(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】解析装置、解析方法および解析プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
(21)【出願番号】P 2020158116
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-08-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】今井 雅之
(72)【発明者】
【氏名】北野 芳直
(72)【発明者】
【氏名】宮辻 博文
(72)【発明者】
【氏名】山下 浩史
【審査官】齋藤 健児
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-085913(JP,A)
【文献】特開2013-140050(JP,A)
【文献】特開2020-149290(JP,A)
【文献】特開2003-215051(JP,A)
【文献】特開2019-191127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G01N 21/8921
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシートが貼り合わされたシートを製造する際
におけるシート貼り合わせ後の複数の工程の製造履歴データを取得するデータ取得手段と、
前記複数の工程それぞれにおける前記シート上の長辺方向における位置が同一の製造履歴データを関連付ける位置特定手段と、
前記シートを示すマップ上の対応する位置に、前記長辺方向の位置が同一の製造履歴データ
と、前記複数のシートそれぞれ単体の製造時における製造履歴データおよび検査データの少なくとも一方とを互いに関連付けて表示するマップ表示手段と
を備える解析装置。
【請求項2】
前記データ取得手段は、前記シートの検査データをさらに取得し、
前記マップ表示手段は、前記検査データが取得された位置に対応する前記マップ上の位置に前記検査データを重ねて表示する請求項1に記載の解析装置。
【請求項3】
前記位置特定手段は、時系列の前記製造履歴データを前記シートの長辺方向の位置データに変換し、前記長辺方向の位置が同一の履歴データと関連付ける請求項1または2に記載の解析装置。
【請求項4】
前記マップ表示手段は、複数の前記シートの製造履歴データを処理が行われた順に表示する請求項1から3いずれかに記載の解析装置。
【請求項5】
前記マップ表示手段は、選択された項目の製造履歴データを前記マップ上に表示する請求項1から4いずれかに記載の解析装置。
【請求項6】
前記マップ表示手段は、前記マップ上で選択された項目に関連する情報を表示する請求項1から5いずれかに記載の解析装置。
【請求項7】
複数のシートが貼り合わされたシートを製造する際
におけるシート貼り合わせ後の複数の工程の製造履歴データを取得し、
前記複数の工程間において、前記シート上の長辺方向における位置が同一の製造履歴データを関連付け、
前記シートを示すマップ上の対応する位置に、前記長辺方向の位置が同一の製造履歴データ
と、前記複数のシートそれぞれ単体の製造時における製造履歴データおよび検査データの少なくとも一方とを互いに関連付けて表示する解析方法。
【請求項8】
前記シートの検査データをさらに取得し、
前記検査データが取得された位置に対応する前記マップ上の位置に前記検査データを重ねて表示する請求項7に記載の解析方法。
【請求項9】
時系列の前記製造履歴データを前記シートの長辺方向の位置データに変換し、前記長辺方向の位置が同一の履歴データと関連付ける請求項7または8に記載の解析方法。
【請求項10】
複数のシートが貼り合わされたシートを製造する際
におけるシート貼り合わせ後の複数の工程の製造履歴データを取得する処理と、
前記複数の工程間において、前記シート上の長辺方向における位置が同一の製造履歴データを関連付ける処理と、
前記シートを示すマップ上の対応する位置に、前記長辺方向の位置が同一の製造履歴データ
と、前記複数のシートそれぞれ単体の製造時における製造履歴データおよび検査データの少なくとも一方とを互いに関連付けて表示する処理と
をコンピュータに実行させる解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造履歴の可視化に関するものであり、特に、シート製品の製造履歴の可視化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シート製品は、加工を施す際にロールからシートを引き出し、シートが通過する各装置において表面加工および熱処理等を施して、再度、ロールとして保管する工程を繰り返すことで製造される。そのような方法で、複数の製造工程を経て製造されるシート製品では、製品の異常が発生した際に、異常が発生した個所の製造条件の履歴を調べることが困難であることが多い。そのため、複数の工程で取得されたデータを比較する技術の検討が行われている。そのような、複数の工程で取得されたデータを比較する技術としては、例えば、特許文献1および特許文献2のような技術が開示されている。
