(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 2/10 20060101AFI20241022BHJP
F04C 15/06 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
F04C2/10 341E
F04C15/06 A
(21)【出願番号】P 2020218407
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】本間 和博
(72)【発明者】
【氏名】村田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】梶田 国博
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-089636(JP,A)
【文献】実開平07-030390(JP,U)
【文献】特開2012-077638(JP,A)
【文献】実開平02-043480(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/10
F04C 15/06
F04C 18/344
F04D 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる中心軸を中心として回転可能なシャフトを有するモータと、
前記シャフトに連結されたポンプ機構と、
前記モータおよび前記ポンプ機構を内部に収容するハウジングと、
を備え、
前記ハウジングは、
前記ポンプ機構を内部に収容するポンプ室と、
前記ポンプ室に繋がる吸入流路と、
を有し、
前記吸入流路は、
軸方向に延びる第1流路部と、
前記第1流路部から屈曲して延びて前記ポンプ室に繋がる第2流路部と、
を有し、
軸方向に見て、前記第2流路部の幅は、前記ポンプ室に近づくに従って大きくな
り、
前記第1流路部は、流路断面積が前記第2流路部に近づくに従って大きくなる第1拡大部を有し、
前記第1流路部は、流路断面積が前記第2流路部に近づくに従って大きくなる第2拡大部を有し、
前記第2拡大部は、前記第1拡大部のうち前記第2流路部に近い側の端部に繋がり、
前記第2拡大部の流路断面積が前記第2流路部に近づくに従って大きくなる度合いは、前記第1拡大部の流路断面積が前記第2流路部に近づくに従って大きくなる度合いよりも大きい、ポンプ。
【請求項2】
前記ポンプ室の内面のうち軸方向一方側に位置する面には、前記ポンプ機構と軸方向に対向する第1対向凹部が設けられ、
前記ポンプ室の内面のうち軸方向他方側に位置する面には、前記ポンプ機構と軸方向に対向する第2対向凹部が設けられ、
前記第2流路部は、前記第1対向凹部の内部および前記第2対向凹部の内部に繋がっている、請求項
1に記載のポンプ。
【請求項3】
前記ポンプ室は、軸方向に見て、円形状であり、
前記第2流路部の周方向両側の縁部のうち少なくとも一方の縁部は、軸方向に見て、前記ポンプ室の内縁のうち前記一方の縁部が繋がる部分における接線に沿って延びている、請求項1
または2に記載のポンプ。
【請求項4】
前記ハウジングは、
第1ハウジング部材と、
前記第1ハウジング部材の軸方向一方側に固定された第2ハウジング部材と、
を有し、
前記第1流路部は、前記第1ハウジング部材に設けられ、
前記第2流路部は、前記第1ハウジング部材と前記第2ハウジング部材とに跨って設けられている、請求項1から
3のいずれか一項に記載のポンプ。
【請求項5】
前記第2流路部は、前記第1流路部に対して直角に屈曲している、請求項1から
4のいずれか一項に記載のポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ機構を内部に収容するポンプ室およびポンプ室に繋がる吸入流路を有するハウジングを備えるポンプが知られている。例えば、特許文献1には、そのようなポンプとして、内接ギヤポンプが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなポンプにおいては、吸入流路が、屈曲している部分を有する場合がある。この場合、吸入流路のうち屈曲した部分において流体に圧力損失が生じて、吸入流路内の流体がポンプ室内へと流れにくくなる恐れがあった。