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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/34 20060101AFI20241022BHJP
   H01L 21/331 20060101ALI20241022BHJP
   H01L 29/737 20060101ALI20241022BHJP
   H01L 21/8222 20060101ALI20241022BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H01L23/34 A
H01L29/72 H
H01L27/06 101D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020210056
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022096840
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(72)【発明者】
【氏名】深澤 美紀子
(72)【発明者】
【氏名】後藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】吉見 俊二
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-216716(JP,A)
【文献】特開2019-192729(JP,A)
【文献】特開2009-054850(JP,A)
【文献】特開2006-216770(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0303971(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/34
H01L 21/331
H01L 21/8222
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有し、前記第1面を平面視したとき、前記第1面の内部の領域に配置された複数の回路ブロックを含む第1部材と、
前記第1部材の前記第1面に面接触して接合され、少なくとも1つの回路ブロックを含む第2部材と、
前記第2部材から、前記第1部材の側とは反対側に突出する導体突起と
を備え、
前記第2部材の回路ブロックのうち1つの回路ブロックは、相互に並列に接続された複数の第1トランジスタを含む第1増幅回路を構成しており、
前記第1部材の複数の回路ブロックのうち少なくとも1つの回路ブロックは、前記第2部材の少なくとも1つの回路ブロックに、平面視において重なっている半導体装置。
【請求項2】
平面視において相互に重なっている前記第1部材の回路ブロックと前記第2部材の回路ブロックとを接続する配線をさらに備えた請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
平面視において前記第1部材の回路ブロックと重なっている前記第2部材の回路ブロックは前記第1増幅回路を構成しており、
前記第1増幅回路を構成している回路ブロックは、前記第1部材の複数の回路ブロックのうち前記第1増幅回路の動作中には動作しない回路ブロックと、平面視において重なっている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
平面視において前記第2部材の回路ブロックと重なっている前記第1部材の回路ブロックはデジタル回路であり、
平面視において相互に重なっている前記第1部材の回路ブロックと前記第2部材の回路ブロックとの間に、グランドに接続された金属膜を、前記第1部材が含む請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2部材は、前記第1増幅回路の前段に接続された第2増幅回路をさらに含み、
平面視において前記第1部材の回路ブロックと重なっている前記第2部材の回路ブロックは前記第1増幅回路を構成しており、前記第2増幅回路を構成する回路ブロックは、平面視において前記第1部材のいずれの回路ブロックとも重なっていない請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
第1面を有し、前記第1面を平面視したとき、前記第1面の内部の領域に配置された複数の回路ブロックを含む第1部材と、
前記第1部材の前記第1面に面接触して接合され、少なくとも1つの回路ブロックを含む第2部材と、
前記第1部材の前記第1面から突出する第1導体突起と、
前記第2部材から、前記第1導体突起と同じ向きに突出する第2導体突起と、
前記第1部材及び前記第2部材が実装されたモジュール基板と
を備え、
前記第2部材の回路ブロックのうち1つの回路ブロックは、相互に並列に接続された複数の第1トランジスタを含む第1増幅回路を構成しており、
前記第1部材の複数の回路ブロックのうち少なくとも1つの回路ブロックは、前記第2部材の少なくとも1つの回路ブロックに、平面視において重なっており、
平面視において相互に重なっている前記第1部材の回路ブロックと前記第2部材の回路ブロックとが、前記第1導体突起、前記第2導体突起、及び前記モジュール基板に設けられた配線を介して相互に接続されている半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信や衛星通信等に用いられる電子機器に、高周波信号の送受信機能を一体化したRFフロントエンドモジュールが組み込まれている。RFフロントエンドモジュールは、高周波増幅機能を持つモノリシックマイクロ波集積回路素子(MMIC)、高周波増幅回路を制御する制御IC、スイッチIC、デュプレクサ等を備えている。
【0003】
MMICの上に制御ICを積み重ねることによって小型化した高周波モジュールが下記の特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された高周波モジュールは、モジュール基板の上に搭載されたMMICと、その上に積み重ねられた制御ICとを含む。MMICの電極、制御ICの電極、及びモジュール基板上の電極が、ワイヤボンディングにより電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2015/0303971号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高周波増幅回路に、例えばヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)が用いられる。HBTは、動作中にコレクタ損失が発生することによって発熱する。発熱によるHBTの温度上昇は、コレクタ電流をさらに増大させる方向に働く。この正帰還の条件が満たされるとHBTが熱暴走に至る。HBTの熱暴走を回避するために、HBTの出力電力の上限値が制限される。
【0006】
高周波増幅回路の高出力化を図るために、HBT等を含む半導体装置からの放熱特性を向上させることが望まれる。特許文献1に開示された高周波モジュールでは、近年の高周波増幅回路に対する高出力化の要求を満たすことが困難である。
