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  • 特許-淡色トナー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】淡色トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20241022BHJP
   G03G 9/09 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
G03G9/097 374
G03G9/09
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020173265
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2022064557
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮太
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-024646(JP,A)
【文献】特開昭62-184473(JP,A)
【文献】特開2020-129029(JP,A)
【文献】特開平08-160737(JP,A)
【文献】特開平06-202084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子を含む非磁性一成分トナーであるとともにイエロートナーまたはホワイトトナーである淡色トナーであって、
前記トナー粒子は、トナー母粒子と、前記トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備え、
前記外添剤は、特定外添剤粒子を含み、
前記特定外添剤粒子の個数平均一次粒子径は、30nm以上305nm以下であり、
前記特定外添剤粒子は、アンチモンドープ酸化スズ粒子を含み、
前記アンチモンドープ酸化スズ粒子において、アンチモンドープ酸化スズの含有割合としては、90質量%以上であり、アンチモン原子の質量(MSb)及びスズ原子の質量(MSn)の合計に対するアンチモン原子の質量(MSb)の比率(MSb/(MSn+MSb))は、4質量%以上31質量%以下である、淡色トナー。
【請求項2】
前記特定外添剤粒子は、
塩素原子を含有しないか、
又は塩素原子を含有し、塩素原子の含有割合が0.000質量%超0.020質量%以下である、請求項1に記載の淡色トナー。
【請求項3】
前記特定外添剤粒子は、塩素原子を含有し、塩素原子の含有割合が0.001質量%以上0.020質量%以下である、請求項2に記載の淡色トナー。
【請求項4】
前記トナー母粒子は、結着樹脂及び着色剤を含有し、
前記着色剤は、イエロー着色剤を含む、請求項1~3の何れか一項に記載の淡色トナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、淡色トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法による画像形成においては、トナー粒子を含む淡色トナー(例えば、イエロートナー又は淡色の特色トナー)が用いられる。トナー粒子は、例えば、トナー母粒子と、トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備える。トナー粒子に用いる外添剤として、感光体(例えば、アモルファスシリコン感光体)表面の研磨を目的として、研磨粒子を用いる場合がある。このような外添剤としては、疎水化処理を行った導電性微粒子が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2007/114502号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の外添剤を用いた淡色トナーは、形成される画像の画像濃度が十分ではない。また、特許文献1に記載の外添剤を用いた淡色トナーは、外添剤の添加によって色味が変化する場合がある。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、適切な色味を有し、かつ画像濃度に優れる画像を形成できる淡色トナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る淡色トナーは、トナー粒子を含む。前記トナー粒子は、トナー母粒子と、前記トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備える。前記外添剤は、特定外添剤粒子を含む。前記特定外添剤粒子の個数平均一次粒子径は、30nm以上305nm以下である。前記特定外添剤粒子は、アンチモンドープ酸化スズ粒子を含む。前記アンチモンドープ酸化スズ粒子において、アンチモン原子の質量(MSb)及びスズ原子の質量(MSn)の合計に対するアンチモン原子の質量(MSb)の比率(MSb/(MSn+MSb))は、4質量%以上31質量%以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る淡色トナーは、適切な色味を有し、かつ画像濃度に優れる画像を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る淡色トナーが含むトナー粒子の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、トナーは、トナー粒子の集合体(例えば粉体)である。外添剤は、外添剤粒子の集合体(例えば粉体)である。粉体(より具体的には、トナー粒子の粉体、外添剤粒子の粉体等)に関する評価結果(形状、物性等を示す値)は、何ら規定していなければ、粉体から粒子を相当数選び取って、それら粒子の各々について測定した値の個数平均である。
