(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】間隙調整具、配線ボックス及び配線ボックスの設置方法
(51)【国際特許分類】
H02G 3/12 20060101AFI20241022BHJP
H02G 3/02 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H02G3/12
H02G3/02
(21)【出願番号】P 2021004725
(22)【出願日】2021-01-15
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】奥村 美紀
(72)【発明者】
【氏名】永松 英夫
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-030622(JP,U)
【文献】実開昭53-041694(JP,U)
【文献】実開昭53-039297(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/12
H02G 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1壁部材と第2壁部材との間の壁裏空間に設置され、前記第1壁部材に向かって開口する開口部と前記第2壁部材の最も近くに配置される最近接部とを有する配線ボックスに取付けられ、前記最近接部と前記第2壁部材との間隙を調整するための間隙調整具であって、
基準部位を有し、当該基準部位が前記最近接部の外面と同一平面上に位置するように、前記配線ボックスに取付けられる取付部と、
前記取付部の前記基準部位から突出する突出部と、を備え、
前記突出部は、少なくとも、前記第1壁部材及び前記第2壁部材に垂直な軸を中心に全周に亘って前記最近接部を取り囲むことが可能な形状を有しており、
前記突出部は、前記基準部位からの突出長さが、下記式(1)を満たすように設定されている、間隙調整具。
(WD-BT1)≧L>{WD-(BT1+BT2)} ・・・(1)
[式(1)中、「L」は突出部の基準部位からの突出長さを示し、「WD」は第1壁部材と第2壁部材との離間距離を示し、「BT1」は開口部が第1壁部材側に向くように設置される第1の配線ボックスにおける開口部の開口端縁から最近接部の外面までの距離で表される第1の配線ボックスの厚みを示し、「BT2」は開口部が第2壁部材側に向くように設置される第2の配線ボックスにおける開口部の開口端縁から最近接部の外面までの距離で表される第2の配線ボックスの厚みを示す。]
【請求項2】
前記突出部は、前記軸を中心に全周に亘って前記最近接部を取り囲むとともに、前記最近接部の外面の全体を前記第2壁部材側から覆うことが可能な形状を有している、請求項1に記載の間隙調整具。
【請求項3】
前記突出部は、前記式(1)を満たす範囲内で、前記基準部位からの突出長さを調整可能となるように構成されている、請求項1
又は2に記載の間隙調整具。
【請求項4】
前記突出部は、前記式(1)を満たす状態と、下記式(2)を満たす状態との間で、前記基準部位からの突出長さを調整可能となるように構成されている、請求項1
~3のいずれか1項に記載の間隙調整具。
L≦{WD-(BT1+BT2)} ・・・(2)
【請求項5】
前記突出部は、前記基準部位から延びる第1突出部位と、前記第1突出部位からの突出長さを調整可能となるように前記第1突出部位に取付けられる第2突出部位と、を有している、請求項
3又は4に記載の間隙調整具。
【請求項6】
前記突出部は、前記基準部位からの突出長さを調整可能となるように、折り曲げが可能に構成されている、請求項
3又は4に記載の間隙調整具。
【請求項7】
互いに対向する第1壁部材と第2壁部材との間の壁裏空間に設置される配線ボックスであって、
前記壁裏空間に設置された状態において、前記第1壁部材に向かって開口する開口部と
、前記第2壁部材の最も近くに配置され
、矩形板状に形成される最近接部と
、を有するボックス本体と、
前記ボックス本体における前記最近接部の外面
の4つの角部から
それぞれ突出する突出体と、を備え、
前記突出体は、前記最近接部の外面からの突出長さが、下記式(3)を満たすように設定されている、配線ボックス。
(WD-BBT1)≧LL>{WD-(BBT1+BBT2)} ・・・(3)
[式(3)中、「LL」はボックス本体における最近接部の外面からの突出体の突出長さを示し、「WD」は第1壁部材と第2壁部材との離間距離を示し、「BBT1」はボックス本体における開口部の開口端縁から最近接部の外面までの距離で表されるボックス本体の厚みを示し、「BBT2」は第2壁部材側に設置されるボックス本体のみから成る通常の配線ボックスにおける開口部の開口端縁から最近接部の外面までの距離で表される通常の配線ボックスの厚みを示す。]
【請求項8】
互いに対向する第1壁部材と第2壁部材との間の壁裏空間に、開口部と最近接部とを有する配線ボックスを設置する設置方法であって、
前記壁裏空間において、前記第1壁部材側に前記開口部が向くように第1の配線ボックスを設置する第1設置工程と、
前記第1設置工程の前又は後に、請求項1~
6のいずれか1項に記載の間隙調整具を、前記取付部を介して前記第1の配線ボックスに取付ける調整具取付工程と、
前記壁裏空間において、前記第2壁部材側に前記開口部が向くように第2の配線ボックスを設置する第2設置工程と、を含み、
前記第2設置工程では、前記第1の配線ボックスに取付けられた前記間隙調整具の前記突出部との干渉を回避するように、前記第2の配線ボックスを設置する、配線ボックスの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに対向する第1壁部材と第2壁部材との間の壁裏空間に設置される配線ボックスと壁部材との間隙を調整するための間隙調整具、配線ボックス、及び配線ボックスの設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物において互いに対向する第1壁部材と第2壁部材との各々に配線器具を設置するために、第1壁部材と第2壁部材との間の壁裏空間に配線ボックスが設置される。この種の配線ボックスが例えば特許文献1に開示されている。配線ボックスは、一面に開口部を有する有底箱状に形成されている。配線ボックスは、その開口部が壁部材に形成された貫通開口を介して壁部材の表側の室内空間に臨むように、壁裏空間に設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1壁部材と第2壁部材との各々に配線器具を設置する場合には、壁裏空間において、第1壁部材側に開口部が向くように第1の配線ボックスを設置するとともに、第2壁部材側に開口部が向くように第2の配線ボックスを設置することになる。この場合、第1壁部材には第1の配線ボックス用の貫通開口が形成され、第2壁部材には第2の配線ボックス用の貫通開口が形成される。
【0005】
第1壁部材及び第2壁部材に形成される貫通開口は、第1壁部材の表側の第1室内空間と第2壁部材の表側の第2室内空間との間における、音や火災時の火炎等の通過口となり得る。すなわち、壁裏空間における配線ボックスの設置位置によっては、音や火災時の火炎等が、第1室内空間と第2室内空間との間を貫通開口及び配線ボックスを介して通過する虞がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、第1壁部材と第2壁部材との間の壁裏空間での配線ボックスの設置箇所における遮音性及び耐火性の低下を抑制することが可能な間隙調整具、配線ボックス、及び配線ボックスの設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、第1壁部材及び第2壁部材の各々に形成される貫通開口同士が壁部材に垂直な方向から見て重なることを回避する、すなわち、第1壁部材及び第2壁部材の各々に対応した各配線ボックスが背中合わせに設置されるのを回避することにより、遮音性及び耐火性の低下の抑制が可能であることを見出して、本発明の完成に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
