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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】水素充填システム
(51)【国際特許分類】
   F17C 5/06 20060101AFI20241022BHJP
   F17C 13/02 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
F17C5/06
F17C13/02 301A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021002241
(22)【出願日】2021-01-08
(65)【公開番号】P2022107351
(43)【公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 大五郎
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102014215719(DE,A1)
【文献】特開2012-077858(JP,A)
【文献】特開2021-196051(JP,A)
【文献】特開2003-301999(JP,A)
【文献】特開2017-206038(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0139808(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0037299(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2022-0121960(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を充填可能であり互いに連通している第1タンクと第2タンクと、
前記第1タンクと前記第2タンクに水素を供給する第1水素供給器と第2水素供給器と、
前記第1水素供給器と前記第2水素供給器を制御するコントローラと、
を備えており、
前記第1水素供給器から前記第1タンクまでの水素供給路の長さが、前記第1水素供給器から前記第2タンクまでの水素供給路の長さよりも短く、
前記第2水素供給器から前記第2タンクまでの水素供給路の長さが、前記第2水素供給器から前記第1タンクまでの水素供給路の長さよりも短く、
前記コントローラは、
前記第1タンクの第1内部温度と前記第1水素供給器から供給される水素の第1圧力に基づいて前記第1タンクと前記第2タンクの合計の第1水素充填率を算出し、
前記第2タンクの第2内部温度と前記第2水素供給器から供給される水素の第2圧力に基づいて前記第1タンクと前記第2タンクの合計の第2水素充填率を算出し、
前記第1水素充填率と前記第2水素充填率の高い方の充填率が所定の閾値充填率に達したら前記第1水素供給器と前記第2水素供給器を停止する、水素充填システム。
【請求項2】
前記第1タンクは複数のサブタンクで構成されており、前記第1内部温度は複数の前記サブタンクの内部温度の中で最も高い内部温度である、請求項1に記載の水素充填システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、水素充填システムに関する。特に、水素タンクと、水素タンクに水素を供給する水素供給器を備える水素充填システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、水素充填システムの一例が開示されている。水素タンクは燃料電池車に搭載されている。水素供給器から水素タンクへ水素が供給される。水素タンク内の水素の量(水素充填率)は、水素タンク内の温度と圧力から推定される。以下では、説明を簡単にするため、水素タンクを単純にタンクと称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-286015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
互いに接続されている複数のタンクに水素を充填すると充填時間が長くなる。複数の水素供給器を同時にタンクにつないで水素を供給することで、充填時間を短くすることができる。先に述べたように、水素の充填率は、タンクの内部温度と圧力で求まる。しかしながら、総容量が大きいタンクに複数の水素供給器から水素を供給していると、タンク内の圧力が局所的にばらつき、正確な水素充填率を求めることが難しくなり、ひいては適切な水素充填率まで水素を充填することが困難になる。本明細書は、複数の水素供給器から同時にタンクへ水素を供給する水素充填システムにおいて、適切な水素充填率までタンクに水素を充填することのできる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する水素充填システムは、水素を充填可能であり互いに連通している第1タンクおよび第2タンクと、第1タンクと第2タンクに水素を供給する第1水素供給器および第2水素供給器と、第1水素供給器と第2水素供給器を制御するコントローラを備える。コントローラは、第1タンクの内部温度(第1内部温度)、第2タンクの内部温度(第2内部温度)、第1水素供給器から供給される水素の圧力(第1圧力)、および、第2水素供給器から供給される水素の圧力(第2圧力)に基づいて、第1および第2タンクの水素充填率を推定する。コントローラは、水素充填率が所定の閾値充填率に達したら第1水素供給器と第2水素供給器を停止する。本明細書が開示する技術は、第1内部温度、第2内部温度、第1圧力、第2圧力を用いて水素充填率を適切に求めることができる。それゆえ、適切な水素充填率まで水素タンクに水素を充填することができる。
