(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】温度測定装置及び温度表示方法
(51)【国際特許分類】
G01J 5/48 20220101AFI20241022BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20241022BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
G01J5/48 C
G01J5/48 D
G06T7/00 660A
H04N7/18 D
H04N7/18 N
(21)【出願番号】P 2020194831
(22)【出願日】2020-11-25
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 剛
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-38701(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0156856(US,A1)
【文献】特開2012-44339(JP,A)
【文献】特表2010-531198(JP,A)
【文献】特開2011-091523(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2131250(KR,B1)
【文献】国際公開第2015/051344(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - A61B 5/01
G01J 5/00 - G01J 5/90
G03B 35/00 - G03B 37/06
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの撮影範囲をずらして所定の範囲を撮影する2組以上の遠赤外線カメラ及び可視光カメラと、
各遠赤外線カメラの出力を温度データに変換する温度変換部と、
各可視光カメラより出力された撮影画像データに基づく撮影画像に含まれる所定のオブジェクトを検出するオブジェクト検出部と、
前記オブジェクト検出部によって検出された各オブジェクトの前記各可視光カメラの撮影画像のフレーム内の位置を示す座標情報と、前記温度変換部より出力された温度データであって、前記各オブジェクトの温度を示す前記座標情報で示される領域の温度データとを対応付けて管理する温度データ管理部と、
前記各可視光カメラより出力された撮影画像データに基づく撮影画像を表示部に表示し、前記温度データ管理部で対応付けて管理されている前記座標情報及び前記各オブジェクトの温度データに基づいて、前記各オブジェクトの温度または温度に対応する情報を前記表示部に表示する画像処理部と、
を備え、
撮影範囲が隣接する2組の遠赤外線カメラ及び可視光カメラは、各撮影範囲の端部が互いにオーバラップするように配置されており、
オーバラップしている前記端部に位置して、撮影範囲が隣接する2つの可視光カメラである第1の可視光カメラで撮影されたオブジェクトと第2の可視光カメラで撮影されたオブジェクトとが同一のオブジェクトであるか否かを判定する同一オブジェクト判定部と、
前記同一オブジェクト判定部によってオーバラップしている前記端部に位置するオブジェクトが同一のオブジェクトであると判定されたとき、前記温度データ管理部が管理する前記第1及び第2の可視光カメラで撮影されたオブジェクトの各座標情報に対応付けられている2つの温度データに基づき、前記表示部に温度または温度に対応する情報を表示するための統合した1つの温度データを生成するよう処理する温度データ処理部と、
をさらに備える温度測定装置。
【請求項2】
前記温度データ処理部は、前記2つの温度データのうち、高い方の温度を示す温度データを前記統合した1つの温度データとするか、前記2つの温度データが示す温度の平均値を示す温度データを前記統合した1つの温度データとする請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項3】
前記同一のオブジェクトの各座標情報に対応付けられている2つの温度データが示す温度の差の大きさに基づいて、前記遠赤外線カメラまたは前記温度変換部に異常が発生しているか否かを判定する温度変換特性管理部をさらに備える請求項1または2に記載の温度測定装置。