【0008】
本発明の一の局面に係る間隙調整具は、互いに対向する第1壁部材と第2壁部材との間の壁裏空間に設置され、前記第1壁部材に向かって開口する開口部と前記第2壁部材の最も近くに配置される最近接部とを有する配線ボックスに取付けられ、前記最近接部と前記第2壁部材との間隙を調整するためのものである。この間隙調整具は、基準部位を有し、当該基準部位が前記最近接部の外面と同一平面上に位置するように、前記配線ボックスに取付けられる取付部と、前記取付部の前記基準部位から突出する突出部と、を備える。前記突出部は、少なくとも、前記第1壁部材及び前記第2壁部材に垂直な軸を中心に全周に亘って前記最近接部を取り囲むことが可能な形状を有している。そして、前記突出部は、前記基準部位からの突出長さが、下記式(1)を満たすように設定されている。
(WD-BT1)≧L>{WD-(BT1+BT2)} ・・・(1)
【0009】
式(1)中、「L」は突出部の基準部位からの突出長さを示し、「WD」は第1壁部材と第2壁部材との離間距離を示し、「BT1」は開口部が第1壁部材側に向くように設置される第1の配線ボックスにおける開口部の開口端縁から最近接部の外面までの距離で表される第1の配線ボックスの厚みを示し、「BT2」は開口部が第2壁部材側に向くように設置される第2の配線ボックスにおける開口部の開口端縁から最近接部の外面までの距離で表される第2の配線ボックスの厚みを示す。
また、上記の間隙調整具において、前記突出部は、前記軸を中心に全周に亘って前記最近接部を取り囲むとともに、前記最近接部の外面の全体を前記第2壁部材側から覆うことが可能な形状を有している。
【0010】
この間隙調整具によれば、第1壁部材と第2壁部材との間の壁裏空間において第1壁部材側に開口部が向くように設置される配線ボックスに取付けられる取付部と、取付部の基準部位から突出する突出部とを備えている。取付部は、基準部位が配線ボックスの最近接部の外面と同一平面上に位置するように配線ボックスに取付けられる。このため、間隙調整具が取付部によって配線ボックスに取付けられた状態において、突出部は、第1壁部材側に設置される配線ボックスにおける最近接部の外面よりも第2壁部材側に突出することになる。このような突出部は、配線ボックスの最近接部と第2壁部材との間隙を調整する機能を有している。そして、突出部の基準部位からの突出長さLは、上記式(1)を満たすように設定されている。
【0011】
突出部の突出長さLが、第1壁部材と第2壁部材との離間距離WDから第1の配線ボックスの厚みBT1を差し引いた値(WD-BT1)以下であることにより、壁裏空間に収まるように間隙調整具を配線ボックスに取付けることができる。一方、突出部の突出長さLが、第1壁部材と第2壁部材との離間距離WDから、第1の配線ボックスの厚みBT1と第2の配線ボックスの厚みBT2との加算値を差し引いた値{WD-(BT1+BT2)}よりも大きいことにより、第1壁部材側に設置された第1の配線ボックスに間隙調整具が取付けられた状態で、突出部と第2壁部材との間に第2の配線ボックスが設置できるスペースを無くすことができる。これにより、第1壁部材及び第2壁部材の各々に対応した各配線ボックスが背中合わせに設置されるのを回避することができる。このため、第1壁部材及び第2壁部材の各々に、壁部材に垂直な方向から見て重なるように貫通開口が形成されるのを回避することができる。したがって、音や火災時の火炎等が、貫通開口及び配線ボックスを介して壁裏空間を通過し難くなるため、壁裏空間での配線ボックスの設置箇所における遮音性及び耐火性の低下を抑制することが可能となる。
【0012】
上記の間隙調整具において、前記突出部は、前記式(1)を満たす範囲内で、前記基準部位からの突出長さを調整可能となるように構成されている。
【0013】
この態様では、第1壁部材と第2壁部材との離間距離WD、第1の配線ボックスの厚みBT1、及び第2の配線ボックスの厚みBT2に応じて、突出部の突出長さLを調整することができる。
【0014】
上記の間隙調整具において、前記突出部は、前記式(1)を満たす状態と、下記式(2)を満たす状態との間で、前記基準部位からの突出長さを調整可能となるように構成されている。
L≦{WD-(BT1+BT2)} ・・・(2)
【0015】
この態様では、式(1)を満たす状態において、第1壁部材と第2壁部材との離間距離WD、第1の配線ボックスの厚みBT1、及び第2の配線ボックスの厚みBT2に応じて、突出部の突出長さLを調整することができる。一方、式(2)を満たす状態においては、第1壁部材及び第2壁部材の各々に対応した配線ボックスの設置後に、壁裏空間における突出部と第2壁部材との間に例えば吸音材などの充填空間の確保が可能となるように、突出部の突出長さLを調整することができる。
【0016】
上記の間隙調整具において、前記突出部は、前記基準部位から延びる第1突出部位と、前記第1突出部位からの突出長さを調整可能となるように前記第1突出部位に取付けられる第2突出部位と、を有している。
【0017】
この態様では、突出部は、取付部の基準部位から延びる第1突出部位と、当該第1突出部位に取付けられる第2突出部位と、を有している。この際、第2突出部位は、第1突出部位からの突出長さが調整可能に第1突出部位に取付けられている。このため、第1突出部位からの第2突出部位の突出長さを調整することにより、突出部全体としての基準部位からの突出長さLを調整することができる。
【0018】
上記の間隙調整具において、前記突出部は、前記基準部位からの突出長さを調整可能となるように、折り曲げが可能に構成されている。
【0019】
この態様では、突出部を折り曲げることにより、突出部の突出長さLを調整することができる。
【0020】
本発明の他の局面に係る配線ボックスは、互いに対向する第1壁部材と第2壁部材との間の壁裏空間に設置されるものである。この配線ボックスは、前記壁裏空間に設置された状態において、前記第1壁部材に向かって開口する開口部と、前記第2壁部材の最も近くに配置され、矩形板状に形成される最近接部と、を有するボックス本体と、前記ボックス本体における前記最近接部の外面の4つの角部からそれぞれ突出する突出体と、を備える。そして、前記突出体は、前記最近接部の外面からの突出長さが、下記式(3)を満たすように設定されている。
(WD-BBT1)≧LL>{WD-(BBT1+BBT2)} ・・・(3)
【0021】
式(3)中、「LL」はボックス本体における最近接部の外面からの突出体の突出長さを示し、「WD」は第1壁部材と第2壁部材との離間距離を示し、「BBT1」はボックス本体における開口部の開口端縁から最近接部の外面までの距離で表されるボックス本体の厚みを示し、「BBT2」は第2壁部材側に設置されるボックス本体のみから成る通常の配線ボックスにおける開口部の開口端縁から最近接部の外面までの距離で表される通常の配線ボックスの厚みを示す。
【0022】
この配線ボックスによれば、開口部及び最近接部を有するボックス本体と、当該ボックス本体の最近接部の外面から突出する突出体とを備えている。第1壁部材と第2壁部材との間の壁裏空間において、ボックス本体の開口部が第1壁部材側に向くように配線ボックスが設置された状態では、突出体は、ボックス本体の最近接部と第2壁部材との間隙を調整する機能を有している。そして、ボックス本体における最近接部の外面からの突出体の突出長さLLは、上記式(3)を満たすように設定されている。
【0023】
突出体の突出長さLLが、第1壁部材と第2壁部材との離間距離WDからボックス本体の厚みBBT1を差し引いた値(WD-BBT1)以下であることにより、壁裏空間に収まるように突出体を備えた配線ボックスを設置することができる。一方、突出体の突出長さLLが、第1壁部材と第2壁部材との離間距離WDから、ボックス本体の厚みBBT1と通常の配線ボックスの厚みBBT2との加算値を差し引いた値{WD-(BBT1+BBT2)}よりも大きいことにより、第1壁部材側に突出体を備えた配線ボックスが設置された状態で、突出体と第2壁部材との間にボックス本体のみから成る通常の配線ボックスが設置できるスペースを無くすことができる。これにより、壁裏空間において突出体を備えた配線ボックスと背中合わせで通常の配線ボックスが設置されるのを回避することができる。このため、第1壁部材及び第2壁部材の各々に、壁部材に垂直な方向から見て重なるように貫通開口が形成されるのを回避することができる。したがって、音や火災時の火炎等が、貫通開口及び配線ボックスを介して壁裏空間を通過し難くなるため、壁裏空間での配線ボックスの設置箇所における遮音性及び耐火性の低下を抑制することが可能となる。
