(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】給電制御装置
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20241022BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241022BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20241022BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20241022BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20241022BHJP
【FI】
H02J3/38 170
H02J7/00 303E
H02J7/00 S
H01M8/04858
H01M8/04537
H01M8/12 101
(21)【出願番号】P 2021005091
(22)【出願日】2021-01-15
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安岐 拓哉
【審査官】三橋 竜太郎
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H01M 8/04-8/0668
H01M 8/00-8/0297
H01M 8/08-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を発電する燃料電池装置と、前記燃料電池装置からの直流電力を変換して直流リンク部に出力するコンバータ装置と、前記直流リンク部に接続されたコンデンサと、前記直流リンク部からの直流電力をMPPT制御により受電可能な受電装置と、を備える電力システムにおいて、前記直流リンク部から前記受電装置への給電を制御する給電制御装置であって、
前記直流リンク部に接続される電力消費機器と、
前記電力消費機器が消費する電力を調整可能なスイッチと、
複数の電力電圧特性を記憶する記憶装置と、
前記複数の電力電圧特性のうち選択された電力電圧特性と前記直流リンク部の出力電圧と前記直流リンク部から前記受電装置への出力電流とに基づいて目標電圧を設定し、前記直流リンク部の出力電圧が前記目標電圧となるよう前記スイッチを制御するMPPT協調制御を実行し、前記MPPT協調制御の実行中に過負荷状態が発生すると、選択中の前記電力電圧特性を前記複数の電力電圧特性のうち選択されていない他の電力電圧特性に変更し、該変更した電力電圧特性を用いて前記目標電圧を設定して前記MPPT協調制御を再実行する制御装置と、
を備える給電制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の給電制御装置であって、
前記直流リンク部と前記受電装置とを継断するリレーを備え、
前記制御装置は、前記記憶装置に記憶されている複数の電力電圧特性のいずれを選択しても前記過負荷状態が発生する場合には、前記リレーをオフする、
給電制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の給電制御装置であって、
前記制御装置は、前記記憶装置に記憶されている複数の電力電圧特性のいずれを選択しても前記過負荷状態が発生する場合には、警告表示を行なう、
給電制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載の給電制御装置であって、
前記制御装置は、前記MPPT協調制御の実行中に前記直流リンク部の出力電圧が最大電力が得られる電圧よりも低い所定電圧未満となった場合に前記過負荷状態が発生したと判定する、
給電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池装置と、太陽電池装置の発電電力をMPPT(最大電力点追従)制御によって受電するMPPT制御装置と外部からの直流電力をMPPT制御によって受電する外部受電用MPPT制御装置とを含む電力制御装置と、発電機や燃料電池装置などの発電装置と、発電装置の発電電力を外部受電用MPPT制御装置へ送電する送電装置と、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。送電装置は、電圧電流特性データを記憶する記憶装置と、電圧電流特性データが示す曲線に沿って直流電力に応じた電圧と電流とに変換する電圧電流変換部と、を備え、発電装置で発電された直流電力の電圧電流特性を、太陽電池装置によって発電される直流電力の電圧電流特性と同様の特徴をもった電圧電流特性に変換して外部受電用MPPT制御装置へ送電する。これにより、太陽電池装置の発電電力をMPPT制御装置で受電するのと同様に、燃料電池装置等の発電装置の発電電力を外部受電用MPPT制御装置で受電することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1には、発電装置の発電電力の電圧電流特性を、太陽電池装置の発電電力の電圧電流特性と同様の特徴をもった電圧電流特性に変換することについては記載されているものの、受電側のMPPT制御の仕様が異なる場合の対応については何ら言及されていない。