【請求項4】
前記温度変換特性管理部は、前記遠赤外線カメラまたは前記温度変換部に異常が発生していると判定せず、前記同一のオブジェクトの各座標情報に対応付けられている2つの温度データが示す温度に差があるとき、温度の差を補償するよう前記温度変換部を制御する請求項3に記載の温度測定装置。
【請求項5】
2組以上の遠赤外線カメラ及び可視光カメラを互いの撮影範囲をずらし、撮影範囲が隣接する2組の遠赤外線カメラ及び可視光カメラを各撮影範囲の端部が互いにオーバラップするように配置して所定の範囲を撮影し、
各遠赤外線カメラの出力を変換テーブルに基づいて温度データに変換し、
各可視光カメラより出力された撮影画像データに基づく撮影画像に含まれる所定のオブジェクトを検出し、
検出された各オブジェクトの前記各可視光カメラの撮影画像のフレーム内の位置を示す座標情報と、前記各オブジェクトの温度を示す前記座標情報で示される領域の温度データとを対応付けて管理し、
オーバラップしている前記端部に位置して、撮影範囲が隣接する2つの可視光カメラである第1の可視光カメラで撮影されたオブジェクトと第2の可視光カメラで撮影されたオブジェクトとが同一のオブジェクトであるか否かを判定し、
オーバラップしている前記端部に位置するオブジェクトが同一のオブジェクトであると判定したとき、前記第1及び第2の可視光カメラで撮影されたオブジェクトの各座標情報に対応付けられている2つの温度データに基づいて統合した1つの温度データを生成し、
前記各可視光カメラより出力された撮影画像データに基づく撮影画像を表示部に表示し、前記各可視光カメラの撮影範囲内のみに位置するオブジェクトの座標情報で示される領域の温度データと、オーバラップしている前記端部に位置するオブジェクトの座標情報で示される領域の前記統合した1つの温度データとに基づいて、前記各オブジェクトの温度または温度に対応する情報を前記表示部に表示する
温度表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度測定装置及び温度表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新型コロナウィルスの感染予防対策の1つとして、店舗または施設に入場する人物をカメラで撮影して体温を測定する検温装置が普及しつつある(特許文献1参照)。検温装置は、温度測定装置の一例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カメラで人物を一人一人撮影するのではなく、複数の人物を一度に撮影して体温を測定すれば効率的である。また、複数のカメラを用いて、広範囲に人物を撮影して体温を測定すればさらに効率的である。複数のカメラで広範囲に被写体を撮影するとき、各カメラの撮影範囲の間に撮影されない領域が発生しないように、各カメラの撮影範囲の端部を互いにオーバラップさせることがある。
【0005】
各カメラの撮影範囲の端部を互いにオーバラップさせて所定の範囲の被写体を撮影するときに、撮影された各人物の体温(各オブジェクトの温度)を適切に測定して表示することができる温度測定装置及び温度表示方法の登場が望まれる。
【0006】
本発明は、複数のカメラの各カメラの撮影範囲の端部を互いにオーバラップさせて所定の範囲の被写体を撮影し、撮影された各オブジェクトの温度を適切に測定して表示することができる温度測定装置及び温度表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、互いの撮影範囲をずらして所定の範囲を撮影する2組以上の遠赤外線カメラ及び可視光カメラと、各遠赤外線カメラの出力を温度データに変換する温度変換部と、各可視光カメラより出力された撮影画像データに基づく撮影画像に含まれる所定のオブジェクトを検出するオブジェクト検出部と、前記オブジェクト検出部によって検出された各オブジェクトの前記各可視光カメラの撮影画像のフレーム内の位置を示す座標情報と、前記温度変換部より出力された温度データであって、前記各オブジェクトの温度を示す前記座標情報で示される領域の温度データとを対応付けて管理する温度データ管理部と、前記各可視光カメラより出力された