【0007】
本発明の目的は、放熱特性を高めることが可能な半導体装置及び半導体モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によると、
第1面を有し、前記第1面を平面視したとき、前記第1面の内部の領域に配置された複数の回路ブロックを含む第1部材と、
前記第1部材の前記第1面に面接触して接合され、少なくとも1つの回路ブロックを含む第2部材と、
前記第2部材から、前記第1部材の側とは反対側に突出する導体突起と
を備え、
前記第2部材の回路ブロックのうち1つの回路ブロックは、相互に並列に接続された複数の第1トランジスタを含む第1増幅回路を構成しており、
前記第1部材の複数の回路ブロックのうち少なくとも1つの回路ブロックは、前記第2部材の少なくとも1つの回路ブロックに、平面視において重なっている半導体装置が提供される。
【0009】
本発明の他の観点によると、
第1面を有し、前記第1面を平面視したとき、前記第1面の内部の領域に配置された複数の回路ブロックを含む第1部材と、
前記第1部材の前記第1面に面接触して接合され、少なくとも1つの回路ブロックを含む第2部材と、
前記第1部材の前記第1面から突出する第1導体突起と、
前記第2部材から、前記第1導体突起と同じ向きに突出する第2導体突起と、
前記第1部材及び前記第2部材が実装されたモジュール基板と
を備え、
前記第2部材の回路ブロックのうち1つの回路ブロックは、相互に並列に接続された複数の第1トランジスタを含む第1増幅回路を構成しており、
前記第1部材の複数の回路ブロックのうち少なくとも1つの回路ブロックは、前記第2部材の少なくとも1つの回路ブロックに、平面視において重なっており、
平面視において相互に重なっている前記第1部材の回路ブロックと前記第2部材の回路ブロックとが、前記第1導体突起、前記第2導体突起、及び前記モジュール基板に設けられた配線を介して相互に接続されている半導体モジュールが提供される。
【発明の効果】
【0010】
第1トランジスタで発生した熱が、第1トランジスタから第1部材に至る伝熱経路と、導体突起を経由する伝熱経路との2つの伝熱経路を通って伝導される。このため、第1トランジスタからの放熱特性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施例による半導体装置を含む高周波モジュールのブロック図である。
図2図2は、第1実施例による高周波モジュールの回路部品の平面視における位置関係を示す図である。
図3図3は、第1実施例による半導体装置の概略断面図である。
図4図4Aは、第1実施例による半導体装置の第1増幅回路を構成する複数のセルの各々の等価回路図であり、図4Bは、第2部材に形成された第1増幅回路を構成する1つのセルの概略断面図である。
図5図5Aは、第1実施例による半導体装置の第1面を平面視したときの各回路ブロックの面内の分布を示す模式図であり、図5Bは、第1増幅回路を構成する複数のトランジスタの平面視における配置を示す図である。
図6図6Aから図6Fまでの図面は、製造途中段階における半導体装置の断面図である。
図7図7Aから図7Cまでの図面は、製造途中段階における半導体装置の断面図であり、図7Dは、完成した半導体装置の断面図である。
図8図8は、第1実施例の一変形例による半導体モジュールの断面図である。
図9図9は、第2実施例による半導体装置の第1面を平面視したときの各回路ブロックの面内の分布を示す模式図である。
図10図10Aは、第3実施例による半導体装置の第1面を平面視したときの各回路ブロックの面内の分布を示す模式図であり、図10Bは、第3実施例による半導体装置の概略断面図である。
図11図11は、第4実施例による半導体装置の第1面を平面視したときの各回路ブロックの面内の分布を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施例]
図1から図7Dまでの図面を参照して、第1実施例による半導体装置について説明する。以下に説明する第1実施例による半導体装置は、高周波電力増幅器である。
【0013】
図1は、第1実施例による半導体装置30を含む高周波モジュール20のブロック図である。この高周波モジュール20は、第1実施例による半導体装置30、出力整合回路76、複数のデュプレクサ70、アンテナスイッチ72、2つの受信用のバンド選択スイッチ73、2つのローノイズアンプ71、受信用の出力端子選択スイッチ74、及び第2制御回路75を含む。これらの回路部品はモジュール基板にフリップチップ実装される。この高周波モジュール20は、周波数分割複信(FDD)方式の送受信を行う機能を有する。
【0014】
半導体装置30は、第1部材31と、第1部材31に接合された第2部材32とを含む。第1部材31に、入力スイッチ43、第1制御回路42、及びバンド選択スイッチ41が形成されている。第2部材32に、第1増幅回路51及び第2増幅回路52からなる2段構成の高周波増幅回路50、及びバイアス回路53が形成されている。第2増幅回路52が初段の増幅回路であり、第1増幅回路51が最終段の増幅回路である。図1において、第1部材31に設けられている回路ブロックに相対的に淡いハッチングを付し、第2部材32に設けられている回路ブロックに相対的に濃いハッチングを付している。バイアス回路53は、第1制御回路42からの制御信号に応じて、第1増幅回路51及び第2増幅回路52にバイアス電流を供給する。
【0015】
入力スイッチ43の2つの入力接点が、それぞれモジュール基板に設けられた高周波信号入力端子IN1、IN2に接続されている。2つの高周波信号入力端子IN1、IN2から高周波信号が入力される。入力スイッチ43は、2つの入力接点から1つの接点を選択し、選択した接点に入力される高周波信号を高周波増幅回路50に入力させる。
【0016】
高周波増幅回路50で増幅された高周波信号が、出力整合回路76を通ってバンド選択スイッチ41の1つの入力接点に入力される。バンド選択スイッチ41は、複数の出力接点から1つの接点を選択し、高周波増幅回路50で増幅された高周波信号を、選択した出力接点から出力させる。
【0017】
バンド選択スイッチ41の複数の出力接点のうち2つの接点は、それぞれモジュール基板に設けられた補助出力端子PAAUX1、PAAUX2に接続されている。他の6個の接点は、それぞれバンドごとに準備された複数のデュプレクサ70の送信用入力ポートに接続されている。バンド選択スイッチ41は、バンドごとに準備された複数のデュプレクサ70から1つのデュプレクサ70を選択する機能を有する。
【0018】
アンテナスイッチ72が、回路側の複数の接点とアンテナ側の2つの接点とを有する。アンテナスイッチ72の複数の回路側の接点のうち2つの接点が、それぞれ送信信号入力端子TRX1、TRX2に接続されている。回路側の他の6個の接点は、それぞれ複数のデュプレクサ70の入出力共用ポートに接続されている。アンテナ側の2つの接点は、それぞれアンテナ端子ANT1、ANT2に接続されている。アンテナ端子ANT1、ANT2に、それぞれアンテナが接続される。
【0019】