【0005】
本発明の給電制御装置は、受電側のMPPT制御の仕様に拘わらず、適切な電力により給電を行なうことを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の給電制御装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の給電制御装置は、
直流電力を発電する燃料電池装置と、前記燃料電池装置からの直流電力を変換して直流リンク部に出力するコンバータ装置と、前記直流リンク部に接続されたコンデンサと、前記直流リンク部からの直流電力をMPPT制御により受電可能な受電装置と、を備える電力システムにおいて、前記直流リンク部から前記受電装置への給電を制御する給電制御装置であって、
前記直流リンク部に接続される電力消費機器と、
前記電力消費機器が消費する電力を調整可能なスイッチと、
複数の電力電圧特性を記憶する記憶装置と、
前記複数の電力電圧特性のうち選択された電力電圧特性と前記直流リンク部の出力電圧と前記直流リンク部から前記受電装置への出力電流とに基づいて目標電圧を設定し、前記直流リンク部の出力電圧が前記目標電圧となるよう前記スイッチを制御するMPPT協調制御を実行し、前記MPPT協調制御の実行中に過負荷状態が発生すると、選択中の前記電力電圧特性を前記複数の電力電圧特性のうち選択されていない他の電力電圧特性に変更し、該変更した電力電圧特性を用いて前記目標電圧を設定して前記MPPT協調制御を再実行する制御装置と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の給電制御装置は、直流リンク部に接続される電力消費機器と、電力消費機器が消費する電力を調整するスイッチと、複数の電力電圧特性を記憶する記憶装置と、制御装置と、を備える。制御装置は、記憶装置に記憶されている複数の電力電圧特性のうち選択された電力電圧特性と直流リンク部の出力電圧と直流リンク部から受電装置への出力電流とに基づいて目標電圧を設定し、直流リンク部の出力電圧が目標電圧となるようスイッチを制御するMPPT協調制御を実行する。そして、MPPT協調制御の実行中に過負荷状態が発生すると、選択中の電力電圧特性を複数の電力電圧特性のうち選択されていない他の電力電圧特性に変更し、変更した電力電圧特性を用いて目標電圧を設定してMPPT協調制御を再実行する。MPPT協調制御において選択した電力電圧特性が受電側のMPPT制御の仕様に合わない場合に、電力電圧特性を変更してMPPT協調制御を再実行することで、電力電圧特性を受電側のMPPT制御の仕様に合わせることができる。この結果、受電側のMPPT制御の仕様に拘わらず、適切な電力により給電を行なうことができる。
【0009】
こうした本発明の給電制御装置において、前記直流リンク部と前記受電装置とを継断するリレーを備え、前記制御装置は、前記記憶装置に記憶されている複数の電力電圧特性のいずれを選択しても前記過負荷状態が発生する場合には、前記リレーをオフしてもよい。こうすれば、過負荷状態の発生が際限なく繰り返されるのを防止することができる。
【0010】
また、本発明の給電制御装置において、前記制御装置は、前記記憶装置に記憶されている複数の電力電圧特性のいずれを選択しても前記過負荷状態が発生する場合には、警告表示を行なってもよい。こうすれば、過負荷状態の発生に対して適切に対処することが可能となる。
【0011】
さらに、本発明の給電制御装置において、前記制御装置は、前記MPPT協調制御の実行中に前記直流リンク部の出力電圧が最大電力が得られる電圧よりも低い所定電圧未満となった場合に前記過負荷状態が発生したと判定してもよい。こうすれば、過負荷状態を簡易な手法により適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態の電力システムの概略構成図である。
【
図2】MPPT協調制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【
図3】電力電圧特性および電流電圧特性の一例を示す説明図である。
【
図4】複数の電力電圧特性の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本実施形態の電力システム10の概略構成図である。本実施形態の電力システム10は、住宅等に設置され、系統電源1と連系して家庭内負荷(外部負荷)に電力を供給するシステムとして構成されるものであり、燃料電池装置20と、燃料電池パワーコンディショナ30と、制御装置50と、蓄電池60と、蓄電池パワーコンディショナ61と、を備える。
【0014】