【0024】
本発明の他の局面に係る配線ボックスの設置方法は、互いに対向する第1壁部材と第2壁部材との間の壁裏空間に、開口部と最近接部とを有する配線ボックスを設置する設置方法である。この設置方法は、前記壁裏空間において、前記第1壁部材側に前記開口部が向くように第1の配線ボックスを設置する第1設置工程と、前記第1設置工程の前又は後に、上記の間隙調整具を、前記取付部を介して前記第1の配線ボックスに取付ける調整具取付工程と、前記壁裏空間において、前記第2壁部材側に前記開口部が向くように第2の配線ボックスを設置する第2設置工程と、を含む。そして、前記第2設置工程では、前記第1の配線ボックスに取付けられた前記間隙調整具の前記突出部との干渉を回避するように、前記第2の配線ボックスを設置する。
【0025】
この配線ボックスの設置方法によれば、第1設置工程において第1壁部材側に開口部が向くように壁裏空間に設置される第1の配線ボックスには、調整具取付工程において上記の間隙調整具が取付けられる。これにより、壁裏空間において間隙調整具の突出部と第2壁部材との間には、第2の配線ボックスが設置できるスペースが無くなる。このため、第2設置工程において第2壁部材側に開口部が向くように第2の配線ボックスを設置するときには、壁裏空間において間隙調整具の突出部との干渉を回避するように、第2の配線ボックスを設置する。このような第2設置工程では、第1壁部材及び第2壁部材の各々に対応した各配線ボックスが背中合わせに設置されるのを回避することができる。このため、第1壁部材及び第2壁部材の各々に、壁部材に垂直な方向から見て重なるように貫通開口が形成されるのを回避することができる。したがって、音や火災時の火炎等が、貫通開口及び配線ボックスを介して壁裏空間を通過し難くなるため、壁裏空間での配線ボックスの設置箇所における遮音性及び耐火性の低下を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によれば、第1壁部材と第2壁部材との間の壁裏空間での配線ボックスの設置箇所における遮音性及び耐火性の低下を抑制することが可能な間隙調整具、配線ボックス、及び配線ボックスの設置方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態に係る間隙調整具を適用した配線ボックスの設置状態を概略的に示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る間隙調整具を適用した配線ボックスの設置状態の変形例を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る間隙調整具と配線ボックスとの関係を示す斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係る間隙調整具を適用した配線ボックスの設置状態を示す垂直断面図である。
【
図5】第1実施形態に係る間隙調整具を適用した配線ボックスの設置状態を示す水平断面図である。
【
図6】第1実施形態に係る間隙調整具を用いた場合の配線ボックスの設置方法を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る間隙調整具と配線ボックスとの関係を示す斜視図である。
【
図8】第2実施形態に係る間隙調整具を適用した配線ボックスの設置状態を示す垂直断面図である。
【
図9】第2実施形態に係る間隙調整具における突出部の突出長さが調整された状態を示す垂直断面図である。
【
図10】第2実施形態に係る間隙調整具の変形例を示す垂直断面図である。
【
図11】第2実施形態に係る間隙調整具を用いた場合の配線ボックスの設置方法を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の第3実施形態に係る間隙調整具と配線ボックスとの関係を示す斜視図である。
【
図13】第3実施形態に係る間隙調整具における突出部の突出長さが調整される様子を示す斜視図である。
【
図14】第3実施形態に係る間隙調整具を適用した配線ボックスの設置状態を示す垂直断面図である。
【
図15】第3実施形態に係る間隙調整具における突出部の突出長さが調整された状態を示す垂直断面図である。
【
図16】第3実施形態に係る間隙調整具を用いた場合の配線ボックスの設置方法を示すフローチャートである。
【
図17】本発明の実施形態に係る配線ボックスを示す斜視図である。
【
図18】
図17に示す配線ボックスの設置状態を示す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る間隙調整具、配線ボックス、及び配線ボックスの設置方法について、図面に基づいて説明する。
【0029】
図1及び
図2を参照して、本発明の実施形態に係る間隙調整具5を適用した配線ボックス4の設置状態を説明する。配線ボックス4は、電流を取り出す受け口となるコンセントやスイッチなどの配線器具を収納するためのものである。配線ボックス4は、建築物において互いに対向する第1壁部材1Aと第2壁部材1Bとの間の壁裏空間1Cに設置される。
【0030】
第1壁部材1Aは、第1室内空間1D1と壁裏空間1Cとを仕切る壁である。第2壁部材1Bは、第2室内空間1D2と壁裏空間1Cとを仕切る壁である。壁裏空間1Cには、第1壁部材1A及び第2壁部材1Bを支持するための複数の間柱2が、床面から鉛直上方に延びるように立設されている。複数の間柱2は、壁裏空間1Cにおいて、水平方向に所定の間隔を隔てて配置される。なお、
図1では、第1壁部材1Aを支持するための間柱2と第2壁部材1Bを支持するための間柱2とが別個独立に設けられた構造が示されている。一方、
図2では、第1壁部材1A及び第2壁部材1Bの両方の壁部材を支持する間柱2が設けられた構造が示されている。
【0031】
配線ボックス4は、間柱2に取付けられることにより壁裏空間1Cに設置される。壁裏空間1Cにおける配線ボックス4の設置位置によっては、音や火災時の火炎等が、第1室内空間1D1と第2室内空間1D2との間を壁裏空間1Cを介して通過する虞がある。そこで、壁裏空間1Cでの配線ボックス4の設置箇所における遮音性及び耐火性の低下を抑制するために、間隙調整具5が用いられる。
【0032】
(第1実施形態)
図3は、本発明の第1実施形態に係る間隙調整具5と配線ボックス4との関係を示す斜視図である。
図4は、間隙調整具5を適用した配線ボックス4の設置状態を示す垂直断面図である。
図5は、間隙調整具5を適用した配線ボックス4の設置状態を示す水平断面図である。
【0033】
間隙調整具5の説明に先立って、配線ボックス4の構成を詳細に説明する。なお、以下では、壁裏空間1Cにおいて床面3から鉛直上方に延びるように立設されて第1壁部材1Aを支持する間柱2に配線ボックス4が取付けられることを想定して、配線ボックス4の構成を説明する。
【0034】
配線ボックス4は、例えばポリ塩化ビニルなどの耐熱性及び難燃性を有する合成樹脂から構成されている。なお、配線ボックス4は、金属から構成されていてもよい。配線ボックス4は、一面に開口部41を有する有底箱状に形成される。配線ボックス4は、第1壁部材1Aを支持する間柱2に取付けられる場合には、開口部41が第1壁部材1A側に向くように間柱2に取付けられる。配線ボックス4は、その開口部41が第1壁部材1Aに形成された貫通開口1A1を介して第1壁部材1Aの表側の第1室内空間1D1に臨むように間柱2に取付けられることにより、壁裏空間1Cに設置される。
【0035】