【0010】
粉体の体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、ベックマン・コールター株式会社製「コールターカウンターマルチサイザー3」を用いてコールター原理(細孔電気抵抗法)に基づき測定した値である。
【0011】
粉体の個数平均一次粒子径は、何ら規定していなければ、走査型電子顕微鏡を用いて測定した一次粒子の円相当径(ヘイウッド径:一次粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。粉体の個数平均一次粒子径は、例えば100個の一次粒子の円相当径の個数平均値である。なお、粒子の個数平均一次粒子径は、特に断りがない限り、粉体中の粒子の個数平均一次粒子径を指す。
【0012】
帯電性は、何ら規定していなければ、摩擦帯電における帯電性を意味する。例えば、日本画像学会から提供される標準キャリア(負帯電極性トナー用標準キャリア:N-01、正帯電極性トナー用標準キャリア:P-01)と測定対象(例えばトナー)とを混ぜて攪拌することで、測定対象を摩擦帯電させる。摩擦帯電させる前と後とでそれぞれ、例えば吸引式小型帯電量測定装置(トレック社製「MODEL 212HS」)で測定対象の帯電量を測定し、摩擦帯電の前後での帯電量の変化が大きい測定対象ほど帯電性が強いことを示す。
【0013】
材料の「主成分」は、何ら規定していなければ、質量基準で、その材料に最も多く含まれる成分を意味する。
【0014】
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰り返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
【0015】
<淡色トナー>
本発明の実施形態に係る淡色トナーは、トナー粒子を含む。トナー粒子は、トナー母粒子と、トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備える。外添剤は、特定外添剤粒子を含む。特定外添剤粒子の個数平均一次粒子径は、30nm以上305nm以下である。特定外添剤粒子は、アンチモンドープ酸化スズ粒子を含む。アンチモンドープ酸化スズ粒子において、アンチモン原子の質量(MSb)及びスズ原子の質量(MSn)の合計に対するアンチモン原子の質量(MSb)の比率(MSb/(MSn+MSb))(以下、Sb比と記載することがある)は、4質量%以上31質量%以下である。
【0016】
本発明の淡色トナーは、例えば正帯電性を有する非磁性一成分トナーとして、静電潜像の現像に好適に用いることができる。本発明の淡色トナーは、例えば、イエロートナー又は淡色の特色トナー(例えば、ホワイトトナー)である。
【0017】
本発明の淡色トナーは、上述の構成を備えることにより、適切な色味を有し、かつ画像濃度に優れる画像を形成できる。その理由を以下に説明する。本発明の淡色トナーが含む特定外添剤粒子は、Sb比が一定範囲であるアンチモンドープ酸化スズ粒子を含む。上述のアンチモンドープ酸化スズ粒子は、本発明の淡色トナーの電気抵抗を低下させる。そのため、本発明の淡色トナーは、電界応答性に優れ、感光体ドラム上の静電潜像を現像する際の現像性に優れる。また、特定外添剤粒子は、個数平均一次粒子径が30nm以上であり、過剰に小さい粒子ではない。そのため、特定外添剤粒子は、連続して画像形成を行った際に、トナー母粒子に埋没し難い。更に、特定外添剤粒子は、個数平均一次粒子径が305nm以下であり、過剰に大きい粒子ではない。そのため、特定外添剤粒子は、連続して画像形成を行った際に、トナー母粒子から脱離し難い。このように、特定外添剤粒子は、個数平均一次粒子径が30nm以上305nm以下であることにより、連続して画像形成を行った際にも、トナー母粒子の表面に安定して付着し続ける。その結果、本発明の淡色トナーは、画像濃度に優れる画像を形成できる。
【0018】
また、アンチモンドープ酸化スズ粒子は、Sb比が過度に高い場合(例えば、Sb比が31質量%超の場合)には黒色を帯び、トナーの色味を変化させる。Sb比が過度に高いアンチモンドープ酸化スズ粒子によってトナーの色味が変化する現象は、濃色トナー(例えば、黒色トナー、マゼンタトナー及びシアントナー)では影響が小さいが、淡色トナー(特に、イエロートナー)では影響が大きい。本発明の淡色トナーは、アンチモンドープ酸化スズ粒子のSb比を31質量%以下とすることで、アンチモンドープ酸化スズ粒子によるトナーの色味の変化を抑制している。その結果、本発明の淡色トナーは、適切な色味を有している。
【0019】
以下、本発明の淡色トナーの詳細を更に説明する。なお、以下に記載する各成分については、特に断りのない限り、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
[トナー粒子]
図1は、淡色トナーに含まれるトナー粒子1の一例を示す。図1に示すトナー粒子1は、トナー母粒子2と、トナー母粒子2の表面に付着した外添剤とを備える。外添剤は、特定外添剤粒子3を含む。
【0021】
但し、本発明の淡色トナーの含むトナー粒子は、図1に示すトナー粒子1とは異なる構造であってもよい。具体的には、トナー粒子は、外添剤として特定外添剤粒子のみを含んでいてもよいが、その他の外添剤粒子(以下、その他の外添剤粒子と記載することがある)を含んでいてもよい。また、トナー粒子は、シェル層を備えるトナー粒子(以下、カプセルトナー粒子と記載することがある)であってもよい。カプセルトナー粒子では、トナー母粒子が、例えば結着樹脂及び着色剤を含有するトナーコアと、トナーコアの表面を覆うシェル層とを備える。以上、本発明の淡色トナーに含まれるトナー粒子の詳細について、図1を基に説明した。
【0022】
