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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】熱可塑性エラストマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20241022BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20241022BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20241022BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20241022BHJP
   C08L 61/04 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C08L23/10
C08L23/04
C08L23/16
C08K3/34
C08L61/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020214861
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022100717
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】515107720
【氏名又は名称】MCPPイノベーション合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】小座間 洋子
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-511662(JP,A)
【文献】特表2008-540696(JP,A)
【文献】特開2019-127543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
C08K 3/00 - 13/08
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(D)を含有し、かつ下記成分(E)の存在下で動的架橋してなる熱可塑性エラストマー組成物であり、前記成分(B)のJIS K7112によって測定された密度が0.935g/cm 以上1.00g/cm 以下である熱可塑性エラストマー組成物
成分(A):プロピレン系重合体
成分(B):エチレン系重合体
成分(C):エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム
成分(D):層状ケイ酸塩
成分(E):フェノール樹脂
【請求項2】
前記成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して、成分(B)が1~99質量部含まれる請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
前記成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して、前記成分(D)が1~200質量部含まれる請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
更に下記成分(F)を含有する請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
成分(F):炭化水素系ゴム用軟化剤
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物を成形してなる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温でのゴム弾性を維持しつつ耐傷付き性にも優れた熱可塑性エラストマー組成物及びその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマーとは、加熱により軟化して流動性を有し、冷却するとゴム弾性を有する材料をいう。具体的には、成形加工する際には、加工温度において溶融し、容易に周知の熱可塑性樹脂と同様に成形加工することが可能となるが、成形加工後に、実際に各種材料として使用する温度においては、架橋ゴムと同様の物理的性質を有するものである。このように、熱可塑性エラストマーは、熱可塑性樹脂と同様の成形加工性を有すると共に、ゴム的触感や独特のゴム弾性を有し、また、リサイクルが可能であることから、自動車部品、建築部品、医療用部品、電線被覆材、雑貨等の用途に幅広く用いられている。
【0003】
このようなゴム的特性を生かした部材は、はめこみ、接合等によって異部材と接触する箇所に数多く用いられ、異部材から外力がかかる状態で使用される。このとき、使用する温度領域でゴム弾性を有することが重要である。例えば、自動車部品の分野では、その車内環境から70度付近の高温域でゴム弾性を有することが求められている。このような要求に対して、熱可塑性エラストマー組成物にゴム弾性を付与する手段として、架橋技術、特に耐油、耐薬品性が求められる用途ではフェノール架橋技術が用いられる。
【0004】
例えば、オレフィン系共重合ゴムと水添ジエン系重合体と結晶性αオレフィン系重合体とエチレン系重合体と鉱物油系軟化剤を配合した組成物をフェノール系樹脂架橋剤の存在下で動的に熱処理して得られる熱可塑性エラストマー組成物が知られている(特許文献1参照)。
また、エチレン系共重合体ゴムとシングルサイト触媒により重合された特定密度のエチレン系樹脂と架橋剤としてフェノール樹脂と、架橋促進剤を含有する熱可塑性エラストマー組成物が知られている(特許文献2参照)。特許文献2には、シングルサイト触媒にて重合されたエチレン系樹脂を配合することで、熱可塑性エラストマー組成物の高温での圧縮永久歪みが向上することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-302156号公報
【文献】特開2005-2304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年のスマートフォンの普及とともに、スマートフォンの充電時の落下防止のために自動車内装にも滑り止めマットが数多く搭載されており、その材料として成形加工性に優れ、ゴム的な触感を有する熱可塑性エラストマーが用いられている。このような用途においては、スマートフォンや充電コネクタの端部との接触や人の爪による引っ掻き傷による外観悪化を防止するため、耐傷付き性が求められる。
【0007】
しかしながら、特許文献1、2に記載の熱可塑性エラストマー組成物では、耐傷付き性に関する検討はなされておらず、耐傷付き性の観点で改良の余地があった。
【0008】
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたものであり、高温でのゴム弾性を維持しつつ耐傷付き性にも優れた熱可塑性エラストマー組成物及びその成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が上記課題を解決するために検討した結果、成分(A):プロピレン系重合体、成分(B):エチレン系重合体、成分(C):エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム、及び成分(D):層状ケイ酸塩を含み、かつ成分(E):フェノール樹脂の存在下で動的架橋してなる熱可塑性エラストマー組成物が、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0010】
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
【0011】
[1] 下記成分(A)~(D)を含有し、かつ下記成分(E)の存在下で動的架橋してなる熱可塑性エラストマー組成物。
成分(A):プロピレン系重合体
成分(B):エチレン系重合体
成分(C):エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム
成分(D):層状ケイ酸塩
成分(E):フェノール樹脂
【0012】
[2] 前記成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して、成分(B)が1~99質量部含まれる[1]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【0013】
[3] 前記成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して、前記成分(D)が1~200質量部含まれる[1]又は[2]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【0014】
[4] 前記成分(B)のJIS K7112によって測定された密度が0.935g/cm以上1.00g/cm以下である[1]~[3]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【0015】
[5] 更に下記成分(F)を含有する[1]~[4]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
成分(F):炭化水素系ゴム用軟化剤
【0016】
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物を成形してなる成形体。
【発明の効果】
【0017】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、高温でのゴム弾性を維持しながら耐傷付き性にも優れる。このため、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、自動車部品、建築部品、医療用部品、電線被覆材、雑貨に用いることが期待され、特に自動車内装部品に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、これらの内容に本発明は限定されるものではない。なお、本発明において「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0019】
〔熱可塑性エラストマー組成物〕
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、下記成分(A)~(D)を含有し、かつ下記成分(E)の存在下で動的架橋してなる熱可塑性エラストマー組成物である。
成分(A):プロピレン系重合体
成分(B):エチレン系重合体
成分(C):エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム
成分(D):層状ケイ酸塩
成分(E):フェノール樹脂
【0020】
[メカニズム]
本発明中の熱可塑性エラストマー組成物が高温でのゴム弾性を維持しつつ耐傷付き性を有するメカニズムは、次の通りである。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物では、対称性の高いエチレン系重合体と剛性が高い層状ケイ酸塩とが表面に析出する傾向にあるため、相手材と接触した際に滑りやすくなり、傷の起点形成を防ぐ効果があると推定される。また、密度の高いエチレン系重合体を用いると、海島構造を有する熱可塑性エラストマーのマトリックスの剛性が強化されるとともに、その一部がゴム相に入り込むことでゴムの疑似架橋構造が形成され、良好なゴム弾性が発現されると推定される。
【0021】
[成分(A)]
成分(A)のプロピレン系重合体とは、全単量体単位に対するプロピレンに基づく単量体単位(プロピレン単位)の含有率が50質量%よりも多い重合体である。
【0022】
プロピレン系重合体としては、その種類は特に制限されず、プロピレン単独重合体、プロピレンランダム共重合体、プロピレンブロック共重合体等のプロピレン共重合体、いずれも使用することができる。
【0023】
プロピレン系重合体がプロピレンランダム共重合体である場合、プロピレンと共重合する単量体としては、エチレン、1-ブテン、2-メチルプロピレン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンを例示することができる。また、プロピレン系重合体がプロピレンブロック共重合体である場合、多段階で重合して得られるプロピレンブロック共重合体が挙げられ、より具体的には、第一段階でポリプロピレンを重合し、第二段階でプロピレン・エチレン共重合体を重合して得られるプロピレンブロック共重合体が挙げられる。
【0024】
プロピレン系重合体におけるプロピレン単位の含有率は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは75質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。プロピレン単位の含有率が上記下限値以上であることにより、耐熱性及び剛性が良好となる傾向にある。一方、プロピレン系重合体におけるプロピレン単位の含有率の上限については特に制限されず、通常100質量%である。なお、プロピレン系重合体のプロピレン単位の含有率は、赤外分光法により求めることができる。
【0025】
また、プロピレン系重合体のメルトフローレート(測定温度230℃、測定荷重21.18N)は、限定されないが、通常0.1g/10分以上であり、成形性の観点から、好ましくは0.5g/10分以上である。また、上限は、通常100g/10分以下であり、耐熱性の観点から、好ましくは30g/10分以下であり、より好ましくは10g/10分以下である。
【0026】
成分(A)のプロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210(1999年)に従って、測定温度230℃、測定荷重21.18Nの条件で測定される。
【0027】
プロピレン系重合体の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた重合方法が用いられる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒を用いた多段重合法を挙げることができる。この多段重合法には、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等を用いることができ、これらを2種以上組み合わせて製造してもよい。
【0028】
また、プロピレン系重合体は市販の該当品を用いることも可能である。市販のプロピレン系重合体としては下記に挙げる製造者等から調達可能であり、適宜選択することができる。
入手可能な市販品としては、日本ポリプロ社のノバテック(登録商標)PP、プライムポリマー社のPrime Polypro(登録商標)、住友化学社の住友ノーブレン(登録商標)、サンアロマー社のポリプロピレンブロックコポリマー、LyondellBasell社のMoplen(登録商標)、ExxonMobil社のExxonMobil PP、Formosa Plastics社のFormolene(登録商標)、Borealis社のBorealis PP、LG Chemical社のSEETEC PP、A.Schulman社のASI POLYPROPYLENE、INEOS Olefins&Polymers社のINEOS PP、Braskem社のBraskem PP、SAMSUNG TOTAL PETROCHEMICALS社のSumsung Total、Sabic社のSabic(登録商標)PP、TOTAL PETROCHEMICALS社のTOTAL PETROCHEMICALS Polypropylene、SK社のYUPLENE(登録商標)等がある。
【0029】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、プロピレン単独重合体等のプロピレン系重合体の1種のみを含むものであってもよく、含まれる単量体単位の種類や含有率、物性等の異なるものの2種以上を含むものであってもよい。
【0030】
[成分(B)]
