IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

特許7574594タイヤ部材の成型装置及びこれを用いたタイヤの製造方法
<>
  • 特許-タイヤ部材の成型装置及びこれを用いたタイヤの製造方法 図1
  • 特許-タイヤ部材の成型装置及びこれを用いたタイヤの製造方法 図2
  • 特許-タイヤ部材の成型装置及びこれを用いたタイヤの製造方法 図3
  • 特許-タイヤ部材の成型装置及びこれを用いたタイヤの製造方法 図4
  • 特許-タイヤ部材の成型装置及びこれを用いたタイヤの製造方法 図5
  • 特許-タイヤ部材の成型装置及びこれを用いたタイヤの製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】タイヤ部材の成型装置及びこれを用いたタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/24 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
B29D30/24
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020163823
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022056045
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】福井 早紀
(72)【発明者】
【氏名】大牟田 拓也
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-117284(JP,A)
【文献】特開2016-117173(JP,A)
【文献】特開2020-099993(JP,A)
【文献】特開2014-037138(JP,A)
【文献】特開2020-015198(JP,A)
【文献】特開2007-136935(JP,A)
【文献】特開2017-007202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D30/00-30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のタイヤ部材を成型するためのタイヤ部材の成型装置であって、
円筒状のドラム本体を備え、
前記ドラム本体は、軸心を揃えてドラム軸方向に並ぶ第1ドラム本体と第2ドラム本体とを含み、
前記第1ドラム本体及び前記第2ドラム本体は、それぞれ、拡縮径可能であり、かつ、ドラム軸方向に互いに接近及び離隔可能に構成されており、
前記第1ドラム本体及び前記第2ドラム本体のドラム軸方向の内縁部は、それぞれ、凹部と凸部とがドラム周方向に並んでおり、
前記第1ドラム本体の前記凸部は、前記第2ドラム本体の凹部内に進入でき、かつ、前記第2ドラム本体の前記凸部は、前記第1ドラム本体の凹部内に進入できるように、前記凸部及び前記凹部がそれぞれ形成されており、
前記凸部は、それぞれ根元から先端に向かってドラム周方向の幅が小さくなっており、
前記凸部は、前記根元から前記先端側まで前記幅が連続して小さくなっている、
タイヤ部材の成型装置。
【請求項2】
前記凸部は、前記先端側が円弧状に丸められている、請求項1に記載のタイヤ部材の成型装置。
【請求項3】
前記凹部の最深部は円弧状に丸められている、請求項1又は2に記載のタイヤ部材の成型装置。
【請求項4】
前記凹部は、前記最深部から開放側に向かって幅広に形成されている、請求項に記載のタイヤ部材の成型装置。
【請求項5】
前記凹部の前記最深部の曲率半径は、前記凸部の前記先端の曲率半径よりも大きい、請求項3又は4に記載のタイヤ部材の成型装置。
【請求項6】
前記凸部のドラム周方向の長さは、ドラム半径方向の内側に向かって小さくなっている、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタイヤ部材の成型装置。
【請求項7】
前記ドラム本体の外周面に貼り付けられた前記タイヤ部材を押し付けるための押圧具をさらに含む、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のタイヤ部材の成型装置。