配線ボックス4は、矩形板状に形成されて第2壁部材1Bに対向する底面部42と、当該底面部42の周縁から垂直に延びる4つの周面を構成する第1側面部43、第2側面部44、上面部45及び下面部46と、を含む。第1側面部43、第2側面部44、上面部45及び下面部46における、底面部42に接続される側とは反対の端縁によって、開口部41の矩形状の開口端縁が規定される。なお、底面部42は、配線ボックス4において、開口部41が第1壁部材1A側に向いた状態で、第2壁部材1Bの最も近くに配置される最近接部の一例である。
【0036】
第1側面部43は、開口部41が第1壁部材1A側に向いた状態において、間柱2に当接する周面を構成する。第1側面部43には、第1ビス孔431が複数(例えば3つ)形成されている。第1ビス孔431は、第1側面部43の底面部42に接続される側の端縁から水平に第1壁部材1A側に延びる長孔である。配線ボックス4は、第1側面部43の第1ビス孔431に挿通されたビスSCによって間柱2にビス止め固定される。
【0037】
第2側面部44は、第1側面部43に対向し、当該第1側面部43と平行な周面を構成する。第2側面部44には、第2ビス孔441が複数(例えば3つ)形成されている。第2ビス孔441は、第2側面部44の底面部42に接続される側の端縁から水平に第1壁部材1A側に延びる長孔である。
【0038】
上面部45は、底面部42、第1側面部43及び第2側面部44の上端にそれぞれ接続される。上面部45には、ケーブル挿通孔451が複数(例えば2つ)形成されている。配線ボックス4に収納される配線器具に配線ケーブルを接続する場合には、当該配線ケーブルがケーブル挿通孔451を挿通されて配線ボックス4内に導かれる。
【0039】
下面部46は、上面部45に対向し、当該上面部45と平行な周面を構成する。下面部46は、底面部42、第1側面部43及び第2側面部44の下端にそれぞれ接続される。
【0040】
次に、配線ボックス4に適用される間隙調整具5について説明する。間隙調整具5は、壁裏空間1Cにおいて開口部41が第1壁部材1A側に向くように間柱2に取付けられた配線ボックス4の底面部42と、第2壁部材1Bとの間隙を調整するためのものである。間隙調整具5は、例えば、ポリ塩化ビニルや架橋ポリエチレンなどの耐熱性及び難燃性を有する合成樹脂、或いは、エチレンプロピレンゴムやクロロプレンゴムなどの耐熱性及び難燃性を有する合成ゴムから構成されている。間隙調整具5は、配線ボックス4に取付けられる取付部6と、突出部7とを備えている。
【0041】
取付部6は、基準部位64を有し、当該基準部位64が底面部42の外面と同一平面上に位置するように、配線ボックス4に取付けられる。本実施形態では、取付部6は、配線ボックス4において底面部42の周縁から垂直に延びる4つの周面のうち、間柱2にビス止めされる第1側面部43以外の第2側面部44、上面部45及び下面部46を外方から覆うことが可能な形状に形成されている。すなわち、取付部6は、矩形板状の第1取付壁部61と、第1取付壁部61の一方向一端から垂直に延びる第2取付壁部62と、第1取付壁部61の一方向他端から垂直に延びて第2取付壁部62に対向する第3取付壁部63と、を含む。このような取付部6においては、第1取付壁部61、第2取付壁部62及び第3取付壁部63の一端縁によって前記基準部位64が規定される。取付部6は、第1取付壁部61、第2取付壁部62及び第3取付壁部63の一端縁(基準部位64)とは反対の他端縁が開口部41の開口端縁に沿うとともに、第1取付壁部61が第2側面部44を外方から覆い、第2取付壁部62が上面部45を外方から覆い、第3取付壁部63が下面部46を外方から覆うように、配線ボックス4に取付けられる。
【0042】
また、取付部6においては、第1取付壁部61の内面に係合突起611が形成されている。この係合突起611は、取付部6が配線ボックス4に取付けられた状態において、第2側面部44の第2ビス孔441と係合する。取付部6は、係合突起611が第2ビス孔441と係合することにより、位置決めされた状態で配線ボックス4に取付けられる。
【0043】
また、取付部6においては、第2取付壁部62にケーブル挿通ミシン目621が形成されている。ケーブル挿通ミシン目621は、第2取付壁部62の他端縁からU字状に形成されている。ケーブル挿通ミシン目621に沿って第2取付壁部62の一部を切り取ることにより、配線ボックス4の上面部45のケーブル挿通孔451と連通する挿通孔を第2取付壁部62に形成することができる。取付部6が取付けられた配線ボックス4に収納される配線器具に配線ケーブルを接続する場合、第2取付壁部62のケーブル挿通ミシン目621に沿って形成される挿通孔及び上面部45のケーブル挿通孔451に配線ケーブルが挿通される。なお、ケーブル挿通ミシン目621に沿って第2取付壁部62の一部を切り取ることにより、ケーブル挿通孔451を介して配線ボックス4内まで配線ケーブルを挿入した後でも、当該配線ケーブルとの干渉を回避可能に取付部6を配線ボックス4に取付けることができる。
【0044】
突出部7は、間隙調整具5において、取付部6の基準部位64から突出する。本実施形態では、突出部7は、第1突出壁部71と、第2突出壁部72と、第3突出壁部73と、第4突出壁部74と、第5突出壁部75とによって構成される有底箱状に形成される。
【0045】
第1突出壁部71は、矩形板状に形成され、取付部6の基準部位64の一部を構成する第1取付壁部61の一端縁から突出する。第2突出壁部72は、矩形板状に形成され、第1突出壁部71と対向する。第3突出壁部73は、矩形板状に形成され、第1突出壁部71及び第2突出壁部72の上端にそれぞれ接続されるとともに、取付部6の基準部位64の一部を構成する第2取付壁部62の一端縁から突出する。第4突出壁部74は、矩形板状に形成され、第1突出壁部71及び第2突出壁部72の下端にそれぞれ接続されるとともに、取付部6の基準部位64の一部を構成する第3取付壁部63の一端縁から突出する。第5突出壁部75は、第1突出壁部71、第2突出壁部72、第3突出壁部73、及び第4突出壁部74における、基準部位64とは反対の端縁にそれぞれ接続されることにより、有底箱状に形成された突出部7の底部を構成する。突出部7は、取付部6の基準部位64から第5突出壁部75の外面に至るまでの間において、基準部位64から突出している。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る間隙調整具5は、第1壁部材1Aと第2壁部材1Bとの間の壁裏空間1Cにおいて第1壁部材1A側に開口部41が向くように設置される配線ボックス4に取付けられる取付部6と、取付部6の基準部位64から突出する突出部7とを備えている。取付部6は、基準部位64が配線ボックス4の底面部42の外面と同一平面上に位置するように配線ボックス4に取付けられる。このため、間隙調整具5が取付部6によって配線ボックス4に取付けられた状態において、突出部7は、第1壁部材1A側に設置される配線ボックス4における底面部42の外面よりも第2壁部材1B側に突出することになる。このような突出部7は、配線ボックス4の底面部42と第2壁部材1Bとの間隙を調整する機能を有している。
【0047】
そして、突出部7は、取付部6の基準部位64からの突出長さが下記式(1)を満たすように設定されている。
(WD-BT1)≧L>{WD-(BT1+BT2)} ・・・(1)
【0048】
式(1)中、「L」は突出部7の基準部位64からの突出長さを示し、「WD」は第1壁部材1Aと第2壁部材1Bとの離間距離を示す。また、「BT1」は開口部41が第1壁部材1A側に向くように設置される第1の配線ボックス4における開口部41の開口端縁から底面部42の外面までの距離で表される第1の配線ボックス4の厚みを示し、「BT2」は開口部41が第2壁部材1B側に向くように設置される第2の配線ボックス4における開口部41の開口端縁から底面部42の外面までの距離で表される第2の配線ボックス4の厚みを示す。
【0049】
突出部7の突出長さLが、第1壁部材1Aと第2壁部材1Bとの離間距離WDから第1の配線ボックス4の厚みBT1を差し引いた値(WD-BT1)以下であることにより、壁裏空間1Cに収まるように間隙調整具5を配線ボックス4に取付けることができる。