アンテナスイッチ72は、2つのアンテナ側の接点を、それぞれ回路側の複数の接点から選択した2つの接点に接続する。1つのバンドを用いて通信を行う場合には、アンテナスイッチ72は、回路側の1つの接点と、アンテナ側の1つの接点とを接続する。高周波増幅回路50で増幅され、対応するバンド用のデュプレクサ70を通過した高周波信号が、選択されたアンテナ側の接点に接続されているアンテナから送信される。
【0020】
2つの受信用のバンド選択スイッチ73の各々が、4個の入力接点と1つの出力接点とを有する。2つのバンド選択スイッチ73の各々の4個の入力接点のうち3個の接点は、それぞれデュプレクサ70の受信用出力ポートに接続されている。2つのバンド選択スイッチ73の各々の残りの1つの接点は、それぞれ補助入力端子LNAAUX1、LNAAUX2に接続されている。
【0021】
2つの受信用のバンド選択スイッチ73の出力接点は、それぞれ2つのローノイズアンプ71に接続されている。2つの受信用のバンド選択スイッチ73は、それぞれデュプレクサ70を通過した受信信号をローノイズアンプ71に入力させる。
【0022】
出力端子選択スイッチ74の2つの回路側の接点が、それぞれ2つのローノイズアンプ71の出力ポートに接続されている。出力端子選択スイッチ74の3つの端子側の接点が、それぞれ受信信号出力端子LNAOUT1、LNAOUT2、LNAOUT3に接続されている。ローノイズアンプ71で増幅された受信信号が、出力端子選択スイッチ74で選択された受信信号出力端子から出力される。
【0023】
モジュール基板に設けられた電源端子VCC1、VCC2から、それぞれ第1増幅回路51及び第2増幅回路52に電源電圧が印加される。
【0024】
第1制御回路42が、電源端子VIO1、制御信号端子SDATA1、及びクロック端子SCLK1に接続されている。第1制御回路42は、制御信号端子SDATA1に与えられる制御信号に基づいてバイアス回路53、入力スイッチ43、及びバンド選択スイッチ41を制御する。
【0025】
第2制御回路75が、電源端子VIO2、制御信号端子SDATA2、及びクロック端子SCLK2に接続されている。第2制御回路75は、制御信号端子SDATA2に与えられる制御信号に基づいてローノイズアンプ71、受信用のバンド選択スイッチ73、及び出力端子選択スイッチ74を制御する。
【0026】
モジュール基板に、さらに電源端子VBAT及びドレイン電圧端子VDD2が設けられている。電源端子VBATから、高周波増幅回路50のバイアス回路及び第1制御回路42に電源が供給される。ドレイン電圧端子VDD2からローノイズアンプ71に電源電圧が印加される。
【0027】
図2は、第1実施例による高周波モジュール20の回路部品の平面視における位置関係を示す図である。モジュール基板21に、半導体装置30、複数のデュプレクサ70、ローノイズアンプ71、アンテナスイッチ72、及びその他の表面実装型の複数の受動部品が実装されている。半導体装置30の第1部材31は、平面視において第2部材32より大きく、第2部材32を包含している。
【0028】
第1部材31に、バンド選択スイッチ41、第1制御回路42、及び入力スイッチ43が形成されている。図2において、バンド選択スイッチ41、第1制御回路42、及び入力スイッチ43等の回路ブロックが配置される領域を破線で囲んで示している。ここで、「回路ブロック」とは、ある機能を実現するために構成された半導体素子、受動素子等の複数の回路素子、及びこれらの回路素子を相互に接続する配線の集合体を意味する。一般的に、回路ブロックごとに回路設計が行われ、回路ブロックごとに半導体基板上にレイアウトされる。
【0029】
出力整合回路76は、モジュール基板内に配置されたインダクタ等の受動素子と、モジュール基板に表面実装されたキャパシタ等で構成される。出力整合回路76を構成するインダクタは、平面視において半導体装置30と重なる位置に配置されている。本明細書において「平面視において2つの部材が重なっている」状態は、一方の部材が他方の部材を包含している状態、一方の部材の一部が他方の部材の一部と重なっている状態、及び2つの部材の外周線が一致している状態を含む。
【0030】
図3は、第1実施例による半導体装置30の概略断面図である。第1部材31は、基板311、その上に配置された多層配線構造312、及び多層配線構造312の表面を覆う第1部材保護膜313を含んでいる。基板311は、単体半導体系の半導体部分を含む。基板311として、例えばシリコン基板またはシリコンオンインシュレータ(SOI)基板が用いられる。バンド選択スイッチ41(図1)、第1制御回路42(図1)、及び入力スイッチ43(図1)が、基板311の表層部に形成された半導体素子及び多層配線構造312内の配線により構成される。図3では、入力スイッチ43が形成される領域を破線で囲んで示している。第1部材31の最表面を第1面31Aということとする。第1部材保護膜313の上面が第1面31Aに相当する。
【0031】
第2部材32が、第1部材31の第1面31Aに面接触して接合されている。第2部材32に、第1増幅回路51(図1)、第2増幅回路52(図1)、及びバイアス回路53(図1)が形成されている。図3では、第2増幅回路52が配置されている領域を破線で囲んで示している。
【0032】
第2部材32を覆うように、第1面31Aの上に層間絶縁膜67が配置されている。層間絶縁膜67の所定の位置に複数の開口が設けられている。層間絶縁膜67の上に、複数のパッド62、63、及び複数の配線61が配置されている。複数のパッド62、63、及び複数の配線61が配置された配線層は、再配線層といわれる場合がある。再配線層内の配線61は、再配線といわれる場合がある。
【0033】
配線61は、層間絶縁膜67に設けられている開口を通り、多層配線構造312内の配線315を介して入力スイッチ43に接続されるとともに、層間絶縁膜67に設けられた他の開口を通って第2増幅回路52に接続されている。すなわち、第1部材31に形成されている入力スイッチ43と第2部材32に形成されている第2増幅回路52とが、再配線層の配線61を介して電気的に直接接続されている。ここで、「電気的に直接接続されている」とは、トランジスタ等の能動素子を介することなく、電気的に接続されていることを意味する。例えば、インピーダンス整合回路等の受動素子のみで構成された回路を介して接続されている場合は、「電気的に直接接続されている」場合に含まれる。再配線層に含まれる他の配線は、例えば第1制御回路42(図1)とバイアス回路53(図1)との接続等に用いられる。
【0034】
パッド62は、平面視において第2部材32に包含されており、第2部材32に形成されている回路に接続されている。パッド62の他にも、平面視において第2部材32に包含される他のパッドが配置されている。パッド63は、平面視において第2部材32の外側に配置されており、層間絶縁膜67の設けられた開口を通り、多層配線構造312内の配線316を介して、第1部材31に形成されている入力スイッチ43に接続されている。パッド63の他にも、平面視において第2部材32の外側に他のパッドが配置されている。
【0035】