成分(B)のエチレン系重合体は、全単量体単位中でエチレンに基づく単量体単位(エチレン単位)の含有率が最も多い重合体である。成分(B)のエチレン系重合体のエチレン単位の含有率は50質量%を超えることが好ましい。なお、エチレン系重合体のエチレン単位の含有率は、赤外分光法により求めることができる。
【0031】
エチレン系重合体としては、エチレン単独重合体、エチレン系共重合体を挙げることができる。エチレン系共重合体において、エチレンと共重合する単量体としては、炭素原子数3~10のα-オレフィン(例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-ヘキセン)の少なくとも1種、極性モノマー(例えば、酢酸ビニル、アクリル酸エステルおよびメタアクリル酸エステル)の少なくとも1種を挙げることができる。
【0032】
エチレン系重合体として、好ましくは、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。
【0033】
高密度ポリエチレンは、JIS K7112に従って測定される密度が0.935g/cm以上のものである。高密度ポリエチレンは、重合触媒としてチーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒等を用いた公知の重合方法で製造することができる。該重合方法としては、溶液重合法、バルク重合法、スラリー重合法、気相重合法などを挙げることができ、これらは2種以上組み合せてもよい。
【0034】
低密度ポリエチレンは、エチレンを高温高圧でラジカル重合させる方式である高圧法により製造された重合体であって、JIS K7112に従って測定される密度が0.935g/cm未満のものである。
【0035】
直鎖状低密度ポリエチレンは、低圧法により製造された重合体であって、JIS K7112に従って測定される密度が0.935g/cm未満のものである。
【0036】
これらの中でもエチレン系重合体はJIS K7112によって測定された密度が0.935g/cm以上1.00g/cm以下であるものが、高温下での優れたゴム弾性と耐傷付き性の両立の観点から好ましい。
【0037】
また、エチレン系重合体のメルトフローレート(測定温度190℃、測定荷重21.18N)は、限定されないが、通常0.1g/10分以上であり、成形性の観点から、好ましくは0.5g/10分以上である。また、上限は、通常100g/10分以下であり、耐熱性の観点から、好ましくは30g/10分以下であり、より好ましくは15g/10分以下である。
【0038】
成分(B)のエチレン系重合体のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210(1999年)に従って、測定温度190℃、測定荷重21.18Nの条件で測定される。
【0039】
また、エチレン系重合体は市販の該当品を用いることも可能である。市販のエチレン系重合体としては下記に挙げる製造者等から調達可能であり、適宜選択することができる。
入手可能な市販品としては、日本ポリエチレン社のノバテック(登録商標)、住友化学社のスミカセン(登録商標)、プライムポリマー社のハイゼックス(登録商標)、ネオゼックス(登録商標)、ウルトゼックス(登録商標)、宇部丸善ポリエチレン社のUBEポリエチレン(登録商標)、旭化成社のサンテック(登録商標)、クレオレックス(登録商標)、サウディ石油化学社のSABIC(登録商標)等がある。
【0040】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、エチレン系重合体の1種のみを含むものであってもよく、含まれる単量体単位の種類や含有率、物性等の異なるものの2種以上を含むものであってもよい。
【0041】
[成分(C)]
成分(C)のエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムは、共重合成分としてエチレンとα-オレフィンと非共役ジエン化合物とを含有する共重合体である。エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムには、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムと炭化水素系ゴム用軟化剤との混合物(以下、「油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム」と称することもある。)である油展タイプのものと、炭化水素系ゴム用軟化剤を含まない非油展タイプのものがあり、本実施形態では油展タイプの共重合体ゴムを意図しているが、低油展タイプあるいは非油展タイプのものも好適に用いることができる。すなわち、本発明において、成分(C)のエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムは、油展タイプと非油展タイプのいずれでも使用可能であり、非油展タイプのもの又は油展タイプのものの1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよく、油展タイプの1種又は2種以上と非油展タイプの1種又は2種以上とを任意の組み合わせ及び比率で用いることもできる。
なお、ここで、成分(C)が油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムである場合、この油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムに含まれる炭化水素系ゴム用軟化剤は、成分(F)としての炭化水素系ゴム用軟化剤に含まれるものである。
【0042】
成分(C)中のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-オクタデセン等の炭素数3~20、より好ましくは炭素数3~8のα-オレフィンが挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、動的架橋時の架橋剤による架橋性やブルームアウト抑制等の観点から、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテンが好ましく、より好ましくはプロピレン、1-ブテンである。なお、α-オレフィンは、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることがきる。
【0043】
成分(C)中の非共役ジエン化合物としては、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、シクロへキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロオクタジエン、1,6-オクタジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン、1,3-シクロペンタジエン、1,4-シクロヘキサジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、ビニリデンノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)等のエチリデンノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン(MNB)等のメチレンノルボルネン等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、動的架橋時の架橋剤による架橋性等の観点から、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニリデンノルボルネンが好ましく、より好ましくはジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、ビニリデンノルボルネンである。なお、非共役ジエンは、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0044】
エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムの具体例としては、エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・1,4-ヘキサジエン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体ゴム等のエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)や、エチレン・1-ブテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体ゴムが挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、動的架橋時の架橋剤による架橋性やブルームアウト抑制等の観点から、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)が好ましい。なお、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムは、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることがきる。
【0045】
エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム中のエチレン単位の含有率は、特に限定されないが、50~90質量%が好ましく、55~85質量%がより好ましく、60~80質量%が更に好ましい。エチレン単位の含有率が上記好ましい範囲内であると、機械的強度やゴム弾性に優れる熱可塑性エラストマー組成物が得られ易い傾向にある。
【0046】
また、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム中のα-オレフィン単位の含有率は、特に限定されないが、9.5~49.5質量%が好ましく、14~44質量%がより好ましく、18~38質量%が更に好ましい。α-オレフィン単位の含有率が上記好ましい範囲内であると、機械的強度、適度な柔軟性、ゴム弾性に優れる熱可塑性エラストマー組成物が得られ易い傾向にある。
【0047】
更に、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム中の非共役ジエン単位の含有率は、特に限定されないが、0.5~30質量%が好ましく、1~20質量%がより好ましく、2~10質量%が更に好ましい。非共役ジエン単位の含有率が上記好ましい範囲内であると、架橋性や成形性の調整が容易となり、機械的強度やゴム弾性に優れる熱可塑性エラストマー組成物が得られ易い傾向にある。
【0048】
なお、成分(C)の各構成単位の含有率は、赤外分光法により求めることができる。
【0049】
本発明において、成分(C)としては、特に、エチレン単位の含有率が55~75質量%であり、プロピレン単位の含有率が15~40質量%であり、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、及びビニリデンノルボルネンよりなる群から選択される少なくとも1種の非共役ジエン単位の含有率が1~10質量%のエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴムが好ましい。
【0050】
成分(C)の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた重合方法が適用できる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系錯体や非メタロセン系錯体等の錯体系触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法で製造することができる。
【0051】
本発明において用いる成分(C)のエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムのうち、非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム、即ち、油展されていないエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム)のムーニー粘度(ML1+4、125℃)は、通常45以上であり、好ましくは50以上である。非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体のムーニー粘度(ML1+4、125℃)は、より好ましくは50~400、更に好ましくは50~300である。
一方、油展エチレン・α-オレフィン・共役ジエン共重合体ゴムのムーニー粘度(ML1+4、125℃)は、特に限定されないが、好ましくは30~100、より好ましくは35~80である。
成分(C)のムーニー粘度が上記下限値以上であると圧縮永久歪みが良好となり、また、得られる成形体の外観を良好にする観点からも好ましく、また、上記上限値以下であると成形性の観点から好ましい。
【0052】
本発明において、成分(C)の油展前エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体と油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体のムーニー粘度(ML1+4、125℃)の関係は、特開平1-103639号公報に記載されているように下記式で表される。
計算式:log(ML/ML)=0.0066(ΔPHR)
ML:油展前エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムのムーニー粘度
ML:油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムのムーニー粘度
ΔPHR:エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム100質量部当たりの油展量
【0053】
また、成分(C)のエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムの密度は、特に限定されないが、0.850g/cm以上であることが好ましく、より好ましくは0.860g/cm以上であり、一方、0.900g/cm以下であることが好ましく、より好ましくは0.890g/cm以下である。成分(C)のエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムの密度が上記好ましい数範囲内であると、加工性、成形性、柔軟性等に優れる熱可塑性エラストマー組成物が得られ易い傾向にある。なお、かかる密度は、JIS K7112:1999に基づいて測定することができる。
【0054】
前述の通り、成分(C)として油展タイプのエチレン・α-オレフィン・共役ジエン共重合体を用いることもできる。油展エチレン・α-オレフィン・共役ジエン共重合体において、炭化水素系ゴム用軟化剤は、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムを軟化させ、柔軟性と弾性を増加させるとともに、得られる熱可塑性エラストマー組成物の加工性や流動性を向上させる等の目的のために使用される。
【0055】
油展エチレン・α-オレフィン・共役ジエン共重合体ゴムに用いる炭化水素系ゴム用軟化剤としては、例えば鉱物油系ゴム用軟化剤、合成樹脂系ゴム用軟化剤等が挙げられ、これらの中でも、他の成分との親和性等の観点から、鉱物油系ゴム用軟化剤が好ましい。鉱物油系ゴム用軟化剤は、一般的に、芳香族炭化水素、ナフテン系炭化水素及びパラフィン系炭化水素の混合物であり、全炭素原子に対し、パラフィン系炭化水素の炭素の割合が50%以上のものはパラフィン系オイル、ナフテン系炭化水素の炭素の割合が30~45%のものはナフテン系オイル、芳香族系炭化水素の炭素の割合が35%以上のものは芳香族系オイルと呼ばれている。これらの中でも、成分(C)の油展エチレン・α-オレフィン・共役ジエン共重合体ゴムの炭化水素系ゴム用軟化剤としては、パラフィン系ゴム用軟化剤(パラフィン系オイル)が好ましい。なお、炭化水素系ゴム用軟化剤は、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることがきる。