撮影画像データに基づく撮影画像を表示部に表示し、前記温度データ管理部で対応付けて管理されている前記座標情報及び前記各オブジェクトの温度データに基づいて、前記各オブジェクトの温度または温度に対応する情報を前記表示部に表示する画像処理部とを備え、撮影範囲が隣接する2組の遠赤外線カメラ及び可視光カメラは、各撮影範囲の端部が互いにオーバラップするように配置されており、オーバラップしている前記端部に位置して、撮影範囲が隣接する2つの可視光カメラである第1の可視光カメラで撮影されたオブジェクトと第2の可視光カメラで撮影されたオブジェクトとが同一のオブジェクトであるか否かを判定する同一オブジェクト判定部と、前記同一オブジェクト判定部によってオーバラップしている前記端部に位置するオブジェクトが同一のオブジェクトであると判定されたとき、前記温度データ管理部が管理する前記第1及び第2の可視光カメラで撮影されたオブジェクトの各座標情報に対応付けられている2つの温度データに基づき、前記表示部に温度または温度に対応する情報を表示するための統合した1つの温度データを生成するよう処理する温度データ処理部とをさらに備える温度測定装置を提供する。
【0008】
本発明は、2組以上の遠赤外線カメラ及び可視光カメラを互いの撮影範囲をずらし、撮影範囲が隣接する2組の遠赤外線カメラ及び可視光カメラを各撮影範囲の端部が互いにオーバラップするように配置して所定の範囲を撮影し、各遠赤外線カメラの出力を変換テーブルに基づいて温度データに変換し、各可視光カメラより出力された撮影画像データに基づく撮影画像に含まれる所定のオブジェクトを検出し、検出された各オブジェクトの前記各可視光カメラの撮影画像のフレーム内の位置を示す座標情報と、前記各オブジェクトの温度を示す前記座標情報で示される領域の温度データとを対応付けて管理し、オーバラップしている前記端部に位置して、撮影範囲が隣接する2つの可視光カメラである第1の可視光カメラで撮影されたオブジェクトと第2の可視光カメラで撮影されたオブジェクトとが同一のオブジェクトであるか否かを判定し、オーバラップしている前記端部に位置するオブジェクトが同一のオブジェクトであると判定したとき、前記第1及び第2の可視光カメラで撮影されたオブジェクトの各座標情報に対応付けられている2つの温度データに基づいて統合した1つの温度データを生成し、前記各可視光カメラより出力された撮影画像データに基づく撮影画像を表示部に表示し、前記各可視光カメラの撮影範囲内のみに位置するオブジェクトの座標情報で示される領域の温度データと、オーバラップしている前記端部に位置するオブジェクトの座標情報で示される領域の前記統合した1つの温度データとに基づいて、前記各オブジェクトの温度または温度に対応する情報を前記表示部に表示する温度表示方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の温度測定装置及び温度表示方法によれば、複数のカメラの各カメラの撮影範囲の端部を互いにオーバラップさせて所定の範囲の被写体を撮影し、撮影された各オブジェクトの温度を適切に測定して表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態の温度測定装置を示すブロック図である。
【
図2】複数の可視光カメラの撮影画像のフレームの端部がオーバラップしている状態を示す図である。
【
図3】一実施形態の温度測定装置が備える、1つの表示パネルで構成された表示部を示す平面図である。
【
図4】一実施形態の温度測定装置が備える、3つの表示パネルで構成された表示部を示す平面図である。
【
図5】各人物の体温を表示部に間接的に表示する第1の例を示す図である。
【
図6】各人物の体温を表示部に直接的に表示する第2の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施形態の温度測定装置及び温度表示方法について、添付図面を参照して説明する。
図1に示す一実施形態の温度測定装置100は、一例として、3組の遠赤外線カメラ(以下、FIRカメラ)1a~1c及び可視光カメラ2a~2cを備える。FIRカメラ及び可視光カメラの組は2組以上であればよい。一実施形態の温度測定装置100は、温度を測定する対象のオブジェクトを人物とし、人物の温度、即ち体温を測定して表示する検温装置とした例を示している。