これにより、吸入流路からポンプ室内に吸入される流体の量が低下し、ポンプ効率が低下する恐れがあった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、吸入流路からポンプ室内に吸入される流体の量が低下することを抑制できる構造を有するポンプを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のポンプの一つの態様は、軸方向に延びる中心軸を中心として回転可能なシャフトを有するモータと、前記シャフトに連結されたポンプ機構と、前記モータおよび前記ポンプ機構を内部に収容するハウジングと、を備える。前記ハウジングは、前記ポンプ機構を内部に収容するポンプ室と、前記ポンプ室に繋がる吸入流路と、を有する。前記吸入流路は、軸方向に延びる第1流路部と、前記第1流路部から屈曲して延びて前記ポンプ室に繋がる第2流路部と、を有する。軸方向に見て、前記第2流路部の幅は、前記ポンプ室に近づくに従って大きくなっている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、ポンプにおいて、吸入流路からポンプ室内に吸入される流体の量が低下することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態のポンプを示す断面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のポンプの一部を示す断面図であって、
図1におけるII-II断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明においては、各図に示すZ軸が延びる方向を上下方向とし、Z軸の矢印が向く側(+Z側)を「上側」と呼び、Z軸の矢印が向く側と逆側(-Z側)を「下側」と呼ぶ。各図に示す中心軸J1は、Z軸と平行に延びる仮想軸である。特に断りのない限り、中心軸J1の軸方向と平行な方向、すなわちZ軸方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸J1を中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。本実施形態において、下側は「軸方向一方側」に相当し、上側は「軸方向他方側」に相当する。
【0010】
なお、上下方向、上側、および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0011】
図1に示す本実施形態のポンプ10は、例えば、車両に搭載される電動ポンプである。ポンプ10は、車両の内部において流体Oを送る。ポンプ10によって送られる流体Oは、例えば、オイルである。オイルは、例えば、ATF(Automatic Transmission Fluid)である。
図1に示すように、本実施形態のポンプ10は、ハウジング20と、モータ30と、ベアリング38,39と、ポンプ機構40と、オイルシール70と、を備える。
【0012】
モータ30は、ロータ31と、ステータ32と、を有する。ロータ31は、中心軸J1を中心として回転可能である。ロータ31は、シャフト33と、ロータ本体34と、を有する。つまり、モータ30は、シャフト33と、ロータ本体34と、を有する。図示は省略するが、ロータ本体34は、シャフト33の外周面に固定されたロータコアと、ロータコアに固定されたロータマグネットと、を有する。
【0013】
シャフト33は、中心軸J1に沿って軸方向に延びている。シャフト33は、例えば、中心軸J1を中心とする円柱状である。シャフト33は、軸方向に延びる中心軸J1を中心として回転可能である。シャフト33は、ベアリング38,39によって中心軸J1回りに回転可能に支持されている。ベアリング38,39は、例えば、ボールベアリングである。シャフト33は、下側部分に小径部33aを有する。小径部33aの下側の端部は、シャフト33の下側の端部である。小径部33aの外径は、シャフト33のうち小径部33aよりも上側に位置する部分の外径よりも小さい。
図2に示すように、本実施形態において小径部33aは、周方向に間隔を空けて配置された複数のスプライン歯を外周面に有するスプラインシャフト部である。
【0014】
図1に示すように、ステータ32は、ロータ31と径方向に隙間を介して対向している。本実施形態においてステータ32は、ロータ31の径方向外側に位置する。ステータ32は、ステータコア35と、インシュレータ36と、複数のコイル37と、を有する。ステータコア35は、ロータ本体34を囲む環状である。図示は省略するが、ステータコア35は、中心軸J1を中心とする円筒状のコアバックと、コアバックから径方向内側に延びる複数のティースと、を有する。複数のコイル37は、複数のティースのそれぞれにインシュレータ36を介して取り付けられている。