本発明の淡色トナーが適切な色味を有していることは、本発明の淡色トナーに由来するペレットのLab値Aと、トナー母粒子に由来するペレットのLab値Bとの差であるΔEで表すことができる。ΔEは、実施例に記載の方法又はこれに準拠する方法により測定される。本発明の淡色トナーは、ΔEが小さいほど、特定外添剤粒子の外添によって色味が変化していないため好ましい。本発明の淡色トナーにおいて、ΔEとしては、8.5以下が好ましく、6.0以下がより好ましい。
【0023】
(特定外添剤粒子)
特定外添剤粒子は、アンチモンドープ酸化スズ粒子を含む。特定外添剤粒子の個数平均一次粒子径は、30nm以上305nm以下であり、60nm以上250nm以下が好ましく、100nm以上200nm以下がより好ましい。特定外添剤粒子の個数平均一次粒子径を30nm以上とすることで、連続して画像形成を行った際に、トナー母粒子に特定外添剤粒子が埋没することを抑制できる。特定外添剤粒子の個数平均一次粒子径を305nm以下とすることで、連続して画像形成を行った際に、トナー母粒子から特定外添剤粒子が脱離することを抑制できる。
【0024】
アンチモンドープ酸化スズ粒子は、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)を主成分として含む粒子である。アンチモンドープ酸化スズ粒子において、アンチモンドープ酸化スズの含有割合としては、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%が更に好ましい。
【0025】
アンチモンドープ酸化スズ粒子において、Sb比(MSb/(MSn+MSb))は、4質量%以上31質量%以下であり、10質量%以上31質量%以下が好ましく、20質量%以上28質量%以下がより好ましい。ここで、酸化スズは、単独では導電性を示さない。少量のアンチモンが添加された酸化スズ(Sb比が4質量%以上31質量%以下)は、半導体としての性質が付与され、導電性を示す。多量のアンチモンが添加された酸化スズは、単なる酸化スズ及びアンチモンの混合物としての性質を有し、導電性を示さない。以上から、Sb比を4質量%以上31質量%以下とすることで、アンチモンドープ酸化スズ粒子の導電性を向上できる。その結果、本発明の淡色トナーは、画像濃度に優れる画像を形成できる。また、Sb比を31質量%以下とすることで、アンチモンドープ酸化スズ粒子による本発明の淡色トナーの色味の変化を抑制できる。
【0026】
特定外添剤粒子は、例えば、スズ塩化物及びアンチモン塩化物を原料として調製される。そのため、特定外添剤粒子には、原料に由来する塩素原子が残留している場合がある。塩素原子は、電気陰性度が高い。そのため、塩素原子を多量に含有する特定外添剤粒子は、トナーの正帯電性を低下させ、形成される画像の画像濃度をやや低下させる傾向がある。以上から、特定外添剤粒子は、塩素原子を含有しないか、又は塩素原子を含有し、塩素原子の含有割合が0.000質量%超0.020質量%以下であることが好ましい。
【0027】
但し、特定外添剤粒子は、少量であれば塩素原子を含むことが好ましい。本発明の淡色トナーは、特定外添剤粒子を含むため、電気抵抗が比較的低い。そのため、本発明の淡色トナーは、現像時に現像ローラーの正バイアスによって電荷注入が起こり、帯電量が増加する現象が発生する場合がある。通常の環境においては、この現象が発生しても、本発明の淡色トナーが過剰に帯電することはない。しかし、トナーの帯電量が増加し易い環境である低温低湿環境下において上述の現象が発すると、本発明の淡色トナーが過剰に帯電することがある。本発明の淡色トナーが非磁性一成分トナーである場合、本発明の淡色トナーが過剰に帯電すると、本発明の淡色トナーと現像ローラーとの間の鏡像力が過剰に高くなり、現像ローラー上のトナー層の層厚が増加する。一方、本発明の淡色トナーが塩素原子を少量含有すると、本発明の淡色トナーの正帯電性が適度に低下する。その結果、低温低湿環境下においても、本発明の淡色トナーが過剰に帯電することを抑制できる。以上から、特定外添剤粒子は、少量であれば塩素原子を含むことが好ましい。具体的には、特定外添剤粒子において、塩素原子の含有割合としては、0.001質量%以上0.020質量%以下が好ましく、0.003質量%以上0.010質量%以下がより好ましい。
【0028】
トナー粒子における特定外添剤粒子の含有量としては、トナー母粒子100質量部に対して、0.05質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.3質量部以上1.0質量部以下がより好ましい。特定外添剤粒子の含有量を0.05質量部以上5.0質量部以下とすることで、本発明の淡色トナーにより形成される画像の画像濃度を更に向上できる。
【0029】
特定外添剤粒子の調製方法の一例について説明する。スズ塩化物(例えば、塩化第二スズ)と、アンチモン塩化物(例えば、三塩化アンチモン)とを塩酸に溶解させた酸水溶液と、アルカリ水溶液(例えば、アンモニア水溶液)とを、水に添加する。これにより、アンチモンドープ酸化スズを含む懸濁液が得られる。その後、懸濁液に含まれる固形分に対して洗浄処理及び乾燥処理を行った後、粉砕処理を行うことにより、特定外添剤粒子を得ることができる。上述の酸水溶液及びアルカリ水溶液の添加時には、懸濁液のpH及び温度を一定範囲(例えばpH6.5以上9.0以下、かつ60℃以上80℃以下)に維持するとよい。上述の洗浄処理において、洗浄回数を調整することにより、特定外添剤粒子における塩素原子の含有割合を調整することができる。具体的には、上述の洗浄処理において、洗浄回数を増やすことにより、特定外添剤粒子における塩素原子の含有割合が低下する。また、上述の粉砕処理において、粉砕条件を調整することにより、特定外添剤粒子の個数平均一次粒子径を調整することができる。
【0030】
(その他の外添剤粒子)