【0012】
図1において、FIRカメラ1a及び可視光カメラ2aと、FIRカメラ1b及び可視光カメラ2bと、FIRカメラ1c及び可視光カメラ2cとは、各撮影範囲(画角)をずらしながら、所定の広範囲の被写体を撮影する。FIRカメラ1a及び可視光カメラ2aと、FIRカメラ1b及び可視光カメラ2bとは、撮影範囲が隣接するように配置され、FIRカメラ1b及び可視光カメラ2bと、FIRカメラ1c及び可視光カメラ2cとは、撮影範囲が隣接するように配置されている。各組のFIRカメラと可視光カメラとの撮影範囲は同じであることが好ましい。
【0013】
このとき、FIRカメラ1a及び可視光カメラ2aと、FIRカメラ1b及び可視光カメラ2bとは、各撮影範囲の端部が互いにオーバラップするように配置されている。FIRカメラ1b及び可視光カメラ2bと、FIRカメラ1c及び可視光カメラ2cとは、各撮影範囲の端部が互いにオーバラップするように配置されている。
【0014】
撮影範囲が隣接する2つの可視光カメラである可視光カメラ2a及び2bのうち、可視光カメラ2aを第1の可視光カメラとすれば、可視光カメラ2bは第2の可視光カメラである。撮影範囲が隣接する2つの可視光カメラである可視光カメラ2b及び2cのうち、可視光カメラ2bを第1の可視光カメラとすれば、可視光カメラ2cは第2の可視光カメラである。
【0015】
FIRカメラ1a~1cは、画素ごとに遠赤外線の強さに応じた電圧値を出力する。温度が高いほど遠赤外線が強くなるので、温度が高いほど電圧値が大きくなる。FIRカメラ1a~1cは、画素単位の電圧値をそれぞれ温度変換部3a~3cに供給する。
【0016】
可視光カメラ2a~2cは、可視光の撮影画像データをそれぞれオブジェクト検出部4a~4cに供給する。また、可視光カメラ2a~2cは、可視光の撮影画像データを画像処理部11に供給する。可視光カメラ2a~2cが撮影した撮影画像をそれぞれ撮影画像20a~20cとすると、撮影画像20a~20cの各フレームは
図2に示すように端部がオーバラップしている。
図2においては、撮影画像20cのフレームは、撮影画像20bのフレームとオーバラップしている端部近傍のみを示している。
【0017】
オブジェクト検出部4a~4cは、可視光カメラ2a~2cからの撮影画像データに基づき、撮影画像に含まれる所定のオブジェクトを検出する。本実施形態においてオブジェクトは人物である。オブジェクト検出部4a~4cは、公知のパターンマッチングの手法を用いて人物を検出する。オブジェクト検出部4a~4cは、公知の顔認識技術を用いて人物を検出してもよい。
【0018】
一例として、オブジェクト検出部4aは、
図2に示す撮影画像20aのフレーム内に存在する人物301~303を検出する。オブジェクト検出部4bは、
図2に示す撮影画像20bのフレーム内に存在する人物303及び304を検出する。人物303は撮影画像20a及び撮影画像20bの各フレームの互いにオーバラップしている端部に位置しているため、オブジェクト検出部4a及び4bの双方で検出される。撮影画像20cのフレーム内に人物が存在すれば、オブジェクト検出部4cは撮影画像20cのフレーム内に存在する人物を検出する。
【0019】
オブジェクト検出部4a~4cは、各人物の位置を示す座標情報及び画像データを形状特徴抽出部5及び輝度・色特徴抽出部6に供給する。オブジェクト検出部4a~4cは、各人物の位置を示す座標情報をそれぞれ温度変換部3a~3cに供給する。また、オブジェクト検出部4a~4cは、各人物の位置を示す座標情報を温度データ管理部9及び温度変換特性管理部10に供給する。
【0020】
温度変換部3a~3cは、それぞれFIRカメラ1a~1cから供給された全画素の電圧値のうち、人物の位置を示す座標情報に基づきオブジェクトが存在している画素の電圧値を、予め設定されている変換テーブルに基づいて温度データに変換する。オブジェクトが存在している画素とは、人物の皮膚が露出している領域のみであってもよい。温度変換部3a~3cは、温度データを温度データ管理部9及び温度変換特性管理部10に供給する。
【0021】