【0015】
ポンプ機構40は、シャフト33に連結されている。より詳細には、ポンプ機構40は、シャフト33の小径部33aに取り付けられている。ポンプ機構40は、後述するポンプ室50の内部に収容されている。ポンプ機構40は、インナーロータ41と、アウターロータ42と、を有するトロコイドポンプ機構である。
【0016】
インナーロータ41は、インナーロータ41を軸方向に貫通する連結孔部41bを有する。連結孔部41bには、シャフト33の小径部33aが嵌め合わされている。本実施形態では、小径部33aは、上側から連結孔部41bに通されている。小径部33aの下側の端部は、連結孔部41bよりも下側に突出している。
【0017】
図2に示すように、本実施形態において連結孔部41bは、周方向に間隔を空けて配置された複数のスプライン溝を内周面に有するスプライン孔部である。連結孔部41bのスプライン溝には、小径部33aの外周面に設けられた複数のスプライン歯がそれぞれ嵌め合わされている。これにより、本実施形態では、シャフト33とインナーロータ41とがスプライン結合によって連結されている。
【0018】
インナーロータ41は、径方向外側面に外歯歯車部41cを有する。外歯歯車部41cは、径方向外側に突出する複数の歯部41aを有する。複数の歯部41aは、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置されている。外歯歯車部41cの外縁形状は、軸方向に見て、例えば、トロコイド曲線からなる。インナーロータ41は、シャフト33が中心軸J1回りに回転するのに伴って中心軸J1回りに回転する。
【0019】
アウターロータ42は、インナーロータ41を囲む環状である。アウターロータ42の径方向外側面は、中心軸J1に対して径方向に偏心した偏心軸J2を中心とする円筒状である。偏心軸J2は、中心軸J1と平行に延びる仮想軸である。アウターロータ42は、径方向内側面に内歯歯車部42cを有する。内歯歯車部42cは、径方向内側に突出する複数の歯部42aを有する。複数の歯部42aは、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置されている。内歯歯車部42cの内縁形状は、軸方向に見て、例えば、トロコイド曲線からなる。内歯歯車部42cは、周方向の一部においてインナーロータ41の外歯歯車部41cと噛み合っている。アウターロータ42は、インナーロータ41が中心軸J1回りに回転するのに伴って偏心軸J2回りに回転する。インナーロータ41とアウターロータ42とが回転することで、インナーロータ41とアウターロータ42との径方向の隙間Gに流入した流体Oが、ポンプ室50内において周方向に送られる。
【0020】
図1に示すように、ハウジング20は、モータ30、ポンプ機構40、およびオイルシール70を内部に収容している。本実施形態においてハウジング20は、第1ハウジング部材21と、第2ハウジング部材22と、第3ハウジング部材23と、を有する。第1ハウジング部材21と第2ハウジング部材22と第3ハウジング部材23とは、互いに別々の部材である。第1ハウジング部材21と第2ハウジング部材22と第3ハウジング部材23とのそれぞれは、例えば、ダイカストなどの金型鋳造によって成形された単一部材である。
【0021】
第1ハウジング部材21は、上側に開口する筒状の部材である。第1ハウジング部材21は、底部21aと、周壁部21bと、を有する。底部21aは、径方向に広がっている。底部21aは、ステータ32を下側から覆っている。底部21aは、底部21aの下側の面から上側に窪む第1凹部21gを有する。
図2に示すように、軸方向に見て、第1凹部21gの内縁は、偏心軸J2を中心とする円形状である。第1凹部21gの内部には、中心軸J1が通っている。第1凹部21gの内部は、後述するポンプ室50の内部を構成している。
【0022】
図1に示すように、周壁部21bは、底部21aの径方向外周縁部から上側に延びている。周壁部21bの径方向内側面は、例えば、中心軸J1を中心とする円筒状である。周壁部21bの内部には、ステータコア35が嵌め合わされている。ステータコア35は、例えば圧入などにより、周壁部21bに固定されている。
【0023】
第1ハウジング部材21は、底部21aを軸方向に貫通する貫通孔21cを有する。貫通孔21cは、中心軸J1を中心とする円形状の孔である。貫通孔21cには、シャフト33が軸方向に通されている。貫通孔21cは、ベアリング保持孔部21dと、オイルシール保持孔部21eと、接続孔部21fと、を有する。