【請求項8】
前記押圧具は、ローラーを含む、請求項に記載のタイヤ部材の成型装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のタイヤ部材の成型装置を用いてタイヤ部材を成型する工程を含む、タイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ部材の成型装置及びこれを用いたタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、タイヤ部材が貼り付けられるドラムが記載されている。前記ドラムは、軸心方向に2分割されて近離移動可能に支持された第1のセグメント片と第2のセグメント片とを含んでいる。前記第1、第2のセグメント片の各内端部は、凹部と凸部とが周方向に交互に配される凹凸部を具えている。前記第1、第2のセグメント片の各前記凹凸部は、互いに噛み合い可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-15198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のドラムでは、前記第1、第2のセグメント片の各凸部が実質的に一定の幅で形成されており、例えば、いずれかの前記セグメント片がドラム周方向に少しでも位置ずれすると、前記凸部同士が干渉し、各前記凹凸部が噛み合いづらいという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、一方のセグメントの凹部と他方のセグメントの凸部とを噛み合いやすくした(以下、「噛み合い性能」という場合がある。)タイヤ部材の製造装置及びこれを用いたタイヤの製造方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、環状のタイヤ部材を成型するためのタイヤ部材の成型装置であって、円筒状のドラム本体を備え、前記ドラム本体は、軸心を揃えてドラム軸方向に並ぶ第1ドラム本体と第2ドラム本体とを含み、前記第1ドラム本体及び前記第2ドラム本体は、それぞれ、拡縮径可能であり、かつ、ドラム軸方向に互いに接近及び離隔可能に構成されており、前記第1ドラム本体及び前記第2ドラム本体のドラム軸方向の内縁部は、それぞれ、凹部と凸部とがドラム周方向に並んでおり、前記第1ドラム本体の前記凸部は、前記第2ドラム本体の凹部内に進入でき、かつ、前記第2ドラム本体の前記凸部は、前記第1ドラム本体の凹部内に進入できるように、前記凸部及び前記凹部がそれぞれ形成されており、前記凸部は、それぞれ根元から先端に向かってドラム周方向の幅が小さくなっている。
【0007】
本発明に係るタイヤ部材の成型装置は、前記凸部が、前記根元から前記先端側まで前記幅が連続して小さくなっている、のが望ましい。
【0008】
本発明に係るタイヤ部材の成型装置は、前記凸部が、前記先端側が円弧状に丸められている、のが望ましい。
【0009】
本発明に係るタイヤ部材の成型装置は、前記凹部の最深部が円弧状に丸められている、のが望ましい。
【0010】
本発明に係るタイヤ部材の成型装置は、前記凹部が、前記最深部から開放側に向かって幅広に形成されている、のが望ましい。
【0011】
本発明に係るタイヤ部材の成型装置は、前記凹部の前記最深部の曲率半径が、前記凸部の前記先端の曲率半径よりも大きい、のが望ましい。
【0012】
本発明に係るタイヤ部材の成型装置は、前記凸部のドラム周方向の長さが、ドラム半径方向の内側に向かって小さくなっている、のが望ましい。
【0013】
本発明に係るタイヤ部材の成型装置は、前記ドラム本体の外周面に貼り付けられた前記タイヤ部材を押し付けるための押圧具をさらに含む、のが望ましい。
【0014】
本発明に係るタイヤ部材の成型装置は、前記押圧具が、ローラーを含む、のが望ましい。
【0015】