再配線層を覆うように、層間絶縁膜67の上に保護膜68が配置されている。保護膜68に、パッド62、63のそれぞれの上面の一部の領域を露出させる開口が設けられている。パッド62、63の上に、それぞれ導体突起82、83が配置されている。導体突起82は、パッド62に接続されたCuピラー82Aと、Cuピラー82Aの上面に配置されたハンダ層82Bとを含む。このような構造の導体突起82は、Cuピラーバンプといわれる。
【0036】
なお、Cuピラー82Aの底面に、密着性向上を目的としてアンダーバンプメタル層を配置してもよい。他の導体突起83も、導体突起82と同じ積層構造を有する。なお、導体突起82、83等に、Cuピラーバンプに代えて、Auバンプ、ハンダボールバンプ、パッド上に立てられた導体柱等を用いてもよい。Auバンプのように、ハンダ層が載せられていないバンプは、ピラーともいわれる。パッド上に立てられた導体柱は、ポストともいわれる。
【0037】
導体突起82は、例えば図1に示した電源端子VCC1と第1増幅回路51との接続、電源端子VCC2と第2増幅回路52との接続、第1増幅回路51と出力整合回路76との接続に用いられる。さらに、導体突起82は、第2部材32内のグランド導体と、モジュール基板のグランド導体との接続に用いられる。
【0038】
導体突起83は、例えば図1に示した入力スイッチ43と高周波信号入力端子IN1、IN2との接続、第1制御回路42と電源端子VIO1、制御信号端子SDATA1、及びクロック端子SCLK1との接続、バンド選択スイッチ41と出力整合回路76、複数のデュプレクサ70等との接続に用いられる。
【0039】
図4Aは、第1実施例による半導体装置の第1増幅回路51(図1)を構成する複数のセルの各々の等価回路図である。第1増幅回路51は、相互に並列に接続された複数のセルで構成される。なお、第2増幅回路52(図1)も、第1増幅回路51と同様の回路構成を有する。ただし、第2増幅回路52を構成するセルの個数は、第1増幅回路51を構成するセルの個数より少ない。
【0040】
各セルは、トランジスタQ、入力キャパシタCin、及びバラスト抵抗素子Rbを含む。トランジスタQのベースが入力キャパシタCinを介して高周波信号入力配線105RFに接続されている。さらに、トランジスタQのベースが、バラスト抵抗素子Rbを介してベースバイアス配線104BBに接続されている。トランジスタQのエミッタが接地されている。トランジスタQのコレクタがコレクタ配線104Cに接続されている。コレクタ配線104Cを介してトランジスタQのコレクタに電源電圧が印加されるとともに、増幅された高周波信号がコレクタから出力される。
【0041】
図4Bは、第2部材32に形成された第1増幅回路51(図1)を構成する1つのセルの概略断面図である。第2部材32が下地半導体層101を含む。下地半導体層101が第1部材31に面接触することにより、第2部材32が第1部材31に接合されている。下地半導体層101は、導電領域101Aと素子分離領域101Bとに区分されている。下地半導体層101には、例えばGaAsが用いられる。導電領域101Aはn型GaAsで形成されており、素子分離領域101Bはn型GaAs層に絶縁化不純物をイオン注入することにより形成される。
【0042】
導電領域101Aの上に、トランジスタQが配置されている。トランジスタQは、導電領域101Aから順番に積層されたコレクタ層102C、ベース層102B、及びエミッタ層102Eを含む。エミッタ層102Eは、ベース層102Bの一部の領域の上に配置されている。一例として、コレクタ層102Cはn型GaAsで形成され、ベース層102Bはp型GaAsで形成され、エミッタ層102Eはn型InGaPで形成される。すなわち、トランジスタQは、ヘテロ接合バイポーラトランジスタである。
【0043】
ベース層102Bの上にベース電極103Bが配置されており、ベース電極103Bがベース層102Bに電気的に接続されている。エミッタ層102Eの上にエミッタ電極103Eが配置されており、エミッタ電極103Eがエミッタ層102Eに電気的に接続されている。導電領域101Aの上にコレクタ電極103Cが配置されている。コレクタ電極103Cは、導電領域101Aを介してコレクタ層102Cに電気的に接続されている。
【0044】
トランジスタQ、コレクタ電極103C、ベース電極103B、及びエミッタ電極103Eを覆うように、下地半導体層101の上に1層目の層間絶縁膜111が配置されている。1層目の層間絶縁膜111は、例えばSiN等の無機絶縁材料で形成される。層間絶縁膜111の所定の位置に複数の開口が設けられている。
【0045】
層間絶縁膜111の上に、1層目のエミッタ配線104E、ベース配線104B、コレクタ配線104C、ベースバイアス配線104BBが配置されている。さらに、層間絶縁膜111の上にバラスト抵抗素子Rbが配置されている。エミッタ配線104Eは、層間絶縁膜111に設けられた開口を通ってエミッタ電極103Eに接続されている。ベース配線104Bは、層間絶縁膜111に設けられた他の開口を通ってベース電極103Bに接続されている。コレクタ配線104Cは、層間絶縁膜111に設けられた他の開口を通ってコレクタ電極103Cに接続されている。
【0046】
ベース配線104Bは、トランジスタQが配置されていない領域まで延びており、その先端がバラスト抵抗素子Rbの一方の端部に重なっている。重なり部分において、ベース配線104Bとバラスト抵抗素子Rbとが電気的に接続されている。バラスト抵抗素子Rbの他方の端部がベースバイアス配線104BBに重なっている。重なり部分において、バラスト抵抗素子Rbとベースバイアス配線104BBとが電気的に接続されている。
【0047】
1層目のエミッタ配線104E、ベース配線104B、ベースバイアス配線104BB、及びバラスト抵抗素子Rbを覆うように、層間絶縁膜111の上に2層目の層間絶縁膜112が配置されている。2層目の層間絶縁膜112も、SiN等の無機絶縁材料で形成される。
【0048】
層間絶縁膜112の上に、2層目のエミッタ配線105E及び高周波信号入力配線105RFが配置されている。2層目のエミッタ配線105Eは、層間絶縁膜112に設けられた開口を通って1層目のエミッタ配線104Eに接続されている。高周波信号入力配線105RFの一部分は、平面視において1層目のベース配線104Bと重なっている。両者の重なり領域に入力キャパシタCinが形成される。
【0049】
2層目のエミッタ配線105E及び高周波信号入力配線105RFを覆うように、3層目の層間絶縁膜67が配置されている。3層目の層間絶縁膜67は、例えばポリイミド等の有機絶縁材料で形成される。なお、3層目の層間絶縁膜67は、図3に示したように第1部材31の上まで広がっている。
【0050】
3層目の層間絶縁膜67の上にパッド62が配置されている。パッド62は、層間絶縁膜67に設けられた開口を通って2層目のエミッタ配線105Eに接続されている。
【0051】
図5Aは、第1実施例による半導体装置30の第1面31A(図3)を平面視したときの各回路ブロックの面内の配置を示す模式図である。第1部材31に形成された複数の回路ブロックは、それぞれ図1に示したバンド選択スイッチ41、第1制御回路42、及び入力スイッチ43を構成する。これらの回路ブロックは、第1面31Aを平面視したとき、第1面31Aの内部の領域に配置されている。図5Aでは、入力スイッチ43を構成する回路ブロック及び第1制御回路42を構成する回路ブロックを示している。図5Aにおいて、第1部材31に形成されている回路ブロックに右下がりのハッチングを付している。