【0024】
ベアリング保持孔部21dの上側の端部は、貫通孔21cの上側の端部である。ベアリング保持孔部21dの内部には、ベアリング38が保持されている。底部21aのうちベアリング保持孔部21dが設けられた部分は、上側に突出する筒状となっている。
【0025】
オイルシール保持孔部21eは、ベアリング保持孔部21dの下側に繋がっている。オイルシール保持孔部21eの内径は、ベアリング保持孔部21dの内径よりも小さい。オイルシール保持孔部21eの内部には、オイルシール70が保持されている。オイルシール70は、オイルシール保持孔部21eの内周面とシャフト33のうち小径部33aの上側に繋がる部分の外周面との間を封止している。
【0026】
接続孔部21fは、オイルシール保持孔部21eの下側に繋がっている。接続孔部21fの下側の端部は、貫通孔21cの下側の端部である。接続孔部21fの内径は、オイルシール保持孔部21eの内径よりも小さい。接続孔部21fは、オイルシール保持孔部21eの内部と第1凹部21gの内部とを軸方向に繋いでいる。接続孔部21fには、小径部33aが軸方向に通されている。
【0027】
第2ハウジング部材22は、第1ハウジング部材21の下側に固定されている。第2ハウジング部材22は、径方向に広がっている。第2ハウジング部材22の上側の面は、底部21aの下側の面に接触している。第2ハウジング部材22の上側の面と底部21aの下側の面との間には、Oリング71が設けられている。Oリング71は、中心軸J1を囲む環状である。本実施形態においてOリング71は、後述するポンプ室50および後述する第2流路部62を囲んでいる。Oリング71は、第2ハウジング部材22の上側の面における径方向外周縁部と底部21aの下側の面における径方向外周縁部との間を封止している。本実施形態においてOリング71は、底部21aの下側の面に設けられた溝に嵌め込まれている。第2ハウジング部材22は、第2ハウジング部材22の上側の面から下側に窪む第2凹部22aを有する。第2凹部22aの内部には、小径部33aの下側の端部が挿入されている。
【0028】
第3ハウジング部材23は、第1ハウジング部材21の上側に固定されている。第3ハウジング部材23の下側の面における径方向外周縁部は、周壁部21bの上側の端面に接触している。第3ハウジング部材23は、周壁部21bの上側の開口を塞いでいる。第3ハウジング部材23は、モータ30を上側から覆っている。第3ハウジング部材23は、ベアリング39を保持するベアリング保持部23aを有する。ベアリング保持部23aは、第3ハウジング部材23の下側の面に設けられている。ベアリング保持部23aは、中心軸J1を中心とし、下側に開口する円筒状である。
【0029】
ハウジング20は、ポンプ機構40を内部に収容するポンプ室50を有する。本実施形態においてポンプ室50は、第1ハウジング部材21に設けられた第1凹部21gの下側の開口が第2ハウジング部材22によって塞がれることで作られている。つまり、ポンプ室50の内面のうち上側に位置する面は、第1凹部21gの底面である。第1凹部21gの底面は、第1凹部21gの内面のうち上側に位置する面であり、下側を向く面である。ポンプ室50の内面のうち下側に位置する面は、第2ハウジング部材22の上側の面である。
【0030】
図2に示すように、本実施形態においてポンプ室50は、軸方向に見て、偏心軸J2を中心とする円形状である。ポンプ室50内には、アウターロータ42が嵌め合わされている。
図1に示すように、ポンプ室50の内径は、貫通孔21cの内径よりも大きい。ポンプ室50の内面のうち径方向外側に位置する内周面は、貫通孔21cの内周面よりも径方向外側に位置する。
【0031】
ポンプ室50の内面のうち下側に位置する面には、第1対向凹部51および第3対向凹部53が設けられている。ポンプ室50の内面のうち上側に位置する面には、第2対向凹部52および第4対向凹部54が設けられている。第1対向凹部51、第2対向凹部52、第3対向凹部53、および第4対向凹部54は、ポンプ機構40と軸方向に対向する凹部である。第1対向凹部51および第3対向凹部53は、ポンプ室50の内面のうち下側に位置する面から下側に窪んでいる。第2対向凹部52および第4対向凹部54は、ポンプ室50の内面のうち上側に位置する面から上側に窪んでいる。
【0032】