【0006】
コントローラが実行する水素充填処理の一例は次の通りである。コントローラは、第1圧力と第1内部温度に基づいて第1タンクと第2タンクの合計の水素充填率である第1水素充填率を算出する。コントローラは、第2圧力と第2内部温度に基づいて第1タンクと第2タンクの合計の水素充填率である第2水素充填率を算出する。コントローラは、第1水素充填率と第2水素充填率の高い方の充填率が閾値充填率に達したら第1水素供給器と第2水素供給器を停止する。コントローラは、2通りの水素充填率を算出し、高い方の水素充填率に基づいて第1/第2水素供給器を制御する。タンクに水素が過充填されることが防止される。
【0007】
なお、温度と圧力から求める水素充填率は、タンクの容量に依存せず、また、第1タンクと第2タンクはつながっているので、「第1タンクと第2タンクの水素充填率」は、「第1タンクの水素充填率」あるいは「第2タンクの水素充填率」と換言してもよい。
【0008】
第1/第2タンクと第1/第2水素供給装置は、次の関係を有することが望ましい。第1水素供給器から第1タンクまでの水素供給路の長さが第1水素供給器から第2タンクまでの水素供給路の長さよりも短く、第2水素供給器から第2タンクまでの水素供給路の長さが第2水素供給器から第1タンクまでの水素供給路の長さよりも短い。そのような関係が成立すると、第1タンクは主に第1水素供給器から水素が供給され、第2タンクは主に第2タンクから水素が供給される。
【0009】
つながっている第1タンクと第2タンクの水素充填率は本来は同じになるべきであるが、第1タンクと第2タンクの間には流路抵抗があり、第1タンクの水素充填率と第2タンクの水素充填率が相違する場合がある。上記の関係を有する場合、第1温度と第1圧力は第1タンク内の水素充填率を適切に表すことができ、第2温度と第2圧力は第2タンク内の水素充填率を適切に表すことになる。第1タンクと第2タンクの水素充填率を適切に表すことができるようになる。大きい値の水素充填率に応じて第1/第2水素供給器を制御することで、過充填を防止することができる。
【0010】
コントローラは、第1内部温度と第2内部温度の平均値と、第1圧力と第2圧力の高い方の圧力に基づいて水素充填率を算出するようにしてもよい。水素タンク内の温度がばらついても、平均的な水素充填率を得ることができる。
【0011】
第1タンクは複数のサブタンクで構成されており、第1内部温度は複数のサブタンクの内部温度の中で最も高い温度であってもよい。同様に、第2タンクが複数のサブタンクで構成されており、第2内部温度は複数のサブタンクの内部温度の中で最も高い温度であってよい。複数のサブタンクへより安全に水素を充填することができる。なお、「サブタンク」との呼称は、先の「第1タンク」や「第2タンク」と区別するための便宜上の呼称であり、タンクの容量や性能を制限するものではない。
【0012】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施例の水素充填システムのブロック図である。
図2】第2実施例の水素充填システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施例)図面を参照して第1実施例の水素充填システム2を説明する。図1に、第1実施例の水素充填システム2のブロック図を示す。水素充填システム2は、第1水素供給器10、第2水素供給器20、第1タンク31と第2タンク32を備える燃料電池車30で構成される。図1は、第1水素供給器10と第2水素供給器20と燃料電池車30の配置を示す平面図である。図1において、破線矢印線は信号線を表している。
【0015】
燃料電池車30は、燃料電池40、インバータ41、モータ42を備える。水素を蓄える第1タンク31と第2タンク32、および、燃料電池40は、燃料管37で連結されており、燃料管37を通じて第1タンク31と第2タンク32の水素が燃料電池40へ供給される。燃料管37は、第1充填口35と第2充填口36にもつながっている。
【0016】
燃料電池40が発電した直流電力はインバータ41により交流電力に変換される。インバータ41が出力する交流電力は走行用のモータ42に供給される。モータ42の出力トルクはデファレンシャルギア43を介して駆動輪である後輪44に伝達される。
【0017】