【0056】
成分(C)の油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムに用いるパラフィン系オイルとしては、特に限定されないが、40℃の動粘度が通常10cSt(センチストークス)以上、好ましくは20cSt以上であり、通常800cSt以下、好ましくは600cSt以下のものである。また、流動点は通常-40℃以上、好ましくは-30℃以上で、0℃以下のものが好適に用いられる。更に、引火点(COC)は、通常200℃以上、好ましくは220℃以上であり、通常400℃以下、好ましくは350℃以下のものが好適に用いられる。
【0057】
成分(C)として油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムを用いる際の、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムと炭化水素系ゴム用軟化剤との含有比率は、特に限定されないが、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム100質量部に対し、炭化水素系ゴム用軟化剤の含有量が、通常10質量部以上であり、好ましくは20質量部以上であり、一方、通常200質量部以下であり、好ましくは160質量部以下であり、より好ましくは120質量部以下である。
【0058】
油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムを調製する方法(油展方法)は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。油展方法としては、例えば、ミキシングロールやバンバリーミキサーを用い、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムと炭化水素系ゴム用軟化剤を機械的に混練して油展する方法、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムに所定量の炭化水素系ゴム用軟化剤を添加し、その後スチームストリッピング等の方法により脱溶媒する方法、クラム状のエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムと炭化水素系ゴム用軟化剤の混合物をヘンシェルミキサー等で撹拌して含浸させる方法等が挙げられる。高分子量の油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムを調製する観点からは、成分(C)のエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムの重合反応溶液又は懸濁液中に、所定量の炭化水素系ゴム用軟化剤を添加した後、溶媒を除去する方法が好ましい。
【0059】
なお、成分(C)のエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムとしては、各種グレードのものが国内外のメーカーから数多く市販されており、その市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、JSR社製のJSR EPR、三井化学社製の三井EPT、住友化学社製のエスプレン(登録商標)、ARLANXEO社製のKeltan(登録商標)、DOW CHEMICAL社製のNORDEL(登録商標)、KUMHO POLYCHEM社製のKEPが挙げられる。
【0060】
[成分(D)]
成分(D)の層状ケイ酸塩は、耐傷付性を向上させるために用いられる。ケイ酸塩は、表面剛性を上げる作用効果を示し、該ケイ酸塩が層状であることにより、表面に析出する面積を増やして、この効果をより高めることができる。
【0061】
成分(D)の層状ケイ酸塩としては、シリカ、無水シリカ、石英、シリカゲル、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム(タルク、フロリジル)、ケイ酸アルミニウム(カオリン、カオリナイト)、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウムアルミニウムなどが挙げられ、好ましくは、ケイ酸マグネシウム(タルク、フロリジル)、ケイ酸アルミニウム(カオリン、カオリナイト)であり、特に好ましくは、ケイ酸マグネシウム(タルク、フロリジル)である。
【0062】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、層状ケイ酸塩の1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。
【0063】
[成分(E)]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、プロピレン成分(E)としてフェノール樹脂を用いる。
成分(E)のフェノール樹脂は、動的熱処理において、樹脂組成物中で上述した成分(C)を部分的に架橋するものであり、これにより動的架橋型熱可塑性エラストマー組成物が実現される。
【0064】
成分(E)のフェノール樹脂としては、非ハロゲン系フェノール樹脂であるアルキルフェノールホルムアルデヒド等、ハロゲン系フェノール樹脂である臭化アルキルフェノールノールホルムアルデヒド等が挙げられる。これらのフェノール樹脂は1種類のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
成分(E)のフェノール樹脂としては、特に非ハロゲン系フェノール樹脂が好ましく、具体的には、下記式(I)で表されるものが好ましい。
【0066】
【化1】
【0067】
(式中、Xは、二価の連結基である-CH-、又は-CH-O-CH-から選択され、rは0~20の整数であり、Rは炭素数20未満、好ましくは炭素数1~12の有機基である。)
【0068】
上記非ハロゲン系フェノール樹脂の製品例としては、田岡化学工業(株)製のTackirol 201、202(商品名)、群栄化学工業(株)製のPR-4507(商品名)、Hoechst社製のVulkaresat 510E、532E、Vulkaresen E、105E、130E、Vulkaresol 315E(商品名)、Rohm&Haas社製のAmberol ST 137X(商品名)、住友デュレズ(株)製のスミライトレジン PR-22193(商品名)、Anchor Chem.社製のSymphorm-C-100、C-1001(商品名)、荒川化学工業(株)製のタマノル 531(商品名)、Schenectady Chem.社製のSchenectady SP1045、SP1059(商品名)、U.C.C社製のCRR-0803(商品名)、昭和ユニオン合成(株)製のCRM-0803(商品名)、Bayer社製のVulkadur A(商品名)等が挙げられる。
【0069】
成分(E)の非ハロゲン系フェノール樹脂としては、下記式(II)で表されるp-オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂が特に好ましく用いられ、その中でも質量平均分子量が2,500~4,000のものが最も好ましく用いられる。かかる非ハロゲン系フェノール樹脂としては、上記のTackirol(登録商標)201、202として市販されているものを利用することができる。
【0070】
【化2】
【0071】
なお、フェノール樹脂は通常活性化剤と共に使用される。ここで用いることができる活性化剤としては、例えば、塩化第一スズ、塩化第二鉄、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、クロロスルフォン化ポリエチレンのようなハロゲン供与体、及び酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、二酸化珪素、酸化亜鉛のような受酸剤が用いられる。フェノール系樹脂がハロゲン化されている場合にはハロゲン供与体は用いなくてもよい。