第1対向凹部51と第2対向凹部52とは、ポンプ機構40を軸方向に挟んで配置されている。第1対向凹部51および第2対向凹部52は、ポンプ室50のうち流体Oがポンプ室50の内部に吸入される部分に設けられている。第3対向凹部53と第4対向凹部54とは、ポンプ機構40を軸方向に挟んで配置されている。第3対向凹部53および第4対向凹部54は、ポンプ室50のうち流体Oがポンプ室50の外部に吐出される部分に設けられている。一対の第1対向凹部51および第2対向凹部52と一対の第3対向凹部53および第4対向凹部54とは、例えば、中心軸J1を径方向に挟んで配置されている。
【0033】
ハウジング20は、ポンプ室50に繋がる吸入流路60を有する。吸入流路60内には、流体Oが流れる。吸入流路60内を流れる流体Oは、ポンプ室50内に吸入される。吸入流路60は、第1流路部61と、第1流路部61の下側の端部に繋がる第2流路部62と、を有する。
【0034】
第1流路部61は、軸方向に延びている。本実施形態において第1流路部61は、第1ハウジング部材21に設けられている。より詳細には、第1流路部61は、周壁部21bに設けられている。第1流路部61の下側の端部は、底部21aに設けられている。第1流路部61は、モータ30の径方向外側に位置する。第1流路部61の上側の端部は、例えば、ステータコア35の上側の端部と軸方向において同じ位置に位置する。ハウジング20のうち第1流路部61が設けられている部分は、例えば、ハウジング20の他の部分よりも径方向外側に突出している。
【0035】
第1流路部61は、第1拡大部61aと、第1拡大部61aの下側に繋がる第2拡大部61bと、を有する。第1拡大部61aの流路断面積および第2拡大部61bの流路断面積は、第2流路部62に近づくに従って大きくなっている。つまり、本実施形態において第1拡大部61aの流路断面積および第2拡大部61bの流路断面積は、下側に向かうに従って大きくなっている。各拡大部における流路断面積は、軸方向と直交する断面における各拡大部の面積である。
【0036】
第1拡大部61aは、ステータコア35の径方向外側に位置する。第1拡大部61aの上側の端部は、第1流路部61の上側の端部である。図示は省略するが、第1拡大部61aの流路断面形状は、例えば、円形状である。本実施形態において第1拡大部61aの内周面は、下側に向かうに従って内径が大きくなるテーパ面である。
【0037】
第2拡大部61bは、第1拡大部61aのうち第2流路部62に近い側の端部、つまり下側の端部に繋がっている。第2拡大部61bの下側の端部は、第1流路部61の下側の端部である。第2拡大部61bの軸方向に寸法は、第1拡大部61aの軸方向の寸法よりも小さい。第2拡大部61bの内周面のうち径方向内側に位置する部分は、全体として上側から下側に向かうに従って径方向内側に湾曲する形状である。本実施形態において第2拡大部61bの内周面のうち径方向内側に位置する部分は、凹凸形状を有する。
【0038】
本実施形態において第2拡大部61bの内周面のうち径方向外側に位置する部分は、第1拡大部61aの内周面のうち径方向外側に位置する部分の下側に滑らかに連続して繋がっている。第2拡大部61bの内周面のうち径方向外側に位置する部分は、第1拡大部61aの内周面のうち径方向外側に位置する部分の延長線上に配置されている。第2拡大部61bの内周面のうち径方向外側に位置する部分は、下側に向かうに従って径方向外側に位置する。
【0039】
本実施形態において第2拡大部61bの流路断面積が第2流路部62に近づくに従って大きくなる度合いは、第1拡大部61aの流路断面積が第2流路部62に近づくに従って大きくなる度合いよりも大きい。
【0040】
なお、本明細書において「或る拡大部の流路断面積が第2流路部に近づくに従って大きくなる度合い」とは、例えば、或る拡大部のうち第2流路部に近い側の端部における流路断面積から、或る拡大部のうち第2流路部から遠い側の端部における流路断面積を減じた値を、或る拡大部の軸方向の寸法で割った値である。つまり、本実施形態において、第2拡大部61bの下側の端部における流路断面積から第2拡大部61bの上側の端部における流路断面積を減じた値を第2拡大部61bの軸方向の寸法で割った値は、第1拡大部61aの下側の端部における流路断面積から第1拡大部61aの上側の端部における流路断面積を減じた値を第1拡大部61aの軸方向の寸法で割った値よりも大きい。
【0041】
