(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】化粧材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20241022BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20241022BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B3/30
B32B27/20 Z
(21)【出願番号】P 2020159461
(22)【出願日】2020-09-24
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】臼井 寛詠
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 健
(72)【発明者】
【氏名】飯原 美幸
(72)【発明者】
【氏名】岩田 真次
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-044817(JP,A)
【文献】登録実用新案第3212315(JP,U)
【文献】特開昭56-005786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の一方の面側に、粒子を含有
し、前記基材の面の法線方向には突出して設けられ、前記基材の面内方向には任意の形状である複数の凸部が配列された模様形成層とを備え、
前記複数の凸部には、
前記突出する方向の大きさである厚さが異なる少なくとも2種類の凸部
として第一凸部及び第二凸部を含み、
前記第一凸部の厚さは55μm以上とされ、前記第二凸部の厚さは前記第二凸部の厚さよりも15μm以上小さくされており、
前記第一凸部には、平均粒子径が5μm以上20μm以下の第一粒子と平均粒子径が50μm以上100μm以下で前記第一粒子より平均粒子径が10μm以上大きい第二粒子とを内包し、
前記第二凸部には、前記第一粒子のみが配置されている、
化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
建材、家具、電気製品及び車両の内装材等の表面には、意匠性を付与するために化粧材が用いられている。化粧材は、意匠性を高めるために、印刷模様として、木目模様、石目模様、布目模様、皮目模様、幾何模様及び抽象柄模様等が施されることがある。そして、化粧材は、意匠性をさらに高めるために、印刷模様を厚膜で形成することで凹凸外観及び触感を付与することが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-44817号公報
【文献】特開2018-171771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、需要者の高級志向の高まり、又は、多様なニーズに伴い、さらに複雑な意匠が求められ、より厳しい要求に対応する必要が生じている。特許文献1及び特許文献2のような厚さが異なる凸部を備える化粧材にも特有の意匠性は認められるものの、これとは異なる又はさらなる単調となることを抑えるものも必要とされるようになってきた。
【0005】
そこで本開示は上記の点に鑑み、視覚効果及び触感がこれまでとは異なる化粧材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの態様は、基材と、基材の一方の面側に、粒子を含有する複数の凸部が配列された模様形成層とを備え、複数の凸部には、厚さが異なる少なくとも2種類の凸部を含み、2種類の凸部では、一方の凸部に含まれて他方の凸部には含まれない平均粒子径の粒子を有する、化粧材である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の化粧材によれば、視覚効果及び触感がこれまでとは異なる化粧材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、化粧材10の一部を模式的に示した斜視図である。
【
図2】
図2は、化粧材10の一部を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ各形態について説明する。本発明はこれら形態に限定されるものではない。以下に示す図面では分かりやすさのため部材の大きさや比率を変更または誇張して記載することがある。また、見易さのために説明上不要な部分の図示や繰り返しとなる符号は省略することがある。
【0010】
[化粧材の形態]
図1は1つの形態にかかる化粧材10の一部を拡大し、模様形成層12側を上(+z方向)とした斜視図である。
図1及び
図2に示す図には便宜のため、方向を表す矢印(x、y、z)、即ち座標系も併せて表記した。ここでxy方向は化粧材10における面内方向、z方向は厚さ方向である。
図1からわかるように、本形態で化粧材10は、基材11及び該基材11の一方の面に具備された模様形成層12を有している。
化粧材10が木目模様の外観を表現するものである場合、化粧材により意匠の再現を目指す木材としては、特に制限はないが、杉、檜、胡桃、松及び桜等が挙げられる。
以下、各構成について詳しく説明する。
【0011】
<基材>