温度変換部3a~3cは、それぞれFIRカメラ1a~1cから供給された全画素の電圧値を温度データに変換してもよいが、そのようにすると温度データ管理部9は膨大な温度データを管理する必要がある。オブジェクトが存在している画素の電圧値のみを温度データに変換することにより、温度変換部3a~3cでの変換処理と温度データ管理部9での温度データの管理が簡略化される。
【0022】
形状特徴抽出部5は、各人物の形状的な特徴を抽出する。輝度・色特徴抽出部6は、各人物の位置を示す座標情報で示される領域の画像データの輝度(明るさ)及び色の特徴を抽出する。撮影画像データが輝度信号及び色差信号で構成されている場合には、輝度・色特徴抽出部6は、輝度信号に基づき輝度の特徴を抽出し、色差信号に基づき色の特徴を抽出すればよい。輝度・色特徴抽出部6は、輝度と色の双方の特徴を抽出するのがよいが、色(または輝度)のみの特徴を抽出してもよい。
【0023】
形状特徴抽出部5は形状的な特徴を示すデータを同一オブジェクト判定部7に供給し、輝度・色特徴抽出部6は輝度及び色の特徴を示すデータを同一オブジェクト判定部7に供給する。同一オブジェクト判定部7は、形状的な特徴を示すデータと、輝度及び色の特徴を示すデータとに基づいて、オブジェクト検出部4a~4cが検出した複数の人物のうち、実際には同一の人物である同一オブジェクトであるか否かを判定する。
【0024】
撮影画像20a~20cの各フレームがオーバラップしている領域が固定であり、同一オブジェクト判定部7にオーバラップしている領域が設定されていてもよい。この場合、同一オブジェクト判定部7は、オーバラップしている領域内でのみ、その領域内に存在する人物が同一オブジェクトであるか否かを判定してもよい。
【0025】
同一オブジェクト判定部7は、形状的な特徴を示すデータのみに基づいて、検出された人物が同一オブジェクトであるか否かを判定してもよい。
図2に示す例では、同一オブジェクト判定部7は、撮影画像20aのフレーム内に存在する人物303と撮影画像20bのフレーム内に存在する人物303とが同一オブジェクトであると判定する。同一オブジェクト判定部7は、同一オブジェクトが存在している判定した判定結果である座標情報を温度データ処理部8及び温度変換特性管理部10に供給する。
【0026】
温度データ管理部9は、各人物の位置を示す座標情報と、各人物の位置を示す座標情報で示される領域の温度データとを対応付けて管理する。このとき、人物の位置を示す座標情報で示される領域の温度データは、その画素の温度データの平均値であってもよいし、最大値であってもよい。人物303の温度データは、撮影画像20aのフレーム内の座標情報と対応付けられ、かつ、撮影画像20bのフレーム内の座標情報と対応付けられている。即ち、温度データ管理部9は、一人の人物303に2つの温度データを対応付けている。
【0027】
後述するように、表示部12が各人物の体温または体温に対応する情報を表示するとき、一人の人物303に2つの温度データを対応付けられていると、そのいずれを採用すべきであるかという問題が生じる。
【0028】
そこで、温度データ処理部8は、同一オブジェクト判定部7から供給される判定結果に基づき、人物303に対する2つの温度データを1つの温度データに統合した表示用に採用すべき統合温度データを生成する。統合温度データには、2つの温度データのうちの1つの温度データを選択した選択温度データが含まれる。
【0029】
FIRカメラ1aが人物303を撮影して温度変換部3aが出力する温度データと、FIRカメラ1bが人物303を撮影して温度変換部3bが出力する温度データとは、FIRカメラの個体差等によって同じ温度となるとは限らない。例えば、前者の温度データが示す体温が36.2度、後者の温度データが示す体温が36.3度であったとする。このとき、温度データ処理部8は、体温の高い方の36.3度を選択して人物303に対応付けてもよいし、2つの温度データが示す体温の平均値を人物303に対応付けてもよい。
【0030】
温度データ管理部9は、統合温度データを生成する前の2つの温度データを残しつつ、新たに統合温度データを人物303に対応付けるのがよい。後述するように、温度変換特性管理部10が2つの温度データを用いて温度変換部3a~3cにおける温度変換特性を管理する場合には、統合温度データを生成する前の2つの温度データが必要となる。温度変換特性管理部10を設けない場合には、人物303に統合温度データのみを対応付けてもよい。
