、演奏者による指を用いた接触操作を受け付けるタッチパッド13が設けられている。タッチパッド13は、接触操作手段の一例である。本変形例に係る電子楽器1は、タッチパッド13に接触した演奏者の親指の接触位置であるサム位置を検出し、検出されたサム位置に応じてピッチベンド、モジュレーションなどのエフェクトを付与した楽音を出力する。
【0079】
タッチパッド13上には、
図12に示すように、タッチパッド13の左側端部13aからタッチパッド13の右側端部13bへ向かう方向に、複数のセンサS13~S22が配列されている。センサS13~S22は、演奏者による接触を検出する静電容量方式のタッチセンサである。タッチパッド13の左側端部13aからタッチパッド13の右側端部13bへ向かう方向は、基準方向の一例である。センサS13は、図示しないカバーで覆われることにより演奏者の身体が接触しないように構成され、温度ドリフトセンサとして機能する。センサS13は、基準センサの一例である。センサS14~S22は、演奏者の身体が接触可能に構成され、演奏者の親指の接触を検出するサムセンサとして機能する。サムセンサであるS14~S22には、それぞれ、センサの位置を示す値が予め対応付けられている。
【0080】
本変形例において、CPU8は、温度ドリフトセンサであるセンサS13の出力値と、サムセンサであるセンサS14~S22の出力値と、に基づいて、サム位置を算出する。サム位置の算出には、上記実施形態においてリップ位置算出部107がリップ位置の算出に用いた方法を適用すればよい。すなわち、CPU8は、センサS13の出力値を温度ドリフト補正値として取得し、取得された温度ドリフト補正値に応じて減少させたセンサS14~S22の出力値を重みとして用いて、センサS14~S22の位置を示す値を加重平均することにより、サム位置を算出すればよい。CPU8は、算出されたサム位置を、当該算出されたサム位置に応じて補正し、補正されたサム位置に応じたエフェクトが付与された楽音を出力する。サム位置の補正には、上記実施形態においてリップ位置補正部108がリップ位置の補正に用いた方法を適用すればよい。すなわち、CPU8は、ROM9に予め記憶された、サム位置と係数との対応関係を示すデータを参照することにより、算出されたサム位置に対応する係数を決定すればよい。そして、CPU8は、決定された係数をセンサS13の出力値に乗じることにより得られた補正値に応じて減少させたセンサS14~S22の出力値を重みとして用いてセンサS14~S22の位置を示す値を加重平均することにより、補正後のサム位置を算出すればよい。このような構成によれば、サム位置の検出精度を向上させ、演奏者が出力を所望する楽音と異なる楽音が出力されてしまう可能性を低減できる。
【0081】
なお、上記実施形態において、電子楽器1が、演奏者によるリップ位置に対応する温度ドリフト補正値を設定する操作を受け付けるように構成するとともに、リップ位置補正部108が、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置を、演奏者により設定されたリップ位置に対応する温度ドリフト補正値を用いて補正するように構成してもよい。例えば、操作子3が備える設定キーが、演奏者によるリップ位置に対応する温度ドリフト補正値を設定する操作を受け付ける補正値設定キーを含むように構成し、リップ位置補正部108が、操作子3から入力されたキー/スイッチ情報が示す当該補正値設定キーに対する操作の検出結果に応じて、リップ位置に対応する温度ドリフト補正値を取得するように構成してもよい。この場合、リップ位置補正部108は、取得したリップ位置に対応する温度ドリフト補正値を用いて、上記実施形態と同様の方法により、補正後のリップ位置を算出し、楽音出力部110は、リップ位置補正部108により算出された補正後のリップ位置に応じた楽音を出力する。このような構成によれば、リップ位置算出部107により算出されたリップ位置の補正に用いられる、リップ位置に対応する温度ドリフト補正値を、演奏者が、演奏者に固有の演奏上の癖、演奏者に固有の唇の形状、電子楽器1に固有のセンサ特性等の要素に応じて調整することを可能にし、演奏者が出力を所望する楽音と異なる楽音が出力されてしまう可能性を低減できる。
【0082】
上記実施形態では、電子楽器1がサクソフォンの形状を模した形状を有しているものとして説明したが、これは一例に過ぎず、電子楽器1の形状は、任意のアコースティック管楽器の形状を模した形状であってよい。例えば、電子楽器1の形状は、アコースティック管楽器であるフルートやクラリネットの形状を模した形状であってもよい。
【0083】
なお、本発明に係る各機能を実現するための構成を予め備えた専用の電子楽器を本発明に係る電子楽器として提供できることはもとより、プログラムの適用により、既存の電子楽器を、本発明に係る電子楽器として機能させることもできる。すなわち、本発明に係る電子楽器の各機能を実現させるためのプログラムを、既存の電子楽器を制御するCPU等のプロセッサが実行できるように適用することで、当該既存の電子楽器を本発明に係る電子楽器として機能させることができる。
【0084】
なお、このようなプログラムの適用方法は任意である。プログラムを、例えば、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、メモリーカード等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納して適用できる。さらに、プログラムを搬送波に重畳し、インターネット等の通信媒体を介して適用することもできる。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)にプログラムを掲示して配信してもよい。そして、このプログラムを起動し、OS(Operating System)の制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上記の処理を実行できるように構成してもよい。