外添剤は、特定外添剤粒子のみを含んでもよいが、その他の外添剤粒子を更に含むことが好ましい。その他の外添剤粒子としては、無機粒子が好ましく、シリカ粒子、又は金属酸化物(例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛)の粒子がより好ましく、シリカ粒子又は酸化チタン粒子が更に好ましい。但し、その他の外添剤粒子として、脂肪酸金属塩(例えば、ステアリン酸亜鉛)のような有機酸化合物の粒子、又は樹脂粒子を使用してもよい。
【0031】
トナー粒子におけるその他の外添剤粒子の含有量としては、トナー母粒子からの脱離を抑制しながらその機能を十分に発揮させる観点から、トナー母粒子100質量部に対して、0.1質量部以上15.0質量部以下が好ましく、1.0質量部以上5.0質量部以下がより好ましい。
【0032】
(トナー母粒子)
トナー母粒子は、例えば主成分として結着樹脂を含有する。トナー母粒子は、必要に応じて、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉の少なくとも1つ)を更に含有してもよい。トナー母粒子の製造方法としては、粉砕法及び凝集法が挙げられ、粉砕法が好ましい。
【0033】
(結着樹脂)
低温定着性に優れた淡色トナーを提供する観点から、トナー母粒子は、結着樹脂として熱可塑性樹脂を含有することが好ましく、結着樹脂全体の85質量%以上の割合で熱可塑性樹脂を含有することがより好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン樹脂、アクリル酸エステル樹脂、オレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂、及びポリプロピレン樹脂)、ビニル樹脂(例えば、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、及びN-ビニル樹脂)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、及びウレタン樹脂が挙げられる。また、これら各樹脂の共重合体、すなわち上記樹脂中に任意の繰り返し単位が導入された共重合体(例えば、スチレン-アクリル酸エステル樹脂、及びスチレン-ブタジエン樹脂)も、結着樹脂として使用できる。
【0034】
トナー母粒子における結着樹脂の含有割合としては、60質量%以上95質量%以下が好ましく、75質量%以上90質量%以下がより好ましい。
【0035】
本発明の淡色トナーの低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂としては、ポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂は、1種以上の多価アルコールと1種以上の多価カルボン酸とを縮重合させることで得られる。ポリエステル樹脂を合成するためのアルコールとしては、例えば、2価アルコール(例えば、ジオール化合物、及びビスフェノール化合物)、及び3価以上のアルコールが挙げられる。ポリエステル樹脂を合成するためのカルボン酸としては、例えば、2価カルボン酸、及び3価以上のカルボン酸が挙げられる。なお、多価カルボン酸の代わりに、縮重合によりエステル結合を形成できる多価カルボン酸誘導体(例えば、多価カルボン酸の無水物、及び多価カルボン酸ハライド)を使用してもよい。
【0036】
ジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-ブテン-1,4-ジオール、1,5-ペンタンジオール、2-ペンテン-1,5-ジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、1,4-ベンゼンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
【0037】
ビスフェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(例えば、ポリオキシエチレン(2,2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)、及びビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0038】
3価以上のアルコールとしては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及び1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
【0039】
2価カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸(より具体的には、n-ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n-オクチルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸)、及びアルケニルコハク酸(より具体的には、n-ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n-オクテニルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸)が挙げられる。
【0040】
3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシルプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、及びエンポール三量体酸が挙げられる。
【0041】
ポリエステル樹脂としては、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物と、テレフタル酸と、無水トリメリット酸との縮重合物が好ましい。
【0042】
(着色剤)