【0052】
第2部材32に形成された複数の回路ブロックは、それぞれ最終段の第1増幅回路51、初段の第2増幅回路52、及びバイアス回路53を構成する。
【0053】
図5Bは、第1増幅回路51を構成する複数のトランジスタQ(図4A図4B)の平面視における配置を示す図である。複数のトランジスタQの各々が、コレクタ層102C及びベース層102Bを含む。平面視において、コレクタ層102Cの外周線とベース層102Bの外周線とは、ほぼ一致している。エミッタ層102E(図4B)は、平面視においてベース層102Bに包含される。トランジスタQの各々は、平面視において一方向(図5Bにおいて上下方向)に長い形状を有する。複数のトランジスタQのそれぞれの長手方向は平行であり、複数のトランジスタQは、長手方向に対して直交する方向(図5Bにおいて左右方向)に並んで配置されている。
【0054】
複数のトランジスタQが領域55内に分布している。複数のトランジスタQが分布する領域55は、例えば、平面視において複数のトランジスタQを包含する最小の凸多角形と定義される。
【0055】
複数のトランジスタQからなるトランジスタ列を、トランジスタQが配列する方向に対して直交する方向に、複数列配置してもよい。この場合には、複数のトランジスタ列に含まれるすべてのトランジスタQを包含する最小の凸多角形を、複数のトランジスタQが分布する領域55と定義すればよい。
【0056】
図5Aに示すように、第1増幅回路51を構成する回路ブロック内に、複数のトランジスタQが分布する領域55が配置されている。導体突起82E、82Cが、それぞれ複数のトランジスタQのエミッタ及びコレクタに接続されている。平面視においてエミッタ用の導体突起82Eは、複数のトランジスタQが分布する領域55を包含している。第1増幅回路51を構成する回路ブロック内には、その他に図4A及び図4Bに示した入力キャパシタCin及びバラスト抵抗素子Rbが配置されている。
【0057】
第2増幅回路52を構成する回路ブロックは、入力スイッチ43を構成する回路ブロックと平面視において重なっており、バイアス回路53を構成する回路ブロックは、第1制御回路42を構成する複数の回路ブロックの一部の回路ブロックと平面視において重なっている。例えば、第1制御回路42は、第1増幅回路51に供給するバイアスを制御する電流を出力する回路ブロック、ヒューズアレイを構成する回路ブロック等を含む。本実施例では、第1増幅回路51に供給するバイアスを制御する電流を出力する回路ブロックが、平面視において、バイアス回路53を構成する回路ブロックと重なっている。本明細書において「平面視において2つの回路ブロックが重なる」状態は、一方の回路ブロックが占める領域が、他方の回路ブロックが占める領域を包含している状態、一方の回路ブロックが占める領域の一部が、他方の回路ブロックが占める領域の一部と重なっている状態、及び2つの回路ブロックのそれぞれが占める領域の外周線が一致している状態を含む。なお、一方の回路ブロックが、構成要素として複数の半導体素子、複数の受動素子、及びこれらを接続する配線を含み、構成要素の配線のみが他方の回路ブロックと重なる状態も、2つの回路ブロックが重なっている状態であるということができる。
【0058】
入力スイッチ43と第2増幅回路52とが、再配線層内の配線61(図3)を介して電気的に直接接続されている。第1制御回路42とバイアス回路53とが、再配線層内の他の配線64を介して電気的に直接接続されている。配線61、64は、平面視において第2部材32の縁と交差している。
【0059】
次に、図6Aから図7Dまでの図面を参照して、第1実施例による半導体装置30の作製方法について説明する。図6Aから図7Cまでの図面は、製造途中段階における半導体装置30の断面図であり、図7Dは、完成した半導体装置30の断面図である。
【0060】
図6Aに示すように、GaAs等の化合物半導体の単結晶の母基板200の上に剥離層201をエピタキシャル成長させ、剥離層201の上に素子形成層202を形成する。素子形成層202には、図4Bに示した第2部材32のトランジスタQ、1層目の配線層、2層目の配線層等が形成されている。これらの回路素子及び配線層は、一般的な半導体プロセスにより形成される。図6Aでは、素子形成層202に形成されている素子構造については記載を省略している。この段階では、素子形成層202は個々の第2部材32に分離されていない。
【0061】
次に、図6Bに示すように、レジストパターン(図示せず)をエッチングマスクとして、素子形成層202(図5A)及び剥離層201をパターニングする。この段階で、素子形成層202(図5A)は第2部材32ごとに分離される。
【0062】
次に、図6Cに示すように、分離された第2部材32の上に連結支持体204を貼り付ける。これにより、複数の第2部材32が、連結支持体204を介して相互に連結される。なお、図6Bのパターニング工程でエッチングマスクとして用いたレジストパターンを残しておき、第2部材32と連結支持体204との間にレジストパターンを介在させてもよい。
【0063】
次に、図6Dに示すように、母基板200及び第2部材32に対して剥離層201を選択的にエッチングする。これにより、第2部材32及び連結支持体204が母基板200から剥離される。剥離層201を選択的にエッチングするために、剥離層201として、母基板200及び第2部材32のいずれともエッチング耐性の異なる化合物半導体が用いられる。
【0064】
図6Eに示すように、第1部材31(図3)に設けられる入力スイッチ43及び多層配線構造312(図3)等が形成された基板210を準備する。この段階で、基板210は個々の第1部材31に分離されていない。
【0065】
図6Fに示すように、第2部材32を基板210に接合する。第2部材32と基板210との接合は、ファンデルワールス結合または水素結合による。その他に、静電気力、共有結合、共晶合金結合等によって第2部材32を基板210に接合してもよい。例えば、基板210の表面の一部がAuで形成されている場合、第2部材32をAu領域に密着させて加圧することにより、両者を接合してもよい。
【0066】
次に、図7Aに示すように、第2部材32から連結支持体204を剥離する。連結支持体204を剥離した後、図7Bに示すように、基板210及び第2部材32の上に層間絶縁膜67及び再配線層を形成する。再配線層には、配線61、パッド62、63(図3)等が含まれる。
【0067】
次に、図7Cに示すように、再配線層の上に保護膜68を形成し、保護膜68の所定の位置に開口を形成する。その後、開口内及び保護膜68の上に、導体突起82を形成する。導体突起82の形成と同時に、他の導体突起83(図3)等も形成する。
【0068】
最後に、図7Dに示すように、基板210をダイシングする。これにより、半導体装置30が得られる。
【0069】
次に、第1実施例の優れた効果について説明する。