燃料電池装置20は、図示しないが、改質水を気化させて水蒸気を生成する気化器や、原燃料ガス(例えば、天然ガスやLPガス)を水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質器、燃料ガスと空気との電気化学反応により発電する燃料電池スタック(固体酸化物形燃料電池スタック)などを含む燃料電池モジュールと、燃料電池モジュールの排熱を熱交換器によって温水にして貯湯タンクへ回収する排熱回収装置と、を有する。また、燃料電池装置20は、これを運転するための補機として、改質器へ原燃料ガスを供給するガスポンプや、水タンクから改質水を汲み上げて気化器へ供給する水ポンプ、燃料電池スタックへ空気を供給するエアポンプ、上述の熱交換器と貯湯タンクとを接続する循環配管内で湯水を循環させる循環ポンプ、循環路に設置されたヒータ41、循環路におけるヒータ41の下流に設置されたラジエータおよびラジエータファンなどを有する。これらの補機類は、制御装置50による制御を受けて動作する。また、燃料電池スタックの出力端子には、燃料電池スタックから出力される電流(スタック電流Ist)を検出する電流センサ36aが取り付けられ、燃料電池スタックの出力端子間には、燃料電池スタックの端子間電圧(スタック電圧Vst)を検出する電圧センサ36bが取り付けられている。
【0015】
燃料電池パワーコンディショナ30は、DC/DCコンバータ31と、インバータ32と、リレー33,45と、直流リンク部34とを備える。
【0016】
DC/DCコンバータ31は、図示しないスイッチング素子やリアクトル等を有し、当該スイッチング素子をスイッチング制御することにより、燃料電池装置20からの直流電力を所定電圧(例えばDC250V)の直流電力に変換(昇圧)して直流リンク部34へ出力する。
【0017】
インバータ32は、図示しないスイッチング素子やダイオード等を有し、当該スイッチング素子をスイッチング制御することにより、直流リンク部34の直流電力を交流電力に変換して外部負荷へ供給する。
【0018】
リレー33は、系統電源1の対応する相に接続された各電線の連系点(インバータ32の出力側)にそれぞれ設置されている。リレー45は、直流リンク部34から蓄電池パワーコンディショナ61への電力ライン38を継断するように直流リンク部34と蓄電池パワーコンディショナ61との間に設置されている。
【0019】
直流リンク部34には、平滑用のコンデンサ35が接続されており、当該コンデンサ35の端子間には、コンデンサ35の端子間電圧(直流リンク電圧Vlink)を検出する電圧センサ37が取り付けられている。また、直流リンク部34には、上述したヒータ41がヒータスイッチ42(FET)を介して接続されると共に、燃料電池装置20のその他の補機や制御装置50が図示しないDC/DCコンバータを介して接続されており、これらの補機や制御装置50は、直流リンク部34からの直流電力の供給を受けて動作するようになっている。
【0020】
蓄電池60は、例えばリチウムイオン二次電池として構成され、蓄電池パワーコンディショナ61を介して直流リンク部34に接続されている。蓄電池パワーコンディショナ61は、DC/DCコンバータを含み、当該DC/DCコンバータをスイッチング制御することにより、直流リンク部34からの直流電力により蓄電池60を充電したり、蓄電池60からの直流電力を直流リンク部34へ放電したりする。直流リンク部34と蓄電池パワーコンディショナ61とを接続する電力ライン38には、蓄電池60を流れる電流(蓄電池電流Ibattery)を検出する電流センサ39が取り付けられている。
【0021】
蓄電池パワーコンディショナ61の制御は、制御装置50とは別の制御装置(図示せず)によるMPPT(最大電力点追従)制御によって行なわれる。MPPT制御は、探索範囲を予め定めておき、出力電流を監視しつつ出力電圧を探索範囲内で初期値から徐々に変化させて出力電流と出力電圧との積である出力電力を演算し、演算した出力電力を比較することにより最大電力が得られる出力電圧を探索する。探索範囲は、例えば、出力電力が単調増加から減少に転じた点から所定量ΔP低下したときの出力電圧を終値として定めた範囲とされ、当該所定量ΔPは、蓄電池パワーコンディショナ61のメーカ毎に異なる。
【0022】
制御装置50は、CPU51を中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPU51の他に、各種プログラムやデータを記憶するROM52や、データを一時的に記憶するRAM53、入力ポートおよび出力ポートを備える。制御装置50には、電流センサ36aからのスタック電流Istや電圧センサ36bからのスタック電圧Vst、電圧センサ37からの直流リンク電圧Vlink、電流センサ39からの蓄電池電流Ibatteryなどが入力ポートを介して入力されている。一方、制御装置50からは、DC/DCコンバータ31のスイッチング素子への制御信号や、インバータ32のスイッチング素子への制御信号、リレー33,45への駆動信号、ヒータスイッチ42への駆動信号、システムの運転状態を表示する表示装置55への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。
【0023】
次に、こうして構成された電力システム10の動作について説明する。特に、系統電源1が停止(停電)した際に蓄電池パワーコンディショナ61の制御(MPPT制御)と協調して行なう燃料電池パワーコンディショナ30の動作(MPPT協調制御)について説明する。
【0024】