【0003】
特許文献1の異物検査方法は、シート製品において、複数の検査工程で検出された異物が同一のものであるかを判定する方法に関するものである。特許文献1の異物検査方法では、各検査工程で検出された異物をシートの長辺方向の座標を基にマップに表示し、異物が存在する領域が重なるかで同じ異物であるかを判定している。また、特許文献2のシート製品の品質監視システムは、巻き出し長から算出した不良の位置と、製造装置の運転状態のデータを関連付けて管理している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-191127号公報
【文献】特開2010-70386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は次のような点で十分ではない。特許文献1の技術は、各検査工程で検出された異物が同一のものであるかを判断しているが、異物が検出された位置の製造条件の履歴データは、作業者がそれぞれの工程について検索して照合する必要があり、複雑で膨大な作業が必要となり得る。また、特許文献2の技術においても、装置の運転状態のデータを検査データに関連付けてはいるが、異物が発生した時点で装置の運転状態の履歴データがどのように変化したかについては関連付けすることができない。そのため、特許文献1および特許文献2の技術は、異常が発生した際に、異常が検出した個所における各工程の製造条件の履歴データを調べる技術としては十分ではない。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するため、シートの各箇所において、複数の工程の製造履歴データを関連付けたデータを容易に参照することができる解析装置等を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の解析装置は、データ取得部と、位置特定部と、表示部を備えている。データ取得部は、シートを製造する際の複数の工程の製造履歴データを取得する。位置特定部は、複数の工程間において、シート上の長辺方向における位置が同一の製造履歴データを関連付ける。表示部は、シートを示すマップ上の対応する位置に、長辺方向の位置が同一の製造履歴データを互いに関連付けて表示する。
【0008】
本発明の解決方法は、シートを製造する際の複数の工程の製造履歴データを取得する。本発明の解決方法は、複数の工程間において、シート上の長辺方向における位置が同一の製造履歴データを関連付ける。本発明の解決方法は、シートを示すマップ上の対応する位置に、長辺方向の位置が同一の製造履歴データを互いに関連付けて表示する。
【0009】
本発明の解析プログラムは、シートを製造する際の複数の工程の製造履歴データを取得する処理をコンピュータに実行させる。本発明の解析プログラムは、複数の工程間において、シート上の長辺方向における位置が同一の製造履歴データを関連付ける処理をコンピュータに実行させる。本発明の解析プログラムは、シートを示すマップ上の対応する位置に、長辺方向の位置が同一の製造履歴データを互いに関連付けて表示する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、シートの各箇所において、複数の工程の製造履歴データを関連付けたデータを容易に参照することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態の構成の概要を示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態の解析装置の構成を示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態の解析装置の動作フローを示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態におけるデータ処理の一例を示す図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態の表示画面の一例を示す図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態の表示画面の一例を示す図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態の表示画面の一例を示す図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態の表示画面の一例を示す図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態の表示画面の一例を示す図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態の表示画面の一例を示す図である。