本発明は、請求項1~9のいずれか1項に記載のタイヤ部材の成型装置を用いてタイヤ部材を成型する工程を含む、タイヤの製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上記の構成を採用することで、噛み合い性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態の成型装置の部分正面図である。
図2】第1ドラム本体の横断面図である。
図3】ドラム本体の縦断面の拡大図である。
図4】(a)及び(b)は、第1ドラム本体及び第2ドラム本体の平面図である。
図5】(a)は、第1ドラム本体の平面図、(b)は、(a)のA-A線断面図である。
図6】押圧具及びタイヤ部材を説明するためのドラム本体の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のタイヤ部材の成型装置(以下、単に、「成型装置」という場合がある。)1の部分正面図である。成型装置1は、環状のタイヤ部材Tを成型するための装置である。本実施形態のタイヤ部材Tとしては、シェーピング前の円筒状の1次成形体(図示省略)や加硫前の生タイヤが含まれる。また、本実施形態の成型装置1で製造されたタイヤ部材Tは、例えば、乗用車用や重荷重用の空気入りタイヤや、空気が充填されない非空気式タイヤ等、種々のタイヤに用いられる。
【0019】
タイヤ部材Tは、例えば、インナライナゴムT1、カーカスプライT2、クリンチゴムT3、ビードコアT4、ビードエーペックスゴムT5、サイドウォールゴムT6(図7に示す)などのタイヤの周知の構成部材を含んでいる。
【0020】
図1に示されるように、本実施形態の成型装置1は、円筒状のドラム本体2と、タイヤ部材Tをドラム本体2に押し付けるための押圧具3(図7に示す)とを含んでいる。
【0021】
ドラム本体2は、ドラム軸方向に並ぶ第1ドラム本体4と第2ドラム本体5とを含んでいる。第1ドラム本体4と第2ドラム本体5とは、軸心2cを揃えて並べられている。
【0022】
第1ドラム本体4と第2ドラム本体5とは、実質的に同じ構造を有している。このため、本明細書では、これらを代表して第1ドラム本体4について説明し、第2ドラム本体5については、第1ドラム本体4と異なる箇所を説明する。
【0023】
図2は、第1ドラム本体4の横断面図である。図2に示されるように、第1ドラム本体4は、軸心2cの周りでドラム周方向に配される複数のセグメント6と、各セグメント6をドラム半径方向に移動させる第1移動具7とを具えている。各セグメント6がドラム半径方向の外側に移動することで、第1ドラム本体4は拡径状態Y1となる。拡径状態Y1では、各セグメント6の外表面6sが互いに協働して第1ドラム本体4の外周面4sを構成する。また、各セグメント6がドラム半径方向の内側に移動することで、第1ドラム本体4は縮径状態Y2となる。縮径状態Y2では、例えば、1次成形体がドラム本体2から取り外される。第1ドラム本体4の外周面4sと第2ドラム本体5の外周面5s(図1に示す)とがドラム本体2の外周面2sを構成する。
【0024】
本実施形態の第1移動具7は、軸心2cに台座部11を介して放射状に取り付く弾性体12と、この弾性体12のロッド先端に、ドラム半径方向に平行移動可能な移動台13とを具える。本実施形態の移動台13は、ドラム半径方向の内外に配されかつドラム軸方向にのびる板状部13i、13oを具える。これにより、第1ドラム本体4は、ドラム半径方向に拡縮径可能とされる。弾性体12は、例えば、バネやシリンダ、ボールねじ等の周知構造のものが採用される。
【0025】
弾性体12としてバネが採用される場合、第1移動具7は、セグメント6のドラム半径方向の移動を拘束するための制御治具をさらに備えるのが望ましい。
【0026】
図3は、ドラム本体2の縦断面の部分拡大図である。図3に示されるように、本実施形態のドラム本体2は、第1ドラム本体4と第2ドラム本体5とをドラム軸方向に互いに接近及び離隔させるための第2移動具8をさらに含んでいる。本明細書では第1ドラム本体4及び第2ドラム本体5が近づく向きをドラム軸方向の内側、離れる向きをドラム軸方向の外側としている。第1ドラム本体4及び第2ドラム本体5は、本実施形態では、それぞれ中央位置Coを中心としてドラム軸方向の内外に移動する。しかしながら、第1ドラム本体4又は第2ドラム本体5のいずれか一方を固定し、いずれか他方のみを移動可能とすることもできる。