第2流路部62は、第1流路部61から屈曲して延びてポンプ室50に繋がっている。本実施形態において第2流路部62は、第1流路部61に対して直角に屈曲している。なお、本明細書において「第2流路部が第1流路部に対して直角に屈曲している」とは、第2流路部が第1流路部に対して厳密に直角に屈曲している場合に加えて、第2流路部が第1流路部に対して略直角に屈曲している場合も含む。「第2流路部が第1流路部に対して略直角に屈曲している」とは、例えば、第2流路部が第1流路部に対して屈曲する角度が、90°に対して±5°の範囲内にある場合を含む。
【0042】
第2流路部62は、第1流路部61の下側の端部、つまり第2拡大部61bの下側の端部から径方向内側に延びている。第2流路部62の径方向内側の端部は、ポンプ室50に繋がっている。第2流路部62の径方向内側の端部は、第1対向凹部51の内部および第2対向凹部52の内部に繋がっている。第2流路部62の内面のうち下側に位置する面における径方向内側の端部は、下側に窪んでいる。これにより、第2流路部62の軸方向の寸法は、径方向内側の端部において大きくなっている。第2流路部62の内面のうち下側に位置する面における径方向内側の端部は、第1対向凹部51の底面に繋がっている。第1対向凹部51の底面は、第1対向凹部51の内面のうち下側に位置する面である。
【0043】
本実施形態において第2流路部62は、第1ハウジング部材21と第2ハウジング部材22とに跨って設けられている。具体的に本実施形態では、第2流路部62のうち下側の端部を除く部分は、第1ハウジング部材21の底部21aに設けられている。第2流路部62のうち下側の端部は、第2ハウジング部材22に設けられている。第2流路部62の内面のうち径方向外側に位置する面は、第1流路部61の内周面のうち径方向外側に位置する部分の下側に滑らかに連続して繋がっている。第2流路部62の内面のうち径方向外側に位置する面は、第1流路部61の内周面のうち径方向外側に位置する部分の延長線上に配置されている。第2流路部62の内面のうち径方向外側に位置する面は、下側に向かうに従って径方向外側に位置する。
【0044】
図2に示すように、軸方向に見て、第2流路部62の幅は、ポンプ室50に近づくに従って大きくなっている。本実施形態において、軸方向に見た際の第2流路部62の幅は、第2流路部62の周方向の寸法である。本実施形態において第2流路部62の周方向の寸法は、径方向内側に向かうに従って大きくなっている。
【0045】
本実施形態において第2流路部62の周方向両側の縁部62a,62bは、軸方向に見て、径方向に対して傾いた方向に直線状に延びている。縁部62aの径方向に対する傾きは、例えば、縁部62bの径方向に対する傾きよりも大きい。縁部62aと縁部62bとは、径方向内側に向かうに従って互いに周方向に離れている。縁部62a,62bの径方向内側の端部は、ポンプ室50の内縁に繋がっている。縁部62aは、軸方向に見て、ポンプ室50の内縁のうち縁部62aが繋がる部分における接線TLaに沿って延びている。縁部62aは、軸方向に見て、接線TLa上に配置されている。縁部62bは、軸方向に見て、ポンプ室50の内縁のうち縁部62bが繋がる部分における接線TLbが延びる方向と交差する方向に延びている。
【0046】
図1に矢印で示すように、図示しない吸入口から吸入流路60内に流入した流体Oは、第1流路部61内を上側から下側に流れた後、第2流路部62内に流入する。第2流路部62内に流入した流体Oは、第2流路部62内を径方向内側に流れて、ポンプ室50内に流入する。ポンプ室50内に流入した流体Oは、インナーロータ41とアウターロータ42との隙間Gに入り、インナーロータ41およびアウターロータ42が回転するのに伴って、ポンプ室50内において周方向に送られる。ポンプ室50内において周方向に送られた流体Oは、図示しない吐出流路内に吐出される。図示は省略するが、吐出流路は、ポンプ室50に繋がる流路であり、ハウジング20に設けられている。
【0047】
本実施形態によれば、吸入流路60は、軸方向に延びる第1流路部61と、第1流路部61から屈曲して延びてポンプ室50に繋がる第2流路部62と、を有する。軸方向に見て、第2流路部62の幅は、ポンプ室50に近づくに従って大きくなっている。そのため、第2流路部62の流路断面積をポンプ室50に近づく程、大きくすることができる。これにより、第2流路部62内に流体Oを好適に流しやすくでき、第2流路部62からポンプ室50に向かって流れる流体Oの量を多くできる。したがって、第1流路部61に対して屈曲した第2流路部62内に第1流路部61から流体Oが流れる際に流体Oに圧力損失が生じても、吸入流路60からポンプ室50内に吸入される流体Oの量が低下することを抑制できる。そのため、ポンプ10のポンプ効率が低下することを抑制できる。