トナー母粒子は、着色剤を含有することが好ましい。着色剤としては、本発明の淡色トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。本発明の淡色トナーを用いて高画質な画像を形成する観点から、着色剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下が好ましい。
【0043】
トナー母粒子は、カラー着色剤を含有していてもよい。カラー着色剤としては、イエロー着色剤が挙げられる。
【0044】
トナー母粒子は、ホワイト着色剤を含有していてもよい。ホワイト着色剤としては、例えば、二酸化チタン、亜鉛華(亜鉛白)、リトポン及び鉛白が挙げられる。
【0045】
トナー母粒子は、イエロー着色剤を含むことが好ましい。
【0046】
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリールアミド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。イエロー着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、及び194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、並びにC.I.バットイエローが挙げられる。
【0047】
(離型剤)
トナー母粒子は、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えば、本発明の淡色トナーに耐オフセット性を付与する目的で使用される。本発明の淡色トナーに充分な耐オフセット性を付与させる観点から、離型剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下が好ましい。
【0048】
離型剤としては、例えば、脂肪族炭化水素系ワックス、脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、脂肪酸エステルを主成分とするエステルワックス、及び脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスが挙げられる。脂肪族炭化水素系ワックスとしては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合体、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス及びフィッシャートロプシュワックスが挙げられる。脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物としては、例えば、酸化ポリエチレンワックス、及び酸化ポリエチレンワックスのブロック共重合体が挙げられる。植物系ワックスとしては、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、及びライスワックスが挙げられる。動物系ワックスとしては、例えば、みつろう、ラノリン及び鯨ろうが挙げられる。鉱物系ワックスとしては、例えば、オゾケライト、セレシン、及びペトロラタムが挙げられる。脂肪酸エステルを主成分とするエステルワックスとしては、例えば、モンタン酸エステルワックス及びカスターワックスが挙げられる。脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスとしては、例えば、脱酸カルナバワックスが挙げられる。離型剤としては、カルナバワックスが好ましい。
【0049】
トナー母粒子が離型剤を含有する場合、結着樹脂と離型剤との相溶性を改善するために、相溶化剤をトナー母粒子に添加してもよい。
【0050】
(電荷制御剤)
トナー母粒子は、電荷制御剤を含有していてもよい。電荷制御剤は、例えば、より優れた帯電安定性又は優れた帯電立ち上がり特性を有するトナーを提供する目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電させることができるか否かの指標になる。トナー母粒子に正帯電性の電荷制御剤を含有させることで、トナー母粒子のカチオン性を強めることができる。
【0051】
正帯電性の電荷制御剤としては、例えば、アジン化合物、直接染料、酸性染料、アルコキシル化アミン、アルキルアミド、4級アンモニウム塩化合物、及び4級アンモニウムカチオン基を含む樹脂が挙げられる。電荷制御剤としては、4級アンモニウム塩が好ましい。
【0052】
アジン化合物としては、例えば、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2-オキサジン、1,3-オキサジン、1,4-オキサジン、1,2-チアジン、1,3-チアジン、1,4-チアジン、1,2,3-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン、1,2,4-オキサジアジン、1,3,4-オキサジアジン、1,2,6-オキサジアジン、1,3,4-チアジアジン、1,3,5-チアジアジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、1,2,4,6-オキサトリアジン、1,3,4,5-オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、及びキノキサリンが挙げられる。
【0053】
直接染料としては、例えば、アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ-ンBH/C、アジンディープブラックEW、及びアジンディープブラック3RLが挙げられる。
【0054】
酸性染料としては、例えば、ニグロシンBK、ニグロシンNB、及びニグロシンZが挙げられる。
【0055】