第1実施例による半導体装置30において、第1増幅回路51のトランジスタQ(図5B)が最も大きな発熱源になる。このため、複数のトランジスタQが配置された領域55の温度が上昇する。第1実施例では、図3に示したように、第2部材32が第1部材31に面接触して接合されており、第1部材31と第2部材32との界面と交差して第2部材32から第1部材31に向かう伝熱経路が形成される。複数のトランジスタQで発生した熱は、この伝熱経路を通って第1部材31に伝導される。平面視において第2部材32と重なる領域の第1部材保護膜313(図3)に開口を設け、開口内に金属を充填してもよい。この構成を採用すると、第2部材32が金属部分に接触するため、伝熱経路の熱抵抗を低下させることができる。
【0070】
第2部材32から第1部材31に伝導された熱は、第1部材31内に拡散される。第1部材31内に拡散した熱は、第1部材31の表面から外部に放熱される。半導体装置30がモジュール基板に実装された状態で、モールド樹脂で覆われている場合には、第1部材31からモールド樹脂に熱が伝導される。
【0071】
さらに、導体突起82(図3)が、第2部材32からモジュール基板までの伝熱経路として機能する。このように、第2部材32から、モジュール基板に向かう伝熱経路と、第1部材31に向かう伝熱経路との2つの経路が形成される。このため、第2部材32からの放熱特性を高めることができる。放熱特性を高める十分な効果を得るために、第1部材31の基板311の半導体部分に、第2部材32に形成されている半導体素子を形成する化合物半導体よりも熱伝導率の高い半導体、例えばSi、Ge等の単体半導体を用いることが好ましい。また、第2部材32に形成されている半導体素子として、高周波信号の増幅のために、第1部材31の基板311の半導体部分よりも電子移動度の高い化合物半導体系の半導体素子を用いることが好ましい。
【0072】
第1実施例では、図3及び図5Aに示すように再配線層内の配線61を介して電気的に直接接続される入力スイッチ43及び第2増幅回路52のそれぞれを構成する回路ブロック同士が、平面視において重なっている。同様に、図5Aに示すように、再配線層内の配線64を介して直接接続される第1制御回路42とバイアス回路53のそれぞれを構成する回路ブロック同士が、平面視において重なっている。
【0073】
一般的には、第1部材31の回路ブロックと第2部材32の回路ブロックとを重ねると、相互に重なる2つの回路ブロックによって構成される電子回路同士が電磁気的に干渉しやすくなる。電気的に直接接続されている2つの回路の間では、電磁気的な干渉が生じたとしても、干渉が電子回路の動作に与える影響は小さい。例えば、入力スイッチ43を構成する回路ブロックと第2増幅回路52を構成する回路ブロックとを重ねて配置しても、電磁気的な干渉による影響は小さい。同様に、第1制御回路42を構成する回路ブロックとバイアス回路53を構成する回路ブロックとを重ねて配置しても、電磁気的な干渉による影響は小さい。第1実施例では、電気的に直接接続されている2つの回路をそれぞれ構成する回路ブロックを平面視において重ねて配置しているため、回路全体として電磁気的な干渉による影響が緩和される。
【0074】
また、第1部材31の回路ブロックと第2部材32の回路ブロックとを平面視において重ねて配置することにより、半導体装置30の平面視における寸法を小さくすることができる。このように、第1実施例では、2つの回路ブロック間の電磁気的な干渉による影響を小さく抑えつつ、かつ半導体装置30の小型化を図ることが可能である。
【0075】
次に、第1実施例の変形例について説明する。
第1実施例では、入力スイッチ43と第2増幅回路52との間のインピーダンス整合回路について特に説明していないが、両者の間にインピーダンス整合回路を挿入してもよい。このインピーダンス整合回路は、第1部材31に形成してもよいし、第2部材32に形成してもよい。インピーダンス整合回路は、通常はキャパシタやインダクタ等の受動素子で構成され、トランジスタ等の能動素子は含まない。したがって、入力スイッチ43と第2増幅回路52とがインピーダンス整合回路を介して接続されている場合でも、両者は電気的に直接接続されているといえる。
【0076】
また、入力スイッチ43と第2増幅回路52との間に挿入されるインピーダンス整合回路が、第2増幅回路52とともに、1つの回路ブロックに配置される場合もある。この場合には、インピーダンス整合回路及び第2増幅回路52を構成する回路ブロックと、入力スイッチ43を構成する回路ブロックとを、平面視において重ねて配置すればよい。
【0077】
次に、図8を参照して第1実施例の他の変形例について説明する。
図8は、本変形例による高周波モジュール20の断面図である。第1実施例(図3)では、入力スイッチ43と第2増幅回路52とが、再配線層内の配線61を介して電気的に直接接続されている。これに対して図8に示した変形例では、入力スイッチ43と第2増幅回路52とが、モジュール基板21内の配線26を介して電気的に直接接続されている。
【0078】
具体的には、第1部材31の第1面31Aから第1導体突起84が突出している。第2部材32から、第1導体突起84と同じ向きに第2導体突起85が突出している。第1導体突起84及び第2導体突起85をモジュール基板21に対向させた姿勢で、半導体装置30がモジュール基板21に実装されている。第1導体突起84は入力スイッチ43に接続されており、第2導体突起85は第2増幅回路52に接続されている。
【0079】
さらに、第1導体突起84及び第2導体突起85は、それぞれモジュール基板21の表面に配置されているランド24、25に、ハンダにより固着されている。2つのランド24、25は、モジュール基板21内の配線26を介して相互に接続されている。
【0080】
図8に示した変形例のように、平面視において相互に重なる第1部材31の回路ブロックと第2部材32の回路ブロックとを、モジュール基板21内の配線26を介して電気的に直接接続してもよい。
【0081】
第1実施例では、半導体装置30を周波数分割複信(FDD)方式の高周波モジュール20(図1)に搭載したが、時分割複信(TDD)方式の高周波モジュールに搭載することも可能である。
【0082】
半導体装置30をTDD方式の高周波モジュールに搭載する場合には、バンド選択スイッチ41(図1)に代えて送受信切替スイッチが用いられる。送受信切替スイッチは、2つの接点と1つのコモン端子とを有する。2つの接点のうち一方の接点が出力整合回路76(図1)を介して第1増幅回路51に接続され、もう一方の接点が、受信信号を増幅するためのローノイズアンプ71(図1)に接続されるか、受信用のバンド選択スイッチ73(図1)を介してローノイズアンプ71に接続される。コモン端子は、フィルタを介してアンテナ端子に接続される。
【0083】
[第2実施例]
次に、図9を参照して第2実施例による半導体装置について説明する。以下、図1から図7Dまでの図面を参照して説明した第1実施例による半導体装置と共通の構成については説明を省略する。
【0084】
図9は、第2実施例による半導体装置30の第1面31A(図3)を平面視したときの各回路ブロックの面内の配置を示す模式図である。第2実施例においては、第1部材31に、ヒューズアレイ44、ヒューズ書込読出回路45、及び素子特性測定回路46が形成されている。図9において、第1部材31に形成されている回路ブロックに右下がりのハッチングを付している。