【0027】
本実施形態の第2移動具8は、軸心2cと平行に移動台13に支持されるネジ軸15、及び、第1ドラム本体4及び第2ドラム本体5とネジ軸15とをそれぞれ連結する連結片16L、16Rを具える。
【0028】
ネジ軸15は、その両端部が移動台13に回転可能に支持される。ネジ軸15の軸心方向一方側と他方側とには、異なる向きのねじ部15L(例えば左ネジ)、15R(例えば右ネジ)が形成される。ネジ軸15の中央部は、ギヤー連結手段20により、例えば移動台13に固定のモータMと接続される。
【0029】
連結片16Lは、第1ドラム本体4のドラム半径方向の内面に固定されるブロック部17L、ねじ部15Lに保持するナット部18L、及びブロック部17Lとナット部18Lとを継ぐ継ぎ部19Lを具える。連結片16Rは、第2ドラム本体5のドラム半径方向の内面に固定されるブロック部17R、ねじ部15Rに保持するナット部18R、及びブロック部17Rとナット部18Rとを継ぐ継ぎ部19Rを具える。
【0030】
移動台13の外の板状部13oには、継ぎ部19L、19Rをそれぞれ軸心方向に移動可能に案内するガイド孔21L、21Rが配される。これにより、第1ドラム本体4及び第2ドラム本体5は、モータMの回転制御により、中央位置Coを中心として互いに接近及び離隔するように移動しうる。
【0031】
図4(a)及び図4(b)は、第1ドラム本体4及び第2ドラム本体5の平面図である。図4(a)は、第1ドラム本体4と第2ドラム本体5とが噛み合う前の状態を示している。図4(b)は、第1ドラム本体4と第2ドラム本体5とが最も接近した状態を示す平面図である。図4(a)及び図4(b)に示されるように、第1ドラム本体4のドラム軸方向の内縁部は、凹部22Lと凸部23Lとがドラム周方向に交互に並んでいる。また、第2ドラム本体5のドラム軸方向の内縁部は、凹部22Rと凸部23Rとがタイヤ周方向に並んでいる。
【0032】
第2移動具8(図3に示される)によって、第1ドラム本体4の凸部23Lは、第2ドラム本体5の凹部22Rに進入でき、かつ、第2ドラム本体5の凸部23Rは、第1ドラム本体4の凹部22L内に進入できるように形成されている。本明細書では、第1ドラム本体4の凹部22Lと第2ドラム本体5の凹部22Rとを総称して凹部22という場合がある。また、第1ドラム本体4の凸部23Lと第2ドラム本体5の凸部23Rとを総称して凸部23という場合がある。
【0033】
図5(a)は、第1ドラム本体4の平面図である。図5(a)に示されるように、凸部23は、根元25から先端26に向かってドラム周方向の幅Waが小さくなっている。これにより、第1ドラム本体4及び第2ドラム本体5のいずれかが、ドラム周方向へ位置ずれした場合でも、各凸部23L、23R同士の干渉が抑制されるので、各凹部22と各凸部23との噛み合い性能が向上する。
【0034】
凸部23は、本実施形態では、根元25から先端26まで幅Waが連続して小さくなっている。これにより、上述の作用が効果的に発揮される。
【0035】
凸部23は、本実施形態では、根元25と、先端26と、根元25と先端26との間に配される中間27とを含んでいる。中間27は、根元25及び先端26よりも幅Waが、先端26に向かって緩やかに小さくなっている。このような中間27は、凸部23の剛性を高く維持するのに役立つ。
【0036】
凸部23は、第1ドラム本体4の外周面4sを画定するエッジ28を含んでいる。エッジ28は、例えば、根元25を形成する一対の第1部分28a、28aと、先端26を形成する1本の第2部分28bと、中間27を形成する一対の第3部分28c、28cとを含んでいる。
【0037】
第1部分28aは、本実施形態では、ドラム軸方向の外側に凸の円弧状で形成されている。このような第1部分28aは、押圧具3による押圧力を多方向に分散して、凸部23の損傷を抑制し得る。第2部分28bは、本実施形態では、ドラム軸方向の内側に凸の円弧状に形成されている。換言すると、先端26は、円弧状に丸められている。このような第2部分28bは、第1ドラム本体4及び第2ドラム本体5の凸部23L、23Rが接触した場合の損傷を抑制することができる。第3部分28cは、本実施形態では、直線状に延びている。このような第3部分28cは、凸部23のドラム周方向の剛性の変化を小さくしつつ、凸部23のドラム軸方向の長さLaを大きくするのに役立つ。