4級アンモニウム塩としては、例えば、ベンジルデシルヘキシルメチルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルアンモニウムクロライド、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、及びジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩が挙げられる。
【0056】
帯電安定性に更に優れた淡色トナーを提供する観点から、電荷制御剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下が好ましい。
【0057】
[淡色トナーの製造方法]
本発明の淡色トナーは、例えば、トナー母粒子の調製工程と、外添工程とを備える製造方法により製造できる。
【0058】
(トナー母粒子の調製工程)
トナー母粒子の調製工程では、例えば、凝集法又は粉砕法によりトナー母粒子を調製する。
【0059】
凝集法は、例えば、凝集工程及び合一化工程を含む。凝集工程では、トナー母粒子を構成する成分を含む微粒子を水性媒体中で凝集させて、凝集粒子を形成する。合一化工程では、凝集粒子に含まれる成分を水性媒体中で合一化させてトナー母粒子を形成する。
【0060】
次に粉砕法を説明する。粉砕法によれば、比較的容易にトナー母粒子を調製できる上、製造コストの低減が可能である。粉砕法でトナー母粒子を調製する場合、トナー母粒子の調製工程は、例えば溶融混練工程と、粉砕工程とを備える。トナー母粒子の調製工程は、溶融混練工程の前に混合工程を更に備えてもよい。また、トナー母粒子の調製工程は、粉砕工程後に、微粉砕工程及び分級工程の少なくとも一方を更に備えてもよい。
【0061】
混合工程では、結着樹脂と、必要に応じて添加する内添剤とを混合して、混合物を得る。溶融混練工程では、トナー材料を溶融し混練して、溶融混練物を得る。トナー材料としては、例えば混合工程で得られる混合物が用いられる。粉砕工程では、得られた溶融混練物を、例えば室温(25℃)まで冷却した後、粉砕して粉砕物を得る。粉砕工程で得られた粉砕物の小径化が必要な場合は、粉砕物を更に粉砕する工程(微粉砕工程)を実施してもよい。また、粉砕物の粒径を揃える場合は、得られた粉砕物を分級する工程(分級工程)を実施してもよい。以上の工程により、粉砕物であるトナー母粒子が得られる。
【0062】
(外添工程)
外添工程では、混合機を用いて、上述のトナー母粒子と、外添剤とを混合して、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させる。これにより、本発明の淡色トナーが得られる。外添剤は、特定外添剤粒子と、必要に応じて用いられるその他の外添剤粒子とを含む。混合機としては、例えばFMミキサー(日本コークス工業株式会社製)が挙げられる。
【実施例
【0063】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
【0064】
[外添剤粒子の調製]
以下の方法により、外添剤粒子(a)~(n)を調製した。
【0065】
(外添剤粒子(a))
反応容器に2リットルの水を投入した。反応容器を加熱した後に保温することにより、水の液温を70℃に保持した。別途、塩化第二スズ(SnCl4・5H2O)825g及び、三塩化アンチモン(SbCl3)175gを、2.4Nの塩酸1Lに溶解させることで、酸液を調製した。70℃の水が入った反応容器に、アンモニア水溶液(アンモニア濃度1mol/L)と上述の酸液とを1時間かけて並行滴下した。並行滴下においては、反応容器の内容物のpHがpH7~8に保持されるように、アンモニア水溶液の添加量を調整した。並行滴下により、反応容器の内容物は懸濁液状となった。次に、反応容器内の懸濁液を吸引ろ過した。吸引ろ過においては、2L容量のブフナー漏斗と、1.1L容量のファンネル(株式会社旭製作所製)と、ろ紙(アドバンテック東洋株式会社製「No.131」)とを用いた。次に、ろ紙上に残ったろ物に対して、1Lの水を上方から注ぐことで洗浄した(洗浄操作)。この洗浄操作を、合計6回行った。洗浄後のろ物について、電気伝導率計(堀場製作所株式会社製「ES-51」)を用いて導電率を測定したところ、10μS/cmであった。洗浄後のろ物について、110℃で12時間乾燥させた後、電気炉を用いて700℃で2時間焼成した。その後、粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社製「衝突板式超音速ジェット粉砕機CPY+DSF」)を用いて、焼成後のろ物を粉砕した。焼成後のろ物の粉砕においては、衝突板としてセラミック製の平板を使用し、材料供給速度を7.0kg/時、粉砕圧を0.5MPaとした。これにより、外添剤粒子(a)を得た。
【0066】
(外添剤粒子(b)~(l))
以下の点を変更した以外は、外添剤粒子(a)の調製と同様の方法により、外添剤粒子(b)~(l)を調製した。外添剤粒子(b)~(l)の調製においては、塩化第二スズ及び三塩化アンチモンの添加量と、洗浄操作におけるろ過の回数と、粉砕条件とを下記表1に示す通りに変更した。
【0067】
(外添剤粒子(m))