ここで、本実施形態の電力システム10は、系統電源1の停止が検出されると、外部負荷が要求する要求出力の全てを電力システム10から出力する電力で賄う自立発電状態に移行する。自立発電状態では、定格最大出力(例えば700W)で発電するよう燃料電池装置20が運転制御される。そして、要求出力が燃料電池装置20の発電電力以下である場合には、燃料電池装置20の発電電力により要求出力に見合う電力が外部負荷へ供給されると共に余剰電力がヒータ41で消費されたり蓄電池60に充電されるよう燃料電池パワーコンディショナ30と蓄電池パワーコンディショナ60とが制御される。また、要求出力が燃料電池装置20の発電電力を超えると、燃料電池装置20からの発電電力に加えて蓄電池60からの放電電力により要求出力に見合う電力が外部負荷へ供給されるよう燃料電池パワーコンディショナ30と蓄電池パワーコンディショナ60とが制御される。
【0025】
図2は、制御装置50のCPU51により実行されるMPPT協調制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、系統電源1の停止(停電)が検出、例えば、図示しない電圧センサにより系統電圧の低下が検出されたときに実行される。
【0026】
MPPT協調制御ルーチンが実行されると、制御装置50のCPU51は、まず、変数iを初期化し(ステップS100)、直流リンク部34の出力電力Pと出力電圧(直流リンク電圧目標値Vlink_tag)との関係である電力電圧特性(P-V特性)C(i)を選択する(ステップS110)。電力電圧特性C(i)は、直流リンク部34の電圧目標値(直流リンク電圧目標値Vlink_tag)の設定に用いるマップであり、電力電圧特性C(i)の選択は、ROM52に記憶された複数(n個)の電力電圧特性の中から変数i(i=1,2,…,n)に対応する電力電圧特性C(i)を導出することにより行なわれる。
図3は、電力電圧特性および電流電圧特性の一例を示す説明図である。なお、図中、実線は電力電圧特性(P-V特性)を示し、一点鎖線は電流電圧特性(I-V特性)を示す。また、図中、「Vocv」は開放端電圧を示し、「Ppeak」は最大電力を示し、「Vpeak」は最大電力Ppeakが得られる電圧(最大電圧)を示す。また、
図4は、ROM52に記憶される複数の電力電圧特性を示す説明図である。各電力電圧特性C(1),C(2),C(3)は、最大電圧Vpeakよりも低い電圧範囲において、それぞれ同一の出力電力に対して設定される直流リンク電圧目標値Vlink_tagが低い方から順に、C(1),C(2),C(3)となるように構成される。したがって、変数iが値1である場合、複数の電力電圧特性のうち同一の出力電圧に対して設定される直流リンク電圧目標値Vlink_tagが最も低い電力電圧特性C(1)が選択されることとなる。
【0027】
続いて、電圧センサ37からの直流リンク電圧Vlinkと電流センサ39からの蓄電池電流Ibatteryとを入力し(ステップS120)、入力した直流リンク電圧Vlinkと蓄電池電流Ibatteryとの積により出力電力Pを算出する(ステップS130)。そして、算出した出力電力PとステップS110で選択した電圧電流特性C(i)とに基づいて直流リンク電圧目標値Vlink_tagを設定し(ステップS140)、設定した直流リンク電圧目標値Vlink_tagとステップS120で入力した直流リンク電圧Vlinkとの偏差に基づくフィードバック制御(例えば、比例積分制御)によりヒータスイッチ42のオンオフデューティ比を設定すると共に設定したオンオフデューティ比に基づいてヒータスイッチ42をスイッチング制御する(ステップS150)。
【0028】
次に、直流リンク部34に過負荷状態が発生しているか否かを判定する(ステップS160)。この判定は、例えば、直流リンク電圧Vlinkが閾値Vref未満であるか否かを判定することにより行なうことができる。なお、閾値Vrefは、最大電力Ppeakを取り出すことのできる電圧(最大電圧Vpeak)よりも低い電圧、例えば、直流リンク部34に接続される補機等への電源喪失のリスクがある電圧よりも若干高い電圧として定められる。過負荷状態が発生していないと判定すると、選択中の電力電圧特性C(i)が蓄電池パワーコンディショナ61のMPPT制御の適合すると判断して、ステップS120に戻り、選択した電力電圧特性C(i)を用いてMPPT協調制御の実行を継続する。
【0029】
一方、過負荷状態が発生していると判定すると、選択中の電力電圧特性C(i)が蓄電池パワーコンディショナ61のMPPT制御の仕様に適合していないと判断し、変数iを値1だけインクリメントし(ステップS170)、変数iが、ROM52に記憶された電力電圧特性C(i)(i=1,2,…,n)の数である値nよりも大きいか否かを判定する(ステップS180)。変数iが値n以下であると判定すると、ステップS110に戻り、変数iに対応した次の電力電圧特性C(i)を選択して直流リンク電圧目標値Vlink_tagを設定し、MPPT協調制御を実行する処理を繰り返す。そして、ステップS110~S180の繰り返しの過程でステップS160で過負荷状態が発生しないと判定すると、選択中の電力電圧特性C(i)が蓄電池パワーコンディショナ61のMPPT制御の適合すると判断して、ステップS120に戻り、選択した電力電圧特性C(i)を用いてMPPT協調制御の実行を継続する。