【0048】
また、本実施形態によれば、第1流路部61は、流路断面積が第2流路部62に近づくに従って大きくなる第1拡大部61aを有する。そのため、第1流路部61内に流体Oを好適に流しやすくできる。これにより、第1流路部61内から第2流路部62内へと流体Oを流しやすくできる。したがって、吸入流路60から第2流路部62を介してポンプ室50内に吸入される流体Oの量が低下することをより抑制できる。
【0049】
また、本実施形態によれば、第1流路部61は、流路断面積が第2流路部62に近づくに従って大きくなる第2拡大部61bを有する。そのため、第1流路部61内に流体Oをより好適に流しやすくできる。これにより、第1流路部61内から第2流路部62内へと流体Oをより流しやすくできる。したがって、吸入流路60から第2流路部62を介してポンプ室50内に吸入される流体Oの量が低下することをより抑制できる。
【0050】
また、本実施形態によれば、第2拡大部61bは、第1拡大部61aのうち第2流路部62に近い側の端部に繋がっている。第2拡大部61bの流路断面積が第2流路部62に近づくに従って大きくなる度合いは、第1拡大部61aの流路断面積が第2流路部62に近づくに従って大きくなる度合いよりも大きい。そのため、第2拡大部61b内において、第1拡大部61a内よりも好適に流体Oを流すことができる。これにより、第1流路部61内において、第2流路部62に近づくに従って、より流体Oを好適に流しやすくできる。したがって、第1流路部61内から第2流路部62内へと流体Oをより流しやすくできる。そのため、吸入流路60から第2流路部62を介してポンプ室50内に吸入される流体Oの量が低下することをより抑制できる。
【0051】
また、本実施形態によれば、ポンプ室50の内面のうち下側に位置する面には、ポンプ機構40と軸方向に対向する第1対向凹部51が設けられている。ポンプ室50の内面のうち上側に位置する面には、ポンプ機構40と軸方向に対向する第2対向凹部52が設けられている。第2流路部62は、第1対向凹部51の内部および第2対向凹部52の内部に繋がっている。そのため、第2流路部62から第1対向凹部51の内部および第2対向凹部52の内部に流体Oを流すことができる。これにより、第1対向凹部51の内部および第2対向凹部52の内部を介して、軸方向両側からポンプ機構40に流体Oを供給できる。したがって、ポンプ室50内のポンプ機構40に流体Oを供給しやすくできる。そのため、ポンプ機構40によって送られる流体Oの量を増加させやすい。これにより、ポンプ10のポンプ効率が低下することをより抑制できる。
【0052】
具体的に本実施形態では、
図1に矢印で示すように、第2流路部62から第1対向凹部51に流入した流体Oは、インナーロータ41とアウターロータ42との隙間Gに下側から流入する。第2流路部62から第2対向凹部52に流入した流体Oは、インナーロータ41とアウターロータ42との隙間Gに上側から流入する。これらにより、インナーロータ41とアウターロータ42との隙間Gに流体Oを流入させやすくできる。したがって、ポンプ機構40によって送られる流体Oの量を増加させることができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、第2流路部62の周方向両側の縁部62a,62bのうち一方の縁部62aは、軸方向に見て、ポンプ室50の内縁のうち一方の縁部62aが繋がる部分における接線TLaに沿って延びている。そのため、第2流路部62のうちポンプ室50に繋がる部分を、好適に周方向に広げやすい。これにより、第2流路部62内からポンプ室50内へと、より好適に流体Oを流入させやすくできる。したがって、第2流路部62からポンプ室50内に吸入される流体Oの量が低下することをより抑制できる。
【0054】
また、本実施形態によれば、ハウジング20は、第1ハウジング部材21と、第1ハウジング部材21の下側に固定された第2ハウジング部材22と、を有する。第1流路部61は、第1ハウジング部材21に設けられている。第2流路部62は、第1ハウジング部材21と第2ハウジング部材22とに跨って設けられている。そのため、第1ハウジング部材21の下側の面に、第2流路部62のうち第1流路部61と軸方向に繋がる部分を開口させることができる。これにより、第1ハウジング部材21をダイカストなどの金型鋳造で作る際に、軸方向に組み合わされた一対の金型のうち下側に位置する金型の一部によって第1流路部61と第2流路部62の一部とを作ることができる。