【0031】
温度変換特性管理部10は、撮影画像20a~20cのフレーム内の同一オブジェクトであると判定されている位置を示す座標情報の温度データに基づき、温度変換部3a~3cにおける温度変換特性を管理する。
【0032】
上記のように、温度変換部3aより出力された温度データが示す人物303の体温が36.2度、温度変換部3bより出力された温度データが示す人物303の体温が36.3度であったとする。この場合の人物303の体温の差は0.1度である。撮影画像20bのフレームと撮影画像20cのフレームとでオーバラップしている端部において同一のオブジェクトであると判定された人物の体温の差が1.0度であったとする。
【0033】
この場合、FIRカメラ1cまたは温度変換部3cに異常が発生している可能性がある。そこで、温度変換特性管理部10は、画像処理部11内の重畳部112に、表示部12に表示されている画像に警告メッセージを重畳するよう制御する。
【0034】
温度変換特性管理部10は、撮影画像20a及び20bの複数のフレームにおいて同一のオブジェクトであると判定された複数の人物に基づいて測定された体温の差を求めるのがよい。温度変換特性管理部10は、撮影画像20b及び20cの複数のフレームにおいて同一のオブジェクトであると判定された複数の人物に基づいて測定された体温の差を求めるのがよい。温度変換特性管理部10は、前者の複数の人物の体温の差と後者の複数の人物の体温の差とを比較して、異常が発生しているか否かを判定することが好ましい。
【0035】
温度変換特性管理部10は、隣接するフレームにおける同一のオブジェクトに対して得られた体温の差が所定の温度以上である状態が所定の時間継続するときに、表示部12に表示されている画像に警告メッセージを重畳してもよい。また、温度変換特性管理部10は、隣接するフレームにおける同一のオブジェクトに対して得られた体温の差が時間の進行に伴って増大していくときに、表示部12に表示されている画像に警告メッセージを重畳してもよい。
【0036】
FIRカメラ1cまたは温度変換部3cに異常が発生しているとは考えられず、単に、FIRカメラ1a~1cの個体差または温度変換部3a~3cでの設定のばらつきによって体温の差が発生することがある。この場合、温度変換特性管理部10は、同一のオブジェクトであれば同一の体温が測定されるように、温度変換部3a~3cのキャリブレーションを実行してもよい。
【0037】
例えば、温度変換部3aと温度変換部3bとで同一のオブジェクトの体温の差がほぼ0、温度変換部3bと温度変換部3cとで同一のオブジェクトの体温の差が0.1度であるとする。温度変換部3cで得られる体温は温度変換部3bで得られる体温よりも常に0.1度高いとする。この場合、温度変換特性管理部10は、温度変換部3cより出力される温度データが示す温度が0.1度減じた温度となるように温度変換部3cを制御して温度データを補償する。
【0038】
温度変換部3a~3cにおける変換テーブルが書き換え可能に構成されていれば、温度変換特性管理部10は、温度データの補償が必要な温度変換部3a~3cのうちのいずれかの変換テーブルを書き換えてもよい。変換テーブルが書き換え可能に構成されていなければ、温度変換特性管理部10は、温度データの補償が必要な温度変換部3a~3cのうちのいずれかに、温度データを補償するための加算値または減算値を設定すればよい。
【0039】
温度変換特性管理部10を設けることは必須ではないが、設けることが好ましい。温度変換特性管理部10は、異常が発生していると判定されるときに画像に警告メッセージを重畳させる処理を実行するだけでもよいし、温度変換部3a~3cのキャリブレーションを実行するだけでもよい。
【0040】
温度測定装置100がFIRカメラ及び可視光カメラの組を2組しか備えない構成では、温度変換特性管理部10は、異常が発生しているFIRカメラまたは温度変換部を特定することはできない。しかしながら、一方のFIRカメラ及び温度変換部と他方のFIRカメラ及び温度変換部とのうちのいずれか一方に異常が発生していることは判定可能である。
【0041】
画像処理部11は、合成部111及び重畳部112を有する。