反応容器に2リットルの水と酸化チタン粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROXIDE(登録商標)P25」)100gとを投入し、酸化チタン粒子を水に分散させた。反応容器を加熱した後に保温することにより、分散液の液温を70℃に保持した。別途、塩化第二スズ(SnCl4・5H2O)413g、及び三塩化アンチモン(SbCl3)88gを、2.4Nの塩酸1Lに溶解させることで酸液を調製した。70℃の分散液が入った反応容器に、アンモニア水溶液(アンモニア濃度1mol/L)と上述の酸液とを1時間かけて並行滴下した。並行滴下においては、反応容器の内容物のpHがpH7~8に保持されるように、アンモニア水溶液の添加量を調整した。並行滴下により、反応容器の内容物は懸濁液状となった。次に、反応容器内の懸濁液を吸引ろ過した。吸引ろ過においては、2L容量のブフナー漏斗と、1.1L容量のファンネル(株式会社旭製作所製)と、ろ紙(アドバンテック東洋株式会社製「No.131」)とを用いた。次に、ろ紙上に残ったろ物に対して、1Lの水を上方から注ぐことで洗浄した(洗浄操作)。この洗浄操作を、合計6回行った。洗浄後のろ物について、電気伝導率計(堀場製作所株式会社製「ES-51」)を用いて導電率を測定したところ、10μS/cmであった。洗浄後のろ物について、110℃で12時間乾燥させた後、電気炉を用いて700℃で2時間焼成した。その後、粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社製「衝突板式超音速ジェット粉砕機CPY+DSF」)を用いて、焼成後のろ物を粉砕した。焼成後のろ物の粉砕においては、衝突板としてセラミック製の平板を使用し、材料供給速度を6.0kg/時、粉砕圧を0.5MPaとした。これにより、外添剤粒子(m)を得た。
【0068】
(外添剤粒子(n))
酸化チタン粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROXIDE(登録商標)P25」)を、外添剤粒子(n)として用いた。
【0069】
【表1】
【0070】
(蛍光X線分析)
外添剤粒子(a)~(n)を蛍光X線で分析し、分析結果に基づいて「Sb比(MSb/(MSn+MSb))」及び塩素原子の含有割合を算出した。結果を下記表2に示す。蛍光X線分析の条件は、以下の通りとした。なお、蛍光X線分析における検量線の作成には、酸化スズ(SnO2)、五酸化アンチモン、及び塩化ナトリウムを特定の配合比率で混合した複数種の検量線用サンプルを用いた。
【0071】
(蛍光X線分析の条件)
・試料:外添剤粒子を圧力20MPa、加圧時間3秒間の条件で加圧成形した円柱状ペレット
・分析装置:走査型蛍光X線分析装置(株式会社リガク製「ZSX」)
・X線管球(X線源):Rh(ロジウム)
・励起条件:管電圧50kV、管電流50mA
・測定領域(X線照射範囲):直径30mm
・測定元素:アンチモン、塩素、スズ
【0072】
(粒子径の測定)
走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製「JSM-6700F」)を用いて淡色トナーの断面画像(倍率:3万倍)を撮影した。撮影した断面画像に基づき、100個の外添剤粒子(詳しくは、外添剤粒子(a)~(n)の何れか)の円相当径を画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いて解析し、その平均値を個数平均一次粒子径とした。結果を下記表2に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
外添剤粒子(a)~(n)のうち、外添剤粒子(a)、(c)~(d)、(g)~(h)及び(j)~(l)は、特定外添剤粒子であった。
【0075】
[結着樹脂の調製]
ポリオキシエチレン(2,2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン1.0モルと、テレフタル酸4.5モルと、無水トリメリット酸0.5モルと、酸化ジブチル錫4gとを、反応容器に投入した。反応容器の内容物を、窒素雰囲気下、230℃で8時間、反応させた。その後、反応容器内の気圧が8.3kPaになるまで減圧することで、反応容器内の未反応成分を減圧留去した。その後、反応容器の内容物(ポリエステル樹脂)を洗浄した後、乾燥させた。これにより、軟化点が120℃のポリエステル樹脂が得られた。このポリエステル樹脂を結着樹脂として用いた。
【0076】
[トナー母粒子の調製]
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM-20B」)を用いて、結着樹脂としての上述のポリエステル樹脂100質量部と、イエロー着色剤としてのピグメントイエロー74(大日精化工業株式会社製「セイカファストイエロー7040Y」)4質量部と、ワックスとしてのカルナバワックス(株式会社加藤洋行製「カルナウバ1号」)10質量部と、電荷制御剤としての4級アンモニウム塩化合物(藤倉化成株式会社製「FCA210PS」)3質量部とを混合した。その後、得られた混合物を、2軸押出機(東芝機械株式会社製「TEM45」)を用いて150℃で溶融混練した。その後、得られた混練物を冷却させた。冷却後の混練物を、フェザーミル(登録商標)(ホソカワミクロン株式会社製「350×600型」)で粗粉砕した。得られた粗粉砕物を、気流式粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社製「ジェットミルIDS-2型」)で微粉砕した。得られた微粉砕物をエルボージェット分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ-LABO型」)で分級処理した。これにより、体積中位径7μmのトナー母粒子を得た。なお、トナー母粒子の体積中位径は、粒度計(ベックマン・コールター株式会社製の「コールターカウンターマルチサイザー3」)によって測定した。
【0077】
[外添処理]
トナー母粒子100.0質量部と、外添剤としてのシリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA90」)1.5質量部、及び下記表3に示す種類及び質量部の外添剤粒子とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM-10」)で混合した。これにより、実施例1~8及び比較例1~7の淡色トナー(イエロートナー)を得た。なお、比較例5では、外添剤として、シリカ粒子のみを用いた。