【0072】
また、市販されているフェノール樹脂には、後述の成分(F)に該当する炭化水素系ゴム用軟化剤や、充填材を含むものがあるが、使用するフェノール樹脂に炭化水素系ゴム用軟化剤が含まれる場合、当該炭化水素系ゴム用軟化剤は、成分(F)としての炭化水素系ゴム用軟化剤に含まれるものとする。また、後述の充填材についても同様である。
【0073】
成分(E)は公知の架橋剤と併用してもよい。公知の架橋剤の例としては、有機過酸化物、メチルハイドロジェンシリコン等の水素化ケイ素化合物、硫黄、p-キノンジオキシム、p-ジニトロソベンゼン、1,3-ジフェニルグアニジン等の過酸化物用助剤;ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート等の多官能ビニル化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物;N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-m-トルイレンビスマレイミド等のビスマレイミド構造を有する化合物;トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレートが挙げられる。
【0074】
[成分(F)]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、柔軟性や弾性を増加させるとともに、加工性や流動性を向上させる観点から、成分(F)として炭化水素系ゴム用軟化剤を含有することが好ましい。なお、この成分(F)には、上述した成分(C)として油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムを使用する際、その中に含まれる炭化水素系ゴム用軟化剤が含まれるが、成分(C)として油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムを用いる場合も、この油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムとは別に成分(F)として炭化水素系ゴム用軟化剤を別添加することが好ましい。
即ち、成分(C)として油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムを使用する際にも、成分(F)として炭化水素系ゴム用軟化剤を別添することにより、成分(F)の炭化水素系ゴム用軟化剤の含有割合を油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム中の炭化水素系ゴム用軟化剤の含有割合に依存せずに、任意に調整することが可能である。この場合、別添加する炭化水素系ゴム用軟化剤は、成分(C)の油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム中の炭化水素系ゴム用軟化剤と同一、同種、異種の炭化水素系ゴム用軟化剤のいずれでも用いることができる。成分(E)のフェノール樹脂に炭化水素系ゴム用軟化剤が含まれる場合についても同様である。
【0075】
成分(C)とは別添加する炭化水素系ゴム用軟化剤としては、上記した油展エチレン・α-オレフィン・共役ジエン共重合体ゴムに用いる炭化水素系ゴム用軟化剤と同様のものを用いることができる。炭化水素系ゴム用軟化剤は、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることがきる。
【0076】
パラフィン系オイルとしては、特に限定されないが、40℃の動粘度が通常10cSt(センチストークス)以上、好ましくは20cSt以上であり、通常800cSt以下、好ましくは600cSt以下のものである。また、流動点は通常-40℃以上、好ましくは-30℃以上で、0℃以下のものが好適に用いられる。また、流動点は、通常-40℃以上、好ましくは-30℃以上で、0℃以下のものが好適に用いられる。更に、引火点(COC)は、通常200℃以上、好ましくは250℃以上であり、通常400℃以下、好ましくは350℃以下のものが好適に用いられる。
【0077】
成分(F)の炭化水素系ゴム用軟化剤は市販のものを用いてもよい。成分(F)の市販品としては、例えば、JX日鉱日石エネルギー社製「日石ポリブテン(登録商標)HV」シリーズ、出光興産社製「ダイアナ(登録商標)プロセスオイルPW」シリーズが挙げられ、これらの中から適宜選択して使用することができる。
【0078】
[含有割合]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(A)と成分(B)との合計100質量%に対して、成分(B)の含有率が1質量%以上99質量%未満であることが好ましく、10質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。成分(B)の含有率が上記下限以上であると、耐傷付き性と高温におけるゴム弾性が良好であり好ましい。成分(B)の含有率が上記上限以下であると、成形性が良好であり好ましい。
【0079】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(A)と成分(B)との合計100質量部に対して、成分(C)を10質量部以上600質量部以下含有することが好ましく、15質量部以上500質量部以下含有することがより好ましい。成分(C)の含有量が上記下限以上であると、高温におけるゴム弾性と成形性が良好であり好ましい。成分(C)の含有量が上記上限以下であると、耐傷付き性が良好であり好ましい。
【0080】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(A)と成分(B)との合計100質量部に対して、成分(D)を1質量部以上200質量部以下含有することが好ましく、5質量部以上150質量部以下含有することがより好ましい。成分(D)の含有量が上記下限以上であると、耐傷付き性が良好であり好ましい。成分(D)の含有量が上記上限以下であると、高温におけるゴム弾性と成形性が良好であり好ましい。
【0081】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(A)と成分(B)との合計100質量部に対して、成分(E)を0.5質量部以上15質量部以下含有ことが好ましい。成分(E)の含有量が上記下限以上であると、ゴム弾性が良好であり好ましい。成分(E)の含有量が上記上限以下であると、成形性が良好であり好ましい。
【0082】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物が成分(F)を含有する場合、成分(F)は、成分(A)と成分(B)との合計100質量部に対して、10質量部以上1000質量部以下含有することが好ましく、20質量部以上900質量部以下含有することがより好ましい。成分(F)の含有量が上記下限以上であると、成形性とゴム弾性が良好であり好ましい。成分(F)の含有量が上記上限以下であると、耐オイルブリード性が良好であり好ましい。
なお、ここで、成分(F)の含有量とは、成分(C)として油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムを用いた場合、成分(C)中の炭化水素系ゴム用軟化剤と、成分(C)とは別添される成分(F)としての炭化水素系ゴム用軟化剤との合計の含有量であり、成分(E)に炭化水素系ゴム用軟化剤が含まれる場合は、当該炭化水素系ゴム用軟化剤をも含む合計の含有量である。
【0083】
[その他の成分]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、成分(A)~(F)以外に本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてその他の成分を配合することができる。
【0084】