図3に示すように、表示部12が1つの表示パネルで構成されている場合には、合成部111は、撮影画像20a~20cのフレームを合成して1つのフレーム20を生成する。合成部111は、例えば、オーバラップしている2つの撮影画像の端部の撮影画像データに1/2を乗じて両者を加算することによって、オーバラップしている端部を合成する。
図3において、近距離にある2つの破線で挟まれた部分はオーバラップしている端部である。
【0042】
図4に示すように、表示部12が3つの表示パネル12a~12cで構成されている場合には、合成部111は、撮影画像20a~20cのフレームを合成しない。画像処理部11は、撮影画像20a~20cをそれぞれ表示パネル12a~12cに供給する。表示パネル12a~12cは、撮影画像20a~20cのフレームを個別に表示する。この場合、オーバラップしているフレームの端部は隣接する2つの表示パネル双方の端部に表示される。
【0043】
画像処理部11は、温度データ管理部9が管理する各人物の位置を示す座標情報と各人物の温度データを参照して、表示部12に表示される各人物の体温を直接的または間接的に表示する。画像処理部11は、第1の例として、体温が37.0度未満であれば青色のような寒色で人物を表示し、体温が37.0度以上であれば赤色のような暖色で人物を表示する。第1の例は各人物の体温を間接的に表示する例である。寒色及び暖色は、人物の体温に対応する情報の一例である。
【0044】
図5は、表示部12が
図3に示すように1つの表示パネルで構成されており、その表示パネルに表示される合成されたフレーム20を示している。人物301~304の体温がそれぞれ36.6度、37.8度、36.4度、36.2度であったとする。
図5において、シングルハッチングは寒色、クロスハッチングは暖色を示す。人物301、303、及び304は、体温が37.0度未満であることを示す寒色で表示され、人物302は、体温が37.0度以上であることを示す暖色で表示されている。
【0045】
このとき、人物303の体温は、人物303に新たに対応付けた統合温度データが示す体温であり、人物303の色は統合温度データが示す体温に基づく。
【0046】
人物301~304以外の背景はモノクロ画像またはモノトーン画像で表示されていてもよいし、輝度を低下させたカラーで表示されていてもよい。人物301~304以外の背景の表示の仕方は任意である。
【0047】
図6に示すように、画像処理部11は、第2の例として、各人物の体温を直接的に表示する。
図6に示す第2の例においては、各人物の顔を囲む破線の矩形の近傍に体温を表示している。顔を囲む矩形の表示は必須ではない。
図6に示す第2の例では、撮影画像20a~20cのフレームを合成したフレーム20はカラー画像でよい。重畳部112は、フレーム20の画像データに各人物の顔を囲む矩形及び体温を示す数字を重畳する。
【0048】
図6においても、人物303の体温は、人物303に新たに対応付けた統合温度データが示す体温である。
【0049】
警報部13は、温度データ管理部9が管理する温度データを参照して、体温が37.0度以上の人物が存在するときに警報を発する。警報部13は、警告灯、表示部12とは異なる表示パネル、LED、スピーカ等のいずれかを有する。警報部13は視覚的または聴覚的に警報を発する。警報部13を設けることは必須ではない。
【0050】
画像処理部11は、人物を色分けしたり、体温を表示したりするだけでなく、体温が37.0度以上の人物が存在するときに、重畳部112が表示部12に表示されている画像に警報文を重畳してもよい。
【0051】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。温度測定装置100及び温度測定装置100が実行する温度表示方法は、温度を測定して表示するオブジェクトとして、人物以外の動物または所定の物体の温度(体温)を測定して表示してもよい。温度を測定する対象のオブジェクトは限定されない。
【符号の説明】
【0052】
1a~1c 遠赤外線カメラ
2a~2c 可視光カメラ
3a~3c 温度変換部
4a~4c オブジェクト検出部
5 形状特徴抽出部
6 輝度・色特徴抽出部
7 同一オブジェクト判定部
8 温度データ処理部
9 温度データ管理部
10 温度変換特性管理部
11 画像処理部
12 表示部
13 警報部
111 合成部
112 重畳部