基材11の形態は、フィルム、シート、平板及び曲面板等のいずれであってもよい。基材11としては、通常化粧材として用いられるものであれば、特に限定されず、樹脂基材、金属基材、窯業系基材、繊維質基材及び木質系基材等を用途に応じて適宜選択することができる。上記各基材はそれぞれ単独で使用してもよいが、例えば、樹脂基材と木質系基材の複合体、樹脂基材と金属基材の複合体等の任意の組み合わせによる積層体であってもよい。基材11が積層体である場合は、積層体のそれぞれの層間にプライマー層をさらに設ける等の構成であってもよい。
【0012】
基材11として用いられる樹脂基材としては、各種の合成樹脂からなるものが挙げられる。合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、アイオノマー、各種ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合等の塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレングリコール-テレフタル酸-イソフタル酸共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等のアクリル樹脂、ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド樹脂、三酢酸セルロース、セロファン、セルロイド等のセルロース系樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)等のスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合、エチレン-ビニルアルコール共重合、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂及びポリイミド樹脂等が挙げられる。
なお、本願明細書中において、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、及び「(メタ)アクリロイル基」は、各々、「アクリル酸又はメタクリル酸」、「アクリレート又はメタクリレート」、及び「アクリロイル基又はメタクリロイル基」を意味する。
【0013】
基材11として用いられる金属基材としては、例えば、アルミニウム又はジュラルミン等のアルミニウムを含む合金、鉄又は炭素鋼、ステンレス鋼等の鉄を含む合金、銅又は真鍮、青銅等の銅を含む合金、チタニウム等からなるものが挙げられる。また、基材11としては、これらの金属をめっき等によって施したものを使用することもできる。
【0014】
基材11として用いられる窯業系基材としては、例えば、セメント、ALC(軽量気泡コンクリート)、石膏、珪酸カルシウム、木片セメント等の非セラミック系窯業系材料、陶磁器、土器、ガラス、琺瑯等のセラミック系窯業系材料等からなるものが挙げられる。
【0015】
基材11として用いられる繊維質基材としては、例えば、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙、リンター紙、板紙及び石膏ボード用原紙等の紙基材が使用できる。これらの紙基材は、紙基材の繊維間ないしは他層と紙基材との層間強度を上げるため、ケバ(毛羽)立ち防止のために、更に、アクリル樹脂、スチレンブタジエンゴム、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂を添加(抄造後樹脂含浸、又は抄造時に内填)させたものでもよい。樹脂を添加した紙基材としては、例えば、紙間強化紙、樹脂含浸紙等が挙げられる。
また、基材11として用いられる繊維質基材としては、建材分野で使われることが多い紙基材の表面に塩化ビニル樹脂層を設けたビニル壁紙原反等が挙げられる。
また、基材11として用いられる繊維質基材としては、事務分野又は通常の印刷及び包装等に用いられているコート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙及び和紙等が挙げられる。
また、基材11として用いられる繊維質基材としては、上述した紙基材とは区別されるが、紙に似た外観と性状を持つ各種繊維の織布及び不織布も挙げられる。各種繊維としては、絹、木綿、麻等の蛋白質系又はセルロース系の天然繊維、ガラス繊維、石綿繊維、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維及び炭素繊維等の無機質繊維が挙げられる。また、各種繊維としては、ポリエステル繊維、アクリル繊維及びビニロン繊維等の合成樹脂繊維が挙げられる。
【0016】
基材11として用いられる木質系基材としては、例えば、杉、檜、松、欅、楢、樫、ラワン、チーク、等の各種木材の単板、合板、集成材、パーティクルボード及び中密度繊維板(MDF)等が挙げられる。
【0017】
基材11の厚さは、特に制限はないが、機械的強度、取扱性及び経済性の観点から、20μm以上100mm以下であることが好ましく、50μm以上50mm以下であることがより好ましく、100μm以上30mm以下であることがさらに好ましい。
【0018】
基材11は、化粧材を構成する他の層との密着性の向上のため、あるいは、被着材との接着性の強化等のために、その片面又は両面に、酸化法、凹凸化法等の物理的表面処理、又は化学的表面処理等の表面処理を施すことができる。
酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン-紫外線処理法等が挙げられ、凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材11の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が、表面処理の効果及び操作性等の面から好ましく用いられる。
また、基材11と他の層との層間密着性の向上、被着材との接着性の強化等のために、基材11の表面にプライマー層をさらに設ける等の構成であってもよい。
【0019】
<模様形成層>
模様形成層12は、本形態の化粧板の意匠性及び装飾性を高めるために設けられる層である。模様形成層12が形成する模様としては、少なくとも一部領域が視覚的に認識可能な厚さT(T1、T2、…)の凸部(13、14)を複数有し、これにより凹凸形状を視覚的に認識可能なものとされる。例えば、年輪の秋材部が隆起した所謂浮造り調木板、導管溝群を有する木板、目地溝を有する羽目板状の木板等の表面の木目模様、花崗岩板の劈開面等の石板表面の凹凸構造を含む石目模様、繊維乃至糸を織った構造を含む布目模様、皮目模様(皮シボ模様ともいう)、目地溝を含むタイル貼り模様、目地溝を含む煉瓦積模様、砂目模様、梨地模様、凹条部と凸条部とが其の延在方向を互いに平行にして複数配列させた所謂万線状凹凸模様(光線彫模様ともいう)、幾何学模様、文字、図形、規則的模様、抽象柄模様等があり、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様もある。
【0020】
模様形成層12は、厚さの異なる少なくとも2種の凸部を有しており、それぞれの凸部が複数配置されている。本形態で化粧材10は第一凸部13及び第二凸部14を有している。
【0021】
図1からわかるように、第一凸部13は最大厚さT
1を有して所定の領域に亘って凸部を形成し、第二凸部14は最大厚さT
2を有して所定の領域に亘って凸部を形成する。本形態では第一凸部13及び第二凸部14は直方体であるが、第一凸部13、第二凸部14の形状は平面視形状(xy平面方向になす形状)、及び、厚み形状(z方向形状)のいずれについても限定されることはない。これら形状が三角形、四角形等の多角形、円形、楕円形、その他の曲線、及び、直線と曲線による不定形形状等どのような形状であってもよい。ここで厚さT
1は第一凸部13のうち最も厚い部分の厚さ、厚さT
2は第二凸部14のうち最も厚い部分の厚さを意味する。
【0022】
模様形成層12は、上記のように、互いに厚さが異なる少なくとも2種類の凸部である第一凸部13及び第二凸部14を有する。第一凸部13の厚さT1は、第二凸部14の厚さT2と比して厚く、即ち、T1>T2で構成される。互いに厚さが異なる第一凸13と第二凸部14とを有することで、それぞれの箇所における視覚効果及び触感が異なり、より複雑かつ高度な意匠性を得ることができる。ここで、第一凸部13の厚さT1と第二凸部14の厚さT2との差T1-T2は、視覚上及び触感上、実質的に、判別可能な程度とする必要が有り、T1-T2≧15μmとすることが好ましい。なお、厚さT1は、絵柄による視覚効果及び触感を良好に発揮する観点から、20μm以上90μm以下が好ましく、22μm以上70μm以下がより好ましく、25μm以上50μm以下がさらに好ましい。
【0023】
図2は
図1にIIで示した方向から見た図で化粧材10のxz面における断面を示した。
図2ではわかりやすさのため断面にハッチングを付していない。
図2からわかるように、第一凸部13及び第二凸部14には粒子が含まれている。第一凸部13と第二凸部14とでは、異なる平均粒子径の粒子が少なくとも1種類含まれる。これにより、さらにこれまでとは異なる触感及び視覚的表現が可能となる。本形態では、第一凸部13には第一粒子15及び第二粒子16が含まれており、第二凸部14には第一粒子15のみが含まれている。すなわち、本形態では第二粒子16が含まれるか否かで第一凸部13と第二凸部14とが異なる。
なお、粒子の平均粒子径は、株式会社島津製作所製のレーザ回折式粒度分布測定装置「SALD-2100-WJA1」を使用し、圧縮空気を利用してノズルから測定対象となる粉体を噴射し、空気中に分散させて測定する噴射型乾式測定方式による測定値を平均したものである。
【0024】
ここで平均粒子径は特に限定されることはないが、その粒子が含まれる凸部の厚さよりも小さいことが好ましい。これにより粒子を凸部に内在させ粒子が凸部の骨格となることで、凸部の厚さ(T1、T2)を制御することが容易になる。より具体的には第一粒子15の平均粒子径を5μm~20μm、第二粒子16の平均粒子径を20μm~100μmとすることができる。通常、厚さが大きい凸部(本形態では第一凸部13)に平均粒子径が大きい粒子及び平均粒子径が小さい粒子が含まれ、厚さが小さい凸部(本形態では第二凸部14)に平均粒子径が小さい粒子のみが含まれる。
第一粒子15と第二粒子16との平均粒子径の差は特に限定されることはないが、10μm以上であることが好ましい。
【0025】
第一凸部13、第二凸部14を構成する材料(粒子以外の部位)は、二液硬化樹脂、熱可塑樹脂、熱硬化樹脂及び電離放射線硬化樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0026】