【0085】
ヒューズアレイ44は、複数のヒューズで構成される。ヒューズ書込読出回路45は、ヒューズアレイ44の各ヒューズへの書き込み(ヒューズの切断)、及びヒューズの導通切断状態の読出しを行う。ヒューズアレイ44の導通切断状態は、例えば、半導体装置30の特性の製造上のばらつきを補償する目的で、半導体プロセスが完了した後に設定される。ヒューズアレイ44への書き込みは、製品の出荷前に行われる。また、ヒューズアレイ44の導通切断状態の読出しは、半導体装置30への電源の供給が開始された直後に行われ、読出し結果が、読出し結果を利用する各回路のラッチ回路に保持される。したがって、第1増幅回路51及び第2増幅回路52が増幅動作を行っている期間は、ヒューズアレイ44及びヒューズ書込読出回路45は動作しない。
【0086】
素子特性測定回路46は、半導体装置30の各素子の特性を測定するために設けられている。素子特性測定回路46は、例えば、半導体装置30を構成している各素子の特性の評価、良不良の検査等の目的で使用される。したがって、第1増幅回路51及び第2増幅回路52が増幅動作を行っている期間は、素子特性測定回路46は動作しない。
【0087】
このように、第2実施例においては、第1増幅回路51を構成している回路ブロックは、第1部材31の複数の回路ブロックのうち第1増幅回路51の動作中には動作しない回路ブロックと、平面視において重なっている。
【0088】
次に、第2実施例の優れた効果について説明する。
第1増幅回路51を構成する回路ブロックと平面視において重なっている第1部材31の回路ブロックは、第1増幅回路51の動作中は動作しない。このため、平面視において第1増幅回路51に重なっている第1部材31の回路ブロックは、第1増幅回路51の動作に影響を与えない。逆に、第1増幅回路51は、第1増幅回路51を構成する回路ブロックに平面視において重なっている第1部材31の回路ブロックの動作に影響を与えない。したがって、第2実施例においても第1実施例と同様に、第1部材31の回路ブロックと第2部材32の回路ブロックとの間の電磁気的な干渉による影響を小さく抑えつつ、かつ半導体装置30の小型化を図ることが可能である。
【0089】
[第3実施例]
次に、図10A及び図10Bを参照して第3実施例による半導体装置について説明する。以下、図1から図7Dまでの図面を参照して説明した第1実施例による半導体装置と共通の構成については説明を省略する。
【0090】
図10Aは、第3実施例による半導体装置30の第1面31A(図3)を平面視したときの各回路ブロックの面内の配置を示す模式図である。第3実施例においては、第1部材31にデジタル回路47が形成されている。図10Aにおいて、第1部材31に形成されている回路ブロックに右下がりのハッチングを付している。デジタル回路47は、外部の回路から入力されたデジタル信号、例えば指令信号やデータ等をデコードし、アナログ信号に変換して、第1制御回路42(図1)等に与える。第1制御回路42は、デジタル回路47から入力されたアナログ信号に応じて、バイアス回路53、入力スイッチ43、及びバンド選択スイッチ41を制御する。
【0091】
デジタル回路47を構成する回路ブロックは、平面視において第1増幅回路51を構成する回路ブロックと重なっている。
【0092】
図10Bは、第3実施例による半導体装置30の概略断面図である。第1部材31の基板311の表層部に形成された半導体素子、及び多層配線構造312内の複数の配線によってデジタル回路47が構成されている。第2部材32の第1増幅回路51と、デジタル回路47とが、平面視において重なっている。第1増幅回路51を構成する回路ブロックと、デジタル回路47を構成する回路ブロックとの間に、金属膜317が配置されている。金属膜317は、例えば多層配線構造312内のいずれかの配線層に配置される。
【0093】
金属膜317は、多層配線構造312内の配線318及び再配線層内の配線65を介して、第2部材32のグランド導体に接続されている。なお、モジュール基板内の配線を介して、金属膜317を第2部材32のグランド導体に接続してもよい。金属膜317は、デジタル回路47と第1増幅回路51とを、相互に電磁気的にシールドする電磁シールド導体として機能する。
【0094】
次に、第3実施例の優れた効果について説明する。
第3実施例では、デジタル回路47と第1増幅回路51とが、金属膜317によって相互にシールドされている。このため、デジタル回路47を構成する回路ブロックと第1増幅回路51を構成する回路ブロックとを平面視において相互に重ねて配置しても、両者の間の電磁気的な干渉が生じにくい。したがって、第3実施例においても第1実施例と同様に、第1部材31の回路ブロックと第2部材32の回路ブロックとの間の電磁気的な干渉による影響を小さく抑えつつ、かつ半導体装置30の小型化を図ることが可能である。
【0095】
なお、第1部材31内のアナログ回路を構成する回路ブロックと、第1増幅回路51を構成する回路ブロックとを平面視において重ねて配置した場合、グランド電位が与えられる金属膜317とアナログ回路との間の寄生容量によって、アナログ回路の動作速度が低下してしまう。第3実施例では、平面視において金属膜317と重なる回路ブロックがデジタル回路47を構成しているため、アナログ回路の動作速度の低下は生じない。
【0096】
第2部材32の第1増幅回路51の動作速度の低下を生じさせないために、グランド電位に落とされる金属膜317を第2部材32から遠ざけることが好ましい。例えば、金属膜317と第2部材32との厚さ方向の間隔を、デジタル回路47を構成する多層配線構造312内の配線と金属膜317との厚さ方向の間隔の最小値より広くすることが好ましい。
【0097】
[第4実施例]
次に、図11を参照して第4実施例による半導体装置について説明する。以下、図1から図7Dまでの図面を参照して説明した第1実施例による半導体装置と共通の構成については説明を省略する。
【0098】
図11は、第4実施例による半導体装置30の第1面31A(図3)を平面視したときの各回路ブロックの面内の配置を示す模式図である。第4実施例においては、第1部材31に周期信号動作回路48が形成されている。図11において、第1部材31に形成されている回路ブロックに右下がりのハッチングを付している。第2部材32の第1増幅回路51を構成する回路ブロックが、第1部材31の周期信号動作回路48を構成する回路ブロックと平面視において重なっている。周期信号動作回路48には、例えば周期的に変化するクロック信号に応じて動作するデジタル回路、周期的にスイッチのオンオフを繰り返して昇圧動作を行うチャージポンプ回路等が含まれる。
【0099】
第2部材32の第2増幅回路52を構成する回路ブロックは、第1部材31のいずれの回路ブロックとも重なっていない。
【0100】
次に、第4実施例の優れた効果について説明する。