【0038】
特に限定されるものではないが、凸部23のドラム軸方向の長さLaは、例えば、34.5~35.5mm程度である。また、凸部23の幅Waは、中間27の先端26側端では、8.5~10.5mm程度であり、中間27の根元25側端では、11.5~13.5mmである。
【0039】
図5(b)は、(a)のA-A線断面図である。図5(b)に示されるように、凸部23は、本実施形態では、ドラム周方向の長さWbが、ドラム半径方向の内側に向かって小さくなっている。これにより、第1ドラム本体4の凸部23Lと第2ドラム本体5の凸部23Rとの接触を一層抑制することができる。
【0040】
凸部23は、エッジ28に連なってドラム半径方向の内側に延びる内側面4bを含んでいる。内側面4bの外周面4sの法線nに対する角度αは、例えば、10~30度が望ましい。角度αが10度以上であるので、各ドラム4、5の凸部23同士の接触を効果的に抑制することができる。角度αが30度以下であるので、凸部23の剛性が確保され、その損傷を抑制することができる。
【0041】
図5(a)に示されるように、凹部22の最深部30は、円弧状に丸められている。これにより、凸部23に作用する押圧力を多方向に分散して、凸部23の損傷が抑制される。凹部22の最深部30は、ドラム周方向に隣接する凸部23、23の各根元25の反転模様として形成される。
【0042】
凹部22は、最深部30から開放側(ドラム軸方向の内側)に向かって幅広に形成されている。これにより、凹部22と凸部23との噛み合い性能が、一層高められる。
【0043】
凹部22の最深部30の曲率半径R2は、凸部23の先端26の曲率半径R1よりも大きく形成されている。これにより、第1ドラム本体4の凸部23Lが、第2ドラム本体5の凹部22Rの最深部30まで進入することができる。特に限定されるものではないが、凹部22の最深部30の曲率半径R2は、凸部23の先端26の曲率半径R1の1.1~1.5倍であるのが望ましい。
【0044】
本実施形態の凹部22及び凸部23は、例えば、凹部22と凸部23とが矩形状で形成された態様に比してエッジ28の長さが小さくなるので、噛み合い状態で形成される隙間Kが小さく形成される。このため、タイヤ部材Tが押圧具3で外周面2sに押圧された場合でも、隙間Kによるタイヤ部材Tの変形が小さく抑制される。
【0045】
図4(b)に示されるように、第1ドラム本体4と第2ドラム本体5とが最も接近した状態において、ドラム軸方向の同じ位置では、第1ドラム本体4の凸部23Lのドラム周方向の幅w1は、第2ドラム本体5の凹部22Rのドラム周方向の幅w2よりも2~4mm小さく形成されている。また、前記最も接近した状態において、ドラム軸方向の同じ位置では、第2ドラム本体5の凸部23Rのドラム周方向の幅w3は、第1ドラム本体4の凹部22Lのドラム周方向の幅w4よりも2~4mm小さく形成されている。これにより、優れた噛み合い性能が発揮される。
【0046】
特に限定されるものではないが、前記最も接近した状態において、凸部23の先端26と凹部22の最深部30との間のドラム軸方向の距離Lbは、9~13mmが望ましい。
【0047】
図6は、押圧具3及びタイヤ部材Tを説明するためのドラム本体2の縦断面図である。図6に示されるように、本実施形態の押圧具3は、外周面2sに貼り付けられたタイヤ部材Tを押し付けるための機能を有している。押圧具3は、例えば、第1ローラー3A、第2ローラー3B及び第3ローラー3Cを含んでいる。第1ローラー3Aは、例えば、サイドウォールゴムT6を押える機能を有している。第1ローラー3Aの押圧力は、例えば、サイドウォールゴムT6の巻き付け端部の領域では、0.50~0.60MPaであり、サイドウォールゴムT6の巻き付け端部を除いた領域では、0.30~0.40MPaである。第2ローラー3Bは、例えば、ビードエーペックスゴムT5の外端を押える機能を有している。第2ローラー3Bの押圧力は、例えば、0.20~0.30MPaである。第3ローラー3Cは、例えば、クリンチゴムT3を押える機能を有している。第3ローラー3Cの押圧力は、例えば、0.15~0.25MPaである。