二液硬化樹脂としては、ポリオール化合物を主剤としイソシアネート化合物を硬化剤とする二液硬化型ウレタン樹脂、二液硬化型エポキシ樹脂、二液硬化型ウレタン変性アクリル樹脂及び二液硬化型ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0027】
熱可塑樹脂としては、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ナイロン、ポリスチレン及びABS樹脂等が挙げられる。
【0028】
熱硬化樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、尿素メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。熱硬化樹脂には、必要に応じて硬化剤が添加される。
【0029】
電離放射線硬化樹脂は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物を含む組成物である。電離放射線硬化性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基、及びエポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。
電離放射線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和結合基を有する化合物が好ましい。また、化粧シートを製造する過程で樹脂層が傷つくことを抑制する観点からは、電離放射線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する化合物がより好ましく、中でも、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する、多官能性(メタ)アクリレート系化合物がさらに好ましい。多官能性(メタ)アクリレート系化合物としては、モノマー及びオリゴマーのいずれも用いることができる。
なお、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合又は架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も使用可能である。
【0030】
多官能性(メタ)アクリレート系化合物のうち、2官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエトキシジアクリレート、ビスフェノールAテトラプロポキシジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート等が挙げられる。
3官能以上の(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、上記(メタ)アクリレート系モノマーは、分子骨格の一部を変性しているものでもよく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトン、イソシアヌル酸、アルキル、環状アルキル、芳香族、ビスフェノール等による変性がなされたものも使用することができる。
【0031】
また、多官能性(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等のアクリレート系重合体等が挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、多価アルコール及び有機ジイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって得られる。
また、好ましいエポキシ(メタ)アクリレートは、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と多塩基酸と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、及び2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等とフェノール類と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートである。
上記電離放射線硬化樹脂は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
電離放射線硬化樹脂が紫外線硬化性樹脂である場合には、組成物は、光重合開始剤及び光重合促進剤等の添加剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、エチレン性不飽和基を有する化合物の場合は、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサントン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。
光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができるものである。光重合促進剤としては、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0033】
これらは透明であってもよいが、必要に応じて着色されていてもよい。着色する場合は、組成物に対して着色剤(顔料又は染料)を添加して着色することができる。着色剤としては、公知又は市販の顔料又は染料を適宜使用することができる。着色剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、着色剤の添加量も、所望の色合い等に応じて適宜設定することができる。