第1タンク31には第1タンク31の内部温度(第1内部温度)を計測する温度センサ33が備えられており、第2タンク32には第2タンク32の内部温度(第2内部温度)を計測する温度センサ34が備えられている。温度センサ33、34の計測データは、燃料電池車30のコントローラ(車両コントローラ38)へ送られる。
【0018】
図1は、燃料電池車30が水素ステーションに停車しており、水素の供給を受けている様子を示している。水素ステーションには2個の水素供給器(第1水素供給器10と第2水素供給器20)が備えられている。燃料電池車30の総タンク容量(第1タンク31と第2タンク32の容量の合計)は大きい。燃料電池車30は、第1水素供給器10と第2水素供給器20から同時に水素の供給を受けることができるように、2個の充填口35、36を備えている。燃料電池車30は、2個の水素供給器10、20から同時に水素の供給を受けることができるので、第1タンク31と第2タンク32への水素充填時間が短くなる。
【0019】
第1水素供給器10のノズル(第1ノズル11)は第1充填口35に接続され、第2水素供給器20のノズル(第2ノズル21)は第2充填口36に接続される。第1水素供給器10の水素は、第1ノズル11、第1充填口35、燃料管37を通じて第1タンク31と第2タンク32へ供給される。第2水素供給器20の水素は、第2ノズル21、第2充填口36、燃料管37を通じて第1タンク31と第2タンク32へ供給される。
【0020】
第1水素供給器10には、第1水素供給器10が供給する水素の供給圧(第1圧力)を計測する圧力センサ12が備えられており、第2水素供給器20には第2水素供給器20が供給する水素の供給圧(第2圧力)を計測する圧力センサ22が備えられている。第1水素供給器10と第2水素供給器20はステーションコントローラ5が制御する。圧力センサ12、22の計測データはステーションコントローラ5に送られる。
【0021】
燃料電池車30の第1タンク31と第2タンク32に水素を供給する間、ステーションコントローラ5と車両コントローラ38は通信可能である。ステーションコントローラ5は、第1充填口35に第1ノズル11が接続され、第2充填口36に第2ノズル21が接続されたことを検知すると、車両コントローラ38へ水素供給開始を通知するとともに、第1水素供給器10と第2水素供給器20からの水素の供給を開始する。
【0022】
一般に、タンク内の水素充填率は、タンクの内圧と内部温度の関数で表されることはよく知られている。なお、水素充填率とは、満充填のときの水素の量に対する充填された水素の割合を意味する。タンクの内圧と内部温度から得られる水素充填率は、タンクの容量には依存しない。タンクの内圧と内部温度から水素充填率を求める数式については、文献(SAE-J2601, Fueling Protocols for Light Duty Gaseous Hydrogen, https://www.sae.org/standards/content/j2601_201407/)で規定されている。
【0023】
燃料電池車30は、2個の水素タンクを備えており、2カ所(第1充填口35と第2充填口36)を通じて水素の供給を受ける。また、第1タンク31と第2タンク32をつなぐ燃料管37には流路抵抗も存在する。それゆえ、タンク内部の温度と圧力はタンク内の位置に応じてばらつくときがある。水素充填システム2は、複数個所のタンク内温度と複数個所の水素圧力に基づいて、水素充填率を正確に求め、適切な水素充填率までタンクに水素を充填することができる。
【0024】
ステーションコントローラ5が第1水素供給器10と第2水素供給器20を制御する。ステーションコントローラ5が実行する水素供給処理を説明する。
【0025】
ステーションコントローラ5は、車両コントローラ38から第1内部温度と第2内部温度のデータを受け取る。ステーションコントローラ5は、第1内部温度、第2内部温度、第1圧力、第2圧力に基づいて、第1タンク31と第2タンク32の合計の水素充填率(第1タンク31の容量と第2タンク32の容量を合わせた総容量に対する水素充填率)を正確に求める。
【0026】
図1に示されているように、第1タンク31と第1充填口35は車両の左側に配置されており、第1水素供給器10は車両の左側に位置する。第2タンク32と第2充填口36は車両の右側に配置されており、第2水素供給器20は車両の右側に位置する。第1タンク31、第2タンク32、第1充填口35、第2充填口36は、燃料管37でつながっている。第1水素供給器10から第1タンク31までの水素供給経路は、第1水素供給器10から第2タンク32までの水素供給経路よりも短い。水素供給経路が短くなることにより、圧力センサとタンクの間の圧力損失が小さくなり、算出された充填率における誤差が小さくなり、供給器が1個のみの場合に比べて充填速度(時間当たりの充填率向上速度)を高めることが出来る。また、第2水素供給器20から第2タンク32までの水素供給経路は、第2水素供給器20から第1タンク31までの水素供給経路よりも短い。先に述べたように、第1タンク31と第2タンク32は、細い燃料管37でつながっている。従って、第1タンク31は主に第1水素供給器10から水素の供給を受け、第2タンク32は主に第2水素供給器20から水素の供給を受ける。