【
図11】本発明の第1の実施形態の表示画面の一例を示す図である。
【
図12】本発明の第1の実施形態の表示画面の一例を示す図である。
【
図13】本発明の第1の実施形態の製造工程の一例を模式的に示す図である。
【
図14】本発明の第2の実施形態の解析装置の構成を示す図である。
【
図15】本発明の第2の実施形態の解析装置の動作フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態の品質管理システムの構成の概要を示す図である。本実施形態の品質管理システムは、解析装置10と、管理装置20を備えている。本実勢形態の品質管理システムは、シートの製造工程における各履歴データを管理装置20が収集し、解析装置10がシートに対応するマップ上の長辺方向の各位置に各製造工程の履歴データを重ねて表示する機能を有する。
【0013】
管理装置20は、シートの製造工程における各装置および検査装置とネットワークを介して接続されている。
図1では、管理装置20が塗工装置、乾燥装置および検査装置と接続されている例を示している。
図1では、塗工装置2台、乾燥装置2台および検査装置2台が設置されている例を示しているが、装置の種類および台数は、
図1に示した装置の種類および台数には限られない。また、
図1では、ロールから引き出したシートをロールに巻き取る間に各工程において処理および検査が行われる例を示しているが、製品の製造工程においてロールからの引き出しおよび巻き取りは複数回、行われてもよい。
【0014】
解析装置10の構成について説明する。
図2は、解析装置10の構成を示すブロック図である。解析装置10は、データ取得部11と、位置特定部12と、入力受付部13と、マップ表示部14を備えている。
【0015】
データ取得部11は、管理装置20からシートの製造時の各装置における製造条件の履歴データおよび検査データを取得する。シートとは、長辺方向が短辺方向に比べて長く、厚みが薄い製品のことをいう。また、シートは、フィルムとも呼ばれる。
【0016】
データ取得部11は、製造条件の履歴データとしてシートの製造に関するデータを取得する。以下では、製造条件の履歴データのことを製造履歴データともいう。データ取得部11は、シートの製造に関するデータとして、材料、作業者、測定および検査、設備、作業方法、並びに環境のデータを取得する。
【0017】
材料のデータとしては、例えば、材料の品番、ロット番号、使用量、副資材の品番、副資材のロット番号および副資材の使用量のデータが取得される。また、材料のデータには、各ロットの製造工程への供給開始時刻および供給終了時刻の情報が含まれていてもよい。また、材料のデータには、製品および中間製品の品質データが含まれていてもよい。品質データは、例えば、長さ、異物の発生状態、しわの発生状態、傷の発生状態、膜厚および保管期間のデータが取得される。発生状態とは、例えば、形状、位置および数のことをいう。
【0018】
作業者のデータとしては、作業を行った作業者のID、作業内容、作業の着手時間および作業の完了時間のデータが取得される。作業者のデータとしては、点検記録、修繕内容および段取り記録のデータが取得されてもよい。段取り記録とは、例えば、治具の付け替え、装置の試運転および清掃作業の記録のことをいう。
【0019】
測定および検査データとしては、例えば、製品の品番、ロット番号、測定器の識別番号および検査機の識別番号のデータが取得される。測定および検査データとして、製品の品質データが取得される。製品の品質データとしては、例えば、製品の膜厚、表面温度、欠陥、MI(Melt Index)値およびEW(Equivalent Weight)値のデータが取得される。欠陥としては、例えば、製品の異物、しわ、および傷に関するデータが取得される。
【0020】
設備のデータとしては、例えば、製造に使用した設備の設備名、号機番号、運転開始時刻、運転停止時刻、設備停止時間および停止理由のデータが取得される。また、設備のデータとして、設備の設定パラメータのデータが取得される。設備パラメータとしては、例えば、加熱温度、加熱時間、昇温レート、送り速度、巻き取り速度、圧力、張力、塗工量、イオン濃度、回転数および押し出し量のデータが取得される。
【0021】
作業方法のデータとしては、例えば、基本QC(Quality Control)工程表の項目、工程番号、工程名、手順番号、手順名、加工条件、工法、設備の設定値、測定器の設定値、検査装置の設定値、設備管理方法、標準作業方法および標準作業時間のデータが取得される。
【0022】