【0050】
一方、突出部7の突出長さLが、第1壁部材1Aと第2壁部材1Bとの離間距離WDから、第1の配線ボックス4の厚みBT1と第2の配線ボックス4の厚みBT2との加算値を差し引いた値{WD-(BT1+BT2)}よりも大きいことにより、第1壁部材1A側に設置された第1の配線ボックス4に間隙調整具5が取付けられた状態で、突出部7と第2壁部材1Bとの間に第2の配線ボックス4が設置できるスペースを無くすことができる。これにより、第1壁部材1A及び第2壁部材1Bの各々に対応した各配線ボックス4が背中合わせに設置されるのを回避することができる。このため、第2壁部材1Bにおいて突出部7と対向する領域ARに配線ボックス4用の貫通開口が形成されることを無くすことができる。すなわち、第1壁部材1A及び第2壁部材1Bに垂直な方向から見て、第1壁部材1Aに形成された貫通開口1A1と重なるように第2壁部材1Bに貫通開口が形成されるのを回避することができる。したがって、音や火災時の火炎等が、貫通開口1A1及び配線ボックス4を介して壁裏空間1Cを通過し難くなるため、壁裏空間1Cでの配線ボックス4の設置箇所における遮音性及び耐火性の低下を抑制することが可能となる。
【0051】
また、間隙調整具5の内部、すなわち、取付部6の基準部位64から突出部7の第5突出壁部75までの間の空間に吸音材を充填するようにしてもよい。これにより、壁裏空間1Cでの配線ボックス4の設置箇所における遮音性の向上を図ることができる。
【0052】
また、
図3に示されるように、取付部6が配線ボックス4に取付けられた状態において、配線ボックス4における開口部41の開口端縁に沿う取付部6の部分には、弾性及び吸音性を有する弾性部材8が設けられている。この弾性部材8は、間柱2にビス止めされた配線ボックス4に取付部6が取付けられた状態において、第1壁部材1Aの壁裏空間1C側の面に当接する。更に、配線ボックス4における間柱2にビス止めされる第1側面部43と同一平面上に位置する取付部6の部分にも、弾性部材8が設けられている。この弾性部材8は、間柱2にビス止めされた配線ボックス4に取付部6が取付けられた状態において、間柱2に当接する。また、突出部7の第2突出壁部72において、第5突出壁部75と接続される側とは反対の、配線ボックス4の底面部42に対向する部分にも、弾性部材8が設けられている。この弾性部材8は、配線ボックス4に取付部6が取付けられた状態において、配線ボックス4の底面部42に当接する。間隙調整具5におけるこれらの弾性部材8が、第1壁部材1A、間柱2及び配線ボックス4の底面部42に当接することにより、壁裏空間1Cにおける配線ボックス4の設置箇所を密閉することができる。これにより、壁裏空間1Cでの配線ボックス4の設置箇所における遮音性の向上を図ることができる。
【0053】
また、
図3に示されるように、突出部7において取付部6の基準部位64から最も離れた部分であって、突出部7の突出先端となる第5突出壁部75の外面には、被検知部材9が設けられている。この被検知部材9は、例えばアルミ箔などから構成されており、金属探知機による検知が可能である。例えば、第1壁部材1A側の配線ボックス4に間隙調整具5を取付け、当該間隙調整具5の突出部7との干渉を回避するように第2壁部材1B側の配線ボックス4の設置工事が完了した後に、第2壁部材1Bの表側の第2室内空間1D2において配線器具の増設が必要となった場合を想定する。この場合、第2壁部材1Bの表側から金属探知機を用いて被検知部材9を検知することにより、第1壁部材1A側に既に設置されている配線ボックス4の位置を把握することができる。これにより、増設対象の配線器具に対応した配線ボックス4の設置工事において、既設の配線ボックス4と背中合わせに増設用の配線ボックス4を設置してしまう現象が生じることを回避することができる。
【0054】
図6は、第1実施形態に係る間隙調整具5を用いた場合の配線ボックス4の設置方法を示すフローチャートである。間隙調整具5を用いた配線ボックス4の設置方法は、第1設置工程a1と、調整具取付工程a2と、第2設置工程a3とを含む。
【0055】
第1設置工程a1では、第1壁部材1A側に開口部41が向くように第1の配線ボックス4を設置する。調整具取付工程a2では、間隙調整具5を、取付部6を介して第1の配線ボックス4に取付ける。この際、第1設置工程a1と調整具取付工程a2とは、何れの工程が先に行われても構わない。すなわち、第1の配線ボックス4を間柱2にビス止めした後、その第1の配線ボックス4に間隙調整具5を取付けてもよいし、或いは、第1の配線ボックス4に間隙調整具5を取付けた後、その間隙調整具5が取付けられた第1の配線ボックス4を間柱2にビス止めしてもよい。
【0056】
壁裏空間1Cにおいて間隙調整具5の取付けられた第1の配線ボックス4が設置されると、第2設置工程a3において、第2壁部材1B側に開口部41が向くように第2の配線ボックス4を設置する。この際、第2設置工程a3では、第1の配線ボックス4に取付けられた間隙調整具5の突出部7との干渉を回避するように、第2の配線ボックス4を設置する。
【0057】
このような配線ボックス4の設置方法では、第1設置工程a1において第1壁部材1A側に設置される第1の配線ボックス4には、調整具取付工程a2において間隙調整具5が取付けられる。これにより、壁裏空間1Cにおいて間隙調整具5の突出部7と第2壁部材1Bとの間には、第2の配線ボックス4が設置できるスペースが無くなる。このため、第2設置工程a3において第2壁部材1B側に第2の配線ボックス4を設置するときには、壁裏空間1Cにおいて間隙調整具5の突出部7との干渉を回避するように、第2の配線ボックス4を設置する。このような第2設置工程a3では、第1壁部材1A及び第2壁部材1Bの各々に対応した各配線ボックス4が背中合わせに設置されるのを回避することができる。このため、第1壁部材1A及び第2壁部材1Bに垂直な方向から見て、第1壁部材1Aに形成された貫通開口1A1と重なるように第2壁部材1Bに貫通開口が形成されるのを回避することができる。したがって、音や火災時の火炎等が、貫通開口1A1及び配線ボックス4を介して壁裏空間1Cを通過し難くなるため、壁裏空間1Cでの配線ボックス4の設置箇所における遮音性及び耐火性の低下を抑制することが可能となる。
【0058】
(第2実施形態)
図7は、本発明の第2実施形態に係る間隙調整具5Aと配線ボックス4との関係を示す斜視図である。
図8,9は、間隙調整具5Aを適用した配線ボックス4の設置状態を示す垂直断面図である。
【0059】
第2実施形態に係る間隙調整具5Aは、上記の第1実施形態に係る間隙調整具5と同様に、壁裏空間1Cにおいて開口部41が第1壁部材1A側に向くように間柱2に取付けられた配線ボックス4の底面部42と、第2壁部材1Bとの間隙を調整するためのものである。この間隙調整具5Aは、配線ボックス4に取付けられる取付部6Aと、突出部7Aとを備えている。
【0060】
取付部6Aは、基準部位64を有し、当該基準部位64が底面部42の外面と同一平面上に位置するように、配線ボックス4に取付けられる。取付部6Aは、上記の第1実施形態に係る間隙調整具5に備えられる取付部6と同様に構成されているので、詳細な説明は省略する。
【0061】
突出部7Aは、間隙調整具5Aにおいて、取付部6Aの基準部位64から突出する。突出部7Aは、上記の第1実施形態に係る間隙調整具5に備えられる突出部7とは異なり、基準部位64からの突出長さLを調整可能となるように構成されている。突出部7Aは、基準部位64から延びる第1突出部位7A1と、第1突出部位7A1に取付けられる第2突出部位7A2とを有している。
【0062】