周期的に変化する信号に応じて動作する周期信号動作回路48は、スプリアスを発生させやすい。周期信号動作回路48で発生したスプリアスは、周期信号動作回路48を構成する回路ブロックと平面視において重なっている第2部材32の回路ブロックと結合しやすい。一般的に、2段構成の高周波増幅回路においては、初段の増幅回路のゲインを大きくし、最終段の増幅回路においては、ゲインを抑えて大出力を得るように設計される。
【0101】
スプリアスが初段の第2増幅回路52に結合すると、スプリアスがゲインの大きな第2増幅回路52で増幅され、さらに第1増幅回路51でも増幅されてしまう。このため、第1増幅回路51の出力信号のスプリアス成分が大きくなってしまう。第4実施例では、第2増幅回路52を構成する回路ブロックが、周期信号動作回路48を構成する回路ブロックと平面視において重なっていないため、スプリアス成分が初段の第2増幅回路52及び最終段の第1増幅回路51の両方で増幅されて出力されることが防止される。
【0102】
周期信号動作回路48を構成する回路ブロックが、第1増幅回路51を構成する回路ブロックと平面視において重なっているため、周期信号動作回路48で発生したスプリアスが第1増幅回路51に結合する場合がある。第1増幅回路51に入力される信号は、第2増幅回路52で増幅されることによって信号レベルがある程度高くなっている。このため、第1増幅回路51にスプリアスが結合したとしても、増幅対象の高周波信号に対するスプリアス成分の影響は小さい。また、第1増幅回路51に結合したスプリアス成分が、ゲインの大きな初段の第2増幅回路52で増幅されることはない。
【0103】
第1増幅回路51を構成する回路ブロックと、周期信号動作回路48を構成する回路ブロックとを平面視において重ねることにより、スプリアスの影響を低減させ、かつ半導体装置30の小型化を図ることができる。
【0104】
次に、第4実施例の変形例について説明する。
第4実施例では、第1増幅回路51を構成する回路ブロックに、第1部材31の周期信号動作回路48を構成する回路ブロックを平面視において重ねているが、第1増幅回路51を構成する回路ブロックに第1部材31の他の回路ブロックを重ねてもよい。この場合にも、第2増幅回路52を構成する回路ブロックは、第1部材31のいずれの回路ブロックにも重なっていない。この構成において、第1部材31の回路ブロックで発生したノイズが第1増幅回路51に結合したとしても、出力信号に与えるノイズ成分の影響は小さい。このため、第4実施例と同様に、ノイズの影響を低減させ、かつ半導体装置30の小型化を図ることができる。
【0105】
[第5実施例]
次に、第5実施例による半導体装置について説明する。以下、図1から図7Dまでの図面を参照して説明した第1実施例による半導体装置と共通の構成については説明を省略する。
【0106】
第1実施例では、回路ブロック同士の平面視における重なりについて説明した。第5実施例による半導体装置は、回路ブロックのみなならず、異なる回路ブロックを接続する配線の平面視における重なりについても特徴づけられる。
【0107】
ある回路を構成する回路ブロックと、その回路に直接接続された同一部材内の配線とを含めて、拡大回路ブロックということとする。第5実施例では、相互に直接接続されている第1部材31の回路と第2部材32の回路とをそれぞれ含む拡大回路ブロック同士が、平面視において重なっている。
【0108】
例えば、第1実施例では、電気的に直接接続される入力スイッチ43及び第2増幅回路52のそれぞれを構成する回路ブロック同士が、平面視において重なっている。これに対して第5実施例では、入力スイッチ43を構成する回路ブロック及び入力スイッチ43に直接接続されている第1部材31内の配線の少なくとも一方と、第2増幅回路52を構成する回路ブロック及び第2増幅回路52に直接接続されている第2部材32内の配線の少なくとも一方とが、平面視において相互に重なっている。
【0109】
次に、第5実施例の優れた効果について説明する。
第5実施例においても第1実施例と同様に、2つの回路ブロック間の電磁気的な干渉による影響を小さく抑えつつ、かつ半導体装置30の小型化を図ることが可能である。さらに、配線の配置の自由度を高めることができる。
【0110】
次に、第5実施例の変形例について説明する。
第5実施例では、相互に直接接続されている第1部材31の回路と第2部材32の回路とをそれぞれ含む拡大回路ブロック同士を、平面視において重ねている。その他の構成として、第2実施例のように、第1増幅回路51を含む拡大回路ブロックが、第1部材31の複数の拡大回路ブロックのうち第1増幅回路51の動作中には動作しない回路を含む拡大回路ブロックと、平面視において重なるようにしてもよい。第3実施例のように、デジタル回路47を含む拡大回路ブロックと、第1増幅回路51を含む拡大回路ブロックとを、平面視において重ねて配置し、両者の間に金属膜を配置してもよい。第4実施例のように、第1増幅回路51を含む拡大回路ブロックと、周期信号動作回路48を含む拡大回路ブロックとを平面視において重ねてもよい。
【0111】
次に、第5実施例の他の変形例について説明する。
第5実施例及び上記変形例では、電磁気的な干渉が生じても回路の動作に与える影響が小さい回路を含む拡大回路ブロック同士を、平面視において相互に重ねている。その他の構成として、第1部材31の回路ブロックと、第2部材32のいずれかの回路ブロックに接続されている配線とを、平面視において相互に重ねてもよい。逆に、第2部材32の回路ブロックと、第1部材31のいずれかの回路ブロックに接続されている配線とを、平面視において相互に重ねてもよい。この場合にも、半導体装置の小型化を図るとともに、放熱特性を向上させるという優れた効果が得られる。さらに、配線の配置の自由度を高めることができる。
【0112】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0113】
20 高周波モジュール
21 モジュール基板
24、25 ランド
26 配線
30 半導体装置
31 第1部材
31A 第1面
32 第2部材
41 バンド選択スイッチ
42 第1制御回路
43 入力スイッチ
44 ヒューズアレイ
45 ヒューズ書込読出回路
46 素子特性測定回路
47 デジタル回路
48 周期信号動作回路
50 高周波増幅回路
51 最終段の第1増幅回路
52 初段の第2増幅回路
61 配線
62、63 パッド
64、65 配線
67 層間絶縁膜
68 保護膜
70 デュプレクサ
71 ローノイズアンプ
72 アンテナスイッチ
73 受信用のバンド選択スイッチ
74 出力端子選択スイッチ
75 第2制御回路
76 出力整合回路
82 導体突起
82A Cuピラー
82B ハンダ層
83 導体突起
84 第1導体突起
85 第2導体突起
101 下地半導体層
101A 導電領域
101B 素子分離領域
103B ベース層
103C コレクタ層
103E エミッタ層
104B ベース電極
104BB ベースバイアス配線
104C コレクタ電極
104E エミッタ電極
105E エミッタ配線
105RF 高周波信号入力配線
311 基板
312 多層配線構造
313 第1部材保護膜
315、316 多層配線構造内の配線
317 金属膜
318 多層配線構造内の配線

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11