環境のデータとしては、例えば、建屋内部の温度、湿度、気圧およびパーティクル量のデータが取得される。また、上記に列挙したシートの製造に関するデータは、一例であり、全ての項目のデータが取得されなくてもよく、また、上記以外の項目のデータが取得されもよい。
【0023】
位置特定部12は、製造工程の履歴データをシートの長辺方向の対応する位置に関連付ける。また、位置特定部12は、時系列の履歴データをシートの長辺方向の位置に対応する位置データに変換し、履歴データをシート上の対応する位置に関連付ける。時系列の履歴データを、シート上の長辺方向の位置に対応する位置データに関連付けることで、時系列の履歴データがシートのどの位置の製造履歴に対応するのかを可視化することができる。位置データは、シートの先頭側の端から長辺方向の距離で示される。シートの先頭側の端とは、ロールから引き出されて最初に装置に入る側の端のことをいう。シートの長辺方向は、シートの搬送方向に対応する。位置特定部12は、シートの搬送開始時刻と、搬送速度を基に時系列データの時刻をシートの長辺方向の位置に変換する。
【0024】
入力受付部13は、作業者によるデータ項目の選択結果の入力を受け付ける。入力受付部13は、作業者が表示するデータ項目を選択した際に入力装置から選択結果を取得する。選択結果は、例えば、画面に表示されたデータ項目をマウスでクリックして選択することで入力される。選択結果は、タッチパネルを備える表示装置に表示されたデータ項目を作業者がタッチすることで入力されてもよい。また、入力受付部13は、作業者の音声を認識することでデータ項目の選択結果の入力を受け付けてもよい。音声認識で入力を受け付ける場合には、入力受付部13は、作業者の音声を取得するマイクと接続されている。
【0025】
マップ表示部14は、シート製造時の製造工程の各履歴データと、検査データを重ね合わせたデータを生成する。マップ表示部14は、各データをシートの長辺方向の位置で関連付けたデータを生成し、マップデータを生成する。また、マップ表示部14は、生成したマップデータに基づいたマップを表示装置に出力する。マップ表示部14は、表示するデータ項目を選択する際に用いる表示データをマップとともに表示装置に出力する。
【0026】
管理装置20は、シートの製造工程内の各装置および検査装置からデータを取得し、取得したデータを保存している。管理装置20は、解析装置10が解析に用いるデータを解析装置10に送る。管理装置20は、シートを製造する際の途中工程および最終工程の複数の検査装置から検査データを取得してもよい。管理装置20は、途中工程の複数の検査工程の検査装置から検査データを取得してもよい。また、管理装置20は、途中工程または最終工程のいずれかのみで検査を行う検査装置から検査データを取得してもよい。また、管理装置20は、各装置に処理の開始および製造条件の指示を行う生産管理システムの一部として備えられていてもよい。
【0027】
本実施形態の品質管理システムの動作について説明する。
図3は、解析装置10の動作フローを示す図である。シートの製造時、製造工程の各装置および検査装置は、履歴データおよび検査データをそれぞれ保存する。管理装置20は、あらかじめ定められた期間ごと各装置および検査装置から履歴データを取得する。あらかじめ定められた期間は、時間または日数で設定されている。また、管理装置20は、あらかじめ定められたロット数ごとまたは製造する品種の切り替えが行われる際に各装置および検査装置から履歴データを取得してもよい。管理装置20は、各装置および検査装置から取得した履歴データを装置内部または管理装置20に接続された記憶装置に保存している。
【0028】
図3において、解析装置10のデータ取得部11は、管理装置20から解析対象のロットの履歴データを取得する(ステップS11)。取得される履歴データの項目は、例えば、シートの種類ごとにあらかじめ設定されている。解析対象のロットおよび取得する履歴データの項目は、作業者によって選択されてもよい。
【0029】
データ取得部11が履歴データを取得すると、位置特定部12は、履歴データをシート上の長辺方向の位置に関連付ける(ステップS12)。例えば、履歴データが時刻ごとの装置内の温度データを記録したデータ、すなわち、時系列の温度エータであったとき、位置特定部12は、時刻をシート上の長辺方向の対応する位置に変換する。位置特定部12は、シートの先頭側の端が温度データを取得する部分に入った時刻と、シートの搬送速度を基に、時刻データをシート上の位置データに変換する。
【0030】
位置特定部12は、例えば、シードの搬送速度がA(m/sec)、シートの先頭側の端が温度データを取得する部分に入った時刻がt0であったとき、時刻tにおけるシートの長辺方向の位置を、シートの先頭側の端からの距離D(m)を用いて、D=(t-t0)×Aとして計算する。位置特定部12は、搬送速度が秒を単位としているとき、(t-t0)を、秒を単位とした時刻差として計算する。
【0031】