第1突出部位7A1は、第1突出壁部71と、第2突出壁部72と、第3突出壁部73と、第4突出壁部74とによって構成される矩形筒状に形成される。第1突出壁部71は、矩形板状に形成され、取付部6Aの基準部位64の一部を構成する第1取付壁部61の一端縁から突出する。第2突出壁部72は、矩形板状に形成され、第1突出壁部71と対向する。第3突出壁部73は、矩形板状に形成され、第1突出壁部71及び第2突出壁部72の上端にそれぞれ接続されるとともに、取付部6Aの基準部位64の一部を構成する第2取付壁部62の一端縁から突出する。第4突出壁部74は、矩形板状に形成され、第1突出壁部71及び第2突出壁部72の下端にそれぞれ接続されるとともに、取付部6Aの基準部位64の一部を構成する第3取付壁部63の一端縁から突出する。第1突出壁部71、第2突出壁部72、第3突出壁部73、及び第4突出壁部74における、基準部位64とは反対の端縁によって、第2突出部位7A2の挿通を許容する挿通開口が形成されている。すなわち、第1突出部位7A1は、基準部位64に接続される側とは反対側に、第2突出部位7A2の挿通を許容する挿通開口を有している。第1突出部位7A1における前記挿通開口の開口端縁は、開口が僅かに狭まるように内側に湾曲した形状に形成されている。
【0063】
第2突出部位7A2は、第1突出部位7A1における前記挿通開口に挿通された状態において、第1突出部位7A1からの突出長さを調整可能となるように第1突出部位7A1に取付けられている。具体的には、第2突出部位7A2は、抜け止め突起7A3を有している。第2突出部位7A2は、第1突出部位7A1の前記挿通開口に挿通された状態において、当該挿通開口の内側に湾曲した開口端縁に抜け止め突起7A3が係合することにより、第1突出部位7A1から抜け止めされる。なお、
図8には、第2突出部位7A2が第1突出部位7A1から最大に突出した状態が示されており、
図9には、第2突出部位7A2が第1突出部位7A1から最小に突出した状態が示されている。
【0064】
第2突出部位7A2の形状は特に限定されるものではないが、本実施形態では第2突出部位7A2は、内部空間を有する中空の矩形箱状に形成されている。この場合、第2突出部位7A2の内部空間に吸音材を充填するようにしてもよい。これにより、壁裏空間1Cでの配線ボックス4の設置箇所における遮音性の向上を図ることができる。また、突出部7Aに被検知部材9を設ける場合には、第2突出部位7A2の先端外面に被検知部材9が設けられる。
【0065】
図10は、第2実施形態に係る間隙調整具5Aの変形例を示す垂直断面図である。上記では、第2突出部位7A2が第1突出部位7A1の挿通開口に挿通された構成の間隙調整具5Aについて説明したが、このような構成に限定されるものではない。間隙調整具5Aは、
図10に示されるように、第1突出部位7A1に抜け止め突起7A3が設けられ、第2突出部位7A2に第1突出部位7A1の挿通を許容する挿通開口が設けられた構成であってもよい。このような構成の間隙調整具5Aにおいても、第2突出部位7A2は、第1突出部位7A1からの突出長さを調整可能となるように第1突出部位7A1に取付けられる。
【0066】
本実施形態に係る間隙調整具5Aにおいては、突出部7Aは、第1突出部位7A1からの第2突出部位7A2の突出長さの調整に基づいて、基準部位64からの突出長さLの調整が可能である。このような構成の間隙調整具5Aでは、第1壁部材1Aと第2壁部材1Bとの離間距離WD、第1の配線ボックス4の厚みBT1、及び第2の配線ボックス4の厚みBT2に応じて、突出部7Aの突出長さLを調整することができる。そして、突出部7Aは、上記式(1)を満たす状態と、下記式(2)を満たす状態との間で状態を切替えて、取付部6Aの基準部位64からの突出長さLを調整可能となるように構成されている。
L≦{WD-(BT1+BT2)} ・・・(2)
【0067】
突出長さLが上記式(1)を満たす状態においては、突出部7Aは、上記式(1)を満たす範囲内で、突出長さLを調整可能である。具体的には、突出部7Aの突出長さLが、第1壁部材1Aと第2壁部材1Bとの離間距離WDから第1の配線ボックス4の厚みBT1を差し引いた値(WD-BT1)以下であることにより、壁裏空間1Cに収まるように間隙調整具5Aを配線ボックス4に取付けることができる。
【0068】
一方、突出部7Aの突出長さLが、第1壁部材1Aと第2壁部材1Bとの離間距離WDから、第1の配線ボックス4の厚みBT1と第2の配線ボックス4の厚みBT2との加算値を差し引いた値{WD-(BT1+BT2)}よりも大きいことにより、第1壁部材1A側に設置された第1の配線ボックス4に間隙調整具5Aが取付けられた状態で、突出部7Aと第2壁部材1Bとの間に第2の配線ボックス4が設置できるスペースを無くすことができる。これにより、第1壁部材1A及び第2壁部材1Bの各々に対応した各配線ボックス4が背中合わせに設置されるのを回避することができる。このため、第1壁部材1A及び第2壁部材1Bに垂直な方向から見て、第1壁部材1Aに形成された貫通開口1A1と重なるように第2壁部材1Bに貫通開口が形成されるのを回避することができる。したがって、音や火災時の火炎等が、貫通開口1A1及び配線ボックス4を介して壁裏空間1Cを通過し難くなるため、壁裏空間1Cでの配線ボックス4の設置箇所における遮音性及び耐火性の低下を抑制することが可能となる。
【0069】
また、突出部7Aの突出長さLが上記式(2)を満たす状態においては、第1壁部材1A及び第2壁部材1Bの各々に対応した配線ボックス4の設置後に、壁裏空間1Cに例えば吸音材を充填する場合に、突出部7Aと第2壁部材1Bとの間に吸音材の充填空間の確保が可能となるように、突出部7Aの突出長さLを調整することができる。すなわち、突出部7Aは、壁裏空間1Cにおいて配線ボックス4が背中合わせに設置されるのを回避するための突出長さLに設定することができるとともに、吸音材の充填空間の確保が可能な突出長さLに設定することができる。
【0070】
図11は、第2実施形態に係る間隙調整具5Aを用いた場合の配線ボックス4の設置方法を示すフローチャートである。間隙調整具5Aを用いた配線ボックス4の設置方法は、第1設置工程b1と、調整具取付工程b2と、第2設置工程b3と、突出長さ調整工程b4とを含む。
【0071】
第1設置工程b1では、第1壁部材1A側に開口部41が向くように第1の配線ボックス4を設置する。調整具取付工程b2では、第1壁部材1Aと第2壁部材1Bとの離間距離WD、及び第1の配線ボックス4の厚みBT1に応じて突出部7Aの突出長さLを調整しつつ、間隙調整具5Aを、取付部6Aを介して第1の配線ボックス4に取付ける。この際、第1設置工程b1と調整具取付工程b2とは、何れの工程が先に行われても構わない。すなわち、第1の配線ボックス4を間柱2にビス止めした後、その第1の配線ボックス4に間隙調整具5Aを取付けてもよいし、或いは、第1の配線ボックス4に間隙調整具5Aを取付けた後、その間隙調整具5Aが取付けられた第1の配線ボックス4を間柱2にビス止めしてもよい。
【0072】
壁裏空間1Cにおいて間隙調整具5Aの取付けられた第1の配線ボックス4が設置されると、第2設置工程b3において、第2壁部材1B側に開口部41が向くように第2の配線ボックス4を設置する。この際、第2設置工程b3では、第1の配線ボックス4に取付けられた間隙調整具5Aの突出部7Aとの干渉を回避するように、第2の配線ボックス4を設置する。
【0073】
このような配線ボックス4の設置方法では、第1設置工程b1において第1壁部材1A側に設置される第1の配線ボックス4には、調整具取付工程b2において間隙調整具5Aが取付けられる。これにより、壁裏空間1Cにおいて間隙調整具5Aの突出部7Aと第2壁部材1Bとの間には、第2の配線ボックス4が設置できるスペースが無くなる。このため、第2設置工程b3において第2壁部材1B側に第2の配線ボックス4を設置するときには、壁裏空間1Cにおいて間隙調整具5Aの突出部7Aとの干渉を回避するように、第2の配線ボックス4を設置する。このような第2設置工程b3では、第1壁部材1A及び第2壁部材1Bの各々に対応した各配線ボックス4が背中合わせに設置されるのを回避することができる。このため、第1壁部材1A及び第2壁部材1Bに垂直な方向から見て、第1壁部材1Aに形成された貫通開口1A1と重なるように第2壁部材1Bに貫通開口が形成されるのを回避することができる。したがって、音や火災時の火炎等が、貫通開口1A1及び配線ボックス4を介して壁裏空間1Cを通過し難くなるため、壁裏空間1Cでの配線ボックス4の設置箇所における遮音性及び耐火性の低下を抑制することが可能となる。