【0078】
<評価>
以下の方法により、実施例1~8及び比較例1~7の淡色トナーについて、色味と、形成される画像の画像濃度及び定着性とを評価した。評価結果を下記表3に示す。
【0079】
[評価機]
評価機として、モノクロプリンター(ブラザー工業株式会社製「HL-1218W」)を使用した。評価機の現像装置に淡色トナー(詳しくは、実施例1~8及び比較例1~7の淡色トナーのうち何れか)を投入した。評価機の備える現像装置は、トナーコンテナとしての機能を兼ね備えていた。即ち、評価機は、現像装置交換方式のモノクロプリンターであった。印刷用紙としては、アスクル株式会社製「マルチペーパー スーパーホワイト+(登録商標)」を使用した。
【0080】
[画像濃度]
評価機を用いて、温度23℃、湿度50%の条件で、印字率5%のパターン画像を1500枚の印刷用紙に連続して形成した。その後、上述の印刷用紙に、ソリッド画像を形成した(トナー載り量:0.7mg/cm2)。形成されたソリッド画像の画像濃度(ID)を反射濃度計(X-Rite社製「RD914」)で測定した。画像濃度は、以下の基準で評価した。
【0081】
(画像濃度の評価基準)
A(極めて良好):IDが1.3以上
B(良好):IDが1.1以上1.3未満
C(不良):IDが1.1未満
【0082】
[色味]
実施例1~8及び比較例1~7の淡色トナー0.2gと、上述のトナー母粒子0.2gとを、それぞれ、成形機(ラボネクト株式会社製「ラボダイスφ20」)に投入し、油圧プレス機(ラボネクト株式会社製「ラボプレスLP-100」)で加圧(15MPa)することにより、ペレット(直径20mm)を形成した。各トナーに由来するペレットのLab値Aと、トナー母粒子に由来するペレットのLab値Bとを、反射濃度計(X-Rite社製「SpectroEye(登録商標)」)を用いて測定した。各淡色トナーについて、Lab値A及びLab値Bの差であるΔEを求めた。各淡色トナーが適切な色味を有しているか否かは、ΔEに基づいて評価した。詳しくは、以下の基準に沿って、ΔEが大きい淡色トナーは、外添剤粒子によって色味が変化し、適切な色味を有していないと評価した。
【0083】
(色味の変化)
A(特に良好):ΔEが6.0未満
B(良好):ΔEが6.0以上8.5未満
C(不良):ΔEが8.5以上
【0084】
[定着性]
評価機を用いて、温度10℃、湿度10%RHの条件でソリッド画像を印刷用紙に形成した(トナー載り量:0.7mg/cm2)。ソリッド画像が形成された印刷用紙(評価用紙)に対して以下の折擦り試験を行うことにより、オフセットが発生しているか否かを判断した。折擦り試験では、評価用紙について、ソリッド画像を形成した面が内側となり、かつソリッド画像の中心を折り目が通過するように折り曲げた。次に、折り曲げた評価用紙について、綿布で被覆した黄銅製の分銅(1kg)を用いて、1kgの荷重をかけながら折り目上を5往復摩擦した。次に、評価用紙を広げ、評価用紙の折り曲げ部のうちソリッド画像が定着された部分における淡色トナーの剥がれの長さ(剥がれ長)を測定した。定着性は、以下の基準で評価した。
【0085】
(定着性の評価基準)
A(極めて良好):0.07mm未満
B(良好):0.07mm以上0.10mm未満
C(不良):0.10mm以上
【0086】
【表3】
【0087】
実施例1~8の淡色トナーは、各々、トナー粒子を含んでいた。トナー粒子は、トナー母粒子と、トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備えていた。外添剤は、特定外添剤粒子を含んでいた。特定外添剤粒子の個数平均一次粒子径は、30nm以上305nm以下であった。特定外添剤粒子は、アンチモンドープ酸化スズ粒子を含んでいた。アンチモンドープ酸化スズ粒子において、Sb比は、4質量%以上31質量%以下であった。実施例1~8の淡色トナーは、適切な色意味を有し、かつ画像濃度及び定着性に優れる画像を形成できた。
【0088】
一方、比較例1~7の淡色トナーは、各々、上述の構成を備えていなかったため、色味、並びに形成される画像の画像濃度及び定着性のうち少なくとも一方が不良であった。
【0089】
詳しくは、比較例1の淡色トナーに用いた外添剤粒子(b)は、Sb比が4質量%未満のアンチモンドープ酸化スズ粒子であった。外添剤粒子(b)は、電気抵抗が比較的高いため、形成される画像の画像濃度が不十分であったと判断される。
【0090】
比較例2の淡色トナーに用いた外添剤粒子(e)は、Sb比が31質量%超のアンチモンドープ酸化スズ粒子であった。外添剤粒子(e)は、黒色を帯びているため、比較例2の淡色トナーは色味が適切でなかったと判断される。
【0091】
比較例3~4の淡色トナーに用いた外添剤粒子(f)及び(i)は、個数平均一次粒子径は、30nm未満又は305nm超であった。外添剤粒子(f)及び(i)は、連続して画像形成を行った際に、トナー母粒子に埋没するか、又はトナー母粒子から脱離したため、形成される画像の画像濃度が不十分であったと判断される。
【0092】
比較例5の淡色トナーには、特定外添剤粒子を用いなかった。比較例6及び7のトナーに用いた外添剤粒子(m)及び(n)は、導電性酸化チタン粒子又は酸化チタン粒子であった。外添剤粒子(m)及び(n)は、電気抵抗が比較的高いと判断される。また、外添剤粒子(m)は、ATOが凝集剤のような働きをすることでトナー母粒子の表面で凝集し、トナー母粒子の表面から脱離し易いと判断される。そのため、比較例5~7の淡色トナーは、形成される画像の画像濃度が不十分であったと判断される。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の淡色トナーは、例えば複写機、プリンター、又は複合機において画像を形成するために用いることができる。
【符号の説明】
【0094】
1 トナー粒子
2 トナー母粒子
3 特定外添剤粒子
図1