取得したデータがシートの長辺方向の途中位置からの長さである場合は、位置特定部12は、取得したデータをシートの長辺方向の端からの距離のデータに変換する。取得したデータが、シートの端からの距離に対してのデータであった場合には、取得したデータがそのまま用いられる。
【0032】
位置特定部12が各データをシートの長辺方向の位置に関連付けたデータに変換すると、マップ表示部14は、シートの長辺方向の位置に関連付けた各データをマップ上に表示するマップデータを生成する(ステップS13)。マップデータを生成すると、マップ表示部14は生成されたマップデータを表示装置に表示する(ステップS14)。
【0033】
図4は、履歴データおよびマップデータの例を示した図である。
図4の左側の上段は、製造装置における温度の履歴データの例を示している。
図4の左側の上段の履歴データは、時刻と温度のデータのため、位置特定部12は、時刻と温度のデータを位置と温度のデータに変換する。また、
図4の左側の下段のデータは、検査データの例を示しており、シートの一部にしわが発生している例を示している。
図4の左側の下段のシートの下側の数値は、シートの端からの距離を示している。
図4の左側の下段は、シートの先頭側から300ミリメートルから500ミリメートルの範囲を拡大して示した図である。
【0034】
マップ表示部14は、温度としわを長辺方向の位置によって関連付けたデータを生成し、
図4の右側に示すようなマップデータを生成する。
図4の右側のマップデータは、シートの長辺方向における温度の変化としわが重ねられたマップとして生成されている。
図4の右側のシートの下側の数値は、シートの先頭側の端からの距離を示している。
図4の右側は、シートの先頭側の端から600ミリメートルを超えた付近までを示している。また、
図4の右側の図では、点の密度で
図4の右の上段に示すヒーターで処理をした際の温度の高低を示している。例えば、点の密度が高い400ミリメートル付近は、ヒータによる処理を行った際に他の領域より温度高いことを示している。
図4の右側のようなマップを参照することで、作業者は、シートの先頭側の端から400ミリメートル付近において、しわが発生し、温度が他の領域よりも高いことを認識することができる。シートの発生個所の付近で温度が高いマップを参照することで、作業者は、温度変化がしわの発生要因であると推定することができる。
【0035】
図5は、マップ表示されている検査結果に、温度データの長辺方向の位置が関連付けられてグラフとして表示されている表示画面の例を示している。
図5のマップの下側の数値は、シートの先頭側の端からの距離を示している。また、
図5の下側のグラフは、工程Aの温度データをマップの各位置に関連付けたグラフであり、縦軸方向が温度の高低を示している。
図5の例では、
図4と同様のデータを基に、温度データを検査結果と長辺方向の位置を関連付けて表示することで、作業者は、しわの発生した位置での温度変化をグラフの変化によってより容易に認識することができる。
【0036】
次に、表示されている履歴データの項目を変更する場合について説明する。
図6は、表示されるデータ項目の選択が作業者によって行われる場合の表示画面の例を模式的に示した図である。
図6の表示画面の例では、左側に「検査」、「工程A 温度」、「工程B 圧力」および「工程B 吐出量」のように検査および履歴データの項目のボタンが表示されている。作業者がマウスを用いて表示する項目をクリックすると、入力受付部13を介してマップ表示部14に表示する項目の選択結果が送られる。
図6の例では、「検査」、「工程A 温度」および「工程B 吐出量」が選択され、マップ表示部14は、マップ表示された検査結果と、マップの長辺方向の位置に対応する工程Aの温度および工程Bの吐出量のグラフデータを組み合わせたデータを生成している。データの選択は、タッチパネル式の表示装置で作業者がボタンの部分にタッチすることで行われてもよい。また、一度、選択した個所を再度、マウスによるクリックまたはタッチすることで選択が取り消されるようにしてもよい。
【0037】
次に、マップをクリックまたは画面をタッチすることで表示データの候補が表示される場合について説明する。
図7は、シートの検査結果のみが表示されている例を示している。
図7において、作業者によってしわの部分のマウスを用いてのクリックまたは画面のタッチが行われると、マップ表示部14は、
図8のように関連する工程の履歴データの項目の候補を表示する。作業者が履歴データの候補から表示する項目の選択を行うと、マップ表示部14は、
図9のように選択された項目のデータをマップおよびグラフ上に表示する。
図9の例では、「工程A 温度」、「工程B 圧力」および「工程B 吐出量」が選択された場合を示している。
図9のような表示画面を基に、作業者は、工程Aの温度が変化し、他の項目は変化していないとの結果から、しわは工程Aの温度が原因で生じたと推測することができる。
【0038】