【0074】
第1壁部材1A及び第2壁部材1Bの各々に対応した配線ボックス4の設置後に、壁裏空間1Cに吸音材を充填する場合には、突出長さ調整工程b4が行われる。突出長さ調整工程b4では、突出部7Aと第2壁部材1Bとの間に吸音材の充填空間の確保が可能となるように、突出部7Aの突出長さLを調整する。これにより、突出部7Aの突出長さLを、吸音材の充填空間の確保が可能な長さに設定することができる。
【0075】
(第3実施形態)
図12は、本発明の第3実施形態に係る間隙調整具5Bと配線ボックス4との関係を示す斜視図である。
図13は、間隙調整具5Bにおける突出部7Bの突出長さが調整される様子を示す斜視図である。
図14は、間隙調整具5Bを適用した配線ボックス4の設置状態を示す垂直断面図である。
図15は、間隙調整具5Bにおける突出部7Bの突出長さLが調整された状態を示す垂直断面図である。
【0076】
第3実施形態に係る間隙調整具5Bは、上記の第1実施形態に係る間隙調整具5と同様に、壁裏空間1Cにおいて開口部41が第1壁部材1A側に向くように間柱2に取付けられた配線ボックス4の底面部42と、第2壁部材1Bとの間隙を調整するためのものである。この間隙調整具5Bは、配線ボックス4に取付けられる取付部6Bと、突出部7Bとを備えている。
【0077】
取付部6Bは、基準部位64を有し、当該基準部位64が底面部42の外面と同一平面上に位置するように、配線ボックス4に取付けられる。取付部6Bは、上記の第1実施形態に係る間隙調整具5に備えられる取付部6とは異なり、矩形板状に形成されている。取付部6Bは、粘着剤などを介して一面が底面部42の外面に粘着されることにより、配線ボックス4に取付けられる。取付部6Bにおいては、底面部42の外面に粘着される一面によって基準部位64が規定される。
【0078】
突出部7Bは、間隙調整具5Bにおいて、取付部6Bの基準部位64から突出する。突出部7Bは、上記の第1実施形態に係る間隙調整具5に備えられる突出部7とは異なり、基準部位64からの突出長さLを調整可能となるように構成されている。突出部7Bは、第1突出片7B1と、第2突出片7B2と、第3突出片7B3と、第4突出片7B4とによって矩形筒状に形成されている。
【0079】
第1突出片7B1は、取付部6Bが配線ボックス4の底面部42に取付けられた状態において、第1側面部43に沿って延びる取付部6Bの辺部から突出する。第2突出片7B2は、第1突出片7B1と対向するとともに、第2側面部44に沿って延びる取付部6Bの辺部から突出する。第3突出片7B3は、第1突出片7B1及び第2突出片7B2の上端にそれぞれ接続されるとともに、上面部45に沿って延びる取付部6Bの辺部から突出する。第4突出片7B4は、第1突出片7B1及び第2突出片7B2の下端にそれぞれ接続されるとともに、下面部46に沿って延びる取付部6Bの辺部から突出する。
【0080】
突出部7Bは、取付部6Bの基準部位64からの突出長さLを調整可能となるように、第1突出片7B1、第2突出片7B2、第3突出片7B3、及び第4突出片7B4がそれぞれ折り曲げ可能に構成されている。具体的には、第1突出片7B1と第3突出片7B3との境界部分、第3突出片7B3と第2突出片7B2との境界部分、第2突出片7B2と第4突出片7B4との境界部分、並びに、第4突出片7B4と第1突出片7B1との境界部分には、それぞれミシン目PEが設けられている。第1突出片7B1、第2突出片7B2、第3突出片7B3、及び第4突出片7B4は、取付部6Bと接続される側とは反対の端縁からミシン目PEに沿って、所定の長さ分だけ切り離しが可能である。そして、
図13に示されるように、第1突出片7B1、第2突出片7B2、第3突出片7B3、及び第4突出片7B4は、ミシン目PEに沿って切り離された部分が、別個独立に折り曲げ可能である。突出部7Bは、第1突出片7B1、第2突出片7B2、第3突出片7B3、及び第4突出片7B4の折り曲げによって、取付部6Bの基準部位64からの突出長さLを調整することができる。
【0081】
上記構成の間隙調整具5Bでは、第1壁部材1Aと第2壁部材1Bとの離間距離WD、第1の配線ボックス4の厚みBT1、及び第2の配線ボックス4の厚みBT2に応じて、突出部7Bの突出長さLを調整することができる。そして、突出部7Bは、上記式(1)を満たす状態と、上記式(2)を満たす状態との間で状態を切替えて、取付部6Bの基準部位64からの突出長さLを調整可能となるように構成されている。
【0082】
突出長さLが上記式(1)を満たす状態においては、突出部7Bは、上記式(1)を満たす範囲内で、突出長さLを調整可能である。具体的には、突出部7Bの突出長さLが、第1壁部材1Aと第2壁部材1Bとの離間距離WDから第1の配線ボックス4の厚みBT1を差し引いた値(WD-BT1)以下であることにより、壁裏空間1Cに収まるように間隙調整具5Bを配線ボックス4に取付けることができる。
【0083】
一方、突出部7Bの突出長さLが、第1壁部材1Aと第2壁部材1Bとの離間距離WDから、第1の配線ボックス4の厚みBT1と第2の配線ボックス4の厚みBT2との加算値を差し引いた値{WD-(BT1+BT2)}よりも大きいことにより、第1壁部材1A側に設置された第1の配線ボックス4に間隙調整具5Bが取付けられた状態で、突出部7Bと第2壁部材1Bとの間に第2の配線ボックス4が設置できるスペースを無くすことができる。これにより、第1壁部材1A及び第2壁部材1Bの各々に対応した各配線ボックス4が背中合わせに設置されるのを回避することができる。このため、第1壁部材1A及び第2壁部材1Bに垂直な方向から見て、第1壁部材1Aに形成された貫通開口1A1と重なるように第2壁部材1Bに貫通開口が形成されるのを回避することができる。したがって、音や火災時の火炎等が、貫通開口1A1及び配線ボックス4を介して壁裏空間1Cを通過し難くなるため、壁裏空間1Cでの配線ボックス4の設置箇所における遮音性及び耐火性の低下を抑制することが可能となる。
【0084】
また、突出部7Bの突出長さLが上記式(2)を満たす状態においては、第1壁部材1A及び第2壁部材1Bの各々に対応した配線ボックス4の設置後に、壁裏空間1Cに例えば吸音材を充填する場合に、突出部7Bと第2壁部材1Bとの間に吸音材の充填空間の確保が可能となるように、突出部7Bの突出長さLを調整することができる。すなわち、突出部7Bは、
図14に示されるように、壁裏空間1Cにおいて配線ボックス4が背中合わせに設置されるのを回避するための突出長さLに設定することができる。更に、突出部7Bは、
図15に示されるように、吸音材の充填空間の確保が可能な突出長さLに設定することができる。
【0085】
突出部7Bの突出長さLを吸音材の充填空間の確保が可能な長さに調整するときには、第1突出片7B1、第2突出片7B2、第3突出片7B3、及び第4突出片7B4が、取付部6Bと接続される側とは反対の端縁からミシン目PEに沿って、所定の長さ分だけ切り離される。
【0086】
そして、
図15に示されるように、間柱2にビス止めされた配線ボックス4に対し、第2突出片7B2が第2側面部44を覆うように折り曲げられるとともに、当該第2突出片7B2の先端に第1壁部材1Aに当接可能な当接部分7BSが形成されるように折り曲げられる。第2突出片7B2における先端の当接部分7BSは、第1壁部材1Aに当接した状態で粘着剤などによって粘着される。
【0087】
同様に、第3突出片7B3が上面部45を覆うように折り曲げられるとともに、当該第3突出片7B3の先端に第1壁部材1Aに当接可能な当接部分7BSが形成されるように折り曲げられる。第3突出片7B3における先端の当接部分7BSは、第1壁部材1Aに当接した状態で粘着剤などによって粘着される。なお、第3突出片7B3には、第3突出片7B3が上面部45を覆うように折り曲げられた状態でケーブル挿通孔451の上方に位置する部分に、配線ケーブルの挿入が可能なケーブル挿入ミシン目PESが設けられている。
【0088】