【0027】
上記の関係より、第1水素供給器10の水素供給圧(第1圧力)は第1タンク31の内部圧力に近く、第2水素供給器20の水素供給圧(第2圧力)は、第2タンク32の内部圧力に近い。ステーションコントローラ5は、第1圧力と第1内部温度に基づいて第1水素充填率を算出し、第2圧力と第2内部温度に基づいて第2水素充填率を算出する。第1タンク31と第2タンク32は燃料管37でつながっているため、本来は第1タンク31の水素充填率(第1水素充填率)と第2タンク32の水素充填率(第2水素充填率)は等しくなるはずである。しかしながら、内部温度や圧力が局所的にばらつくとき、第1水素充填率と第2水素充填率は相違する場合がある。ステーションコントローラ5は、第1水素充填率と第2水素充填率のうち、高い方の水素充填率が所定の閾値充填率に達したら、第1水素供給器10と第2水素供給器20を停止する。第1水素充填率と第2水素充填率のうち、高い方の水素充填率を用いて水素供給の停止を決めるため、水素タンクへの過充填が避けられ、水素が充填される第1タンク31と第2タンク32の安全性が高くなる。閾値充填率は、例えば90%に設定されている。
【0028】
あるいは、ステーションコントローラ5は、第1内部温度と第2内部温度の平均値と、第1圧力と第2圧力の高い方の圧力に基づいて第1タンク31と第2タンク32の合計の水素充填率を求めてもよい。ステーションコントローラ5は、求められた水素充填率が閾値充填率に達したら、第1水素供給器10と第2水素供給器20を停止する。第1圧力と第2圧力の高い方の圧力に基づいて水素充填率を求めるので、この場合も、過充填が避けられ、第1タンク31と第2タンク32の安全性が高くなる。
【0029】
第1実施例の水素充填システム2は、適切な水素充填率まで、連通している全ての水素タンク(第1タンク31と第2タンク32)に水素を充填することができる。
【0030】
(第2実施例)図2に、第2実施例の水素充填システム2aのブロック図を示す。水素充填システム2aは、燃料電池車30a、第1水素供給器10、第2水素供給器20を備える。
【0031】
燃料電池車30aは、4個のタンク(第1aサブタンク31a、第1bサブタンク31b、第2aサブタンク32a、第2bサブタンク32b)を備えている。4個のサブタンク31a、31b、32a、32bは、燃料管37でつながっている。第1aサブタンク31aと第1bサブタンク31bは、第2aサブタンク32aと第2bサブタンク32bよりも第1充填口35に近く、第2aサブタンク32aと第2bサブタンク32bは、第1aサブタンク31aと第1bサブタンク31bよりも第2充填口36に近い。なお、「サブタンク」との呼称は、先の「第1タンク31」や「第2タンク32」と区別するための便宜上の呼称であり、容量や性能を制限するものではない。
【0032】
第1充填口35には第1水素供給器10が接続され、第2充填口36には第2水素供給器20が接続される。第1水素供給器10から第1aサブタンク31aと第1bサブタンク31bまでの水素供給経路の長さは、第1水素供給器10から第2aサブタンク32aと第2bサブタンク32bまでの水素供給経路よりも短い。第2水素供給器20から第2aサブタンク32aと第2bサブタンク32bまでの水素供給経路の長さは、第2水素供給器20から第1aサブタンク31aと第1bサブタンク31bまでの水素供給経路よりも短い。それゆえ、第1aサブタンク31aと第1bサブタンク31bは主に第1水素供給器10から水素が供給され、第2aサブタンク32aと第2bサブタンク32bは主に第2水素供給器20から水素が供給される。
【0033】
第1aサブタンク31aと第1bサブタンク31bは、第1タンク31としてグルーピングされ、第2aサブタンク32aと第2bサブタンク32bは第2タンク32としてグルーピングされる。別言すれば、第1aサブタンク31aと第1bサブタンク31bは、あたかも1個の第1タンク31として扱うことができ、第2aサブタンク32aと第2bサブタンク32bは、あたかも1個の第2タンク32として扱うことができる。
【0034】
第1aサブタンク31aには、その内部温度を計測する温度センサ33aが備えられており、第1bサブタンク31bには、その内部温度を計測する温度センサ33bが備えられえている。第2aサブタンク32aには、その内部温度を計測する温度センサ34aが備えられており、第2bサブタンク32bには、その内部温度を計測する温度センサ34bが備えられえている。
【0035】