次に、検査結果が表示されているロットの関連ロットの情報を表示する場合の例について説明する。
図10は、
図5のような画面においてしわの部分またはマップをクリックした際に、関連するロット番号が表示された場合の例を示している。関連するロットは、表示されているロットの前後、数ロットのようにあらかじめ設定されている。また、表示されているロットと同一条件または同一材料ロッドで流れたロットが関連するロットとして設定されてもよい。また、表示されているロットに対する処理を行った装置の処理前のメンテナンスから処理後のメンテナンスの間に流れたロットが関連するロットとして設定されてもよい。関連するロットの番号をクリックすることで、さらにクリックされたロットの検査結果および履歴データが表示されるようにしてもよい。このように、関連するロットの情報を表示することで、異常が生じた際に、他のロットにおける異常の有無について容易に確認することができる。
【0039】
次に、複数のシートのデータを表示する場合の例について説明する。
図11は、2シート分のマップを表示した場合の例を示している。このように複数のシートを表示することで、異常が生じたロットのみで生じた変化か複数のロットで共通する異常なのかを把握することができるので、異常の発生の原因の推定がより容易になる。また、複数のシートを表示することで1シート分の製造時間よりも長い時間で異常が生じていないかを判断することもできる。また、
図11では2シート分の例を示したが3シート以上の表示であってもよい。3シート以上の表示とする場合には、例えば、異常が生じたロットの前後のロットのシートを表示することで、異常が他のロットで生じていないかについてより容易に判断することができる。
【0040】
上記の説明では1シートまたは2シート以上の表示する例について示したが、シートの一部分のみを拡大して表示できるようにしてもよい。また、シート全体と、拡大した一部分を同時が同時に表示されるようにしてもよい。作業者の操作に応じて、表示範囲を変更できるようにすることで、異常の要因の解析をより容易に行うことができる。
【0041】
上記の説明では、長辺方向の温度変化を表示する例について示したが、短辺方向の温度変化を表示してもよい。
図12では、マップ上で四角で表示されている欠陥が発生した200ミリメートル付近に短辺方向の膜厚データが表示されている。また、600ミリメートル付近に温度データが表示されている。
図12のような場合には、温度データおよび膜厚データは、転変方向の数か所にあるセンサによって計測され2次元のデータとして記録されている。膜厚と温度とのに図の右側が高い値とすると、シートの先頭側からの距離が200ミリメートルから400ミリメートルの区間の欠陥は、膜厚が薄いことで生じていることがわかる。また、シートの先頭側からの距離が600ミリメートルから800ミリメートル付近の欠陥は、温度が高いことで生じていることがわかる。このように短辺方向の温度分布および膜厚分布を長辺方向の位置に関連付けて表示することで、異常の発生要因の解析をより詳細に行うことができる。
【0042】
上記の説明では、1つのロールから引き出されたシートの例について示したが、上記で説明した例は、複数のロールから引き出されたシートが張り合わされたシートに適用してよい。複数のシートの貼り合わせはラミネートとも呼ばれる。
図13は、3本のロールから引き出されたシートが張り合わされ、各装置における処理および検査が行われたのちに、1本のロールとして巻き取られている状態を模式的に示した図である。
図13のような公正では、各ロール単体の製造時の履歴データおよび検査データと、シートの貼り合わせ後の各工程の履歴データと検査データが長辺方向の位置を関連付けることでマップとして表示される。そのような構成とすることで、複数のシートを貼り合わせて製造されるシートにおいても、シートの貼り合わせ前と、貼り合わせ後のいずれの工程で異常が発生したのかを特定することが容易となる。複数のシートを張り合わせる際には、張り合わせる際の各シートの先頭位置からの長辺方向の位置を基にデータの関連付けが行われる。
【0043】
本実施形態の品質管理システムは、管理装置20が装置の履歴データおよび検査データを収集し、解析装置10がシート上の位置が同一のデータの関連付けを行っている。また、解析装置10は、シート上の位置が同一のデータを互いに関連付けて表示している。そのため、本実施形態の品質管理システムを用いることで、シートの各箇所において、複数の工程の履歴データを関連付けたデータを容易に参照することができる。その結果、本実施形態の品質管理システムでは、位置が同一の履歴データおよび検査データを関連付けて表示することで、製造したシートに異常が生じた際などに、要因を特定することが容易になる。
【0044】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について図を参照して詳細に説明する。