また、第4突出片7B4が下面部46を覆うように折り曲げられるとともに、当該第4突出片7B4の先端に第1壁部材1Aに当接可能な当接部分7BSが形成されるように折り曲げられる。第4突出片7B4における先端の当接部分7BSは、第1壁部材1Aに当接した状態で粘着剤などによって粘着される。
【0089】
なお、第1突出片7B1は、折り曲げないようにしてもよいが、配線ボックス4がビス止めされる間柱2に沿って折り曲げるようにしてもよい。
【0090】
図16は、第3実施形態に係る間隙調整具5Bを用いた場合の配線ボックス4の設置方法を示すフローチャートである。間隙調整具5Bを用いた配線ボックス4の設置方法は、第1設置工程c1と、調整具取付工程c2と、第2設置工程c3と、突出長さ調整工程c4とを含む。
【0091】
第1設置工程c1では、第1壁部材1A側に開口部41が向くように第1の配線ボックス4を設置する。調整具取付工程c2では、第1壁部材1Aと第2壁部材1Bとの離間距離WD、及び第1の配線ボックス4の厚みBT1に応じて突出部7Bの突出長さLを調整しつつ、間隙調整具5Bを、取付部6Bを介して第1の配線ボックス4に取付ける。この際、第1設置工程c1と調整具取付工程c2とは、何れの工程が先に行われても構わない。すなわち、第1の配線ボックス4を間柱2にビス止めした後、その第1の配線ボックス4に間隙調整具5Bを取付けてもよいし、或いは、第1の配線ボックス4に間隙調整具5Bを取付けた後、その間隙調整具5Bが取付けられた第1の配線ボックス4を間柱2にビス止めしてもよい。
【0092】
壁裏空間1Cにおいて間隙調整具5Bの取付けられた第1の配線ボックス4が設置されると、第2設置工程c3において、第2壁部材1B側に開口部41が向くように第2の配線ボックス4を設置する。この際、第2設置工程c3では、第1の配線ボックス4に取付けられた間隙調整具5Bの突出部7Bとの干渉を回避するように、第2の配線ボックス4を設置する。
【0093】
このような配線ボックス4の設置方法では、第1設置工程c1において第1壁部材1A側に設置される第1の配線ボックス4には、調整具取付工程c2において間隙調整具5Bが取付けられる。これにより、壁裏空間1Cにおいて間隙調整具5Bの突出部7Bと第2壁部材1Bとの間には、第2の配線ボックス4が設置できるスペースが無くなる。このため、第2設置工程c3において第2壁部材1B側に第2の配線ボックス4を設置するときには、壁裏空間1Cにおいて間隙調整具5Bの突出部7Bとの干渉を回避するように、第2の配線ボックス4を設置する。このような第2設置工程c3では、第1壁部材1A及び第2壁部材1Bの各々に対応した各配線ボックス4が背中合わせに設置されるのを回避することができる。このため、第1壁部材1A及び第2壁部材1Bに垂直な方向から見て、第1壁部材1Aに形成された貫通開口1A1と重なるように第2壁部材1Bに貫通開口が形成されるのを回避することができる。したがって、音や火災時の火炎等が、貫通開口1A1及び配線ボックス4を介して壁裏空間1Cを通過し難くなるため、壁裏空間1Cでの配線ボックス4の設置箇所における遮音性及び耐火性の低下を抑制することが可能となる。
【0094】
第1壁部材1A及び第2壁部材1Bの各々に対応した配線ボックス4の設置後に、壁裏空間1Cに吸音材を充填する場合には、突出長さ調整工程c4が行われる。突出長さ調整工程c4では、突出部7Bと第2壁部材1Bとの間に吸音材の充填空間の確保が可能となるように、突出部7Bの突出長さLを調整する。これにより、突出部7Bの突出長さLを、吸音材の充填空間の確保が可能な長さに設定することができる。
【0095】
上記の実施形態では、第1壁部材1A側の配線ボックス4に間隙調整具5,5A,5Bを取付けることにより、配線ボックス4と第2壁部材1Bとの間隙を調整する構成について説明した。これに対し、以下では、
図17及び
図18を参照しながら、第2壁部材1Bとの間隙を調整する機能を有する配線ボックス4Sについて説明する。
図17は、本発明の実施形態に係る配線ボックス4Sを示す斜視図である。
図18は、配線ボックス4Sの設置状態を示す垂直断面図である。
【0096】
配線ボックス4Sは、互いに対向する第1壁部材1Aと第2壁部材1Bとの間の壁裏空間1Cに設置されるものである。この配線ボックス4Sは、ボックス本体4S1と突出体4S2とを備えている。
【0097】
ボックス本体4S1は、配線ボックス4Sが壁裏空間1Cに設置された状態において、第1壁部材1Aに向かって開口する開口部41と第2壁部材1Bに対向する底面部42とを有する有底箱状に形成される。底面部42は、ボックス本体4S1において、開口部41が第1壁部材1A側に向いた状態で、第2壁部材1Bの最も近くに配置される最近接部の一例である。このボックス本体4S1は、上記の間隙調整具5,5A,5Bが適用される通常の配線ボックス4と同様に構成されているため、その詳細な説明は省略する。
【0098】
突出体4S2は、ボックス本体4S1における底面部42の外面から突出する。本実施形態では、ボックス本体4S1における底面部42の4つの角部から突出体4S2がそれぞれ突出している。突出体4S2は、底面部42の外面からの突出長さLLが、下記式(3)を満たすように設定されている。
(WD-BBT1)≧LL>{WD-(BBT1+BBT2)} ・・・(3)
【0099】
式(3)中、「LL」はボックス本体4S1における底面部42の外面からの突出体4S2の突出長さを示し、「WD」は第1壁部材1Aと第2壁部材1Bとの離間距離を示す。また、「BBT1」はボックス本体4S1における開口部41の開口端縁から底面部42の外面までの距離で表されるボックス本体4S1の厚みを示し、「BBT2」は第2壁部材1B側に設置されるボックス本体4S1のみから成る通常の配線ボックス4における開口部41の開口端縁から底面部42の外面までの距離で表される通常の配線ボックス4の厚みを示す。
【0100】
このような構成の配線ボックス4Sでは、ボックス本体4S1の開口部41が第1壁部材1A側に向くように設置された状態において、突出体4S2は、ボックス本体4S1の底面部42と第2壁部材1Bとの間隙を調整する機能を有している。そして、ボックス本体4S1における底面部42の外面からの突出体4S2の突出長さLLは、上記式(3)を満たすように設定されている。
【0101】
突出体4S2の突出長さLLが、第1壁部材1Aと第2壁部材1Bとの離間距離WDからボックス本体4S1の厚みBBT1を差し引いた値(WD-BBT1)以下であることにより、壁裏空間1Cに収まるように突出体4S2を備えた配線ボックス4Sを設置することができる。
【0102】
一方、突出体4S2の突出長さLLが、第1壁部材1Aと第2壁部材1Bとの離間距離WDから、ボックス本体4S1の厚みBBT1と通常の配線ボックス4の厚みBBT2との加算値を差し引いた値{WD-(BBT1+BBT2)}よりも大きいことにより、第1壁部材1A側に突出体4S2を備えた配線ボックス4Sが設置された状態で、突出体4S2と第2壁部材1Bとの間にボックス本体4S1のみから成る通常の配線ボックス4が設置できるスペースを無くすことができる。これにより、壁裏空間1Cにおいて配線ボックス4Sと背中合わせで通常の配線ボックス4が設置されるのを回避することができる。このため、第2壁部材1Bにおいて突出体4S2と対向する領域ARに通常の配線ボックス4用の貫通開口が形成されることを無くすことができる。すなわち、第1壁部材1A及び第2壁部材1Bに垂直な方向から見て、第1壁部材1Aに形成された貫通開口1A1と重なるように第2壁部材1Bに貫通開口が形成されるのを回避することができる。したがって、音や火災時の火炎等が、貫通開口1A1及び配線ボックス4Sを介して壁裏空間1Cを通過し難くなるため、壁裏空間1Cでの配線ボックス4Sの設置箇所における遮音性及び耐火性の低下を抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0103】
1A 第1壁部材
1B 第2壁部材
1C 壁裏空間
4,4S 配線ボックス
41 開口部
42 底面部
4S1 ボックス本体
4S2 突出体
5,5A,5B 間隙調整具
6,6A,6B 取付部
64 基準部位
7,7A,7B 突出部