【0034】
また、これら組成物には必要に応じて充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、ラジカル捕捉剤、軟質成分(例えばゴム)等の各種の添加剤が含まれていてもよい。
【0035】
粒子(第一粒子、第二粒子)のこれら組成物への配合量は、触感の付与も可能となる観点から、組成物100質量部に対して、5質量部以上60質量部以下であることが好ましく、5質量部以上50質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上40質量部以下であることがさらに好ましい。
粒子としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂及びナイロン等のポリアミド樹脂等の樹脂、或いはシリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア(二酸化チタン)、カオリナイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機材料等からなるビーズを挙げることができる。粒子は、上述の1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
以上のようにして構成される複数の第一凸部13及び第二凸部14は必要とされる模様に対応して配置される。化粧材の模様が年輪部を有する木目模様である場合、木目模様の意匠外観及び触感を良好に再現する形態として、複数の第一凸部13の配置により年輪部における秋材(晩材)部を構成し、複数の第二凸部14の配置により年輪部における春材(早材)部を構成することができる。
又、木目模様の意匠外観及び触感を良好に再現する他の形態として、化粧材の模様が節穴を有する木目模様において、複数の第一凸部13の配置により節穴を構成し、複数の第二凸部14の配置により木目模様における節穴以外の部分、例えば春材(早材)部を構成することができる。
このような構成とすることで、木目調の化粧材は、本物の木材に近い視覚効果及び触感效果を得ることができる。
【0037】
<その他の構成>
(絵柄模様層)
本開示の化粧材は、基材11と模様形成層12との間に絵柄模様層(図示せず)をさらに備えてもよい。絵柄模様層は、化粧材に意匠性を付与することができる。絵柄模様層が形成する模様としては、木目模様、石目模様(花崗岩の劈開面等)、布目模様、皮目模様、タイル貼り模様(目地溝を含む)、煉瓦積模様(目地溝を含む)、砂目模様、梨地模様、光線彫模様、幾何学模様、文字、図形、規則的模様、抽象柄模様等があり、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様もある。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色及び黒色等のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。
【0038】
絵柄模様層は、顔料、染料等の着色剤を目的の意匠が得られるように適宜配置したものである。絵柄模様層は、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、スプレー印刷及びインクジェット印刷等の印刷手法、並びに、印刷された図柄を転写する転写手法等により形成される。絵柄模様層は、単層であってもよいが、2以上の層から形成されるものであってもよい。
【0039】
絵柄模様層の形成に用いられるインキとしては、バインダー樹脂に顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したものが使用される。
バインダー樹脂としては、特に制限はなく、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
着色剤としては、特に制限はなく、例えば、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、ニッケルアゾ錯体、フタロシアニンブルー、アゾメチンアゾブラック等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が用いられる。
絵柄模様層中には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を含有してもよい。
【0040】
絵柄模様層の厚さは、絵柄による意匠性を良好に発揮する観点から、0.1μm以上40μm以下が好ましく、0.3μm以上20μm以下がより好ましく、0.5μm以上10μm以下がさらに好ましい。
【0041】
(艶消し層)
本開示の化粧材は、模様形成層12に艶消し層(図示せず)をさらに備えることができる。艶消し層は、周辺の領域との艶差を発生させて視覚的な凹凸感を発現させることができる。
艶消し層は、模様形成層12の全面に設ける構成であってもよいが、周辺の領域との艶差を発生させて視覚的な凹凸感を発現させることを考慮すると、凸部の直上部及び近傍に設けることが好ましく、凸部の直上部に限定的に設けることがより好ましい。
【0042】
艶消し層は、艶消し効果を向上させる観点から、艶消し剤を含有させることが好ましい。