その他の成分としては、例えば、成分(A)~(C)以外の熱可塑性樹脂やエラストマー等の樹脂、酸化防止剤、成分(D)以外の充填材、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、分散剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性付与剤、金属不活性化剤、分子量調整剤、防菌剤、防黴材、蛍光増白剤等の各種添加物を挙げることができ、本発明の効果を損なわない範囲において配合してもよい。これらは任意のものを単独又は併用して用いることができる。
【0085】
成分(A)~(C)以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリオレフィン樹脂(だだし、成分(A)又は成分(B)に該当するものを除く。)を挙げることができる。また、成分(A)~(C)以外のエラストマーとしては、例えば、ポリエステル系エラストマー;ポリブタジエンを挙げることができる。
【0086】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤を用いる場合、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して、通常0.01~3.0質量部の範囲で用いられる。
【0087】
成分(D)以外の充填材としては、例えば、ゼオライト、ガラス繊維、中空ガラス球、炭素繊維、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム繊維、金属石鹸、二酸化チタン、カーボンブラックを挙げることができる。充填材を用いる場合、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して、通常0.1~50質量部で用いられる。
【0088】
滑剤としては、例えば脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩、オルガノポリシロキサンが挙げられる。滑剤を用いる場合、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して、通常0.01~10.0質量部の範囲で用いられる。
【0089】
[熱可塑性エラストマー組成物の製造方法]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、前述の通り、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)、好ましくは更に成分(F)と、必要に応じて用いられるその他の成分等を所定量含有する組成物を成分(E)の存在下で動的熱処理して製造される。
【0090】
本発明において「動的熱処理」とは架橋剤の存在下で溶融状態又は半溶融状態で混練することを意味する。この動的熱処理は、溶融混練によって行うのが好ましく、そのための溶融混練装置としては、例えば非開放型バンバリーミキサー、ミキシングロール、ニーダー、二軸押出機が用いられる。これらの中でも二軸押出機を用いることが好ましい。この二軸押出機を用いた製造方法の好ましい態様としては、複数の原料供給口を有する二軸押出機の原料供給口(ホッパー)に各成分を供給して動的熱処理を行うものである。
【0091】
動的熱処理を行う際の温度は、通常80~300℃、好ましくは100~250℃である。また、動的熱処理を行う時間は通常0.1~30分である。
【0092】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を二軸押出機により動的熱処理を行うことにより製造する場合においては、二軸押出機のバレル半径(R(mm))、スクリュー回転数(N(rpm))及び吐出量(Q(kg/時間))の間に下記式(i)の関係を保ちながら押出することが好ましく、下記式(ii)の関係を保ちながら押出することがより好ましい。
2.6<NQ/R<22.6 (i)
3.0<NQ/R<20.0 (ii)
【0093】
二軸押出機のバレル半径(R(mm))、スクリュー回転数(N(rpm))及び吐出量(Q(kg/時間))との間の前記関係が上記下限値より大きいことが熱可塑性エラストマー組成物を効率的に製造するために好ましい。一方、前記関係が上記上限値より小さいことが、剪断による発熱を抑え、外観不良の原因となる異物の発生を抑制するために好ましい。
【0094】
なお、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造に当たり、成分(B)のエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムを、成分(F)の炭化水素系ゴム用軟化剤の少なくとも一部で処理して、成分(B)を油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムとして用いることもできる。
【0095】
成分(B)と成分(F)とで油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムを製造する方法(油展方法)としては上記油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムを調製する方法と同様の方法を用いることができる。
【0096】
[熱可塑性エラストマー組成物の物性]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を成形してなる成形体について、JIS K6253(2006年度版)(Duro-A)に準拠して測定したデュロ硬度A(15秒後値)は、95以下であることが好ましく、20~90の範囲であることがより好ましく、25~85の範囲であることが更に好ましい。デュロ硬度Aが上記下限以上であると、耐傷付き性が良好であり好ましい。デュロ硬度Aが上記上限以下であると、高温におけるゴム弾性が良好であり好ましい。
【0097】
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を成形してなる成形体について、JIS K6262に準拠し、70℃、22時間、25%圧縮条件で測定した圧縮永久歪みは、50%以下であることが好ましく、45%以下であることがより好ましい。圧縮永久歪みが上記上限以下であると、高温でのゴム弾性が良好であり好ましい。
【0098】
[成形体・用途]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、通常熱可塑性エラストマー組成物に用いられる成形方法、例えば、射出成形、押出成形、中空成形、圧縮成形等の各種成形方法により、成形体とすることができる。これらの中でも射出成形、押出成形が好適である。また、これらの成形を行った後に積層成形、熱成形等の二次加工を行った成形体とすることもできる。
【0099】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物及は高温でのゴム弾性を維持しつつ耐傷付き性にも優れ、自動車部品(マット、シール、クッション、ブーツ等)、建築部品(ガスケット、パッキン、マット等)、その他各種の雑貨部品、スポーツ用品(ゴルフクラブやテニスラケットのグリップ類等)、工業用部品(ホースチューブ、ガスケット等)、家電部品(ホース、パッキン類等)、医療用部品(医療用容器、ガスケット、パッキン等)、食品用部品(容器、パッキン等)、医療用機器部品、電線、その他雑貨等の広汎な分野で用いることができる。中でも滑り止めマットとして本発明の熱可塑性エラストマー組成物よりなる成形体を用いるのが好適である。
【実施例
【0100】
以下、実施例を用いて本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味を持つものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0101】
[原材料]
以下の実施例・比較例で使用した原材料は以下の通りである。
【0102】
<成分(A)>
(A-1):プロピレン単独重合体/日本ポリプロ株式会社製 ノバテック(登録商標)PP FY6
プロピレン単位含有率:100質量%