温度センサ33a、33b、34a、34bの計測データは車両コントローラ38を介してステーションコントローラ5に送られる。ステーションコントローラ5は、第1タンク31としてグルーピングされる第1aサブタンク31aと第1bサブタンク31bの内部温度のうち、高い方の内部温度と第1圧力(第1水素供給器10の水素供給圧)に基づいて第1水素充填率(第1タンク31の水素充填率)を計算する。ステーションコントローラ5は、第2タンク32としてグルーピングされる第2aサブタンク32aと第2bサブタンク32bの内部温度のうち、高い方の内部温度と第2圧力(第2水素供給器20の水素供給圧)に基づいて第2水素充填率(第2タンク32の水素充填率)を計算する。ステーションコントローラ5は、第1水素充填率と第2水素充填率のうち、高い方の水素充填率が閾値充填率に達したら、第1水素供給器10と第2水素供給器20を停止する。第2実施例の水素充填システム2aも、適切な水素充填率まで、連通している全てのタンク31a、31b、32a、32bに水素を充填することができる。
【0036】
あるいは、ステーションコントローラ5は、全ての温度センサの計測値の平均値と、第1圧力と第2圧力の高い方の圧力を用いて、水素充填率を求めてもよい。
【0037】
(変形例)水素充填システム2、2aは、複数のタンクを備えている。1個の大型のタンクに水素を充填する場合も、複数の水素供給器で同時に水素を充填することで充填時間を短縮することができる。大型の1個のタンクの場合も場所によって圧力や温度が相違する場合がある。
【0038】
変形例の水素充填システムは、水素が充填可能なタンクと、タンクに水素を供給する第1水素供給器と第2水素供給器と、第1水素供給器と第2水素供給器を制御するコントローラを備える。コントローラは、タンクの内部温度と第1水素供給器から供給される水素の第1圧力に基づいてタンクの第1水素充填率を算出する。また、コントローラは、タンクの内部温度と第2水素供給器から供給される水素の第2圧力に基づいてタンクの第2水素充填率を算出する。コントローラは、第1水素充填率と第2水素充填率の高い方の充填率が所定の閾値充填率に達したら第1水素供給器と第2水素供給器を停止する。そのような水素充填システムも、大型のタンクに対して適切な水素充填率まで水素を充填することができる。
【0039】
実施例と変形例で説明した水素充填システムに関する留意点を述べる。実施例の水素充填システムは、水素供給器が供給する水素の圧力(水素供給圧)をタンクの内圧の近似値として用いる。実施例の水素充填システムは、2個の水素供給器を同時に用いる場合、それぞれの水素供給器の水素供給圧を用いてタンクの水素充填率を適切に求めることができる。
【0040】
実施例で説明した技術は、3個以上の水素供給器で同時にタンクに水素を充填する場合にも適用できる。その場合、3個以上のそれぞれの水素供給器の水素供給圧に基づいてタンクの水素充填率を求める。求められた複数の水素充填率のうち、最も高い水素充填率が閾値充填率に達したら全ての水素供給器を停止する。そうすることで、適切な水素充填率までタンクに水素を充填することができる。
【0041】
連通している複数のタンクに同時に水素を充填する場合、それぞれのタンクに温度センサが備えられているとよい。温度センサは、タンクの入り口付近に設置されているとよい。複数のタンクのうち、第1水素供給器までの水素供給経路が短いタンク群が第1タンク群を構成し、第2水素供給器までの水素供給経路が短いタンク群が第2タンク群を形成する。一つの例として、車両の右側と左側に充填口を有する車両があり、車両の左側に配置されたタンク群が第1タンク群を構成し、車両の右側に配置されたタンク群が第2タンク群を構成する。第1タンク群と第2タンク群は互いに連通しているが、第1タンク群は主に左側の充填口に接続された第1水素供給器から水素が供給され、第2タンク群は主に右側の充填口に接続された第2水素供給器から水素が供給される。
【0042】
ステーションコントローラは、第1タンク群の温度センサの計測値のなかで最も高い温度と第1水素供給器の水素供給圧で第1水素充填率を求める。ステーションコントローラは、第2タンク群の温度センサの計測値のなかで最も高い温度と第2水素供給器の水素供給圧で第2水素充填率を求める。ステーションコントローラは、第1水素充填率と第2水素充填率のうちで高い方の水素充填率が閾値充填率に達したら全ての水素供給器を停止する。
【0043】
本明細書が開示する技術は、燃料電池車に搭載されている水素タンク以外のタンクに水素を供給するものであってもよい。
【0044】
水素の充填方法は、SAE(Society of Automotive Engineers)が策定した規定に基づくことが望ましいが、本明細書が開示する技術は、SAEの規定に制限されるものではない。
【0045】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0046】
2、2a:水素充填システム
5:ステーションコントローラ
10:第1水素供給器
11:第1ノズル
12、22:圧力センサ
20:第2水素供給器
21:第2ノズル
30、30a:燃料電池車
31:第1タンク
31a、31b、32a、32b:サブタンク
32:第2タンク
33、33a、33b、34、34a、34b:温度センサ
35:第1充填口
36:第2充填口
37:燃料管
38:車両コントローラ
40:燃料電池
41:インバータ
42:モータ
43:デファレンシャルギア
44:後輪
図1
図2