艶消し剤としては、無機微粒子及び有機微粒子を挙げることができる。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、アルミノシリケート、カオリナイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム及びガラス等からなる粒子を挙げることができる。
有機微粒子としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン-メラミン-ホルムアルデヒド縮合物等からなる粒子を挙げることができる。
艶消し剤としては、艶消し効果が高く、艶の制御が容易に行えるという観点から、シリカ粒子が好適である。また、艶消し剤としては、上述の1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
艶消し剤の粒径は、艶消し効果及び艶の制御の観点から、1μm以上10μm以下であることが好ましく、2μm以上9μm以下であることがより好ましく、3μm以上7μm以下であることがさらに好ましい。
【0043】
(裏打基材)
化粧材は、基材11のうち模様形成層12が設けられている面の反対面側に裏打基材(図示せず)をさらに備えることが好ましい。裏打基材は、化粧材を補強したり、被着体との接着性を付与したり、隠蔽性を付与したりするために必要に応じて設けられる。
【0044】
裏打基材としては、樹脂シート、紙、不織布、織布及び金属箔等を用いることができる。このうち樹脂シートとしては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂等をシート状にしたものを用いることができる。
【0045】
裏打基材の厚さは、補強性、接着性及び隠蔽性を向上させる観点から、0.05mm以上0.15mm以下が好ましく、0.06mm以上0.13mm以下がより好ましく、0.08mm以上0.12mm以下がさらに好ましい。
【0046】
(接着剤層)
化粧材は、基材11、模様形成層12、絵柄模様層、艶消し層及び裏打基材の少なくとも1つの間に、接着剤層(図示せず)が設けられていることが好ましい。接着剤層は、基材11、模様形成層12、絵柄模様層、艶消し層及び裏打基材の各層の接合を補助する機能を有し、各層の接合を強固にすることができる。
接着剤層としては、二液硬化樹脂、熱可塑樹脂、熱硬化樹脂及び電離放射線硬化樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0047】
(プライマー層)
化粧材は、基材11、模様形成層12、絵柄模様層、艶消し層及び裏打基材の少なくとも1つの間に、プライマー層(図示せず)が設けられていることが好ましい。プライマー層は、基材1、模様形成層12、絵柄模様層、艶消し層及び裏打基材の各層の接合を補助する機能を有し、各層の接合を強固にすることができる。
プライマー層としては、プライマー層を挟んで対峙する両層の密着性が向上する樹脂を適宜選定すればよく、特に制限は無い。
【0048】
本開示の実施の形態に係る化粧材によれば、視覚効果及び触感により複雑かつ高度な意匠性を有する化粧材を提供することができる。
【実施例】
【0049】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
【0050】
実施例として上記化粧材10に倣って化粧材を作製した。具体的には、T1=55μmの第一凸部、T2=15μmの第二凸部とし、第一凸部には平均粒子径50μmの粒子と平均粒子径12μmの粒子を含め、第二凸部には平均粒子径12μmの粒子のみを含めた。
ここで基材は45g/m2厚さの紙(表面に木目柄をグラビア印刷したもの)であり、凸部はアクリルポリオール樹脂に上記平均粒子径を有するアクリル樹脂による粒子を含有した組成物を用いた。配合はアクリルポリオール樹脂100質量部に対して12μm粒子を14質量部、50μm粒子を19質量部含むものである。
また、第一凸部と第二凸部との面積比(平面視で占める比率)は3:7とし、幅(x方向大きさ)を280μm、隣り合う凸部の間隔を20μmとして複数の第一凸部と第二凸部とを木目表面の模様となるように配列した。
【0051】
これに対して、比較例として、厚さが55μmのみの凸部を有し、含まれる粒子は平均粒子径が50μmのみとして、他は実施例と同様の化粧材を作製した。
【0052】
実施例及び比較例で作製した化粧材の表面に対して凹凸模様による意匠性チェックを行った。意匠性をかなり高く感じるものを2点、意匠性を感じるものを1点、意匠性をほとんど感じないものを0点として、20人の被験者が評価を行い、平均点を算出した。
A:平均点が1.5以上のもの
B:平均点が1.0以上1.5未満のもの
C:平均点が1.0未満のもの
【0053】
実施例及び比較例で作製した化粧材の表面に対して指触チェックを行った。かなり凹凸を感じるものを2点、凹凸を感じるものを1点、凹凸をほとんど感じないものを0点として、20人の被験者が評価を行い、平均点を算出した。
A:平均点が1.5以上のもの
B:平均点が1.0以上1.5未満のもの
C:平均点が1.0未満のもの
【0054】
評価の結果、意匠性及び指触チェックのいずれについても実施例の化粧材が比較例の化粧材より高い評価を得た。
【符号の説明】
【0055】
10 化粧材
11 基材
12 模様形成層
13 第一凸部
14 第二凸部
15 第一粒子
16 第二粒子