MFR(230℃、21.18N):2.5g/10分
【0103】
<成分(B)>
(B-1):高密度ポリエチレン/日本ポリエチレン株式会社製 ノバテック(登録商標)HD HJ580N
密度:0.960g/cm
MFR(190℃、21.18N):12g/10分
(B-2):直鎖状低密度ポリエチレン/サウディ石油化学社製 SABIC(登録商標)LLDPE M200024
密度:0.924g/cm
MFR(190℃、21.18N):20g/10分
(B-3):低密度ポリエチレン/日本ポリエチレン株式会社製 ノバテック(登録商標)LD LF405
密度:0.919g/cm
MFR(190℃、21.18N):2g/10分
【0104】
<成分(C)>
(C-1)+(F)混合物:油展エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体(成分(C-1)100質量部と成分(F)40質量部の混合物)/三井化学株式会社製 3072EPM
ムーニー粘度ML1+4(125℃):51
成分(C-1):エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体
ムーニー粘度ML1+4(125℃):94
エチレン単位含有率:64質量%
5-エチリデン-2-ノルボルネン単位含有率:5.4質量%
密度:0.88g/cm
【0105】
<成分(D)>
(D-1):ケイ酸マグネシウム系充填剤(タルク)/竹原化学工業株式会社製 PHSH、層状
(D-2):ケイ酸アルミニウム系充填剤(カオリン)/BASFジャパン株式会社製 Satintone(登録商標)SP-33、層状
【0106】
<成分(E)>
(E-1)+(F-1)混合物:フェノール樹脂(成分(E-1)30質量部と成分(F-1)70質量部の混合物
(E-1):両末端がメチロール基であるアルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂/田岡化学工業株式会社製 Tackirol(登録商標)201
(F-1):パラフィン系オイル/出光興産株式会社製 ダイアナ(登録商標)プロセスオイル PW-32
40℃の動粘度:30.60cSt
流動点:-17.5℃
引火点:222℃
【0107】
<成分(F)>
(F-1):パラフィン系オイル/出光興産株式会社製 ダイアナ(登録商標)プロセスオイル PW-32
40℃の動粘度:30.60cSt
流動点:-17.5℃
引火点:222℃
(F-2):パラフィン系オイル/出光興産株式会社製 ダイアナ(登録商標)プロセスオイル PW-90
40℃の動粘度:95.54cSt
流動点:-15℃
引火点:272℃
【0108】
<成分(e)>
(e-1):2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(有機過酸化物)40質量%と炭酸カルシウム60質量%の混合物/化薬ヌーリオン株式会社製 トリゴノックス(登録商標)101-40C
(e-2):ジビニルベンゼン57質量%、エチルビニルベンゼン40質量%とジエチルベンゼン3%の混合物/日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製 DVB-570
【0109】
<成分(G)>
(G-1):ハロゲン供与体/和光純薬工業株式会社製 塩化第一スズ
【0110】
<成分(H)>
(H-1):受酸剤/和光純薬工業株式会社製 酸化亜鉛
【0111】
<成分(I)>
(I-1):酸化防止剤/BASFジャパン株式会社製 イルガノックス(登録商標)1076
【0112】
[評価方法]
以下の実施例・比較例における熱可塑性エラストマー組成物の評価方法は以下の通りである。
なお、下記(1)~(4)の測定においては、各熱可塑性エラストマー組成物を用いて、インラインスクリュウタイプ射出成形機(東芝機械社製「IS130」)にて、射出圧力50MPa、シリンダー温度220℃、金型温度40℃の条件下にて、各熱可塑性エラストマー組成物を射出成形して厚さ2mm×幅120mm×長さ120mmのシートを得た。(4)の圧縮永久歪みの測定においては、JIS K6262に準拠し、得られたシート(厚さ2mm×幅120mm×長さ120mm)を打ち抜いて得たTypeA円盤:29mmφを6枚重ねて試験片を作製し、この試験片を用いて測定した。
【0113】
(1)耐ブリード性
上記試験片を温度23±2℃、湿度50±5%Rhの条件下で168時間静置した後、外観を観察し、オイルブリードの度合いについて以下の3段階で評価を行った。
◎:ブリードなし
〇:一部ブリードあり
×:シート全面にブリードあり
【0114】
(2)耐傷付き性
上記試験片の表面を(株)東洋精機社製 テーバースクラッチテスタを用いて、タン
グステンカーバイト製のカッターにより指定の荷重にて引っ掻いた。目視にて表面を観察し、表面にウェッジ形成し始めた荷重を確認した。荷重が高いほど耐傷付き性が高いと判断した。
【0115】
(3)デュロ硬度A
JIS K6253(Duro-A)に準拠し、硬度(15秒後)を測定した。
【0116】
(4)圧縮永久歪み
JIS K6262の規格に準拠し、70℃、22時間、25%圧縮条件で測定した。値が低いほどゴム弾性に優れる。
【0117】
[実施例/比較例]
<実施例1>
成分(A-1)50質量部、成分(B-1)50質量部、成分(C-1)+(F)混合物206質量部(内訳成分(C-1):147質量部、(F):59質量部)、成分(D-1)17質量部、成分(G-1)2.1質量部、成分(H-1)1.0質量部、成分(I-1)0.4質量部をヘンシェルミキサーにて1分間ブレンドした。同方向二軸押出機(日本製鋼所「TEX30」、L/D=52.5、シリンダブロック数:14)の上流の供給口へ重量式フィーダーにて混合物を投入した。続いて成分(E-1)+(F-1)混合物21質量部(内訳成分(E-1):6.3質量部、(F-1):14.7質量部)と成分(F-2)110質量部をそれぞれ液添ポンプにて押出機の途中の供給口から供給し、合計20kg/hの吐出量にて、上流部から下流部を140~200℃の範囲で昇温させ動的架橋処理を行い、ペレット化して熱可塑性エラストマー組成物を製造した。得られた熱可塑性エラストマー組成物について、前記(1)~(4)の評価を実施した。得られた評価結果を表-1に示す。
【0118】
<実施例2~4及び比較例1~4>
実施例2~4及び比較例1~3では、成分(G-1)、(H-1)、(I-1)以外の成分の配合組成を、表-1に示したように変更した以外は実施例1と同様にして熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
比較例4では、成分(G-1)、(H-1)を配合せず、成分(I-1)以外の成分の配合組成を、表-1に示したように変更した以外は実施例1と同様にして熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて実施例1と同様の評価を実施した。得られた評価結果を表-1に示す。
【0119】
【表1】
【0120】
[評価結果]
表-1に示す通り、実施例1~4は、実用上十分な耐ブリード性と圧縮永久歪(高温ゴム弾性)、良好な耐傷付き性を有していることがわかる。なかでも実施例1、4は良好なゴム弾性を示していることがわかる。
一方、比較例1~3は、成分(B):エチレン系重合体、成分(D):層状ケイ酸塩のいずれかまたは両方を含有しない例であるが、耐傷付き性が悪化した。比較例4は成分(E):フェノール樹脂の代わりに成分(e-1)の有機過酸化物と成分(e-2)のジビニルベンゼン混合物を用いた例であるが、耐ブリード性が悪化し、(2)~(4)の評価ができず、実用に耐えない。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、高温でのゴム弾性を維持しながら耐傷付き性に優れる。本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、高温でのゴム弾性を維持しながら耐傷付き性を有することで、自動車部品、建築部品、医療用部品、電線被覆材、雑貨、特に滑り止めマットなどに有用である。