【0048】
各ローラー3A、3B、3Cは、それぞれ、外周面3cを有するローラー本体3aと、ローラー本体3aを駆動させる駆動部3bとを含んでいる。駆動部3bは、ローラー本体3aを3次元に移動し得るシリンダやボールねじを含む周知構造のものである。駆動部3bがローラー本体3aの外周面3cを各タイヤ部材Tに接触させて、ドラム本体2の外周面2sに押し付ける。各ローラー3A、3B、3Cは、例えば、タイヤ部材Tを介してドラム半径方向及びドラム周方向の押圧力を外周面2sに与える。
【0049】
次に、本実施形態の成型装置1を用いたタイヤの製造方法(以下、単に「製造方法」という場合がある。)が説明される。本実施形態の製造方法は、円筒状カーカスを形成する工程と、円筒状カーカスにタイヤ部材Tを貼り付けてタイヤ部材からなる1stカバー(図示省略)を成形する工程とを含む。本実施形態の円筒状カーカスは、インナライナゴムT1、カーカスプライT2、クリンチゴムT3、ビードコアT4、ビードエーペックスゴムT5を含んで構成される。本実施形態では、円筒状カーカスにサイドウォールゴムT6が貼り付けられて1stカバーが形成される。例えば、この1stカバーに、さらにタイヤ部材が貼り付けられて、生タイヤとして形成され、この生タイヤが加硫成形されてタイヤが製造される。なお、本実施形態の製造方法は、このような態様に限定されるものではない。また、生タイヤを形成する方法や生タイヤを加硫する方法は、周知の態様が適用されるので、その説明が省略される。
【0050】
成型装置1を用いて1stカバーを形成する場合、例えば、
(ア)形成するタイヤサイズに合わせて、ドラム本体2のドラム軸方向の幅が第2移動具8で調整され、その後、ドラム本体2の外周面2sに、インナライナゴムT1、カーカスプライT2が順次巻き付けられて、円筒状の巻回体が形成される。
(イ)その後、この巻回体のタイヤ軸方向外端部上にビードコアT4、ビードエーペックスゴムT5がセットされる。そして、巻回体のうちでビードコアT4よりもタイヤ軸方向外側にはみ出した部分を、ビードコアT4の周りで折り返し、さらに、クリンチゴムT3が貼り付けられる。これにより円筒状カーカスが形成される。
(ウ)その後、円筒状カーカス上に、サイドウォールゴムT6が貼り付けられて、1stカバーが形成される。
【0051】
以上、本発明の特に好ましい形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例
【0052】
図1及び図6に示す成型装置を用いて、乗用車用の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」という。)が製造された。そして、成型装置の噛み合い不良に基づくタイヤの不具合(噛み合い性能)がテストされた。比較例の成型装置は、凸部及び凹部が矩形状(凸部のドラム周方向の幅が、根元から先端に向かって一定)である。主な共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
【0053】
<噛み合い性能>
各タイヤの内部に残存する空気が確認された。具体的には、スクラップとする必要がある程度に空気が残存しているタイヤAと、軽不良とする必要がある程度に空気が残存しているタイヤBと、商品として問題がないタイヤとに区分された。そして、タイヤ全数に対するタイヤAの比率(スクラップ率)と、タイヤ全数に対するタイヤBの比率(軽不良率)とが算出された。
テストの結果などが表1に示される。
【0054】
【表1】
【0055】
テストの結果、実施例の成型装置は、比較例の成型装置に比べて、不具合が低減されているので、噛み合い性能が向上していることが理解される。また、実施例の成型装置は、凸部の損傷が低減されることが理解できる。
【0056】
1 成型装置
2 ドラム本体
4 第1ドラム本体
5 第2ドラム本体
22 凹部
22L 第1ドラム本体の凹部
22R 第2ドラム本体の凹部
23 凸部
23L 第1ドラム本体の凸部
23R 第2ドラム本体の凸部
25 根元
26 先端
図1
図2
図3
図4
図5
図6