【0030】
一方、電力電圧特性C(i)を変更しても、過負荷状態が解消することなく、ステップS180において変数iが値nよりも大きくなったと判定すると、蓄電池パワーコンディショナ61への給電を停止するためにリレー45をオフとすると共に(ステップS190)、表示装置55に警告表示を出力して(ステップS200)、MPPT協調制御ルーチンを終了する。
【0031】
ここで、上述したように、蓄電池パワーコンディショナ61が実行するMPPT制御において、最大電力点の探索範囲は、出力電力が単調増加から減少に転じた点から所定量ΔP低下したときの出力電圧を終値として定めた範囲に定められ、所定量ΔPは、蓄電池パワーコンディショナ61のメーカ毎に異なる。このため、MPPT制御の仕様(所定量ΔP)によっては、
図4に示すように、1つの電力電圧特性C(1)を用いて直流リンク電圧目標値Vlink_tagを設定すると、MPPT制御の最大電力点を探索する途中で、直流リンク電圧目標値Vlink_tagが閾値Vref未満となり、過負荷状態に至る場合が生じる。そこで、本実施形態では、MPPT協調制御において、過負荷状態が発生すると、選択中の電力電圧特性C(1)を電力電圧特性C(2)に変更してMPPT協調制御を再実行することにより、MPPT制御における最大電力点の探索する途中で、直流リンク電圧目標値Vlink_tagが閾値Vref未満となり、過負荷状態に至るのを抑制することができる。このように、異なる複数の電力電圧特性C(i)を予め記憶しておき、過負荷状態が発生しなくなるまで、電力電圧特性C(i)を順次変更してMPPT協調制御を実行することで、蓄電池パワーコンディショナ61のMPPT制御の仕様に適合した電力電圧特性を見つけ出すことができる。
【0032】
以上説明した本実施形態の給電制御装置では、電力電圧特性C(i)を用いて直流リンク電圧目標値Vlink_tagを設定して直流リンク部34の電圧を制御するMPPT協調制御において過負荷状態が発生すると、選択中の電力電圧特性C(i)を他の電力電圧特性C(i)に変更し、変更した電力電圧特性C(i)を用いてMPPT協調制御を再実行する。MPPT制御による過負荷状態が発生しなくなるまで電力電圧特性C(i)を変更してMPPT協調制御を再実行することで、電力電圧特性C(i)を受電側のMPPT制御の仕様に合わせることができる。この結果、受電側のMPPT制御の仕様に拘わらず、適切な電力により給電を行なうことが可能となる。
【0033】
また、本実施形態の給電制御装置では、いずれの電力電圧特性C(i)においても過負荷状態が解消されなかった場合には、リレー45をオフして給電を停止したり警告表示したりするため、過負荷状態の発生に対して適切に対処することができる。
【0034】
上述した実施形態では、電力システム10は、直流リンク部34の直流電力を受電する受電装置として、蓄電池パワーコンディショナ61を備えるものとしたが、これに限定されるものではなく、直流リンク部34の直流電力をMPPT制御により変換して受電可能なものであれば、如何なる受電装置を備えてもよい。
【0035】
上述した実施形態では、いずれの電力電圧特性C(i)においても過負荷状態が解消されなかった場合にリレー45をオフして蓄電池パワーコンディショナ61への給電を停止すると共に表示装置55に警告表示を行なうものとしたが、これに限定されるものではなく、電力システム10が通信ネットワークを介して管理装置に接続されている場合には、いずれの電力電圧特性C(i)も適合しない旨の情報を当該管理装置へ送信してもよい。
【0036】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、燃料電池装置20が「燃料電池装置」に相当し、DC/DCコンバータ31が「コンバータ装置」に相当し、直流リンク部34が「直流リンク部」に相当し、コンデンサ35が「コンデンサ」に相当し、蓄電池パワーコンディショナ61が「受電装置」に相当し、ヒータ41が「電力消費機器」に相当し、ヒータスイッチ42が「スイッチ」に相当し、制御装置50のROM52が「記憶装置」に相当し、MPPT協調制御ルーチンを実行する制御装置50のCPU51が「制御装置」に相当する。また、リレー45が「リレー」に相当する。
【0037】
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0038】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、電力システムの製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 系統電源、10 電力システム、20 燃料電池装置、30 燃料電池パワーコンディショナ、31 DC/DCコンバータ、32 インバータ、33 リレー、34 直流リンク部、35 コンデンサ、36a 電流センサ、36b 電圧センサ、37 電圧センサ、38 電力ライン、39 電流センサ、41 ヒータ、42 ヒータスイッチ、45 リレー、50 制御装置、60 蓄電池、61 蓄電池パワーコンディショナ。