この場合、第1ハウジング部材21が成形された後に、第1流路部61と第2流路部62の一部とを成形する金型の一部は、各流路部内から下側に引き抜かれる。ここで、本実施形態のように第1流路部61に第1拡大部61aおよび第2拡大部61bなどの下側に向かうに従って流路断面積が大きくなる部分が設けられていると、当該金型の一部を下側に引き抜きやすくできる。つまり、第1拡大部61aおよび第2拡大部61bが設けられることで第1流路部61に抜きテーパが設けられ、第1流路部61を成形する金型の一部を成形された第1流路部61内から引き抜きやすくできる。したがって、第1ハウジング部材21をダイカストなどの金型鋳造によって作りやすくできる。
【0055】
また、本実施形態によれば、第2流路部62は、第1流路部61に対して直角に屈曲している。このような場合、第1流路部61内から第2流路部62内に流れる流体Oには、より圧力損失が生じやすい。これに対して、本実施形態によれば、上述したように、流体Oに圧力損失が生じても、吸入流路60からポンプ室50内に吸入される流体Oの量が低下することを抑制できる。このように、吸入流路60からポンプ室50内に吸入される流体Oの量が低下することを抑制できる効果は、第2流路部62が第1流路部61に対して直角に屈曲している構成において、より有用に得られる。
【0056】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成および他の方法を採用することもできる。第1流路部は、第1拡大部を有していなくてもよいし、第2拡大部を有していなくてもよい。例えば、上述した実施形態において第1拡大部61aが設けられずに第2拡大部61bのみが設けられる場合には、例えば、第2拡大部61bが第1拡大部に相当する。
【0057】
第2流路部は、第1流路部に対して屈曲して延びてポンプ室に繋がるならば、どのような方向に延びていてもよい。第2流路部は、径方向に対して傾いた方向に延びていてもよい。第1流路部に対して第2流路部が屈曲する角度は、90°より大きくてもよいし、90°より小さくてもよい。第2拡大部の流路断面積が第2流路部に近づくに従って大きくなる度合いは、第1拡大部の流路断面積が第2流路部に近づくに従って大きくなる度合いより小さくてもよい。
【0058】
第2流路部の周方向両側の縁部のうち両方の縁部が、軸方向に見て、ポンプ室の内縁のうち各縁部が繋がる部分における接線に沿って延びていてもよい。つまり、例えば、上述した実施形態において、縁部62aと同様に、縁部62bも、軸方向に見て、ポンプ室50の内縁のうち縁部62bが繋がる部分における接線に沿って延びていてもよい。第2流路部の周方向両側の縁部のうち両方の縁部が、軸方向に見て、ポンプ室の内縁のうち各縁部が繋がる部分における接線に沿って延びていなくてもよい。
【0059】
吸入流路は、ハウジングにどのように設けられてもよい。ポンプ室は、ハウジングにどのように設けられてもよい。ハウジングを構成するハウジング部材の数は、特に限定されない。ポンプ機構の種類は、特に限定されない。ポンプ機構は、上述したトロコイドポンプ機構以外のポンプ機構であってもよい。
【0060】
第1対向凹部と第2対向凹部とのうちの少なくとも一方は、設けられなくてもよい。つまり、例えば、上述した実施形態において、第1対向凹部51と第2対向凹部52とのいずれか一方が設けられなくてもよいし、第1対向凹部51と第2対向凹部52との両方が設けられなくてもよい。第3対向凹部と第4対向凹部とのうちの少なくとも一方は、設けられなくてもよい。つまり、例えば、上述した実施形態において、第3対向凹部53と第4対向凹部54とのいずれか一方が設けられなくてもよいし、第3対向凹部53と第4対向凹部54との両方が設けられなくてもよい。
【0061】
本発明が適用されるポンプの用途は、特に限定されない。ポンプは、車両以外の機器に搭載されてもよい。ポンプによって送られる流体は、特に限定されず、例えば、水などであってもよい。以上に本明細書において説明した各構成および各方法は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0062】
10…ポンプ、20…ハウジング、21…第1ハウジング部材、22…第2ハウジング部材、30…モータ、33…シャフト、40…ポンプ機構、50…ポンプ室、51…第1対向凹部、52…第2対向凹部、60…吸入流路、61…第1流路部、61a…第1拡大部、61b…第2拡大部、62…第2流路部、62a,62b…縁部、J1…中心軸、TLa…接線