図14は、本実施形態の解析装置の構成の概要を示す図である。本実施形態の解析装置は、データ取得部101と、位置特定部102と、マップ表示部103を備えている。データ取得部101は、シートを製造する際の複数の工程の製造履歴データを取得する。具体的には、データ取得部101は、例えば、シートを製造する際の各装置の製造履歴データおよび検査データを取得する。位置特定部102は、複数の工程間において、シート上の長辺方向における位置が同一の履歴データを関連付ける。マップ表示部103は、シートを示すマップ上の対応する位置に、長辺方向の位置が同一の製造履歴データを互いに関連付けて表示する。具体的には、位置特定部102がシートの長辺方向における位置が同一の製造履歴データおよび検査データを関連付け、マップ表示部103が関連付けられたデータのマップ表示を行う。
【0045】
ここで、第1の実施形態のデータ取得部11は、データ取得部101の一例である。また、データ取得部101は、データ取得手段の一態様である。第1の実施形態の位置特定部12は、位置特定部102の一例である。また、位置特定部102は、位置特定手段の一態様である。マップ表示部103は、第1の実施形態のマップ表示部14の一例である。また、マップ表示部14は、マップ表示手段の一態様である。
【0046】
本実施形態の解析装置の動作について説明する。
図15は、本実施形態の解析装置の動作フローを示す図である。解析装置のデータ取得部101は、シートを製造する際の複数の工程の製造履歴データを取得する(ステップS21)。製造履歴データが取得されると、位置特定部102は、複数の工程間において、シート上の長辺方向における位置が同一の製造履歴データを関連付ける(ステップS22)。位置が同一の製造履歴データが関連付けられると、マップ表示部103は、シートを示すマップ上の対応する位置に、長辺方向の位置が同一の製造履歴データを互いに関連付けて表示する(ステップS23)。
【0047】
本実施形態の解析装置は、複数の工程の履歴データについて、シートの長辺方向の位置が同一の製造履歴データを関連付け、シートを示すマップ上の対応する位置に互いに関連付けて表示している。そのため、本実施形態の解析装置を用いることで、シートの各箇所において、複数の工程の製造履歴データを関連付けたデータをマップ上で参照することができるので、シートの製造工程における複数の工程間の製造履歴を可視化された状態で比較することができる。
【0048】
第1の実施形態の解析装置10および第2の実施形態の解析装置における各処理は、コンピュータプログラムをコンピュータで実行することによって行うことができる。
図16は、第1の実施形態の解析装置10および第2の実施形態の解析装置における各処理を行うコンピュータプログラムを実行するコンピュータ200の構成の例を示したものである。コンピュータ200は、CPU(Central Processing Unit)201と、メモリ202と、記憶装置203と、入出力I/F(Interface)204と、通信I/F205を備えている。また、第1の実施形態の管理装置20も、同様の構成とすることができる。
【0049】
CPU201は、記憶装置203から各処理を行うコンピュータプログラムを読み出して実行する。メモリ202は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等によって構成され、CPU201が実行するコンピュータプログラムや処理中のデータが一時記憶される。記憶装置203は、CPU201が実行するコンピュータプログラムを記憶している。記憶装置203は、例えば、不揮発性の半導体記憶装置によって構成されている。記憶装置203には、ハードディスクドライブ等の他の記憶装置が用いられてもよい。入出力I/F204は、作業者からの入力の受付および表示データ等の出力を行うインタフェースである。通信I/F205は、各装置および作業者の端末等との間でデータの送受信を行うインタフェースである。
【0050】
また、各処理の実行に用いられるコンピュータプログラムは、記録媒体に格納して頒布することもできる。記録媒体としては、例えば、データ記録用磁気テープや、ハードディスクなどの磁気ディスクを用いることができる。また、記録媒体としては、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の光ディスクを用いることもできる。不揮発性の半導体記憶装置を記録媒体として用いてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 解析装置
11 データ取得部
12 位置特定部
13 入力受付部
14 マップ表示部
20 管理装置
101 データ取得部
102 位置特定部
103 マップ表示部
200 コンピュータ
201 CPU
202 メモリ
203 記憶装置
204 入出力I/F
205 通信I/F