【0085】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲とが含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0086】
(付記1)
演奏者による接触操作を受け付ける接触操作手段に接触した演奏者の身体の一部の接触位置を、当該接触操作手段上に基準方向に配列され、演奏者による接触を検出する複数のセンサの出力値に基づいて算出する接触位置算出手段と、
前記接触位置算出手段により算出された接触位置を、当該算出された接触位置に応じた補正値を用いて補正する接触位置補正手段と、
を備える、
ことを特徴とする電子楽器。
【0087】
(付記2)
前記接触位置補正手段により補正された接触位置に応じた楽音を出力する楽音出力手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子楽器。
【0088】
(付記3)
前記複数のセンサは、演奏者の身体が接触しないように構成された基準センサを含み、
前記複数のセンサのうち前記基準センサ以外の各センサに、センサの位置を示す値が予め対応付けられており、
前記接触位置算出手段は、前記基準センサの出力値に応じて前記複数のセンサのうち前記基準センサ以外の各センサの出力値を減少させ、減少後の当該各センサの出力値を重みとして用いて当該各センサの位置を示す値を加重平均することにより接触位置を算出し、
前記接触位置補正手段は、前記接触位置算出手段により算出された接触位置に対応する係数を前記基準センサの出力値に乗算することにより得られた補正値に応じて前記複数のセンサのうち前記基準センサ以外の各センサの出力値を減少させ、減少後の当該各センサの出力値を重みとして用いて当該各センサの位置を示す値を加重平均することにより補正後の接触位置を算出する、
ことを特徴とする付記1又は2に記載の電子楽器。
【0089】
(付記4)
前記接触位置補正手段は、前記接触位置算出手段により算出された接触位置が前記基準センサに第1の位置より近い第2の位置である場合、前記接触位置算出手段により算出された接触位置が当該第1の位置である場合の減少幅より小さい減少幅だけ前記複数のセンサのうち前記基準センサ以外の各センサの出力値を減少させ、減少後の当該各センサの出力値を重みとして用いて当該各センサの位置を示す値を加重平均することにより補正後の接触位置を算出する、
ことを特徴とする付記3に記載の電子楽器。
【0090】
(付記5)
前記複数のセンサのうち前記基準センサ以外の各センサに、前記基準方向に離れた位置に配置されたセンサほど大きな値が対応付けられるように、センサの位置を示す値が予め対応付けられており、
前記接触位置補正手段は、前記接触位置算出手段により算出された接触位置が前記基準方向と反対の方向に第3の位置から離れた第4の位置である場合、前記接触位置算出手段により算出された接触位置が当該第3の位置である場合の減少幅より大きい減少幅だけ前記複数のセンサのうち前記基準センサ以外の各センサの出力値を減少させ、減少後の当該各センサの出力値を重みとして用いて当該各センサの位置を示す値を加重平均することにより補正後の接触位置を算出する、
ことを特徴とする付記3又は4に記載の電子楽器。
【0091】
(付記6)
演奏者による前記補正値を設定する操作を受け付け、
前記接触位置補正手段は、前記接触位置算出手段により算出された接触位置を、演奏者により設定された前記補正値を用いて補正する、
ことを特徴とする付記1乃至5の何れか一つに記載の電子楽器。
【0092】
(付記7)
前記接触操作手段は、演奏者による唇を用いた接触操作を受け付けるリード部、又は演奏者による指を用いた接触操作を受け付けるタッチパッド部に含まれる、
ことを特徴とする付記1乃至6の何れか一つに記載の電子楽器。
【0093】
(付記8)
演奏者による接触操作を受け付ける接触操作手段に接触した演奏者の身体の一部の接触位置を、当該接触操作手段上に基準方向に配列され、演奏者による接触を検出する複数のセンサの出力値に基づいて算出する接触位置算出ステップと、
前記接触位置算出ステップで算出された接触位置を、当該算出された接触位置に応じた補正値を用いて補正する接触位置補正ステップと、
を含む、
ことを特徴とする電子楽器の制御方法。
【0094】
(付記9)
電子楽器を制御するコンピュータを、
演奏者による接触操作を受け付ける接触操作手段に接触した演奏者の身体の一部の接触位置を、当該接触操作手段上に基準方向に配列され、演奏者による接触を検出する複数のセンサの出力値に基づいて算出する接触位置算出手段、
前記接触位置算出手段により算出された接触位置を、当該算出された接触位置に応じた補正値を用いて補正する接触位置補正手段、
として機能させる、
ことを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0095】
1・・・電子楽器、2・・・管体部、3・・・操作子、4・・・マウスピース、5・・・サウンドシステム、6・・・息圧検出部、7・・・接触検出部、8・・・CPU、9・・・ROM、10・・・RAM、11・・・音源、12・・・システムバス、13・・・タッチパッド、13a・・・タッチパッドの左側端部、13b・・・タッチパッドの右側端部、20・・・フィンガーレスト、21・・・ストラップリング、40・・・本体部、40a・・・本体部の吹込口側端部、40b・・・本体部の管体部側端部、41・・・リード部、42・・・固定金具、43・・・吹込口、44・・・リード基板、44a・・・リード基板のティップ側端部、44b・・・リード基板のヒール側端部、60・・・圧力センサ、100・・・キー/スイッチ情報取得部、101・・・息圧情報取得部、102・・・タン検出情報取得部、103・・・リップ検出情報取得部、104・・・温度ドリフト情報取得部、105・・・音高決定部、106・・・音量決定部、107・・・リップ位置算出部、108・・・リップ位置補正部、109・・・音色決定部、110・・・楽音出力部、S0~S22・・・センサ